(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】アルキル化における酸及び炭化水素の逆カスケード化
(51)【国際特許分類】
C07C 2/56 20060101AFI20230721BHJP
C07C 9/16 20060101ALI20230721BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230721BHJP
【FI】
C07C2/56
C07C9/16
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020561805
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(86)【国際出願番号】 US2019029887
(87)【国際公開番号】W WO2019213063
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-12-23
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516148335
【氏名又は名称】ルーマス テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ザン
(72)【発明者】
【氏名】ローゾス, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】メジナ, ジャクリーン
(72)【発明者】
【氏名】ルモワンヌ, ロマン
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02374262(US,A)
【文献】特表2004-526017(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0076241(US,A1)
【文献】特開2005-272684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンをアルキル化するプロセスであって、
第1のオレフィンを第1のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、
上記第1のオレフィンと同じ又は異なっていてもよい第2のオレフィンを第2のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、
イソパラフィンを上記第1のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、
アルキル化条件下、上記第1のアルキル化ゾーンにおいて上記イソパラフィン及び上記第1のオレフィンを部分廃硫酸と接触させて、廃酸相と、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第1の炭化水素相とを形成する工程と、
アルキル化条件下、上記第2のアルキル化ゾーンにおいて上記第1の炭化水素相及び上記第2のオレフィンを硫酸フィードと接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第2の炭化水素相と、上記第1のアルキル化ゾーンに供給される上記部分廃硫酸とを形成する工程と、
上記第2の炭化水素相を分離して、イソパラフィン画分及びアルキレート生成物画分を回収する工程と
を有するプロセス。
【請求項2】
上記第1のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比は、上記第2のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比より大きい、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
上記第1のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比は、上記第2のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比の少なくとも1.5倍である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
上記第1のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比は、上記第2のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比の少なくとも1.75倍である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
上記第1のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比は、上記第2のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比の少なくとも2倍である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
上記第1及び第2のアルキル化ゾーンにおける上記アルキル化条件として、上記第1のアルキル化ゾーンの反応温度が上記第2のアルキル化ゾーンの反応温度より低い、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
上記第1のオレフィンはC3及び/又はC4及び/又はC5オレフィンを含み、上記第2のオレフィンはC3及び/又はC4及び/又はC5オレフィンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
イソパラフィンを上記第2のアルキル化ゾーンへ供給する工程を更に有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
酸を直接上記第1のアルキル化ゾーンへ供給する工程を更に有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
オレフィンをアルキル化するプロセスであって、
C5オレフィン含有フィードを第1のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、
C4オレフィン含有フィードを第2のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、
C3オレフィン含有フィードを第3のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、
イソパラフィンを上記第1のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、
アルキル化条件下、上記第1のアルキル化ゾーンにおいて上記イソパラフィン及び上記C5オレフィンを第2の部分廃硫酸と接触させて、廃酸相と、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第1の炭化水素相とを形成する工程と、
アルキル化条件下、上記第2のアルキル化ゾーンにおいて上記第1の炭化水素相及び上記C4オレフィンを第1の部分廃硫酸と接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第2の炭化水素相と、上記第1のアルキル化ゾーンに供給される上記第2の部分廃硫酸とを形成する工程と、
アルキル化条件下、上記第3のアルキル化ゾーンにおいて上記第2の炭化水素相及び上記C3オレフィンを新硫酸フィードと接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第3の炭化水素相と、上記第2のアルキル化ゾーンに供給される上記第1の部分廃硫酸とを形成する工程と、
上記第3の炭化水素相を分離して、イソパラフィン画分及びアルキレート生成物画分を回収する工程と
を有するプロセス。
【請求項11】
上記第1のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比は、上記第2のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比より大きく、上記第2のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比は、上記第3のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比より大きい(I
R1:O
R1>I
R2:O
R2>I
R3:O
R3)、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
上記第1及び第2のアルキル化ゾーンにおける上記アルキル化条件として、上記第1のアルキル化ゾーンの反応温度が上記第2のアルキル化ゾーンの反応温度より低く、上記第2及び第3のアルキル化ゾーンにおける上記アルキル化条件として、上記第2のアルキル化ゾーンの反応温度が上記第3のアルキル化ゾーンの反応温度より低
い、請求項10に記載のプロセス。
【請求項13】
イソパラフィンを上記第2のアルキル化ゾーン及び上記第3のアルキル化ゾーンへ供給する工程を更に有する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項14】
酸を直接上記第1のアルキル化ゾーン及び/又は上記第2のアルキル化ゾーンへ供給する工程を更に有する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項15】
上記第1のアルキル化ゾーンへの全酸フィードの酸強度を、上記第3のアルキル化ゾーンへの全酸フィードの酸強度より低く保持する工程を更に有する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項16】
オレフィンをアルキル化するプロセスであって、
C5オレフィン含有フィードを第1のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、
C4オレフィン含有フィードを第2のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、
C3オレフィン含有フィードを第3のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、
イソパラフィンを上記第1のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、
アルキル化条件下、上記第1のアルキル化ゾーンにおいて上記イソパラフィン及び上記C5オレフィンを第1の部分廃硫酸と接触させて、第2の部分廃酸相と、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第1の炭化水素相とを形成する工程と、
アルキル化条件下、上記第2のアルキル化ゾーンにおいて上記第1の炭化水素相及び上記C4オレフィンを上記第2の部分廃硫酸と接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第2の炭化水素相と、廃硫酸とを形成する工程と、
アルキル化条件下、上記第3のアルキル化ゾーンにおいて上記第2の炭化水素相及び上記C3オレフィンを新硫酸フィードと接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第3の炭化水素相と、上記第1のアルキル化ゾーンに供給される上記第1の部分廃硫酸とを形成する工程と、
上記第3の炭化水素相を分離して、イソパラフィン画分及びアルキレート生成物画分を回収する工程と
を有するプロセス。
【請求項17】
上記第1又は第2のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比は、上記第3のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比より大きい、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
上記第1、第2、及び第3のアルキル化ゾーンにおける上記アルキル化条件として、上記第1又は第2のアルキル化ゾーンの反応温度が上記第3のアルキル化ゾーンの反応温度より低い、請求項16に記載のプロセス。
【請求項19】
イソパラフィンを上記第2のアルキル化ゾーン及び/又は上記第3のアルキル化ゾーンへ供給する工程を更に有する、請求項16に記載のプロセス。
【請求項20】
酸を直接上記第1のアルキル化ゾーン及び/又は上記第2のアルキル化ゾーンへ供給する工程を更に有する、請求項16に記載のプロセス。
【請求項21】
オレフィンをアルキル化するプロセスであって、
第1のオレフィンを第1のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、
上記第1のオレフィンと同じ又は異なっていてもよい第2のオレフィンを第2のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、
上記第1及び/又は第2のオレフィンと同じ又は異なっていてもよい第3のオレフィンを第3のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、
イソパラフィンを上記第1のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、
アルキル化条件下、上記第1のアルキル化ゾーンにおいて上記イソパラフィン及び上記第1のオレフィンを第2の部分廃硫酸と接触させて、廃酸相と、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第1の炭化水素相とを形成する工程と、
アルキル化条件下、上記第2のアルキル化ゾーンにおいて上記第1の炭化水素相及び上記第2のオレフィンを第1の部分廃硫酸フィードと接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第2の炭化水素相と、上記第1のアルキル化ゾーンに供給される上記第2の部分廃硫酸とを形成する工程と、
アルキル化条件下、上記第3のアルキル化ゾーンにおいて上記第2の炭化水素相及び上記第3のオレフィンを硫酸フィードと接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第3の炭化水素相と、上記第2のアルキル化ゾーンに供給される上記第1の部分廃硫酸とを形成する工程と、
上記第3の炭化水素相を分離して、イソパラフィン画分及びアルキレート生成物画分を回収する工程と
を有するプロセス。
【請求項22】
オレフィンをアルキル化するプロセスであって、
第1のオレフィンを第1のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、
上記第1のオレフィンと同じ又は異なっていてもよい第2のオレフィンを第2のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、
上記第1及び/又は第2のオレフィンと同じ又は異なっていてもよい第3のオレフィンを第3のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、
イソパラフィンを上記第1のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、
アルキル化条件下、上記第1のアルキル化ゾーンにおいて上記イソパラフィン及び上記第1のオレフィンを第1の部分廃硫酸と接触させて、第2の部分廃酸相と、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第1の炭化水素相とを形成する工程と、
アルキル化条件下、上記第2のアルキル化ゾーンにおいて上記第1の炭化水素相及び上記第2のオレフィンを上記第2の部分廃硫酸フィードと接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第2の炭化水素相と、廃硫酸相とを形成する工程と、
アルキル化条件下、上記第3のアルキル化ゾーンにおいて上記第2の炭化水素相及び上記第3のオレフィンを硫酸フィードと接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第3の炭化水素相と、上記第1のアルキル化ゾーンに供給される上記第1の部分廃硫酸とを形成する工程と、
上記第3の炭化水素相を分離して、イソパラフィン画分及びアルキレート生成物画分を回収する工程と
を有するプロセス。
【請求項23】
オレフィンをアルキル化するシステムであって、
第1のオレフィンを第1のアルキル化ゾーンへ供給する第1のフローラインと、
上記第1のオレフィンと同じ又は異なっていてもよい第2のオレフィンを第2のアルキル化ゾーンへ供給する第2のフローラインと、
イソパラフィンを上記第1のアルキル化ゾーンへ供給する第3のフローラインと、
アルキル化条件下、上記イソパラフィン及び上記第1のオレフィンを部分廃硫酸と接触させて、廃酸相と、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第1の炭化水素相とを形成する第1のアルキル化ゾーンと、
アルキル化条件下、上記第1の炭化水素相及び上記第2のオレフィンを新硫酸フィードと接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第2の炭化水素相と、上記第1のアルキル化ゾーンに供給される上記部分廃硫酸とを形成する第2のアルキル化ゾーンと、
上記第2の炭化水素相を分離して、イソパラフィン画分及びアルキレート生成物画分を回収するセパレーターと
を有するシステム。
【請求項24】
オレフィンをアルキル化するシステムであって、
アルキル化条件下、イソパラフィンフィード及びC5オレフィン含有フィードを第2の部分廃硫酸と接触させて、廃酸相と、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第1の炭化水素相とを形成する第1のアルキル化ゾーンと、
アルキル化条件下、上記第1の炭化水素相及びC4オレフィンを第1の部分廃硫酸と接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第2の炭化水素相と、上記第1のアルキル化ゾーンに供給される上記第2の部分廃硫酸とを形成する第2のアルキル化ゾーンと、
アルキル化条件下、上記第2の炭化水素相及びC3オレフィンを新硫酸フィードと接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第3の炭化水素相と、上記第2のアルキル化ゾーンに供給される上記第1の部分廃硫酸とを形成する第3のアルキル化ゾーンと、
上記第3の炭化水素相を分離して、イソパラフィン画分及びアルキレート生成物画分を回収するセパレーターと
を有するシステム。
【請求項25】
オレフィンをアルキル化するシステムであって、
C5オレフィン含有フィードを第1のアルキル化ゾーンへ供給するフローラインと、
C4オレフィン含有フィードを第2のアルキル化ゾーンへ供給するフローラインと、
C3オレフィン含有フィードを第3のアルキル化ゾーンへ供給するフローラインと、
アルキル化条件下、イソパラフィン及び上記C5オレフィンを第1の部分廃硫酸と接触させて、第2の部分廃酸相と、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第1の炭化水素相とを形成する第1のアルキル化ゾーンと、
アルキル化条件下、上記第1の炭化水素相及び上記C4オレフィンを上記第2の部分廃硫酸と接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第2の炭化水素相と、供給される廃硫酸とを形成する第2のアルキル化ゾーンと、
アルキル化条件下、上記第2の炭化水素相及び上記C3オレフィンを新硫酸フィードと接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第3の炭化水素相と、上記第1のアルキル化ゾーンに供給される上記第1の部分廃硫酸とを形成する第3のアルキル化ゾーンと、
上記第3の炭化水素相を分離して、イソパラフィン画分及びアルキレート生成物画分を回収するセパレーターと
を有するシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
イソパラフィン-オレフィンアルキル化プロセスは、オクタン価が高い高分岐炭化水素の製造への重要なルートである。アルキル化は、強酸存在下におけるパラフィン(通常はイソパラフィン)とオレフィンとの反応であり、それにより、出発材料よりもオクタン価が高く、ガソリン範囲で沸騰するパラフィン等が製造される。石油精製において、アルキル化反応は一般に、C3~C5オレフィンとイソブタン及び/又はイソペンタンとの反応である。精製アルキル化では、フッ化水素酸又は硫酸触媒が一般的に使用される。典型的なプロセスでは、反応は、炭化水素反応物が連続した酸相に分散している反応器で実施される。
【0002】
アルキル化プロセスの間、水、酸可溶性油(ASO)、及び他のオレフィン反応由来の化学中間体によって酸が希釈される。従って、連続した酸フローによって所望の酸濃度を保持し、水、ASO、及び酸可溶性中間体をパージする必要がある。酸消費や、酸の取り扱い及び廃酸の再生に関する運転コストを低減することが強く望まれている。
【0003】
また、アルキル化プロセス中、アルキル硫酸塩が形成される。硫酸塩が除去されなければ、下流の機器で腐食や付着が引き起こされると共に、アルキレート生成物中の硫黄分が高くなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書中の実施形態は、硫酸の存在下、イソパラフィンでオレフィンをアルキル化するシステム及びプロセスに関する。より具体的には、本明細書中の実施形態は、酸及び炭化水素が反応器間で逆方向にカスケード化される別々の反応器でオレフィンが処理されるアルキル化プロセススキームに関する。本明細書中の実施形態によって、酸消費が低減し、アルキレートオクタン価が増大し、ユーティリティ要件が削減され、且つ得られるアルキレート生成物中の硫黄濃度が低下することが見出された。
【0005】
一態様において、本明細書中に開示した実施形態は、C3~C5炭化水素からアルキレートを製造するプロセスに関する。オレフィンをアルキル化する上記プロセスは、第1のオレフィンを第1のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、上記第1のオレフィンと同じ又は異なっていてもよい第2のオレフィンを第2のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、イソパラフィンを上記第1のアルキル化ゾーンへ供給する工程とを有していてもよい。アルキル化条件下、上記第1のアルキル化ゾーンにおいて上記イソパラフィン及び上記第1のオレフィンを部分廃硫酸と接触させて、廃酸相と、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第1の炭化水素相とを形成してもよい。アルキル化条件下、上記第2のアルキル化ゾーンにおいて上記第1の炭化水素相及び上記第2のオレフィンを硫酸フィードと接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第2の炭化水素相と、上記第1のアルキル化ゾーンに供給される上記部分廃硫酸とを形成してもよい。更に、上記第2の炭化水素相を分離して、イソパラフィン画分及びアルキレート生成物画分を回収してもよい。
【0006】
いくつかの実施形態において、上記第1のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比は、上記第2のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比より大きい。別の実施形態において、上記第1のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比は、上記第2のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比の少なくとも1.5倍である。更に別の実施形態において、上記第1のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比は、上記第2のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比の少なくとも1.75倍である。更に別の実施形態において、上記第1のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比は、上記第2のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比の少なくとも2倍である。
【0007】
いくつかの実施形態において、上記第1及び第2のアルキル化ゾーンにおける上記アルキル化条件として、上記第1のアルキル化ゾーンの反応温度が上記第2のアルキル化ゾーンの反応温度より低い。上記第1のオレフィンはC3及び/又はC4及び/又はC5オレフィンを含んでいてもよく、上記第2のオレフィンはC3及び/又はC4及び/又はC5オレフィンを含んでいてもよい。
【0008】
いくつかの実施形態において、本明細書中のプロセスは、イソパラフィンを上記第2のアルキル化ゾーンへ供給する工程を更に有していてもよい。それに加えて又はそれに代えて、本明細書中のプロセスは、酸を直接上記第1のアルキル化ゾーンへ供給する工程を有していてもよい。
【0009】
別の態様において、本明細書中に開示した実施形態は、C3~C5炭化水素からアルキレートを製造するプロセスに関する。オレフィンをアルキル化する上記プロセスは、C5オレフィン含有フィードを第1のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、C4オレフィン含有フィードを第2のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、C3オレフィン含有フィードを第3のアルキル化ゾーンへ供給する工程とを有していてもよい。イソパラフィンを上記第1のアルキル化ゾーンへ供給してもよい。アルキル化条件下、上記第1のアルキル化ゾーンにおいて上記イソパラフィン及び上記C5オレフィンを第2の部分廃硫酸と接触させて、廃酸相と、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第1の炭化水素相とを形成してもよい。アルキル化条件下、上記第2のアルキル化ゾーンにおいて上記第1の炭化水素相及び上記C4オレフィンを第1の部分廃硫酸と接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第2の炭化水素相と、上記第1のアルキル化ゾーンに供給される上記第2の部分廃硫酸とを形成してもよい。アルキル化条件下、上記第3のアルキル化ゾーンにおいて上記第2の炭化水素相及び上記C3オレフィンを新硫酸フィードと接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第3の炭化水素相と、上記第2のアルキル化ゾーンに供給される上記第1の部分廃硫酸とを形成してもよい。上記第3の炭化水素相を分離して、イソパラフィン画分及びアルキレート生成物画分を回収してもよい。
【0010】
いくつかの実施形態において、上記第1のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比は、上記第2のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比より大きくてもよく、上記第2のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比は、上記第3のアルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比より大きくてもよい(IR1:OR1>IR2:OR2>IR3:OR3)。別の実施形態において、上記第1及び第2のアルキル化ゾーンにおける上記アルキル化条件として、上記第1のアルキル化ゾーンの反応温度が上記第2のアルキル化ゾーンの反応温度より低く、上記第2及び第3のアルキル化ゾーンにおける上記アルキル化条件として、上記第2のアルキル化ゾーンの反応温度が上記第3のアルキル化ゾーンの反応温度より低い。
【0011】
いくつかの実施形態において、本明細書中のプロセスは、イソパラフィンを上記第2のアルキル化ゾーン及び/又は上記第3のアルキル化ゾーンへ供給する工程を更に有していてもよい。それに加えて又はそれに代えて、本明細書中のプロセスは、酸を直接上記第1のアルキル化ゾーン及び/又は上記第2のアルキル化ゾーンへ供給する工程を有していてもよい。上記プロセスは、上記第1のアルキル化ゾーンへの全酸フィードの酸強度を、上記第3のアルキル化ゾーンへの全酸フィードの酸強度より低く保持する工程を更に有していてもよい。
【0012】
一態様において、本明細書中に開示した実施形態は、C3~C5炭化水素からアルキレートを製造するプロセスに関する。オレフィンをアルキル化する上記プロセスは、C5オレフィン含有フィードを第1のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、C4オレフィン含有フィードを第2のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、C3オレフィン含有フィードを第3のアルキル化ゾーンへ供給する工程と、イソパラフィンを上記第1のアルキル化ゾーンへ供給する工程とを有していてもよい。アルキル化条件下、上記第1のアルキル化ゾーンにおいて上記イソパラフィン及び上記C5オレフィンを第1の部分廃硫酸と接触させて、第2の部分廃酸相と、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第1の炭化水素相とを形成してもよい。アルキル化条件下、上記第2のアルキル化ゾーンにおいて上記第1の炭化水素相及び上記C4オレフィンを上記第2の部分廃硫酸と接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第2の炭化水素相と、廃硫酸とを形成してもよい。アルキル化条件下、上記第3のアルキル化ゾーンにおいて上記第2の炭化水素相及び上記C3オレフィンを新硫酸フィードと接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第3の炭化水素相と、上記第1のアルキル化ゾーンに供給される上記第1の部分廃硫酸とを形成してもよい。上記第3の炭化水素相を分離して、イソパラフィン画分及びアルキレート生成物画分を回収してもよい。
【0013】
別の態様において、本明細書中に開示した実施形態は、C3~C5炭化水素からアルキレートを製造するシステムに関する。オレフィンをアルキル化する上記システムは、第1のオレフィンを第1のアルキル化ゾーンへ供給する第1のフローラインと、上記第1のオレフィンと同じ又は異なっていてもよい第2のオレフィンを第2のアルキル化ゾーンへ供給する第2のフローラインと、イソパラフィンを上記第1のアルキル化ゾーンへ供給する第3のフローラインとを有していてもよい。アルキル化条件下、上記イソパラフィン及び上記第1のオレフィンを部分廃硫酸と接触させて、廃酸相と、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第1の炭化水素相とを形成する第1のアルキル化ゾーンを使用してもよい。アルキル化条件下、上記第1の炭化水素相及び上記第2のオレフィンを新硫酸フィードと接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第2の炭化水素相と、上記第1のアルキル化ゾーンに供給される上記部分廃硫酸とを形成する第2のアルキル化ゾーンを備えていてもよい。更に、本明細書中のシステムは、上記第2の炭化水素相を分離して、イソパラフィン画分及びアルキレート生成物画分を回収するセパレーターを有していてもよい。
【0014】
別の態様において、本明細書中に開示した実施形態は、C3~C5炭化水素からアルキレートを製造するシステムに関する。オレフィンをアルキル化する上記システムは、アルキル化条件下、イソパラフィンフィード及びC5オレフィン含有フィードを第2の部分廃硫酸と接触させて、廃酸相と、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第1の炭化水素相とを形成する第1のアルキル化ゾーンを有していてもよい。上記システムはまた、アルキル化条件下、上記第1の炭化水素相及びC4オレフィンを第1の部分廃硫酸と接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第2の炭化水素相と、上記第1のアルキル化ゾーンに供給される上記第2の部分廃硫酸とを形成する第2のアルキル化ゾーンを有していてもよい。更に、上記システムは、アルキル化条件下、上記第2の炭化水素相及びC3オレフィンを新硫酸フィードと接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第3の炭化水素相と、上記第2のアルキル化ゾーンに供給される上記第1の部分廃硫酸とを形成する第3のアルキル化ゾーンを有していてもよい。更に、上記第3の炭化水素相を分離して、イソパラフィン画分及びアルキレート生成物画分を回収するセパレーターを備えていてもよい。
【0015】
更に別の態様において、本明細書中に開示した実施形態は、C3~C5炭化水素からアルキレートを製造するシステムに関する。オレフィンをアルキル化する上記システムは、C5オレフィン含有フィードを第1のアルキル化ゾーンへ供給するフローラインと、C4オレフィン含有フィードを第2のアルキル化ゾーンへ供給するフローラインと、C3オレフィン含有フィードを第3のアルキル化ゾーンへ供給するフローラインとを有していてもよい。上記システムは、アルキル化条件下、イソパラフィン及び上記C5オレフィンを第1の部分廃硫酸と接触させて、第2の部分廃酸相と、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第1の炭化水素相とを形成する第1のアルキル化ゾーンと、アルキル化条件下、上記第1の炭化水素相及び上記C4オレフィンを上記第2の部分廃硫酸と接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第2の炭化水素相と、供給される廃硫酸とを形成する第2のアルキル化ゾーンと、アルキル化条件下、上記第2の炭化水素相及び上記C3オレフィンを新硫酸フィードと接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第3の炭化水素相と、上記第1のアルキル化ゾーンに供給される上記第1の部分廃硫酸とを形成する第3のアルキル化ゾーンとを更に有する。更に、上記システムは、上記第3の炭化水素相を分離して、イソパラフィン画分及びアルキレート生成物画分を回収するセパレーターを有していてもよい。
【0016】
以下の説明及び添付の特許請求の範囲から、他の態様及び利点が明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本明細書中の実施形態に係るアルキル化システムの簡略化プロセスフロー図である。
【
図2】本明細書中の実施形態に係るアルキル化システムの簡略化プロセスフロー図である。
【
図3】本明細書中の実施形態に係るアルキル化システムの簡略化プロセスフロー図である。
【
図4】本明細書中の実施形態で有用なアルキル化反応ゾーンの簡略化プロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書中の実施形態は、酸及び炭化水素が逆方向に流れるカスケード反応器スキームに関する。炭化水素及び酸を逆カスケード化することで、提案された反応器スキームは酸消費を低減させ、アルキレート中の硫黄濃度を低下させ、且つアルキレートオクタン価を向上させることができる。
【0019】
本明細書中、「酸消費」は、望ましくない副反応で形成された酸可溶性油によって酸触媒が希釈されることに関する。加えて、安定した中間体(硫酸触媒を利用した場合には硫酸エステル等)が形成されることでも触媒が希釈されるため、見かけ上、酸消費の増加が起こる。本明細書中、「酸強度」とは、酸触媒の濃度を意味し、硫酸の場合、水酸化ナトリウム標準で滴定して測定されるH2SO4の重量パーセントで表される。
【0020】
本明細書中に開示した実施形態で使用されるアルキル化フィードストックは、各種のオレフィン及びパラフィンの混合物を含んでいてもよい。例えば、アルキル化フィードストックは、n-アルカン及びイソアルカンを含むC1~C5パラフィンと、C2~C5オレフィンとを含んでいてもよい。オレフィンとしては、n-オレフィン(直鎖オレフィン)、イソオレフィン(分岐オレフィン)、及びこれらの混合物が挙げられる。ある実施形態において、パラフィンとしては、プロパン、C4アルカン(n-ブタン及びイソブタン)、C5アルカン(n-ペンタン、ネオペンタン、及びイソペンタン)、及びこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、イソブタン及び/又はイソペンタン等の高純度イソパラフィンをパラフィンフィードとして使用する。いくつかの実施形態において、アルキル化フィードストックは、C3~C5軽質分解ナフサ(LCN)留分を含んでいてもよい。更に別の実施形態において、本発明は、C3、C4、及びC5オレフィンフィードストックを別々に利用するイソパラフィンのアルキル化に関する。
【0021】
ある実施形態において、パラフィンとしては、C4アルカン(n-ブタン及びイソブタン)、C5アルカン(n-ペンタン、ネオペンタン、及びイソペンタン)、及びこれらの混合物が挙げられる。別の実施形態において、オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、C4オレフィン(1-ブテン、2-ブテン、イソブチレン、又はこれらの混合物等)、C5オレフィン(1-ペンテン、2-ペンテン、イソペンテン、及びこれらの混合物等)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0022】
いくつかの実施形態において、プロピレンフィードストックは、プロピレン及びプロパンの混合物(プロパン中に50wt%超のプロピレンを含むプロピレンストリーム等)又はC3及びC4の混合物(オレフィン基準で40wt%超のプロピレンを含むプロピレンストリーム等)であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態において、ブチレン含有フィードストックは50wt%超のブチレンを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、ペンテン含有フィードストックは50wt%超のペンテンを含んでいてもよい。
【0024】
一般に、酸強度が低いほど酸の希釈範囲が拡大し、より高濃度のASOをパージできるため、廃酸強度を低減させれば酸消費が低減されると考えられる。しかしながら、酸強度が低くなるとASO形成が増大して、該利点を相殺したり、ひいては無効にしたりするため、酸消費が増大してしまう。低廃酸強度の利点を十分に利用するために、中間酸段階を追加すること(酸カスケード化)で、酸消費に対する低強度段階の影響を低減できることが分かった。
【0025】
酸カスケード化によって酸消費を低減できる。しかし、酸強度が低い反応器では、水素化物の移動速度が遅くなる。その結果、酸相における中間体の濃度が上昇し得るため、反応選択性が低下して、アルキレート中の硫黄濃度が高くなり、アルキレートオクタン価が低下する。その対策として、酸強度が低い反応器の1/0比を高くしたり温度を低くしたりして、低酸強度により引き起こされる悪影響を相殺する必要がある。逆方向に炭化水素をカスケード化することは効果的な解決策となる。
【0026】
いくつかの実施形態において、アルキル化プロセスは、イソブタン又はイソペンタン等のイソパラフィンとC3~C5モノオレフィンとをアルキル化反応器へ供給する工程を有する。アルキル化反応は、いくつかの実施形態では80パーセント超、別の実施形態では88パーセント超、更に別の実施形態では96パーセント超の硫酸を用いて触媒してもよい。アルキル化プロセスは、2つ以上の反応器において硫酸触媒の存在下、イソパラフィンをオレフィンと反応させる工程を有する。その後、反応生成物を分離して、炭化水素リッチ相及び酸リッチ相を回収する。下流操作として特に、炭化水素リッチ相を更に処理して炭化水素相から硫酸エステルを除去することで、未反応イソパラフィン及びアルキレート生成物を含んでいてもよい炭化水素流出液を生成してもよい。その後、仕上げプロセスとして特に、回収したアルキル化生成物をガソリン範囲の成分とより重質なアルキレート生成物とに分離してもよい。
【0027】
本明細書中の実施形態は、イソパラフィンフロー及び酸フローを逆方向にカスケード化することで、(特にプロピレンをアルキル化した場合に)考えられる利点として特に、生成物の品質が向上し、ユーティリティが削減される点で有利である。2段反応器システムを例にとると、オレフィン(C3及び/又はC4及び/又はC5オレフィン)を並列の2つのアルキル化反応器へ供給してもよい。第2の反応器に新酸を注入してもよく、次いで、第2の反応器からの酸を第1の反応器へとカスケード化してもよい。必要に応じて、新酸の一部を第1の反応器へ加えることもできる。炭化水素の場合、下流のセパレーター(未反応イソパラフィンからアルキレートを分離する脱イソブタン装置(DIB)等)及び大半又は全ての冷却リサイクルからのイソブタンを第1の反応器へ注入し、次いで、第1の反応器からの未反応イソブテン及びアルキレート生成物を第2の反応器へとカスケード化する。
【0028】
2段反応器システムにおいて炭化水素フロー及び酸フローを逆カスケード化することで、いくつかの利点が達成できる。まず、酸カスケード化によって第1の反応器における廃酸強度を非常に低くでき、一方、中間酸段階(第2の反応器)では、第2の反応器におけるASO形成を低減することで低酸強度段階の影響が抑えられる。酸を並列供給する場合と比較して、酸カスケード化では酸消費を低減できる。第二に、炭化水素フローは第1から第2の反応器へと向かうため、第1の反応器の方がイソパラフィン/オレフィン(1/0)比が高い。第1の自動冷却アルキル化反応器では、1/0比を高くすると運転温度を低くできる。温度を低くし且つ1/0比を高くすると、第1の反応器における反応選択性が向上し、それによりオクタン価が向上し、中間体及びASOの形成が減少する。第三に、第2の反応器は酸洗コアレッサーとして作動して、酸強度が低い第1の反応器で形成された過剰な硫酸塩を除去する。第四に、イソパラフィンを並列供給する場合と比較して、イソパラフィンを直列にカスケード化すると、第2の反応器と比べて第1の反応器における1/0比を2倍にできる。加えて、第2の反応器はより高い酸強度で作動できるので、第2の反応器においてより高い温度を採用することによって、関連するフィードコンプレッサーでのユーティリティ消費を削減できる。全体として、酸消費の低減を達成するために、炭化水素/酸の逆カスケード化では、生成物セパレーター(オーバーヘッドイソパラフィンリサイクル)及びフィードコンプレッサーに関連するユーティリティ費用を削減できる。
【0029】
また、逆カスケード化は、分離された各オレフィンフィードや3つ以上の反応器を有する反応器システムに有益であり得る。例えば、C3リッチオレフィン(>70%プロピレン)を反応器#3へ注入してもよく、C4リッチ及び/又はC5リッチオレフィンを反応器#1及び/又は#2へ注入できる。酸フローの場合、新酸を反応器#3(プロピレンアルキル化)へ注入してもよく、次いで、部分廃酸を反応器#2及び/又は#1へと直列にカスケード化してもよい。フィードの種類、供給量、並びに温度、1/0比、及び酸強度に対するフィードの感受性に基づいて、イソブタン等のイソパラフィンをまず反応器#1又は反応器#2へ注入してもよい。1/0比及び温度に対する感受性が最も高いオレフィン種と共に、イソパラフィンの大部分を反応器へ注入するのが好ましい。
【0030】
酸カスケード化の結果、反応器#3において酸強度を最も高く、1/0比を最も低くできる。これは、反応器#3において自動冷却の温度が最も高いということになり、プロピレンリッチオレフィンを処理する運転条件として好ましい。加えて、反応器#1及び#2と比較して反応器#3における酸強度が高いことから、反応器#1及び反応器#2で形成されたアルキレート生成物は全て、生成物の分離及び回収へと進む前に、反応器#3においてより高い強度の酸で酸洗することができる。一連の反応器の最後でこのように酸強度が高くなると、反応器#1及び反応器#2においてより低い酸強度で形成された硫酸塩を除去し易くなる。
【0031】
次に
図1を参照して、本明細書中の実施形態に係るアルキル化システムの簡略化プロセス図を説明する。アルキル化システムは、第1のアルキル化反応ゾーン10、第2のアルキル化反応ゾーン20、及び1つ以上のセパレーター30を有していてもよい。反応器へのフィードには、イソパラフィンフィード102、1つ以上のオレフィンフィード104、及び新酸フィード106が含まれていてもよい。
【0032】
最初に、新酸106を最終反応器である第2のアルキル化ゾーン20へ供給し、オレフィン104b及び第1のアルキル化ゾーン10から回収した炭化水素流出液108と接触させて、イソパラフィン及びオレフィンをアルキレート生成物へ変換してもよい。次いで、得られた反応流出液を分離して、第2の炭化水素流出液110及び部分廃酸画分112を回収してもよい。
【0033】
次いで、部分廃酸画分112を第1の反応ゾーン10へ供給してもよく、そこでオレフィン104a及びイソパラフィンフィード102と接触させて、イソパラフィン及びオレフィンをアルキレート生成物へ変換してもよい。次いで、得られた反応流出液を分離して、炭化水素流出液108及び廃酸画分114を回収してもよい。
【0034】
上記は酸フロー(まず第2の反応器、次いで廃酸を第1の反応器へ)について説明した。上記を炭化水素(イソパラフィン)フローについて言い換えると、上記システムは、第1のオレフィン104(a)を第1のアルキル化ゾーン10へ供給するフローストリームと、第1のオレフィン104(a)と同じ又は異なっていてもよい第2のオレフィン104(b)を第2のアルキル化ゾーン20へ供給するフローストリームとを有していてもよい。上記システムはまた、イソパラフィンを第1のアルキル化ゾーン10へ供給するフローストリーム102を有していてもよい。
【0035】
第1のアルキル化ゾーン10では、アルキル化条件下、イソパラフィン102及び第1のオレフィン104(a)を部分廃硫酸112と接触させて、オレフィン及びイソパラフィンをアルキレートに変換すると共に、廃酸相114と、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第1の炭化水素相108とを形成してもよい。第2のアルキル化ゾーン20では、アルキル化条件下、第1の炭化水素相108及び第2のオレフィンを新硫酸フィード106と接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第2の炭化水素相110と、第1のアルキル化ゾーン10へ供給してもよい部分廃硫酸112とを形成してもよい。
【0036】
次いで、重質なアルキレート生成物画分116と、反応器10、20の一方又は両方へとリサイクルしてもよい軽質なイソパラフィン画分118とを分離する蒸留塔等のセパレーターへ得られた炭化水素110を供給してもよい。
【0037】
次に
図2を参照して、本明細書中の実施形態に係るアルキル化システムの簡略化プロセス図を説明する。なお、同様の参照番号は同様の部材を表す。上記アルキル化システムは、第1のアルキル化反応ゾーン10、1つ以上の中間アルキル化反応ゾーン40、最終アルキル化反応ゾーン20、及び1つ以上のセパレーター30を有していてもよい。反応器へのフィードには、イソパラフィンフィード102、1つ以上のオレフィンフィード104a、104b、104c、及び新酸フィード106が含まれていてもよい。いくつかの実施形態において、オレフィンフィード104aはペンテンリッチ画分であり、オレフィンフィード104bはブテンリッチ画分であり、オレフィン104cはプロピレン画分である。
【0038】
最初に、新酸106を最終反応器であるアルキル化ゾーン20へ供給し、オレフィン104c及び中間アルキル化ゾーン40から回収した炭化水素流出液108bと接触させて、イソパラフィン及びオレフィンをアルキレート生成物へ変換してもよい。次いで、得られた反応流出液を分離して、炭化水素流出液110及び部分廃酸画分112aを回収してもよい。
【0039】
次いで、部分廃酸画分112aを中間反応ゾーン40へ供給してもよく、そこでオレフィン104b及びイソパラフィンフィード102と接触させて、イソパラフィン及びオレフィンをアルキレート生成物へ変換してもよい。次いで、得られた反応流出液を分離して、炭化水素流出液108及び部分廃酸画分112bを回収してもよい。
【0040】
次いで、部分廃酸画分112bを第1の反応ゾーン10へ供給してもよく、そこでオレフィン104a及びイソパラフィンフィード102と接触させて、イソパラフィン及びオレフィンをアルキレート生成物へ変換してもよい。次いで、得られた反応流出液を分離して、炭化水素流出液108a及び廃酸画分114を回収してもよい。
【0041】
上記は酸フロー(まず第3の反応器、次いで廃酸を第2の反応器へ、更に廃酸を第1の反応器へ)について説明した。上記を炭化水素(イソパラフィン)フローについて言い換えると、上記システムは、ペンテン等の第1のオレフィン104(a)を第1のアルキル化ゾーン10へ供給するフローストリームと、ブテン等の第2のオレフィン104(b)を中間又は第2のアルキル化ゾーン40へ供給するフローストリームと、プロピレン等の第3のオレフィンを最終又は第3の反応ゾーン20へ供給するフローストリームとを有していてもよい。いくつかの実施形態において、第1のオレフィン104(a)、第2のオレフィン104(b)、及び/又は第3のオレフィン104(c)は同じであっても異なっていてもよい。上記システムはまた、イソパラフィンを第1のアルキル化ゾーン10へ供給するフローストリーム102を有していてもよい。
【0042】
第1のアルキル化ゾーン10では、アルキル化条件下、イソパラフィン102及び第1のオレフィン104(a)を第2の部分廃硫酸112bと接触させて、オレフィン及びイソパラフィンをアルキレートに変換すると共に、廃酸相114と、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第1の炭化水素相108aとを形成してもよい。第2のアルキル化ゾーン40では、アルキル化条件下、第1の炭化水素相108a及び第2のオレフィンを部分廃硫酸フィード112aと接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第2の炭化水素相108bと、第1のアルキル化ゾーン10へ供給してもよい部分廃硫酸112bとを形成してもよい。第3のアルキル化ゾーン20では、アルキル化条件下、第2の炭化水素相108b及び第3のオレフィンを新硫酸フィード106と接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第3の炭化水素相110と、第2のアルキル化ゾーン40へ供給してもよい部分廃硫酸112とを形成してもよい。
【0043】
次いで、重質なアルキレート生成物画分116と、反応器10、20、40のうちの1つ又はそれぞれへとリサイクルしてもよい軽質なイソパラフィン画分118とを分離する蒸留塔等のセパレーター30へ得られた炭化水素110を供給してもよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、酸フローが、すぐ上流の反応器ではないが、(炭化水素フローに対して)上流の反応器へとカスケード化される場合、最終反応器の温度が高くなるという利点を実現できる。次に
図3を参照して、本明細書中の他の実施形態に係るアルキル化システムの簡略化プロセス図を説明する。なお、同様の参照番号は同様の部材を表す。
【0045】
図3に図示したアルキル化システムは、第1のアルキル化反応ゾーン10、1つ以上の中間アルキル化反応ゾーン40、最終アルキル化反応ゾーン20、及び1つ以上のセパレーター30を有していてもよい。反応器へのフィードには、イソパラフィンフィード102、1つ以上のオレフィンフィード104a、104b、104c、及び新酸フィード106が含まれていてもよい。いくつかの実施形態において、オレフィンフィード104aはペンテンリッチ画分であり、オレフィンフィード104bはブテンリッチ画分であり、オレフィン104cはプロピレン画分である。
【0046】
最初に、新酸106を最終反応器であるアルキル化ゾーン20へ供給し、オレフィン104c及び中間アルキル化ゾーン40から回収した炭化水素流出液108bと接触させて、イソパラフィン及びオレフィンをアルキレート生成物へ変換してもよい。次いで、得られた反応流出液を分離して、炭化水素流出液110及び部分廃酸画分112aを回収してもよい。
【0047】
次いで、部分廃酸画分112aを第1の反応ゾーン10へ供給してもよく、そこでオレフィン104a及びイソパラフィンフィード102と接触させて、イソパラフィン及びオレフィンをアルキレート生成物へ変換してもよい。次いで、得られた反応流出液を分離して、炭化水素流出液108a及び部分廃酸画分112bを回収してもよい。
【0048】
次いで、部分廃酸画分112bを第2の反応ゾーン10へ供給してもよく、そこでオレフィン104bと接触させて、イソパラフィン及びオレフィンをアルキレート生成物へ変換してもよい。次いで、得られた反応流出液を分離して、炭化水素流出液108b及び廃酸画分114を回収してもよい。
【0049】
上記は酸フロー(まず第3の反応器、次いで廃酸を第1の反応器へ、更に廃酸を第2の反応器へ)について説明した。上記を炭化水素(イソパラフィン)フローについて言い換えると、上記システムは、ペンテン等の第1のオレフィン104(a)を第1のアルキル化ゾーン10へ供給するフローストリームと、ブテン等の第2のオレフィン104(b)を中間又は第2のアルキル化ゾーン40へ供給するフローストリームと、プロピレン等の第3のオレフィンを最終又は第3の反応ゾーン20へ供給するフローストリームとを有していてもよい。いくつかの実施形態において、第1のオレフィン104(a)、第2のオレフィン104(b)、及び/又は第3のオレフィン104(c)は同じであっても異なっていてもよい。上記システムはまた、イソパラフィンを第1のアルキル化ゾーン10へ供給するフローストリーム102を有していてもよい。
【0050】
第1のアルキル化ゾーン10では、アルキル化条件下、イソパラフィン102及び第1のオレフィン104(a)を第1の部分廃硫酸112aと接触させて、オレフィン及びイソパラフィンをアルキレートに変換すると共に、第2の部分廃酸相112bと、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第1の炭化水素相108aとを形成してもよい。第2のアルキル化ゾーン40では、アルキル化条件下、第1の炭化水素相108a及び第2のオレフィンを第2の部分廃硫酸フィード112bと接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第2の炭化水素相108bと、廃硫酸114とを形成してもよい。第3のアルキル化ゾーン20では、アルキル化条件下、第2の炭化水素相108b及び第3のオレフィンを新硫酸フィード106と接触させて、アルキレート及び未反応イソパラフィンを含む第3の炭化水素相110と、第1のアルキル化ゾーン10へ供給してもよい第1の部分廃硫酸112aとを形成してもよい。
【0051】
次いで、重質なアルキレート生成物画分116と、反応器10、20、40のうちの1つ又はそれぞれへとリサイクルしてもよい軽質なイソパラフィン画分118とを分離する蒸留塔等のセパレーター30へ得られた炭化水素110を供給してもよい。
【0052】
次に
図4を参照して、本明細書中の実施形態に係るアルキル化ゾーンの簡略化プロセス図を説明する。アルキル化ゾーンは、反応ゾーン及び分離ゾーンを有していてもよい。例えば、アルキル化ゾーン400は、上部反応セクション400a及び底部分離セクション400bを有していてもよい。オレフィン404、イソパラフィン406、及び硫酸408の緊密な接触を促進するために、接触構造体402が上部セクション400aに配置されていてもよい。
【0053】
上述の通り、オレフィンの少なくとも一部又は全部がイソパラフィンと反応してアルキレートを形成するように、アルキル化ゾーン400の条件を保持してもよい。次いで、得られた反応混合物を下部セクション400bでデカンテーションするなどして分離することで、アルキレート、未反応イソパラフィン、及び存在している場合は未反応オレフィンを含む炭化水素画分420と廃酸又は部分廃酸画分422とを回収してもよい。
【0054】
接触構造体を使用する場合、硫酸、イソパラフィン、及びオレフィンフィードストリームを接触させるためにアルキル化反応器400の上部セクション400aに配置してもよい。いくつかの実施形態において、本明細書で記載した実施形態で使用される接触構造体又は分散装置は、少なくとも50パーセントの空隙、他の実施形態においては少なくとも60パーセントの空隙、他の実施形態においては少なくとも70パーセントの空隙、他の実施形態においては少なくとも80パーセントの空隙、更に他の実施形態においては最大99パーセントの空隙を有していてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、接触構造体としては、マルチフィラメント部材及び構造要素、例えば共編み(co-knit)金網、分散装置、又は他の好適な接触構造体が挙げられる。例えば、米国特許第6,774,275号明細書(参照により本願に援用)に記載の接触構造体を使用してもよい。
【0055】
いくつかの実施形態において、アルキル化反応器400の反応ゾーンにパルスフロー機構を採用してもよい。パルスは、物質及び熱の伝達速度が大きいことを特徴としていてもよい。接触構造体の濡れを増大させ、且つ並列細流同士を連続して混合することで、フローの不均等分布を低減できる。加えて、局所的なホットスポットの形成を抑制できるため、本質的により安全なプロセスが得られる。パルスによって、停滞した液体ホールドアップを、その停滞性が消失する地点まで連続して動かすことができる。停滞したホールドアップはトリクルフロー操作における全液体ホールドアップの10~30パーセントであるので、パルスフロー機構の動的特性によって、半径方向の混合性の改善などにより反応器の性能を向上させることができる。
【0056】
上述の通り、アルキル化ゾーンから回収した部分廃酸画分422の一部又は全部を別のアルキル化ゾーン(図示せず)へ供給してもよい。いくつかの実施形態において、酸画分458の一部424も同じアルキル化反応器400へとリサイクルすることで、例えば、第1のアルキル化反応器400において所望の酸濃度を保持してもよい。残った酸を廃酸画分426として回収してもよく、それを異なる反応器へ送ったり、廃酸回収部として回収したりしてもよい。
【0057】
加えて、反応熱によっていくらかの蒸気440を生成してもよく、それを除去してもよい。望ましい場合には、コンプレッサー442等を用いて該蒸気を凝縮又は圧縮し、回収した液状炭化水素画分420と混合して、炭化水素画分444を形成してもよい。いくつかの実施形態において、回収した炭化水素画分444を、下流のアルキル化ゾーン又は生成物回収ゾーンへ送られる第1の部分450と、同じアルキル化反応器400へとリサイクルされてもよい第2の部分452とに分割することで、例えば、所望のオレフィンフィード濃度を保持し且つ/又は温度を制御してもよい。
【0058】
アルキル化ゾーンへ供給される硫酸は、新硫酸及び/又はリサイクル硫酸を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、アルキル化反応器へ進む硫酸相の濃度は、99.8重量パーセント未満の強度の硫酸/水の混合物又はそれ以下として滴定される濃度で保持してもよい。別の実施形態において、硫酸は、20~96重量パーセントの硫酸/水混合物として滴定される濃度範囲、他の実施形態においては25~75重量パーセントの硫酸/水混合物として滴定される濃度範囲、更に別の実施形態においては30~70重量パーセントの硫酸/水混合物として滴定される濃度範囲に保持してもよい。なお、このような場合の酸相は、硫酸、硫酸エステル、ASO(酸可溶性油)、及び水で構成されている。水を大量には含んではおらず、典型的には0~5重量%であり、酸含量を記載する目的で「~として滴定される」という用語を用いて、同じ酸度を有する硫酸/水混合物を示しており、本明細書中で使用される酸混合物は化学組成の点でより複雑であることが理解される。酸度の測定は、例えばMETTLER DL-77又はMETTLER T-90滴定装置を用いて実施してもよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、アルキル化ゾーンへ供給される廃酸に加えて新酸を供給してもよい。新酸ストリーム、アルキル化反応器へとリサイクルされる回収酸の一部、及び別のアルキル化ゾーン又は酸回収部へ送られる廃酸の一部の流量を制御することで、各アルキル化反応器において所望の又は最適な酸強度を達成してもよい。上述の通り、(イソパラフィンフィード/炭化水素フローに対して)最後のアルキル化ゾーンにおける酸強度が上流のアルキル化ゾーンにおける酸強度よりも大きくなるように、酸及びリサイクル酸のフローを保持してもよい。
【0060】
n個の反応器を有する反応システムの場合、(炭化水素フローについて)最終又は最後の反応器の酸強度が最も高くてもよい。言い換えると、反応器nにおける酸強度が反応器1~n-1よりも大きい場合(すなわち、反応器nの酸強度>反応器1~n-Jの酸強度)、有利な硫黄分離を実現できる。
【0061】
図1の実施形態では、例えば、第2のアルキル化ゾーン20における酸強度を80~99%の範囲の濃度で保持してもよく、第1のアルキル化ゾーン10における酸強度を80~99%の範囲だが反応器20よりは低い濃度で保持してもよい。
図2の実施形態では、例えば、第3のアルキル化ゾーン20における酸強度を80~99%の範囲の濃度で保持してもよく、第2のアルキル化ゾーン40における酸強度を80~99%の範囲の濃度で保持してもよく、第1のアルキル化ゾーン10における酸強度を80~99%の範囲だが反応器20よりは低い濃度で保持してもよい。
図3の実施形態では、例えば、アルキル化ゾーン20における酸強度を80~99%の範囲の濃度で保持してもよく、アルキル化ゾーン10における酸強度を80~99%の範囲の濃度で保持してもよく、アルキル化ゾーン40における酸強度を80~99%の範囲だが反応器20よりは低い濃度で保持してもよい。
【0062】
いくつかの実施形態において、例えばアルキル化ゾーン20等のプロピレンアルキル化反応器へ供給されるプロピレンフィードストックに対する硫酸の質量比は、0.1:1~30:1の範囲であってもよい。別の実施形態において、プロピレンアルキル化反応器へ供給されるプロピレンフィードストックに対する硫酸の質量比は、0.1:1~20:1の範囲であってもよく、更に別の実施形態においては1:1~10:1の範囲であってもよい。
【0063】
アルキル化ゾーンの反応条件は、上述の通り、フィードの種類や反応器で保持される酸強度によって異なり得る。重質物の形成を最小限に抑えつつ、上述の通り、オレフィンの少なくとも一部がイソパラフィンと反応してアルキレートを形成するように、アルキル化反応器の条件を保持してもよい。例えば、いくつかの実施形態において、アルキル化反応器の温度を-7℃~38℃(20°F~100°F)の範囲に保持してもよく、別の実施形態においては-4℃~18℃(25°F~65°F)の範囲に保持してもよく、別の実施形態においては-1℃~10℃(30°F~50°F)の範囲に保持してもよく、更に別の実施形態においては-7℃~4℃(20°F~40°F)の範囲に保持してもよい。アルキル化反応器の圧力は、いくつかの実施形態においては約5~約500psigの範囲であってもよく、別の実施形態においては約10~250psigの範囲であってもよく、更に別の実施形態においては約20~150psigの範囲であってもよい。いくつかの実施形態で採用される温度及び圧力の組み合わせは、フィード及び生成物を液相で保持するのに十分なものである。
【0064】
いくつかの実施形態における反応器20等のプロピレンアルキル化反応器の場合、反応条件として、温度が0℃~19℃(32°F~65°F)の範囲であってもよい。これらの条件の場合、プロピレンの変換率を最大化できる。いくつかの実施形態において、プロピレンアルキル化反応器で使用される酸強度が高いほど反応器の温度を高くでき、例えば約10℃~約38℃(50°F~100°F)の範囲にできる。
【0065】
図1に示したもの等の2段反応器システムの場合、例えば、第1及び第2のアルキル化ゾーンにおけるアルキル化条件として、第1のアルキル化ゾーンの反応温度が第2のアルキル化ゾーンの反応温度より低い。例えば、第1のアルキル化ゾーン10における反応温度は約-7℃~約38℃の範囲であってもよく、第2のアルキル化ゾーン20における反応温度は約-7℃~約38℃の範囲であってもよい。
【0066】
同様に、3段反応器システムの場合、(炭化水素フローについて)最終反応器の温度が最も高くてもよい。第1及び第2のアルキル化ゾーンにおけるアルキル化条件として、第1のアルキル化ゾーンの反応温度が第2のアルキル化ゾーンの反応温度より低くてもよく、第2及び第3のアルキル化ゾーンにおけるアルキル化条件として、第2のアルキル化ゾーンの反応温度が第3のアルキル化ゾーンの反応温度より低
い。別の実施形態において、第1、第2、及び第3のアルキル化ゾーンにおけるアルキル化条件として、第1又は第2のアルキル化ゾーンの反応温度が第3のアルキル化ゾーンの反応温度より低くてもよい。例えば、
図2で示したプロセスの場合、最終プロピレンアルキル化反応器30を約-7℃~約38℃の範囲の温度で作動させてもよく、一方、ブテン及び/又はペンテンを反応させる第1及び第2のアルキル化ゾーン10、40が約-7℃~約38℃の範囲であってもよい。
【0067】
いくつかの実施形態において、(アルキル化反応ゾーンそれぞれについて)全反応器フィードにおけるオレフィン/イソパラフィンモル比は、約1:1.5~約1:30の範囲、例えば約1:5~約1:15の範囲であってもよい。より低いオレフィン/イソパラフィン比を採用してもよい。
【0068】
2段反応器システムの場合、例えば、(イソパラフィンフローに対して)第1の反応ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比は、第2の反応ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比より大きい。最終反応器は、イソパラフィン/オレフィンモル比が最も小さくてもよい。例えば、
図1の実施形態において、第1の反応ゾーン10への全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比は、第2の反応ゾーン20への全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比より大きい。いくつかの実施形態において、第1の反応ゾーン10への全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比は、第2の反応ゾーン20への全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比の少なくとも1.5倍であり、別の実施形態においては少なくとも1.75倍であり、更に別の実施形態においては少なくとも2倍である。
【0069】
同様に、3段反応器システムの場合、第1の
アルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比は、第2の
アルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比より大きくてもよく、第2の
アルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比は、第3の
アルキル化ゾーンへの全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比より大きい(I
R1
:O
R1>I
R2
:O
R2>I
R3
:O
R3
)。いくつかの実施形態において、第1の
アルキル化ゾーン10への全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比は、第2の
アルキル化ゾーン40への全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比の少なくとも1.5倍であってもよく、別の実施形態においては少なくとも1.75倍であってもよく、更に別の実施形態においては少なくとも2倍であってもよい。同様に、第2の
アルキル化ゾーン40への全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比は、第3の
アルキル化ゾーン20への全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比の少なくとも1.5倍であってもよく、別の実施形態においては少なくとも1.75倍であってもよく、更に別の実施形態においては少なくとも2倍であってもよい。同様に、
図3に示した実施形態の場合、第1又は第2の
アルキル化ゾーン10、40への全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比は、第3の
アルキル化ゾーン30への全フィードにおけるイソパラフィン/オレフィンモル比より大きい。
【0070】
本明細書中の実施形態に従って形成されるアルキル化生成物は、C7~C10炭化水素を含んでいてもよい。本明細書中に開示したプロセス及びシステムの実施形態を用いて形成されるアルキレートは、ガソリンとして使用してもよい。いくつかの実施形態において、C7及びC8アルキレート生成物を他の成分とブレンドしてガソリンを生成してもよい。
【0071】
上述の通り、本明細書中の実施形態は、炭化水素及び酸フローの逆カスケード化を行うアルキル化システムに関する。1段反応器システムについて説明したが、例えば
図1、2、又は3に関して記載したようなオレフィン、パラフィン、及び酸の直列フローと並列に作動する複数の反応器を1つ以上の反応ゾーンが有する場合等、フローが直列フローと並列フローとの組み合わせであってもよいことも想定される。反応ゾーンが反応ゾーン内に直列及び/又は並列フローを有していてもよい別の実施形態も想定されるが、本明細書中で記載した酸の逆カスケード化を利用することが有利である。例えば、反応ゾーン10は、反応器20から受ける酸フローの他、供給されるイソパラフィン及び/又はオレフィンについても並列に作動する複数の反応器を有していてもよい。同様に、反応ゾーン20及び40は、酸、イソパラフィン、及びオレフィンフィードについて並列に作動する複数の反応器を有していてもよい。
【0072】
本明細書中の実施形態は、エネルギー消費の削減、酸消費の低減、アルキレート生成物のオクタン価の上昇、アルキレート生成物中の硫黄含量の低減等の利点のうち1つ以上を提供できる点で有利である。
【0073】
本開示には限られた数の実施形態しか含まれていないが、本開示の範囲を逸脱しない他の実施形態も考えられることが、本開示の利益を享受する当業者には理解できるであろう。従って、本範囲は添付の特許請求の範囲のみにより限定されるべきである。