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特許7317023新規抗HLA-A2抗体、およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】新規抗HLA-A2抗体、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20230721BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230721BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230721BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20230721BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230721BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230721BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230721BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230721BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230721BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C07K14/725
C07K19/00
C12N5/10
C12N5/0783
A61K39/395 N
A61K35/17
A61P37/06
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020537814
(86)(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 CA2018051174
(87)【国際公開番号】W WO2019056106
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】62/560,841
(32)【優先日】2017-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/691,027
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】300066874
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・ブリティッシュ・コロンビア
(73)【特許権者】
【識別番号】520097010
【氏名又は名称】サンガモ セラピューティクス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,リ
(72)【発明者】
【氏名】アベル,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】レヴィングス,メーガン
(72)【発明者】
【氏名】ドーソン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ラマルシュ,キャロライン
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/020922(WO,A1)
【文献】特表2020-537537(JP,A)
【文献】J. Clin. Invest.,2016年,Vol. 126, No. 4,p. 1413-1424
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00 - 16/46
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト化抗HLA-A2抗体またはその抗原結合断片であって、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、
VH領域のアミノ酸配列が配列番号9を含み、VL領域のアミノ酸配列が配列番号13を含む、
ヒト化抗HLA-A2抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体が、全抗体もしくは抗原結合断片、一本鎖抗体、二量体一本鎖抗体、Fv、scFv、Fab、F(ab)’、脱フコシル化抗体、または二重特異性抗体である、請求項1に記載のヒト化抗HLA-A2抗体または抗原結合断片。
【請求項3】
scFvである、請求項1~2のいずれか1項に記載のヒト化抗HLA-A2抗体または抗原結合断片。
【請求項4】
配列番号72の配列を含むscFvである、請求項1~3のいずれか1項に記載のヒト化抗HLA-A2抗体または抗原結合断片。
【請求項5】
(a)請求項1~4のいずれか1項に記載のヒト化抗HLA-A2抗体または抗原結合断片を含む細胞外ドメイン、
(b)膜貫通ドメイン、および
(c)細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメイン
を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項6】
前記ヒト化抗HLA-A2抗体または抗原結合断片が、配列番号72のアミノ酸配列を含むscFvである、請求項5に記載のCAR。
【請求項7】
HLA-A*02:01に特異的に結合する、請求項5または6に記載のCAR。
【請求項8】
前記膜貫通ドメインは、CD8の膜貫通ドメインであり、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BBの共刺激ドメインおよびCD3ゼータの一次シグナル伝達ドメインを含む、請求項5~7のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項9】
請求項5~8のいずれか1項に記載のCARをコードする、核酸分子。
【請求項10】
請求項5~8のいずれか1項に記載のCARまたは請求項9に記載の核酸分子を含む、免疫細胞。
【請求項11】
調節性T細胞である、請求項10に記載の免疫細胞。
【請求項12】
請求項10または11に記載の免疫細胞と薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項13】
それを必要とする対象において免疫寛容を誘導するための使用のための、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記免疫寛容が、移植された臓器または組織に対する寛容である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
それを必要とする対象において臓器もしくは組織移植拒絶反応または移植片対宿主病(GVHD)を治療するための使用のための、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項16】
それを必要とする対象において免疫寛容を誘導するための、またはそれを必要とする対象において臓器もしくは組織移植拒絶反応または移植片対宿主病(GVHD)を治療するための、少なくとも1つの免疫抑制剤と請求項10または11に記載の免疫細胞との組み合わせを含む医薬組成物。
【請求項17】
請求項10または11に記載の免疫細胞または請求項12に記載の医薬組成物を第1の部分に含み、少なくとも1つの免疫抑制剤を第2の部分に含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HLA-A2結合分子、特にヒト化抗HLA-A2抗体に関する。本発明は、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)などの、HLA-A2結合分子を含む組換え分子にさらに関する。本発明の別の目的は、操作された免疫細胞、例えばCARを含む調節性T細胞、および治療法におけるその使用である。
【背景技術】
【0002】
クラスI HLA抗原は、すべての有核細胞に発現する多型タンパク質であり、移植における免疫認識の重要な標的である。実際、HLAクラスI特異的T細胞および/または抗体の発生は、同種移植の急性および慢性拒絶反応の主要な危険因子であり、事前に形成された抗ドナーHLAクラスI抗体の存在は、超急性拒絶反応を引き起こし得る。したがって、HLAクラスIタンパク質に対する免疫応答を制御する方法を見出すことは、移植における大きい進歩となる。
【0003】
古典的なHLAクラスI分子は多形性であり、感染からの進化の圧力に応答して進化した多くの異なる対立遺伝子によってコードされている。古典的なHLAクラスIタンパク質をコードする3つの遺伝子座があり、これらは、A、B、C遺伝子座と呼ばれている。HLA-A遺伝子座内では、対立遺伝子のHLA-A2ファミリーは、最大でかつ最も多様なファミリーであり、少なくとも31の異なるHLA-A2対立遺伝子がヒトに存在することがわかっている。興味深いことに、他の多くのHLA対立遺伝子ファミリーとは異なり、HLA-A2は、すべての民族グループで頻出し、白人の50%およびアフリカ系アメリカ人の35%に見出される。多くのHLA-A2対立遺伝子は、1~9個のアミノ酸のみが異なっており、多型の大部分はペプチド結合溝の周りに集中している。HLA-A2対立遺伝子は、2つの主要なグループにサブグループ化される:これらは、A*0201またはA*0205からの対立遺伝子間変換事象を介して派生したものである。
【0004】
HLAタンパク質に対する不要な免疫を制御する方法としてT調節(Treg)細胞を用いる養子免疫療法、および移植拒絶反応を引き起こす他の抗原は、同種移植拒絶反応および移植片対宿主病(GVHD)の有望な治療法である。同種造血幹細胞移植(HSCT)後の移植片対宿主病(GVHD)の予防においてポリクローナルTreg細胞移植を使用することが報告されている。1型糖尿病のc-ペプチドレベルの維持においてTreg細胞導入を使用することも報告されている。しかし、特に、そのような細胞療法のためのポリクローナルTreg細胞の使用に関連する一般化された免疫抑制の一時的なリスクがあり得ることが報告されている。
【0005】
動物研究からのデータは、Treg細胞を用いる細胞治療の効力および特異性が、抗原特異的細胞を使用することにより大幅に強化され得ることを示している。例えば、自己免疫のモデルでは、抗原特異的Treg細胞は、疾患の軽減において、ポリクローナルTreg細胞よりも優れている。膵臓リンパ節から分離された、または膵島抗原でパルスされたTreg細胞は、ポリクローナルTreg細胞よりも、1型糖尿病の予防または治療に大いに優れており、自己抗原特異的トランスジェニックT細胞受容体(TCR)を発現するTreg細胞は、ポリクローナルTreg細胞よりも、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)のモデルで中枢神経系の炎症を抑制する点で優れている。同様に、in vitroでの同種抗原刺激による拡張によって富化されたか、またはTCR導入遺伝子を発現するように操作された同種抗原特異的Treg細胞は、臓器および組織移植片の拒絶反応を予防する際に、ポリクローナルTreg細胞よりも効果的である。同種抗原により拡張されたTreg細胞がGVHDを効果的に予防し、かつ抗原特異的Treg細胞のin vivo誘導がGVHDなしに造血同種移植片の受け入れを促進するというエビデンスがいくつかある。ヒト化マウスモデルは同様の結果を示している。同種抗原により拡張されたヒトTreg細胞は、ポリクローナルTreg細胞よりも、皮膚移植片拒絶反応のより強力な抑制因子である。
【0006】
過剰発現するトランスジェニックTCRまたは抗原特異的T細胞を富化するための抗原刺激による拡張への代替的アプローチは、キメラ抗原受容体(CAR)の使用である。細胞ベースの養子免疫療法では、患者から単離された免疫細胞を改変して、細胞が、その後患者に戻された後に新しい治療機能を実行できるようにする合成タンパク質を発現させることができる。こうした合成タンパク質の例は、CARである。現在使用されているCARの例は、細胞外認識ドメイン(例えば、抗原結合ドメイン)、膜貫通ドメイン、および1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインの融合物である。抗原の結合時に、CARの細胞内シグナル伝達部分が、免疫細胞中で活性化関連応答を開始し得る。
【0007】
本発明は、HLA-A2を特異的に結合するCARを発現する免疫細胞、特に免疫調節細胞、およびその治療的使用に関する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33、A34およびそれらの任意の組み合わせからなる群、好ましくは、A25、A29、A30、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有するヒト化抗HLA-A2抗体であって、
-重鎖の可変領域は、以下のCDR:
VH-CDR1:SYHIQ(配列番号1)またはGYTFTSY(配列番号4)、
VH-CDR2:WIYPGDGSTQYNEKFKG(配列番号2)またはYPGDGS(配列番号5)、
VH-CDR3:EGTYYAMDY(配列番号3)、
または、配列番号1~5と少なくとも60%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する任意のCDR
のうちの少なくとも1つを含み、かつ/または
-軽鎖の可変領域は、以下のCDR:
VL-CDR1:RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号6)、
VL-CDR2:KVSNRFS(配列番号7)、
VL-CDR3:FQGSHVPRT(配列番号8)、
または、配列番号6~8と少なくとも60%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する任意のCDR
のうちの少なくとも1つを含む、
ヒト化抗HLA-A2抗体に関する。
【0009】
一実施形態では、重鎖の可変領域は、請求項1で定義されたCDRのうちの少なくとも1つを含み、軽鎖の可変領域は、請求項1で定義されたCDRのうちの少なくとも1つを含む。
【0010】
一実施形態では、
-重鎖の可変領域は、以下のCDR:SYHIQ(配列番号1)、WIYPGDGSTQYNEKFKG(配列番号2)およびEGTYYAMDY(配列番号3)、もしくはGYTFTSY(配列番号4)、YPGDGS(配列番号5)およびEGTYYAMDY(配列番号3)、または配列番号1~5と少なくとも60%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する任意のCDR、を含み、
-軽鎖の可変領域は、以下のCDR:RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号6)、KVSNRFS(配列番号7)およびFQGSHVPRT(配列番号8)、または配列番号6~8と少なくとも60%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する任意のCDR、を含む。
【0011】
一実施形態では、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号9であるか、または配列番号9と少なくとも60%の同一性を共有する任意のアミノ酸配列である。
【0012】
一実施形態では、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号10であるか、または配列番号10と少なくとも60%の同一性を共有する任意のアミノ酸配列であり、ここで、XはVまたはIであり、XはTまたはSであり、XはLまたはSまたはAであり、XはSまたはTであり、XはPまたはSであり、XはTまたはSであり、XはLまたはPであり、XはEまたはDであり、XはPまたはRであり、X10はAまたはVであり、X11はSまたはTであり、X12はLまたはQであり、X13はSまたはAであり、X14はVまたはIであり、X15はKまたはTであり、X16はVまたはLであり、X17はAまたはPであり、X18はLまたはFであり、X19はGまたはAである。
【0013】
一実施形態では、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号11、配列番号12および配列番号13、または配列番号11~13と少なくとも60%の同一性を共有する任意のアミノ酸配列を含む群から選択される。
【0014】
一実施形態では、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号9または配列番号9と少なくとも60%の同一性を共有する任意のアミノ酸配列であり、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号10であり、ここで、XはVまたはIであり、XはTまたはSであり、XはLまたはSまたはAであり、XはSまたはTであり、XはPまたはSであり、XはTまたはSであり、XはLまたはPであり、XはEまたはDであり、XはPまたはRであり、X10はAまたはVであり、X11はSまたはTであり、X12はLまたはQであり、X13はSまたはAであり、X14はVまたはIであり、X15はKまたはTであり、X16はVまたはLであり、X17はAまたはPであり、X18はLまたはFであり、およびX19はGまたはAであり、好ましくは、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号11、配列番号12および配列番号13、または前記配列番号10~13と少なくとも60%の同一性を共有する任意のアミノ酸配列を含む群から選択される。
【0015】
一実施形態では、抗体は、全抗体、単鎖抗体、二量体単鎖抗体、Fv、scFv、Fab、F(ab)’2、脱フコシル化抗体、二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディのほか、ユニボディ、ドメイン抗体、およびナノボディからなる群から選択される抗体断片、またはアフィボディ、アフィリン、アフィチン、アドネクチン、アトリマー、エバシン、DARPin、アンチカリン、アビマー、フィノマー、バーサボディ、もしくはデュオカリンからなる群から選択される抗体模倣物である。
【0016】
別の実施形態では、抗体は、全抗体、単鎖抗体、二量体単鎖抗体、Fv、scFv、Fab、F(ab)’2、脱フコシル化抗体、二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディであるか、ユニボディ、ドメイン抗体、およびナノボディからなる群から選択される抗体断片、またはアフィボディ、アルファボディ、アルマジロリピートタンパク質ベースの足場、ノッティン、kunitzドメインペプチド、アフィリン、アフィチン、アドネクチン、アトリマー、エバシン、DARPin、アンチカリン、アビマー、フィノマー、バーサボディ、もしくはデュオカリンからなる群から選択される抗体模倣物である。
【0017】
別の実施形態では、抗体は、scFvであり、好ましくは、配列番号70~72または74~76の配列を有するscFvである。
【0018】
本発明はさらに、以下を含むキメラ抗原受容体(CAR)に関する:
-上記のヒト化抗HLA-A2抗体を含む細胞外ドメイン、
-膜貫通ドメイン、および
-細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメイン。
【0019】
本発明の別の目的は、上記のCARをコードする核酸配列である。
【0020】
本発明の別の目的は、上記のCARまたは上記の核酸配列を含む免疫細胞であり、この免疫細胞は好ましくは調節性T細胞である。
【0021】
本発明はさらに、上記の免疫細胞を含む組成物に関し、好ましくは、組成物は医薬組成物であり、医薬的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0022】
本発明はさらに、それを必要とする対象において免疫寛容を誘導する際に使用するための本明細書に記載の免疫細胞に関し、寛容は、好ましくは、移植された臓器または組織に対する寛容である。
【0023】
本発明はさらに、臓器または組織移植拒絶反応または移植片対宿主病(GVHD)を治療する際に使用するための、本明細書に記載の免疫細胞に関する。
【0024】
一実施形態では、対象は、免疫抑制剤をさらに受ける。
【0025】
本発明はさらに、それを必要とする対象において免疫寛容を誘導するための、またはそれを必要とする対象において臓器もしくは組織移植拒絶もしくは移植片対宿主病(GVHD)を治療するための、本発明に記載の免疫細胞と、少なくとも1つの免疫抑制剤との組み合わせに関する。
【0026】
本発明はさらに、第1の部分に、本発明に記載される免疫細胞および/またはこうした免疫細胞を作製するための試薬(例えば、本開示の抗HLA-A抗体またはCARをコードする核酸またはベクター)を含み、第2の部分に、少なくとも1つの免疫抑制剤を含む、キットに関する。
【0027】
本発明はさらに、それを必要とする対象において免疫寛容を誘導するための方法に関し、この方法は、本発明による免疫細胞を対象に投与することを含み、好ましくは寛容は、移植された臓器または組織に対する寛容である。
【0028】
本発明はさらに、それを必要とする対象における臓器または組織移植拒絶反応または移植片対宿主病(GVHD)を治療するための方法に関し、この方法は、本発明に記載の免疫細胞を対象に投与することを含む。
【0029】
一実施形態では、本発明の方法は、少なくとも1つの免疫抑制剤を対象に投与することをさらに含む。
【発明を実施するための形態】
【0030】
定義
本発明において、以下の用語は以下の意味を有する。
【0031】
本発明の文脈において、一般的に存在する核酸塩基について以下の略語を使用する。「A」はアデニンを指し、「C」はシトシンを指し、「G」はグアニンを指し、「T」はチミンを指し、「U」はウラシルを指す。
【0032】
「a」および「an」という用語は、冠詞の文法上の対象の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例として、「an element(エレメント)」は1つのエレメントまたは複数のエレメントを意味する。
【0033】
量、時間的持続時間などの測定可能な値に言及するときの「約」という用語は、こうした変動が、開示された方法を実行するのに適切であるように、指定された値の±20%、場合によっては±10%、または場合によっては±5%、または場合によっては±1%、または場合によっては±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0034】
本明細書で使用される用語「活性化」は、検出可能な細胞応答を誘導するのに十分に刺激されているT細胞(例えば、調節性T細胞)の状態を指す。活性化はまた、例えば、サイトカイン産生または抑制活性などの検出可能なエフェクター機能(複数可)と関連し得る。「活性化された」調節性T細胞は、とりわけ、免疫応答を抑制できる調節性T細胞を指す。
【0035】
「アドネクチン」は、モノボディとしても公知であり、当技術分野において周知されており、抗原に対して高い親和性および特異性で結合するように設計されたタンパク質を指す。これらは、まとめて「抗体模倣物」と呼ばれる分子のクラスに属する。
【0036】
本明細書で使用される細胞透過性アルファボディとも呼ばれ得る「アルファボディ」は、様々な抗原に結合するように操作された小さい10kDaタンパク質を含む一種の抗体模倣物を指す。アルファボディは、細胞内タンパク質標的に到達し結合できる。
【0037】
「アフィボディ」は当技術分野において周知であり、ブドウ球菌プロテインAのIgG結合ドメインの1つに由来する58個のアミノ酸残基のタンパク質ドメインに基づく親和性タンパク質を指す。
【0038】
本明細書で使用される「親和性」という用語は、2つの剤の可逆的結合の平衡定数を指し、解離定数(Kd)として表される。親和性は、無関係なアミノ酸配列に対する抗体の親和性よりも、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、少なくとも100倍、または少なくとも1000倍以上、大きい可能性がある。標的タンパク質に対する抗体の親和性は、例えば、約100ナノモル(nM)~約0.1nM、約100nM~約1ピコモル(pM)、または約100nM~約1フェムトモル(fM)以上であり得る。
【0039】
「アフィリン」は当技術分野で周知であり、選択的に抗原を結合するように設計された人工タンパク質を指す。それらは、抗原への親和性および特異性において抗体に似ているが、それらを一種の抗体模倣物にする構造においては似ていない。
【0040】
「同種異系」という用語は、物質が導入される個体と同じ種の異なる個体に由来する任意の物質を指す。1つ以上の遺伝子座の遺伝子が同一でない場合、2つ以上の個体は互いに同種異系であると言われる。いくつかの態様では、同じ種の個体からの同種異系物質は、遺伝的に十分に異なり抗原的に相互作用し得る。
【0041】
「抗体」および「免疫グロブリン」(Ig)という用語は同義的に使用され、抗原と特異的に結合する免疫グロブリン分子に由来するタンパク質またはポリペプチド配列を指す。抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナル、複数鎖もしくは一本鎖、またはインタクト免疫グロブリンであり得、天然の供給源または組換え供給源に由来し得る。「抗体」という用語はまた、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、およびそれらが所望の生物学的活性を呈する限り、抗体断片を含む。また、抗体は、免疫グロブリン分子の四量体などの免疫グロブリン分子の多量体であり得る。
【0042】
基本的な四鎖抗体ユニットは、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖で構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。任意の脊椎動物種由来のL鎖は、定常ドメイン(CL)のアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別できるタイプの1つに割り当てることができる。それらの重鎖(CH)の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てることができる。免疫グロブリンの5つのクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、それぞれアルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)およびミュー(μ)と呼ばれる重鎖を有する。γおよびαクラスは、CH配列および機能における比較的わずかな差に基づいてサブクラスにさらに細分化され、例えば、ヒトは以下のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2。各L鎖は1つの共有ジスルフィド結合によってH鎖に連結され、2つのH鎖は、H鎖アイソタイプに応じて1つ以上のジスルフィド結合によって互いに連結される。各H鎖およびL鎖には、規則的に間隔をあけた鎖内ジスルフィド橋がある。各H鎖は、N末端に可変ドメイン(VH)を有し、その後に、α鎖およびγ鎖のそれぞれについて3つの定常ドメイン(CH)、ならびにμおよびεアイソタイプについて4つのCHドメインが続く。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(VL)を有し、もう一方の端に定常ドメイン(CL)が続く。VLはVHと整列され、CLは重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列される。特定のアミノ酸残基が、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの間の界面を形成すると考えられている。VHおよびVLを共にペアリングすることにより、単一の抗原結合部位が形成される。IgM抗体は、J鎖と呼ばれる追加のポリペプチドと共に5つの基本的なヘテロ四量体ユニットで構成されているため、10個の抗原結合部位を含み、一方で、分泌されたIgA抗体は重合して、J鎖と共に2~5個の基本的な4鎖ユニットを含む多価の集合体を形成できる。IgGの場合、4鎖ユニットは一般に約150,000ダルトンである。抗体の様々なクラスの構造および特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology、第8版、Daniel P.Stites、Abba I.Terr and Tristram G.Parslow(編)、Appleton&Lange,Norwalk,Conn.、1994年、71頁、および第6章を参照されたい。
【0043】
「抗体断片」という用語は、抗原のエピトープと(例えば、結合、立体障害、安定化/不安定化、空間分布によって)特異的に相互作用する能力を保持する、インタクト抗体の少なくとも一部分、好ましくはインタクト抗体の抗原結合領域または可変領域を指す。抗体断片の例としては、これらに限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、一本鎖抗体分子、特にscFv抗体断片、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、VHおよびCHIドメインで構成されるFd断片、直鎖抗体、単一ドメイン抗体、例えば、sdAb(VLまたはVHのいずれか)、ラクダ科のVHHドメイン、例えば、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片などの抗体断片から形成される多重特異性抗体、および単離されたCDRまたは抗体の他のエピトープ結合断片が挙げられる。抗原結合断片は、単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、ナノボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NARおよびbis-scFvに組み込むこともできる(例えば、Hollinger and Hudson、Nature Biotechnology23:1126-1136、2005年を参照されたい)。抗原結合断片はまた、フィブロネクチンIII型などのポリペプチドに基づく足場に移植することもできる(フィブロネクチンポリペプチドミニボディについて記載している米国特許第6,703,199号を参照されたい)。抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と、容易に結晶化する能力を反映して命名された、残りの「Fc」断片、とを生成する。Fab断片は、L鎖全体とH鎖の可変領域ドメイン(VH)、および1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)で構成される。各Fab断片は、抗原結合に関して一価である、すなわち、それは単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、2価の抗原結合活性を有する2つのジスルフィド連結Fab断片にほぼ対応し、かつ抗原をなおも架橋できる、単一の大きいF(ab’)2断片を生成する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む、CH1ドメインのカルボキシ末端での追加のいくつかの残基を有することによりFab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を担持するFab’の、本明細書における呼称である。F(ab’)抗体断片は元々、これらの間にヒンジシステインを有するFab’断片のペアとして生成された。抗体断片の他の化学的カップリングについても公知である。
【0044】
本明細書で使用される「抗体の機能的断片または類似体」は、全長抗体と共通の定性的生物学的活性を有する化合物である。例えば、抗IgE抗体の機能的断片または類似体は、そのような分子の能力が高親和性受容体FcεRIに結合する能力を有することを妨げるか、または実質的に低減するような様式でIgE免疫グロブリンに結合できるものである。
【0045】
用語「抗体重鎖」は、それらの天然の立体配座で抗体分子に存在する2種類のポリペプチド鎖の大きい方を指し、これは通常、抗体が属するクラスを決定する。
【0046】
用語「抗体軽鎖」は、それらの天然の立体配座で抗体分子に存在する2種類のポリペプチド鎖の小さい方を指し、これは通常、抗体が属するクラスを決定する。カッパ(K)およびラムダ(λ)軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。
【0047】
「アンチカリン」は当技術分野で周知であり、結合特異性がリポカリンに由来する抗体模倣技術を指す。アンチカリンは、デュオカリンと呼ばれる二重標的タンパク質としてフォーマットされてもよい。
【0048】
用語「抗原」または「Ag」は、免疫応答を誘発する分子を指す。この免疫応答は、抗体産生、または特定の免疫学的に適格な細胞の活性化のいずれか、またはその両方を伴い得る。当業者であれば、実質的にすべてのタンパク質またはペプチドを含む、任意の高分子が抗原として役立ち得ることを理解するであろう。さらに、抗原は、組換えまたはゲノムDNAに由来し得る。したがって、当業者は、任意のDNAが、免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含み、このため、その用語が本明細書で使用される「抗原」をコードすることを理解するであろう。さらに、当業者であれば、抗原が遺伝子の全長ヌクレオチド配列によってのみコードされる必要が必ずしもないことを理解するであろう。本発明は、これらに限定されないが、複数の遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を含むこと、およびこれらのヌクレオチド配列は、所望の免疫応答を誘発するポリペプチドをコードする様々な組み合わせで配置されることは、容易に明らかである。さらに、当業者であれば、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要が必ずしもないことを理解するであろう。抗原が合成され得るか、または生体試料から誘導され得るか、またはポリペプチド以外の高分子であり得ることは容易に明らかである。そのような生体試料としては、これらに限定されないが、組織試料、細胞または他の生物学的成分を含む流体を挙げることができる。
【0049】
「抗原提示細胞」または「APC」という用語は、その表面で主要組織適合性複合体(MHC)と複合された外来抗原を提示するアクセサリー細胞(例えば、B細胞、樹状細胞など)などの免疫系細胞を指す。T細胞は、T細胞受容体(TCR)を使用してこれらの複合体を認識し得る。APCは、抗原を処理し、T細胞に提示する。
【0050】
本明細書で使用される「アルマジロリピートタンパク質ベースの足場」は、アルマジロリピートタンパク質に基づく人工ペプチド結合足場に対応するタイプの抗体模倣物を指す。アルマジロリピートタンパク質は、ペプチドまたはタンパク質との相互作用を媒介する約42個のアミノ酸のタンデムアルマジロリピートで構成される、アルマジロドメインを特徴とする。
【0051】
「アトリマー」は、当技術分野で周知であり、それらの生物活性の必須条件として三量体化する、標的タンパク質に対する結合分子を指す。それらは、他の抗体模倣足場と比較して比較的大きい。
【0052】
「自家」という用語は、それが後で再導入される同じ個体に由来する任意の物質を指す。
【0053】
「アビマー」は、当技術分野で周知であり、抗体模倣技術を指す。
【0054】
「DARPin」(設計されたアンキリンリピートタンパク質)は、当技術分野で周知であり、非抗体ポリペプチドの結合能力を活用するために開発された抗体模倣DRP(設計されたリピートタンパク質)技術を指す。
【0055】
本明細書で使用される用語「BB7.2」は、ATCC寄託HB-82として識別されるマウスハイブリドーマを指す。BB7.2ハイブリドーマ細胞は、IgG2bカッパアイソタイプのマウスモノクローナル抗体を分泌し(例えば、BB7.2抗体)、これは、Parham,P.らおよびにHiltonらよって特徴が明らかにされている(Parham,P.ら、1981年、Hiltonら、2013年)。BB7.2抗体は、例えば、Abcam(カタログ参照番号:ab74674)、Thermo Fisher Scientific (カタログ参照番号:17-9876-42)、またはSanta Cruz Biotechnology(カタログ参照番号:sc-32236)より入手可能である。BB7.2抗体の6つの相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列は次のとおりである:
-重鎖CDR1(HCDR1):SYHIQ(配列番号62);
-重鎖CDR2(HCDR2):WIYPGDGSTQYNEKFKG(配列番号63);
-重鎖CDR3(HCDR3):EGTYYAMDY(配列番号64);
-軽鎖CDR1(LCDR1):RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号65)
-軽鎖CDR2(LCDR2):KVSNRFS(配列番号66);
-軽鎖CDR3(LCDR3):FQGSHVPRT(配列番号67)。
【0056】
本明細書で使用される「BB7.2抗体」は、BB7.2によって分泌されるモノクローナル抗体のVH(配列番号9)およびVL(配列番号10)を有する抗体である。BB7.2抗体は、全抗体またはBB7.2によって分泌されるモノクローナル抗体のVHおよびVLを有するscFvなどの、BB7.2によって分泌されるモノクローナル抗体のVHおよびVLを有するその断片であり得る。
【0057】
「結合する」という用語は、例えば、塩橋および水橋などの相互作用を含む、共有結合的、静電的、疎水性、およびイオン的および/または水素結合の相互作用による、2つの分子間の直接の会合を指す。非特異的結合は、10-7M未満の親和性での結合、例えば10-6M、10-5M、10-4Mなどの親和性での結合を指す。
【0058】
本明細書で使用される「5’キャップ」(RNAキャップ、RNA7-メチルグアノシンキャップまたはRNA m7Gキャップとも呼ばれる)は、転写開始直後の真核生物のメッセンジャーRNAの「フロント」または5’末端に付加された改変グアニンヌクレオチドである。5’キャップは、最初に転写されるヌクレオチドに連結される末端基から成る。その存在は、リボソームによる認識およびRNaseからの保護にとって重要である。キャップの付加は転写と連動しており、それぞれ一方が他方に影響を与えるように、共転写的に起こる。転写開始直後に、合成されるmRNAの5’末端は、RNAポリメラーゼと結びついたキャップ合成複合体に結合される。この酵素複合体は、mRNAキャップ形成に必要とされる化学反応を触媒する。合成は、多段階の生化学反応として進行する。キャップ形成部分は、翻訳の安定性または効率などのmRNAの機能を調節するように改変できる。
【0059】
「キメラ抗体」は、抗体分子であり、ここで、(a)定常領域(すなわち、重鎖および/もしくは軽鎖)、またはその一部分は、抗原結合部位(可変領域)が異なるクラスまたは変更されたクラス、エフェクター機能および/もしくは種、またはキメラ抗体に新しい特性を付与する完全に異なる分子、例えば酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物などの定常領域に連結されるように変更、置換、もしくは交換される、または(b)可変領域もしくはその一部分は、異なるもしくは変更された抗原特異性を有する可変領域と変更、置換、もしくは交換される。キメラ抗体としてはまた、霊長類化抗体、特にヒト化抗体が挙げられる。さらに、キメラ抗体は、レシピエント抗体中またはドナー抗体中には見られない残基を含み得る。これらの改変は、抗体の性能をさらに改善するために行われる。さらなる詳細は、Jonesら、Nature 321:522-525(1986年);Riechmannら、Nature 332:323-329(1988年);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992年)を参照されたい(米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984年)を参照されたい)。
【0060】
「キメラ受容体」または「キメラ抗原受容体」または「CAR」という用語は、1つのポリペプチドまたは、典型的には最も単純な実施形態では2つである、ポリペプチドのセットを指し、免疫細胞中にある場合、標的リガンドに対する特異性および細胞内でのシグナル発生を細胞にもたらす。いくつかの実施形態では、ポリペプチドのセットは、互いに隣接している。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、ポリペプチドのセットを含むキメラ融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドのセットとしては、二量体化分子が存在するときに、ポリペプチドを互いに結合させる、例えば、リガンド結合ドメインを細胞内シグナル伝達ドメインに結合させ得る二量体化スイッチが挙げられる。一実施形態では、キメラ受容体は、キメラ受容体融合タンパク質のアミノ末端(N末端)に任意のリーダー配列を含む。一実施形態では、キメラ受容体は、細胞外リガンド結合ドメインのN末端にリーダー配列をさらに含み、リーダー配列は任意により、細胞プロセシング中およびキメラ受容体の細胞膜への局在化中にリガンド結合ドメインから切断される。
【0061】
「保存的配列改変」という用語は、アミノ酸配列を含むタンパク質の生物学的機能に顕著な影響を及ぼさない、または変化させないアミノ酸改変を指す。このような保存的改変としては、アミノ酸の置換、付加および欠失が挙げられる。改変は、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発などの当技術分野で公知の標準的技術によってタンパク質に導入できる。「保存的置換」は、ペプチド化学の当業者がポリペプチドの二次構造およびハイドロパシーの性質が実質的に変化しないと予測するような、類似の特性を有する別のアミノ酸でアミノ酸が置換されるものである。したがって、アミノ酸置換は一般に、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。前述の様々な特徴を考慮に入れる例示的な置換は、当業者に周知であり、アルギニンとリジン、グルタミン酸塩とアスパラギン酸塩;セリンとスレオニン;グルタミンとアスパラギン;バリン、ロイシンおよびイソロイシンを含む。アミノ酸置換はさらに、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質の類似性に基づいて行われ得る。例えば、負に帯電したアミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。正に帯電したアミノ酸としては、リジンおよびアルギニンが挙げられる。類似の親水性値を有する非荷電極性頭部基を有するアミノ酸としては、ロイシン、イソロイシンとバリン;グリシンとアラニン;アスパラギンとグルタミン;およびセリン、スレオニン、フェニルアラニンおよびチロシンが挙げられる。保存的変化を表し得る他のアミノ酸グループとしては、以下が挙げられる:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr、(2)cys、ser、tyr、thr、(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his、および(5)phe、tyr、trp、his。同様の側鎖を有するアミノ酸残基の他のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。したがって、本発明の抗体またはキメラ受容体内の1つ以上のアミノ酸残基を同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置き換えることができ、改変された抗体またはキメラ受容体を、HLA-A2への結合について試験できる。
【0062】
「構成的プロモーター」という用語は、遺伝子産物をコードまたは特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結された場合、遺伝子産物を細胞のほとんどまたはすべての生理学的条件下にて細胞中で産生させる、ヌクレオチド配列を指す。
【0063】
「共刺激分子」という用語は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それにより、これに限定されないが増殖などのT細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族結合パートナーを指す。共刺激分子は、効率的な免疫応答に寄与する抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である。共刺激シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内部分であり得る。共刺激分子は、次のタンパク質ファミリーに代表される:TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、および活性化NK細胞受容体。
【0064】
「細胞傷害性細胞」としては、細胞傷害性CD8T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、および好中球が挙げられ、これらは、細胞傷害性応答を媒介し得る。
【0065】
その用語が本明細書で使用される「由来する」は、第1の分子と第2の分子の間の関係を示す。これは一般に、第1の分子と第2の分子の間の構造的類似性を指し、第2の分子に由来する第1の分子に対するプロセスまたは供給源の制限を暗示することまたは含むことはない。例えば、CD3ゼータ分子に由来する細胞内シグナル伝達ドメインの場合、細胞内シグナル伝達ドメインは、必要な機能、すなわち適切な条件下でシグナルを生成する能力、を有するように、十分なCD3ゼータ構造を保持している。それは、細胞内シグナル伝達ドメインを生成する特定のプロセスに対する制限を暗示することまたは含むことはない。例えば、それは、細胞内シグナル伝達ドメインを提供するために、CD3ゼータ配列で開始し、細胞内シグナル伝達ドメインに到着するために不要な配列を削除しなければならない、または突然変異を課さなければならないことを意味しない。
【0066】
「ダイアボディ」という用語は、Vドメインの鎖内ペアリングではなく鎖間ペアリングが達成されるように、VHドメインとVLドメインの間に短いリンカー(約5~10残基)を含むscFv断片を構築することによって調製され、その結果、二価断片、すなわち2つの抗原結合部位を有する断片をもたらす小さい抗体断片を指す。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVHドメインおよびVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する、2つの「クロスオーバー」scFv断片のヘテロ二量体である。ダイアボディは、例えば、欧州特許第0404097号;国際公開第93/11161号;およびHolligerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993年)により完全に記載されている。
【0067】
「ドメイン抗体」は当業者に周知であり、抗体の重鎖または軽鎖のいずれかの可変領域に対応する、抗体の最小の機能的結合ユニットを指す。
【0068】
用語「コードする」は、定義されたヌクレオチド配列(例えば、rRNA、tRNAおよびmRNA)または定義されたアミノ酸配列のいずれかを有する生物学的プロセスにおける他のポリマーおよび高分子を合成するための鋳型として機能するための、例えば、遺伝子、cDNA、またはmRNAなどの、ポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性およびその結果得られる生物学的性質を指す。したがって、遺伝子、cDNA、またはRNAは、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が、細胞または他の生物学的系においてタンパク質を産生するならば、タンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、かつ通常は配列表に記載されている、コード鎖、および遺伝子またはcDNAを転写するための鋳型として使用される非コード鎖の両方を、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードすると称することができる。特に明記しない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重型であり、かつ同じアミノ酸配列をコードする、すべてのヌクレオチド配列を含む。「タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列」という語句はまた、タンパク質をコードするヌクレオチド配列がいくつかの型においてイントロン(複数可)を含み得る程度に、イントロンを含み得る。
【0069】
「内因性」という用語は、生物、細胞、組織、もしくは系からの、またはそれらの内部で産生された任意の物質を指す。
【0070】
「操作された」または「改変された」という用語は同義的に使用され、トランスフェクト、形質転換または形質導入された細胞を指す。
【0071】
「エバシン」は当技術分野で周知であり、ケモカイン結合タンパク質のクラスを指す。
【0072】
「外因性」という用語は、生物、細胞、組織または系に導入されるか、またはそれらの外で産生される任意の物質を指す。
【0073】
「発現」という用語は、プロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳を指す。
【0074】
「発現ベクター」という用語は、発現されるヌクレオチド配列に作動可能に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現に十分なシス作用性エレメントを含む。発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって、またはin vitro発現系においてもたらされ得る。発現ベクターとしては、これらに限定されないが、コスミド、プラスミド(例えば、裸であるか、またはリポソームに含まれる)および組換えポリヌクレオチドを組み込むウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)など、当技術分野で公知のすべてのものが挙げられる。
【0075】
抗体の「Fc」断片は、ジスルフィドによって共に保持される両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域中の配列によって決定される。この領域は、特定の型の細胞に見られるFc受容体(FcR)によって認識される部分でもある。
【0076】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0077】
「Fv」は、完全な抗原認識および結合部位を含む最小の抗体断片である。この断片は、密接な非共有結合的に会合した1つの重鎖可変領域ドメインおよび1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体から成る。これらの2つのドメインの折り畳みから、6つの超可変ループ(H鎖およびL鎖からそれぞれ3つのループ)が発生し、それらは抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)であっても、結合部位全体よりも低い親和性であるが、抗原を認識し結合する能力を有する。
【0078】
「フィノマー」は当技術分野で周知であり、抗体模倣物のクラスに属するタンパク質を指す。これらは、熱安定性が高く免疫原性が低いため、魅力的な結合分子である。
【0079】
本明細書で使用される用語「移植片対宿主病」または「GVHD」は、遺伝的に異なるヒトから移植された組織を受け取った後の医学的合併症を指す。提供された組織(移植片)中の免疫細胞は、レシピエント(宿主)を異物として認識する。移植された免疫細胞はその後、宿主の体細胞を攻撃する。GVHDは一般的に、幹細胞移植に関連するが、この用語は、他の形態の組織移植片から生じるGVHDを含む。GVHDは、輸血後にも発生し得る。
【0080】
本明細書で使用される「HLA-Aサブタイプ」は、HLA-A遺伝子の対立遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。本明細書で使用される用語「HLA-A*25:01」は、WHO The Nomenclature Committee for Factors of the HLA Systemによって2010年に開発されたHLA命名システムによる「HLA-A*25:01」という名称のHLAタンパク質を指す。用語「HLA-A*29:02」および「HLA-A*30:01」は、それぞれ「HLA-A*29:02」および「HLA-A*30:01」という名称のHLAタンパク質を指す。
【0081】
本明細書で使用される「HLA-A2」という用語は、HLA遺伝子複合体のHLA-A遺伝子座でHLA-A*02対立遺伝子ファミリーによってコードされる、細胞表面タンパク質を含むヒト白血球抗原(HLA)タンパク質を指す。用語「HLA-A2」に包含されるHLAタンパク質は、血清学的試験または遺伝子型分類によりHLA-A*02抗原型に属すると同定されたHLAタンパク質を含む。HLA-A*02抗原型の追加名としては、「HLA-A2」、「HLA-A02」、および「HLA-A*2」が挙げられる。様々な命名システムが開発されており、それらはこの対立遺伝子ファミリーによりコードされるHLAタンパク質を識別しWHO Committee for Factors of the HLA Systemによって2010年に開発されたHLA命名システムを含む。「HLA-A2」という用語は、「HLA-A*02」で始まるこの命名システムによる命名を有する対立遺伝子によってコードされるHLAタンパク質を指し、これらに限定されないが、「HLA-A*02:01」、「HLA-A*02:02」、「HLA-A*02:03」、「HLA-A*02:04」、「HLA-A*02:05」、「HLA-A*02:06」、「HLA-A*02:07」、「HLA-A*02:08」、「HLA-A*02:09」、「HLA-A*02:10」、および「HLA-A*02:11」を含む。対立遺伝子の命名は、イタリック体で表示され得る。「HLA-A*02:」で始まり、2、3、または4桁の数字が続く対立遺伝子の命名は、完全な命名を構成するか、または命名の最初の部分を構成する場合がある。用語「HLA-A2」は、この命名システムに従って「HLA-A*02」で始まる名称で識別されるHLAタンパク質も指し、これらに限定されないが、名称「HLA-A*02:01」、「HLA-A*02:02」、「HLA-A*02:03」、「HLA-A*02:04」、「HLA-A*02:05」、「HLA-A*02:06」、「HLA-A*02:07」、「HLA-A*02:08」、「HLA-A*02:09」、「HLA-A*02:10」および「HLA-A*02:11」を含む。
【0082】
本明細書で使用される「抗HLA-A2抗体」という用語は、HLA-A2に優先的または特異的に結合する抗体を指す。
【0083】
本明細書で使用される用語「HLA-A*03」は、HLA遺伝子複合体のHLA-A遺伝子座でHLA-A*03対立遺伝子ファミリーによってコードされる、細胞表面タンパク質を含むHLAタンパク質を指す。用語「HLA-A*03」に包含されるHLAタンパク質は、血清学的試験または遺伝子型判定によりHLA-A*03抗原型に属すると同定されたHLAタンパク質を含む。HLA-A*03抗原型の追加名としては、「HLA-A03」および「HLA-A3」が挙げられる。用語「HLA-A*03」は、「HLA-A*03」で始まるWHO Committee for Factors of the HLA Systemによって2010年に開発されたHLA命名システムによる命名を有する対立遺伝子によってコードされるHLAタンパク質を指す。
【0084】
本明細書で使用される用語「HLA-A*11」、「HLA-A11」および「A11」はそれぞれ、HLA遺伝子複合体のHLA-A遺伝子座でHLA-A*11対立遺伝子ファミリーによってコードされる、細胞表面タンパク質を含むHLAタンパク質を指す。用語「HLA-A*11」、「HLA-A11」および「A11」に包含されるHLAタンパク質は、血清学的試験または遺伝子型分類によりHLA-A*11抗原型に属すると同定されたHLAタンパク質を含む。HLA-A*11抗原型の追加名としては、「HLA-A11」が挙げられる。「HLA-A*11」、「HLA-A11」、および「A11」という用語は、「HLA-A*11:」で始まるWHO Committee for Factors of the HLA Systemによって2010年に開発されたHLA命名システムによる命名を有する対立遺伝子によってコードされるHLAタンパク質を指す。
【0085】
本明細書で使用される用語「HLA-A*23」、「HLA-A23」および「A23」はそれぞれ、HLA遺伝子複合体のHLA-A遺伝子座でHLA-A*23対立遺伝子ファミリーによってコードされる、細胞表面タンパク質を含むHLAタンパク質を指す。用語「HLA-A*23」、「HLA-A23」および「A23」に包含されるHLAタンパク質は、血清学的試験または遺伝子型分類によりHLA-A*23抗原型に属すると同定されたHLAタンパク質を含む。HLA-A*23抗原型の追加名としては、「HLA-A23」が挙げられる。用語「HLA-A*23」、「HLA-A23」、および「A23」は、「HLA-A*23:」で始まるWHO Committee for Factors of the HLA Systemによって2010年に開発されたHLA命名システムによる命名を有する対立遺伝子によってコードされるHLAタンパク質を指す。
【0086】
本明細書で使用される用語「HLA-A*25」、「HLA-A25」および「A25」はそれぞれ、HLA遺伝子複合体のHLA-A遺伝子座でHLA-A*25対立遺伝子ファミリーによってコードされる、細胞表面タンパク質を含むHLAタンパク質を指す。用語「HLA-A*25」、「HLA-A25」および「A25」に包含されるHLAタンパク質は、血清学的試験または遺伝子型分類によりHLA-A*25抗原型に属すると同定されたHLAタンパク質を含む。HLA-A*25抗原型の追加名としては、「HLA-A25」が挙げられる。用語「HLA-A*25」、「HLA-A25」、および「A25」は、「HLA-A*25:」で始まるWHO Committee for Factors of the HLA Systemによって2010年に開発されたHLA命名システムによる命名を有する対立遺伝子によってコードされるHLAタンパク質を指す。
【0087】
本明細書で使用される用語「HLA-A*26」、「HLA-A26」および「A26」はそれぞれ、HLA遺伝子複合体のHLA-A遺伝子座でHLA-A*26対立遺伝子ファミリーによってコードされる、細胞表面タンパク質を含むHLAタンパク質を指す。用語「HLA-A*26」、「HLA-A26」および「A26」に包含されるHLAタンパク質は、血清学的試験または遺伝子型分類によりHLA-A*26抗原型に属すると同定されたHLAタンパク質を含む。HLA-A*26抗原型の追加名としては、「HLA-A26」が挙げられる。用語「HLA-A*26」、「HLA-A26」、および「A26」は、「HLA-A*26:」で始まるWHO Committee for Factors of the HLA Systemによって2010年に開発されたHLA命名システムによる命名を有する対立遺伝子によってコードされるHLAタンパク質を指す。
【0088】
本明細書で使用される用語「HLA-A*29」、「HLA-A29」および「A29」はそれぞれ、HLA遺伝子複合体のHLA-A遺伝子座でHLA-A*29対立遺伝子ファミリーによってコードされる、細胞表面タンパク質を含むHLAタンパク質を指す。用語「HLA-A*29」、「HLA-A29」および「A29」に包含されるHLAタンパク質は、血清学的試験または遺伝子型分類によりHLA-A*29抗原型に属すると同定されたHLAタンパク質を含む。HLA-A*29抗原型の追加名としては、「HLA-A29」が挙げられる。用語「HLA-A*29」、「HLA-A29」、および「A29」は、「HLA-A*29:」で始まるWHO Committee for Factors of the HLA Systemによって2010年に開発されたHLA命名システムによる命名を有する対立遺伝子によってコードされるHLAタンパク質を指す。
【0089】
本明細書で使用される用語「HLA-A*30」、「HLA-A30」および「A30」はそれぞれ、HLA遺伝子複合体のHLA-A遺伝子座でHLA-A*30対立遺伝子ファミリーによってコードされる、細胞表面タンパク質を含むHLAタンパク質を指す。用語「HLA-A*30」、「HLA-A30」および「A30」に包含されるHLAタンパク質は、血清学的試験または遺伝子型分類によりHLA-A*30抗原型に属すると同定されたHLAタンパク質を含む。HLA-A*30抗原型の追加名としては、「HLA-A30」が挙げられる。用語「HLA-A*30」、「HLA-A30」、および「A30」は、「HLA-A*30:」で始まるWHO Committee for Factors of the HLA Systemによって2010年に開発されたHLA命名システムによる命名を有する対立遺伝子によってコードされるHLAタンパク質を指す。
【0090】
本明細書で使用される用語「HLA-A*31」、「HLA-A31」および「A31」はそれぞれ、HLA遺伝子複合体のHLA-A遺伝子座でHLA-A*31対立遺伝子ファミリーによってコードされる、細胞表面タンパク質を含むHLAタンパク質を指す。用語「HLA-A*31」、「HLA-A31」および「A31」に包含されるHLAタンパク質は、血清学的試験または遺伝子型分類によりHLA-A*31抗原型に属すると同定されたHLAタンパク質を含む。HLA-A*31抗原型の追加名としては、「HLA-A31」が挙げられる。用語「HLA-A*31」、「HLA-A31」、および「A31」は、「HLA-A*31:」で始まるWHO Committee for Factors of the HLA Systemによって2010年に開発されたHLA命名システムによる命名を有する対立遺伝子によってコードされるHLAタンパク質を指す。
【0091】
本明細書で使用される用語「HLA-A*33」、「HLA-A33」および「A33」はそれぞれ、HLA遺伝子複合体のHLA-A遺伝子座でHLA-A*33対立遺伝子ファミリーによってコードされる、細胞表面タンパク質を含むHLAタンパク質を指す。用語「HLA-A*33」、「HLA-A33」および「A33」に包含されるHLAタンパク質は、血清学的試験または遺伝子型分類によりHLA-A*33抗原型に属すると同定されたHLAタンパク質を含む。HLA-A*33抗原型の追加名としては、「HLA-A33」が挙げられる。用語「HLA-A*33」、「HLA-A33」、および「A33」は、「HLA-A*33:」で始まるWHO Committee for Factors of the HLA Systemによって2010年に開発されたHLA命名システムによる命名を有する対立遺伝子によってコードされるHLAタンパク質を指す。
【0092】
本明細書で使用される用語「HLA-A*34」、「HLA-A34」および「A34」はそれぞれ、HLA遺伝子複合体のHLA-A遺伝子座でHLA-A*34対立遺伝子ファミリーによってコードされる、細胞表面タンパク質を含むHLAタンパク質を指す。用語「HLA-A*34」、「HLA-A34」および「A34」に包含されるHLAタンパク質は、血清学的試験または遺伝子型分類によりHLA-A*34抗原型に属すると同定されたHLAタンパク質を含む。HLA-A*34抗原型の追加名としては、「HLA-A34」が挙げられる。用語「HLA-A*34」、「HLA-A34」、および「A34」は、「HLA-A*34:」で始まるWHO Committee for Factors of the HLA Systemによって2010年に開発されたHLA命名システムによる命名を有する対立遺伝子によってコードされるHLAタンパク質を指す。
【0093】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそれらの断片(例えば、Fv、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または抗体の他の抗原結合配列)である。ほとんどの場合、ヒト化抗体およびその抗体断片は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基で置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体または抗体断片)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体/抗体断片は、レシピエント抗体にも、インポートされたCDRまたはフレームワーク配列にも見られない残基を含み得る。こうした抗体は、結合領域が由来する非ヒト抗体の結合特異性を維持するが非ヒト抗体に対する免疫反応を回避するように設計される。これらの改変により、抗体または抗体断片の性能をさらに改善し、最適化できる。一般に、ヒト化抗体またはその抗体断片は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインを実質的にすべて含み、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、かつFR領域のすべてまたはかなりの部分が、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体または抗体断片は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含んでもよい。さらなる詳細については、Jonesら、Nature,321:522-525、1986年;Reichmannら、Nature,332:323-329,1988年;Presta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593-596,1992年を参照されたい。
【0094】
「完全ヒト」は、例えば、分子全体がヒト起源であるか、または抗体もしくは免疫グロブリンのヒト型と同一のアミノ酸配列からなる、抗体もしくは抗体断片などの免疫グロブリンを指す。そのような抗体は、抗原チャレンジに応答して特定のヒト抗体を産生するように操作されたトランスジェニックマウスまたは他の動物から得ることができる(例えば、Greenら、(1994年)Nature Genet 7:13;Lonbergら、(1994年)Nature 368:856;Taylorら(1994年)Int Immun 6:579(その教示全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。完全ヒト抗体は、遺伝子または染色体トランスフェクション法、ならびにファージディスプレイ技術によって構築でき、それらはすべて当技術分野で公知である(例えば、McCaffertyら(1990年)Nature 348:552-553を参照されたい)。ヒト抗体は、in vitroで活性化されたB細胞によっても生成される(例えば、米国特許第5,567,610号および同第5,229,275号を参照されたい。これらは参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0095】
本明細書で使用されるとき、「超可変領域」という用語は、抗原結合に関与する、抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は一般に、「相補性決定領域」または「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、Kabat番号付けシステムに従って番号付けされた場合(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda,Md.)VLにおいて約残基24~34(L1)、50~56(L2)および89~97(L3)、およびVHにおいて約31~35(H1)、50~65(H2)、95~102(H3)、および/または「超可変ループ」からのそれらの残基(例えば、Chothia番号付けシステム(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987年)))に従って番号付けされた場合、VLにおいて残基24~34(L1)、50~56(L2)および89~97(L3)、およびVHにおいて26~32(H1)、52~56(H2)、95~15 101(H3)、
;および/または「超可変ループ」からのそれらの残基(例えば、Chothia番号付けシステム(Chothia and Lesk,J.Mol.Acids Res.27:209-212(1999年)、Ruiz,M.ら、Nucl.Acids Res.28:219-221(2000年))に従って番号付けされた場合、VL中の残基24~34(L1)、50~56(L2)および89~97(L3)、およびVH中の26~32(H1)、52~56(H2)、95~15 101(H3)を含む。任意により、抗体は、AHo(Honneger,A.and Plunkthun,A.J.Mol.Biol.309:657-670(2001年))に従って番号付けされた場合、次のポイント、VL中の28、36(L1)、63、74~75(L2)および123(L3)、およびVH中の28、36(H1)、63、74~75(H2)および123(H3)の1つ以上で、対称的な挿入を有する。
【0096】
「同一性」または「相同性」という用語は、2つ以上のポリペプチドの配列間または核酸配列間の関係で使用される場合、2つ以上のアミノ酸残基またはヌクレオチド残基のストリングス間の一致数によって決定される、ポリペプチドまたは核酸配列間の配列関連性の程度を指す。「同一性」は、特定の数学的モデルまたはコンピュータープログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によって指定されるギャップアラインメント(存在する場合)を有する2つ以上のより小さい配列間の同一の一致の割合を測定する。2つの分子の両方のサブユニットの位置が同じモノマーサブユニットで占められる場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれである位置がアデニンで占められる場合、それらはその位置で相同または同一である。2つの配列間の相同性は、一致する位置または相同な位置の数に直接対応し、例えば、2つの配列中の位置の半分(例えば、長さ10のサブユニットのポリマー中の5つの位置)が相同である場合、2つの配列は50%相同であり、位置の90%(例えば、10個のうちの9個)が一致しているか、または相同である場合、2つの配列は90%相同である。関連するポリペプチドまたは核酸配列の同一性は、既知の方法により容易に計算できる。こうした方法は、これらに限定されないが、以下に記載されている;Computational Molecular Biology、Lesk,A. M.,編、Oxford University Press、New York、1988年;Biocomputing:Informatics and Genome Projects、Smith、D.W.,編、Academic Press、New York、1993年;Computer Analysis of Sequence Data,Part1、Griffin、A.M.、and Griffin,H.G.,編、Humana Press, New 10 Jersey、1994年;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press、1987年;Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,編、M.Stockton Press,New York,1991年;およびCarilloら、SIAM J.Applied Math.48、1073(1988年)。同一性を決定するための好ましい方法は、試験された配列間で最大の一致を与えるように設計される。同一性を決定する方法は、公的に入手可能なコンピュータープログラムに記載されている。2つの配列間の同一性を決定するための好ましいコンピュータープログラム方法としては、以下を含むGCGプログラムパッケージが挙げられる;GAP(Devereuxら、Nucl.Acid.Res.\2,387(1984年);Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,Wis.)、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschulら、J.MoI.Biol.215、403-410(1990年))。BLASTXプログラムは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)および他のソース(BLAST Manual、Altschulら、NCB/NLM/NIH Bethesda、Md.20894;Altschulら、上記)から公的に入手可能である。よく知られているSmith Watermanアルゴリズムを使用して同一性を決定することもできる。
【0097】
本明細書で使用される用語「免疫細胞」は一般に、骨髄で産生された造血幹細胞(HSC)に由来する白血球(white blood cell)(白血球(leukocyte))を含む。免疫細胞の例としては、これらに限定されないが、リンパ球(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞)および骨髄由来細胞(好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ、樹状細胞)が挙げられる。
【0098】
本明細書で使用される用語「免疫エフェクター細胞」は、特定の免疫応答を開始できる形態である、免疫系の細胞を指す。
【0099】
本明細書で使用される用語「免疫応答」は、T細胞媒介性および/またはB細胞媒介性免疫応答を含む。例示的な免疫応答としては、T細胞応答、例えば、サイトカイン産生および細胞毒性が挙げられる。さらに、免疫応答という用語は、T細胞活性化、例えば抗体産生(体液性応答)およびサイトカイン応答性細胞、例えばマクロファージの活性化によって間接的に影響を受ける免疫応答を含む。免疫応答に関与する免疫細胞としては、リンパ球が挙げられ、例えば、B細胞およびT細胞(CD4、CD8、Th1、Th2細胞);抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージ、Bリンパ球、ランゲルハンス細胞などの専門的抗原提示細胞、ケラチノサイト、内皮細胞、星状細胞、線維芽細胞、オリゴデンドロサイトなどの非専門的抗原提示細胞;ナチュラルキラー細胞;マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球、顆粒球などの骨髄細胞が挙げられる。
【0100】
本明細書で使用される用語「免疫順応」は、レシピエント中に臓器または組織移植に特異的な抗体が存在するにもかかわらず、臓器または組織移植が正常に機能する移植レシピエントの状態を指す。
【0101】
本明細書で使用される用語「免疫学的寛容」または「免疫寛容」は、未処置の対象と比較して、処置された対象のある割合について実施される方法を指しここで:a)特定の免疫学的応答のレベルが低下される(抗原特異的エフェクターTリンパ球、Bリンパ球、抗体、またはそれらの同等物により少なくとも一部には媒介されると考えられる)、b)特定の免疫学的応答の開始または進行が遅延している、またはc)特定の免疫学的応答が開始または進行するリスクが低下される。「特定の」免疫学的寛容または免疫寛容は、他の抗原と比較して特定の抗原に対して免疫学的寛容または免疫寛容が優先的に引き起こされる場合に発生する。
【0102】
用語「誘導性プロモーター」は、遺伝子産物をコードするかまたは特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結された場合、実質的に、プロモーターに対応する誘導因子が細胞に存在する場合にのみ、遺伝子産物を細胞中で産生させるヌクレオチド配列を指す。
【0103】
本明細書で使用される「説明資料」は、本発明の組成物および方法の有用性を伝えるために使用できる、刊行物、記録、図表、または他の任意の表現媒体を含む。本発明のキットの説明資料は、例えば、本発明の抗体、細胞、および/または組成物を含む容器に貼付され得るか、または本発明の抗体、細胞および/または組成物を含む容器と一緒に出荷され得る。あるいは、説明資料は、この説明資料および抗体、細胞および/または組成物がレシピエントによって協力的に使用されることを意図して、容器とは別に出荷されてもよい。
【0104】
「インタクトな」抗体は、抗原結合部位、およびCL、および少なくとも重鎖定常ドメイン、CH1、CH2およびCH3を含むものである。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列多様体であり得る。
【0105】
本明細書で使用される用語「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、分子の細胞内部分を指す。細胞内シグナル伝達ドメインは、キメラ受容体を含む細胞の免疫機能を促進するシグナルを生成する。キメラ受容体-T細胞における免疫機能の例としては、サイトカインの分泌を含む、細胞溶解活性、抑制活性およびヘルパー活性を挙げることができる。
【0106】
本明細書で使用される「in vitro転写されたRNA」は、in vitroで合成されたRNA、好ましくはmRNAを指す。一般に、in vitro転写されたRNAは、in vitro転写ベクターから生成される。In vitro転写ベクターは、in vitro転写されたRNAを生成するために使用される鋳型を含む。
【0107】
「単離された」という用語は、天然の状態から改変されたか、除去されたことを意味する。例えば、生存している動物において天然に存在する核酸またはペプチドは単離されていないが、自然状態の共存物質から部分的または完全に分離された同じ核酸またはペプチドは単離されている。単離された核酸またはペプチドは、実質的に精製された形態で存在し得るか、または例えば宿主細胞などの非天然環境に存在し得る。典型的には、単離された核酸またはペプチドの調製物は、少なくとも約80%純粋であるか、少なくとも約85%純粋であるか、少なくとも約90%純粋であるか、少なくとも約95%純粋であるか、95%を超えて純粋であるか、96%を超えて純粋であるか、97%を超えて純粋であるか、98%を超えて純粋であるか、99%を超えて純粋である核酸またはペプチドを含む。
【0108】
「単離された抗体」は、その自然環境の成分から分離および/または回収されたものである。その自然環境の混入成分は、抗体の診断的使用または治療的使用を妨害し得る物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性成分を含み得る。好ましい実施形態では、抗体は、(1)Lowry法によって決定されたとき、95重量%超の抗体、最も好ましくは99重量%超の抗体まで、(2)スピニングカップシーケンサーの使用により、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3)還元または非還元条件下で、かつクーマシーブルーまたは好ましくは銀染色を使用して、SDS-PAGEにより示されるように均質になるまで、精製される。単離された抗体は、組換え細胞内のin situの抗体を含む。なぜならその抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないためである。しかし、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップにより調製される。
【0109】
「単離された核酸」または「単離された核酸配列」は、他のゲノムDNA配列、ならびに天然の配列に天然に付随するリボソームおよびポリメラーゼなどのタンパク質または複合体から実質的に分離された核酸である。この用語は、その天然の環境から取り除かれた核酸配列を包含し、組換えまたはクローン化されたDNA単離物および化学的に合成された類似体または異種系により生物学的に合成された類似体を含む。実質的に純粋な核酸は、単離された形態の核酸を含む。当然のことながら、これは元々単離された核酸を指し、後に手動で単離された核酸に追加された遺伝子または配列を除外するものではない。
【0110】
「単離されたポリペプチド」は、その自然環境の成分から同定および分離および/または回収されたものである。好ましい実施形態では、単離されたポリペプチドは、(1)Lowry法によって決定されたとき、95重量%超の抗体、最も好ましくは99重量%超の抗体まで、(2)スピニングカップシーケンサーの使用により、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、(3)還元または非還元条件下で、かつクーマシーブルーまたは好ましくは銀染色を使用して、SDS-PAGEにより示されるように均質になるまで、精製される。単離されたポリペプチドは、組換え細胞内のin situでのポリペプチドを含む。なぜならそのポリペプチドの自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないためである。しかし、通常、単離されたポリペプチドは、少なくとも1つの精製ステップにより調製される。
【0111】
本明細書で使用される「ノッティン」(阻害剤シスチンノットと呼ばれることもある)は、3つのジスルフィド架橋を含むタンパク質構造モチーフを含む抗体模倣物を指す。
【0112】
本明細書で使用される「kunitzドメインペプチド」は、抗体模倣物の一種を指し、プロテアーゼの機能を阻害するタンパク質の活性ドメインに基づく。
【0113】
用語「レンチウイルス」は、レトロウイルス科の属を指す。レンチウイルスは、非分裂細胞に感染し得る点でレトロウイルスの中で独特である。それらはかなりの量の遺伝情報を宿主細胞のDNAに送達できるため、遺伝子送達ベクターの最も効率的な方法の1つである。レンチウイルスの例としては、これらに限定されないが、HIV、SIV、およびFIVが挙げられる。
【0114】
用語「レンチウイルスベクター」は、Miloneら、Mol.Ther.17(8):1453-1464(2009年)に記載されるような、特に自己不活性化レンチウイルスベクターを含む、レンチウイルスゲノムの少なくとも一部分に由来するベクターを指す。診療所で使用され得るレンチウイルスベクターの他の例としては、これらに限定されないが、LENTIVECTOR(登録商標)遺伝子送達技術(Oxford BioMedica)、LENTIMAX(商標)ベクターシステム(Lentigen)などが挙げられる。非臨床型のレンチウイルスベクターも利用可能であり、当業者に知られている。
【0115】
用語「リガンド」は、ペアのリガンド/受容体のメンバーを指し、ペアの他のメンバーに結合する。
【0116】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指す。すなわち、集団に含まれる個々の抗体は、少量で存在し得る天然由来の突然変異体を除いて同一である。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、単一の抗原部位に対して指向される。さらに、異なる決定因子(エピトープ)に対し指向される異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定因子に対し指向される。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の抗体に混入されることなく合成され得るという点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、モノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature、256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ方法論によって調製され得るか、または細菌、真核生物の動物または植物細胞で組換えDNA法を使用して作製されてもよい(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clacksonら、Nature、352:624-628(1991年)およびMarksら、Mol.Biol.,222:581-597(1991年)に記載された技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。本明細書におけるモノクローナル抗体は、「キメラ」抗体を含む。
【0117】
用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態の、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などの、ホスホジエステル結合によって共有結合により連結されたヌクレオチドのポリマーを指す。特に限定しない限り、この用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し天然由来ヌクレオチドと同様の様式で代謝される天然ヌクレオチドの既知の類似体を含む核酸を包含する。特に明記しない限り、特定の核酸配列は、保存的に改変されたその多様体(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP、および相補的配列、ならびに明示的に示された配列も暗示的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(またはすべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することによって達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991年);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985年);およびRossoliniら、Mol.Cell.Probes8:91-98(1994年))。
【0118】
「ナノボディ」は当技術分野で周知であり、天然に存在する重鎖抗体の独特の構造的および機能的特性を含む抗体由来の治療用タンパク質を指す。これらの重鎖抗体は、単一の可変ドメイン(VHH)および2つの定常ドメイン(CH2およびCH3)を含む。
【0119】
「天然配列」ポリヌクレオチドは、自然に由来するポリヌクレオチドと同じヌクレオチド配列を有するものである。「天然配列」ポリペプチドは、天然に由来する(例えば、任意の種に由来する)ポリペプチド(例えば、抗体)と同じアミノ酸配列を有するものである。こうした天然配列のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、自然界から単離でき、または組換えもしくは合成手段によって産生され得る。
【0120】
用語「作動可能に連結された」または「転写制御」は、調節配列と異種核酸配列の間の機能的連結を指し、その結果、異種核酸配列が発現する。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係で配置される場合、第1の核酸配列は、第2の核酸配列と作動可能に連結されている。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を与える場合、プロモーターはコード配列に作動可能に連結されている。作動可能に連結されたDNA配列は、互いに隣接してもよく、かつ例えば、2つのタンパク質コード領域を接合させる必要がある場合、同じリーディングフレーム中にある。
【0121】
本明細書で使用される「機能的寛容(operational tolerance)」という用語は、感染症など他の問題に対応できる免疫担当宿主において、少なくとも1年間任意の免疫抑制薬物療法を行うことなく、急性または慢性拒絶を含む拒絶反応の組織学的兆候がなく安定した移植片機能がある、臨床状況を指す。
【0122】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、同義的に使用され、ペプチド結合によって共有結合により連結されたアミノ酸残基を含む化合物を指す。ポリペプチドは、特定の長さに制限されないが、少なくとも2つのアミノ酸を含む必要があり、ポリペプチドの配列を構成し得るアミノ酸の最大数に制限はない。ペプチド、オリゴペプチド、およびタンパク質は、ポリペプチドの定義内に含まれ、こうした用語は、特に別段の指示がない限り、本明細書では同義的に使用され得る。本明細書で使用されるこの用語は、例えば、当技術分野では一般にペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとも呼ばれる短鎖、ならびに一般に当技術分野でタンパク質と呼ばれる長鎖の両方を指し、多くの種類がある。一実施形態では、本明細書で使用される用語「ペプチド」は、ペプチド結合によって一緒に連結されたアミノ酸の直鎖ポリマーを指し、好ましくは約50個未満のアミノ酸残基の鎖長を有する。「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって一緒に連結された少なくとも50個のアミノ酸の直鎖ポリマーを指す。タンパク質は、1つ以上のペプチドまたはポリペプチド、任意によりグリコシル化された、および任意により非ポリペプチド補因子から形成される機能エンティティを具体的に指す。この用語はまた、ポリペプチドの発現後改変、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化など、ならびに当技術分野で公知の他の改変(天然由来および非天然由来の両方)を指すものではなく、また除外するものでもない。ポリペプチドは、タンパク質全体であってもよいし、その部分配列であってもよい。「ポリペプチド」としては、特に、例えば、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドの多様体、改変ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質などが挙げられる。ポリペプチドとしては、天然ペプチド、組換えペプチド、またはそれらの組み合わせが挙げられる。本発明の文脈で目的の特定のポリペプチドは、CDRを含み抗原を結合できるアミノ酸部分配列である。
【0123】
「薬学的に許容される賦形剤」または「薬学的に許容される担体」という用語は、動物、好ましくはヒトに投与されたときに、有害な、アレルギー性のまたは他の望ましくない反応を生じさせることのない賦形剤を指す。賦形剤としては、任意のすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられる。ヒト投与の場合、調製物は、例えば、FDA当局またはEMAなどの規制当局よって要求される無菌性、発熱性、一般的な安全性および純度の基準を満たす必要がある。
【0124】
本明細書で使用される「ポリ(A)」は、mRNAに接着された一連のアデノシン一リン酸塩である。一過性発現のための構築物の好ましい実施形態では、ポリAは、50~50000アデノシン一リン酸塩であり、好ましくは64以上、より好ましくは100以上、最も好ましくは300以上または400以上のアデノシン一リン酸塩である。ポリ(A)配列は、化学的または酵素的に改変されて、局在性、安定性、または翻訳効率などのmRNAの機能性を調節し得る。
【0125】
本明細書で使用される「ポリアデニル化」は、メッセンジャーRNA分子へのポリアデニル部位またはその改変多様体の共有結合的連結を指す。真核生物では、ほとんどのメッセンジャーRNA(mRNA)分子は3’末端でポリアデニル化されている。3’ポリ(A)テールは、酵素であるポリアデニル酸ポリメラーゼの作用によってプレmRNAに付加されるアデニンヌクレオチドの長い配列(多くの場合、数百個)である。高等真核生物では、特定の配列であるポリアデニル化シグナルを含む転写産物にポリ(A)テールが付加される。ポリ(A)のテールおよびポリ(A)のテールに結合されたタンパク質は、エキソヌクレアーゼによる分解からmRNAを保護する際に役立つ。ポリアデニル化は、転写終結、核からのmRNAのエクスポート、および翻訳にも重要である。ポリアデニル化は、DNAがRNAに転写された直後に核内で生じるが、後に細胞質内でもさらに生じ得る。転写が終了すると、RNAポリメラーゼに関連するエンドヌクレアーゼ複合体の作用により、mRNA鎖が切断される。切断部位は通常、切断部位の近くに塩基配列AAUAAAが存在することにより特徴づけられる。mRNAが切断された後、アデノシン残基が、切断部位の遊離3’末端に付加される。
【0126】
「プロモーター/調節配列」という用語は、ポリヌクレオチド配列の特定の転写を開始するのに必要とされる、細胞の合成機構、または導入された合成機構によって認識される核酸配列(例えば、DNA配列など)を指し、これによって、プロモーター/調節配列に作動可能に連結された遺伝子産物の発現を可能にする。いくつかの例では、この配列はコアプロモーター配列であり得、他の例では、この配列はまた、遺伝子産物の発現に必要とされるエンハンサー配列および他の調節エレメントを含み得る。プロモーター/調節配列は、例えば、組織特異的な様式で遺伝子産物を発現するものであり得る。
【0127】
本明細書で使用される用語「反応性」は、分子と反応する(すなわち、結合する)抗体の能力を指す(例えば、分子に特異的に結合する)。第1の抗体は、第1の抗体が第2の抗体と比較して分子への結合の低下を呈する場合、第2の抗体よりも分子(例えば、HLA分子)に対して「低い反応性」を有する。1つ以上の特定のHLA分子に対する第1の抗体および第2の抗体の反応性を容易に比較するための手法が知られている。手法の例の1つは、実施例に記載されており、ここでは、FlowPRA(登録商標)単一抗原ビーズ(One Lambda)を使用して、特定のHLA分子と反応(または結合)する能力について抗体を調べた。このようなフローサイトメトリー手法は、ハイスループットの抗体反応性分析に適している。
【0128】
用語「組換えタンパク質またはペプチド」は、組換えDNA技術を使用して生成されるタンパク質またはペプチド(例えば、抗体またはCAR)、例えば、バクテリオファージまたは酵母発現系によって発現されるタンパク質またはペプチド(例えば、抗体またはCAR)など、を指す。この用語はまた、タンパク質またはペプチド(例えば、抗体またはCAR)をコードするDNA分子の合成によって生成されるタンパク質またはペプチド(例えば、抗体またはCAR)を意味すると解釈されるべきであり、そのDNA分子は、タンパク質もしくはペプチド(例えば、抗体もしくはCAR)、またはタンパク質もしくはペプチド(例えば、抗体またはCAR)を特定するアミノ酸配列を発現し、DNAまたはアミノ酸配列は、当技術分野で利用可能であり周知されている組換えDNAまたはアミノ酸配列技術を使用して得られる。
【0129】
本明細書で使用される用語「調節性免疫細胞」は、免疫系の活性化を抑制する「調節的な」様式で作用しそれによって免疫系ホメオスタシスおよび自己抗原に対する寛容を維持する、免疫細胞を指す。「調節性免疫細胞」はまた、組織の修復または再生の促進などの臨床状態の改善をもたらす非免疫細胞に影響を及ぼし得る。調節性免疫細胞としては、これらに限定されないが、調節性T細胞、CD4調節性T細胞、CD8調節性T細胞、調節性γδT細胞、調節性DN T細胞、調節性B細胞、調節性NK細胞、調節性マクロファージ、および調節性樹状細胞を挙げることができる。
【0130】
本発明で使用される「調節性Tリンパ球」、「調節性T細胞」、「T調節性細胞」、「Treg細胞」または「Treg」は同義であり、当技術分野で使用されるその標準的な定義を有することが意図される。Treg細胞は、「調節的な」様式で作用して免疫系の活性化を抑制しそれによって免疫系の恒常性および自己抗原への寛容を維持する、T細胞の特殊な亜集団である。Tregは、サプレッサーT細胞と呼ばれることもある。Treg細胞は、常にではないが、多くの場合、フォークヘッドファミリー転写因子Foxp3(フォークヘッドボックスp3)の発現を特徴とする。Treg細胞はまた、CD4またはCD8表面タンパク質を発現し得る。これらの細胞はまた、CD25を表現し得る。本発明で使用されるように、かつ他に特定されない限り、Tregは、胸腺で発生する「天然の」Treg、胸腺の外で起こる(例えば、組織もしくは二次リンパ器官内、または定義された培養条件下での実験室の設定において)分化プロセスを介して生じる、誘導された/適応性の/末梢のTreg、および組換えDNA技術を使用して作製されたTregを含む。天然に存在するTreg細胞(CD4CD25Foxp3)は、胸腺での他のすべてのT細胞と同様に発生する。対照的に、誘導された/適応性の/末梢のTreg細胞(CD4CD25Foxp3Treg、Tr1細胞、Th3細胞など)は胸腺の外側で生じる。Tregを誘導する1つの方法は、Tエフェクター細胞をIL-10またはTGF-βに曝露することによる。T細胞もまた、T細胞の混合集団へのFoxp3遺伝子のトランスフェクションまたは形質導入によってTreg細胞に変換され得る。Foxp3を発現させられるT細胞は、Treg表現型を示し、こうした組換えTregも本明細書では「Treg」と定義する。
【0131】
用語「拒絶反応」は、移植された臓器または組織がレシピエントの身体によって受け入れられない状態を指す。拒絶反応は、移植された臓器または組織を攻撃するレシピエントの免疫システムから生じる。拒絶反応は、移植後数日~数週間(急性)、または移植後数ヶ月~数年(慢性)に発生し得る。
【0132】
「単鎖Fv」または「scFv」という用語は、軽鎖の可変領域(VL)を含む少なくとも1つの抗体断片および重鎖の可変領域(VH)を含む少なくとも1つの抗体断片を含む融合タンパク質を指し、ここで、軽鎖および重鎖可変領域は、単一のポリペプチド鎖へと隣接して連結される。一実施形態では、scFvポリペプチドは、scFvが抗原結合のための所望の構造、例えば合成リンカー、例えば短い可撓性ポリペプチドリンカーを形成できるように、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含む。したがって、scFvは、一本鎖ポリペプチドとして発現でき、かつそれが由来するインタクト抗体の特異性を保持する。特に明記しない限り、本明細書で使用されるscFvは、例えばポリペプチドのN末端およびC末端に関して、いずれかの順序でVLおよびVH可変領域を有し得、scFvはVL-リンカー-VHを含み得るか、またはVH-リンカー-VLを含み得る。
【0133】
本明細書で使用される抗体またはCARは、好ましくは約10-1以上、または約10-1以上、約10-1以上、約10-1以上、または以上10-1、または10-1以上、または1010-1以上の親和性定数Kaを有して、それが検出可能なレベルで抗原と反応する場合、抗原に「免疫特異的」である、「特異的」である、または「特異的に結合」すると言われる。同族の抗原に対する抗体の親和性は、一般的に解離定数Kdとしても表現され、ある実施形態では、抗体が10-4M以下、または約10-5M以下、約10-6M以下、10-7M以下、または10-8M以下、または5.10-9M以下、10-9M以下、または5.10-10M以下、または10-10M以下のKdで結合する場合、抗体は抗原に特異的に結合する。抗体またはCARの親和性は、従来の技術、例えば、Scatchardらによって記載されたもの(Ann.N.Y.Acad.Sci.USA 51:660(1949年))を使用して容易に決定できる。抗体のその抗原、細胞または組織への結合特性は一般に、例えば免疫組織化学(IHC)および/または蛍光活性化細胞分取(FACS)などの免疫蛍光ベースのアッセイを含む、免疫検出法を使用して決定され評価され得る。一実施形態では、「特異的に結合する」という用語は、試料中に存在する結合パートナーを認識し結合するが、試料中の他の分子を実質的に認識しないか結合しない、抗体、CARまたはリガンドを指す。
【0134】
「シグナル伝達経路」という用語は、細胞の一部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝達において役割を果たす、様々なシグナル伝達分子間の生化学的関係を指す。
【0135】
用語「シグナル伝達ドメイン」は、セカンドメッセンジャーを生成すること、またはそのようなメッセンジャーに応答することによりエフェクターとして機能することにより、規定のシグナル伝達経路を介して細胞活動を調節するために、細胞内情報を伝達することにより作用するタンパク質の、機能部分を指す。
【0136】
本明細書で使用される用語「幹細胞」としては一般に、多能性(pluripotent)または多分化能性(multipotent)幹細胞が挙げられる。「幹細胞」としては、これらに限定されないが、胚性幹細胞(ES)、間葉系幹細胞(MSC)、人工多能性幹細胞(iPS)、コミットされた前駆細胞(造血幹細胞(HSC)、骨髄由来細胞など)が挙げられる。
【0137】
用語「刺激」は、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体またはキメラ受容体)とその同族のリガンドの結合によって誘導され、それにより、これらに限定されないが、TCR/CD3複合体を介するシグナル伝達、またはキメラ受容体のシグナル伝達ドメインを介するシグナル伝達などのシグナル伝達事象を媒介する、一次応答を指す。刺激は、特定の分子の変化した発現を媒介し得る。
【0138】
用語「刺激分子」は、免疫細胞シグナル伝達経路の少なくともいくつかの態様では、刺激する様式で免疫細胞の活性化を調節する細胞質シグナル伝達配列(複数)をもたらす免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、またはB細胞)によって発現される分子を指す。一態様では、シグナルは、例えば、TCR/CD3複合体とペプチドが添加されたMHC分子の結合によって開始される一次シグナルであり、それは、これらに限定されないが、増殖、活性化、分化などT細胞応答の媒介をもたらす。刺激する様式で作用する一次細胞質シグナル伝達配列(「一次シグナル伝達ドメイン」とも呼ばれる)は、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフまたはITAMとして公知であるシグナル伝達モチーフを含み得る。
【0139】
用語「対象」は、その中で免疫応答を誘発できる生物を含むことを意図している。一実施形態では、対象は、温血動物、好ましくは哺乳動物(ヒト、家畜動物および農場動物、ならびに動物園動物、競技動物(sports)、またはイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどのペット動物など)であり、より好ましくはヒトである。一実施形態では、対象は、「患者」、すなわち、温血動物、より好ましくはヒトであり得、医療を受けるのを待機しているか、もしくは医療を受けているか、または医療処置の対象であったか、対象であるか、または対象となるか、または標的となる疾患もしくは状態の進展について、監視されている。一実施形態では、対象は成人である(例えば、18歳を超える対象)。別の実施形態では、対象は小児である(例えば、18歳未満の対象)。一実施形態では、対象は男性である。別の実施形態では、対象は女性である。
【0140】
用語「実質的に精製された細胞」は、他の細胞型を本質的に含まない細胞を指す。実質的に精製された細胞はまた、それがその天然に存在する状態で通常関連している他の細胞型から分離されている細胞も指す。一実施形態では、実質的に精製された細胞は、天然に存在する状態で通常関連している他の細胞型が少なくとも約75%ない、80%ない、または85%ない、好ましくは約90%、95%、96%、97%、98%、または99%ない細胞を指す。場合によっては、実質的に精製された細胞の集団は、均質な細胞集団を指す。一実施形態では、実質的に精製された細胞の集団は、少なくとも約75%均一であるか、80%均一であるか、または85%均一であるか、好ましくは約90%、95%、96%、97%、98%、または99%均一である細胞の集団を指す。他の例では、この用語は、それらが自然の状態で自然に関連している細胞から分離された細胞を単に指す。いくつかの態様では、細胞は、in vitroで培養される。他の態様では、細胞は、in vitroで培養されない。
【0141】
用語「T細胞」としては、Tヘルパー細胞(CD4細胞)、CD8T細胞(例えば、細胞傷害性CD8T細胞、調節性CD8T細胞)、T調節性細胞(Treg)、ガンマデルタT細胞、およびダブルネガティブT細胞を含む、CD3を発現するすべての型の免疫細胞が挙げられる。
【0142】
用語「治療的有効量」は、特定の生物学的結果を達成するために有効な、本明細書に記載される免疫細胞または組成物の量を指す。したがって、用語「有効量」または「治療有効量」は、標的に重大な負のまたは有害な副作用を引き起こすことなく、以下を目的とする細胞または組成物のレベルまたは量を意味する;(1)標的とされる疾患または状態の発症を遅延させるか、または予防する;(2)標的とされる疾患もしくは状態の1つ以上の症状の進行、憎悪、もしくは悪化を減速もしくは停止させる;(3)標的とされる疾患もしくは状態の症状の改善をもたらす;(4)標的とされる疾患もしくは状態の重症度もしくは発生率を低下させる;または(5)標的とされる疾患もしくは状態を治癒する。治療的有効量は、予防的(prophylactic)または予防的(preventive)作用のために、標的とされる疾患または状態の発症前に投与され得る。代替的にまたは追加的に、治療的有効量は、治療的作用のために、標的とされる疾患または状態の開始後に投与され得る。
【0143】
「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、それにより外因性核酸が宿主細胞に移入されるかまたは導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞は、外因性核酸でトランスフェクト、形質転換または形質導入された細胞である。細胞は、一次対象細胞およびその子孫を含む。
【0144】
用語「トランスファーベクター」は、単離された核酸を含み、かつ単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用できる、物質の組成物を指す。これらに限定されないが、直鎖ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物に関連するポリヌクレオチド、プラスミド、およびウイルスを含む、多数のベクターが当技術分野で公知である。したがって、用語「トランスファーベクター」は、自律的に複製するプラスミドまたはウイルスを含む。この用語はまた、例えば、ポリリジン化合物、リポソームなど、細胞への核酸の移入を容易にする非プラスミドおよび非ウイルス性化合物をさらに含むと解釈されるべきである。ウイルス移入ベクターの例としては、これらに限定されないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが挙げられる。
【0145】
本明細書で使用される「一過性」は、数時間、数日または数週間の期間の非組み込み導入遺伝子の発現を指し、発現の期間は、宿主細胞でゲノム中に組み込まれるかまたは安定なプラスミドレプリコン内に含まれる場合の遺伝子の発現期間よりも短い。
【0146】
本明細書で使用される「移植」は、個体に導入される細胞、組織、または臓器を指す。移植される材料の供給源は、培養細胞、別の個体からの細胞、または同じ個体からの細胞であり得る(例えば、細胞がin vitroで培養された後)。例示的な臓器移植は、腎臓、肝臓、心臓、肺、および膵臓である。例示的な組織移植は、膵島である。例示的な細胞移植は、同種造血幹細胞移植である。
【0147】
「治療する」または「治療」は、治療的処置および予防的(prophylactic)または予防的(preventative)手段の両方を指し、ここで目的は、標的とする病的状態または障害を予防するか、または減速(軽減)させることである。したがって、一実施形態では、これらの用語は、1つ以上の治療法(例えば、本発明のTreg細胞などの1つ以上の治療薬)の投与から生じる、標的とされる疾患または状態の進行、重症度および/または期間の低減もしくは改善、または標的とされる疾患または状態の1つ以上の症状(好ましくは、1つ以上の識別可能な症状)の改善を指す。特定の実施形態では、「治療する」および「治療」という用語は、標的とされる疾患または状態の少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善を指す。他の実施形態では、用語「治療する」および「治療」は、物理的に、例えば、識別可能な症状の安定化による、または生理学的に、例えば、物理的パラメータの安定化による、またはその両方による、標的とされる疾患または状態の進行の阻害を指す。治療を必要とするものとしては、すでに障害を有するもの、ならびに障害を有しやすいもの、または障害が予防されるものが挙げられる。対象は、本発明による治療量の細胞または組成物を受けた後に、対象が観察可能なおよび/または測定可能な、病原性細胞の数の減少、病原性である細胞の総割合の減少、特定の疾患または状態に関連する症状の1つ以上のある程度の緩和、罹患率および死亡率の低下、および/またはquality of lifeの問題の改善、を示す場合、奏功するように「治療され」ている。奏功した治療および疾患の改善を評価するための上記のパラメータは、医師が精通しているルーチンの手順によって容易に測定可能である。
【0148】
「ユニボディ」は当技術分野で周知であり、IgG4抗体のヒンジ領域を欠く抗体断片を指す。ヒンジ領域の欠失は、従来のIgG4抗体のサイズの本質的に半分でありかつIgG4抗体の二価の結合領域ではなく一価の結合領域を有する分子をもたらす。
【0149】
「可変」という用語は、Vドメインの特定のセグメントが、抗体間で配列が大きく異なるという事実を指す。Vドメインは、抗原結合を媒介し、その特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を定義する。しかし、可変性は、可変ドメインの110~130個のアミノ酸のスパンに均等に分散されていない。その代わりに、V領域は、15~30個のアミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変のストレッチで構成され、それぞれ9~12個のアミノ酸長である「超可変領域」と呼ばれる可変性が非常に高い短い領域で区切られている。ネイティブ重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ4つのFRを含み、大部分がβシート構成を採用し、3つの超可変領域によって接続され、これが、接続する、場合によってはβシート構造の一部を形成するループを形成する。各鎖の超可変領域は、FRにより密接に近接して一緒に、かつ他の鎖の超可変領域と共に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service,National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991年)を参照されたい)。定常ドメインは、抗原への抗体の結合には直接関与しないが、抗体依存性細胞傷害(ADCC)での抗体の関与など、様々なエフェクター機能を呈する。
【0150】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「VH」または「V」と称され得る。軽鎖の可変ドメインは、「VL」または「V」と称され得る。これらのドメインは、一般的に抗体の最も可変な部分であり、抗原結合部位を含む。
【0151】
本明細書で使用される用語ポリヌクレオチド「多様体」は、1つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入において本明細書で具体的に開示されるポリヌクレオチドと典型的に異なるポリヌクレオチドである。こうした多様体は、天然に存在するか、または例えば本発明のポリヌクレオチド配列の1つ以上を改変すること、および本明細書に記載のコードされたポリペプチドの1つ以上の生物活性を評価することによって、および/または当技術分野で周知の複数の技法のいずれかを用いることによって、合成的に生成され得る。本明細書で使用される用語ポリペプチド「多様体」は、1つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入において本明細書で具体的に開示されたポリペプチドと典型的に異なるポリペプチドである。そのような多様体は、天然に存在し得るか、または、例えば、上記のポリペプチド配列の1つ以上を改変すること、および本明細書に記載のポリペプチドの1つ以上の生物活性を評価することによって、および/または当技術分野で周知の複数の技法のいずれかを用いることによって、合成的に生成され得る。改変は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの構造中で行われてよく、かつ望ましい特性を有する多様体または誘導体ポリペプチドをコードする機能性分子を依然として得ることができる。ポリペプチドのアミノ酸配列を変更して、同等の、またはさらには改良された、本発明のポリペプチドの多様体または一部分を作製することが望まれる場合、当業者であれば通常、コードするDNA配列のコドンの1つ以上を変更するであろう。例えば、特定のアミノ酸が、他のポリペプチド(例えば、抗原)または細胞に結合する能力を明らかに失うことなく、タンパク質構造中の他のアミノ酸と置換され得る。そのタンパク質の生物学的機能活性を定義するのはタンパク質の結合能力および性質であるため、特定のアミノ酸配列の置換をタンパク質配列、および、当然のことながら、その基礎となるDNAコード配列において行うことができ、同様の特性を有するタンパク質をそれでも得ることができる。したがって、様々な変更を、本発明のペプチド配列、またはこれらのペプチドをコードする対応するDNA配列において、それらの生物学的有用性または活性を明らかに失うことなく行え得ることが企図される。多くの場合、ポリペプチド多様体は、1つ以上の保存的置換を含む。多様体はまた、あるいは代替的に、非保存的な変更を含む場合がある。好ましい実施形態では、多様体ポリペプチドは、5個以下のアミノ酸の置換、欠失または付加により天然配列とは異なる。多様体はまた(あるいは代替的に)、例えば、ポリペプチドの免疫原性、二次構造およびハイドロパシーの性質に最小限の影響を有するアミノ酸の欠失または付加、によって改変されてもよい。
【0152】
「バーサボディ」は当技術分野で周知であり、別の抗体模倣技術を指す。これらは、15%を超えるシステインを含む3~5kDaの小タンパク質であり、ジスルフィド密度の高い足場を形成し、典型的なタンパク質が有する疎水性コアを置き換える。
【0153】
用語「異種」は、異なる種の個体に由来する任意の物質を指す。用語「異種移植片」は、異なる種の個体に由来する移植片を指す。
【0154】
「ゼータ」または代替的に「ゼータ鎖」、「CD3-ゼータ」または「TCR-ゼータ」という用語は、GenBank Acc番号BAG36664.1、または非ヒト種、例えばマウス、げっ歯類、サル、類人猿などからの同等の残基として提供されるタンパク質として定義される。および「ゼータ刺激ドメイン」または代替的に「CD3ゼータ刺激ドメイン」または「TCR-ゼータ刺激ドメイン」は、T細胞活性化に必要な初期シグナルを機能的に伝達するのに十分である、ゼータ鎖の細胞質ドメイン、またはその機能的誘導体からのアミノ酸残基として定義される。一実施形態では、ゼータの細胞質ドメインは、GenBank Acc BAG36664.1の残基52~164、またはその機能的オルソログである、非ヒト種、例えばマウス、げっ歯類、サル、類人猿などに由来する同等の残基を含む。
【0155】
本発明の第1の目的は、HLA-A2に対する抗体、好ましくはHLA-A2に対するヒト化抗体である。
【0156】
一実施形態では、本発明の抗体は、HLA-A2への結合について、以下を含む抗体と競合する:配列番号62のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号63のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、配列番号64のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、配列番号65のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号66のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および配列番号67のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)。
【0157】
一実施形態では、本発明の抗体は、以下を含む抗体と同じHLA-A2エピトープに結合する:配列番号62のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号63のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、配列番号64のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、配列番号65のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号66のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、配列番号67のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)。
【0158】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と同じHLA-A2エピトープとHLA-A2への結合について競合し、および/またはBB7.2抗体と同じHLA-A2エピトープに結合する。
【0159】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33、A34およびこれらの任意の組み合わせを含む群から選択されるHLA-Aサブタイプに対する低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01、A34:01およびこれらの任意の組み合わせを含む群から選択されるHLA-Aサブタイプに対する低い反応性を有する。
【0160】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33およびA34のうちの1つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01、およびA34:01のうちの1つ以上から選択されるHLA-Aサブタイプに対する低い反応性を有する。
【0161】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33およびA34のうちの2つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01、およびA34:01のうちの2つ以上から選択されるHLA-Aサブタイプに対する低い反応性を有する。
【0162】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33およびA34のうちの3つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01、およびA34:01のうちの3つ以上から選択されるHLA-Aサブタイプに対する低い反応性を有する。
【0163】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33およびA34のうちの4つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01、およびA34:01のうちの4つ以上から選択されるHLA-Aサブタイプに対する低い反応性を有する。
【0164】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33およびA34のうちの5つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01、およびA34:01のうちの5つ以上から選択されるHLA-Aサブタイプに対する低い反応性を有する。
【0165】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33およびA34のうちの6つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01、およびA34:01のうちの6つ以上から選択されるHLA-Aサブタイプに対する低い反応性を有する。
【0166】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33およびA34のうちの7つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01、およびA34:01のうちの7つ以上から選択されるHLA-Aサブタイプに対する低い反応性を有する。
【0167】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33およびA34のうちの8つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01、およびA34:01のうちの8つ以上から選択されるHLA-Aサブタイプに対する低い反応性を有する。
【0168】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33およびA34のうちの9つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01、およびA34:01のうちの9つ以上から選択されるHLA-Aサブタイプに対する低い反応性を有する。
【0169】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33およびA34を含む群から選択されるHLA-Aサブタイプの各々からの低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01、およびA34:01およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるHLA-Aサブタイプの各々からの低い反応性を有する。
【0170】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A25、A26、A30およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A25:01、A29:02、A30:01およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。
【0171】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A25、A29およびA30のうちの1つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A25:01、A29:02およびA30:01のうちの1つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。
【0172】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A25、A29およびA30のうちの2つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A25:01、A29:02およびA30:01のうちの2つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。
【0173】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A25、A29およびA30を含む群から選択されるHLA-Aサブタイプの各々からの低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、A25:01、A29:02およびA30:01を含む群から選択されるHLA-Aサブタイプの各々からの低い反応性を有する。
【0174】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、HLA-A25に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、HLA-A29に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、HLA-A30に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、HLA-A3に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、HLA-A11に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、HLA-A26に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、HLA-A31に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、HLA-A32に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、HLA-A33に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、HLA-A34に対して低い反応性を有する。
【0175】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、HLA-A25:01に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、HLA-A29:02に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、HLA-A30:01に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、HLA-A03:01に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、HLA-A11:01に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、HLA-A26:01に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、HLA-A31:01に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、HLA-A33:01に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、好ましくはBB7.2 scFvと比較して、HLA-A34:01に対して低い反応性を有する。
【0176】
HLA-Aサブタイプに対するHLA-A2抗体の反応性を測定するための方法は当業者に周知であり、これに限定されないが、例えば、ONE LAMBDAによって提供されるFlowPRA Single Antigen Antibodyなどの単一抗原アッセイを含む。
【0177】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、試験Aの条件で測定される場合に抗体BB7.2またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33、A34および任意の組み合わせを含む群から選択されるHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。
【0178】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、試験Aの条件で測定される場合に抗体BB7.2またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、A25、A29、A30、および任意の組み合わせを含む群から選択されるHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。
【0179】
試験A:
抗HLA-A2抗体またはBB7.2抗体を含むCAR、またはBB7.2抗体のVHおよびVL(mA2 CAR)を発現する0.25.10T細胞を、FlowPRA Single Antigen Antibodyビーズパネル(FL1HD01、FL1HD02、FL1HD03、FL1HD04、FL1HD06およびFL1HD08、One Lambda)および固定可能な生存率色素(FVD、ThermoFisher、65-0865-14、eBioscience)と室温で30分間インキュベートする。試料を洗浄し、0.5%ホルムアルデヒドで固定し、フローサイトメトリーで分析する。試料あたり200個の陰性対照ビーズを得る。ビーズのみを陰性対照として使用した。分析のために、死細胞を、最初に固定可能な生存率色素を使用して排除する。死細胞およびダブレットを排除した後、単一の抗原ビーズをゲーティングする。次に、HLAあたりのビーズの数を、それぞれのPE強度ピークによって決定する。データを、各HLAピークにおいて対象となるビーズ数を200で乗算し、試料中の陰性ビーズ数で除算することによって正規化する。各HLAピークについて、対照(非CAR発現細胞)と比較したCAR Tregの相対的結合率を、対照試料中のビーズ数からCAR-Treg中のビーズ数を引き、CAR非発現対照内のビーズの平均数を除算し、100倍することによって求める。
【0180】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、試験Bの条件で測定される場合に抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2のVHおよびVLを含む抗体と比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33、A34および任意の組み合わせを含む群から選択されるHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。
【0181】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、試験Bの条件で測定される場合に抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2のVHおよびVLを含む抗体と比較して、A25、A29、A30、および任意の組み合わせを含む群から選択されるHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。
【0182】
試験B:
抗HLA-A2抗体またはBB7.2抗体またはBB7.2抗体のVHおよびVLまたは細胞表面上の切り詰め型NGFR形質導入マーカー(NGFR)(例えば、本明細書に記載のキメラ抗原受容体の一部として)を発現する0.25.10T細胞を、FlowPRA Single Antigen Antibodyビーズパネル(FL1HD、One Lambda)および固定可能な生存率色素(FVD、65-0865-14、eBioscience)とインキュベートし、0.5%ホルムアルデヒドで固定し、フローサイトメトリーで分析する。分析のために、死細胞を、最初に固定可能な生存率色素を使用して排除する。死細胞およびダブレットを排除した後、単一ビーズをゲーティングする。次に、HLAあたりのビーズの数を、それぞれのPE強度によって決定する。データを、試料中の陰性ビーズ数をTreg-NGFR試料中の陰性ビーズ数で除算し、Treg-NGFR試料中の陰性ビーズ数を乗算することにより正規化する。相対的結合率は、特定のHLAのNGFR試料中のビーズ数から、そのHLAの試料中の正規化されたビーズ数を引いた数を、NGFR試料中のビーズ数で除算し、100倍したものである。
【0183】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、好ましくは試験Aまたは試験Bの条件で測定される場合に、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33、A34を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、BB7.2抗体の1つよりも統計的に低い、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体よりも統計的に低い反応性を有する。
【0184】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、好ましくは試験Aまたは試験Bの条件で測定される場合に、A25、A29、A30を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、BB7.2抗体の1つよりも統計的に低い、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体よりも統計的に低い反応性を有する。
【0185】
一実施形態では、「統計的に低い」という用語は、本発明の抗HLA-A2抗体について測定された反応性(すなわち、例えば、試験Aのまたは試験Bの条件における相対的結合)が、BB7.2抗体についてまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体について測定された反応性より低いことを意味し、ここでは、特に二元配置分散分析(2-way ANOVA)、ダネット事後検定で分析される場合、p値は最大で約0.05、好ましくは最大で約0.01、より好ましくは最大で約0.005、さらにより好ましくは最大で約0.001である。
【0186】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33、A34を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、BB7.2抗体の1つ、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体の1つより低い反応性を有し、好ましくは本発明の抗HLA-A2抗体は、試験Aまたは試験Bの条件で測定される場合に、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33、A34を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、BB7.2抗体の1つ、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体の1つより低い反応性を有し、より好ましくは、本発明の抗HLA-A2抗体について測定される相対的結合は、BB7.2抗体についてまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体について測定される相対的結合の最大で約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、またはそれ未満である。
【0187】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、A25、A29、A30を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、BB7.2抗体の1つ、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体の1つより低い反応性を有し、好ましくは、本発明の抗HLA-A2抗体は、試験Aまたは試験Bの条件で測定される場合に、A25、A29、A30を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、BB7.2抗体の1つ、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体の1つより低い反応性を有し、より好ましくは、本発明の抗HLA-A2抗体について測定される相対的結合は、BB7.2抗体についてまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体について測定される相対的結合の最大で約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、またはそれ未満である。
【0188】
一実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。
【0189】
別の実施形態では、抗体はポリクローナル抗体である。
【0190】
一実施形態では、重鎖の可変領域は、以下のCDR:
VH-CDR1:SYHIQ(配列番号1)、
VH-CDR2:WIYPGDGSTQYNEKFKG(配列番号2)、
VH-CDR3:EGTYYAMDY(配列番号3)
のうちの少なくとも1つを含む。
CDRの番号付けおよび定義は、Kabatの定義による。
【0191】
一実施形態では、重鎖の可変領域は、以下のCDR:
VH-CDR1:GYTFTSY(配列番号4)、
VH-CDR2:YPGDGS(配列番号5)、
VH-CDR3:EGTYYAMDY(配列番号3)のうちの少なくとも1つを含む。
CDRの番号付けおよび定義は、Chothiaの定義による。
【0192】
一実施形態では、軽鎖の可変領域は、以下のCDR:
VL-CDR1:RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号6)、
VL-CDR2:KVSNRFS(配列番号7)、
VL-CDR3:FQGSHVPRT(配列番号8)のうちの少なくとも1つを含む。
CDRの番号付けおよび定義は、KabatまたはChothiaの定義による。
【0193】
本発明の一実施形態では、抗-HLA-A2抗体は、その重鎖中に1つのVH-CDR1(SYHIQ(配列番号1))、1つのVH-CDR2(WIYPGDGSTQYNEKFKG(配列番号2))、および/または1つのVH-CDR3(EGTYYAMDY(配列番号3))を含む。
【0194】
本発明の一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、その重鎖中に3つのCDR:VH-CDR1(SYHIQ(配列番号1))、VH-CDR2(WIYPGDGSTQYNEKFKG(配列番号2))およびVH-CDR3(EGTYYAMDY(配列番号3))を含む。
【0195】
本発明の一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、その重鎖中に1つのVH-CDR1(GYTFTSY(配列番号4))、1つのVH-CDR2(YPGDGS(配列番号5))および/または1つのVH-CDR3(EGTYYAMDY(配列番号3))を含む。
【0196】
本発明の一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、その重鎖中に3つのCDR:VH-CDR1(GYTFTSY(配列番号4))、VH-CDR2(YPGDGS(配列番号5))およびVH-CDR3(EGTYYAMDY(配列番号3))を含む。
【0197】
本発明の一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、その軽鎖中に1つのVL-CDR1(RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号6))、1つのVL-CDR2(KVSNRFS(配列番号7))および/または1つのVL-CDR3(FQGSHVPRT(配列番号8))を含む。
【0198】
本発明の一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、その軽鎖中に3つのCDR:VL-CDR1(RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号6))、VL-CDR2(KVSNRFS(配列番号7))およびVL-CDR3(FQGSHVPRT(配列番号8))を含む。
【0199】
本発明の一実施形態では、抗HLA-A2抗体は以下を含む:
-その重鎖中に、3つのCDR、配列番号1、配列番号2および配列番号3;ならびに
-その軽鎖中に、3つのCDR、配列番号6、配列番号7および配列番号8。
【0200】
本発明の一実施形態では、抗HLA-A2抗体は以下を含む:
-その重鎖中に、3つのCDR、配列番号4、配列番号5および配列番号3;ならびに
-その軽鎖中に、3つのCDR、配列番号6、配列番号7および配列番号8。
【0201】
本発明によれば、重鎖および軽鎖のCDR1、2および3のいずれかは、対応する配列番号1~8に記載される特定のCDRまたはCDRセットと、少なくとも約60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有するアミノ酸配列を有するものとして特徴付けられ得る。
【0202】
本発明の一実施形態では、抗体抗HLA-A2は、配列番号9の配列の重鎖可変領域を含む。
(配列番号9)
QVQLVQSGPEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYHIQWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSTQYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLTSEDTAVYYCAREGTYYAMDYWGQGTSVTVSS
【0203】
本発明の一実施形態では、抗体抗HLA-A2の重鎖可変領域は、配列番号9と少なくとも約60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する配列を有する。
【0204】
本発明の一実施形態では、抗体抗HLA-A2は、配列番号10の配列の軽鎖可変領域を含む。
(配列番号10)
DXVMTQXPXLXVXGX1011ISCRSSQSIVHSNGNTYLEWYX12QKPGQX13PRLLIYKVSNRFSGX14PDRFSGSGSGTDFTLX15ISRX16EX17EDX1819VYYCFQGSHVPRTFGGGTKLEIKR
ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、X19は、GまたはAである。
【0205】
本発明の一実施形態では、抗HLA-A2抗体の軽鎖可変領域は、配列番号10と少なくとも約60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する配列を有する。
【0206】
一実施形態では、軽鎖領域は、配列番号11の配列、または配列番号11と少なくとも約60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する任意の配列を有する。
(配列番号11)
DVVMTQTPLSLPVTLGEPASISCRSSQSIVHSNGNTYLEWYLQKPGQSPRLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYYCFQGSHVPRTFGGGTKLEIKR
【0207】
一実施形態では、軽鎖領域は、配列番号12の配列、または配列番号12と少なくとも約60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する任意の配列を有する。
(配列番号12)
DVVMTQSPSSLSVTLGDRVSISCRSSQSIVHSNGNTYLEWYQQKPGQSPRLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISRVEPEDLGVYYCFQGSHVPRTFGGGTKLEIKR
【0208】
一実施形態では、軽鎖領域は、配列番号13の配列、または配列番号13と少なくとも約60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する任意の配列を有する。
(配列番号13)
DIVMTQSPATLSVSPGERATISCRSSQSIVHSNGNTYLEWYQQKPGQAPRLLIYKVSNRFSGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCFQGSHVPRTFGGGTKLEIKR
【0209】
一実施形態では、本発明のHLA-A2抗体は、配列番号9の配列を有する重鎖可変領域および配列番号10を有する軽鎖可変領域、配列番号9~10と少なくとも約60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する任意の配列を含み、ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、X19は、GまたはAである。
【0210】
一実施形態では、本発明のHLA-A2抗体は、配列番号9の配列を有する重鎖可変領域および配列番号11の配列を有する軽鎖可変領域、または配列番号9および11と少なくとも約60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する任意の配列を含む。
【0211】
一実施形態では、本発明のHLA-A2抗体は、配列番号9の配列を有する重鎖可変領域および配列番号12の配列を有する軽鎖可変領域、または配列番号9および12と少なくとも約60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する任意の配列を含む。
【0212】
一実施形態では、本発明のHLA-A2抗体は、配列番号9の配列を有する重鎖可変領域および配列番号13の配列を有する軽鎖可変領域、または配列番号9および13と少なくとも約60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する任意の配列を含む。
【0213】
本発明によれば、重鎖可変領域または軽鎖可変領域のアミノ酸の1つ、2つ、3つ、4つまたはそれより多くが、異なるアミノ酸によって置換されてもよい。
【0214】
一実施形態では、本発明の抗体において、指定された可変領域およびCDR配列は、保存的配列改変を含み得る。保存的配列改変は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に有意な影響を与えず、またはそれを変更しないアミノ酸改変を指す。このような保存的改変としては、アミノ酸の置換、付加および欠失が挙げられる。改変は、部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発などの当技術分野で公知の標準的な技術によって本発明の抗体に導入できる。
【0215】
本発明の別の目的は、配列番号9の配列の重鎖可変領域をコードする単離された核酸配列である。一実施形態では、核酸配列は、配列番号86である。
(配列番号86)
CAGGTCCAGCTAGTACAAAGCGGCCCTGAAGTAAAGAAACCTGGTGCCTCTGTGAAGGTGAGCTGCAAGGCCAGCGGCTACACCTTCACCAGCTACCACATCCAGTGGGTTCGACAGGCCCCTGGACAGGGACTAGAGTGGATCGGCTGGATCTATCCTGGCGACGGCAGCACCCAGTACAACGAGAAGTTCAAGGGCAGAGTTACCATCACCGCCGACAAGAGCACCAGCACAGCCTATATGGAGCTGAGCAGCCTGACCAGCGAGGACACAGCTGTTTACTATTGTGCCAGAGAGGGCACCTACTACGCAATGGATTATTGGGGCCAGGGGACCAGCGTGACCGTTTCTTCT
【0216】
本発明の別の目的は、配列番号11の配列の軽鎖可変領域をコードする単離された核酸配列である。一実施形態では、核酸配列は、配列番号87である。
(配列番号87)
GATGTTGTAATGACCCAGACACCTCTGAGCCTGCCTGTGACCCTGGGAGAACCAGCATCCATCAGCTGTCGGAGCAGCCAGAGCATCGTTCACAGCAACGGCAACACCTACCTGGAATGGTATCTACAGAAGCCCGGACAGAGCCCCAGGCTGCTGATCTACAAGGTGTCCAACCGCTTCAGTGGTGTGCCCGATAGATTTTCTGGCAGCGGCTCTGGCACCGACTTCACCCTGAAGATCTCCAGAGTGGAAGCCGAGGACCTGGGCGTGTACTACTGCTTCCAAGGCAGCCATGTGCCAAGAACCTTTGGTGGAGGCACAAAGCTGGAAATCAAGCGG
【0217】
本発明の別の目的は、配列番号12の配列の軽鎖可変領域をコードする単離された核酸配列である。一実施形態では、核酸配列は、配列番号88である。
(配列番号88)
GATGTTGTAATGACCCAGAGCCCTAGTAGCCTGTCTGTGACCCTGGGAGATCGAGTATCCATCAGCTGTCGGAGCAGCCAGAGCATCGTTCACAGCAACGGCAACACCTACCTGGAATGGTATCAACAGAAGCCCGGACAGAGCCCCAGGCTGCTGATCTACAAGGTGTCCAACCGCTTCAGTGGTGTGCCCGATAGATTTTCTGGCAGCGGCTCTGGCACCGACTTCACCCTGACGATCTCCAGAGTGGAACCAGAGGACCTGGGCGTGTACTACTGCTTCCAAGGCAGCCATGTGCCAAGAACCTTTGGTGGAGGCACAAAGCTGGAAATCAAGCGG
【0218】
本発明の別の目的は、配列番号13の配列の軽鎖可変領域をコードする単離された核酸配列である。一実施形態では、核酸配列は、配列番号89である。
(配列番号89)
GATATTGTAATGACCCAGAGCCCTGCAACACTGTCTGTGTCCCCTGGAGAACGAGCAACAATCAGCTGTCGGAGCAGCCAGAGCATCGTTCACAGCAACGGCAACACCTACCTGGAATGGTATCAACAGAAGCCCGGACAGGCCCCCAGGCTGCTGATCTACAAGGTGTCCAACCGCTTCAGTGGAATACCCGATAGATTTTCTGGCAGCGGCTCTGGCACCGACTTCACCCTGACGATCTCCAGATTAGAACCAGAGGACTTTGCAGTGTACTACTGCTTCCAAGGCAGCCATGTGCCAAGAACCTTTGGTGGAGGCACAAAGCTGGAAATCAAGCGG
【0219】
本発明の別の目的は、本発明の抗HLA-A2抗体をコードする核酸配列を含む発現ベクターである。
【0220】
本発明の別の目的は、このベクターを含む単離された宿主細胞である。この宿主細胞は、本発明の抗体の組換え産生のために使用され得る。
【0221】
一実施形態では、抗体は、全抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、二量体単鎖抗体、Fv、scFv、Fab、F(ab)’2、脱フコシル化抗体、二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディからなる群から選択される抗体分子である。
【0222】
別の実施形態では、抗体は、ユニボディ、ドメイン抗体、およびナノボディからなる群から選択される抗体断片である。
【0223】
別の実施形態では、抗体は、アフィボディ、アルファボディ、アルマジロリピートタンパク質ベースの足場、ノッティン、kunitzドメインペプチド、アフィリン、アフィチン、アドネクチン、アトリマー、エバシン、DARPin、アンチカリン、アビマー、ファイノマー、バーサボディ、およびデュオカリンからなる群から選択される抗体模倣物である。
【0224】
本発明の抗体の断片および誘導体(これは、他に述べられないか、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、本願で使用される「抗体」という用語に包含される)は、当技術分野で公知の技術によって産生され得る。「断片」は、インタクト抗体の一部分、一般的には抗原結合部位または可変領域、を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、およびFv断片、ダイアボディ、連続したアミノ酸残基の1つの途切れない配列からなる一次構造を有するポリペプチドである任意の抗体断片(本明細書では「単鎖抗体断片」または「単鎖ポリペプチド」と呼ばれる)が挙げられ、これらに限定されないが、(1)単鎖Fv分子、(2)1つの軽鎖可変ドメインのみを含む単鎖ポリペプチド、または軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含み、関連する重鎖部分のないその断片、ならびに(3)1つの重鎖可変領域のみを含む単鎖ポリペプチド、または関連する軽鎖部分のない、重鎖可変領域の3つのCDRを含むその断片;および抗体断片から形成される多重特異性抗体、を含む。本抗体の断片は、標準的な方法を使用して得ることができる。
【0225】
例えば、FabまたはF(ab’)断片は、従来の技術に従って、単離された抗体のプロテアーゼ消化によって生成され得る。免疫反応性断片は、例えば、in vivoでのクリアランスを遅くしより望ましい薬物動態プロファイルを得るために、公知の方法を使用して改変されてよく断片はポリエチレングリコール(PEG)により改変され得ることが理解される。PEGをFab’断片にカップリングする、および部位特異的にコンジュゲートする方法は、例えば、Leongら、Cytokines 16(3):106-119(2001年)およびDelgadoら、Br.J.Cancer 5 73(2):175-182(1996年)に記載されている。これらの開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0226】
一実施形態では、本発明の抗体は、scFvまたはscFab、好ましくはscFvである。
【0227】
一実施形態では、本発明の抗体は、scFvのN末端およびC末端へいずれかの順序で、配列番号9の配列および配列番号10の配列を含むscFvであり、ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、X19は、GまたはAである。好ましくは、本発明の抗体は、scFvのN末端およびC末端にいずれかの順序で、配列番号9の配列および配列番号11、12または13の配列を含む、scFvである。
【0228】
一実施形態では、配列番号9の配列はN末端であり、配列番号10、11、12または13の配列はC末端である。
【0229】
一実施形態では、本発明のscFvは、N末端からC末端へと、配列番号9、任意のリンカー、配列番号10を含み、ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、X19は、GまたはAである(好ましくは、配列番号11~13のうちの1つ)。
【0230】
一実施形態では、本発明のscFvは、N末端からC末端へと、配列番号10(ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、X19は、GまたはAである(好ましくは、配列番号11~13のうちの1つ))、任意のリンカー、配列番号9を含む。
【0231】
一実施形態では、scFvはリンカーを含む。リンカーの例としては、本明細書に記載のGSリンカーが挙げられるが、これに限定されない。一実施形態では、リンカーは、配列GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号18)を含むか、またはそれらからなる。
【0232】
一実施形態では、本発明のscFvは、配列番号69の配列、または配列番号69と少なくとも約95~99%の同一性を有する任意のアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなる。
(配列番号69)
QVQLVQSGPEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYHIQWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSTQYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLTSEDTAVYYCAREGTYYAMDYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDXVMTQXPXLXVXGX1011ISCRSSQSIVHSNGNTYLEWYX12QKPGQX13PRLLIYKVSNRFSGX14PDRFSGSGSGTDFTLX15ISRX16EX17EDX1819VYYCFQGSHVPRTFGGGTKLEIKR
ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、X19は、GまたはAである。配列番号69は、N末端からC末端へと、配列番号9、配列番号18および配列番号10からなる。
【0233】
一実施形態では、本発明のscFvは、配列番号70、71または72の配列、または配列番号70、71または72と少なくとも約95~99%の同一性を有する任意のアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなる。配列番号70~72は、N末端からC末端へと、それぞれ、配列番号9、配列番号18および配列番号11~13からなる。
(配列番号70)
QVQLVQSGPEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYHIQWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSTQYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLTSEDTAVYYCAREGTYYAMDYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDVVMTQTPLSLPVTLGEPASISCRSSQSIVHSNGNTYLEWYLQKPGQSPRLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYYCFQGSHVPRTFGGGTKLEIKR
(配列番号71)
QVQLVQSGPEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYHIQWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSTQYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLTSEDTAVYYCAREGTYYAMDYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDVVMTQSPSSLSVTLGDRVSISCRSSQSIVHSNGNTYLEWYQQKPGQSPRLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISRVEPEDLGVYYCFQGSHVPRTFGGGTKLEIKR
(配列番号72)
QVQLVQSGPEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYHIQWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSTQYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLTSEDTAVYYCAREGTYYAMDYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIVMTQSPATLSVSPGERATISCRSSQSIVHSNGNTYLEWYQQKPGQAPRLLIYKVSNRFSGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCFQGSHVPRTFGGGTKLEIKR
【0234】
一実施形態では、本発明のscFvは、任意のリーダー配列の切断を容易にするために、N末端にS残基をさらに含む。
【0235】
したがって、一実施形態では、本発明のscFvは配列73を有し、ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、X19は、GまたはAである。
【0236】
一実施形態では、本発明のscFvは、配列番号74、75または76の配列を含むか、またはそれからなる。
(配列番号74)
SQVQLVQSGPEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYHIQWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSTQYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLTSEDTAVYYCAREGTYYAMDYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDVVMTQSPSSLSVTLGDRVSISCRSSQSIVHSNGNTYLEWYQQKPGQSPRLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISRVEPEDLGVYYCFQGSHVPRTFGGGTKLEIKR
(配列番号75)
SQVQLVQSGPEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYHIQWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSTQYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLTSEDTAVYYCAREGTYYAMDYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDVVMTQSPSSLSVTLGDRVSISCRSSQSIVHSNGNTYLEWYQQKPGQSPRLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISRVEPEDLGVYYCFQGSHVPRTFGGGTKLEIKR
(配列番号76)
SQVQLVQSGPEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYHIQWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSTQYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLTSEDTAVYYCAREGTYYAMDYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIVMTQSPATLSVSPGERATISCRSSQSIVHSNGNTYLEWYQQKPGQAPRLLIYKVSNRFSGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCFQGSHVPRTFGGGTKLEIKR
【0237】
本発明の別の目的は、本発明の少なくとも1つの抗HLA-A2抗体を含む、少なくとも1つの抗HLA-A2抗体から本質的になる、または少なくとも1つの抗HLA-A2抗体からなる、組成物である。
【0238】
本明細書で使用されるとき、組成物に関して「本質的になる」は、上記の本発明の少なくとも1つの抗HLA-A2抗体が、組成物内で生物学的活性を有する唯一の治療剤または剤であることを意味する。
【0239】
本発明の別の目的は、本発明の少なくとも1つの抗HLA-A2抗体、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【0240】
薬学的に許容される担体の例としては、これらに限定されないが、媒体、溶媒、コーティング、等張剤および吸収遅延剤、添加剤、安定剤、防腐剤、界面活性剤、酵素分解を阻害する物質、アルコール、pH調整剤、抗酸化剤、EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、防腐剤および噴射剤が挙げられる。
【0241】
薬学的に許容される媒体の例としては、これらに限定されないが、水、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、通常生理食塩水または他の生理学的緩衝生理食塩水、またはグリコール、グリセロールなどの他の溶媒、およびオリーブ油などの油、または注射可能な有機エステルが挙げられる。薬学的に許容される媒体はまた、リポソームまたはミセルを含み得る。
【0242】
コーティング材料の例としては、これに限定されないが、レシチンが挙げられる。
【0243】
等張剤の例としては、これらに限定されないが、糖、塩化ナトリウムなどが挙げられる。
【0244】
吸収を遅延させる剤の例としては、これらに限定されないが、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンが挙げられる。
【0245】
添加剤の例としては、これらに限定されないが、マンニトール、デキストラン、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースもしくはデキストランなど)、グリシン、ラクトースもしくはポリビニルピロリドン、または例えば、抗酸化剤もしくは不活性ガスなどの他の添加剤、安定剤またはin vivo投与に好適である組換えタンパク質(例えばヒト血清アルブミン)が挙げられる。
【0246】
好適な安定剤の例としては、これらに限定されないが、スクロース、ゼラチン、ペプトン、NZ-アミンまたはNZ-アミンASなどの消化タンパク質抽出物が挙げられる。
【0247】
これらの組成物中で使用され得る薬学的に許容される担体は、これらに限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸、グリシン、ソルビン酸塩、ソルビン酸カリウムなどの緩衝物質、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質などの塩または電解質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、ウール脂肪をさらに含む。
【0248】
本発明の別の目的は、本明細書中上記に記載されるように、本発明の少なくとも1つの抗HLA-A2抗体を含むか、本発明の少なくとも1つの抗HLA-A2抗体からなるか、または本発明の少なくとも1つの抗HLA-A2抗体から本質的になる、医薬品である。
【0249】
本発明の別の目的は、in vitroまたはin vivoで、試料中の、好ましくは生体試料中のHLA-A2を検出するための、本発明の少なくとも1つの抗HLA-A2抗体の使用である。
【0250】
本発明の抗HLA-A2抗体が使用され得るアッセイの例としては、これらに限定されないが、ELISA、サンドイッチELISA、RIA、FACS、組織免疫組織化学、ウエスタンブロット、および免疫沈降が挙げられる。
【0251】
本発明の別の目的は、試料を本発明の抗HLA-A2抗体と接触させること、およびHLA-A2に結合された抗HLA-A2抗体を検出すること、これにより試料中のHLA-A2の存在を示すことを含む、試料中のHLA-A2を検出するための方法である。
【0252】
本発明の一実施形態では、試料は生体試料である。生体試料の例としては、これらに限定されないが、体液、好ましくは血液、より好ましくは血清、血漿、滑液、気管支肺胞洗浄液、痰、リンパ液、腹水、尿、羊水、腹液、脳脊髄液、胸膜液、心膜液、および肺胞マクロファージ、組織溶解物、および病変組織または移植片から調製された抽出物が挙げられる。
【0253】
本発明の一実施形態では、用語「試料」は、任意の分析の前に個人から採取された試料を意味することを意図する。
【0254】
本発明の一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、検出可能な標識で直接標識され、かつ直接検出され得る。別の実施形態では、本発明のタンパク質は標識されず(かつ第1の抗体/一次抗体と呼ばれる)、抗HLA-A2抗体を結合できる二次抗体または他の分子が標識される。当技術分野で周知であるように、二次抗体は、一次抗体の特定の種およびクラスに特異的に結合できるように選択される。
【0255】
試料中の抗HLA-A2抗体/HLA-A2複合体の存在は、標識された二次抗体の存在を検出することにより、検出でき、かつ測定できる。例えば、一次抗体/抗原複合体を含むウェルから、または複合体を含む膜(ニトロセルロースまたはナイロン膜など)から結合していない二次抗体を洗い流した後、結合した二次抗体を、例えば標識の化学発光に基づいて出現させ、検出することができる。
【0256】
抗HLA-A2抗体または二次抗体の標識としては、これらに限定されないが、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、磁性物質および放射性物質が挙げられる。こうした酵素の例としては、これらに限定されないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。補欠分子族複合体の例としては、これらに限定されないが、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられる。蛍光物質の例としては、これらに限定されないが、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシン(dansyne chlorid)またはフィコエリトリンが挙げられる。発光材料の例としては、これに限定されないが、ルミナールが挙げられる。磁性剤の例としては、ガドリニウムが挙げられる。好適な放射性物質の例としては、125I、131I、35SまたはHが挙げられる。
【0257】
本発明の別の目的は、本発明の少なくとも1つの抗HLA-A2抗体、好ましくはモノクローナル抗HLA-A2抗体を含むキットである。
【0258】
「キット」は、HLA-A2の発現を特異的に検出するための、少なくとも1つの試薬、好ましくは抗体、を含む任意の製品(例えば、パッケージまたは容器)を意図する。
【0259】
キットは、本発明の方法を実施するためのユニットとして促進、配布、または販売されてよい。さらに、キット試薬のいずれかまたはすべてを、外部環境からそれらを保護する容器内で(密閉容器中でなど)提供できる。
【0260】
キットは、キットおよびその使用方法を説明する添付文書も含み得る。
【0261】
サンドイッチELISAを実行するためのキットは一般に、任意により固体支持体(例えば、マイクロタイタープレート)に固定化された捕捉抗体、および検出可能な物質、例えば、HRP、蛍光標識、放射性同位体、β-ガラクトシダーゼ、およびアルカリホスファターゼなどと連結された暴露抗体(revelation antibody)を含む。
【0262】
別の実施形態では、検出可能な物質は、固体支持体(例えば、マイクロタイタープレート)上に固定化される。
【0263】
本発明はさらに、HLA-A2に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)に関する。CARは、標的抗原に対する抗体ベースの特異性を免疫細胞受容体活性化細胞内ドメインと組み合わせるキメラタンパク質分子である。
【0264】
本発明によれば、CARは、1つ以上のポリペプチド中に、(i)細胞外HLA-A2結合ドメインであって、本発明の抗HLA-A2抗体(好ましくは抗HLA-A2 scFv)を含むか、またはそれからなる、細胞外ドメイン、(ii)任意により細胞外ヒンジドメイン、(iii)任意により膜貫通ドメイン、および(iv)細胞内シグナル伝達ドメイン、を含む。一実施形態では、キメラ受容体は、タグおよび/またはリーダー配列をさらに含む。
【0265】
一実施形態では、本発明のCARは、HLA-A2への結合について、以下を含む抗体と競合する:配列番号62のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号63のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、配列番号64のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、配列番号65のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号66のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および配列番号67のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)。
【0266】
一実施形態では、本発明のCARは、以下を含む抗体と同じHLA-A2エピトープに結合する:配列番号62のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号63のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、配列番号64のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、配列番号65のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号66のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、配列番号67のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)。
【0267】
一実施形態では、本発明のCARは、HLA-A2への結合についてBB7.2抗体と同じHLA-A2エピトープと競合し、かつ/またはBB7.2抗体と同じHLA-A2エピトープに結合する。
【0268】
一実施形態では、本発明のCARは、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33、A34およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択されるHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明のCARは、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01、A34:01およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択されるHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。
【0269】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33およびA34の1つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01およびA34:01の1つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、低い反応性を有する。
【0270】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33およびA34の2つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01およびA34:01の2つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、低い反応性を有する。
【0271】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33およびA34の3つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01およびA34:01の3つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、低い反応性を有する。
【0272】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33およびA34の4つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01およびA34:01の4つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、低い反応性を有する。
【0273】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33およびA34の5つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01およびA34:01の5つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、低い反応性を有する。
【0274】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33およびA34の6つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01およびA34:01の6つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、低い反応性を有する。
【0275】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33およびA34の7つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01およびA34:01の7つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、低い反応性を有する。
【0276】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33およびA34の8つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01およびA34:01の8つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、低い反応性を有する。
【0277】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33およびA34の9つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01およびA34:01の9つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、低い反応性を有する。
【0278】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33およびA34を含む群から選択されるHLA-Aサブタイプの各々からの低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03:01、A11:01、A23:01、A25:01、A26:01、A29:02、A30:01、A31:01、A33:01およびA34:01を含む群から選択されるHLA-Aサブタイプの各々からの低い反応性を有する。
【0279】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、好ましくは、BB7.2 scFvと比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、A25、A29、A30およびA34およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択されるHLA-Aサブタイプに対して、低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、抗体BB7.2と比較して、好ましくは、BB7.2 scFvと比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、A25:01、A29:02、A30:01およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択されるHLA-Aサブタイプに対して、低い反応性を有する。
【0280】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A25、A29およびA30の1つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A25:01、A29:02、およびA30:01の1つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。
【0281】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A25、A29およびA30の2つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A25:01、A29:02、およびA30:01の2つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。
【0282】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A25、A29およびA30を含む群から選択されるHLA-Aサブタイプの各々からの低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A25:01、A29:02、およびA30:01を含む群から選択されるHLA-Aサブタイプの各々からの低い反応性を有する。
【0283】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、HLA-A25に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、HLA-A29に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、HLA-A30に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、HLA-A3に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、HLA-A11に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、HLA-A26に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、HLA-A31に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、HLA-A32に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、HLA-A33に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、HLA-A34に対して低い反応性を有する。
【0284】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、HLA-A25:01に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、HLA-A29:02に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、HLA-A30:に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、HLA-A03:01に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、HLA-A11:01に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、HLA-A26:01に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、HLA-A31:01に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、HLA-A33:01に対して低い反応性を有する。一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、BB7.2を含むCARとまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、HLA-A34:01に対して低い反応性を有する。
【0285】
HLA-Aサブタイプに対するCARの反応性を測定するための方法は、当業者に周知であり、これらに限定されないが、例えば、FlowPRA Single Antigen Antibody(ONE LAMBDA)などの、単一抗原アッセイを含む。
【0286】
一実施形態では、本発明のCARは、試験Aの条件で測定される場合に抗体BB7.2を含むCARと比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33、A34および任意の組み合わせを含む群から選択されるHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。
【0287】
一実施形態では、本発明のCARは、試験Aの条件で測定される場合に抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、A25、A29、A30および任意の組み合わせを含む群から選択されるHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。
試験A:
【0288】
抗HLA-A2抗体またはBB7.2抗体を含むCAR、またはBB7.2抗体のVHおよびVL(mA2 CAR)を発現する0.25.10T細胞を、FlowPRA Single Antigen Antibodyビーズパネル(FL1HD01、FL1HD02、FL1HD03、FL1HD04、FL1HD06およびFL1HD08、One Lambda)および固定可能な生存率色素(FVD、ThermoFisher、65-0865-14、eBioscience)と室温で30分間インキュベートする。試料を洗浄し、0.5%ホルムアルデヒドで固定し、フローサイトメトリーで分析する。試料あたり200個の陰性対照ビーズを得る。ビーズのみを陰性対照として使用した。分析のために、死細胞を、最初に固定可能な生存率色素を使用して排除する。死細胞およびダブレットを排除した後、単一の抗原ビーズをゲーティングする。次に、HLAあたりのビーズの数を、それぞれのPE強度ピークによって決定する。データを、各HLAピークにおいて対象のビーズ数を200で乗算し、試料中の陰性ビーズ数で除算することによって正規化する。各HLAピークについて、対照(非CAR発現細胞)と比較したCAR Tregの相対的結合率を、対照試料中のビーズ数からCAR-Treg中のビーズ数を引き、CAR非発現対照中のビーズの平均数を除算し、100倍することによって求める。
【0289】
一実施形態では、本発明のCARは、試験Bの条件で測定される場合に抗体BB7.2を含むCARと比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARと比較して、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33、A34および任意の組み合わせを含む群から選択されるHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。
【0290】
一実施形態では、本発明のCARは、試験Bの条件で測定される場合に抗体BB7.2と比較して、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較して、A25、A29、A30および任意の組み合わせを含む群から選択されるHLA-Aサブタイプに対して低い反応性を有する。
試験B:
【0291】
抗HLA-A2抗体またはBB7.2抗体またはBB7.2抗体のVHおよびVLまたは細胞表面上の切り詰め型NGFR形質導入マーカー(NGFR)(例えば、本明細書に記載のキメラ抗原受容体の一部として)を発現する0.25.10 T細胞を、FlowPRA Single Antigen Antibodyビーズパネル(FL1HD、One Lambda)および固定可能な生存率色素(FVD、65-0865-14、eBioscience)とインキュベートし、0.5%ホルムアルデヒドで固定し、フローサイトメトリーで分析する。分析のために、死細胞を、最初に固定可能な生存率色素を使用して排除する。死細胞およびダブレットを排除した後、単一ビーズをゲーティングする。次に、HLAあたりのビーズの数を、それぞれのPE強度によって決定する。データを、試料中の陰性ビーズ数をTreg-NGFR試料中の陰性ビーズ数で除算し、Treg-NGFR試料中の陰性ビーズ数を乗算することにより正規化する。相対的結合率は、特定のHLAのNGFR試料中のビーズ数から、そのHLAの試料中の正規化されたビーズ数を引いた数を、NGFR試料中のビーズ数で除算し、100倍したものである。
【0292】
一実施形態では、本発明のCARは、好ましくは試験Aまたは試験Bの条件で測定される場合に、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33、A34を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、BB7.2抗体を含むCARの1つまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARの1つより統計的に低い反応性を有する。
【0293】
一実施形態では、本発明のCARは、好ましくは試験Aまたは試験Bの条件で測定される場合に、A25、A29、A30を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、BB7.2抗体の1つまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体の1つより統計的に低い反応性を有する。
【0294】
一実施形態では、「統計的に低い」という用語は、本発明のCARについて測定された反応性(すなわち、例えば、試験Aまたは試験Bの条件における相対的結合)が、BB7.2抗体またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体について測定された反応性より低いことを意味し、特に二元配置分散分析(2-way ANOVA)、事後検定で分析される場合、p値は最大で約0.05、好ましくは最大で約0.01、より好ましくは最大で約0.005、さらにより好ましくは最大で約0.001である。
【0295】
一実施形態では、本発明のCARは、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33、A34を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、BB7.2抗体を含むCARの1つまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARの1つより低い反応性を有し、好ましくは本発明のCARは、試験Aまたは試験Bの条件で測定される場合に、A03、A11、A23、A25、A26、A29、A30、A31、A33、A34を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、BB7.2抗体を含むCARの1つまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARの1つより低い相対的結合を有し、より好ましくは本発明の抗HLA-A2抗体について測定される相対的結合は、BB7.2抗体またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体について測定される相対的結合の最大で約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%またはそれ未満である。
【0296】
一実施形態では、本発明のCARは、A25、A29、A30を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対して、BB7.2抗体を含むCARの1つまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARの1つより低い反応性を有し、好ましくは本発明のCARは、試験Aまたは試験Bの条件で測定される場合に、A25、A29、A30を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプについて、BB7.2抗体を含むCARの1つまたはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCARの1つより低い相対的結合を有し、より好ましくは本発明の抗HLA-A2抗体について測定される相対的結合は、BB7.2抗体またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体について測定される相対的結合の最大で約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%またはそれ未満である。
【0297】
本発明は、上記に記載のCARをコードする核酸配列にさらに関し、核酸配列は、i)HLA-A2結合ドメインの核酸配列(好ましくは、HLA-A2結合ドメインは、抗HLA-A2抗体、好ましくは上記の抗HLA-A2 scFvである)、(ii)任意により、細胞外ヒンジドメインの核酸配列、(iii)任意により、膜貫通ドメインの核酸配列、(iv)細胞内シグナル伝達ドメインの1つ以上の核酸配列(複数可)、を含む。一実施形態では、核酸配列は、タグおよび/またはリーダー配列をコードする配列をさらに含む。
【0298】
一実施形態では、本発明のCARに含まれるHLA-A2結合ドメインは、scFvのN末端およびC末端へいずれかの順序で、配列番号9の配列および配列番号10の配列を含むscFvであり、ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、X19は、GまたはAである。好ましくは、本発明のCARに含まれるHLA-A2結合ドメインは、scFvのN末端およびC末端へいずれかの順序で、配列番号9の配列および配列番号11、12または13の配列を含む、scFvである。
【0299】
一実施形態では、配列番号9の配列はN末端であり、配列番号10、11、12または13の配列はC末端である。
【0300】
一実施形態では、本発明のCARに含まれるHLA-A2結合ドメインは、N末端からC末端へと、配列番号9、任意のリンカー、配列番号10を含み、ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、X19は、GまたはAである(好ましくは、配列番号11~13の1つ)。
【0301】
一実施形態では、本発明のCARに含まれるHLA-A2結合ドメインは、N末端からC末端へと、配列番号10(ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、X19は、GまたはA(好ましくは、配列番号11~13のうちの1つ)である)、任意のリンカー、配列番号9を含む。
【0302】
一実施形態では、本発明のCARに含まれるHLA-A2結合ドメインは、リンカーを含む。リンカーの例としては、本明細書に記載のGSリンカーが挙げられるが、これに限定されない。一実施形態では、リンカーは、配列GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号18)を含むか、またはそれらからなる。
【0303】
一実施形態では、本発明のCARに含まれるHLA-A2結合ドメインは、配列番号69を含むか、またはこれらからなり、ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、およびX19は、GまたはAである。配列番号69は、N末端からC末端へと、配列番号9、配列番号18および配列番号10からなる。
【0304】
一実施形態では、本発明のCARに含まれるHLA-A2結合ドメインは、配列番号70、71もしくは72を含むか、またはこれらからなる。配列番号70~72は、N末端からC末端へと、それぞれ、配列番号9、配列番号18および配列番号11~13からなる。
【0305】
一実施形態では、本発明のCARに含まれるHLA-A2結合ドメインは、任意のリーダー配列の切断を容易にするために、N末端にS残基をさらに含む。
【0306】
したがって、一実施形態では、本発明のCARに含まれるHLA-A2結合ドメインは、配列73を有し、ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、X19は、GまたはAである。
【0307】
一実施形態では、本発明のCARに含まれるHLA-A2結合ドメインは、配列番号74、75もしくは76を含むか、またはこれらからなる。
【0308】
一実施形態では、HLA-A2結合ドメインは、ヒンジドメインによって膜貫通ドメインに接続され得る。
【0309】
一実施形態では、好ましくは2~10個のアミノ酸の範囲の長さを有する短いオリゴまたはポリペプチドリンカーがヒンジドメインを形成し得る。一実施形態では、用語「リンカー」は、柔軟なポリペプチドリンカーを指す。
【0310】
例えば、グリシン-セリンダブレットは、特に好適なヒンジドメイン(GSリンカー)を提供する。一実施形態では、ヒンジドメインは、Gly/Serリンカーである。Gly/Serリンカーの例としては、これらに限定されないが、GSリンカー、G2Sリンカー、G3Sリンカー、G4Sリンカーが挙げられる。
【0311】
Sリンカーの例としては、これらに限定されないが、GGSが挙げられる。
【0312】
G3Sリンカーは、(GGGS)または(配列番号14)nとも称されるアミノ酸配列(Gly-Gly-Gly-Ser)を含み、ここで、nは、1以上の正の整数である(例えば、n=1、n=2、n=3、n=4、n=5、n=6、n=7、n=8、n=9、またはn=10など)。GSリンカーの例としては、これに限定されないがGGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号15)が挙げられる。
【0313】
Sリンカーに例としては、これらに限定されないが、GGGGS(配列番号16)に対応する(GlySer);GGGGSGGGGS(配列番号17)に対応する(GlySer);GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号18)に対応する(GlySer)3;およびGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号19)に対応する(GlySer)が挙げられる。
【0314】
また、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2012/138475号に記載されるヒンジドメインも、本発明の範囲内に含まれる。
【0315】
一実施形態では、ヒンジドメインは、アミノ酸配列AGSSSSGGSTTGGSTT(配列番号20)、アミノ酸配列GTTAASGSSGGSSSGA(配列番号21)、アミノ酸配列SSATATAGTGSSTGST(配列番号22)、および/またはアミノ酸配列TSGSTGTAASSTSTST(配列番号23)を含む。
【0316】
一実施形態では、ヒンジドメインは、GGTGGCGGAGGTTCTGGAGGTGGAGGTTCC(配列番号24)のヌクレオチド配列によってコードされる。
【0317】
別の実施形態では、ヒンジドメインは、KIRRDSS(配列番号25)に対応するKIRDSヒンジである。
【0318】
一実施形態では、ヒンジドメインは、CD8ヒンジ(配列番号26)のアミノ酸配列または配列番号26に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはこれらからなる。一実施形態では、ヒンジドメインは、配列番号27の核酸配列または配列番号27に対して95~99%の同一性を有する核酸配列によってコードされるCD8ヒンジである。
(配列番号26)
TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD
(配列番号27)
ACCACGACGCCAGCGCCGCGACCACCAACACCGGCGCCCACCATCGCGTCGCAGCCCCTGTCCCTGCGCCCAGAGGCGTGCCGGCCAGCGGCGGGGGGCGCAGTGCACACGAGGGGGCTGGACTTCGCCTGTGAT
【0319】
別の実施形態では、ヒンジドメインは、IgG4ヒンジ(配列番号28)のアミノ酸配列または配列番号28に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはこれらからなる。一実施形態では、ヒンジドメインは、配列番号29の核酸配列または配列番号29に対して95~99%の同一性を有する核酸配列によってコードされるIgG4ヒンジである。
(配列番号28)
ESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGKM
(配列番号29)
GAGAGCAAGTACGGCCCTCCCTGCCCCCCTTGCCCTGCCCCCGAGTTCCTGGGCGGACCCAGCGTGTTCCTGTTCCCCCCCAAGCCCAAGGACACCCTGATGATCAGCCGGACCCCCGAGGTGACCTGTGTGGTGGTGGACGTGTCCCAGGAGGACCCCGAGGTCCAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCACAACGCCAAGACCAAGCCCCGGGAGGAGCAGTTCAATAGCACCTACCGGGTGGTGTCCGTGCTGACCGTGCTGCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAATACAAGTGTAAGGTGTCCAACAAGGGCCTGCCCAGCAGCATCGAGAAAACCATCAGCAAGGCCAAGGGCCAGCCTCGGGAGCCCCAGGTGTACACCCTGCCCCCTAGCCAAGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTGTCCCTGACCTGCCTGGTGAAGGGCTTCTACCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAACGGCCAGCCCGAGAACAACTACAAGACCACCCCCCCTGTGCTGGACAGCGACGGCAGCTTCTTCCTGTACAGCCGGCTGACCGTGGACAAGAGCCGGTGGCAGGAGGGCAACGTCTTTAGCTGCTCCGTGATGCACGAGGCCCTGCACAACCACTACACCCAGAAGAGCCTGAGCCTGTCCCTGGGCAAGATG
【0320】
別の実施形態では、ヒンジドメインは、IgDヒンジ(配列番号30)のアミノ酸配列または配列番号30に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはこれらからなる。一実施形態では、ヒンジドメインは、配列番号31の核酸配列または配列番号31に対して95~99%の同一性を有する核酸配列によってコードされるIgDヒンジである。
(配列番号30)
RWPESPKAQASSVPTAQPQAEGSLAKATTAPATTRNTGRGGEEKKKEKEKEEQEERETKTPECPSHTQPLGVYLLTPAVQDLWLRDKATFTCFVVGSDLKDAHLTWEVAGKVPTGGVEEGLLERHSNGSQSQHSRLTLPRSLWNAGTSVTCTLNHPSLPPQRLMALREPAAQAPVKLSLNLLASSDPPEAASWLLCEVSGFSPPNILLMWLEDQREVNTSGFAPARPPPQPGSTTFWAWSVLRVPAPPSPQPATYTCVVSHEDSRTLLNASRSLEVSYVTDH
(配列番号31)
AGGTGGCCCGAAAGTCCCAAGGCCCAGGCATCTAGTGTTCCTACTGCACAGCCCCAGGCAGAAGGCAGCCTAGCCAAAGCTACTACTGCACCTGCCACTACGCGCAATACTGGCCGTGGCGGGGAGGAGAAGAAAAAGGAGAAAGAGAAAGAAGAACAGGAAGAGAGGGAGACCAAGACCCCTGAATGTCCATCCCATACCCAGCCGCTGGGCGTCTATCTCTTGACTCCCGCAGTACAGGACTTGTGGCTTAGAGATAAGGCCACCTTTACATGTTTCGTCGTGGGCTCTGACCTGAAGGATGCCCATTTGACTTGGGAGGTTGCCGGAAAGGTACCCACAGGGGGGGTTGAGGAAGGGTTGCTGGAGCGCCATTCCAATGGCTCTCAGAGCCAGCACTCAAGACTCACCCTTCCGAGATCCCTGTGGAACGCCGGGACCTCTGTCACATGTACTCTAAATCATCCTAGCCTGCCCCCACAGCGTCTGATGGCCCTTAGAGAGCCAGCCGCCCAGGCACCAGTTAAGCTTAGCCTGAATCTGCTCGCCAGTAGTGATCCCCCAGAGGCCGCCAGCTGGCTCTTATGCGAAGTGTCCGGCTTTAGCCCGCCCAACATCTTGCTCATGTGGCTGGAGGACCAGCGAGAAGTGAACACCAGCGGCTTCGCTCCAGCCCGGCCCCCACCCCAGCCGGGTTCTACCACATTCTGGGCCTGGAGTGTCTTAAGGGTCCCAGCACCACCTAGCCCCCAGCCAGCCACATACACCTGTGTTGTGTCCCATGAAGATAGCAGGACCCTGCTAAATGCTTCTAGGAGTCTGGAGGTTTCCTACGTGACTGACCATT
【0321】
別の実施形態では、ヒンジ領域は、CD28ヒンジ(配列番号32)のアミノ酸配列または配列番号32に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはこれらからなる。一実施形態では、ヒンジドメインは、配列番号33の核酸または配列番号33に対して95~99%の同一性を有する核酸配列によってコードされるCD28ヒンジである。
(配列番号32)
IEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKP
(配列番号33)
ATTGAAGTTATGTATCCTCCTCCTTACCTAGACAATGAGAAGAGCAATGGAACCATTATCCATGTGAAAGGGAAACACCTTTGTCCAAGTCCCCTATTTCCCGGACCTTCTAAGCCC
【0322】
本発明のキメラ受容体において使用され得る膜貫通ドメインの例としては、これらに限定されないが、T細胞受容体のアルファ、ベータまたはゼータ鎖の膜貫通ドメイン、CD28、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ゼータ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD1 la、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRFl)、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7R a、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、PD1、ITGAX、CDl1c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CDIOO(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、および/またはNKG2Cの膜貫通ドメインが挙げられる。
【0323】
一実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメインのアミノ酸配列(配列番号34)または配列番号34に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはこれらからなる。別の実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号34のアミノ酸配列の少なくとも1個、2個または3個の改変を有するが、20個、10個または5個以下の改変を有するアミノ酸配列または配列番号34に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
(配列番号34)
IYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYC
【0324】
別の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメインのヌクレオチド配列(配列番号35)、または配列番号35に対して95~99%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。
(配列番号35)
ATCTACATCTGGGCGCCCTTGGCCGGGACTTGTGGGGTCCTTCTCCTGTCACTGGTTATCACCCTTTACTGC
【0325】
別の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインのアミノ酸配列(配列番号36)または配列番号36に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはこれらからなる。一実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号37の核酸配列または配列番号37に対して95~99%の同一性を有する核酸配列によってコードされるCD28膜貫通ドメインである。
(配列番号36)
FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV
(配列番号37)
TTTTGGGTGCTGGTGGTGGTTGGTGGAGTCCTGGCTTGCTATAGCTTGCTAGTAACAGTGGCCTTTATTATTTTCTGGGTG
【0326】
一実施形態では、膜貫通ドメインは組換えであってもよく、その場合これは、バリンまたはロイシンなどの主に疎水性のアミノ酸を含む。
【0327】
CARの細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインは、CARが配置されている免疫細胞(例えば、調節性T細胞)のエフェクター機能の少なくとも1つの活性化に関与する。用語「エフェクター機能」は、免疫細胞の特殊な機能を指す。例えば、調節性T細胞のエフェクター機能は、他の免疫細胞の誘導および/または増殖を抑制することまたはダウンレギュレーションすることを含み得る。さらに、Tregのエフェクター機能は、組織の修復または再生の促進などの臨床状態の改善をもたらす非免疫細胞に対する影響を含み得る。したがって、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能シグナルを伝達し、かつ免疫細胞にその特殊な機能を実行するように指示するタンパク質の一部分を指す。通常は細胞内シグナル伝達ドメイン全体を使用できるが、多くの場合、鎖全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切り詰められた部分が使用される程度について、こうした切断部分は、エフェクター機能シグナルを伝達する限り、インタクト鎖の代わりに使用されてよい。細胞内シグナル伝達ドメインという用語はしたがって、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の切り詰められた部分を含むことを意味する。
【0328】
一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、それが由来する分子、またはその機能的断片もしくは誘導体の、細胞内部分全体、または天然の細胞内シグナル伝達ドメイン全体を含み得る。
【0329】
一実施形態によれば、細胞内シグナル伝達ドメインは、少なくとも1つ(例えば、1つなど)のT細胞一次シグナル伝達ドメイン(またはそれに由来する配列)、および任意によりT細胞共刺激分子の1つ以上の細胞内ドメイン(またはそれら由来の配列(複数可))を含む。
【0330】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体の細胞内シグナル伝達ドメインは、少なくとも1つ(例えば、1つなど)の一次シグナル伝達ドメインからなる。
【0331】
一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞共刺激分子の1つ以上の細胞内ドメイン(複数可)を含む。一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞共刺激分子の1つ以上の細胞内ドメイン(複数可)からなる。
【0332】
別の実施形態では、本発明のキメラ受容体の細胞内シグナル伝達ドメインは、少なくとも1つの共刺激ドメインおよび少なくとも1つ(例えば、1つなど)の一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0333】
別の実施形態では、本発明のキメラ受容体の細胞内シグナル伝達ドメインは、少なくとも2つの共刺激ドメインおよび少なくとも1つ(例えば、1つなど)の一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0334】
本発明の一実施形態では、T細胞一次シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、一般的なFcRガンマ(FCER1G)、FcRベータ(Fcイプシロンリブ)、CD79a、CD79b、FcガンマRIIa、DAP10、およびDAP12、ならびにそれらに由来する配列の群において選択されるタンパク質のシグナル伝達ドメインを含む。
【0335】
一実施形態では、T細胞一次シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータの機能的シグナル伝達ドメインを含むか、またはそれからなる。
【0336】
一実施形態では、T細胞一次シグナル伝達ドメインは、配列番号38、39、40または41のCD3ゼータドメインのアミノ酸配列、または配列番号38~41に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなる。
(配列番号38)
RVKFSRSADAPAYKQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
(配列番号39)
RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
(配列番号40)
RVKFSRSADAPAYKQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
(配列番号41)
RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0337】
別の実施形態では、CD3ゼータ一次シグナル伝達ドメインは、配列番号38~41のアミノ酸配列の少なくとも1個、2個または3個の改変を有するが20個、10個または5個以下の改変を有する、アミノ酸配列、または配列番号38~41に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0338】
したがって、一実施形態では、T細胞一次シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列は、配列番号42もしくは配列番号43のCD3ゼータドメインの核酸配列、または配列番号42もしくは配列番号43に対して95~99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、またはこれらからなる。
(配列番号42)
AGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACAAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGC
(配列番号43)
AGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGC
【0339】
刺激的様式で作用するT細胞一次シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAMS)として公知であるシグナル伝達モチーフを含み得る。
【0340】
本発明で特に有用なITAM含有T細胞一次細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、これらに限定されないが、CD3ゼータ、または一般的なFcRガンマ(FCER1G)、FcガンマRIIa、FcRベータ(FcイプシロンR1b)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD66b、CD79a、CD79b、DAP10、およびDAP12のもの(または由来のもの)が挙げられる。
【0341】
一実施形態では、T細胞一次シグナル伝達ドメインは、改変されたITAMドメイン、例えば、ネイティブITAMドメインと比較して変化した(例えば、増加または減少した)活性を有する突然変異ITAMドメインを含む。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、改変されたITAM含有一次細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、最適化および/または切断されたITAM含有一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、1、2、3、4、またはそれより多いITAMモチーフを含む。
【0342】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体の細胞内シグナル伝達ドメインは、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインと組み合わせたT細胞一次シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ゼータシグナル伝達ドメインなど)を含む。共刺激シグナル伝達ドメイン(複数可)は、共刺激分子の少なくとも1つの細胞内ドメインを含むキメラ受容体の一部分を指す。共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の効率的な応答に必要とされる、抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である。
【0343】
T細胞共刺激分子の細胞内ドメインの例としては、これらに限定されないが、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、MHCクラスI分子、BTLA、Tollリガンド受容体、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS(CD278)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、またはCD83、CDS、ICAM-1、GITR、ARHR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160(BY55)、CD19、CD19a、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2ra、IL6Ra、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、IL-13RA1/RA2、IL-33R(IL1RL1)、IL-10RA/RB、IL-4R、IL-5R(CSF2RB)、IL-21R、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a/CD18、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、ITGB7、NKG2D、NKG2C、CTLA-4(CD152)、CD95、TNFR1(CD120a/TNFRSF1A)、TNFR2(CD120b/TNFRSF1B)、TGFbR1/2/3、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、一般的なガンマ鎖に特異的に結合するリガンド、またはCD83、NKp44、NKp30、NKp46、もしくはNKG2Dと特異的に結合するリガンド、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるタンパク質のシグナルドメインが挙げられる。
【0344】
本発明の一実施形態では、キメラ受容体は、4-1BB、ICOS、CD27、OX40、CD28、CTLA4およびPD-1ならびにそれらの任意の組み合わせを含む群から選択されるT細胞共刺激分子の少なくとも1つの細胞内ドメインを含む。
【0345】
一実施形態では、T細胞共刺激シグナル伝達ドメインは、4-1BB細胞内ドメインのアミノ酸配列(配列番号44)または配列番号44に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなる。別の実施形態では、T細胞共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号44のアミノ酸配列の少なくとも1個、2個または3個の改変を含むが20個、10個または5個以下の改変を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
(配列番号44)
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL
【0346】
一実施形態では、T細胞共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27細胞内ドメインのアミノ酸配列(配列番号45)または配列番号45に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなる。別の実施形態では、T細胞共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号45のアミノ酸配列の少なくとも1個、2個または3個の改変を含むが20個、10個または5個以下の改変を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
(配列番号45)
QRRKYRSNKGESPVEPAEPCRYSCPREEEGSTIPIQEDYRKPEPACSP
【0347】
一実施形態では、T細胞共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28細胞内ドメインのアミノ酸配列(配列番号46)または配列番号46に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなる。別の実施形態では、T細胞共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号46のアミノ酸配列の少なくとも1個、2個または3個の改変を含むが20個、10個または5個以下の改変を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
(配列番号46)
RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS
【0348】
本発明の一実施形態では、キメラ受容体は、好ましくはCD28の細胞内ドメイン、CD27の細胞内ドメインおよび4-1BBの細胞内ドメインから選択されるT細胞共刺激分子の少なくとも2つの細胞内ドメインの組み合わせを含む。
【0349】
一実施形態では、キメラ受容体は、4-1BB細胞内ドメインのアミノ酸配列(配列番号44)または配列番号44に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列、およびCD27細胞内ドメインのアミノ酸配列(配列番号45)または配列番号45に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0350】
別の実施形態では、キメラ受容体は、4-1BB細胞内ドメインのアミノ酸配列(配列番号44)または配列番号44に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列、およびCD28細胞内ドメインのアミノ酸配列(配列番号46)または配列番号46に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0351】
さらに別の実施形態では、キメラ受容体は、CD27細胞内ドメインのアミノ酸配列(配列番号45)または配列番号45に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列、およびCD28細胞内ドメインのアミノ酸配列(配列番号46)または配列番号46に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0352】
一実施形態では、キメラ受容体は、4-1BB細胞内ドメインのアミノ酸配列(配列番号44)または配列番号44に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列、およびCD27細胞内ドメインのアミノ酸配列(配列番号45)または配列番号45に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列、およびCD28細胞内ドメインのアミノ酸配列(配列番号46)または配列番号46に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0353】
したがって、一実施形態では、T細胞共刺激シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列は、4-1BB細胞内ドメインの核酸配列(配列番号47)もしくは配列番号47に対して95~99%の同一性を有する核酸配列、および/またはCD27細胞内ドメインの核酸配列(配列番号48)もしくは配列番号48に対して95~99%の同一性を有する核酸配列、および/またはCD28細胞内ドメインの核酸配列(配列番号49)もしくは配列番号49に対して95~99%の同一性を有する核酸配列を含む。
(配列番号47)
AAACGGGGCAGAAAGAAACTCCTGTATATATTCAAACAACCATTTATGAGACCAGTACAAACTACTCAAGAGGAAGATGGCTGTAGCTGCCGATTTCCAGAAGAAGAAGAAGGAGGATGTGAACTG
(配列番号48)
CAACGAAGGAAATATAGATCAAACAAAGGAGAAAGTCCTGTGGAGCCTGCAGAGCCTTGTCGTTACAGCTGCCCCAGGGAGGAGGAGGGCAGCACCATCCCCATCCAGGAGGATTACCGAAAACCGGAGCCTGCCTGCTCCCCC
(配列番号49)
AGGAGTAAGAGGAGCAGGCTCCTGCACAGTGACTACATGAACATGACTCCCCGCCGCCCCGGGCCCACCCGCAAGCATTACCAGCCCTATGCCCCACCACGCGACTTCGCAGCCTATCGCTCC
【0354】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体の細胞内シグナル伝達ドメインは、
-配列番号44の4-1BB細胞内ドメインのアミノ酸配列または配列番号44に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号45のCD27細胞内ドメインのアミノ酸配列もしくは配列番号45に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列、および/または配列番号46のCD28細胞内ドメインのアミノ酸配列もしくは配列番号46に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列、ならびに
-配列番号38~41のCD3ゼータ細胞内ドメインのアミノ酸配列、または配列番号38~41に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列
を含み、
細胞内ドメインに含まれる配列は、同じフレームでかつ単一のポリペプチド鎖として発現される。
【0355】
したがって、一実施形態では、本発明のキメラ受容体の細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列は、
-配列番号47の4-1BB細胞内ドメインの核酸配列または配列番号47に対して95~99%の同一性を有する核酸配列、および/または配列番号48のCD27細胞内ドメインの核酸配列もしくは配列番号48に対して95~99%の同一性を有する核酸配列、および/または配列番号49のCD28細胞内ドメインの核酸配列もしくは配列番号49に対して95~99%の同一性を有する核酸配列、ならびに
-配列番号42または配列番号43のCD3-ゼータ細胞内ドメインの核酸配列、または配列番号42または配列番号43に対して95~99%の同一性を有する核酸配列
を含む。
【0356】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体の細胞内シグナル伝達ドメインは、ランダムに、または指定された順序で互いに連結され得る少なくとも2つの異なるドメイン(例えば、T細胞共刺激分子の一次シグナルドメインおよび少なくとも1つの細胞内ドメイン)を含む。
【0357】
任意により、、例えば、長さが2~10個のアミノ酸(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10のアミノ酸)の、短いオリゴまたはポリペプチドリンカーは、個別のシグナル伝達ドメイン間の連結を形成し得る。一実施形態では、グリシン-セリンダブレット(GS)が好適なリンカーとして使用される。一実施形態では、単一のアミノ酸、例えばアラニン(A)、グリシン(G)が、好適なリンカーとして使用される。
【0358】
別の実施形態では、本発明のキメラ受容体の細胞内シグナル伝達ドメインは、2つ以上の、例えば2、3、4、5、またはそれより多い共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0359】
別の実施形態では、2つ以上の、例えば、2、3、4、5、またはそれより多い共刺激シグナル伝達ドメインは、リンカー分子、例えば、本明細書中上記に記載されるリンカー分子によって分離される。
【0360】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータの一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)およびCD28の共刺激シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号46)を含む。
【0361】
別の実施形態では、本発明のキメラ受容体の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータの一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)および4-1BBの共刺激シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号44)を含む。
【0362】
別の実施形態では、本発明のキメラ受容体の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータのシグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)およびCD27のシグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号45)を含む。
【0363】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメインからN末端に配置されるリーダー配列をさらに含む。リーダー配列の非限定的な例は、CD8のリーダー配列であり、それは配列番号50の配列を含み得るか、またはそれからなり得る。
(配列番号50)
MALPVTALLLPLALLLHAARP
【0364】
一実施形態では、キメラ受容体はタグを、例えば、品質管理、濃縮、in vivoの追跡などのためのタグなどを、さらに含む。タグは、N末端、C末端および/または内部に局在化され得る。本発明のキメラ受容体で使用され得るタグの例は、当業者に周知である。例えば、これらに限定されないが、本発明で使用されるタグは、ヘマグルチニンタグ、ポリアルギニンタグ、ポリヒスチジンタグ、Mycタグ、Strepタグ、S-タグ、HATタグ、3xフラグタグ、カルモジュリン結合ペプチドタグ、SBPタグ、キチン結合ドメインタグ、GSTタグ、マルトース結合タンパク質タグ、蛍光タンパク質タグ(例えば、配列番号68の配列を有するeGFP)、T7タグ、V5タグおよびXpressタグを含む群か、またはこれらからなる群から選択されるタグであり得る。タグの他の例としては、これらに限定されないが、NWSHPQFEK(配列番号51)またはSAWSHPQFEK(配列番号52)が挙げられる。
(配列番号51)
NWSHPQFEK
(配列番号52)
SAWSHPQFEK
(配列番号68)
MVSKGEELFTGVVPILVELDGDVNGHKFSVSGEGEGDATYGKLTLKFICTTGKLPVPWPTLVTTLTYGVQCFSRYPDHMKQHDFFKSAMPEGYVQERTIFFKDDGNYKTRAEVKFEGDTLVNRIELKGIDFKEDGNILGHKLEYNYNSHNVYIMADKQKNGIKVNFKIRHNIEDGSVQLADHYQQNTPIGDGPVLLPDNHYLSTQSALSKDPNEKRDHMVLLEFVTAAGITLGMDELYK
【0365】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、細胞内シグナル伝達ドメインからC末端に配置されるリボソーム切断部位をさらに含む。リボソーム切断部位の非限定的例は、P2Aリボソーム切断部位ASGSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号61)である。
【0366】
第1の実施形態によれば、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン(好ましくは、配列番号69または73)(ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、およびX19は、GまたはAであり、より好ましくは、配列番号70~72または74~76の1つである)、任意により細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、およびT細胞一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0367】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2マーカー結合ドメイン、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、およびCD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0368】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2マーカー結合ドメイン、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、およびCD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0369】
別の実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2マーカー結合ドメイン、CD8のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号26)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、およびCD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。別の実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD8のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号26)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、およびCD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0370】
別の実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgG4のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号28)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、およびCD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgG4のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号28)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、およびCD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0371】
別の実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgDのヒンジドメイン(好ましくは、配列番号30)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、およびCD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。別の実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgDのヒンジドメイン(好ましくは、配列番号30)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、およびCD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0372】
別の実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD28のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号32)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、およびCD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD28のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号32)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、およびCD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0373】
第2の実施形態によれば、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン(好ましくは、配列番号69または73、より好ましくは、配列番号70~72または74~76の1つ)(ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、およびX19は、GまたはAである)、任意により細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、T細胞共刺激分子の単一の細胞内ドメイン、およびT細胞一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0374】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、およびCD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0375】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0376】
別の実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD8のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号26)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、CD8のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号26)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、CD8のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号26)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0377】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、CD8のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号26)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、CD8のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号26)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、CD8のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号26)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0378】
別の実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgG4のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号28)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgG4のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号28)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgG4のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号28)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0379】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgG4のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号28)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgG4のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号28)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgG4のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号28)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0380】
別の実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgDのヒンジドメイン(好ましくは、配列番号30)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、IgDのヒンジドメイン(好ましくは、配列番号30)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、IgDのヒンジドメイン(好ましくは、配列番号30)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0381】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgDのヒンジドメイン(好ましくは、配列番号30)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgDのヒンジドメイン(好ましくは、配列番号30)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、IgDのヒンジドメイン(好ましくは、配列番号30)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0382】
別の実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD28のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号32)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD28のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号32)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD28のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号32)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0383】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD28のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号32)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD28のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号32)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD28のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号32)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0384】
第3の実施形態によれば、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン(好ましくは、配列番号69または73、より好ましくは、配列番号70~72または74~76の1つ)(ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、およびX19は、GまたはAである)、任意により細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、T細胞共刺激分子の2つの細胞内ドメイン、およびT細胞一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0385】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0386】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0387】
別の実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD8のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号26)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD8のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号26)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD8のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号26)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、およびCD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0388】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD8のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号26)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD8のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号26)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、およびCD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD8のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号26)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0389】
別の実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgG4のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号28)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgG4のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号28)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、およびCD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgG4のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号28)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0390】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgG4のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号28)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgG4のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号28)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、およびCD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgG4のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号28)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0391】
別の実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgDのヒンジドメイン(好ましくは、アミノ酸配列番号30を含む)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgDのヒンジドメイン(好ましくは、配列番号30)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgDのヒンジドメイン(好ましくは、配列番号30)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、およびCD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0392】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgDのヒンジドメイン(好ましくは、配列番号30)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgDのヒンジドメイン(好ましくは、配列番号30)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、IgDのヒンジドメイン(好ましくは、配列番号30)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0393】
別の実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD28のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号34)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD28のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号32)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD28のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号32)、CD8の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号34)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、およびCD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0394】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD28のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号32)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、およびCD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD28のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号32)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、4-1BBの細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号44)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、およびCD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、HLA-A2結合ドメイン、CD28のヒンジドメイン(好ましくは、配列番号32)、CD28の膜貫通ドメイン(好ましくは、配列番号36)、CD27の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号45)、CD28の細胞内ドメイン(好ましくは、配列番号46)、および、CD3-ゼータ一次シグナル伝達ドメイン(好ましくは、配列番号38、39、40または41)を含む。
【0395】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、(i)HLA-A2結合ドメイン(好ましくは、配列番号69または73であり、ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、およびX19は、GまたはAであり、より好ましくは、配列番号70~72、または74~76である)、(ii)ヒトCD28のヒンジ領域、(iii)ヒトCD28の膜貫通ドメイン、(iv)ヒトCD28の細胞内ドメイン、および(v)ヒトCD3ζ鎖の細胞内ドメインを含む。
【0396】
一実施形態では、ヒトCD28のヒンジ領域、ヒトCD28の膜貫通ドメイン、ヒトCD28の細胞内ドメインおよびヒトCD3ζ鎖の細胞内ドメインを含むキメラ受容体の一部は、配列番号53または54のアミノ酸配列もしくは配列番号53または54に対して95~99%の同一性を有するアミノ酸配列に対応する。
(配列番号53)
AAAIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
(配列番号54)
AAAIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0397】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、配列番号53もしくは54のアミノ酸配列または配列番号53もしくは54と95~99%の同一性を有する配列もしくはアミノ酸配列に連結されているHLA-A2結合ドメイン(好ましくは、配列番号69または73であり、ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、およびX19は、GまたはAであり、より好ましくは、配列番号70~72または74~76の1つである)を含む。
【0398】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、(i)HLA-A2結合ドメイン(好ましくは、配列番号69または73であり、ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、およびX19は、GまたはAであり、より好ましくは、配列番号70~72または74~76の1つである)、(ii)ヒトCD8のヒンジ領域、(iii)ヒトCD8の膜貫通ドメイン、(iv)ヒト4-1BBの細胞内ドメイン、および(v)ヒトCD3ζの細胞内ドメインを含む。一実施形態では、ヒトCD8のヒンジ領域、ヒトCD8の膜貫通ドメイン、ヒト4-1BBの細胞内ドメインおよびヒトCD3ζの細胞内ドメインを含むキメラ受容体の一部は、配列番号55、56、57または58のアミノ酸配列、または配列番号55~58に対して95~99%の同一性を有する任意のアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなる。
(配列番号55)
TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
(配列番号56)
NWSHPQFEKMHTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELTRRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
(配列番号57)
TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
(配列番号58)
NWSHPQFEKMHTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELTRRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0399】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、配列番号55~58のアミノ酸配列または配列番号55~58と95~99%の同一性を有する配列もしくはアミノ酸配列に連結されるHLA-A2結合ドメイン(好ましくは、配列番号69または73であり、ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、およびX19は、GまたはAであり、より好ましくは、配列番号70~72または74~76の1つである)を含む。
【0400】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、配列番号77で示される配列、または配列番号77に対して95~99%の同一性を有する任意のアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなる。
(配列番号77)
SQVQLVQSGPEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYHIQWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSTQYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLTSEDTAVYYCAREGTYYAMDYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDXVMTQXPXLXVXGX1011ISCRSSQSIVHSNGNTYLEWYX12QKPGQX13PRLLIYKVSNRFSGX14PDRFSGSGSGTDFTLX15ISRX16EX17EDX1819VYYCFQGSHVPRTFGGGTKLEIKRRTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、X19は、GまたはAである。
【0401】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、好ましくは配列番号50の配列を有するリーダー配列をN末端にさらに含み、かつ配列番号81または配列番号81と95~99%の同一性を有する任意のアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる(ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、およびX19は、GまたはAである)。
(配列番号81)
MALPVTALLLPLALLLHAARPSQVQLVQSGPEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYHIQWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSTQYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLTSEDTAVYYCAREGTYYAMDYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDXVMTQXPXLXVXGX1011ISCRSSQSIVHSNGNTYLEWYX12QKPGQX13PRLLIYKVSNRFSGX14PDRFSGSGSGTDFTLX15ISRX16EX17EDX18X19VYYCFQGSHVPRTFGGGTKLEIKRRTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0402】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、配列番号78で示される配列、または配列番号78に対して95~99%の同一性を有する任意のアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなる。
(配列番号78)
SQVQLVQSGPEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYHIQWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSTQYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLTSEDTAVYYCAREGTYYAMDYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDVVMTQTPLSLPVTLGEPASISCRSSQSIVHSNGNTYLEWYLQKPGQSPRLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYYCFQGSHVPRTFGGGTKLEIKRRTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0403】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、好ましくは配列番号50の配列を有するリーダー配列をN末端にさらに含み、かつ配列番号82または配列番号82に対して95~99%の同一性を有する任意のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
(配列番号82)
MALPVTALLLPLALLLHAARPSQVQLVQSGPEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYHIQWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSTQYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLTSEDTAVYYCAREGTYYAMDYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDVVMTQTPLSLPVTLGEPASISCRSSQSIVHSNGNTYLEWYLQKPGQSPRLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYYCFQGSHVPRTFGGGTKLEIKRRTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0404】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、配列番号79で示される配列、または配列番号79に対して95~99%の同一性を有する任意のアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなる。
(配列番号79)
SQVQLVQSGPEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYHIQWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSTQYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLTSEDTAVYYCAREGTYYAMDYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDVVMTQSPSSLSVTLGDRVSISCRSSQSIVHSNGNTYLEWYQQKPGQSPRLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISRVEPEDLGVYYCFQGSHVPRTFGGGTKLEIKRRTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0405】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、好ましくは配列番号50の配列を有するリーダー配列をN末端にさらに含み、かつ配列番号83または配列番号83に対して95~99%の同一性を有する任意のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
(配列番号83)
MALPVTALLLPLALLLHAARPSQVQLVQSGPEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYHIQWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSTQYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLTSEDTAVYYCAREGTYYAMDYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDVVMTQSPSSLSVTLGDRVSISCRSSQSIVHSNGNTYLEWYQQKPGQSPRLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISRVEPEDLGVYYCFQGSHVPRTFGGGTKLEIKRRTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0406】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、配列番号80で示される配列、または配列番号80に対して95~99%の同一性を有する任意のアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなる。
(配列番号80)
SQVQLVQSGPEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYHIQWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSTQYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLTSEDTAVYYCAREGTYYAMDYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIVMTQSPATLSVSPGERATISCRSSQSIVHSNGNTYLEWYQQKPGQAPRLLIYKVSNRFSGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCFQGSHVPRTFGGGTKLEIKRRTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0407】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、好ましくは配列番号50の配列を有するリーダー配列をN末端にさらに含み、かつ配列番号84または配列番号84に対して95~99%の同一性を有する任意のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
(配列番号84)
MALPVTALLLPLALLLHAARPSQVQLVQSGPEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYHIQWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSTQYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLTSEDTAVYYCAREGTYYAMDYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIVMTQSPATLSVSPGERATISCRSSQSIVHSNGNTYLEWYQQKPGQAPRLLIYKVSNRFSGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCFQGSHVPRTFGGGTKLEIKRRTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0408】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、(i)HLA-A2結合ドメイン(好ましくは、配列番号69または73であり、ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、およびX19は、GまたはAであり、より好ましくは、配列番号70~72または74~76の1つである)、(ii)ヒトCD8のヒンジ領域、(iii)ヒトCD8の膜貫通ドメイン、(iv)ヒトCD28の細胞内ドメイン、および(v)ヒトCD3ζの細胞内ドメイン、を含む。一実施形態では、ヒトCD8のヒンジ領域、ヒトCD8の膜貫通ドメイン、ヒトCD28の細胞内ドメインおよびヒトCD3ζの細胞内ドメインを含むキメラ受容体の一部は、配列番号59または60のアミノ酸配列、または配列番号59または60に対して95~99%の同一性を有する任意のアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなる。
(配列番号59)
MHTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSTRRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
(配列番号60)
MHTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSTRRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0409】
一実施形態では、本発明のキメラ受容体は、配列番号59または60のアミノ酸配列または配列番号59または60と95~99%の同一性を有する配列もしくはアミノ酸配列に連結されるHLA-A2結合ドメイン(好ましくは、配列番号69または73であり、ここで、Xは、VまたはIであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはSまたはAであり、Xは、SまたはTであり、Xは、PまたはSであり、Xは、TまたはSであり、Xは、LまたはPであり、Xは、EまたはDであり、Xは、PまたはRであり、X10は、AまたはVであり、X11は、SまたはTであり、X12は、LまたはQであり、X13は、SまたはAであり、X14は、VまたはIであり、X15は、KまたはTであり、X16は、VまたはLであり、X17は、AまたはPであり、X18は、LまたはFであり、およびX19は、GまたはAであり、より好ましくは、配列番号70~72または74~76の1つである)を含む。
【0410】
本発明はさらに、上記のようにCARを発現する免疫細胞、およびこうした免疫細胞の集団に関する。
【0411】
一実施形態では、本発明のCARをコードする核酸が免疫細胞中に導入され、それにより、細胞表面上に本発明のCARが発現する操作された細胞を生成する。
【0412】
本発明によれば、本発明の免疫細胞は、HLA-A2を認識するキメラ受容体を発現するように遺伝子改変される。したがって、本発明の免疫細胞は、再指向された免疫細胞として定義され得る。
【0413】
本明細書で使用される用語「再指向される」は、本明細書に記載のキメラ受容体を保有する免疫細胞を指し、キメラ受容体は免疫細胞に、その免疫細胞が特異的であるか特異的であったかまたはそれによって活性化されるリガンドとは異なるリガンド(すなわち、HLA-A2)に結合し、かつそのリガンドによって活性化される能力を、付与する。一実施形態では、キメラ受容体は、免疫細胞がHLA-A2によって活性化されるように、免疫細胞中で発現され得る。
【0414】
一実施形態では、本発明の免疫細胞は、哺乳動物免疫細胞、好ましくはヒト免疫細胞である。
【0415】
一実施形態では、本発明の免疫細胞は、凍結されかつ解凍されている。
【0416】
一実施形態では、免疫細胞は、リンパ球、骨髄由来細胞、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。
【0417】
一実施形態では、免疫細胞は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択されるリンパ球である。
【0418】
一実施形態では、免疫細胞はT細胞である。一実施形態では、T細胞は、CD4T細胞、CD8T細胞、γδT細胞、ダブルネガティブ(DN)T細胞、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0419】
一実施形態では、免疫細胞は、例えば、Tヘルパー細胞、調節性T細胞、およびそれらの任意の組み合わせなどのCD4T細胞である。
【0420】
一実施形態では、免疫細胞は、CD4調節性T細胞(Treg)である。一実施形態では、Tregは、胸腺由来のTreg、または適応もしくは誘導されたTregである。一実施形態では、Tregは、CD4FOXP3調節性T細胞またはCD4FOXP3調節性T細胞(Tr1細胞)、好ましくはCD4FOXP3調節性T細胞である。
【0421】
一実施形態では、免疫細胞は、例えば、細胞傷害性CD8T細胞またはCD8調節性T細胞などのCD8T細胞である。
【0422】
好ましくは、免疫細胞は、CD8調節性T細胞(Treg)である。一実施形態では、CD8調節性T細胞は、CD8CD28-調節性T細胞、CD8CD103調節性T細胞、CD8FoxP3調節性T細胞、CD8CD122調節性T細胞、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0423】
一実施形態では、免疫細胞は、INFγIL10IL34CD8CD45RClow調節性T細胞である。
【0424】
一実施形態では、免疫細胞はγδT細胞であり、好ましくは調節性γδT細胞である。
【0425】
一実施形態では、免疫細胞はDN T細胞であり、好ましくは調節性DN T細胞である。
【0426】
一実施形態では、免疫細胞は、B細胞であり、好ましくは調節性B細胞である。
【0427】
一実施形態では、調節性B細胞は、CD19CD24hiCD38hiB細胞である。
【0428】
一実施形態では、免疫細胞はNK細胞であり、好ましくは調節性NK細胞である。
【0429】
一実施形態では、免疫細胞は、骨髄由来細胞であり、好ましくは好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ、樹状細胞、またはこれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。
【0430】
一実施形態では、免疫細胞は、マクロファージであり、好ましくは調節性マクロファージである。
【0431】
一実施形態では、免疫細胞は樹状細胞、好ましくは調節性樹状細胞である。
【0432】
好ましくは、免疫細胞は、例えば、細胞療法での使用に好適である任意の調節性免疫細胞などの、調節性免疫細胞である。
【0433】
一実施形態では、調節性免疫細胞は、調節性T細胞、CD4調節性T細胞、CD8調節性T細胞、調節性γδT細胞、調節性DN T細胞、調節性B細胞、調節性NK細胞、調節性マクロファージ、調節性樹状細胞、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0434】
一実施形態では、調節性免疫細胞は、CD8調節性T細胞である。CD8調節性T細胞の例としては、これらに限定されないが、CD8CD28調節性T細胞、CD8CD103調節性T細胞、CD8FoxP3調節性T細胞、CD8CD122調節性T細胞、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0435】
一実施形態では、調節性免疫細胞は、調節性γδT細胞である。
【0436】
一実施形態では、調節性免疫細胞は、調節性DN T細胞である。
【0437】
一実施形態では、調節性免疫細胞は、調節性B細胞である。調節性B細胞の例としては、これに限定されないが、CD19CD24hiCD38hiB細胞が挙げられる。
【0438】
一実施形態では、調節性免疫細胞は、調節性NK細胞である。
【0439】
一実施形態では、調節性免疫細胞は、調節性マクロファージである。
【0440】
一実施形態では、調節性免疫細胞は、調節性樹状細胞である。
【0441】
一実施形態では、調節性免疫細胞は、調節性T細胞、特に胸腺由来Tregまたは適応性もしくは誘導性Tregである。Tregの例としては、CD4FOXP3調節性T細胞またはCD4FOXP3調節性T細胞(Tr1細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0442】
一実施形態では、調節性免疫細胞は、以下の表現型を有する:CD4CD25、例えば、CD4CD25CD127など、例えば、CD4CD25CD127CD45RAなど。好ましくは、調節性免疫細胞は、以下の表現型を有する:FoxP3CD4CD25、例えば、FoxP3CD4CD25CD127など、例えば、FoxP3CD4CD25CD127CD45RAなど。
【0443】
一実施形態では、免疫調節細胞は、以下の表現型の少なくとも1つを提示する:CD4CD25、FoxP3、CD127lo/-、CTLA-4、CD39、Helios、CD62L+/hi、VLA4、LFA1、CD49bint、ITGb7int、PSGL-1、ICOS、GITR、PD-1int、Perflo/-、CCR7。一実施形態では、免疫調節細胞は、グランザイムAおよび/またはグランザイムBを発現しない。
【0444】
一実施形態では、分子の発現レベルの決定は、フローサイトメトリー、免疫蛍光または画像分析、例えば、高含量分析により行われる。好ましくは、分子の発現レベルの決定は、フローサイトメトリーによって行われる。一実施形態では、フローサイトメトリー分析を実施する前に、細胞を固定して透過性にし、それにより細胞内タンパク質を検出できるようにする。
【0445】
一実施形態では、細胞集団における分子の発現レベルの決定は、分子を発現する細胞集団の細胞(すなわち、分子の細胞「+」)の割合を決定することを含む。好ましくは、分子を発現する細胞の割合は、FACSによって測定される。
【0446】
「発現する(または+)」および「発現しない(または-)」という用語は、当技術分野で周知であり、目的の細胞マーカーの発現レベルを指す。この場合、「+」に対応する細胞マーカーの発現レベルは、高いかまたは中程度であり、「+/-」とも称され、「-」に対応する細胞マーカーの発現レベルはゼロ(null)である。
【0447】
「low」または「lo」または「lo/-」という用語は、当技術分野で周知であり、目的の細胞マーカーの発現レベルを指し、この場合、細胞マーカーの発現レベルは、全体として分析される細胞集団におけるその細胞マーカーの発現レベルと比較して低い。より具体的には、用語「lo」は、1つ以上の他の異なる細胞集団よりも低いレベルで細胞マーカーを発現する、異なる細胞集団を指す。
【0448】
「high」または「hi」または「bright」という用語は、当技術分野で周知であり、目的の細胞マーカーの発現レベルを指し、この場合、細胞マーカーの発現レベルは、全体として分析される細胞集団におけるその細胞マーカーの発現レベルと比較して高い。
【0449】
一般的に、染色強度の上位2%、3%、4%、または5%の細胞は、「hi」と指定され、集団の上位半分にある細胞は「」として分類される。蛍光強度の50%を下回る細胞は「lo」細胞と称され、5%未満は「-」細胞と呼ばれる。
【0450】
目的の細胞マーカーの発現レベルは、このマーカーに特異的な蛍光標識抗体で染色された細胞集団由来の細胞の蛍光強度中央値(MFI)を、無関係の特異性を有するが同じアイソタイプ、同じ蛍光プローブを有しかつ同じ種に由来する蛍光標識抗体(アイソタイプ対照と称する)で染色された同じ細胞集団由来の細胞の蛍光強度(FI)と比較することにより、決定される。このマーカーに特異的な蛍光標識抗体で染色され、かつアイソタイプ対照で染色された細胞と同等のMFIまたはそれより低いMFIを示す集団由来の細胞は、このマーカーを発現せずしたがって(-)または陰性と表示される。このマーカーに特異的な蛍光標識抗体で染色され、かつアイソタイプ対照で染色された細胞よりも高いMFI値を示す集団由来の細胞は、このマーカーを発現し、したがって(+)または陽性と表示される。
【0451】
一実施形態では、本発明の免疫細胞は、その細胞表面で本発明のCAR、およびHLA-A2以外の別のリガンドに結合する別の受容体(本明細書では「第2の受容体」と称する)を発現する。本発明によれば、この第2の受容体は、前述のとおり、細胞外リガンド結合ドメイン、任意によりヒンジ、任意により膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0452】
一実施形態では、第2の受容体は、内因性である(例えば、内因性TCRなど)。別の実施形態では、第2の受容体は外因性であり、その発現は、それをコードする核酸の形質転換または形質導入によって本発明の免疫細胞において誘導される。外因性受容体は、外因性TCRまたはキメラ抗原受容体であり得る。したがって、一実施形態では、本発明の免疫細胞は、2つのキメラ抗原受容体を発現し、最初の1つはHLA-A2を認識し、2つ目は別個のリガンドを認識する。
【0453】
別の実施形態では、本発明の免疫細胞は、その細胞表面で本発明のCAR、およびHLA-A2中の別のエピトープに結合する別の受容体(本明細書では「第2の受容体」と称する)を発現する。本発明によれば、この第2の受容体は、前述のとおり、細胞外リガンド結合ドメイン、任意によりヒンジ、任意により膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0454】
別の実施形態では、本発明の免疫細胞は、2つのCARを発現し、1つ目のCARは、HLA-A2の第1のエピトープを認識し、2つ目はHLA-A2上の別個のエピトープを認識する。
【0455】
一実施形態では、本発明のCARは、第1の細胞内シグナル伝達ドメインを含み、第2の受容体は、別個の第2の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。第1の実施形態では、本発明のCARは、T細胞一次シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ゼータなど)を含み、第2の受容体は、共刺激シグナル伝達ドメイン(例えば、4-1BB、CD28または4-1BBとCD28の共刺激シグナル伝達ドメインの組み合わせなど)を含む。第2の実施形態では、本発明のCARは、共刺激シグナル伝達ドメイン(例えば、4-1BB、CD28、または4-1BBとCD28の共刺激シグナル伝達ドメインの組み合わせなど)を含み、第2の受容体は、T細胞一次シグナル伝達ドメイン(CD3ゼータなど)を含む。
【0456】
その結果、これらの実施形態によれば、本発明の免疫細胞の完全な活性化は、本発明のCARのHLA-A2への結合、およびそれが指向されるリガンドへの第2の受容体の結合の両方を必要とする。
【0457】
一実施形態では、第2の受容体によって認識されるリガンドは、罹患した組織もしくは臓器で、または自己免疫応答の部位で発現もしくは存在する。
【0458】
第2の受容体によって認識され得るリガンドの例としては、これらに限定されないが、一般的なヒトの食事からの食物抗原、自己抗原、吸入されたアレルゲン、摂取されたアレルゲンまたは接触アレルゲンが挙げられる。
【0459】
「一般的なヒトの食事からの食物抗原」という用語は、次の非限定的なリストの食物抗原などの、ヒトに一般的な食品に由来する免疫原性ペプチドを指す:リポカリンなどのウシ抗原、Ca結合S100、α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリンなどのラクトグロブリン、ウシ血清アルブミン、カゼイン。食物抗原は、タイセイヨウサケ抗原(例えば、パルブアルブミン)、ニワトリ抗原(例えば、オボムコイド、オボアルブミン、Ag22、コンアルブミン、リゾチームまたはニワトリ血清アルブミン)、ピーナッツ抗原、エビ抗原(例えば、トロポミオシン)、コムギ抗原(例えば、凝集素またはグリアジン)、セロリ抗原(例えば、セロリプロフィリン)、ニンジン抗原(例えば、ニンジンプロフィリン)、リンゴ抗原(例えば、ソーマチン、リンゴ脂質転移タンパク質、リンゴプロフィリン)、ナシ抗原(例えば、ナシプロフィリンまたはイソフラボン還元酵素)、アボカド抗原(例えば、エンドキチナーゼ)、アンズ抗原(例えば、アンズ脂質伝達タンパク質)、モモ抗原(例えば、モモ脂質伝達タンパク質またはモモプロフィリン)、ダイズ抗原(例えば、HPS、ダイズプロフィリンまたは(SAM22)PR-10タンパク質)、断片、多様体、およびこれらの混合物。
【0460】
一実施形態では、自己抗原は、多発性硬化症関連抗原、関節関連抗原、眼関連抗原、ヒトHSP抗原、皮膚関連抗原または移植片拒絶もしくはGVHDに関与する抗原である。
【0461】
「多発性硬化症関連抗原」という用語は、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、プロテオリピドタンパク質(PLP)、オリゴデンドロサイトミエリンオリゴタンパク質(OMGP)、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質(MOBP)、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP/Claudinl 1)、熱ショックタンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP)、NOGO A、糖タンパク質Po、末梢ミエリンタンパク質22(PMP22)、2’3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼ(CNPase)、その断片、多様体および混合物を指す。
【0462】
用語「関節関連抗原」は、シトルリン置換環状および線状フィラグリンペプチド、II型コラーゲンペプチド、ヒト軟骨糖タンパク質39(HCgp39)ペプチド、HSP、異種核リボ核タンパク質(hnRNP)A2ペプチド、hnRNP B1、hnRNP D、Ro60/52、HSP60、HSP65、HSP70およびHSP90、BiP、ケラチン、ビメンチン、フィブリノーゲン、I型、III型、IV型およびV型コラーゲンペプチド、アネキシンV、グルコース6リン酸イソメラーゼ(GPI)、アセチルカルパスタチン、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)、アルドラーゼ、トポイソメラーゼI、snRNP、PARP、Scl-70、Scl-100、リン脂質抗原、例えば、アニオン性カルジオリピンおよびホスファチジルセリン、中性に帯電したホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルコリン、フィブリリン、アグリカン、その断片、多様体および混合物を指す。
【0463】
用語「眼関連抗原」は、II型コラーゲン、網膜アレスチン、S-アレスチン、視細胞間レチノイド結合タンパク質(IRBP1)、ベータクリスタリンB1、網膜タンパク質、脈絡膜タンパク質およびその断片、多様体ならびに混合物を指す。
【0464】
用語「ヒトHSP抗原」は、ヒトHSP60、HSP70、HSP90、それらの断片、多様体および混合物を指す。
【0465】
皮膚関連抗原の例としては、これらに限定されないが、ケラチノサイト抗原、真皮または表皮に存在する抗原、メラノサイト抗原(例えば、メラニンまたはチロシナーゼなど)、デスモグレイン(例えば、Dsg1/3とも称され得るデスモグレイン1または3)、BP180、BP230、プレクチン、インテグリン(例えば、インテグリンα4β6)、コラーゲン(例えば、VII型コラーゲン)、ラミニン(例えば、ラミニン332またはラミニンγ1)、プラキン(例えば、エンボプラキン、ペリプラキン、またはデスモプラキン)、ケラチン(例えば、KRT5、KRT8、KRT15、KRT17およびKRT31)、ケラチンフィラメント関連タンパク質、フィラグリン、コルネオデスモシン、およびエラスチンが挙げられる。
【0466】
一実施形態では、リガンドは、移植片拒絶またはGVHDに関与する抗原である。こうした抗原の例としては、これらに限定されないが、移植組織または宿主に特異的なMHC、β2-ミクログロブリン、ABO系由来の抗原、アカゲザル系由来の抗原(特にC、c、E、eおよびD系などの抗原)、およびイソヘマグルチニンが挙げられる。移植片拒絶反応またはGVHDに関与し得る抗原の他の例としては、これらに限定されないが、HLA-DR(特に移植後の最初の6ヶ月間)、HLA-B(特に移植後の最初の2年間)、マイナーな組織適合性抗原(miHA、例えばHLA-E、HLA-FおよびHLA-G)、MHCクラスI(BおよびC)に対応するHLA、MHCクラスII(DP、DM、DOA、DOB、DQ、およびDR)に対応するHLA、ならびにMHCクラスIII(例えば、補体系の構成成分)に対応するHLAが挙げられる。
【0467】
自己抗原の他の例としては、これらに限定されないが、アクアポリン水チャネル(例えば、アクアポリン4水チャネル(AQP4)など)、Hu、Ma2、コラプシン応答メディエータータンパク質5(CRMP5)、およびアンフィフィシン、電位依存性カリウムチャネル(VGKC)、N-メチル-d-アスパラギン酸受容体(NMDAR)、α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾールプロピオン酸(AMPAR)、甲状腺ペルオキシダーゼ、チログロブリン、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NR1サブユニット)、Rh血液型抗原、I抗原、デスモグレイン1または3(Dsg1/3)、BP180、BP230、アセチルコリンニコチン性シナプス後受容体、チロトロピン受容体、血小板インテグリン、GpIIb:IIIa、コラーゲン(例えば、コラーゲンα-3(IV)鎖など)、リウマチ因子、カルパスタチン、シトルリン化タンパク質、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)ペプチド、アルファベータクリスタリン、DNA、ヒストン、リボソーム、RNP、組織トランスグルタミナーゼ(TG2)、内因子、65kDaの抗原、ホスファチジルセリン、リボソームリンタンパク質、抗好中球細胞質抗体、Scl-70、U1-RNP、ANA、SSA、抗-SSB、抗核抗体(ANA)、抗好中球細胞質抗体(ANCA)、Jo-1、抗ミトコンドリア抗体、gp210、p62、sp100、抗リン脂質抗体、U1-70 kd snRNP、GQ1bガングリオシド、GM1、asialo GM1、GD1b、抗平滑筋抗体(ASMA)、抗肝臓腎臓ミクロソーム-1抗体(ALKM-1)、抗肝臓サイトゾル抗体-1(ALC-1)、IgA抗内膜筋抗体、好中球顆粒タンパク質、連鎖球菌細胞壁抗原、胃壁細胞の内因性因子、インスリン(IAA)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAAまたはGAD)、およびタンパク質チロシンホスファターゼ(例えば、IA2またはICA512など)、PLA2R1およびTHSD7A1が挙げられる。
【0468】
一実施形態では、リガンドは、オボアルブミン、MOG、II型コラーゲン断片、それらの多様体および混合物を含む群から選択される。
【0469】
一実施形態では、リガンドは、オボアルブミン、その断片、多様体および混合物である。
【0470】
別の実施形態では、リガンドは、MOG、それらの断片、多様体および混合物である。
【0471】
別の実施形態では、リガンドは、II型コラーゲン、それらの断片、多様体および混合物である。
【0472】
別の実施形態では、リガンドは、IL23R、それらの断片、多様体および混合物である。
【0473】
一実施形態では、本発明のCARは、HLA-A2とは異なるリガンドを認識する細胞外リガンド結合ドメインをさらに含む。一実施形態では、リガンド結合ドメインは、抗体またはその抗原結合断片である。
【0474】
一実施形態では、本発明のCARのリガンド結合ドメインは、HLA-A2上の複数の異なるエピトープを認識する多機能抗体である。一実施形態では、本発明のCARのリガンド結合ドメインは、HLA-A2上の2つの異なるエピトープを認識する二機能性抗体である。
【0475】
一実施形態では、本発明のCARは、HLA-A2結合ドメインおよびHLA-A2とは異なるリガンドを認識する別のリガンド結合ドメインを含む細胞外リガンド結合ドメインを含む。一実施形態では、リガンド結合ドメインは、HLA-A2および別個のリガンドの両方を認識する二機能性抗体である。
【0476】
本発明のCARによって認識され得るHLA-A2とは異なるリガンドの例は、上記に列挙されている。
【0477】
本発明はまた、上記で定義された免疫細胞の単離されたおよび/または実質的に精製された集団に関する。
【0478】
したがって、本発明の1つの目的は、免疫細胞の単離されたおよび/または実質的に精製された集団であり、集団の細胞はCARを含み、CARはHLA-A2を認識する。
【0479】
本明細書で使用される「単離された集団」は、その自然環境(末梢血など)から取り出され、単離、精製、または分離されておりかつ、天然に存在するが、それに基づき細胞が分離される細胞表面マーカーが欠如している他の細胞が少なくとも約75%ない、80%ない、85%なく、好ましくは約90%、95%、96%、97%、98%、99%ない、細胞集団を指す。
【0480】
本発明はさらに、上記で定義された免疫細胞の濃縮された集団に関する。
【0481】
一実施形態では、本発明の単離、精製および/または濃縮された免疫細胞集団は、凍結させ解凍されている。
【0482】
本発明の別の目的は、上記のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を含むベクターである。
【0483】
本発明において使用され得るベクターの例としては、これらに限定されないが、DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルスおよびコスミドが挙げられる。
【0484】
ウイルスベクター技術は当技術分野で周知であり、例えば、Sambrookら(2001年、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory、New York)、ならびに他のウイルス学および分子生物学のマニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスは、これらに限定されないが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびレンチウイルスを含む。
【0485】
一般に、好適なベクターは、少なくとも1つの生物において機能的な複製起点、プロモーター配列、簡便な制限エンドヌクレアーゼ部位、および1つ以上の選択可能なマーカー(例えば、参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第01/96584号、国際公開第01/29058号、および米国特許第6,326,193号に記載されている)を含む。
【0486】
哺乳動物細胞への遺伝子導入のために、多数のウイルスベースのシステムが開発されている。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達系に便利なプラットフォームを提供する。選択した遺伝子を、当技術分野で公知の技術を使用してベクターに挿入しレトロウイルス粒子にパッケージングできる。次に、組換えウイルスを単離して、in vivoまたはex vivoのいずれかで対象の細胞に送達できる。複数のレトロウイルス系が当技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、アデノウイルスベクターが使用される。複数のアデノウイルスベクターが当技術分野で公知である。一実施形態では、レンチウイルスベクターが使用される。
【0487】
追加の転写活性エレメント、例えばプロモーターおよびエンハンサーは、転写開始の頻度を調節し得る。典型的には、コアプロモーターに関して、これらは開始部位の30~110bp上流の領域にあるが、多数のプロモーターは開始部位の下流にも機能エレメントを含むことが近年示されており、エンハンサーエレメントは一般に、開始部位の50~2000bp上流にある。多くの場合プロモーターエレメント間の間隔は柔軟であり、そのため、エレメントが互いに反転するかまたは移動しても、プロモーター機能は保持される。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、活性が低下し始める前に、プロモーターエレメント間の間隔を50bpまで広げることができる。プロモーターに応じて、個々のエレメントが協調してまたは独立して機能し、転写を活性化できると考えられる。
【0488】
好適なプロモーターの一例は、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。このプロモーター配列は、これに作動可能に連結された任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動できる強力な構成的プロモーター配列である。好適なプロモーターの別の例は、伸長成長因子-la(EF-la)である。好適なプロモーターの別の例は、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターである。しかし、これらに限定されないが、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ロングターミナルリピート(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バール・ウイルスの最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ならびに、これらに限定されないが、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、およびクレアチンキナーゼプロモーターなどのヒト遺伝子プロモーターを含む、他の構成的プロモーター配列も使用され得る。さらに、本発明は、構成的プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導性プロモーターもまた、本発明の一部として企図される。誘導性プロモーターの使用は、そのような発現が望まれる場合に作動可能に連結されているポリヌクレオチド配列の発現をオンにし、または発現が望まれない場合にその発現をオフにできる、分子スイッチを提供する。誘導性プロモーターの例としては、これらに限定されないが、メタロチオニンプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、およびテトラサイクリンプロモーターが挙げられる。さらに、2つ以上の遺伝子の効率的かつ協調的な発現を可能にする双方向プロモーターもまた、本発明において興味深い可能性がある。双方向性プロモーターの例としては、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第2006200869号に記載されているプロモーターが挙げられるが、これらに限定されず、ここで開示される双方向性プロモーターは、i)サイトメガロウイルス(CMV)またはマウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)ゲノムに由来する第1の最小プロモーター配列、およびii)動物遺伝子に由来する完全に効率的なプロモーター配列、を含む。
【0489】
CARポリペプチドまたはその一部分の発現を評価するために、免疫細胞に導入される発現ベクターはまた、例えばCD34もしくはレポーター遺伝子などの選択可能なマーカー遺伝子のいずれかまたはその両方を含み得、ウイルスベクターを介してトランスフェクトされるかまたは感染されることが求められる細胞の集団から発現する細胞の同定および選択を容易にできるようにする。他の態様では、選択可能なマーカーは、別個のDNA片に担持され得、同時トランスフェクション処置において使用され得る。選択可能なマーカーおよびレポーター遺伝子の両方は適切な調節配列に隣接され、宿主細胞での発現を可能にし得る。有用な選択可能なマーカーとしては、例えば、ネオなどの抗生物質寛容遺伝子が挙げられる。
【0490】
本発明のいくつかの実施形態では、自殺遺伝子技術が使用され得る。それらの作用メカニズムに応じて、様々な自殺遺伝子技術が当技術分野で記述されている(Jonesら、Frontiers in Pharmacology、2014(5):254)。非毒性薬物を毒性薬物に変換する遺伝子指向酵素プロドラッグ療法(GDEPT)の例としては、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)およびシトシンデアミナーゼ(CD)が挙げられる。他の例は、例えば誘導性Fas(iFas)または誘導性カスパーゼ9(iCasp9)系などのアポトーシス成分に連結された薬物結合ドメインで構成されるキメラタンパク質である。他の例としては、抗c-myc抗体の投与によりそれらの欠失を誘導するために操作された細胞の表面でc-mycの過剰発現を誘導するなどの、治療用抗体によって媒介される系が挙げられる。EGFRの使用は、c-myc系と比較して同様の系として記載される。
【0491】
レポーター遺伝子は、トランスフェクトされた可能性のある細胞を特定するため、かつ調節配列の機能を評価するために使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエントの生物または組織に存在しないか、またはそれらの中で発現されない遺伝子であり、かつその発現が何らかの容易に検出可能な特性、例えば酵素活性によって明らかにされるポリペプチドをコードする、遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞に導入された後の好適な時期にアッセイされる。好適なレポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ、ベータガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼ、または緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードする遺伝子を挙げることができる(例えば、Ui-Teiら、2000 FEBS Letters 479:79-82)。好適な発現系は周知であり、既知の技術を使用して調製され得る、または商業的に入手され得る。一般に、レポーター遺伝子の最高レベルの発現を示す最小の5’フランキング領域を有する構築物が、プロモーターとして同定される。こうしたプロモーター領域は、レポーター遺伝子に連結され得、プロモーター主導の転写を調節する能力について剤を評価するために使用され得る。
【0492】
細胞に遺伝子を導入し、発現させる方法は、当技術分野で知られている。発現ベクターの文脈で、ベクターは、当技術分野の任意の方法によって、宿主細胞、例えば、哺乳動物、細菌、酵母、または昆虫細胞に容易に導入できる。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的、または生物学的手段によって宿主細胞に移入できる。
【0493】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝撃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、膜破壊などが挙げられる。ベクターおよび/または外因性核酸を含む細胞を作製する方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、Sambrookら、(2001年、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York)を参照されたい。ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための好ましい方法は、リン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0494】
目的のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的方法としては、DNAおよびRNAベクターの使用が挙げられる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、遺伝子を哺乳動物、例えばヒトの細胞に挿入するために最も広く使用されている方法になっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスなどに由来し得る。例えば、米国特許第5,350,674号および同5,585,362号を参照されたい。
【0495】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段は、高分子複合体、ナノ粒子(ナノスフェア、ナノカプセル)、ミクロスフェア、ビーズ、および水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、およびリポソームなどの脂質ベースの系などのコロイド分散系を含む。In vitroおよびin vivoでの送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0496】
非ウイルス送達システムが利用される場合、例示的な送達ビヒクルはリポソームである。脂質配合物の使用は、宿主細胞へ核酸を導入するために(in vitro、ex vivoまたはin vivoで)企図される。別の態様では、核酸は脂質と関連し得る。脂質に関連する核酸は、リポソームの水性の内部に封入され得るか、リポソームの脂質二重層内に散在され得るか、リポソームおよびオリゴヌクレオチドの両方に関連する連結分子を介してリポソームに接着され得るか、リポソームに封入され得るか、リポソームと複合体化され得るか、脂質を含む溶液に分散され得るか、脂質と混合され得るか、脂質と組み合わされ得るか、脂質の懸濁液として含まれ得るか、ミセルに含まれ得るかもしくはミセルと複合体化され得るか、または脂質と会合され得る。脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクター関連組成物は、溶液中の任意の特定の構造に限定されない。例えば、それらは、ミセルとして、または「崩壊した」構造を有し、二重層構造で存在し得る。それらはまた、単に溶液中に散在され、おそらくサイズまたは形状が均一でない凝集体を形成する可能性がある。脂質は、天然由来または合成脂質であり得る、脂肪物質である。例えば、脂質としては、細胞質で自然に発生する脂肪滴、ならびに長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体(脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、およびアルデヒドなど)を含む化合物のクラスが挙げられる。
【0497】
使用に好適な脂質は、商業的供給源から入手できる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma(St.Louis、MO)から入手できる。リン酸ジセチル(「DCP」)は、K&K Laboratories(Plainview、NY)から入手できる。コレステロール(「Choi」)は、Calbiochem-Behringから入手できる。ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)および他の脂質は、Avanti Polar Lipids、Inc.(Birmingham、AL)から入手できる。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質のストック溶液は、約-20℃で保存できる。クロロホルムは、メタノールよりも蒸発しやすいため、最適な溶媒として使用される。「リポソーム」は、封入された脂質二重層または凝集体の生成によって形成される様々な単一のおよび多層の脂質媒体を含む総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜および内部水性媒体を有する小胞構造を有するものとして特徴付けることができる。多重膜リポソームは、水性媒体によって分離される複数の脂質層を有する。これらは、リン脂質が過剰の水溶液に懸濁されると自発的に形成される。脂質成分は、閉構造が形成される前に自己再構成を受け、脂質二重層の間に水および溶質を閉じ込める(Ghoshら、1991年、Glycobiology 5:505-10)。しかし、溶液中で通常の小胞構造とは異なる構造を有する組成物も含まれる。例えば、脂質はミセル構造をとるか、または単に脂質分子の不均一な凝集体として存在すると考えられ得る。リポフェクタミン-核酸複合体も企図される。
【0498】
外因性核酸を宿主細胞中に導入するために使用される方法に関係なく、宿主細胞中の組換えDNA配列の存在を確認するために、様々なアッセイを行うことができる。こうしたアッセイは、例えば、サザンブロッティングおよびノーザンブロッティング、RT-PCRおよびPCRなどの、当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ;例えば、免疫学的手段(ELISAおよびウエスタンブロット)により、または本発明の範囲内にある剤を同定するための本明細書に記載のアッセイにより、特定のペプチドの存在または不在を検出することなどの、「生化学的」アッセイ、を含む。
【0499】
一実施形態では、本発明の遺伝子改変された免疫細胞は、RNAの導入により改変される。一実施形態では、in vitro転写されたRNA CARは、一過性トランスフェクションの形態として細胞に導入できる。RNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で生成される鋳型を使用するin vitro転写によって生成され得る。任意の源からの目的のDNAを、適切なプライマーおよびRNAポリメラーゼを使用して、in vitro mRNA合成用の鋳型へとPCRにより直接変換できる。DNAの供給源は、例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ファージDNA、cDNA、合成DNA配列または他の任意の適切なDNA供給源であり得る。In vitro転写のための望ましい鋳型は、本発明のCARである。
【0500】
一実施形態では、PCRに使用されるDNAは、オープンリーディングフレームを含む。DNAは、生物のゲノムからの天然のDNA配列由来であり得る。一実施形態では、DNAは、目的の全長遺伝子または遺伝子の一部分である。遺伝子は、5’および/または3’非翻訳領域(UTR)の一部またはすべてを含んでよい。遺伝子は、エクソンおよびイントロンを含んでよい。一実施形態では、PCRに使用されるDNAは、ヒト遺伝子である。別の実施形態では、PCRに使用されるDNAは、5’および3’UTRを含むヒト遺伝子である。あるいは、DNAは、天然に存在する生物において通常発現しない人工DNA配列であり得る。例示的な人工DNA配列は、融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを形成するために一緒に連結される遺伝子の部分を含むものである。一緒に連結されるDNAの部分は、単一の生物または複数の生物に由来し得る。
【0501】
PCRは、トランスフェクションに使用されるmRNAのin vitro転写用の鋳型を生成するために使用され得る。PCRを実施するための方法は、当技術分野で周知である。PCRで使用するためのプライマーは、PCRの鋳型として使用するDNAの領域に実質的に相補的な領域を有するように設計される。本明細書で使用される「実質的に相補的」は、プライマー配列の大部分または塩基のすべてが相補的であるか、または1つ以上の塩基が非相補的であるかまたはミスマッチであるヌクレオチドの配列を指す。実質的に相補的である配列は、PCRに使用されるアニーリング条件下で、意図されるDNA標的とアニーリングまたはハイブリダイズできる。プライマーは、DNA鋳型の任意の部分に実質的に相補的であるように設計できる。例えば、プライマーは、5’および3’UTRを含み、細胞中で通常転写される遺伝子の一部分(オープンリーディングフレーム)を増幅するように設計できる。プライマーは、目的の特定のドメインをコードする遺伝子の一部分を増幅するように設計されてもよい。一実施形態では、プライマーは、5’および3’UTRのすべてまたは一部分を含み、ヒトcDNAのコード領域を増幅するように設計される。PCRに有用なプライマーは、当技術分野で周知である合成方法によって生成される。
【0502】
「フォワードプライマー」は、増幅されるDNA配列の上流にある、DNA鋳型上のヌクレオチドに実質的に相補的なヌクレオチドの領域を含むプライマーである。「上流」は、本明細書では、コード鎖に対して増幅されるDNA配列の5’位を指すために使用される。「リバースプライマー」は、増幅されるDNA配列の下流にある二本鎖DNA鋳型に実質的に相補的なヌクレオチドの領域を含むプライマーである。「下流」は、本明細書では、コード鎖に対して増幅されるDNA配列の3’位を指すために使用される。
【0503】
PCRに有用な任意のDNAポリメラーゼを、本明細書に開示される方法で使用できる。試薬およびポリメラーゼは、複数の供給元から市販されている。
【0504】
安定性および/または翻訳効率を促進する能力を備えた化学構造も使用され得る。RNAは、好ましくは5’および3’UTRを有する。一実施形態では、5’UTRは、長さが0~3000のヌクレオチドである。コード領域に追加される5’および3’UTR配列の長さは、これらに限定されないが、UTRの異なる領域にアニーリングするPCR用のプライマーの設計を含む、様々な方法で変更され得る。このアプローチを使用して、当業者は、転写されたRNAのトランスフェクション後に最適な翻訳効率を達成するために必要とされる5’および3’UTRの長さを変更できる。5’および3’UTRは、目的の遺伝子の天然由来内因性5’および3’UTRであり得る。あるいは、目的の遺伝子に内因性ではないUTR配列を、UTR配列をフォワードプライマーおよびリバースプライマーに組み込むことによって、または鋳型の任意の他の変更によって付加し得る。目的の遺伝子に対して内因性でないUTR配列の使用は、RNAの安定性および/または翻訳効率の変更に有用であり得る。例えば、3’UTR配列のAU豊富エレメントは、mRNAの安定性を低下させ得ることが知られている。したがって、当技術分野で周知であるUTRの特性に基づいて、3’UTRを選択または設計して、転写されたRNAの安定性を高めることができる。
【0505】
一実施形態では、5’UTRは、内因性遺伝子のコザック配列を含み得る。あるいは、目的の遺伝子にとって内因性ではない5’UTRが上記のようにPCRによって追加されている場合、5’UTR配列を追加することによってコンセンサスコザック配列を再設計できる。コザック配列は、一部のRNA転写産物の翻訳効率を高めることができるが、効率的な翻訳を可能にするために、すべてのRNAにとって必要であるとは考えられない。多くのmRNAに対するコザック配列の要件は、当技術分野で知られている。他の実施形態では、5’UTRは、そのRNAゲノムが細胞中で安定なRNAウイルスに由来し得る。他の実施形態では、様々なヌクレオチド類似体を3’または5’UTRで使用して、mRNAのエキソヌクレアーゼ分解を妨げることができる。
【0506】
遺伝子クローニングを必要とせずにDNA鋳型からのRNAの合成を可能にするには、転写のプロモーターが、転写される配列の上流のDNA鋳型に接着される必要がある。RNAポリメラーゼのプロモーターとして機能する配列がフォワードプライマーの5’末端に追加されると、RNAポリメラーゼプロモーターは、転写されるオープンリーディングフレームの上流のPCR産物に組み込まれる。好ましい一実施形態では、プロモーターは、本明細書の他の箇所に記載されるように、T7ポリメラーゼプロモーターである。他の有用なプロモーターとしては、これらに限定されないが、T3およびSP6 RNAポリメラーゼプロモーターが挙げられる。T7、T3およびSP6プロモーターのコンセンサスヌクレオチド配列は、当技術分野で公知である。
【0507】
好ましい実施形態では、mRNAは、5’末端でのキャップおよび3’ポリ(A)テールの両方を有し、それはリボソーム結合、翻訳の開始および細胞中のmRNAの安定性を決定する。環状DNA鋳型、例えばプラスミドDNAでは、RNAポリメラーゼは、真核細胞での発現には好適でない長い鎖状産物を生成する。3’UTRの末端で線形化されたプラスミドDNAの転写は、転写後にポリアデニル化されたとしても真核生物のトランスフェクションには有効でない、通常のサイズのmRNAをもたらす。
【0508】
線形DNA鋳型では、ファージT7 RNAポリメラーゼは、鋳型の最後の塩基を超えて転写産物の3’末端を伸長させ得る(Schenborn and Mierendorf、Nuc Acids Res.,13:6223-36(1985年);Nacheva and Berzal-Herranz、Eur.J.Biochem.,270:1485-65(2003年)。
【0509】
DNA鋳型にポリA/Tストレッチを組み込む従来の方法は、分子クローニングである。しかし、プラスミドDNAに組み込まれたポリA/T配列は、プラスミドの不安定性を引き起こし得る。そのため、細菌細胞から得たプラスミドDNA鋳型は多くの場合、欠失および他の異常がかなり混入している。これがクローニング過程を、労力および時間を要するのみでなく、多くの場合信頼性の低いものにしている。そのため、クローニングなしにポリA/T3’ストレッチを用いてDNA鋳型を構築できる方法が強く望まれている。
【0510】
転写DNA鋳型のポリA/Tセグメントは、100Tテール(サイズは50~5000Tであり得る)などの、鋳型Tテールを含むリバースプライマーを使用することによってPCR中に、またはPCR後に、これらに限定されないが、DNAライゲーションまたはin vitro組換えを含む任意の他の方法により、産生され得る。ポリ(A)テールは、RNAに安定性を付与し、RNAの分解を減少させる。一般に、ポリ(A)テールの長さは、転写されるRNAの安定性と正に相関する。一実施形態では、ポリ(A)テールは、100~5000のアデノシンである。
【0511】
RNAのポリ(A)テールは、大腸菌ポリAポリメラーゼ(E-PAP)などのポリ(A)ポリメラーゼを使用して、in vitro転写後にさらに伸長され得る。一実施形態では、ポリ(A)テールの長さを100ヌクレオチドから300~400ヌクレオチドに増加させることにより、RNAの翻訳効率が約2倍増加する。さらに、3’末端への異なる化学基の接着は、mRNAの安定性を向上し得る。こうした接着は、改変/人工ヌクレオチド、アプタマーおよび他の化合物を含み得る。例えば、ATP類似体を、ポリ(A)ポリメラーゼを使用してポリ(A)テールに組み込むことができる。ATP類似体は、RNAの安定性をさらに高めることができる。
【0512】
RNAの5’キャップもまた、RNA分子に安定性をもたらす。好ましい実施形態では、本明細書に開示される方法によって産生されるRNAは、5’キャップを含む。5’キャップは、当技術分野で公知であり本明細書に記載されている技術を使用して提供される(Cougotら、Trends in Biochem.Sci.,29:436-444(2001年);Stepinskiら、RNA,7:1468-95(2001年);Elangoら、Biochim.Biophys.Res.Commun.,330:958-966(2005年))。
【0513】
本明細書に開示される方法によって産生されるRNAはまた、内部リボソーム侵入部位(IRES)配列を含み得る。IRES配列は、mRNAへのキャップ非依存性リボソームの結合を開始し翻訳の開始を容易にする、ウイルス、染色体、または人工的に設計された任意の配列であり得る。糖、ペプチド、脂質、タンパク質、抗酸化剤、界面活性剤などの、細胞透過性および生存能力を促進する因子を含み得る、細胞エレクトロポレーションに好適な任意の溶質を含んでもよい。
【0514】
RNAは、複数の異なる方法、例えば、エレクトロポレーション(Amaxa Nucleofector-II(Amaxa Biosystems、Cologne、Germany))、(ECM 830(BTX)(Harvard Instruments、Boston、Mass.))、またはGene Pulser II(BioRad、Denver、Colo.)、Multiporator(Eppendort、Hamburg Germany)、リポフェクションを使用するカチオン性リポソーム媒介トランスフェクション、ポリマーカプセル化、ペプチド媒介トランスフェクション、または「遺伝子銃」などのバイオリスティック粒子送達システムを含むがこれらに限定されない、市販の方法、のいずれかを使用して標的細胞に導入され得る(例えば、Nishikawaら、Hum Gene Ther.、12(8):861-70(2001年)を参照されたい。
【0515】
一実施形態では、CAR配列は、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターを使用して細胞に送達される。CARを発現するレトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターは、形質導入された細胞を担体として使用するか、またはカプセル化されるか、結合されるかまたは裸のベクターの無細胞の局所もしくは全身の送達を用いて、様々な種類の真核細胞中に、ならびに組織および生物全体中に送達され得る。使用される方法は、安定した発現が必要とされるか十分である、任意の目的のためであり得る。
【0516】
別の実施形態では、CAR配列は、in vitro転写されたmRNAを使用して細胞に送達される。In vitro転写されたmRNA CARは、トランスフェクトされた細胞を担体として使用するか、またはカプセル化されるか、結合されるかまたは裸のmRNAの無細胞の局所的もしくは全身的な送達を用いて、様々な種類の真核細胞中に、ならびに組織および生物全体中に送達され得る。使用される方法は、一過性の発現が必要とされるか十分である、任意の目的のためであり得る。
【0517】
別の実施形態では、所望のCARは、トランスポゾンによって細胞中で発現され得る。
【0518】
一実施形態では、本発明の免疫細胞はT細胞である。本発明のT細胞の拡張および遺伝子改変の前に、T細胞の供給源が対象から得られる。T細胞は、末梢血単核球、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍を含む、複数の供給源から得ることができる。本発明のある実施形態では、当技術分野で利用可能な任意の数のT細胞株を使用できる。本発明のある実施形態では、T細胞は、Ficoll(商標)分離またはSepax分離システムなどの、当業者に公知の任意の数の技術を使用して、対象から収集された血液単位から得ることができる。好ましい一実施形態では、個体の循環血液からの細胞は、アフェレーシスによって得られる。アフェレーシス産生物は典型的に、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含む、リンパ球を含む。一実施形態では、アフェレーシスによって収集された細胞を洗浄して、血漿画分を除去し、その後の処理ステップのために細胞を適切な緩衝液または培地に入れることができる。本発明の一実施形態では、細胞は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄される。代替的実施形態では、洗浄溶液はカルシウムを含まず、マグネシウムを含まない場合もあり、またはすべてではないが、多くの二価カチオンを含まない場合もある。洗浄後に、細胞は、例えば、Ca2+非含有、Mg2+非含有のPBS、プラズマライトA、またはバッファーの有無にかかわらず他の生理食塩水などの、様々な生体適合性バッファーに再懸濁され得る。あるいは、アフェレーシス試料の望ましくない成分を除去し、細胞を培養培地に直接再懸濁させてもよい。
【0519】
別の実施形態では、T細胞は、例えば、PERCOLL(商標)勾配による遠心分離により、または向流遠心溶出により、赤血球を溶解し単球を枯渇させることによって、末梢血リンパ球から単離される。CD4CD25などのT細胞の特定の亜集団、特に、例えばCD4CD25CD127loCD45RAなどの、CD4CD25CD127loは、陽性または陰性の選択技術によってさらに分離できる。例えば、一実施形態では、T細胞は、所望のT細胞の陽性選択に十分な期間、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 Tなどの抗CD3/抗CD28(すなわち、3x28)コンジュゲートビーズとのインキュベーションにより単離される。一実施形態では、期間は約30分である。さらなる実施形態では、期間は、30分~36時間またはそれより長い範囲であり、その間のすべての整数値の範囲である。さらなる実施形態では、期間は少なくとも1、2、3、4、5、または6時間である。さらに別の好ましい実施形態では、期間は10~24時間である。好ましい一実施形態では、インキュベーション時間は24時間である。白血病患者からのT細胞の単離のために、24時間などの長いインキュベーション時間の使用は、細胞収量を増加させ得る。腫瘍組織からまたは免疫不全の個人から腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を単離する場合などの、他の細胞型と比較してT細胞が少ないあらゆる状況では、より長いインキュベーション時間を用いて、T細胞を単離し得る。したがって、T細胞がCD3/CD28ビーズに結合できる時間を単に短縮することまたは延長することにより、かつ/またはT細胞に対するビーズの比を増減することにより(ここでさらに記載する)、T細胞の亜集団を培養開始時にまたはプロセス中の他の時点でそれに関して、またはそれに対して、優先的に選択できる。さらに、ビーズまたは他の表面上の抗CD3および/または抗CD28抗体の比を増減することにより、T細胞の亜集団を培養開始時にまたは他の所望の時点で、それに関して、またはそれに対して、優先的に選択できる。当業者であれば、複数の選択ラウンドもまた、本発明の文脈において使用され得ることを認識するであろう。
【0520】
別の実施形態では、選択手順を実行し、「未選択」細胞を活性化および拡張プロセスで使用することが望ましい場合がある。「未選択」細胞は、さらなる選択ラウンドに供してもよい。陰性選択によるT細胞集団の濃縮は、陰性選択細胞に特有の表面マーカーに指向された抗体の組み合わせにより達成できる。1つの方法は、陰性選択された細胞上に存在する細胞表面マーカーに指向されたモノクローナル抗体のカクテルを使用する陰性磁気免疫接着またはフローサイトメトリーによる細胞の分取および/または選択である。例えば、陰性選択によってCD4細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。ある実施形態では、典型的には以下の表現型CD4、CD25、CD62Lhi、GITR、およびFoxP3を有する調節性T細胞を濃縮するか、または陽性選択することが望ましい場合がある。あるいは、ある実施形態では、T調節性細胞は、抗CD25コンジュゲートビーズまたは他の類似の選択方法によって枯渇させられる。
【0521】
陽性または陰性選択により所望の細胞集団を単離するために、細胞の濃度および表面(例えば、ビーズなどの粒子)を変えることができる。ある実施形態では、細胞とビーズの最大の接触を確保するために、ビーズおよび細胞が一緒に混合される体積を著しく減少させる(すなわち、細胞の濃度を増加させる)ことが望ましい場合がある。例えば、一実施形態では、濃度20億細胞/mlが使用される。一実施形態では、濃度10億細胞/mlが使用される。さらなる実施形態では、1億を超える細胞/mlが使用される。さらなる実施形態では、10、15、20、25、30、35、40、45、または5000万細胞/mlの細胞濃度が使用される。さらに別の実施形態では、7500万、8000万、8500万、9000万、9500万、または1億細胞/mlの細胞濃度が使用される。さらなる実施形態では、1億2500万または1億5000万細胞/mlの濃度を使用できる。高濃度を使用することにより、細胞収量、細胞活性化、および細胞拡張が増加し得る。さらに、高細胞濃度を使用することで、CD28陰性T細胞などの目的の標的抗原を弱く発現し得る細胞、または多くの腫瘍細胞が存在する試料(すなわち、白血病血液、腫瘍組織など)由来の細胞をより効率的に捕捉できる。こうした細胞の集団は、治療的価値を有し得、これらを得ることが望ましい。
【0522】
刺激用のT細胞は、洗浄ステップ後に凍結することもできる。理論に拘束されることを望むものではないが、凍結およびその後の解凍ステップは、細胞集団中の顆粒球およびある程度まで単球を除去することにより、より均一な産物をもたらす。血漿および血小板を除去する洗浄ステップの後で、細胞は凍結溶液に懸濁され得る。多くの凍結溶液およびパラメータは、当技術分野で公知であり、この状況で有用であり、1つの方法は、20%DMSOおよび8%ヒト血清アルブミンを含むPBS、または10%デキストラン40および5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミンおよび7.5%DMSO、もしくは31.25%プラズマライトA、31.25%デキストロース5%、0.45%NaCl、10%デキストラン40および5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミン、7.5%DMSOを含む培地、または例えば、ヘスパンおよびプラズマライトAを含む他の好適な細胞凍結培地を使用することを伴い、細胞を次いで、毎分1℃の速度で-80℃に凍結し、液体窒素貯蔵タンクの気相に貯蔵する。制御された凍結の他の方法を使用でき、ならびに-20℃でまたは液体窒素中で制御されない凍結を直接使用できる。
【0523】
ある実施形態では、凍結保存された細胞は、本明細書に記載されるとおり解凍され、かつ洗浄され、活性化の前に室温で1時間静置される。
【0524】
また、本発明の文脈において企図されるのは、本明細書に記載されるような拡張された細胞が必要となり得る前の期間において、対象から血液試料またはアフェレーシス産物を収集することである。したがって、拡張される細胞の供給源を、必要な任意の時点で収集でき、かつT細胞などの所望の細胞を、本明細書に記載されているものなど、T細胞療法から利益を得るであろう任意の数の疾患または状態に対するT細胞療法での後の使用のために、単離しかつ凍結することができる。一実施形態では、血液試料またはアフェレーシスは、一般的に健康な対象から採取される。ある実施形態では、血液試料またはアフェレーシスは、疾患を発症するリスクがあるが、まだ疾患を発症していない一般的に健康な対象から採取され、目的の細胞は、後の使用のために単離され、かつ凍結される。ある実施形態では、T細胞は、拡張され、凍結され、後で使用され得る。
【0525】
望ましいCARを発現するためのT細胞(好ましくはTreg細胞)の遺伝子改変の前または後にかかわらず、T細胞は、例えば米国特許第6,352,694号、同第6,534,055号、同第6,905,680号、同第6,692,964号、同第5,858,358号、同第6,887,466号、同第6,905,681号、同第7,144,575号、同第7,067,318号、同第7,172,869号、同第7,232,566号、同第7,175,843号、同第5,883,223号、同第6,905,874号、同第6,797,514号、同第6,867,041号および同第2006/0121005号(これらは、参照によって本明細書に組み込まれる)に記載の方法を一般に用いて、活性化され、拡張され得る。
【0526】
一般に、本発明のT細胞(好ましくはTreg細胞)集団は、それに接着されたCD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する剤およびT(好ましくはTreg)細胞集団の細胞の表面の共刺激分子を刺激するリガンドを有する表面との接触により拡張される。特に、T(好ましくはTreg)細胞集団は、抗CD3抗体もしくはその抗原結合断片、または表面に固定化された抗CD2抗体との接触によって、またはカルシウムイオノフォアと組み合わせたプロテインキナーゼC活性化因子(例えば、ブリオスタチン)との接触などによってなど、本明細書に記載されるとおり刺激され得る。T細胞の表面上のアクセサリー分子を共刺激するために、アクセサリー分子を結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞の集団は、T細胞の増殖を刺激するのに適切な条件下で、抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触させることができる。いずれかのCD4T細胞の増殖を刺激するために、抗CD3抗体および抗CD28抗体が使用され得る。抗CD28抗体の例としては、これらに限定されないが、9.3、B-T3、XR-CD28(Diaclone、Besancon、France)が挙げられる。当技術分野で一般に公知である他の拡張方法が使用され得る(Bergら、Transplant Proc.30(8):3975-3977、1998年、Haanenら、J.Exp.Med.190(9):13191328、1999年、Garlandら、J.Immunol Meth.227(l-2):53-63、1999年)。
【0527】
ある実施形態では、T(好ましくは、Treg)細胞集団の細胞に対する一次刺激シグナルおよび共刺激シグナルは、異なるプロトコルによってもたらされ得る。例えば、各シグナルをもたらす剤は、溶液中にあるか、または表面に結合されていてもよい。表面に結合されるとき、剤は同じ表面に結合され得るか(すなわち、「シス」形成)、または別個の表面に結合され得る(すなわち、「トランス」形成)。あるいは、1つの剤が表面に結合され、他方の剤が溶液中にあってもよい。一実施形態では、共刺激シグナルをもたらす剤は細胞表面に結合され、一次活性化シグナルを提供する剤は溶液中にあるか、または表面に結合される。ある実施形態では、両方の剤が溶液中にあり得る。別の実施形態では、剤は、可溶性形態であり得、次いで、Fc受容体を発現する細胞、または抗体、または剤に結合する他の結合剤などの、表面に架橋され得る。これに関して、本発明におけるT細胞の活性化および拡張における使用が企図される人工抗原提示細胞(aAPC)についての、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第20040101519号および同第20060034810号を参照されたい。
【0528】
一実施形態では、2つの剤は、同じビーズ上、すなわち「シス」、または別個のビーズに、すなわち「トランス」のいずれかで、ビーズ上に固定化される。一例として、一次活性化シグナルを提供する剤は、抗CD3抗体またはその抗原結合断片であり、共刺激シグナルを提供する剤は、抗CD28抗体またはその抗原結合断片であり、両方の剤は、同じ分子量で同じビーズに共固定化される。一実施形態では、CD4T細胞拡張およびT細胞成長のためにビーズに結合された各抗体の比1:1を使用する。本発明の特定の態様では、ビーズに結合された抗CD3:CD28抗体の比は、1:1の比を使用して観察される拡張と比較してT細胞拡張が増加していることが観察されるように使用される。1つの特定の実施形態では、1:1の比を使用して観察される拡張と比較して、約1~約3倍の増加が観察される。一実施形態では、ビーズに結合されたCD3:CD28抗体の比は、100:1~1:100およびそれらの間のすべての整数値の範囲である。本発明の一態様では、抗CD3抗体よりも多くの抗CD28抗体が粒子に結合され、すなわち、CD3:CD28の比は1未満である。本発明のある実施形態では、ビーズに結合された抗CD28抗体対抗CD3抗体の比は、2:1より大きい。特定の一実施形態では、ビーズに結合された抗体の1:100のCD3:CD28比が使用される。他の実施形態では、ビーズに結合された抗体の1:75のCD3:CD28比が使用される。さらなる実施形態では、ビーズに結合された抗体の1:50のCD3:CD28比が使用される。別の実施形態では、ビーズに結合された抗体の1:30のCD3:CD28比が使用される。1つの好ましい実施形態では、ビーズに結合された抗体の1:10のCD3:CD28比が使用される。他の実施形態では、ビーズに結合された抗体の1:3のCD3:CD28比が使用される。さらに別の実施形態では、ビーズに結合された抗体の3:1のCD3:CD28比が使用される。
【0529】
1:500~500:1のおよびその間の任意の整数値の粒子対細胞の比を使用して、T細胞または他の標的細胞を刺激できる。当業者が容易に理解できるように、粒子対細胞の比は、標的細胞に対する粒子サイズに依存し得る。例えば、サイズの小さいビーズは少数の細胞にのみ結合し得るが、大きいビーズは多くの細胞に結合できる。ある実施形態では、細胞対粒子の比は、1:100~100:1およびその間の任意の整数値の範囲であり、さらなる実施形態では、比は、1:9~9:1、およびその間の任意の整数値を含み、T細胞を刺激するために使用される。T細胞刺激をもたらす抗CD3および抗CD28結合粒子対T細胞の比は、上記のように変化し得る。しかし、特定の好ましい値としては、1:100、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、および15:1が挙げられ、1つの好ましい比は、T細胞あたり少なくとも1:1の粒子である。1つの実施形態では、1:1以下の粒子対細胞の比が使用される。特定の一実施形態では、好ましい粒子:細胞比は1:5である。さらなる実施形態では、粒子対細胞比は、刺激の日に応じて変化させ得る。例えば、一実施形態では、粒子対細胞比は、1日目に1:1~10:1であり、追加の粒子は、1:1~1:10の最終的な比で(添加の日の細胞数に基づく)、その後最大10日間、毎日または隔日で細胞に添加される。1つの特定の実施形態では、粒子対細胞の比は、刺激の1日目に1:1であり、刺激の3日目および5日目に1:5に調整される。別の実施形態では、粒子は、毎日または隔日で、刺激の1日目には最終比1:1、3日目および5日目には最終比1:5まで添加される。別の実施形態では、粒子対細胞比は、刺激の1日目に2:1であり、刺激の3日目および5日目に1:10に調整される。別の実施形態では、粒子は、毎日または隔日で、刺激の1日目には最終比1:1、3日目および5日目には最終比1:10まで添加される。当業者であれば、様々な他の比が本発明での使用に好適であり得ることを理解するであろう。特に、比は、粒子サイズならびに細胞のサイズおよびタイプによって異なる。
【0530】
本発明のさらなる実施形態では、T細胞(好ましくはTreg細胞)は、剤でコーティングされたビーズと組み合わされ、ビーズおよび細胞はその後分離され、次いで細胞が培養される。代替的実施形態では、培養前に、剤でコーティングされたビーズおよび細胞は分離されないが、一緒に培養される。さらなる実施形態では、ビーズおよび細胞は、磁力などの力を加えることによって最初に濃縮され、その結果、細胞表面マーカーのライゲーションが増加し、それによって細胞刺激を誘導する。
【0531】
一例として、細胞表面タンパク質は、抗CD3および抗CD28が接着される常磁性ビーズ(3x28ビーズ)をTreg細胞集団の細胞と接触させることにより連結され得る。一実施形態では、細胞(例えば、10~10T細胞)およびビーズ(例えば、1:1の比のDYNABEADS(商標登録)M-450 CD3/CD28 T常磁性ビーズ)は、緩衝液、好ましくはPBS(カルシウムおよびマグネシウムなどの二価カチオンを含まない)中で組み合わされる。この場合も、当業者であれば、任意の細胞濃度を使用し得ることを容易に理解できる。例えば、標的細胞は、試料中で非常にまれであり得、かつ試料の0.01%のみを構成し得るか、または試料全体(すなわち、100%)が、目的の標的細胞を含み得る。したがって、いずれの細胞数も本発明の範囲内である。ある実施形態では、細胞と粒子の最大の接触を確保するために、粒子および細胞が一緒に混合される体積を著しく減少させる(すなわち、細胞の濃度を増加させる)ことが望ましい場合がある。例えば、一実施形態では、約20億細胞/mlの濃度が使用される。別の実施形態では、1億個を超える細胞/mlが使用される。さらなる実施形態では、10、15、20、25、30、35、40、45、または5000万細胞/mlの細胞の濃度が使用される。さらに別の実施形態では、7500万、8000万、8500万、9000万、9500万、または1億細胞/mlからの細胞の濃度が使用される。さらなる実施形態では、1億2500万または1億5000万細胞/mlの濃度を使用できる。高濃度を使用することにより、細胞収量、細胞活性化、および細胞拡張が増加し得る。さらに、高細胞濃度を使用することにより、CD28陰性T細胞などの、目的の標的抗原を弱く発現し得る細胞をより効率的に捕捉できる。こうした細胞の集団は、治療的価値を有し得、ある実施形態ではこれらの集団を得ることが望ましいであろう。
【0532】
本発明の一実施形態では、混合物は、数時間(約3時間)~約14日間またはその間の任意の時間整数値の間培養されてよい。別の実施形態では、混合物は、21日間培養され得る。本発明の一実施形態では、ビーズおよびT細胞は、約8日間一緒に培養される。別の実施形態では、ビーズおよびT細胞は、2~3日間一緒に培養される。T細胞の培養時間が60日以上になり得るように、刺激が数サイクルの刺激が望ましい場合もある。T細胞培養に適した条件としては、血清(例えば、ウシ胎児またはヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGFβ、およびTNF-αまたは当業者に公知である細胞の成長のための他の添加物を含む、増殖および生存に必要な因子を含み得る適切な培地(例えば、Minimal Essential MediaまたはRPMI Media1640、またはX-vivo15(Lonza))が挙げられる。細胞の成長のための他の添加剤としては、これらに限定されないが、界面活性剤、プラズマ酸塩、および還元剤、例えば、N-アセチル-システインおよび2-メルカプトエタノールが挙げられる。培地としては、RPMI 1640、AIM-V、DMEM、MEM、a-MEM、F-12、X-Vivo 15、およびX-Vivo 20オプティマイザーを挙げることができ、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびビタミンが添加されており、血清を含まないか、または適切な量の血清(または血漿)もしくは規定されたホルモンのセット、および/またはT細胞の成長および増殖に十分な量のサイトカイン(複数可)が補充されているかのいずれかである。抗生物質、例えば、ペニシリンおよびストレプトマイシンは、実験培養にのみ含まれ、対象に注入される細胞の培養には含まれない。標的細胞は、成長を支持するのに必要な条件下、例えば、適切な温度(例えば、37℃)および大気(例えば、空気および5%CO)で維持される。
【0533】
様々な刺激時間に供されたT細胞は、異なる特性を呈し得る。例えば、典型的な血液またはアフェレーシスされた末梢血単核細胞産物は、細胞毒性またはサプレッサーT細胞集団(Tc、CD8)よりも多くのヘルパーT細胞集団(Th、CD4)を有する。CD3受容体およびCD28受容体を刺激することによるT細胞のex vivo拡張は、約8~9日より前は主にTh細胞からなるT細胞の集団を生成し、一方で約8~9日後に、T細胞の集団はより多くのTc細胞の集団を含む。したがって、治療の目的に応じて、主にTh細胞を含むT細胞集団を対象に注入することが有利であり得る。同様に、Tc細胞の抗原特異的サブセットが単離されている場合は、このサブセットをさらに拡張することが有益であり得る。
【0534】
さらに、CD4マーカーおよびCD8マーカーに加えて、他の表現型マーカーは大幅に、しかし多くの部分において、細胞拡張プロセスの過程で再現的に、異なる。したがって、こうした再現性は、特定の目的のために活性化されたT細胞産物を調整する能力を可能にする。
【0535】
本発明の一実施形態では、例えば参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2007110785号に記載されるように、調節性T細胞を得るために、T細胞をラパマイシンの存在下で培養してもよい。調節性T細胞を生成する別の方法は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第2016024470号に記載され、ここでは、T細胞は、例えばTCR/CD3抗体などのT細胞受容体(TCR)/CD3活性化因子、例えばCD28、CD137(4-1 BB)、GITR、B7-1/2、CD5、ICOS、OX40、CD40またはCD137抗体などのTCR共刺激因子活性化因子、およびラパマイシンと共に培養される。
【0536】
本発明の一実施形態では、CARの発現により遺伝子改変されたT細胞は、ROR-C、Foxo1、T-bet、またはGata 3、c-Maf、AhRなどの少なくとも1つの細胞内因子の発現により遺伝子改変されていてもよい。一実施形態では、本発明の遺伝子改変された免疫細胞は、Foxo1を発現する。
【0537】
一実施形態では、本発明の遺伝子改変された細胞は、例えば、同種T細胞またはTreg細胞などの同種免疫細胞であり得る。例えば、同種免疫細胞は、機能的ヒト白血球抗原(HLA)、例えば、HLAクラスIおよび/またはHLAクラスIIの発現がないか、または機能的T細胞受容体(TCR)の発現のない免疫細胞であり得る。
【0538】
一実施形態では、機能的TCRを欠くT細胞は、その表面にいかなる機能的TCRも発現しないように操作できるか、機能的TCRを含む1つ以上のサブユニットを発現しないように操作できるか、またはその表面に機能的TCRをほとんど生成しないように操作できる。あるいは、T細胞は、例えば、TCRのサブユニットの1つ以上の変異型または切り詰め型の発現により、実質的に損なわれたTCRを発現できる。「実質的に損なわれたTCR」という用語は、宿主において、このTCRが有害な免疫反応を誘発しないことを意味する。
【0539】
別の実施形態では、本明細書に記載の遺伝子改変細胞は、その表面に機能的HLAを発現しないように操作できる。例えば、本明細書に記載の免疫細胞は、細胞表面発現HLA、例えばHLAクラス1および/またはHLAクラスIIまたは非古典的HLA分子がダウンレギュレートされるように操作できる。
【0540】
別の実施形態では、T細胞は、機能的TCR、ならびにHLAクラスIおよび/またはHLAクラスIIなどの機能的HLAを欠いてもよい。
【0541】
機能性TCRおよび/HLAの発現を欠く改変免疫細胞(例えば、改変されたT細胞またはTreg細胞など)は、TCRおよび/またはHLAの1つ以上のサブユニットのノックアウトまたはノックダウンを含む、任意の好適な手段によって得ることができる。例えば、免疫細胞としては、siRNA、shRNA、クラスタ化規則的スペース間短鎖パリンドローム反復(CRISPR)転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーエンドヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ(mn、ホーミングエンドヌクレアーゼとしても公知である)、またはmegaTAL(TALエフェクターとmn切断ドメインとを組み合わせたもの)を用いる、TCRおよび/またはHLAのノックダウンを挙げることができる(Osbornら、「Evaluation of TCR Gene Editing Achieved by TALENs,CRISPR/Cas9,and megaTAL Nucleases」Mol Ther.2016年Mar;24(3):570-81)。
【0542】
一実施形態では、TCR発現および/またはHLA発現は、T細胞においてTCRおよび/またはHLAをコードする核酸を標的とするsiRNAまたはshRNAを使用して阻害できる。T細胞中のsiRNAおよびshRNAの発現は、例えばレンチウイルス発現系などの任意の従来の発現系を使用して達成できる。HLAクラスIおよび/またはHLAクラスII遺伝子の発現をダウンレギュレートする例示的なsiRNAおよびshRNAは、例えば米国特許第2007/0036773号に記載されている。TCRの成分の発現をダウンレギュレートする例示的なshRNAは、例えば、米国特許第2012/0321667号に記載されている。
【0543】
本明細書で使用される「CRISPR」または「TCRおよび/もしくはHLAに対するCRISPR」または「TCRおよび/もしくはHLAを阻害するためのCRISPR」は、クラスタ化規則的スペース間短鎖パリンドローム反復のセット、またはこうした反復のセットを含む系を指す。本明細書で使用される「Cas」は、CRISPR関連タンパク質を指す。「CRISPR/Cas」系は、CRISPRおよびCasに由来する系を指し、TCRおよび/またはHLA遺伝子のサイレンシングまたは変異に使用できる。
【0544】
天然に存在するCRISPR/Cas系は、配列決定された真正細菌ゲノムの約40%、および配列決定された古細菌の約90%に見られる。Grissaら(2007年)BMC Bioinformatics 8:172。この系は、プラスミドおよびファージなどの外来遺伝エレメントに対する寛容を付与する原核生物の免疫系の一種であり、獲得免疫の形態を提供する。Barrangouら(2007年)Science 315:1709-1712;Marraginiら(2008年)Science 322:1843-1845。CRISPR/Cas系は、マウスまたは霊長類などの真核生物の遺伝子編集(特定の遺伝子のサイレンシング、促進、変更)において使用するために改変されている。Wiedenheftら(2012年)Nature 482:331-8。これは、特別に設計されたCRISPRと1つ以上の適切なCasを含むプラスミドを真核細胞に導入することによって達成される。CRISPR遺伝子座と呼ばれることもあるCRISPR配列は、交互の反復およびスペーサーを含む。天然に存在するCRISPRでは、スペーサーは通常、プラスミドまたはファージ配列などの、細菌にとって外来である配列を含む。TCRおよび/またはHLA CRISPR/Cas系では、スペーサーは、TCRまたはHLA遺伝子配列に由来する。CRISPR遺伝子座のRNAは構成的に発現され、Casタンパク質により小さいRNAへと処理される。これらは、反復配列が隣接するスペーサーを含む。RNAは、他のCasタンパク質を誘導して、RNAまたはDNAレベルで外因性の遺伝的エレメントを抑制する。Horvathら、(2010年)Science 327:167-170;Makarovaら、(2006年)Biology Direct1:7。スペーサーはしたがって、siRNAと同様に、RNA分子の鋳型として機能する。Pennisi(2013年)Science341:833-836。CRISPR/Cas系はしたがって、TCRおよび/もしくはHLA遺伝子の編集(塩基対の不可または削除)、またはTCRおよび/もしくはHLAの発現を減少させる早期の停止の導入に使用できる。あるいは、CRISPR/Cas系をRNA干渉のように使用し、HLA遺伝子を可逆的様式でオフにすることもできる。哺乳動物細胞では、例えば、RNAはCasタンパク質をTCRおよび/またはHLAプロモーターに誘導し、RNAポリメラーゼを立体的にブロックできる。
【0545】
TCRおよび/またはHLAを阻害する人工CRISPR/Casシステムを、当技術分野で公知の技術、例えば、米国特許第20140068797号、およびCong(2013年)Science 339:819-823に記載されているものを使用して生成できる。TCRおよび/またはHLAを阻害する当技術分野で公知である、例えば、Tsai(2014)Nature Biotechnol、32:6 569-576、米国特許第8,871,445号、同第8,865,406号、同第8,795,965号、同第8,771,945号、および同第8,697,359号に記載される、他の人工CRISPR/Cas系もまた生成し得る。
【0546】
「TALEN」または「TCRおよび/もしくはHLAに対するTALEN」または「TCRおよび/もしくはHLAを阻害するためのTALEN」は、TCRおよび/もしくはHLAを編集するために使用できる人工ヌクレアーゼである転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼを指す。TALENは、TALエフェクターDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合することによって人工的に生成される。転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、TCRおよび/またはHLA遺伝子の一部分を含む、任意の所望のDNA配列に結合するように操作されてよい。操作されたTALEをDNA切断ドメインと組み合わせることにより、TCRおよび/またはHLA配列を含む、任意の所望のDNA配列に特異的な制限酵素を生成できる。次に、これらの酵素を細胞に導入し、そこでこれらの酵素をゲノム編集に使用できる。Boch(2011年)Nature Biotech.29:135-6;およびBochら(2009年)Science 326:1509-12;Moscouら(2009年)Science 326:3501。
【0547】
TALEは、キサントモナス属細菌によって分泌されるタンパク質である。DNA結合ドメインは、12番目と13番目のアミノ酸を除き、繰り返される高度に保存された33~34のアミノ酸配列を含む。これらの2つの位置は、非常に可変性であり、特定のヌクレオチド認識との強い相関を示している。したがって、それらを、所望のDNA配列に結合するように操作できる。TALENを産生するには、TALEタンパク質を、野生型または変異型のFok1エンドヌクレアーゼであるヌクレアーゼ(N)に融合する。TALENでの使用のために、いくつかの変異をFoklに行った。これらは、例えば、切断特異性または活性を改善する。Cermakら(2011年)Nucl.Acids Res.39:e82;Millerら(2011年)Nature Biotech.29:143-8;Hockemeyerら(2011年)Nature Biotech.29:731-734;Woodら(2011年)Science333:307;Doyonら(2010年)Nature Methods 8:74-79;Szczepekら(2007年)Nature Biotech.25:786-793;およびGuoら(2010年)/Mol.Biol.200:96。Foklドメインは二量体として機能し、適切な配向および間隔を有する標的ゲノム中の部位に対する固有のDNA結合ドメインを有する2つの構築物を必要とする。TALE DNA結合ドメインとFok1切断ドメインの間のアミノ酸残基の数、および2つの個々のTALEN結合部位の間の塩基の数はどちらも、高レベルの活性を達成するための重要なパラメータであると考えられる。Millerら(2011年)Nature Biotech.29:143-8。TCRおよび/またはHLA TALENを細胞内で使用して、二本鎖中断(DSB)を生成できる。修復メカニズムが非相同末端結合を介して中断を不適切に修復すると、突然変異が中断部位に導入され得る。例えば、不適切な修復は、フレームシフト変異を導入し得る。あるいは、外来DNAを、外来DNAの配列および染色体配列に応じて、TALENと共に細胞に導入することもできる。このプロセスを使用して、TCRおよび/またはHLA遺伝子中の欠陥を修正するか、こうした欠陥をwt TCRおよび/またはHLA遺伝子に導入して、TCRおよび/またはHLAの発現を減少させることができる。TCRおよび/またはHLA中の配列に固有のTALENは、モジュール式コンポーネントを使用する様々なスキームを含む、当技術分野で公知の任意の方法を使用して構築できる。Zhangら(2011年)Nature Biotech.29:149-53;Geiblerら(2011年)PLoS ONE 6:el9509。
【0548】
「ZFN」または「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」または「TCRおよび/もしくはHLAに対するZFN」または「TCRおよび/もしくはHLAを阻害するためのZFN」は、TCRおよび/もしくはHLA遺伝子の編集に使用できる人工ヌクレアーゼであるジンクフィンガーヌクレアーゼを指す。TALENと同様に、ZFNは、DNA結合ドメインに融合されたFok1ヌクレアーゼドメイン(またはその誘導体)を含む。ZFNの場合、DNA結合ドメインは、1つ以上のジンクフィンガーを含む。Carrollら(2011年)Genetics Society of America 188:773-782;およびKimら(1996年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:1156-1160。ジンクフィンガーは、1つ以上の亜鉛イオンによって安定化された小さいタンパク質構造モチーフである。ジンクフィンガーは、例えば、CysHisを含んでよく、約3bpの配列を認識できる。既知の特異性の様々なジンクフィンガーを組み合わせて、約6、9、12、15、または18bpの配列を認識するマルチフィンガーポリペプチドを生成できる。ファージディスプレイ、酵母ワンハイブリッド系、細菌ワンハイブリッド系およびツーハイブリッド系、ならびに哺乳動物細胞を含む、様々な選択およびモジュラーアセンブリ技術が、特定の配列を認識するジンクフィンガー(およびその組み合わせ)を生成するために利用できる。
【0549】
TALENと同様に、ZFNはDNAを切断するために二量体化する必要がある。したがって、ZFNのペアが、非パリンドロームDNA部位を標的にするために必要とされる。2つの個々のZFNは、それらのヌクレアーゼを適切に離間させてDNAの反対の鎖に結合する必要がある。Bitinaiteら(1998年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA95:10570-5。またTALENと同様に、ZFNは、DNA内で二本鎖の中断を生じることができ、これは不適切に修復された場合フレームシフト変異を生じ得、細胞中のTCRおよび/またはHLAの発現および量の減少をもたらす。ZFNはまた、相同組換えと共に使用されてTCRおよび/またはHLA遺伝子中で突然変異を起こすこともできる。TCRおよび/またはHLA中の配列に特異的なZFNは、当技術分野で公知の任意の方法を使用して構築できる。例えば、Provasi(2011年)Nature Med.18:807-815;Torikai(2013年)Blood 122:1341-1349;Cathomenら(2008年)Mol.Ther.16:1200-7;Quoら(2010年)/Mol.Biol.400:96;米国特許第2011/0158957号、および米国特許第2012/0060230号を参照されたい。
【0550】
「メガヌクレアーゼ」または「TCRおよび/またはHLAに対するメガヌクレアーゼ」または「TCRおよび/またはHLAを阻害するためのメガヌクレアーゼ」は、大きい(>14塩基対)認識部位を有する単量体エンドヌクレアーゼを指し、これはTCRおよび/またはHLA遺伝子の編集に使用できる。メガヌクレアーゼ(mn)は、細菌のホーミングエンドヌクレアーゼに由来し固有の標的部位用に操作された、天然ヌクレアーゼ活性を有する単量体タンパク質である。ホーミングエンドヌクレアーゼは、それらの宿主ゲノム中の個々の遺伝子座で二本鎖中断を生成できるDNA切断酵素であり、それによって部位特異的な遺伝子変換イベントを引き起こす(Stoddard、Structure.2011年1月12日;19(1):7-15)。それらの小さなサイズにもかかわらず、ホーミングエンドヌクレアーゼは長いDNA配列(典型的には、20~30塩基対)を認識する。ホーミングエンドヌクレアーゼは、非常に広く存在し、微生物で、ならびにファージおよびウイルスでも見られる。LAGLIDADGおよびHis-Cysボックス酵素(これらは、これらの酵素の中で最も配列特異的である)は、それらのDNA標的部位の主溝にドッキングする逆平行βシートに依存する(Flickら、1998年;Juricaら、1998年)。そこで、それらは、複数の連続する塩基対にわたって不均一に分布する配列特異的および非特異的な接触のコレクションを確立する(Chevalierら、2003年;Scalley-Kimら、2007年)。
【0551】
LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ(LHE)ファミリーは、遺伝子標的化用途に使用される操作された酵素の主要な供給源である。LHEファミリーは、主に、古細菌内で、ならびに藻類および真菌の葉緑体およびミトコンドリアのゲノム中でコードされている(Chevalierら、2005年、Dalgaardら、1997年、Sethuramanら、2009年)。タンパク質鎖あたり1つの保存されたLAGLIDADGモチーフ(配列番号85)を有するメガヌクレアーゼは、パリンドロームおよびほぼパリンドロームのDNA標的配列を切断するホモ二量体タンパク質を形成し、一方でタンパク質鎖あたりこのようなモチーフを2つ含むメガヌクレアーゼは、完全に非対称のDNA配列を標的にし得る、より大きい擬似対称モノマーを形成する。
【0552】
メガヌクレアーゼは、TCRおよび/またはHLAを標的とするように操作することができ、このためDNA中に二本鎖の中断を生じ、これは不適切に修復された場合フレームシフト変異を生じ得、細胞中のTCRおよび/またはHLAの発現および量の減少をもたらす。
【0553】
「MegaTAL」または「TCRおよび/もしくはHLAに対するmegaTAL」または「TCRおよび/もしくはHLAを阻害するためのmegatalTAL」は、TCRおよび/またはHLA遺伝子の編集に使用できる、人工ヌクレアーゼを指す。MegaTALは、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼファミリーに由来するメガヌクレアーゼのN末端への最小TAL(転写活性化因子様)エフェクタードメインの融合によって得られるハイブリッド単量体ヌクレアーゼである(Nucleic Acids Res.2014年2月;42(4):2591-601;Takeuchiら、Methods Mol Biol.2015;1239:105-32.doi:10.1007/978-1-4939-1862-1_6)。したがって、MegaTALは、TALエフェクターDNA結合ドメインによってもたらされるさらなる親和性および特異性を有する部位特異的メガヌクレアーゼ切断ヘッドで構成される。MegaTALは、TCRおよび/またはHLAを標的とするように操作することができ、このためDNA中に二本鎖の中断を生じ、これは不適切に修復された場合フレームシフト変異を引き起こし得、細胞中のHLAの発現および量の減少をもたらす。I-OnuIメガヌクレアーゼ(mn)の多様体を使用してTCRα-megaTALを設計し、T細胞受容体アルファ(TCRα)遺伝子をノックアウトした。TCRαmnを、TCRαmn結合部位の上流のDNA配列に結合するように設計された10.5リピートTALEアレイに融合した。TCRαを標的とするmegaTALは、ヒト初代T細胞中で検出可能なオフターゲット切断を伴わずに、非常に高い遺伝子破壊を達成したことが判明した
(Boisselら、Nucleic Acids Res.2014年2月;42(4):2591-601)。
【0554】
任意の特定の理論に束縛されることを望むものではないが、いくつかの実施形態では、治療用T細胞は、T細胞中のテロメアの短縮により、患者において短期間の持続性を有する。したがって、テロメラーゼ遺伝子によるトランスフェクションは、T細胞のテロメアを伸長させ、かつ患者におけるT細胞の持続性を改善し得る。Carl June「Adoptive T cell therapy for cancer in the clinic」Journal of Clinical Investigation、117:1466-1476(2007年)を参照されたい。したがって、一実施形態では、本発明の遺伝子改変免疫細胞は、テロメラーゼサブユニット、例えば、テロメラーゼの触媒サブユニット、例えば、TERT、例えば、hTERTを、異所的に発現する。いくつかの態様では、本開示は、テロメラーゼサブユニット、例えばテロメラーゼの触媒サブユニット、例えばTERT、例えばhTERT、をコードする核酸と免疫細胞を接触させることを含む、CAR発現免疫細胞を産生する方法を提供する。細胞は、CARをコードする構築物と接触される前に、同時に、または後に核酸と接触されてよい。
【0555】
本発明の別の目的は、本発明の少なくとも1つの免疫細胞または免疫集団を含むか、またはこれらからなるか、または本質的にこれらからなる組成物である。
【0556】
一実施形態では、組成物は、本発明の少なくとも1つの単離された、かつ/または実質的に精製された免疫細胞集団を含むか、これらからなるか、または本質的にこれらからなる。
【0557】
一実施形態では、組成物は、凍結され解凍されている。
【0558】
本発明の別の目的は、本明細書に記載の少なくとも1つの免疫細胞または集団、および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含むか、これらからなる、またはこれらから本質的になる医薬組成物である。
【0559】
本発明の別の目的は、本明細書に記載される少なくとも1つの免疫細胞集団を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる医薬品である。
【0560】
一実施形態では、医薬組成物または医薬品は、本発明の単離された、および/または実質的に精製された免疫細胞集団を含む。
【0561】
本明細書で使用されるとき、医薬組成物または医薬品に関して「から本質的になる」という用語は、本発明の少なくとも1つの免疫細胞または集団が、医薬組成物または医薬品内で生物学的活性を有する唯一の治療剤または剤であることを意味する。
【0562】
こうした組成物および医薬品は、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水などの緩衝液、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトールなどの炭水化物;タンパク質;ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸;抗酸化剤;EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および防腐剤を含み得る。
【0563】
組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸血、移植(implantation)または移植(transplantation)を含む、任意の簡便な方法で行われ得る。本明細書に記載の組成物は、動脈内、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、脊髄内、筋肉内、静脈内(iv)注射、または腹腔内で患者に投与できる。一態様では、本発明の免疫細胞組成物は、皮内または皮下注射によって患者に投与される。
【0564】
一実施形態では、本発明の少なくとも1つの免疫細胞または集団は、静脈内注射によって投与される。
【0565】
したがって、本発明の組成物は、一実施形態では、静脈内投与用に配合される。
【0566】
一実施形態では、本発明の操作された免疫細胞は、特定の免疫または炎症応答の部位に免疫細胞を動員するため、および免疫細胞を活性化してこれらの部位における免疫エフェクター細胞の免疫学的活性を抑制するための手段として使用され得る。CAR媒介免疫細胞の動員および活性化はしたがって、それに対しこのような免疫抑制活性が有益である、多数の免疫学的疾患または障害を予防または治療する方法を提供し得る。
【0567】
一実施形態では、免疫細胞は、上記の調節性免疫細胞であり、好ましくは調節性T細胞、CD4調節性T細胞、CD8調節性T細胞、調節性γδT細胞、調節性DN T細胞、調節性B細胞、調節性NK細胞、調節性マクロファージ、調節性樹状細胞、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。
【0568】
一実施形態では、免疫細胞は、調節性T細胞である。調節性T細胞の活性化は抗原依存性であるが、これらの細胞の抑制作用は、抗原、TCR-、およびMHC-に依存しない。したがって、調節性T細胞におけるCARの発現は、これらの細胞およびそれらの活性化を適切な標的組織に再指向し、これにより、それらが抗原特異的な様式で活性化されるようになる。しかし、それらの抑制効果は、疾患関連抗原をさらに認識する必要なく生じる。したがって、調節性T細胞が、免疫エフェクター細胞が存在する場所の近傍にあり、かつそれらの望ましくない効果を媒介する限り、再指向された調節性T細胞はその場所でトリガーされ、または活性化されて、これらの抑制効果をもたらし得る。
【0569】
一実施形態では、標的HLA-A2抗原は、免疫エフェクター細胞によって媒介される望ましくない免疫応答もしくは炎症応答の部位もしくは標的組織に存在し得るか、または発現し得る。
【0570】
一実施形態では、本発明のCAR操作免疫細胞は、臓器または組織移植に関連する1つ以上の疾患、障害、症状、または状態(例えば、臓器または組織の拒絶反応/機能不全、GVHD、および/またはそれに関連する条件)の治療に使用され得る。移植拒絶反応は、免疫応答を介するレシピエントの免疫細胞によるドナーの移植組織の破壊を含む。免疫応答はGVHDにも関与している。しかし、この場合、レシピエントの組織は、移植を介してレシピエントに移されたドナーの免疫細胞によって破壊される。したがって、免疫細胞のCAR媒介再指向および活性化は、移植レシピエントにおいて免疫エフェクター細胞によるミスマッチ細胞および/または組織の拒絶反応を抑制する方法、またはGVHDの場合に移植された免疫担当細胞の病原性作用を阻害する方法を提供する。一実施形態では、ミスマッチ細胞および/または組織は、HLA-A2ミスマッチ細胞および/または組織を含む。
【0571】
したがって、本発明の別の目的は、対象において、臓器または組織移植に関連する1つ以上の疾患、障害、症状、または状態(例えば、臓器または組織拒絶反応/機能不全、GVHD、および/またはそれらに関連する状態)を治療するための方法であり、この方法は、本明細書に記載のCAR操作免疫細胞または組成物を対象に投与することを含む。
【0572】
一実施形態では、方法は細胞療法である。一実施形態では、細胞療法は自家である。一実施形態では、細胞療法は異種である。一実施形態では、細胞療法は同種異系である。一実施形態では、方法は遺伝子治療方法である。
【0573】
したがって、本発明の別の目的は、対象において、臓器または組織移植に関連する1つ以上の疾患、障害、症状、または状態(例えば、臓器または組織拒絶反応/機能不全、GVHD、および/またはそれらに関連する状態)の治療で使用するための、本明細書に記載のCAR操作免疫細胞または組成物である。
【0574】
本発明のCAR改変免疫細胞は、特に臓器または組織移植後の、対象における免疫寛容、操作寛容、および/または免疫順応を促進するためにさらに使用され得る。
【0575】
したがって、本発明の別の目的は、対象における免疫寛容、操作寛容、および/または免疫順応を促進する方法であり、この方法は、対象にCAR操作免疫細胞または本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む。一実施形態では、この方法は、対象における移植された臓器または組織に対する免疫寛容、操作寛容、および/または免疫順応を促進するためであり得る。
【0576】
一実施形態では、本発明のCAR操作免疫細胞(好ましくは、CAR操作Treg細胞)は、臓器または組織の移植と同時に、その前に、またはその後に投与される。
【0577】
一実施形態では、本発明のCAR操作免疫細胞(好ましくは、CAR操作Treg細胞)を使用して、移植された臓器または組織の拒絶反応を予防するか、または治療できる。移植された臓器または組織の拒絶反応の例としては、これらに限定されないが、移植された臓器または組織の超急性拒絶反応、および移植された臓器または組織の抗体媒介拒絶反応が挙げられる。
【0578】
一実施形態では、本発明の方法は、本発明のCAR操作免疫細胞(好ましくは、CAR操作Treg細胞)を、移植された臓器または組織に曝された対象に投与することを含む。
【0579】
一実施形態では、移植された臓器もしくは組織は、骨髄移植、臓器移植、輸血、または対象に意図的に導入される任意の他の外来組織もしくは細胞を含み得る。
【0580】
一実施形態では、本発明のCAR操作免疫細胞(好ましくは、CAR操作Treg細胞)は、これらに限定されないが、同種移植拒絶反応または異種移植拒絶反応を含む、移植後の移植拒絶反応を阻害する治療法として使用され得る。
【0581】
本発明の別の目的は、対象における臓器または組織移植拒絶反応を予防するか、または治療する方法であって、本方法は、本発明のCAR操作免疫細胞(好ましくはCAR操作Treg細胞)、または免疫細胞を含む医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0582】
本発明の別の目的はしたがって、対象において臓器または組織移植拒絶反応の予防または治療に使用するための、本発明のCAR操作免疫細胞(好ましくはCAR操作Treg細胞)、または免疫細胞を含む医薬組成物である。
【0583】
本発明の別の目的は、対象における移植片生存期間を延長する方法であって、本方法は、本発明のCAR操作免疫細胞(好ましくはCAR操作Treg細胞)、またはこれらを含む医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0584】
一実施形態では、この方法は、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、20年、30年、40年、50年、60年、70年、80年、90年、100年、または対象の寿命の移植片生存期間をもたらす。
【0585】
一実施形態では、対象は、いかなる免疫抑制剤療法も受けていない。
【0586】
一実施形態では、本発明の免疫細胞または組成物の投与は、対象が受ける免疫抑制剤療法の量を減らすことができる。
【0587】
一実施形態では、移植片は同種移植片である。一実施形態では、移植片は、レシピエントへの移植片の移植と同時に、その前に、またはその後に、本発明のCAR操作免疫細胞(好ましくはCAR操作Treg細胞)に曝露され得る。一実施形態では、臓器または組織移植は、心臓、心臓弁、肺、腎臓、肝臓、膵臓、腸、皮膚、血管、骨髄、幹細胞、骨、または島細胞であり得る。しかしながら、本発明は特定のタイプの移植に限定されない。
【0588】
一実施形態では、レシピエントに対する移植片の免疫原性を低下させ、それにより移植片拒絶反応を低減させるか予防するために、レシピエントに移植する前に臓器または組織移植片を本発明のCAR操作免疫細胞で処理することにより、ドナー移植片を「前調整(preconditioned)」または「前処理」できる。
【0589】
一実施形態では、移植宿主またはレシピエントは、HLA-A2陰性である。一実施形態では、移植宿主またはレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A03、HLA-A11、HLA-A23、HLA-A25、HLA-A26、HLA-A29、HLA-A30、HLA-A31、HLA-A33、およびHLA-A34からなる群から選択されるHLA-Aサブタイプについては陽性である。一実施形態では、移植宿主またはレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A25、HLA-A26、HLA-A29、およびHLA-A30からなる群から選択されるHLA-Aサブタイプについては陽性である。
【0590】
一実施形態では、移植片はHLA-A2陽性である。
【0591】
一実施形態では、本発明のCAR操作免疫細胞(好ましくは、CAR操作Treg細胞)を使用して、移植片対宿主病(GVHD)を予防または治療し得る。一実施形態では、本方法は、本発明のCAR操作免疫細胞(好ましくは、CAR操作Treg細胞)を、移植された臓器または組織に曝された対象に投与することを含む。一実施形態では、移植された臓器もしくは組織は、骨髄移植、臓器移植、輸血、または対象に意図的に導入される任意の他の外来組織もしくは細胞を含み得る。例えば、GVHDは、心臓、心臓弁、肺、腎臓、肝臓、膵臓、腸、皮膚、血管、骨髄、幹細胞、骨または島細胞の移植後に生じ得る。しかしながら、本発明は特定のタイプの移植に限定されない。
【0592】
一実施形態では、GVHDは、造血幹細胞移植後に起こり得る。
【0593】
本発明の別の目的はしたがって、対象における移植片対宿主病(GVHD)を予防するか、または治療する方法であって、本方法は、CAR操作免疫細胞(好ましくはCAR操作Treg細胞)または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0594】
一実施形態では、本発明は、レシピエントへの移植の移植と同時に、その前、またはその後に、ドナー移植片、例えば、生体適合性格子またはドナー組織、臓器または細胞を、本発明のCAR操作免疫細胞(好ましくはCAR操作Treg細胞)と接触させる方法を提供する。
【0595】
一実施形態では、本発明のCAR操作免疫細胞(好ましくはCAR操作Treg細胞)を使用してレシピエントに対するドナー移植による有害反応を改善するか、阻害するか、または低減し、それによりGVHDを予防するか、または治療することができる。
【0596】
本発明の別の目的はしたがって、対象におけるGVHDの発症を予防するか、または遅延させる方法であり、本方法は、対象にCAR操作免疫細胞(好ましくはCAR操作Treg細胞)または本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む。
【0597】
一実施形態では、GVHDの発症を1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、20年、30年、40年、50年、60年、70年、80年、90年、100年、または対象の寿命の間遅延させる。
【0598】
一実施形態では、対象は、いかなる免疫抑制剤療法も受けていない。
【0599】
一実施形態では、対象は免疫抑制療法を受けている。一実施形態では、本発明の免疫細胞は、免疫抑制療法の治療有効量を減少させる目的で対象に投与される。
【0600】
一実施形態では、GVHDは、急性GVHDまたは慢性GVHDであり得る。
【0601】
一実施形態では、ドナー移植は、レシピエントに対する移植の免疫原性を低下させるために、レシピエントに移植する前に移植片を本発明のCAR操作免疫細胞(好ましくはCAR操作Treg細胞)で処理することにより「前調整」または「前処理」され得、これにより、GVHDを減少させるか、または予防する。一実施形態では、移植は、移植に関連し得るT細胞を活性化するために、移植前にレシピエントからの細胞または組織と接触させてもよい。レシピエントからの細胞または組織による移植片の治療後に、細胞または組織を移植片から除去してもよい。処理された移植片を次に、本発明のCAR操作免疫細胞(好ましくはCAR操作Treg細胞)とさらに接触させて、レシピエントからの細胞または組織を処理することによって活性化された免疫エフェクター細胞の活性を低減させるか、阻害するか、または消失させることができる。本発明のCAR操作免疫細胞(好ましくはCAR操作Treg細胞)による移植片のこの処理の後で、CAR改変免疫細胞は、レシピエントへの移植の前に移植片から除去され得る。しかし、一部のCAR操作免疫細胞(例えば、CAR操作Treg細胞)は移植片に接着し、したがって、移植片と共にレシピエントに導入され得る。この状況では、レシピエントに導入されたCAR操作免疫細胞(例えば、CAR操作Treg細胞)は、移植に関連する細胞によって引き起こされる、レシピエントに対する免疫応答を抑制し得る。
【0602】
一実施形態では、移植宿主またはレシピエントは、HLA-A2陰性である。一実施形態では、移植宿主またはレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A03、HLA-A11、HLA-A23、HLA-A25、HLA-A26、HLA-A29、HLA-A30、HLA-A31、HLA-A33、およびHLA-A34からなる群から選択されるHLA-Aサブタイプについては陽性である。一実施形態では、移植宿主またはレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A25、HLA-A26、HLA-A29、およびHLA-A30からなる群から選択されるHLA-Aサブタイプについては陽性である。
【0603】
一実施形態では、移植片はHLA-A2陽性である。
【0604】
本発明の別の目的は、対象における免疫細胞の集団を拡張する方法であって、本方法において、免疫細胞は、本発明によるキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように改変され、本方法は、本明細書のいずれかの場所に記載される操作された免疫細胞を対象に投与することを含み、本方法において、投与された操作免疫細胞は、対象において子孫免疫細胞の集団を生成する。
【0605】
一実施形態では、免疫細胞は、好ましくは調節性T細胞、CD4調節性T細胞、CD8調節性T細胞、調節性γδT細胞、調節性DN T細胞、調節性B細胞、調節性NK細胞、調節性マクロファージ、調節性樹状細胞、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される調節性免疫細胞であり、より好ましくは調節性T細胞である。
【0606】
一実施形態では、本発明のCAR操作Treg細胞は、in vivoで複製でき、それにより、標的細胞の免疫応答および免疫寛容の持続的な抑制をもたらし得る長期持続をもたらす。
【0607】
本発明の別の目的はしたがって、対象において調節性T細胞の持続的な集団を生成する方法であって、本方法において、調節性T細胞は、本発明のキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように改変され、本方法は、本明細書のいずれかの場所に記載される調節性T細胞を対象に投与することを含み、本方法において、改変された調節性T細胞の持続する集団は、対象において投与後少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、30日間、40日間、50日間、60日間、70日間、80日間、90日間、100日間、200日間、300日間、400日間、500日間、600日間、700日間、800日間、900日間、または1000日間持続する。
【0608】
一実施形態では、本発明のCAR-Treg細胞は、自己再生し得、かつ標的細胞の免疫応答を抑制するためにin vivoで再活性化され得る。一実施形態では、CAR-Treg細胞は、標的細胞の免疫応答を抑制するために再活性化され得るメモリCAR-Treg細胞であり得る。
【0609】
免疫細胞は、任意の供給源から得ることができる。例えば、一実施形態では、免疫細胞は、本発明のCAR改変免疫細胞を生成するために、組織ドナー、移植レシピエント、または他の無関係な供給源(全体として異なる個体または種)から得ることができる。したがって、本発明のCAR改変免疫細胞は、移植レシピエントまたは他の無関係な供給源に対して自家、同種異系または異種であり得る。一実施形態では、本発明のCAR-Treg細胞は、移植レシピエントに対して自家、同種異系または異種であり得る。一実施形態では、本発明のCAR-Treg細胞は、移植レシピエントにとって自家であり得る。
【0610】
一実施形態では、対象は哺乳動物であってよい。一実施形態では、対象はヒトであってよい。
【0611】
一実施形態では、活性化T細胞を対象に投与し、その後、血液を再採取し(またはアフェレーシスを実施させ)、本発明に従ってそれらからT細胞を活性化し、これらの活性化され拡張されたT細胞を対象に再注入することが望ましい場合がある。このプロセスは、数週間ごとに複数回実行できる。ある実施形態では、T細胞は、10cc~400ccの採血から活性化できる。ある実施形態では、T細胞は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、または100ccの採血から活性化される。理論に束縛されるものではないが、この複数の採血/複数の再注入プロトコルを使用することは、T細胞の特定の集団を選択するのに役立ち得る。
【0612】
本発明のCAR操作免疫細胞は、単独で、または希釈剤および/またはこれらに限定されないが、IL-2または他のサイトカインまたは細胞集団を含む、他の成分と組み合わせた医薬組成物として投与され得る。
【0613】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、1つ以上の医薬的または生理学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて、本明細書のいずれかの場所に記載のCAR操作免疫細胞または細胞集団を含み得る。こうした組成物は、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水などの緩衝液、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトールなどの炭水化物;タンパク質;ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸;抗酸化剤;EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および防腐剤を含み得る。
【0614】
本発明の医薬組成物は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸血、移植(implantation)または移植(transplantation)を含む、任意の適切な方法で対象に投与され得る。本明細書のいずれかの場所に記載される医薬組成物は、非経口投与によって対象に投与され得る。本明細書のいずれかの場所に記載される医薬組成物は、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、脊髄内、筋肉内、胸骨内により、静脈内(iv)注射により、注入技術により、または腹腔内により対象に投与され得る。一実施形態では、本発明のCAR改変免疫細胞組成物は、皮内または皮下注射によって対象に投与され得る。別の実施形態では、本発明のCAR改変免疫細胞組成物は、静脈内注射によって投与され得る。一実施形態では、CAR改変免疫細胞の組成物は、リンパ節、感染部位、炎症部位、または組織もしくは臓器拒絶部位に直接注入され得る。
【0615】
本発明の医薬組成物は、予防されるかまたは治療される疾患に適切な様態で投与され得る。投与の量および頻度は、対象の状態、対象の疾患の種類および重症度などの要因によって決定されるが、適切な投与量は、臨床試験によって決定され得る。
【0616】
「有効量」または「治療量」が示される場合、投与される本発明の組成物の正確な量は、対象の年齢、体重、抗体価、および状態の個人差を考慮して決定され得る。本明細書のいずれかの場所に記載されるCAR操作免疫細胞を含む医薬組成物は、1x10~1x10細胞/kg体重または1x10~100x10細胞/kg体重(これらの範囲内のすべての整数値を含む)の投与量で投与され得ると一般的に述べることができる。CAR操作免疫細胞組成物はまた、これらの投与量で複数回投与されてもよい。CAR操作免疫細胞は、免疫療法で一般に知られている注入技術を使用することによって投与され得る。特定の対象に対する最適な用量および治療レジメンは、疾患の徴候について対象を監視すること、およびそれに応じて治療を調整することにより、容易に決定され得る。
【0617】
一実施形態では、本発明の少なくとも1つのCAR操作免疫細胞は、別の活性剤と組み合わせて、それを必要とする対象に投与される。一実施形態によれば、少なくとも1つの免疫細胞集団は、別の活性剤の投与の前、同時にまたは後に投与される。
【0618】
一実施形態では、本発明のCAR操作免疫細胞は、これらに限定されないが、抗ウイルス療法、化学療法、放射線、免疫抑制剤、抗体、免疫除去剤、サイトカイン、および照射などの手段による治療を含む、任意の数の関連治療法と組み合わせて(例えば、前に、同時にまたは後に)対象に投与され得る。
【0619】
一実施形態では、本発明のCAR操作免疫細胞は、免疫抑制剤と組み合わせて投与され得る。当該分野で公知のいずれの免疫抑制剤が使用されてもよい。
【0620】
免疫抑制剤の例としては、これらに限定されないが、シクロスポリン、タクロリムス、アザチオプリン、メトトレキサート、メトキサレン、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸ナトリウム、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、リツキシマブなどのカルシニューリン阻害剤、シロリムス、エベロリムス、バシリキシマブ、ダクリズマブ、ベラタセプト、アレムツズマブ、ムロモナブCD3、抗胸腺細胞グロブリン、グルココルチコステロイドなどのmTOR阻害剤、またはプレドニゾンおよびプレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0621】
本発明のCAR操作免疫細胞は、免疫抑制剤の前、後、または同時に対象に投与され得る。
【0622】
本発明のCAR操作免疫細胞および/または免疫抑制剤は、移植後に対象に投与され得る。代替的に、または追加的に、本発明のCAR操作免疫細胞および/または免疫抑制剤は、移植前に対象に投与され得る。本発明のCAR操作免疫細胞および/または免疫抑制剤は、移植手術中に対象に投与され得る。
【0623】
一実施形態では、CAR操作免疫細胞を対象に投与する本発明の方法は、免疫抑制療法が開始されると実行される。
【0624】
いくつかの実施形態では、この方法は、例えば、移植レシピエントを経時的に監視するために、また、該当する場合は異なる免疫抑制療法レジメンで、複数回実施される。
【0625】
いくつかの実施形態では、免疫抑制療法は、移植レシピエントが移植に対して寛容であることが予測される場合、低減される。いくつかの実施形態では、免疫抑制療法は、移植レシピエントが移植に対して寛容であることが予測される場合、処方されず、例えば、免疫抑制療法は中止される。
【0626】
したがって、本発明は、第1の部分に、本発明の免疫細胞または免疫細胞集団を含み、第2の部分に、これらに限定されないが、抗ウイルス療法剤、化学療法剤、放射線、免疫抑制剤、抗体、免疫除去剤、サイトカイン、および照射を含む別の活性剤を含む、部分からなるキットにさらに関する。好ましくは、本発明の部分からなるキットは、第1の部分に、本発明の免疫細胞または免疫細胞集団を含み、第2の部分に、1つ以上の免疫抑制剤を含む。
【0627】
一実施形態では、部分からなるキットは、本発明の細胞を作製するための1つ以上の試薬(例えば、本開示の抗HLA-A抗体またはCARをコードする核酸または発現ベクター)を含む。
【0628】
本発明のキット中に存在し得る免疫抑制剤の例としては、これらに限定されないが、シクロスポリン、タクロリムス、アザチオプリン、メトトレキサート、メトキサレン、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸ナトリウム、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、リツキシマブなどのカルシニューリン阻害剤、シロリムス、エベロリムス、バシリキシマブ、ダクリズマブ、ベラタセプト、アレムツズマブ、ムロモナブCD3、抗胸腺細胞グロブリン、グルココルチコステロイドなどのmTOR阻害剤、またはプレドニゾンおよびプレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド、またはそれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0629】
本発明の別の目的は、対象における臓器または組織移植片拒絶反応を予防するか、または治療する方法であり、この方法は、(i)少なくとも1つの免疫抑制剤および(ii)本発明のCAR操作免疫細胞(好ましくは、CAR操作Treg細胞)、または免疫細胞を含む医薬組成物、を対象に投与することを含む。
【0630】
本発明の別の目的はしたがって、対象において臓器または組織移植拒絶反応を予防するか、または治療する際に使用するための、本発明のCAR操作免疫細胞(好ましくはCAR操作Treg細胞)、または免疫細胞を含む医薬組成物と、少なくとも1つの免疫抑制剤との組み合わせである。
【0631】
本発明の別の目的は、対象における移植片生存期間を増長させる方法であり、この方法は、本発明の少なくとも1つの免疫抑制剤およびCAR操作免疫細胞(好ましくは、CAR操作Treg細胞)、またはこれらを含む医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0632】
一実施形態では、本発明の少なくとも1つの免疫抑制剤とCAR操作免疫細胞(好ましくは、CAR操作Treg細胞)の組み合わせは、移植片対宿主病(GVHD)を予防するか、または治療するために使用される。
【0633】
一実施形態では、GVHDは、造血幹細胞移植後に起こり得る。
【0634】
本発明の別の目的はしたがって、対象における移植片対宿主病(GVHD)を予防するか、または治療する方法であり、この方法は、対象に少なくとも1つの免疫抑制剤およびCAR操作免疫細胞(好ましくは、CAR操作Treg細胞)または本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む。
【0635】
一実施形態では、本発明は、レシピエントへの移植の移植と同時に、その前に、またはその後に、ドナー移植片、例えば、生体適合性格子またはドナー組織、臓器または細胞を、本発明の少なくとも1つの免疫抑制剤およびCAR操作免疫細胞(好ましくはCAR操作Treg細胞)と接触させる方法を提供する。
【0636】
一実施形態では、少なくとも1つの免疫抑制剤と本発明のCAR操作免疫細胞(好ましくはCAR操作Treg細胞)との組み合わせを使用して、レシピエントに対するドナー移植による有害反応を改善するか、阻害するか、または低減することができ、それにより、GVHDを予防するか、または治療する。
【0637】
本発明の別の目的はしたがって、対象においてGVHDの発症を予防するか、または遅延させる方法であって、この方法は、少なくとも1つの免疫抑制剤およびCAR操作免疫細胞(好ましくはCAR操作Treg細胞)または本明細書に記載される医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0638】
一実施形態では、本発明のCAR操作免疫細胞および少なくとも1つの免疫抑制剤は、同時にまたは連続して投与される。
【0639】
一実施形態では、本発明のCAR操作免疫細胞、および任意により少なくとも1つの他の活性剤、好ましくは免疫抑制剤、は、移植と併せて(例えば、移植前に、同時に、または後に)投与される。
【0640】
本発明のCAR操作免疫細胞は、移植臓器または組織拒絶反応の診断後に投与され得、その後、臓器または組織拒絶反応の症状が治まるまで、本発明のCAR操作免疫細胞および免疫抑制剤の両方の用量が投与される。
【0641】
さらなる実施形態では、本発明のCAR操作免疫細胞組成物は、骨髄移植と組み合わせて(例えば、その前に、同時に、または後に)対象に投与され得る。
【0642】
別の実施形態では、本発明のCAR操作免疫細胞は、CD20と反応する剤、例えば、リツキシマブなどのB細胞切除療法後に投与されてもよい。例えば、一実施形態では、対象は、大量化学療法による標準治療を受け、その後、末梢血幹細胞移植を受けてもよい。ある実施形態では、移植後に、対象は、本発明の拡張されたCAR操作免疫細胞の注入を受けてもよい。追加的実施形態では、拡張されたCAR操作免疫細胞は、手術の前または後に投与され得る。
【0643】
一実施形態では、対象(例えば、ヒト)は、本発明の少なくとも1つの免疫細胞または集団の最初の投与、および1つ以上のその後の投与を受け、1つ以上のその後の投与は、前回の投与後15日未満、例えば、14日、13日、12日、11日、10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日、3日、または2日に投与される。
【0644】
一実施形態では、本発明の免疫細胞の治療的有効量が対象に投与されるか、または投与される予定である。
【0645】
一実施形態では、対象に投与される本発明の少なくとも1つの免疫細胞集団の免疫細胞の量は、少なくとも10、10、10、10、10、10、10または10細胞である。
【0646】
一実施形態では、対象に投与される本発明の免疫細胞の量は、約10~約10、約10~約10、約10~約10、または約10~約10細胞の範囲である。
【0647】
一実施形態では、対象に投与される本発明の免疫細胞の量は、約10~約10、約10~10、約10~10、約10~10、約10~10、約10~10細胞の範囲である。別の実施形態では、対象に投与される本発明の免疫細胞の量は、約10、約10、約10、または約10である。
【0648】
一実施形態では、対象に投与される本発明の少なくとも1つの免疫細胞集団の免疫細胞の量は、少なくとも10、10、10、10、10、10、10または10細胞/kg体重である。
【0649】
一実施形態では、対象に投与される本発明の免疫細胞の量は、約10~10細胞/kg体重または10~10細胞/kg体重の範囲であり、これらの範囲内のすべての整数値を含む。
【0650】
一実施形態では、本発明の少なくとも1つの免疫細胞または集団の2回以上の投与が、対象(例えば、ヒト)に毎週投与され、例えば、本発明の遺伝子改変免疫細胞または集団の2、3、または4回の投与が毎週投与される。
【0651】
本発明の別の目的は、移植拒絶反応またはGVHDの予防および/または治療に有用な材料を含む製造物品である。
【0652】
製造物品は、容器と、容器上または容器に付随するラベルまたは添付文書とを含み得る。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジなどが挙げられる。これらの容器は、ガラスまたはプラスチックなど、様々な材料から形成され得る。容器は、移植拒絶反応またはGVHDなどの免疫学的状態の予防および/または治療に有効な組成物を保持し、かつ無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本発明のCAR操作免疫細胞、好ましくはCAR操作Tregである。
【0653】
ラベルまたは添付文書は、組成物が移植拒絶反応またはGVHDの予防または治療に使用されることを示し得る。
【0654】
製造物品、ラベル、または添付文書は、CAR操作免疫細胞組成物を患者に投与するための説明資料をさらに含み得る。追加的には、製造物品は、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液およびデキストロース溶液などの、薬学的に許容される緩衝液を含む第2の容器をさらに含み得る。製造物品はさらに、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジを含む、商業的およびユーザーの観点から望ましい他の材料を含み得る。
【0655】
様々な目的のために(例えば、移植拒絶反応またはGVHDを予防するか、または治療するため)有用であるキットも提供される。CAR操作免疫細胞を含むキットを提供できる。製造物品と同様に、キットは、容器と、容器上または容器に付随するラベルまたは添付文書とを含み得る。容器は、少なくとも1つのCAR操作免疫細胞、好ましくは本発明のCAR操作Tregを含む組成物を保持する。例えば、希釈剤および緩衝液を含む、追加の容器が含まれ得る。ラベルまたは添付文書は、組成物の説明ならびに意図された使用のための指示を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0656】
図1A図1は、本発明の抗HLA-A2 CAR構築物の一般的なHLA-AおよびHLA-B対立遺伝子変異体との交差反応性を示すグラフの組み合わせである。本発明のCAR構築物(またはマウス抗-HLA-A2 CAR構築物)を発現するGFPTreg細胞を、Flow Panel Reactive Single Antigenビーズおよび固定可能な生存率色素と室温で30分間インキュベートした。次に、試料を洗浄し、固定し、フローサイトメトリーで分析した。データを、方法に記載されているとおり、分析した。AおよびBのデータは、サイトメーターによって収集されたHLA陰性ビーズの数に対して正規化された、GFPのみを発現する対照Treg細胞に対する結合の割合(パーセント)を示す。線より上のデータポイントは、ビーズのみの対照の平均からの標準偏差が2を超え、従って統計的に有意であった(p<0.05)値を表す。データは2つの独立した実験の平均である。平均±SEM。
図1B】同上。
【実施例
【0657】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明される。
【0658】
実施例1:
【0659】
材料および方法
ヒト化HLA-A2特異的scFvの生成。HLA-A2特異的scFvの配列は、米国特許出願公開第2013/0078243号(A1)に開示される配列に由来した。ヒト化scFvをコードするコドン最適化遺伝子配列は、供給業者によって提供されるコドン最適化アルゴリズムを使用して、GeneArt,Life Technologies(Regensburg)によって「String」として合成された。ScFvは、N末端で、コザック配列およびCD8シグナル配列と隣接させた。構築物は、BamHIおよびMfeI制限部位にさらに隣接し、これは、自己不活性化レンチウイルスCAR発現プラスミドのCD8ヒンジ領域へのフレーム内クローニングを可能にした。PGKプロモーター駆動のCAR発現プラスミドは、ヒトCD8ヒンジおよびCD8膜貫通ドメインを含み、その後にヒトCD3ζに融合された細胞内ヒト41BB共刺激ドメインが続く。CAR配列に続いて、EGFPレポータータンパク質が、細胞中の遺伝子導入の検出のために自己切断可能な2A部位を介してフレーム内で連結された。
【0660】
HLA-A2-CARの生成。ウイルスベクターを、第3世代パッケージングプラスミドを使用して、HEK293T細胞においてポリエチレンイミンベースの一過性トランスフェクションによって生成した(Trono lab,EPFL(Ecole polytechnique federale de Lausanne))。
【0661】
Jurkat NFAT.Jurkat-Lucia NFAT-レポーター細胞株を、10%ウシ胎児血清を添加したRPMI(Gibco、Life Technologies)で培養した。細胞は、ウイルスベクターの異なる濃度でのインキュベーションを使用して形質導入され、30~50%の形質導入を達成して、複数のベクターの統合を回避した。正しく折り畳まれたCARの発現および提示は、APC共役HLA-A2マルチマー(デキストラマー、WB2666、Immudex、Copenhagen,Denmark)への結合によって実証された。CAR媒介活性化は、HLA-A2特異的CARのHLA-A2陽性またはHLA-A2陰性細胞株との同時インキュベーションにより達成された。培地中のNFAT活性化依存ルシフェラーゼ分泌を、基質QUANTI-Luc(Invivogen)を使用して、ルミノメーター(Glowmax、Promega)で分析した。
【0662】
Tregの分取、形質導入、および拡張。CD4T細胞を、RosetteSep(Stemcell)を介してHLA-A2ドナーから単離し、FACSAria II(BD Biosciences)を使用して、生きたCD4CD127loCD25hiTregを分取する前にCD25細胞(Miltenyi)について富化した。分取したTregを、1000U/mlのIL-2中のL細胞およびαCD3mAb(OKT3;200ng/mL)で刺激した。1日後、細胞1個に対してウイルス粒子10個の感染多重度で、細胞にレンチウイルスを形質導入した。7日目に、細胞を上記のようにL細胞で再刺激し、5日間拡張させた。HLA-A2媒介刺激の効果を調べるために、Tregを、IL-2を制限して(100U/mL)一晩培養し、その後、照射された抗CD3/抗CD28を添加したK562.64細胞またはK562.64.HLA-A2細胞で、1:2(K562:T細胞)の比で24時間再刺激した。
【0663】
フローサイトメトリー。表現型分析では、細胞を固定可能な生存率色素(FVD、65-0865-14、eBioscience;423102、Biolegend)で染色し、かつ表面マーカーについて染色し、その後FOXP3/転写因子染色バッファーセット(eBioscience)で固定/透過し細胞内タンパク質について染色した。試料をCytoflex(Beckman-Coulter)で読み取り、その結果を、FlowJoソフトウェアバージョン9.9.4および10.3(Tree Star)を使用して分析した。表面染色をCD3(564465、BD Biosciences)、CD4(317410、Biolegend)、CD25(130-091-024、Miltenyi)、LAP(25-9829-42、eBioscience)、CD69(310946、Biolegend)、CD154(555702、BD Biosciences)、およびCD127(48-1278-42、eBiosciences)について行った。四量体染色を、四量体にされたHLA-A*02:01単量体を用いて、ストレプトアビジン-アロフィコシアニン(PJ27S、Prozyme)で行った。細胞内染色を、CTLA-4(369606、Biolegend)について行った。
【0664】
HLA対立遺伝子交差反応性アッセイ。本発明によるCAR、またはBB7.2抗体のVHおよびVLを含むCAR(mA2 CAR)を発現する0.25.10T細胞を、FlowPRA(登録商標) Single Antigen Antibodyビーズパネル(FL1HD01、FL1HD02、FL1HD03、FL1HD04、FL1HD06およびFL1HD08、One Lambda)および固定可能な生存率色素(FVD、ThermoFisher、65-0865-14、eBioscience)と室温で30分間インキュベートした。試料を洗浄し、0.5%ホルムアルデヒドで固定し、フローサイトメトリーで分析した。1つの試料あたり200の陰性対照ビーズを得た。ビーズのみを陰性対照として使用した。分析のために、死細胞を最初に、固定可能な生存率色素を使用して排除した。死細胞およびダブレットを排除した後、単一の抗原ビーズをゲーティングした。次に、HLA抗原あたりのビーズの数を、それぞれのPE強度ピークによって決定した。データを、各HLAピークにおいて対象となるビーズ数を200で乗算し、試料中の陰性ビーズ数で除算することによって正規化した。各HLAピークについて、対照(非CAR発現細胞)と比較したCAR Tregの相対的結合率を、対照試料中のビーズ数からCAR-Treg中のビーズ数を引き、CAR非発現対照中のビーズの平均数を除算し、100倍することによって求めた。
【0665】
結果:
ヒト化HLA-A2特異的CARの構築
1つのヒト化重鎖および3つの異なるヒト化軽鎖を生成し、合計3つの異なるキメラ抗原受容体を、ヒト化重鎖と軽鎖とを組み合わせることによって生成した。
CARの発現および正しい折り畳みを、Jurkat NFATレポーター細胞株を使用して検証した。
【0666】
他のクラスI HLA対立遺伝子に対するHLA-A2-CAR構築物の交差反応性
より少ない数の祖先対立遺伝子から時間をかけて進化した、HLAの多くの異なる対立遺伝子がある。その結果、数個のアミノ酸のみが異なり得る対立遺伝子ファミリーがあり、単一の抗HLA抗体が、進化的に関連したファミリー内の複数の対立遺伝子を認識し得る。マウスモノクローナル抗体(BB7.2)は、追加のHLA-A対立遺伝子に対し交差反応を有することが公知である(Hilton&Parham、2013年)。具体的には、固相アッセイでテストした場合、BB7.2は、HLA-A2の5個のサブタイプ(*02:01、*02:02、*02:03、*02:05、*02:06)を認識すること、およびHLA-A*69:01と交差反応すること、かつ高濃度でテストした場合、HLA-A*23:01、A*24:02、A*24:03、A*68:01、およびA*68:02(Hilton&Parham、2013年)と交差反応することが判明した。本発明のヒト化抗HLA-A2抗体の交差反応性を評価し、かつBB7.2抗体のVHおよびVLを含む抗体と比較するために、血清中の抗HLA抗体を測定するために設計された、ONEラムダ固相アッセイを採用して、目的のヒト化CARへのHLAコーティングビーズの結合を測定した。指示されたヒト化CARを発現するGFPTregをFlow Panel Reactive Single Antigenビーズとインキュベートし、単一クラスのビーズへの結合を、前方/側方散布図のビーズゲートでのシグナルの損失として定量化した。データを、試料中の陰性対照ビーズの数に対して正規化し、GFP+-対照Tregによる結合の量に関連して、hCAR発現Tregへの相対的結合量を、GFP試料中の陰性ビーズの数にGFP試料中の陰性ビーズの数を乗算することによって計算した。
【0667】
結果を、配列番号72を有するscFvを含む構築物について図1に示す。このHLA-A2-CAR構築物は、HLA-A*02:01を有意に結合した(図1A)。驚くべきことに、本発明のCAR構築物について、A*02:01以外の試験されたあらゆるHLA-AまたはB対立遺伝子への統計的に有意な結合はいずれも観察されなかった(図1A~1B)。

図1A
図1B
【配列表】
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