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特許7317144マッシブMIMO通信のための方法、基地局、システム及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】マッシブMIMO通信のための方法、基地局、システム及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20230721BHJP
   H04B 7/0413 20170101ALI20230721BHJP
【FI】
H04B7/06 956
H04B7/0413 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021568453
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 JP2020015756
(87)【国際公開番号】W WO2020250556
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】19305758.5
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】リ、キャンルイ
(72)【発明者】
【氏名】グレッセ、ニコラ
【審査官】玉田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-535093(JP,A)
【文献】特表2011-526429(JP,A)
【文献】特表2021-516010(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0107977(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0181183(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局(BS)によって、特権的チャネル方向を有する送信ビームセット(Φ)を形成することと、
前記特権的チャネル方向外へのチャネル方向変化に適応するように、前記送信ビームセットを最適化するための追加のビームセット(Θ)を設計することと
を含み、
前記送信ビームセットを形成することは、前記基地局によって、初期ビームセットΦ(0)を前記送信ビームセット(Φ)に更新することを含み、
前記送信ビームセット(Φ)を形成することは、
前記基地局によって、前記初期ビームセットΦ(0)内のビームを用いてビームフォーミングされた基準信号を少なくとも1つのユーザ(UE)に送信することと、
前記少なくとも1つのユーザによって、前記初期ビームセットΦ(0)の品質メトリック
【数1】
を計算し、前記基地局に報告することと、
前記基地局によって、少なくとも1つのユーザのための前記特権的チャネル方向を有する前記送信ビームセット(Φ)を形成するように、前記基地局に対する前記初期ビームセットの前記品質メトリックに基づいて前記初期ビームセットをマージすることと
を含み、
前記追加のビームセットを設計することは、
前記基地局によって、前記特権的チャネル方向を有する前記送信ビームセット(Φ)内のビームを用いてビームフォーミングされた基準信号を前記少なくとも1つのユーザに送信することと、
前記少なくとも1つのユーザによって、前記送信ビームセット(Φ)の品質メトリック
【数2】
を計算し、前記基地局に報告することと、
前記基地局によって、前記初期ビームセットΦ(0)、前記送信ビームセットの前記品質メトリック
【数3】
、及び設計基準q(・)に基づいて、前記送信ビームセットを最適化するための前記追加のビームセット(Θ)を設計することとを含み、
前記設計基準q(・)は、前記特権的チャネル方向を有するビームの精緻化を実現するための追加のビームを定義するための設計基準である、マッシブMIMO通信の方法。
【請求項2】
前記送信ビームセット(Φ)を形成することは、初期ビームセットΦ(0)内のビームの線形ビームマージを含む
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記追加のビームセットは、チャネル変動又はユーザモビリティに適応する前記送信ビームセット(Φ)内の前記特権的チャネル方向を精緻化するように設計される
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記追加のビームセット(Θ)は、新たなチャネル方向又は新たな参加ユーザを検出するように設計される
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
無線周波数チェーンを形成する複数のアンテナを備えるとともに、特権的チャネル方向を有する送信ビームセット(Φ)を形成及び送信するように適応された基地局であって、前記基地局は、前記特権的チャネル方向外へのチャネル方向変化に適応するように、送信ビームを最適化するための追加のビームセットを設計するように構成され、
前記追加のビームセットの設計は、前記特権的チャネル方向を有するビームの精緻化を実現するための追加のビームを定義するための設計基準に基づいている基地局。
【請求項6】
無線周波数チェーンを形成する複数のアンテナを備えるとともに、特権的チャネル方向を有する送信ビームセット(Φ)を形成及び送信するように適応された基地局と、
一組の受信機(RX)であって、それぞれが所与のユーザ(UE)に関連付けられるとともに、前記送信ビームセット(Φ)を受信するように適応される、一組の受信機(RX)と、
を備え、前記基地局は、前記特権的チャネル方向外へのチャネル方向変化に適応するように、前記送信ビームセットを最適化するための追加のビームセットを設計するように構成され、
前記追加のビームセットの設計は、前記特権的チャネル方向を有するビームの精緻化を実現するための追加のビームを定義するための設計基準に基づいているマッシブMIMO通信システム。
【請求項7】
プロセッサによって実行されるプログラムコードを含むコンピュータプログラムであって、前記プログラムコードは、前記プロセッサによって実行されると、請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の方法の実行のために適応されるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッシブMIMO(多入力多出力)通信の方法及びシステムに関する。詳細には、本発明は、ファクトリオートメーションマルチキャストシステム等のマルチキャストシステムのためのビームセット設計に関し、このビームセット設計は、複数のユーザへのダウンリンクブロードキャストシステムのための基地局側におけるビーム管理を指す。
【背景技術】
【0002】
電気通信ネットワークの従前の世代において、ブロードキャストサービスを検討する場合、カバレッジエリアは、所与のサービス品質から定義された。これは、DVB規格の場合に当てはまり、この規格では、目標SNRが定義され、この目標を超えるSNRをもたらす無線リンク状態を経験しているユーザがビデオストリームを受信することができる一方、他のユーザはこれを受信することができない。この手法は、基地局が無線状態、より一般的には各ユーザによって観測されるチャネルに関する知識を有する場合、スペクトル効率の観点で効率的ではない。
【0003】
6GHz超の帯域で動作する次世代通信システムでは、アクティブアンテナアレイの出現に伴い、より高度化されたビームを生成することができる。高い減衰を補償するとともに遠隔にいる隔絶されたユーザのユーザエクスペリエンスを保証するために、より幅狭でかつより指向性が高いビームを生成することができる。
【0004】
合理的な実施の複雑度で高いビームフォーミング利得を達成するために、ハイブリッドビームフォーミングアーキテクチャが頻繁に使用される。各パネル又はアンテナアレイ上のアナログビームは、移相器、スイッチ又はレンズを通して適応される。ユーザは、アナログビームのセットを測定し、基地局に各ユーザへビームを割り当てさせるために、関連付けられたメトリックを基地局に報告する。基地局側において、複数のビームの構成は、基地局が送信することができる複数のいわゆる「ビームフォーミングされた基準信号」によるものである。各基準信号は、特定の方向を指向する関連付けられたビームを用いてビームフォーミングされる。各ビームフォーミングされた基準信号を受信すると、ユーザは、関連付けられたビーム品質メトリックを有する複数の好ましい送信ビームの単数又は複数の最適送信ビームインデックスを基地局に報告することができる。ビーム報告を用いて、基地局は、サービングビームを選択し、ユーザのための送信ビームのインデックスを示すことができる。ビームフォーミングされた基準信号は、周期的又は非周期的に送信することができる。システム負荷及び機器能力に依存して、より小さい次元の粗いビームフォーミングされた基準信号のセット又はより多くのビーム方向を有するより正確なビームフォーミングされた基準信号のセットを用いるカバレッジにわたる掃引が可能である。より小さい角度エリアをカバーする少数の送信ビームにわたる掃引を構成するか、又は、より幅広の角度エリア及びより細かいビーム掃引を実行することも可能である。
【0005】
複数の好ましいビームを1つのユーザに対して構成することができる場合、複数の主要経路に対応するビーム方向を提示することができる。しかしながら、ユーザごとに単一のビームのみが存在する場合、選択されたビームは、ユーザチャネルの最も強度が高い経路の方向しか表すことができず、これは、一見して、チャネルをプリコーディングするための最適なビームフォーミング方向ではない。最適方向は、ビームwがユーザチャネルhkの方向にある場合にw及びそのチャネルの内積の絶対値が最大化されるので、ユーザチャネルhkの方向である。
【0006】
ビームフォーミングに使用されるフェーズドアレイが容易に構成可能であること(これは、ビームベクトルのエントリごとに位相を容易に調節することができることを示す)を検討すると、制限ビームセット内の1つのビーム方向を選択するのではなく、より精密な方向を指向しているビームを生成することができる。
【0007】
構成可能ビームセット及び制限ビームセットは、それぞれの利点及び不利点を有する。例えば、構成可能ビームの利点は、より精密なビーム方向及びより良好なマルチキャストレート性能を有することであり、不利点は、そのデバイス価格が極めて高額であり、複雑なビームフォーミング設計及び大きいフィードバックオーバヘッドを必要とすることである。制限ビームセットの利点は、そのデバイス価格が相対的に低く、低複雑度ビームフォーミング設計及び低フィードバックオーバヘッドが必要であることであり、制限ビームセットの不利点は、構成可能ビームと比較してより不良なマルチキャストレート性能で少数のビーム方向を提供することしかできないことである。
【0008】
上述の利点及び短所に起因して、特許文献1は、性能と複雑度との間のトレードオフであるビームフォーミング設計アルゴリズムを導入した。特許文献1は、現在のビーム候補セット内の2つの既存のビームの線形結合によって新たなビームフォーミング方向を生成することができることを提案している。
【0009】
そのようなビームマージ手順は、「今の(living)」ビームセットをもたらすことになる。2つのビームがマージされて新たなビームが生成されると、2つの元のビームはビームセットから削除されることになり、ビームセットにその新たなビームが追加されることになる。したがって、ビームセットのカーディナリティ(cardinality)は削減されることになり、現在のビームセット内のビームは現在のユーザのチャネル状態が与えられるとマルチキャストレートを最大化するように一層適応されることになる。通常、初期ビームセットは、カバレッジを確実にするように等方的に分布している。ビームマージ手順を用いると、初期ビームセット内のビーム方向の分布が変化することになる。最後には、ビームセットは、所与のマルチキャスト実現形態に専用のビーム方向を含む。
【0010】
しかしながら、現実のチャネルは、多くの場合、動的である。実際、固定環境の場合、基地局は、ユーザのサービングを可能にするより効率的な方向にエネルギーを集束することになる。これは、見通し線外の事例において壁又は物体上で跳ね返ってユーザに到達することを含むことができる。しかしながら、ユーザモビリティ又はチャネル変動に起因して、マージ後のビームセット内のビーム方向は、依然としてユーザに対して適応することができない。
【0011】
加えて、新たなユーザが、基地局のカバレッジ内で移動又は出現し、この基地局にアタッチされる可能性がある。新たな反射物体の存在下で新たな経路が利用可能であり得る。それゆえ、新たな機会を探すために、最も関連性があるものと既に識別された方向以外の他の方向をモニタリングすることが関心事である。この場合、マージ後の現在のビームセットは、新たなビーム方向が可能ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】欧州特許出願第18305635号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、この状況を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これに関して、本発明は、
基地局によって、特権的チャネル方向(privileged channel direction)を有する送信ビームセットを形成することと、
チャネル方向変化に適応するように、例えば、特権的チャネル方向外へのチャネル方向変化を検出するように、送信ビームセットを最適化するための追加のビームセットを設計することであって、このステップは、チャネル方向が変化するときにいつでも繰り返すことができることと、
を含む、マッシブMIMO通信の方法を提案する。
【0015】
したがって、ユーザモビリティ又はチャネル変動に対して適応されるようにビームを精緻化するとともに、基地局のカバレッジ内の新たなユーザの移動又は出現を検出することが可能である。
【0016】
一実施の形態では、送信ビームセットを形成することは、基地局によって、通常特権的チャネル方向なしで空間全体をカバーする初期ビームセットを送信ビームセットに更新することを含み、この送信ビームセットは、現在の所与の受信機ロケーションでのマルチキャスト性能を最適化する特権的チャネル方向を有する。
【0017】
これに関して、より良好なマルチキャスト性能のためにより正確なチャネル方向を得ることができる。
【0018】
特に、送信ビームセットを形成することは、
基地局によって、初期ビームセット内のビームを用いてビームフォーミングされた基準信号を少なくとも1つのユーザに送信することと、
少なくとも1つのユーザによって、初期ビームセットの品質メトリック
【数1】
を計算し、基地局に報告することと、
基地局によって、少なくとも1つのユーザのための特権的チャネル方向を有する送信ビームセットを形成するように、基地局に対する初期ビームセットの品質メトリックに基づいて初期ビームセットをマージすることと、
を含む。
【0019】
加えて、追加のビームセットを設計することは、
基地局によって、特権的チャネル方向を有する送信ビームセット内のビームを用いてビームフォーミングされた基準信号を少なくとも1つのユーザに送信することと、
少なくとも1つのユーザによって、送信ビームセットの品質メトリック
【数2】
を計算し、基地局に報告することと、
基地局によって、初期ビームセット、送信ビームセットの品質メトリック
【数3】
、及び任意の設計基準q(・)に基づいて、送信ビームセットを最適化するための追加のビームセットを設計することと、
を含む。
【0020】
この場合、送信ビームセットを最適化するように追加のビームセットが設計される。
【0021】
別の実施の形態では、送信ビームセットを形成することは、初期ビームセット内のビームの線形ビームマージを含む。したがって、複雑なマージステップを使用するのではなく、いくつかの単純なマージアルゴリズムを適応させることができる。
【0022】
特に、追加のビームセットは、チャネル変動又はユーザモビリティの場合に送信ビームセット内の特権的チャネル方向を精緻化するように設計される。
【0023】
代替的に、追加のビームセットは、新たなチャネル方向又は新たな参加ユーザを検出するように設計される。
【0024】
一実施の形態では、送信ビームセットを形成することは、初期ビームセット内のビームの非線形ビームマージを含む。したがって、方法は、線形ビームマージアルゴリズムが適用可能ではないより複雑な状況に対して適応させることができる。
【0025】
特に、追加のビームセットは、新たなチャネル方向又は新たな参加ユーザを検出するように設計される。
【0026】
代替的に、追加のビームセット(Θ)は、機械学習によって得られる。
【0027】
別の実施の形態では、追加のビームセットは、送信ビームセットに無関係であり、それにより、方法は、より柔軟な方法で適応させることができる。
【0028】
別の実施の形態では、追加のビームセットは、送信ビームセットを階層的に精緻化したものである。
【0029】
本発明はまた、無線周波数チェーンを形成する複数のアンテナを備えるとともに、特権的チャネル方向を有する送信ビームセットを形成及び送信するように適応された基地局であって、基地局は、チャネル方向変化に適応するように、例えば、特権的チャネル方向外へのチャネル方向変化を検出するように、送信ビームを最適化するための追加のビームセットを設計するように構成される、基地局を提案する。
【0030】
したがって、同様に、そのような基地局を用いると、ユーザモビリティ又はチャネル変動に対して適応されるようにビームを精緻化するとともに、基地局のカバレッジ内の新たなユーザの移動又は出現を検出することが可能である。
【0031】
加えて、本発明は、マッシブMIMO通信システムを更に提案し、このシステムは、
無線周波数チェーンを形成する複数のアンテナを備えるとともに、特権的チャネル方向を有する送信ビームセットを形成及び送信するように適応された基地局と、
一組の受信機であって、それぞれが所与のユーザに関連付けられるとともに、送信ビームセットを受信するように適応される、一組の受信機と、
を備え、
基地局は、チャネル方向変化に適応するように、例えば、特権的チャネル方向外へのチャネル方向変化を検出するように、送信ビームセットを最適化するための追加のビームセットを設計するように構成される。
【0032】
さらに、本発明は、プロセッサによって実行されるプログラムコードを含むコンピュータプログラムも提案し、プログラムコードは、プロセッサによって実行されると、上述した方法のうちのいずれかの実行のために適応される。コンピュータプログラムの一般的なアルゴリズムのフローチャートを図4によって一例として表すことができる。本発明は、そのようなコンピュータプログラムの命令を記憶する非一時的コンピュータ記憶媒体も目的とする。
【0033】
本発明により、チャネル変動の場合に特権的データ送信方向のための精緻化を可能にするとともに、ビームセット内の既存のビームによって観測することができないチャネル伝播の変化を追跡するように、追加のビームセットが導入される。その上、追加のビームセットは、ビーム掃引に起因したシステムオーバヘッドと、データ送信に使用されるビームを通して送信された基準信号を通して観測することができないチャネル伝播の変化を発見又は追跡する能力との間のトレードオフを達成するように最適に設計される。
【0034】
本発明の他の特徴及び利点が、添付の図面を参照して、以下の説明において明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明によるマルチキャストシステム(ビームフォーミング前)を示す図である。
図2】基地局内の1つのRFチェーンとともに移相器を示す図である。
図3】本発明によるマルチキャストシステム(ビームフォーミング/マージ後)を示す図である。
図4】本発明による例示的な方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1を参照すると、図1は、本発明による6GHz超の帯域で動作するマルチキャストシステムを示しており、このマルチキャストシステムは、
アクティブアンテナアレイを備えるとともに、6GHz超の帯域で高度化ビーム1~11を形成し、これらを受信/送信するように適応される基地局BS、
を備える。
【0037】
特に、例えば図2に示されるように、基地局BSは、Nt個のアンテナ及び1つのRFチェーンを備え、限定されないが、移相器、スイッチ及び光学レンズを含む任意のデバイスによってビームフォーミングを実施することができる。接続アーキテクチャは、全てのアンテナ要素に完全に接続することもできるし、アンテナ要素の任意のサブセットに部分的に接続することもできる。一般性を失うことなく、本明細書によって、1つのRFチェーンを有する完全に接続された移相器のアーキテクチャを検討する。他のデバイス又はアーキテクチャへの一般化は、当業者によって既知である。
【0038】
それぞれが所与のユーザUEに関連付けられた一組のK個の受信機RXが、1つの受信アンテナを備える。受信機RXは、基地局BSからビームを受信するように適応される。いくつかの受信アンテナへの一般化は、当業者によって既知である。
【0039】
基地局BSは、初期送信ビームΦ(0)セットを形成し、これを所定のエリア内に送信する。例えば図1では、11個の送信ビームを含む初期ビームセットが、180度角度エリア内で分散され、それぞれ受信機RX1、RX2、及びRX3を備える3つのユーザUE1、UE2、及びUE3、例えば、基地局BSにワイヤレスで接続することができる3つのロボットアームが上記角度エリア内に位置し、ビームセットを受信するように適応されている。これらのユーザは、初期的には基地局BSに対して静止している。
【0040】
図4を参照すると、ステップS1の初期フェーズにおいて、ビーム掃引中、基地局BSは、初期送信ビームセット
【数4】
に属するビームを用いてビームフォーミングされた基準信号RSを送信する。
【0041】
各ユーザUEは、ステップS2に示されるように、伝播チャネルを通過したビームフォーミングされた基準信号RSを受信することになり、各ユーザUEは、異なるビームを用いてプリコーディングされるチャネルを推定し、その品質メトリック
【数5】
を基地局BSにフィードバックすることができる。
【0042】
その後、ステップS3において、一組の新たなビームΦが、当該技術分野におけるビームフォーミング設計アルゴリズム、例えば、2つのビームコードワードの線形結合を記述している特許文献1におけるアルゴリズムによって、初期送信ビームセットΦ(0)からマージされる。代替的に、非線形手法でビームをマージすることも可能であり、この手法は、機械学習技術によって得られる。
【0043】
ここで、図3に示すように、新たなビームセットΦ内のマージビーム1’、2’及び3’が、現在の3つのユーザUE1、UE2、及びUE3の構成及び送信シナリオのための特権的方向を有する。特に、基地局は、見通し線外の事例においてビームが壁又は反射物体O上で跳ね返ってユーザに到達する状況を考慮して、ユーザのサービングを可能にするより効率的な方向にエネルギーを集束させることができる。したがって、初期送信ビームセットΦ(0)のビームマージ後、現在のユーザ位置及び対象サービス、例えばユニキャスト又はマルチキャストに対応する特権的方向において可能な限り正確に送信エネルギーを集中させるために、新たなビーム1’、2’、及び3’の新たな方向が作成される。
【0044】
ユーザ及び/又は反射物体が移動しているとき、現在のビームはもはやユーザを標的としていない可能性があり、これにより信号減衰又は信号損失がもたらされる。その場合、第2のフェーズにおいて、ビームの経路方向を変更し、ビームが実質的かつ継続的にユーザを標的とするように、移動を検出及び追跡する。
【0045】
ステップS4の第2のフェーズにおいて、基地局BSは、ビームセットΦに属するビームを用いてビームフォーミングされた基準信号RSを送信する。
【0046】
各ユーザUEは、伝播チャネルを通過したビームフォーミングされた基準信号RSを受信し、各ユーザUEは、異なるビームを用いてプリコーディングされるチャネルを推定し、その品質メトリックを基地局BSにフィードバックすることができる。
【0047】
その後、ステップS5においてチャネル伝播の変化又は新たなユーザUEが検出されたことに起因してビーム障害が存在する場合、以下で詳述されるS6の追加のビームセットの設計ステップが開始されることになる。ビーム障害が存在しない場合、第2のフェーズが繰り返される。
【0048】
ステップS6において、チャネル方向変化、特に以前の特権的チャネル方向外への変化に適応するように、以前のビームセットΦ、初期ビームセットΦ(0)、報告されたビーム品質メトリック及び任意の設計基準に基づいて、追加のビームセット
【数6】
が最適化されることになる。
【0049】
1つの実施形態によれば、ビームは、線形ビームマージ及び非線形ビームマージによってマージして生成することができる。
【0050】
線形ビームマージの場合、これは、基本的には特許文献1によって提供されており、そこでは、2つのビームコードワードの線形結合が使用されており、特許文献1におけるアルゴリズムは、完全なチャネル知識を要求する。
【0051】
非線形ビームマージの場合、例えば、新たなビームは、位相領域におけるビームの結合によって定式化される。これは、ビームベクトルが以下の形式を有することができることを示す。
【数7】
【0052】
位相領域結合を用いると、w=v(Φ)は以下のように読み替えられる。
【数8】
【0053】
初期ビームセットΦ(0)に基づいてオフラインで実行される深層学習ベース手順を使用して、非線形ビーム結合w=v(Φ)に基づいた新たなビームw及び報告されたビーム品質メトリック
【数9】
を使用してマルチキャストレートの推定関数を得ることができる。
【0054】
別の実施形態によれば、送信ビームφ又はθを使用してユーザUE kにおいて受信されたビームフォーミングされた基準信号RSは、以下のように示すことができる。
【数10】
【0055】
各送信ビーム
【数11】
は、Nt次元ベクトルである。ここで、sは、RFチェーンにおけるスカラー送信パイロット信号であり、
【数12】
は、それぞれビームφ、θが使用される場合のユーザkについてのスカラー雑音確率変数である。スカラー
【数13】
は、それぞれビームφ、θが使用される場合のユーザkについての受信信号である。
【0056】
ビームフォーミングされた基準信号RSの信号強度
【数14】
(ここで、φ∈Φ、θ∈Θ)を有するユーザUE kにおいて、ユーザUEは、
【数15】
と記述することができるビームフォーミングされたチャネルの何らかの品質メトリックを推定し、これを基地局BSに報告することができる。関数g(・)は、信号強度
【数16】
の知識を有するユーザUE側における任意の可能な処理を表す。g(・)関数の1つの可能な実施形態は、量子化及び基地局BSへの上記情報のフィードバックとともにプリコーディングされたチャネル
【数17】
(又は
【数18】
)を復元するためのビームフォーミングされたチャネルの推定である。
【0057】
追加のビームセットΘは、以前のビームセットΦ、初期ビームセットΦ(0)、報告されたビーム品質メトリック
【数19】
、及び任意の設計基準q(・)、例えば、特権的ビーム方向の精緻化を保証すること、及びビーム掃引オーバヘッドを相対的に低く維持しながらカバレッジを改善すること、に基づいて最適化することができる。この問題は、以下のように定式化することができる。
【数20】
【0058】
ここで、それぞれ線形ビームマージの場合及び非線形ビームマージの場合の追加のビームの設計の詳細が以下で論述される。
【0059】
線形ビームマージの場合の追加のビームの設計について、以下の追加のビームセットを導入する2つの主な目標が存在する。
・チャネル変動又はユーザモビリティの場合にビームセットΦ内の特権的チャネル方向を精緻化するのを支援するビームを導入する。これらのビームの和集合をΘと示すことができる。
・新たなチャネル経路又は新たな参加ユーザを検出するのを支援するビームを導入する。これらのビームの和集合をΘと示すことができる。
【0060】
ビームマージ手順がビームセット内のビームの線形結合である場合、ビームセットΘのカーディナリティを、ダウンリンクDL及びアップリンクULにおける送信の性質に従って判断することができる。
【0061】
例えば、ユーザごとのユニキャストビームを決定するための以下のアップリンクULビーム掃引手順を検討すると、ユーザごとの好ましいビームを決定するためのダウンリンクDLビーム掃引も同様の方法で機能することになる。初期ビームセットΦ(0)は、図1に示すように、11個のビームを含む。ユーザのそれぞれについて、ビーム掃引後、好ましいアップリンクULビームがテーブル内に示される。
【0062】
これがTDDシステムであることを検討すると、チャネル相互性(channel reciprocity)が存在する。したがって、好ましいダウンリンクDLユニキャストビームは、ユーザごとのアップリンクULユニキャストビームと同じである。ダウンリンクDLにおいて、線形ビームマージ後、図3に示されるようなビームフォーミングを有することができる。
【0063】
マージ後のビームセットは、3のカーディナリティ、すなわち、ビーム1’、2’、及び3’を有する。ビーム1’は、初期ビームセット内のビーム2及び4の線形結合であり、ビーム2’は、初期ビームセット内のビーム3、5、6の線形結合である。ビーム3’は、初期ビームセット内のビーム8である。マージ後のビームセットは、
【数21】
と記述することができる。列がセットΦ内の各ビームによって構築される行列を示すのに表記
【数22】
を使用する。
【0064】
全てのユーザについてのアップリンクULの好ましいビームセットをΦ(UL)と表記する(|Φ(UL)|=N(例えば、N=6))ことにすると、特権的ビーム方向の精緻化のためのビームセットΘのカーディナリティは、
【数23】
である。また、ビームセットΘ内の各ビームは、以下の方法で選択されるべきである。
【数24】
【0065】
このようにして、セットΦ及びΘ内のビームの線形結合である任意の新たなビーム方向は、セットΦ(UL)の線形結合である。チャネル変動又は短持続時間/低速ユーザモビリティの場合のように、ユーザごとの主要経路が変化していない、すなわち、好ましいビームが依然としてΦ(UL)であることを仮定することができる。したがって、マージビームセットΦとともにΘを導入することによって、ユーザごとの主要経路が変化しない限り、チャネル変動及びモビリティの場合にデータ送信の特権的方向を精緻化することができる。
【0066】
図3の例では、|Θ|=3であり、可能なビームセットは、
【数25】
である。
【0067】
ここで、新たな経路を検出するためにΘを設計する。カーディナリティは、|Θ|=Noverhead-|Θ|である。Noverheadは、ビーム掃引に許容される追加のビームセットのサイズの最大サイズを示すシステムパラメータである。各ビームθ∈Θは、以下を満たすべきである。
【数26】
【0068】
ここで、εは、閾値定数である。この不等式は、新たなビーム方向が、マージ後ビームセットΦ内で捕捉される特権的方向ではないことを保証する。
【0069】
したがって、新たな経路方向についてのビームθ∈Θを設計するために、まず、Φ、Φ(0)及び報告されたビーム品質メトリック
【数27】
に基づいて
【数28】
を推定する関数を得る。
【数29】
【0070】
この関数q(・)は、
【数30】
に基づいてチャネル推定器を構築することによって定式化することができる。
【0071】
ビームマージが線形結合である場合、
【数31】
を有することができる。ビーム掃引のための初期ビームセットがセル全体のカバレッジを目標としているので、したがって、span(Θ)⊂span(Φ(0))が保証される。したがって、ビームθ∈Θは、以下を満たすべきである。
【数32】
【0072】
ビームセットΘを生成する可能な方法は、以下の擬似コードである。
【数33】
While |Θ|≦Noverhead-|Θ
ランダムベクトル
【数34】
を生成する
【数35】
であるか否かをテストする。真である場合、Θ=Θ∪{θ}、そうではない場合、継続する
End while
【0073】
非線形ビームマージの場合の追加のビームの設計について、チャネル変動の場合に特権的方向を精緻化するのを支援することができるビームセットΘを発見するのは困難である。それにもかかわらず、追加のビームセットΘ及びマージ後ビームセットΦによって張られる空間の間に単純な関係は存在しない。しかしながら、セットΘのカーディナリティが|Θ|=Nとして既知である(例えば、ビーム掃引オーバヘッドに従って事前定義される)場合、依然として、新たな経路検出のためのより効率的な追加のビームセットΘを設計することができる。
【0074】
新たな経路検出のために、ビームセットΦ内の方向と重複する追加のビーム方向を導入する必要がないことが依然として当てはまる。関数fαは、非線形結合のための何らかのパラメータα(このパラメータベクトルαは、上記で図示されたように位相領域結合係数ciとすることができる)を有する任意の非線形ビームマージ関数を表すものとする。これは、θ=fα(Φ(0))と記述することができ、追加のビーム方向を、初期ビームセットの非線形結合によって構築することができることを示す。追加のビーム方向が、線形結合のように、ビームセットΦ内の方向であるべきことを更に示すために、Φ、Φ(0)及び報告されたビーム品質メトリック
【数36】
に基づいて、
【数37】
を推定する関数を得ることができる。
【数38】
【0075】
この関数q(・)は、
【数39】
に基づいてチャネル推定器を構築することによって定式化することができる。この関数を導出するために機械学習ベース方法を使用することが可能である。
【0076】
ビームセットΘを生成する可能な方法は、以下の擬似コードである。
【数40】
While |Θ|≦N
ランダムベクトルαを生成する、新たな経路方向の追加のビームθ=fα(Φ(0))を生成する
【数41】
であるか否かをテストする。真である場合、Θ=Θ∪{θ}、そうではない場合、継続する
End while
【0077】
上記に鑑みて、本発明は、ビーム掃引に起因したシステムオーバヘッドと、データ送信に使用される現在のビームを通して送信された基準信号を通して観測することができないチャネル伝播の変化を発見又は追跡する能力との間のトレードオフを達成する追加のビーム掃引コードブックを決定するシステム及び方法を提案する。
【0078】
ミリメートル波マッシブMIMOのためのハイブリッドビームフォーミングにおいて、アナログビームは広帯域である。ビーム掃引手順は、チャネルのサウンディングを可能にし、一般に、事前定義されたコードブックを介して実行される。この手順は、モニタリングすべきビームの数が大きい場合、システムに対して大きい影響を有する可能性がある。
【0079】
ビームマージによって、これらの送信ビームは、その場合、チャネルサウンディングフィードバックから最適化されて、現在の端末位置及び対象サービス(例えば、ユニキャスト又はマルチキャスト)に対応する空間のいくつかの特権的方向内で可能な限り正確に送信エネルギーが集中される。
【0080】
ダウンリンク又はアップリンクにおいて送信されるデータは、基準シンボルを搬送し、オーバヘッドの観点で低コストでのこれらの特権的方向におけるチャネルサウンディングが可能になる(1フレーム内のパイロットシンボルの割合は、データに対して小さい)。しかしながら、チャネル伝播の変化の場合、それらのビームは、データ送信の特権的方向を精緻化するか、又は新たな方向を識別するのには不十分である。それゆえ、直接基準信号測定及びフィードバックを介して得ることができない知識を提供する追加のビーム掃引コードワードを設計することが関心事である。
【0081】
したがって、本発明は、以下のようになるようにビーム掃引コードブックを設計することを提案する。
【0082】
第1のサブコードブックが現在の送信ビームの精緻化を可能にする。この数は、DL及びULにおける送信の性質に従って最小化される。
【0083】
掃引に利用可能であるコードワードの残りの数に従って、データ送信のビームを定義するのに使用されるコードブックに対する補足である第2のコードブックが選択される。これにより、特権的方向外のチャネルの変化を検出するようにサウンディング能力を最大化することが可能になる。
【0084】
加えて、当業者に既知であるように、本発明による、上記で説明された上述の例示のアーキテクチャは、多くの方法、例えば、プロセッサによる実行のためのプログラム命令、ソフトウェアモジュール、マイクロコード、コンピュータ可読媒体上のコンピュータプログラム製品、論理回路、特定用途向け集積回路、ファームウェア等において実施することができる。本発明の実施形態は、完全にハードウェアの実施形態の形式、完全にソフトウェアの実施形態の形式、又はハードウェア要素及びソフトウェア要素の双方を含む実施形態の形式を取ることができる。好ましい実施形態では、本発明は、ソフトウェアにおいて実施され、ソフトウェアは、ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を含むが、これらに限定されない。
【0085】
さらに、本発明の実施形態は、コンピュータ、処理デバイス、又は任意の命令実行システムによる、又はこれらに関連した使用のためのプログラムコードを提供するコンピュータ使用可能又はコンピュータ可読媒体からアクセス可能なコンピュータプログラム製品の形式を取ることができる。本明細書において、コンピュータ使用可能又はコンピュータ可読媒体は、命令実行システム、装置又はデバイスによる、又はこれらに関連した使用のためのプログラムを収容、記憶、通信、又は送達することができる任意の装置とすることができる。媒体は、電子、磁気、光学、又は半導体システム(又は装置若しくはデバイス)とすることができる。コンピュータ可読媒体の例として、半導体又はソリッドステートメモリ、磁気テープ、取り外し可能コンピュータディスケット、RAM、リードオンリーメモリ(ROM)、リジッド磁気ディスク、光学ディスク等が挙げられるが、これらに限定されない。光学ディスクの現在の例として、コンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD-ROM)、コンパクトディスクリード/ライト(CD-R/W)及びDVDが挙げられる。
図1
図2
図3
図4