(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】釘、特に、釘打ち装置で使用される釘
(51)【国際特許分類】
F16B 15/00 20060101AFI20230721BHJP
F16B 15/08 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
F16B15/00 D
F16B15/00 B
F16B15/00 G
F16B15/08 A
(21)【出願番号】P 2022001768
(22)【出願日】2022-01-07
【審査請求日】2022-01-07
(32)【優先日】2021-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516053811
【氏名又は名称】ライムント ベック ナーゲルテクニク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ジーマーズ
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0269381(US,A1)
【文献】特表2019-512654(JP,A)
【文献】特開2004-332933(JP,A)
【文献】特開2002-122111(JP,A)
【文献】特開2007-278420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 15/00
F16B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロース系材料のみ、または主にリグノセルロース系材料で作られており、釘の軸線(X)を画定する釘軸部(2)と、前記釘軸部(2)の前端に配置された釘先端部(3)と、前記釘軸部(2)の後端に配置され、前記釘軸部(2)よりも幅広に設計された釘頭部(4)とを
有し、釘打ち装置で使用される釘であって、前記釘軸部(2)、前記釘先端部(3)、および前記釘頭部(4)が円形の断面を有し、前記釘軸部(2)と前記釘頭部(4)が、前記釘頭部(4)に向かって広がり、その環状の外面が前記釘の軸線(X)に向かって凹状に湾曲している移行領域(5)によって接続され
、前記移行領域(5)の外面は、断面が円弧の断面の形状に形成され、特に、90°の周方向の角度にわたって延び、前記釘頭部(4)の直径(D
K
)が前記移行領域(5)に隣接する前記釘軸部(2)の軸方向後端部(2a)の直径より25%~40%大きいことを特徴とする、釘。
【請求項2】
前記外面は特に、曲率半径(R)が0.3mm以
上であることを特徴とする、請求項1に記載の釘。
【請求項3】
前記移行領域(5)が、前端面、特に、前記釘頭部(4)の前部外周縁から直接始まり、および/または、前記釘軸部(2)に連続して合流していることを特徴とする、請求項1または2の一項に記載の釘。
【請求項4】
前記釘頭部(4)が少なくとも5mmおよび/または最大7.0mmの直径(D
K)を有し
、かつ/または、前記釘頭部の全長が1.5mm以上および/または4.5mm以
下であることを特徴とする、請求項1~3のうちの一項に記載の釘。
【請求項5】
前記釘の全長が、少なくとも50mmおよび/または最大90m
mであり、かつ/または、前記釘先端部(3)のポイント角度(α)が60~120°の範
囲であることを特徴とする、請求項1~4のうちの一項に記載の釘。
【請求項6】
前記移行領域(5)に隣接する前記釘軸部(2)の軸方向後端部(2a)は、一定の直径(Ds)を有してお
り、当該一定の直径は、少なくとも3.5mm、および/または、最大5.5m
mであることを特徴とする、請求項1~5のうちの一項に記載の釘。
【請求項7】
前記釘軸部(2)は、その全長にわたって一定の円形の断面を有することを特徴とする、請求項の1~6のうちの一項に記載の釘。
【請求項8】
前記釘軸部(2)は、前記軸方向後端部(2a)に隣接する軸方向の軸部(2b)を有し、その上に、各々が前記釘先端部(3)に向かって円錐状に先細りした構造部(6a)を有するアンカー構造(6)が形成されており、
各々の前記
構造部(6a)が、同様に形成されていることを特徴とする、請求項6に記載の釘。
【請求項9】
前記アンカー構造は、前記移行領域(5)に隣接する前記釘軸部(2)の前記軸方向後端部(2a)の軸径(D
S)よりも大きく、特に、少なくとも1.5%、および/または最大3
%大きい最大構造直径(D
1)を有し、前記最大構造直径(D
1)は、特に、4.8mmであることを特徴とする、請求項8に記載の釘。
【請求項10】
前記アンカー構造(6)が、前記移行領域(5)に隣接する前記釘軸部(2)の前記軸方向後端部(2a)の前記軸径(D
S)よりも小さい、特に、少なくとも8%および/または最大12
%小さい最小構造直径(D
2)を有し、前記
最小構造直径(D
2)は4.3mmであることを特徴とする、請求
項9に記載の釘。
【請求項11】
前記釘頭部(4)に面する前記円錐状に先細りした構造部(6a)の後端に前記最大構造直径(D
1)が存
在することを特徴とする、請求項
9に記載の釘。
【請求項12】
アンカー構造(6)は、各々円錐状に先細りした構造部の後ろの長手方向に位置する2段の移行部(6b)を有し、その第1の後部移行段は円形セグメント状の断面を有し、その第2の前部移行段は円形セグメント状の断面を有し、前記第2の
前部移行段の曲率半径(K
2)は前記第1の
後部移行段の曲率半径(K
1)よりも大きく、前記第1の
後部移行段の前記曲率半径(K
1)は特に、0.2mmであり、前記第2の
前部移行段の前記曲率半径(K
2)は特に、0.25mmであり、および/または、前記円錐状に先細りした構造部(6
a)と前記移行部(6b)を有する前記アンカー構造(6)の全長は、少なくとも2mmおよび/または最大2.3mmであ
り、および/または、
前記アンカー構造(6)が形成された軸方向の軸部(2b)と釘先端部(3)との間に、軸方向後端部(2a)の直径に対応する一定の直径を有する前記釘軸部(2)の前端部(2c)が設けられており、特に、前記軸方向前端部(2c)の軸方向の長さが0.5mm~1.5mmの間で
ある、請求項11に記載の釘。
【請求項13】
有機結合された木質材
料で作られてお
り、前記有機結合された材料は、合成樹脂として特に、メラミンまたはフェノール樹脂を含み、および/または有機結合された木質材料は、特に、少なくとも10重量
%の量の合成樹脂を含
み、
かつ/または、0.65g/cm
3より大きい密
度を有する材料で構成されていることを特徴とする、請求項1~12のうちの一項に記載の釘。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の釘を複数備えた釘片。
【請求項15】
ファサードボードを下部構造に固定するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の釘または請求項14に記載の釘片の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、釘打ち装置で使用される釘に関するもので、リグノセルロース系材料のみ、または主にリグノセルロース系材料で作られており、釘の軸線を画定する釘軸部と、釘軸部の前端に配置された釘先端部と、釘軸部の後端に配置され、釘軸部よりも幅広に設計された釘頭部とを有する。
【背景技術】
【0002】
釘は古くから締結金具として知られている。主な材質は、例えば、スチール、アルミニウム、銅などの金属である。しかし、金属製の釘にはデメリットもある。例えば、亜鉛メッキなどの防錆対策を施しても、鉄製の釘は好ましくない環境下、特に、釘を打った材料が酸性である場合には、錆びやすい。特に、タンニンを多く含む木材は、その耐久性から、例えば、ファサードやテラスなどの屋外で使用される。風雨にさらされると、釘が刺さった領域に望ましくない黒ずみや、黒変が発生することがある。ステンレス鋼のグレードを使用して改善することも可能であるが、非常にコストがかかる。また、鉄製の釘が点在して刺さったままの木製品のリサイクルにはコストがかかるというデメリットもある。
【0003】
そのため、代替品として、例えば、木や竹などの形態の木質植物材料など、リグノセルロース系材料を主原料とした釘が使用される。長い間、このような木製の釘は、打ち込む基板にあらかじめ釘を打つための穴が空いている場合にのみ使用できるものであった。しかし最近の進化により、空気式釘打ち機などの釘打ち装置を使って、木質材料に穴を開けずに直接木製の釘を打ち込むことができるようになった。特に、本出願人の特許文献1を参照すると、釘打ち機で使用される釘片が知られており、その釘は、釘軸部と釘先端部から構成されており、木または木質材料で作られており、釘が打たれたときに自動的にせん断される接続手段によって互いに接続されている。釘軸部、釘先端部、および釘頭部からなる別の釘で、いくつかある中で、特に、木質材料でできているものが、特許文献2に開示されている。既知の釘の欠点は、ファサードボードを下部構造に取り付ける適合性が限定的であることである。なぜなら、頭部端部の板材料への侵入の深さを画定した方法で判断することができず、ファサードボードが頭部端部上で滑り落ちる危険性があるからである。つまり、従来の木製の釘で取り付けられたファサードパネルが確実に保持されるかどうかは十分に保証されていないのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/180900号 パンフレット
【文献】独国特許出願公開第10 2017 100748号 明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、ファサードパネルボードを下部構造に固定するのに適した上述のタイプの釘を作成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題を解決するために、本発明は、釘軸部、釘先端部、および釘頭部が円形の断面を有し、釘軸部と釘頭部が、釘頭部に向かって広がり、その環状の外面が釘の軸線に向かって凹状に湾曲している移行領域によって接続されていることを特徴とする、上記タイプの釘を提供する。
【0007】
このような釘は、ファサードボードを、下部構造、例えば木製の構造物に固定するのに特に、適している。軸部よりも太い円形の釘頭部と、釘の軸線に向かって内側に湾曲した凹状の外面を有する、広がる移行領域との組み合わせにより、釘の優れた引き抜き特性が実現されている。さらに、ファサードパネルは、移行領域と釘頭部によって追加的に支持されているため、ファサードパネルの下部構造へしっかりと確実に固定保持される。
【0008】
本発明による円形の断面の釘は、棒材から旋削または旋盤加工によって簡単に製作することができる。
【0009】
好ましくは、移行領域の外面は、断面が円弧状で、特に、90°の周方向角度にわたって延在している。好ましくは、外面の曲率半径が0.3mm以上、好ましくは0.6mm以上、特に、好ましくは0.8mmであることである。特に、曲率半径がこの範囲であれば、良好な引き抜き強度が得られる。
【0010】
引き抜き強度をさらに向上させるために、移行領域が、前端面、特に、釘頭部の前部外周縁から直接始まり、かつ、釘軸部に連続して合流している。
【0011】
本発明のさらなる実施形態では、釘頭部は円筒形で、特に、直径が少なくとも5.0mmおよび/または最大で7.0mmの釘頭部である。好ましくは、直径は6.3mm±0.3mmである。有利なことに、釘頭部の直径は、移行領域に隣接する釘軸部の軸方向端部の直径よりも25%から40%大きい。特に、釘頭部の直径は、移行領域に隣接する釘軸部の軸方向後端部の直径よりも34±1%大きくなっている。
【0012】
本発明のさらなる実施形態では、釘頭部の全長は、1.5mm以上および/または4.5mm以下であり、特に、3.0~3.2mmである。このようにして、本発明による釘で固定されたファサードパネルボードの十分な支持が達成される。また、頭部の形状が比較的大きいため、打ち込み時の釘頭部の衝撃による頭部リング表面の破損を防ぐことができる。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、本発明による釘は、少なくとも50mmおよび/または最大90mm、特に、最大80mm、特に、好ましくは最大70mmの全長を有し、好ましくは60mmである。つまり、本発明による釘は、一般的なファサードパネルの厚さすべてに使用できるということである。
【0014】
有利なことに、移行領域に隣接する釘軸部の軸方向後端部は、一定の直径を有しており、その直径は、特に、少なくとも3.5mm、および/または最大5.5mm、好ましくは4.7mmである。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、釘軸部は、その全長にわたって一定の断面を有している。これにより、ファサードパネルへの釘の打ち込みが容易になる。
【0016】
あるいは、釘軸部は、軸方向後端部に隣接する軸方向の軸部を有し、その上に、釘先端部に向かって円錐状に先細りした構造部を各々が有するアンカー構造が形成されており、アンカー構造も同様に形成されているのが好ましい。これは、木材建築の一般的な基準によると、永久的な静的引抜きのためには釘軸部が、プロファイリングされていることが必要であるという事実を考慮したものである。
【0017】
アンカー構造は、移行領域に隣接する釘軸部の軸方向後端部の軸径よりも大きく、特に、少なくとも1.5%、および/または最大3%、好ましくは最大2~2.2%大きい最大構造直径を有することができる。本発明の特に好ましい実施形態では、最大構造直径は4.8mmである。この実施形態は、釘軸部が、移行領域に隣接するその軸方向の端部において、4.7mmの直径を有する場合に特に、有用である。
【0018】
本発明の一実施形態では、アンカー構造は、移行領域に隣接する釘軸部の軸方向後端部の軸径よりも小さい、特に、少なくとも8%および/または最大12%、好ましくは最大8.3~8.7%小さい最小構造直径を有する。好ましくは、最小軸径は4.3mmである。
【0019】
アンカー構造を備えた本発明の実施形態のさらなる特徴は、円錐状に先細りした構造部の釘頭部に面した後端部に最大構造直径がそれぞれ存在し、その前端部に最小構造直径が存在することである。
【0020】
この実施形態の有利なさらなる発展として、アンカー構造は、円錐状に先細りした構造部の後ろの長手方向に位置する2段の移行部を有し、その第1の後部移行段は円形セグメント状の断面を有し、第2の前部移行段は円形セグメント状の断面を有し、第2の移行段の曲率半径は第1の移行段の曲率半径より大きく、第1の移行段の曲率半径は特に、0.2mmであり、第2の移行段の曲率半径は特に、0.25mmである。
【0021】
好ましくは、円錐状に先細りした構造部と移行部を有するアンカー構造の全長は、少なくとも2mmおよび/または最大2.3mmであり、好ましくはアンカー構造の全長は2.1mmである。
【0022】
アンカー構造が形成されている軸方向の軸部は、釘先端部に直接隣接することができる。あるいは、移行領域に隣接する軸方向後端部の軸径に対応する一定の直径を有する軸方向前端部を間に設けることもできる。この前端部の軸方向の長さは、特に、0.5~1.5mmであり、好ましくは1mmである。
【0023】
釘先端の先端角は、60~120°の範囲が好ましく、特に、90°±3°が好ましい。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、釘が、木材および/または木質材料、特に、有機結合された木質材料、好ましくは樹脂結合された集成材またはリグノセルロース系繊維を含む樹脂結合された繊維複合材料で作られている。
【0025】
この有機結合された木質材料は、合成樹脂としてメラミンまたはフェノール樹脂を含むことが好ましく、これにより釘の安定性が特に、良好となる。
【0026】
有機結合された木質系材料は、有利には、少なくとも10重量%、特に、少なくとも15重量%の量で合成樹脂を含み、合成樹脂の含有量は好ましくは20重量%である。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、釘は、0.65g/cm3より大きい密度、特に、0.85g/cm3より大きい密度、好ましくは1.0g/cm3より大きい密度または1.1g/cm3より大きい密度を有する材料を含む。
【0028】
さらに、本発明では、本発明による複数の釘を含む釘片を作成する。このような釘片は、釘打ち装置、特に、空気式釘打ち機に使用することができる。
【0029】
最後に、本発明は、ファサードボードを下部構造、特に、木製の構造物に固定するために、本発明による釘または本発明による釘片を使用することを提案している。
【0030】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照した本発明による釘の2つの実施形態の以下の記載に基づいて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態による釘の正面図である。
【
図4】本発明のさらなる実施形態による釘の透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1~
図3および
図4~
図8は、本発明の釘1の2つの実施形態を示す。釘1は、密度が1.1g/cm
3より大きいリグノセルロース系材料を主成分としている。この場合は、リグノセルロース系材料は、複数の層を有する合成樹脂結合の集成材の形で、有機結合された木質材料である。また、リグノセルロース系材料は、リグノセルロース系繊維を含む合成樹脂結合型繊維複合材料であってもよい。本実施形態では、有機結合された木質系材料は、15重量%以上の量の合成樹脂を含む。本実施形態では、合成樹脂の含有量は約20重量%である。
【0033】
釘1は、釘の軸線Xを規定する釘軸部2と、釘軸部2の前端に配置された釘先端部3と、釘軸部2の後端に配置され、相対的に広がった釘頭部4とを備えており、釘軸部2と釘頭部4との間には、釘軸部2に向かって広がった移行領域5が延びている。釘軸部2、釘先端部3、釘頭部4、移行領域5は、それぞれ円形の断面を有している。
【0034】
釘先端部3は、円錐形であり、60°~120°の範囲にある先端角αを有し、図示の実施形態では90°±3°である。あるいは、弾道型釘先端部3を設けることも可能であり、その先端角は、釘軸部2への移行部における釘先端部3の前端と後端との間で測定されるものである。この場合、釘先端部3は、尖ったデザインが好ましいが、丸みを帯びたデザインでもよい。
【0035】
釘頭部4は円筒形で、釘の長さ方向に1.5~4.5mm、ここでは3mmの長さを有する。釘頭部3の外径DKは、5.0~7.0mmの範囲であり、図示の例では6.3mmである。釘頭部4の直径は、移行領域5に隣接する釘軸部2の軸方向後端部の直径DKよりも25~40%、特に、34±1%大きいことが不可欠であるとともに、3.5mm~5.5mmの範囲にあり、図示の実施形態例では4.7mmである。
【0036】
釘軸部2と釘頭部4の間の移行領域5は、釘軸部2から釘頭4に向かって広がっている。移行領域5の環状の外面は、釘の軸線Xに向かって、すなわち凹状に湾曲しており、断面において、すなわち釘1を通る長手方向の断面において、外面は、円周方向に90°の角度で延びる断面円弧の形状を有している。外面は、釘頭部4の前部外周縁から直接始まり、釘軸部2に連続して合流する。これにより、円弧形状部の曲率半径Rは、0.3mm以上、好ましくは0.6mm以上であり、図示の実施形態の例では0.8mmである。
【0037】
釘1は、50mmから90mmの範囲内の全長を有し、図示の実施形態の例では全長が58mmである。
【0038】
図1~
図3に示す釘1では、釘軸部2は、その全長にわたって一定の直径を有している。
【0039】
図4~
図8に示す本発明による釘1の実施形態は、釘軸部2がその全長にわたって一定の断面を持つ平滑なものではないという点のみが、
図1~
図3に示す実施形態と異なる。むしろ、この場合、移行領域5に隣接する釘軸部2の後端部2aのみが4.7mmの一定の直径で平滑になっている。この軸方向後端部2aは、15mmの距離にわたって延びている。
【0040】
この軸方向後端部2に釘先端部3の径方向に隣接する軸方向の軸部2bは、滑らかな外面を有していない。むしろ、アンカー構造6は、この軸方向の軸部2bに形成されており、その各々は、釘先端部3に向かって円錐状に先細りした構造部6aと、それに隣接する後部の移行部6bとを有している。このようなアンカー構造6は、軸方向の軸部に合計15個設けられており、各々が同様に形成されている。
【0041】
具体的には、アンカー構造6は、移行部5に隣接する釘軸部2の後端部2aの軸径DSよりも大きい最大構造直径D1を有している。この場合、最大構造直径D1は、釘軸部2の後端部2aの軸径よりも、少なくとも1.5%および/または最大3%大きくするべきである。図示された実施形態の例では、最大構造直径D1は4.8mmであり、いずれの場合も、釘頭部4に面する円錐状に先細りした構造部6aの後端に位置している。つまり、最大構造直径D1は、釘軸部2の軸方向後端部の部位2aの軸径DSよりも2.1%大きい。
【0042】
アンカー構造6は、円錐状に先細りした構造部6aの前端部に最小構造直径D2を有しており、この直径は、移行領域5に隣接する釘軸部2の後端部2aにおける軸径DSよりも小さい。この場合、最小構造直径D2は、釘軸部2の軸方向後端部の軸径DSよりも、少なくとも8%および/または最大12%小さくすべきである。図示された実施形態の例では、最小軸径D2は4.3mmであり、軸径DSよりも8.5%小さい値となっている。
【0043】
釘頭部4に面する円錐状に先細りした構造部6aの背面側に位置する移行部6bは、2段に形成されており、移行段はそれぞれ円形部のような断面を有している。第2の移行段の曲率半径K1は、第1の移行段の曲率半径K1よりも大きい。図の例では、第1の移行段の曲率半径K1は0.2mm、第2の移行段の曲率半径K2は0.25mmである。
【0044】
アンカー構造6が形成されている軸方向の軸部2bと釘先端部3との間には、一定の外径を有するさらなる前端部2cがあり、この外径は、移行領域5に隣接する釘軸部2の軸方向後端部2aの軸径に対応しており、軸方向の長さは、0.5~1.5mm、ここでは1mmである。
【0045】
本発明による釘1は、固体の材料、特に、棒材から、旋削や旋盤加工によって製作することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 釘
2 釘軸部
2a 釘軸部の後端部
2b アンカー構造の軸部
2c 釘軸部の前端部
3 釘先端部
4 釘頭部
5 移行領域
6 皿穴構造
6a 先細り構造部
6b 移行部
α 先端角
D1 構造直径
D2 構造直径
R 曲率半径
DS 直径
DK 直径