(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】積層体、及び該積層体を用いた包装紙又は容器
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20230721BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20230721BHJP
D21H 19/82 20060101ALI20230721BHJP
D21H 19/20 20060101ALI20230721BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
B32B27/30 A
B32B27/30 B
B32B27/28
D21H19/82
D21H19/20 A
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2023512751
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(86)【国際出願番号】 JP2022023221
(87)【国際公開番号】W WO2022270321
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2021104733
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】菊池 浩
(72)【発明者】
【氏名】榎本 肇
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-501042(JP,A)
【文献】国際公開第2020/203346(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/095780(WO,A1)
【文献】特開昭63-231937(JP,A)
【文献】特開2017-159559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D21H 19/82
D21H 19/20
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、
前記紙基材の少なくとも一部に設けられた第一の層と、
前記第一の層の上に設けられた第二の層を少なくとも有し、
前記第一の層又は第二の層のうち一方は、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体を含む樹脂を含有するコート層であり、他方はヒートシール剤を含有するコート層であり、
前記ヒートシール剤は
、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体系樹
脂を含む
ことを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記第一の層が前記ヒートシール剤を含有するコート層であり、前記第二の層がスチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体を含む樹脂を含有するコート層であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記第一の層の量が0.5~10.0g/m
2である請求項1~2のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項4】
前記第二の層の量が0.5~8.0g/m
2である請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記紙基材の前記第一の層及び第二の層が設けられていない側の面に第三の層を更に有し、該第三の層が耐水コート層である請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
請求項1~5に記載の積層体を用い、第一の層及び第二の層の塗工部分の少なくとも一部が貼り合わされた包装体又は容器。
【請求項7】
第一の層及び第二の層の塗工部分が包装体又は容器の内面側に設けられ、収容物と直接接触することを特徴とする請求項6に記載の包装体又は容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、及び該積層体を用いた包装紙又は容器に関する。
【背景技術】
【0002】
紙袋、紙箱、紙カップ等の紙包装材は、各種の用途・目的に応じて従来より使用されてきた。近年では、マイクロプラスチックを始めとする海洋プラスチックごみ問題がクローズアップされる中で、「再利用可能」「生分解性を有する」などの機能を持つ素材の一つとして、プラスチック材料に代わり、再生可能な資源である「木」を原料とする「紙」を使用する動きが高まってきている。
【0003】
現在広く普及している紙製容器の1つとして、飲料用やアイスクリーム、ヨーグルト等の容器として使用される紙カップ類がある。紙カップ類は、紙であるものの原料の一部にポリエチレンフィルムを使用することにより耐水性が付与されている。このような紙カップ類は、熱で溶かしたポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等をフィルム状に押し出したポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等を紙基材に貼り合わせて得る。ポリエチレンフィルムが紙カップ成型時には、バーナーや熱風等の間接加熱下による熱溶融で接着剤の役目を果たし、且つ、ポリエチレンフィルムが紙カップ内側に存在するので紙基材が直接内容物と接触する事なく防水性、防湿性や強度が付与される。
【0004】
しかしながら貼り合わされたポリエチレンフィルムは、紙リサイクル時に紙リサイクル処理で使用するアルカリ溶液に溶解しないため物理的に除去する必要があり、リサイクル効率の低下につながる。またプラスチックごみの海洋への流出による海洋汚染が世界的に問題となっている。持続可能な開発目標(SDGs)のターゲットとして「2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」という目標が掲げられ、サミット(主要国首脳会議)でも取り組み強化が合意されるなど世界的な重要テーマとなっている。従って、これらの用途に適用可能で且つ紙リサイクル効率を低下させない、ポリエチレンフィルム代替品が求められている。
【0005】
一方で、袋、箱、紙カップ等の成型時に接着剤の役目を果たすものとして、水性のヒートシール剤が知られている。例えば、特許文献1ではアンモニアまたはアミンで中和されたオレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体と、これ以外のオレフィン系熱可塑性樹脂とを特定比率で混合分散したエチレン-系樹脂水性分散液がヒートシール剤として適用できる旨の開示がなされている。
【0006】
また特許文献2では、不飽和カルボン酸単位、エチレン-系炭化水素、およびアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとから構成されるポリオレフィン樹脂と、天然ワックス、および水性媒体を特定比率で含有する水性分散体がヒートシール剤として適用できる旨の開示がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-7860号公報
【文献】特開2006-45313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ヒートシールが可能で包材設計に優れており、且つ耐油・耐水性にも優れているプラスチック包装材の代替として、紙包装材を使用するには、まだ課題が多い。特許文献1や特許文献2のような紙用のヒートシール剤はこれまでに存在していたが、これらの文献には、ヒートシール強度や耐ブロッキング性といったいわゆるヒートシール剤としての性能しか開示されておらず、ポリエチレンフィルムの代替として所望される耐水性及び耐油性については何ら記載されていない。つまり、耐油性、耐水性を備えたヒートシール剤は無いことから、ビロー形態等の種々のプラスチック包装材を紙包装材へ転換する際には、耐油、耐水性の向上が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち本発明は、紙基材と、紙基材の少なくとも一部に設けられた第一の層と、第一の層の上に設けられた第二の層を少なくとも有し、第一の層又は第二の層のうち一方は、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体を含む樹脂を含有するコート層であり、他方はヒートシール剤を含有するコート層である積層体である。
【0010】
また、本発明は、上記積層体を用いた包装体又は容器を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の積層体は、優れた耐水性、耐油性を有し、且つヒートシール性を有する紙の積層体であることから、プラスチックフィルムをラミネートした紙の代替として有用であり、各種用途に有用な上、紙リサイクル効率に貢献できる。また、本発明の積層体は、本発明の積層体は、塗工するだけで紙に対し優れた耐水性、耐油性、ヒートシール性を有する積層体を容易に得られ、更に、金型を用いてヒートシールする際にも、金型にヒートシール剤が付着してしまうことを防止できるので、生産性の向上及びヒートシール後の製品の品質向上が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の積層体は、紙基材と、紙基材の少なくとも一部に設けられた第一の層と、第一の層の上に設けられた第二の層を少なくとも有するものである。本発明の積層体において、第一の層又は第二の層のうち一方は、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体を含む樹脂を含有するコート層(以下、「耐油耐水コート層」と称する)であり、他方はヒートシール剤を含有するコート層(以下、「ヒートシール性コート層」と称する)である。すなわち、本発明の積層体は、耐油耐水コート層とヒートシール性コート層が積層された層を有するが、これらの層の順序は特に限定されるものではない。
【0013】
[耐油耐水コート層]
本発明の積層体は、紙基材上の第一の層又は第二の層のいずれか一方として、耐油耐水コート層を有する。該耐油耐水コート層は、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンと、水性媒体とを含有するコーティング組成物(CS)により形成されることが好ましい。
【0014】
<スチレンアクリル共重合体(A)を含有するコーティング組成物(CS)>
(スチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョン)
まず、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンについて説明する。尚、本発明において(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートの総称を表し、(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸の総称を表す。
【0015】
本発明において、スチレンアクリル共重合体(A)中のαメチルスチレンは、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレンのいずれかまたは混合物を表す。
【0016】
また、スチレンアクリル共重合体(A)は、前記スチレンや前記αメチルスチレン以外のスチレン誘導体(p-ジメチルシリルスチキシスチレン、p-tert-ブチルジメチルシロキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン)、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1-ジフェニルエチレンらを本発明の範囲を損なわない範囲において一部使用してもよい。
【0017】
(メタ)アクリレートとしては特に限定はなく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸iso-プロピル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸iso-アミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル、(メタ)アクリル酸n-トリデシル、(メタ)アクリル酸n-ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピル、メタクリル酸ペンタフルオロプロピル、メタクリル酸オクタフルオロペンチル、メタクリル酸ペンタデカフルオロオクチル、メタクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロニトリル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレンオキサイド基含有(メタ)アクリル単量体等、汎用の(メタ)アクリレートを使用することが出来る。中でも、アクリレートを有するホモポリマーがより低いガラス転移温度を呈することから好ましく、炭素原子数1~20のアルキル基を有するアクリレートを主成分とすることが好ましく、炭素原子数1~12のアルキル基を有するアクリレートを主成分とすることが好ましい。このような炭素原子数1~12のアルキル基を有するアクリレートとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸iso-プロピル、アクリル酸アリル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-アミル、アクリル酸iso-アミル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル等が挙げられる。
【0018】
本発明のスチレンアクリル共重合体(A)の構成成分として用いられる(メタ)アクリレートは、1種類であっても2種類以上であってもよいが、2種類以上の(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、中でも、炭素原子数1~12のアルキル基を有するアクリレート2種類以上を主成分として用いることが好ましい。
【0019】
スチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンは、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体を更に含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体は、(メタ)アクリル酸と前記(メタ)アクリレートとの共重合体である(以下アクリル共重合体(B)と称する場合がある)。前記(メタ)アクリレートとしては特に限定はないが、中でも炭素原子数1~20のアルキル基を有するアクリレートであることが好ましく、アクリレートを有するホモポリマーがより低いガラス転移温度を呈することから好ましく、炭素原子数1~20のアルキル基を有するアクリレートを主成分とすることが好ましく、炭素原子数1~12のアルキル基を有するアクリレートを主成分とすることが好ましい。このような炭素原子数1~12のアルキル基を有するアクリレートとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸iso-プロピル、アクリル酸アリル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-アミル、アクリル酸iso-アミル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル等が挙げられる。
【0020】
スチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンは、前記スチレンアクリル共重合体(A)と前記アクリル共重合体(B)とを含有することが好ましいが、これは、乳化重合や転送乳化等の公知の水性媒体を使用する重合法で重合した前記スチレンアクリル共重合体(A)のエマルジョンと、乳化重合や転送乳化等の公知の水性媒体を使用する重合法で重合した前記アクリル共重合体(B)のエマルジョンとを適宜混合したエマルジョンであってもよいし、前記スチレンアクリル共重合体(A)と前記アクリル共重合体(B)とがコアシェル構造を形成する樹脂のエマルジョンであってもよい。なお、「スチレンアクリル共重合体(A)を含む樹脂」とは、スチレンアクリル共重合体(A)からなる樹脂であってもよいし、前記スチレンアクリル共重合体(A)と前記アクリル共重合体(B)とがコアシェル構造を形成する樹脂であってもよい。
【0021】
なお、コアシェル構造とは、「スチレンアクリル共重合体(A)」が多く存在する領域と、「アクリル共重合体(B)」が多く存在する領域を有することにより、コアシェル構造を形成するものである。該コアシェル構造において、例えば、「スチレンアクリル共重合体(A)」が多く存在する領域に「アクリル共重合体(B)」が存在していてもよいし、また、これらの共重合体が互いに重合していてもよい。
【0022】
スチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンは、スチレンアクリル共重合体(A)を少なくとも含む樹脂を含有し、最低造膜温度が-30℃~30℃の範囲であることが好ましく、-10~25℃の範囲がより好ましく、-5~20℃の範囲が更に好ましい。本発明において最低造膜温度は、合成ゴムラテックスの水分が蒸発して乾燥するとき、連続したフィルムが形成されるのに必要な最低の温度であり、温度勾配板法により得られるものである。
【0023】
スチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンのガラス転移温度(以下Tgと称する場合がある)は、-40℃~30℃の範囲であることが好ましく、中でも-35~25℃の範囲が好ましく、-30~23℃の範囲がより好ましい。本発明においてガラス転移温度は、示差走査熱量計による測定により得られるものである。
【0024】
また前記エマルジョンの酸価は30~80mgKOH/gの範囲であることが好ましく、中でも40~75mgKOH/gの範囲が好ましく、50~70mgKOH/gの範囲がより好ましい。本発明において酸価は、JIS試験方法K 0070-1992に準拠した測定方法により得られるものである。
【0025】
スチレンアクリル共重合体(A)のエマルジョンを含むコーティング組成物(CS)は、ピンホール等の欠陥の無い緻密な造膜性を有するため、耐水性、耐油性に優れる。そのため、積層体の耐水性、耐油性を向上させることができる。また、コーティング組成物(CS)は接着性も有するため、ヒートシール性コート層及び/又は紙基材との接着性に優れ、また、ヒートシール性コート層の機能を損なうこともないことから、ヒートシール性コート層と組み合わせて用いた場合の相性に優れている。
【0026】
また、本発明の組成物はスチレンアクリル共重合体(A)を含むため、耐熱性が向上する。そのため、収容物が加熱食品などの高温の場合にも適応可能である。
【0027】
(スチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンの製造方法)
本発明においてエマルジョンは特に限定なく公知の乳化重合や転送乳化等の公知の水性媒体を使用する重合法で重合して得ることができる。また水性媒体にポリマーが分散した形態にはエマルジョンやディスパージョン、懸濁液等様々な表現があるが本発明においてはエマルジョンに統一する。
【0028】
例えば水性媒体中にモノマー混合物を供給して、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてエマルジョンを重合する。
【0029】
前記スチレンアクリル共重合体(A)のエマルジョンと、前記アクリル共重合体(B)のエマルジョンとを適宜混合したエマルジョンの場合は、それぞれのモノマー混合物を重合させたエマルジョンを混合させることで得られる。
【0030】
また、コアシェル構造を形成するエマルジョンの場合は、コアポリマーを形成するモノマー混合物を供給して、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてコアポリマーを形成する工程(1)と、シェルポリマーを形成するモノマー混合物を工程(1)のコアポリマーに供給し、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてコアポリマーにシェルを形成する工程(2)により得られる。また、シェルポリマーを形成するモノマー混合物を供給して、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてシェルポリマーを形成する工程(i)と、コアポリマーを形成するモノマー混合物を工程(i)のシェルポリマーに供給し、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてコアポリマーにシェルを形成する工程(ii)により得られる。
【0031】
開始剤としては特に限定なく、乳化重合法等で使用される過酸化物、過硫酸塩、アゾ化合物、又はレドックス系、或いはこれらの混合物を使用すればよい。過酸化物としては例えば、過酸化水素、過酸化アンモニウム、過酸化ナトリウム、又は過酸化カリウム、t-ブチルペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、及びベンゼンペルオキシドが挙げられる。また過硫酸塩としては例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、又は過硫酸カリウムが挙げられる。またアゾ化合物としては例えば、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、及び4,4’-(4-シアノバレリン酸)が挙げられる。またレドックス系は酸化剤と還元剤とから成り、酸化剤としては例えば先に挙げたうちの1の過酸化物、過硫酸塩、若しくはアゾ化合物、又は塩化ナトリウム若しくは塩化カリウム、又は臭化ナトリウム若しくは臭化カリウムが挙げられる。還元剤としては例えばアスコルビン酸、グルコース、又はアンモニウム、硫酸水素ナトリウム若しくは硫酸水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム若しくは亜硫酸水素カリウム、ナトリウムチオスルフェート若しくはカリウムチオスルフェート、又は硫化ナトリウム若しくは硫化カリウム、又は鉄(II)アンモニウムスルフェートが挙げられる。中でも過硫酸塩、より好ましくは過硫酸アンモニウムが好ましい。
【0032】
前記モノマー混合物の重合は、例えば界面活性剤、連鎖移動剤、キレート剤等の添加剤の存在下で、例えば界面活性剤及び連鎖移動剤の存在下で行うことができる。これらの添加剤は、工程(1)で使用する水性媒体に予め添加させておいてもよいし、工程(1)あるいは工程(2)で供給するモノマー混合物と混合させておいてもよい。
【0033】
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば二ナトリウムドデシルジフェニルオキシド、ジスルホン酸塩等が挙げられる。また連鎖移動剤としても特に限定されないが、例えばα-メチルスチレン二量体、チオグリコール酸、亜リン酸水素ナトリウム、2-メルカプトエタノール、N-ドデシルメルカプタン、及びt-ドデシルメルカプタン等が挙げられる。キレート剤としては特に限定されないが、例えばエチレンジアミン四酢酸が挙げられる。
【0034】
コアシェル構造を形成する場合、水媒体中での安定性を高めるためには、酸性基を有する前記アクリル共重合体(B)がシェルとなることが好ましいが合成中に全ての前記アクリル共重合体(B)がシェルとなっておらず一部前記スチレンアクリル共重合体(A)がシェルとなっている構造を有するエマルジョンであっても問題ない。
【0035】
また中和が必要な場合は、中和剤としてアンモニア、トリエチルアミン、アミノメチルプロパノール、モノエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等の塩基類等を使用することができる。
【0036】
(その他の樹脂)
本発明のコーティング組成物(CS)は、スチレンアクリル共重合体(A)やアクリル共重合体(B)以外のその他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂の材料は特に限定されるものではないが、本発明のコーティング組成物(CS)の耐油性、耐熱性等の特性を損なわないために、スチレンアクリル共重合体であることが好ましく、前記スチレンアクリル共重合体(A)を含む樹脂と同様の材料であることがより好ましい。また、その他の樹脂の含有量は本発明の効果を損なわない範囲で適宜調節可能であるが、スチレンアクリル共重合体(A)を含む樹脂とその他の樹脂との重量比(スチレンアクリル共重合体(A)/その他の樹脂)が100/0~50/50であることが好ましく、100/0~60/40であることが好ましい。
【0037】
(水性溶剤)
コーティング組成物(CS)は、水を含有する。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また、前記水としては、紫外線照射または過酸化水素添加等によって滅菌された水を用いることが、組成物を長期保存する場合に、カビまたはバクテリアの発生を防止することができるため好適である。中でも水を用いることが最も好ましい。
水に溶解するアルコール類等の水溶性有機溶剤等を混合して用いてもよい。アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコールなどを挙げることができる。これらのアルコール類は、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
(その他の添加剤)
コーティング組成物(CS)は、その他シリカ、アルミナ、ポリエチレンワックス、消泡剤、レベリング剤、粘着性付与剤、防腐剤、抗菌剤、防錆剤等も配合することができる。
【0039】
コーティング組成物(CS)は、ワックスを含有してもよい。ワックスとしては、脂肪酸アミドワックス、カルナバワックス、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、みつろう、マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレン-ワックス、アマイドワックスなどのワックスを挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし併用してもよい。
【0040】
中でも脂肪酸アミドワックス、カルナバワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスを使用することが好ましく、特にカルナバワックス、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスを使用することが好ましい。
【0041】
脂肪酸アミドワックスの具体例としては、例えば、ペラルゴン酸アミド、カプリン酸アミド、ウンデシル酸アミド、ラウリン酸アミド、トリデシル酸アミド、ミリスチン酸アミド、ペンタデシル酸アミド、パルミチン酸アミド、ヘプタデシル酸アミド、ステアリン酸アミド、ノナデカン酸アミド、アラキン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド、オレイン酸アミド、セトレイン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、これらの混合物及び動植物油脂脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0042】
前記カルナバワックスの具体例としてはMICROKLEAR 418(Micro Powders,Inc.社製)、精製カルナバワックス1号粉末(日本ワックス株式会社)等が挙げられる。
【0043】
前記オレフィンワックスの具体例としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスが挙げられ、例えばMPP-635VF(MicroPowders,Inc.)、MP-620VF XF(Micro Powders,Inc)等が挙げられる。
【0044】
前記パラフィンワックスの具体例としては、例えばMP-28C、MP-22XF、MP-28C(Micro Powders,Inc.)等が挙げられる。
【0045】
前記ワックスの配合量は、ワックス総量がコーティング組成物(CS)中の固形分100質量%全量に対し1.5~20質量%であることが好ましい。ワックス総量がコーティング組成物(CS)中の固形分100%全量に対し3質量%以上であれば耐ブロッキング性を保持できる傾向にあり、ワックス総量がコーティング組成物(CS)の固形分100%全量に対し15質量%以下であればヒートシール性が保持できる傾向にある。
【0046】
また、ワックスの融点は、耐油性、耐熱性の観点から、80℃~130℃の範囲であることが好ましい。前記ワックスは、スチレンアクリル共重合体(A)を含む樹脂のエマルジョンに直接添加し混合分散させてもよいし、ワックスの分散体を作製した後、エマルジョンと混合させてもよい。分散方法としては、公知の方法、例えばメディアを用いた分散装置として、ペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミル等を使用することができ、メディアを用いないものとして超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、ディスパー、高速イン
ペラー分散機等で分散することができる。
【0047】
粉体のワックスを使用する場合は、ワックスを均一分散させるために、メディアを用いて練肉を行ったり、ワックスの分散体を作製した後配合を行ったりすることが好ましい。練肉方法は公知の方法で行うことができる。
【0048】
また複数種のワックスを併用する際には、複数種のワックスを同時に添加してもよいし、複数の工程に分けて添加してもよい。
【0049】
また、コーティング組成物(CS)は、各種コーターを使用してコーティングする際に組成物が泡立つことを防止するため、ポリマー系消泡剤、シリコン系消泡剤、フッ素系消泡剤が好ましく使用される。これら消泡剤としては乳化分散型及び可溶化型などいずれも使用できる。中でもポリマー系消泡剤が好ましい。
【0050】
前記消泡剤の添加量としては、コーティング組成物(CS)は全量の0.005重量%~0.1重量%が好ましい。
【0051】
[ヒートシール性コート層]
本発明の積層体は、紙基材上の第一の層又は第二の層のいずれか一方として、ヒートシール性コート層を有する。該ヒートシール性コート層は、公知のヒートシール塗工剤を用いることができる。以下、ヒートシール剤の組成例を説明する。
【0052】
<ヒートシール剤(HS)>
ヒートシール剤(HS)は、耐水性を向上させるために、塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体系樹脂、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体系樹脂から選ばれる少なくとも一種を含むことがより好ましい。
【0053】
塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系樹脂としては、塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合したものであれば、特段限定されない。ヒートシール性を向上させる観点から、酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体であることが好ましく、酸変性された塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系樹脂がより好ましい。酸基としてはマレイン酸、もしくはフマル酸を使用したものが好ましい。
【0054】
(メタ)アクリレート系樹脂としては、(メタ)アクリレートの単独重合体もしくは共重合体であれば特に制限は無く、共重合体としては(メタ)アクリレートと共重合しうるビニルモノマーとを共重合させた共重合体があげられる。また、水性溶剤を用いる場合は水分散性や水溶性を付与する目的から酸価を有する共重合体であることが好ましい。
【0055】
(メタ)アクリレートの単独重合体もしくは共重合体の構成成分として用いられる(メタ)アクリレートとしては特に限定はなく、上述したスチレンアクリル共重合体(A)において用いられる(メタ)アクリレートと同様のものが用いられる。
【0056】
また、(メタ)アクリレートや(メタ)アクリレートと共重合しうるビニルモノマーの例としては、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;2-ヒドロドキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルキルポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレート等のフッ素系(メタ)アクリレート;スチレン、スチレン誘導体(p-ジメチルシリルスチレン、(p-ビニルフェニル)メチルスルフィド、p-ヘキシニルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルジメチルシロキシスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン等)、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1-ジフェニルエチレン等の芳香族ビニル化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールテトラ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジアクリロキシプロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートトリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリレート;2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、ナフチルビニルピリジン等のビニルピリジン化合物;1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン等の共役ジエンなどが挙げられる。これらのモノマーは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0057】
また、カルボキシル基及びカルボキシル基が塩基性化合物によって中和されたカルボキシレート基からなる群より選ばれる1種以上の酸性基を導入することを目的として、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーを共重合させることで、酸価を有するコポリマーを得ることができる。
【0058】
酸性基を導入する場合は、酸価が所望の範囲となるようにモノマー量を適宜調整することが好ましい。
【0059】
(メタ)アクリレートの単独重合体もしくは共重合体は、例えば、重合開始剤の存在下、50℃~180℃の温度領域で1種又は2種以上のモノマーを重合させることにより製造することができ、80℃~150℃の温度領域であればより好ましい。重合の方法は、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が挙げられる。また、重合様式は、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等が挙げられる。また、コポリマーはコアシェル型であってもよい。
【0060】
オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体系樹脂としては、オレフィンと、α,β-不飽和カルボン酸、α,β-不飽和カルボン酸の金属塩、及び、α,β-不飽和カルボン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーとの共重合体等が挙げられる。具体的には、α,β-不飽和カルボン酸、α,β-不飽和カルボン酸の金属塩又はα,β-不飽和カルボン酸エステルとオレフィンとの共重合体であり、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸-無水マレイン酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体、エチレン-メタクリル酸-無水マレイン酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体、及びこれらの金属塩等が挙げられる。これらの共重合体は、単独であっても2種以上の混合物であってもよい。
中でも、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体が好ましい。オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体としては、エチレン-とα,β-不飽和カルボン酸のランダム共重合体またはブロック共重合体が挙げられる。
【0061】
前記オレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテン、ブタジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネンなどが挙げられる。中でもエチレンが好ましい。
【0062】
前記α,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。これらのα,β-不飽和カルボン酸は、単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。
【0063】
前記α,β-不飽和カルボン酸エステルとしては、特に限定なく公知のアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステル、アルコキシアルキルエステル等を使用することができる。例えば具体的にはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nプロピル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸nオクチル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-メトキシエチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸nプロピル、メタクリル酸nブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸nへキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸nラウリル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-エトキシエチルなどのメタクリル酸エステルを例示することができる。これらは1種又は2種以上組合せて使用することができる。
【0064】
前記オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体の製造方法としては、公知の方法、例えば高温、高圧下のラジカル共重合により得ることができる。
【0065】
上記オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体中のα,β-不飽和カルボン酸の含有量は、8~24重量%、好ましくは18~23重量%であることが望ましい。α,β-不飽和カルボン酸の含有量が8重量%未満の場合、エチレン-単位に由来する非極性な性質のために水系分散媒に対する分散性に劣り、優れたオレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体樹脂水性分散液を得ることが難しくなるおそれがある。また、α,β-不飽和カルボン酸の含有量が24重量%を超える場合、得られた皮膜の耐ブロッキング性が悪くなるおそれがある。
【0066】
ヒートシール剤において使用するオレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体は、水性溶剤に分散させた水分散体として使用することが好ましい。水性溶剤に分散させる方法としては特に限定されず公知の方法で行えばよい。例えば界面活性剤で乳化し水性溶剤中に分散させる方法や、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体を塩基性化合物で中和したのち水性溶剤中に分散させる方法等が挙げられる。
【0067】
前記乳化させる際に使用する界面活性剤としては、公知の各種アニオン性、カチオン性、ノニオン性界面活性剤、もしくは各種水溶性高分子を適宜併用して使用することができる。
【0068】
また前記中和する際に使用する塩基性化合物としては、例えばアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられる。これらの塩基性化合物は単独、あるいは2種以上併用して用いてもよい。
【0069】
塩基性化合物による中和度は、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体が水性溶媒中で安定に存在する中和度であればよい。例えば該共重合体のカルボキシル基の30~100モル%であればよく、より好ましくは40~90モル%であることが望ましい。
【0070】
前記分散方法としては、公知の方法、例えばメディアを用いた分散装置として、ペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミル等を使用することができ、メディアを用いないものとして超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機等で分散することができる。
【0071】
本発明で使用するオレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体の水分散体の固形分は特に限定はなく、ヒートシール剤として適用させる際の所望される粘度や、ヒートシール剤適用後の乾燥条件、皮膜の膜厚等により適宜決定すればよい。一般には、固形分濃度が10~40質量%の範囲で適用することが多い。
【0072】
(溶剤)
ヒートシール剤(HS)は、塗布性能をあげるために、上述した樹脂を各種有機溶剤又は水性溶剤に溶解して使用することが好ましい。例えば、塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂を使用する場合は、有機溶剤を用いることが好ましい。
【0073】
有機溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系、溶解性の良好な有機溶剤として、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤の各種有機溶剤が挙げられる。これらのうち通常は乾燥速度が速いトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチルや、これらの混合物を使用するのが好ましい。
【0074】
(メタ)アクリレート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を用いる場合は、水性溶剤を用いることが好ましい。水性溶剤としては、上述のコーティング組成物(CS)において用いられる水性溶剤と同様のものを用いることができる。中でも、水を用いることが好ましい。
【0075】
(ワックス)
ヒートシール剤(HS)は、ワックスを含有することが好ましい。ワックスを含有することで耐ブロッキング性を保つ事ができる。前記ワックスとしては、脂肪酸アミドワックス、カルナバワックス、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、みつろう、マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレン-ワックス、アマイドワックスなどのワックス、ヤシ油脂肪酸や大豆油脂肪酸などを挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし併用してもよい。
【0076】
中でも脂肪酸アミドワックス、カルナバワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスを使用することが好ましく、特に脂肪酸アミドワックス、カルナバワックスを使用することが好ましい。
【0077】
脂肪酸アミドワックスの具体例としては、例えば、ペラルゴン酸アミド、カプリン酸アミド、ウンデシル酸アミド、ラウリン酸アミド、トリデシル酸アミド、ミリスチン酸アミド、ペンタデシル酸アミド、パルミチン酸アミド、ヘプタデシル酸アミド、ステアリン酸アミド、ノナデカン酸アミド、アラキン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド、オレイン酸アミド、セトレイン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、これらの混合物及び動植物油脂脂肪酸アミド等が挙げられる。
前記カルバナワックスの具体例としてはMICROKLEAR 418(Micro Powders,Inc.社製)、精製カルナバワックス1号粉末(日本ワックス株式会社)等が挙げられる。
【0078】
前記ワックスの配合量は、ワックスの総量がヒートシール剤(HS)の固形分100質量%全量に対し1.5~20質量%であることが好ましい。ワックスの総量がヒートシール剤(HS)の固形分100%全量に対し3質量%以上であれば耐ブロッキング性を保持できる傾向にあり、ワックスの総量がヒートシール剤(HS)の固形分100%全量に対し15質量%以下であればヒートシール性が保持できる傾向にある。
【0079】
前記ワックスのうち、前記脂肪酸アミドワックスと前記カルナバワックスとを併用すると、耐ブロッキング性が更に向上しより好ましい。併用する場合、その比率には特に限定はないが好ましくは、脂肪酸アミドワックス:前記カルバナワックス=1:1~1:10の範囲が好ましく、1:1~1:5の範囲がなお好ましい。
【0080】
また、前記ワックスのうち、ポリオレフィンワックスとパラフィンワックスとを併用すると、耐ブロッキング性が更に向上しより好ましい。併用する場合、その比率には特に限定はないが好ましくは、ポリオレフィンワックス:パラフィンワックス=1:1~10:1の範囲が好ましく、1:1~5:1の範囲がなお好ましい。
【0081】
水性溶剤を使用する場合にワックスを更に用いることが好ましく、中でも、前記オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体、又は(メタ)アクリル系樹脂と組み合わせて用いることが好ましい。この場合、ワックスはオレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体又は(メタ)アクリル樹脂の水分散体に直接添加し混合分散させてもよいし、前記オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体又は(メタ)アクリル樹脂を水性溶剤に分散させる際に同時に添加し混合分散させてもよい。分散方法は前述の前記オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体の水性溶剤への分散方法で使用する方法を適宜用いることができる。
【0082】
また複数種のワックスを併用する際には、複数種のワックスを同時に添加してもよいし、複数の工程に分けて添加してもよい。例えば第一のワックスを前記オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体又は(メタ)アクリル樹脂の水性溶剤に分散させる際に加えた後、第二のワックスを、得られた第一のワックスと前記オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体又は(メタ)アクリル樹脂との水性分散液に更に追加する方法で、ヒートシール剤(HS)を得ることができる。
【0083】
ヒートシール剤(HS)は、本発明の目的を阻害しない範囲において前記成分の他に、シリカ、アルミナ、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、粘着性付与剤、防腐剤、抗菌剤、防錆剤、酸化防止剤、シリコーンオイル等の添加剤が配合されていてもよい。
【0084】
また、ヒートシール剤(HS)では、各種コーターを使用してコーティングする際に泡立つことを防止するため、ポリマー系消泡剤、シリコン系消泡剤、フッ素系消泡剤が好ましく使用される。これら消泡剤としては乳化分散型及び可溶化型などいずれも使用できる。中でもポリマー系消泡剤が好ましい。前記消泡剤の添加量としては、水性ヒートシール剤全量の0.005重量%~0.1重量%が好ましい。
【0085】
ヒートシール剤(HS)は、袋、箱等の紙包装材や紙容器を製造する際のヒートシール剤として使用することができるし、シール(接着)部位以外の塗工部分は、スチレンアクリル共重合体コート層との積層により、積層体の耐水性をより向上させることができる。ヒートシール部分を貼り合わせることにより、袋、箱、容器等の種々の包装材を用途に合わせて作製でき、加工性に優れている。
【0086】
[積層体]
本発明の積層体は、紙基材上に第一の層と、第一の層の上に設けられた第二の層を少なくとも有する。
【0087】
紙基材としては、木材パルプ等の製紙用天然繊維を用いて公知の抄紙機にて製造されるが、その抄紙条件は特に規定されるものではない。製紙用天然繊維としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ等の非木材パルプ、およびそれらのパルプに化学変性を施したパルプ等が挙げられる。パルプの種類としては、硫酸塩蒸解法、酸性・中性・アルカリ性亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用することができる。また、市販の各種上質紙やコート紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙や板紙などを用いることもできる。
【0088】
前記紙基材は、目的に応じ紙の種類、厚み等を逐次選択する事ができる。例えばバーガーラップであれば米坪対応20グラム/m2程度、紙コップであれば米坪対応200~300グラム/m2、紙皿、紙スプーン、紙マドラー等であれば米坪対応50~500グラム/m2のカップ原紙等の食品用原紙が好ましい。これらの用紙は、リサイクル効率やコスト低減の観点から、ポリエチレン-フィルムやアルミ等をラミネートされていない事が好ましい。紙基材は、印刷層を有していてもよい。印刷層は、紙基材の第一の層が設けられる面に設けても、第一の層が設けられる面と反対側の面に設けてもよい。
印刷層(E)は、被印刷体に美粧性、内容物に関する様々な情報、及び機能性を付与するために、リキッド印刷インキにより所望の図柄を形成する層である。当該印刷層は、バインダー樹脂と着色剤とを含有グラビア印刷インキやフレキソ印刷インキ(以後リキッド印刷インキと称する)を印刷してなる。
【0089】
本発明に使用する印刷層(E)は、単層であってもよいし、複数の印刷層があってもよい。印刷層が複数ある場合は、各印刷層に使用するリキッド印刷インキは同一のものであっても良いし、同一の組成で着色剤のみが違うものであっても良いし、異なる組成であっても良い。
【0090】
(リキッド印刷インキ)
本発明に使用するリキッド印刷インキは、グラビア印刷インキやフレキソ印刷インキとして使用され、有機溶剤を主溶媒とする有機溶剤型リキッド印刷インキと、水を主溶媒とする水性リキッド印刷インキとに大別されるが、本発明においてはどちらを使用しても構わない。また、いわゆる表刷りインキと、ラミネートが前提の裏刷りインキとがあるが、本発明においてはどちらを使用しても構わない。
ここでは主流である有機溶剤型リキッド印刷インキについて説明する。
【0091】
本発明に使用するリキッド印刷インキに使用するバインダー樹脂(A)としては、硝化綿、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)やセルロースアセテートブチロネート(CAB)等セルロース系樹脂等の繊維素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂等を挙げることができる。
【0092】
また、バインダー樹脂(A)に硬化剤を併用してもよい。硬化剤としては有機溶剤系のグラビア印刷インキで汎用の硬化剤を使用すればよいが、最もよく使用されるのはイソシアネート系の硬化剤である。
イソシアネート化合物の添加量としては、硬化効率の観点からリキッド印刷インキ固形分に対し0.3質量%~10.0質量%の範囲が好ましく、1.0質量%~7.0質量%であればより好ましい。
バインダー樹脂(A)は、リキッド印刷インキに対して0.15~50質量%の範囲であることが好ましく、1~40質量%の範囲で使用することが最も好ましい。
【0093】
(溶媒)
本発明に使用するリキッド印刷インキに使用する溶媒としては、特に制限はないが、たとえば水、トルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系有機溶剤、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。これらを単独又は2種以上を混合しても用いることができる。
【0094】
(着色剤)
本発明に使用するリキッド印刷インキは着色剤を含み、美粧性等を付与する目的でデザイン印刷等に用いる着色剤を含むリキッド印刷インキとして使用することができる。着色剤としては、一般のインキ、塗料、及び記録剤等に使用されている無機顔料、有機顔料及び染料を挙げることができ、顔料が好ましい。有機顔料としては、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系等の顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。また未酸性処理顔料、酸性処理顔料のいずれも使用することができる。
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、リトボン、アンチモンホワイト、石膏等の白色無機顔料が挙げられる。無機顔料の中では酸化チタンの使用が特に好ましい。酸化チタンは白色を呈し、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましく、印刷性能の観点から該酸化チタンはシリカ及び/又はアルミナ処理を施されているものが好ましい。
白色以外の無機顔料としては、例えば、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、ジルコンが挙げられ、アルミニウムは粉末又はペースト状であるが、取扱い性及び安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィング又はノンリーフィングを使用するかは輝度感及び濃度の点から適宜選択される。
【0095】
上記顔料は、リキッド印刷インキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちリキッド印刷インキ総質量に対して1~60質量%、リキッド印刷インキ中の固形分重量比では10~90質量%の割合で含まれることが好ましい。また、これらの顔料は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0096】
有機溶剤型リキッド印刷インキでは更に必要に応じて、ワックス、キレート系架橋剤、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤等も含むこともできる。
【0097】
(バイオマスリキッド印刷インキ)
本発明に使用するリキッド印刷インキにおいて、持続的に発展すべき循環型社会の構築(サステナビリティ)を考慮し、植物由来原料を使用したリキッド印刷インキを使用することが好ましい。
植物由来原料としては例えば、セルロースアセテートプロピオネート樹脂や硝化綿等の繊維素系樹脂や、大豆油由来、パーム油由来、米糠油由来等天然油に由来するダイマー酸あるいは重合脂肪酸を使用したポリアミド樹脂や、ポリカルボン酸として、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、グルタル酸、リンゴ酸等、ポリオールとして、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンチレングリコール、1,10-ドデカンジオール、ダイマージオール、イソソルビド等、ポリイソシアネートとして、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、ダイマージイソシアネート等の植物由来原料から合成したバイオマスポリウレタンや、ロジン樹脂等が挙げられる。
【0098】
バイオマスリキッド印刷インキとしては市販品を利用することもできる。市販品としては、一般社団法人日本有機資源協会に記載のインキ等が使用できる。
【0099】
(UVカットインキ)
本発明に使用するリキッド印刷インキにおいて、紫外線遮蔽効果を有するUVカットインキを使用することも好ましい。UVカットインキとしては、酸化亜鉛等を含有する紫外線遮蔽効果の高いインキであれば特に限定されず市販のUVカットインキを使用することができる。
【0100】
第一の層は、紙基材と第二の層との間に設けられる層である。第一の層は、前述した耐油耐水コート層又はヒートシール性コート層のいずれかにより構成される。第一の層の塗布量は、0.5~10.0g/m2であり、1.0~5.0g/m2であることがより好ましい。
【0101】
第二の層は、第一の層の上に設けられる層である。第二の層は、前述した耐油耐水コート層又はヒートシール性コート層のうち、第一の層と異なる層により形成される。すなわち、第一の層が耐油耐水コート層で形成された場合は、第二の層はヒートシール性コート層で形成され、第一の層がヒートシール性コート層で形成された場合は、第二の層は耐油耐水コート層で形成される。
【0102】
第二の層の塗布量は、0.5~8.0g/m2であることが好ましく、1.0~5.0g/m2であることがより好ましい。第一の層が耐油耐水コート層の場合、該第一の層の目止め機能により、第二の層のヒートシール剤の塗布量を少なくすることができる。
【0103】
積層体は、紙基材の前記第一の層及び第二の層が設けられていない側の面に第三の層を更に有していてもよい。第三の層は、積層体に付与したい性能に応じて各種コート剤を適宜選択して用いることが好ましい。例えば、第三の層として、前述したスチレンアクリル共重合体コート層を設けてもよい。また、耐水性をより向上させたい場合は、スチレンアクリル系共重合体とワックスを少なくとも含有する耐水コート層を用いることがより好ましい。
【0104】
〔耐水コート層〕
第三の層として設けられる耐水コート層は、水性溶剤と、スチレンアクリル系共重合体とワックスを少なくとも含有する耐水コート組成物により形成されることが好ましい。耐水コート層の膜厚は、用途によるが、例えば1~10g/m2の範囲であれあることが好ましく、1~5g/m2の範囲であることがより好ましい。
【0105】
(水性溶剤)
水性溶剤としては、上述のヒートシール剤(HS)に用いられる水性溶剤と同様のものを用いることができる。
【0106】
(スチレンアクリル系共重合体)
スチレンアクリル系共重合体は、スチレン類と(メタ)アクリレートの共重合体がコアシェル構造を形成していることが好ましく、スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体、及びスチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体がコアシェル構造を形成していることがより好ましい。
【0107】
スチレンアクリル共重合体の構成成分として用いられるスチレン類及び(メタ)アクリレートは、前述したスチレンアクリル共重合体コート層のスチレンアクリル共重合体(A)に用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0108】
スチレンアクリル共重合体の構成成分として、スチレン類、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸以外の他の公知の重合性化合物を含有していてもよい。
【0109】
スチレンアクリル系共重合体(A)中に後述するワックスを含有していてもよい。スチレンアクリル系共重合体(A)中にワックスを含有することにより、耐水性をより向上させることができる。ワックスは、コア部に存在していてもシェル部に存在していてもよい。スチレンアクリル系共重合体の表面に存在していてもよい。
【0110】
スチレンアクリル系共重合体(A)において、「スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体」と「スチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体」の割合は、質量比で20:80~95:5の範囲が好ましく、30:70~92:8の範囲がより好ましく、40:60~90:10の範囲が最も好ましい。
【0111】
スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体において、スチレン類と(メタ)アクリレートの割合は、質量比で20:80~80:20の範囲が好ましく、30:70~70:30の範囲がより好ましく、40:60~60:40の範囲が最も好ましい。
【0112】
スチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体において、スチレン類の割合は10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましく、30~70質量%であること最もが好ましい。また、スチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体において、(メタ)アクリレートの割合は10~80質量%であることが好ましく、15~70質量%であることがより好ましく、20~60質量%であることが最も好ましい。また、スチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体において、(メタ)アクリル酸の割合は10~70質量%であることが好ましく、15~60質量%であることがより好ましく、20~50質量%であることが最も好ましい。
【0113】
スチレンアクリル共重合体(A)において、スチレン類、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸以外の他の公知の重合性化合物を含有する場合は、スチレンアクリル共重合体(A)における他の重合性化合物の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることが好ましい。
【0114】
スチレンアクリル共重合体(A)のガラス転移温度(以下Tgと称する場合がある)は、-30℃~10℃の範囲であり、好ましくは-25℃~5℃の範囲であり、より好ましくは-20℃~0℃の範囲である。本発明においてガラス転移温度は、示差走査熱量計による測定により得られるものである。
【0115】
スチレンアクリル共重合体は公知の方法により製造することができる。中でも、スチレンアクリル共重合体は、モノマー混合物の重合をワックスの存在下で行うことが好ましい。つまり、ワックスを水性媒体に予め添加させておくか、又はモノマー混合物と混合させておくことにより、スチレンアクリル共重合体中にワックスがとりこまれた状態のコアシェル構造が形成できる。
【0116】
(ワックス)
耐水コート組成物は、ワックスを含有することにより、耐水性をより向上させることができる。ワックスは、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレン-ワックス、アマイドワックスから選ばれる少なくとも一つ以上のワックスが好ましく、パラフィンワックス又はマイクロクリスタリンワックスがより好ましい。これらは単独で使用してもよいし併用してもよい。
【0117】
ワックスの融点は、30℃~130℃の範囲であることが好ましく、50℃~100℃の範囲であることがより好ましい。ワックスの配合量は、スチレンアクリル共重合体100質量%に対して0.5~20質量%であることが好ましく、1~15質量%であることが好ましい。
【0118】
ワックスは、耐水コート層中に分散して存在していればよいが、上述のように、スチレンアクリル共重合体のコア部及び/又はシェル部に存在することにより、スチレンアクリル共重合体と一体化して存在することが好ましい。耐水コート層において、ワックスが、スチレンアクリル共重合体中に含まれる形で存在するものと、スチレンアクリル共重合体中に含まれずに存在するものとが混在していてもよい。
【0119】
(その他の添加剤)
耐水コート組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲において前記成分の他に、更に、シリカ、アルミナ、ワックス、消泡剤、レベリング剤、粘着性付与剤、防腐剤、抗菌剤、防錆剤等の添加剤が配合されていてもよい。また、スチレンアクリル系共重合体以外の他の樹脂が配合されていてもよい。中でも、レベリング剤及び/又はワックスが更に配合されていることが好ましい。
【0120】
[積層体の製造方法]
本発明の積層体は、紙基材上に、第一の層を形成する組成物、第二の層を形成する組成物を順次塗布し、更に必要に応じて第三の層を形成する組成物を塗布することにより得られる。
【0121】
塗工用の組成物を紙基材上に塗布する場合の方法としては、コンマコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、ダイレクトグラビアコーター、リバースグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、ロールキスコーター、リバースキスコーター、キスグラビアコーター、リバースキスグラビアコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、リップコーター、ディップコーター、ブレードコーター、ブラシコーター、カーテンコーター、ダイスロットコー
ター、フレキソコーター、含浸コーター、キャストコーター、スプレイコーター、オフセット印刷機、スクリーン印刷機等のいずれかもしくは二つ以上の塗工方法を組み合わせて用いることができる。
【0122】
また、紙基材を組成物中に含浸させることにより、紙基材上に樹脂層を設けてもよい。また塗工後オーブン等で乾燥工程を設けてもよい。
【0123】
上記のようにして形成された耐水コート層は、第一の層及び第二の層を有し、第一の層又は第一の層のいずれかに耐油耐水コート層を有することにより、耐水性、耐油性をより向上させることができる。
【0124】
[包装体又は容器]
本発明の積層体は、第一の層又は第二の層のいずれか一方にヒートシール性コート層を有することから、該ヒートシール性コート層を利用してヒートシールすることにより、箱、袋、容器等に加工することができる。
【0125】
包装体は、例えば、パッケージ用の袋、紙袋、紙箱、段ボール、ラップ紙、封筒、カップスリーブ、蓋等が挙げられる。容器としては、紙容器、紙皿、トレイ、カップホルダー、紙コップ等が挙げられる。本発明の耐水性、耐油性に優れていることから、耐水性・耐油性を必要とする食品、肥料等の包装材に利用することが好ましい。例えば、カップ麺、アイスクリーム、プリン、ゼリー等のデザート用のカップ又は蓋、菓子、穀類、豆類、粉体、ペット用のフード、肥料等を収容する袋又は箱、ハンバーガーやホットドックのラップ紙、ピザ等の持ち帰り用容器、から揚げやポテト等のホットスナック用容器、納豆等の総菜を対象とするカップ類等の食品用紙容器又包装材や、洗剤、サニタリー用品をはじめとする衛生品用の袋又は箱等が挙げられる。
【0126】
例えば、本発明の積層体を用いて紙コップを作製する場合、容器内面及び容器を組み立てる際の貼り合わせ部に第一の層及び第二の層を設けて、張り合わせ部を第一の層及び第二の層を介して重ね合わせて接着することにより製造できる。すなわち、紙コップは、本発明の積層体の紙基材を丸めて重ね合わせた両端部の貼り合わせ面を接着した胴部材(1)と、前記胴部材(1)の下端に接着された板状の底部材(2)とを有し、接着部に設けられた第一の層及び第二の層はヒートシール機能により接着し、接着部以外の部分に設けられた第一の層及び第二の層は耐水性、耐油性の機能を発揮できる。接着部以外の部分に設けられた第一の層及び第二の層は、人体及び環境安全性が高いことから、食品と直接接して収容することも可能である。更に、紙コップの外側に第三の層として耐水コート層を設けることにより、長時間使用した場合にも優れた耐水性を得られる。
【0127】
同様に、紙箱、紙袋等も本発明の積層体を用いてヒートシールすることにより製造できる。
【0128】
ヒートシールの具体的な方法は、紙基材の2つの部位のうち、少なくとも片方の部位(両方の部位であってもよい)に、第一の層及び第二の層を塗工後、2つの部位を重ね合わせて加熱により軟化させる。ヒートシール剤はバーナーや熱風で加熱することにより容易に軟化し紙同士または紙と他素材とを接着させることができ、その後冷却することで接着部分が固化し紙同士または紙と他素材とを強固にシールすることができる。
【0129】
前記加熱方法としては、バーナー等の熱源、熱風、電熱、赤外線、電子線等の従来公知の手段を用いる事ができるが、具体的にはバーナーや熱風で加熱する方法や、成形の形によっては熱溶着シール法や超音波シール法、あるいは高周波シール法が好ましい。この時の加熱温度は200~500℃、加熱時間は0.1~3秒が好ましい。
【0130】
また、ヒートシール剤(HS)は、ヒートシールバー等の直接熱源と接触させて溶融化させる方法以外に、非接触の加熱であっても容易に加熱軟化し、且つ、熱源から離れてもある程度の時間ヒートシール機能が持続する。基材が紙の場合、直接熱源と接触させると紙が焦げる可能性があるが本発明のヒートシール剤は非接触の加熱でヒートシール機能が発現し且つその機能が持続することから、高速のラインスピードが要求される紙容器の工業生産向けヒートシール剤として特に有用である。
【0131】
ヒートシール剤(HS)を塗工し該塗工部位を加熱軟化させた後、該塗工部位と、もう1つの部位とを重ね合わせた状態で圧着させることにより、ヒートシール剤として使用できる。圧着方法としては特に限定なく、熱板方式、超音波シール、高周波シールの方法で行うことができる。
【0132】
本発明の積層体は、紙コップの製造においてヒートシール時にヒートシール層を含む第一の層又は第二の層が金型に付着することを防止することができる。
【0133】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0134】
以下の実施例中の「部」は「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。
【0135】
(スチレンアクリル共重合体(A)を含有するコーティング組成物(CS)の調整)
窒素ガス置換した四つ口フラスコに、イソプロピルアルコールを100部仕込み、温度を80~82℃に上げた後、滴下ロートに仕込んだミリスチルアクリレート1部、スチレン30部、アクリル酸10部、メチルメタクリレート5部、過酸化ベンゾイル1部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、過酸化ベンゾイル0.5部を追加し、更に2時間反応させた。温度を40℃に下げ、ジメチルエタノールアミン、イオン交換水を添加した。その後、反応フラスコの温度を80~82℃に上げ、ストリッピングを行ない、最終的に固形分30%の水溶性樹脂を得た。
【0136】
上記で得た水溶性樹脂に、イオン交換水10部を反応フラスコに仕込み、温度を80℃~82℃に上げた後、過硫酸カリウムを2部添加し、スチレン15部、αメチルスチレン5部、2-エチルヘキシルアクリレート24部、ブチルアクリレート10部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、過硫酸カリウム0.2部を添加し、2時間反応させた。このようにして得られたアクリルエマルジョン(樹脂1)の固形分は40%であり、最低造膜温度は1℃、ガラス転移点は-27℃、固形分の酸価は64mgKOH/gであった。
【0137】
前記アクリルエマルジョン(樹脂1)を85部、ポリマー系消泡剤0.03部、及びイオン交換水14.97部の合計100部を25℃にて15分間、ディスパーにて十分攪拌しコーティング組成物(CS1)を作製した。
【0138】
(ヒートシール剤(HS1)の調整)
マレイン酸変性塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体(マレイン酸1部/塩化ビニル84部/酢酸ビニル15部)を25部に対し、メチルエチルケトン/酢酸エチルの混合比率が1:1の溶剤75部を用いて、分散攪拌機を用いて25℃の温度下、3000rmpの回転数で撹拌しながら溶剤中に固形分を少しずつ投入し、10分間撹拌して塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系樹脂のヒートシール剤(HS1)を作製した。
【0139】
(ヒートシール剤(HS2)の調整)
アクリル樹脂(メタクリル酸メチル83部/アクリル酸ブチル11部/アクリル酸-2-エチルへキシル1部/メタクリル酸5部)を38部と、共重合体の酸価に対し中和率100%となるアンモニア、水性溶剤として水、及びワックスとしてポリエチレンワックス1.5部及びパラフィンワックス0.5部を仕込み、攪拌してアクリル系樹脂のヒートシール剤(HS2)を作製した。
【0140】
(ヒートシール剤(HS3)の調整)
エチレンアクリル酸エチルアクリル酸共重合体(エチレン77.8部/アクリル酸エチル11.1部/アクリル酸11.2部)を30部と、共重合体の酸価に対し中和率100%となるアンモニア、水性溶剤として水、及びワックスとして脂肪酸アミドワックス1.5部を仕込み、更に、組成物中の水/イソプロピルアルコールの混合比率が67/3になるようにイソプロピルアルコールを混合して攪拌し、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体のヒートシール剤(HS3)を得た。
【0141】
(アクリル系OPニス(AOP1)の調整)
水性アクリルエマルジョン(DIC株式会社製 ディックセーフC-HP)を、固形分30%になるように水と混合して攪拌し、アクリル系OPニス(AOP1)を得た。
【0142】
<積層体の作成>
(実施例1~11、比較例1~5)
紙基材(坪量45g/m2の純白ロール紙(大王製紙株式会社製 金鯱)を準備し、紙基材の一方の面(ザラ面側)に表1に記載した第一の層用の組成物を表1に記載の膜厚になるように塗布し乾燥させて、第一の層を形成した。続いて、第一の層の上に表1に記載した第二の層用の組成物を表1に記載の膜厚になるように塗布し、乾燥機を用いて100℃にて30秒乾燥させ、実施例5~11の積層体を作製した。
【0143】
なお、各層において、CS1又はAOP1を塗布した場合は、塗布後乾燥機を用いて150℃にて20秒乾燥させ、HS1~HS3を塗布した場合は塗布後乾燥機を用いて150℃にて20秒乾燥させた。
【0144】
<評価>
(ヒートシール性)
作製した実施例及び比較例の積層体において、第一の層及び第二の層の塗工面と未塗工面を重ね、温度100℃~200℃の範囲で加熱後、直ちに0.2MPa加圧、1秒密着条件下のヒートシール機を用いることにより、ヒートシール部を設けた。密着状況は、ヒートシール部を剥がすことにより、紙剥け、紙切れの基材破壊の発生状況から密着強度を評価した。表中に記載の温度は、基材破壊が生じた最低温度である。
【0145】
(耐油性)
作製した実施例及び比較例の積層体を用いJAPAN TAPPI 紙パルプ試験法No.41キット法を用いて、撥油性の評価を行った。尚、評価の際、撥油度が7以上である場合を合格(優良)、5以上である場合を可、4未満の場合を不可とした。なお、撥油度の最大値は16である。
【0146】
(耐水性)
水道水をスポイトに採取し、0.1mlを評価用の塗工紙試験片の第一の層及び第二の層を設けた面に滴下する。滴下後25℃にて放置し、裏面への浸透が認められるまでの時間を評価した。
【0147】
(金型剥離性)
作製した実施例及び比較例の積層体の印刷面にアルミニウムを当ててヒートシーラーにてシールを行った(0.2Mpa、時間1秒、25mm幅)。ヒートシール後、アルミニウム面と剥がしたときの剥離抵抗、ニスの取られを観察し、ニスがアルミニウムに取られた温度を評価する。なお、表中の温度はニスがアルミニウムに取られた温度であるが、「100℃<」は100℃以下の温度でニスがアルミニウムに取られたことを意味する。
【0148】
評価結果を以下の表に示す。
【0149】
【0150】
実施例および比較例より、本発明の第一の層及び第二の層を有する積層体は、ヒートシール性を有しつつ、優れた耐油性及び耐水性を兼ね備えることがわかった。また、比較例1~3に示すようにヒートシール剤を厚塗りする必要なく、十分なヒートシール性が得られる。
【0151】
実施例1~3に示すように第二の層をヒートシール性コート層とした場合、HS3(オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体系樹脂)を用いた実施例1においてより耐水性が向上した。
【0152】
実施例1~6より、ヒートシール性は、HS2(ポリオレフィン系樹脂)及びHS3(オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体系樹脂)を用いた実施例1,3,4,6でより優れていた。また、実施例7~9に示すように紙へのコート量が少ない方がより低温での密着性に優れていた結果となった。これは、ヒートシール剤の紙への浸透度合いの影響と推測される。
【0153】
金型剥離性は、ヒートシール性の温度が高い方が金型剥離性は良いことを確認できた。第二の層を耐油耐水コート層を実施例4及び4で金型剥離性が良好な傾向が見られた。