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特許7317135非コーティングガラス中空球体の使用により低密度で良好な機械的特性を有する熱可塑性エラストマー組成物
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  • 特許-非コーティングガラス中空球体の使用により低密度で良好な機械的特性を有する熱可塑性エラストマー組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】非コーティングガラス中空球体の使用により低密度で良好な機械的特性を有する熱可塑性エラストマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/00 20060101AFI20230721BHJP
   C08L 23/02 20060101ALI20230721BHJP
   C08L 25/10 20060101ALI20230721BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20230721BHJP
   C08L 51/08 20060101ALI20230721BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20230721BHJP
   C08K 7/28 20060101ALI20230721BHJP
   C08J 9/32 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
C08L53/00
C08L23/02
C08L25/10
C08L51/06
C08L51/08
C08L67/00
C08K7/28
C08J9/32 CES
C08J9/32 CET
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021551837
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 DE2020100190
(87)【国際公開番号】W WO2020192834
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】102019107468.1
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517075263
【氏名又は名称】クライブルグ ティーピーイー ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】マルチナ ヘテリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】フリーダー フィールサック
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-014798(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0145009(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0145010(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,C08J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン-ブロック共重合体と、ポリオレフィン又はコポリエステルベースの熱可塑性エラストマーと、非コーティングガラス中空球体とを含む熱可塑性エラストマー組成物であって、前記ポリオレフィン又は前記コポリエステルベースの熱可塑性エラストマー(TPC)が、不飽和有機酸の無水物又はビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン若しくはメタクリルオキシアルキルアシルオキシシランでのグラフト反応により官能化され、
前記熱可塑性エラストマー組成物がさらに、非官能化ポリオレフィン又は非官能化コポリエステルベースの熱可塑性エラストマーを選択的に含み、
前記非官能化ポリオレフィン又は前記非官能化コポリエステルベースの熱可塑性エラストマーと、官能化ポリオレフィン又は官能化コポリエステルベースの熱可塑性エラストマーとの合計の、スチレン-ブロック共重合体に対する重量比が15:100~140:100の範囲である、
熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
前記スチレン-ブロック共重合体が、トリブロック共重合体であり、双方の末端ブロックがポリスチレンから形成されていて、かつ中央ブロックがポリスチレン以外のポリマーから形成されている、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記トリブロック共重合体の前記中央ブロックがポリオレフィンから形成されている、請求項2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
前記スチレン-ブロック共重合体が、SEBS、SEPS、SBS、SEEPS、SIS、SiBS又はSIBSである、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
前記スチレン-ブロック共重合体が、不飽和有機酸の無水物又はビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン若しくはメタクリルオキシアルキルアシルオキシシランでグラフトされていない、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
前記不飽和有機酸の無水物が有機不飽和ジカルボン酸の無水物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項7】
さらに可塑剤を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を製造するための、ポリオレフィン又はTPCの使用であって、前記ポリオレフィン又はTPCが、有機カルボン酸の無水物又はビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン若しくはメタクリルオキシアルキルアシルオキシシランで官能化されている、使用。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造のための、非コーティングガラス中空球体の使用。
【請求項10】
熱可塑性樹脂と共に複合材料を製造するための、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の使用であって、熱可塑性エラストマー組成物が熱可塑性樹脂上に接着される使用
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物と熱可塑性樹脂とからなる複合材料。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物及び/又は請求項11に記載の複合材料の、自動車内装分野、自動車外装分野、産業用機器、工業用工具、業務用及び/若しくは個人用の電動工具、家庭用電化機器、家庭用電子機器分野の製品、薬用消耗品及び医療用機器、スポーツ用品、衛生用品及び化粧品の容器、シール材、又は消費財の調合品の、部品又は成形体としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン-ブロック共重合体(SBC)と、ポリオレフィン又はコポリエステルベースの熱可塑性エラストマー(TPC)と、非コーティングガラス中空球体とを有する熱可塑性エラストマー組成物であって、このポリオレフィン又はTPCが、ビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン若しくはメタクリルオキシアルキルアシルオキシシランでの、又は不飽和有機酸の無水物でのグラフトにより官能化されている、熱可塑性エラストマー組成物に関する。同様に、本発明は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いて熱可塑性エラストマーを製造するための方法、及びこの際に得られた熱可塑性エラストマーに関する。さらに、本発明は、低密度でありながら良好な機械的特性を有する熱可塑性エラストマーが必要とされる、熱可塑性エラストマーの様々な使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマーは、多くの用途又は様々な部品の製造に必要である。この場合、重量の低減が望まれることが多いので、使用する熱可塑性エラストマーは、望ましくは低密度であるべきである。しかし、熱可塑性エラストマーの密度を下げることで、機械的特性及び加工性を犠牲にするべきではない。さらに、低密度の熱可塑性エラストマーを製造するために、発泡方法を必要とせず、標準的な射出成形方法又は標準的な押出成形方法で加工できることが好ましい。
【0003】
ポリオレフィンのラジカルグラフトには、ビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアシルオキシシラン及びメタクリルオキシアルキルアルコキシシランが適していることが知られている。これらのいわゆる有機官能性シランは、鉱物表面及び金属表面の表面修飾に適しているが、この理由は、これらの表面のほとんどは水酸基を有しており、通常、これらの水酸基はアルコキシシランと共有結合を形成し(Si-OR+HO-Y→Si-O-Y+HO-R)、これにより、これらの表面とシランとの間の結合を可能にするからである。ガラス中空球体の表面には、アルコキシシラン又はアシルオキシシランと反応可能なSi-OH基が散在しているため、アルコキシシラン及びアシルオキシシランは、ガラス中空球体をポリマーに結合させるのに卓越して適している。
【0004】
従来、非官能性ガラス球体を、官能性エラストマーを介して熱可塑性エラストマーのエラストマー相に結合させる製造方法が知られている。これは、グラフトされたポリプロピレンの代わりに、グラフトされたSBCを採用することで行われる。しかし、得られた熱可塑性エラストマーは、十分に良好な機械的値を持たないことが多い。
【0005】
エラストマーを含有しない純粋な熱可塑性組成物の密度を下げるために、まずガラス中空球体の表面に官能基を塗布し、それに熱可塑性樹脂をエマルジョン方法で結合させる製造方法が知られている。まずエマルジョン方法で官能化され、かつ熱可塑性樹脂でコーティングされたガラス中空球体は、続いて乾燥させて分離しなければならず、これは密度を下げたい追加の熱可塑性樹脂に埋め込むことができる前に行わねばならない。この多段階での方法は、プロセスシステム工学的に複雑であるだけでなく、時間及びコストもかかる。さらに、熱可塑性樹脂の密度を下げる方法は、熱可塑性エラストマーが少なくとも2つの相からなるため、容易には転用できない。
【0006】
さらに、本発明と同じ出願人によって、ある発明がすでに特許出願されており、すなわち、未公開出願である特許文献1において、低密度で良好な機械的特性を有する熱可塑性エラストマー組成物が開示されているが、これはスチレン-ブロック共重合体(SBC)と、有機酸の無水物で官能化されたポリオレフィンと、シランベースの薬剤で表面処理又は表面コーティングされたガラス中空球体とを有する。本出願人は、ここでも軽量でかつ良好な機械的値を有する熱可塑性エラストマー(TPE)を提供できるように、ガラス中空球体を熱可塑性相に結合させるために、ガラス中空球体の表面コーティングが必須であることから出発している。官能化されたポリオレフィンの代わりに官能化されたSBCを用いた比較試験では、得られたTPEの重量が減少したが、満足のいく値ではなかった。それゆえに、使用するポリオレフィンにガラス中空球体を確実に結合させることが必須であるとの点から出発した。この目的のために、先の出願では、表面コーティングされたガラス中空球体と官能化されたポリオレフィンとを使用し、これらを介して互いの結合を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願第10 2017 122 314号明細書
【発明の概要】
【0008】
驚くべきことに、本願の発明者らは、ポリオレフィン又はTPCが官能化ポリオレフィン又は官能化TPCとして存在する場合には、表面処理された又は表面コーティングされたガラス中空球体を使用せずとも、比肩する機械的特性を有し軽量の熱可塑性エラストマーを製造できることを突き止めた。
【0009】
この際、本発明は、低密度(好ましくは<0.9g/cm)でありかつ機械的値が様々な所望の用途に適した範囲にある熱可塑性エラストマー又は代替組成物を提供するという問題を解決する。さらに、この熱可塑性エラストマーは、従来の表面コーティングされたガラス中空球体を採用した場合に比べて、より簡単に、より安く、かつより速く製造することができる。
【0010】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、スチレン-ブロック共重合体(SBC)と、ポリオレフィン又はコポリエステルベースの熱可塑性エラストマーと、非コーティングガラス中空球体とを有し、このポリオレフィン又はコポリエステルベースの熱可塑性エラストマーが、ビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン若しくはメタクリルオキシアルキルアシルオキシシラン又は不飽和有機酸の無水物でのグラフト反応により官能化されている(官能化ポリオレフィン又はTPC)。本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、その成分の単純な混合物として処理し、例えば押出機中で熱可塑性エラストマーにすることができる。このために複雑な中間工程、又は中間生成物の分離は必須ではない。
【0011】
本出願によれば、熱可塑性エラストマーとは、エラストマーと熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーとを含むポリマー混合物(ブレンド)からなり、その使用温度では加硫ゴムと類似の特性を有するが、より高温で熱可塑性樹脂のように加工及び処理できるものであると理解される。
【0012】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、エラストマー成分としてスチレン-ブロック共重合体(SBC)を有するので、本明細書中では、スチレン-ブロック共重合体ベースの熱可塑性エラストマー組成物(TPS)とも呼ばれる。本発明による熱可塑性エラストマーについても同じことが該当する。
【0013】
本発明による熱可塑性組成物から製造される熱可塑性エラストマーは、その構成成分により、熱可塑性相とエラストマー相とを有し、このエラストマー相はSBCを含み、熱可塑性相は官能化ポリオレフィン又は官能化TPCを含むことを前提とする。非コーティングガラス中空球体は、独国特許出願第10 2017 122 314号でのコーティングガラス中空球体のように、その後官能化されたポリオレフィン又はTPCが使用される場合、熱可塑性相に親和性を持ち、エラストマー相には親和性を持たないと思われる。ポリオレフィン又はTPCの官能化ではなく、エラストマーの官能化を伴う比較試験では、機械的特性がはるかに劣るTPEが得られた。
【0014】
本発明による熱可塑性エラストマーの製造に使用されるガラス中空球体は、コーティングされていないもの、すなわち、その表面にコーティングを有さないものである。本発明では、コーティングとは、ガラス中空球体の製造後に続く官能化工程を意味すると理解される。非コーティングガラス中空球体とは、その表面がガラス中空球体のガラスで形成されるものである。
【0015】
特に、本発明は、本発明による熱可塑性エラストマー組成物において、スチレン-ブロック共重合体がトリブロック共重合体であり、双方の末端ブロックがポリスチレンから形成されていて、かつ中央ブロックがポリスチレン以外のポリマーから形成されている実施形態にも関する。この際、トリブロック共重合体の中央ブロックがポリオレフィンから形成されていることが好ましい。このスチレン-ブロック共重合体は、SEBS、SEPS、SBS、SEEPS、SiBS、SIS、SIBS又はこれらの混合物からなる群から選択されている物質であることが好ましい。さらに好ましくは、このスチレン-ブロック共重合体は、有機酸の無水物、ビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン又はメタクリルオキシアルキルアシルオキシシランで官能化されていないことが好ましい。より好ましくは、このスチレン-ブロック共重合体は、不飽和有機酸の無水物、ビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン又はメタクリルオキシアルキルアシルオキシシランでグラフトされていないものである。好ましくは、このスチレン-ブロック共重合体は、グラフトされたスチレン-ブロック共重合体ではない。好ましくは、このスチレン-ブロック共重合体は、官能化されたスチレン-ブロック共重合体ではない。本発明により使用可能なスチレン-ブロック共重合体については、さらに以下により詳細に説明する。
【0016】
本発明のさらなる実施形態では、本発明による熱可塑性エラストマー組成物において、官能化されたポリオレフィン又はTPCの官能化が、不飽和有機ジカルボン酸の無水物によって、好ましくは有機1,2-ジカルボン酸の無水物によって、又は、ビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン若しくはメタクリルオキシアルキルアシルオキシシランによって行われることが好ましい。
【0017】
不飽和有機カルボン酸の無水物、又はビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン若しくはメタクリルオキシアルキルアシルオキシシランは、好ましくはラジカルグラフトによってポリオレフィン又はTPCに結合される。このために、不飽和有機カルボン酸の無水物、又はビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン若しくはメタクリルオキシアルキルアシルオキシシランを、適切なポリオレフィン又はTPC「上にグラフト」する(グラフトプロセス)。このために、不飽和有機酸の無水物、又はビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン若しくはメタクリルオキシアルキルアシルオキシシランなどの、反応性の二重結合を持つものを使用するのが好ましく、無水物の場合は例えば無水マレイン酸、オルガノシランの場合は明示的にビニル又はメタクリル酸で官能化されたオルガノシランが用いられる。不飽和有機カルボン酸の無水物、又はアルコキシシラン若しくはアシルオキシシランでグラフトされたポリオレフィン又はTPCのさらなる詳細、及びグラフト反応による製造方法については、さらに以下に説明し、かつ図1及び図2中に示す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ポリオレフィン又はTPC1を、ラジカル開始剤3の存在下で、ビニル又はメタクリルオキシシラン2とグラフト反応させて、ビニル又はメタクリルオキシシランでグラフトされたポリオレフィン又はTPC4が発生するところを示す図である。
図2】同様に、ポリオレフィン又はTPC1を、ラジカル開始剤3の存在下で、無水マレイン酸(MAH)5とグラフト反応させて、MAHでグラフトされたポリオレフィン又はTPC6が生じるところを示す図である。
図3図1の式に従って製造された官能化されたポリオレフィン又はTPC4にガラス中空球体7を結合したところを示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0019】
本発明のさらなる実施形態では、本発明による熱可塑性組成物中の官能化ポリオレフィンは、好ましくは、官能化ポリプロピレンである。極めて特に好ましくは、この官能化されたポリオレフィンは、無水マレイン酸(MAH-g-PP)でグラフトされたポリプロピレンである。
【0020】
本発明のさらなる実施形態では、熱可塑性エラストマー組成物は、さらに、好ましくは有機カルボン酸の無水物で官能化されていないポリオレフィン又はTPC(非官能化ポリオレフィン又はTPC)を有しうる。特に好ましくは、この非官能化ポリオレフィンはポリプロピレン又はポリエチレンであり、より好ましくはポリプロピレンである。本発明で使用可能なポリオレフィンについては、以下でさらに説明する。さらに、この非官能化ポリオレフィンを、官能化ポリオレフィンが採用されている本発明による組成物に添加することが好ましい。同様に、官能化されたTPCが存在する本発明による組成物中で、非官能化TPCが採用されることが好ましい。
【0021】
ある実施形態では、不飽和有機酸の無水物でのグラフト反応によって官能化されたポリオレフィンが、本発明による組成物中に使用されることが好ましい。この実施形態では、結果として得られる熱可塑性エラストマーは、ポリプロピレン又はポリアミド上への接着に適している。
【0022】
さらなる実施形態では、ビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン又はメタクリルオキシアルキルアシルオキシシランでのグラフト反応によって官能化されたポリオレフィンが、本発明による組成物中で採用されることが好ましい。この実施形態では、結果として得られる熱可塑性エラストマーは、ポリプロピレン上への接着に特に適している。ポリアミド上への接着が望まれる場合は、これは、不飽和有機酸の無水物でのグラフト反応によって官能化されたポリオレフィンを追加で添加することで達成できる。
【0023】
さらなる実施形態では、本発明による組成物中で、TPCが採用されることが好ましいが、このTPCは、ビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン若しくはメタクリルオキシアルキルアシルオキシシランでの、又は不飽和有機酸の無水物での、好ましくは不飽和有機酸の無水物、より好ましくは無水マレイン酸でのグラフト反応によって官能化されている。本実施形態では、好ましくは、結果として得られた熱可塑性エラストマーは、極性熱可塑性樹脂(例えば、ABS、PC、PC/ABS、PA、SANなど)上への接着に用いられる。
【0024】
この熱可塑性エラストマー組成物は、さらに可塑剤を含有できる。本発明により採用可能な相応の可塑剤も、以下で説明する。
【0025】
さらに、本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、さらなる添加剤、例えば、安定剤、助剤、着色剤、ガラス中空球体ではないさらなる充填剤、及び/又は相溶化剤などを含有しうる。これらについても、以下に詳しく説明する。
【0026】
本発明は、さらに、スチレン-ブロック共重合体ベースの熱可塑性エラストマーを製造する方法にも関する。この際、本発明による熱可塑性エラストマー組成物の構成成分を、150℃~240℃の範囲の温度、好ましくは180℃~220℃の範囲の温度で混和する。以下に、本発明による方法をより詳細に説明する。
【0027】
さらに、本発明は、本発明による方法によって得られうる、又は得られる熱可塑性エラストマーに関する。本発明による熱可塑性エラストマーは、硬度がショアA硬度40からショアD硬度30の範囲、密度が0.5~1.1g/cmの範囲の低密度、引張強さが少なくとも2.0MPa、破断伸びが少なくとも100%、72時間後の室温での圧縮永久歪みが70%未満であることを特徴とする。本発明によるエラストマー組成物の上述の(好ましい)特徴のすべては、本明細書では、本発明による熱可塑性エラストマーにも該当すべきである。
【0028】
本発明はさらに、本発明による熱可塑性エラストマー組成物又は本発明による熱可塑性エラストマーを製造するための、ポリオレフィン又はTPCの使用であって、このポリオレフィン又はTPCが、ビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン若しくはメタクリルオキシアルキルアシルオキシシラン又は有機カルボン酸の不飽和無水物でのグラフト反応によって官能化されている。
【0029】
さらに、本発明は、本発明による熱可塑性エラストマー組成物又は本発明による熱可塑性エラストマーの製造のための、非コーティングガラス中空球体の使用にも関する。
【0030】
熱可塑性エラストマーは、なんらかの製品及び物品を製造するための唯一の材料として適しているだけではないことが知られている。むしろ、熱可塑性樹脂(硬質プラスチック又は硬質部品)との結合を形成すること、それも追加の接着剤、接着促進剤又はコロナ処理などの接着促進プロセスを追加で使用せずに、この結合を形成することがこの分類の材料の特徴である。さらに、それぞれのTPE(軟質成分)の組成が、選択された硬質成分との結合の能力及び強度を決定することが知られている。したがって、他の熱可塑性樹脂との複合体を形成するのに適した特性を持つTPEを提供することは、TPEメーカーにとってほぼ常に課題となっている。
【0031】
したがって、本発明は、例えばポリオレフィン、ポリアミド若しくはこれ以外の極性熱可塑性樹脂などの熱可塑性樹脂(硬質成分)と共に複合材料を製造するための、又は、これらのうちの1つの熱可塑性樹脂上へ本発明による熱可塑性エラストマー組成物を接着するための、本発明による熱可塑性エラストマーの使用にも関する。言い換えれば、本発明はさらに、本発明による熱可塑性エラストマーと、熱可塑性樹脂(例えば、ポリオレフィン、ポリアミド又は極性を有するさらなる熱可塑性樹脂など)とから複合材料を製造する方法であって、熱可塑性エラストマー組成物が熱可塑性樹脂と結合する方法にも関する。この際、本発明による使用又は本発明による方法では、物品を製造するための処理方法として、射出成形、多成分射出成形、射出インサート成形方法、押出成形、共押出成形又は圧縮成形が使用され、射出成形、多成分射出成形、射出インサート成形方法、押出成形及び共押出成形が好ましく、多成分射出成形が特に好ましい。さらに上述したように、官能化されたポリオレフィンの採用は、熱可塑性硬質成分としてのポリプロピレン又はポリアミドとの接着に特に適している。同様に上述したように、官能化されたTPCの採用は、極性のある熱可塑性樹脂上への接着に特に適している。
【0032】
したがって、本発明は、本発明による熱可塑性エラストマーと、熱可塑性樹脂、特に好ましくはポリアミド、ポリオレフィン又は他の極性熱可塑性樹脂(ABS、PC、PC/ABS、SANなど)とを含む複合材料にも関する。
【0033】
さらに、本発明は、本発明による熱可塑性エラストマーの使用及び/又は本発明による複合材料の使用であって、自動車内装分野、自動車外装分野、産業用機器、工業用工具、業務用及び/若しくは個人用の電動工具、家庭用電化機器、家庭用電子機器分野の製品、薬用消耗品及び医療用機器、スポーツ用品、衛生用品及び化粧品の容器、シール材、又は消費財の調合品の、部品又は成形体としての使用にも関する。
【0034】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物又は本発明による熱可塑性エラストマー中の上述の成分、並びに本発明による使用及び方法中に採用される成分について、以下でより詳細に説明する。
A:スチレン-ブロック共重合体
B:官能化されたポリオレフィン又は官能化されたTPC
C:ガラス中空球体
D:ポリオレフィン又はTPC(いずれも官能化されていない)
E:可塑剤
F:安定剤、助剤、着色剤
【0035】
成分A:スチレン-ブロック共重合体
【0036】
本発明によれば、「スチレン-ブロック共重合体」(SBC)という概念は、マルチブロック共重合体であると理解され、この際に、ブロックのうちの少なくとも1つはポリスチレンである。さらなるブロックのうちの少なくとも1つは、通常、ポリブタジエン、ポリイソプレン又はポリイソブテンである。SBCは、A-B-Aという構造のトリブロック共重合体であることができ、Aブロックは通常ポリスチレンであり、Bブロックは通常ポリブタジエン、ポリイソプレン又はポリイソブテンで構築されている(SBS、SIS、SiBS)。あるいは、Aブロック中では、スチレンモノマーの一部又は全部を、例えば、スチレンの誘導体(α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、4-シクロヘキシルスチレンなど)、又はビニルナフタレン(1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレンなど)で置き換えることもできる。Bブロックは、SIBSのようなジエンの混合物を代替的に含有することもできる(ブタジエンとイソプレンとの混合物からなるBブロック)。さらに、スチレンモノマー及びジエンモノマーからなるSBCも、水素化誘導体として採用することができる。この場合、Bブロックのユニットの一部又は全部が水素化されて存在する。ここでは、ポリスチレン-ブロック-ポリ(エチレン-co-ブチレン)-ブロック-ポリスチレン(SEBS)、ポリスチレン-ブロック-ポリ(エチレン-co-プロピレン)-ブロック-ポリスチレン(SEPS)及びポリスチレン-ブロック-ポリ(エチレン-co-(エチレン-プロピレン))-ブロック-ポリスチレン(SEEPS)が好適であるとして挙げられる。これに代えて、トリブロック共重合体以外に、上述のスチレン、スチレン誘導体(Aブロック)と、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン及びそれらの混合物(Bブロック)とのモノマーからなるジブロック共重合体、テトラブロック共重合体又はマルチブロック共重合体も、AブロックとBブロックとを異なる順序にして(例えば、B-A-B、A-B-A-Bなど)使用することができる。好ましいSBCは、A-B-Aのトリブロック共重合体から構築されている。
【0037】
本発明によるSBCは、重量平均分子量(Mw)が、好ましくは50,000~1,000,000g/mol、特に好ましくは100,000~500,000g/molである。
【0038】
SBCは、本発明による熱可塑性エラストマー組成物又は本発明による熱可塑性エラストマー中に、熱可塑性エラストマー組成物又は熱可塑性エラストマーの総重量に対して、12重量%~30重量%の範囲、より好ましくは15重量%~25重量%の範囲、最も好ましくは18重量%~23重量%の範囲の量で存在することが好ましい。
【0039】
成分B:官能化されたポリオレフィン又は官能化されたTPC
【0040】
本発明によれば、ポリオレフィン又はTPCは、上述のように、ビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン若しくはメタクリルオキシアルキルアシルオキシシラン又は不飽和有機酸の無水物で官能化されている。好ましくは、この官能化はグラフト(グラフトプロセス)を用いて行われ、ビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン若しくはメタクリルオキシアルキルアシルオキシシラン又は不飽和有機酸の無水物が、適切なポリオレフィン上にグラフトされる。ビニルアルコキシシランでのグラフト反応の後、ポリオレフィン又はTPCは、2-エチルアルコキシシランで修飾されたポリオレフィン又はTPCとして存在する。ビニルアシルオキシシランでのグラフト反応の後、ポリオレフィン又はTPCは、2-エチルアシルオキシシランで修飾されたポリオレフィン又はTPCとして存在する。メタクリルオキシアルキルアルコキシシランでのグラフト反応の後、ポリオレフィン又はTPCは、2-メチル-プロペノイル-アルキルアルコキシシランで修飾されたポリオレフィン又はTPCとして存在する。メタクリルオキシアルキルアシルオキシシランでのグラフト反応の後、ポリオレフィン又はTPCは、2-メチル-プロペノイル-アルキルアシルオキシシランで修飾されたポリオレフィン又はTPCとして存在する。不飽和有機酸の無水物でのグラフト反応の後、ポリオレフィン又はTPCは、1,2-ジカルボン酸で修飾されたポリオレフィン又はTPCとして存在する。これらは、ポリオレフィン又はTPCを、ビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン若しくはメタクリルオキシアルキルアシルオキシシラン又は不飽和有機酸の無水物と、すでに上で説明した図1図2の反応式に従ってラジカル開始剤を用いて反応させたときの反応生成物である。
【0041】
一般的にグラフトとは、すでに予め形成された一次ポリマー(この場合はポリオレフィン又はTPC)の分子鎖に、後の時点で他の分子ビルディングブロック(この場合は、ビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン若しくはメタクリルオキシアルキルアシルオキシシラン、又は不飽和有機カルボン酸の無水物)をその「上にグラフト」することであると理解される。この種の官能化されたポリマーは、「グラフトポリマー」とも呼ばれる。グラフトポリマーは様々な様式で製造することができる。例えば、一次ポリマーとグラフトされる分子ビルディングブロックとを所望の比率で混ぜ、その後、過酸化物の分解により、又は照射により、好ましくは過酸化物によりラジカル形成を行って製造することができる。この際、一次ポリマーにラジカル部位が形成され、そこにグラフトされるべき分子ビルディングブロックが付着する。このために、有機カルボン酸の無水物が、一次ポリマーのラジカル部位が当たることができる反応部位を持っていなければならない。一次ポリマーとグラフトされるべき分子ビルディングブロックとの混合物を集中的な機械的熱的処理にかけると、すでにグラフトが部分的に起こりうる。ポリマーのグラフト反応は、固相反応器、圧延機、押出機又は反応器中で、溶液又はエマルジョン中で行うのが好ましく、この点は、熱可塑性樹脂の分野の当業者には知られている。ポリオレフィン又はTPCについては、固相反応器又は押出機中での反応が好ましい。
【0042】
本発明では、ポリオレフィンとは、エチレン、プロピレン、1-ブテン又はイソブテンなどのアルケンから連鎖重合によって製造されるポリマーであると理解される。この際、好ましくは、不飽和アルケンから、重合により飽和ポリマーを製造する。
【0043】
この際、本発明によれば、ポリオレフィンは、ホモポリマー、ランダム共重合体のみならず、例えばポリオレフィン-ブロック共重合体(OBC)などのブロック共重合体でもよく、本発明によれば、ホモポリマー又はランダム共重合体が好ましく、これらは、好ましくは脂肪族アルケンであるアルケンから製造されることが好ましい。
【0044】
特に好ましくは、ポリオレフィンは、非エラストマーポリオレフィン、すなわちエラストマー特性を持たないポリオレフィンである。より好ましいのは、このポリオレフィンは、熱可塑性樹脂である。
【0045】
グラフトのベースとして、以下に説明する市販のポリオレフィンを採用することができる。
【0046】
ポリオレフィンは、例えば、オレフィンのホモポリマー又はランダム共重合体でありえる。これらの例は、HDPE(高密度ポリエチレン)、MDPE(中密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)などのポリエチレンの共重合体、プロピレンのホモポリマー(hPP)、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体(rPP)、及びこれらの組み合わせである。
【0047】
ジカルボン酸の無水物で官能化するためのベースとして、本発明に適したポリオレフィンは、とりわけ射出成形での加工に適したものである。適切なポリオレフィンは、良好な流動性及び剛性を持つものである。
【0048】
プロピレンのホモポリマー(hPP)は市販されており、これらの市販の各hPPを本発明に従って採用することができる。本発明によれば、hPPの採用が好ましい。
【0049】
市販のhPPとしては、例えば、ライオンデルバセル(LyondellBasell)社のモプレン(Moplen)(登録商標)の商品名で販売されている製品、Moplen(登録商標)HP500N、Moplen(登録商標)HP501Lなどがある。
【0050】
ランダムポリプロピレン共重合体(rPP)も市販されており、これらのrPPのいずれも本発明に従って使用することができる。コモノマーとしては、エチレン及び/又はブテンが好ましい。
【0051】
本発明では、HDPE、MDPE、LDPE、LLDPE、VLDPEなどの密度の異なるポリエチレンを使用することができる。これらは十分市販されていて利用可能である。
【0052】
しかし、本発明によれば、ポリオレフィンがその繰り返し単位にプロピレンを含むものであることが特に好ましい。さらに好ましくは、ポリオレフィンはhPPである。
【0053】
ポリオレフィンとして本発明により採用可能なOBCは、オレフィンモノマーを繰り返し単位としてブロックが構築されているブロック共重合体である。この際、本発明によるOBCは、少なくとも2つの異なるポリマーブロックを有する。これらのブロックは、1種類のオレフィンで構成されていても、2種類以上のオレフィンで構築されていてもよい。本発明に従って使用可能なOBCを構築するために使用されるオレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン又はブチレンなどの脂肪族オレフィンであり、本発明によれば、エチレン及びプロピレンが好ましい。特に好ましくは、本発明に従って使用可能なOBCは、いわゆる繰り返し単位として脂肪族オレフィンのみで構築されている。本発明によれば、芳香族残基を有するものはOBCの定義から除外される(これらは、当業者にはTPS(スチレンベースの熱可塑性エラストマー)として知られている)。ここで説明した用途又は本発明による組成物にとって特に好ましいのは、ブロックがポリプロピレン、ポリエチレン、若しくはエチレン/プロピレンのランダム共重合体で構築されているか、又はこれらからなるOBCである。この種のOBCは、例えば、LyondellBasell社のハイファックス(Hifax) CA 10 Aという商品名で市販されている。さらに、特に好ましいのは、米国特許第8,481,637 B2号に詳細に記載されているポリオレフィン-ブロック共重合体(この特許中では、「olefin block copolymer(オレフィンブロック共重合体)、OBC」と称されている)であり、本願ではこれを完全に参照する。ここでは、硬質(非常に剛性を有する)セグメントのブロックと、軟質(非常に弾力性のある)セグメントのブロックとを交互に有するポリマーである。この種の製品は、ダウ・エラストマーズ(Dow Elastomers)社が「インヒューズ(INFUSE)(登録商標)」という商品名で販売している。特にTPEへの使用が推奨されている型が好ましい(INFUSE(登録商標)9010、9007、9107、9807)。
【0054】
本発明に従って使用可能なOBCのさらなる例は、いわゆる水素化ジエン-ブロック共重合体である。この種のポリマーは、水素化ポリブタジエン又は水素化ポリイソプレンからなるポリマーブロックを有することが好ましい。
【0055】
本発明によれば、OBCが非エラストマーのポリオレフィンと共に採用されることが好ましい。
【0056】
好ましくは、本発明にとって適切なTPC(コポリエステルベースのTPE)は、一般に、共重合体の形態のコポリエステルであり、これは、ポリマー主鎖中にモノマービルディングブロックを有し、これが、エステル基(-C(=O)-O-)を介して結合されている。この種の熱可塑性コポリエステルエラストマーは、重縮合によって製造することができる。この種のコポリエステルは、好ましくはマルチブロック-コポリエステルであり、通常硬質ブロック(X)の結晶性セグメントと、軟質ブロック(Y)の非晶性セグメントとを有する。マルチブロック-コポリエステル中の硬質ブロック(X)と軟質ブロック(Y)とを構築するのに適したモノマー成分は、当業者に知られている。本発明で好ましいとして採用されるコポリエステルは、融点又は軟化点が160℃~300℃、好ましくは165℃~270℃、特に好ましくは170℃~220℃の範囲のである。本発明の好ましいTPCは、直鎖状のマルチブロック-ポリエステルであり、高融点の硬質ポリエステルブロックと低融点の軟質ポリエステルブロックとがランダムに分布する。この場合、硬質ブロックが結晶性領域を形成し、軟質ブロックが非晶性領域を形成し、これがTPCの適用温度では弾性的な挙動を引き起こす。硬質ポリエステルブロックは、C原子が4個未満の短鎖ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸又はジカルボン酸の混合物で構築されていることが好ましい。芳香族ジカルボン酸が好ましく、イソフタル酸又はテレフタル酸が特に好ましい。アルコール成分も好ましくは二官能性であり、短鎖アルキルジオール、3個未満の繰り返し単位を持つ短鎖ポリオキシアルキレンジオール、又は異なるジオールの混合物からなる。好ましくは、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの短鎖ジオールであり、特に好ましいのは1,4-ブタンジオールである。軟質ポリエステルブロックは、好ましくは脂肪族又は芳香族のジカルボン酸からなり、好ましくは芳香族のジカルボン酸、極めて特に好ましくはイソフタル酸又はテレフタル酸からなる。TPCに軟質領域を作るために、様々なタイプのジオールを使用するが、これらは、ポリエーテルジオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン-co-プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど)、軟質ポリエステルジオール(これは、アルカンジカルボン酸、例えばアジピン酸又はセバシン酸などとアルカンジオールとからなる)、ポリカプロラクトンジオール又は脂肪族ポリカーボネートジオールである。しかし、ジオールの混合物を採用することもできる。好ましいのは、テレフタル酸と短鎖ジオール(特に好ましくは1,4-ブタンジオール)とから構築される硬質TPC領域を、好ましくはテレフタル酸とポリエーテルジオールとから(極めて特に好ましくはポリテトラメチレングリコールから)構築される軟質領域と組み合わせたものである。本発明による組成物中の成分Bとして適しているコポリエステルは、当業者に知られている方法に従って製造することができ、又は市販されている。適切な市販のコポリエステルは、例えば、ティコナ(TICONA)社-ライトフレックス(Riteflex)(登録商標)、P.グループ(GROUP)社-ピビフレックス(PIBIFLEX)(登録商標)、DSM社-アーニテル(Arnitel)(登録商標)、コーロン(Kolon)社-コペル(KOPEL)(登録商標)、PTS社-ユニフレックス(Uniflex)(登録商標)、リアポリマーズ(Ria-Polymers)社-リアフレックス(Riaflex)(登録商標)、LG 化学(Chem)社-キーフレックス(KEYFLEX)(登録商標)、デュポン(DuPont)社-ハイトレル(Hytrel)(登録商標)などである。
【0057】
グラフト反応に不飽和有機酸の無水物を採用する場合、無水マレイン酸の使用が特に好ましい。
【0058】
グラフト反応にビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン又はメタクリルオキシアルキルアシルオキシシランを用いる場合、モノ-、ジ-若しくはトリ-アルコキシシラン、又はモノ-、ジ-若しくはトリ-アシルオキシシランを用いることができ、トリアルコキシシラン又はトリアシルオキシシランが好ましい。アルコキシ基は、さらに、置換又は非置換のアルコキシ基でありえる。好ましくはC1-8アルコキシ基であり、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基がより好ましく、メトキシ基が最も好ましい。アシルオキシ基は、C1-8アシルオキシ基でありえ、C1-3-アシルオキシ基がより好ましく、アセチルオキシ基が最も好ましい。最後に挙げた基は、グラフト後もシランのケイ素原子に結合し続ける点が好ましい。シランが上にグラフトできるように、グラフトされうるアルコキシシランが別の基を持っていて、これが二重結合又はエポキシ基を有する。この基は、例えば、置換又は非置換のビニル基、エポキシ基又はアルキルアクリル基(アルキル=C1-5アキルであり、C1-3アキルが好ましく、メチルが特に好ましい)でありえ、さらに、以下の基-(CH-O-又は(CH-のいずれかを介してシランのケイ素原子に結合することができ、ここで、n=1~5、より好ましくは1~3、さらに好ましくは3であり、n-プロピルが最も好ましい。基-(CH-O-の場合、酸素原子はシランのケイ素原子と結合する。この種の上にグラフトされるべきシランは、例えば、ワッカー(Wacker)社のジェニオシル(Geniosil)(登録商標)という商品名のものが入手可能である。
【0059】
好ましいビニルシランは、ビニルトリアルコキシシラン(特に、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン)、ビニルアルキルジアルコキシシラン(特に、ビニルジメトキシメチルシラン)、ビニルトリカルボキシシラン(特に、ビニルトリアセトキシシラン)である。これらは、以下の式(I)~(III)で示される。
【化1】
(I)
【化2】
(II)
【化3】
(III)
ここで、R2~R5は、それぞれ互いに依存せずアルキル基であり、好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0060】
好ましいメタクリルオキシアルキルアルコキシシランとメタクリルオキシアルキルアシルオキシシランとは、3-メタクリルオキシプロピル-トリアルコキシシラン又はメタクリルオキシメチル-トリアルコキシシラン(特に、3-メタクリルオキシプロピル-トリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリエトキシシラン、メタクリルオキシメチル-トリメトキシシラン、メタクリルオキシメチル-トリエトキシシラン)、3-メタクリルオキシプロピル-アルキルジアルコキシシラン又はメタクリルオキシメチル-アルキルジアルコキシシラン(特に、メタクリルオキシメチル-ジメトキシメチルシラン)、3-メタクリルオキシプロピル-トリカルボキシシラン又はメタクリルオキシメチル-トリカルボキシシラン(特に、3-メタクリルオキシプロピル-トリアセトキシシラン)である。これらは以下の式(IV)~(VI)で示される。
【化4】
(IV)
【化5】
(V)
【化6】
(VI)
ここで、R1はアルキレン基、好ましくはメチレン基又はプロピレン基であり、R2~R5は、それぞれ互いに依存せずアルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0061】
グラフトされたポリオレフィン中の不飽和有機カルボン酸の無水物の量は、有機カルボン酸の無水物で官能化されるポリオレフィンの総重量に対して、0.1重量%~5重量%の範囲であり、より好ましくは0.5重量%~2重量%の範囲である。
【0062】
グラフトされたポリオレフィン中のビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン又はメタクリルオキシアルキルアシルオキシシランの量は、ビニルアルコキシシラン、ビニルアシルオキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン又はメタクリルオキシアルキルアシルオキシシランで官能化されるポリオレフィンの総重量に対して、0.5重量%~5重量%の範囲であり、より好ましくは1重量%~4重量%の範囲である。
【0063】
本発明によれば、ポリオレフィンとして、好ましくはポリプロピレン、特に好ましくはhPPが使用される。無水マレイン酸でグラフトされたポリプロピレンは、当技術分野ではMAH-g-PPとも称される。この種のMAH-g-PPは、「スコナ(Scona)(登録商標) TPPP」という商品名で知られており、例えば、「Scona(登録商標) TPPP 2112 GA」又は「Scona(登録商標) TPPP 8112 GA」などの型で入手可能である。
【0064】
グラフトされたTPC中の不飽和有機カルボン酸の無水物の量は、有機カルボン酸の無水物で官能化されるTPCの総重量に対して、0.1重量%~5重量%の範囲、より好ましくは0.5重量%~2重量%の範囲である。
【0065】
この種のMAH-g-TPCは,「Scona(登録商標) TPHY」という商品名で知られており,例えば「Scona(登録商標) TPHY 45602 PCX」として入手可能である。
【0066】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物又は本発明による熱可塑性エラストマーにおいて、官能化ポリオレフィン又は官能化TPCとSBCとの重量比は、好ましくは15:100~140:100の範囲であり、より好ましくは20:100~98:100の範囲である。
【0067】
成分C:ガラス中空球体
【0068】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物又は本発明による熱可塑性エラストマーに使用可能なガラス中空球体は、ガラスシェルと中空コアとを有し、大気圧ガス又は減圧ガスのいずれかを充填できる。ガラスシェルは、主成分として二酸化ケイ素を含有し、かつ追加成分として酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素及び酸化リンなどを含有することができる。
【0069】
ガラス中空球体は、実質的に円形でありえるが、この形状から外れていてもよく、例えば楕円形であってもよく、及び/又は、表面にクレーター若しくはへこみがあってもよい。ガラス中空球体は、短軸と長軸との比が0.85以上であることが好ましく、0.90であることがより好ましく、0.95であることが最も好ましい。
【0070】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物の混合時には高い剪断力が作用するため、ガラス中空球体が破損することがある。この破壊は、等方性崩壊強度(英語で、collapse strength)を正しく選択することで回避することが必要である。ガラス中空球体は、等方性崩壊強度(10体積%)が55MPa以上であることが好ましく、より好ましくは69MPa以上、最も好ましくは100MPa以上である。「等方性崩壊強度(10体積%)」とは、ASTM D-3102-78に従って定義され、適量のガラス中空球体をグリセロール中に入れ、10体積%が破壊されるまで圧力を上げる。
【0071】
平均径は、好ましくは10μm~70μmの範囲であり、より好ましくは10μm~35μmの範囲である。平均径は、市販のレーザ回折式粒度測定機器を用いて測定することができる。
【0072】
ガラス中空球体は、密度が0.9g/cm以下であることが好ましく、0.6g/cm以下、0.3g/cm以上であることがより好ましい。これは、ガラス中空球体の真密度であり、かさ密度ではない。ガラス中空球体の真密度は、例えばマイクロメリティックス(Micromeritics)社のアキュピック(AccuPyc) II 1340型などのピクノメータを用いて測定する。
【0073】
本発明に基づいて使用できるガラス中空球体は、3M社から入手できる。好ましくは、本発明ではiM16K型のガラス中空球体を使用する。
【0074】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物又は本発明による熱可塑性エラストマーにおいて、ガラス中空球体とSBCとの重量比は、好ましくは30:100~250:100の範囲であり、より好ましくは50:100~150:100の範囲である。
【0075】
成分D:ポリオレフィン又はTPC(非官能化)
【0076】
ここでは、官能化されたポリオレフィン又は官能化されたTPCについて上述したものと同じポリオレフィン又はTPCを使用することができる(ただし、この場合は官能化されていない)。
【0077】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物又は本発明による熱可塑性エラストマーにおいて、ポリオレフィン又はTPC(それぞれ非官能化)の、SBCに対する重量比は、好ましくは0:100~105:100の範囲であり、より好ましくは80:100までである。
【0078】
さらに、ポリオレフィン又はTPC(それぞれ非官能化)と官能化ポリオレフィン又は官能化TPCとの合計の、SBCに対する重量比が15:100~140:100の範囲であることが好ましい。
【0079】
成分E:可塑剤
【0080】
適切な可塑剤は、基本的に当業者に知られている。非極性エラストマー(例えば、SBC)に適した可塑剤は、技術用又は薬用の鉱油又は白油、大豆油又は菜種油などの天然油、さらにアルキルスルホニルエステル、特にアルキルスルホニルフェニルエステルであり、アルキル置換基がC原子を6個以上含有する直鎖及び/又は分岐したアルキル鎖を含む。さらに、メリト酸のジ-又はトリ-アルキルエステルで、アルキル置換基が好ましくはC原子を5個以上含む直鎖及び/又は分岐アルキル鎖を含む。さらに、アルキル置換基が好ましくは直鎖及び/又は分岐アルキル鎖である、ジ-、トリ-及びそれ以上のポリカルボン酸のアルキルエステルも、対応する可塑剤として使用される。例としては、以下のようなものが挙げられる。アジピン酸-ジ-2-エチルヘキシルエステル、及びO-アセチルクエン酸トリブチルである。さらに、モノ-及び/又はポリアルキレングリコールのカルボン酸エステルも可塑剤として採用することができ、例えばエチレングリコールアジペートなどが挙げられる。本発明では、ここで技術用又は薬用の鉱油又は白油を採用することが好ましい。技術用の鉱油として、シェル(Shell)社のカテネックス(Catenex)T 145 Sを挙げることができる。
【0081】
上述の物質分類からの混合物も、適切な可塑剤として採用できる。
【0082】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物又は本発明による熱可塑性エラストマーにおいて、可塑剤とSBCとの重量比は、好ましくは50:100~300:100の範囲であり、より好ましくは100:100~250:100の範囲である。
【0083】
成分F:安定剤、助剤及び着色剤などの添加剤
【0084】
適切な添加剤としては、例えば、加工助剤、金属石鹸、脂肪酸及び脂肪酸誘導体、パラフィンワックス、微結晶ワックス、潤滑剤、離型剤、難燃剤、ヒューム抑制剤、接着促進剤、マーキング剤、鉱物、結晶化促進剤及び遅延剤、防曇剤、帯電防止剤、並びに殺生物剤及び殺菌剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
例えば、以下のような物質がプロセス助剤及び安定剤として使用できる。すなわち、オゾン防止ワックスなどの老化防止剤又はオゾン防止剤、熱安定剤や耐候性安定剤などの安定剤、酸化防止剤、抗酸化剤、紫外線安定剤、その他の光安定剤、消泡剤、潤滑剤、分散剤、離型剤、アンチブロッキング剤、ラジカル捕捉剤、金属不活性化剤、さらに、例えば、発泡助剤、発泡剤、衝撃調整剤、接着剤及び粘度調整剤などの添加剤も使用できる。
【0086】
さらに、添加剤として、カラーマスターバッチ、顔料、着色材料などの着色剤、例えば、二酸化チタン、リトフォン、酸化亜鉛、酸化鉄、ウルトラマリンブルー、酸化クロム、亜硫酸アンチモンなどを使用することができる。
【0087】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物又は本発明による熱可塑性エラストマーにおいて、すべての添加剤の合計とSBCとの重量比は、好ましくは0.1:100~50:100の範囲であり、より好ましくは0.5:100~25:100の範囲である。
【0088】
本発明による組成物の製造
【0089】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、成分A、B、C、D、E及びF(これらが組成物中に存在する場合に限り)を混合することによって製造することができる。この際、この混合は、ゴム技術及びプラスチック技術において公知の混合システム、例えばニーダー、インターナルミキサー(例えば、インターメッシュロータ又はタンジェンシャルロータ形状のもの)を用いて、さらに、混合押出機、例えば2~4本以上の軸スクリューを持つ混合押出機(例えば、二軸スクリュー押出機)などの連続混合装置中でも行うことができる。
【0090】
本発明による製造方法を実施する際には、成分B及びD(本発明で使用される場合に限り)が可塑状態に変換されるが、その過程で損傷を受けないように、混合温度を十分に高くする点に注意することが重要である。これは、(本発明で採用される場合に限り)成分B及びDの最高融解温度又は軟化温度を上回る温度が選択される場合に確保される。同時に、適切なエネルギー入力(これは、押出機の回転数と処理量とを介して決められる)を確保することにも注意を払わなければならない(実施例を参照)。
【0091】
特に好ましくは、成分(組成物中に存在する場合に限り)の混合は、150℃~240℃、好ましくは180℃~220℃の範囲の温度で行われる。
【0092】
本願で使用されている「umfassen(含む)」、「enthalten(含有する)」及び「aufweisen(有する)」という用語は、これらの用語が使用されているいずれの場合においても、「bestehen aus(からなる)」という用語を含むことも意図されており、これらの実施形態も本願で開示されている。
【実施例
【0093】
測定方法及び定義
【0094】
密度はDIN EN ISO 1183-1に基づいて測定される。
【0095】
ショア硬度の測定は、DIN EN ISO 868及びDIN ISO 7619-1に基づいて行われる。
【0096】
引張強さと破断伸びの測定は、DIN 53504/ISO 37に基づいて行われる。ISO 37とは異なり、S2バーは200mm/分の送り速度で試験される。
【0097】
圧縮永久歪みはDIN ISO 815-1,方法Aに基づいて測定される。
【0098】
引裂抵抗はISO34-1に基づいて測定される。
【0099】
熱可塑性エラストマー組成物のPA6上への接着性は、VDI2019に基づいて測定される。PA6は、ニリット・プラスチックス(Nilit Plastics)社のフリアニル(Frianyl)B3 V2 NC1102という製品名のものを使用する。熱可塑性エラストマー組成物のポリプロピレン(PP)(型:Moplen(登録商標) HP501L、メーカー:バセル・ポリオレフィンズ(Basell Polyolefins))への接着性も、VDI2019に基づいて測定する。
【0100】
メルトフローインデックスは、DIN EN ISO 1133に基づいて測定する。
【0101】
押出機及び射出成形のパラメータ
【0102】
本発明の熱可塑性エラストマーは、二軸スクリュー押出機(48L/D)上での連続プロセスで製造される。ガラス中空球体はサイドフィーダーを介して添加される。押出機の回転数は500回/分、処理量は20kg/時間である。設定温度曲線は170~190℃である。押し出された物質は、後の時点で行われる射出成形又は押し出し加工のために粒状にされる。
【0103】
試験片は、180~200℃の温度曲線を持つ射出成形方法によって製造される。
【0104】
実施形態
【0105】
表1は、実施例及び比較例で採用した成分について使用した略語を示す。
【表1】
【0106】
実施例及び比較例
(本発明による及び本発明によらない)熱可塑性エラストマー組成物及びエラストマーの製造
【0107】
表3及び表4からわかる構成成分を有する熱可塑性エラストマーは、上述の製造変形例に従って製造される。表2は、採用した成分のメーカーと型とを示している。表5及び表6は、機械的な測定値及び加工性に関する値を示している。
【表2】
【0108】
ポリオレフィンB2の製造
【0109】
官能化されたポリオレフィンB2は、ポリプロピレンのMoplen(登録商標)HP501LをシランであるGeniosil(登録商標) GF 31でグラフトすることで製造される。このために、0.06重量%のペロキサン(Peroxan)(登録商標)HXY-85W(白油中85%)を、5重量%の液状のGeniosil GF 31に溶解し、室温で二軸スクリュー押出機中で、Moplen(登録商標)HP501Lに添加する。重量%の記載は、採用されたポリプロピレンの量に関する。混合は、混合ゾーンで最初に160℃までゆっくりと加熱しながら行われる。その後、200℃まで温度を上げ、ラジカルグラフトが行われる。揮発性成分は真空脱気で除去される。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
図1
図2
図3