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  • 特許-時計用緩急針組立体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】時計用緩急針組立体
(51)【国際特許分類】
   G04B 18/02 20060101AFI20230721BHJP
   G04B 13/02 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
G04B18/02 Z
G04B13/02 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020549681
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2019056556
(87)【国際公開番号】W WO2019175392
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】00334/18
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】513114803
【氏名又は名称】ウブロ ソシエテ アノニム, ジュネーブ
【氏名又は名称原語表記】HUBLOT S.A., GENEVE
【住所又は居所原語表記】30, Rue du Rhone, CH-1204 Geneve
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ライナー, クリストフ
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】スイス国特許発明第22944(CH,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 18/02
G04B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩急針型の、または緩急針または微調整緩急針と噛合することが意図されるパーツ型の、歯付き部材(5)であって、
少なくとも1つの歯付きセクタ(51)と、
前記少なくとも1つの歯付きセクタ(51)の前記歯の根元下に配置される、可撓構造(52)と、を含み、
前記可撓構造(52)は、前記歯の根元表面に平行にまたは実質的に平行に向けられる、第1ブレード及び第2ブレード(522)を含む複数の弾性ブレード(522)と、前記第1ブレードと前記第2ブレード(522)を互いに接続する脚部(523)とを有し、
前記脚部(523)は、前記第1ブレード(522)の端部を前記第2ブレード(522)の中央または実質的に中央に接続する、歯付き部材(5)。
【請求項2】
前記緩急針型は、微調整緩急針型である、
請求項1に記載の部材(5)。
【請求項3】
前記可撓構造(52)は、透かし加工構造である
請求項1または2に記載の部材(5)。
【請求項4】
前記部材(5)は、旋回軸(53)を有し、前記可撓構造(52)は、前記旋回軸(53)周りの角度セクタにわたり延びる
請求項1から3のいずれか一項に記載の部材(5)。
【請求項5】
前記可撓構造(52)は、前記ブレード(522)の端部に、前記ブレードを前記歯付きセクタ(51)へ接続する脚部(523)を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の部材(5)。
【請求項6】
前記可撓構造(52)は、前記ブレード(522)の端部に、他のブレード(522)または前記部材(5)の剛体部分へ接続する脚部(523)を有する
請求項1から4のいずれか一項に記載の部材(5)。
【請求項7】
前記脚部(523)は、前記旋回軸(53)に対して半径方向または実質的に半径方向に延びる
請求項4、または、請求項4を引用する請求項5または6に記載の部材(5)。
【請求項8】
前記可撓構造(52)は、複数の列のブレード(522)を有する
請求項1から7のいずれか一項に記載の部材(5)。
【請求項9】
前記複数の列のブレード(522)は、前記歯の前記根元表面に平行にまたは実質的に平行に配置された2または3または4または5または6列のブレード(522)である、
請求項8に記載の部材(5)
【請求項10】
前記可撓構造(52)は、前記部材の回転軸(53)に対して実質的に半径方向に可撓である、
請求項1から9のいずれか一項に記載の部材(5)
【請求項11】
歯付き歯車(6)またはピニオンと噛合する、請求項1から10のいずれか一項に記載の部材(5)を含み、前記噛合は前記可撓構造(52)の圧縮をもたらす、システム(300)
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の部材型の歯付き歯車またはピニオンと噛合する、請求項1から10のいずれか一項に記載の部材(5)を含み、前記噛合は前記可撓構造(52)の圧縮をもたらす、システム(300)。
【請求項13】
前記システム(300)は、緩急針組立体(3、4、5、6)である、
請求項11または12に記載のシステム(300)。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか一項に記載のシステム(300)及びまたは請求項1から10のいずれか一項に記載の部材(5)を含む、クロックワーク機構(100)
【請求項15】
請求項14に記載のクロックワーク機構(100)及びまたは請求項11から13のいずれか一項に記載のシステム(300)及びまたは請求項1から10のいずれか一項に記載の部材(5)を含む、時計(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯付き部材に関する。本発明はまた、当該歯付き部材を含む、システムに関する。本発明は更に、当該システム及びまたは当該歯付き部材を含む、クロックワーク機構に関する。本発明は最後に、当該クロックワーク機構及びまたは当該システム及びまたは当該歯付き部材を含む、時計に関する。
【背景技術】
【0002】
ムーブメントの動きを調節するための、てんぷ機構の振幅の調整は、精密性を必要とする。この種類の調整は、時折、精密性を達成するために、調節緩急針の運動を減少させる目的のギアシステムにより提供される。しかしながら、ギアの使用は、互いに噛合する部材同士の歯の間の動作間隙をもたらす。これは、歯列の歯の間の遊びと、緩急針が第1方向に移動された後に第2方向に移動される場合の遊び補償を伴う。これらの欠点は、てんぷ機構の動きを調節する状況では容認できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、このような間隙を回避可能な、歯付き部材を提供することである。具体的には、本発明は、この駆動を中断させる歯列間隙のない、歯付き部材の精密な駆動を保証することが可能な歯付き部材、具体的には緩急針、を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明にかかる歯付き部材は、請求項1に定義される。
【0005】
歯付き部材の様々な実施形態は、請求項2から10に定義される。
【0006】
本発明にかかるシステムは、請求項11から13に定義される。
【0007】
本発明にかかるクロックワーク機構は、請求項14に定義される。
【0008】
本発明にかかる時計は、請求項15に定義される。
【0009】
添付の図面は、本発明にかかる時計の実施形態を例として示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、時計の実施形態の斜視図である。
図2図2は、時計の実施形態の歯付部材の詳細斜視図である。
図3図3は、時計の実施形態の緩急針組立体の詳細斜視図である。
図4図4は、時計の実施形態の緩急針の詳細斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
時計200の実施形態を、図1から4を参照して以下に説明する。時計200は、例えば小型時計であり、特に腕時計である。時計は、クロックワーク機構100を、特に機械式クロックワークムーブメントを含む。クロックワークムーブメント100は、例えば、手動巻き上げ型または自動巻き上げ型である。
【0012】
クロックワークムーブメント100は、てん輪1-渦巻ばね2型の発振器を含む。その動きを調節するために、渦巻ばね2に作用する緩急針キー11を有する粗調整用の第1緩急針10は、プレート8に接続されるコック7またはてんぷ受に対して、旋回軸53周りに移動される。
【0013】
ひげ持支持部4は、渦巻ばねの外端部が取り付けられるひげ持3を保持する。
【0014】
第1緩急針10は、第2の、微調整緩急針5上に締結され、後者の軸53周りの回転運動に伴う。しかしながら、緩急針10と微調整緩急針との間の摩擦トルクは、時計製造ツールを用いて2つの緩急針間の角度位置の粗い変更を実施することを可能にする。
【0015】
第1緩急針を軸53周りに精密に回転駆動可能にするため、第2緩急針は、ムーブメントのフレーム上に旋回連結で搭載される、特に軸63周りにコック7上に旋回連結で搭載される、ピニオン6と噛合する、歯付きセクタ51を含む。
【0016】
このため、軸63周りのピニオン6の回転は、旋回軸53周りの第2緩急針5の角変位をもたらす。これは、渦巻ばねの可動部分の長さを変更し、その動きを調整することを可能にする。
【0017】
ピニオン6の回転を容易にするため、容易に到達可能な特別な駆動刻印9が、ピニオン6上に配置される。刻印は、ねじ回しの先端を受けることが意図されるスロット9であってもよい。
【0018】
このように、クロックワーク機構100は、システム300を、特にひげ持3、ひげ持支持部4、第1緩急針10、第2緩急針5とピニオン6を含む、緩急針組立体型のシステムを含む。
【0019】
図2でより詳細に示すように、図示した実施形態において、歯付き部材は、第2緩急針5である。上述した通り、第2緩急針5は、ピニオン6の歯61と噛合することが意図される歯付きセクタ51を含む。
【0020】
第2緩急針5はまた、当該歯付きセクタ51の歯の根元の下に配置された、可撓構造52を含む。
【0021】
「可撓構造」とは、負荷がかかると変形し、負荷が除去されると原形に復帰することが可能な構造であると理解される。換言すると、可撓構造とは、弾性変形可能な構造、特に旋回軸53に対して半径方向に弾性変形可能な構造である。
【0022】
「歯の根元の下」とは、可撓構造52が、円形のまたは円の円弧の形状の歯付きセクタの場合に、歯付きセクタ51の歯の谷径よりも小さい、またはわずかに小さい直径まで延長すると意味すると理解される。換言すれば、可撓構造52は、好ましくは、歯付きセクタ51の近くに配置される。この場合、歯の谷径と可撓構造との間の分離は、例えば0.2mm程度である。この分離は、例えば、可撓構造の素材または複数の素材及びまたは旋回軸53に平行に測定された可撓構造の厚さにより決定される。
【0023】
しかしながら、可撓構造は、歯付きセクタ51と旋回軸53との間のあらゆる位置に配置することができる。
【0024】
好ましくは、第2緩急針5の可撓構造52は、透かし加工される。これは、可撓構造52が例えば(図示しない)1以上の円形窓または穴を有してもいいことを意味する。円形穴の代替として、または円形穴と組み合わせて、可撓構造52は、例えば四角、長方形、またはその他の形状の開口または隙間を有してもよい。
【0025】
好ましくは、図1及び2に示すように、また上述のように、第2緩急針5は、旋回軸53周りに旋回するように配置される。可撓構造52は、例えば、当該旋回軸53周りに、可撓角度セクタにわたり延びる。柔軟角度セクタは、好ましくは、歯付きセクタ51が延びる角度セクタの振幅と同一または実質的に同一の振幅を有する。代替的に、柔軟角度セクタは、歯付きセクタ51の角度セクタよりも小さい振幅または大きい振幅を有してもよい。
【0026】
好ましい実施形態によれば、可撓構造52は、少なくとも1つの弾性ブレード522を有する。好ましくは、可撓構造52には、複数の弾性ブレード522が設けられる。ブレード522は、図2に示すように、歯の根元表面に平行にまたは実質的に平行に、すなわち歯付きセクタ51の歯の根元を通過する円筒表面に平行または実質的に平行に、向けられる。
【0027】
当該ブレードを形成するために、少なくとも2つの、またはそれ以上の、切り抜き521が、ブレード522の両側に生成される。これら切り抜き521は、好ましくは、歯の根元表面に垂直に計測され、ブレード522の厚みと同一または実質的に同一の厚みを有する。より具体的には、切り抜き521は、ブレード522に平行である。代替的に、これら切り抜き521は、ブレード522より厚いまたは薄い、及びまたはブレードと並行ではない。
【0028】
「歯の根元表面」とは、歯の基部を含むまたは基部の接線の表面と理解される。
【0029】
例えば、ブレード522は、歯の根元表面に垂直に計測された、0.06mmの厚みを有する。
【0030】
例えば、ブレード522は、(歯の根元表面に平行に計測された)1mmの長さを有する。
【0031】
歯付き部材5は、ブレードの端部において、ブレードを歯付きセクタ51に接続する脚部523を有する。脚部523はまた、ブレード522を他のブレード522へ接続する。最後に、ブレード523は、ブレード522を、第2緩急針5の剛体部分54へ接続する。好ましくは、脚部523は、旋回軸53に対して半径方向または実質的に半径方向に、または歯の根元表面に垂直にまたは実質的に垂直に、延びる。
【0032】
ブレード522の長さはまた、ブレードの所定の側にある2つの連続する脚部523の間でも計測される。
【0033】
より好ましくは、第1及び第2ブレード522を互いに接続する脚部523は、第1ブレード522の一端を、第2ブレード522の中央または実質的に中央に、接続する。
【0034】
より好ましくは、第1及び第2ブレード522を互いに接続する全ての脚部523は、第1ブレード522の一端を、第2ブレード522の中央または実質的に中央に、接続する。
【0035】
代替的に、第1及び第2ブレード522を互いに接続する脚部523は、第1ブレードの一端を第2ブレードの異なる位置へ、例えば第2ブレードの長さの1/3または1/4の位置へ接続してもよい。
【0036】
好ましくは、可撓構造52は、複数の列のブレード522、例えば歯の歯根表面に平行にまたは実質的に平行に配置された2または3または4または5または6列のブレード522、を有する。換言すれば、これらの列は、旋回軸53に位置するまたは実質的に位置する中心を有する、同心のまたは実質的に同心の円のセクタに従う。
【0037】
例えば、可撓構造52の剛性定数は、軸53に対して半径方向にKr=65N/mmであり、ここで軸53に対して接線または正放線方向にはKt=1000N/mmである。半径方向は、軸53-63を通過する方向であり、接線方向は、着力点が歯列51とピニオン6の歯列との間の接点に位置する、軸53-63を通過する線に垂直な方向である。
【0038】
好ましくは、半径剛性定数Krは、接線剛性定数Ktより小さく、特に著しく小さい。例えば、接線剛性定数Ktに対する半径剛性定数Krの比は、0.1より小さい。このため、可撓構造の変形は、実質的に半径方向であり、すなわち軸53-63を通過する方向に向けられる。
【0039】
第2緩急針5の旋回軸53とピニオン6の回転軸63との間の軸の間隔は、予め定められる。当該予め定められる軸の間隔は、同じ歯列特性を有するギアに通常または慣習的に用いられる軸の間隔より小さい。実際、軸の間隔は、慣習的には、部材5と6の原半径の合計に、例えば4%の隙間を加えたものに等しい。これは、歯列に隙間がある正確なギア動作を保証する。
【0040】
図1から4の実施形態において、軸の間隔の修正は、部品の製作公差と、第2緩急針5の弾性構造52の剛性に依拠する。これにより、一旦部材5と6が噛合すると、可撓構造52は、圧縮状態に弾性変形する。当該圧縮は、旋回軸53と回転軸63との間で発揮される。当該圧縮は、結果として、第2緩急針5の歯付きセクタ51の歯とピニオン6の歯61との間の複数の点で、永続的な接触を保証する。部材5と6の歯の側面の2つの対の間で、少なくとも1つの接触が常に存在し、これにより歯列は互いに押し込まれ、第2緩急針5の歯列とピニオン6の歯列との間の間隙は除去される。可撓構造52は、部材5と6が噛合するのに必要な変形を吸収する。このため、部材5と6の噛合運動は、決して妨げられることなく、非常に正確である。このため、動きの調整も正確且つ信頼性が高い。実際、ピニオン6のわずかな角変位も、第2緩急針5に伝達される。
【0041】
上述の実施形態においては、第2緩急針のみに可撓構造が設けられた。しかしながら、第2緩急針への可撓構造の存在の代替として、または第2緩急針への可撓構造の存在に追加して、ピニオンに可撓構造を、特にピニオン6のハブを取り囲む可撓構造を、設けることも可能である。この場合、可撓構造は、当該ハブを、可撓構造周りに位置する歯列61へ接続する。
【0042】
上述の実施形態において、可撓構造は、歯付き部材に構造を、特に窓を形成することでもたらされた。しかしながら、可撓構造は、弾性変形可能な素材製であって適切な剛性を有する要素を、歯列と歯付き部材のハブとの間に設けることで、代替的または補完的態様でもたらされてもよい。弾性変形可能な素材は、合成素材、特にエラストマであってもよい。可撓構造は、好ましくは、鋼鉄またはニッケル合金製である。
【0043】
上述の実施形態において、緩急針組立体は、第1の粗調節用緩急針と、第2の微調整用緩急針とを含む。しかしながら、本発明は、単一の緩急針(上述の実施形態の2つの緩急針5と10とに相当するが、1つに結合されたもの)を含む緩急針組立体にも適用可能である。
【0044】
上述の実施形態において、本発明は、緩急針組立体システムに適用される。しかしながら、本発明は、あらゆる歯付き歯車またはラックに、特に歯列の間隙が制限または除去されねばならないギアの一部を形成することが意図される、クロックワークシステムのあらゆる歯付き歯車またはラックに、適用可能である。
図1
図2
図3
図4