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特許7317210抗ウイルス剤の送達のための薬物送達システム
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  • 特許-抗ウイルス剤の送達のための薬物送達システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】抗ウイルス剤の送達のための薬物送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7076 20060101AFI20230721BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20230721BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230721BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230721BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230721BHJP
   A61K 9/70 20060101ALN20230721BHJP
【FI】
A61K31/7076
A61P31/18
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/38
A61K9/70
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2022508537
(86)(22)【出願日】2020-08-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-08
(86)【国際出願番号】 US2020045693
(87)【国際公開番号】W WO2021030306
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】62/885,968
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(72)【発明者】
【氏名】フォルスター,セト・ピー
(72)【発明者】
【氏名】バレット,ステファニ-・エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】テラー,ライアン・エス
(72)【発明者】
【氏名】ジャイルズ,モーガン・ビー
(72)【発明者】
【氏名】コイノフ,アサーナス
【審査官】内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-514992(JP,A)
【文献】国際公開第2005/090349(WO,A1)
【文献】特表2022-515718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むインプラント薬物送達システム:
(a)生体適合性非侵食性ポリマーと、コア中に1重量%~60重量%の間で存在する4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物と、を含むコア、及び
(b)ポリマーを含む生体適合性非侵食性拡散バリアであって、ここで、前記拡散バリアは、50μm~300μmの厚さを有する、であって、
ここで、前記インプラント薬物送達システムは、皮下に移植され、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物は、0.02ng/mL~300.0ng/mLの間の4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシンの血漿濃度を生じる速度で、6ヶ月~36ヶ月の期間、インビボで連続的に放出される、インプラント薬物送達システム。
【請求項2】
4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン血漿濃度が0.02ng/mL~30.0ng/mLである、請求項1に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項3】
4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン血漿濃度が0.02ng/mL~8.0ng/mLである、請求項2に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項4】
4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物がコア中に10重量%~60重量%の間で存在する、請求項1に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項5】
4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物が15~40重量%でコア中に存在する、請求項4に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項6】
4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物が0重量%でコア中に存在する、請求項4に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項7】
4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物が0重量%でコア中に存在する、請求項4に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項8】
コア中の生体適合性非侵食性ポリマーが、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリ(ウレタン)、シリコーン、架橋ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、アシル置換酢酸セルロース、部分加水分解アルキレン-酢酸ビニルコポリマー、完全加水分解アルキレン-酢酸ビニルコポリマー、非可塑化ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルの架橋ホモポリマー、ポリ酢酸ビニルの架橋コポリマー、アクリル酸の架橋ポリエステル、メタクリル酸の架橋ポリエステル、ポリビニルアルキルエーテル、ポリフッ化ビニル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、スチレンアクリロニトリルコポリマー、架橋ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アルキレン)、ポリ(ビニルイミダゾール)、ポリ(エステル)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリホスファゼン、クロロスルホン化ポリオレフィン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項9】
生体適合性非浸食性ポリマーがポリ(ウレタン)である、請求項8に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項10】
拡散バリアが、親水性ポリマーまたは可溶性充填剤を有する疎水性ポリマーを含む、請求項1に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項11】
拡散バリアが、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、シリコーン、架橋ポリ(ビニルアルコール)、非可塑化ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルの架橋ホモポリマー、ポリ酢酸ビニルの架橋コポリマー、アクリル酸の架橋ポリエステル、メタクリル酸の架橋ポリエステル、ポリビニルアルキルエーテル、ポリフッ化ビニル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、スチレンアクリロニトリルコポリマー、架橋ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アルキレン)、ポリ(ビニルイミダゾール)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ウレタン)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、アシル置換酢酸セルロース、部分加水分解アルキレン-酢酸ビニルコポリマー、完全加水分解アルキレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリ(エステル)、ポリホスファゼン、クロロスルホン化ポリオレフィン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項10に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項12】
拡散バリアが、ポリ(ウレタン)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、アシル置換酢酸セルロース、部分加水分解アルキレン-酢酸ビニルコポリマー、完全加水分解アルキレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリ(エステル)、ポリホスファゼン、クロロスルホン化ポリオレフィン、およびそれらの組み合わせ群から選択されるポリマーを含む、請求項11に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項13】
拡散バリアがポリ(ウレタン)を含む、請求項10に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項14】
ポリ(ウレタン)が、1重量%~20重量%の吸水率を有する、請求項11に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項15】
拡散バリアが、50μmと200μmとの間の厚さを有する、請求項1に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項16】
コアおよび生体適合性の非腐食性拡散バリアの両方がポリ(ウレタン)を含む、請求項1に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項17】
4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物が、Cu Kα線を使用して得られる粉末x線回折において、少なくとも2θ(±0.2°)11.79、12.39、14.70および15.51度の回折角度でピークを有する粉末x線回折パターンによって特徴付けられる、請求項1に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項18】
1重量%~20重量%の放射線不透過性材料をさらに含む、請求項1に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項19】
放射線不透過性材料が硫酸バリウムである、請求項18に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項20】
4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシンが、24ヶ月~36ヶ月の間の期間、治療濃度で放出される、請求項1に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項21】
HIV感染の治療または予防に用いるための、請求項1に記載のインプラント薬物送達システム
【請求項22】
以下を含むインプラント薬物送達システム:
(a)生体適合性非侵食性ポリマーと、コア中に1重量%~60重量%の間で存在する4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物と、を含むコアであって、ここで、生体適合性非侵食性ポリマーは、熱可塑性ポリ(ウレタン)を含み;
及び
(b)ポリマーを含む生体適合性非侵食性拡散バリアであって、
ここで、前記拡散バリアのポリマーが、熱可塑性ポリ(ウレタン)を含み、そしてここで、前記拡散バリアは、50μm~300μmの厚さを有する
ここで、前記4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物は、移植後1~6ヶ月間測定した場合、0.03~0.07mg/日のインビトロ放出速度を有する、インプラント薬物送達システム。
【請求項23】
4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物が、移植後30日目に測定した場合、0.07mg/日のインビトロ放出速度を有する、請求項2に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項24】
4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物が、移植後60日目に測定した場合、0.04mg/日のインビトロ放出速度を有する、請求項2に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項25】
4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物が、移植後6ヶ月目に測定した場合、0.03mg/日のインビトロ放出速度を有する、請求項2に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項26】
前記コア中の生体適合性非侵食性ポリマーが、熱可塑性ポリ(ウレタン)を含む、請求項1に記載のインプラント薬物送達システム。
【請求項27】
前記拡散バリアのポリマーが、熱可塑性ポリ(ウレタン)を含む、請求項1に記載のインプラント薬物送達システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
1990年代半ばの高活性抗レトロウイルス療法(HAART)の開発は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)I型感染の臨床ケアを変革した。HAARTレジメンは非常に有効な治療法であることが証明されており、HIV感染患者のHIVウイルス量を有意に減少させ、それによって疾患の進展を遅らせ、HIV関連の罹病率および死亡率を低下させる。しかし、HAARTの治療成功は、患者によるレジメンの遵守に直接関係している。血中で適切なレベルの抗レトロウイルス薬の併用が維持されない限り、ウイルス突然変異が発生し、治療耐性および同じ治療クラスの分子に対する交差耐性をもたらし、したがって、治療の長期有効性が危険にさらされることになる。様々な臨床研究により、比較的小さなアドヒアランスの欠落で治療効果が低下することが示されている。Musiimeによる研究では95%以上のアドヒアランスを示した患者の81人%がウイルス抑制を示したが、80~90%のアドヒアランスを示した患者で成功したのはわずか50%であったことが明らかにされた。Musiime、S.ら、Adherence to Highly Active Antiretroviral Treatment in HIV-Infected Rwandan Women、PLOS 1 2011、6、(11)、1-6を参照されたい。注目すべきことに、70%未満のアドヒアランスの患者でウイルスマーカーの改善が認められたのはわずか6%であった。このように、低いアドヒアランスはHIV-1感染の治療における治療失敗の主要な原因である。
【0002】
にもかかわらず、HAARTレジメンの遵守率は依然として最適とは言い難い。HAARTの様々な特性は、アドヒアランスを特に困難にする。治療レジメンは複雑で、毎日複数の薬剤を服用する必要があり、しばしば1日の異なる時間に服用し、多くは食事摂取に関する厳しい要求を伴う。HAART治療薬の多くには、悪心、下痢、頭痛、末梢神経障害などの不快な副作用もある。社会的および心理的要因もまた、遵守に悪影響を及ぼす可能性がある。患者は、物忘れ、HIV陽性と同定されることへの恐怖を含む生活様式因子、および治療の生涯にわたる疲労療法は全て、順守の失敗の一因となると報告している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
新たなHIV治療介入は、治療の複雑性、投与回数、および/または投薬の副作用を減少させることによりアドヒアランスを向上させることを目的としている。長時間作用型の注射剤(LAI)は、服薬遵守の課題に対処するために、1カ月以上のオーダーで投与回数を減らすことができ、ますます魅力的な選択肢である。しかし、承認され治験中の抗レトロウイルス薬の大部分は、持効性注射剤としての改質にはあまり適していない。大部分は、これは従来の薬物懸濁液としてのそれらの製剤を制限する最適以下の物理化学的特性、ならびに高度の月毎の投薬要件を生じる不十分な抗ウイルス効力に起因する。カボテグラビルまたはリルピビリンであっても、月1回の投与に対応する薬物動態プロファイルを得るためには、長時間作用型注射製剤として研究されている2種類の薬物、大量の注射量および複数回の注射が必要である。たとえば、Spreen、W.R.ら、HIV治療および予防のための長時間作用型注射可能な抗レトロウイルス薬、Current Opinion in Hiv and Aids 2013,8,(6),565-571;Rajoli、R.K.R.ら、HIVの筋肉内長時間作用型ナノ製剤の開発を知らせるための生理学に基づく薬物動態モデリング、Clinical Pharmacokinetics 2015,54,(6), 639-650;Baert、L.ら、HIV治療のためのリルピビリン(TMC278)のナノ粒子を含む長時間作用型注射用製剤の開発、European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 2009,72,(3),502-508;Van’t Klooster、G.ら、Pharmacokinetics and Disposition of Rilpivirine(TMC278)Nanosuspension as a Long-Acting Injectable AntiretroviralFormulations、Antimicrobial Agents and Chemotherapy 2010,54,(5),2042-2050、を参照のこと。したがって、実用的な注射体積および限られた数の注射で、多様な物理化学的性質の分子について、長期間の薬物動態学的特性を送達することができる新規な製剤化アプローチが非常に望ましい。
【0004】
発明の概要
本発明は、抗ウイルス薬の長時間作用性送達のための新規なインプラント薬物送達システムに関する。これらの組成物は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の治療または予防に有用である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Musiime,S.ら、PLOS 1 2011、6、(11)、1-6
【文献】Spreen,W.R.ら、Current Opinion in Hiv and Aids 2013,8,(6),565-571
【文献】Rajoli,R.K.R.ら、Clinical Pharmacokinetics 2015,54,(6),639-650
【文献】Baert,L.ら、European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 2009,72,(3),502-508
【文献】Van’t Klooster,G.ら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy 2010,54,(5),2042-2050
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本明細書に記載の装置および方法を使用して生成された、EFdAの無水和物結晶形態4の粉末X線回折(「PXRD」)パターンのグラフである。グラフは、1秒あたりのカウント数で定義されるピークの強度対回折角2θ(2θ)を度でプロットしたものである。
【0007】
発明の詳細な説明
本発明は、抗ウイルス薬の長時間作用性送達のための新規なインプラント薬物送達システムに関する。新規なインプラント薬物送達システムは、ポリマーおよび抗ウイルス剤を含む。これらのインプラントドラッグデリバリーシステムは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の治療または予防に有用である。本発明はさらに、本明細書中に記載される新規なインプラント薬物送達システムを用いてHIV感染を処置および予防する方法に関する。
【0008】
本発明の新規なインプラント送達システムは、分散または溶解した薬物を有するモノリシックマトリックスを生成するための生体適合性非浸食性ポリマーを含む。ポリマーマトリックスの化学的性質は、ある範囲の薬物放出特性を達成するように調整され、投与期間を延長する機会を提供する。本発明の一実施形態では、新規なインプラント送達システムは、固体薬物懸濁液としての製剤化に不適切な高い水溶性または非晶質相のものを含む、広いスペクトルの物理化学的特性を有する分子と適合性である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
具体的には、本発明は、以下を含む新規なインプラント薬物送達システムに関し:該システムは、
(a)生体適合性非侵食性ポリマーと、コア中に1~60重量%存在する4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物と、を含むコア、及び
(b)ポリマーを含む生体適合性非侵食性拡散バリアであって、ここで、前記拡散バリアは、50μm~300μmの厚さを有する、であって、
ここで、前記インプラント薬物送達システムは、皮下に移植され、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物が、0.02ng/mL~300.0ng/mLの間の4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシンの血漿濃度を生じる速度で、6ヶ月~36ヶ月の期間、インビボで連続的に放出される。これらのインプラント送達システムは、コンプライアンスおよび利便性の両方の観点から、HIV感染の予防および/または治療に望ましく、有用である。
【0010】
本発明は、更に、以下を含む新規なインプラント薬物送達システムに関し:該システムは、
(a)生体適合性非侵食性ポリマーと、コア中に1~60重量%存在する4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシンと、を含むコア、及び
(b)ポリマーを含む生体適合性非侵食性拡散バリアであって、ここで、前記拡散バリアは、50μm~300μmの厚さを有する、であって、
ここで、前記インプラント薬物送達システムは、皮下に移植され、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシンは、0.02ng/mL~300.0ng/mLの間の4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシンの血漿濃度を生じる速度で、6ヶ月~36ヶ月の期間、インビボで連続的に放出される。これらのインプラント送達システムはコンプライアンスおよび利便性の両方の観点から、HIV感染の予防および/または治療に望ましく、有用である。
【0011】
一実施形態では、本発明はまた、以下を含むインプラント薬物送達システムに関し:該システムは、
(a)生体適合性非侵食性ポリマーと、コア中に1~60重量%存在する4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物とを含むコア、及び
(b)ポリマーを含む生体適合性非侵食性拡散バリアであって、前記拡散バリアは、50μm~300μmの厚さを有する、であって、
ここで、前記4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物は、1~6ヶ月間で測定した場合、0.03~0.07mg/日のインビトロ放出速度を有する。
【0012】
一実施形態では、本発明はまた、以下を含むインプラント薬物送達システムに関し:該システムは、
(a) 生体適合性非侵食性ポリマーと、コア中に1~60重量%存在する4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物とを含むコア、及び
(b) ポリマーを含む生体適合性非侵食性拡散バリアであって、前記拡散バリアは、50μm~300μmの厚さを有する、であって、
ここで、前記4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物は、30日目に測定した場合、0.07mg/日のインビトロ放出速度を有する。
【0013】
別の実施形態では、本発明はまた、以下を含むインプラント薬物送達システムに関し:該システムは、
(a) 生体適合性非侵食性ポリマーと、コア中に1~60重量%存在する4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物とを含むコア、及び
(b) ポリマーを含む生体適合性非侵食性拡散バリアであって、前記拡散バリアは、50μm~300μmの厚さを有する、であって、
ここで、前記4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物は、60日目に測定した場合、0.04mg/日のインビトロ放出速度を有する。
【0014】
さらなる実施形態では、本発明はまた、以下を含むインプラント薬物送達システムに関し:該システムは、
(a) 生体適合性非侵食性ポリマーと、コア中に1~60重量%存在する4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物とを含むコア、及び
(b) ポリマーを含む生体適合性非侵食性拡散バリアであって、前記拡散バリアは、50μm~300μmの厚さを有する、であって、
ここで、前記4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物は、90日目に測定した場合、0.03mg/日のインビトロ放出速度を有する。
【0015】
さらなる実施形態では、本発明はまた、以下を含むインプラント薬物送達システムに関し:該システムは、
(a) 生体適合性非侵食性ポリマーと、コア中に1~60重量%存在する4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物とを含むコア、及び
(b) ポリマーを含む生体適合性非侵食性拡散バリアであって、前記拡散バリアは、50μm~300μmの厚さを有する、であって、
ここで、前記4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物は、6ヶ月後に測定した場合、0.03mg/日のインビトロ放出速度を有する。
【0016】
本明細書中で使用される場合、用語「生体適合性非浸食性ポリマー」は、生体系の存在下での分解(化学的および物理的の両方)に対して十分に抵抗性であるポリマー材料を指す。生体適合性非浸食性ポリマーはポリマーが放出期間を通して本質的に無傷のままであるように、使用環境による化学的および/または物理的破壊に対して十分に抵抗性である。非浸食性ポリマーは一般に疎水性であり、そのため、哺乳動物の体のような水性環境に置かれた場合、適切な期間その完全性を保持し、使用前に長期間保存するのに十分な安定性を有する。本発明において有用な非侵食性ポリマーは、長期間、典型的には数ヶ月または数年間、インビボで無傷のままである。ポリマー中に封入された薬物分子は、持続的な様式でチャネルおよび細孔を通る拡散を介して経時的に放出される。放出速度は、薬物負荷パーセント、ポリマーの多孔性、移植可能なデバイスの構造、またはポリマーの疎水性を改変することによって、または移植可能なデバイスの外部にコーティングを添加することによって変更され得る。
【0017】
したがって、身体によって吸収され得ない任意のポリマーを使用して、本発明のインプラント薬物送達システムを製造することができる。本発明の生体適合性非侵食性ポリマーには、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリ(ウレタン)、シリコーン、架橋ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、アシル置換酢酸セルロース、部分加水分解アルキレン-酢酸ビニルコポリマー、完全加水分解アルキレン-酢酸ビニルコポリマー、非可塑化ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルの架橋ホモポリマー、ポリ酢酸ビニルの架橋コポリマー、アクリル酸の架橋ポリエステル、メタクリル酸の架橋ポリエステル、ポリビニルアルキルエーテル、ポリフッ化ビニル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、スチレンアクリロニトリルコポリマー、架橋ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アルキレン)、ポリ(ビニルイミダゾール)、ポリ(エステル)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリホスファゼン、クロロスルホン化ポリレフィン及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。本発明のクラスでは、生体適合性のない非侵食性ポリマーは、ポリ(ウレタン)である。
【0018】
本発明のクラスでは、コアにある生体適合性のない非侵食性ポリマーと、生体適合性のない非侵食性拡散バリアのポリマーは同じポリマーである。本発明のサブクラスでは、コアにある生体適合性のない非侵食性ポリマーと生体適合性のない非侵食性拡散バリアのポリマーの両方がポリ(ウレタン)である。
【0019】
本明細書中で使用される場合、用語「拡散バリア」は、薬物に対して透過性であり、そして放出速度をさらに調節するためにコアの少なくとも一部の上に配置されるバリアをいう。例えば、生体適合性非侵食性ポリマー材料、例えば、ポリ(ウレタン)のコーティング、またはインプラント送達システムの残りの部分よりも低い薬物負荷を有する生体適合性非侵食性ポリマー材料のコーティングを使用することができる。拡散バリアは、例えばコアとの同時押出し、射出成形、または当技術分野で知られている他の方法によって形成することができる。本発明の拡散バリアはまた、「生体適合性非侵食性拡散バリア」または「皮膚」と呼ぶこともできる。
【0020】
本発明の拡散バリアは、可溶性充填剤を有する親水性ポリマーまたは疎水性ポリマーを含む。
【0021】
本発明の拡散バリアに使用するのに適したポリマーには、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、シリコーン、架橋ポリ(ビニルアルコール)、非可塑化ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルの架橋ホモポリマー、ポリ酢酸ビニルの架橋コポリマー、アクリル酸の架橋ポリエステル、メタクリル酸の架橋ポリエステル、ポリビニルアルキルエーテル、ポリフッ化ビニル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、スチレンアクリロニトリルコポリマー、架橋ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アルキレン)、ポリ(ビニルイミダゾール)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ウレタン)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、アシル置換酢酸セルロース、部分加水分解アルキレン-酢酸ビニルコポリマー、完全加水分解アルキレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリ(エステル)、ポリホスファゼン、クロロスルホン化ポリレフィン、およびそれらの組み合わせを含み、それに限定されない。本発明のクラスでは、拡散障壁は、ポリ(ウレタン)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、アシル置換酢酸セルロース、部分加水分解アルキレン-酢酸ビニルコポリマー、完全加水分解アルキレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリ(エステル)、ポリホスファゼン、クロロスルホン化ポリレフィン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明のサブクラスでは、拡散バリアは、ポリ(ウレタン)を含む。本発明のさらなるサブクラスにおいて、ポリ(ウレタン)は、1重量%~100重量%の吸水率を有する。本発明のさらなるサブクラスにおいて、ポリ(ウレタン)は、1重量%~20重量%の吸水率を有する。
【0022】
本発明の一実施形態では、拡散バリアは、50μm~300μmの厚さを有する。あるクラスの実施形態では、拡散バリアは、50μm~200μmの厚さを有する。本実施形態のサブラスでは、拡散バリアは、100μm~200μmの厚さを有する。
【0023】
本発明の一実施形態では、拡散バリアは抗ウイルス薬を含有する。あるクラスの実施形態では、拡散バリアは、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物を含む。別のクラスの実施形態では、拡散バリアは、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシンを含む。
【0024】
本明細書中で使用される場合、用語「生体適合性非侵食性ポリマー中に分散または溶解される」は、混合され、次いでホットメルト押出される薬物およびポリマーをいう。
【0025】
本明細書中で使用される場合、用語「連続的に放出される」は、所望の治療的または予防的濃度を達成するために、長期間にわたって十分な速度で生体適合性非侵食性ポリマーから放出される薬物をいう。本発明のインプラント薬物送達システムは、一般にインビボで、時には初期バースト後に薬物の線形放出動態を示す。コア中の4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物は、いったん放出され、血液や血漿のような水性媒体に曝露され、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン一水和物に変換される。インビボで濃度を測定する場合、それは溶解形態である4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシンであり、測定される。
【0026】
HIVウイルス感染またはAIDSに関して本明細書で使用される「治療する」または「治療」という用語は、HIV感染またはAIDSの重症度を阻害すること、すなわち、HIV感染またはAIDSまたはその臨床症状の発生を停止または減少させること、またはHIV感染またはAIDSを軽減すること、すなわち、HIV感染またはAIDSの重症度またはその臨床症状の退行を引き起こすことを含む。
【0027】
HIVウイルス感染またはAIDSに関して本明細書で使用される「予防する」または「予防する」という用語は、HIV感染またはAIDSの可能性または重症度を低下させることを指す。
【0028】
任意に、本発明の新規なインプラント送達システムは、放射線不透過性成分をさらに含むことができる。放射線不透過性成分は、インプラントをX線可視にする。放射線不透過性成分は、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、三酸化ビスマス、タンタル、タングステンまたは白金のような当技術分野で公知の任意のそのような元素であり得る。特定の実施形態では、放射線不透過性成分は硫酸バリウムである。
【0029】
一実施形態では、放射線不透過性材料は、1重量%~30重量%である。別の実施形態では、放射線不透過性材料は、1重量%~20重量%である。別の実施形態では、放射線不透過性材料は、4重量%~25重量%である。さらなる実施形態では、放射線不透過性材料は、6重量%~20重量%である。別の実施形態では、放射線不透過性材料は、4重量%~15重量%である。別の実施形態では、放射線不透過性材料は、約8重量%~15重量%である。
【0030】
放射線不透過性材料は、インプラントからの4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物の放出に影響しない。
【0031】
本発明の新規なインプラント送達システムは、抗ウイルス剤を含む。適切な抗ウイルス剤には、抗HIV剤が含まれる。本発明の一実施形態では、抗ウイルス剤は、単剤療法として投与される。本発明の別の実施形態では、2つ以上の抗ウイルス剤を組み合わせて投与する。
【0032】
「抗HIV剤」とは、HIVの逆転写酵素もしくはHIVの複製もしくは感染に必要な別の酵素の阻害、またはHIV感染の予防、および/またはAIDSの発症もしくは進行の治療、予防または遅延に直接的または間接的に有効な薬剤のいずれかである。抗HIV剤は、HIV感染またはAIDS、および/またはそれから生じるか、またはそれに関連する疾患または状態の発症または進行を処置、予防、または遅延させるのに有効であることが理解される。本明細書中に記載されるインプラント薬物送達システムにおいて使用するための適切な抗ウイルス剤としては、例えば、以下の表Aに列挙されるものを含む:
【0033】
【0034】
表に列挙される薬物のいくつかは、塩形態で使用され得る;例えば、硫酸アバカビル、メシル酸デラビルジン、硫酸インジナビル、硫酸アタザナビル、メシル酸ネルフィナビル、メシル酸サキナビル。
【0035】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるインプラント薬物送達システム中の抗ウイルス剤は、例えば、Physicians’Desk Reference編(例えば、63rd版(2009)およびそれ以前の版)に記載される用量を含む当該分野で報告されるようなそれらの従来の用量範囲およびレジメンにおいて使用される。他の実施形態では、本明細書に記載のインプラント薬物送達システム中の抗ウイルス剤は、それらの従来の用量範囲よりも低い範囲で使用される。他の実施形態では、本明細書に記載のインプラント薬物送達システム中の抗ウイルス剤は、それらの従来の用量範囲よりも高い範囲で使用される。
【0036】
本発明の実施形態において、抗ウイルス剤は、侵入阻害剤、融合阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤または非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤であり得る。本発明のクラスにおいて、抗ウイルス剤はヌクレオシド逆転写酵素阻害剤である。
【0037】
本発明の一実施形態では、抗ウイルス剤はヌクレオシド逆転写酵素転位阻害剤(NRTTI)である。本発明のクラスにおいて、NRTTIは、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシンである。本発明のサブクラスにおいて、NRTTIは、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物である。
【0038】
4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシンは、イスラトラビルおよびEFdAとしても知られており、以下の化学構造を有する:
【化1】
【0039】
HIV逆転写酵素を阻害する4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシンの製造およびその能力は、2005年9月29日に公開されたPCT国際出願WO2005090349、および2005年9月29日に公開された米国特許出願公開第2005/0215512号に記載されており、両方とも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0040】
EFdAの無水和物結晶形態についてのPXRDパターンは、図1に示されており、2019年12月16日に出願された同時係属中の国際出願第PCT/US19/066436号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。したがって、本開示の一態様では、実質的に図1に示す粉末x線回折パターンを特徴とするEFdAの無水和物結晶形態が提供される。これらのプロフィールと一致するピーク位置(2シータx軸上)を以下の表に示す(±0.2°2θ)。これらのPXRDピークの位置は、EFdAの無水和物結晶形態の特徴である。従って、別の局面において、EFdAの無水和物結晶形態は、以下の表に列挙されるピーク位置の各々、±0.2°2-シータを有する粉末x線回折パターンによって特徴付けられる。
【0041】
【表1】
【0042】
従って、1つの局面において、EFdAの無水和物結晶形態は、上記の表に列挙されるピーク位置の各々、±0.2°2-シータを有する粉末x線回折パターンによって特徴付けられる。
【0043】
別の態様では、EFdAの無水和物結晶形態は、上記の表に列挙される2θ値のうちの2つ以上±0.2°2θを含む粉末x線回折パターンを特徴とする。
【0044】
別の態様では、EFdAの無水和物結晶形態は、上記の表に列挙された3つ以上の2シータ値±0.2°2θを含む粉末x線回折パターンを特徴とする。
【0045】
別の態様では、EFdAの無水和物結晶形態は、上記の表に列挙される4つ以上の2シータ値±0.2°2θを含む粉末x線回折パターンを特徴とする。
【0046】
別の態様では、EFdAの無水和物結晶形態は、上記の表に列挙される6つ以上の2シータ値±0.2°2θを含む粉末x線回折パターンを特徴とする。
【0047】
別の態様では、EFdAの無水和物結晶形態は、上記の表に列挙された9つ以上の2シータ値±0.2°2θを含む粉末x線回折パターンによって特徴付けられる。
【0048】
別の態様では、EFdAの無水和物結晶形態は、上記の表に列挙される12以上の2θ値±0.2°2θを含む粉末x線回折パターンを特徴とする。
【0049】
さらなる局面において、EFdAの無水和物結晶形態の最も特徴的な、上記の表および/または図1に示されるPXRDピーク位置をこの結晶形態を他のものから便宜的に区別するために、「診断ピークセット」として選択され、そしてグループ化され得る。このような特徴的なピークの選択は、診断ピークセットとラベル付けされた列の上記の表に記載されている。
【0050】
したがって、別の態様では、上記の表の診断ピークセット1に列挙された2θ値±0.2°2θのそれぞれを含む粉末x線回折パターンによって特徴付けられるEFdAの無水和物結晶形態が提供される。
【0051】
別の態様では、上記の表の診断ピークセット2に列挙された2θ値±0.2°2θの各々を含む粉末x線回折パターンによって特徴付けられるEFdAの無水和物結晶形態が提供される。
【0052】
別の態様では、上記の表の診断ピークセット3に列挙された2θ値±0.2°2θの各々を含む粉末x線回折パターンによって特徴付けられるEFdAの無水和物結晶形態が提供される。
【0053】
別の態様では、上記の表の診断ピークセット4に列挙された2θ値±0.2°2θの各々を含む粉末x線回折パターンによって特徴付けられるEFdAの無水和物結晶形態が提供される。
【0054】
別の態様では、診断ピークセット1に列挙された2シータ値のそれぞれと、上記の表の診断ピークセット2、診断ピークセット3、および/または診断ピークセット4のいずれか1以上と、±0.2°2θを含む粉末x線回折パターンによって特徴付けられるEFdAの無水和物結晶形態が提供される。
【0055】
別の態様では、診断ピークセット2に列挙された2シータ値のそれぞれと、上記の表の診断ピークセット1、診断ピークセット3、および/または診断ピークセット4のいずれか1以上と、±0.2°2θを含む粉末x線回折パターンによって特徴付けられるEFdAの無水和物結晶形態が提供される。
【0056】
別の態様では、診断ピークセット3に列挙された2シータ値のそれぞれと、上記の表の診断ピークセット1、診断ピークセット2、および/または診断ピークセット4のいずれか1以上と、±0.2°2θを含む粉末x線回折パターンによって特徴付けられるEFdAの無水和物結晶形態が提供される。
【0057】
別の態様では、診断ピークセット4に列挙された2シータ値のそれぞれと、上記の表の診断ピークセット1、診断ピークセット2、および/または診断ピークセット3のいずれか1以上と、±0.2°2θを含む粉末x線回折パターンによって特徴付けられるEFdAの無水和物結晶形態が提供される。
【0058】
別の局面において、EFdAの無水和物結晶形態は、図1に示されるようなPXRDスペクトルによって特徴付けられる。
【0059】
さらに別の局面において、EFdAの無水和物結晶形態は、上記のPXRD特徴ピークおよび/または図1に示されるデータによって、単独で、または本明細書中に記載されるEFdAの無水和物形態の任意の他の特徴付けと組み合わせて特徴付けられる。
【0060】
粉末X線回折データは、ragg-Brentano構成で構成され、ニッケルフィルターを用いて達成されるKαへの単色化を有するCu放射線源を備えたPanalytical X-pert PW3040システムで取得した。データ収集のために固定スリット光学配置を採用した。データは、2~40°2θの間で取得した。サンプルは、粉末サンプルを浅い空洞ゼロバックグラウンドシリコンホルダー上に穏やかにプレスすることによって調製した。粉末X線回折(PXRD)の計数時間は、EFdA粉末試料を用いて50.800秒であった。
【0061】
当業者は、同じ化合物の所与の結晶形態についてのXRDピーク場所の測定値が誤差範囲内で変化することを認識するであろう。本明細書に記載されるように測定された2シータ値の誤差のマージンは、典型的には±0.2° 2θである。変動は、測定に使用されるシステム、方法論、試料、および件のような要因に依存し得る。また、当業者には理解されるように、本明細書の図面に報告される様々なピークの強度は、x線ビーム中の結晶の配向効果、分析される材料の純度、および/またはサンプルの結晶化度のような多くの要因によって変化し得る。また、熟練した結晶学者は、異なる波長を使用した測定がBragg-Brentano式に従って異なるシフトをもたらすことを理解するであろう。代替波長の使用によって生成されるこのようなさらなるXRDパターンは、本開示の結晶材料のXRDパターンの代替表現であると考えられ、したがって、本開示の範囲内である。
【0062】
図1に示されるPXRDパターンは、上記の装置および手法を使用して生成された。各PXRDパターンについてのピークの強度(y軸はカウント/秒である)を、2シータ角度(x軸は2シータ度である)に対してプロットする。さらに、データは、2シータ角に対して、ステップ当たりの収集時間について正規化された検出器カウントでプロットされた。
【0063】
本明細書中に記載されるインプラント薬物送達システムの実施形態において、抗ウイルス剤は、1重量%~60重量%でコア中に存在する。本明細書中に記載されるインプラント薬物送達システムの別の実施形態では、抗ウイルス剤は、10重量%~60重量%でコア中に存在する。他の実施形態において、抗ウイルス剤は、約40重量%または約60重量%でコア中に存在する。本明細書に記載されるインプラント薬物送達システムの実施形態のクラスにおいて、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物は、1~60重量%でコア中に存在する。本明細書に記載されるインプラント薬物送達システムの実施形態のサブクラスにおいて、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物は、10~60重量%でコア中に存在する。本明細書に記載されるインプラント薬物送達システムの実施形態の別のサブクラスにおいて、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物は、15重量%~40重量%でコア中に存在する。本明細書に記載されるインプラント薬物送達システムの実施形態の別のサブクラスにおいて、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物は、約40重量%でコア中に存在する。本明細書に記載されるインプラント薬物送達システムの実施形態の別のサブクラスにおいて、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物は、約60重量%でコア中に存在する。
【0064】
本発明のインプラント薬物送達システムは押し出しプロセスを使用して製造することができ、ここで、粉砕された生体適合性の非浸食性ポリマーは、抗ウイルス剤とブレンドされ、溶融され、棒状構造に押し出される。ロッドは、所望の長さの個々の移植可能な装置に切断され、包装され、使用前に滅菌される。移植可能なポリマーの非浸食性マトリックス中に治療化合物を封入するための他の方法は、当業者に公知である。このような方法は、溶媒キャスティングを含む(米国特許第4,883,666号、第5,114,719号および第5,601835号を参照のこと)。当業者は、形状、サイズ、薬物負荷、および、特定のタイプの患者または臨床用途に所望される放出動力学に依存して、このようなインプラント薬物送達システムを調製する適切な方法を容易に決定することができる。
【0065】
本発明のインプラント薬物送達システムは、コアと生体適合性非浸食性拡散バリアとの同時押出プロセスを使用して製造することができる。本発明の一実施形態では、コアおよび生体適合性非侵食性拡散バリアが共押出によって調製され、共押出は130℃~190℃の温度で実施される。本発明のクラスにおいて、生体適合性非侵食性ポリマーコアおよび生体適合性非侵食性拡散バリアは共押出によって調製され、共押出は130℃~160℃の温度で実施される。
【0066】
インプラント薬物送達システムのサイズおよび形状は、所望の全体用量を達成するように改変され得る。本発明のインプラント薬物送達システムは、しばしば長さが約0.5cm~約10cmである。本発明の一実施形態では、インプラント薬物送達システムは、長さが約1.5cm~約5cmである。あるクラスの実施形態では、インプラント薬物送達システムは、長さが約2cm~約5cmである。実施形態のサブクラスでは、インプラント薬物送達システムは、長さが約2cm~約4cmである。本発明のインプラント薬物送達システムは、しばしば、直径が約0.5mm~約7mmである。本発明の一実施形態では、インプラント薬物送達システムは、直径が約1.5mm~約5mmである。あるクラスの実施形態では、インプラント薬物送達システムは、直径が約2mm~約5mmである。実施形態のサブクラスでは、インプラント薬物送達システムは、直径が約2mm~約4mmである。
【0067】
本明細書に記載されるインプラント薬物送達システムは、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物を1日当たり0.02~8.0ngの平均速度で、21日間、28日間、31日間、4週間、6週間、8週間、12週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月または36ヶ月の期間にわたって放出することができる。本発明の一実施形態では、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物は、6ヶ月~36ヶ月の間、治療濃度で放出される。実施形態のクラスにおいて、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物は、6ヶ月~12ヶ月の間の期間、治療濃度で放出される。実施形態の別のクラスにおいて、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物は、24ヶ月~36ヶ月の間の期間、治療濃度で放出される。本発明の一実施形態では、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物は、6ヶ月~36ヶ月の間の期間、予防濃度で放出される。実施形態のクラスにおいて、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物は、6ヶ月~12ヶ月の間の期間、予防濃度で放出される。別のクラスの実施形態では、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物は、予防濃度で24カ月(twenty-dour)~36カ月の間の期間放出される。
【0068】
所望の治療または予防用量を達成するために、1以上のインプラントを使用することができる。本発明の一実施形態では、1以上のインプラントを使用して、1年までの持続時間にわたって治療用量を達成することができる。本発明の別の実施形態では、1以上のインプラントを使用して、2年までの持続時間の間、治療用量を達成することができる。
【0069】
本明細書に記載されるインプラント薬物送達システムは、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物を放出することができ、その結果、1日当たり0.02~300ng/mLの4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシンの血漿濃度が得られる。本発明の一実施形態では、本明細書に記載のインプラント薬物送達システムは、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物を放出することができ、1日当たり0.02~30.0ng/mLの4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシンの血漿濃度をもたらす。あるクラスの実施形態では、本明細書に記載のインプラント薬物送達システムは、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物を放出することができ、その結果、1日当たり0.02~15.0ng/mLの4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシンの血漿濃度が得られる。実施形態のさらなるクラスにおいて、本明細書に記載されるインプラント薬物送達システムは、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物を放出することができ、1日当たり0.02~8.0ng/mLの間の4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシンの血漿濃度をもたらす。実施形態のサブクラスにおいて、本明細書に記載されるインプラント薬物送達システムは、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物を放出することができ、1日当たり0.1~1.0ng/mLの間の4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシンの血漿濃度をもたらす。
【0070】
以下の実施例は、本発明を説明する目的で与えられ、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0071】
実施例1
EFDAの一水和物結晶形態MH
適切な出発量のEFdAの形態MHを、米国特許第7339053号に記載の合成プロセスによって得ることができる。
【0072】
当業者が理解するように、実施例3に記載されるような無水和物形態の調製における種結晶の使用は、最初は必要とされないが、結晶性無水和物形態の最初の量が生成された後の最適な生成のために使用される。
【0073】
実施例2
EFDAの無水和物結晶形態
無水和物結晶EFdA形態を、0.396gの水(HO)をアセトニトリル(MeCN)と予備混合して31.66gの全溶媒質量として調製した。EFdA形態MH(一水和物)(2.83g)、31.02gのMeCN/HO溶媒混合物を、清浄な反応器に添加した。得られたスラリーを25℃で5分間撹拌し、次いで30分間かけて35℃に加熱し、次いで30分間かけて40℃に加熱した。40℃で45分間撹拌した後、スラリーを2時間かけて50℃に加熱し、次いで50℃で1時間撹拌した。50℃で1時間エージングした後、スラリーを8時間かけて25℃に冷却した。得られたスラリーを濾過し、周囲温度で窒素(N)を24時間ケークに通すことによって乾燥させた。無水和物EFdA形態を収集した。この無水和物結晶形態はまた、EFdAの無水和物結晶形態4と呼ぶことができる。
【0074】
実施例3
EFDAの無水和物結晶形態
形態4としても知られる無水和物結晶EFdAは、臨界水分活性よりわずかに低い水分量を有するシステム中、一水和物のスラリーをゆっくりと加熱することによる過飽和の制御を利用することによる、臨界水分活性データを用いて調製した。形態4の調製は、0.9134gの水および73.07gのアセトニトリルをボトル中で予備混合することによって行った。60.03gのアセトニトリル/水混合物および7.82gのEFDA一水和物を清浄な容器に添加した。懸濁液を25℃で30分間撹拌した。30分間の熟成期間の後、0.80gのEFDA形態4種結晶を添加し、懸濁液を25.0℃で30分間撹拌した。懸濁液を10時間かけて直線的に55℃に加熱した。42.5mlのアセトニトリルを、55℃で撹拌しながら2時間かけて直線的にスラリーに添加した。アセトニトリル添加の終わりに、スラリーを55℃で1時間撹拌した。次いで、スラリーを4時間かけて直線的に25.0℃に冷却し、25℃でさらに2時間撹拌した。スラリーを濾過し、20mlのアセトニトリルで洗浄し、周囲温度で24時間窒素を吸引することによってケーキを通して乾燥させた。EFDA形態4を回収した。
【0075】
実施例4
60重量%の4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物および放射線分散剤を含有するインプラント薬物送達系の調製
インプラントは、押出プロセスを用いて調製した。粉砕疎水性脂肪族熱可塑性ポリウレタンおよび4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物形態を、60wt%薬物および放射線不透過剤としての10wt%硫酸バリウムとブレンドした。プレブレンドを、100~160℃の範囲の温度、20~30rpmのスクリュー速度で二軸スクリュー押出機で溶融押出し、次いでペレット化した。次いで、ペレットをふるいにかけ、滑沢し、次いで、130~160℃の範囲の温度および20~25rpmでのスクリュー速度を有する2つの一軸スクリュー押出機を用いた共押出によって調製された、親水性の5%または10%の名目上の吸水率の膨潤熱可塑性ポリウレタンの拡散バリアの内側にコアを形成し、0.05~0.25mmの拡散バリア厚さを有する2±0.05mm直径のフィラメントを形成し、次いで、40±2mmの長さに切断した。
【0076】
4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシンのインビトロ放出速度を、ARCS(自動制御放出システム)を用いて測定した。完全なインプラントを3D印刷サンプルホルダーに入れ、ガラス容器中のリン酸緩衝食塩水(PBS)50mLに浸漬した。37℃の温度を水浴によって維持した。試料を、750rpmに設定した磁気撹拌棒を用いた系により撹拌した。PBSの容量は、シンク条件を維持するのに十分であった。沈降状態は、最大溶解度の1/3以下に維持された薬物濃度(37℃でPBS中の薬物濃度≦0.45mg/mL)として定義される。ARCSは、1日に1回、1mLのサンプルを取り出し、それをHPLCバイアルに充填した。全体の媒体(50mL)の置換を、システムによって毎日(24時間)行った。試料をHPLC(Waters Alliance 2695)によってアッセイした。体積6μLの分析を、40℃に維持したEclipse XDB-C8カラム(150×4.6mm、5μm)を用いて262nmで行った。移動相は0.1%HPOおよび50:50 ACN:MeOH(75:25v/v)であり、流速は1.5mL/分であった。
【0077】
HPLCによる4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシンの分解を決定するために、40℃に維持したWater Atlantis T3カラム(150×4.6mm、3μm)上に6μL容量を注入した。移動相は、水中0.1%TFA、および、50:50(v/v)のACN:MeOH中0.1%TFAであり、流速は1.5mL/分であった。移動相勾配を以下の表に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
実施例5
60重量%の4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物および放射線分散剤を含有するインプラント薬物送達系の調製
インプラントは、押出または射出成形プロセスを用いて調製した。粉砕したポリマー、および4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物形態を、疎水性脂肪族熱可塑性ポリウレタンおよび放射線不透過剤としての10wt%硫酸バリウム中に60重量%薬物でブレンドした。プレブレンドを、100~160℃の範囲の温度、20~30rpmのスクリュー速度で二軸スクリュー押出機で溶融押出し、次いでペレット化した。次に、ペレットをふるい分けし、滑沢し、次いで押し出しまたは成形してコアを形成した。次に、コアを、5%または10%の名目上の吸水率の親水性膨潤熱可塑性ポリウレタンの予め製造されたチューブまたはシートに入れた。チューブまたはシートを圧縮成形または密封し、トリミングし、次いで40±2mmの長さに切断した。
【0082】
実施例6
60重量%の4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物および放射線分散剤を含有するインプラント薬物送達系の調製
インプラントは、押出または射出成形プロセスを使用して調製される。粉砕したポリマーおよび無水和物形態の4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシンを、疎水性の脂肪族熱可塑性ポリウレタンおよび放射線不透過剤としての10重量%硫酸バリウム中に60重量%の薬物でブレンドする。プレブレンドを、100~160℃の範囲の温度、20~30rpmのスクリュー速度で二軸スクリュー押出機で溶融押出し、次いでペレット化する。次いで、ペレットをふるい分けし、滑沢し、次いで押し出しまたは成形してコアを形成する。次いで、コアを射出成形機に入れ、5%または10%の名目上の吸水率の親水性膨潤熱可塑性ポリウレタンでオーバーモールドし、次いで、必要であれば、40±2mmの長さに切断する。
【0083】
比較例1
70重量%の4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン水和物および放射線分散剤を含有するインプラント薬剤送達系の調製
粉砕したポリマーおよび4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン無水和物形態を、疎水性脂肪族熱可塑性ポリウレタンおよび放射線不透過剤としての10重量%硫酸バリウム中に70重量%薬物でブレンドした。プレブレンドを100~180℃の温度範囲、20~30rpmでのスクリュー速度で二軸押出機で溶融押出したが、高いダイ圧とスクリュートルクのためにうまく処理できなかった。
【0084】
比較例2
60重量%4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン一水和物および放射線分散剤を含有するインプラント薬剤送達システムの調製
粉砕したポリマーおよび4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン一水和物形態を、疎水性脂肪族熱可塑性ポリウレタン、および、放射線不透過剤としての10重量%硫酸バリウム中に60重量%薬物でブレンドした。プレブレンドを100~180℃の温度範囲、20~30rpmでのスクリュー速度で二軸押出機で溶融押出したが、高いダイ圧とスクリュートルクのためにうまく処理できなかった。
【0085】
比較例3
60重量%4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン一水和物およびEVA9を含む放射線防御剤を含有するインプラント薬剤送達系の調製
粉砕したポリマー、および4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン一水和物形態を、70重量%の薬物で、ポリエチレン酢酸ビニル、9%酢酸ビニル(EVA9)、および、放射線不透過剤としての10重量%硫酸バリウム中でブレンドした。プレブレンドを、100~180℃の範囲の温度、20~30rpmのスクリュー速度で二軸スクリュー押出機を用いて溶融押出したが、APIの明らかな劣化および配合物の変色のためにうまく加工することができなかった。
【0086】
比較例4
EVA28+親水性TPU拡散バリアを用いた60重量%4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン一水和物および放射線水溶液を含有するインプラント薬物送達系の調製
インプラントは、押出プロセスを用いて調製した。粉砕したポリマーおよび4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン一水和物形態を、ポリエチレン酢酸ビニル、28%酢酸ビニル(EVA28)、および、放射線不透過剤としての10重量%硫酸バリウム中に60重量%薬物でブレンドした。プレブレンドを、100~160℃の範囲の温度、20~30rpmのスクリュー速度で二軸スクリュー押出機で溶融押出し、次いでペレット化した。次いで、ペレットをふるい分けし、滑沢し、次いで、130~160℃の範囲の温度および20~25rpmのスクリュー速度を有する2つの一軸スクリュー押出機を用いた同時押出によって調製される、親水性の膨潤熱可塑性ポリウレタンの5%の名目上の吸水率の拡散バリアの内側にコアを形成し、0.05~0.25mmの拡散バリア厚さを有する2±0.05mm直径フィラメントを形成し、次いで、40±2mmの長さに切断した。これらのサンプルをリン酸緩衝生理食塩水に浸漬すると、いくつかのケースではおそらくコアと拡散バリアとの間の接着が不十分であるために、拡散バリアが膨張し、層間剥離した。
図1