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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】実装装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20230724BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
H05K13/04 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019112796
(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公開番号】P2020205368
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100192511
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 晃史
(72)【発明者】
【氏名】前田 徹
(72)【発明者】
【氏名】中村 智宣
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-321673(JP,A)
【文献】特開2010-021227(JP,A)
【文献】特開2013-138077(JP,A)
【文献】特開2003-297878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被実装体を基板上の複数の実装位置に実装する実装装置であって、
前記被実装体として複数の半導体チップを積層して前記実装位置に仮置きする仮置き部と、
前記基板上に載置された複数の前記被実装体を圧着対象として前記基板上で一括して本圧着する本圧着部と、を備え、
前記本圧着部は、
前記基板に対して上下動可能に設けられたツール本体部と、
前記ツール本体部の前記基板側において前記圧着対象の前記被実装体のそれぞれに対応するように配設された複数の可動ツール部と、
前記可動ツール部のそれぞれと前記ツール本体部とを接続する接続部と、を有し、
前記接続部は、前記被実装体の主面に接触した前記可動ツール部に対して前記ツール本体部の上下動を可能とする第1変形と、前記主面の法線方向に沿う押圧力を付与可能に前記可動ツール部の前記主面の向きへの追従を可能とする第2変形と、を許容する可撓性部材で構成されており、
前記ツール本体部に接続され、前記ツール本体部の内部のチャンバー部に圧縮空気を供給する空気圧源を更に備え、
前記チャンバー部は、前記空気圧源から供給された前記圧縮空気の圧力を前記可動ツール部のそれぞれに前記接続部を介して付与可能とされている、実装装置。
【請求項2】
前記圧着対象の前記被実装体と前記可動ツール部との接触を検知する複数の検知器と、
前記チャンバー部への前記圧縮空気の供給又は前記チャンバー部からの前記圧縮空気の排出を制御する圧力制御部と、
前記検知器の検知結果に基づいて、前記圧力制御部を制御する制御部と、を更に備え、
前記制御部は、少なくとも1つの前記可動ツール部が前記圧着対象の前記被実装体に接触していない場合には、前記チャンバー部から前記圧縮空気を排出するように前記圧力制御部を制御する、請求項に記載の実装装置。
【請求項3】
前記可動ツール部のそれぞれに設けられ、前記圧着対象の前記被実装体と前記可動ツール部との接触を検知する複数の検知器と、
前記チャンバー部への前記圧縮空気の供給又は前記チャンバー部からの前記圧縮空気の排出を制御する圧力制御部と、
前記検知器の検知結果に基づいて、前記圧力制御部を制御する制御部と、を更に備え、
前記制御部は、複数の前記可動ツール部の全てが前記圧着対象の前記被実装体に接触している場合に、前記チャンバー部に前記圧縮空気を供給するように前記圧力制御部を制御する、請求項又はに記載の実装装置。
【請求項4】
前記接続部は、前記圧着対象の前記被実装体と前記可動ツール部との接触に伴う反力に応じて前記ツール本体部の上下方向と交差する方向に変位可能である、請求項1~の何れか一項に記載の実装装置。
【請求項5】
前記可動ツール部は、前記ツール本体部の上下方向に沿って延びる柱状であり、
前記接続部は、前記上下方向に沿って延びると共に前記可動ツール部の周縁部に連結された筒状部材である、請求項1~の何れか一項に記載の実装装置。
【請求項6】
前記可動ツール部は、接触した前記圧着対象の前記被実装体を加熱するヒータを含む、請求項1~の何れか一項に記載の実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の被実装体を基板上の複数の実装位置に実装する実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の電子部品を一括実装できる実装装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1記載の実装装置では、基板に対して上下動可能な複数のエアシリンダの先端に圧着ツールが揺動可能に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-21227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、複数の被実装体を基板上に載置し、載置された複数の被実装体を圧着対象として基板上で一括して本圧着することが試みられている。この技術分野では、載置された複数の被実装体において、例えば基板からの高さバラツキや基板に対する傾斜バラツキなどが生じ得ることを考慮して、適切に本圧着することが望まれている。
【0005】
本開示は、圧着対象の複数の被実装体を確実に本圧着することが可能となる実装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る実装装置は、複数の被実装体を基板上の複数の実装位置に実装する実装装置であって、基板上に載置された複数の被実装体を圧着対象として基板上で一括して本圧着する本圧着部を備え、本圧着部は、基板に対して上下動可能に設けられたツール本体部と、ツール本体部の基板側において圧着対象の被実装体のそれぞれに対応するように配設された複数の可動ツール部と、可動ツール部のそれぞれとツール本体部とを接続する接続部と、を有し、接続部は、被実装体の主面に接触した可動ツール部に対してツール本体部の上下動を可能とする第1変形と、主面の法線方向に沿う押圧力を付与可能に可動ツール部の主面の向きへの追従を可能とする第2変形と、を許容する可撓性部材で構成されている。
【0007】
本開示の一態様に係る実装装置では、可動ツール部のそれぞれとツール本体部とを接続する接続部が、可撓性部材で構成されている。接続部の第1変形により、被実装体の主面に接触した可動ツール部に対してツール本体部の上下動が可能となるため、被実装体において基板からの高さバラツキが生じている場合であっても、複数の被実装体の主面のそれぞれに可動ツール部を適切に接触させることができる。また、接続部の第2変形により、主面の法線方向に沿う押圧力を付与可能に可動ツール部の主面の向きへの追従が可能となるため、被実装体において基板に対する傾斜バラツキが生じている場合であっても、複数の被実装体の主面のそれぞれに可動ツール部を適切に接触させることができる。したがって、複数の被実装体に対して適切に圧着荷重が加えられるため、圧着対象の複数の被実装体を確実に本圧着することが可能となる。
【0008】
一実施形態において、実装装置は、ツール本体部に接続され、ツール本体部の内部のチャンバー部に圧縮空気を供給する空気圧源を更に備え、チャンバー部は、空気圧源から供給された圧縮空気の圧力を可動ツール部のそれぞれに接続部を介して付与可能とされていてもよい。この場合、チャンバー部に供給された圧縮空気を共通の圧力源として利用して、複数の可動ツール部のそれぞれに接続部を介して圧力が付与される。そのため、圧着対象の複数の被実装体に対してより均等に圧着荷重を加えることが可能となる。
【0009】
一実施形態において、実装装置は、可動ツール部のそれぞれに設けられ、圧着対象の被実装体と可動ツール部との接触を検知する複数の検知器と、チャンバー部への圧縮空気の供給又はチャンバー部からの圧縮空気の排出を制御する圧力制御部と、検知器の検知結果に基づいて、圧力制御部を制御する制御部と、を更に備え、制御部は、少なくとも1つの可動ツール部が圧着対象の被実装体に接触していない場合には、チャンバー部から圧縮空気を排出するように圧力制御部を制御してもよい。これにより、例えばツール本体部の下降に従って複数の可動ツール部が圧着対象の被実装体に順次接触していく過程で、圧着対象の被実装体に接触した可動ツール部の変位に起因するチャンバー部の圧力上昇が抑制される。このように、複数の可動ツール部が圧着対象の被実装体に順次接触していく過程で、被実装体に未だ接触していない可動ツール部にチャンバー部の圧力上昇の影響が及ぶことを抑制できるため、可動ツール部を被実装体の主面により適切に接触させることができる。その結果、複数の可動ツール部の全てが圧着対象の被実装体に接触した状態を基準として、被実装体の主面に対する押圧力をより均等に付与することが可能となる。
【0010】
一実施形態において、実装装置は、圧着対象の被実装体と可動ツール部との接触を検知する複数の検知器と、チャンバー部への圧縮空気の供給又はチャンバー部からの圧縮空気の排出を制御する圧力制御部と、検知器の検知結果に基づいて、圧力制御部を制御する制御部と、を更に備え、制御部は、複数の可動ツール部の全てが圧着対象の被実装体に接触している場合に、チャンバー部に圧縮空気を供給するように圧力制御部を制御してもよい。この場合、複数の可動ツール部の全てが圧着対象の被実装体の主面にそれぞれ接触した状態で、圧縮空気の圧力が可動ツール部のそれぞれに付与される。そのため、圧着対象の複数の被実装体の全てに対して圧縮空気の圧力による圧着荷重を加えることが可能となる。
【0011】
一実施形態において、接続部は、圧着対象の被実装体と可動ツール部との接触に伴う反力に応じてツール本体部の上下方向と交差する方向に変位可能であってもよい。この場合、例えば圧着対象の被実装体の基板に対する横位置バラツキ及び傾斜バラツキ等に対して、可動ツール部が上下方向と交差する方向に追従して変位でき、当該バラツキをより確実に吸収することが可能となる。
【0012】
一実施形態において、可動ツール部は、ツール本体部の上下方向に沿って延びる柱状であり、接続部は、上下方向に沿って延びると共に可動ツール部の周縁部に連結された筒状部材であってもよい。この場合、例えば可動ツール部の中央部のみから点荷重で押圧力が付与される場合と比較して、圧着対象の被実装体の主面に対してより均等に押圧力を付与することが可能となる。
【0013】
一実施形態において、可動ツール部は、接触した圧着対象の被実装体を加熱するヒータを含んでもよい。この場合、例えば圧着対象の被実装体の主面に可動ツール部が適切に接触した状態で、被実装体に対して熱を加えることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、圧着対象の複数の被実装体を確実に本圧着することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る実装装置の概略構成図である。
図2】本圧着部を例示する一部断面図である。
図3図2の本圧着部の下部平面図である。
図4】基板として機能する半導体ウェハの概略斜視図である。
図5】実装される半導体チップの構成を示す図である。
図6】半導体装置の構成を示す図である。
図7】複数の半導体チップを積層して仮置きする流れを示す図である。
図8】複数の半導体チップを積層して仮置きする流れを示す図である。
図9】本圧着工程を説明するための図である。
図10図9に続く本圧着工程を示す図である。
図11】高さバラツキがある場合の本圧着工程を示す図である。
図12】高さ及び傾斜バラツキがある場合の本圧着工程を示す図である。
図13】本圧着工程の実施位置を説明するための図である。
図14】変形例に係る本圧着部の下部平面図である。
図15】変形例に係る本圧着部の下部平面図である。
図16】変形例に係る本圧着部の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、例示的な実施形態について説明する。図1は、実施形態に係る実装装置100の概略構成図である。実装装置100は、基板30の上に、半導体チップ10を実装するための装置である。実装装置100は、複数の半導体チップ10が積層されたチップスタック(被実装体)STを基板30上の複数の実装位置に実装する。実装装置100は、一例として、チップ供給部102、チップ搬送部104、仮置き部106、本圧着部107、及び、これらの構成の駆動を制御する制御部130と、を備えている。
【0017】
チップ供給部102は、チップ供給源から半導体チップ10を取り出し、チップ搬送部104に供給する部位である。チップ供給部102は、突上げ部110とダイピッカ114と移送ヘッド116と、を有している。
【0018】
チップ供給部102において、複数の半導体チップ10は、バンプ18が上側を向いたフェイスアップ状態で、ダイシングテープTE上に載置されている。突上げ部110は、複数の半導体チップ10の中から1つの半導体チップ10を、フェイスアップ状態のまま、上方に突き上げる。ダイピッカ114は、突上げ部110により突き上げられた半導体チップ10を、その下端で吸引保持して受け取る。半導体チップ10を受け取ったダイピッカ114は、当該半導体チップ10のバンプ18が下方を向くように(半導体チップ10がフェイスダウン状態になるように)180度回転させられる。この状態で、ダイピッカ114は、半導体チップ10を移送ヘッド116に受け渡す。
【0019】
移送ヘッド116は、上下及び水平方向に移動可能に構成されており、その下端で、半導体チップ10を吸着保持可能とされている。ダイピッカ114が180度回転させられて半導体チップ10がフェイスダウン状態となった状態で、移送ヘッド116は、その下端で、当該半導体チップ10を吸着保持する。その後、移送ヘッド116は、水平及び上下方向に移動して、チップ搬送部104へと移動する。
【0020】
チップ搬送部104は、鉛直な回転軸Raを中心として回転する回転台118を有している。移送ヘッド116は、回転台118の所定位置に、半導体チップ10を載置する。半導体チップ10が載置された回転台118が回転軸Raを中心として回転することで、当該半導体チップ10が、チップ供給部102と反対側に位置する仮置き部106に搬送される。
【0021】
仮置き部106は、基板30を支持するステージ120と半導体チップ10を保持して基板30に取り付ける仮置きヘッド122と、を有している。ステージ120は、水平方向に移動可能に構成されており、載置されている基板30と仮置きヘッド122との相対位置関係を調整する。
【0022】
仮置きヘッド122は、その下端が半導体チップ10を保持可能に構成され、また、鉛直な回転軸Rb回りの回転及び昇降が可能とされている。仮置きヘッド122は、ステージ120に載置された基板30又は他の半導体チップ10の上に半導体チップ10を仮置き(載置)する。仮置きとは、後述の本圧着を実施する前に、1又は複数の半導体チップ10を所定の実装位置に載置し、チップスタックSTを形成することを意味する。仮置きとしては、半導体チップ10の設置して仮固定のための荷重及び加熱を加える仮圧着が含まれ、以下の説明では仮圧着の場合を説明する。なお、仮置きとして、単に1又は複数の半導体チップ10を所定の実装位置に載置するが、荷重及び加熱を加えない態様を含んでもよい。複数のチップスタックSTは、必ずしも基板30上で形成されなくてもよく、基板30上以外の場所で予め形成されてから基板30上に単に載置されてもよい。
【0023】
仮置きヘッド122は、半導体チップ10の仮圧着の際、例えば、保持している半導体チップ10を基板30等に押し付けるように下降する。仮置きヘッド122には、ヒータ(図示省略)が内蔵されており、仮圧着実行時には、仮圧着温度T1に加熱されると共に、半導体チップ10に仮圧着荷重F1を付加する。
【0024】
仮置きヘッド122の近傍には、カメラ(図示省略)が設けられていてもよい。基板30及び半導体チップ10には、それぞれ、実装位置の位置決めの基準となるアライメントマークが付されている。カメラは、アライメントマークが映るように、基板30及び半導体チップ10を撮像する。制御部130は、例えば、撮像により得られた画像データに基づいて認識した基板30及び半導体チップ10の相対位置関係に応じて、仮置きヘッド122の軸Rb回りの回転角度及びステージ120の水平位置を調整してもよい。
【0025】
本圧着部107は、基板30上に載置(ここでは仮置き)された複数のチップスタックSTを圧着対象として基板30上で一括して本圧着する。本圧着とは、仮置きヘッド122によって基板30上に載置された複数のチップスタックSTに対し、本固定のための荷重及び加熱を加えて圧着することを意味する。圧着対象とは、1回の本圧着工程により本圧着される複数のチップスタックSTを意味する。圧着対象は、基板30上に載置された複数のチップスタックSTのうち2以上のチップスタックSTである。圧着対象は、載置された複数のチップスタックSTの一部であってもよいし、例えば基板30を複数の領域に分けて領域ごとに仮置き及び本圧着を行う場合には、載置された複数のチップスタックSTの全部であってもよい。
【0026】
図2は、本圧着部を例示する一部断面図である。図3は、図2の本圧着部の下部平面図である。図1及び図2に示されるように、本圧着部107は、基板30に対して上下動可能に設けられたツール本体部124と、ツール本体部124の基板30側に設けられた複数の可動ツール部126と、可動ツール部126のそれぞれとツール本体部124とを接続する接続部128と、を有している。
【0027】
ツール本体部124は、本圧着部107の本体であり、例えば中空箱形とされている。ツール本体部124の上面124aには、支持アーム124bが取り付けられている。ツール本体部124は、支持アーム124bが駆動機構(図示省略)によって紙面上下方向に移動されることにより、例えば基板30の法線方向を上下方向DLとして基板30に対して上下動させられる。支持アーム124bの動作は、制御部130によって制御される。なお、本圧着部107の下方には、複数のチップスタックSTが仮置きされた基板30がチップ搬送部104によって搬送される。
【0028】
図2及び図3に示されるように、複数の可動ツール部126は、ツール本体部124の基板30側である下面126cに設けられている。可動ツール部126は、ツール本体部124の上下方向DLに沿って延びる柱状(例えば四角柱)の部材である。可動ツール部126は、ツール本体部124の下面124cにおいて、基板30側から見た平面視で、基板30上の圧着対象のチップスタックSTのそれぞれに対応するように配設されている。圧着対象のチップスタックSTとは、複数の可動ツール部126によって一度に本圧着される複数のチップスタックSTを意味する。例えば、隣り合う可動ツール部126同士の間隔は、後述のピッチPC(図4参照)とされている。
【0029】
可動ツール部126は、基板30に対するツール本体部124の下降に伴ってチップスタックSTの主面STP(図6参照)に接触させられる。可動ツール部126は、チップスタックSTの主面STPに接触させられた状態で、チップスタックSTの主面STPに押圧力を付与する。可動ツール部126は、接触した圧着対象のチップスタックSTを加熱するヒータ126aを含んでもよい。ヒータ126aは、可動ツール部126がチップスタックSTの主面STPに接触させられた状態でチップスタックSTを加熱するように、制御部130によって通電が制御されてもよい。
【0030】
可動ツール部126のそれぞれには、複数のひずみゲージ(検知器)126bが設けられている。ひずみゲージ126bは、チップスタックSTの主面STPが可動ツール部126の下面126cに接触した際、例えば可動ツール部126の下面126cの応力をひずみ情報として検出することにより、圧着対象のチップスタックSTと可動ツール部126との接触を検知する。ひずみゲージ126bは、検出したひずみ情報を制御部130に送信する。
【0031】
接続部128は、可動ツール部126が接触するチップスタックSTの主面STPに対し、主面STPの法線方向に沿う押圧力を付与可能に可動ツール部126の姿勢を変更する。接続部128は、可撓性部材で構成されている。具体的には、接続部128は、上下方向DLに沿って延びると共に可動ツール部126の受圧面126dの周縁部126eに連結された筒状部材であり、例えばベローズを採用することができる。このように構成された接続部128は、チップスタックSTの主面STPに接触した可動ツール部126に対してツール本体部124の上下動を可能とする第1変形と、主面STPの法線方向に沿う押圧力を付与可能に可動ツール部126の主面STPの向きへの追従を可能とする第2変形と、を許容する。
【0032】
より詳しくは、接続部128は、ツール本体部124に対して複数の可動ツール部126のそれぞれを相対的且つ独立的に可動とする。相対的且つ独立的に可動とは、ツール本体部124が基板30側に下降するに従って複数の可動ツール部126が複数のチップスタックSTにそれぞれ接触していく過程で、ツール本体部124の下降量(ツール本体部124と基板30との接近量)に対して可動ツール部126の下降量(可動ツール部126と基板30との接近量)が小さくなることが可能に構成されており、なおかつ当該下降量の縮小量が複数の可動ツール部126ごとに互いに異なることが可能に構成されていることを意味する。換言すれば、接続部128は、複数のチップスタックSTの主面STPの位置及び向きのバラツキを吸収して倣うように変位することができる。
【0033】
具体的には、接続部128は、圧着対象のチップスタックSTの主面STPと可動ツール部126の下面126cとの接触に伴う反力に応じて、ツール本体部124の上下方向DLに変位可能である。したがって、接続部128は、第1変形が可能となり、複数のチップスタックST間における基板30の法線方向に沿う主面STPの高さバラツキを吸収可能である。また、接続部128は、圧着対象のチップスタックSTの主面STPと可動ツール部126の下面126cとの接触に伴う反力に応じて、ツール本体部124の上下方向DLと交差する方向に変位可能である。したがって、接続部128は、第2変形の一成分として、複数のチップスタックST間における基板30の法線に交差する方向に沿う主面STPの横位置バラツキを吸収可能である。また、接続部128は、圧着対象のチップスタックSTの主面STPの傾斜に沿って可動ツール部126の下面126cを追従して傾斜させた状態で互いに接触させることが可能である。したがって、接続部128は、第2変形の一成分として、複数のチップスタックST間における主面STPの傾斜角度バラツキを吸収可能である。つまり、接続部128によれば、複数のチップスタックST間において、主面STPの高さバラツキが第1変形によって吸収されるだけでなく、横位置バラツキと傾斜角度バラツキとが組み合わされたチップスタックST自体の傾斜バラツキ(チルト)が第2変形によって吸収される。その結果、チップスタックSTの主面STPに対して主面STPの法線方向に沿う押圧力を付与可能となる。
【0034】
ツール本体部124の内部には、チャンバー部124dが形成されている。チャンバー部124dには、チャンバー部124dに連通するエア流路107aを介して、圧縮空気を供給する空気圧源107bが接続されている。エア流路107aは、空気圧源107bとチャンバー部124dとを結ぶように設けられた圧縮空気の流路である。エア流路107aには、チャンバー部124dへの圧縮空気の供給又はチャンバー部124dからの圧縮空気の排出を制御する制御弁(圧力制御部)107cが設けられている。一例として、制御弁107cは三方弁とされており、圧縮空気を排出する排出流路107dが接続されている。制御弁107cの動作は、制御部130によって制御される。チャンバー部124dは、空気圧源107bから供給された圧縮空気の圧力を可動ツール部126の受圧面126dのそれぞれに接続部128を介して付与可能とされている。
【0035】
図1に示されるように、制御部130は、各部の駆動を制御する。制御部130は、例えば、内部に演算や信号処理を行うCPU[Central Processing Unit]と、実装装置100を動作させるプログラムやプログラムの実行に必要なデータを格納するROM[Read Only Memory]及びRAM[Random Access Memory]のメモリと、を備えているマイクロコンピュータである。制御部130には、複数のひずみゲージ126bの検出信号が少なくとも入力される。制御部130は、メモリから読み込んだプログラムを実行することにより、その機能的構成である仮置き制御部132及び本圧着制御部134の機能を実現する。
【0036】
仮置き制御部132は、仮置き部106を駆動して、1以上の半導体チップを順次仮圧着しながら積層して、複数のチップスタックSTを形成する。本圧着制御部134は、本圧着部107を駆動して、形成された複数のチップスタックSTの主面STPを加熱押圧することで、複数のチップスタックSTを一括で本圧着する。
【0037】
本圧着制御部134は、ひずみゲージ126bにより検出したひずみ情報に基づいて、ツール本体部124の上下動動作を制御すると共に、制御弁107cを制御する。
【0038】
本圧着制御部134は、少なくとも1つの可動ツール部126が圧着対象のチップスタックSTに接触していない場合には、チャンバー部124dから圧縮空気を排出するように制御弁107cを制御する。本圧着制御部134は、例えば、圧着対象のチップスタックSTの全てが可動ツール部126と接触したとひずみゲージ126bによって検知されるまで、チャンバー部124dから圧縮空気を排出するように制御弁107cを制御すると共に、ツール本体部124を基板30側に下降させて複数のチップスタックSTの主面STPに複数の可動ツール部126の下面126cを順次接触させる。
【0039】
本圧着制御部134は、複数の可動ツール部126の全てが圧着対象のチップスタックSTに接触している場合に、チャンバー部124dに圧縮空気を供給するように制御弁107cを制御する。本圧着制御部134は、例えば、圧着対象のチップスタックSTの全てが可動ツール部126と接触したとひずみゲージ126bによって検知された場合、ツール本体部124の基板30側への下降を停止させると共に、空気圧源107bからチャンバー部124dに圧縮空気を供給するように制御弁107cを制御して複数のチップスタックSTの主面STPの全てに複数の可動ツール部126の下面126cの全てが接触された状態で可動ツール部126の受圧面126dに空気圧を付加する。また、本圧着制御部134は、ヒータ126aを仮圧着温度T1よりも高い本圧着温度T2に加熱させると共に、主面STPの法線方向に沿う押圧力として本圧着荷重F2をチップスタックSTの主面STPに対して付加させるように、制御弁107cを制御する。
【0040】
次に、実装装置100による半導体チップ10の実装(半導体装置の製造)について説明する。本実施形態では、基板30として半導体ウェハを使用し、半導体ウェハ(基板30)の上に、複数の半導体チップ10を積層実装する。更に、本圧着部107で複数のチップスタックSTを一括で本圧着する。したがって、本実施形態の実装プロセスは、半導体ウェハの回路形成面に一括で複数の半導体チップ10を積層実装する「ギャングボンディング」又は「部分ギャングボンディング」である。
【0041】
図4は、基板30として機能する半導体ウェハの概略斜視図である。半導体ウェハは、主にシリコンからなる。図4に示されるように、基板30には、格子状に並ぶ複数の配置領域34が設定されている。各配置領域34には、複数の半導体チップ10が積層実装され、チップスタックSTが形成される。配置領域34は、所定の配置ピッチPSで配設されている。配置ピッチPSの値は、実装対象の半導体チップ10のサイズ等に応じて適宜、設定される。なお、上述した可動ツール部126のピッチPCは、例えば、配置領域34を1つ飛ばしとする間隔に相当し、例えば配置ピッチPSと同等とすることができる。なお、本実施形態では、配置領域34を略正方形としているが、適宜、他の形状、例えば略長方形でもよい。
【0042】
図5は、実装される半導体チップ10の構成を示す図である。図5に示されるように、半導体チップ10の上下面には、電極端子14,16が形成されている。半導体チップ10の片面には、電極端子14に連なってバンプ18が形成されている。バンプ18は、導電性金属からなり、所定の溶融温度で溶融する。
【0043】
また、半導体チップ10の片面には、バンプ18を覆うように、非導電性フィルム(以下「NCF」という)20が貼り付けられている。NCF20は、半導体チップ10と、基板30又は他の半導体チップ10とを接着する接着剤として機能する。
【0044】
図6は、基板30に複数の半導体チップ10を積層実装した半導体装置の構成を示す図である。半導体装置は、複数の配置領域34それぞれに、目標積層数の半導体チップ10を積層実装して構成される。本実施形態では、目標積層数を、「4」としており、1つの配置領域34には、4つの半導体チップ10が積層実装され、チップスタックSTとされる。チップスタックSTは、目標積層分の半導体チップ10を、順次、仮圧着しながら積層して、仮圧着状態のチップスタックSTを形成した後、当該チップスタックSTの主面STPを本圧着温度T2で加熱しながら押圧して本圧着することで形成される。
【0045】
以下、本実施形態での半導体チップ10の実装方法について説明する。図7(a)、図7(b)、図8(a)、及び図8(b)は、複数の半導体チップを積層して仮置きする流れを示す図である。説明の便宜上、図7(a)、図7(b)、図8(a)、及び図8(b)において、3つの配置領域34を図示左側から順に、領域A、領域B、領域Cと呼ぶ。また、離間距離Ddは、可動ツール部126のピッチPCとほぼ同じであるとする。
【0046】
本実施形態では、複数のチップスタックSTを実装するために、圧着対象の個数(ここでは4個)以上のチップスタックSTを形成する仮圧着工程と、圧着対象の個数のチップスタックSTを一括で本圧着する本圧着工程と、が繰り返される。
【0047】
具体的には、まず、最初に、図7(a)に示されるように、仮置きヘッド122を用いて、半導体チップ10を基板30上の領域Aに配置する。このとき、半導体チップ10のバンプ18が、基板30上の電極端子32と向かい合うように、基板30を半導体チップ10に対して位置決めする。また、このとき、仮置きヘッド122は、仮置き用の温度である仮圧着温度T1に加熱されている。次に、図7(b)に示されるように、仮置きヘッド122で、規定の仮圧着荷重F1で半導体チップ10を加圧し、半導体チップ10を基板30に仮圧着する。このとき、仮置きヘッド122からの伝熱により、NCF20は軟化開始温度以上に加熱され、適度な流動性を発揮する。これにより、NCF20は、半導体チップ10と基板30との間隙を隙間なく埋める。なお、仮圧着荷重F1は、バンプ18が軟化したNCF20を押しのけて基板30の電極端子32に接触でき、且つ、バンプ18が大きく変形しない程度の大きさであれば、特に限定されない。
【0048】
続いて、仮圧着された1層目の半導体チップ10の上に、2層目の半導体チップ10を仮圧着する。2層目の半導体チップ10を仮圧着する際は、1層目の場合と同様に、仮置きヘッド122を用いて、2層目の半導体チップ10のバンプ18が、1層目の半導体チップ10の電極端子16と向かい合うように、2層目の半導体チップ10を1層目の半導体チップ10の上に配置する。そして、その状態で、2層目の半導体チップ10を仮圧着温度T1で加熱しつつ仮圧着荷重F1で加圧して、1層目の半導体チップ10に仮圧着する。
【0049】
以降、同様に、2層目の半導体チップ10の上に、3層目の半導体チップ10を、3層目の半導体チップ10の上に4層目の半導体チップ10を、仮圧着していく。図8(a)は、領域Aにおいて、4層の半導体チップ10を仮圧着しながら積層した様子を示している。4つの半導体チップ10を積層し仮圧着した被実装体が、仮圧着状態で基板30上に載置されたチップスタックSTとなる。
【0050】
領域Aにおいて、仮圧着状態のチップスタックSTが形成できれば、同様の手順で、他の配置領域34にも、仮圧着状態のチップスタックSTを形成する。ただし、仮圧着状態のチップスタックSTの間隔を離間距離Dd以上とするために、この段階では、仮圧着状態のチップスタックSTを、領域Bには形成せず、領域Cに形成する。図8(b)は、2つの配置領域34(領域A,領域C)に、仮圧着状態のチップスタックSTが形成された様子を示している。更に、例えば紙面に垂直な方向(奥行き方向)に領域A,領域Cから離間距離Dd以上の間隔で位置する2つの配置領域(領域Aの奥側,領域Cの奥側)に、仮圧着状態の2つのチップスタックSTを形成する。この段階で、仮圧着工程が終了となる。なお、仮圧着工程として、離間距離Dd以上の間隔で位置する配置領域であれば、予めチップスタックST更にを形成しておいてもよい。
【0051】
次に、圧着対象の個数のチップスタックSTを一括で本圧着する。具体的には、図9に示されるように、本圧着制御部134により、圧着対象の個数のチップスタックST(以下、図9図12においてチップスタックST1と記す)の全てが可動ツール部126と接触したとひずみゲージ126bによって検知されるまで、チャンバー部124dから圧縮空気を排出するように制御弁107cを制御すると共に、ツール本体部124を基板30側に下降させる。
【0052】
続いて、図10に示されるように、本圧着制御部134により、例えば、チップスタックST1の全てが可動ツール部126の下面126cと接触したとひずみゲージ126bによって検知された場合、ツール本体部124の基板30側への下降を停止させる。これにより、複数のチップスタックST1の主面STPの全てに複数の可動ツール部126の下面126cの全てが接触させられる。図10の例では、チップスタックST1の主面STPの法線方向H1は、ツール本体部124の上下方向DLに沿っている。続いて、本圧着制御部134により、空気圧源107bからチャンバー部124dに圧縮空気を供給するように制御弁107cを制御する。これにより、複数のチップスタックST1の主面STPの全てに複数の可動ツール部126の下面126cの全てが接触された状態で、可動ツール部126の受圧面126dに空気圧が付加される。図10の例では、可動ツール部126の下面126cからチップスタックST1の主面STPに対して、チップスタックST1の主面STPに対して法線方向H1(ツール本体部124の上下方向DL)に沿う押圧力として、本圧着荷重F2が付与される。
【0053】
ここで、図11に示されるように、例えば領域AのチップスタックST2に高さバラツキがあり、他のチップスタックST1よりも主面STPの位置が高い(基板30よりも離れている)場合について説明する。本圧着制御部134により、圧着対象のチップスタックST1,ST2の全てが可動ツール部126と接触したとひずみゲージ126bによって検知されるまで、チャンバー部124dから圧縮空気を排出するように制御弁107cが制御されると共に、ツール本体部124を基板30側に下降させて複数のチップスタックST1,ST2の主面STPに複数の可動ツール部126の下面126cが順次接触させられる。このとき、接続部128によって、複数のチップスタックST1,ST2間において、主面STPの高さバラツキが第1変形によって吸収される。その後、本圧着制御部134により、チップスタックST1,ST2の全てが可動ツール部126と接触したとひずみゲージ126bによって検知された場合、ツール本体部124の基板30側への下降が停止される。これにより、複数のチップスタックST1,ST2の主面STPの全てに複数の可動ツール部126の下面126cの全てが接触させられる。図11の例では、チップスタックST1,ST2の主面STPの法線方向H2は、ツール本体部124の上下方向DLに沿っている。続いて、本圧着制御部134により、空気圧源107bからチャンバー部124dに圧縮空気を供給するように制御弁107cを制御する。これにより、複数のチップスタックST1,ST2の主面STPの全てに複数の可動ツール部126の下面126cの全てが接触された状態、特に、チップスタックST2の主面STPの高さバラツキが吸収されて倣った状態で、可動ツール部126の受圧面126dに空気圧が付加される。図11の例では、可動ツール部126の下面126cからチップスタックST1,ST2の主面STPに対して、チップスタックST1の主面STPに対して法線方向H1,H2(ツール本体部124の上下方向DL)に沿う押圧力として、本圧着荷重F2が付与される。ここでの押圧力の付与は、複数のチップスタックST1,ST2の主面STPの全てに複数の可動ツール部126の下面126cの全てが接触された状態が基準となっている。よって、高さバラツキがある場合であっても、高さバラツキを吸収した上で均等に荷重を付与することが可能となる。
【0054】
別の例として、図12に示されるように、領域AのチップスタックST3自体に高さバラツキに加えて傾斜バラツキ(チルト)があり(具体的には、主面STPの高さバラツキ、主面STPの横位置バラツキ、及び主面STPの傾斜角度バラツキがあり)、他のチップスタックST1よりも主面STPの位置が高く且つ主面STPが基板30に対して交差する角度で傾斜している場合について説明する。本圧着制御部134により、チップスタックST1,ST3の全てが可動ツール部126と接触したとひずみゲージ126bによって検知されるまで、チャンバー部124dから圧縮空気を排出するように制御弁107cが制御されると共に、ツール本体部124を基板30側に下降させて複数のチップスタックST1,ST3の主面STPに複数の可動ツール部126の下面126cが順次接触させられる。このとき、接続部128によって、複数のチップスタックST1,ST3間において、主面STPの高さバラツキが第1変形によって吸収されるだけでなく、横位置バラツキと傾斜角度バラツキとが組み合わされたチップスタックST3自体の傾斜バラツキ(チルト)が第2変形によって吸収される。その後、本圧着制御部134により、チップスタックST1,ST3の全てが可動ツール部126と接触したとひずみゲージ126bによって検知された場合、ツール本体部124の基板30側への下降が停止される。これにより、複数のチップスタックST1,ST3の主面STPの全てに複数の可動ツール部126の下面126cの全てが接触させられる。図12の例では、領域AのチップスタックST3の主面STPの法線方向H3は、ツール本体部124の上下方向DLに対して傾斜している。続いて、本圧着制御部134により、空気圧源107bからチャンバー部124dに圧縮空気を供給するように制御弁107cを制御する。これにより、複数のチップスタックST1,ST3の主面STPの全てに複数の可動ツール部126の下面126cの全てが接触された状態、特に、チップスタックST3の主面STPの高さバラツキ、主面STPの横位置バラツキ、及び主面STPの傾斜角度バラツキが吸収されて倣った状態で、可動ツール部126の受圧面126dに空気圧が付加される。図12の例では、可動ツール部126の下面126cからチップスタックST3の主面STPに対して、チップスタックST3の主面STPに対して法線方向H3(ツール本体部124の上下方向DLに対して傾斜した方向)に沿う押圧力として、本圧着荷重F2が付与される。ここでの押圧力の付与もまた、複数のチップスタックST1,ST3の主面STPの全てに複数の可動ツール部126の下面126cの全てが接触された状態が基準となっている。よって、高さバラツキ及び傾斜バラツキがある場合であっても、高さバラツキ及び傾斜バラツキを吸収した上で均等に荷重を付与することが可能となる。以上の段階で、本圧着工程が終了となる。
【0055】
なお、圧着対象の個数のチップスタックST1を一括で本圧着できれば、続いて他のチップスタックST1も本圧着する。その際、例えば図13に示されるように、チップスタックST1が基板30上においてチェッカー状に(いわゆる千鳥状に)並ぶように、本圧着工程の圧着対象を設定し、本圧着工程を実行してもよい。すなわち、例えば、1回目の本圧着工程が領域A、C,I,Kであるとすると、2回目の本圧着工程は、領域B,D,J,Lとし、3回目の本圧着工程は、領域H,F,P,Nとし、4回目の本圧着工程は、領域G,E,O,Mとすることができる。この場合、本圧着工程の際にチップスタックST1を加熱した熱の影響が、隣接の領域のチップスタックST1に及ぶことを抑制し、温度プロセスの均一化を図ることができる。
【0056】
以降、所望の配置領域全てに、チップスタックST1を実装できるまで、仮圧着工程と本圧着工程を繰り返せば、実装処理は、完了となる。
【0057】
[実装装置100の作用効果]
以上説明したように、実装装置100では、可動ツール部126のそれぞれとツール本体部124とを接続する接続部128が、可撓性部材で構成されている。接続部128の第1変形により、チップスタックSTの主面STPに接触した可動ツール部126に対してツール本体部124の上下動が可能となるため、チップスタックSTにおいて基板30からの高さバラツキが生じている場合であっても、複数のチップスタックSTの主面STPのそれぞれに可動ツール部126を適切に接触させることができる。また、接続部128の第2変形により、主面STPの法線方向に沿う押圧力を付与可能に可動ツール部126の主面STPの向きへの追従が可能となるため、チップスタックSTにおいて基板30に対する傾斜バラツキが生じている場合であっても、複数のチップスタックSTの主面STPのそれぞれに可動ツール部126を適切に接触させることができる。したがって、複数のチップスタックSTに対して適切に圧着荷重が加えられるため、圧着対象の複数のチップスタックSTを確実に本圧着することが可能となる。
【0058】
実装装置100は、ツール本体部124に接続され、ツール本体部124の内部のチャンバー部124dに圧縮空気を供給する空気圧源107bを更に備える。チャンバー部124dは、空気圧源107bから供給された圧縮空気の圧力を可動ツール部126のそれぞれに接続部128を介して付与可能とされている。これにより、チャンバー部124dに供給された圧縮空気を共通の圧力源として利用して、複数の可動ツール部126のそれぞれに接続部128を介して圧力が付与される。そのため、圧着対象の複数のチップスタックSTに対してより均等に圧着荷重を加えることが可能となる。
【0059】
実装装置100は、圧着対象のチップスタックSTと可動ツール部126との接触を検知する複数のひずみゲージ126bと、チャンバー部124dへの圧縮空気の供給又はチャンバー部124dからの圧縮空気の排出を制御する制御弁107cと、ひずみゲージ126bの検知結果に基づいて、制御弁107cを制御する制御部130と、を更に備える。制御部130は、少なくとも1つの可動ツール部126が圧着対象のチップスタックSTに接触していない場合には、チャンバー部124dから圧縮空気を排出するように制御弁107cを制御する。これにより、例えばツール本体部124の下降に従って複数の可動ツール部126が圧着対象のチップスタックSTに順次接触していく過程で、圧着対象のチップスタックSTに接触した可動ツール部126の変位に起因するチャンバー部124dの圧力上昇が抑制される。このように、複数の可動ツール部126が圧着対象のチップスタックSTに順次接触していく過程で、チップスタックSTに未だ接触していない可動ツール部126にチャンバー部124dの圧力上昇の影響が及ぶことを抑制できるため、可動ツール部126をチップスタックSTの主面STPにより適切に接触させることができる。その結果、複数の可動ツール部126の全てが圧着対象のチップスタックSTに接触した状態を基準として、チップスタックSTの主面STPに対する押圧力をより均等に付与することが可能となる。
【0060】
実装装置100は、可動ツール部126のそれぞれに設けられ、圧着対象のチップスタックSTと可動ツール部126との接触を検知する複数のひずみゲージ126bと、チャンバー部124dへの圧縮空気の供給又はチャンバー部124dからの圧縮空気の排出を制御する制御弁107cと、ひずみゲージ126bの検知結果に基づいて、制御弁107cを制御する制御部130と、を更に備える。制御部130は、複数の可動ツール部126の全てが圧着対象のチップスタックSTに接触している場合に、チャンバー部124dに圧縮空気を供給するように制御弁107cを制御する。これにより、複数の可動ツール部126の全てが圧着対象のチップスタックSTの主面STPにそれぞれ接触した状態で、圧縮空気の圧力が可動ツール部126のそれぞれに付与される。そのため、圧着対象の複数のチップスタックSTの全てに対して圧縮空気の圧力による圧着荷重を加えることが可能となる。
【0061】
実装装置100では、接続部128は、圧着対象のチップスタックSTと可動ツール部126との接触に伴う反力に応じてツール本体部124の上下方向DLと交差する方向に変位可能である。これにより、例えば圧着対象のチップスタックSTの基板30に対する横位置バラツキ及び傾斜バラツキ等に対して、可動ツール部126が上下方向DLと交差する方向に追従して変位でき、当該バラツキをより確実に吸収することが可能となる。
【0062】
実装装置100では、可動ツール部126は、ツール本体部124の上下方向DLに沿って延びる柱状であり、接続部128は、上下方向DLに沿って延びると共に可動ツール部126の周縁部126eに連結された筒状部材である。これにより、例えば可動ツール部126の受圧面126dの中央部のみから点荷重で押圧力が付与される場合と比較して、圧着対象のチップスタックSTの主面STPに対してより均等に押圧力を付与することが可能となる。
【0063】
実装装置100では、可動ツール部126は、接触した圧着対象のチップスタックSTを加熱するヒータ126aを含む。これにより、例えば圧着対象のチップスタックSTの主面STPに可動ツール部126が適切に接触した状態で、チップスタックSTに対して熱を加えることが可能となる。
【0064】
[変形例]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述した実施形態に限定されるものではない。本開示は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。
【0065】
可動ツール部126のピッチの値は、配置領域34を1つ飛ばしとする間隔に相当するピッチPCに限定されず、図14に示されるように、配置領域34を複数個飛ばしとする間隔に相当するピッチPL1としてもよい。また、図15に示されるように、可動ツール部126の配置は、配置領域34の正の整数倍のピッチPL2に対応する配置であれば、種々の配置を採用することができる。なお、配置領域34のピッチが狭い場合には、図14のように間隔を広げるか図15のような配置とすることにより、ツール本体部124の剛性を高めることができる。
【0066】
図16に示されるように、可動ツール部126には、ロック機構126fが設けられていてもよい。この場合、例えば本圧着に用いない可動ツール部126をロックすることで、可動ツール部126の個数よりも少ない個数のチップスタックSTを圧着対象として本圧着を行うことができる。また、1つの制御弁107cで圧縮空気の供給及び排出を制御することに代えて、複数の可動ツール部126のそれぞれに制御弁107eが設けられ、圧縮空気の受圧面126d側への供給及び排出を個別に制御するように構成してもよい。
【0067】
圧力制御部の一例として、制御弁107cは三方弁とされていたが、例えば、チャンバー部124dへの圧縮空気の供給を制御する供給弁と、チャンバー部124dからの圧縮空気の排出を制御する排出弁と、が別体でツール本体部124に設けられ、両者が連携して制御弁として機能するように構成されていてもよい。また、圧力制御部としては、弁以外の構成でもよく、例えばポンプの動作又は停止の切り替えにより、圧力制御部として機能させてもよい。また、可動ツール部126に圧縮空気の圧力を付与する例を示したが、例えば油圧などの液圧を付与する態様であってもよい。
【0068】
圧着対象のチップスタックSTと可動ツール部126との接触を検知する検知部として、ひずみゲージ126bを例示したが、本圧着温度T2での耐熱性を有するものであれば、他のセンサであってもよい。また、ひずみゲージ126bが可動ツール部126に設けられている例を示したが、検知部が例えば接続部128に設けられていてもよい。この場合、可撓性の接続部128の応力等に基づいて、圧着対象のチップスタックSTと可動ツール部126との接触を検知してもよい。
【0069】
本圧着制御部134は、少なくとも1つの可動ツール部126が圧着対象のチップスタックSTに接触していない場合に、チャンバー部124dから圧縮空気を排出するように制御弁107cを制御したが、2以上の可動ツール部126が圧着対象のチップスタックSTに接触していない場合に、チャンバー部124dから圧縮空気を排出するように制御弁107cを制御してもよい。あるいは、本圧着制御部134は、少なくとも1つの可動ツール部126が圧着対象のチップスタックSTに接触していない場合に、全ての可動ツール部126が圧着対象のチップスタックSTに接触している場合と比べて低い圧力で、チャンバー部124dに圧縮空気を供給するように制御弁107cを制御してもよい。
【0070】
なお、ここで説明した実装装置100の構成は、一例であり、適宜、変更されてもよい。例えば、本実施形態では、本圧着部107とは別の仮置きヘッド122で仮圧着を行っているが、本圧着部107と一体的に設けられた仮置きヘッド122を設けてもよい。また、本実施形態では、ツール本体部124が上下動する構成としているが、ツール本体部124に替えて、又は、ツール本体部124に加えて、ステージ120が上下方向DLに移動する構成としてもよい。実装装置100は、仮置き部106を備えていたが、これには限定されず、例えば、仮置き部106の機能については別装置で実現するようにしてもよい。この場合、複数のチップスタックSTは、別装置で予め形成されてから基板30上に単に載置されてもよい。
【0071】
可動ツール部126は、四角柱状であり、接続部128は、断面略四角形の筒状であったが、これらの形状は上述の例に限定されない。特に、接続部128は、円筒状である場合には、変位のし易さが等方的となるため、傾斜バラツキの吸収において更に有利となる。また、接続部128は、ベローズに限定されない。例えば、接続部128は、第1変形と第2変形とを許容する構成であれば、例えば板バネであってもよい。
【0072】
可動ツール部126には、ヒータ126aが内蔵されていなくてもよい。この場合、ステージ120に本圧着温度T2で加熱可能なヒータが設けられていてもよい。
【0073】
接続部128は、圧着対象のチップスタックSTと可動ツール部と126の接触に伴う反力に応じてツール本体部124の上下方向DLと交差する方向に変位可能であったが、変位の態様は限定されない。要は、接続部128は、可動ツール部126が接触するチップスタックSTの主面STPに対し、主面STPの法線方向に沿う押圧力を付与可能に可動ツール部126の姿勢を変更する可撓性部材であればよい。
【符号の説明】
【0074】
30…基板、100…実装装置、107…本圧着部、124…ツール本体部、126…可動ツール部、126e…周縁部、128…接続部、130…制御部、ST…チップスタック(被実装体)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16