(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】屠殺装置、屠殺設備および屠殺方法
(51)【国際特許分類】
A22B 3/08 20060101AFI20230721BHJP
A22C 21/00 20060101ALI20230721BHJP
A22B 7/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
A22B3/08
A22C21/00 Z
A22B7/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021201202
(22)【出願日】2021-12-10
【審査請求日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】521504474
【氏名又は名称】マイン フードプロセッシング テクノロジー ベー. ヴェー.
【氏名又は名称原語表記】Meyn Food Processing Technology B.V.
【住所又は居所原語表記】Westeinde 6 1511 MA OOSTZAAN Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】ジョイ デビッド マイク ヴァン スポール
(72)【発明者】
【氏名】ラムジ スーリ
(72)【発明者】
【氏名】アラーダス クラース ペッデモース
(72)【発明者】
【氏名】サイモン クーイ
【審査官】石川 輝
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03628166(EP,A1)
【文献】特開昭50-034965(JP,A)
【文献】実開昭55-065987(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22B 3/08
A22C 21/00
A22B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベヤライン(110)によって脚(185)で吊り下げられて搬送方向(T)に搬送される家禽(180)用の屠殺装置(120)であって、前記家禽(180)は、頭(285)、嘴(282)、及び頸(181)を含み、
前記屠殺装置(120)は、
前記コンベヤライン(110)が前記家禽(180)を搬送するときに、前記家禽(180)の前記頸(181)をトラック(121)の上流端(123)から下流端(124)へ案内するためのスリット(122)を画定する第1の案内(121’)と第2の案内(121’’)とを備えた前記トラック(121)と、
前記頸(181)の第1の側(181’)で第1の静脈および/または動脈(291a、291b)を切断するための前記トラック(121)の前記第1の案内(121’)に配置された回転ナイフ(125)と、
前記頸(181)が前記トラック(121)に沿って搬送されるときに、前記回転ナイフ(125)によって切断されるべき吊り下げられた前記家禽(180)の前記第1の静脈および/または動脈(291a、291b)を露出させるために、前記嘴(282)を前記搬送方向(T)に押しつけて前記頸(181)を第1の回転方向(CW)にねじれさせるための、前記第1の案内に、前記回転ナイフ(125)に対して上流に配置されたシリンダ(126)とを備え、
前記回転ナイフ(125)が、前記家禽(180)の前記頸(181)の椎骨(286)を切断することを回避しながら、前記第1の側(181’)とは反対の前記頸(181)の第2の側(181’’)の第2の静脈および/または動脈(292a、292b)、気管ならびに食道(287)を切断するように、前記回転ナイフ(125)が、前記第1の回転方向(CW)に回転して、前記頸(181)を前記第1の回転方向(CW)とは反対の第2の回転方向(ACW)にねじることを可能にするように配置されていることを特徴とする
屠殺装置(120)。
【請求項2】
前記トラック(121)の前記スリット(122)が、前記回転ナイフの輪郭をなぞる前記シリンダ(126)に対して下流に配置された区間(122’)を含む
請求項1に記載の屠殺装置(120)。
【請求項3】
前記シリンダ(126)が、前記第1の回転方向(CW)の周りを回転可能である
請求項1または2に記載の屠殺装置(120)。
【請求項4】
前記シリンダ(126)が、通過する前記家禽(180)の前記嘴(282)および/または前記頭(285)との接触によって回転可能である
請求項3に記載の屠殺装置(120)。
【請求項5】
前記屠殺装置(120)が、前記トラック(121)の前記第2の案内に、前記家禽(180)の前記頸(181)の前記第2の側(181’’)の前記第2の動脈および/または静脈を切断するように配置されたさらなる回転ナイフを備えない
請求項1~4のいずれか一項に記載の屠殺装置(120)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の屠殺装置(120)と、前記屠殺装置(120)によって屠殺されるべき前記家禽(180)を脚(185)で吊り下げながら搬送方向(T)に搬送するためのコンベヤライン(110)とを備える
屠殺設備(100)。
【請求項7】
前記コンベヤライン(110)が、前記頸(181)が前記シリンダ(126)と前記回転ナイフ(125)との間の前記トラック(121)に沿って搬送される間、前記家禽(180)を本質的に垂直に吊り下げられた状態に維持するように配置された
請求項6に記載の屠殺設備(100)。
【請求項8】
頸(181)と、頭(285)と、嘴(282)とを含む家禽(180)を屠殺するための方法において、
足から吊り下げられている前記家禽(180)を、前記頸(181)がトラック(121)に沿って屠殺装置の上流端(123)から下流端(124)へ搬送されるように、搬送ラインによって搬送方向(T)に搬送するステップと、
前記頸(181)の第1の側(181’)の第1の静脈および/または動脈(291a、291b)を回転ナイフによって切断するステップと、
前記頸(181)が前記トラック(121)に沿って案内されているときに、前記頸(181)の前記第1の側(181’)を露出させるために、前記回転ナイフ(125)に対して上流に配置されているシリンダ(126)によって前記嘴(282)を前記搬送方向(T)に押しつけることにより、前記頸(181)を前記搬送方向を横切る軸を中心とする第1の回転方向(CW)にねじるステップとを含み、
前記回転ナイフ(125)を前記第1の回転方向(CW)に回転させて、前記第1の回転方向(CW)とは反対の第2の回転方向(ACW)に前記頸(181)をねじれさせることによって、前記家禽(180)の前記頸(181)の椎骨(286)を切断することを回避しながら、前記回転ナイフ(125)によって、前記第1の静脈および/または動脈(291a、291b)から、前記第1の側(181’)とは反対の前記頸(181)の第2の側(181’’)に位置する第2の静脈および/または動脈(292a、292b)、気管ならびに食道(287)まで切断するステップを含むことを特徴とする
方法。
【請求項9】
前記トラック(121)が、前記回転ナイフ(125)の輪郭をなぞる前記シリンダ(126)に対して下流に配置された区間を含み、前記方法において、前記頸(181)が、前記頸(181)を前記第1の静脈および/または動脈(291a、291b)から前記第2の静脈および/または動脈(292a、292b)まで切断するために前記回転ナイフ(125)の前記輪郭に沿って案内される
請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤラインによって脚で吊り下げられて搬送方向に搬送されている家禽の喉(頸の椎骨を避けて、静脈、動脈、食道および気管)を切断するための屠殺装置の分野であり、家禽は頭、嘴および頸を含む。より具体的には、本発明は、
コンベヤラインが家禽を搬送するときにそこで家禽の頸をトラックの上流端から下流端へ案内するように配置されたスリットを画定する第1の案内と第2の案内とを備えたトラックと、
前記家禽の頸の椎骨を切断することを回避しながら、頸、気管および食道の第1の側の第1の静脈および/または動脈を切断するための、トラックの第1の案内に含まれる回転ナイフと、
頸がトラックに沿って搬送されるときに、回転ナイフによって切断されるべき前記吊り下げられた家禽の第1の静脈および/または動脈を露出させるために、嘴を搬送方向に押しつけて頸を第1の回転方向にねじれさせるための、第1の案内に、回転ナイフに対して上流に配置されたシリンダと
を備えた屠殺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
屠殺装置は当技術分野で公知である。例えば、屠殺装置は通常、頸がトラックに沿って移動するときに静脈および/または動脈に達するように喉に切り込みを入れるように配置された単一の回転ナイフを備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの装置の問題は、確実な方法で切り込みを入れることであり、というのは、頸がトラックに沿って搬送されるときに摩擦が原因でねじれる傾向があるためである。この問題を解決する可能な方法は、欧州特許第3628166号明細書などのように、家禽の食道、気管、および椎骨を切断することを回避しながら、頸の両側を切断するための2つの回転ナイフを設けることである。しかしながら、これらの解決策は、複雑な構造をもたらす。本発明の目的は、この問題を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このために、請求項1の前文に記載の屠殺装置は、回転ナイフが、前記家禽の頸の椎骨を切断することを回避しながら、第1の側とは反対の頸の第2の側の第2の静脈および/または動脈、気管ならびに食道を切断するように、前記回転ナイフが、第1の回転方向に回転して、頸を前記第1の回転方向とは反対の第2の回転方向にねじることを可能にするように配置されていることを特徴とする。このようにして、頸の両側の静脈および/または動脈を切断するためのただ1つの回転ナイフを有するより単純な構造が達成される。よって、屠殺装置は、回転ナイフの側とは反対の別の側に、家禽の頸の第2の側の第2の動脈および/または静脈を切断するように配置された別の回転ナイフを備えないことが好ましい。
【0005】
シリンダは、頸の第1の側を露出させて前記第1の側の静脈および/または動脈を切断するために、嘴および/または頭と係合して嘴を搬送方向に押しつけて頸を第1の回転方向にねじれさせ得る。さらに、シリンダはまた、回転ナイフと協働して、頸を第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に回転させる。嘴および/または頭がもはやシリンダと係合しなくなり、したがって、頸がトラックに沿って案内されているときにシリンダが嘴を搬送方向に押しつけなくなると、前記頸は、第2の回転方向に回転することによりねじれを解いてその自然な位置になろうとする傾向がある。この動きはまた、回転ナイフによって第1の回転方向に生じる摩擦によっても助けられる。よって、前記回転ナイフが第1の側とは反対の頸の第2の側の第2の静脈および/または動脈に達する可能性が増加し、頸のより確実な切断が得られる。
【0006】
一実施形態では、トラックは、回転ナイフの輪郭をなぞるシリンダに対して下流に配置された区間を含む。このようにして、回転ナイフが案内されている家禽の頸を切断することになるトラックに沿った経路が延長され、したがって、第2の側の静脈および/または動脈に達する可能性も増加する。好ましくは、この区間は輪郭を下方になぞるので、重力が第2の回転方向の頸の回転運動の助けとなり得る。
【0007】
一実施形態では、シリンダは、第1の回転方向の周りを回転可能である。より好ましくは、シリンダは、通過する家禽の嘴および/または頭との接触によって回転可能である。このようにして、第1の回転方向に向かう頸のねじれが滑らかに行われる。
【0008】
本発明の第2の態様は、既に説明された特徴を備える屠殺装置と、脚で吊り下げられている間に前記屠殺装置によって屠殺されるべき家禽を搬送方向に搬送するためのコンベヤラインとを備える屠殺設備に関する。
【0009】
一実施形態では、コンベヤラインは、頸がシリンダと回転ナイフとの間のトラックに沿って搬送される間、家禽を本質的に垂直に吊り下げられた状態に維持するように配置される。
【0010】
本発明の第3の態様は、頸、頭、および嘴を含む家禽を屠殺するための方法であって、
足から吊り下げられている家禽を、頸がトラックに沿って屠殺装置の上流端から下流端へ搬送されるように、搬送ラインによって搬送方向に搬送するステップと、
頸の第1の側の第1の静脈および/または動脈を回転ナイフによって切断するステップと、
頸が前記トラックに沿って案内されているときに、頸の第1の側を露出させるために、嘴をシリンダによって搬送方向に押しつけることにより頸を第1の回転方向にねじるステップと
を含み、この方法はまた、前記回転ナイフを第1の回転方向に回転させて、頸を第1の回転方向とは反対の第2の回転方向にねじれさせることによって、前記家禽の頸の椎骨を切断することを回避しながら、第1の側とは反対の頸の第2の側に位置する第2の静脈および/または動脈、気管ならびに食道を回転ナイフによって切断するステップも含む。
【0011】
一実施形態では、トラックは、回転ナイフの輪郭をなぞるシリンダに対して下流に配置された区間を含み、この方法では、頸は、頸を第1の静脈および/または動脈から第2の静脈および/または動脈まで切断するために回転ナイフの前記輪郭に沿って案内される。
【0012】
本発明を、添付の特許請求の範囲に関して限定的ではない、本発明による装置の例示的な実施形態の図面を参照して以下でさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本発明による屠殺設備を示す正面図である。
【
図2A】
図1Bの背面図の拡大図からの、屠殺設備の切断プロセス中の第1のステップを示す図である。
【
図2B】
図1Bの背面図の拡大図からの、屠殺設備の切断プロセス中の第2のステップを示す図である。
【
図2C】
図1Bの背面図の拡大図からの、屠殺設備の切断プロセス中の第3のステップを示す図である。
【
図2D】
図1Bの背面図の拡大図からの、屠殺設備の切断プロセス中の第4のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一般に(生きている)家禽は、脚だけでなく、頸、頭、および嘴も含むことは周知である。
【0015】
【0016】
屠殺設備100は、そのような家禽180を脚185で吊り下げて前記家禽180を搬送方向Tに搬送するためのキャリヤ111を有するコンベヤライン110を備える。
【0017】
屠殺設備100はまた、案内トラック121を有する屠殺装置120も備え、家禽180の頸181部分は、第1の案内121’と第2の案内121’’とによって画定されたスリット122に沿って案内トラック121の上流端123から下流端124へ移動する。
【0018】
図1Bに、屠殺設備100を下方から斜めに見た図で示す。この図から明らかなように、屠殺装置120は、第1の案内121’に、回転ナイフ125とシリンダ126とを備え、シリンダ126は回転ナイフ125に対して上流にある。この図はまた、スリットの区間122’が回転ナイフ125の輪郭をなぞるためにどのように配置されているかも示している。
【0019】
図2A~
図2Dは、
図1Bと同様に背面図から見た、シリンダ126と回転ナイフ125とが家禽を屠殺するためにどのように協働するかに焦点を当てている。
【0020】
第1のステップ(
図2A)で、家禽は、嘴282が下方を指す状態で、頸181がトラック121のスリット122に沿ってシリンダ126に向かって案内されるように搬送される。このステップは当業者には知られており、したがって、これ以上の説明は不要である。頸181がねじれて、家禽が搬送されるときに前記頸181に対してトラックによって生じる摩擦が原因で嘴282が正確に下方を指さなくなることも起こり得る。
【0021】
第2のステップ(
図2B)で、家禽の頸は、嘴282または頭285がシリンダ126と係合するスリット122に沿った箇所に達する。本実施形態では、シリンダ126は接触により回転可能である。この時点から、頸がスリット122に沿ってさらに搬送される際に、シリンダ126は、頭285および嘴282と係合することによって嘴282を搬送方向に押しつけ、前記頸181は、嘴282が搬送方向Tと実質的に逆を指すように矢印CWで表された第1の回転方向にねじれる。この図では、第1の回転方向は、吊り下げられた家禽180の搬送方向Tを横切る軸(図示されず)を中心とする時計回りである。家禽180の頭285のねじれ運動により、嘴282が図示の向きになって頸181の第1の側181’を露出させ、これにより、回転ナイフ125が椎骨286を切断することなく第1の動脈291aおよび静脈291bを切断することが可能になる。
【0022】
第1の動脈291aおよび静脈291bが切断された後、頸はトラック121のスリット122に沿って搬送され続け、嘴282はシリンダ126から外れる(
図2C参照)。この時点で、前記シリンダ126によって引き起こされたねじれにより、頸は、前記嘴が再び下方を指すように、矢印ACWで表された第2の回転方向に従ってねじれを解こうとする傾向がある。この図では、第2の回転方向は反時計回りである。回転ナイフ125は、第1の回転方向CWに回転することによって切断するように配置されているため、前記家禽180の頸を、頸181の第2の側181’’に向かって第2の回転方向ACWにねじり続けて、食道287および気管(図面には明確にするために図示されず)を切断することに寄与する。
【0023】
最後に、頸は、回転ナイフ125の輪郭をなぞる最後の区間122’に沿って案内される。これは、回転ナイフ125によって引き起こされる第2の回転方向ACWの頸のねじれと組み合わさって、前記回転ナイフ125が第2の側181’’の第2の静脈292aおよび動脈292bを切断することを可能にする。
【0024】
以上では本発明を、本発明の屠殺装置の例示的な実施形態を参照して説明したが、本発明は、本発明から逸脱することなく多くの方法で変更が可能であるこの特定の実施形態に限定されない。例えば、頸がトラック121に沿って搬送されるときに嘴282が上方を指すように家禽の搬送を変更することも可能であり、シリンダ126および回転ナイフ125はスリット122に対して上方に配置される。したがって、説明した例示的な実施形態は、添付の特許請求の範囲を厳密にそれに従って解釈するために使用されるべきではない。それとは逆に、この実施形態は、添付の特許請求の範囲をこの例示的な実施形態に限定することを意図せずに、特許請求の範囲の文言を説明するためのものにすぎない。したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲のみに従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の文言の考えられ得る不明確さが、この例示的な実施形態を使用して解決されるべきである。