(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】物理量測定装置
(51)【国際特許分類】
G01F 1/684 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
G01F1/684 A
(21)【出願番号】P 2021511133
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 JP2020002247
(87)【国際公開番号】W WO2020202721
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2019068885
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファティン ファハナー ビンティ ハリダン
(72)【発明者】
【氏名】吉田 勇
(72)【発明者】
【氏名】余語 孝之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 博幸
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/033589(WO,A1)
【文献】特開平02-220477(JP,A)
【文献】特開2011-122984(JP,A)
【文献】特開2014-001984(JP,A)
【文献】特開2014-001985(JP,A)
【文献】特開2014-001983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/68- 1/699
G01L 7/00-23/32
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部と該発熱部の上下流に設けられる感温部が形成されて流量を測定する薄膜部を備える半導体素子と、
前記半導体素子が実装されるリードフレームと、
前記薄膜部を露出させるように前記半導体素子および前記リードフレームの少なくとも一部を封止する封止部と、を有し、
前記リードフレームは、前記半導体素子の空洞部のリードフレーム側の開口端部の内側で前記薄膜部と対向する箇所に形成される孔を有し、
前記孔の開口面積は、前記薄膜部の面積以上であり、
前記リードフレームの前記孔の周囲に前記半導体素子の裏面全周がフィルム状の接着部材を介して接着されているセンサパッケージ。
【請求項2】
前記孔の開口形状は、前記薄膜部の形状と同一もしくは相似形状である請求項1に記載のセンサパッケージ。
【請求項3】
前記半導体素子と前記リードフレームの間に設けられ、前記リードフレームに接着されるフィルム状の部材を有し、
前記半導体素子は、前記接着部材を介して前記フィルム状の部材に接着され、前記リードフレームの前記孔の周囲に接着されている請求項2に記載のセンサパッケージ。
【請求項4】
前記フィルム状の部材は、前記リードフレームに形成される前記孔を覆う部分に孔が形成されている請求項3に記載のセンサパッケージ。
【請求項5】
前記フィルム状の部材に形成される前記孔の開口面積は、前記リードフレームに形成される前記孔の開口面積よりも小さい請求項4に記載のセンサパッケージ。
【請求項6】
前記リードフレームの前記半導体素子が実装される面とは反対側の面に接着されるフィルム状の部材を備える請求項1乃至5のいずれか一項に記載のセンサパッケージ。
【請求項7】
前記リードフレームの前記半導体素子が実装される面とは反対側の面に形成される溝と、前記リードフレームの前記半導体素子が実装される面とは反対側の面に接着される前記フィルム状の部材と、前記リードフレームに形成された前記孔と、の協働により形成される連通通路を備える請求項6に記載のセンサパッケージ。
【請求項8】
前記接着部材は
、前記半導体素子の空洞部と前記リードフレームに形成された前記孔とを連通させる貫通孔を備え、
前記フィルム状の部材に設けられた前
記孔は、前記接着部材の前記貫通孔の開口の内側に設けられていることを特徴とする請求項
5に記載のセンサパッケージ。
【請求項9】
前記リードフレームに形成された前記孔の前記開口面積は、前記薄膜部の面積よりも大きく、
前記センサパッケージの平面視において、前記薄膜部が前記孔の開口の内側に設けられている請求項1に記載のセンサパッケージ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のセンサパッケージを備えた物理量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱式流量計に関する発明として、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1には、流量センサと流量センサを実装するリードフレームとの線膨張係数差により発生する薄膜部へのひずみを低減するために、中間部材を設ける構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンのダウンサイジング化、高効率化の要求に伴い、吸気管内に実装される物理量測定装置の低背化(圧損低減)が求められている。特許文献1に記載の技術では、中間部材を設けることにより流量センサパッケージの厚みが厚くなってしまい、物理量測定装置の厚みを低減することに対して検討の余地が残されている。一方で、中間部材を単に廃止した場合には、薄型化は可能であるが、流量センサとリードフレームの線膨張係数差に起因した薄膜部(検出部)の反りにより検出精度が悪化してしまうという課題があった。
【0005】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、中間部材を設けずとも検出精度を向上させることが可能なセンサパッケージ並びにそれを用いた物理量測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の流量センサパッケージは、空洞部が形成された半導体基板と該空洞部を覆うように設けられる薄膜部と有する半導体素子と、前記半導体素子が実装されるリードフレームと、前記半導体素子の薄膜部が露出するように設けられた樹脂成型体と、を備え、前記リードフレームは、前記薄膜部と対向する箇所に形成される孔を有し、前記孔の開口面積は、前記薄膜部の面積以上である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記一態様によれば、センサパッケージの薄型化とセンサ素子の検出精度の向上を両立することが可能な、物理量測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】物理量測定装置を備えた内燃機関制御システムの一例を示すシステム図。
【
図2】本発明の実施形態1に係る物理量測定装置の正面図。
【
図3】
図2に示す物理量測定装置のカバーを取り外した状態の正面図。
【
図4】
図3に示す物理量測定装置のセンサパッケージの平面図。
【
図5】
図4のセンサパッケージの封止部を取り除いた状態を示す平面図。
【
図6】
図4に示すVI-VI線に沿うセンサパッケージの断面図。
【
図7】リードフレームの孔と薄膜部の面積比率と薄膜部の変形量の関係を示す図。
【
図8】本発明の実施形態2に係るセンサパッケージの平面図。
【
図9】
図8のセンサパッケージの封止部を取り除いた状態を示す平面図。
【
図10】
図8に示すX-X線に沿うセンサパッケージの断面図。
【
図11b】本発明の実施形態2に係る物理量測定装置の
図11aに相当する断面図。
【
図12】本発明の実施形態3に係る物理量測定装置の
図6に相当する断面図。
【
図13】
図12に示す一点鎖線で囲まれたXIII-XIII部の拡大図。
【
図16】
図15に示すXVI-XVI線に沿うセンサパッケージの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の物理量測定装置の実施形態を説明する。
【0010】
図1に示すように、物理量測定装置20は、エアクリーナ21を介して取り込まれて主通路22を流れる吸入空気である被計測気体2の流量、温度、湿度、圧力などの物理量を測定する。物理量測定装置20は、吸入空気の物理量に応じた電気信号を出力する。物理量測定装置20の出力信号は制御装置4に入力される。
【0011】
内燃機関10の主要な制御量である燃料供給量や点火時期は、いずれも物理量測定装置20の出力を主パラメータとして演算される。したがって、物理量測定装置20の測定精度の向上や、経時変化の抑制、信頼性の向上が、車両の制御精度の向上や信頼性の確保に関して重要である。
【0012】
特に近年、車両の省燃費に関する要望が非常に高く、また排気ガス浄化に関する要望が非常に高い。これらの要望に応えるには、物理量測定装置20により測定される被計測気体2である吸入空気の物理量の測定精度の向上が極めて重要である。また、物理量測定装置20が高い信頼性を維持していることも大切である。
【0013】
物理量測定装置20が搭載される車両は、比較的に温度や湿度の変化が大きい環境で使用される。物理量測定装置20は、その使用環境における温度や湿度の変化への対応や、塵埃や汚染物質などへの対応も、考慮されていることが望ましい。また、物理量測定装置20は、内燃機関10からの発熱の影響を受ける吸気管に装着される。このため、内燃機関10の発熱が主通路22である吸気管を介して物理量測定装置20に伝わる。物理量測定装置20は、被計測気体と熱伝達を行うことにより被計測気体の流量を測定するので、外部からの熱の影響をできるだけ抑制することが重要である。
【0014】
車両に搭載される物理量測定装置20は、以下で説明するように、単に発明が解決しようとする課題の欄に記載された課題を解決し、発明の効果の欄に記載された効果を奏するだけではない。以下で説明するように、物理量測定装置20は、上述した様々な課題を十分に考慮し、製品として求められている様々な課題を解決し、種々の効果を奏している。
物理量測定装置20が解決する具体的な課題や奏する具体的な効果は、以下の実施形態に関する記載の中で説明する。
【0015】
(実施形態1)
図2から
図7を用いて本発明の実施形態1におけるセンサパッケージ208とそれを用いた物理量測定装置20について説明する。なお、
図3では、回路基板207を封止する封止材の図示を省略している。
【0016】
図2から
図3に示すように、物理量測定装置20は、主通路22の通路壁に設けられた取り付け孔から主通路22の内部に挿入されて利用される。物理量測定装置20は、ハウジング201と、ハウジング201に取り付けられるカバー202とを備えている。ハウジング201は、合成樹脂材料を射出成形することによって構成されている。カバー202は、たとえばアルミニウム合金などの導電性材料からなる板状部材であったり、導電性樹脂材料もしくは絶縁性樹脂材料からなる板状部材である。
【0017】
ハウジング201は、主通路22である吸気ボディに固定されるフランジ201fと、フランジ201fから突出して外部機器との電気的な接続を行うために吸気ボディから外部に露出するコネクタ201cと、フランジ201fから主通路22の中心に向かって突出するように延びる計測部201mを有している。
【0018】
フランジ201fは、たとえば、所定の板厚からなる平面視略矩形状を有しており、角部に貫通孔を有している。フランジ201fは、たとえば、角部の貫通孔に固定ネジが挿通されて主通路22のネジ穴に螺入されることにより、主通路22に固定される。
【0019】
コネクタ201cは、たとえば、その内部に4本の外部端子と、補正用端子とが設けられている。外部端子は、物理量測定装置20の計測結果である流量や温度などの物理量を出力するための端子および物理量測定装置20が動作するための直流電力を供給するための電源端子である。補正用端子は、製造された物理量測定装置20の計測を行い、それぞれの物理量測定装置20に関する補正値を求めて、物理量測定装置20内部のメモリに補正値を記憶するのに使用する端子である。
【0020】
計測部201mは、フランジ201fから主通路22の中心方向に向かって延びる薄くて長い形状を成し、幅広な正面221と背面、および幅狭な一対の側面である上流端面223と下流端面224を有している。計測部201mは、たとえば、主通路22に設けられた取り付け孔から内部に挿入され、フランジ201fを主通路22に当接させてねじで主通路22に固定することで、フランジ201fを介して主通路22に固定される。
【0021】
図3に示すように、ハウジング201は、副通路溝250を備える。副通路溝250は、カバー202との協働により、主通路である吸気管を流れる流体の一部を取り込む副通路234を形成する。副通路234は、計測部201mの突出方向である計測部201mの長手方向に沿って延在して設けられている。副通路234を形成する副通路溝250は、第1副通路溝251と、第1副通路溝251の途中で分岐する第2副通路溝252とを有している。第1副通路234aは第1出口232に連通し、第2副通路234bは第2出口233に連通している。流量センサ205は、計測部である薄膜部205dの一面側が第2副通路234bを流れる流体に曝されるように設けられている。なお、本実施例の副通路形状はこの形状に限定されるものではない。図示は省略するが、たとえば、第2出口233を省略し、第1副通路234aの分岐部236よりも下流側に第2副通路234bの下流部239を接続させ、第2副通路234bを第1副通路234aに合流させてもよい。
【0022】
回路基板207は、計測部201mの短手方向一方側に設けられた回路室235に収容されている。回路基板207は、計測部201mの長手方向に沿って延在する長方形の形状を有しており、その表面には、流量センサ205を有するセンサパッケージ208と、圧力センサ204と、温湿度センサ206と、吸気温度センサ203とが実装されている。
【0023】
回路基板207に必要とされるセンサを実装することにより、同一の構造により様々なセンサの実装パターンに対して共通して利用可能である。
【0024】
センサパッケージ208は、回路基板207に実装され、先端部に流量センサ205が設けられている。センサパッケージ208の先端部は、回路基板207の長手方向の中央位置で、回路基板207から第2副通路234b内に突出した状態で実装されている。これにより、センサパッケージ208の先端部に設けられた流量センサ205が、第2副通路234b内に配置されている。センサパッケージ208は、副通路234と回路室235との間に亘って配置されている。なお、センサパッケージ208の実装構造は、本構造に限られるものではなく、ハウジング201に直接実装されていてもよい。また、回路基板207は必須の構造ではなく、圧力、湿度の計測が不要であるなら、センサパッケージ208のみをハウジング201に実装してもよい。
【0025】
以下、
図4から
図7を用いて、本実施形態のセンサパッケージ208の構成を詳細に説明する。
【0026】
センサパッケージ208は、流量センサ205と、リードフレーム208fと、封止部208rと、を少なくとも有している。また、センサパッケージ208は、たとえば、電子部品208eと、接着部材208dと、通路形成部材208pのうち、いずれか一以上を有することができる。
【0027】
流量センサ205は、リードフレーム208fに実装された半導体素子である。流量センサ205は、たとえば、制御回路が形成されるLSIなどの電子部品208eによって駆動される。なお、本実施例では、流量センサ205と電子部品208eとを別の半導体素子で構成する例を示したが、これに限定されるものではない。流量センサ205に制御回路を一体に形成した構成であってもよい。
【0028】
流量センサ205は、リードフレーム208fの一方の面の上に配置されている。より具体的には、流量センサ205は、接着部材208dを介してリードフレーム208fに接着されている。流量センサ205は、シリコン(Si)などの半導体を素材とする半導体基板205sと、この半導体基板205sに絶縁膜や配線膜を積層して形成される積層部と、半導体基板205sに形成された空洞部205cと、積層部のうち空洞部を覆うように設けられる領域である薄膜部205d(薄肉部、メンブレン、ダイアフラム)と、を備えている。図時は省略するが、薄膜部205dには発熱部と発熱部の上下流に設けられる感温部が形成されており、流体が流れることによる温度変化を読み取ることで流量を測定している。感温部の例として、感温抵抗体や熱電対、サーモパイル等があげられる。配線膜の例としては、ポリシリコン、単結晶シリコン、モリブデン、白金等があげられる。
なお、薄膜部205dを備える半導体素子の例として熱式の流量センサ205を例に説明したが、流量センサに限定されるものではない。薄膜部205dを有する半導体素子の例としては、湿度を計測する熱式の湿度センサであったり、圧力を計測する圧力センサであってもよい。薄膜部205dは積層部である例を示したが、半導体基板205sで構成されたものであってもよい。すなわち、薄膜部205dは、被計測媒体の物理量を測定するための計測部である。なお、熱式のセンサの場合、温度分布を形成するために熱絶縁性を高くする必要があり、薄膜部205dの厚みが非常に薄くなるため、本発明が解決しようとする課題が顕著に表れる。
【0029】
薄膜部205dは、ウェットエッチングやドライエッチング処理等により半導体基板205sの裏面側の一部を除去することにより設けられる凹状の空洞部205cを形成することにより設けられる。凹部の底部は積層部の一部が形成している。薄膜部205dおよび空洞部205cの平面形状は、正方形や長方形といった矩形である。
【0030】
空洞部205cは、リードフレーム208fに対向する半導体素子の一方の面に開口した半導体素子の凹部であり、その底部に薄膜部205dが設けられている。空洞部205cの側壁は、半導体基板205sの厚さ方向(言い換えると半導体素子の積層部が形成される面に垂直な方向)に対して傾斜している。
【0031】
より具体的には、空洞部205cの側壁は、薄膜部205dからリードフレーム208fへ近づくにしたがって、薄膜部205dの外縁から外側へ向けて遠ざかるように傾斜している。これにより、半導体基板205sの裏面(言い換えると、リードフレーム208fに対向する一方の面)に開口する空洞部205cの開口面積は、薄膜部205dの面積よりも大きくなっている。なお、空洞部205cの側壁は、薄膜部205dの厚さ方向に平行であってもよい。言い換えると、図面に示すように空洞部が傾斜部を有していなくてもよい。この場合、空洞部205cの開口面積は、薄膜部205dの面積と等しくなる。
【0032】
リードフレーム208fは、たとえば銅などの導電性を有する金属製の平板状の部材であり、封止部208rから突出してセンサパッケージ208の端子部となる部分を含むパターン形状を有している。リードフレーム208fの一方の面には、流量センサ205が少なくとも実装されている。リードフレーム208fの一方の面には、他に電子部品208eや図示はしないチップサーミスタや保護素子であるコンデンサを搭載してもよい。リードフレーム208fの他方の面(裏面)にはフィルム状の被覆部材208cが接着され、孔211を覆っていてもよい。副通路を流れる汚損物が空洞部に飛来し、空洞部や薄膜部の裏面に汚損物が堆積することを抑制できるため、耐汚損性が向上するという利点がある。
【0033】
リードフレーム208fと、流量センサ205および電子部品208eとの間や、流量センサ205と電子部品208eとの間は、たとえばボンディングワイヤによって接続されている。なお、電子部品208eは、回路基板207に実装するなど、センサパッケージ208の外部に配置してもよい。
【0034】
図5、
図6に示すように、リードフレーム208fは、センサ素子205の表面に対して垂直な方向(半導体素子205の厚さ方向)で薄膜部205dと対向する領域に少なくとも開口領域を備える孔211が形成されている。言い換えると、センサ素子205が実装されるリードフレーム208fの実装面に対して垂直な方向から半導体素子205をリードフレーム208fに投影した際の薄膜部205dの投影領域内に開口領域を備える孔211が、リードフレーム208fに形成されている。孔211は、リードフレーム208fの一面と他面を連通するように形成されている。通気孔211の開口面積は、薄膜部205dの面積以上である。
【0035】
リードフレーム208fとセンサ素子205は線膨張係数差に起因した温度変化による変形量の差が発生する。特に、板状のリードフレーム208fは薄膜部205dを有するセンサ素子205よりも剛性が高く、リードフレーム208fの変形にセンサ素子205が追従してしまい、薄膜部205dが変形することにより計測精度が悪化してしまっていた。そこで、薄膜部205dの歪に対する影響が大きい領域であるセンサ素子205直下であるセンサ素子実装領域に孔211を形成し、孔211の開口面積を薄膜部205dの面積以上とし、薄膜部205d近傍におけるリードフレーム208fの剛性を低減させた。その結果、リードフレーム208fの変形に対して、センサ素子205が追従しにくくなるようになり、薄膜部205dの変形量を低減することが出来た。
【0036】
図7に示すように、薄膜部205dよりも孔211の開口面積を大きくした場合、従来の換気孔に対して薄膜部205dの歪を中間部材を設けた場合に半分以上近づけることが可能となり、中間部材を設けない場合であっても検出精度を向上させることが可能となり、センサパッケージの薄型化と性能向上の両立を図ることが可能となった。
【0037】
さらに好ましくは、孔211の開口形状が、薄膜部205dの形状に対応している。すなわち、薄膜部205dの形状が長方形であれば、孔211の開口形状も同一形状か相似関係となる長方形とし、薄膜部205dの形状が正方形であれば、孔211の開口形状も同一形状か相似関係となる正方形とし、薄膜部205dの形状が円形であれば、孔211の開口形状も同一形状か相似関係となる円形とする。孔211の開口形状を薄膜部205dの形状に対応させることで、リードフレーム208fのセンサ素子205を実装する実装領域における変形とセンサ素子205の変形を近づけることが可能となる。その結果、薄膜部205dの角部に生じる応力を低減することが可能となり、中間部材を設けた場合に対して同等程度に薄膜部の変形を抑制することが可能となり、さらに検出精度が向上させることが可能となる。
【0038】
さらに好ましくは、孔211の開口面積を薄膜部の2倍以上とすると、中間部材を設けた場合と同等以上に薄膜部205dの変形を抑制することが可能となり、さらに検出精度を向上させることが可能となる。
【0039】
さらに好ましくは、薄膜部205dの表面に垂直な方向から見たセンサパッケージ208の平面視において、薄膜部205dは孔211の開口の内側に設けられている。厚さ方向において薄膜部205dに対向する部分にリードフレーム208fが存在しないため、リードフレーム208fからの熱応力の影響をより低減可能となるため、さらに薄膜部205dの変形を抑制することが可能となる。
【0040】
封止部208rは、センサ素子である流量センサ205に設けられた薄膜部205dを露出させた状態で、流量センサ205およびリードフレーム208fの一部を封止している。封止部208rは、たとえば、トランスファーモールド成型によって形成された樹脂部である。トランスファーモールド成型時に空洞部205cに封止樹脂が流入しないように、センサ素子205の裏面の全周に接着部材が形成されていることが望ましい。その場合、裏面全周が接着されることにより、リードフレーム208fの熱変形の影響をセンサ素子205が強く受けてしまうという課題が発生してしまうが、上述した構造によりその課題を解決することが可能となる。
【0041】
図4、
図6に示すように、封止部208rは、流量センサ205がその底部に配置される凹溝を形成している。この凹溝は、第2副通路234bの上流部を流れる被計測気体2の流れ方向における両端部から中央部へ向けて徐々に幅が狭まる絞り形状を有し、最も幅が狭い中央部に流量センサ205が配置されている。この絞り形状により、副通路234を流れる被計測気体2が整流され、流量センサ205に対するノイズの影響を低減することができるため、より好ましい。なお、封止部208rはこの形状に限定されるものではない。
【0042】
本実施形態のセンサパッケージ208は、空洞部205cが形成された半導体基板205sと空洞部205cを覆うように設けられる薄膜部205dと有する半導体素子205と、半導体素子205が実装されるリードフレーム208fと、半導体素子205の薄膜部205dが露出するよう半導体素子205とリードフレーム208fを封止する封止部208rと、を備え、リードフレーム208fは、薄膜部205dと対向する箇所に形成される孔211を有し、孔211の開口面積は、薄膜部の面積以上である。本実施形態によれば、薄膜部205d近傍におけるリードフレーム208fの剛性を低減させる(可撓性を向上させる)ことにより、リードフレーム208fの熱変形にセンサ素子205が追従することを抑制することができるため、リードフレーム208fから受ける熱応力が低減され、薄膜部205dの変形(たわみ)を抑制することが可能となる。
【0043】
そのため、本実施形態によれば、中間部材を廃止することが可能となるため、センサパッケージ208の薄型化とセンサ素子である流量センサ205の検出精度の向上を両立することが可能となる。
【0044】
また、中間部材を廃止することによって、センサパッケージ208の厚みを増加させることなく封止部208rの凹溝の深さを増加させることが可能になり、センサパッケージ208を構成する樹脂で計測部側の流路の一部と絞りを構成することが可能となる。そのため、本実施例によれば計測部近傍の通路の公差ばらつきを低減することが可能となり、センサパッケージ208を備える物理量測定装置20の測定精度が向上するという効果も奏する。
【0045】
なお、本筆者らは、本実施例のような構造のほかに、流量センサ205の実装領域外に薄膜部よりも大きなスリットを設けたり、流量センサ205の周囲に複数の貫通孔を設けたり、流量センサ205が実装された部分を他の部分から分離したり、流量センサ205配置された領域およびその周囲の肉厚を他の部分よりも減少させたりする構造について検討したが、本実施例のような十分な効果を得ることができなかった。
【0046】
(実施形態2)
本発明の実施形態2について、
図8から
図11を用いて説明する。
【0047】
図9に示すように、リードフレーム208fには、孔211のほかに、センサ素子205実装領域外に設けられた孔215と、センサ素子205実装面の反対側の面(裏面)に形成された溝213を備えている。溝213は、一端側で孔211と接続し、他端側で孔215と接続している。溝213と孔211と孔215を覆うように、リードフレーム208fの裏面側にフィルム状の部材である通路形成部材208pが接着されている。センサパッケージ208は、空洞部をセンサパッケージ外部と連通するための連通通路213を備えている。通路形成部材208pは、たとえば、樹脂製の基材の表面に粘着層が設けられた粘着テープである。基材としては、たとえばフィルム状のポリイミドを用いることができる。また、粘着層としては、たとえばアクリル系やシリコーン系の粘着剤を用いることができる。すなわち、通路形成部材208pは、たとえば、ポリイミドテープである。
【0048】
通路形成部材208pとリードフレーム208fとによって、通気孔211とセンサパッケージ208の外部とを連通する連通通路213が形成されている。より具体的には、たとえば、リードフレーム208fに凹溝が設けられ、その凹溝の開口部を通路形成部材208pによって閉塞することで、連通通路213が形成されている。また、
図5に示す例において、複数の連通通路213、具体的には二つの連通通路213が、リードフレーム208fの一方の端部に設けられた通気孔211と、他方の端部に設けられた貫通孔215との間に設けられ、これら通気孔211と貫通孔215とを接続している。
【0049】
接着部材208dは、センサ素子である流量センサ205とリードフレーム208fとの間に配置されている。より具体的には、接着部材208dは、たとえば、ダイアタッチフィルムやダイボンディングフィルムや液状ダイボンド材である。接着部材208dは、流量センサ205の空洞部205cとリードフレーム208fの通気孔211とを連通させる貫通孔214を備えている。
【0050】
また、本実施形態の物理量測定装置20は、センサ素子である流量センサ205が実装されたリードフレーム208fの一方の面と反対の面に貼着されて通気孔211を覆うフィルム状の通路形成部材208pを備えている。物理量測定装置20では、この通路形成部材208pとリードフレーム208fとによって、このリードフレーム208fに設けられた通気孔211と、センサパッケージ208の外部とを連通する連通通路213が形成されている。
【0051】
この構成により、流量センサ205の空洞部205cに連通する通気孔211と、この通気孔211に連通する連通通路213とを介して、流量センサ205の空洞部205cとセンサパッケージ208の外部とを接続することができる。これにより、流量センサ205の空洞部205cの密閉を防止して、空洞部205c内の気体の温度変化に伴う薄膜部205dの反りを防止できる。したがって、通気孔211により、流量センサ205の薄膜部205dに作用する応力を低減するだけでなく、空洞部205cの密閉を防止して、流量センサ205の検出精度をより向上させることができる。
【0052】
図11aに示すように、リードフレーム208fの通気孔211の開口面積は、流量センサ205の薄膜部205dの面積よりも大きい。そして、センサパッケージ208の平面視において、薄膜部205dが通気孔211の開口の内側に設けられている。
【0053】
なお、
図11aでは、リードフレーム208fの通気孔211が流量センサ205の開口端部205fの内側に設けられているが、これに限定されるものでなはない。
【0054】
図11bに示すように、リードフレーム208fの通気孔211が流量センサ205の開口端部205fと同一にされている構成を示す図である。これによって、通気孔211の面積を拡大することが可能であるため、形成性の制限がなく、流量センサ205の検出精度の信頼性をより向上することができる。
【0055】
(実施形態3)
次に、
図12から
図16を参照して、本発明の実施形態3に係る物理量測定装置を説明する。
【0056】
本実施形態の物理量測定装置は、センサパッケージ208が、被覆部材208cを備える点で、前述の実施形態1に係る物理量測定装置20と異なっている。本実施形態の物理量測定装置のその他の点は、前述の実施形態1または2に係る物理量測定装置20と同様であるので、同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
被覆部材208cは、リードフレーム208fに貼着されて通気孔211の一部を覆うフィルム状の部材である。より具体的には、被覆部材208cは、たとえば、樹脂製の基材の表面に粘着層が設けられた粘着テープである。基材としては、たとえばフィルム状のポリイミドを用いることができる。また、粘着層としては、たとえばアクリル系やシリコーン系の粘着剤を用いることができる。すなわち、被覆部材208cは、たとえば、ポリイミドテープである。被覆部材208cは、センサ素子である流量センサ205の空洞部205cとリードフレーム208fの通気孔211とを連通させる貫通孔212を備えている。
【0058】
被覆部材208cは、たとえば、
図5に示すリードフレーム208fにおいて、流量センサ205が配置された端部から、その端部と反対側に設けられた貫通孔215と電子部品208eとの間までの領域を覆うことができる。この場合、電子部品208eは、
図9に示すように、被覆部材208cの上に配置される。なお、
図10に示すように、被覆部材208cは、流量センサ205とリードフレーム208fとの間のみに配置してもよい。
【0059】
流量センサ205は、たとえば、被覆部材208cの上に配置されている。より具体的には、被覆部材208cは、通路形成部材208pが貼着された通路形成部材208pの一方の面とは反対の面に貼着され、流量センサ205は、たとえばフィルム状の接着部材208dを介して被覆部材208cに接着されている。なお、被覆部材208cが両面に粘着層を有する場合には、たとえば、流量センサ205と被覆部材208cとの間や、電子部品208eと被覆部材208cとの間の接着部材208dを省略することができる。
【0060】
また、本実施形態の物理量測定装置では、たとえば、通路形成部材208pとリードフレーム208fとによって連通通路213を形成する代わりに、被覆部材208cとリードフレーム208fとによって連通通路213を形成してもよい。具体的には、たとえば、リードフレーム208fが実装されたリードフレーム208fの一方の面に形成された凹溝の開口を被覆部材208cによって閉塞することで、連通通路213を形成してもよい。
【0061】
接着部材208dは、被覆部材208cの上に配置され、センサ素子である流量センサ205と被覆部材208cとの間に配置され、流量センサ205と被覆部材208cとを接着している。接着部材208dは、前述のように、流量センサ205の空洞部205cとリードフレーム208fの通気孔211とを連通させる貫通孔214を備えている。被覆部材208cの上に配置された接着部材208dの貫通孔214の開口縁は、被覆部材208cの貫通孔212の開口縁よりも外側に設けられている。すなわち、被覆部材208cの貫通孔212は、接着部材208dの貫通孔214の開口の内側に設けられている。
【0062】
本実施形態の物理量測定装置においても、リードフレーム208fの通気孔211の開口面積は、流量センサ205の薄膜部205dの面積以上である。したがって、本実施形態の物理量測定装置によれば、前述の実施形態1の物理量測定装置20と同様に、センサパッケージ208の薄型化とセンサ素子である流量センサ205の検出精度の向上を両立することができる。
【0063】
また、本実施形態の物理量測定装置は、リードフレーム208fに貼着されて通気孔211の一部を覆うフィルム状の被覆部材208cを備えている。センサ素子である流量センサ205は、この被覆部材208cの上に配置されている。
【0064】
この構成により、センサパッケージ208の製造工程における歩留りを向上させ、物理量測定装置20の生産性を向上させることができる。具体的には、リードフレーム208fの通気孔211の開口面積を、流量センサ205の薄膜部205dの面積以上にすると、リードフレーム208fの表面に沿う方向において、流量センサ205の外縁から通気孔211の開口縁までの距離が短くなる場合がある。
【0065】
この場合、封止部208rをトランスファーモールドによって形成する際に、封止部208rの材料が流量センサ205とリードフレーム208fとの間から通気孔211へ流入するリスクが高くなる。しかし、物理量測定装置が通気孔211の一部を覆うフィルム状の被覆部材208cを備えることで、封止部208rの材料が通気孔211へ流入するリスクが低減され、通気孔211の閉塞を防止することができ、センサパッケージ208の歩留まりを向上させることができる。
【0066】
また、本実施形態の物理量測定装置は、センサ素子である流量センサ205と被覆部材208cとの間にフィルム状の接着部材208dを備えている。被覆部材208cおよび接着部材208dは、それぞれ、センサ素子である流量センサ205の空洞部205cとリードフレーム208fの通気孔211とを連通させる貫通孔212,214を備えている。そして、被覆部材208cの貫通孔212は、接着部材208dの貫通孔214の開口の内側に設けられている。
【0067】
この構成により、センサパッケージ208の製造工程における歩留りを向上させ、物理量測定装置20の生産性を向上させることができる。具体的には、流量センサ205と被覆部材208cとを、フィルム状の接着部材208dを介して接着する際に、可塑化した接着部材208dの貫通孔214の開口縁が、被覆部材208cの貫通孔212の開口の外側に位置することになる。これにより、接着部材208dの貫通孔214の開口縁が、被覆部材208cによって支持され、被覆部材208cの貫通孔212の内側に垂れ下がることが防止される。したがって、通気孔211、貫通孔212および連通通路213などが接着部材208dによって閉塞されることが防止され、センサパッケージ208の製造工程における歩留りを向上させることができる。
【0068】
なお、本実施形態の物理量測定装置は、
図8から
図10に示す構成に限定されない。
図11は、本実施形態に係る物理量測定装置の変形例を示すセンサパッケージ208の透視平面図である。
図12は、
図11に示すXII-XII線に沿うセンサパッケージ208の断面図である。
図11および
図12に示す変形例において、センサパッケージ208は、複数の連通通路213を接続する複数の接続部216を有している。より具体的には、センサパッケージ208は、リードフレーム208fの通気孔211と貫通孔215との間に二つの連通通路213を有している。
【0069】
また、電子部品208eが実装された領域に、複数の接続部216が設けられている。
複数の接続部216は、リードフレーム208fの通気孔211から貫通孔215へ向かう連通通路213の長さ方向において間隔をあけて設けられている。各々の接続部216は、平行に延びる二つの連通通路213を接続している。このような構成によっても、本実施形態の物理量測定装置と同様の効果を奏することができる。
【0070】
以上、図面を用いて本発明に係る物理量測定装置の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0071】
20 物理量測定装置
205 流量センサ(センサ素子)
205c 空洞部
205d 薄膜部
205f 流量センサの開口端部
208 センサパッケージ
208c 被覆部材
208d 接着部材
208f リードフレーム
208p 通路形成部材
208r 封止部
211 通気孔
212 被覆部材の貫通孔
213 連通通路
214 接着部材の貫通孔