(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】口内画像の曝露時間を自動的に決定するための方法、システム、装置、およびコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
A61B 6/14 20060101AFI20230721BHJP
A61B 6/02 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
A61B6/14 300
A61B6/02 300
A61B6/14 ZDM
(21)【出願番号】P 2020537714
(86)(22)【出願日】2019-01-04
(86)【国際出願番号】 US2019012243
(87)【国際公開番号】W WO2019139820
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-11-25
(32)【優先日】2018-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517264281
【氏名又は名称】デンツプライ シロナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】デューワー,フレデリック ダブリュー.
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0190102(US,A1)
【文献】特開2016-209724(JP,A)
【文献】特開平07-148161(JP,A)
【文献】特開平08-322826(JP,A)
【文献】特表2017-521203(JP,A)
【文献】特開2014-138911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口内X線投影像の所要曝露時間を自動的に決定するための方法であって、
像形成される物体の低線量パイロット投影像を取得することと、
使用可能な曝露が達成できることを確かめるためのサニティチェックを行うことと、
追加の投影像を得るための残り所要曝露時間を推定することと、
追加の投影像が飽和しないであろうことを確かめるためのチェックを行うことと、
前記推定された残り所要曝露時間を使用して
、前記追加の投影像を得ることと
、
前記パイロット投影像および前記追加の投影像を追加して、1つの最終画像を形成することと、
を含
み、
前記サニティチェックを行うことは、前記パイロット投影像のすべてのピクセル濃度値の累積ヒストグラムを計算することと、許容されない曝露条件を検証することと、(i)欠陥ピクセル、(ii)前記像形成される物体の金属領域、および(iii)前記像形成される物体の組織領域の少なくとも1つによる前記累積ヒストグラムへの寄与を除去することとを含み、
前記除去することは、(i)前記パイロット投影像のすべてのピクセル濃度値のパイロット投影像範囲を決定すること、ならびに(ii)前記決定されたパイロット投影像範囲を使用して高閾値および低閾値を計算することの少なくとも1つをさらに含む、方法。
【請求項2】
前記得ることはトモシンセシスX線イメージングを行うことを含み、
それぞれの追加の投影像は最終画像であり、前記最終画像はトモグラフィ画像に再構成され、前記トモグラフィ画像はトモシンセシス画像である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記取得することは、画質の期待値を選択することを含む設定を行うことを含み、前記画質は不連続であるか、またはスライドスケールによる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
暗視野像サブトラクションを行うことによって前記パイロット投影像および前記1つ以上の追加の投影像を処理することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記推定することは、前記決定された高閾値と低閾値との間のピクセルの濃度中央値を決定することをさらに含み、
前記濃度中央値は、歯および骨梁を表す、
請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記推定することは、目標値、前記決定された濃度中央値、およびパイロット投影像曝露時間を使用して推定最適曝露時間を決定することをさらに含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
飽和に必要な推定飽和曝露時間を決定することと、前記飽和に必要な推定飽和曝露時間を、推定最適曝露時間および最大可能曝露時間の少なくとも1つと比較することとによって、前
記最終画像が飽和しないであろうことを確かめることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ゲインおよび不良ピクセル補正を適用することによって前
記最終画像を処理することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ディスプレイユニット上に前
記最終画像および曝露品質の少なくとも1つを表示することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
口内X線画像の所要曝露時間を自動的に決定するためのシステムであって、
像形成される物体の低線量パイロット投影像を取得し、
使用可能な曝露が達成できることを確かめるためのサニティチェックを行い、
1つ以上の追加の投影像を得るための残り所要曝露時間を推定し、
追加の投影像が飽和しないであろうことを確かめるためのチェックを行い、
前記推定された残り所要曝露時間を使用して
、前記追加の投影像を得
、
前記パイロット投影像および前記追加の投影像を追加して、1つの最終画像を形成すし、
前記サニティチェックを行うことは、前記パイロット投影像のすべてのピクセル濃度値の累積ヒストグラムを計算することと、許容されない曝露条件を検証することと、(i)欠陥ピクセル、(ii)前記像形成される物体の金属領域、および(iii)前記像形成される物体の組織領域の少なくとも1つによる前記累積ヒストグラムへの寄与を除去することとを含み、
前記除去することは、(i)前記パイロット投影像のすべてのピクセル濃度値のパイロット投影像範囲を決定すること、ならびに(ii)前記決定されたパイロット投影像範囲を使用して高閾値および低閾値を計算することの少なくとも1つをさらに含む、
ように動作可能な少なくとも1つのプロセッサ
を含む、システム。
【請求項11】
前記プロセッサはトモシンセシスイメージングを行うように動作可能であり、前
記追加の投影像は最終画像であり、前記最終画像はトモグラフィ画像に再構成され、前記トモグラフィ画像はトモシンセシス画像である、請求項
10に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサは、画質の期待値を選択することを含む設定を行うように動作可能であり、前記画質は不連続であるか、またはスライドスケールによる、請求項
10に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサは、暗視野像サブトラクションを行うことによって前記パイロット投影像および前
記追加の投影像をさらに処理するように動作可能である、請求項
10に記載のシステム。
【請求項14】
前記プロセッサは、前記決定された高閾値と低閾値との間のピクセルの濃度中央値を決定するようにさらに動作可能であり、前記濃度中央値は、歯および骨梁を表す、請求項1
0に記載のシステム。
【請求項15】
前記プロセッサは、目標値、前記決定された濃度中央値、およびパイロット投影像曝露時間を使用して推定最適曝露時間を決定するようにさらに動作可能である、請求項1
4に記載のシステム。
【請求項16】
前記プロセッサは、飽和に必要な推定飽和曝露時間を決定することと、前記飽和に必要な推定飽和曝露時間を、推定最適曝露時間および最大可能曝露時間の少なくとも1つと比較することとによって、前
記最終画像が飽和しないであろうことを確かめるように動作可能である、請求項
10に記載のシステム。
【請求項17】
前記プロセッサは、ディスプレイユニットに前
記最終画像および曝露品質の少なくとも1つを提供するように動作可能である、請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
コンピュータシステムによって実行されると、前記コンピュータシステムに、
像形成される物体の低線量パイロット投影像を取得することと、
使用可能な曝露が達成できることを確かめるためのサニティチェックを行うことと、
追加の投影像を得るための残り所要曝露時間を推定することと、
追加の投影像が飽和しないであろうことを確かめるためのチェックを行うことと、
前記推定された残り所要曝露時間を使用して
、前記追加の投影像を
取得することと
、
前記パイロット投影像および前記追加の投影像を追加して、1つの最終画像を形成することと、を含み、
前記サニティチェックを行うことは、前記パイロット投影像のすべてのピクセル濃度値の累積ヒストグラムを計算することと、許容されない曝露条件を検証することと、(i)欠陥ピクセル、(ii)前記像形成される物体の金属領域、および(iii)前記像形成される物体の組織領域の少なくとも1つによる前記累積ヒストグラムへの寄与を除去することとを含み、
前記除去することは、(i)前記パイロット投影像のすべてのピクセル濃度値のパイロット投影像範囲を決定すること、ならびに(ii)前記決定されたパイロット投影像範囲を使用して高閾値および低閾値を計算することの少なくとも1つをさらに含む手順を行わせるプログラムを格納する非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2018年1月10日に出願された仮出願第62/615,644号の利益を主張するものである。
【0002】
本出願は、一般に、歯科環境のX線像を得ること、より具体的には、口内イメージングシステムにおける口内画像の作成に自動曝露制御を利用するための方法、システム、装置、およびコンピュータプログラム製品に関し、X線センサ/検出器に届く線量は一貫しており、主に歯の解剖学的構造の影響を受ける。
【背景技術】
【0003】
X線撮影は、X線源を物体(例えば、患者またはその一部)の一方の側部に位置決めし、X線源にX線を、物体を通って物体の他方の側部に配置されたX線検出器に向かうように放出させることによって行うことができる。X線がX線源から物体を通過する際、そのエネルギーは、物体の組成に応じて様々な度合いに吸収され、X線検出器に到達するX線は、物体への累積吸収に基づく二次元(2D)X線像または投影像(放射線写真としても知られる)を形成する。
【0004】
口内法X線撮影は、イメージングセンサ/検出器が患者の口の内側に置かれ、口の外側のX線源が、センサ/検出器にX線を照射するのに使用される。口内の硬組織のX線減衰は、検出器上に形成される臨床画像をもたらす。いくつかの考慮事項が、臨床画像の収集に使用される曝露時間に適用される。
【0005】
第1に、適用されるX線線量の増加は、像に寄与するX線光子の数を改善する。X線像が典型的にはポアソンノイズに支配されると仮定すると、信号対ノイズ比(SNR)は、さらなるX線線量が適用されると改善する。したがって、通常、最低X線線量が、所与の臨床関心特徴をうまく可視化するために必要である。その適用線量を超えると、適用線量の増加は、必ずしも著しいさらなる臨床的有用性をもたらさない。
【0006】
第2に、組織でのX線吸収は、組織中の原子のイオン化をもたらし、それにより、化学結合の破壊および再形成をもたらす。X線曝露は、典型的には、癌のリスクを高め、それにより死亡率を高めることが示されている。したがって、過剰なX線曝露を排除する必要がある。さらに、典型的なX線センサは、X線センサによって吸収されたエネルギーの量がセンサ依存の閾値を超えると飽和し、検出器ピクセルはその最大値を返す。したがって、画像の飽和領域は、臨床関連情報をほとんど含まない。
【0007】
これらの問題は、従来、口内X線曝露を手動で設定することによって解決されてきた。公称線源特性、期待されるX線濾過、期待される線源-検出器間隔、期待される患者特性、期待されるX線センサ特性に基づいた固定設定が、手動選択用X線システム中に含まれていた。この手法では、いくつかの問題が存在する。第1に、典型的なX線源は、構成時およびその使用寿命中の両方で出力がかなり変動する。第2に、線源の位置は、典型的には手動で不正確に決定され、届く線量のかなりの変動につながる。第3に、患者特性はかなり変動し、センサに届く線量の変動につながる。これらの変動は、診断能に影響し得る画質の変動をもたらす。
【0008】
したがって、口内イメージングシステムにおける曝露設定の自動制御を可能とするシステム、方法、装置、およびコンピュータプログラム製品を有することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0009】
前述のものに関連する既存の制限および他の制限は、所与の口内画像に必要な曝露時間を自動的に決定するための方法、ならびに方法に従って動作するシステム、装置、およびコンピュータプログラムによって克服され得る。
【0010】
本明細書の例示的実施形態によれば、所与の口内画像に必要な曝露時間を自動的に決定するための方法は、像形成される物体の低線量パイロット投影像を取得することと、使用可能な曝露が達成できることを確かめるためのサニティチェックを行うことと、追加の投影像のための残り曝露時間を推定することと、追加の投影像が飽和しないであろうことを確かめるためのチェックを行うことと、推定された残り曝露時間を使用して追加の投影像を撮影することと、2つの像を足し合わせて最終画像を形成することとを含む。
【0011】
本明細書の1つの例示的実施形態では、取得は、取得される画質の期待値を入力することを含む設定を行うことを含み、期待値は、例えば、低品質、標準品質、または高品質のように不連続であり得、初期設定の期待値は標準品質であり得る。あるいは、期待値は、スライドスケールによるものであってよい。次いで、暗視野像が撮影されてよく、その後、低線量パイロット投影像が取得される。次いで、パイロット投影像中の暗電流の影響を除去するために、暗視野像が低線量パイロット投影像から減算される。
【0012】
本明細書の別の例示的実施形態では、サニティチェックは、前述のパイロット投影像のすべてのピクセル濃度値の累積ヒストグラムを計算することと、許容されない曝露条件を検証することとを含む。本明細書のさらなる例示的実施形態では、残り所要曝露時間を推定することは、前述のパイロット投影像のすべてのピクセル濃度値のパイロット投影像範囲を決定することと、決定された範囲を使用して高閾値および低閾値を計算することとを含む。また、本明細書のさらなる例示的実施形態では、較正結果は、エアギャップの代表値を推定するために使用されてよく、高閾値決定を通知するために使用されてよい。本明細書の別の例示的実施形態では、残り曝露時間の推定は、決定された高閾値と低閾値との間のすべてのピクセル濃度値の中央値を決定することを含む。
【0013】
本明細書の例示的実施形態では、残り曝露時間の推定は、目標値、決定された中央値、およびパイロット投影像曝露時間を使用して最適曝露時間を決定することを含む。
【0014】
本明細書の別の例示的実施形態では、方法は、生じる像が飽和しないことを確かめることをさらに含む。これは、推定飽和曝露時間を決定することと、推定曝露時間を決定することと、推定曝露時間が最小設定可能曝露時間未満であるかどうかのチェックを行うこととを伴ってよい。
【0015】
本明細書のさらに別の例示的実施形態では、方法は、追加の投影像を撮影することと、パイロット投影像および追加の投影像を足し合わせることとをさらに含み、追加の投影像は推定された残り曝露時間を使用して撮影され、暗視野像が追加の投影像から減算され、生じる像および低線量パイロット投影像が加算されてX線システムの最終画像を形成する。トモシンセシスX線システムでは、複数の投影像(例えば、様々な角度で41投影)が撮影され、したがって、パイロット投影像が撮影された後、複数の追加の投影像が撮影され得る。トモシンセシスX線システムにおいて複数の投影像が撮影される角度は変化するため、パイロット投影像は、追加の投影像と合成されない場合がある。代わりに、追加の各投影像自体が最終画像となるように、追加の各投影像について適切な残り曝露時間が、単一のパイロット投影から決定されてよい。したがって、パイロット投影像および追加の投影像の合成は、開示のトモシンセシスX線システムには必要ないことになる。さらなる実施形態では、ゲインおよび不良ピクセル補正が最終画像に適用されてよい。スポットリムーバも適用されてよい。さらに別の実施形態では、少なくとも最終画像(複数可)はトモグラフィ画像に再構成されてよい。さらなる実施形態では、再構成されたトモグラフィ画像はトモシンセシス画像であってよい。本明細書の別の実施形態では、トモグラフィ画像はディスプレイユニット上に表示されてよい。本明細書のさらなる実施形態では、曝露品質がディスプレイユニット上に表示され得る。
【0016】
他の方法では、X線源の位置、患者の臨床的特徴、およびX線源の出力の変動が、センサに届く線量をかなり変動させる恐れがあるため、これらの方法は、一貫した、大部分は歯の解剖学的構造の影響を受ける線量をセンサに届けるのに有用であり得る。
【0017】
さらなる特徴および利点、ならびに本明細書の様々な実施形態の構造および動作は、添付図面を参照しながら以下に詳細に説明される。
【0018】
本明細書で特許請求および/または説明される教示は、例示的実施形態によってさらに説明される。これらの例示的実施形態は、図面を参照しながら詳細に説明される。これらの実施形態は、限定ではない例示的実施形態であり、図面のいくつかの図を通して同様の参照番号は類似の構造体を表す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本明細書の1つの例示的実施形態による口内X線システムのシステムブロック図である。
【
図2】本明細書の1つの例示的実施形態による口内トモシンセシスX線システムのシステムブロック図である。
【
図3】
図1および
図2に示すシステムの例示的コンピュータシステムのブロック図を示す。
【
図4】本明細書の例示的実施形態による自動曝露ステップを示す図である。
【
図5】どのようにパイロット投影像が撮影されるかを示す図である。
【
図6】使用可能な曝露が達成できることを確かめるためのサニティチェックをどのように行うかを示す図である。
【
図7】どのように残り曝露時間を推定するかを示す図である。
【
図8】生じる像が飽和しないことをどのように確かめるかを示す図である。
【
図9】どのように追加のパイロット投影像が撮影され、最終画像の作成に使用されるかを示す図である。
【
図10】本明細書に記載された実施形態による累積ヒストグラムがどのようであるかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面のうち異なる図面は、同じ構成要素を識別するために少なくともいくつかの同じ参照番号を有し得るが、そのような各構成要素の詳細な説明は、各図面に関して以下に提供されない場合がある。
【0021】
本明細書に記載された例示的態様によれば、所与の口内画像に必要な曝露時間を自動的に決定するための方法、システム、装置、およびコンピュータプログラムが提供される。
【0022】
口内X線システムおよび口内トモシンセシスX線システム
図1は、口内画像を得るための口内X線システム1のブロック図を示し、本明細書のすくなくとも1つの例示的実施形態に従って構成および操作される。システム1は、1つ以上のサブ物体52をさらに含んでよい関心物体50の1つ以上のX線像を得るように操作され得る。例えば、物体50は、患者の歯(1つまたは複数)および周囲の歯列であってよく、サブ物体(複数可)52は、歯内の歯根構造であってよい。
【0023】
システム1は、X線検出器2およびX線サブシステム16を含み、その両方とも、そのサブコンポーネントを含み、コンピュータシステム6に電気的に結合される。一例では、X線サブシステム16は、物体50に対して自由に位置決めされるように、天井または壁にマウントされるメカニカルアーム(図示せず)から吊られる。X線サブシステム16は、X線源4をさらに含む。
【0024】
コンピュータシステム6は、ディスプレイユニット8および入力ユニット14に電気的に結合されてよい。ディスプレイユニット8は、出力および/または入力ユーザインターフェースであってよい。
【0025】
X線検出器2は、物体50の一方の側部に位置決めされ、X線検出器2の受光面は、デカルト座標系でのx-y平面内に延びる。X線検出器2は、例えば、相補型金属酸化物半導体(CMOS)デジタル検出器ピクセルアレイ、電荷結合素子(CCD)デジタル検出器ピクセルアレイなどを含む小型の口内X線センサとすることができる。本明細書の例示的実施形態では、X線検出器2のサイズは、物体50が属する患者のタイプによって異なり、より具体的には、X線検出器2は、歯科産業で採用される標準サイズのうちの1つであり得る。標準歯科サイズの例としては、成人患者に通常使用されるおよそ27×37mmのサイズの「サイズ2」検出器、サイズ2の成人患者よりも小さい患者に通常使用されるおよそ21×31mmのサイズの「サイズ1」検出器、および小児患者に通常使用されるおよそ20×26mmのサイズの「サイズ0」検出器が挙げられる。本明細書のさらなる例示的実施形態では、X線検出器102の各ピクセルは15μmのピクセル幅を有し、対応して、サイズ2の検出器は、1700×2400ピクセルアレイでのおよそ400万ピクセルを有し、サイズ1の検出器は、1300×2000ピクセルアレイでのおよそ270万ピクセルを有し、サイズ0の検出器は、1200×1600ピクセルアレイでのおよそ190万ピクセルを有する。X線検出器2の色解像度は、本明細書の1つの例示的実施形態では、12ビットのグレースケール解像度であり得るが、この例は限定ではなく、他の例示的な色解像度としては、8ビットのグレースケール解像度、14ビットのグレースケール解像度、および16ビットのグレースケール解像度が挙げられ得る。
【0026】
X線源4は、物体50のX線検出器2とは反対側に位置決めされる。X線源4はX線10を放出し、これは物体50を通過し、X線検出器2によって検出される。X線源4は、X線10をX線検出器2の受光面に向けてデカルト座標系の少なくともz軸方向に放出するように向けられ、この場合、z軸は、X線検出器2の受光面に関連するx-y平面と直交する。スカウトショット(scout shot)が、パイロット投影像を得るために撮影される。続いて、本明細書で議論される自動曝露ステップから得られた推定残り曝露時間を使用して1つの追加の投影像が撮影される。次いで、パイロット投影像および追加の像が合成されて最終画像を形成し得る。
【0027】
図1に示すような一実施形態では、単一の曝露のみが行われてよく、検出器上に生じる像が読み取られる。
【0028】
トモシンセシスX線システム1aを示す
図2によるさらなる実施形態では、X線源4はまた、走査角度12内の複数の異なる場所の各々に位置決めされた状態でX線10を放出してよく、走査角度12における0°位置は、x-z平面に沿ってX線10を放出する位置に対応する。トモシンセシスX線サブシステム16aは、ステージ18a上にマウントされ得るX線源4を含み得る。本明細書の1つの例示的実施形態では、X線サブシステム16aは、したがってX線源4も、最初に0°位置に位置決めされる。スカウトショットが、0°位置でのパイロット投影像を得るために撮影される。次いで、X線源は、物体50に対する所定の開始位置に位置決めされる。次いで、コンピュータシステム6は、走査角度12内の異なる場所の各々をステップスルーして、本明細書で議論される自動曝露ステップから得られた推定曝露時間を使用して追加の像を撮影するべく、既知の開始位置に基づいて、X線源104をモータ駆動ステージ18aにより移動させるようにオンボードのモータコントローラ20を制御する。コンピュータシステム6は、最初に、走査角度12内のこれらの異なる場所の各々で追加のショットを撮影するのに使用する適切な曝露時間を決定するために、X線10を放出して単一のパイロットショットを撮影するようにX線源4を制御してよい。トモシンセシスX線システムにおいて複数の追加の投影像が撮影される角度は変化するため、パイロット投影像は、追加の投影像と合成されない場合がある。代わりに、追加の各投影像自体が最終画像となるように、追加の各投影像について適切な残り曝露時間が、単一のパイロットショットから決定されてよい。走査角度12内の異なる場所の各々から放出されたX線10は、トモグラフィ焦点22に実質的に収束し得る。トモグラフィ焦点22は、例えば、走査角度12の外側限界に位置決めされたX線源4から放出されたX線10の照準がX線検出器2に合わされ、外さないように、検出器2の近くに配置され得る。
【0029】
放出されたX線110が物体50を通過する際、X線10の光子が、カルシウムに富む歯および骨などの物体50の高密度構造体によって高度に減衰し、歯茎および頬などの軟組織によって軽度に減衰することになる。減衰構造体の1つ以上を、サブ物体52によって表すことができる。物体50を通過し減衰するX線10がX線検出器2上に投影され、X線検出器2は、X線10を電気信号へ変換し、電気信号をコンピュータシステム6に提供する。1つの例示的実施形態では、X線検出器2は、最初にX線10を光学像へ変換し、次いで、光学像を電気信号へ変換する間接型の検出器(例えば、シンチレータX線検出器)であってよく、別の例示的実施形態では、X線検出器2は、X線10を電気信号へ直接変換する直接型の検出器(例えば、半導体X線検出器)であってよい。コンピュータシステム6は、既知の方法で物体50の二次元投影像を形成するべく電気信号を処理する。本明細書の1つの例示的実施形態では、二次元投影像の像サイズは、X線検出器2のピクセルの寸法および数に対応する。
【0030】
コンピュータシステム6は、トモシンセシス画像スタックとしても知られる、一連の二次元トモシンセシス画像スライスであるトモグラフィ画像を再構成するべく、複数の最終画像を処理する。前述の自動曝露手段を利用することによって、不要なX線曝露を制限するために、前述のトモシンセシスシステム1aのトモシンセシス走査で撮影される全画像について正しい線量を決定するべく、単一のパイロット投影像が撮影されてよい。
【0031】
自動曝露を使用したX線およびトモシンセシスX線イメージングのためのコンピュータシステム
それぞれX線データセットおよびトモシンセシスデータセットを取得するためのシステム1および1aを説明したので、次に、本明細書の例示的実施形態の少なくともいくつかに従って採用されてよいコンピュータシステム100のブロック図を示す
図3を参照する。様々な実施形態が、例示的コンピュータシステム100によって本明細書で説明されるが、本説明を読んだ後、開示を他のコンピュータシステムおよび/またはアーキテクチャを使用してどのように実装するかが当業者には明らかとなるであろう。
【0032】
図3は、コンピュータシステム100のブロック図を示す。本明細書の1つの例示的実施形態では、コンピュータシステム100の少なくともいくつかの構成要素(これらすべての構成要素、もしくは構成要素128以外のすべてなど)は、
図1および
図2に示すシステム1、1aを形成し得るか、またはそれに含まれ得る。コンピュータシステム100は、少なくとも1つのコンピュータプロセッサ122(「コントローラ」とも呼ばれる)を含む。コンピュータプロセッサ122としては、例えば、中央処理装置、多重処理装置、特定用途向け集積回路(「ASIC」)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)等が挙げられる。FPGAは、例えば、X線検出器2と通信するのに使用されてよい。プロセッサ122は、通信インフラストラクチャ124(例えば、通信バス、クロスオーバーバーデバイス、またはネットワーク)に接続される。
【0033】
コンピュータシステム100は、ビデオグラフィックス、テキスト、および他のデータを、通信インフラストラクチャ124から(またはフレームバッファ(図示せず)から)、(1つの例示的実施形態では、ディスプレイユニット108を形成し得るか、またはそれに含まれ得る)ディスプレイユニット128上のディスプレイへ転送するディスプレイインターフェース(または他の出力インターフェース)126も含んでよい。例えば、ディスプレイインターフェース126は、グラフィックス処理装置を有するビデオカードを含んでよい。
【0034】
コンピュータシステム100は、コンピュータプロセッサ122に情報を送信するためにコンピュータシステム100のユーザによって使用され得る入力ユニット130も含んでよい。本明細書の1つの例示的実施形態では、入力ユニット130は、
図1および
図2の入力ユニット14を形成し得るか、またはそれに含まれ得る。例えば、入力ユニット130は、キーボードデバイスおよび/またはマウスデバイスもしくは他の入力デバイスを含み得る。一例では、ディスプレイユニット128、入力ユニット130、およびコンピュータプロセッサ122は、まとめてユーザインターフェースを形成し得る。
【0035】
タッチスクリーンを含む例示的実施形態では、例えば、入力ユニット130およびディスプレイユニット128は組み合わされるか、または同じユーザインターフェースを表す。そのような実施形態では、ユーザがディスプレイユニット128にタッチすると、対応する信号が、ディスプレイユニット128からディスプレイインターフェース126に送信され、ディスプレイインターフェース126がこれらの信号を、例えば、プロセッサ122などのプロセッサに転送し得る。本明細書の例示的実施形態では、壁にマウントされるメカニカルアーム(図示せず)は、壁に取り付けられるモジュールを有してよく、モジュールは、X線源4、モータ駆動ステージ18aを制御し、検出器2と通信するためのプロセッサ122およびオンボードの電子機器を含む。プロセッサ122は、本明細書に記載された手順のいずれかの一部(またはすべて)を行うように構成され得る。例えば、
図4~9に示す手順の1つ以上のステップは、コンピュータ可読プログラム命令の形態で、非一時的記憶デバイスに格納され得る。手順を実行するために、プロセッサ122は、記憶デバイスに格納された適切な命令をメモリ132にロードし、次いで、ロードされた命令を実行する。
【0036】
加えて、コンピュータシステム100は、好ましくはランダムアクセスメモリ(「RAM」)であるメインメモリ132を含み、二次メモリ134も含んでよい。二次メモリ234としては、例えば、ハードディスクドライブ136および/またはリムーバブル記憶ドライブ138(例えば、フロッピーディスクドライブ、磁気テープドライブ、光ディスクドライブ、フラッシュメモリドライブ等)が挙げられ得る。リムーバブル記憶ドライブ138は、周知の方法で、リムーバブル記憶装置140の読み出しおよび/または書き込みを行う。リムーバブル記憶装置140は、例えば、フロッピーディスク、磁気テープ、光ディスク、フラッシュメモリデバイス等であってよく、リムーバブル記憶ドライブ138によって書き込みおよび読み出しが行われる。リムーバブル記憶装置140は、コンピュータ実行可能なソフトウェア命令および/またはデータを格納する非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含み得る。
【0037】
代替実施形態では、二次メモリ134は、コンピュータシステム100にロードされるコンピュータ実行可能なプログラムまたは他の命令を格納する他のコンピュータ可読媒体を含み得る。そのようなデバイスとしては、リムーバブル記憶装置144およびインターフェース142(例えば、ビデオゲームシステムで使用されるものと類似のプログラムカートリッジおよびカートリッジインターフェース)、リムーバブルメモリチップ(例えば、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(「EPROM」)またはプログラマブル読み出し専用メモリ(「PROM」))および関連メモリソケット、ならびにリムーバブル記憶装置144からコンピュータシステム100の他の部分へのソフトウェアおよびデータの伝送を可能とする他のリムーバブル記憶装置144およびインターフェース142が挙げられ得る。
【0038】
コンピュータシステム100は、コンピュータシステム100と外部デバイスとの間でソフトウェアおよびデータの伝送を可能とする通信インターフェース146も含み得る。通信インターフェース146の例としては、モデム、ネットワークインターフェース(イーサネットカードまたはIEEE 802.11ワイヤレスLANインターフェース)、通信ポート(例えば、ユニバーサルシリアルバス(「USB」)ポートまたはFireWire(登録商標)ポート)、パーソナルコンピュータメモリカード国際協会(「PCMCIA」)インターフェース等が挙げられる。通信インターフェース146を介して伝送されるソフトウェアおよびデータは信号の形態であり得、電子信号、電磁信号、光信号、または通信インターフェース146による送信および/または受信が可能な別のタイプの信号であり得る。信号は、通信経路148(例えば、チャネル)を介して通信インターフェース146に提供される。通信経路148は信号を運び、電線またはケーブル、光ファイバ、電話回線、セルラーリンク、無線周波数(RF)リンク等を使用して実装され得る。通信インターフェース146は、コンピュータシステム100とリモートサーバまたはクラウドベースのストレージ(図示せず)との間でソフトウェアまたはデータまたは他の情報を伝送するのに使用されてよい。
【0039】
1つ以上のコンピュータプログラム(コンピュータ制御論理とも呼ばれる)は、メインメモリ132および/または二次メモリ134に格納される。コンピュータプログラムはまた、通信インターフェース146を介して受信され得る。コンピュータプログラムは、コンピュータプロセッサ122によって実行されると、コンピュータシステム100に、例えば、本明細書に記載され、
図4~9に示すようなプロセスのすべてまたは一部を行わせるコンピュータ実行可能な命令を含む。したがって、コンピュータプログラムは、口内X線システム1または口内トモシンセシスX線システム1aのコンピュータシステム106ならびに他の構成要素(例えば、X線検出器2およびX線源4)を制御し得る。
【0040】
本明細書の1つの例示的実施形態では、ソフトウェアは非一時的コンピュータ可読記憶媒体に格納され得、リムーバブル記憶ドライブ138、ハードディスクドライブ136、および/または通信インターフェース146を使用して、コンピュータシステム100のメインメモリ132および/または二次メモリ134にロードされ得る。制御論理(ソフトウェア)は、プロセッサ122によって実行されると、コンピュータシステム100、より一般的には口内X線システム1または口内トモシンセシスX線システム1aに、本明細書に記載されたプロセスを行わせる。
【0041】
別の例示的実施形態では、ASIC、FPGA等のようなハードウェア構成要素が、本明細書に記載された機能性を実行するのに使用され得る。本明細書に記載された機能を行うためのそのようなハードウェア配置の実装は、本説明を考慮すれば、当業者には明らかであろう。
【0042】
口内画像に必要な曝露時間を決定するための方法
図3のコンピュータシステム100を説明したので、次に、口内X線システム1および口内トモシンセシスX線システム1aを
図4と併せてさらに説明し、
図4は、口内画像の曝露時間を決定するためのプロセスをガイドし、線量をセンサに届けるのにパイロット投影像を使用するための本明細書の例示的実施形態によるプロセスのフロー図を示し、前述の線量は一貫しており、大部分は歯の解剖学的構造の影響を受ける。
【0043】
ステップS300で、システム1、1aは、物体50の低線量パイロット投影像を取得する。次いで、ステップS400で、コンピュータシステム6は、許容されない曝露条件を検証するためのサニティチェックを行う。ステップS500で、残り曝露時間の推定値が決定される。次いで、ステップS600で、生じる像が、飽和について分析される。次いで、最後にステップS700で、追加の投影像が撮影され、追加の投影像および低線量パイロット投影像を加算することによって最終画像を作成するために使用される。これらのステップを、以下でより詳細に議論する。
【0044】
ステップS300で、システム1、1aは、低線量パイロット投影像を取得する。本明細書の1つの例示的実施形態では、暗視野像が読み取られるS302。これは、X線源4をオフにして検出器2の出力を読み出すことによって達成される。続いて、物体50の低線量パイロット投影像が、X線源4を使用して撮影される。トモシンセシスシステム1aでは、低線量パイロット投影像は、中央の投影の位置、すなわちZ軸方向に0°で撮影され得、この場合、
図2に示すように、z軸は、X線検出器2の受光面に関連するx-y平面と直交する。次いで、ステップS306で、暗電流に関連する像寄与を除去するために、暗視野像が低線量パイロット投影像から減算される。本明細書の例示的実施形態では、検出器2上のノイズはポアソンノイズに支配される。本明細書の別の実施形態では、欠陥ピクセルの数は、全ピクセルの1%より著しく少ない。
【0045】
ステップ400で、使用可能な曝露が達成できることを確かめるためのサニティチェックが行われる。本明細書の1つの例示的実施形態では、コンピュータシステム6は、パイロット投影像のピクセルのヒストグラム濃度値を算出し、歯の解剖学的構造の金属および組織領域に対応するヒストグラムの固定部分を除去する。金属および組織領域に対応するヒストグラム範囲の固定部分を除去し、ヒストグラムの中央値を計算することによって、計算された中央値は、第2の像の曝露時間を推定するのに使用され得る。歯の解剖学的構造は、しばしば、均一な、非常に低い透過率の金属領域を有する。歯の解剖学的構造は、均一な、非常に高い透過率の組織領域も有する。これらの領域タイプの両方が、像の相当な割合を占め得、それによりアルゴリズムにバイアスをかけ得る。しかしながら、任意の金属または組織はヒストグラムの一方の端部に比較的近いと仮定すれば、金属および組織領域に対応する全ヒストグラム範囲の割合、ならびに欠陥ピクセルに対応する全ヒストグラム範囲の割合を、検討から除去することができる。残りのピクセル値は、金属または組織の寄与を含まないことになり、それにより、臨床領域を代表するものである。残りのピクセル濃度値の中央値は、歯および骨梁を表す。別の実施形態では、残りのピクセル濃度値の平均が、歯および骨梁を表してよい。コンピュータシステム6は、以下のステップに従ってサニティチェックを行ってよい:
1.推定スケールファクタ(K)が、パイロット投影像の曝露時間(T
pilot)および公称/代表曝露時間(T
nominal)を使用して計算される。
K=T
pilot/T
nominal
代表/公称曝露時間は任意であり得、例えば150ミリ秒であり得る。
2.次いで、パイロット投影像の累積ヒストグラムが、
図10に示すように算出される。
3.累積ヒストグラムのp
highパーセンタイル(対応する濃度値V
high)およびp
lowパーセンタイル(対応する濃度値V
low)が決定され、ここで、p
highは、像の濃度値の上限を決定するのに使用されるパーセンタイルであり、p
lowは、像の濃度値の下限を決定するのに使用されるパーセンタイルである。これは、像の濃度値への欠陥ピクセルの寄与を除去するためである。
本明細書の例示的実施形態では、p
low~p
highパーセンタイル外の濃度値は、欠陥ピクセルに対応し、p
low~p
highパーセンタイル内の濃度値は、歯、骨梁、ならびに歯の解剖学的構造の金属および組織領域に対応する。例示的実施形態では、p
highは、70~99.5パーセンタイルであってよい。さらなる実施形態では、p
lowは、0.5~30パーセンタイルであってよい。
4.許容されない曝露条件が、(ステップS404に示すように)V
highを最大金属値および最大曝露値と比較することによって検証される。最大金属値は、金属に対応すると期待される最も大きいピクセル数または濃度値であり、典型的には500である。最大曝露値は、公称曝露時間および位置で像形成されるセンサに期待される最も大きいピクセル数または濃度値であり、典型的には4095である。
上記の前文に対し、以下を導き出すことができる:
a.V
high<M
metal×Kならば、曝露は使用可能ではない。本明細書の実施形態では、ステップS406のように、サニティチェックは、許容されないほど低いX線曝露を示すエラーを返すことになる。
b.V
high>M
exposure×Kならば、曝露はまた使用可能ではなく、ステップS406のように、許容されないほど高いX線曝露を示すエラーが返され得る。
【0046】
次に
図7を見ると、欠陥ピクセルによる寄与が除去された後、ステップS504のように、コンピュータシステム6は、歯の解剖学的構造の金属および組織領域による累積ヒストグラムの濃度値への寄与を特定および除去することによって、必要な最適残り曝露時間を推定し得る。次いで、ステップS506で、残りの濃度値の中央値が算出され、ここで、中央値は歯および骨梁を表す。ステップS510での飽和チェックのために、ステップS508で、目標濃度値を使用して残り曝露時間が計算され得る。本明細書の例示的実施形態では、残り曝露時間T
estの推定値は、最初に、以下のステップに従って推定最適残り曝露時間T
optimalを決定することによって、決定され得る。
1.パイロット投影像範囲(Δ)を決定し、ここで、像範囲Δ=V
high-V
lowであり、
図10に示すように、V
highは、パイロット投影像のp
highパーセンタイルに対応する濃度値であり、V
lowは、パイロット投影像のp
lowパーセンタイルに対応する濃度値である。
2.算出された範囲Δを使用して高閾値(τ
high)および低閾値(τ
low)を決定する。
τ
high=V
high-f
air×Δ
τ
low=V
low+f
metal×Δ
式中、τ
highはフィルタリングされた累積ヒストグラムの上限を表し、歯の解剖学的構造の金属および組織領域ならびに検出器2の欠陥ピクセルによる寄与は除去されており、τ
lowはフィルタリングされた累積ヒストグラムの下限を表し、歯の解剖学的構造の金属および組織領域ならびに検出器2の欠陥ピクセルによる寄与は除去されている。式中、f
airは、空気および歯の解剖学的構造の組織に起因すると仮定される像範囲Δの割合であり、一方、f
metalは、歯の解剖学的構造の金属領域に起因すると仮定される像範囲の割合である。本明細書の例示的実施形態では、f
airは5~35%であり、さらなる例示的実施形態では、f
metalは5~35%である。
3.続いて、高閾値と低閾値との間のすべてのピクセルの中央値(η)が算出され得る。
4.推定最適残り曝露時間(T
optimal)が、目標最終画像濃度中央値t
value、中央値η、およびパイロット投影像曝露時間を使用して決定され得る。
本明細書の実施形態では、t
valueは1200である。t
valueは、撮影される対応する残りの曝露がパイロット投影像と加算されて、目標値t
valueに近いかまたは等しい中央値を有する累積ヒストグラムを有する最終画像を生成してよいように選ばれる。これとともに、推定最適残り曝露時間T
optimalは、以下のように決定されてよい。
T
optimal=((t
value/η)-1)×T
pilot
式中、ηは、高閾値と低閾値との間のすべてのピクセルの中央値であり、T
pilotは、パイロット投影像の曝露時間である。ηがt
valueより大きい場合、T
pilotは負であることがわかる。これは、必要に応じて検出器からX線源までの距離を増加させて対応する濃度中央値ηの減少をもたらすことによって防がれ得る。トモシンセシスX線システムでは、t
valueは、追加の各投影像がパイロット投影像と加算される必要のない最終画像となるように選ばれてよい。t
value、4095の飽和値、500の金属値、および4095の最大曝露値などの値は検出器に依存し、したがって、使用される検出器のタイプによって異なるであろうことを、当業者なら理解するであろう。具体的には、ビット深度、ダイナミックレンジ、および検出器ダイナミックレンジの典型的な割合などの、使用される検出器の設計寸法は、値に影響する場合がある。例えば、飽和値は、ビット深度/使用されている検出器で得られる最高濃度値に合うように選ばれてよい。t
valueは、公称/代表動作条件下で臨床的に意味のある像を得るために必要な期待濃度値に合うように選ばれてよい。金属値は、金属物体の曝露値に合うように選ばれてよく、最大曝露値は、公称動作条件下、検出器とX線源との間に空気がある状態での期待曝露/濃度値に合うように選ばれてよい。
【0047】
次に
図8を見ると、推定曝露時間T
estが、検出器2のピクセルが飽和するのにかかる時間を決定し、その時間をT
optimalおよび最大可能曝露時間T
maxと比較することによって決定され得る。最低線量が検出器2に届くことになるように、3つのうちの最小値が選ばれ得る。ステップS602で、累積ヒストグラムのp
highパーセンタイルが決定され得る。次いで、ステップS604で、検出器ピクセルの飽和時間が決定される。推定最適残り曝露時間S608および絶対最大曝露時間を持って、パイロット投影像と合成されてよい追加の投影像(複数可)を撮影するのに使用される最小曝露時間が決定され得る。これらのステップは、以下にさらに説明される。
1.推定飽和曝露時間(T
sat)が、典型的には4095である最大像濃度値を使用して決定される。
T
sat=f
sat×(4095/V
high)×T
pilot
式中、V
highは、パイロット投影像のp
highパーセンタイルであり、T
pilotは、パイロット投影像の曝露時間であり、f
satは、加算された像が占めると期待される検出器範囲の最大の割合である。本明細書の実施形態では、f
satは1未満であり、したがって、T
satは、飽和に達するのにかかる時間未満の値を有する。
2.次いで、推定残り曝露時間(T
est)が、以下のように決定される。
T
est=min(T
optimal,T
sat,T
max)
式中、T
optimalは推定最適残り曝露時間であり、T
satは推定飽和曝露時間であり、T
maxは、例えば、患者頭部の最大サイズおよび患者のX線源からの最大距離を考慮した、任意の走査に対する最大可能曝露時間である。本明細書の実施形態では、T
maxは280ミリ秒である。
本明細書の別の実施形態では、T
satがT
optimal未満の場合、残りの曝露は複数の像に分割されてよく、次いで、すべての像が加算されてよい。
3.次いで、推定残り曝露時間が、システム1、1aの最小設定可能曝露時間(T
minset)と比較される。2つの最小値が、最終推定残り曝露時間を決定する。
T
est=max(T
est,T
minset)
【0048】
次に
図9を見ると、最終画像が、ステップS702で推定残り曝露時間を使用して追加の投影像を撮影することによって得られる。トモシンセシスシステム1aでは、複数の追加の投影像が、Z軸に対して異なる角度で撮影されてよく、追加の投影像は最終画像であってよく、したがって、パイロット投影像を追加の投影像と合成する必要性を排除する。ステップS704で、暗電流による追加の投影像(複数可)への像寄与を除去するために、暗視野像が追加の投影像(複数可)から減算される。X線システム1では、生じる像は、ステップS706でパイロット投影像と合成されて最終画像を形成し得る。
【0049】
次いで、ステップS708で、そのノイズを除去するために、標準的なゲインおよび不良ピクセル補正方法が最終画像に適用され得、ステップS710で、最終画像からX線スペックルを除去するために、スポット除去手順も最終画像に適用され得る。
【0050】
コンピュータシステム6を使用して、
図4~9に示され、上で説明されたプロセスの少なくとも一部を行うことによって、X線システム1は、像形成されている特定の歯の解剖学的構造に適した合計線量で最終画像を生成するために、正しい線量で追加の投影像を撮影する前に、低線量でスカウトショットまたはパイロット投影像を取得するように制御され得、したがって、価値および有用性の高い臨床情報を生成および提示しながらも、このように潜在的に患者へのX線曝露を低下させ、画像取得時間を短縮する。同様に、トモシンセシスX線システム1aは、追加の各投影像が最終画像となるように、トモシンセシス走査の各投影について正しい線量で追加の投影像を撮影する前に、低線量でパイロット投影像を取得するように制御され得る。この場合、スカウトショットが撮影される角度、例えば0°は、追加の投影像のほとんどが撮影される角度とは異なるため、スカウトショットの像/パイロット投影像は、追加の投影像と合成されない場合がある。代わりに、追加の各投影像が、対応するトモシンセシス投影の最終画像となるように、追加の各投影像について適切な残り曝露時間が、単一のスカウトショット/パイロット投影から決定されてよい。
【0051】
前述の説明を考慮すれば、本明細書に記載された例示的実施形態は、口内画像の曝露時間を自動的に決定するためのシステム、方法、装置、およびコンピュータプログラム製品を提供することが理解できる。次に、期待される患者特性、公称線源特性、期待されるX線濾過、期待される線源-検出器間隔、期待されるX線センサ特性等に基づいて、口内X線曝露設定を所定のリストから選択する手動方法が排除され得るため、すべての患者の適用線量の低減および曝露時間の自動決定は、臨床医ユーザの診断および処置計画タスクを単純化し得る。
【0052】
当業者なら理解するように、本説明を考慮すれば、本明細書に記載された例示的態様は、単一のコンピュータを使用して、または様々な上記の機能を行うように制御論理で各々プログラムされた複数のコンピュータを含むコンピュータシステムを使用して、実装され得る。
【0053】
上記の様々な実施形態は、限定ではなく例として提示されている。本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および細部に様々な変更(例えば、異なるハードウェア、通信プロトコル等)を加えることができることが当業者には明らかであろう。したがって、本開示は、上記の例示的実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の請求の範囲およびそれらの均等物に従ってのみ定められるべきである。
【0054】
加えて、本明細書に記載された機能性を強調する添付図面は、具体例として提示されることを理解されたい。本開示のアーキテクチャは、十分に融通性があり、構成可能であり、ゆえに、図面に示した以外の方法で利用および工夫され得る。
【0055】
さらに、本明細書に記載された例示的実施形態は、口内X線および口内トモシンセシスX線イメージングに限定されない。本明細書に記載された例示的実施形態は、他の解剖学的領域の走査を行うために使用され得る。
【0056】
さらに、要約の目的は、米国特許商標庁ならびに特許用語または法律用語および/または専門用語に精通しない一般公衆、特に、当該技術分野の科学者、エンジニア、および医師が、本明細書で開示された技術的主題の性質および本質を大まかな閲覧から迅速に見極めることができるようにすることである。要約は、本開示の範囲を多少なりとも限定するものとなることを意図していない。特許請求の範囲に列挙されたプロセスは、提示した順序で行われる必要はないことも理解される。