(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】ポリアミド発泡体の調製
(51)【国際特許分類】
C08J 9/12 20060101AFI20230721BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20230721BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
C08J9/12
C08L23/26
C08L77/00
(21)【出願番号】P 2021515215
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(86)【国際出願番号】 CN2018108300
(87)【国際公開番号】W WO2020062018
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【氏名又は名称】田村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、チンリアン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、リチャード ティエンファ
(72)【発明者】
【氏名】ハウスマン、カールハインツ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チョンユウ
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/086289(WO,A1)
【文献】特表2002-513434(JP,A)
【文献】特表2008-519147(JP,A)
【文献】特開2016-053139(JP,A)
【文献】特表2008-513583(JP,A)
【文献】国際公開第2013/101961(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体であって、
55~98重量%ポリアミドと、
亜鉛中和エチレン
酸コポリマーを含む2~45重量%アイオノマーと、を含み、
前記亜鉛中和エチレン酸コポリマーが、エチレンモノマーと、モノカルボン酸モノマーと、不飽和ジカルボン酸モノマーと、の重合反応生成物であり、
前記亜鉛中和エチレン酸コポリマーが、前記亜鉛中和エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量%に対して、2~20重量%の不飽和ジカルボン酸モノマーを含み、
前記アイオノマーの全酸単位の30~70モルパーセントが、中和されている、発泡体。
【請求項2】
前記発泡体が、0.03~0.5g/ccの密度を有する、請求項1に記載の発泡体。
【請求項3】
前記発泡体が、少なくとも1500%の膨張率を有する、請求項1または2のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項4】
前記発泡体が、ポリウレタンを含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項5】
前記発泡体が、75~97重量%のポリアミドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項6】
前記ポリアミドが、脂肪族ポリアミドを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項7】
前記ポリアミドが、PA6、PA11、PA12、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項8】
前記発泡体が、3~20重量%のアイオノマーを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項9】
前記亜鉛中和エチレン酸コポリマーが、前記亜鉛中和エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量%に対して、少なくとも50%のエチレンモノマーを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項10】
前記亜鉛中和エチレン酸コポリマーが、前記亜鉛中和エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量%に対して、少なくとも5~25重量%のモノカルボン酸モノマーを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項11】
前記不飽和ジカルボン酸モノマーが、無水マレイン酸、無水マレイン酸モノメチルエステル、無水マレイン酸モノエチルエステル、無水マレイン酸モノプロピルエステル、無水マレイン酸モノブチルエステル、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~
10のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項12】
前記モノカルボン酸モノマーが、メタクリル酸、アクリル酸、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~
11のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項13】
発泡体を生成する方法であって、
超臨界起泡剤CO
2、N
2または両方の組み合わせを容器内に注入して、発泡前駆体混合物と混合することであって、前記容器が、前記起泡剤の超臨界温度および圧力を超える圧力および温度であり、前記発泡前駆体混合物が、55~98重量%のポリアミドと、亜鉛中和エチレン酸コポリマーを含む2~45重量%のアイオノマーと、を含み、
前記亜鉛中和エチレン酸コポリマーが、エチレンモノマーと、モノカルボン酸モノマーと、不飽和ジカルボン酸モノマーと、の重合反応生成物であり、
前記亜鉛中和エチレン酸コポリマーが、前記亜鉛中和エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量%に対して、2~20重量%の不飽和ジカルボン酸モノマーを含み、
前記アイオノマーの全酸単位の30~70モルパーセントが、中和されている、混合することと、
前記超臨界起泡剤の前記圧力未満に圧力を下げることによって、前記発泡体を生成することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、発泡材料に関連し、より具体的には、ポリアミドとアイオノマーとのブレンドを含む発泡体に関連する。
【背景技術】
【0002】
発泡体は、様々な産業用途に好適であるため、引き続き大きな関心を集めている生成物である。関心のあるそのような発泡体の1つは、ポリアミド発泡体であるが、ポリアミドの溶融粘度は、一般に発泡用途には低すぎる。したがって、溶融粘度が改善された改善されたポリアミド発泡体が継続的に必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本開示の実施形態は、ポリアミドをアイオノマーとブレンドすることによって溶融粘度を増加させることにより、この必要性に対処する。
【0004】
発泡体の一実施形態によれば、発泡体は、55~98重量%のポリアミドと、亜鉛中和エチレン酸コポリマーを含む2~45重量%のアイオノマーと、を含む。亜鉛中和エチレン酸コポリマーは、エチレンモノマーと、モノカルボン酸モノマーと、不飽和ジカルボン酸モノマーと、の重合反応生成物を含む。さらに、アイオノマーの全酸単位の30~70モルパーセントが、中和されている。
【0005】
別の実施形態によれば、発泡体を製造する方法は、CO2、N2またはその両方の組み合わせの超臨界起泡剤を容器に注入して発泡体前駆体混合物と混合することを含み、容器は、起泡剤の超臨界温度および圧力を超える圧力および温度であり、発泡体前駆体混合物は、55~98重量%のポリアミドと、亜鉛中和エチレン酸コポリマーを含む2~45重量%のアイオノマーと、を含む。亜鉛中和エチレン酸共コポリマーは、エチレンモノマー、モノカルボン酸モノマー、不飽和ジカルボン酸モノマーの重合反応生成物であり、アイオノマーの全酸単位の30~70モルパーセントが中和されている。最後に、この方法は、圧力を超臨界起泡剤の圧力未満に低くすることによって発泡体を生成することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。
【0007】
本明細書で説明するものと類似しているか、またはそれらと同等である方法および材料が、様々な実施形態の実践または試験に使用され得るが、好適な方法および材料は、本明細書で説明される。
【0008】
別途明記されない限り、すべてのパーセンテージ、部分、比率などは、重量による。量、濃度、または他の値もしくはパラメータが、範囲、好ましい範囲、または好ましい値の低い側および好ましい値の高い側の列挙のいずれかとして与えられる場合、範囲が別個に開示されているかどうかに関わらず、これは、任意の低い側の範囲の限度または好ましい値と、任意の高い側の範囲の限度または好ましい値との任意の対から形成されるすべての範囲を具体的に開示するものと理解されるべきである。本明細書で数値の範囲が列挙されている場合、別途明記されない限り、範囲は、その端点、ならびに範囲内のすべての整数および分数を含むことを意図する。本発明の範囲は、範囲を定義するときに列挙された具体的な値に限定されることを意図するものではない。
【0009】
「約」という用語が、値または範囲の端点を記述する際に使用される場合、本開示は、言及される具体的な値または端点を含むと理解されるべきである。
【0010】
本明細書で使用されるとき、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「含有する」、「を特徴とする」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、または他の任意の変形は、非排他的包含を網羅することを意図している。例えば、要素の列挙を含むプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素に限定されず、明示的に列挙されていないか、またはそのようなプロセス、方法、物品、もしくは装置に固有の他の要素を含んでもよい。さらに、明示的に反する記載がない限り、「または」は、包括的論理和を指し、排他的論理和ではない。
【0011】
「から本質的になる」という移行句は、特許請求の範囲を指定された材料またはステップ、および本開示の基本的で新規の特性(複数可)に実質的に影響しないものに限定する。出願人が、「含む」などのオープンエンドな用語で実施形態またはその一部を定義した場合、別途明記されない限り、説明は、「から本質的になる」という用語を使用するような実施形態も説明すると解釈されるべきである。
【0012】
「1つ(a)」または「1つ(an)」の使用は、様々な実施形態の要素および構成成分を説明するために採用される。これは、単に便宜上のものであり、様々な実施形態の一般的な意味を与えるものである。この説明は、1つまたは少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、単数形が他を意味することが明らかでない限り、それには複数形も含まれる。
【0013】
材料、方法、または機械が、「当業者に既知の」、「従来の」という用語、または同義の語もしくは句と共に本明細書に記載されているとき、この用語は、本出願の出願時に従来のものである材料、方法、および機械を意味し、それらはこの説明に包含される。
【0014】
「ポリマー」という用語は、同一または異なるタイプのモノマーに関わらず、モノマーを重合することにより調製されたポリマー化合物を指す。したがって、一般的な用語のポリマーは、「ホモポリマー」および「コポリマー」という用語を包含する。「ホモポリマー」という用語は、1つのタイプのモノマーのみから調製されたポリマーを指し、「コポリマー」という用語は、2つ以上の異なるモノマーから調製されたポリマーを指し、本開示の目的のために、「ターポリマー」および「インターポリマー」を含み得る。
【0015】
「モノカルボン酸モノマー」という用語は、ビニルまたはビニレンなどの反応性部分を有する分子を意味し、これは他のモノマーと結合して、ポリマーおよび反応性部分に含まれないカルボン酸(-C(O)OH)部分を形成し得る。例えば、(メタ)アクリル酸は、ビニレンが反応性部分であり、カルボン酸が存在するモノカルボン酸モノマーである。「(メタ)アクリル酸」という用語は、メタクリル酸および/またはアクリル酸を含み、「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート、アクリレート、またはメタクリレートとアクリレートとの組み合わせを含む。
【0016】
本開示において使用される「不飽和ジカルボン酸モノマー」という用語は、ビニルまたはビニレンなどの反応性部分を有する分子を意味し、これは他のモノマーと結合して、ポリマーおよび反応性部分に含まれない2つのカルボン酸(-C(O)OH)基を形成し得る。さらに、「不飽和ジカルボン酸モノマー」には、不飽和ジカルボン酸誘導体モノマー(半エステルおよび無水物)が含まれる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「溶融粘度」はまた、剪断流に対するポリマー組成物の抵抗である剪断粘度と見なされ得る。本開示は、100ラジアン/秒の剪断速度での剪断粘度データを報告するが、キャピラリレオメータ内では、他の剪断速度が企図される。
【0018】
本開示の実施形態は、ポリアミドをアイオノマーとブレンドすることによって、溶融粘度が増加した発泡体を対象としている。本発泡体の一実施形態によれば、発泡体は、55~98重量%のポリアミドと、2~45重量%のアイオノマーと、を含む。アイオノマーは、エチレンモノマーと、モノカルボン酸モノマーと、不飽和ジカルボン酸モノマーと、の重合反応生成物である、亜鉛中和エチレン酸コポリマーを含む。さらに、アイオノマーの全酸単位の30~70モルパーセントが中和される。
【0019】
ポリアミド
ポリアミドには様々な組成物、例えば脂肪族または芳香族ポリアミドが企図される。1つ以上の実施形態において、ポリアミドは、ラクタムまたはアミノ酸から得られるポリアミド(例えば、ポリイプシロンカプロラクタム(PA6)またはPA11)の群から選択される脂肪族ポリアミド、またはヘキサメチレンジアミンなどのジアミンと、コハク酸、アジピン酸、またはセバシン酸などの二塩基酸との縮合物から選択される。これらのポリアミドのコポリマーおよびターポリマーも含まれる。他の実施形態では、脂肪族ポリアミドは、ポリイプシロンカプロラクタム(PA6)、ポリヘキサメチレンアジポアミド(PA6、6)、PA11、PA12、PA12,12、およびPA6/6,6、PA6,10、PA6,12、PA6,6/12、PA6/6,6/6,10、およびPA6/6Tなどのコポリマーおよびターポリマーの中から選択される。具体的な実施形態では、ポリアミドは、PA6、PA12、またはそれらの組み合わせを含み得る。発泡体は、上記のリストからの複数のポリアミドを含み得ることが企図される。さらなる実施形態では、発泡体は、ポリウレタンを含まなくてもよい。
【0020】
アイオノマーとブレンドする前に、ポリアミドの密度は、1.0g/ccより大きく、または1.1g/ccより大きくてもよい。別の言い方をすれば、ポリアミド発泡体の密度は、アイオノマーとブレンドする前に、1.0g/cc~1.5g/cc、または1.1~1.2g/ccであり得る。
【0021】
発泡体内では様々な量のポリアミドが企図されている。例えば、発泡体は、55~98重量%のポリアミド、60~97重量%のポリアミド、75~97重量%のポリアミド、または80~90重量%のポリアミドを含み得る。
【0022】
アイオノマー
溶融剪断粘度を増加させるために、ポリアミドは、上記のように亜鉛中和エチレン酸コポリマーを含むアイオノマーとブレンドされる。様々な量のアイオノマーが企図されている。1つ以上の実施形態では、発泡体は、2~45重量%のアイオノマー、3~20重量%のアイオノマー、または10~20重量%のアイオノマーを含む。
【0023】
前に述べたように、亜鉛中和エチレン酸コポリマーは、エチレンモノマー、モノカルボン酸モノマー、および不飽和ジカルボン酸モノマーのターポリマー生成物であり得る。亜鉛中和エチレン酸コポリマーは、亜鉛中和エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量%に対して、少なくとも50%のエチレンモノマーを含み得る。さらなる実施形態において、亜鉛中和エチレン酸コポリマーは、少なくとも60%のエチレンモノマー、少なくとも70%のエチレンモノマー、または少なくとも80%のエチレンモノマーを含む。
【0024】
さらに、亜鉛中和エチレン酸コポリマーは、亜鉛中和エチレン酸コポリマーに存在するモノマーの総重量%に対して、少なくとも5~25%のモノカルボン酸モノマーを含み得る。さらなる実施形態において、亜鉛中和エチレン酸コポリマーは、8~20重量%のモノカルボン酸モノマー、または10~15重量%のモノカルボン酸モノマーを含む。モノカルボン酸モノマーは、メタクリル酸、アクリル酸、またはそれらの組み合わせを含み得る。具体的な実施形態では、モノカルボン酸モノマーは、メタクリル酸を含む。
【0025】
加えて、亜鉛中和エチレン酸コポリマーは、亜鉛中和エチレン酸コポリマーに存在するモノマーの総重量%に対して、2~20%の不飽和ジカルボン酸モノマーを含む。さらなる実施形態において、亜鉛中和エチレン酸コポリマーは、3~15重量%の不飽和ジカルボン酸モノマー、または5~10重量%の不飽和ジカルボン酸モノマーを含む。不飽和ジカルボン酸モノマーは、無水マレイン酸、無水マレイン酸モノメチルエステル、無水マレイン酸モノエチルエステル、無水マレイン酸モノプロピルエステル、無水マレイン酸モノブチルエステル、またはそれらの組み合わせを含む。具体的な実施形態では、モノカルボン酸モノマーは、無水マレイン酸モノメチルエステルを含む。
【0026】
アイオノマーに存在するカルボン酸官能基は、亜鉛、および任意選択的に、1つ以上のアルカリ金属、遷移金属、または例えばナトリウム、リチウム、マグネシウム、およびカルシウムのアルカリ土類金属カチオンによって少なくとも部分的に中和される。カルボン酸官能基は、少なくとも部分的に30~70mol%、または40~60mol%中和することができる。本発明のアイオノマーは、米国特許第3,264,272号(Rees)に開示されているように、標準的な中和技術によって調製され得、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
さらなる実施形態において、亜鉛中和エチレン酸コポリマーは、少なくとも0.95g/ccの密度を有し得る。亜鉛中和エチレン酸コポリマーはまた、ASTM D-1238に従って210℃、2.16kgで測定した場合、0.1~20g/10分、または0.5~10g/10分のメルトインデックス(MI)を有し得る。
【0028】
さらに、亜鉛中和エチレン酸コポリマーは、示差走査熱量測定(DSC)によって測定されるとき、少なくとも80℃の融点を有し得る。さらなる実施形態において、亜鉛中和エチレン酸コポリマーは、少なくとも85℃、または少なくとも90℃の融点を有し得る。
【0029】
追加の添加物
発泡体組成物は、任意選択的に、約0.0001~約50重量%(組成物の総重量に対して)の可塑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解安定剤、帯電防止剤、染料または顔料、充填剤、難燃剤、潤滑剤、ガラス繊維およびフレークなどの強化剤、加工助剤、粘着防止剤、放出剤、核剤、ならびに/またはそれらの混合物を含む高分子材料に使用される従来の添加剤を含み得る。一実施形態では、発泡体組成物は、0.01~1重量パーセントの酸化防止剤を含む。
【0030】
発泡体
本発泡体組成物は、100ラジアン/秒の剪断速度で500Pa*sを超える、100ラジアン/秒の剪断速度で750Pa*sを超える、100ラジアン/秒の剪断速度で1000Pa*sを超える、100ラジアン/秒の剪断速度で1500Pa*sを超える、または100ラジアン/秒の剪断速度で2000Pa*sを超える剪断粘度(v100)を有することができる。
【0031】
さらに、発泡体は、少なくとも200、少なくとも500%、少なくとも750%、少なくとも1000%、少なくとも1250%、少なくとも1500%、または少なくとも2000%の膨張率を有し得る。そのうえ、発泡体は、0.02~0.5g/cc、0.02~0.5g/cc、または0.03~0.1g/ccの密度を有し得る。以下で詳細に説明するように、これらの低密度発泡体は、物理的な発泡プロセスを利用することによって達成可能である。
【0032】
本発明のポリアミド発泡体は、複数の用途および物品に使用することができる。様々な実施形態において、得られたポリマー発泡体組成物は、自動車産業用の軽量/耐熱部品、建設および包装用の断熱材料、複合材料用の剛性コア材料などに使用することができる。
【0033】
作製方法
ポリアミドとアイオノマーの混合には、様々な方法が好適であると考えられる。例えば、ポリアミドおよびアイオノマーは、例えばペレット形態などの固体形態で好適な混合装置に供給され、ブレンドされ得る。
【0034】
好適な混合装置は、混合スクリューを備えた二軸スクリュー押出機、ブラベンダタイプのミキサ、内部ミキサ、ファレル連続ミキサ、またはバスコニーダから選択することができる。具体的な実施形態では、混合装置は、二軸押出機である。
【0035】
混合工程中に、アイオノマーは、非常に狭い粒子サイズ分布を有する非常に微細な粒子として、ポリアミドに分散され(連続相を形成し)得る。溶融混合後、ブレンドは押出機のダイを通過し、次に切断されて、例えばペレットなどのポリアミド/アイオノマーブレンドの固体粒子が得られる。
【0036】
発泡体は、圧縮成形、射出成形、または押出と成形とのハイブリッドなどの多くの方法によって製造され得る。このプロセスは、発泡体組成物の成分を熱下で混合して、溶融物を形成することを含み得る。この成分は、Banburyミキサ、インテンシブミキサ、2ロールミル、および押出機を含む、当該技術分野で知られており、使用される任意の技術を使用して混合およびブレンドすることができる。時間、温度、および剪断速度を調節して、早期に架橋または発泡することなく分散を確保することができる。
【0037】
発泡体の製造に使用される発泡剤(起泡剤とも称される)は、物理的発泡剤または化学的発泡剤であり得る。本明細書で使用される場合、「物理的発泡剤」は、硬化条件下で揮発して起泡ガスを形成する低沸点液体である。例示的な物理的発泡剤には、炭化水素、フルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロクロロフルオロオレフィン、および他のハロゲン化化合物が含まれる。1つ以上の実施形態では、CO2、N2、または両方の組み合わせを含む超臨界起泡剤が含まれ得る。一実施形態では、超臨界CO2起泡剤が利用され得る。本明細書で使用される場合、超臨界とは、起泡剤の超臨界温度および圧力を超える温度および圧力でのことを意味する。例えば、超臨界CO2起泡剤は、約31℃超および約7.4Mpa超である。
【0038】
化学発泡プロセスでは、アゾジカルボンアミドなどの化学起泡剤が最初に混合され、溶融ポリマーに分散される。その後、高圧および温度で、化学起泡剤は、アゾジカルボンアミドの場合では起泡剤として機能する、N2およびCO2などのガスを放出するために分解される。しかしながら、化学起泡剤の場合、起泡剤ガスに加えて他の副生成物が生成される。理論に拘束されるものではないが、化学発泡剤は、場合によっては、低密度の発泡体、例えば、0.1g/cc未満の発泡体を生成するのに好適ではない可能性がある。
【0039】
化学的発泡剤とは異なり、高圧下の物理的起泡剤は、発泡体の押出成形または射出成形された発泡時にプラスチック溶融物に直接計量される。化学的発泡に関連する副生成物の問題は、これらの物理的発泡剤には存在しない。物理的起泡剤は、特にN2およびCO2などの無機ガス起泡剤にではより低コストでより環境的に持続可能である一方で、より均質な発泡体構造を形成するという利点を有し得る。物理的起泡剤はまた、より低密度の泡を生成するためにより好ましい場合がある。
【0040】
以下は、押出発泡中に物理的起泡剤を添加するための例示的なプロセスである。ここで、事前に配合されたポリアミドとアイオノマー合金がフィードホッパに導入され、バレルを通って流れ、溶融し始める。物理的起泡剤、例えば、CO2は、シリンダからポンプで送られ、ポリマー溶融物に直接注入されて混合され、単相ガス/ポリマー溶液を形成する。次に、溶液は、セルの合体を抑制するために冷却を提供する熱交換器に移され得る。最後に、ガス/ポリマー溶融物が押出ダイに入り、突然の圧力低下のために発泡が起こる。
【0041】
理論に限定されるものではないが、突然の圧力低下は、ガスとポリマー溶融物の相分離を引き起こし、発泡体構造を形成する。場合によっては、これは、例えば、15~30MPa/秒の急激な圧力降下である可能性がある。
【0042】
発泡体組成物は、フリーラジカル開始剤または架橋剤、共硬化剤、活性剤、および顔料、接着促進剤、充填剤、核剤、ゴム、安定剤、および加工助剤を含むが、これに限定されない、同様の組成物中で通常使用される任意の他のタイプの添加剤をさらに含むことができる。
【0043】
フリーラジカル開始剤または架橋剤は、限定ではなく例として、ジアルキル有機過酸化物などの有機過酸化物を含むことができる。使用に好適な有機過酸化物の例生成物は、1,1-ジ-t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチル-クミルペルオキシド、ジクミル-ペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(三級-ブチル-ペルオキシル)ヘキサン、1,3-ビス(三級-ブチル-ペルオキシル-イソプロピル)ベンゼン、またはそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0044】
共硬化剤としては、トリメチルプロパントリアクリレート(および同様の化合物)、N,N-m-フェニレンジマレイミド、トリアリルシアヌレート、またはそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0045】
活性剤は、起泡剤用の活性剤を含むことができ、1つ以上の金属酸化物、金属塩、または有機金属錯体を含むことができる。例としては、ZnO、ステアリン酸Zn、MgO、またはそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0046】
試験方法
アイオノマーの密度
密度測定は、ASTM D792、方法Bに従って行われた。
【0047】
アイオノマーのメルトインデックス(I2)
メルトインデックス(MI)を、2.16kgで、ASTM D-1238に従って190℃または210℃で測定した。値はg/10分で報告し、これは10分あたりに溶出したグラムに対応する。
【0048】
剪断粘度
発泡体の剪断粘度は、キャピラリレオメータを使用して温度270℃および剪断速度100ラジアン/秒で特徴付けられた。
【0049】
発泡密度
密度は、ASTM D792に従って測定する。
【0050】
膨張率
膨張率を正確に計算するために、発泡前後の密度を測定できる。膨張率=塑性密度(非発泡)/密度(発泡後)。
【0051】
圧縮強度(MPa)
圧縮強度は、ASTM D1621に従って、圧縮速度1mm/分で判定された。MPa単位の圧縮強度は、最大15%の圧縮ひずみを生成するために必要な応力である。
【実施例】
【0052】
以下の実施例は、様々な実施形態を説明するために提供されるが、特許請求の範囲を制限することを意図するものではない。すべての部およびパーセンテージは、別途示されない限り、重量による。様々な実施例、比較例、ならびに実施例および比較例で使用される材料に関して、おおよその特性、特性、パラメータなどを以下に提供する。
【0053】
さらに、実施例で使用されている原材料の説明を以下の表1に示す。
【表1】
【0054】
表1を参照すると、本発明のアイオノマーは、エチレン/メタクリル酸/マレイン酸モノエチルエステル(E/MAA/MAME)(83/11/6重量%)ターポリマーのZnアイオノマーであり、210℃で測定したメルトインデックス(MI)は1.1であり、酸部分の50モル%がZnカチオンで中和されている。比較例のアイオノマーは、エチレン/アクリル酸n-ブチル/メタクリル酸(68/23/9重量%)ターポリマーのZnアイオノマーで、190℃で測定したMIが0.8であり、酸部分の50モル%がZnカチオンで中和されている。
【0055】
調合
以下の表2に記載されている本発明の実施例1~5の場合、Ultramid(登録商標)B33L PA 6(BASF製)を室温で本発明のアイオノマーおよびIrganox(登録商標)1098フェノール系酸化防止剤(BASF製)とドライブレンドし、240~250℃のブラベンダ二軸押出機を使用して調合し、その後別のペライジングユニットでペレット化する。ドライブレンドには、独立したスーパーフロータを使用した。240~250℃の温度範囲を有するブラベンダ二軸押出機は、240℃/245℃/245℃/245℃/245℃/245℃の連続した温度ゾーンを含んでいた。
【0056】
比較例BおよびCは同様に調製されたが、本発明のアイオノマーの代わりに比較例のアイオノマーが使用された。比較例Aは、Ultramid(登録商標)B33L PA 6を含み、アイオノマーを含まない標準物質である。
【0057】
射出成形
本発明の実施例1~5および比較例A~Cの組成物を含むペレットは、Arburg 520C射出成形機を使用する射出成形によってスラブ(7.5mm*15mm*5mm)に射出された。射出成形プロセスは、ポリマー溶融温度250℃、金型温度70℃、圧力80Mpa、射出速度5mm/sのプロセスパラメータで実行された。
【0058】
バッチ発泡
バッチ発泡プロセスは、高圧容器内で実行された。射出成形スラブを容器に入れ、次いで、CO2を容器に注入した。容器の温度および圧力は、それぞれ、230℃および15MPaであり、超臨界流体CO2で試料を飽和させるために30分間維持した。発泡体構造は、直径3mmの圧力ベントによって1秒未満で発生した突然の圧力降下によって形成された。
【0059】
特性評価
次の表2および3は、生成された発泡体の特性データを示している。
【表2】
【表3】
【0060】
表2に示すように、本発明の実施例1~5はすべて、100s-1で500Pa*sを超える剪断粘度を有するが、比較例AとBは両方とも100s-1で500Pa*s未満である。本発明の実施例1および比較例Cは、表2に示されるように同等の剪断粘度値を有するが、本発明の実施例1の圧縮強度は、表3に示されるように比較例Cより少なくとも4倍大きい。
【0061】
最後に、表2を参照すると、本発明の実施例2~4は、比較例よりもはるかに高い剪断粘度値と低い密度値を示した。
【0062】
さらに、PA6のみを含む比較例Aは、100%をはるかに下回る膨張率しか達成しなかった。しかしながら、アイオノマーとブレンドした後、はるかに高い膨張率が達成された。
【0063】
特許請求の範囲に記載の主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、説明した実施形態に様々な修正を加えることができることが当業者には明らかであろう。したがって、本明細書は、そのような修正形態および変形形態が添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内に入る限り、記載された実施形態の修正形態および変形形態を網羅することが意図される。
なお、本発明には、以下の実施形態が包含される。
[1]発泡体であって、
55~98重量%ポリアミドと、
亜鉛中和エチレン酸コポリマーを含む2~45重量%アイオノマーと、を含み、
前記亜鉛中和エチレン酸コポリマーが、エチレンモノマーと、モノカルボン酸モノマーと、不飽和ジカルボン酸モノマーと、の重合反応生成物であり、
前記アイオノマーの全酸単位の30~70モルパーセントが、中和されている、発泡体。
[2]前記発泡体が、0.03~0.5g/ccの密度を有する、前記[1]に記載の発泡体。
[3]前記発泡体が、少なくとも1500%の膨張率を有する、前記[1]または[2]のいずれか一項に記載の発泡体。
[4]前記発泡体が、ポリウレタンを含まない、前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の発泡体。
[5]前記発泡体が、75~97重量%のポリアミドを含む、前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の発泡体。
[6]前記ポリアミドが、脂肪族ポリアミドを含む、前記[1]~[5]のいずれか一項に記載の発泡体。
[7]前記ポリアミドが、PA6、PA11、PA12、またはそれらの組み合わせを含む、前記[1]~[6]のいずれか一項に記載の発泡体。
[8]前記発泡体が、3~20重量%のアイオノマーを含む、前記[1]~[7]のいずれか一項に記載の発泡体。
[9]前記亜鉛中和エチレン酸コポリマーが、前記亜鉛中和エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量%に対して、少なくとも50%のエチレンモノマーを含む、前記[1]~[8]のいずれか一項に記載の発泡体。
[10]前記亜鉛中和エチレン酸コポリマーが、前記亜鉛中和エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量%に対して、少なくとも5~25重量%のモノカルボン酸モノマーを含む、前記[1]~[9]のいずれか一項に記載の発泡体。
[11]前記亜鉛中和エチレン酸コポリマーが、前記亜鉛中和エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量%に対して、2~20重量%の不飽和ジカルボン酸モノマーを含む、前記[1]~[10]のいずれか一項に記載の発泡体。
[12]前記不飽和ジカルボン酸モノマーが、無水マレイン酸、無水マレイン酸モノメチルエステル、無水マレイン酸モノエチルエステル、無水マレイン酸モノプロピルエステル、無 水マレイン酸モノブチルエステル、またはそれらの組み合わせを含む、前記[1]~[11]のいずれか一項に記載の発泡体。
[13]前記モノカルボン酸モノマーが、メタクリル酸、アクリル酸、またはそれらの組み合わせを含む、前記[1]~[12]のいずれか一項に記載の発泡体。
[14]発泡体を生成する方法であって、
超臨界起泡剤CO
2、
N
2
または両方の組み合わせを容器内に注入して、発泡前駆体混合物と混合することであって、前記容器が、前記起泡剤の超臨界温度および圧力を超える圧力および温度であり、前記発泡前駆体混合物が、55~98重量%のポリアミドと、亜鉛中和エチレン酸コポリマーを含む2~45重量%のアイオノマーと、を含み、
前記亜鉛中和エチレン酸コポリマーが、エチレンモノマーと、モノカルボン酸モノマーと、不飽和ジカルボン酸モノマーと、の重合反応生成物であり、
前記アイオノマーの全酸単位の30~70モルパーセントが、中和されている、混合することと、
前記超臨界起泡剤の前記圧力未満に圧力を下げることによって、前記発泡体を生成することと、を含む、方法。