(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】自己修復又は繰返し使用可能な製品、その製造方法及び適用
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20230721BHJP
C03B 8/02 20060101ALI20230721BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230721BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20230721BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20230721BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20230721BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20230721BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20230721BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230721BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20230721BHJP
C09D 127/12 20060101ALI20230721BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20230721BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230721BHJP
【FI】
C09D201/00
C03B8/02 B
B05D7/24 302Y
B05D7/24 302L
B05D7/24 303E
B05D7/24 303A
B05D3/12 Z
B05D3/02 Z
B05D5/00 B
B05D5/00 Z
B05D5/06 C
B05D7/00 K
B05D3/00 D
B05D3/00 F
C09D183/04
C09D127/12
C09D7/65
C09D7/63
(21)【出願番号】P 2022503516
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 CN2020117109
(87)【国際公開番号】W WO2021139215
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】202010028278.5
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010028275.1
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】506281853
【氏名又は名称】中国科学院化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】侯儀
(72)【発明者】
【氏名】朱光達
(72)【発明者】
【氏名】趙寧
(72)【発明者】
【氏名】徐堅
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105038439(CN,A)
【文献】国際公開第2018/128073(WO,A1)
【文献】特開平09-111188(JP,A)
【文献】特開2010-013523(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105038586(CN,A)
【文献】特開2018-203773(JP,A)
【文献】特開2004-292212(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101238165(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B05D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)低表面エネルギー重合体ミセル分散液と、(B)シランカップリング剤加水分解溶液と、(C)アルカリ溶液とを含
む自己修復塗料製造用組成物系であって、
前記低表面エネルギー重合体は、フッ素樹脂、有機シリコン樹脂、フッ素系シリコン樹脂の少なくとも1種から選ばれ、
前記低表面エネルギー重合体ミセル分散液は2種の溶剤を含み、それぞれ溶剤a及び溶剤bであり、溶剤aは、低表面エネルギー重合体を溶解させることができる溶剤であり、溶剤bは、低表面エネルギー重合体溶液を低表面エネルギー重合体ミセル分散液に調製するために、相分離を行う溶剤であり、
前記低表面エネルギー重合体ミセル分散液におけるミセルは負電荷又は正電荷を帯び、前記ミセルが電荷を帯びた場合、前記ミセルが異なる電荷を帯びたシランカップリング剤をさらに含み、ミセルが静電バランス状態を保ち、
前記シランカップリング剤加水分解溶液におけるシランカップリング剤はR
1
Si(R
2
)(OR)
2
であり、R
1
及びR
2
は相同又は相異であり、それぞれ独立的に-R
a
NH
2
、-R
a
SH、-N(R
a
)
3
、-R
a
NR
b
NH
2
、
【化1】
-OR
a
の少なくとも1種から選ばれ、R
a
及びR
b
は相同又は相異であり、それぞれ独立的にC
1-8
アルキル基から選ばれ、Rは相同又は相異であり、それぞれ独立的にC
1-8
アルキル基から選ばれ、
或いは、前記シランカップリング剤は、R
1
及びR
2
の1つがORである又は何れもORではないシランカップリング剤(a-1)と、R
1
及びR
2
が共にORであるシランカップリング剤(a-2)との混合物であり、a-2の含有量は0であるが、100%よりも小さく、a-1の含有量は0よりも大きいが、100%以下であり、
前記シランカップリング剤加水分解溶液は溶剤cを含み、前記溶剤cは、アセトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルの少なくとも1種から選ばれ、
前記シランカップリング剤加水分解溶液は塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの少なくとも1種をさらに含む、ことを特徴とする、自己修復塗料製造用組成物系。
【請求項2】
前記組成物系は、(D)機能性成分をさらに含み
、前記機能性成分が機能化小分子、機能性重合体及び/又はナノ粒子であ
ることを特徴とする、請求項1に記載の組成物系。
【請求項3】
前記(D)機能性成分は、単独で前記系に導入され、又は上記成分(A)、成分(B)又は成分(C)の少なくとも1つに導入されてから、前記系に導入されることを特徴とする、請求項2に記載の組成物系。
【請求項4】
前記組成物系において、低表面エネルギー重合体と、シランカップリング剤と、アルカリとの質量比が40:10:(1~7)であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物系。
【請求項5】
前記組成物系において、前記成分(D)と、成分(A)、(B)及び(C)の合計との質量比が1:50~1:10000であることを特徴とする、請求項2に記載の組成物系。
【請求項6】
前記フッ素樹脂は、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、フルオロエチレンビニルエーテル樹脂(FEVE)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)の少なくとも1種から選ばれ
、
前記有機シリコン樹脂は、メチルシリコーン樹脂、フェニルシリコーン樹脂、フェニルビニルシリコーン樹脂、フェニルエポキシシリコーン樹脂、ボロシロキサン樹脂、ポリノルマルヘキシルトリフェニルアセチレンシラン樹脂の少なくとも1種から選ばれ
、
前記フッ素系シリコン樹脂は、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン、ポリメチルノナフルオロヘキシルシロキサン、ポリトリデカフルオロオクチルメチルシロキサン、ポリメチルヘプタデカフルオロデシルシロキサンの少なくとも1種から選ば
れる、ことを特徴とする、請求項
1に記載の組成物系。
【請求項7】
成分(C)はpH値が7.5~8.5である、ことを特徴とする、請求項1に記載の組成物系。
【請求項8】
成分(C)におけるアルカリは弱アルカリであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物系。
【請求項9】
成分(C)におけるアルカリは有機アルカリである、ことを特徴とする、請求項8に記載の組成物系。
【請求項10】
請求項1~
9の何れか1項に記載の組成物系により製造された自己修復塗料、自己修復コーティング又は自己修復製品であって
、
前記自己修復製品は前記自己修復コーティングを含
む、自己修復塗料、自己修復コーティング又は自己修復製品。
【請求項11】
前記コーティングは透明コーティングであり、その平均透過率が85%以上であり、
及び/又は前記コーティングは高硬度を有し、その鉛筆硬度が9H以上であり、
及び/又は前記コーティングは自己修復性能を有する、ことを特徴とする、請求項10に記載の自己修復塗料、自己修復コーティング又は自己修復製品。
【請求項12】
1)低表面エネルギー重合体を溶剤aに溶解させて、重合体溶液を得る工程と、
2)工程1)で得られた重合体溶液を溶剤bに入れ、相分離を行って、低表面エネルギー重合体ミセル分散液(A)を得る工程と、
3)シランカップリング剤を溶剤cに溶解させ、塩酸、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムの触媒条件で攪拌しながら加熱し、シランカップリング剤加水分解溶液(B)を調製する工程と、
4)アルカリを溶剤bに溶解させて、アルカリ溶液(C)を調製する工程と、
5)上記低表面エネルギー重合体ミセル分散液(A)と、シランカップリング剤加水分解溶液(B)と、アルカリ溶液(C)とを混合させて、前記自己修復塗料を得る工程と、を含
む、ことを特徴とする、請求項
10又は11に記載の自己修復塗料の製造方法。
【請求項13】
前記方法は、
工程5)の前記自己修復塗料に機能性成分(D)を入れる工程6)をさらに含む、ことを特徴とする、請求項12に記載の自己修復塗料の製造方法。
【請求項14】
(a)請求項
12又は13に記載の自己修復塗料の製造方法により自己修復塗料を製造する工程と、
(b)前記自己修復塗料を基質に塗布し、熱処理を行ってから、前記自己修復コーティングを得る工程と、を含
む、ことを特徴とする、請求項
10又は11に記載の自己修復コーティングの製造方法。
【請求項15】
前記基質は透明の無機基質又は有機基質から選ばれ、
及び/又は、前記塗布方法は、浸漬、ディップコーティング、スプレー、ローラ塗り又はブラシ塗りから選ばれて、任意の透明基質に塗布し、
及び/又は、前記熱処理の温度が80~450℃であり、処理時間が0.5~3hであり、
及び/又は、前記コーティングの厚さが0.5~5μmである、ことを特徴とする請求項14に記載の自己修復コーティングの製造方法。
【請求項16】
表面に傷が付いている請求項
10又は11に記載の自己修復コーティング又は自己修復製品を穏やかな水蒸気環境に置いて修復を行う工程を含むことを特徴とする、請求項
10又は11に記載の自己修復コーティング又は自己修復製品の自己修復方法。
【請求項17】
請求項
10又は11に記載の自己修復塗料の、自己修復コーティング又は自己修復製品の製造における適用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は下記先行出願の優先権を主張する:中国国家知識産権局に2020年1月10日付けで提出した、出願番号202010028278.5、発明名称「透明、高硬度、多機能集積可能な自己修復塗料、その製造方法及び適用」である先行出願、及び中国国家知識産権局に2020年1月10日付けで提出した、出願番号202010028275.1、発明名称「繰返し使用可能なガラスライク又はガラスライク製品、その製造方法及び回収再利用方法」である先行出願。上記先行出願の全文は引用により本願に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は機能材料分野に属し、具体的に自己修復又は繰返し使用可能な製品、その製造方法及び適用に関わる。
【0003】
〔背景技術〕
自己修復機能により、材料そのものの使用寿命が延伸され、材料破損による補修費が削減される。穏やかな条件では自己修復可能な透明材料は様々な分野に広く適用される。現在、水素結合、配位結合、動的共有結合などにより、分子レベルで弾性重合体系の繰返し修復が実現される。しかし、フレキシブル自己修復材料のほとんどが使用中に摩耗されやすいため、優れた機械的性能、特に無機剛性系に匹敵する硬度と弾性率を有する自己修復材料の製造が必要である。剛性系における動的化学結合の活性が劣るため、穏やかな条件では剛性系の自己修復を実現することが大きな課題である。
【0004】
また、自己修復系のほとんどは、導入できるその他の機能が1種又は2種に限られることから、自己修復材料の適用分野を開拓するために、例えば、コーティング法などの簡単且つ汎用の製造工程により、同時に多機能導入可能な、透明且つ剛性の自己修復材料系を大量に製造することで、より幅広い適用見込みが示される。
【0005】
一方、透明ガラス材料は多くの分野に広く適用される。しかし、日常生活や産業生産において発生されるガラス廃棄物が多く、資源の持続可能な利用を実現するために、廃棄されたガラスを集めて再利用してもよい。
【0006】
現在、ガラスの回収工程が複雑である。まず、ガラス容器メーカーが高純度の原料を使用するため、細かく選別して異物を取り除き、即ち、回収されたガラス瓶から金属やセラミックなどの異物を取り除く必要がある。次に、カラーガラスがフリントガラスの製造に使うことができないため、人力又は機械により使用済みのガラス砕片を色選別する必要がある。ガラス砕片を色選別せずそのまま利用する場合、グリーンガラス容器しか製造できない。そのため、容易に繰返し使用可能なガラスライク又はガラスライク透明製品を製造する簡易方法が必要である。
【0007】
〔発明の概要〕
本発明は、
(A)低表面エネルギー重合体ミセル分散液と、
(B)シランカップリング剤加水分解溶液と、
(C)アルカリ溶液と、
を含む、自己修復塗料製造用組成物系を提供する。
【0008】
本発明の技術案によれば、前記組成物系は、例えば、機能化小分子、機能性重合体及び/又はナノ粒子である(D)機能性成分をさらに含む。
【0009】
なお、前記(D)機能性成分は、単独で前記系に導入されてもよく、上記成分(A)、成分(B)又は成分(C)の少なくとも1つに導入されることで、前記系に導入されてもよい。
【0010】
本発明は、上記組成物系により製造された自己修復塗料、自己修復コーティング又は自己修復製品をさらに提供する。好ましくは、前記自己修復製品は前記自己修復コーティングを含む。
【0011】
本発明は、低表面エネルギー重合体ミセル分散液(A)と、シランカップリング剤加水分解溶液(B)と、アルカリ溶液(C)とを混合させて、前記自己修復塗料を得る工程を含む、前記自己修復塗料の製造方法をさらに提供する。
【0012】
本発明の技術案によれば、前記方法は、
1)低表面エネルギー重合体を溶剤aに溶解させて、重合体溶液を得る工程と、
2)工程1)で得られた重合体溶液を溶剤bに入れ、相分離を行って、低表面エネルギー重合体ミセル分散液(A)を得る工程と、
3)シランカップリング剤を溶剤bに溶解させ、塩酸、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムの触媒条件で攪拌しながら加熱し、シランカップリング剤加水分解溶液(B)を調製する工程と、
4)アルカリを溶剤bに溶解させて、アルカリ溶液(C)を調製する工程と、
5)上記低表面エネルギー重合体ミセル分散液(A)と、シランカップリング剤加水分解溶液(B)と、アルカリ溶液(C)とを混合させて、前記自己修復塗料を得る工程と、を含む。
【0013】
本発明は、
(a)上記自己修復塗料の製造方法により自己修復塗料を製造する工程と、
(b)前記自己修復塗料を基質に塗布し、熱処理を行ってから、前記自己修復コーティングを得る工程と、
を含む、上記自己修復コーティング又は自己修復製品の製造方法をさらに提供する。
【0014】
本発明は、表面に傷が付いている自己修復コーティング又は自己修復製品を穏やかな水蒸気環境に置いて修復を行う工程を含む、上記自己修復コーティング又は自己修復製品の自己修復方法をさらに提供する。
【0015】
本発明において、前記修復は、例えば、本発明の実験では数分間内で、素早く完成する。
【0016】
本発明は、上記自己修復塗料の、自己修復コーティング又は自己修復製品の製造における適用を提供する。
【0017】
本発明は、
(i)シランカップリング剤加水分解溶液とアルカリ溶液との混合分散液と、
(ii)低表面エネルギー重合体溶液と、
(iii)シランカップリング剤分散液と、
を含む、繰返し使用可能なガラスライク又はガラスライク製品用組成物系を提供する。
【0018】
本発明は、上記組成物系により製造された直接繰返し使用可能なガラスライク又はガラスライク製品をさらに提供する。
【0019】
本発明は、
(i)シランカップリング剤加水分解溶液とアルカリ溶液との混合分散液と、(ii)低表面エネルギー重合体溶液と、(iii)シランカップリング剤分散液とを混合させて、混合系を調製する工程と、前記混合系を熱処理、焼結して、前記ガラスライク又はガラスライク製品を得る工程と、を含む上記ガラスライク又はガラスライク製品の製造方法をさらに提供する。
【0020】
本発明によれば、前記製造方法は、
A1)シランカップリング剤加水分解溶液と有機アルカリ溶液とを混合させて、前記(i)混合分散液を調製し、
好ましくは、前記シランカップリング剤加水分解溶液が触媒加熱条件でシロキサン単体により調製される工程と、
A2)低表面エネルギー重合体を溶剤xに溶解させて、(ii)低表面エネルギー重合体溶液を得る工程と、
A3)シランカップリング剤を溶剤yに溶解させ、常温で攪拌して、(iii)シランカップリング剤分散液を得る工程と、
A4)前記(i)シランカップリング剤加水分解溶液とアルカリ溶液との混合分散液と、(ii)低表面エネルギー重合体溶液と、(iii)シランカップリング剤分散液を混合させて、混合系を調製する工程と、
A5)前記混合系を熱処理して、シリコンガラスライクゲルを得る工程と、
A6)前記シリコンガラスライクゲルを焼結して、前記ガラスライク又はガラスライク製品を得る工程と、含む。
【0021】
本発明は、上記方法により製造されたガラスライク又はガラスライク製品をさらに提供する。
【0022】
本発明は、前記ガラスライク又はガラスライク製品を水又は水含有溶剤に溶解させて、コロソール分散液を回収する工程を含む、上記ガラスライク又はガラスライク製品の回収方法をさらに提供する。
【0023】
なお、前記水含有溶剤は、水と有機溶剤との混合溶剤から選ばれてもよい。
【0024】
本発明は、上記回収されたコロソール分散液を加熱し、成形した後に、焼結して、前記ガラスライク又はガラスライク製品を得る工程を含む、上記ガラスライク又はガラスライク製品の再利用方法をさらに提供する。
【0025】
なお、前記焼結の処理は製造方法と同様である。
【0026】
本発明は、前記焼結前のガラスライク又はガラスライク製品を一定形状のテンプレートの表面に置き、90~150℃水蒸気雰囲気の条件で前記ガラスライク又はガラスライク製品をモールディングする工程を含む、上記ガラスライク又はガラスライク製品のモールディング方法をさらに提供する。前記モールディング方法は、例えば、具体的に、前記焼結前のガラスライク又はガラスライク製品を一定形状のテンプレートの表面に置き、90~150℃水蒸気雰囲気の条件でガラスを軟化してテンプレートの表面でコンフォーマルし、さらに(例えば60~80℃で)加熱し、コンフォーマル後のガラスを硬化した後に、テンプレートを取り除き、焼結してからモールディング後のガラスライク又はガラスライク製品を得る工程、含む。
【0027】
本発明は、上記組成物系の、繰返し使用可能なガラスライク又はガラスライク製品の製造における適用をさらに提供する。
【0028】
本発明の優位性:
本発明の自己修復塗料、自己修復コーティング又は自己修復製品は、下記5つのメリットを有する。
【0029】
1. 本発明に係る透明、高硬度、多機能集積可能な自己修復塗料の製造方法は簡単であり、常温において溶液を混合させるだけである。
【0030】
2. 本発明に係る透明、高硬度、多機能集積可能な自己修復コーティングの製造方法は簡単であり、透明の基質に浸漬、スプレー、ローラ塗り又はブラシ塗りによりそれ相応の塗料を塗布してから熱処理するだけである。
【0031】
3. 当該方法は汎用的なものであり、塗料を何れかの透明基材の表面に塗布することで、透明、高硬度、自己修復及び多機能集積可能などの特性を付与することができる。
【0032】
4. 塗料を塗布することで、変性後透明基質の透過率が塗布前と比較すれば同様又はそれ以上であり、透明基質表面の鉛筆硬度が9Hよりも大きく、穏やかな水蒸気の条件では、透明基質コーティング表面における数百ナノメートル乃至マイクロメートルの傷が数分間内で素早く修復される。
【0033】
5. 機能性成分を混合させることで、コーティングは透明、高硬度、自己修復機能の他に、さらに1種又は複数種のその他の機能を備えることができ、即ち、多機能集積可能である。
【0034】
本発明の繰返し使用可能、回収可能なガラスライク及びガラスライク製品は、下記6つのメリットを有する。
【0035】
1. 本発明に係る繰返し使用可能、回収可能なガラスライク及びガラスライク製品の製造方法は簡単であり、穏やかな条件で溶液を混合させてから、混合溶液を熱処理、焼結するだけである。
【0036】
2. 本発明に係るガラスライク及びガラスライク製品は、加熱の条件で水又は水含有溶剤に溶解できるため、回収方法が簡単である。
【0037】
3. 本発明により回収されるガラスライクコロソール分散液は、一定の加熱条件によってガラスライク製品に再び形成できる。
【0038】
4. 本発明に係るガラスライク及びガラスライク製品は、比較的に高い硬度、靱性、耐衝撃性を有する。
【0039】
5. 本発明により製造されるガラスライク及びガラスライク製品は回収可能機能の他に、耐火、耐汚染、保温、耐紫外線などの特性を有し、より幅広い適用見込みがある。
【0040】
6. 本発明のガラスライク及びガラスライク製品は、穏やかな水蒸気条件で様々な形状の器具に加工されて、ガラス器具の代用品として使用されることができる。
【0041】
〔図面の簡単な説明〕
〔
図1〕
図1は、実施例A1において製造された透明、高硬度、多機能集積可能な自己修復コーティングのSEMによる50000倍拡大図である。
【0042】
〔
図2〕
図2は、実施例A1において製造された透明、高硬度、多機能集積可能な自己修復コーティングの60℃水蒸気条件における自己修復の過程である。
【0043】
〔
図3〕
図3は、実施例A1において製造された透明、高硬度、多機能集積可能な自己修復コーティング含有のガラス、及びコーティング処理が実施されていないガラスの透過性図である。
【0044】
〔
図4〕
図4は、実施例A1においてコーティングが塗布されたガラス基質は平面と30°角度なす場合、水滴(a及びb)とケロシン滴(c及びd)が製造された透明、高硬度、自己修復、疎水及び疎油のコーティング表面から転がり落ちる前後の写真である。
【0045】
〔
図5〕
図5は、実施例A1において透明、高硬度、自己修復、耐指紋機能コーティングが塗布されていないガラス、及び当該機能コーティングが塗布されたガラスに対して、指紋液がそれぞれコーティング表面及びガラス表面における広がり及び縮みの状況である。
【0046】
〔
図6〕
図6は、実施例A1において透明、高硬度、自己修復、落書き防止機能コーティングが塗布されたガラス、及び当該機能コーティングが塗布されていないガラスに対して、油性ペンインクがそれぞれコーティング表面及びガラス表面における縮み及び消し方の状況である。
【0047】
〔
図7〕
図7は、実施例A1において製造された透明、高硬度、多機能集積可能な自己修復コーティングのナノメートル級圧痕のテスト結果である。
【0048】
〔
図8〕
図8は、実施例A1において製造された透明、高硬度、多機能集積可能な自己修復コーティングの熱処理前後の9H鉛筆硬度のテスト結果である。
【0049】
〔
図9〕
図9は、実施例B1において製造されたガラスライクブロック表面のSEMによる20000倍拡大図である。
【0050】
〔
図10〕
図10は、実施例B1において製造されたガラスライクブロックの実物写真である。
【0051】
〔
図11〕
図11は、実施例B1において製造されたガラスライクブロックの回収溶解後の写真である。
【0052】
〔
図12〕
図12は、実施例B1において製造されたガラスライクブロックとその10回回収後のガラスライクサンプルとの硬度及び弾性率の比較結果である。
【0053】
〔
図13〕
図13は、実施例B1において製造された茶碗状ガラスライク器具を溶解・再成形によりコップ状ガラスライク器具に変える変化図である。
【0054】
〔
図14〕
図14は、実施例B1において製造されたガラスライクブロック及び普通ガラスの紫外線及び可視光線波長における透過率図である。
【0055】
〔
図15〕
図15は、実施例B1において製造されたガラスライクブロックの耐火性テストである。
【0056】
〔発明を実施するための形態〕
<用語及び説明>
本願では、前記「透明」とは、一定の波長範囲内においてコーティングが塗布された基質の透過率はある程度増加した、又は変わらないことを指す。具体的には、一定の波長範囲内において、LAMBDA 950UV紫外線‐可視光線分光光度計により当該基質に対して透過率テストを行った結果、基質の透過率値が元よりある程度増加した、又は変わらないことである。
【0057】
前記「高硬度」とは、コーティングを熱処理した後、中華人民共和国国家標準GB/T 6739-2006に基づいてコーティングの鉛筆硬度についてテストを実施した結果、当該コーティングの鉛筆硬度が9H以上であることを指す。
【0058】
前記「自己修復」とは、穏やかな水蒸気条件において、コーティング表面の傷が数分間内に素早く修復できることを指す。具体的には、ワイヤでコーティング表面にマイクロメートル級の傷を付け、穏やかな水蒸気条件に置くと、傷が3~4 minで完全に修復されることである。
【0059】
前記「多機能」とは、透明、高硬度、自己修復機能を除く任意の1種又は複数種のその他の機能であり、具体的には、アンチフォグ、防水、防油、耐指紋、落書き防止、防食、アンチブルー放射線、耐紫外線、防眩、劣化防止、静電気防止、反射防止、抗菌、変色、導電、断熱、防音、絶縁、難燃などの機能の少なくとも1種である。
<組成物系>
前記に示されるように、本発明は、(A)低表面エネルギー重合体ミセル分散液と、(B)シランカップリング剤加水分解溶液と、(C)アルカリ溶液と、を含む自己修復塗料製造用組成物系を提供する。
【0060】
前記組成物系は、例えば、機能化小分子、機能性重合体及び/又はナノ粒子である(D)機能性成分をさらに含む。
【0061】
なお、前記(D)機能性成分は、単独で前記系に導入されてもよく、上記成分(A)、成分(B)又は成分(C)の少なくとも1つに導入されることで、前記系に導入されてもよい。
【0062】
前記組成物系は、低表面エネルギー重合体と、シランカップリング剤と、アルカリとの質量比が40:10:(1-7)であり、例えば、40:10:(2-6)であり、例示的に40:10:3、40:10:4、40:10:5である。
【0063】
前記組成物系は、前記成分(D)と、成分(A)、(B)及び(C)の合計との質量比が1:50~1:10000であり、好ましくは1:100~1:1000である。
<組成物系における成分(A)>
低表面エネルギー重合体ミセル分散液において、前記低表面エネルギー重合体は、フッ素樹脂、有機シリコン樹脂、フッ素系シリコン樹脂の少なくとも1種から選ばれてもよい。例えば、前記フッ素樹脂は、フッ素原子が重合体の鎖に導入されることにより形成された低表面エネルギー重合体を含み、例えば、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、フルオロエチレンビニルエーテル樹脂(FEVE)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)などの少なくとも1種から選ばれてもよい。例えば、前記有機シリコン樹脂は、主鎖にSi-O骨格を有するポリシロキサンを含み、例えば、メチルシリコーン樹脂、フェニルシリコーン樹脂、フェニルビニルシリコーン樹脂、フェニルエポキシシリコーン樹脂、ボロシロキサン樹脂、ポリノルマルヘキシルトリフェニルアセチレンシラン樹脂などの少なくとも1種から選ばれてもよい。例えば、前記フッ素系シリコン樹脂は、フッ素樹脂及び有機シリコン樹脂それぞれの利点を有し、より優れた性能を持つ低表面エネルギー材料であり、例えば、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン、ポリメチルノナフルオロヘキシルシロキサン、ポリトリデカフルオロオクチルメチルシロキサン、ポリメチルヘプタデカフルオロデシルシロキサンの少なくとも1種から選ばれてもよい。例示的に、前記低表面エネルギー重合体は、四フッ化エチレン樹脂、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン、ポリフッ化ビニリデン樹脂、メチルシリコーン樹脂の少なくとも1種から選ばれる。
【0064】
なお、前記フッ素樹脂は、重量平均分子量が5000~100万であり、例えば、7500~50万であり、又は9000~10万であり、例示的に、重量平均分子量が1万である。
【0065】
なお、前記有機シリコン樹脂は、重量平均分子量が1000~300万であり、例えば、5000~100万であり、又は7500~10万であり、例示的に、重量平均分子量が1万である。
【0066】
なお、前記フッ素系シリコン樹脂は、重量平均分子量が3000~300万であり、例えば、5000~100万であり、又は7500~10万であり、例示的に、重量平均分子量が1万である。
【0067】
前記低表面エネルギー重合体ミセル分散液における溶剤は、アルコール類、ケトン類及び/又はエステル類の溶剤から選ばれてもよく、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなどの少なくとも1種から選ばれる。さらに、前記低表面エネルギー重合体ミセル分散液は2種の溶剤を含み、それぞれ溶剤a及び溶剤bである。なお、溶剤aは、低表面エネルギー重合体を溶解させることができる溶剤であり、例えば、アセトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなどの少なくとも1種から選ばれ、例示的に酢酸エチルである。溶剤bは、低表面エネルギー重合体溶液を低表面エネルギー重合体ミセル分散液に調製するために、相分離を行う溶剤であり、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルの少なくとも1種から選ばれ、例示的にエタノールである。
【0068】
前記低表面エネルギー重合体を前記溶剤aに分散させて、低表面エネルギー重合体溶液を形成した後に、低表面エネルギー重合体溶液を溶剤bに入れ、溶剤bにより相分離を行うことで、前記低表面エネルギー重合体ミセル分散液を得る。
【0069】
前記低表面エネルギー重合体ミセル分散液におけるミセルは負電荷又は正電荷を帯びてもよい。前記ミセルが電荷を帯びた場合、異なる電荷を帯びたシランカップリング剤を入れることで、静電バランス状態を保たせる。
【0070】
なお、前記シランカップリング剤は(B)シランカップリング剤加水分解溶液におけるシランカップリング剤と相同又は相異であってもよく、具体的に後述する成分(B)の定義を参照する。
【0071】
前記成分(A)は(B)の前駆体をさらに含んでもよい。なお、当該前駆体は電荷を帯びなくてもよく、又は前記重合体ミセルと異なる電荷を帯びてもよい。
【0072】
前記に示されるように、成分(A)は、機能化小分子、機能性重合体及び/又はナノ粒子である(D)機能性成分をさらに含んでもよい。
<組成物系における成分(B)>
前記シランカップリング剤加水分解溶液におけるシランカップリング剤はR1Si(R2)(OR)2である。なお、R1及びR2は相同又は相異であり、それぞれ独立的に-RaNH2、-RaSH、-N(Ra)3、-RaNRbNH2、、-ORaの少なくとも1種から選ばれる。なお、Ra及びRbは相同又は相異であり、それぞれ独立的にC1-8アルキル基から選ばれ、好ましくはC1-4アルキル基であり、例示的に、Ra及びRbは相同又は相異であり、それぞれ独立的にメチル基、エチル基又はプロピル基である。なお、Rは相同又は相異であり、それぞれ独立的にC1-8アルキル基から選ばれ、好ましくはC1-4アルキル基であり、例示的に、Rは相同又は相異であり、それぞれ独立的にメチル基又はエチル基である。
【0073】
或いは、前記シランカップリング剤は、R1及びR2の1つがORである又は何れもORではないシランカップリング剤(a-1)と、R1及びR2が共にORであるシランカップリング剤(a-2)との混合物である。a-2の含有量は0であってもよく、100%よりも小さく、a-1の含有量は0よりも大きいが、100%以下である。
【0074】
好ましくは、前記シランカップリング剤は正電荷特性を示すカップリング剤から選ばれ、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどの少なくとも1種から選ばれる。例示的に、前記シランカップリング剤は、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランの少なくとも1種から選ばれる。
【0075】
前記シランカップリング剤加水分解溶液は溶剤cを含み、前記溶剤cは、アセトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルの少なくとも1種から選ばれてもよく、好ましくはメタノール及び/又はエタノールである。
【0076】
前記シランカップリング剤加水分解溶液は塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの少なくとも1種をさらに含み、好ましくは塩酸である。前記酸又はアルカリは触媒として働き、即ち、前記シランカップリング剤の加水分解を触媒する。
<組成物系における成分(C)>
成分(C)のアルカリ溶液はpH値が7.5~8.5である。
【0077】
成分(C)におけるアルカリは弱アルカリであり、好ましくは有機アルカリであり、例えば、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルアミン、フェニルアミン、p-トルイジン、p-クロロアニリン、p-ニトロアニリン、ジフェニルアミン、ピリジン、トリエタノールアミン、尿素の少なくとも1種から選ばれ、より好ましくは、トリエタノールアミン及び/又はジフェニルアミンである。
【0078】
成分(C)における溶剤は上記溶剤bと相同のものを選択してもよい。
【0079】
さらに、成分(C)において、前記アルカリと溶剤との質量比は1:5~1:10000であり、好ましくは1:5~1:1000である。
<組成物系における成分(D)>
前記に示されるように、成分(D)は、機能化小分子、機能性重合体及び/又はナノ粒子である。
【0080】
なお、前記機能化小分子は、アクリル酸、ケイ酸エチル、ポリペプチド、ヒアルロン酸、ピリジン、ローダミン、キノリン、第四級アンモニウムオニウム塩、ピリジンオニウム塩、イミダゾールオニウム塩、イソキノリンオニウム塩、ステアリン酸、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリメトキシシランの少なくとも1種から選ばれてもよく、例えば、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、ステアリン酸、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリメトキシシラン、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリドの少なくとも1種から選ばれる。
【0081】
なお、前記機能性重合体は、スルホン化ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロース、ポリアクリル酸、ポリジメチルシロキサン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレンの少なくとも1種から選ばれ、例えば、ポリビニルアルコール、ポリジメチルシロキサンの少なくとも1種から選ばれる。
【0082】
なお、前記ナノ粒子は、無機ナノ粒子、有機ナノ粒子、金属ナノ粒子の少なくとも1種から選ばれる。
【0083】
前記無機ナノ粒子は、二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの1種又は複数種から選ばれてもよく、例えば、二酸化ケイ素から選ばれる。
【0084】
前記有機ナノ粒子は、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースナノクリスタルなどの1種又は複数種から選ばれてもよい。
【0085】
前記金属ナノ粒子は、金、銀、アルミニウム、鉄、銅及びその酸化物などの1種又は複数種から選ばれてもよい。
【0086】
例示的に、前記機能性成分は、ステアリン酸、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリメトキシシラン、第4級アンモニウムオニウム塩、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ポリビニルアルコール、ポリジメチルシロキサン、二酸化ケイ素の少なくとも1種から選ばれてもよい。
<自己修復塗料、自己修復コーティング又は自己修復製品>
本発明は、上記組成物系により製造された自己修復塗料、自己修復コーティング又は自己修復製品をさらに提供する。好ましくは、前記自己修復製品は前記自己修復コーティングを含む。
【0087】
さらに、前記コーティングは透明コーティングであり、その平均透過率が85%以上であり、好ましくは90%以上であり、例えば91.5%である。
【0088】
さらに、前記コーティングは高硬度を有し、その鉛筆硬度が9H以上である。
【0089】
さらに、前記コーティングは自己修復性能を有し、穏やかな水蒸気条件において、コーティングにおける数百ナノメートル乃至マイクロメートルの傷が1~10分間(例えば2~6分間)内に素早く修復できる。
<自己修復塗料の製造>
本発明は、低表面エネルギー重合体ミセル分散液(A)と、シランカップリング剤加水分解溶液(B)と、アルカリ溶液(C)とを混合させて、前記自己修復塗料を得る工程を含む、前記自己修復塗料の製造方法をさらに提供する。
【0090】
本発明の具体的な一実施形態において、前記方法は、
1)低表面エネルギー重合体を溶剤aに溶解させて、重合体溶液を得る工程と、
2)工程1)で得られた重合体溶液を溶剤bに入れ、相分離を行って、低表面エネルギー重合体ミセル分散液(A)を得る工程と、
3)シランカップリング剤を溶剤cに溶解させ、塩酸、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムの触媒条件で攪拌しながら加熱し、シランカップリング剤加水分解溶液(B)を調製する工程と、
4)アルカリを溶剤bに溶解させて、アルカリ溶液(C)を調製する工程と、
5)上記低表面エネルギー重合体ミセル分散液(A)と、シランカップリング剤加水分解溶液(B)と、アルカリ溶液(C)とを混合させて、前記自己修復塗料を得る工程と、
を含む。
【0091】
本発明の具体的な一実施形態において、前記低表面エネルギー重合体、溶剤a、溶剤b、溶剤c、シランカップリング剤及びアルカリは、前記に示される意味を有する。
【0092】
本発明の工程1)において、前記重合体溶液は濃度が0.1~300mg/mLであり、好ましくは25~50mg/mLであり、例示的に、濃度が25mg/mL、30mg/mL、40mg/mLである。
【0093】
本発明の工程1)において、前記溶解は攪拌により実現され、攪拌回転数が200~5000rpmであり、攪拌時間が1~10日間であり、好ましくは2~8日間であり、例えば、3日間である。
【0094】
本発明の工程2)において、前記重合体溶液は滴下の方式により溶剤bに添加される。例えば、滴下速度は1滴/秒乃至10滴/秒であり、好ましくは1滴/秒乃至5滴/秒である。
【0095】
本発明において、前記溶剤aと溶剤bとの体積比は1:(1~5)であり、例えば1:(1.5~4)であり、例示的に1:2である。
【0096】
本発明の工程2)において、前記重合体溶液と溶剤bとの質量比は1:(20~10000)であり、例えば、1:(20~1000)であり、好ましくは1:(20~500)であり、例示的に1:20、1:50、1:60、1:80、1:100である。
【0097】
本発明の工程2)において、前記低表面エネルギー重合体ミセル分散液(A)におけるミセルは負電荷又は正電荷を帯びてもよい。前記ミセルが電荷を帯びた場合、異なる電荷を帯びた(B)の前駆体(即ち、シランカップリング剤加水分解前の原料)を入れることで、静電バランス状態を保たせる。例えば、前記低表面エネルギー重合体ミセル分散液(A)が負電荷特性を示す場合、(A)に正電荷を帯びた(B)の前駆体を入れてもよい。例えば、前記(B)の前駆体と前記低表面エネルギー重合体ミセル分散液(A)との体積比によって、(A)が安定的な電荷を帯びた系と維持されればよく、例えば、質量比が1:(10~2000)であってもよく、例えば1:(10~500)であり、例示的に、質量比が1:100、1:200、1:500、1:800、1:1000である。さらに、前記添加の方式が滴下であり、滴下速度が1滴/秒乃至10滴/秒であり、好ましい滴下速度が3滴/秒乃至6滴/秒である。
【0098】
本発明の工程3)において、前記塩酸、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムと、前記溶剤bとの質量比又は体積比は1:100~1:10000であり、好ましくは1:200~1:2000であり、より好ましくは1:500~1:1500である。
【0099】
本発明の工程3)において、前記シランカップリング剤と溶剤cとの質量比は1:5~1:10000であり、好ましくは1:7~1:1000であり、より好ましくは1:50~1:800であり、例示的に、質量比が1:20、1:50、1:100、1:200、1:500、1:800であってもよい。
【0100】
本発明の工程3)において、加熱の目標温度は50~100℃であり、好ましくは70~90℃であり、例示的に温度が80℃である。さらに、前記攪拌回転数が200~5000rpmであり、攪拌時間が1~10hであり、好ましくは攪拌回転数が500~2500rpmであり、攪拌時間が3~8hであり、例示的に、攪拌回転数が1000rpmであり、攪拌時間が8hである。
【0101】
本発明の工程4)において、前記アルカリと溶剤bとの質量比又は体積比が1:5~1:10000であり、好ましくは1:5~1:1000であり、より好ましくは1:10~1:100であり、例示的に、質量比又は体積比が1:20、1:22、1:30、1:50である。
【0102】
本発明の工程5)において、前記低表面エネルギー重合体ミセル分散液(A)と、シランカップリング剤加水分解溶液(B)と、アルカリ溶液(C)との体積比が(50~500):(5~50):1であり、例えば(80~200):(8-20):1であり、例示的に、体積比が100:10:1である。
【0103】
本発明の工程5)において、前記シランカップリング剤加水分解溶液と、低表面エネルギー重合体ミセル分散液との質量比が1:5~1:10000であり、好ましくは1:10~1:1000であり、より好ましくは1:50~1:200である。
【0104】
本発明の工程5)において、前記アルカリ溶液と低表面エネルギー重合体ミセル分散液との質量比が1:100~1:100000であり、好ましくは1:200~1:10000であり、より好ましくは1:200~1:2000である。
【0105】
本発明の具体的な一実施形態において、前記方法は、工程5)の前記自己修復塗料に機能性成分(D)を入れる工程6)をさらに含む。なお、前記機能性成分(D)は前記に示される意味を有する。さらに、前記機能性成分(D)と前記塗料との質量比が1:50~1:10000であり、好ましくは1:100~1:1000であり、より好ましくは1:200~1:500である。機能性成分を選択的に入れることで、塗料にアンチフォグ、防水、防油、耐指紋、落書き防止、防食、アンチブルー放射線、耐紫外線、防眩、劣化防止、静電気防止、反射防止、抗菌、変色、導電、断熱、防音、絶縁、難燃などの少なくとも1種の機能を付与することができる。
<自己修復コーティング又は自己修復製品の製造>
本発明は、
(a)上記自己修復塗料の製造方法により自己修復塗料を製造する工程と、
(b)前記自己修復塗料を基質に塗布し、熱処理を行ってから、前記自己修復コーティングを得る工程と、
を含む、上記自己修復コーティングの製造方法をさらに提供する。
【0106】
本発明の具体的な一実施形態において、前記基質は透明の無機基質又は有機基質から選ばれ、例えば、セラミックス、ガラスなどの無機基質や、又はポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの有機重合体基質から選ばれる。
【0107】
前記塗布方法は、浸漬、ディップコーティング、スプレー、ローラ塗り又はブラシ塗りから選ばれて、任意の透明基質に塗布する。
【0108】
さらに、前記熱処理の温度が80~450℃であり、好ましくは150~300℃であり、例えば、100℃、150℃、200℃、250℃である。処理時間が0.5~3hであり、好ましくは1~2hであり、例えば1h、1.5h、2hである。さらに、前記コーティングの厚さが0.5~5μmであり、例えば、1~4μmであり、例示的に1μm、1.5μm、2μm、3μmである。
<自己修復方法>
本発明は、表面に傷が付いているコーティング又は製品を穏やかな水蒸気環境に置いて修復を行う工程を含む、上記自己修復コーティング又は自己修復製品の自己修復方法をさらに提供する。
【0109】
なお、前記傷の幅が100nm~150μmであり、例えば、100nm~100μmである。なお、前記穏やかな水蒸気は、40~60℃水の蒸発により発生され、例えば、45℃水の蒸発により発生され、50℃水の蒸発により発生され、55℃水の蒸発により発生され、又は60℃水の蒸発により発生される。なお、コーティング又は製品が水面からの距離は1.5~3cmであり、例えば、2cm、3cmである。なお、前記修復時間が1~10minであり、例えば2~6minであり、例示的に4minである。
【0110】
さらに、傷が消えるまで修復した後に、コーティング又は製品を取り出して、水蒸気で湿っている領域を乾燥させる。例えば、室温に置いて乾燥させる。
<自己修復塗料の適用>
本発明は、上記自己修復塗料の、自己修復コーティング又は自己修復製品の製造における適用を提供する。
<ガラスライク又はガラスライク製品用組成物系>
前記に示されるように、本発明は、
(i)シランカップリング剤加水分解溶液とアルカリ溶液との混合分散液と、
(ii)低表面エネルギー重合体溶液と、
(iii)シランカップリング剤分散液と、
を含む、ガラスライク又はガラスライク製品用組成物系を提供する。
【0111】
前記組成物系において、(i)シランカップリング剤加水分解溶液とアルカリ溶液との混合分散液と、(ii)低表面エネルギー重合体溶液と、(iii)シランカップリング剤分散液との質量比は(100~1500):1:(50~200)であり、例えば、(300~1000):1:(70~150)であり、例示的に、500:1:100、1000:1:100、1000:1:50、800:1:100、600:1:100、900:1:100である。
【0112】
前記組成物系はpH値が8.5~14であり、好ましくは8.8~13であり、より好ましくは9~12である。
【0113】
前記組成物系において、前記(i)シランカップリング剤加水分解溶液とアルカリ溶液との混合分散液は、シランカップリング剤加水分解溶液、有機アルカリ、溶剤zを含む。なお、前記シランカップリング剤加水分解溶液が触媒加熱条件でシランカップリング剤単体により調製される。
<組成物系における成分(i)>
前記(i)シランカップリング剤加水分解溶液とアルカリ溶液との混合分散液は、シランカップリング剤加水分解溶液、アルカリ溶液を含む。
【0114】
なお、前記シランカップリング剤加水分解溶液の調製原料はシロキサン単体、触媒、溶剤zを含む。なお、前記シロキサン単体は、疎水末端基を有するシロキサンから選ばれてもよく、例えば、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどの少なくとも1種から選ばれてもよく、好ましくは、プロピルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランの少なくとも1種から選ばれる。
【0115】
なお、前記触媒は、塩酸から選ばれ、又は水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの少なくとも1種から選ばれ、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであり、例示的に塩酸である。
【0116】
なお、前記アルカリ溶液の調製原料は有機アルカリ、溶剤zを含む。前記有機アルカリは、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルアミン、フェニルアミン、p-トルイジン、p-クロロアニリン、p-ニトロアニリン、ジフェニルアミン、ピリジン、トリエタノールアミン、尿素の少なくとも1種から選ばれ、例えば、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、トリエチルアミン、フェニルアミンの少なくとも1種であり、例示的に、トリエチルアミン及び/又はフェニルアミンである。
【0117】
なお、前記溶剤zは、エタノール、アセトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、メタノール、イソプロパノール、トルエン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルの少なくとも1種から選ばれ、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノールの少なくとも1種から選ばれ、例示的にエタノールである。
【0118】
前記シランカップリング剤加水分解溶液とアルカリ溶液との混合分散液において、シロキサン単体と、触媒と、有機アルカリと、溶剤zとの質量比は(5~10000):1:(0.5~100):(100~10000)であり、例えば、(100~3000):1:(0.6~10):(500~5000)であり、例示的に、300:1:5:500、150:1:1:500、400:3:1.17:700、150:1:0.75:600、400:1:0.67:900、2500:6:3.75:3000である。
<組成物系における成分(ii)>
前記低表面エネルギー重合体溶液は、低表面エネルギー重合体、溶剤xを含む。
【0119】
なお、前記低表面エネルギー重合体は、フッ素樹脂、有機シリコン樹脂、フッ素系シリコン樹脂の少なくとも1種から選ばれる。例えば、前記フッ素樹脂は、重合体の鎖にフッ素原子が含まれる低表面エネルギー重合体を含み、好ましくは四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、フルオロエチレンビニルエーテル樹脂(FEVE)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)などの少なくとも1種であり、例示的に四フッ化エチレン樹脂(PTFE)である。例えば、前記有機シリコン樹脂は、主鎖にSi-O骨格を有するポリシロキサンを含み、好ましくはメチルシリコーン樹脂、フェニルシリコーン樹脂、フェニルビニルシリコーン樹脂、フェニルエポキシシリコーン樹脂、ボロシロキサン樹脂、ポリノルマルヘキシルトリフェニルアセチレンシラン樹脂などの重合体の少なくとも1種であり、例示的にポリメチルシリコーン樹脂又はフェニルビニルシリコーン樹脂である。例えば、前記フッ素系シリコン樹脂は、フッ素樹脂及び有機シリコン樹脂それぞれの利点を有し、より優れた性能を持つ低表面エネルギー材料を含み、好ましくはポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン、ポリメチルノナフルオロヘキシルシロキサン、ポリトリデカフルオロオクチルメチルシロキサン、ポリメチルヘプタデカフルオロデシルシロキサンの少なくとも1種であり、例示的にポリトリフルオロプロピルメチルシロキサンである。
【0120】
なお、前記フッ素樹脂は、重量平均分子量が5000~100万であり、例えば、8000~50万であり、又は1~10万であり、例示的に1万である。
【0121】
なお、前記有機シリコン樹脂は、重量平均分子量が1000~300万であり、例えば、5000~100万であり、又は1~50万であり、例示的に1万である。
【0122】
なお、前記フッ素系シリコン樹脂は、重量平均分子量が3000~300万であり、例えば、5000~150万であり、又は1~75万であり、例示的に1万である。
【0123】
なお、前記溶剤xは、ケトン類溶剤及び/又はエステル類溶剤から選ばれ、例えば、アセトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなどの少なくとも1種から選ばれ、例示的に酢酸エチルである。
【0124】
前記低表面エネルギー重合体溶液は濃度が0.1~100mg/mLであり、例えば、5~25mg/mLであり、例示的に10mg/mL、12.5mg/mL、15mg/mL、20mg/mL、25mg/mLである。
<組成物系における成分(iii)>
前記シランカップリング剤分散液は、シランカップリング剤、溶剤yを含む。
【0125】
なお、前記シランカップリング剤はR1Si(R2)(OR)2である。なお、R1及びR2は相同又は相異であり、それぞれ独立的に-RaNH2、-RaSH、-N(Ra)3、-RaNRbNH2、
【0126】
【0127】
-ORaの少なくとも1種から選ばれる。なお、Ra及びRbは相同又は相異であり、それぞれ独立的にC1-8アルキル基から選ばれ、好ましくはC1-4アルキル基であり、例示的に、Ra及びRbは相同又は相異であり、それぞれ独立的にメチル基又はエチル基である。なお、Rは相同又は相異であり、それぞれ独立的にC1-8アルキル基から選ばれ、好ましくはC1-4アルキル基であり、例示的に、Rは相同又は相異であり、それぞれ独立的にメチル基又はエチル基である。
【0128】
或いは、前記シランカップリング剤は、R1及びR2の1つがORである又は何れもORではないシランカップリング剤(a-1)と、R1及びR2が共にORであるシランカップリング剤(a-2)との混合物である。a-2の含有量は0であってもよいが、100%よりも小さく、a-1の含有量は0よりも大きいが、100%以下である。
【0129】
好ましくは、前記シランカップリング剤はγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどの少なくとも1種から選ばれてもよく、例示的に、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン又はジエチルアミノメチルトリエトキシシランである。
【0130】
なお、溶剤yはアセトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルの少なくとも1種から選ばれ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールの少なくとも1種であり、例示的にエタノールであり、好ましくは、溶剤yと溶剤zとは相同である。
【0131】
前記シランカップリング剤分散液において、シランカップリング剤と溶剤yとの質量比は1:(10~5000)であり、例えば、1:(100~2000)であり、例示的に1:100、1:300、1:400、1:500、1:800である。
<繰返し使用可能なガラスライク又はガラスライク製品>
本発明は、上記組成物系に製造された繰返し使用可能なガラスライク又はガラスライク製品を提供する。
【0132】
なお、前記ガラスライク又はガラスライク製品は透明ガラスライク又はガラスライク製品である。
<繰返し使用可能なガラスライク又はガラスライク製品の製造方法>
本発明は、
(i)シランカップリング剤加水分解溶液とアルカリ溶液との混合分散液と、(ii)低表面エネルギー重合体溶液と、(iii)シランカップリング剤分散液とを混合させて、混合系を調製する工程と、前記混合系を熱処理、焼結して、前記ガラスライク又はガラスライク製品を得る工程と、を含む上記ガラスライク又はガラスライク製品の製造方法をさらに提供する。
【0133】
本発明の実施形態によれば、前記製造方法は、
A1)シランカップリング剤加水分解溶液と有機アルカリ溶液とを混合させて、前記(i)混合分散液を調製し、
好ましくは、前記シランカップリング剤加水分解溶液が触媒加熱条件でシロキサン単体により調製される工程と、
A2)低表面エネルギー重合体を溶剤xに溶解させて、(ii)低表面エネルギー重合体溶液を得る工程と、
A3)シランカップリング剤を溶剤yに溶解させ、常温で攪拌して、(iii)シランカップリング剤分散液を得る工程と、
A4)前記(i)シランカップリング剤加水分解溶液とアルカリ溶液との混合分散液と、(ii)低表面エネルギー重合体溶液と、(iii)シランカップリング剤分散液を混合させて、混合系を調製する工程と、
A5)前記混合系を熱処理して、シリコンガラスライクゲルを得る工程と、
A6)前記シリコンガラスライクゲルを焼結して、前記ガラスライク又はガラスライク製品を得る工程と、
含む。
【0134】
本発明において、前記(i)シランカップリング剤加水分解溶液とアルカリ溶液との混合分散液、(ii)低表面エネルギー重合体溶液、(iii)シランカップリング剤分散液、シロキサン単体、有機アルカリ、低表面エネルギー重合体、シランカップリング剤、溶剤x、溶剤yは、前記に示される意味を有する。
【0135】
工程A1)において、前記シランカップリング剤加水分解溶液と有機アルカリ溶液との質量比は(5~10000):1であり、例えば、(10~1000):1であり、又は(10~500):1であり、例示的に30:1、50:1、100:1、300:1である。
【0136】
なお、前記シランカップリング剤加水分解溶液は濃度が50~1000mg/mLであり、例えば、250~500mg/mLであり、又は300~4000mg/mLである。
【0137】
なお、前記有機アルカリ溶液において、有機アルカリと溶剤zとの質量比は1:(10~5000)であり、例えば1:(10~1000)であり、例示的に1:100、1:400、1:500、1:600、1:800である。
【0138】
工程A1)において、前記シランカップリング剤加水分解溶液の製造原料はシロキサン単体、触媒、溶剤zを含む。なお、前記シロキサン単体、触媒、溶剤z及びその配合比は前記に示される意味を有する。
【0139】
工程A1)において、前記触媒と溶剤zとの質量比は1:(100~10000)であり、例えば1:(200~1000)であり、又は1:(300~600)である。
【0140】
工程A1)において、前記触媒加熱の条件は温度50~100℃であり、例えば70~90℃であり、例示的に60℃、70℃、80℃、90℃である。さらに、前記触媒加熱の反応時間は1~10hであり、例えば2~8hであり、例示的に5h、7h、8h、10hである。
【0141】
工程A1)において、前記触媒加熱は攪拌しながら行い、例えば、攪拌回転数が200~5000rpmであり、又回転数が500~1500rpmであり、例示的に1000rpm、2000rpmである。
【0142】
工程A2)において、前記低表面エネルギー重合体、溶剤x、(ii)低表面エネルギー重合体溶液は前記に示される意味を有する。
【0143】
工程A2)において、前記溶解は攪拌溶解である。例えば、攪拌回転数は200~5000rpmであり、又500~3000rpmであり、例示的に2000rpm、3000rpmである。さらに、攪拌時間は1~10日間であり、例えば2~8日間であり、例示的に3日間、5日間、8日間、10日間である。
【0144】
工程A3)において、前記シランカップリング剤、溶剤y、(iii)シランカップリング剤分散液は前記に示される意味を有する。
【0145】
工程A4)において、前記(i)シランカップリング剤加水分解溶液とアルカリ溶液との混合分散液と、(iii)シランカップリング剤分散液との質量比は(10~500):1であり、例えば(20~300):1であり、例示的に30:1、50:1、100:1、300:1である。
【0146】
工程A5)において、前記熱処理の温度は80~200℃であり、例えば100~160℃であり、例示的に100℃である。さらに、前記熱処理の時間は1~5時間であり、例えば2~4時間であり、例示的に3時間、5時間である。
【0147】
工程A6)において、前記焼結は不活性ガス雰囲気の保護で行い、例えば、前記不活性ガス雰囲気が窒素ガス、アルゴンガスなどの少なくとも1種であり、好ましくは窒素ガスである。
【0148】
工程A6)において、前記焼結の温度は200~600℃であり、例えば300~500℃であり、例示的に400℃である。さらに、前記熱処理の時間は0.5~5時間であり、例えば1~4時間であり、例示的に1時間、2時間、3時間である。
<繰返し使用可能なガラスライク又はガラスライク製品の回収方法>
本発明は、前記ガラスライク又はガラスライク製品を水又は水含有溶剤に溶解させて、コロソール分散液を回収する工程を含む、上記ガラスライク又はガラスライク製品の回収方法をさらに提供する。
【0149】
なお、前記水含有溶剤は、水と有機溶剤との混合溶剤から選ばれてもよい。好ましくは、前記有機溶剤は水と混合溶解できる有機溶剤であり、例えばエタノールである。
<繰返し使用可能なガラスライク又はガラスライク製品の再利用方法>
本発明は、上記回収されたコロソール分散液を加熱し、成形した後に、焼結して、前記ガラスライク又はガラスライク製品を得る工程を含む、上記ガラスライク又はガラスライク製品の再利用方法をさらに提供する。
【0150】
なお、前記加熱の目標温度は60~80℃であり、例えば60~70℃であり、例示的に60℃である。加熱の目的はコロソール分散液における水又は水含有溶剤を取り除くためである。
なお、前記焼結の処理は製造方法と同様である。
<繰返し使用可能なガラスライク又はガラスライク製品のモールディング方法>
本発明は、前記ガラスライク又はガラスライク製品をテンプレートに置き、90~150℃(例えば100~120℃、例示的に100℃)水蒸気雰囲気の条件で前記ガラスライク又はガラスライク製品をモールディングする工程を含む、上記ガラスライク又はガラスライク製品のモールディング方法をさらに提供する。
【0151】
前記モールディング方法は、例えば、具体的に、前記焼結前のガラスライク又はガラスライク製品を一定形状のテンプレートの表面に置き、90~150℃水蒸気雰囲気の条件でガラスを軟化してテンプレートの表面でコンフォーマルし、さらに(例えば60~80℃で)加熱し、コンフォーマル後のガラスを硬化した後に、テンプレートを取り除き、焼結してからモールディング後のガラスライク又はガラスライク製品を得る工程を、含む。
<組成物系の適用>
本発明は、上記組成物系の、繰返し使用可能なガラスライク又はガラスライク製品の製造における適用をさらに提供する。
【0152】
次に具体的な実施例を組合わせて本発明の技術案について更に詳しく説明する。下記実施例は本発明を例示的に説明・解釈するものだけであり、本発明の請求範囲を限定するものではないと理解すべきである。本発明の上記内容に基づいて実現された技術は本発明により請求される範囲内に含まれる。
【0153】
特に断りのない限り、下記実施例で使用される原料及び試薬は全て市販品であり、或いは既存方法により製造できるものである。
実施例A1
1)重量平均分子量が1万である低表面エネルギー重合体の四フッ化エチレン樹脂2.5gを酢酸エチル100mLに溶解させ、常温において回転数1000rpmで3日間磁気攪拌して、濃度が25mg/mLであるポリテトラフルオロエチレン溶液、即ち、溶液aを得た。
【0154】
2)溶液aと溶剤bとの質量比が1:20となるように、工程1)で得た溶液aに、溶剤bのエタノールを1滴/1秒の速度で1滴ずつ滴下した。溶剤bにより相分離を行って、ポリテトラフルオロエチレンミセル含有の分散液、即ち、系cを得た。当該ポリテトラフルオロエチレンミセルの分散液は負電荷特性を示す。
【0155】
3)3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランと系cとの質量比が1:200となるように、工程2)で得た系cに、正電荷特性を示す3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン5mLを5滴/1秒の方式で滴下して、分散液eを調製した。なお、静電相互作用により、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランがシェル層としてポリテトラフルオロエチレンミセル表面に吸着された。
【0156】
4)塩酸200μLの触媒作用により、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン30mLをエタノール300mLに溶解させ、80℃で混合物を加熱し、1000rpm回転数で8h攪拌して、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランの加水分解分散液、即ち、加水分解溶液fを調製した。
【0157】
5)有機アルカリのトリエタノールアミン5mLをエタノール100mLに溶解させて、トリエタノールアミンのエタノール溶液、即ち、溶液gを調製した。当該有機アルカリ溶液はpH値が8.0である。
【0158】
6)工程3)で得た分散液e 100mLと、工程4)で得た加水分解溶液f 10mLと、工程5)で得た溶液g 1mLとを混合させて、透明、高硬度、自己修復機能を有する塗料hを調製した。
【0159】
7)工程6)で得た透明、高硬度、自己修復機能を有する塗料hに、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン100μLとポリジメチルシロキサン200μLを混合させて、塗料Iを調製した。前記塗料Iは、透明、高硬度、自己修復機能を有する上で、防水、防油、耐指紋、落書き防止の機能をさらに有する。
【0160】
ディップコーティング法により工程7)で得た自己修復塗料をガラス基質に塗布し、150℃でコーティングを2時間熱処理して、ガラス基質に厚さが3μmであるコーティングを製造した(コーティングの表面構造が
図1に示される)。
【0161】
塗料Iが固化したコーティングは、
コーティング硬度0.74GPa以上、ヤング率6.9GPaという性能を有する。
【0162】
鉄網でガラス基質のコーティング表面に幅150μmの傷を付け、傷を60℃水により発生された蒸気に置くが、コーティングが水面からの距離は3cmである。コーティングの傷が消えるまで修復した後に、製品を取り出して、室温に置き、水蒸気で湿っている領域を乾燥させる。
図2によれば、時間が経つにつれて、傷が徐々に修復されて小さくなり、4min加熱処理した時点で、傷がほとんど消えてしまい、コーティングの自己修復がほぼ完了した。
【0163】
図3は、本実施例のコーティングが塗布されたガラス、及びコーティング処理が実施されていないガラス基質の透過性比較図であり、当該コーティングによりガラス基質の透過率が約1%向上されたと証明した。
【0164】
本実施例のコーティングが塗布されたガラスの疎水性及び疎油性について考察した(
図4に示される)。
図4におけるa及びbによれば、本実施例のコーティングの防水性能が良好である。
図4におけるc及びdから、本実施例のコーティングの防油性能が良好であると証明した。
【0165】
本実施例のコーティングが塗布されたガラスの耐指紋性について考察した(
図5に示される)。コーティング処理が実施されていないガラス基質と比較すれば、コーティング処理が実施されていないガラス基質表面の指紋液はほぼガラス基質表層に広がっているのに対して、本実施例のコーティングが塗布されたガラス表面の指紋液は点状に分散しており、広がり性が劣る。本実施例のコーティングは良好な耐指紋性を有すると証明した。
【0166】
本実施例のコーティングが塗布されたガラスの落書き防止性について考察した(
図6に示される)。コーティング処理が実施されていないガラス基質と比較すれば、コーティング処理が実施されていないガラス基質表面の油性ペンインクは広がり性が良好で、完全に拭き取ることができないのに対して、本実施例のコーティングが塗布されたガラス表面の油性ペンインクは液滴縮み状態であり、ほぼ完全に拭き取ることができる。本実施例のコーティングは良好な落書き防止性を有すると証明した。
【0167】
図7は、実施例A1において製造された透明、高硬度、自己修復コーティングのナノメートル級圧痕のテスト結果である。結果によれば、連続剛性法により測定されたコーティング表面硬度が7.3GPaであり、弾性率が6.9GPaである。
【0168】
図8は、実施例A1において製造された透明、高硬度、自己修復コーティングの熱処理前後の9H鉛筆硬度のテスト結果である。結果によれば、GB/T 6739-2006国家テスト標準に基づいて、熱処理前では2H硬度鉛筆でコーティング表面にはっきりとした傷を付けることができることから、熱処理前のコーティング硬度が2Hより小さいが、熱処理後では9H硬度鉛筆でコーティング表面に傷を付けることができないことから、熱処理後のコーティングの鉛筆硬度が9Hより大きい。
実施例A2
1)重量平均分子量が1万である低表面エネルギー重合体のポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン5gを酢酸エチル100mLに溶解させ、常温において回転数1000rpmで3日間磁気攪拌して、濃度が50mg/mLであるポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン溶液、即ち、溶液aを得た。
【0169】
2)溶液aと溶剤bとの質量比が1:100となるように、工程1)で得た溶液aに、溶剤bのエタノールを1滴/1秒の速度で1滴ずつ滴下した。溶剤bにより相分離を行って、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサンミセル含有の分散液、即ち、系cを得た。当該ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサンミセル分散液は負電荷特性を示す。
【0170】
3)3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランと系cとの質量比が1:300となるように、工程2)で得た系cに、正電荷特性を示す3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン5 mLを5滴/1秒の方式で滴下して、分散液eを調製した。なお、静電相互作用により、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランがシェル層としてポリトリフルオロプロピルメチルシロキサンミセル表面に吸着された。
【0171】
4)塩酸200μLの触媒作用により、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン30mLをエタノール300mLに溶解させ、80℃で混合物を加熱し、1000rpm回転数で8h攪拌して、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランコロソール分散液、即ち、加水分解溶液fを調製した。
【0172】
5)有機アルカリのトリエタノールアミン5 mLをエタノール200mLに溶解させて、トリエタノールアミンエタノール溶液gを調製した。当該有機アルカリ溶液はpH値が7.5である。
【0173】
6)工程3)で得た分散液e 100mLと、工程4)で得た加水分解溶液f 10mLと、工程5)で得た溶液g 1mLとを混合させて、透明、高硬度、自己修復機能を有する塗料hを調製した。
【0174】
7)工程6)で得た透明、高硬度、自己修復機能を有する塗料hに、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン100μLとポリジメチルシロキサン200μLを混合させることで、コーティングは、透明、高硬度、自己修復機能を有する上で、防水、防油、耐指紋、落書き防止の機能をさらに有する。
【0175】
ディップコーティング法により工程7)で得た自己修復塗料をポリメタクリル酸メチル基質に塗布し、100℃でコーティングを2時間熱処理して、ポリメタクリル酸メチル基質に厚さが2μmであるコーティングを製造した。当該コーティングの鉛筆硬度が9H以上である。
【0176】
鉄網でポリメタクリル酸メチル基質のコーティング表面に幅100μmの傷を付け、傷を50℃水により発生された蒸気に置くが、コーティングが水面からの距離は2cmである。傷が消えるまで修復した後に、製品を取り出して、室温に置き、水蒸気で湿っている領域を乾燥させる。
実施例A3
1)重量平均分子量が1万である低表面エネルギー重合体のポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン3.5gを酢酸エチル100mLに溶解させ、常温において回転数1000rpmで3日間磁気攪拌して、濃度が35mg/mLであるポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン溶液、即ち、溶液aを得た。
【0177】
2)溶液aと溶剤bとの質量比が1:80となるように、工程1)で得た溶液aに、溶剤bのエタノールを1滴/1秒の速度で1滴ずつ滴下した。溶剤bにより相分離を行って、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサンミセル含有の分散液、即ち、系cを得た。当該ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサンミセル分散液は負電荷特性を示す。
【0178】
3)γ-アミノプロピルトリメトキシシランと系cとの質量比が1:300となるように、工程2)で得た系cに、正電荷特性を示すγ-アミノプロピルトリメトキシシラン5mLを5滴/1秒の方式で滴下して、分散液eを調製した。なお、静電相互作用により、γ-アミノプロピルトリメトキシシランがシェル層としてポリトリフルオロプロピルメチルシロキサンミセル表面に吸着された。
【0179】
4)塩酸200μLの触媒作用により、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン30mLをエタノール300mLに溶解させ、80℃で混合物を加熱し、1000rpm回転数で8h攪拌して、γ-アミノプロピルトリメトキシシランコロソール分散液、即ち、加水分解溶液fを調製した。
【0180】
5)有機アルカリのトリエタノールアミン5 mLをエタノール100mLに溶解させて、トリエタノールアミンエタノール溶液gを調製した。当該有機アルカリ溶液はpH値が8である。
【0181】
6)工程3)で得た分散液e 100mLと、工程4)で得た加水分解溶液f 10mLと、工程5)で得た溶液g 1mLとを混合させて、透明、高硬度、自己修復機能を有する塗料hを調製した。
【0182】
7)工程6)で得た透明、高硬度、自己修復機能を有する塗料hに、粒径が200nmである二酸化ケイ素分散液100μLとステアリン酸2.0gを混合させることで、コーティングは、透明、高硬度、自己修復機能を有する上で、白色と透明の間で変色する機能をさらに有する。
【0183】
スプレー法により上記何れかの自己修復塗料をエチレンテレフタラート基質に塗布し、100℃でコーティングを2時間熱処理して、エチレンテレフタラート基質に厚さが1μmであるコーティングを製造した。当該コーティングの鉛筆硬度が9H以上である。
【0184】
鉄網でエチレンテレフタラート基質のコーティング表面に幅150μmの傷を付け、傷を45℃水により発生された蒸気に置くが、コーティングが水面からの距離は3cmである。傷が消えるまで修復した後に、製品を取り出して、室温に置き、水蒸気で湿っている領域を乾燥させる。
実施例A4
1)重量平均分子量が1万である低表面エネルギー重合体のポリフッ化ビニリデン樹脂6.5gを酢酸エチル100mLに溶解させ、常温において回転数1000rpmで3日間磁気攪拌して、濃度が65mg/mLであるポリフッ化ビニリデン樹脂溶液、即ち、溶液aを得た。
【0185】
2)溶液aと溶剤bとの質量比が1:700となるように、工程1)で得た溶液aに、溶剤bのエタノールを1滴/1秒の速度で1滴ずつ滴下した。溶剤bにより相分離を行って、ポリフッ化ビニリデンミセル含有の分散液、即ち、系cを得た。当該ポリフッ化ビニリデンミセル分散液は負電荷特性を示す。
【0186】
3)ジエチルアミノメチルトリエトキシシランと系cとの質量比が1:50となるように、工程2)で得た系cに、正電荷特性を示すジエチルアミノメチルトリエトキシシラン5mLを5滴/1秒の方式で滴下して、分散液eを調製した。なお、静電相互作用により、ジエチルアミノメチルトリエトキシシランがシェル層としてポリフッ化ビニリデンミセル表面に吸着された。
【0187】
4)塩酸200μLの触媒作用により、工程3)におけるジエチルアミノメチルトリエトキシシラン30mLをエタノール300mLに溶解させ、80℃で混合物を加熱し、1000rpm回転数で8h攪拌して、ジエチルアミノメチルトリエトキシシランコロソール分散液、即ち、加水分解溶液fを調製した。
【0188】
5)有機アルカリのトリエチルアミン5mLをエタノール100mLに溶解させて、トリエチルアミンエタノール溶液gを調製した。当該有機アルカリ溶液はpH値が8である。
【0189】
6)工程3)で得た分散液e 100mLと、工程4)で得た加水分解溶液f 10mLと、工程5)で得た溶液g 1mLとを混合させて、透明、高硬度、自己修復機能を有する塗料hを調製した。
【0190】
7)工程6)で得た透明、高硬度、自己修復機能を有する塗料hに、ポリビニルアルコール1.0gと1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリメトキシシラン2.0gを混合させることで、コーティングは、透明、高硬度、自己修復機能を有する上で、アンチフォグ、耐汚染の機能をさらに有する。
【0191】
スプレー法により上記何れかの自己修復塗料をセラミックス基質に塗布し、200℃でコーティングを1時間熱処理して、セラミックス基質に厚さが2.5μmであるコーティングを製造した。当該コーティングの鉛筆硬度が9H以上である。
【0192】
鉄網でセラミックス基質のコーティング表面に幅200μmの傷を付け、傷を60℃水により発生された蒸気に置くが、コーティングが水面からの距離は2cmである。傷が消えるまで修復した後に、製品を取り出して、室温に置き、水蒸気で湿っている領域を乾燥させる。
実施例A5
1)重量平均分子量が1万である低表面エネルギー重合体のメチルシリコーン樹脂5.5gを酢酸エチル200mLに溶解させ、常温において回転数1000rpmで3日間磁気攪拌して、濃度が55mg/mLであるメチルシリコーン樹脂溶液、即ち、溶液aを得た。
【0193】
2)溶液aと溶剤bとの質量比が1:800となるように、工程1)で得た溶液aに、溶剤bのエタノールを1滴/1秒の速度で1滴ずつ滴下した。非溶剤により相分離を行って、メチルシリコーン樹脂ミセル含有の分散液、即ち、系cを得た。当該ポリフッ化ビニリデンミセル分散液は負電荷特性を示す。
【0194】
3)γ-アミノプロピルトリエトキシシランと系cとの質量比が1:80となるように、工程2)で得た系cに、正電荷特性を示すγ-アミノプロピルトリエトキシシラン10mLを10滴/1秒の方式で滴下して、分散液eを調製した。なお、静電相互作用により、γ-アミノプロピルトリエトキシシランがシェル層としてメチルシリコーン樹脂ミセル表面に吸着された。
【0195】
4)塩酸400μLの触媒作用により、工程3)におけるγ-アミノプロピルトリエトキシシラン60mLをエタノール600mLに溶解させ、80℃で混合物を加熱し、1000rpm回転数で8h攪拌して、γ-アミノプロピルトリエトキシシランコロソール分散液、即ち、加水分解溶液fを調製した。
【0196】
5)有機アルカリのジフェニルアミン10mLをエタノール200mLに溶解させて、ジフェニルアミンエタノール溶液gを調製した。当該有機アルカリ溶液はpH値が8.5である。
【0197】
6)工程3)で得た分散液e 200mLと、工程4)で得た加水分解溶液f 20mLと、工程5)で得た溶液g 2mLとを混合させて、透明、高硬度、自己修復機能を有する塗料hを調製した。
【0198】
7)工程6)で得た透明、高硬度、自己修復機能を有する塗料hに、第4級アンモニウム塩類抗菌剤2.0g(有効成分がドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリドである)と粒径が30nmである二酸化ケイ素分散液2mLとを混合させることで、コーティングは、透明、高硬度、自己修復機能を有する上で、抗菌、反射防止の機能をさらに有する。
【0199】
スプレー法により上記何れかの自己修復塗料をポリカーボネート基質に塗布し、200℃でコーティングを1時間熱処理して、ポリカーボネート基質に厚さが2μmであるコーティングを製造した。当該コーティングの鉛筆硬度が9H以上である。
【0200】
鉄網でポリカーボネート基質のコーティング表面に幅100μmの傷を付け、傷を60℃水により発生された蒸気に置くが、コーティングが水面からの距離は3cmである。傷が消えるまで修復した後に、コーティング又は製品を取り出して、室温に置き、水蒸気で湿っている領域を乾燥させる。
実施例B1
1)塩酸の触媒作用により、プロピルトリメトキシシランをエタノールに溶解させ、80℃で混合物を加熱し、2000rpm回転数で10h攪拌して、プロピルトリメトキシシランの加水分解分散液、即ち、加水分解溶液aを調製した。なお、塩酸と、プロピルトリメトキシシランと、エタノールとの質量比は1:300:500である。
【0201】
2)トリエタノールアミンと、エタノールとの質量比が1:100となるように、有機アルカリのトリエタノールアミンをエタノールに溶解させて、トリエタノールアミンのエタノール溶液、即ち、溶液bを調製した。
【0202】
3)重量平均分子量が1万である低表面エネルギー重合体の四フッ化エチレン樹脂2.5gを酢酸エチル200mLに溶解させ、常温において回転数1000rpmで3日間磁気攪拌して、ポリテトラフルオロエチレン溶液、即ち、溶液cを得た。
【0203】
4)3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランとエタノールとの質量比が1:100となるように、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランをエタノールに入れて、シランカップリング剤分散液、即ち、分散液dを調製した。
【0204】
5)工程1)で得た加水分解溶液aと工程2)で得た溶液bとを質量比300:1で混合させて、混合分散液、即ち、分散液eを得た。
【0205】
6)工程5)で得た分散液eと、工程3)で得た溶液cと、工程4)で得た分散液dとを質量比500:1:100で混合させて、混合分散液、即ち、分散液fを調製した。分散液fはpH値が9.0である。
【0206】
7)工程6)の分散液fを任意の金型に置き、100℃で5時間熱処理して、シリコンガラスライクゲルブロックを得た。
【0207】
8)ガラスゲルブロックを窒素ガスの保護で400℃で2時間焼結して、繰返し使用可能なシリコンガラスライクブロックを得た。
【0208】
本実施例において製造されたシリコンガラスライク表面のSEMによる図は
図9に示される。
図9によれば、シリコンガラス表面は平坦で緻密である。製造されたシリコンガラスライクブロックの実物写真は
図10に示される。
【0209】
本実施例において製造されたガラスライクブロックを50℃条件で水に溶解させて、透き通る透明コロソール分散液を得た(
図11に示される)。さらに60℃で当該コロソール分散液から水を取り除いて成形し、成形されたサンプルを同様に焼結処理した後に、再びシリコンガラスライクブロックを得た。このようにガラスライクブロックの1回循環過程が実現された。当該循環過程は少なくとも10回繰り返すことができる。
【0210】
連続剛性法によるナノメートル級圧痕テストによれば、ガラスライクブロック最初の硬度と弾性率、及び循環10回後に得たガラスライクブロックの硬度と弾性率のテスト結果は
図12に示される。
図12によれば、ガラスライクブロックの回収と繰返し使用前後の硬度と弾性率はほとんど変わらず、硬度が約1.3GPaに保持され、弾性率が約13GPaに保持される。
【0211】
本実施例において製造されたガラスライクブロックをコンフォーマルテンプレートとして100℃水蒸気雰囲気で一定形状の金型の表面に置くことで、テンプレート形状のガラスライク器具を得ることができる。ガラスライク器具を加熱条件で水に溶解させ、60℃で成形し、コンフォーマルテンプレートとして別形状の金型の表面に置くことで、異なる形状のガラス器具を得ることができ(
図13に示される)、ガラスの回収再利用が実現される。
【0212】
図14に示されるように、300~800nm波長範囲内で本実施例において製造されたガラスライクブロックをLAMBDA 950UV紫外線-可視光線分光光度計により透過率テストを行った結果、当該ガラスは、可視光線波長では約85%の透過率を有し、紫外線波長では約10%の透過率を有することから、ある程度の耐紫外線機能を有する。
【0213】
熱伝導度計によるテストによれば、本実施例において製造されたガラスライクブロックは普通ガラスより低い熱伝導係数を有することから、建物の透明保温ガラスに適用される。
【0214】
本実施例において製造されたガラスライクブロックをアルコールランプの炎で6min焼いても、ガラス表面に火炎が起こらず、煙も出ないことから、当該ガラスは良好な耐火難燃性を有する(
図15に示される)。
実施例B2
1)塩酸の触媒作用により、ドデシルトリエトキシシランをエタノールに溶解させ、70℃で混合物を加熱し、1000rpm回転数で8h攪拌して、ドデシルトリエトキシシランの加水分解分散液、即ち、加水分解溶液aを調製した。なお、塩酸と、ドデシルトリエトキシシランと、エタノールとの質量比は1:150:500である。
【0215】
2)トリエチルアミンと、エタノールとの質量比が1:500となるように、有機アルカリのトリエチルアミンをエタノールに溶解させて、トリエチルアミンのエタノール溶液、即ち、溶液bを調製した。
【0216】
3)重量平均分子量が1万である低表面エネルギー重合体のメチルシリコーン樹脂2.5gをアセトン200mLに溶解させ、常温において回転数3000rpmで5日間磁気攪拌して、メチルシリコーン樹脂溶液、即ち、溶液cを得た。
【0217】
4)γ-アミノプロピルトリエトキシシランとエタノールとの質量比が1:200となるように、γ-アミノプロピルトリエトキシシランを溶剤のエタノールに入れて、分散液dを調製した。
【0218】
5)工程1)で得た加水分解溶液aと工程2)で得た溶液bとを質量比100:1で混合させて、混合分散液eを得た。
【0219】
6)工程5)で得た混合分散液eと、工程3)で得た溶液cと、工程4)で得た分散液dとを質量比1000:1:100で混合させて、混合コロソール分散液、即ち、分散液fを調製した。分散液fはpH値が10.0である。
【0220】
7)分散液fを任意の金型に置き、100℃で3時間熱処理して、シリコンガラスライクゲルブロックを得た。
【0221】
8)ガラスライクゲルブロックを窒素ガスの保護で400℃で1時間焼結して、繰返し使用可能なシリコンガラスライクブロックを得た。
実施例B3
1)塩酸の触媒作用により、プロピルトリエトキシシランをエタノールに溶解させ、60℃で混合物を加熱し、800rpm回転数で7h攪拌して、プロピルトリエトキシシランの加水分解溶液、即ち、加水分解溶液aを調製した。なお、塩酸と、プロピルトリエトキシシランと、エタノールとの質量比は3:400:700である。
【0222】
2)トリエチルアミンとエタノールとの質量比が1:600となるように、有機アルカリのトリエチルアミンをエタノールに溶解させて、トリエチルアミンのエタノール溶液、即ち、溶液bを調製した。
【0223】
3)重量平均分子量が1万である低表面エネルギー重合体のフェニルビニルシリコーン樹脂5gをメチルブチルケトン500mLに溶解させ、常温において回転数2000rpmで6日間磁気攪拌して、フェニルビニルシリコーン樹脂溶液、即ち、溶液cを得た。
【0224】
4)γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランとエタノールとの質量比が1:400となるように、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランを溶剤のエタノールに入れて、分散液dを調製した。
【0225】
5)工程1)で得た加水分解溶液aと工程2)で得た分散液bとを質量比30:1で混合させて、混合分散液eを得た。
【0226】
6)工程5)で得た混合分散液eと、工程3)で得た溶液cと、工程4)で得た分散液dとを質量比1000:1:50で混合させて、分散液fを調製した。分散液fはpH値が9.5である。
【0227】
7)分散液fを任意の金型に置き、100℃で5時間熱処理して、シリコンガラスライクゲルブロックを得た。
【0228】
8)ガラスライクゲルブロックを窒素ガスの保護で400℃で3時間焼結して、繰返し使用可能なシリコンガラスライクブロックを得た。
実施例B4
1)塩酸の触媒作用により、フェニルトリエトキシシランをエタノールに溶解させ、80℃で混合物を加熱し、1000rpm回転数で7h攪拌して、フェニルトリエトキシシランの加水分解溶液、即ち、加水分解溶液aを調製した。なお、塩酸と、フェニルトリエトキシシランと、エタノールとの質量比は1:400:900である。
【0229】
2)ジフェニルアミンとエタノールとの質量比が1:600となるように、有機アルカリのジフェニルアミンをエタノールに溶解させて、ジフェニルアミンのエタノール溶液、即ち、溶液bを調製した。
【0230】
3)重量平均分子量が1万である低表面エネルギー重合体のポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン10gを酢酸メチル500mLに溶解させ、常温において回転数2000rpmで8日間磁気攪拌して、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン溶液、即ち、溶液cを得た。
【0231】
4)3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランとエタノールとの質量比が1:300となるように、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランを溶剤のエタノールに入れて、分散液dを調製した。
【0232】
5)工程1)で得た加水分解溶液aと工程2)で得た溶液bとを質量比50:1で混合させて、混合分散液eを得た。
【0233】
6)工程5)で得た混合分散液eと、工程3)で得た溶液cと、工程4)で得た溶液dとを質量比800:1:100で混合させて、分散液fを調製した。分散液fはpH値が8.5である。
【0234】
7)分散液fを任意の金型に置き、100℃で3時間熱処理して、シリコンガラスライクゲルブロックを得た。
【0235】
8)ガラスライクゲルブロックを窒素ガスの保護で400℃で1時間焼結して、繰返し使用可能なシリコンガラスライクブロックを得た。
実施例B5
1)塩酸の触媒作用により、エチルトリエトキシシランをエタノールに溶解させ、90℃で混合物を加熱し、1000rpm回転数で8h攪拌して、エチルトリエトキシシランの加水分解溶液、即ち、加水分解溶液aを調製した。なお、塩酸と、エチルトリエトキシシランと、エタノールとの質量比は1:150:600である。
【0236】
2)フェニルアミンとエタノールとの質量比が1:800となるように、有機アルカリのフェニルアミンをエタノールに溶解させて、フェニルアミンのエタノール分散液、即ち、溶液bを調製した。
【0237】
3)重量平均分子量が1万である低表面エネルギー重合体の四フッ化エチレン樹脂25gを酢酸プロピル1000mLに溶解させ、常温において回転数2000rpmで5日間磁気攪拌して、ポリテトラフルオロエチレン溶液、即ち、溶液cを得た。
【0238】
4)γ-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランとエタノールとの質量比が1:500となるように、γ-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランを溶剤のエタノールに入れて、分散液dを調製した。
【0239】
5)工程1)で得た加水分解溶液aと工程2)で得た溶液bとを質量比50:1で混合させて、混合分散液eを得た。
【0240】
6)工程5)で得た混合分散液eと、工程3)で得た溶液cと、工程4)で得た溶液dとを質量比600:1:100で混合させて、分散液fを調製した。分散液fはpH値が9.0である。
【0241】
7)分散液fを任意の金型に置き、100℃で3時間熱処理して、シリコンガラスライクゲルブロックを得た。
【0242】
8)ガラスライクゲルブロックを窒素ガスの保護で400℃で1時間焼結して、繰返し使用可能なシリコンガラスライクブロックを得た。
実施例B6
1)塩酸の触媒作用により、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランをエタノールに溶解させ、90℃で混合物を加熱し、2000rpm回転数で8h攪拌して、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランの加水分解溶液、即ち、加水分解溶液aを調製した。なお、塩酸と、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランと、エタノールとの質量比は6:2500:3000である。
【0243】
2)トリメチルアミンとエタノールとの質量比が1:800となるように、有機アルカリのトリメチルアミンをエタノールに溶解させて、トリメチルアミンのエタノール溶液、即ち、溶液bを調製した。
【0244】
3)重量平均分子量が1万である低表面エネルギー重合体のフェニルエポキシシリコーン樹脂15gをメチルイソブチルケトン1000mLに溶解させ、常温において回転数2000rpmで10日間磁気攪拌して、フェニルエポキシシリコーン樹脂溶液、即ち、溶液cを得た。
【0245】
4)ジエチルアミノメチルトリエトキシシランとエタノールとの質量比が1:800となるように、ジエチルアミノメチルトリエトキシシランを溶剤のエタノールに入れて、分散液dを調製した。
【0246】
5)工程1)で得た加水分解溶液aと工程2)で得た溶液bとを質量比50:1で混合させて、混合分散液eを得た。
【0247】
6)工程5)で得た混合分散液eと、工程3)で得た溶液cと、工程4)で得た分散液dとを質量比900:1:100で混合させて、分散液fを調製した。分散液fはpH値が8.5である。
【0248】
7)分散液fを任意の金型に置き、100℃で3時間熱処理して、シリコンガラスライクゲルブロックを得た。
【0249】
8)ガラスライクゲルブロックを窒素ガスの保護で400℃で1時間焼結して、繰返し使用可能なシリコンガラスライクブロックを得た。
【0250】
上記のように、本発明の実施形態について説明した。ところが、本発明は上記実施形態に限られない。本発明の要旨及び原則を逸脱しない範囲で何れかの修正、同等の取替え、改良などを行っても、本発明の請求範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0251】
【
図1】
図1は、実施例A1において製造された透明、高硬度、多機能集積可能な自己修復コーティングのSEMによる50000倍拡大図である。
【
図2】
図2は、実施例A1において製造された透明、高硬度、多機能集積可能な自己修復コーティングの60℃水蒸気条件における自己修復の過程である。
【
図3】
図3は、実施例A1において製造された透明、高硬度、多機能集積可能な自己修復コーティング含有のガラス、及びコーティング処理が実施されていないガラスの透過性図である。
【
図4】
図4は、実施例A1においてコーティングが塗布されたガラス基質は平面と30°角度なす場合、水滴(a及びb)とケロシン滴(c及びd)が製造された透明、高硬度、自己修復、疎水及び疎油のコーティング表面から転がり落ちる前後の写真である。
【
図5】
図5は、実施例A1において透明、高硬度、自己修復、耐指紋機能コーティングが塗布されていないガラス、及び当該機能コーティングが塗布されたガラスに対して、指紋液がそれぞれコーティング表面及びガラス表面における広がり及び縮みの状況である。
【
図6】
図6は、実施例A1において透明、高硬度、自己修復、落書き防止機能コーティングが塗布されたガラス、及び当該機能コーティングが塗布されていないガラスに対して、油性ペンインクがそれぞれコーティング表面及びガラス表面における縮み及び消し方の状況である。
【
図7】
図7は、実施例A1において製造された透明、高硬度、多機能集積可能な自己修復コーティングのナノメートル級圧痕のテスト結果である。
【
図8】
図8は、実施例A1において製造された透明、高硬度、多機能集積可能な自己修復コーティングの熱処理前後の9H鉛筆硬度のテスト結果である。
【
図9】
図9は、実施例B1において製造されたガラスライクブロック表面のSEMによる20000倍拡大図である。
【
図10】
図10は、実施例B1において製造されたガラスライクブロックの実物写真である。
【
図11】
図11は、実施例B1において製造されたガラスライクブロックの回収溶解後の写真である。
【
図12】
図12は、実施例B1において製造されたガラスライクブロックとその10回回収後のガラスライクサンプルとの硬度及び弾性率の比較結果である。
【
図13】
図13は、実施例B1において製造された茶碗状ガラスライク器具を溶解・再成形によりコップ状ガラスライク器具に変える変化図である。
【
図14】
図14は、実施例B1において製造されたガラスライクブロック及び普通ガラスの紫外線及び可視光線波長における透過率図である。
【
図15】
図15は、実施例B1において製造されたガラスライクブロックの耐火性テストである。