(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】化粧品及びその製造方法並びに化粧品用の調整シート
(51)【国際特許分類】
A45D 34/04 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
A45D34/04 535Z
(21)【出願番号】P 2021573088
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2021000846
(87)【国際公開番号】W WO2021149557
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2020008646
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591254958
【氏名又は名称】株式会社タイキ
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(72)【発明者】
【氏名】櫟 彰子
(72)【発明者】
【氏名】土居 元子
(72)【発明者】
【氏名】原 悠佳
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-102850(JP,A)
【文献】特開2018-064742(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101443500(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体化粧料が含浸されたパッドと、パッドの上に重ねられ、液体化粧料の塗布具への付着量を調整するための調整シートと、を備え、
調整シートの上面に多数の凸部が形成され、凸部により調整シートに厚肉部が形成されると共に凸部同士の間に薄肉部が形成され、
液体化粧料が塗布具に付着する際に、薄肉部は、パッドの液体化粧料が調整シートの上面まで相対的に到達しやすい速達部となり、厚肉部は、パッドの液体化粧料が調整シートの上面まで相対的に到達しにくい遅延部となる、化粧品。
【請求項2】
凸部は、上側に向けて徐々に細くなった先細り形状である、請求項
1記載の化粧品。
【請求項3】
凸部は、整列配置されている、請求項1又は2記載の化粧品。
【請求項4】
調整シートは、エアレイド不織布製である、請求項
1乃至3の何れかに記載の化粧品。
【請求項5】
請求項1記載の化粧品の製造方法であって、
パッドに液体化粧料を含浸させる工程と、
液体化粧料が含浸されたパッドの上に、液体化粧料が含浸されていない調整シートを載せる工程と、を含む、化粧品の製造方法。
【請求項6】
液体化粧料が含浸されたパッドの上に重ねられ、液体化粧料の塗布具への付着量を調整するための調整シートであって、
上面に多数の凸部が形成され、凸部により厚肉部が形成されると共に凸部同士の間に薄肉部が形成され、
液体化粧料が塗布具に付着する際に、薄肉部は、パッドの液体化粧料が調整シートの上面まで相対的に到達しやすい速達部となり、厚肉部は、パッドの液体化粧料が調整シートの上面まで相対的に到達しにくい遅延部となる、化粧品用の調整シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体ファンデーション等の液体化粧料が含浸されたパッドを備えた化粧品と、その製造方法と、化粧品用の調整シートに関する。
【背景技術】
【0002】
図11に従来の化粧品の一例を示している。液体のファンデーションは、パッド200に含浸されている。パッド200は、容器201に収容される。容器201の開口部202からパッド200の上面が露出している。パッド200の上面にパフ206が押し当てられると、パッド200のファンデーションがパフ206に付着する。しかしながら、使い始めの段階ではファンデーションがパフ206に過度に付着する一方、ある程度使用すると、急激にファンデーションの付着量が減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、液体化粧料の取れ量の平準化を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る化粧品は、パッドと調整シートを備えている。パッドには、液体化粧料が含浸されている。調整シートは、パッドの上に重ねられている。調整シートは、液体化粧料の塗布具への付着量を調整するためのものである。調整シートは、速達部と遅延部を有している。遅延部は、速達部に比して液体化粧料が上面まで到達しにくい。液体化粧料が塗布具に付着する際に、パッドから調整シートに液体化粧料が移行する。
【0006】
この構成によれば、パッドの上に調整シートが重ねられている。パッドには液体化粧料が含浸されているが、調整シートには液体化粧料が含浸されていない。使用に際して、ユーザは、パフ等の塗布具を調整シートの上面に押し当てる。塗布具の押圧力により、パッドの液体化粧料が調整シートに移行していく。液体化粧料は、速達部の上面まで容易に到達する。一方、液体化粧料は、遅延部の上面まで到達しにくい。そのため、使用初期においては、遅延部から液体化粧料が塗布具に付着しにくく、主として速達部から液体化粧料が塗布具に付着する。そして、塗布具が、ある程度の回数、調整シートに押し当てられると、液体化粧料は、遅延部の上面に達する。このように、使用初期においては、遅延部の上面には液体化粧料がほとんど到達していないため、主として速達部の上面から液体化粧料が吐出して塗布具に付着することになる。これにより、使用初期における塗布具への液体化粧料の付着量が抑制されることになる。一方、塗布具が調整シートに複数回押し当てられると、速達部の上面と遅延部の上面の両方から液体化粧料が吐出して塗布具に付着する。使用開始後も、調整シートにはパッドから液体化粧料が供給され続ける。供給された液体化粧料は、やはり速達部の上面には到達しやすいものの、遅延部の上面には到達しにくい。そのため、使用開始後においても、液体化粧料は、速達部の上面からは多く取り出され、遅延部の上面から少なく取り出される。
【0007】
好ましくは、調整シートは、多数の厚肉部及び薄肉部を有する。薄肉部が速達部であり、厚肉部が遅延部である。この構成によれば、パッドの液体化粧料は、薄肉部に移行して容易に薄肉部の上面まで達する。一方、パッドの液体化粧料は、厚肉部にも移行する。しかしながら、液体化粧料は、厚肉部の上面まで直ちには到達しない。複数回、塗布具が調整シートに押し当てられることにより、徐々に厚肉部に液体化粧料が浸透していく。そして、やがて厚肉部の上面まで液体化粧料が浸透し、到達する。厚肉部は、液体化粧料を貯留するタンク、あるいは、バッファーとして機能し、厚肉部は、液体化粧料が調整シートの上面に到達することを遅延させる。このように、厚肉部によって液体化粧料の取れ量が制限される。
【0008】
好ましくは、調整シートの上面には、多数の凸部が設けられている。厚肉部は凸部に対応し、薄肉部は凸部同士の間に対応している。この構成によれば、使用初期において、凸部同士の間に位置する薄肉部から液体化粧料が取り出されることになる。そのため、使用初期において液体化粧料が過度に多く取り出されることが抑制される。また、凸部の形状や大きさ、配置等によって、液体化粧料の取れ量を容易にコントロールすることができる。
【0009】
好ましくは、凸部は、上側に向けて徐々に細くなった先細り形状である。この構成によれば、使用初期において塗布具が凸部同士の間に進入しやすい。そのため、薄肉部から液体化粧料が容易に塗布具に付着する。
【0010】
好ましくは、調整シートは、エアレイド不織布製である。この構成によれば、厚肉部の繊維の密度と薄肉部の繊維の密度を略一定とすることが容易である。また、調整シートの厚肉部と薄肉部を密度略一定の状態で容易に形成することができる。そのため、厚肉部と薄肉部の肉厚の違いによって取れ量を容易にコントロールすることができる。
【0011】
また、本発明に係る化粧品の製造方法は、パッドに液体化粧料を含浸させる工程と、液体化粧料が含浸されたパッドの上に、液体化粧料が含浸されていない調整シートを載せる工程と、を含む。
【0012】
また、本発明に係る化粧品用の調整シートは、パッドの上に重ねられる。パッドには、液体化粧料が含浸されている。調整シートは、液体化粧料の塗布具への付着量を調整するためのものである。調整シートは、速達部と遅延部とを有している。遅延部は、速達部に比して液体化粧料が上面まで到達しにくい。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、液体化粧料が含浸されたパッドの上に調整シートが重ねられ、その調整シートが速達部と遅延部を有しているので、使用初期において過度の液体化粧料が塗布具に付着することが抑制され、液体化粧料の取れ量が平準化される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態における化粧品を示す斜視図。
【
図2】(a)は同化粧品のパッド及び調整シートを示す斜視図、(b)は同パッド及び調整シートの分解斜視図。
【
図3】(a)は同化粧品の調整シートを示す平面図、(b)は(a)のA-A拡大端面図。
【
図4】(a)及び(b)は、同パッドの製造工程を示す概略図。
【
図5】(a)及び(b)は、同パッドの製造工程を示す概略図。
【
図6】(a)及び(b)は、同パッドの製造工程を示す概略図。
【
図7】本発明の他の実施形態における化粧品を示す斜視図。
【
図8】(a)は同化粧品のパッド及び調整シートを示す斜視図、(b)は同パッド及び調整シートの分解斜視図。
【
図9】(a)は同化粧品の調整シートを示す平面図、(b)は(a)のB-B拡大端面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る化粧品とそれに使用される調整シートについて
図1~
図10を参酌しつつ説明する。化粧品は、液体化粧料が含浸されたパッドと、パッドを収容すると共にパッドから液体化粧料を取り出すための開口部を有する外装体と、パッドから液体化粧料を取り出して顔等の皮膚に付着させるための塗布具を備えている。外装体は、開口部を有する外装体本体と、外装体本体の開口部を閉じる開閉自在な蓋体とを備えている。以下、具体例を挙げて説明する。
【0016】
図1に化粧品1の具体例を示している。化粧品1は、パッド2と、パッド2の上に載置された調整シート5と、外装体としての容器と、塗布具としてのパフ6とを備えている。パッド2とパフ6は、容器に収容されている。本実施形態における容器は、円形状である。容器は、外容器3と内容器4とを備えている。容器は、二重構造である。
【0017】
内容器4は、外容器3に着脱自在に装着される。内容器4は、内容器本体10(外装体本体)と内蓋11(蓋体)と抜け止めリング12を備えている。内容器本体10に、パッド2が収容される。内容器本体10は、上方に開口した開口部13を有している。開口部13は、円形である。パッド2に含浸された液体化粧料は、開口部13から取り出される。内蓋11は、内容器本体10にヒンジ連結されている。内蓋11は、内容器本体10の開口部13を開閉自在に閉じる。内蓋11は、内容器本体10の開口部13を閉塞して内容器本体10の収容部を気密状態とする。内蓋11の上面には、パフ6が収容される図示しないパフ収容凹部が形成されている。パフ6は、円盤状である。パフ収容凹部は、パフ6の形状に対応していて、平面視円形状である。抜け止めリング12は、内容器本体10の開口縁部に装着されている。抜け止めリング12は、内容器本体10の開口部13からパッド2及び調整シート5が抜け出すことを防止する。抜け止めリング12は、開口部13の中心側に向けて突出した鍔状であり、環状である。
【0018】
外容器3は、外容器本体20と外蓋21とを備えている。外容器本体20は、内容器4を収容する。外容器本体20は、上方に開口する開口部22を有している。外蓋21は、外容器本体20の開口部22を開閉自在に閉じる。外蓋21は、外容器本体20にヒンジ連結されている。外蓋21の内面には、鏡23が設けられている。
【0019】
<液体化粧料>
液体化粧料は、例えば、液体のファンデーションやチーク、美容液、乳液等である。
【0020】
<パッド2>
パッド2に液体化粧料が含浸されている。パッド2は、軟質である。パッド2は、容易に変形できる。パッド2の形状は、内容器本体10の収容部の形状に対応している。本実施形態において、パッド2は、平面視円形状である。但し、パッド2は、平面視矩形状等であってもよい。
図2(b)のように、パッド2は、中心線の方向の寸法(厚さ)が直径よりも小さい円柱状である。パッド2の直径は、例えば3~15cm程度である。パッド2の厚さは、例えば0.5~5cm程度である。
【0021】
パッド2の材質は、液体化粧料が含浸可能なものであればよい。パッド2の材質は、各種のウレタンフォームであってもよいが、好ましくは、繊維体である。繊維体は、クッション性を有している。繊維体は、繊維がジャングルジムのように立体的に交差した構造である。繊維体は、三次元立体構造である。繊維同士が交差している交差部は、繊維同士が接触している接触部である。接触部において、繊維同士は融着している。繊維体の密度は、例えば、6~50kg/m3程度であり、好ましくは6~30kg/m3程度である。繊維体のアスカーF硬度は、30~60程度であることが好ましい。尚、アスカーF硬度は、高分子計器(株)製のアスカーゴム硬度計F型を用い、25℃の温度で測定したときの値である。尚、パッド2は、単層でもよいし、多層でもよい。
【0022】
繊維体を構成する繊維は、種々であってよいが、複合繊維を含有することが好ましい。複合繊維は、互いに溶融温度の異なる二種類の樹脂を含有している。二種類の樹脂のうち溶融温度の低い方の樹脂が溶融することにより、繊維同士が接触部において互いに融着している。溶融温度の高い方の樹脂を、高温溶融樹脂と称し、溶融温度の低い方の樹脂を、低温溶融樹脂と称する。
【0023】
複合繊維は、例えば、芯鞘型複合繊維、サイド・バイ・サイド型複合繊維、海島型複合繊維等である。繊維同士の接触部を効率良く一体化させる観点から、芯鞘型複合繊維が好ましい。加熱によって繊維に捲縮を発生させる場合には、サイド・バイ・サイド型複合繊維が好ましい。
【0024】
芯鞘型複合繊維は、中心成分である芯成分と、芯成分を被覆する鞘成分とを備えている。芯成分には、高温溶融樹脂が用いられる。鞘成分には、低温溶融樹脂が用いられる。繊維同士の接触部において、複合繊維同士が、低温溶融樹脂によって強固に一体化される。芯成分と鞘成分の容量比(芯成分:鞘成分)は、30:70~70:30であることが好ましい。
【0025】
低温溶融樹脂には、例えば、ポリエステル、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。具体的には、ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレートなどが挙げられる。また、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系エラストマーなどのポリエステル系エラストマー、ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとするポリエーテル-エステルブロックコポリマーなどが挙げられる。
【0026】
高温溶融樹脂には、例えば、熱可塑性ポリエステルなどが挙げられる。熱可塑性ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレートなどが挙げられる。
【0027】
複合繊維の繊度は、0.5~15デニールであることが好ましく、1~10デニールであることがより好ましい。繊度がこの範囲であると、パッド2に取り込まれた液体化粧料を効率良く外部に取り出すことができる。また、機械的強度に優れたパッド2が得られる。尚、繊維の繊度は、繊維長さ9000mあたりの繊維(フィラメント)の質量(g)である。
【0028】
複合繊維の繊維長は、20~150mm程度であることが好ましい。繊維長がこの範囲であると、パッド2に取り込まれた液体化粧料を効率良く外部に取り出すことができ、また、機械的強度に優れたパッド2が得られる。複合繊維には、必要により、例えば、防菌加工、抗菌加工などの加工が施されていてもよい。
【0029】
繊維体は、構成繊維として複合繊維を含有するものである。繊維体は、複合繊維のみで構成されていてもよいが、複合繊維と複合繊維以外のその他の繊維で構成されていてもよい。その他の繊維としては、例えば、綿、麻、絹などの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維、合成繊維などが挙げられるが、特には、合成繊維が好ましい。複合繊維と合成繊維は、互いの接触部において融着していることが好ましい。
【0030】
合成繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維などのポリエステル繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ナイロン6などに代表されるポリアミド繊維、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、酢酸セルロース繊維などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの繊維は、それぞれ単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。これらの合成繊維のなかでは、ポリエステル繊維およびポリアミド繊維が好ましく、ポリエステル繊維がより好ましい。合成繊維には、必要により、例えば、防菌加工、抗菌加工などの加工が施されていてもよい。
【0031】
合成繊維の溶融温度は、複合繊維のへたり、弾性力の低下を防止する観点から、複合繊維の低温溶融樹脂の溶融温度よりも20℃以上高いことが好ましく、30℃以上高いことがより好ましい。合成繊維の溶融温度は、複合繊維のへたりを防止し、複合繊維と合成繊維との接触部で複合繊維と合成繊維とを効率良く熱融着させる観点から、150~270℃であることが好ましく、160~270℃であることがより好ましい。合成繊維の繊度は、複合繊維と同様に、0.5~15デニールであることが好ましく、1~10デニールであることがより好ましい。合成繊維の繊維長は、複合繊維と同様に、20~150mm程度であることが好ましい。
【0032】
複合繊維とその他の繊維として合成繊維とが併用されていることが好ましい。複合繊維と合成繊維としてポリエステル繊維またはポリアミド繊維とが併用されていることがより好ましい。複合繊維とポリエステル繊維とが併用されていることがさらに好ましい。複合繊維と合成繊維との質量比(複合繊維:合成繊維)は、10:90~100:0であることが好ましく、30:70~80:20であることがより好ましい。
【0033】
<パッド2の製法>
次に、パッド2の一つの製法を例示する。但し、以下に説明する製法は例示であって、これ以外の製法でもよい。尚、繊維体の構成繊維は、複合繊維と合成繊維とが併用されたものである。但し、複合繊維のみであってもよいし、複合繊維と合成繊維以外の他の繊維とが併用されたものであってもよい。
【0034】
図4~
図6に、製法の一例を模式図で示している。まず、複合繊維と合成繊維をそれぞれ解繊する。複合繊維と合成繊維を、それぞれ所定の比率となるように秤量する。複合繊維と合成繊維を、均一な組成となるように混繊する。複合繊維と合成繊維を混合する際、複合繊維と合成繊維を繊維の長さ方向に沿って並べる。複合繊維と合成繊維により、所定厚さの繊維シート40を形成する。
【0035】
図4(a)のように多数の繊維シート40を積層する。尚、繊維シート40の厚さは、誇張して示している。多数の繊維シート40を積層する際、繊維シート40の繊維の方向が一方向に揃うようにする。繊維の方向を単に繊維方向と称し、矢印Xで示している。繊維シート40の平面内において繊維方向と直交する方向を繊維直交方向と称し、矢印Yで示している。繊維シート40の積層方向を矢印Zで示している。
【0036】
次に、積層した多数の繊維シート40を例えば積層方向に対向した図示しない二つの平板状の押圧体で積層方向に挟む。二つの押圧体で繊維シート40を押圧して所定の厚さとし、更に、押圧状態のままで繊維シート40を加熱する。この加熱によって、複合繊維の低温溶融樹脂を溶融させる。低温溶融樹脂が溶融することにより、繊維同士の接触部が低温溶融樹脂によって融着一体化され、
図4(b)のように、三次元立体構造の繊維体からなる積層体41が形成される。複合繊維の低温溶融樹脂の溶融によって、複合繊維同士が融着すると共に、複合繊維と合成繊維が融着する。
図4(b)において、繊維同士が融着した接触部41aにドットを付して示している。繊維シート40を加熱する温度は、複合繊維の低温溶融樹脂の溶融温度以上であって、且つ、複合繊維の高温溶融樹脂の溶融温度及び合成繊維の溶融温度よりも低い温度である。このような押圧加熱工程によって、多数の繊維シート40を一体化させる。尚、二つの押圧体で押圧する方法に代えて、例えば繊維シート40を成形型に入れて圧縮、加熱してもよい。尚、
図4(b)及び
図5において、繊維シート40同士の重なり部分は、実線ではなく二点鎖線で示している。
【0037】
次に、
図5のように、積層体41を積層方向且つ繊維直交方向に沿って所定厚さに切断して、板状の繊維体42を形成する。板状の繊維体42の切断面は、板状の繊維体42の上面及び下面となる。即ち、切断面が、板状の繊維体42の板面となる。板状の繊維体42の厚さ方向は、積層体41における繊維方向である。板状の繊維体42は、厚さ方向の力に対して反発力が大きく、クッション性に優れており、へたりにくい。そして、
図6のように、板状の繊維体42を所定形状に裁断することによって、パッド2を形成する。
【0038】
<調整シート5>
パッド2の上には、液体化粧料の取れ量を調整するための調整シート5が載置されている。調整シート5は、パッド2の上面に重ねられている。パッド2には液体化粧料が含浸されているが、調整シート5には液体化粧料が含浸されていない。調整シート5の形状と大きさは、パッド2の上面に対応している。本実施形態において、上述のようにパッド2は円柱状であってパッド2の上面は円形状である。そのため、調整シート5は、円形状である。調整シート5は、パッド2の上面の全体を覆っている。調整シート5の周縁部は、抜け止めリング12によって上から抑えられている。そのため、パッド2と調整シート5の重なり状態は維持される。調整シート5の周縁部を除く他の部分は、抜け止めリング12によって押さえられておらずに開放されていて開口部13から露出している。
【0039】
調整シート5の材質は種々であってもよい。調整シート5は、好ましくは、不織布からなり、更に好ましくはエアレイド不織布からなる。エアレイド不織布は、熱接着性繊維を含んでいる。熱接着性繊維は、熱溶融し相互に結合する。溶融による繊維間結合によって、網目状構造の不織布となる。熱接着性繊維は、複合繊維である。複合繊維は、パッド2と同様のものであり、芯鞘型の複合繊維やサイド・バイ・サイド型の複合繊維が好ましい。
【0040】
芯鞘型複合繊維は、中心成分である芯成分と、芯成分を被覆する鞘成分とを備えている。芯成分には、高温溶融樹脂が用いられ、鞘成分には、低温溶融樹脂が用いられる。高温溶融樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステルである。低温溶融樹脂は、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィンである。繊維同士の接触部において、複合繊維同士が、低温溶融樹脂である鞘成分によって結合する。複合繊維は、繊維長が短い短繊維である。複合繊維の繊維長は、例えば2~15mmであり、好ましくは3~5mmである。複合繊維の繊度は、例えば0.2~60dtex、好ましくは、0.8~35dtexであり、より好ましくは1.0~10dtexである。エアレイド不織布は、複合繊維を30~100重量%含み、好ましくは、70~100重量%含んでいる。複合繊維には、必要により、例えば、防菌加工、抗菌加工などの加工が施されていてもよい。エアレイド不織布には、熱接着性繊維以外の他の繊維を含んでいてもよい。他の繊維としては、合成繊維であってもよいし、天然繊維であってもよい。
【0041】
複合繊維を図示しない捕集ネットに堆積させて、約140℃で加熱して繊維間を熱融着することにより、エアレイド不織布が形成される。エアレイド不織布が製造される際に、エアレイド不織布の片面には凹凸が形成される。捕集ネットには凹凸が形成されており、この捕集ネットの凹凸に対応してエアレイド不織布の片面に凹凸が形成される。
【0042】
調整シート5は、速達部と、速達部に比して液体化粧料が上面5aまで到達しにくい遅延部とを有している。速達部と遅延部の構成は種々であってよい。本実施形態では、調整シート5の上面5aには多数の凸部50が形成されている。調整シート5の下面5bは略平面である。凸部50は、上述のように捕集ネットの凹凸により形成される。調整シート5の上面5aに多数の凸部50が形成されていることにより、調整シート5は、多数の厚肉部51及び薄肉部52を有している。厚肉部51の厚さは薄肉部52の厚さよりも厚い。凸部50の位置が厚肉部51であり、隣り合う凸部50同士の間の位置が薄肉部52である。薄肉部52は厚さ一定であってもよいし厚さが変化していてもよい。厚肉部51の上面は凸部50の頂上部である。凸部50は、薄肉部52よりも上側に突出している。凸部50の突出高さは、薄肉部52の上面から凸部50の頂上部までの寸法である。薄肉部52が速達部であり、厚肉部51が遅延部である。
【0043】
凸部50は、種々の立体形状であってよい。凸部50は、例えば角柱状や円柱状等であってもよいが、好ましくは、上側に向けて徐々に細くなった先細り形状である。具体的には、凸部50は、角錐状や円錐状等の錐状、角錐台状や円錐台状等の錐台状、半球状、ドーム状等である。凸部50を上側から見た平面形状は、例えば、菱形等の多角形、円、楕円等である。凸部50の平面視における大きさは、例えば1~20mmである。凸部50の平面視における大きさは、円である場合は直径の寸法、楕円の場合は長径の寸法、多角形の場合は対角線のうち最も長いものの寸法である。凸部50の個数や配置は任意である。凸部50は、整列配置されていてもよいし、ランダムに配置されていてもよい。形状や突出高さが異なる複数種類の凸部50が配置されていてもよい。凸部50同士の間の間隔は均一であってもよいし不均一であってもよい。
【0044】
調整シート5の全厚は、例えば0.5~4mmであり、好ましくは、1~3mmである。尚、調整シート5の全厚とは、調整シート5の下面5bから調整シート5の上面5aまでの厚さであって、調整シート5の下面5bが略平面である場合には、調整シート5の下面5bから凸部50の頂上部までの寸法である。薄肉部52と厚肉部51の厚さの比は、例えば1:1.2~1:12.5であり、好ましくは、1:1.8~1:10である。薄肉部52と厚肉部51の表面積の比は、例えば1:1.5~1:10であり、好ましくは、1:1.6~1:5である。薄肉部52と厚肉部51の平面視における投影面積の比は、例えば、1:0.3~1:3.5であり、好ましくは、1:0.7~1:3である。厚肉部51における繊維密度と薄肉部52における繊維密度は、互いに略等しい。薄肉部52における繊維密度と厚肉部51における繊維密度の比は、例えば1:0.8~1:1.2であり、好ましくは1:0.9~1:1.1である。薄肉部52における目付と厚肉部51における目付の比は、例えば1:1.2~1:20であり、好ましくは1:1.5~1:10である。
【0045】
図3に調整シート5の凸部50の一例を示している。この凸部50は、平面視菱形の四角錐形状である。また、
図7~
図9に、調整シート5の凸部50の他の例を示している。
図9のように、凸部50は、平面視楕円のドーム形状である。
【0046】
パッド2に液体化粧料を含浸させる工程は、パッド2を内容器20に収容する前であってもよいし、パッド2を内容器20に収容した後であってもよい。但し、パッド2を内容器20に収容する前に、予めパッド2に液体化粧料を含浸させておくことが好ましい。また、内容器20にパッド2を収容した後に、そのパッド2の上に調整シート5を載せてもよいし、内容器20にパッド2を収容する前にパッド2の上に調整シート5を載せてもよい。
【0047】
以上のように、液体化粧料が含浸されたパッド2の上に、液体化粧料が含浸されていない調整シート5が載置されている。パッド2の上面に調整シート5が載置されているので、パッド2の上面の美感が優れている。また、凸部50によって種々の模様を形成することも可能である。
【0048】
調整シート5は、パッド2の上面に接着されたり溶着されたりしていない。そのため、ユーザがパフ6を調整シート5の上面5aに押し当てると、パッド2に含浸されている液体化粧料は、調整シート5にスムーズに移行していく。液体化粧料は、薄肉部52の上面に容易に到達する一方、厚肉部51の上面には到達しにくい。そのため、初期段階においては、厚肉部51からは液体化粧料がパフ6に付着しにくく、主として薄肉部52から液体化粧料がパフ6に付着する。そして、パフ6が調整シート5に繰り返し押し当てられる毎に、液体化粧料は、徐々に厚肉部51に浸透していき、やがて厚肉部51の上面まで到達する。このように、厚肉部51は、液体化粧料が調整シート5の上面5aに到達することを遅延させる。
【0049】
初期段階では、厚肉部51からは液体化粧料が取られず、主として薄肉部52から液体化粧料が取られることになる。即ち、厚肉部51によって液体化粧料の取れ量が制限されることになる。そのため、初期段階において液体化粧料が過度に取り出されるということが防止される。
【0050】
使用開始後においても、調整シート5にはパッド2から液体化粧料が供給され続ける。パッド2から調整シート5に供給され続ける液体化粧料は、薄肉部52の上面には到達しやすいが、厚肉部51の上面には到達しにくい。そのため、使用開始後においても、液体化粧料の取れ量は制限され、取れ量の均一化が可能となる。また、凸部50の突出高さや大きさ等によって、取れ量を容易にコントロールすることができる。
【0051】
尚、繊維体は、スポンジに比して、液体化粧料が残りにくい。そのため、パッド2が繊維体から構成されている場合には、液体化粧料が取られずにパッド2に残る量を減らすことができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例と比較例を挙げて、更に説明する。
【0053】
[実施例1]
<パッド2>
パッド2の材質は、繊維体である。繊維体の構成繊維は、複合繊維と合成繊維が混合されたものである。複合繊維は、芯鞘型である。芯成分(高温溶融樹脂)は、ポリエチレンテレフタレートである。鞘成分(低温溶融樹脂)は、熱可塑性ポリエチレンテレフタレートである。複合繊維の繊度は、6デニールである。合成繊維は、ポリエチレンテレフタレート繊維である。合成繊維の繊度は3デニールである。複合繊維と合成繊維との質量比は、70:30である。
図4~
図6のように、複合繊維と合成繊維が並行となるように混紡されて繊維シート40が形成される。この繊維シート40が多数枚積層され、積層方向に押圧されて加熱されて、積層体41が作製される。この積層体41が積層方向且つ繊維直交方向にカットされて所定厚さの板状の繊維体42が形成される。板状の繊維体42が裁断されて、直径約5cm、厚さ約1cmのパッド2が形成される。尚、パッド2の密度は、18.0kg/m
3である。パッド2の目付は、180g/m
2である。パッド2に粘度10000mP・sの液体化粧料が15g含浸されて、内容器4に収容される。
【0054】
<調整シート5>
調整シート5は、エアレイド不織布製である。エアレイド不織布は、ポリエチレンの鞘及びポリエチレンテレフタレートの芯(PE/PET)を有する繊度1.7dtexおよび繊維長3mmの芯鞘型の複合繊維がネットに堆積されて、約140℃で加熱されて繊維間が熱融着されたものである。エアレイド不織布の片面には、凹凸が形成されている。調整シート5の目付は、80g/m2である。調整シート5の全厚は、2.4mmである。厚肉部51の厚さは2.4mmであり、薄肉部52の厚さは0.4mmであり、凸部50の突出高さは、2mmである。凸部50は、平面視菱形の四角錐である。菱形の長い対角線の長さは15mm、短い対角線の長さは7mmである。液体化粧料が含浸されたパッド2の上面に、凹凸面が調整シート5の上面5aとなるようにして、調整シート5が載置される。
【0055】
[実施例2]
パッド2は、実施例1と同じである。調整シート5は、実施例1と同様のエアレイド不織布であるが、その目付は、40g/m2である。調整シート5の全厚は、1.1mmである。厚肉部51の厚さは、1.1mmであり、薄肉部52の厚さは、0.2mmであり、凸部50の突出高さは、0.9mmである。凸部50は、平面視楕円のドーム状である。楕円の長径は3mm、短径は2.5mmである。
【0056】
[実施例3]
パッド2は、実施例1と同じである。調整シート5は、実施例2と同様のエアレイド不織布であるが、その目付は50g/m2である。調整シート5の全厚は、1.2mmである。厚肉部51の厚さは、1.2mmであり、薄肉部52の厚さは、0.3mmであり、凸部50の突出高さは、0.9mmである。凸部50の形状は実施例2と同じである。
【0057】
[実施例4~6]
実施例1~3のパッド2が、目付が240g/m2のものに変更されたものであり、その他の条件は実施例1~3と同じである。
【0058】
[実施例7]
パッド2は、ポリウレタン発泡体製(倉敷紡績製、商品名:301WH)である。調整シート5は、実施例2と同じである。
【0059】
[比較例1]
パッド2は、実施例1と同じである。但し、パッド2の上に調整シート5は載置されず、パッド2のみが使用されている。
【0060】
[比較例2]
パッド2は、実施例7と同じポリウレタン発泡体製である。但し、実施例7のものとは異なり、パッド2の上面は、その全体に亘って熱圧縮されている。比較例1と同様に、調整シート5は載せられずに、パッド2のみが使用されている。
【0061】
[試験及び評価]
液体化粧料の取り出し試験を行った。液体化粧料の取り出し試験は、液体化粧料の取れ量を調べるものである。取り出し試験は、内容器4の開口部13を介して調整シート5の上面5a又はパッド2の上面をパフ6で叩いて、液体化粧料をパフ6の塗布面に付着させる。そして、別に準備した紙にパフ6の塗布面を押し付けて、パフ6の塗布面から液体化粧料を紙に移行させる。液体化粧料をパフ6に付着させ、パフ6から紙に移行させるまでの操作を一回の操作とし、この操作を繰り返し行う。この操作を30回行う毎に、紙に付着した液体化粧料の付着量を調べる。即ち、1~30回、31~60回、61~90回、及び、91~120回まで、30回毎の付着量を測定する。付着量は、付着前の紙の重さと、付着後の紙の重さを比較することにより、測定することができる。この付着量を取れ量とする。各30回毎の取れ量を比較して取れ量の均一性を評価する。特に、初期性能を詳細に評価するために、1~30回については更に1~10回、11~20回、21~30回と三段階に分けて評価した。表1に実施例、比較例の評価結果を示している。
【0062】
【0063】
表1のように、実施例1~実施例7において、各30回毎の取れ量が均一化されている。更に、初期の1~30回についても、取れ量が安定している。一方、調整シート5が載せられていない比較例1,2では、何れも、初期段階の取れ量が非常に多く、その後、急激に取れ量が減少している。中でも、最初期である1~10回における取れ量が多い。
図10に、実施例1と比較例1について、30回毎の取れ量をグラフで示している。このように、実施例1においては、取れ量が安定していて均一化されている。それに対して、比較例1においては、初期の取れ量が多く、その後、急激に取れ量が減少している。
【0064】
尚、容器が外容器3と内容器4とを備えた二重構造のものについて説明したが、外容器3を備えていない容器であってもよい。また、容器以外の外装体であってもよく、外装体は、包装袋であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 化粧品
2 パッド
3 外容器
4 内容器
5 調整シート
5a 上面
5b 下面
6 パフ(塗布具)
10 内容器本体
11 内蓋
12 抜け止めリング
13 開口部
20 外容器本体
21 外蓋
22 開口部
23 鏡
40 繊維シート
41 積層体
41a 接触部
42 板状の繊維体
50 凸部
51 厚肉部(遅延部)
52 薄肉部(速達部)