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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】判定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20230724BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
G01N21/88 J
G01N21/64 Z
G01N21/88 K
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022068891
(22)【出願日】2022-04-19
(65)【公開番号】P2022165940
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2021071354
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 太一
(72)【発明者】
【氏名】境 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】日吉 健二
(72)【発明者】
【氏名】松本 朋子
(72)【発明者】
【氏名】槐島 芳▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】西本 素三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 喜一郎
(72)【発明者】
【氏名】仲野 政賢
(72)【発明者】
【氏名】並川 敬
(72)【発明者】
【氏名】前田 祥太郎
(72)【発明者】
【氏名】川合 蕉吾
(72)【発明者】
【氏名】柳 友理
【審査官】柳澤 朱香
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-214141(JP,A)
【文献】特開2018-059775(JP,A)
【文献】特開2013-231668(JP,A)
【文献】特開2016-205839(JP,A)
【文献】特開2018-096712(JP,A)
【文献】特開2017-090156(JP,A)
【文献】特開2015-031517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/958
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品又は植物を含む対象物(A)に光を照射する照射部(10)と、
光を照射されることで前記対象物(A)の表面から発せられる蛍光のうち所定の波長を有する所定蛍光を抽出する抽出部(20)と、
前記所定蛍光を示す蛍光画像を撮像する撮像部(30)と、
前記蛍光画像の蛍光強度を示す指標に基づいて前記対象物(A)のクロロフィル含量の予測値を出力し、前記予測値に基づいて前記対象物(A)の状態を判定する判定部(60)と
を備え
前記蛍光画像の蛍光強度を示す指標は、蛍光画像を構成する複数の画素の画素値の指標値を示し、
前記指標値は、平均値、中央値、最頻値、最大値、又は最小値を示し、
前記判定部(60)は、前記指標と前記クロロフィル含量との相関を示す近似式に基づいて前記クロロフィル含量の予測値を出力する判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の判定装置において、
前記判定部(60)は、複数の前記蛍光画像に基づいて前記対象物(A)の状態を判定し、
前記蛍光画像毎に、前記蛍光画像に示される前記所定蛍光の波長が異なる判定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の判定装置において、
前記対象物(A)と前記撮像部(30)の相対位置を変化させる走査機構(70)を備える判定装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の判定装置において、
前記所定の波長は、550nm以上、750nm以下である判定装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の判定装置において、
前記照射部(10)は、紫外線を照射する判定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の判定装置において、
前記紫外線の波長は、200nm以上、400nm以下である判定装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の判定装置において、
前記撮像部(30)は、蛍光画像を経時的に撮像し、
前記判定部(60)は、前記経時的に撮像された前記蛍光画像の前記指標に基づいて、前記対象物(A)に品質低下の予兆があるか否かを判定する判定装置。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の判定装置において、
前記抽出部(20)は、互いに異なる波長を有する複数の所定蛍光を抽出し、
前記撮像部(30)は、前記所定蛍光毎に蛍光画像を撮像する撮像処理を経時的に行い、
前記判定部(60)は、前記経時的に行われた前記撮像処理により取得された前記蛍光画像の前記指標に基づいて、前記対象物(A)に品質低下の予兆があるか否かを判定する判定装置。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載の判定装置において、
前記抽出部(20)は、バンドパスフィルタを含む判定装置。
【請求項10】
請求項9に記載の判定装置において、
複数の前記バンドパスフィルタと、
前記複数のバンドパスフィルタのうち前記所定蛍光を抽出するために用いるバンドパスフィルタを切り替える切替部(80)と
を備え、
前記バンドパスフィルタ毎に、異なる波長を有する前記所定蛍光を抽出する判定装置。
【請求項11】
請求項1又は請求項2に記載の判定装置において、
複数の前記抽出部(20)と、
複数の前記撮像部(30)と
を備え、
前記抽出部(20)毎に、異なる波長を有する前記所定蛍光を抽出し、
前記複数の抽出部(20)は、それぞれ、前記複数の撮像部(30)と対応する判定装置。
【請求項12】
請求項1又は請求項2に記載の判定装置において、
前記照射部(10)は、励起波長が異なる複数の光を照射し、
前記判定部(60)は、前記複数の光とそれぞれ対応する複数の前記指標に基づいて前記対象物(A)の状態を判定する判定装置。
【請求項13】
請求項12に記載の判定装置において、
前記判定部(60)は、蛍光指紋群に基づいて前記対象物(A)に寄生する生菌又は微生物の種類を特定し、
前記蛍光指紋群は、1つの前記抽出部(20)が用いられる場合は前記蛍光画像の画素毎に得られる蛍光指紋を示し、複数の前記抽出部(20)が用いられる場合は前記蛍光画像の画素毎に得られ、さらに、前記抽出部(20)毎に得られる前記蛍光指紋を示し、
前記蛍光指紋は、前記対象物(A)に対して照射する紫外線の前記励起波長を変化させることで得られる励起波長、蛍光波長、及び蛍光強度からなる3次元の等高線形状のデータである判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の鮮度・熟成判定装置は、収容部と、光源と、光センサと、制御部と、を備える。収容部は生鮮食品を収容する。光源は、収容部の中に配置された生鮮食品に可視光を照射する。光センサは、可視光が照射された生鮮食品から反射された光の所定の波長域の光強度を検出する。制御部は、光センサが検出した所定の波長域の光強度に基づいて、生鮮食品の鮮度または熟成に関する判定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-096712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の鮮度・熟成判定装置では、生鮮食品のうち可視光が照射されたポイント部分の状態しか判定されなかった。これにより、対象物である生鮮食品の状態を全体的に判定する場合、判定精度が低下する可能性があった。
【0005】
本開示の目的は、対象物の状態の判定精度が低下することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、判定装置を対象とする。判定装置は、食品又は植物を含む対象物(A)に光を照射する照射部(10)と、光を照射されることで前記対象物(A)の表面から発せられる蛍光のうち所定の波長を有する所定蛍光を抽出する抽出部(20)と、前記所定蛍光を示す蛍光画像を撮像する撮像部(30)と、前記蛍光画像の蛍光強度を示す指標に基づいて、前記対象物(A)の状態を判定する判定部(60)とを備える。
【0007】
第1の態様では、対象物(A)の状態の判定精度が低下することを抑制できる。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記判定部(60)は、複数の前記蛍光画像に基づいて前記対象物(A)の状態を判定し、前記蛍光画像毎に、前記蛍光画像に示される前記所定蛍光の波長が異なる。
【0009】
第2の態様では、判定部(60)が対象物(A)の状態を判定する際に複数の蛍光画像を用いることにより、判定精度をより向上させることができる。
【0010】
本開示の第3の態様は、第1の態様又は第2の態様において、前記対象物(A)と前記撮像部(30)の相対位置を変化させる走査機構(70)を備える。
【0011】
第3の態様では、対象物(A)全体の蛍光画像を取得することができる。
【0012】
本開示の第4の態様は、第1の態様から第3の態様のうちのいずれか1つにおいて、前記所定の波長は、550nm以上、750nm以下である。
【0013】
第4の態様では、抽出部(20)により、550nm以上、750nm以下の波長を有する所定蛍光を抽出することができる。
【0014】
本開示の第5の態様は、第1の態様から第4の態様のうちのいずれか1つにおいて、前記照射部(10)は、紫外線を照射する。
【0015】
第5の態様では、照射部(10)から紫外線を照射して、対象物(A)から蛍光を発生させることができる。
【0016】
本開示の第6の態様は、第5の態様において、前記紫外線の波長は、200nm以上、400nm以下である。
【0017】
第6の態様では、照射部(10)から200nm以上、400nm以下の紫外線を照射できる。
【0018】
本開示の第7の態様は、第1の態様から第6の態様のうちのいずれか1つにおいて、前記撮像部(30)は、蛍光画像を経時的に撮像し、前記判定部(60)は、前記経時的に撮像された前記蛍光画像の前記指標に基づいて、前記対象物(A)に品質低下の予兆があるか否かを判定する。
【0019】
第7の態様では、経時的に撮像された蛍光画像の蛍光強度を示す指標を確認することで、対象物(A)の状態の経時変化を確認できる。
【0020】
本開示の第8の態様は、第1の態様から第6の態様のうちのいずれか1つにおいて、前記抽出部(20)は、互いに異なる波長を有する複数の所定蛍光を抽出し、前記撮像部(30)は、前記所定蛍光毎に蛍光画像を撮像する撮像処理を経時的に行い、前記判定部(60)は、前記経時的に行われた前記撮像処理により取得された前記蛍光画像の前記指標に基づいて、前記対象物(A)に品質低下の予兆があるか否かを判定する。
【0021】
第8の態様では、経時的に行われた撮像処理により取得された蛍光画像の蛍光強度を示す指標を確認することで、対象物(A)の状態の経時変化を確認できる。
【0022】
本開示の第9の態様は、第1の態様から第8の態様のうちのいずれか1つにおいて、前記抽出部(20)は、バンドパスフィルタを含む。
【0023】
第9の態様では、バンドパスフィルタにより所定蛍光を抽出を抽出できる。
【0024】
本開示の第10の態様は、第9の態様において、複数の前記バンドパスフィルタと、前記複数のバンドパスフィルタのうち前記所定蛍光を抽出するために用いるバンドパスフィルタを切り替える切替部(80)とを備え、前記バンドパスフィルタ毎に、異なる波長を有する前記所定蛍光を抽出する。
【0025】
第10の態様では、切替部により複数のバンドパスフィルタを切り替えることで、所定蛍光の波長が異なる複数の蛍光画像を容易に取得できる。
【0026】
本開示の第11の態様は、第1の態様から第10の態様のうちのいずれか1つにおいて、複数の前記抽出部(20)と、複数の前記撮像部(30)とを備え、前記抽出部(20)毎に、異なる波長を有する前記所定蛍光を抽出し、前記複数の抽出部(20)は、それぞれ、前記複数の撮像部(30)と対応する。
【0027】
第11の態様では、複数の前記抽出部(20)と複数の撮像部(30)とを用いて波長が異なる複数の蛍光画像を一挙に取得できるので、対象物(A)の状態を判定する処理を効率的に行うことができる。
【0028】
本開示の第12の態様は、第1の態様から第11の態様のうちのいずれか1つにおいて、前記照射部(10)は、励起波長が異なる複数の光を照射し、前記判定部(60)は、前記複数の光とそれぞれ対応する複数の前記指標に基づいて前記対象物(A)の状態を判定する。
【0029】
第12の態様では、複数の指標で構成される蛍光指紋を用いて対象物(A)の状態を判定できる。
【0030】
本開示の第13の態様は、第12の態様において、前記判定部(60)は、前記複数の指標に基づいて前記対象物(A)に寄生する生菌又は微生物の種類を特定する。
【0031】
第13の態様では、複数の指標で構成される蛍光指紋を用いて対象物(A)の劣化に関わる生菌又は微生物の種類を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る判定装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、420nm~750nmの波長を有する蛍光の蛍光画像を示す図である。
図3図3は、切替部を示す図である。
図4図4は、第1実施形態の判定装置(1)の変形例を示す図である。
図5図5は、蛍光指紋を示す図である。
図6図6は、複数の観測日の各々について、対象物の画像と、対象物の蛍光カラー画像と、対象物の蛍光画像とを対応付けたデータの一例である。
図7図7は、複数の観測日の各々について、対象物の画像と、対象物の蛍光カラー画像と、対象物の蛍光画像とを対応付けたデータの一例である。
図8図8は、複数の観測日の各々について、対象物の画像と、対象物の蛍光カラー画像と、対象物の蛍光画像とを対応付けたデータの一例である。
図9図9は、複数の観測日における蛍光強度を示す指標を示すグラフの一例である。
図10図10は、複数の観測日における蛍光強度を示す指標を示すグラフの一例である。
図11図11は、複数の観測日における蛍光強度を示す指標を示すグラフの一例である。
図12図12は、複数の観測日における蛍光強度を示す指標を示すグラフの一例である。
図13図13は、複数の観測日における蛍光強度を示す指標を示すグラフの一例である。
図14図14は、複数の観測日における蛍光強度を示す指標を示すグラフの一例である。
図15図15は、判定装置の判定に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付し、詳細な説明及びそれに付随する効果等の説明は繰り返さない。
【0034】
―第1実施形態―
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る判定装置(1)について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る判定装置(1)の構成を示すブロック図である。
【0035】
―全体構成―
図1に示すように、判定装置(1)は、照射部(10)と、抽出部(20)と、撮像部(30)と、案内部(40)と、記憶部(50)と、判定部(60)とを備える。
【0036】
照射部(10)は、対象物(A)に対して光を照射する。第1実施形態の対象物(A)は、光を照射されることで蛍光を発する物質である。対象物(A)は、例えば、食品又は植物である。
【0037】
第1実施形態では、照射部(10)は、対象物(A)に対して光を照射する。第1実施形態では、照射部(10)は、紫外線を照射する。照射部(10)が照射する紫外線の波長は、例えば、200nm以上、400nm以下の範囲である。照射部(10)は、例えば、紫外線を照射する光源を含む。光源は、例えば、LED及びレーザダイオードのような光源素子、エキシマランプ、紫外線ランプ又は水銀ランプを含む。照射部(10)から対象物(A)に紫外線が照射されることで、対象物(A)の表面から蛍光が発せられる。
【0038】
抽出部(20)は、対象物(A)の表面から発せられる蛍光のうち所定の波長を有する蛍光を抽出する。所定の波長は、例えば、550nm以上、750nm以下の波長である。抽出部(20)は、例えば、バンドパスフィルタを含む。抽出部(20)は、複数設けられる。第1実施形態では、抽出部(20)は、第1抽出部(21)と、第2抽出部(22)と、第3抽出部(23)とを含む。第1抽出部(21)は対象物(A)の表面から発せられる蛍光のうち550nmの波長を有する蛍光を抽出し、第2抽出部(22)は750nmの波長を有する蛍光を抽出し、第3抽出部(23)は400nmの波長を有する蛍光を抽出する。
【0039】
複数の抽出部(20)のうち採用される抽出部(20)が対象物(A)と対向配置される。図1においては、第1抽出部(21)が採用されており、対象物(A)の表面から発せられる蛍光のうち550nmの波長を有する蛍光が第1抽出部(21)により抽出される。
【0040】
以下では、抽出部(20)により抽出された蛍光を所定蛍光と記載することがある。
【0041】
撮像部(30)は、所定蛍光を表す蛍光画像を撮像する。撮像部(30)は、例えばカメラを含む。
【0042】
案内部(40)は、対象物(A)と抽出部(20)との間に配置される。案内部(40)は、対象物(A)側と抽出部(20)側との両端が開口する筒状の部材である。案内部(40)は、対象物(A)から発せられた蛍光が抽出部(20)に向かうように案内する。案内部(40)により、抽出部(20)に向かう蛍光の指向性が効果的に確保される。
【0043】
記憶部(50)は、フラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)のような主記憶装置(例えば、半導体メモリ)を含み、補助記憶装置(例えば、ハ-ドディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)、SD(Secure Digital)メモリカード、又は、USB(Universal Seral Bus)フラッシメモリ)をさらに含んでもよい。記憶部(50)は、判定部(60)によって実行される種々のコンピュータープログラムを記憶する。
【0044】
判定部(60)は、CPU及びMPUのようなプロセッサーを含む。判定部(60)は、記憶部(50)に記憶されたコンピュータープログラムを実行することにより、判定装置(1)の各要素を制御する。
【0045】
判定部(60)は、撮像部(30)により撮像された蛍光画像の蛍光強度を示す指標に基づいて、対象物(A)の状態を判定する。
【0046】
-対象物の状態を判定する原理-
図2は、420nm~750nmの波長を有する蛍光の蛍光画像を示す図である。図2に示すように、同一の対象物(A)であっても、抽出部(20)の種類が異なる場合は(例えば、420nmの波長を抽出する抽出部(20)を用いた場合と、750nmの波長を抽出する抽出部(20)を用いた場合とでは)、これに応じて蛍光画像も異なってくる。また、抽出部(20)の種類が同じで場合でも(例えば、420nmの波長を抽出する抽出部(20)のみを用いた場合でも)、対象物(A)の状態に応じて蛍光画像が異なってくる。
【0047】
第1実施形態では、上記した対象物(A)の状態と、蛍光画像と、抽出部(20)の種類との相関を用いて対象物(A)の状態を判定する。
【0048】
-対象物の状態を判定する手順-
図1に示すように、対象物(A)から発せられた蛍光のうち、第1抽出部(21)を用いて550nmの波長を有する蛍光が抽出される。撮像部(30)により当該550nmの波長を有する蛍光を示す蛍光画像(550nmの蛍光画像)が撮像される。判定部(60)は、550nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標λ1を出力する。蛍光強度を示す指標は、例えば、蛍光画像を構成する複数の画素の画素値の指標値を示す。指標値は、平均値、中央値、最頻値、最大値、又は最小値を示す。なお、蛍光強度を示す指標は、前記画素値の指標値を、所定の変換式、テーブル等を用いてルーメン、カンデラ、ルクス等の光に関する値に変換したものであってもよい。また、蛍光強度を示す指標は、絶対値であってもよく、又は、相対値であってもよい。
【0049】
対象物(A)から発せられた蛍光のうち、第2抽出部(22)を用いて750nmの波長を有する蛍光が抽出される。撮像部(30)により当該750nmの波長を有する蛍光を示す蛍光画像(750nmの蛍光画像)が撮像される。判定部(60)は、750nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標λ2を出力する。
【0050】
判定部(60)は、指標λ1と、指標λ2と、下記数1とを用いて、対象物(A)に含まれるクロロフィル含量の予測値Xを出力する。数1は記憶部(50)に記憶される。
【0051】
[数1]
X=13.35+10.74λ2-82.62λ1
【0052】
数1は、例えば、550nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標λ1と、750nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標λ2と、クロロフィル含量の実測値との相関を多変量解析等により求め、当該相関を近似式で表したものである。
【0053】
なお、数1は、対象物(A)の種類に応じて決定される。例えば、400nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標λ3と、550nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標λ1と、クロロフィル含量の実測値との間に強い相関がある場合、数1は、これらの相関の近似式で表される。この場合、数1を用いて対象物(A)のクロロフィル含量が出力される際に、400nmの波長用の第3抽出部(23)と、550nmの波長用の第1抽出部(21)とが用いられる。
【0054】
判定部(60)は、数1を用いて出力した対象物(A)に含まれるクロロフィル含量の予測値Xと、所定の閾値とを比較する。予測値Xが所定の閾値以上の場合、判定部(60)は、対象物(A)の鮮度が良い(良品)と判定する。予測値Xが所定の閾値よりも小さい場合、判定部(60)は、対象物(A)の鮮度が悪い(不良品)と判定する。
【0055】
対象物(A)が良品であるか又は不良品であるかの判定はAI(Artificial intelligence)を利用したものであってもよい。この場合、対象物(A)が良品である場合の蛍光画像の特徴と、対象物(A)が不良品である場合の蛍光画像の特徴とをニューラルネットワークなどの公知の機械学習器に学習させ、新たに入力された対象物(A)の蛍光画像が良品であるか、又は不良品であるかを当該機械学習器によって判定する。
【0056】
―第1実施形態の効果―
以上のように、判定部(60)は、蛍光画像の蛍光強度を示す指標に基づいて、対象物(A)の状態を判定する。このように蛍光画像を用いることで、対象物(A)において照射部(10)からの光により蛍光を発する面全体を画像でとらえて判定対象にできるので、従来のスポット判定に比べて対象物(A)の表面の広い領域を判定対象とすることができ、判定精度を向上させることができる。
【0057】
―第2実施形態―
第1実施形態では、上記数1の変数は、指標λ1及び指標λ2の2つであるが、1つであってもよい。例えば、上記数1の変数は、指標λ1のみで構成されていてもよい。この場合、抽出部(20)は、第1抽出部(21)を含んでいればよい。すなわち、抽出部(20)は、1つでもよい。また、この場合、上記数1は、550nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標λ1と、クロロフィル含量の実測値との相関を多変量解析等により求め、当該相関を近似式で表したものとなる。
【0058】
―第3実施形態―
第1実施形態では、上記数1の変数は、指標λ1及び指標λ2の2つであるが、3つ以上であってもよい。例えば、上記数1の変数は、指標λ1と、指標λ2と、指標λXとを含んでいてもよい。指標λXは、Xnmの蛍光画像(Xnmの波長を有する蛍光を示す蛍光画像)の蛍光強度を示す。この場合、抽出部(20)は、第1抽出部(21)と、第2抽出部(22)と、第X抽出部とを含む。第X抽出部は、Xnmの波長を有する蛍光を抽出する。また、この場合、上記数1は、550nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標λ1と、750nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標λ2と、Xnmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標λXと、クロロフィル含量の実測値との相関を多変量解析等により求め、当該相関を近似式で表したものとなる。
【0059】
―第4実施形態―
第1実施形態~第3実施形態では、判定部(60)は、対象物(A)の状態として、対象物(A)の鮮度を判定する。しかし、本発明はこれに限定されない。判定部(60)は、例えば、対象物(A)の蛍光画像の画素値(色の濃淡)に基づいて、バナナの黒い斑点部分のような対象物(A)の熟成した部分、対象物(A)の傷んだ部分(黒く変色した部分)等を判定してもよい。
【0060】
―第5実施形態―
第1実施形態~第4実施形態では、判定部(60)は、蛍光画像を用いて対象物(A)の状態を判定する際、蛍光画像の全部を用いて、対象物(A)における撮像範囲の全域の状態を判定する。しかし、本発明はこれに限定されない。判定部(60)は、蛍光画像を用いて対象物(A)の状態を判定する際、蛍光画像の一部を用いて、対象物(A)における撮像範囲の一部の領域(例えば、対象物(A)のうちの特に痛みやすい領域等)の状態を判定してもよい。
【0061】
―第6実施形態―
図1に示すように、判定装置(1)は、走査機構(70)を備えていてもよい。走査機構(70)は、対象物(A)と、抽出部(20)及び撮像部(30)との相対位置を変化させる。走査機構(70)は、例えば、対象物(A)を搬送するコンベアを含む。
【0062】
撮像部(30)の撮像範囲から対象物(A)がはみ出ており、1回で対象物(A)全体を撮像できないような場合、コンベアにより対象物(A)を搬送しながら撮像部(30)により対象物(A)を連続的に撮像することで、対象物(A)全体を容易に撮像できる。なお、走査機構(70)は、抽出部(20)及び撮像部(30)を移動させてもよい。この場合、走査機構(70)は、例えば、抽出部(20)及び撮像部(30)が取り付けられたリンク機構、スライド機構、ロボットアーム等を含む。
【0063】
―第6実施形態―
図3に示すように、判定装置(1)は、切替部(80)を備えていてもよい。切替部(80)は、複数の抽出部(20)のうち撮像部(30)により蛍光画像を撮像する際に用いる抽出部(20)を切り替える。切替部(80)は、例えば、支持体(81)を含む。支持体(81)は、撮像部(30)と案内部(40)との間に配置される(図1参照)。支持体(81)は、Z軸を中心に回転可能に支持される。支持体(81)には、複数の抽出部(20)がZ軸周りに並ぶように設置される。複数の抽出部(20)は支持体(81)と共に回転する。複数の抽出部(20)のうち撮像部(30)の下方に配置される抽出部(20)を用いて、撮像部(30)が蛍光画像を撮像する。図3に示す切替部(80)においては、第1抽出部(21)を用いて撮像部(30)が蛍光画像を撮像する。支持体(81)の回転角度を変更することで、複数の抽出部(20)のうち撮像部(30)による蛍光画像の撮像に用いられる抽出部(20)が切り替えられる。その結果、抽出部(20)を容易に切り替えることができる。
【0064】
―第7実施形態―
判定装置(1)は、複数の抽出部(20)と、複数の撮像部(30)とを備えていてもよい。例えば、複数の抽出部(20)が第1抽出部(21)~第3抽出部(23)で構成される場合(図1参照)、3つの撮像部(30)(第1撮像部~第3撮像部)を設ける。そして、第1抽出部(21)~第3抽出部(23)が、それぞれ、第1撮像部~第3撮像部と対応するように構成する。第1抽出部(21)により抽出された蛍光は第1撮像部が撮像し、第2抽出部により抽出された蛍光は第2撮像部が撮像し、第3抽出部により抽出された蛍光は第3撮像部が撮像するように構成する。その結果、波長が異なる複数の蛍光画像を一度に撮像することがでいるので、判定部(60)により対象物(A)の状態を判定する処理を効率的に行うことができる。
【0065】
―第8実施形態―
図4を参照して、判定装置(1)の変形例である判定装置(2)について説明する。以下では、主に判定装置(1)と異なる点について説明する。
【0066】
図4に示すように、判定装置(2)は、複数の照射部(10)を備える。複数の照射部(10)は、互いに異なる励起波長を有する紫外線を照射する。第8実施形態では、複数の照射部(10)は、325nmの紫外線を照射する第1照射部(11)と、365nmの紫外線を照射する第2照射部(12)と、375nmの紫外線を照射する第3照射部(13)と、385nmの紫外線を照射する第4照射部(14)とを含む。
【0067】
判定装置(2)に備えられる抽出部(20)は、複数でもよく、又は単数でもよい。
【0068】
図5に示すように、複数の照射部(10)(第1照射部(11)~第4照射部(14))を用いて対象物(A)に対して照射する紫外線の励起波長を変化させると、励起波長、蛍光波長、及び蛍光強度からなる3次元の等高線形状のデータが得られる。以下では、当該3次元の等高線形状のデータを蛍光指紋と記載することがある。蛍光指紋は、蛍光画像の画素毎に得られる。図5は、325nmの紫外線を照射する第1照射部(11)と、365nmの紫外線を照射する第2照射部(12)と、375nmの紫外線を照射する第3照射部(13)と、385nmの紫外線を照射する第4照射部(14)とをそれぞれ用いて撮像部(30)により対象物(A)を撮像することで蛍光画像を取得し、取得した蛍光画像のうちの1つの画素の蛍光指紋を示す。図4に示すように複数の抽出部(20)が用いられ、抽出部(20)毎に蛍光画像が撮像される場合、蛍光指紋(図5参照)は、蛍光画像の画素毎に得られ、さらに、抽出部(20)毎に得られる。このように複数の抽出部(20)が用いられる場合は、蛍光画像の画素毎に得られ、さらに、抽出部(20)毎に得られた蛍光指紋を総称して蛍光指紋群と記載することがある。
【0069】
なお、使用する抽出部(20)の個数は、1つでもよい。この場合、1つの抽出部(20)しか用いられないので、蛍光指紋は蛍光画像の画素毎に得られる。このように1つの抽出部(20)しか用いられない場合は、蛍光画像の画素毎に得られた蛍光指紋を総称して蛍光指紋群と記載することがある。
【0070】
判定部(60)が蛍光指紋群を用いて対象物(A)の状態を判定する構成について説明する。
【0071】
図4に示す記憶部(50)には、互いに異なる複数の蛍光指紋群と、互いに異なる複数の対象物(A)の状態とをそれぞれ対応付けた第1対応情報が記憶されている。判定対象の対処物(A)に対して波長が異なる複数の紫外線が照射され、判定部(60)が判定対象の対処物(A)の蛍光指紋群を示す情報を取得すると、判定部(60)は、第1対応情報において、取得した蛍光指紋群と対応付けられている対象物(A)の状態を選択する。この場合、判定部(60)は、多変量解析、AI解析、データマイニング等を用いて対象物(A)の状態を選択してもよい。判定部(60)は、第1対応情報から選択した対象物(A)の状態を、判定対象の対処物(A)の状態として出力する。その結果、判定部(60)は、対象物(A)の蛍光指紋を用いて対象物(A)の状態を判定できる。
【0072】
―第9実施形態―
第9実施形態では、判定装置(2)を用いて対処物(A)に寄生する生菌又は微生物の種類を特定する。この場合、図4に示す記憶部(50)には、互いに異なる複数の蛍光指紋群と、互いに異なる複数の種類の生菌又は微生物とをそれぞれ対応付けた第2対応情報が記憶されている。判定対象の対処物(A)に対して波長が異なる複数の紫外線が照射され、判定部(60)が判定対象の対処物(A)の蛍光指紋群を示す情報を取得すると、判定部(60)は、第2対応情報において、取得した蛍光指紋群と対応付けられている生菌又は微生物を選択する。この場合、判定部(60)は、多変量解析、AI解析、データマイニング等を用いて生菌又は微生物を選択してもよい。判定部(60)は、第2対応情報から選択した生菌又は微生物を、判定対象の対処物(A)に寄生している生菌又は微生物として出力する。その結果、判定部(60)は、対象物(A)の蛍光指紋を用いて対象物(A)の劣化に関わる生菌又は微生物の種類を特定することができる。
【0073】
―第10実施形態―
第10実施形態では、判定装置(1,2)の判定部(60)は、対象物(A)の状態の一例である、対象物(A)に品質低下の予兆があるか否かを判定する。本願発明者は、対象物(A)を所定の期間に亘って観測しつつ、観測日毎に対象物(A)の蛍光画像を取得する作業を行うことで図6図14に示すデータを取得した。
【0074】
-対象物の品質低下の予兆を判定する原理-
図6図8は、複数の観測日の各々について、対象物(A)の画像と、対象物(A)の蛍光カラー画像と、対象物(A)の蛍光画像とを対応付けたデータである。本願発明者は、対象物(A)の経時変化と、蛍光画像との相関を調べるために、対象物(A)を観測し、観測日毎に対象物(A)を撮像するとともに、図1および図4に示すような判定装置(1,2)を用いて蛍光画像を取得するための処理を行うことで、図6図9に示すデータを取得した。第10実施形態では、図6図9に示す対象物(A)は、ヘベスのような柑橘類の果実である。
【0075】
図6図8において、1日目、2日目等の日数は観測日を示す。図6図8において、対象物(A)の画像は、対象物(A)を直接撮像することによって得られる画像である。図6図8に示す対象物(A)の画像は、実際は、対象物(A)の外面の色を有するカラー画像である。図6図8において、対象物(A)の蛍光カラー画像は、対象物(A)の表面から発せられる蛍光について、所定蛍光を抽出することなく撮像した画像である。図6図9に示す対象物(A)の蛍光カラー画像は、実際は、対象物(A)の表面から発せられる蛍光の色を有するカラー画像である。対象物(A)の蛍光画像は、対象物(A)の表面から発せられる蛍光から所定蛍光を抽出する際に、互いに異なる波長(450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、および750nm)を有する複数の所定蛍光を抽出し、抽出した複数の所定蛍光の各々を撮像することによって得られた画像である。対象物(A)の蛍光画像は、例えば、上記判定装置(1,2)を用いて得られる。
【0076】
図6に示すデータは、正常な対象物(A)を観測することによって得られたものである。図7に示すデータは、時間の経過に伴ってカビ等による腐敗、病変等により障害が発生していく対象物(A)を観測することによって得られたものである。図6および図7に示すデータが取得される際、対象物(A)は、例えば、6℃程度の環境におかれる。図8に示すデータは、対象物(A)を冷蔵し(例えば、-1℃程度)、時間の経過に伴って冷蔵による障害が発生していく対象物(A)を観測することによって得られたものである。障害は、対象物(A)の外観が変色することを示す。
【0077】
以下では、図6に示すデータを取得するために用いた正常な対象物(A)を、正常果実と記載することがある。図7に示すデータを取得するために用いた腐敗、病変等により障害が発生していく対象物(A)を、第1障害果実と記載することがある。図8に示すデータを取得するために用いた冷蔵による障害が発生していく対象物(A)を、第2障害果実と記載することがある。
【0078】
図9図14において、ハッチングが施された丸印は正常果実に関するデータを示し、白抜きの丸印は第1障害果実に関するデータを示し、黒で塗りつぶされた丸印は第2障害物に関するデータを示す。図9図14に示すデータにおいて、縦軸は蛍光強度を示す指標を示し、横軸は観測日を示す。蛍光強度を示す指標は、上記のように蛍光画像を構成する複数の画素の画素値に基づいて出力される値である。蛍光強度を示す指標が増加するほど対象物(A)の障害の程度が大きくなる。
【0079】
図9に示すデータは、図6図8に示すデータのうち、450nmの蛍光画像に関するデータに基づいて作成される。図9は、観測日と、正常果実、第1障害果実および第2障害果実の各々についての450nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標とを対応付けたデータである。例えば、図9に示すデータにおいて、8日目の第1障害果実(白抜きの丸印)と対応する蛍光強度を示す指標は、図7に示すデータにおける8日目の蛍光画像を構成する複数の画素の画素値に基づいて出力される。
【0080】
図10は、図6図8に示すデータのうち、500nmの蛍光画像に関するデータに基づいて作成される。図10は、観測日と、正常果実、第1障害果実および第2障害果実の各々についての500nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標とを対応付けたデータである。
【0081】
図11は、図6図8に示すデータのうち、550nmの蛍光画像に関するデータに基づいて作成される。図11は、観測日と、正常果実、第1障害果実および第2障害果実の各々についての550nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標とを対応付けたデータである。
【0082】
図12は、図6図8に示すデータのうち、600nmの蛍光画像に関するデータに基づいて作成される。図12は、観測日と、正常果実、第1障害果実および第2障害果実の各々についての600nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標とを対応付けたデータである。
【0083】
図13は、図6図8に示すデータのうち、650nmの蛍光画像に関するデータに基づいて作成される。図13は、観測日と、正常果実、第1障害果実および第2障害果実の各々についての650nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標とを対応付けたデータである。
【0084】
図14は、図6図8に示すデータのうち、700nmの蛍光画像に関するデータに基づいて作成される。図14は、観測日と、正常果実、第1障害果実および第2障害果実の各々についての700nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標とを対応付けたデータである。
【0085】
図6に示すように、正常果実については、観測日数が増えても、障害が発生しないことで正常果実の外観がほとんど変色せず、これにより、蛍光画像がほとんど変化しないことを本願発明者は確認した。図9図14に示すように、正常果実については、観測日数が増えても、蛍光画像がほとんど変化しないことで、蛍光画像の蛍光強度を示す指標もほとんど変化しないことを本願発明者は確認した。
【0086】
図7および図8に示すように、第1障害果実および第2障害果実の各々については、観測日数が増えるにしたがって障害の程度が大きくなることで、第1障害果実および第2障害果実の各々の外観の変色の程度が大きくなり、これにより、蛍光画像の変化の程度(白みがかっている領域の面積)も大きくなることを本願発明者は確認した。図9図14に示すように、第1障害果実および第2障害果実の各々については、観測日数が増えるにしたがって、障害の程度が大きくなり、蛍光画像の変化の程度(白みがかっている領域の面積)も大きくなることで、蛍光画像の蛍光強度を示す指標が増加することを本願発明者は確認した。また、第1障害果実よりも第2障害果実の方が、蛍光画像の蛍光強度を示す指標の増加の程度が大きいことを本願発明者は確認した。
【0087】
第1障害果実(図7参照)および第2障害果実(図8参照)について、障害が生じる初期の段階、すなわち、品質低下の予兆がある段階(例えば、9日目)では、対象物(A)の画像を目視で確認しても、外観の色の変化が軽微であった。これにより、本願発明者は、対象物(A)の画像を目視することにより、対象物(A)に品質低下の予兆があるか否かを判定することは困難であることを確認した。
【0088】
これに対し、第1障害果実(図7参照)および第2障害果実(図8参照)について、品質低下の予兆があると、例えば、図7および図8における9日目の蛍光画像において白みがかっている領域が生じることで、図9図14において、9日目における第1障害果実の蛍光強度を示す指標(白抜きの丸印)および第2障害果実の蛍光強度を示す指標(黒で塗りつぶされた丸印)が増加する。よって、本願発明者は、蛍光画像の蛍光強度を示す指標を確認することにより、対象物(A)に品質低下の予兆があるか否かを判定することができることを確認した。
【0089】
本願発明者は、対象物(A)に含まれるシネセチンおよびノビレチンにより対象物(A)に障害(変色)が発生すると、450nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標、および500nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標が変化することを確認した。このことから、本願発明者は、450nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標、および500nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標については、対象物(A)に含まれるシネセチンおよびノビレチンにより対象物(A)に障害(変色)が発生しているか否かを判定するための指標として用いることができることを確認した。本願発明者は、腐敗により対象物(A)に障害が発生すると、550nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標が変化することを確認した。このことから、このことから、本願発明者は、550nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標については、腐敗により対象物(A)に障害が発生しているか否かを判定するための指標として用いることができることを確認した。本願発明者は、メイラード反応により対象物(A)に障害が発生すると、600nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標、および650nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標が変化することを確認した。このことから、本願発明者は、600nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標、および650nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標については、メイラード反応により対象物(A)に障害が発生しているか否かを判定するための指標として用いることができることを確認した。本願発明者は、対象物(A)に含まれるクロロフィルにより対象物(A)に障害(変色)が発生すると、700nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標が変化することを確認した。このことから、本願発明者は、700nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標については、対象物(A)に含まれるクロロフィルにより対象物(A)に障害が発生しているか否かを判定するための指標として用いることができることを確認した。
【0090】
―判定部の動作の第1例―
以下では、判定装置(1,2)の判定部(60)が、対象物(A)の品質低下の予兆を判定する手順の第1例について説明する。
【0091】
判定装置(1,2)の記憶部(50)(図1および図4参照)には、所定の閾値α(図9図14参照)を示す情報が記憶されている。判定装置(1,2)は、閾値αを用いて、対象物(A)に障害が発生しているか否かを判定する。
【0092】
図1図4、および図15に示すように、ステップS10において、判定装置(1,2)の判定部(60)は、蛍光画像取得処理を行う。蛍光画像取得処理は、照射部(10)により対象物(A)に光を照射し、抽出部(20)により対象物(A)の表面から発せられる所定蛍光を抽出し、撮像部(30)により所定蛍光を示す蛍光画像を撮像することで生成された蛍光画像のデータを判定部(60)が取得する処理である。判定部(60)は、互いに異なる波長を有する複数の所定蛍光を示す蛍光画像のデータを取得する。第10実施形態では、判定部(60)は、450nmの蛍光画像(450nmの波長を有する所定蛍光を示す蛍光画像)、500nmの蛍光画像、550nmの蛍光画像、600nmの蛍光画像、650nmの蛍光画像、および750nmの蛍光画像を取得する。
【0093】
ステップS20において、判定部(60)は、蛍光強度出力処理を行う。蛍光強度出力処理は、ステップS10において取得された蛍光画像を構成する複数の画素の画素値に基づいて、蛍光強度を示す指標を出力する処理である。第10実施形態では、判定部(60)は、ステップS10において取得された複数の蛍光画像の各々の蛍光強度を示す指標を出力する。具体的には、判定部(60)は、450nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標と、500nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標と、550nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標と、600nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標と、650nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標と、750nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標とを出力する。
【0094】
ステップS30において、判定部(60)は、ステップS20において出力した複数の蛍光強度を示す指標のうちの少なくとも1つの指標が閾値αよりも大きいか否かを判定する。第10実施形態では、判定部(60)は、450nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標、500nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標、550nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標、600nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標、650nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標、および、750nmの蛍光画像の蛍光強度を示す指標のうちの少なくとも1つの指標が、閾値αよりも大きいか否かを判定する。
【0095】
複数の蛍光強度を示す指標のうちの少なくとも1つの指標が閾値αよりも大きいと判定部(60)が判定した場合(ステップS30で、Yes)、処理がステップS40へ移行する。
【0096】
複数の蛍光強度を示す指標の全てが閾値α以下であると判定部(60)が判定した場合(ステップS30で、No)、処理がステップS50へ移行する。
【0097】
ステップS40において、判定部(60)は、対象物(A)に品質低下の予兆があると判定する。その結果、処理が終了する。
【0098】
ステップS50において、判定部(60)は、対象物(A)に品質低下の予兆がないと判定する。判定部(60)により対象物(A)に品質低下の予兆がないと判定されると、処理がステップS10に移行することで、ステップS10~ステップS30に示す処理が再度行われる。これにより、判定部(60)により対象物(A)に品質低下の予兆があると判定されるまで、ステップS10~ステップS30に示す処理が繰り返される。その結果、ステップS10~ステップS30に示す処理が経時的に行われるので、対象物(A)の経時変化を観察することが可能となる。
【0099】
以上のように、抽出部(20)は互いに異なる波長を有する複数の所定蛍光を抽出し、撮像部(30)は所定蛍光毎に蛍光画像を経時的に撮像する撮像処理を経時的に行い、判定部(60)は経時的に行われた撮像処理により取得された蛍光画像の蛍光強度を示す指標に基づいて、対象物(A)に品質低下の予兆があるか否かを判定する。その結果、経時的に行われた撮像処理により取得された蛍光画像の蛍光強度を示す指標を確認することで、対象物(A)の状態の経時変化を確認できる。また、所定蛍光毎に蛍光画像を撮像することで、対象物(A)に障害が生じる原因(病気、腐敗、メイラード反応等)およびそれに起因して析出する蛍光物質(シネセチン、ノビレチン、クロロフィル、ヘプタメトキシフラボン、カロテン等)を考慮して、対象物(A)の状態の経時変化を確認できる。
【0100】
―判定部の動作の第2例―
判定装置(1,2)の判定部(60)が、対象物(A)の品質低下の予兆を判定する手順の第2例について説明する。以下では、主に、上記の図15に示す第1例と異なる点を説明する。
【0101】
図1図4、および図15に示すように、ステップS10において、判定部(60)は、蛍光画像取得処理を行う。第2例では、蛍光画像取得処理において、判定部(60)は、1つの波長を有する所定蛍光を示す蛍光画像のデータを取得する。例えば、第2例では、蛍光画像取得処理において、判定部(60)は、500nmの波長を有する所定蛍光を示す蛍光画像のデータを取得する。
【0102】
ステップS20において、判定部(60)は、蛍光強度出力処理を行う。第2例では、蛍光強度出力処理において、判定部(60)は、1つの所定蛍光を示す蛍光画像(例えば、500nmの蛍光画像)の蛍光強度を示す指標を取得する。
【0103】
ステップS30において、判定部(60)は、ステップS20において出力した蛍光強度を示す指標が閾値αよりも大きいか否かを判定する。蛍光強度を示す指標が閾値αよりも大きいと判定部(60)が判定した場合(ステップS30で、Yes)、処理がステップS40へ移行する。蛍光強度を示す指標が閾値α以下であると判定部(60)が判定した場合(ステップS30で、No)、処理がステップS50へ移行する。
【0104】
以上のように、撮像部(30)は蛍光画像を経時的に撮像し、判定部(60)は経時的に撮像された蛍光画像の指標に基づいて対象物(A)に品質低下の予兆があるか否かを判定する。その結果、蛍光画像取得処理において、判定部(60)は、1つの波長を有する所定蛍光を示す蛍光画像のデータを取得するので、複数の波長を有する所定蛍光を示す蛍光画像のデータを取得する上記の第1例に比べて抽出部(20)の装置構成を簡素化することができる。
【0105】
《その他の実施形態》
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上説明したように、本開示は、判定装置について有用である。
【符号の説明】
【0107】
10 照射部
20 抽出部
30 撮像部
60 判定部
70 走査機構
80 切替部
A 対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15