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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】整畦体、及び畦塗り機
(51)【国際特許分類】
   A01B 35/00 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
A01B35/00 C
A01B35/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019185479
(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2021058158
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸治
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-097043(JP,A)
【文献】特開2000-014204(JP,A)
【文献】特開2000-188907(JP,A)
【文献】特開平03-201901(JP,A)
【文献】実開昭48-084505(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 35/00 - 35/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
畦に接触して畦の法面を整畦する法面整畦部と、
前記法面整畦部上に設けられた絶縁体と、
前記絶縁体を介して前記法面整畦部上に設けられた第1の電極と、
前記第1の電極を前記法面整畦部に固定する固着部材と、を備え、
前記法面整畦部は、第2の電極として作用し、
前記法面整畦部は、第1の凹部及び前記第1の凹部に形成された第1の貫通孔を有し、
前記第1の電極は、第2の凹部及び前記第2の凹部に形成された第2の貫通孔を有し、
前記第1の電極及び前記絶縁体が前記第1の凹部に嵌め込まれ、前記固着部材が前記第2の貫通孔、前記第1の貫通孔及び前記絶縁体の貫通孔に挿通されると共に前記第2の凹部に嵌め込まれ、前記第1の電極は法面整畦部に固定される、
整畦体。
【請求項2】
前記法面整畦部は、複数の前記絶縁体と複数の前記第1の電極が設けられている、
請求項1に記載の整畦体。
【請求項3】
前記法面整畦部は、複数の整畦板から構成され、
前記複数の前記整畦板のそれぞれは前記絶縁体及び前記第1の電極が1つ以上設けられている、
請求項2に記載の整畦体。
【請求項4】
前記第1の電極の形状は、蛇行形状である、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の整畦体。
【請求項5】
前記法面整畦部は、畦に接触して当該畦に土を塗り込む土塗込み面を有し、
前記絶縁体は、前記土塗込み面に対して突出しないように配置され、
前記第1の電極は、前記土塗込み面に対して略面一に配置されている請求項1乃至4の何れか一項に記載の整畦体。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の整畦体と、
前記第1の電極及び前記法面整畦部との間に電圧を印加する電圧印加手段と、を備えた畦塗り機。
【請求項7】
前記法面整畦部に電気的に接続され、畦に接触して畦の上面を整畦する上面整畦部を更に備えた請求項1乃至4の何れか一項に記載の整畦体と、
前記第1の電極及び前記上面整畦部との間に電圧を印加する電圧印加手段と、を備えた畦塗り機。
【請求項8】
前記電圧印加手段は、第1の電極及び前記法面整畦部との間に印加する電圧を変更可能に構成されている
請求項6又は7に記載の畦塗り機。
【請求項9】
前記電圧印加手段は、
前記第1の電極及び前記第2の電極と電気的に接続されたバッテリと
行機体から電源を供給するための第1の配線及び第2の配線のうち、
少なくとも何れか1つである、
請求項6乃至8の何れか一項に記載の畦塗り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土の付着を防止する機能を備えた整畦体、及び畦塗り機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畦塗り機は、トラクタ等の走行機体に牽引され、走行時に整畦体を回転させることにより、前処理体が先行して切り崩した旧畦の土を旧畦上に塗りつけ、新たに法面と上面とを有する新畦を形成することができる。
【0003】
畦塗り機が新畦を形成するとき、整畦体の表面(整畦の時に土と接する側の面)に土が付着するが、整畦体の表面に土が付着したまま、新畦を形成すると、畦が壊れる可能性があった。ここで、整畦体の表面に土が付着することを防止する技術の1つとして、畦塗り機に散水装置を搭載し、散水装置から整畦体の表面に散水する技術が知られている。また、例えば、絶縁体によって互いに絶縁された所定の電極とカバーに互いに異なる電圧を印加することで、土の付着を防止する機能を備えたロータリ型農業機械用カバーが知られている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平3-201901号公報
【文献】特開平3-201902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、畦塗り機に散水装置を搭載する場合、畦塗り機に散水装置を搭載する時間を要する、また、新畦を形成している途中で散水装置の水がなくなり、散水装置に水を補給する時間を要する、といった問題があった。また、特許文献1及び2は、ロータリ型農作業機のカバー部以外に土の付着を防止する機能を備えることを開示していない。
【0006】
本発明の課題は、土の付着を防止する機能を備えた整畦体、及び畦塗り機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態における整畦体は、畦に接触して畦の法面を整畦する法面整畦部と、法面整畦部上に設けられた絶縁体と、絶縁体を介して法面整畦部上に設けられた第1の電極と、を備え、法面整畦部は、第2の電極として作用する。
【0008】
法面整畦部は、複数の絶縁体と複数の第1の電極が設けられていてもよい。
【0009】
法面整畦部は、複数の整畦板から構成され、複数の整畦板のそれぞれは絶縁体及び第1の電極が1つ以上設けられていてもよい。
【0010】
第1の電極の形状は、蛇行形状であってもよい。
【0011】
法面整畦部は、畦に接触して当該畦に土を塗り込む土塗込み面を有し、法面整畦部、絶縁体、及び第1の電極は、土塗込み面に対して突出しないように略面一に配置されていてもよい。
【0012】
本発明の一実施形態における畦塗り機は、本発明の一実施形態における整畦体と、第1の電極及び法面整畦部との間に電圧を印加する電圧印加手段と、を備える。
【0013】
本発明の一実施形態における畦塗り機は、法面整畦部に電気的に接続され、畦に接触して畦の上面を整畦する上面整畦部を更に備えた本発明の一実施形態における整畦体と、第1の電極及び上面整畦部との間に電圧を印加する電圧印加手段と、を備える。
【0014】
電圧印加手段は、第1の電極及び法面整畦部との間に印加する電圧を変更可能に構成されてもよい。
【0015】
電圧印加手段は、第1の電極及び前記第2の電極と電気的に接続されたバッテリと、第1の電極及び前記第2の電極と電気的に接続され、前記畦塗り機を用いて生成された電気エネルギーから電圧を生成する電圧生成部と、走行機体から電源を供給するための第1の配線及び第2の配線のうちの、少なくとも何れか1つであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、土の付着を防止する機能を備えた畦塗り機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態における畦塗り機を走行機体に連結した状態の構成を示す上面図である。
図2】(A)は、本発明の一実施形態における畦塗り機を示す側面図である。(B)は、本発明の一実施形態における整畦体の構成を示す側面図である。
図3】(A)は、図2(B)に示した整畦体のA1-A2線に沿った断面図である。(B)は、図2(B)に示した整畦体のB1-B2線に沿った断面図である。(C)は、本発明の一実施形態における畦塗り機において、土の付着を防止することを説明するための一例を示す概略図である。(D)は、本発明の一実施形態における畦塗り機において、土の付着を防止することを説明するための一例を示す概略図である。
図4】(A)は、本発明の一実施形態における整畦体の変形例を示す側面図である。(B)は、本発明の一実施形態における整畦体の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態における畦塗り機について説明する。但し、本発明の畦塗り機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0019】
なお、本発明の一実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の記号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の構成等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0020】
本願の明細書及び特許請求の範囲において、「上」は圃場から垂直に遠ざかる方向を示し、「下」は圃場に向かって垂直に近づく方向を示す。また、「前」は作業機を基準として走行機体が位置する方向を示し、「後」は前とは180°反対の方向を示す。また、「左」は作業機を基準として走行機体が位置する方向に向かったときの左を示し、「右」は左とは180°反対の方向を示す。
【0021】
<第1実施形態>
本発明の一実施形態では、土の付着を防止する機能を備えた畦塗り機100の構成について、図1乃至図3を用いて説明する。
【0022】
(1-1.畦塗り機100の構成)
図1は、畦塗り機100を走行機体50に連結した状態の構成を示す上面図である。図2(A)は、畦塗り機100の構成を示す側面図である。
【0023】
図1及び図2(A)に示すように、畦塗り機100は、装着部110、連結部150、整畦体120、及び、土盛り部140aを備えている。なお、本発明の一実施形態において、整畦体120、及び土盛り部140aをまとめて作業部と呼ぶ場合がある。
【0024】
装着部110は、ロアリンク連結部111a、111b、トップリンク連結部112、ヒッチフレーム113、及び入力軸114を備えるとともに、トラクタ等の走行機体50のリンク機構60(例えば3点リンク機構)に装着される。なお、畦塗り機100と走行機体50との連結は、走行機体50の3点リンクに装着されるオートヒッチフレームを介してもよい。ヒッチフレーム113は、入力軸114に伝達された動力を連結部150の伝動機構に伝達する機構を備えるとともに、連結部150に連結される。入力軸114は、走行機体50のPTO軸にユニバーサルジョイント等の伝動継手を介して接続され、走行機体50から動力を伝達される。
【0025】
連結部150は、リンク部材131、オフセットフレーム132、オフセット制御用シリンダ133及び作業方向制御用シリンダ134を備える。また、連結部150は、一端が装着部110のヒッチフレーム113に支持され、他端が整畦体120及び土盛り部140aに取り付けられた部材であり、装着部110と整畦体120及び土盛り部140aを連結する。リンク部材131は、一端が装着部110に対して回動可能に支持され、他端がリヤフレーム170に対して回動可能に支持された部材であり、整畦体120の作業位置を制御する部材である。オフセットフレーム132は、整畦体120に動力を伝達する伝動手段を備えるとともに、一端はヒッチフレーム113に取り付けられ、他端は作業部と接続される。
【0026】
オフセットフレーム132とリンク部材131とは平行に配置され、これらとヒッチフレーム113及びリヤフレーム170で平行リンク機構を形成している。この平行リンク機構により、作業部をオフセット移動させることができる。即ち、走行機体50から畦塗り機100を任意の位置にオフセットし、畦を形成することができる。なお、連結部150の揺動に対して整畦体120の作業方向は変化しない。即ち、畦を整畦する作業面を維持したまま整畦体120のオフセット移動が可能となる。
【0027】
また、本発明の一実施形態においては、オフセット制御用シリンダ133及び作業方向制御用シリンダ134の制御を容易化するために平行リンク機構を採用しているが、本発明の実施態様としては、オフセット制御用シリンダ133と作業方向制御用シリンダ134を独立して制御するように構成することも可能である。このような平行リンク機構を構成しない実施態様の場合でも以下の説明と同様の制御が可能である。
【0028】
整畦体120は、回転軸R120を中心として回転自在に支持された略円錐台形状の法面整畦部121と、法面整畦部121の頂部に取付基部(図示を省略)を介して取り付けられた上面整畦部122とを備える。整畦体120は、オフセットフレーム132の下側に配置された伝動支持ケース(図示を省略)内の動力伝達機構を介して回転動力が伝達されるように構成されるとともに、走行機体50の側方位置に畦を形成する。具体的には、法面整畦部121は、後述する土盛り部140aなどによって切り崩された旧畦又は供給された土に接触して新畦の法面を整畦し、上面整畦部122は、後述する土盛り部140aなどによって切り崩された旧畦又は供給された土に接触して新畦の上面を整畦する。法面整畦部121は、電極172及び整畦板171から構成されている。そして、電極172及び整畦板171に電源部200から電圧を供給されることで、法面整畦部121の表面側、すなわち法面整畦部121の土との接触する側に土が付着することを防止可能になっている。整畦体120の具体的な構成については後述する。なお、本明細書等において、「電圧を供給」との記載を、「電圧を印加」との記載に言い換えてもよい。
【0029】
電源部200は、電極172及び整畦板171の間に電圧を印加する機能を有する。電源部200は、第1の配線202、及び第2の配線204に電気的に接続される。第1の配線202は、例えば、電極172に電気的に接続され、第2の配線204は、例えば、整畦板171に電気的に接続される。電源部200は、例えば、バッテリであってもよく、走行機体50又は畦塗り機100を用いて生成された電気エネルギーを蓄電し、かつ、電極172及び整畦板171に電圧を供給可能な装置であってもよい。また、本発明の一実施形態における整畦体120は、走行機体50又は畦塗り機100を用いて生成された電気エネルギーを、第1の配線202、及び第2の配線204を介して、供給されてもよい。
【0030】
図2(A)では、電源部200がバッテリであり、電源部200の負極が整畦板171に電気的に接続され、電源部200はマイナスの電位を整畦板171に供給し、電源部200の正極が電極172に電気的に接続され、電源部200はプラスの電位を電極172に供給する例を示す。なお、電源部200は、走行機体50に備えられてもよく、畦塗り機100に備えられてもよい。電源部200は、法面整畦部121に電圧を供給可能な構成であれば、どこに備えられてもよい。本明細書等において、走行機体50又は畦塗り機100を用いて生成された電気エネルギーを蓄電し、かつ、電極172及び整畦板171に電圧を供給可能な装置を、電圧生成部と呼ぶ場合がある。また、本明細書等において、電源部200、第1の配線202及び第2の配線204、又は、電源部200と第1の配線202と第2の配線204をまとめて、電圧印加手段と呼ぶ場合がある。
【0031】
なお、整畦板171と電源部200の負極とを直接接続する必要はなく、アースに接続する構成としてもよい。例えば、電源部200の負極を、アースに接続された畦塗り機100の導電体部分(例えば、オフセットフレーム132等)に電気的に接続してもよい。
【0032】
なお、本発明の一実施形態において、電源部200から電極172及び整畦板171に電圧を供給する構成は、図2(A)を用いて説明された構成に限定されない。電極172に供給される電位と、整畦板171に供給される電位とで電位差があればよく、電極172及び整畦板171の間に所望の電圧が印加される構成であればよい。
【0033】
土盛り部140aは、地面の土を掘り起こし、又は、地面の土を削り、掘り起こした土や削った土、及び、巻き上げられた土を砕土し、整畦体120の前方に掘り起こした土や削った土を供給する。例えば、土盛り部140aとしては、複数の耕耘爪を駆動軸に装着したロータリ耕耘型の処理機構を採用することができる。
【0034】
また、整畦体120の近傍には、整畦体120の作業位置を検出する作業位置検出手段としての位置センサ160が備えられてもよい。位置センサ160は、支持ケース(図示を省略)から取り付けアーム161を介して整畦体120の後方に配置されている。位置センサ160は、ポテンショメーターに一端が固定されたセンサロッド162で構成されている。このセンサロッド162の位置によって法面整畦部121と畦の法面との距離を検出することができる。また、位置センサ160は、画像認識用の撮像素子であってもよい。この場合、位置センサ160には、例えば測距イメージセンサが用いられる。
【0035】
また、整畦体120の作業方向を検出する作業方向検出手段として角度センサ(図示を省略)が備えられてもよい。この場合、角度センサは、連結部150に対する整畦体120の相対的な方向変化を検出するものではなく、整畦体120の単独の変化を検出するものとすることが好ましい。例えば、角度センサとして、オフセットフレーム132内の伝動軸の周囲にジャイロセンサを配置してもよい。
【0036】
(1-2.整畦体120の構成)
図2及び図3を参照し、整畦体120の具体的な構成について説明する。図2(B)は、整畦体120構成を示す側面図である。図1及び図2(A)と同一、又は類似する構成の説明は、省略されることがある。
【0037】
図2(B)に示されるように、整畦体120は、回転軸R120を中心に矢印の方向に回転しながら土に接触して畦を整畦する作業を行う。すなわち、整畦体120は、回転して畦に土を塗り込みながら、畦を整畦する。詳細は後述するが、整畦体120の法面整畦部121に設けられた電極172及び整畦板171に電圧が印加されることで、整畦体120への土の付着が防止される。
【0038】
整畦体120は、法面整畦部121と、法面整畦部121にボルト締結(図示を省略)された上面整畦部122とを備える。法面整畦部121は、整畦板171、電極172、第1の絶縁体173、及び第2の絶縁体174を備える。図2(B)に示される例では、法面整畦部121は、複数の整畦板171を連結して構成される。例えば、法面整畦部121は8枚の整畦板171を連結して構成される。複数の整畦板171の連結は、例えば、複数の整畦板171のそれぞれを溶接により直接的に接続される。
【0039】
複数の整畦板171のそれぞれは、複数の電極172を備える。本明細書等においては、複数の電極172をまとめて電極群と呼ばれる。詳細は後述するが、本発明の一実施形態においては、電極172の面積が1つの整畦板171の面積よりも小さい構成としているが、電極172及び整畦板171の面積は、整畦板171に対する電極172の配置や、整畦板171及び電極172間に印加する電圧に応じて、適宜変更可能である。
【0040】
また、電極172と互いに隣接する電極172との間の距離は、側面視において、略同じ又は同じでもよい。電極172と互いに隣接する電極172との間の距離が略同じ又は同じ場合、電極172のそれぞれと整畦板171との間に発生する電界を均一にすることができるため、電極172及び整畦板171も付着した土に満遍なく電流を流すことができる。その結果、法面整畦部121に土が付着することを防止することができる、または、法面整畦部121に付着した土を剥がれやすくすることができる。
【0041】
また、本発明の一実施形態において、電極172の形状は矩形状である例を示したが、電極172の形状は矩形状に限定されるものではない。電極172の形状は、例えば、湾曲した形状でもよく、だ円状でもよく、圃場の土質、水分条件、畦塗り機の構成等によって、適宜決定される形状であればよい。また、電極172の配置についても、本発明の一実施形態において説明された配置に限定されるものではない。電極172の配置は、例えば、電極172の形状と同様に、圃場の土質、水分条件、畦塗り機の構成等によって、適宜決定されればよい。
【0042】
また、本発明の一実施形態における法面整畦部121は、リング状部材(図示を省略)で覆われてもよい。リング状部材は、例えば、図2(B)に示された法面整畦部121の最外縁を覆うように設けられる。法面整畦部121がリング状部材で覆われることで、法面整畦部121の縁が保護され、法面整畦部121が地面に当接したときの摩耗、又は損傷を防ぐことができる。
【0043】
また、図2においては、法面整畦部121は8枚の整畦板171を連結して構成される例を示したが、法面整畦部121の枚数は図2に示した枚数に制限されるものではない。整畦板171は、例えば、2種類の整畦板の組み合わせを1つの単位として、2種類の整畦板が交互に連結されることによって構成されてもよい。また、法面整畦部121は、一体で構成することも可能であり、例えば、一枚の板をプレスした一体型プレス構造としてもよい。
【0044】
なお、本発明の一実施形態では、複数の整畦板171のそれぞれは、溶接により直接的に溶接されている例を示しているが、この構成に限定されるものではない。例えば、複数の整畦板171のそれぞれは、連結部材を介して間接的に連結するようにしてもよい。この場合、各整畦板171と連結部材とを溶接すればよい。また、接合手段として溶接を例に挙げて説明したが、この構成に限定されるものではない。ボルト及びナット等を用いた他の固着部材を用いて接合することにより、各整畦板同士を連結することも可能である。
【0045】
続いて、図3(A)及び(B)を用いて、整畦体120の断面について説明する。図3(A)は、図2(B)に示した法面整畦部121のA1-A2線に沿った断面図である。
【0046】
図3(A)に示されるように、法面整畦部121は、例えば、複数の整畦板171、複数の電極172、第1の絶縁体173、第2の絶縁体174、固着部材175、及び端子部176を有する。
【0047】
整畦板171には、例えば、凹部171aが形成されており、この凹部171aには電極172を取り付けるための開口171bが形成されている。電極172は、整畦板171の凹部171aに第1の絶縁体173、第2の絶縁体174を介して固着部材175により着脱可能に固定されている。図3(A)において、固着部材175は、例えば、ボルト175-1及びナット175-2である。同図に示すように、第2の絶縁体174上に整畦板171の凹部171a裏側が当接している。そして、整畦板171の凹部171aの開口171bを埋め、かつ整畦板171と電極172が接触しないように、整畦板171の凹部171aの表側及び第2の絶縁体174上に第1の絶縁体173が積層配置されていると共に、第1の絶縁体173上には、電極172が積層されている。固着部材175は、凹部171aに形成された開口171bを貫通し、整畦板171の凹部171aの開口端を挟み込むように設けられた第1の絶縁体173及び第2の絶縁体174を介して、電極172を整畦板171に固定している。このように、整畦板171と電極172は、第1の絶縁体173及び第2の絶縁体174によって、互いに電気的に絶縁されており、それぞれに所望の電圧が供給されるように構成されている。
【0048】
なお、図3に示すように、整畦体120は、整畦作業時に畦と当接する側の面(整畦の時に畦と接触する側の面)が畦側に突出しないように(面一又はわずかに凹むように)構成されている。すなわち、整畦体120の畦接触面を構成する整畦板171の表面、第1の絶縁体173、電極172、固着部材175(ボルト175-1)の表面が略面一となっている。これにより、整畦板171に対する電極172の取り付けに起因する整畦状態の悪化を防止することができる。
【0049】
なお、整畦状態の悪化を防止するためには、少なくとも整畦作業時において畦に当接し、畦に対して土を塗り込む整畦板171の土塗込み面171cに対して、電極172、第1の絶縁体173、及び固着部材175が略面一に構成されていればよい。整畦体120は、均一な段差を周方向に複数設けて構成することも可能であるが、この場合、整畦体120(整畦板171)の全表面が土塗込み面171cとして機能するわけではない。例えば、整畦体120を複数の整畦板171で構成する場合、整畦板171の一方の端を、所定の段差を持つように折り曲げておき、この折り曲げ部分を隣接する整畦板171の折り曲げていない方の一端と接合することにより、複数の段差付きの整畦体120を構成することができる。この場合、各整畦板171は、回転方向上流側になるほど畦に対して徐々にせり出すように構成されている。このような段差付きの整畦体120の段差部分には、土塗込み面171cとして機能しない部分が生じることが考えられる。この整畦板171の土塗込み面171cとして機能しない部分に電極を配置するときには、畦塗り作業時に畦に電極172、第1の絶縁体173、及び固着部材175が接触しないよう構成する限り、整畦板171に対して電極172、第1の絶縁体173、及び固着部材175を面一で配置する必要はなく、整畦板171に対してこれらが突出する構成としてもよい。なお、本実施形態では、固着部材175と電極172を別体で構成したが、固着部材175は、電極172と一体構造としてもよい。
【0050】
また、電極172には、固着部材175によって、端子部176が、着脱可能に固定されている。具体的には、端子部176は、第2の絶縁体174とナット175-2との間に設けられている。端子部176に電気的に接続された配線(図示は省略)が、図2(A)に示された第1の配線202に電気的に接続され、電源部200から電圧を供給されるように構成されている。電極172は、電源部200から整畦板171に供給される電圧とは異なる電圧を供給されるように構成されていればよく、電極172の少なくとも1箇所が、1つの固着部材175によって、端子部176に着脱可能に固定されていればよい。本明細書等において、電極172、固着部材175、及び端子部176をまとめて第1の電極と呼ぶ場合があり、電極172、または、端子部176の何れかを第1の電極と呼ぶ場合もある。
【0051】
なお、整畦体120に設けられた複数の電極172のそれぞれも、図3(A)に示した電極172と同様の構成で整畦板171に取り付けられている。
【0052】
本発明の一実施形態において、電極172は、第1の絶縁体173及び第2の絶縁体174を介して、整畦板171にボルト175-1及びナット175-2で着脱可能固定され、交換可能に構成されている。例えば、電極172が劣化し、土に電流を流しにくくなった場合、また、電極172が破損し、電極172に電圧を供給することが困難になった場合など、電極172を交換することができる。その結果、本発明の構成によって、法面整畦部121一式を交換する必要が無いため、交換のコストを抑えることが可能な整畦部を備えた畦塗り機を提供することができる。
【0053】
本発明の一実施形態において、整畦板171と電極172は、第1の絶縁体173及び第2の絶縁体174によって、互いに電気的に絶縁される例を示したが、ここで示された構成に限定されるものではない。例えば、整畦板171と電極172は、3つ以上の絶縁体で互いに電気的に絶縁されてもよく、第1の絶縁体173だけで互いに電気的に絶縁されてもよい。また、第1の絶縁体173及び第2の絶縁体174は、例えば、ゴム状の部材であってもよく、樹脂絶縁膜のような絶縁シートであってもよい。また、電極172の整畦板171の接触面のみを樹脂絶縁膜でコーティングしてもよい。
【0054】
図3(B)は、図2(B)に示した法面整畦部121のB1-B2線に沿った断面図である。図3(B)は、法面整畦部121において、電極172が備えられていない領域の断面図である。図3(B)に示されるように、法面整畦部121は、例えば、複数の整畦板171、固着部材177、及び端子部178を有する。なお、固着部材177は、整畦板171にそれぞれ設置してもよいし、整畦体120内に1つでもよい。
【0055】
図3(B)において、固着部材177は、例えば、溶着ボルト177-1及びナット177-2である。整畦板171は、溶着構造で構成されている。端子部178は、溶着ボルト177-1とナット177-2の間に設けられ、溶着ボルト177-1とナット177-2に電気的に接続されている。また、端子部178に電気的に接続された配線(図示は省略)は、図2(A)に示された第2の配線204に電気的に接続され、電源部200から電圧を供給されるように構成されている。整畦板171は、電源部200から電極172に供給される電圧とは異なる電圧を供給されるように構成されている。整畦板171の少なくとも1箇所に、1つの固着部材177によって、端子部178が着脱不能に固定されていればよい。本明細書等において、整畦板171、固着部材177、及び端子部178をまとめて第2の電極と呼ぶ場合があり、整畦板171、または、端子部178の何れかを第2の電極と呼ぶ場合もある。
【0056】
本発明の一実施形態において、整畦板171と電極172への電圧供給方法は、互いに異なる電圧を供給し、電界が形成され、土に電流を流すことが可能な方法であればよく、例えば、パルス状の電圧が整畦板171と電極172に供給されてもよく、直流電圧が整畦板171と電極172に供給されてもよい。整畦板171と電極172への電圧供給方法は、圃場の土質、水分条件、畦塗り機の構成などを考慮し、適宜決定されればよい。なお、本実施形態では、整畦板171にマイナスの電圧、電極172にプラスの電圧を印加する構成としたが、整畦板171及び電極172との間に印加する電圧を変更可能な構成とすることも可能である。例えば、電源部200と整畦板171及び電極172とを接続する配線間に、電圧の正負切替を行うスイッチ(回路)を設け(すなわち、第1の配線202及び第2の配線204にスイッチを介在させ)、スイッチ切替えにより、印加する電圧の正負を逆転させる構成としてもよい。また、電源部200と整畦板171及び電極172とを接続する配線間に、可変電圧器を設け(すなわち、第1の配線202及び第2の配線204に可変電圧器を介在させ)、電源部200と整畦板171及び電極172との間に印加する電圧を調整する構成とすることも可能である。
【0057】
なお、畦塗り機100は、整畦体120が回転しながら整畦していく構成であるため、本実施形態では、整畦体120(整畦板171及び電極172)と電源部200との接続を、スリップリング(回転コネクタ:図示を省略)を介して行うようにしている。
【0058】
また、本明細書等において、スイッチを介在させた第1の配線202及び第2の配線204、スイッチを介在させた第1の配線202及び第2の配線204と電源部200、可変電圧器を介在させた第1の配線202及び第2の配線204、又は、スイッチを介在させた第1の配線202及び第2の配線204と電源部200を、電圧印加手段と呼ぶ場合もある。電圧印加手段は、スリップリングを含んでもよい。
【0059】
以上のとおり、本発明の一実施形態における整畦体120は、整畦板171と電極172が絶縁体によって互いに電気的に絶縁され、整畦板171と電極172が互いに異なる電圧を供給される構成を有する。このような構成によって、電極172と、法面整畦部121(整畦板171)とは、電源部200から電気エネルギーを供給され、電極172は第1の電極として作用し、法面整畦部121(整畦板171)は第1の電極と対になる第2の電極として作用する。本発明の一実施形態における整畦体120(具体的には、法面整畦部121)を構成する整畦板171と電極172との間に電圧が印加されると、整畦板171に付着した土を介して電流が流れる回路が構成される。その結果、本発明によって、後述するメカニズムに基づいて、法面整畦部121に土が付着することを防止することができる、または、法面整畦部121に付着した土を剥がれやすくすることができる。したがって、本発明によって、土の付着を防止する整畦体を備えた畦塗り機を提供することができる。
【0060】
(1-3.土の付着を防止する第1の方法)
土の付着を防止する方法の一例について、図3(C)を用いて、第1の方法を説明する。図3(C)は、本発明の一実施形態における畦塗り機100において、土の付着を防止することを説明するための一例を示す概略図である。図1図2図3(A)及び(B)と同一、又は類似する構成の説明は、省略されることがある。
【0061】
図3(C)に示されるように、例えば、整畦板171には、第2の配線204を介して、電源部200からマイナスの電圧が供給される。例えば、電極172には、第1の配線202、端子部176、及び固着部材175を介して、電源部200からプラスの電圧を供給される。すなわち、整畦板171に供給される電圧は、電極172に供給される電圧よりも小さい電圧である。なお、本実施形態では、整畦板171と電源部200とを第2の配線204で接続する構成としているが、整畦板171(整畦体120)と上面整畦部122とはボルトにより電気的に接続されているため、電源部200と上面整畦部122とを配線接続する構成とし、上面整畦部122を介して整畦板171に電位を印加する構成としてもよい。
【0062】
整畦板171にマイナスの電圧(電位)を供給し、電極172にプラスの電圧(電位)を供給することで、整畦体120に対する土の付着を防止するメカニズムは、以下のように考えられる。
【0063】
一般的に土210の粒子は、マイナス電荷を帯びており、その表面には、例えば、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、カルシウムイオン(Ca2+)等の陽イオンを含んだプラス電荷を帯びた水が存在している可能性が高いと考えられる。畦塗り機100によって、作業が開始されると、整畦板171と電極172との間には電圧が印加され、整畦板171にはマイナスの電位が供給される。ここに、水分を含んだ土210が整畦体120に付着すると、電気浸透が生じ、正帯電した水が整畦板171側に移動する。
【0064】
すなわち、畦塗り機100によって、作業が続けられると、整畦板171に向かって電気浸透流が生じ、整畦板171の表面に水膜212が形成される。そして、この整畦板171の表面に形成された水膜212によって、整畦板171に付着した土210が剥がれ易くなると考えられる。
【0065】
以上のとおり、本発明の一実施形態における整畦体120は、整畦板171と電極172が互いに異なる電圧を供給されることで、法面整畦部121に土が付着することを防止することができる、または、法面整畦部121に付着した土を剥がれやすくすることができる。したがって、本発明によって、土の付着を防止する整畦体を備えた畦塗り機を提供することができる。
【0066】
なお、電源部200と整畦板171及び電極172との間にスイッチを介在させた場合、整畦板171及び電極172に印加する電位を正負逆転させることができる。すなわち、スイッチを切替え、整畦板171にプラス電位を印加すると共に電極172にマイナス電位を印加することで、電極172にも水膜を形成することができる。したがって、適宜スイッチ切替えを行うことにより、整畦板171及び電極172のいずれに対しても土の付着を防止することが可能となる。
【0067】
(1-4.土の付着を防止する第2の方法)
土の付着を防止する方法の一例について、図3(D)を用いて、第2の方法を説明する。図3(D)は、本発明の一実施形態における畦塗り機100において、土の付着を防止することを説明するための一例を示す概略図である。図1図2図3(A)、(B)及び(C)と同一、又は類似する構成の説明は、省略されることがある。
【0068】
図3(D)に示される例は、図3(C)と比較して、整畦板171に供給される電圧と、電極172に供給される電圧の極性が異なる。図3(D)に示されるように、整畦板171は、第1の配線202を介して、電源部200からプラスの電圧を供給される。電極172は、第2の配線204、端子部176、及び固着部材175を介して、電源部200からマイナスの電圧を供給される。
【0069】
整畦板171に供給される電圧と、電極172に供給される電圧の極性が異なること以外は、図3(C)と同様であるから、ここでの説明は省略される。
【0070】
以上のとおり、本発明の一実施形態における整畦体120は、整畦板171と電極172が互いに異なる電圧を供給されることで、法面整畦部121に土が付着することを防止することができる、または、法面整畦部121に付着した土を剥がれやすくすることができる。したがって、本発明によって、土の付着を防止する整畦体を備えた畦塗り機を提供することができる。
【0071】
(1-5.変形例1)
変形例1では、本発明の一実施形態における電極172の変形例について、図4(A)を用いて説明する。図1乃至図3と同一、又は類似する構成の説明は、省略されることがある。
【0072】
図4(A)には、電極172の一例として、蛇行形状の電極180を示す。蛇行形状の電極180は、図2(B)に示された複数の電極172が1つに接続された電極である。それ以外の構成は、図2(B)に示された構成と同様であるからここでの説明は省略される。本発明の一実施形態において、蛇行形状の電極とは、図4(A)に示されるように、一端から他端にかけて、電極が延伸する第1の方向に対して左に湾曲し、電極が延伸する第2の方向に対して右に湾曲する電極の形状のことである。
【0073】
複数の電極172が1つの蛇行形状の電極180になることで、複数の電極172を整畦板171のそれぞれに配置する必要がなくなり、1つの蛇行形状の電極180を整畦板171のそれぞれに配置すればよいため、法面整畦部121への電極172の形成が容易になる。その結果、整畦体120の製造が容易になり、製造のコストを抑制することができる。
【0074】
(1-6.変形例2)
変形例2では、本発明の一実施形態における電極172の変形例について、図4(B)を用いて説明する。図1乃至図4(A)と同一、又は類似する構成の説明は、省略されることがある。
【0075】
図4(B)に示されるように、電極181は、図2(B)に示された複数の電極172と比較して、電極が1つになり、かつ、隣接する整畦板171の近傍に配置された例が示される。それ以外の構成は、図2(B)に示された構成と同様であるからここでの説明は省略される。
【0076】
複数の整畦板171は、互いに重なる領域(以下「隣接部70」と呼ぶ。)を有し、互いに隣接する整畦板171同士は、例えば、溶接で連結されている。畦塗り機100によって畦塗り作業が行われると、整畦体120は、図4(B)に示される回転方向に回転する。各整畦板171は、回転方向の下流側から上流側に向かって、徐々に畦に向かって張り出すような湾曲面を有している。各整畦板171の隣接部70は段差になっており、回転方向上流側に位置する整畦板171の下流端に対し、回転方向下流側に位置する整畦板171の上流端が畦に向かってせり出す(突出する)ように構成されている。したがって、整畦時の整畦体120の回転に伴い、各整畦板171は畦に対して徐々に強く当接してゆくようになる。そのため、各整畦板171は、その下流側に比べ、上流側に土が付着しやすくなっている。
【0077】
変形例2では、電極181は、各整畦板171の回転方向下流側(すなわち、整畦作業時において、畦に当接しない、若しくは畦に対する当接力が弱い領域)に配置される。この場合も、電極181は、電源部200の正極に接続され、整畦板171は、電源部200の負極に接続される。したがって、上述のメカニズムに基づき、電極181から整畦板171に向かって電気浸透流が生じ、整畦板171の表面(具体的には、整畦板171の上流側の土塗込み面171c)に水膜が形成される。つまり、整畦板171の上流側に付着した土が剥がれ易くなる。このように、図4(B)に示す例では、土が付着し易い整畦板171の上流側に水膜が形成されるように電極181が配置されているため、効率的に整畦板171への土の付着を防止することができる。なお、電極181は、上流側に配置されてもよい。この場合、電極181は、電源部200の負極に接続され、整畦板171は、電源部200の正極に接続される。したがって、上述のメカニズムに基づき、整畦板171から電極181に向かって電気浸透流が生じ、上流側に配置された電極181の表面に水膜が形成される。つまり、上流側に配置された電極181に付着した土が剥がれ易くなる。このように、図4(B)に示す例では、土が付着し易い上流側に水膜が形成されるように電極181が配置されているため、効率的に整畦体120への土の付着を防止することができる。
【0078】
以上のように、本発明によって、土の付着を防止する機能を備えた畦塗り機を提供することができる。よって、本発明の一実施形態に係る畦塗り機を用いることで、畦塗り機は散水装置を備える必要がないため、畦塗り機を簡素化することができる。また、本発明の一実施形態に係る畦塗り機を用いることで、畦塗り機に散水装置を搭載する必要がなく、新畦を形成している途中で散水装置の水がなくなり畦の形成不良が生じることもなく、また、散水装置に水を補給するための作業中断もなくなるため、作業時間を短縮できる。
【0079】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は上記の実施形態又は変形例に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、本実施形態の畦塗り機を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。さらに、上述した各実施形態又は変形例は、相互に矛盾がない限り適宜組み合わせが可能であり、各実施形態又は変形例に共通する技術事項については、明示の記載がなくても各実施形態又は変形例に含まれる。
【0080】
また、上述した各実施形態又は変形例の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0081】
50:走行機体、60:リンク機構、100:畦塗り機、110:装着部、111a:ロアリンク連結部、111b:ロアリンク連結部、112:トップリンク連結部、113:ヒッチフレーム、114:入力軸、120:整畦体、121:法面整畦部、122:上面整畦部、131:リンク部材、132:オフセットフレーム、133:オフセット制御用シリンダ、134:作業方向制御用シリンダ、140a:土盛り部、150:連結部、160:位置センサ、161:アーム、162:センサロッド、165:角度センサ、170:リヤフレーム、171:整畦板、171a:凹部、171b:開口、171c:土塗込み面、172:電極、173:第1の絶縁体、174:第2の絶縁体、175:固着部材、175-1:ボルト、175-2:ナット、177:固着部材、177-1:溶着ボルト、177-2:ナット、176:端子部、178:端子部、180:電極、181:電極、200:電源部、202:第1の配線、204:第2の配線、210:土、212:水膜
図1
図2
図3
図4