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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】積載物支持装置とその取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/08 20060101AFI20230724BHJP
   B60N 3/02 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
B60R7/08 Z
B60N3/02 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019091853
(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公開番号】P2020185890
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000114709
【氏名又は名称】槌屋ヤック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】林 照彦
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-519942(JP,A)
【文献】特開平10-119655(JP,A)
【文献】特開2001-315561(JP,A)
【文献】特開2005-246982(JP,A)
【文献】特開平11-078705(JP,A)
【文献】特開平10-109595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/08
B60N 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシストグリップ間に架設された支持バー部材と、前記支持バー部材の端部に、その基部に設けられた枠部材が前記端部の上に重ね合わされて配置されたアシストグリップと、アシストグリップ取付位置に穿設された角孔に前記支持バー部材の前記端部と前記アシストグリップの枠部材とを共締めにて固定する固定具とで構成され、
前記固定具は、ナット部材と共締め用の締め付けボルトとで構成され、
前記ナット部材は、ブロック状部材で、ねじ孔が螺設され、そのねじ孔形成面における左右の側面間の幅が前記角孔のいずれかの開口幅より小さく、且つその前後の側面間の幅が前記角孔の他の開口幅より大きく形成されたナット本体と、前記ナット本体の一方のねじ孔形成面に設けられ、前記ナット本体が前記角孔の背面側に配置された時、前記角孔を通って車内側に位置する薄板取手部とで構成され、
前記薄板取手部の一端が前記ナット本体の一方のねじ孔形成面に固着され、残りのフリー部分が前記角孔の縁の厚み分だけ前記ねじ孔形成面から離間しており、且つ前記ナット本体への取り付け部分が前記角孔の内寸より狭く形成されており、
締め付けボルトは、前記枠部材及び前記支持バー部材の前記端部に挿通され、前記ナット部材のねじ孔に螺着され、前記枠部材及び前記支持バー部材の前記端部をアシストグリップ装着部分に共締めするようになっていることを特徴とする積載物支持装置。
【請求項2】
アシストグリップ装着部分に穿設された角孔と、
前記角孔の背面側に配置されたナット本体、及び前記ナット本体に設けられ、前記角孔を通って車内側に位置する薄板取手部とで構成された請求項1に記載のナット部材と、
その両端に設けられた共締め孔が前記角孔を通して前記ナット本体のねじ孔に一致して配置され、前記アシストグリップ間に架設された支持バー部材と、
前記共締め孔に合わせて、その枠孔を一致させてその枠部材を前記支持バー部材の端部の上に配置された請求項1に記載のアシストグリップと、
前記共締め孔と枠部材とを通って前記ナット本体に螺着され、支持バー部材の端部とアシストグリップの枠部材とをアシストグリップ装着部分に共締め固定する締め付けボルトとで構成されたことを特徴とする積載物支持装置の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アシストグリップ装着部分にアシストグリップと共に取り付けることができ、自動車の車内に持ち込まれたさまざまな積載物を車内で固定するための積載物支持装置とその取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ライフスタイルの変化から自動車もセダンからワンボックスカーのように収納スペースの大きい車へ人気が移ってきている。このような例えば収納スペースの大きい車の購入者は、自分の好みに合わせて、例えば釣り竿、キャンプ用のテントやサイクリング自転車などアウトドア・レジャー用具を購入し、これらをワンボックスカーの収納スペースに積み込み、郊外に出かけ、野外レジャーを楽しんでいる。その時、自動車の走行中、これらの積載物を車内に固定しておく必要がある。
その固定手段の一つとして、車窓の上方に設けられた左右のアシストグリップ間に架設された積載物支持装置を利用することが一般的に行われている。
【0003】
以前の自動車の内壁のアシストグリップ取付位置には、アシストグリップをねじ固定するためのナットが溶接により設けられており、内壁に取り付けられたこのナットにアシストグリップのねじをねじ込み、アシストグリップが固定されていた。積載物支持装置をアシストグリップ装着部分に取り付ける場合、アシストグリップを固定しているねじを外し、その部分に積載物支持装置の両端の取付金具を取り付け、当該ねじを内壁に取り付けられたナットにねじ込み、アシストグリップと取付金具とを共締めにてアシストグリップ装着部分に取り付けるようにしていた(特許文献1)。
【0004】
ところが、最近の自動車では、工程合理化のため手間のかかるナットの溶接を省略し、当該部分に単なる角孔600を穿設し、アシストグリップ500をワンタッチの嵌め殺し構造で取り付けるようになっている。従って、角孔600を用いた最近の自動車では、共締めに供する「溶接ナット」がなく、積載物支持装置をアシストグリップ装着部分に取り付けることができなかった。上記嵌め殺し構造は、例えば、図9のような構造である。
【0005】
アシストグリップ500のU形の握り部材の基部500aに、枠部材510がつる巻きばね514により弾発性を持って起倒するように取り付けられている。枠部材510には角孔600に合わせて取付孔511が設けられており、この取付孔511の孔縁の裏面に突リブ513が突設されている。
アシストグリップ500をアシストグリップ装着部分にセットし、その基部500aから引き起こした枠部材510の取付孔511を角孔600に合致させて突リブ513を角孔600に挿入する。2つの突リブ513は角孔600の対向する2辺に接するように嵌まり込み、アシストグリップ500はアシストグリップ装着面に平行な方向には移動しないように固定される。
【0006】
この状態で枠部材510の取付孔511に、金属板をU形に成形した取り付け金具531が挿入されると、取り付け金具531の切り起こし片532と段部533とで角孔600の孔縁裏面と枠部材510の取付孔511の孔縁とを挟み込み、取り付け金具531により固定する。
【0007】
続いて、脱落防止カバー520を枠部材510に下から嵌め込み、脱落防止カバー520の裏面から突出した突起部521をU形に成形された取り付け金具531の間に挿入し、取り付け金具531の内側への変形を突起部521にて防止する。この脱落防止カバー520の側壁内面に突設した爪部522を枠部材510の外面に設けた爪係止穴512に挿入して係止する。これによりアシストグリップ500が角孔600に嵌め殺し構造により固定される。
【0008】
このような嵌め殺し構造では、アシストグリップ500を取り外すと、車体側には単なる角孔600だけが残り、それ以前の車体のように溶接されたナットが存在しないので、上記のような積載支持装置をアシストグリップ装着部分に取り付けることができなくなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平8-127288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、溶接ナットが省略され、アシストグリップ装着部分には一対の角孔だけが存在するような車体において、以前のような積載物支持装置をアシストグリップと共に共締め固定することができる積載物支持装置とその取付構造の提供をその解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載した積載物支持装置Aは、
アシストグリップ50間に架設された支持バー部材Bと、前記支持バー部材Bの端部に、その基部50aに設けられた枠部材51が前記端部の上に重ね合わされて配置されたアシストグリップ50と、アシストグリップ取付位置に穿設された角孔60に前記支持バー部材Bの前記端部と前記アシストグリップ50の枠部材51とを共締めにて固定する固定具Kとで構成され、
前記固定具Kは、ナット部材55と共締め用の締め付けボルト57とで構成され、
前記ナット部材55は、ブロック状部材で、ねじ孔55aが螺設され、そのねじ孔形成面55bにおける左右の側面間の幅Wが前記角孔60のいずれかの開口幅H1より小さく、且つその前後の側面間の幅Sが前記角孔60の他の開口幅H2より大きく形成されたナット本体55hと、前記ナット本体55hの一方のねじ孔形成面55bに設けられ、前記ナット本体55hが前記角孔60の背面側に配置された時、前記角孔60を通って車内側に位置する薄板取手部58とで構成され、
前記薄板取手部58の一端が前記ナット本体55hの一方のねじ孔形成面55bに固着され、残りのフリー部分58aが前記角孔60の縁の厚み分だけ前記ねじ孔形成面55bから離間しており、且つ前記ナット本体55hへの取り付け部分が前記角孔60の内寸(幅H1)より狭く形成されており、
締め付けボルト57は、前記枠部材51及び前記支持バー部材Bの前記端部に挿通され、前記ナット部材55のねじ孔55aに螺着され、前記枠部材51及び前記支持バー部材Bの前記端部をアシストグリップ装着部分に共締めするようになっていることを特徴とする。
【0012】
請求項2は、請求項1に記載した積載物支持装置Aの設置構造で、
アシストグリップ装着部分に穿設された角孔60と、
前記角孔60の背面側に配置されたナット本体55h、及び前記ナット本体55hに設けられ、前記角孔60を通って車内側に位置する薄板取手部58とで構成された請求項1に記載のナット部材55と、
その両端に設けられた共締め孔32が前記角孔60を通して前記ナット本体55hのねじ孔55aに一致して配置され、前記アシストグリップ50間に架設された支持バー部材Bと、
前記共締め孔32に合わせて、その枠孔51aを一致させてその枠部材51を前記支持バー部材Bの端部の上に配置された請求項1に記載のアシストグリップ50と、
前記共締め孔32と枠部材51とを通って前記ナット本体55hに螺着され、支持バー部材Bの端部とアシストグリップ50の枠部材51とをアシストグリップ装着部分に共締め固定する締め付けボルト57とで構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、薄板取手部58を用いることによって、溶接ナットが省略され、単なる“角孔60”だけが設けられているアシストグリップ装着部分にアシストグリップ50と支持バー部材Bとを共締め固定することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の積載物支持装置の取り付け状態を示す正面図である。
図2図1の取付部分の拡大断面図である。
図3図1の取付部分の斜め下からの斜視図である。
図4図3で、アシストグリップを引き下ろした時の斜視図である。
図5図4の分解斜視図である。
図6図4で、ナット部材を角孔の背面に装着した状態を示す斜視図である。
図7】バー取付部材の中央横断面図である。
図8】本発明で使用する支持バーの断面図である。
図9】従来のアシストグリップの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面に従って説明する。積載物支持装置Aは、支持バー部材B、アシストグリップ50及び固定具Kとで構成されている。前記支持バー部材Bは、支持金具30、支持バー40、及びバー取付部材1、並びにその付属品とで構成されている。
なお、本発明ではアシストグリップ50は、乗客が実際に手で握る握り部材53、及び前記握り部材53をアシストグリップを装着部分に取り付けるための枠部材51並びにその付属品を含む全体の構造を意味する。
【0016】
自動車の窓の直上の内壁にはアシストグリップ50の装着部分が設けられ、アシストグリップ50を収納することができるように、アシストグリップ50に合わせた形状の浅い凹部70が形成されている。そして、該凹部70の前後両端にアシストグリップ50を取り付けるための2個の角孔60が穿設されている。角孔60は、正方形でもよいし、長方形でもよい。長方形の場合、幅の狭い方をH1、幅の広い方をH2とする。正方形の場合、幅をH1とする。
支持バー部材Bの装着前には、従来例で説明したようにこの角孔60に車内側から押し込んで固定される取り付け金具531と、この嵌め殺しをサポートする脱落防止カバー520とが装着されている。本発明の積載物支持装置Aの取り付けにあたっては、後述するようにこの取り付け金具531と、脱落防止カバー520とが取り除かれ、別に用意したナット部材55や締め付けボルト57で構成される固定具K、及びカバー部材52とが装着される。
【0017】
支持バー部材Bの支持金具30は、アシストグリップ50の装着部分にアシストグリップ50と共締めにより装着される部材である。支持金具30は、アシストグリップ50の装着部分に装着される金具本体31と、この金具本体31の一方の長辺の中央から自動車の天井部分に沿って延びた延出部分35とで構成された略T形の金具である。
【0018】
延出部分35は、アシストグリップ装着部分である浅い凹部70から自動車の天井部分に沿って延びているため、天井部分の形状に合わせて浅い逆L形に屈曲されている。また、金具本体31と延出部分35の接続部も凹部70のエッジに合わせて浅いL形に屈曲されている。
【0019】
前記金具本体31の両端部分には、前記角孔60に合わせて共締め孔32が穿設されている。共締め孔32は前述の角孔60と同じ大きさの角孔である。また、延出部分35の先端部分には、延出部分35の長手方向に伸びた長孔36が複数個所(本実施例では、3個)穿設されている。
【0020】
支持バー40は図8に示すように、断面長円形の長尺アルミサッシで構成され、その表裏の平面部分に長手方向のレール溝41が2条、全長にわたって形成されている。レール溝41の開口縁には開口幅を狭めるように形成された内鍔43がその全長にわたって形成されている。
【0021】
バー取付部材1は、バー取付筒部5、上側被覆部10、及び下側被覆部15とで形成されている。これら構成部材は硬質の樹脂(熱可塑性又は熱硬化性)の成形品である。
【0022】
バー取付筒部5は、支持バー40の端部が挿入される開口面側からの正面視長円形の挿入穴6が設けられた筒部本体5a、該筒部本体5aの底面から筒部本体5aの側面に沿ってその両側に立設された一対のアーム部7とで構成されている。
アーム部7は、筒部本体5aから横方向に伸びたアーム基部7aと、アーム基部7aから上方に伸びたアーム本体7bとで構成されている。そしてアーム部7の上端外面には係止突起8が突設されている。係止突起8の下面が係止部8aとなっており、下面から上端に至るその外面は、外方にカーブした凸曲面となり、縦断面略直角三角形状を呈している。そして、両アーム部7のアーム基部7aには筒部本体5aの側面とアーム本体7bとの間に開口するアーム開口部7cが穿設されている。挿入穴6の奥には支持バー40の挿入代を限定する奥壁7dが設けられている。挿入穴6の形状は支持バー40の外面形状に一致している。
【0023】
上側被覆部10は、バー取付筒部5の上半分を覆う被覆上部11と、この被覆上部11から後方、即ち、支持金具30方向に伸びた取付片部12とで構成されている。取付片部12には支持金具30の長孔36に合わせて六角ナット13がインサートされている。勿論、素材の樹脂の強度が十分であれば、取付片部12に直接ねじ孔13(図5)を螺設してもよい。
【0024】
被覆上部11の下面は、バー取付筒部5の上半分を収納することができる上空洞部11aとなっており、更に被覆上部11の両側面には係止窓14が設けられている。この係止窓14は上空洞部11aに開口しており、該係止窓14の開口横幅はアーム本体7bの横幅と等しい。
そして両係止窓14の下縁14bの内のり間の離間幅Mは、アーム本体7bの係止突起8の外面間の離間幅Nより小さく、バー取付筒部5を上空洞部11aに下から嵌めこんだ時、アーム本体7bは係止窓14の下の係止壁部14aに押されて撓み、該係止壁部14aを通り抜けるとその弾発力で係止突起8の係止部8aが係止窓14の下縁14bに係止する。
【0025】
下側被覆部15は、バー取付筒部5の下半分を覆う部分で、その上面は、バー取付筒部5の下半分を収納することができる下空洞部15aとなっており、更にアーム部7のアーム開口部7cに合わせて下空洞部15aから左右一対の倒れ防止突起16が突設されている。
【0026】
そして上側被覆部10の支持バー40側の端部両サイドに通孔11bが穿設され、この通孔11bに合わせて下側被覆部15の支持バー40側の端部両サイドに取付ねじ孔15bが設けられている。
【0027】
アシストグリップ50には様々なものがあるが、従来例で述べたように、「溶接ナット」を省略するために天井部のアシストグリップ装着部分の凹部70に設けられた角孔60に嵌め殺し構造で取り付けられる。本実施例のアシストグリップ50は従来例で述べたU形の握り部材53と、その基部50aに起倒可能に取り付けられた枠部材51とで構成される。
握り部材53の基部50aには枠部材51を収納する凹み部が形成され、この凹み部に枠部材51が起倒可能に嵌め込まれている。
【0028】
枠部材51は四角形で、その両サイドには側壁51bが設けられており、軸にて基部50aに枢着され、軸に取り付けられたつる巻きばね59にて握り部材53に対して枠部材51が弾性を持って折り畳み方向に起倒する。つる巻きばね59は握り部材53の両基部50aに設けてもよいが、一方だけでも良い。
四角形の枠部材51には、側壁51b間に四角形の枠孔51aが穿設され、更に枠孔51aの裏面側の孔縁に突リブ51cが2条、平行に突設されている。この一対の突リブ51cは、共締め孔32の孔縁に、又は共締め孔32から角孔72に至る孔縁に隙間なく嵌まり込む大きさに形成されている。そして、側壁51b間にて四角形の枠孔51aの上部は、座金収容部となっている。
両側壁51bの外面には、爪係止穴51dが凹設されている。
【0029】
固定具Kは、ナット部材55、必要に応じて用いられる座金56及び締め付けボルト57とで構成される。
ナット部材55はナット本体55hと薄板取手部58の2部材で構成されている。ナット本体55hは四角形ブロック状部材で、具体的には直方体または立方体状あるいは分厚い四角形板材からなる金属ブロックで、その中央に貫通するねじ孔55aが螺設されている。ナット本体55hは角孔60を車室側から角孔60の裏面に潜り抜けられるように、そのねじ孔形成面55bにおける左右の側面間の幅Wが角孔60の開口幅H1より小さく、且つその前後の側面間の幅Sが角孔60の開口幅H2より大きく形成されている。通常は角孔60が正方形で、ナット本体55hのねじ孔形成面55bは長方形である。
【0030】
薄板取手部58は、ナット本体55hの一方のねじ孔形成面55bに設けられ、その一端がねじ孔形成面55bに溶接または接着にて固着され、残りのフリー部分58aはねじ孔形成面55bから離れている。この薄板取手部58のナット本体55hへの取り付け部分が角孔60を潜り抜けることができるように角孔60の内寸(幅H1)より幅が狭く形成されている。
【0031】
座金56は、本実施例では枠部材51の側壁51b間に嵌まり込んで枠孔51aから締め付けボルト57の頭部57aが抜けないようにするためのもので、枠孔51aの孔縁に係合する。座金56は、上記のように締め付けボルト57の頭部57aが枠部材51の枠孔51aから抜けないようにするためのもので、本実施例では枠部材51の形状から直方体または立方体或いは厚板正方形板状でその中央或いはその近傍に貫通孔56aが穿設されている。形状は直方体または立方体に限定されるものでなく、円筒状や厚板円板状でもよい。締め付けボルト57の頭部57aが枠孔51aから抜けないのであれば使用しなくてもよい。
【0032】
カバー部材52は枠部材51に嵌め込まれ、締め付けボルト57の頭部57aやつる巻きばね59など内部構造を隠す部材である。カバー部材52の開口縁内面には内向きの爪部52aが突設されている。
【0033】
次に、積載物支持装置Aの組み立てについて説明する。まず、アシストグリップ設置位置からアシストグリップ50を取り外す。アシストグリップ設置位置には一対の角孔60が車内に露出する。
ナット部材55の薄板取手部58を指で摘んで、ナット本体55hを角孔60に潜らせ、ナット本体55hの2辺を角孔60の背面の孔縁に係止する。薄板取手部58のフリー部分58aはねじ孔形成面55bに近接しており、このフリー部分58aとねじ孔形成面55bとで角孔60(及び天井面を覆う内装材71)の縁を挟み付け、角孔60の縁にナット部材55を仮固定する。
【0034】
次に、支持バー部材Bの組み立てについて説明する。まず、上側被覆部10の取付片部12に支持金具30の延出部分35を沿わせ、長孔36を利用して延出部分35を取付片部12にねじ固定する。上記のねじ固定を左右一対の上側被覆部10と支持金具30において行う。
【0035】
次に、この上側被覆部10がねじ固定された支持金具30の金具本体31をアシストグリップ装着部分に沿わせ、角孔60に仮止めしたナット部材55のねじ孔55aと共締め孔32とを一致させる。続いて、アシストグリップ50の握り部材53の基部50aから枠部材51を引き起こす。上記のように枠部材51は、つる巻きばね59にて折り畳まれる方向に付勢されているので、つる巻きばね59に沿って設けられている隔壁51kと引き起された握り部材53の基部50aとの間に平板冶具75を挿入して枠部材51が基部50aから引き起こされた状態を保つようにする。
【0036】
この状態で枠孔51aを共締め孔32とを一致させ、枠部材51の突リブ51cを共締め孔32に嵌め込む。これにより枠部材51は金具本体31の取付面に対して平行方向にずれない。
この状態で、座金56に挿通した締め付けボルト57を枠孔51a、共締め孔32に挿入し、ナット部材55のねじ孔55aにねじ込む。これにより支持金具30はアシストグリップ50と共にナット部材55にてアシストグリップ装着部分に共締め固定される。この操作を左右のアシストグリップ装着部分において行う。
【0037】
次に、支持バー40の両端をバー取付筒部5の挿入穴6に挿入し、支持バー40の両端にバー取付筒部5を取り付ける。
そして、左右のバー取付筒部5を左右の上側被覆部10の上空洞部11aに下から持ち上げて嵌め込む。バー取付筒部5の挿入に合わせて両側のアーム部7が上側被覆部10の係止壁部14aに接触して内側に撓められ、そのまま押し込まれてアーム部7の係止突起8が係止壁部14aを超えて係止窓14に入り込んだ所でその弾発力により係止突起8が係止窓14に嵌まり込み、その係止部8aが係止窓14の下縁14bに係合する。
【0038】
最後に下側被覆部15をバー取付筒部5の下からこの下半分を覆うように上側被覆部10に嵌め込む。下側被覆部15の倒れ防止突起16はアーム部7のアーム開口部7cから内側に挿入され、アーム本体7bを係止窓14直下の係止壁部14aとで挟み込み、支持バー40に下向きの力が加わった時に、アーム部7が内側に倒れ込んで係止突起8が係止窓14の下縁14bからの脱落を防止するようにしている。下側被覆部15の取り付け後、上側被覆部10の通孔11bに接続ボルト20を挿入し、下側被覆部15の取付ねじ孔15bにねじ込み、下側被覆部15を上側被覆部10に固定する。
支持バー40のバー取付部材1への取付け状態については、支持金具30の長孔36の取付け位置を調整することによって最適位置にて固定する。
【0039】
このようにアシストグリップ50間に取り付けた積載物支持装置Aの支持バー40に、走行中に積載物による大きな下向きの力が加わったとしても、接続ボルト20によって上・下面被覆部10・15が一体的に固定されていること、倒れ防止突起16によるアーム部7の内側への倒れ防止による係止解除による脱落が回避され、安全な支持状態が保たれる。
【0040】
最後に、新たに用意されたカバー部材52を枠部材51に嵌め込んで締め付けボルト57の頭部57aを隠す。カバー部材52の枠部材51への取り付けは、従来と同様、枠部材51に設けられた爪係止穴51dにカバー部材52の内向きの爪部52aによって固定される。
なお、握り部材53は共締めによってアシストグリップ装着部分に設置されているので従来通り使用することができる。
【符号の説明】
【0041】
A:積載物支持装置、B:支持バー部材、H1・H2:角孔の開口幅、K:固定具、M:係止窓の内のりの離間幅、N:係止突起の外面間の離間幅、S:ナット本体の前後の側面間の幅、W:ナット本体の左右の側面間の幅、1:バー取付部材、5:バー取付筒部、5a:筒部本体、6:挿入穴、7:アーム部、7a:アーム基部、7b:アーム本体、7c:アーム開口部、7d:奥壁、8:係止突起、8a:係止部、10:上側被覆部、11:被覆上部、11a:上空洞部、11b:通孔、12:取付片部:、13:六角ナット(ねじ孔)、14:係止窓、14a:係止壁部、14b:下縁、15:下側被覆部、15a:下空洞部、15b:取付ねじ孔、16:倒れ防止突起、20:接続ボルト、30:支持金具、31:金具本体、32:共締め孔、35:延出部分、36:長孔、40:支持バー、41:レール溝、43:内鍔、50:アシストグリップ、50a:基部、51:枠部材、51a:枠孔、51b:側壁、51c:突リブ、51d:爪係止穴、51k:隔壁、52:カバー部材、52a:爪部、53:握り部材、55:ナット部材、55a:ねじ孔、55b:ねじ孔形成面、55h:ナット本体、56:座金、56a:貫通孔、57:締め付けボルト、57a:頭部、58:薄板取手部、58a:フリー部分、59:つる巻きバネ、60:角孔、70:凹部、71:内装材、75:平板冶具、500:アシストグリップ、500a:基部、510:枠部材、511:取付孔、512:爪係止穴、513:突リブ、514:つる巻ばね、520:脱落防止カバー、521:突起部、522:爪部、531:取り付け金具、532:切り起こし片、533:段部、600:角孔。
図1
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図9