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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】巻取装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 57/14 20060101AFI20230724BHJP
   B65H 75/38 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
B65H57/14
B65H75/38 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018227903
(22)【出願日】2018-12-05
(65)【公開番号】P2020090351
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505087230
【氏名又は名称】株式会社ハイボット
(74)【代理人】
【識別番号】100138519
【弁理士】
【氏名又は名称】奥谷 雅子
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 茂男
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-079017(JP,A)
【文献】特開昭55-140458(JP,A)
【文献】実開昭49-143688(JP,U)
【文献】実開平03-130293(JP,U)
【文献】特開2015-221710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 57/00- 57/28
B65H 75/34- 75/50
B65H 54/28
B65H 54/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被巻取部材を導入する導入孔を有する、前記被巻取部材の巻取装置であって、
胴の軸方向両端部にフランジを有し、前記胴の軸線まわりに回転可能なドラムと、
前記ドラムを回転させる駆動源と、
前記胴の軸線と略垂直で捩れの関係に配置された第1軸線に沿って前記被巻取部材を導入する第1案内部と、
前記第1軸線回りに揺動可能な揺動部材と、
前記揺動部材の先端に取り付けられ、前記第1案内部からの前記被巻取部材を前記ドラムに案内する第2案内部とを有し、
前記第2案内部は、前記第2案内部から前記ドラムに巻き取られる巻取部被巻取部材が前記第1軸線と略平行になるように、前記揺動部材に取り付けられ、
前記被巻取部材が、前記第1案内部、前記第2案内部を介して、前記ドラムに巻き取られており
前記第1案内部は、前記第1軸線に対し前記第2案内部とは反対側に、前記揺動部材に支持される第1のプーリを有し、
前記被巻取部材は、前記第1のプーリに半周以上に巻かれ、
前記第1のプーリの回転軸は、前記胴の軸線に対し傾斜している、
巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルなどの紐状の被巻取部材を巻き取る巻取装置に関する。特に、被巻取部材を並列巻きして巻き取る巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被巻取部材をドラムに並列巻きして巻き取る、すなわち、被巻取部材をドラム上で整列して巻き取るために、フリートアングルを小さくすることが行われている。フリートアングルとは、ドラムと、ドラムに被巻取部材を導く導入孔の中心を結ぶ線と、ドラムの端の内側と導入孔の中心を結ぶ線のなす角度のことを指す。フリートアングルが大きいと、ドラムの端側に被巻取部材を巻こうとしても、中心に戻ろうとする力が大きくなり、並列巻きせずに、中心付近でこぶになって巻かれてしまう。一方、ドラムの幅が同じでフリートアングルを小さくしようとすると、ドラムと導入孔までの距離が長くなり、巻取装置が全体として大きくなってしまう。特に、ケースに導入孔を取り付けてドラムを格納することにより防塵性や防水性を高めた巻取装置では、問題が顕著である。
【0003】
そこで、ドラムの周方向に沿って配置され、ドラムの軸線と直交する軸線回りに揺動する半リング形状の揺動部材を備える巻取装置が提案されている(特許文献1参照)。その巻取装置では、導入孔から半リング形状の揺動部材の中央部まで被巻取部材を導いてドラムに巻き、揺動部材には付勢手段を設けて中央に戻るように付勢する。ドラムが回転し被巻取部材が一方のフランジ側に移動したときは、揺動部材が被巻取部材の張力でフランジ側に倒れようとする。しかし、その倒れを付勢手段で抑制することによって、被巻取部材がドラム全面に沿って移動する動きに揺動部材が抵抗なく追従できるように構成しており、被巻取り材をドラムに並列巻きできる。
【0004】
このように構成することで上記の巻取装置によれば、導入孔とドラムの位置を近づけることが可能となる。しかし、被巻取部材の張力に応じて、付勢手段のばね係数を変えることが必要になる。被巻取部材の張力は変動するのが普通であり、実用化するためには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-221710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、簡便な構造で、導入孔をドラムに近づけることを可能にしながら、被巻取部材の張力に関わらず被巻取部材を並列巻きして巻き取る巻取装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に掛かる巻取装置は、たとえば図1および図2に示すように、紐状の被巻取部材90を導入する導入孔100を有する、被巻取部材90の巻取装置10であって、胴22の軸方向両端部にフランジ24、26を有し、胴22の軸線28回りに回転可能なドラム20と、ドラム20を回転させる駆動源30と、胴の軸線28と略垂直で捩れの関係に配置された第1軸線48に沿って被巻取部材90を導入するための第1案内部40と、第1軸線48回りに揺動可能な揺動部材60と、揺動部材60の先端に取り付けられ、第1案内部40からの被巻取部材90をドラム20に案内する第2案内部50とを有し、第2案内部50は、第2案内部50からドラム20に巻き取られる巻取部被巻取部材92が第1軸線48と略平行になるように、揺動部材60に取り付けられ、被巻取部材90が、第1案内部40、第2案内部50を介して、ドラム20に巻き取られている。
【0008】
このように構成すると、胴の軸線と略垂直で捩れの関係に配置された第1軸線に沿って導入孔より導かれた被巻取部材は、第1案内部および揺動部材に取り付けられた第2案内部により、第2案内部からドラムに巻き取られる巻取部被巻取部材が第1軸線と略平行にして巻き取られる。そのために、張力が大きくなっても、張力の方向と揺動部材の揺動方向が垂直方向となるために、揺動部材は容易に揺動できる。すなわち、ドラムに巻き取られる巻取部被巻取部材はドラムの幅方向に移動し易い。そして、ドラムには被巻取部材が巻き取られているので、巻き取られている被巻取部材に沿って押されながら被巻取部材は並列巻きでドラムに巻き取られる。よって、簡便な構造で、導入孔をドラムに近い位置に配置して装置全体をコンパクトにでき、かつ、被巻取部材を並列巻きして巻き取る巻取装置が提供される。
【0009】
本発明の第2の態様に掛かる巻取装置は、たとえば図1に示すように、第2案内部50は、揺動部材60に支持される第2のプーリ52を含む。このように構成すると、第2の案内部がプーリを含み、揺動部材が揺動することにより第2案内部がドラムの幅方向に移動するので、構造が簡単で、かつ、プーリを用いるため少ない抵抗でドラムに誘導できる。
【0010】
本発明の第3の態様に掛かる巻取装置は、たとえば図1に示すように、第1案内部40は、揺動部材60に支持される第1のプーリ42を含む。このように構成すると、第1軸線回りに揺動する揺動部材に、第1の案内部の第1のプーリと第2の案内部の第2のプーリが支持されるので、構造が簡単になり、かつ、少ない抵抗でドラムに誘導できる。
【0011】
本発明の第4の態様に掛かる巻取装置は、たとえば図2に示すように、揺動部材60は、第1軸線48に対し第2案内部50とは反対側にバランスウェイト62を有する。このように構成すると、揺動部材が第2案内部とは反対側にバランスウェイトを有するので、揺動部材の重心が第1軸線の近くに移動して第1軸線の位置に生ずる自重等によるモーメントを低減でき、揺動部材は第1軸線回りに揺動しやすくなる。
【0012】
本発明の第5の態様に掛かる巻取装置は、たとえば図3に示すように、第1案内部40は、第1軸線48に対し第2案内部50とは反対側に第1のプーリ44を有し、被巻取部材90は、第1のプーリ44の半周以上に巻かれ、第1のプーリ44の回転軸46は、胴の軸線28に対し傾斜している。このように構成すると、第1のプーリが第1軸線に対し、第2案内部と反対側に位置するため、揺動部材の重心が第1軸線の近くに移動して第1軸線の位置に生ずる自重等によるモーメントを低減でき、第1軸線回りに揺動しやすい。また、第1のプーリの回転軸を、胴の軸線に対し傾斜させるので、被巻取部材が交差することを回避できる。
【0013】
本発明の第6の態様に掛かる巻取装置は、たとえば図4に示すように、第1案内部40は、第1軸線48に対し第2案内部50とは反対側に第1のプーリ70と、揺動部材60に支持される第3のプーリ74を含み、被巻取部材90は第1のプーリ70と第3のプーリ74を経由して第2のプーリ52に送られる。このように構成すると、第1のプーリおよび第3のプーリが第1軸線に対し第2案内部と反対側に位置するため、揺動部材の重心が第1軸線の近くに移動して第1軸線の位置に生ずる自重等によるモーメントを低減でき、第1軸線回りに揺動しやすい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の巻取装置によれば、胴の軸線と略垂直で捩れの関係に配置された第1軸線に沿って導かれた被巻取部材は、第1案内部および揺動部材に取り付けられた第2案内部により、第2案内部からドラムに巻き取られる巻取部被巻取部材が第1軸線と略平行にして巻き取られ、被巻取部材は並列巻きしてドラムに巻き取られる。よって、簡便な構造で導入孔がドラムに近い位置に配置できて装置全体をコンパクトにでき、かつ、被巻取部材を並列巻きして巻き取る巻取装置を提供できる。特に、ケースに導入孔を取り付けてドラム等を格納することにより防塵性や防水性を高めた巻取装置においては、ケースをコンパクトにできるので、効果はより顕著になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施の形態としての巻取装置を説明する図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。なお、ケースを透過して内部を示す。
図2図2は、図1に示す巻取装置の斜視図である。なお、ケースを透過して内部を示す。
図3図3は、図1および図2とは別の巻取装置を説明する斜視図である。なお、ケースは省略して示す。
図4図4は、さらに別の巻取装置を説明する斜視図である。なお、ケースは省略して示す。
図5図5は、揺動部材の代わりに円弧状のガイドを有する別の巻取装置を説明する斜視図である。なお、ケースは省略して示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一または相当する装置には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0017】
先ず図1および図2を参照して、本発明の実施の形態としての巻取装置10について説明する。巻取装置10は、紐状の被巻取部材90を巻き取るドラム20と、ドラム20を回転させる駆動源30と、被巻取部材90を導入するための第1案内部40と、被巻取部材90をドラム20に案内するための第2案内部50を有する。巻取装置10はまた、これらの装置を内包する、被巻取部材90を導入する導入孔100を有するケース110を有する。紐状の被巻取部材90は、たとえば電力線であっても、通信用ケーブルであってもよく、特に限定はされない。
【0018】
ドラム20は、胴22の軸方向両端部にフランジ24、26を有し、胴22の軸線28まわりに回転可能に保持される。胴22は、本実施の形態では、円筒形状を有するが、被巻取部材90をその周囲に巻き取ることができれば、その形状は特に限定されない。ドラム20が軸線28回りに回転することにより、胴22の周囲に被巻取部材90が巻き取られる。フランジ24、26は、被巻取部材90が胴22から外れることがないように、胴22の径方向に延伸する部材で、たとえば円盤状に形成されるが、複数本の棒部材等で構成されてもよい。
【0019】
ドラム20は、駆動源30により軸線28回りに回転する。駆動源30は、モータと減速機、モータとチェーンおよびスプロケット、モータとベルトおよびプーリ、など、公知の装置でよい。モータは、電動に限られず、油圧または水圧駆動タイプでもよく、エンジンで回転力を得てもよい。ドラム20と駆動源30との連結方法は、特に限定はされない。
【0020】
第1案内部40は、被巻取部材90を胴の軸線28と略垂直で捩れの関係に配置された第1軸線48に沿って導入する。ここで、捩れの関係とは、第1軸線48が胴の軸線28とは交差しないことを指し、すなわち、被巻取部材90は、直接的にドラム20に巻き取られるのではなく、第1案内部40から、後述する第2案内部50で方向を曲げられて、ドラム20に巻き取られる。第1軸線48が胴の軸線28と略垂直とは、胴22の略径方向から被巻取部材90を導入していることを指し、厳密な垂直である必要はない。本実施の形態では、第1案内部40は、後述する揺動部材60に形成された被巻取部材90を導入するために形成された孔49と第1のプーリ42とを含んで構成される。被巻取部材90は、ケース110に形成された導入孔100を介して外部から誘導されて第1案内部40に導かれる。被巻取部材90を第1軸線48に沿って導入孔100から案内するためにガイド筒41(図1参照)を含んでもよい。なお、被巻取部材90は、図1の上方で他の機器(不図示)などに支持され、あるいは、被巻取部材90の自重などのため、巻き取られる際には張力が生ずる。
【0021】
第2案内部50は、被巻取部材90を第1案内部40からドラム20に案内する。第2案内部50は、第1案内部40に対し胴の軸線28および第1軸線48と略垂直な方向に位置する。そして、第2案内部50から胴22に向けて被巻取部材90が胴の軸線28に略垂直になるような位置に配置される。すなわち、胴の軸線28と略垂直で捩れの関係に配置された第1軸線48に沿って導入された被巻取部材90と、第2案内部50からドラムに巻き取られる被巻取部材90である巻取部被巻取部材92が略平行になる。本実施の形態では、第2案内部50は、第2のプーリ52を含んで構成される。
【0022】
第1案内部40の第1のプーリ42と、第2案内部50の第2のプーリ52とは、揺動部材60に回転可能に支持される。揺動部材60は、第1軸線48回りに揺動可能に支持される。揺動部材60を支持する構成は特に限定されず、たとえば、第1軸線48と略同軸の支持ピン(不図示)で支えても、第1軸線48と略同軸のガイド筒41(図1参照)で吊り下げられても、揺動可能に支持されればよい。第2のプーリ52は、揺動部材60の先端に配置される。ここで、「先端」とは、揺動部材60の第1軸線48からの遠位を指し、厳密に端部である必要はない。揺動部材60が第1軸線48回りに揺動することにより、第2のプーリ52が、ドラム20の幅、すなわち2つのフランジ24、26間を第1軸線48を中心とする円弧上で往復動し、被巻取部材90はドラム20の胴22に並列巻きして巻き取られる。なお、厳密に第1軸線48回りでなく、実質的に第2のプーリ52がドラム20の幅方向に往復動可能な位置で支持されればよい。また、第1のプーリ42と第2のプーリ52の間の被巻取部材90が、第1軸線48に沿って導入された被巻取部材90および巻取部被巻取部材92と略直角をなすように、揺動部材60は配置される。
【0023】
図2に示すように、揺動部材60に被巻取部材90を導入するための孔49が形成されてもよい。しかし、揺動部材60の構成は、第1案内部40の第1のプーリ42と、第2案内部50の第2のプーリ52とを回転可能に支持すればよく、たとえば、梁で構成されてもよい。その場合には、孔49は形成されず、被巻取部材90は梁の間を通って導入されればよい。
【0024】
図2に示すように、揺動部材60には、第1軸線48を挟んで第2案内部50とは反対側にバランスウェイト62を有してもよい。バランスウェイト62は、揺動部材60が第2案内部50側に長いための自重等により生ずる第1軸線48付近、すなわち支持点回りのモーメントを打ち消す、あるいは低減するためのウェイトである。揺動部材60の重心が、揺動中心としての第1軸線48から離れると、揺動部材60が傾いて揺動しにくくなる。バランスウェイト62により揺動部材60全体の重心を第1軸線48に近づけることにより、巻取装置10がどのような姿勢であっても、揺動部材60の重さ等により揺動部材60の姿勢が傾くことがなくなる。よって、揺動部材60は、被巻取部材90がドラム20に巻かれることによる第2案内部50の移動に抵抗なく追従する。
【0025】
巻取装置10では、被巻取部材90は、第1軸線48に沿って第1案内部に40に導かれる。被巻取部材90は、第1案内部40で方向を変えて第2案内部50に導かれ、第2案内部50で方向を変えて、ドラム20に巻き取られる。そのため、導入孔100をドラム20に近づけることが可能である。巻取装置10によれば、ドラム20が駆動源30の駆動力により回転すると、被巻取部材90は、第2のプーリ52を介して引っ張られる。ドラム20の胴22では、巻き取られようとする巻取部被巻取部材92は、先に胴22に巻き取られた被巻取部材90と接触して滑ることにより、その隣に並列巻きして巻き取られる。その際、揺動部材60が第1軸線48回りに揺動するので、第2案内部50はドラム20の幅方向に移動する。第2案内部50がドラム20の幅方向に移動することにより、巻取部被巻取部材92は、並列巻きして巻き取られやすい。その際に、巻取部被巻取部材92が、第1軸線48に略平行であり、揺動部材60により第1のプーリ42から第2のプーリ52に被巻取部材90が略直角に送られる。そこで、被巻取部材90に大きな張力が生じても揺動部材60の揺動方向と垂直方向になるため、揺動部材60は容易に揺動する。ここでいう「略平行」、「略直角」とは、厳密な「平行」、「直角」ではなく、被巻取部材90に張力が働いても、揺動部材60が揺動できるように、被巻取部材90が配置される方向を指すために用いられる。実際に、巻取装置10で被巻取部材90を巻き取る際には、被巻取部材90を導入する方向(第1軸線48と略平行)も、巻取装置10内での被巻取部材90も常時変化する。たとえば、胴22上に巻き取られた被巻取部材90の巻き数によっても巻取部被巻取部材92の方向は変化する。このような状況であるために、「略平行」、「略直角」という。
【0026】
続いて図3を参照して、本発明の実施の形態としての巻取装置12について説明する。巻取装置12は、被巻取部材90の経路が第1案内部40の第1のプーリ44の周囲を半周以上回っている点と、第1軸線48に沿って第1のプーリ44に送られる被巻取部材90と、第1のプーリ44から第2案内部50に送られる被巻取部材90との交差を避けるために、第1のプーリ44が傾斜している点で、巻取装置10と異なるが、他は同じであるので、重複した説明は省略する。なお、図3では、揺動部材60は省略している。
【0027】
巻取装置12では、第1案内部40の第1のプーリ44が、第1軸線48を挟んで第2案内部50とは反対側に配置される。ここで、第1のプーリ44が、第1軸線48を挟んで第2案内部50とは反対側に配置されるという場合、第1のプーリ44の回転軸46が第1軸線48を挟んで第2案内部50とは反対側に配置されることをいう。そのために、支持点である第1軸線48付近回りの、第2案内部50側の重量等により生ずるモーメントと、第1案内部40側の重量によるモーメントとが打ち消され、あるいは低減されるので、図2を用いて説明したバランスウェイト62と同様の効果を生じ、揺動部材60は支持点回りに揺動しやすくなる。
【0028】
また、巻取装置10では、ドラム20の胴22の軸線28と、第1のプーリ42の回転軸43と、第2のプーリ52の回転軸54は、略平行である。それに対し、巻取装置12では第1のプーリ44の回転軸46を傾斜させて、第1軸線48に沿って第1のプーリ44に送られる被巻取部材90と、第1のプーリ44から第2案内部50に送られる被巻取部材90との交差を避けている。すなわち、第1のプーリ44の回転軸46は、胴22の軸線28から傾斜している。傾斜する方向は上下方向でも水平方向(第2案内部50方向)でも、その間の斜めでもよい。傾斜する角度Tは小さい方が被巻取部材90を巻き取る際の抵抗が小さいので好ましい。
【0029】
次に、図4を参照して、本発明の実施の形態としての巻取装置14について説明する。巻取装置14は、第1案内部40が第1のプーリ70と第3のプーリ74を有し、第1のプーリ70と第3のプーリ74は第1軸線48に対し第2案内部50とは反対側に配置され、被巻取部材90が第1のプーリ70と第3のプーリ74を経由して第2のプーリ52に送られる点で、巻取装置10、12と異なるが、他は同じであるので、重複した説明は省略する。ここで、第1のプーリ70および第3のプーリ74が、第1軸線48を挟んで第2案内部50とは反対側に配置されるという場合、第1のプーリ70の回転軸72および第3のプーリ74の回転軸76が、第1軸線48を挟んで第2案内部50とは反対側に配置されることをいう。なお、図4では、揺動部材60は省略している。
【0030】
巻取装置14では、第1案内部40の第1のプーリ70および第3のプーリ74が、第1軸線48を挟んで第2案内部50とは反対側に配置される。そのために、支持点である第1軸線48付近回りの、第2案内部50側の重量等により生ずるモーメントと、第1案内部40側の重量によるモーメントとが打ち消され、あるいは低減されるので、図2を用いて説明したバランスウェイト62と同様の効果を生じ、揺動部材60は支持点回りに揺動しやすくなる。なお、巻取装置14では、図4からも明らかなように、第1軸線48に沿って第1のプーリ70に送られる被巻取部材90と、第3のプーリ74から第2案内部50に送られる被巻取部材90とが交差することはなく、第1のプーリ70の回転軸72および第3のプーリ74の回転軸76は、胴22の軸線28および第2のプーリ52の回転軸54と、略平行である。
【0031】
これまで説明したように、巻取装置10、12、14によれば、簡便な構造で、導入孔100をドラム20に近づけることを可能にしながら、被巻取部材90の張力等に影響されることなく、被巻取部材90を並列巻きして巻き取ることができる。よって、巻取装置10、12、14全体をコンパクトにできる。さらに、コンパクトなケース110に格納して、導入孔100から被巻取部材90を誘導することで、防塵・防水対策を実現できる。
【0032】
これまでの説明では、巻取装置10、12、14は、被巻取部材90を導入する導入孔100を有するケース110に内包されるものとして説明したが、用途によっては、ケース110を有していなくてもよい。すなわち、巻取装置10、12、14の要部(巻取装置10、12は、ドラム20、駆動源30、第1案内部40、第2案内部50等)を支持装置で支持し、要部の近くに導入孔100としての筒等を支持装置で支持する構成であってもよい。
【0033】
これまでの説明では、第1案内部40および第2案内部50は、プーリ42、44、52を含むものとして説明したが、プーリの代わりに、たとえば滑らかな表面を有する溝、等、被巻取部材90が方向を変えて送られる公知の構造を含んでもよい。
【0034】
なお、図5に示すように、巻取装置16では、第2案内部50にプーリを備えず、また、揺動部材60を備えず、第2案内部50が円弧状のガイド80であってもよい。なお、他は巻取装置10と同じであるので、重複した説明は省略する。
【0035】
円弧状のガイド80は、被巻取部材90が第1案内部40から等距離の円弧上で方向を変えてドラム20に巻き取られるように、被巻取部材90を案内する棒状の部材である。ガイド80は、揺動部材60の第2案内部50のプーリ52の代わりに、ドラム20に巻き取られる被巻取部材90の位置をドラム20の幅方向に移動しやすくする。ガイド80の表面は、被巻取部材90が滑らかに滑るように平滑にされ、材質も被巻取部材90が滑りやすい部材から選定される。ガイド80に沿って滑らかにスライドするプーリを利用することで被巻取部材90が滑らかに滑るようにしてもよい。なお、第1案内部40から等距離の位置で方向を変えるのは、第2案内部50からドラム20に巻き取られる巻取部被巻取部材92が、実質的に第1軸線48に沿って導入される被巻取部材90と平行になるようにするためである。たとえば、ガイドがドラム20の胴22と平行な直線であると、巻き取られる位置が両端に近づくにつれ、被巻取部材90はガイドに対し斜め方向となる。そのため、最短となる直角な位置に戻ろうとする力が生ずる。よって、中央付近で巻き取られることになり、中央付近で重なって巻き取られ、両端では巻き取られず、並列して巻き取ることができない。一方、ガイド80のように、巻取部被巻取部材92が、実質的に第1軸線48に沿って導入される被巻取部材90と平行であると、すなわち、ドラム20の胴22に対し直角であると、経路を短くするための力が生じない。
【0036】
このように巻取装置16によっても、簡便な構造で、導入孔100をドラム20に近づけることを可能にしながら、被巻取部材90の張力等に影響されることなく、被巻取部材90を並列巻きして巻き取ることができる。よって、巻取装置16全体をコンパクトにできる。さらに、コンパクトなケース110に格納して、導入孔100から被巻取部材90を誘導することで、防塵・防水対策を実現できる。
【符号の説明】
【0037】
10、12、14、16 巻取装置
20 ドラム
22 胴
24、26 フランジ
28 胴の軸線
30 駆動源
40 第1案内部
41 ガイド筒
42、44 第1のプーリ
43、46 第1のプーリの回転軸
48 第1軸線
49 被巻取部材を導入するための孔
50 第2案内部
52 第2のプーリ
54 第2のプーリの回転軸
60 揺動部材
62 バランスウェイト
70 第1のプーリ
72 第1のプーリの回転軸
74 第3のプーリ
76 第3のプーリの回転軸
80 円弧状のガイド
90 被巻取部材
92 巻取部被巻取部材
T 第2案内部の回転軸を傾斜する角度
図1
図2
図3
図4
図5