IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニング インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許-表面強度が高いガラス 図1
  • 特許-表面強度が高いガラス 図2
  • 特許-表面強度が高いガラス 図3
  • 特許-表面強度が高いガラス 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】表面強度が高いガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/083 20060101AFI20230721BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20230721BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230721BHJP
   C03C 3/097 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
C03C3/083
C03C21/00 101
G09F9/00 302
C03C3/097
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022001625
(22)【出願日】2022-01-07
(62)【分割の表示】P 2019072620の分割
【原出願日】2016-06-24
(65)【公開番号】P2022058540
(43)【公開日】2022-04-12
【審査請求日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】62/184,933
(32)【優先日】2015-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/266,417
(32)【優先日】2015-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー マイケル グロス
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-147734(JP,A)
【文献】特開2008-115072(JP,A)
【文献】特開2013-121910(JP,A)
【文献】特開2014-001094(JP,A)
【文献】特表2013-544227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品であって、
厚さt、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の表面から層の深さ(DOL)まで延在する圧縮応力層、および最大引張応力を有する中央領域を備え、該中央領域はDOLから延在し、
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、B23を含まず、
少なくとも58モル%のSiO2
0.5モル%から3モル%のP25
少なくとも11モル%のAl23
Na2O、および
Li2Oを含み、
Na2O(モル%)に対するLi2O(モル%)の量の比(Li2O/Na2O)が1.0未満であり、
前記DOLが0.25×t以下であり、かつ
前記最大引張応力が35MPa以上である、
アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【請求項2】
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、前記中央領域内に、実質的に放物線である引張応力プロファイルをさらに含む、請求項1に記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【請求項3】
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の仮想温度Tfが、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラスの粘度が1011ポアズである温度と等しい、請求項1または2に記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【請求項4】
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品のジルコン分解粘度が35キロポアズ未満である、請求項1から3いずれか1項記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【請求項5】
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の液相粘度が少なくとも200キロポアズである、請求項1から4いずれか1項記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【請求項6】
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品におけるR2O(モル%)/Al23(モル%)比(式中、R2O=Li2O+Na2O)が2未満である、請求項1から5いずれか1項記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【請求項7】
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品におけるSiO2とP25の合計量が65モル%超かつ67モル%未満(65モル%<SiO2(モル%)+P25(モル%)<67モル%)である、請求項1から6いずれか1項記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【請求項8】
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品におけるR2O(モル%)+R'O(モル%)-Al23(モル%)25(モル%)の関係式が-3モル%超である(式中、R2O=前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在するLi2OとNa2Oの合計量、およびR'Oは、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在する二価金属酸化物の合計量である)、請求項1から7いずれか1項記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【請求項9】
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品におけるR 2 O(モル%)+R'O(モル%)-Al 2 3 (モル%)-P 2 5 (モル%)の関係式が-2.70~9.74モル%である(式中、R 2 O=前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在するLi 2 OとNa 2 Oの合計量、およびR'Oは、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在する二価金属酸化物の合計量である)、請求項1から7いずれか1項記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【請求項10】
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、58モル%から65モル%のSiO2、11モル%から20モル%のAl23、6モル%から18モル%のNa2O、0モル%から6モル%のMgO、および0モル%から6モル%のZnOを含む、請求項1からいずれか1項記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【請求項11】
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、0.5モル%から2.8モル%の範囲の量でP25を含む、請求項1から10いずれか1項記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【請求項12】
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、10モル%までの量でLi2Oを含む、請求項1から11いずれか1項記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【請求項13】
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品がK2Oを含まない、請求項1から12いずれか1項記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【請求項14】
圧縮応力層を有する強化されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を製造する方法であって、アルミノケイ酸塩ガラス物品をイオン交換することによって、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に圧縮応力層を生成する工程を有してなり、該アルミノケイ酸塩ガラス物品が、B23およびK2Oを含まず、少なくとも58モル%のSiO2、0.5モル%から約3モル%のP25、少なくとも11モル%のAl23、Na2OおよびLi2Oを含み、Na2O(モル%)に対するLi2O(モル%)の量の比(Li2O/Na2O)が1.0未満であり、
前記圧縮応力層が、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の表面から層の深さまで延在し、前記圧縮応力層が、前記表面で少なくとも約400MPaの最大圧縮応力を有する、方法。
【請求項15】
前記最大圧縮応力が少なくとも800MPaである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記層の深さが少なくとも約40μmである、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記最大圧縮応力が少なくとも1050MPaである、請求項1416のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品をイオン交換する工程が、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を溶融塩浴中に浸漬する工程を含む、請求項1417のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記溶融塩浴がNaNO3を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記溶融塩浴がKNO3を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記溶融塩浴がNaNO3およびKNO3を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の厚さが約0.05mmから約1.5mmの範囲にある、請求項14から21いずれか1項記載の方法。
【請求項23】
イオン交換された前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を基板に接合して積層構造を形成する工程をさらに含む、請求項14から22いずれか1項記載の方法。
【請求項24】
イオン交換された前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を電子機器の筐体に接合する工程をさらに含む、請求項14から23いずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全てが引用される、2015年12月11日に出願された米国仮特許出願第62/266417号および2015年6月26日に出願された米国仮特許出願第62/184933号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は化学強化されたガラス物品に関する。より詳しくは、本開示は、圧縮応力の高い表面層を有する化学強化されたガラス物品に関する。
【背景技術】
【0003】
携帯電話、スマートフォン、タブレット、ビデオプレーヤー、情報端末(IT)機器、ラップトップコンピュータなどの携帯用または携帯型電子通信機器およびエンターテイメント機器のためのカバープレートまたは窓として電子機器において、並びに他の用途において、ガラス物品が広く使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラス物品がより広く使用されるにつれて、特に、硬い表面および/または尖った表面との接触により生じる引張応力および/または比較的深い傷に曝されたときの、生存性が改善された強化済みガラス物品を開発することがより重要になってきた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品であって、イオン交換過程によって化学強化してその表面部分に圧縮応力を与えることができ、類似のガラスにおいて達成されてきた圧縮応力を超える最大表面圧縮応力を示すアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を提供する。例えば、1つ以上の実施の形態において、ここに記載されたガラスは、イオン交換して、少なくとも約400MPa、少なくとも約800MPa、少なくとも約930MPa、または少なくとも約1050MPaの表面圧縮応力を達成することができる。1つ以上の実施の形態において、その圧縮応力層は、表面から様々な層の深さ(DOL)まで延在する。例えば、DOLは約25μm以下であることがある。他の実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、イオン交換して、より深いまたはより浅い圧縮層(例えば、少なくとも約40μm)を達成することができる。これらのDOL値は、厚さが約1mmのガラス物品において示されることがある。さらに他の実施の形態において、これらのガラス物品は、得られたガラス物品が、放物線または放物線に近いプロファイルを有する引張応力を含む、DOLからそのガラス物品中の深さまで延在する中央領域を含むようにイオン交換されることがある。1つ以上の実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、DOLからそのガラス物品中に延在する引張領域を示すことがある。1つ以上の実施の形態の引張領域は、約20MPa未満の最大引張応力を示すことがある。1つ以上の実施の形態の引張領域は、約40MPa超(例えば、約45MPa以上、約50MPa以上、約60MPa以上、約70MPa以上、約75MPa以上、約80MPa以上、または約85MPa以上)の最大引張応力を示すことがある。
【0006】
1つ以上の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、そのガラス物品の1011ポアズ(P)粘度温度と等しい仮想温度を有することがある。1つ以上の実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、約35キロポアズ未満のジルコン分解度を有する。1つ以上の実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、少なくとも200キロポアズの液相粘度を有する。
【0007】
本開示の第2の態様は、特定の組成を有するアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。1つ以上の実施の形態において、そのような物品は、化学強化して、ここに記載された属性を達成することができる。1つ以上の実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、少なくとも約58モル%のSiO2、約0.5モル%から約3モル%のP25、少なくとも約11モル%のAl23、Na2OおよびLi2Oを含む。1つ以上の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、約58モル%から約65モル%のSiO2、約11モル%から約19モル%のAl23、約6モル%から約18モル%のNa2O、0モル%から約6モル%のMgO、および0モル%から約6モル%のZnOを含む。
【0008】
1つ以上の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、1.0未満である、Na2Oの量(モル%)に対するLi2Oの量(モル%)の組成比(すなわち、Li2O/Na2O)を示す。1つ以上の実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品はB23を含まない。1つ以上の実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、2未満である、比R2O(モル%)/Al23(モル%)を有し、式中、R2O=Li2O+Na2Oである。1つ以上の実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、65モル%超かつ67モル%未満である、SiO2とP25の合計量(65モル%<SiO2(モル%)+P25(モル%)<67モル%)を有する。ある場合には、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、約-3モル%超である、関係式R2O(モル%)+R’O(モル%)-Al23(モル%)+P25(モル%)を有し、式中、R2O=そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在するLi2OとNa2Oの合計量、およびR’Oは、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在する二価金属酸化物の合計量である。ある場合には、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、約0.5モル%から約2.8モル%の範囲の量でP25を含む。他の場合には、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、約10モル%までの量でLi2Oを含む。
【0009】
1つ以上の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の厚さは、約0.05mmから約1.5mmの範囲にあることがある。例えば、その厚さは、約0.1mmから約1.5mm、約0.3mmから約1.2mm、約0.4mmから約1.2mm、または約0.5mmから約1.2mmであることがある。1つ以上の実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、少なくとも約1mmの厚さを有することがあり、その表面で少なくとも約930MPaの最大圧縮応力を示すことがある。1つ以上の実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、少なくとも約1mmの厚さを有することがあり、その表面で少なくとも約1050MPaの最大圧縮応力を示すことがある。1つ以上の実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、約1mmの厚さで、約37mm未満または約35mm未満の曲げ半径を示すことがある。
【0010】
1つ以上の実施の形態において、ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、DOLからその厚さの0.5倍と等しい深さまで延在する中央領域を含むことがあり、この中央領域はK2Oを含まないことがある。
【0011】
本開示の第3の態様は、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品であって、厚さt、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の表面からDOLまで延在する圧縮応力層、およびDOLから延在する中央領域を有し、その中央領域が引張応力下にあり、DOL≦0.25t、その引張応力は少なくとも約35MPaである、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、B23およびいくつかの実施の形態において、K2Oを含まず、少なくとも0.5モル%のP25、Na2OおよびLi2Oを含み、ここで、Li2O(モル%)/Na2O(モル%)<1である。いくつかの実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、少なくとも約58モル%のSiO2、約0.5モル%から約3モル%のP25、少なくとも約11モル%のAl23、Na2OおよびLi2Oを含み、Na2O(モル%)に対するLi2O(モル%)の量の比(Li2O/Na2O)は1.0未満である。
【0012】
本開示の第4の態様は、透明積層板に関する。この透明積層板は、第2の物品に接合されたここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を備える。その第2の物品は透明基板を含むことがある。本開示の第5の態様は、ここに記載されたように化学強化することができる、ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の1つ以上の実施の形態を含む消費者向け電子機器に関する。1つ以上の実施の形態において、その消費者向け電子機器は、筐体;その筐体の少なくとも部分的に内部に設けられた電気部品であって、少なくとも制御装置、メモリ、およびその筐体の前面またはその近傍に設けられたディスプレイを含む電気部品;並びに筐体の前面にまたはそれを覆って、かつディスプレイを覆って配置されたカバー物品であって、ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の1つ以上の実施の形態を含むカバー物品を備えている。
【0013】
本開示の第6の態様は、圧縮応力層を有する強化済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を製造する方法に関する。1つ以上の実施の形態において、その方法は、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品をイオン交換することによって、そのアルミノケイ酸塩ガラス物品に圧縮応力層を生成する工程を有してなる。1つ以上の実施の形態において、その圧縮応力層はそのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の表面からDOLまで延在する。その圧縮応力層は、約400MPa以上、約800MPa以上、または約1050MPa以上の最大圧縮応力を有することがある。1つ以上の実施の形態において、そのDOLは少なくとも約40μmであることがある。1つ以上の実施の形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品をイオン交換する工程は、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を溶融塩浴中に浸漬する工程を含む。その溶融塩浴は、NaNO3、KNO3またはNaNO3とKNO3の両方を含み得る。1つ以上の実施の形態において、その方法は、イオン交換済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を基板に接合して、積層構造を形成する工程を含むことがある。1つ以上の実施の形態において、その方法は、イオン交換済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を電子機器の筐体に接合する工程を含むことがある。
【0014】
これらと他の態様、利点、および顕著な特色は、以下の詳細な説明、添付図面、および付随の特許請求の範囲から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】1つ以上の実施の形態による強化済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の概略断面図
図2】ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の1つ以上の実施の形態を備えた積層板の概略断面図
図3】ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の1つ以上の実施の形態を備えた消費者向け電気製品の概略前面平面図
図4図3の消費者向け電気製品の概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明において、図面に示されたいくつかの図に亘り、同様の参照文字が、同様または対応する部品を示す。特に明記のない限り、「上部」、「底部」、「外方」、「内方」などの用語は、便宜上の単語であり、制限用語と解釈すべきではないことも理解されよう。それに加え、群が、複数の要素およびその組合せの群の少なくとも1つを含むと記載されているときはいつでも、その群は、個別か、または互いとの組合せのいずれかで、列挙されたそれらの要素のいくつを含んでも、から実質的になっても、またはからなってもよいことが理解されよう。同様に、群が、複数の要素またはその組合せの群の少なくとも1つからなると記載されているときはいつでも、その群は、個別か、または互いとの組合せのいずれかで、列挙されたそれらの要素のいくつからなってもよいことが理解されよう。特に明記のない限り、値の範囲は、列挙されている場合、その範囲の上限と下限の両方、並びにそれらの間の任意の範囲を含む。ここに用いたように、名詞は、特に明記のない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」の対象を指す。明細書および図面に開示された様々な特徴は、どの組合せと全ての組合せで使用しても差し支えないことも理解されよう。
【0017】
ここに用いたように、「ガラス物品」という用語は、ガラスから全体がまたは部分的に製造されたどの物体も含むように、最も広い意味で使用される。特に明記のない限り、ここに記載されたガラスの全ての組成は、モルパーセント(モル%)で表され、その成分は酸化物基準で与えられる。イオン交換に使用される全ての溶融塩浴-並びに任意の他のイオン交換媒質-の組成は、質量パーセント(質量%)で表される。熱膨張係数(CTE)は、百万分率(ppm)/℃で表され、特に明記のない限り、約20℃から約300℃の温度範囲に亘り測定された値を示す。高温(または液体)熱膨張係数(高温CTE)も、摂氏温度当たりの百万分率(ppm)(ppm/℃)で表され、温度曲線に対する瞬間熱膨張係数(CTE)の高温水平領域において測定された値を示す。高温CTEは、転移領域を経るガラスの加熱または冷却に関連する体積変化を測定する。
【0018】
特に明記のない限り、全ての温度は、摂氏温度(℃)で表される。ここに用いたように、「軟化点」という用語は、ガラスの粘度が約107.6ポアズ(P)である温度を称し、「徐冷点」という用語は、ガラスの粘度が約1013.2ポアズ(P)である温度を称し、「200ポアズ温度(T200P)」という用語は、ガラスの粘度が約200ポアズである温度を称し、「1011ポアズ温度」という用語は、ガラスの粘度が約1011ポアズである温度を称し、「35kP温度(T35kP)」という用語は、ガラスの粘度が約35キロポアズ(kP)である温度を称し、「160kP温度(T160kP)」という用語は、ガラスの粘度が約160kPである温度を称する。
【0019】
ここに用いたように、「ジルコン分解温度」または「T分解」という用語は、ジルコン-ガラス処理および製造において耐火材料として一般に使用されている-が分解して、ジルコニアおよびシリカを形成する温度を称し、「ジルコン分解粘度」という用語は、T分解でのガラスの粘度を称する。「液相粘度」という用語は、液相温度での溶融ガラスの粘度を称し、ここで、その液相温度は、溶融ガラスが溶融温度から冷めるときに、結晶が最初に現れる温度、または温度を室温から上昇させるときに、一番最後の結晶が溶ける温度を称する。「35kP温度」または「T35kP」という用語は、ガラスまたはガラス溶融物の粘度が35,000ポアズ(P)、すなわち35キロポアズ(kP)である温度を称する。
【0020】
「実質的に」および「約」という用語は、任意の定量的比較、値、測定、または他の表現に帰することがある不確定性の固有の程度を表すためにここに使用してよいことに留意のこと。これらの用語も、定量的表現が、問題となっている主題の基本機能を変化させずに、規定の基準から変動してもよい程度を表すためにここに使用される。それゆえ、「K2Oを実質的に含まない」ガラスは、K2Oが、ガラスに積極的に加えられていないまたはバッチ配合されていないが、汚染物質として非常に少量で存在するかもしれないものである。
【0021】
ここに用いたように、「最大圧縮応力」は、圧縮応力層内で測定された最高の圧縮応力値を称する。いくつかの実施の形態において、最大圧縮応力は、ガラスの表面に位置している。他の実施の形態において、最大圧縮応力は、表面より下のある深さで生じ、圧縮プロファイルに「埋没ピーク(buried peak)」が現れることがある。圧縮応力は、有限会社折原製作所(日本国)により製造されているFSM-6000などの市販の計器を使用して表面圧縮計測器(FSM)によって測定される。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関連する、応力光学係数(SOC)の精密測定に依存する。SOCは、次に、その内容がここに全て引用される、「Standard Test Method for、Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」と題する、ASTM基準C770-98(2013)に記載された手順Cの改訂版にしたがって測定される。その改定は、5から10mmの厚さおよび12.7mmの直径を有する試料としてガラスディスクを使用することを含み、そのディスクは、等方性かつ均質であり、コアに孔が開けられ、両面が研磨されており平行である。その改定は、印加された最大力Fmaxを計算することも含む。その力は、少なくとも20MPaの圧縮応力を生じるのに十分でなくてはならない。Fmaxは次のように計算される:
Fmax=7.854×D×h
式中、
Fmax=ニュートンで表された力
D=ディスクの直径
h=光路の厚さ
印加された各力について、応力は以下のように計算される:
σMPa=8F/(π×D×h)
式中、
F=ニュートンで表された力
D=ディスクの直径
h=光路の厚さ。
【0022】
ここに用いたように、DOLは、ここに記載された化学強化済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品における応力が圧縮から引張に変化する深さを意味する。DOLは、イオン交換処理に応じて、FSMまたはSCALPによって測定してよい。ガラス物品中の応力が、カリウムイオンをガラス物品中に交換することによって生じた場合、DOLを測定するために、FSMが使用される。応力が、ナトリウムイオンをガラス物品中に交換することによって生じた場合、DOLを測定するために、SCALPが使用される。ガラス物品中の応力が、カリウムイオンとナトリウムイオンの両方をガラス中に交換することによって生じた場合、DOLは、SCALPによって測定される。何故ならば、ナトリウムの交換深さがDOLを表し、カリウムイオンの交換深さが、圧縮応力の大きさの変化を表す(しかし、圧縮から引張への応力の変化ではない)と考えられるからである;そのようなガラス物品中のカリウムイオンの交換深さは、FSMにより測定される。
【0023】
概して図面を、特に、図1を参照すると、図解は、特定の実施の形態を記載する目的のためであり、本開示または付随の特許請求の範囲をそれに制限する意図はないことが理解されよう。図面は、必ずしも、一定の縮尺で描かれておらず、図面の特定の特徴および特定の視野は、明確さおよび簡潔さのために、尺度および図式が誇張されて示されていることがある。
【0024】
イオン交換過程によって化学強化して、類似のガラスにおいて達成されてきた圧縮応力を超える表面圧縮応力を与えることができるアルカリアルミノケイ酸塩ガラスがここに開示されている。例えば、ここに記載されたガラスの1mm厚の試験片を45分間に亘り410℃で溶融硝酸カリウムイオン交換浴中でイオン交換する場合、約1050MPaを超える、またはいくつかの実施の形態において、約1075MPaを超える、またはさらに他の実施の形態において、少なくとも1100MPaの最大表面圧縮応力が得られる。これらのガラスの仮想温度は、ガラスの1011ポアズ温度と等しい。
【0025】
1つ以上の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、微小構造が均一である(すなわち、そのガラスは相分離していない)。1つ以上の実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は非晶質である。ここに用いたように、「非晶質」とは、ガラス物品を記載するために使用された場合、晶子または結晶相を実質的に含まない(すなわち、1体積%未満しか晶子または結晶相を含有しない)ことを意味する。
【0026】
ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、フュージョン成形可能なガラス組成物から形成される。1つ以上の実施の形態において、そのガラス組成物は、約200キロポアズ(kP)超の液相粘度を、いくつかの実施の形態において、少なくとも約600kPの液相粘度を有することがある。いくつかの実施の形態において、これらのガラス物品および組成物は、ジルコン製アイソパイプに適合している:ガラスがジルコン製アイソパイプを分解してジルコニア欠陥を生じる粘度は、35kP未満である。ここに記載された組成範囲内の選択されたガラス組成物は、35kP超のジルコン分解粘度を有することがある。そのような場合、これらのガラス物品をフュージョン成形するために、アルミナ製アイソパイプを使用できる。
【0027】
1つ以上の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、少なくとも0.5モル%のP25、Na2Oおよび必要に応じて、Li2Oを含み、Li2O(モル%)/Na2O(モル%)<1である、ガラス組成を有する。その上、これらのガラス物品は、B23およびK2Oを含まない。ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、ZnO、MgO、およびSnO2をさらに含むことがある。
【0028】
いくつかの実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、少なくとも約58モル%のSiO2、約0.5モル%から約3モル%のP25、少なくとも約11モル%のAl23、Na2OおよびLi2Oを含むか、またはそれらから実質的になる。
【0029】
1つ以上の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、約58モル%から約65モル%のSiO2、約11モル%から約20モル%のAl23、約0.5モル%から約3モル%のP25、約6モル%から約18モル%のNa2O、0モル%から約6モル%のMgO、および0モル%から約6モル%のZnOを含むか、またはそれらから実質的になる。特定の実施の形態において、そのガラス物品は、約63モル%から約65モル%のSiO2、約11モル%から約19モル%のAl23、約1モル%から約3モル%のP25、約9モル%から約20モル%のNa2O、0モル%から約6モル%のMgO、および0モル%から約6モル%のZnOを含むか、またはそれらから実質的になる。
【0030】
1つ以上の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、約2未満(例えば、約1.8未満、約1.6未満、約1.5未満、または約1.4未満)である、比R2O(モル%)/Al23(モル%)を有し、式中、R2O=Li2O+Na2Oである。
【0031】
1つ以上の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、SiO2とP25の合計量が65モル%超かつ67モル%未満である(すなわち、65モル%<SiO2(モル%)+P25(モル%)<67モル%)関係を有する。例えば、SiO2とP25の合計量は、約65.1モル%から約67モル%、約65.2モル%から約67モル%、約65.3モル%から約67モル%、約65.4モル%から約67モル%、約65.5モル%から約67モル%、約65.6モル%から約67モル%、約65.7モル%から約67モル%、約65.8モル%から約67モル%、約65.9モル%から約67モル%、約66モル%から約67モル%、約65モル%から約66.9モル%、約65モル%から約66.8モル%、約65モル%から約66.7モル%、約65モル%から約66.6モル%、約65モル%から約66.5モル%、約65モル%から約66.4モル%、約65モル%から約66.3モル%、約65モル%から約66.2モル%、約65モル%から約66.1モル%、または約65モル%から約66モル%の範囲にあることがある。
【0032】
1つ以上の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、約-3モル%超である、関係式R2O(モル%)+R’O(モル%)-Al23(モル%)+P25(モル%)(すなわち、R2O(モル%)+R’O(モル%)-Al23(モル%)+P25(モル%)>-3モル%)を有する。1つ以上の実施の形態において、R2Oは、Li2OとNa2Oの合計量である(すなわち、R2O=Li2O+Na2O)。1つ以上の実施の形態において、R’Oは、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在する二価金属酸化物の合計量である。1つ以上の実施の形態において、関係式R2O(モル%)+R’O(モル%)-Al23(モル%)+P25(モル%)は、約-2.5モル%より大きい、約-2モル%より大きい、約-1.5モル%より大きい、約-1モル%より大きい、約-0.5モル%より大きい、約0モル%より大きい、約0.5モル%より大きい、約1モル%より大きい、約1.5モル%より大きい、約2モル%より大きい、約2.5モル%より大きい、約3モル%より大きい、約3.5モル%より大きい、約4モル%より大きい、約4.5モル%より大きい、約5モル%より大きい、約5.5モル%より大きい、約6モル%より大きい、約6.5モル%より大きい、約7モル%より大きい、約7.5モル%より大きい、約8モル%より大きい、約8.5モル%より大きい、約9モル%より大きい、または約9.5モル%より大きい。
【0033】
表1には、ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラスの例示の組成が列挙されている。表2には、表1に列挙された例について決定した選択された物理的性質が列挙されている。表2に列挙された物理的性質としては、密度;低温および高温CTE;歪み点、徐冷点、および軟化点;1011ポアズ温度、35kP温度、200kP温度、液相温度、およびジルコン分解温度;ジルコン分解粘度および液相粘度;ポアソン比;ヤング率;屈折率;並びに応力光学係数が挙げられる。いくつかの実施の形態において、ここに記載されたガラスは、30ppm/℃以下の高温CTEおよび/または少なくとも70GPaのヤング率、いくつかの実施の形態において、80GPaまでのヤング率を有する。
【0034】
【表1-1】
【0035】
【表1-2】
【0036】
【表1-3】
【0037】
【表1-4】
【0038】
【表1-5】
【0039】
【表1-6】
【0040】
【表1-7】
【0041】
【表1-8】
【0042】
【表1-9】
【0043】
【表2-1】
【0044】
【表2-2】
【0045】
【表2-3】
【0046】
【表2-4】
【0047】
【表2-5】
【0048】
【表2-6】
【0049】
【表2-7】
【0050】
【表2-8】
【0051】
【表2-9】
【0052】
ここに記載されたベース(または未強化)と強化済み(すなわち、イオン交換により化学強化された)のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の酸化物成分の各々は、ある機能を果たす、および/またはガラスの製造可能性および物理的性質にある影響がある。例えば、シリカ(SiO2)は、主要なガラス形成酸化物であり、溶融ガラスの網目構造骨格を形成する。純粋なSiO2は、低いCTEを有し、アルカリ金属を含まない。しかしながら、純粋なSiO2は、その溶融温度が極めて高いために、フュージョンドロー法に不適合である。粘度曲線もずっと高すぎて、積層構造におけるどのコアガラスとも合わない。1つ以上の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、約58モル%から約65モル%、約59モル%から約65モル%、約60モル%から約65モル%、約61モル%から約65モル%、約62モル%から約65モル%、約63モル%から約65モル%、約58モル%から約64モル%、約58モル%から約63モル%、約58モル%から約62モル%、約58モル%から約61モル%、約58モル%から約60モル%、約63モル%から約65モル%、約63.2モル%から約65モル%、または約63.3モル%から約65モル%の範囲の量でSiO2を含む。
【0053】
シリカに加え、ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、安定なガラスの形成、低いCTE、低いヤング率、低い剛性率を達成し、溶融および成形を促進するために、網目構造形成材のAl23を含む。Al23は、SiO2のように、ガラスの網目構造に対する剛性に寄与する。アルミナは、四配位または五配位のいずれかでガラス中に存在し得、これにより、ガラスの網目構造の充填密度が増し、それゆえ、化学強化から生じる圧縮応力が増す。1つ以上の実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、約11モル%から約20モル%、約12モル%から約20モル%、約13モル%から約20モル%、約14モル%から約20モル%、約15モル%から約20モル%、約11モル%から約19モル%、約11モル%から約18.5モル%、約11モル%から約18モル%、約11モル%から約17.5モル%、約11モル%から約17モル%、約11モル%から約16.5モル%、約11モル%から約16モル%、約14モル%から約17モル%、約15モル%から約17モル%、または約15モル%から約16モル%の範囲の量でAl23を含む。
【0054】
五酸化リン(P25)は、ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に含まれる網目構造形成材である。P25は、ガラスの網目構造中に擬似四面体構造をとる;すなわち、P25は4つの酸素原子と配位するが、その内の3つしか網目構造の残りと接続されていない。4つ目の酸素原子は、リン陽イオンと二重結合した末端酸素である。ガラスの網目構造中にP25を含むと、ヤング率および剛性率を減少させるのに極めて効果的である。ガラスの網目構造中にP25を含むと、高温CTEが減少し、イオン交換の相互拡散速度が上昇し、ジルコン耐火材料とのガラスの適合性が改善される。1つ以上の実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、約0.5モル%から約5モル%、約0.6モル%から約5モル%、約0.8モル%から約5モル%、約1モル%から約5モル%、約1.2モル%から約5モル%、約1.4モル%から約5モル%、約1.5モル%から約5モル%、約1.6モル%から約5モル%、約1.8モル%から約5モル%、約2モル%から約5モル%、約0.5モル%から約3モル%、約0.6モル%から約3モル%、約0.8モル%から約3モル%、約1モル%から約3モル%、約1.2モル%から約3モル%、約1.4モル%から約3モル%、約1.5モル%から約3モル%、約1.6モル%から約3モル%、約1.8モル%から約3モル%、約2モル%から約3モル%、約0.5モル%から約2.8モル%、約0.5モル%から約2.6モル%、約0.5モル%から約2.5モル%、約0.5モル%から約2.4モル%、約0.5モル%から約2.2モル%、約0.5モル%から約2モル%、約2.5モル%から約5モル%、約2.5モル%から約4モル%、または約2.5モル%から約3モル%の範囲の量でP25を含む。
【0055】
ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、酸化ホウ素(B23)を含有しない、またはB23を含まない。何故ならば、その存在には、ガラス物品がイオン交換により強化されたときに、圧縮応力に悪影響があるからである。ここに用いたように、「B23を含まない」という句は、ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約0.1モル%未満のB23、約0.05モル%未満のB23、または約0.01モル%未満のB23しか含まないことを意味する。
【0056】
アルカリ酸化物のNa2Oは、ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品のイオン交換による化学強化を達成するために使用される。ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品はNa2Oを含み、これは、例えば、KNO3を含有する塩浴中に存在するカリウム陽イオンと交換されるべきNa+陽イオンを与える。いくつかの実施の形態において、ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、約4モル%未満から約20モル%のNa2Oを含む。1つ以上の実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、約4.5モル%から約20モル%、約5モル%から約20モル%、約5.5モル%から約20モル%、約6モル%から約20モル%、約6.5モル%から約20モル%、約7モル%から約20モル%、約7.5モル%から約20モル%、約8モル%から約20モル%、約8.5モル%から約20モル%、約9モル%から約20モル%、約9.5モル%から約20モル%、約10モル%から約20モル%、約4モル%から約19.5モル%、約4モル%から約19モル%、約4モル%から約18.5モル%、約4モル%から約18モル%、約4モル%から約17.5モル%、約4モル%から約17モル%、約4モル%から約16.5モル%、約4モル%から約16モル%、約4モル%から約15.5モル%、約4モル%から約15モル%、約4モル%から約14.5モル%、約4モル%から約14モル%、約6モル%から約18モル%、約7モル%から約18モル%、約8モル%から約18モル%、約9モル%から約18モル%、約6モル%から約12モル%、約6モル%から約11モル%、または約6モル%から約10モル%の範囲の量でNa2Oを含む。
【0057】
ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、いくつかの実施の形態において、約13モル%までのLi2Oまたは約10モル%までのLi2Oをさらに含むことがある。いくつかの実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、約0モル%から約9.5モル%、約0モル%から約9モル%、約0モル%から約8.5モル%、約0モル%から約8モル%、約0モル%から約7.5モル%、約0モル%から約7モル%、約0.1モル%から約10モル%、約0.1モル%から約9.5モル%、約0.1モル%から約9モル%、約0.1モル%から約8.5モル%、約0.1モル%から約8モル%、約0.1モル%から約7.5モル%、約0.1モル%から約7モル%、または約4モル%から約8モル%の範囲の量でLi2Oを含む。Li2Oは、Na2Oと置換されたときに、ジルコン分解温度を低下させ、ガラスを軟化させる。これにより、追加のAl23をガラスに加えられるようになる。特定の実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、Li2Oを含まない(すなわち、0モル%のLi2Oを含有する)、またはLi2Oを実質的に含まない。ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品において、存在するNa2Oの量はLi2Oの量より多く、ここで、Li2O(モル%)/Na2O(モル%)<1である。いくつかの実施の形態において、Li2O(モル%)/Na2O(モル%)<0.75。いくつかの実施の形態において、R2O(モル%)/Al23(モル%)<2であり、いくつかの実施の形態において、0.9≦R2O(モル%)/Al23(モル%)≦1.6であり、式中、R2O=Li2O+Na2Oである。
【0058】
前記ガラス物品中のカリウム酸化物の存在には、イオン交換によりガラス物品中に高レベルの表面圧縮応力を達成する能力に悪影響がある。したがって、最初に形成されたままの、ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、K2Oを含有しない、またはK2Oを含まない。1つ以上の実施の形態において、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、約0.2モル%未満しかK2Oを含まない。しかしながら、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、カリウム含有溶融塩(例えば、KNO3を含有する)浴中でイオン交換されたときに、いくらかの量のK2O(すなわち、約1モル%未満)を含むことがあり、実際の量は、イオン交換条件(例えば、イオン交換浴中のカリウム塩濃度、浴の温度、イオン交換時間、およびK+イオンがLi+およびNa+イオンを置換する程度)による。結果として生じた圧縮層はカリウムを含有する-ガラスの表面近くのイオン交換層は、ガラス表面で10モル%以上のK2Oを含有することがあるのに対し、圧縮層の深さより深い深さでガラスの内部は、カリウムを実質的に含まないままである。
【0059】
いくつかの実施の形態において、ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、0モル%から約6モル%のZnO(例えば、約0モル%から約5モル%、約0モル%から約4モル%、約0モル%から約3.5モル%、約0モル%から約3モル%、約0モル%から約2.5モル%、約0.1モル%から約6モル%、約0.1モル%から約5モル%、約0.1モル%から約4モル%、約0.1モル%から約3.5モル%、約0.1モル%から約3モル%、約0.1モル%から約2.5モル%、約0.1モル%から約2モル%、約1モル%から約5モル%、約2モル%から約5モル%、約1モル%から約3モル%、約1.5モル%から約3モル%、約2モル%から約3モル%、または約1モル%から約2モル%)を含むことがある。二価酸化物のZnOは、200ポアズ粘度での温度(200P温度)を低下させることによって、ガラスの溶融挙動を改善する。ZnOは、P25および/またはNa2Oなどの添加と比べて、歪み点の改善にも有益である。
【0060】
MgOおよびCaOなどのアルカリ土類酸化物も、200P温度および歪み点に対する同様な効果を達成するために、ZnOの代わりに使用されることがある。しかしながら、ZnOは、MgOおよびCaOと比べると、P25の存在下で相分離を促進させる傾向が少ない。いくつかの実施の形態において、ここに記載されたガラスは、0モル%から6モル%までのMgOを含む、または他の実施の形態において、これらのガラスは、0.02モル%から約6モル%のMgOを含む。ZnOの代わりに、SrOおよびBaOを含む他のアルカリ土類酸化物も使用してよいが、それらは、ZnO、MgO、またはCaOほど、200ポアズ粘度での溶融温度を低下させるのに効果的ではなく、また歪み点の上昇にも、ZnO、MgO、またはCaOほど効果的ではない。
【0061】
いくつかの実施の形態において、ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、スロットドロー法およびフュージョンドロー法などの、当該技術分野で公知のダウンドロー法により成形できる。そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を形成するために使用されるガラス組成物は、小さい濃度のLi2Oを含有することがあり、フュージョンドロー法に適合しており、問題なく製造できる。リチウムは、スポジュメンまたは炭酸リチウムのいずれかとして溶融物にバッチ配合してよい。
【0062】
フュージョンドロー法は、薄いガラスシートの大規模製造に使用されてきた産業技術である。フロート法やスロットドロー法などの他の平板ガラス製造技術と比べると、フュージョンドロー法は、平面度と表面品質が優れた薄いガラスシートを生成する。その結果、フュージョンドロー法は、液晶ディスプレイ用の薄いガラス基板、並びにノートブック型コンピュータ、エンターテイメント機器、タブレット、ラップトップ型コンピュータなどの個人用電子機器向けのカバーガラスの製造において主要な製造技術となってきた。
【0063】
フュージョンドロー法は、典型的に、ジルコンまたは別の耐火材料から製造された「アイソパイプ」としても知られている樋を越える溶融ガラスの流れを含む。その溶融ガラスはアイソパイプの上部をその両側から溢れ出て、アイソパイプの底部で融合して、1枚のシートを形成する。ここで、最終的なシートの内部しかアイソパイプと直接接触していない。最終的なガラスシートのどの露出表面も、ドロー過程中にアイソパイプの材料と接触していないので、そのガラスの両方の外面は、無垢な品質であり、それに続く仕上げを必要としない。
【0064】
フュージョンドローができるためには、ガラス組成物は、十分に高い液相粘度(すなわち、液相温度での溶融ガラスの粘度)を有さなければならない。いくつかの実施の形態において、ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を形成するために使用される組成物は、少なくとも約200キロポアズ(kP)の、他の実施の形態において、少なくとも約600kPの液相粘度を有する。
【0065】
そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を形成した後、その物品は、化学強化されることがある。ガラスを化学強化するために、イオン交換が広く使用されている。1つの特別な例において、アルカリ陽イオンの供給源(例えば、溶融塩浴、すなわち「イオン交換」浴)内のアルカリ陽イオンは、ガラス内のより小さいアルカリ陽イオンと交換されて、ガラス物品の表面近くの圧縮応力下にある層を形成する。その圧縮層は、その表面からガラス物品内のDOLまで延在する。ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品において、例えば、以下に限られないが、硝酸カリウム(KNO3)などのカリウム塩を含む溶融塩浴中にガラスを浸漬することによって、イオン交換中に、陽イオン源からのカリウムイオンが、ガラス内のナトリウムイオンと交換される。イオン交換過程に使用してよい他のカリウム塩としては、以下に限られないが、塩化カリウム(KCl)、硫酸カリウム(K2SO4)、その組合せなどが挙げられる。ここに記載されたイオン交換浴は、カリウム以外のアルカリイオンおよびその対応する塩を含有してもよい。例えば、そのイオン交換浴は、硝酸ナトリウム(NaNO3)、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどのナトリウム塩も含んでよい。1つ以上の実施の形態において、2種類の異なる塩の混合物を使用してもよい。例えば、前記ガラス物品を、KNO3およびNaNO3の塩浴中に浸漬してもよい。いくつかの実施の形態において、複数の浴を使用してよく、ガラスを一方の浴に浸漬し、その後、別の浴に連続して浸漬する。その浴は、同じまたは異なる組成、温度を有してもよい、および/または異なる浸漬時間で使用してもよい。
【0066】
イオン交換浴の温度は、約320℃から約450℃の範囲にあることがある。浴中の浸漬時間は、約15分から約16時間まで様々であってよい。
【0067】
図1に示された実施の形態は、平らで平面のシートまたは板として強化済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品100を示しているが、そのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、三次元形状または非平面形態などの他の形態を有してもよい。その強化済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品100は、厚さtを規定する、第一面110および第二面112を有する。1つ以上の実施の形態(図1に示された実施の形態など)において、強化済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、厚さtを規定する、第一面110および反対の第二面112を含むシートである。強化済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品100は、第一面110からガラス物品100の内部の層の深さd1まで延在する第1の圧縮層120を有する。図1に示された実施の形態において、強化済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品100は、第二面112から第2の層の深さd2まで延在する第2の圧縮層122も有する。ガラス物品は、d1からd2まで延在する中央領域130も有する。中央領域130は、引張応力または中央張力(CT)下にあり、これが、層120および122の圧縮応力と釣り合うまたは対抗する。第1と第2の圧縮層120、122の深さd1、d2は、強化済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品100の第一面110と第二面112に対する鋭い衝撃により導入される傷の伝搬から強化済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品100を保護する一方で、圧縮応力は、第1と第2の圧縮層120、122の深さd1、d2を傷が貫通する可能性を最小にする。DOL d1およびDOL d2は、互いに等しくても、互いとは異なってもよい。いくつかの実施の形態において、中央領域の少なくとも一部(例えば、その部分はDOLから物品の厚さの0.5倍と等しい深さまで延在する)は、K2Oを含まないことがある(ここに定義されたように)。
【0068】
DOLは、厚さtの一部(そうでなければ、約0.05mmから約1.5mmの範囲にあるとここに記載される)として記載されることがある。例えば、1つ以上の実施の形態において、DOLは、約0.1t以上、約0.11t以上、約0.12t以上、約0.13t以上、約0.14t以上、約0.15t以上、約0.16t以上、約0.17t以上、約0.18t以上、約0.19t以上、約0.2t以上、約0.21t以上であることがある。いくつかの実施の形態において、DOLは、約0.08tから約0.25t、約0.09tから約0.25t、約0.18tから約0.25t、約0.11tから約0.25t、約0.12tから約0.25t、約0.13tから約0.25t、約0.14tから約0.25t、約0.15tから約0.25t、約0.08tから約0.24t、約0.08tから約0.23t、約0.08tから約0.22t、約0.08tから約0.21t、約0.08tから約0.2t、約0.08tから約0.19t、約0.08tから約0.18t、約0.08tから約0.17t、約0.08tから約0.16t、または約0.08tから約0.15tの範囲にあることがある。ある場合には、DOLは約20μm以下であることがある。1つ以上の実施の形態において、DOLは約40μm以上(例えば、約40μmから約300μm、約50μmから約300μm、約60μmから約300μm、約70μmから約300μm、約80μmから約300μm、約90μmから約300μm、約100μmから約300μm、約110μmから約300μm、約120μmから約300μm、約140μmから約300μm、約150μmから約300μm、約40μmから約290μm、約40μmから約280μm、約40μmから約260μm、約40μmから約250μm、約40μmから約240μm、約40μmから約230μm、約40μmから約220μm、約40μmから約210μm、約40μmから約200μm、約40μmから約180μm、約40μmから約160μm、約40μmから約150μm、約40μmから約140μm、約40μmから約130μm、約40μmから約120μm、約40μmから約110μm、または約40μmから約100μm)であることがある。
【0069】
1つ以上の実施の形態において、前記強化済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、約400MPa以上、約500MPa以上、約600MPa以上、約700MPa以上、約800MPa以上、約900MPa以上、約930MPa以上、約1000MPa以上、または約1500MPa以上の最大圧縮応力(そのガラス物品の表面またはその内部の深さで見られるであろう)を有することがある。
【0070】
1つ以上の実施の形態において、前記強化済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、約20MPa以上、約30MPa以上、約40MPa以上、約45MPa以上、約50MPa以上、約60MPa以上、約70MPa以上、約75MPa以上、約80MPa以上、または約85MPa以上の最大引張応力または中央張力(CT)を有することがある。いくつかの実施の形態において、その最大引張応力または中央張力(CT)は約40MPaから約100MPaの範囲にあることがある。
【0071】
ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、いくつかの実施の形態において、約100質量%のKNO3を含むまたはから実質的になる溶融塩浴(ケイ酸などの少量の添加剤がその浴に加えられることがある)中の浸漬によって、イオン交換される。表面圧縮応力を最大にするために、そのガラス物品は、イオン交換前に熱処理を経ることがある。厚さ約1mmの物品では、その物品は、410℃で45分間に亘りイオン交換される。そのガラス物品は、1011ポアズ(P)温度で熱処理され、急冷されて、イオン交換前に、仮想温度を約1011P粘度の温度に設定する。これは、仮想温度を設定して、フュージョンドロー法により形成されたシートの熱履歴を示すために行われる。表3には、上記条件下でのイオン交換後の表1に列挙された試料について測定された、圧縮応力、圧縮層の深さ、および曲げ半径が列挙されている。ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、熱処理とそれに続くイオン交換のこの組合せに施された場合、少なくとも約1050MPaの最大圧縮応力CSおよび約25μm未満、またはいくつかの実施の形態において、約20μm未満の圧縮層の深さDOLを有する圧縮層を持つ。いくつかの実施の形態において、圧縮層の深さは少なくとも約9μmである。
【0072】
【表3】
【0073】
他の実施の形態において、ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品をイオン交換して、より深い圧縮層の深さが達成されることがある。例えば、各々が1mmの厚さを有する選択された試料(その組成は表1に列挙されている)を、約100%のKNO3を含むまたはから実質的になる溶融塩浴中において410℃で8時間に亘りイオン交換して、少なくとも約30μm、またはいくつかの実施の形態において、少なくとも約40μmの層の深さ、およびさらに他の実施の形態において、少なくとも約50μmの深さを、少なくとも約930MPaの最大圧縮応力で達成した。これらの条件下でのイオン交換後にこれらの試料について測定した圧縮応力および圧縮層の深さが、表4に列挙されている。
【0074】
【表4】
【0075】
さらに他の実施の形態において、ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、深い圧縮層の深さおよびガラス物品の中央張力領域において放物線である、または放物線に近似した応力プロファイルを得るようにイオン交換されることがある。例えば、各々が1mmの厚さを有する選択された試料(その組成は表1に列挙されている)を、約100%のKNO3を含むまたはから実質的になる溶融塩浴中において430℃で2、4、または16時間に亘りイオン交換して、少なくとも約200μm、またはいくつかの実施の形態において、全試料厚tの約25%まで(すなわち、DOL≦0.25t)の、いくつかの実施の形態において、全試料厚tの約20%まで(すなわち、DOL≦0.2t)の圧縮層の深さDOLを、少なくとも約30MPa、またはいくつかの実施の形態において、少なくとも約35MPa、またはいくつかの実施の形態において、少なくとも約56MPa、またはさらに他の実施の形態において、少なくとも約66MPaの最大引張応力で達成した。これらの条件下でのイオン交換後にこれらの試料について測定した中央張力および圧縮層の深さが、表5に列挙されている。
【0076】
【表5】
【0077】
イオン交換後の圧縮応力は、イオン交換前に30分間に亘り1013.18ポアズ温度(徐冷点温度)で徐冷することによって、さらに改善することができる。その構造体をより低い仮想温度状態に緩和させることにより、ガラスの充填密度が増し、それゆえ、イオン交換によって、より高い表面圧縮応力が可能になる(拡散性を犠牲にして)。
【0078】
ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、溶融状態(仮想温度(Tf)=1011ポアズ温度)および徐冷状態(仮想温度=1013.8ポアズ温度)の両方において、他のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品よりも実質的に高い表面圧縮応力を示す。表6には、ここに記載されたイオン交換済みガラスの2つの実施例(実施例34および40)並びに69モル%のSiO2、10モル%のAl23、15モル%のNa2O、5.5モル%のMgO、および0.2モル%のSnO2の公称組成を有する比較例に関する、厚さ1mmのガラスについての圧縮応力CS、圧縮層の深さ、および表面圧縮応力を相殺するのに必要な曲げ半径が列挙されている。この比較例は、Matthew John Dejneka等によって2012年6月26日に出願された、「Ion Exchageable Glass with High Compressive Stress」と題する米国特許出願第13/533298号に記載されている。全ての試料は、イオン交換前に30分間に亘り徐冷点温度(1013.18Pと等しい粘度での温度)で熱処理した。その試料を、溶融KNO3塩浴中において45分間に亘り410℃でイオン交換した。
【0079】
表6から分かるように、比較例はイオン交換されて、1118MPaの圧縮応力を達成したのに対し、本開示に記載されたガラスは、同じ条件下でイオン交換されて、1203MPaおよび1192MPaの圧縮応力を達成した。表面圧縮応力がより高いガラスについて、所定の傷サイズに関する強度がより高く、表面傷はより小さい曲げ半径で圧縮下のままであり、それゆえ、小さい傷の疲労(サブクリティカル亀裂進展)を防ぐ。
【0080】
圧縮下にある小さい表面傷は破損するまで伸び得ないので、表面圧縮応力がより高いガラスは、一般に、曲げ事象による破損に対してより耐性であるが、弾性率が超高いガラスについては例外が生じることもある。曲げ誘起応力は、表面傷を張力下に置くためには表面圧縮応力を克服しなければならない。ガラス板を曲げるときに、表面での曲げ誘起引張応力は、以下の式:
【0081】
【数1】
【0082】
により与えられ、式中、σはガラスの外面の引張応力であり、Eはガラスのヤング率であり、νはポアソン比であり、hはガラスの厚さであり、Rはガラスの外面に対する曲げ半径である。上記式は、イオン交換後の表面応力をゼロに減少させるのに必要な曲げ半径を決定するために置き換えられる。
【0083】
【数2】
【0084】
イオン交換後の表面応力を克服するためにより小さい曲げ半径を必要とするガラスは、表面傷の伝搬による曲げ誘起破損に対してより耐性である。上記比較例のガラスについてR値を計算すると(E=71.3、ポアソン比=0.205、IOX表面応力=1014MPa)、36.7mmの曲げ半径でその表面応力が0MPaに減少することが見出される。その一方、Tf=1011P温度の上述したガラスの表1に列挙された実施例は、正味の表面応力を0MPaに減少させるために、36mm未満の曲げ半径を必要とする。
【0085】
【表6】
【0086】
表7には、ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の例示の組成が列挙されている。表8には、表7に列挙された実施例について決定した選択された物理的性質が列挙されている。表7に列挙された物理的性質には、密度;CTE;歪み点、徐冷点および軟化点;液相温度;液相粘度;ヤング率;屈折率;並びに応力光学係数がある。
【0087】
【表7-1】
【0088】
【表7-2】
【0089】
【表8-1】
【0090】
【表8-2】
【0091】
実施例64~71をガラス物品(シート形態および特定の厚さを有する)に成形し、次に、規定の期間に亘り、特定の温度を有する溶融塩浴中の浸漬によって、化学強化した。表9には、各ガラス物品の厚さ、化学強化条件、および結果として得られた強化済みガラス物品の測定最大CT値とDOC値が示されている。
【0092】
【表9-1】
【0093】
【表9-2】
【0094】
別の態様において、ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を備えた積層板も提供される。その積層板の概略断面図が図2に示されている。積層板200は、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品210(シートとして提供されることがある)および第2の物品220(これもシートとして提供されることがある)を備える。図2に示されるように、このアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品のシートが透明基板220に接合されることがある。
【0095】
1つ以上の実施の形態において、第2の物品220の屈折率は、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスシート210の屈折率の5%以内にある。第2の物品220およびアルカリアルミノケイ酸塩ガラスシート210の屈折率を厳密に一致させることにより、積層板200は、透明であり、ほとんどヘイズを示さない(例えば、表面に対して90°の視角で、約20%未満、またはいくつかの実施の形態において、10%未満)。第2の物品220は、シート210に使用されるアルカリアルミノケイ酸塩ガラスの第2のシートから作られることがあり、シート210のものとは異なる厚さおよび/または組成を有することがある。いくつかの実施の形態において、第2の物品220は、ソーダ石灰ガラス、またはホウケイ酸ガラスのシートを含む。あるいは、先に述べた光学的品質の基準が満たされる限り、ポリカーボネートなどのプラスチック材料が第2の物品220としての機能を果たしてもよい。
【0096】
1つの実施の形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスシート210は、接着層215によって第2の物品220に接合される。その接着層215も透明であり、この層は、そのような目的を達成するのに適しており、所望の光学的性質を有することが当該技術分野において公知の、接着剤、エポキシ、樹脂、フリット材料などの結合剤または結合材を含むことがある。1つの実施の形態において、接着層215の屈折率は、ヘイズおよび/または歪みがほとんどない高い光学的品質を与えるために、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスシート210および第2の物品220の屈折率の5%以内にある。あるいは、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスシート210および第2の物品220は、融合によって、互いに直接接合されてもよい。そのような1つの実施の形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスシート210および第2の物品220は、フュージョンドロー法により形成された2つのシートの表面が互いに接触し、それゆえ、共に結合して積層板を形成するように、同時にフュージョンドローされることがある。
【0097】
いくつかの実施の形態において、ここに記載されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品および積層板は、携帯電話やスマートフォン、ラップトップコンピュータ、タブレットなどの消費者向け電子機器の一部を形成する。消費者向け電子機器(例えば、スマートフォン)の概略図が、図3および4に示されている。消費者向け電子機器1000は、典型的に、前面1040、背面1060、および側面1080を有する筐体1020を備え、筐体1020の少なくとも部分的に内部にある、電子部品(図示せず)を含む。その電子部品としては、少なくとも電源、制御装置、メモリ、およびディスプレイ1120が挙げられる。ディスプレイ1120は、いくつかの実施の形態において、筐体の前面1040にまたはそれに隣接して設けられる。ここに記載された強化済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の実施の形態から作られる、カバーガラス100、100aは、そのカバーガラス100、100aがディスプレイ1120の上に配置され、衝撃または打撃により生じる損傷からディスプレイ1120を保護するように、筐体1020の前面1040に、またはその上に設けられている。カバーガラス100は、約0.4mmから約2.5mmの厚さ、および化学強化されたときに、カバーガラス100の表面で少なくとも400MPaの最大圧縮応力を有する。いくつかの実施の形態において、そのカバーガラスは、少なくとも1mmの厚さを有し、少なくとも1050MPaの表面での最大圧縮応力および約25μmまでの層の深さを有する。他の実施の形態において、そのカバーガラスは、少なくとも1mmの厚さを有し、少なくとも約930MPaの表面での最大圧縮応力および少なくとも約40μmの層の深さを有する。
【0098】
本開示の態様(1)は、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品であって、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の表面から層の深さ(DOL)まで延在し、前記表面で少なくとも400MPaの最大圧縮応力を有する圧縮応力層を備え、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、少なくとも約58モル%のSiO2、約0.5モル%から約3モル%のP25、少なくとも約11モル%のAl23、Na2OおよびLi2Oを含み、Na2O(モル%)に対するLi2O(モル%)の量の比(Li2O/Na2O)が1.0未満であり、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品はB23を含まない、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0099】
本開示の態様(2)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の仮想温度Tfが、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の粘度が1011ポアズである温度と等しい、態様(1)によるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0100】
本開示の態様(3)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品のジルコン分解度が約35キロポアズ未満である、態様(1)または態様(2)によるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0101】
本開示の態様(4)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の液相粘度が少なくとも200キロポアズである、態様(1)から(3)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0102】
本開示の態様(5)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、2未満である、比R2O(モル%)/Al23(モル%)を有し、式中、R2O=Li2O+Na2Oである、態様(1)から(4)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0103】
本開示の態様(6)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、65モル%超かつ67モル%未満である、SiO2とP25の合計量(65モル%<SiO2(モル%)+P25(モル%)<67モル%)を有する、態様(1)から(5)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0104】
本開示の態様(7)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約-3モル%超である、関係式R2O(モル%)+R’O(モル%)-Al23(モル%)+P25(モル%)を有し、式中、R2O=該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在するLi2OとNa2Oの合計量、およびR’Oは、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在する二価金属酸化物の合計量である、態様(1)から(6)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0105】
本開示の態様(8)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約58モル%から約65モル%のSiO2、約11モル%から約20モル%のAl23、約6モル%から約18モル%のNa2O、0モル%から約6モル%のMgO、および0モル%から約6モル%のZnOを含む、態様(1)から(7)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0106】
本開示の態様(9)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約0.5モル%から約2.8モル%の範囲の量でP25を含む、態様(1)から(8)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0107】
本開示の態様(10)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約10モル%までの量でLi2Oを含む、態様(1)から(9)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0108】
本開示の態様(11)は、前記物品の厚さが、約0.05mmから約1.5mmの範囲にある、態様(1)から(10)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0109】
本開示の態様(12)は、前記ガラス物品の厚さが少なくとも約1mmであり、前記最大圧縮応力が前記表面で少なくとも約1050MPaである、態様(1)から(11)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0110】
本開示の態様(13)は、前記ガラス物品の厚さが少なくとも約1mmであり、前記最大圧縮応力が前記表面で少なくとも約930MPaである、態様(1)から(12)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0111】
本開示の態様(14)は、前記ガラス物品が化学強化されている、態様(1)から(13)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0112】
本開示の態様(15)は、前記物品が、厚さおよび前記DOLから該厚さの0.5倍と等しい深さまで延在する中央領域を含み、該中央領域がK2Oを含まない、態様(1)から(14)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0113】
本開示の態様(16)は、前記ガラス物品の曲げ半径が、約1mmの厚さで約37mm未満である、態様(1)から(15)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0114】
本開示の態様(17)は、前記曲げ半径が約35mm未満である、態様(16)によるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0115】
本開示の態様(18)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、前記層の深さから該ガラス物品中に延在する引張領域を有し、該引張領域が、約20MPa未満または約40MPa超の最大引張応力を有する、態様(1)から(17)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0116】
本開示の態様(19)は、態様(1)から(18)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品、および第2の物品を備えた積層板に関する。
【0117】
本開示の態様(20)は、消費者向け電子機器において、筐体;該筐体の少なくとも部分的に内部に設けられた電気部品であって、少なくとも制御装置、メモリ、および前記筐体の前面またはその近傍に設けられたディスプレイを含む電気部品;並びに前記筐体の前面にまたはそれを覆って、かつ前記ディスプレイを覆って配置されたカバー物品であって、態様(1)から(18)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を含むカバー物品を備えた消費者向け電子機器に関する。
【0118】
本開示の態様(21)は、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品であって、厚さt、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の表面から層の深さ(DOL)まで延在する圧縮応力層、および最大引張応力を有し、前記DOLから延在する中央領域を有し、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、B23を含まず、少なくとも約58モル%のSiO2、約0.5モル%から約3モル%のP25、少なくとも約11モル%のAl23、Na2OおよびLi2Oを含み、Na2O(モル%)に対するLi2O(モル%)の量の比(Li2O/Na2O)が1.0未満であり、前記DOLが0.25×t以下であり、前記最大引張応力が約35MPa以上である、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0119】
本開示の態様(22)は、前記ガラス物品が、前記中央領域内に、実質的に放物線である引張応力プロファイルをさらに含む、態様(21)によるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0120】
本開示の態様(23)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の仮想温度Tfが、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の粘度が1011ポアズである温度と等しい、態様(21)または態様(22)によるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0121】
本開示の態様(24)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品のジルコン分解度が約35キロポアズ未満である、態様(21)から(23)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0122】
本開示の態様(25)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の液相粘度が少なくとも200キロポアズである、態様(21)から(24)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0123】
本開示の態様(26)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、2未満である、比R2O(モル%)/Al23(モル%)を有し、式中、R2O=Li2O+Na2Oである、態様(21)から(25)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0124】
本開示の態様(27)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、65モル%超かつ67モル%未満である、SiO2とP25の合計量(65モル%<SiO2(モル%)+P25(モル%)<67モル%)を有する、態様(21)から(26)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0125】
本開示の態様(28)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約-3モル%超である、関係式R2O(モル%)+R’O(モル%)-Al23(モル%)+P25(モル%)を有し、式中、R2O=該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在するLi2OとNa2Oの合計量、およびR’Oは、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在する二価金属酸化物の合計量である、態様(21)から(27)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0126】
本開示の態様(29)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約58モル%から約65モル%のSiO2、約11モル%から約20モル%のAl23、約6モル%から約18モル%のNa2O、0モル%から約6モル%のMgO、および0モル%から約6モル%のZnOを含む、態様(21)から(28)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0127】
本開示の態様(30)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約0.5モル%から約2.8モル%の範囲の量でP25を含む、態様(21)から(29)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0128】
本開示の態様(31)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約10モル%までの量でLi2Oを含む、態様(21)から(30)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0129】
本開示の態様(32)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品がK2Oを含まない、態様(21)から(31)いずれか1つによるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0130】
態様(33)は、デバイスにおいて、前面、背面、および側面を有する筐体;該筐体の少なくとも部分的に内部にある電気部品;前記筐体の前面またはその近傍にあるディスプレイ;および該ディスプレイの上に配置された強化済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品であって、該強化済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の表面から層の深さ(DOL)まで延在する圧縮応力層を含み、該圧縮応力層が前記表面で少なくとも400MPaの最大圧縮応力を有し、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、少なくとも約58モル%のSiO2、約0.5モル%から約3モル%のP25、少なくとも約11モル%のAl23、Na2OおよびLi2Oを含み、Na2O(モル%)に対するLi2O(モル%)の量の比(Li2O/Na2O)が1.0未満であり、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品がB23を含まない、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を備えたデバイスに関する。
【0131】
態様(34)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の仮想温度Tfが、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の粘度が1011ポアズである温度と等しい、態様(33)のデバイスに関する。
【0132】
態様(35)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品のジルコン分解度が約35キロポアズ未満である、態様(33)または態様(34)のデバイスに関する。
【0133】
態様(36)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の液相粘度が少なくとも200キロポアズである、態様(33)から(35)いずれか1つのデバイスに関する。
【0134】
態様(37)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、2未満である、比R2O(モル%)/Al23(モル%)を有し、式中、R2O=Li2O+Na2Oである、態様(33)から(36)いずれか1つのデバイスに関する。
【0135】
態様(38)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、65モル%超かつ67モル%未満である、SiO2とP25の合計量(65モル%<SiO2(モル%)+P25(モル%)<67モル%)を有する、態様(33)から(37)いずれか1つのデバイスに関する。
【0136】
態様(39)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約-3モル%超である、関係式R2O(モル%)+R’O(モル%)-Al23(モル%)+P25(モル%)を有し、式中、R2O=該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在するLi2OとNa2Oの合計量、およびR’Oは、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在する二価金属酸化物の合計量である、態様(33)から(38)いずれか1つのデバイスに関する。
【0137】
態様(40)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約58モル%から約65モル%のSiO2、約11モル%から約20モル%のAl23、約6モル%から約18モル%のNa2O、0モル%から約6モル%のMgO、および0モル%から約6モル%のZnOを含む、態様(33)から(39)いずれか1つのデバイスに関する。
【0138】
態様(41)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約0.5モル%から約2.8モル%の範囲の量でP25を含む、態様(33)から(40)いずれか1つのデバイスに関する。
【0139】
態様(42)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約10モル%までの量でLi2Oを含む、態様(33)から(41)いずれか1つのデバイスに関する。
【0140】
態様(43)は、前記物品の厚さが、約0.05mmから約1.5mmの範囲にある、態様(33)から(42)いずれか1つのデバイスに関する。
【0141】
態様(44)は、前記ガラス物品の厚さが少なくとも約1mmであり、前記最大圧縮応力が前記表面で少なくとも約1050MPaである、態様(33)から(43)いずれか1つのデバイスに関する。
【0142】
態様(45)は、前記ガラス物品の厚さが少なくとも約1mmであり、前記最大圧縮応力が前記表面で少なくとも約930MPaである、態様(33)から(44)いずれか1つのデバイスに関する。
【0143】
態様(46)は、前記層の深さが少なくとも40μmである、態様(33)から(45)いずれか1つのデバイスに関する。
【0144】
態様(47)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が化学強化されている、態様(33)から(46)いずれか1つのデバイスに関する。
【0145】
態様(48)は、前記ガラス物品が、厚さおよび前記DOLから該厚さの0.5倍と等しい深さまで延在する中央領域を含み、該中央領域がK2Oを含まない、態様(33)から(47)いずれか1つのデバイスに関する。
【0146】
態様(49)は、前記デバイスが、携帯電話、スマートフォン、タブレット、ビデオプレーヤー、情報端末(IT)機器、音楽プレーヤー、およびラップトップコンピュータからなる群より選択される携帯型電子通信機器およびエンターテイメント機器を含む、態様(33)から(48)いずれか1つのデバイスに関する。
【0147】
態様(50)は、少なくとも約58モル%のSiO2、約0.5モル%から約3モル%のP25、少なくとも約11モル%のAl23、Na2OおよびLi2Oを含むアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品であって、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品がB23およびK2Oを含まず、Na2O(モル%)に対するLi2O(モル%)の量の比(Li2O/Na2O)が1.0未満である、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0148】
態様(51)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約0.5モル%から約2.8モル%の範囲の量でP25を含む、態様(50)のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0149】
態様(52)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約10モル%までの量でLi2Oを含む、態様(50)または態様(51)のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0150】
態様(53)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の仮想温度Tfが、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の粘度が1011ポアズである温度と等しい、態様(50)から(52)いずれか1つのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0151】
態様(54)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品のジルコン分解度が約35キロポアズ未満である、態様(50)から(53)いずれか1つのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0152】
態様(55)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の液相粘度が少なくとも200キロポアズである、態様(50)から(54)いずれか1つのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0153】
態様(56)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、2未満である、比R2O(モル%)/Al23(モル%)を有し、式中、R2O=Li2O+Na2Oである、態様(50)から(55)いずれか1つのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0154】
態様(57)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、65モル%超かつ67モル%未満である、SiO2とP25の合計量(65モル%<SiO2(モル%)+P25(モル%)<67モル%)を有する、態様(50)から(56)いずれか1つのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0155】
態様(58)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約-3モル%超である、関係式R2O(モル%)+R’O(モル%)-Al23(モル%)+P25(モル%)を有し、式中、R2O=該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在するLi2OとNa2Oの合計量、およびR’Oは、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在する二価金属酸化物の合計量である、態様(50)から(57)いずれか1つのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0156】
態様(59)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約58モル%から約65モル%のSiO2、約11モル%から約20モル%のAl23、約6モル%から約18モル%のNa2O、0モル%から約6モル%のMgO、および0モル%から約6モル%のZnOを含む、態様(50)から(58)いずれか1つのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に関する。
【0157】
態様(60)は、態様(50)から(59)いずれか1つのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品、および第2の物品を備えた積層板に関する。
【0158】
態様(61)は、デバイスであって、前面、背面、および側面を有する筐体;該筐体の少なくとも部分的に内部にある電気部品;前記筐体の前面またはその近傍にあるディスプレイ;および態様(50)から(59)いずれか1つのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を備えたデバイスに関する。
【0159】
態様(62)は、圧縮応力層を有する強化済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を製造する方法において、アルミノケイ酸塩ガラス物品をイオン交換することによって、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に圧縮応力層を生成する工程を有してなり、該アルミノケイ酸塩ガラス物品が、B23およびK2Oを含まず、少なくとも約58モル%のSiO2、約0.5モル%から約3モル%のP25、少なくとも約11モル%のAl23、Na2OおよびLi2Oを含み、Na2O(モル%)に対するLi2O(モル%)の量の比(Li2O/Na2O)が1.0未満であり、前記圧縮応力層が、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の表面から層の深さまで延在し、前記圧縮応力層が、前記表面で少なくとも約400MPaの最大圧縮応力を有する、方法に関する。
【0160】
態様(63)は、前記最大圧縮応力が少なくとも800MPaである、態様(62)による方法に関する。
【0161】
態様(64)は、前記層の深さが少なくとも約40μmである、態様(62)または態様(63)による方法に関する。
【0162】
態様(65)は、前記最大圧縮応力が少なくとも1050MPaである、態様(62)から(64)いずれか1つによる方法に関する。
【0163】
態様(66)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品をイオン交換する工程が、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を溶融塩浴中に浸漬する工程を含む、態様(62)から(65)いずれか1つによる方法に関する。
【0164】
態様(67)は、前記溶融塩浴がNaNO3を含む、態様(66)による方法に関する。
【0165】
態様(68)は、前記溶融塩浴がKNO3を含む、態様(66)による方法に関する。
【0166】
態様(69)は、前記溶融塩浴がNaNO3およびKNO3を含む、態様(66)による方法に関する。
【0167】
態様(70)は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の厚さが約0.05mmから約1.5mmの範囲にある、態様(62)から(69)いずれか1つによる方法に関する。
【0168】
態様(71)は、イオン交換された前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を基板に接合して、積層構造を形成する工程をさらに含む、態様(62)から(70)いずれか1つによる方法に関する。
【0169】
態様(72)は、イオン交換された前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を電子機器の筐体に接合する工程をさらに含む、態様(62)から(70)いずれか1つによる方法に関する。
【0170】
説明の目的のために、典型的な実施の形態を述べてきたが、先の記載は、本開示の範囲または付随の特許請求の範囲に対する制限と考えるべきではない。したがって、本開示または付随の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱せずに、様々な改変、適用、および代替手段が当業者に想起されるであろう。
【0171】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0172】
実施形態1
アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品であって、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の表面から層の深さ(DOL)まで延在し、前記表面で少なくとも400MPaの最大圧縮応力を有する圧縮応力層を備え、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品は、少なくとも約58モル%のSiO2、約0.5モル%から約3モル%のP25、少なくとも約11モル%のAl23、Na2OおよびLi2Oを含み、Na2O(モル%)に対するLi2O(モル%)の量の比(Li2O/Na2O)が1.0未満であり、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品はB23を含まない、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0173】
実施形態2
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の仮想温度Tfが、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の粘度が1011ポアズである温度と等しい、実施形態1に記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0174】
実施形態3
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品のジルコン分解度が約35キロポアズ未満である、実施形態1または2に記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0175】
実施形態4
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の液相粘度が少なくとも200キロポアズである、実施形態1から3いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0176】
実施形態5
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、2未満である、比R2O(モル%)/Al23(モル%)を有し、式中、R2O=Li2O+Na2Oである、実施形態1から4いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0177】
実施形態6
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、65モル%超かつ67モル%未満である、SiO2とP25の合計量(65モル%<SiO2(モル%)+P25(モル%)<67モル%)を有する、実施形態1から5いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0178】
実施形態7
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約-3モル%超である、関係式R2O(モル%)+R’O(モル%)-Al23(モル%)+P25(モル%)を有し、式中、R2O=該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在するLi2OとNa2Oの合計量、およびR’Oは、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在する二価金属酸化物の合計量である、実施形態1から6いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0179】
実施形態8
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約58モル%から約65モル%のSiO2、約11モル%から約20モル%のAl23、約6モル%から約18モル%のNa2O、0モル%から約6モル%のMgO、および0モル%から約6モル%のZnOを含む、実施形態1から7いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0180】
実施形態9
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約0.5モル%から約2.8モル%の範囲の量でP25を含む、実施形態1から8いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0181】
実施形態10
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約10モル%までの量でLi2Oを含む、実施形態1から9いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0182】
実施形態11
約0.05mmから約1.5mmの範囲にある厚さをさらに有する、実施形態1から10いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0183】
実施形態12
少なくとも約1mmの厚さをさらに有し、前記最大圧縮応力が前記表面で少なくとも約1050MPaである、実施形態1から10いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0184】
実施形態13
少なくとも約1mmの厚さをさらに有し、前記最大圧縮応力が前記表面で少なくとも約930MPaである、実施形態1から10いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0185】
実施形態14
前記ガラス物品が化学強化されている、実施形態1から13いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0186】
実施形態15
厚さおよび前記DOLから該厚さの0.5倍と等しい深さまで延在する中央領域をさらに含み、該中央領域がK2Oを含まない、実施形態1から10いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0187】
実施形態16
前記ガラス物品の曲げ半径が、約1mmの厚さで約37mm未満である、実施形態1から15いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0188】
実施形態17
前記曲げ半径が約35mm未満である、実施形態16に記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0189】
実施形態18
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、前記層の深さから該ガラス物品中に延在する引張領域を有し、該引張領域が、約20MPa未満または約40MPa超の最大引張応力を有する、実施形態1から17いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0190】
実施形態19
実施形態1から18いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品、および第2の物品を備えた積層板。
【0191】
実施形態20
消費者向け電子機器において、筐体;該筐体の少なくとも部分的に内部に設けられた電気部品であって、少なくとも制御装置、メモリ、および前記筐体の前面またはその近傍に設けられたディスプレイを含む電気部品;並びに前記筐体の前面にまたはそれを覆って、かつ前記ディスプレイを覆って配置されたカバー物品であって、実施形態1から18いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を含むカバー物品を備えた消費者向け電子機器。
【0192】
実施形態21
アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品であって、厚さt、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の表面から層の深さ(DOL)まで延在する圧縮応力層、および最大引張応力を有する中央領域を有し、
該中央領域が前記DOLから延在し、
該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、B23を含まず、少なくとも約58モル%のSiO2、約0.5モル%から約3モル%のP25、少なくとも約11モル%のAl23、Na2OおよびLi2Oを含み、Na2O(モル%)に対するLi2O(モル%)の量の比(Li2O/Na2O)が1.0未満であり、
前記DOLが0.25×t以下であり、
前記最大引張応力が約35MPa以上である、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0193】
実施形態22
前記中央領域内に、実質的に放物線である引張応力プロファイルをさらに含む、実施形態21に記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0194】
実施形態23
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の仮想温度Tfが、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の粘度が1011ポアズである温度と等しい、実施形態21または22に記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0195】
実施形態24
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品のジルコン分解度が約35キロポアズ未満である、実施形態21から23いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0196】
実施形態25
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の液相粘度が少なくとも200キロポアズである、実施形態21から24いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0197】
実施形態26
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、2未満である、比R2O(モル%)/Al23(モル%)を有し、式中、R2O=Li2O+Na2Oである、実施形態21から25いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0198】
実施形態27
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、65モル%超かつ67モル%未満である、SiO2とP25の合計量(65モル%<SiO2(モル%)+P25(モル%)<67モル%)を有する、実施形態21から26いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0199】
実施形態28
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約-3モル%超である、関係式R2O(モル%)+R’O(モル%)-Al23(モル%)+P25(モル%)を有し、式中、R2O=該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在するLi2OとNa2Oの合計量、およびR’Oは、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在する二価金属酸化物の合計量である、実施形態21から27いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0200】
実施形態29
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約58モル%から約65モル%のSiO2、約11モル%から約20モル%のAl23、約6モル%から約18モル%のNa2O、0モル%から約6モル%のMgO、および0モル%から約6モル%のZnOを含む、実施形態21から28いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0201】
実施形態30
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約0.5モル%から約2.8モル%の範囲の量でP25を含む、実施形態21から29いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0202】
実施形態31
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約10モル%までの量でLi2Oを含む、実施形態21から30いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0203】
実施形態32
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品がK2Oを含まない、実施形態21から31いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0204】
実施形態33
デバイスにおいて、
前面、背面、および側面を有する筐体;
該筐体の少なくとも部分的に内部にある電気部品;
前記筐体の前面またはその近傍にあるディスプレイ;および
該ディスプレイの上に配置された強化済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品であって、該強化済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の表面から層の深さ(DOL)まで延在する圧縮応力層を含み、該圧縮応力層が前記表面で少なくとも400MPaの最大圧縮応力を有し、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、少なくとも約58モル%のSiO2、約0.5モル%から約3モル%のP25、少なくとも約11モル%のAl23、Na2OおよびLi2Oを含み、Na2O(モル%)に対するLi2O(モル%)の量の比(Li2O/Na2O)が1.0未満であり、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、B23を含まない、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品;
を備えたデバイス。
【0205】
実施形態34
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の仮想温度Tfが、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の粘度が1011ポアズである温度と等しい、実施形態33に記載のデバイス。
【0206】
実施形態35
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品のジルコン分解度が約35キロポアズ未満である、実施形態33または34に記載のデバイス。
【0207】
実施形態36
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の液相粘度が少なくとも200キロポアズである、実施形態33から35いずれか1つに記載のデバイス。
【0208】
実施形態37
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、2未満である、比R2O(モル%)/Al23(モル%)を有し、式中、R2O=Li2O+Na2Oである、実施形態33から36いずれか1つに記載のデバイス。
【0209】
実施形態38
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、65モル%超かつ67モル%未満である、SiO2とP25の合計量(65モル%<SiO2(モル%)+P25(モル%)<67モル%)を有する、実施形態33から37いずれか1つに記載のデバイス。
【0210】
実施形態39
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約-3モル%超である、関係式R2O(モル%)+R’O(モル%)-Al23(モル%)+P25(モル%)を有し、式中、R2O=該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在するLi2OとNa2Oの合計量、およびR’Oは、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在する二価金属酸化物の合計量である、実施形態33から38いずれか1つに記載のデバイス。
【0211】
実施形態40
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約58モル%から約65モル%のSiO2、約11モル%から約20モル%のAl23、約6モル%から約18モル%のNa2O、0モル%から約6モル%のMgO、および0モル%から約6モル%のZnOを含む、実施形態33から39いずれか1つに記載のデバイス。
【0212】
実施形態41
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約0.5モル%から約2.8モル%の範囲の量でP25を含む、実施形態33から40いずれか1つに記載のデバイス。
【0213】
実施形態42
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約10モル%までの量でLi2Oを含む、実施形態33から41いずれか1つに記載のデバイス。
【0214】
実施形態43
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の厚さが、約0.05mmから約1.5mmの範囲にある、実施形態33から42いずれか1つに記載のデバイス。
【0215】
実施形態44
少なくとも約1mmの厚さをさらに有し、前記最大圧縮応力が前記表面で少なくとも約1050MPaである、実施形態33から42いずれか1つに記載のデバイス。
【0216】
実施形態45
少なくとも約1mmの厚さをさらに有し、前記最大圧縮応力が前記表面で少なくとも約930MPaである、実施形態33から44いずれか1つに記載のデバイス。
【0217】
実施形態46
前記層の深さが少なくとも40μmである、実施形態33から45いずれか1つに記載のデバイス。
【0218】
実施形態47
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が化学強化されている、実施形態33から46いずれか1つに記載のデバイス。
【0219】
実施形態48
厚さおよび前記DOLから該厚さの0.5倍と等しい深さまで延在する中央領域をさらに含み、該中央領域がK2Oを含まない、実施形態33から47いずれか1つに記載のデバイス。
【0220】
実施形態49
前記デバイスが、携帯電話、スマートフォン、タブレット、ビデオプレーヤー、情報端末(IT)機器、音楽プレーヤー、およびラップトップコンピュータからなる群より選択される携帯型電子通信機器およびエンターテイメント機器を含む、実施形態33から48いずれか1つに記載のデバイス。
【0221】
実施形態50
少なくとも約58モル%のSiO2、約0.5モル%から約3モル%のP25、少なくとも約11モル%のAl23、Na2OおよびLi2Oを含むアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品であって、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品がB23およびK2Oを含まず、Na2O(モル%)に対するLi2O(モル%)の量の比(Li2O/Na2O)が1.0未満である、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0222】
実施形態51
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約0.5モル%から約2.8モル%の範囲の量でP25を含む、実施形態50に記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0223】
実施形態52
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約10モル%までの量でLi2Oを含む、実施形態50または51に記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0224】
実施形態53
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の仮想温度Tfが、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の粘度が1011ポアズである温度と等しい、実施形態50から52いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0225】
実施形態54
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品のジルコン分解度が約35キロポアズ未満である、実施形態50から53いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0226】
実施形態55
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の液相粘度が少なくとも200キロポアズである、実施形態50から54いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0227】
実施形態56
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、2未満である、比R2O(モル%)/Al23(モル%)を有し、式中、R2O=Li2O+Na2Oである、実施形態50から55いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0228】
実施形態57
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、65モル%超かつ67モル%未満である、SiO2とP25の合計量(65モル%<SiO2(モル%)+P25(モル%)<67モル%)を有する、実施形態50から56いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0229】
実施形態58
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約-3モル%超である、関係式R2O(モル%)+R’O(モル%)-Al23(モル%)+P25(モル%)を有し、式中、R2O=該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在するLi2OとNa2Oの合計量、およびR’Oは、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に存在する二価金属酸化物の合計量である、実施形態50から57いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0230】
実施形態59
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が、約58モル%から約65モル%のSiO2、約11モル%から約20モル%のAl23、約6モル%から約18モル%のNa2O、0モル%から約6モル%のMgO、および0モル%から約6モル%のZnOを含む、実施形態50から58いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品。
【0231】
実施形態60
実施形態50から59いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品、および第2の物品を備えた積層板。
【0232】
実施形態61
デバイスであって、
前面、背面、および側面を有する筐体;
該筐体の少なくとも部分的に内部にある電気部品;
前記筐体の前面またはその近傍にあるディスプレイ;および
実施形態50から59いずれか1つに記載のアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品;
を備えたデバイス。
【0233】
実施形態62
圧縮応力層を有する強化済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を製造する方法において、
アルミノケイ酸塩ガラス物品をイオン交換することによって、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品中に圧縮応力層を生成する工程;
を有してなり、
該アルミノケイ酸塩ガラス物品が、B23およびK2Oを含まず、少なくとも約58モル%のSiO2、約0.5モル%から約3モル%のP25、少なくとも約11モル%のAl23、Na2OおよびLi2Oを含み、Na2O(モル%)に対するLi2O(モル%)の量の比(Li2O/Na2O)が1.0未満であり、
前記圧縮応力層が、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の表面から層の深さまで延在し、
前記圧縮応力層が、前記表面で少なくとも約400MPaの最大圧縮応力を有する、方法。
【0234】
実施形態63
前記最大圧縮応力が少なくとも800MPaである、実施形態62に記載の方法。
【0235】
実施形態64
前記層の深さが少なくとも約40μmである、実施形態62または63に記載の方法。
【0236】
実施形態65
前記最大圧縮応力が少なくとも1050MPaである、実施形態62から64いずれか1つに記載の方法。
【0237】
実施形態66
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品をイオン交換する工程が、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を溶融塩浴中に浸漬する工程を含む、実施形態62から65いずれか1つに記載の方法。
【0238】
実施形態67
前記溶融塩浴がNaNO3を含む、実施形態66に記載の方法。
【0239】
実施形態68
前記溶融塩浴がKNO3を含む、実施形態66に記載の方法。
【0240】
実施形態69
前記溶融塩浴がNaNO3およびKNO3を含む、実施形態66に記載の方法。
【0241】
実施形態70
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品の厚さが約0.05mmから約1.5mmの範囲にある、実施形態62から69いずれか1つに記載の方法。
【0242】
実施形態71
イオン交換された前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を基板に接合して、積層構造を形成する工程をさらに含む、実施形態62から70いずれか1つに記載の方法。
【0243】
実施形態72
イオン交換された前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を電子機器の筐体に接合する工程をさらに含む、実施形態62から70いずれか1つに記載の方法。
【符号の説明】
【0244】
100 強化済みアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品、カバーガラス
110 第一面
112 第二面
120 第1の圧縮層
122 第2の圧縮層
130 中央領域
200 積層板
210 アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品
215 接着層
220 第2の物品
1000 消費者向け電子機器
1020 筐体
1040 前面
1060 背面
1080 側面
1120 ディスプレイ
図1
図2
図3
図4