(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】シート巻取装置
(51)【国際特許分類】
B65H 19/28 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
B65H19/28 B
(21)【出願番号】P 2019212067
(22)【出願日】2019-11-25
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】592192000
【氏名又は名称】甲南設計工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤井 正典
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-182559(JP,A)
【文献】実開昭51-061328(JP,U)
【文献】特開平08-268605(JP,A)
【文献】特開平06-227716(JP,A)
【文献】米国特許第05381982(US,A)
【文献】中国実用新案第202464862(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 19/00-19/30
B65H 21/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを巻き付けるスプールが装着された2本の巻取軸を、シートの巻き取りを行う巻取位置とスプールの交換を行う交換位置との間で入れ替えるターレット機構と、前記ターレット機構がシートを巻き取った巻取軸を交換位置に送り、スプールの交換が完了した巻取軸を巻取位置に送った巻取準備状態で、前記巻取位置よりも下流側でシートを切断する切断刃と、前記巻取位置のスプールに対して接離する上下一対のガイド機構を有する巻付ユニットとを備え、
前記巻取準備状態で、前記巻付ユニットの各ガイド機構を巻取位置のスプールに接近させて、その一方のガイド機構でシートをスプールに押し付け、前記切断刃でシートを切断し、前記シートの上流側の切断端部を巻取位置まで引き戻して、前記巻取位置の巻取軸をスプールと一体に回転させることにより、前記シートの切断端部を他方のガイド機構とスプールの間に送り込んで、そのスプールにシートを巻き付けていくようにしたシート巻取装置において、
前記ガイド機構は、シート幅方向と平行な軸心を有する一対のサポートロールに案内ベルトを巻き掛けたものであり、前記巻取位置のスプールに接近したときに、前記一対のサポートロールが巻取位置のスプールの軸心に対して上流側と下流側に位置して、前記案内ベルトを巻取位置のスプールの外周に押し付けるようになっており、
前記ガイド機構を巻取位置のスプールに接近させたときのサポートロールの位置を調整するサポートロール位置調整機構と、前記案内ベルトの張力を調整する張力調整機構とが設けられて
おり、
前記サポートロール位置調整機構は、前記各サポートロールをそれぞれ回転自在に支持する一対の支持体をシート移送方向にスライド可能に保持し、シート幅方向の両側で前記一対の支持体の一方をシート移送方向に延びるねじ軸と右ねじ結合させ、他方を前記ねじ軸と左ねじ結合させて、前記ねじ軸を回転させることにより、前記一対の支持体をそれぞれが支持するサポートロールと一体にシート移送方向に沿って互いに逆方向に移動させるものであることを特徴とす
るシート巻取装置。
【請求項2】
前記サポートロール位置調整機構の支持体は、前記ねじ軸と右ねじ結合または左ねじ結合するねじ結合部と、前記ねじ結合部に鉛直面内で回動可能に取り付けられた状態で前記サポートロールを支持する回動部と、前記回動部を回動させる補助操作部とを有していることを特徴とする請求項
1に記載のシート巻取装置。
【請求項3】
前記張力調整機構は、シート幅方向と平行な軸心を有し、前記サポートロールとともに前記案内ベルトを巻き掛けられるテンションロールを少なくとも1つ設け、前記テンションロールを案内ベルトの張力が変化する方向に移動させるものであることを特徴とする請求項1
または2に記載のシート巻取装置。
【請求項4】
前記テンションロールの少なくとも1つが、シート幅方向と平行な軸心を有するテンションロール回動軸に固定されたテンションロールレバーで支持されており、前記テンションロール回動軸を回動させるテンションロール操作部が設けられていることを特徴とする請求項
3に記載のシート巻取装置。
【請求項5】
前記一対のサポートロールの間で前記案内ベルトを巻取位置のスプールの外周に押し付ける押さえロールと、前記押さえロールの位置を調整する押さえロール位置調整機構とが設けられていることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれかに記載のシート巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シート等の帯状のシートを連続して巻き取るシート巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂シートは、一般に、押出成形によって製造されており、その押出成形を行う押出機から連続的に押し出された後、所定の長さに切断されて製品とされるものと、帯状のまま巻き取られ、後工程で表面への印刷等の加工を受けて製品とされるものがある。後者の製品の生産工程では、上流側から供給されるシートを巻取軸の外周に装着したスプールに巻き付けていくシート巻取装置が少なくとも1つ設置されている。そして、そのシート巻取装置としては、2本の巻取軸をそれぞれに装着されたスプールと一体に、シートの巻き取りを行う巻取位置とスプールの交換を行う交換位置との間で入れ替えるターレット機構を備え、スプール交換のためにラインを停止させることなく、シートを連続して巻き取ることができるようにしたターレット式のものが多く用いられている。
【0003】
上記のようなターレット式のシート巻取装置には、巻取位置の巻取軸が所定量のシートを巻き取った時点で、ターレット機構を作動させることにより巻取位置の巻取軸を交換位置へ送るとともに、交換位置で新たなスプールを装着された巻取軸を巻取位置へ送って巻取準備状態とし、巻取位置の近傍でシートを切断した後、そのシートの上流側の切断端部を巻付ユニットで巻取位置のスプールに密着させ、巻取位置の巻取軸をスプールと一体に回転させることにより、シートをスプールに巻き付けていくようにしたものがある(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0004】
ところが、上記特許文献1、2で提案されているシート巻取装置は、いずれも構成要素の配置上の制約が大きく、巻付ユニットの各構成要素がシートの移送位置の上方と下方のいずれか一方にしか設けられていない。このため、連続的に供給されるシートを分割して複数のスプールに巻き取る場合、例えば、シートの生産工程の途中で一旦巻き取ったシートを印刷加工等のために複数のスプールに巻き直す場合に、スプール間で正巻(巻き直し前後で巻取方向が同じになる巻き方)と逆巻(巻き直し前後で巻取方向が逆になる巻き方)を切り替えることができない。このような場合にスプール間で正巻と逆巻を切り替えようとすれば、ラインを停止してシートの巻出装置側でスプールの装着方向を逆にする作業が必要となる。
【0005】
これに対し、本出願人は、巻付ユニットとして、巻取位置のスプールに対して接離する上下一対のガイド機構を有するものを採用し、巻取準備状態で巻付ユニットの各ガイド機構を巻取位置のスプールに接近させて、その一方のガイド機構でシートをスプールに押し付け、ガイド機構よりも下流側でシートを切断し、シートの上流側の切断端部を巻取位置まで引き戻して、巻取位置の巻取軸をスプールと一体に回転させることにより、シートの切断端部を他方のガイド機構とスプールの間に送り込む構成のシート巻取装置を開発した(特願2018-71384号)。
【0006】
上記の構成によれば、連続的に供給されるシートを分割して複数のスプールに巻き取る場合に、スプールが装着された2本の巻取軸を巻取位置と交換位置で入れ替える際のターレット機構の作動方向を適切に選択するだけで、スプール間で正巻と逆巻を容易に切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-268605号公報
【文献】特開2016-3113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、樹脂シートの生産工程においては、生産するシートが材質の硬いものや厚みの大きいものである場合、シート巻取装置で巻き取ったシートに強い巻き癖がついてしまい、そのシートを巻き付けたスプールを後工程のシート巻出装置に装着して後工程の処理を開始する際に、シートの巻き癖による不具合が生じることがある。このため、シートの種類等によっては、シート巻取装置でシートにつく巻き癖を軽減するためにスプールの外径寸法を従来よりも大きくすることが求められるようになってきている。
【0009】
しかしながら、一般的なシート巻取装置において、使用しているスプールを外径の異なるものに切り替えようとすると、スプールを囲むように設置されている巻付ユニットの全体的な配置を変更するために、巻付ユニットの各構成要素の脱着作業等が必要となり、ライン稼働率が大幅に低下するとともに大きな作業負荷が生じる。この問題ついては、前述の特願2018-71384号に記載されているシート巻出装置においても同様である。
【0010】
そこで、本発明は、シートを巻き付けるスプールの外径変更に容易に対応できるシート巻取装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、シートを巻き付けるスプールが装着された2本の巻取軸を、シートの巻き取りを行う巻取位置とスプールの交換を行う交換位置との間で入れ替えるターレット機構と、前記ターレット機構がシートを巻き取った巻取軸を交換位置に送り、スプールの交換が完了した巻取軸を巻取位置に送った巻取準備状態で、前記巻取位置よりも下流側でシートを切断する切断刃と、前記巻取位置のスプールに対して接離する上下一対のガイド機構を有する巻付ユニットとを備え、
前記巻取準備状態で、前記巻付ユニットの各ガイド機構を巻取位置のスプールに接近させて、その一方のガイド機構でシートをスプールに押し付け、前記切断刃でシートを切断し、前記シートの上流側の切断端部を巻取位置まで引き戻して、前記巻取位置の巻取軸をスプールと一体に回転させることにより、前記シートの切断端部を他方のガイド機構とスプールの間に送り込んで、そのスプールにシートを巻き付けていくようにしたシート巻取装置において、
前記ガイド機構は、シート幅方向と平行な軸心を有する一対のサポートロールに案内ベルトを巻き掛けたものであり、前記巻取位置のスプールに接近したときに、前記一対のサポートロールが巻取位置のスプールの軸心に対して上流側と下流側に位置して、前記案内ベルトを巻取位置のスプールの外周に押し付けるようになっており、
前記ガイド機構を巻取位置のスプールに接近させたときのサポートロールの位置を調整するサポートロール位置調整機構と、前記案内ベルトの張力を調整する張力調整機構とが設けられている構成を採用した。
【0012】
上記の構成によれば、使用しているスプールを外径の異なるものに切り替える際は、サポートロール位置調整機構を作動させて、巻付ユニットの構成要素であるサポートロールの位置を新たなスプールの外径に合わせて変更するとともに、張力調整機構を作動させてサポートロール位置変更後の案内ベルトの張力が適切な大きさとなるように調整するだけで、巻付ユニットの各構成要素の脱着作業等を行うことなく、新たなスプールを用いた巻取作業を開始することができる。
【0013】
前記サポートロール位置調整機構としては、前記各サポートロールをそれぞれ回転自在に支持する一対の支持体をシート移送方向にスライド可能に保持し、シート幅方向の両側で前記一対の支持体の一方をシート移送方向に延びるねじ軸と右ねじ結合させ、他方を前記ねじ軸と左ねじ結合させて、前記ねじ軸を回転させることにより、前記一対の支持体をそれぞれが支持するサポートロールと一体にシート移送方向に沿って互いに逆方向に移動させるものを採用することができる。その場合、前記サポートロール位置調整機構の支持体を、前記ねじ軸と右ねじ結合または左ねじ結合するねじ結合部と、前記ねじ結合部に鉛直面内で回動可能に取り付けられた状態で前記サポートロールを支持する回動部と、前記回動部を回動させる補助操作部とを有しているものとすれば、そのねじ軸の回転により支持体とサポートロールを一体に移動させた後に、支持体の補助操作部の操作によりサポートロールの位置を容易に微調整できるようになる。
【0014】
また、前記張力調整機構は、シート幅方向と平行な軸心を有し、前記サポートロールとともに前記案内ベルトを巻き掛けられるテンションロールを少なくとも1つ設け、前記テンションロールを案内ベルトの張力が変化する方向に移動させるものを採用することができる。具体的には、例えば、前記テンションロールの少なくとも1つが、シート幅方向と平行な軸心を有するテンションロール回動軸に固定されたテンションロールレバーで支持されており、前記テンションロール回動軸を回動させるテンションロール操作部が設けられている構成とすることができる。
【0015】
そして、前記一対のサポートロールの間で前記案内ベルトを巻取位置のスプールの外周に押し付ける押さえロールと、前記押さえロールの位置を調整する押さえロール位置調整機構とが設けられている構成を採用すれば、スプールの外径によらず、シートの切断端部のスプールへの巻き付けがよりスムーズに行えるようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のシート巻取装置は、上述したように、巻付ユニットの上下一対のガイド機構がそれぞれ一対のサポートロールに巻き掛けた案内ベルトを巻取位置のスプールの外周に押し付けた状態で、そのスプールにシートの切断端部を巻き付けていくようにしたものであり、使用しているスプールを外径の異なるものに切り替える際には、サポートロール位置調整機構と張力調整機構を作動させて、サポートロールの位置変更と案内ベルトの張力調整を行うだけで巻取作業を開始できるので、巻付ユニットの各構成要素の脱着作業等が必要となる従来のものに比べて、ラインの稼働率を大きく向上させ、作業負荷の大幅な低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】
図3の要部の拡大縦断正面図(ガイド機構を閉じた状態)
【
図7】(a)~(c)はそれぞれ上巻時のシート巻付手順の説明図
【
図8】
図4に対応してガイド機構の構成要素の配置を変更した状態を示す縦断正面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。このシート巻取装置は、樹脂シートの生産ラインに設置されるものであり、
図1に示すように、床面Fに固定される矩形板状の基台1と、シート移送方向(
図1の矢印方向)の上流側で基台1の上面に立設されたスタンド(固定部材)2と、スタンド2に取り付けられる上下の引取ロール3および巻付ユニット4と、シート移送方向の下流側で基台1の上面に設けられるターレット機構5とを備えている。
【0019】
前記スタンド2は、平面視でシートSの移送位置を挟むように設けられる主スタンド2aと、主スタンド2aの内側に設けられる補助スタンド2bとからなる。その主スタンド2aの上端部には、上下方向に伸縮し、ロッド部で上側の引取ロール3の端部を回転自在に支持するシリンダ6が取り付けられている。また、主スタンド2aには、上流側のシート巻出装置(図示省略)から供給される帯状のシートSを上下の引取ロール3、3の間へ導くガイドロール7と、上下の引取ロール3の間から出たシートSをターレット機構5に向けて案内するガイドロール8、9、10が回転自在に設けられている。
【0020】
ここで、上側の引取ロール3は、上記のように両端部をシリンダ6に支持されて昇降可能となっている。一方、下側の引取ロール3は、両端部を主スタンド2aに回転自在に支持された状態で、一端部を図示省略したモータに連結されている。そして、シリンダ6を操作して、上側の引取ロール3の上下方向位置をシートSの厚みに応じて調節した状態で、下側の引取ロール3を回転駆動することにより、上流側から供給されるシートSが上下の引取ロール3によって引き取られて下流側へ送られるようになっている。
【0021】
前記ターレット機構5は、
図1および
図2に示すように、支持フレーム11と、支持フレーム11に両端部を回転自在に支持されるターレット回動軸12と、ターレット回動軸12の両端部よりも中央寄りでシートSに干渉しない位置に固定され、ターレット回動軸12の中心から直径方向へ延びるターレットアーム13と、両側のターレットアーム13の一端部どうしの間および他端部どうしの間に回転自在かつ着脱可能に取り付けられる2本の巻取軸14とを備えている。そして、その巻取軸14の外周に、シートSを巻き付ける紙製のスプール(紙管)15が装着される。
【0022】
前記ターレット回動軸12は、支持フレーム11の一側の上部に設置され、ターレット回動軸12の一端部に連結された第1モータ16によって回転駆動される。一方、各巻取軸14は、支持フレーム11の両側の下部に設置され、各巻取軸14の一端部にそれぞれ回転伝達機構を介して連結された第2モータ17によって回転駆動される。また、各ターレットアーム13の中央部にはターレット回動軸12の径方向両側に突出する2つのロール支持部18が設けられ、これらのロール支持部18でガイドロール19を回転自在に支持している。
【0023】
そして、第1モータ16でターレット回動軸12を駆動して、ターレットアーム13をターレット回動軸12のまわりに180°回動させることにより、2本の巻取軸14を、シートSの巻き取りを行う巻取位置とスプール15の交換を行う交換位置との間で入れ替えられるようになっている。
【0024】
前記巻付ユニット4は、
図1に示すように、上下一対のガイド機構20a、20bと、その上側のガイド機構20aを主スタンド2aに連結する第1巻付シリンダ21aと、下側のガイド機構20bを補助スタンド2bに連結する第2巻付シリンダ21bとからなる。そして、各ガイド機構20a、20bの先端部に、ガイドロール22と、2枚の帯状部材からなり、シート幅方向に延びるシートクランプ23とが設けられており、上側のガイド機構20aのシートクランプ23を構成する2枚の帯状部材の間に、シート幅方向に走行する切断刃24が設けられている(
図3参照)。
【0025】
各ガイド機構20a、20bは、それぞれ主スタンド2aの最下流のガイドロール10の両端小径部に回動自在に取り付けられる巻付アーム25を有している。そして、上側のガイド機構20aの各巻付アーム25から突出する連結アーム26が、主スタンド2aに回動自在に取り付けられた第1巻付シリンダ21aのロッド部と回動自在に連結され、下側のガイド機構20bの各巻付アーム25が、補助スタンド2bに回動自在に取り付けられた第2巻付シリンダ21bのロッド部と回動自在に連結されている。これにより、第1巻付シリンダ21aおよび第2巻付シリンダ21bを伸縮させると、各ガイド機構20a、20bが主スタンド2aの最下流のガイドロール10の軸心のまわりに回動して、巻取位置のスプール15に対して接離するとともに、ガイドロール22、シートクランプ23および切断刃24が巻取位置の下流側でシートSに接離するようになっている。なお、各巻付アーム25の長手方向中央部には、巻付軸14の端部との干渉を避けるための切欠き25aが設けられている(
図3参照)。
【0026】
また、
図3および
図4に示すように、各ガイド機構20a、20bの両側の巻付アーム25の間には、一対のサポートロール27と、一対のテンションロール28と、1つの押さえロール29がそれぞれシート幅方向と平行に設けられており、その各一対のサポートロール24とテンションロール28に弾性を有するゴム等で形成された案内ベルト30が巻き掛けられている。そして、各ガイド機構20a、20bが巻取位置のスプール15に接近したときに、一対のサポートロール27がそのスプール15の軸心に対して上流側と下流側に、押さえロール29がスプール15の軸心の上方または下方にそれぞれ位置して、各サポートロール27と押さえロール29とによってサポートロール27どうしの間で案内ベルト30をスプール15の外周に押し付けるようになっている。
【0027】
また、各ガイド機構20a、20bには、巻取位置のスプール15に接近したときのサポートロール27の位置を調整するサポートロール位置調整機構と、案内ベルト30の張力を調整する張力調整機構と、押さえロール位置調整機構とが設けられている。
【0028】
図4乃至
図6に示すように、前記サポートロール位置調整機構は、各サポートロール27をそれぞれ回転自在に支持し、両側の巻付アーム25によってシート移送方向にスライド可能に保持された前後(シート移送方向)一対の支持体31と、シート幅方向の両側でシート移送方向に延び、一対の支持体31の一方と右ねじ結合するとともに他方と左ねじ結合する左右(シート幅方向)一対のねじ軸41とを備えている。
【0029】
前後一対の支持体31は、それぞれねじ軸41と右ねじ結合または左ねじ結合する左右一対のねじ結合部32と、その左右のねじ結合部32に鉛直面内で回動可能に取り付けられた状態でサポートロール27を支持する回動部33と、回動部33を回動させる左右一対の補助操作部としてのサポートロール用エアシリンダ34とを有している。
【0030】
その左右のねじ結合部32は、それぞれねじ軸41を通されるねじブロック35と、巻付アーム25の内側面に取り付けられたレール25b(
図4では省略)に対してスライド可能に係合する3つのスライドブロック36と、ねじブロック35および各スライドブロック36が固定されるスライドプレート37とからなる。回動部33は、両端部をスライドプレート37に回動可能に支持されるサポートロール回動軸38と、シート幅方向に延び、サポートロール回動軸38の外周に取り付けられる矩形板状の回動プレート39と、回動プレート39の左右両側面に取り付けられ、サポートロール27の端部を回転自在に支持するサポートロールレバー40とからなる。そして、左右のサポートロール用エアシリンダ34は、その本体部がスライドプレート37の一部をなす取付板37aに回動自在に支持され、ロッド先端部がサポートロールレバー40に回動自在に連結されている。
【0031】
一方、左右一対のねじ軸41は、それぞれ両端部を巻付アーム25に回転自在に支持されており、その一端に傘歯車42が固定されている。そして、各傘歯車42に噛み合う操作側傘歯車43が、シート幅方向と平行な軸心を有する歯車軸44の外周に固定されている。その歯車軸44は、両端部を左右の巻付アーム25に回転自在に支持されており、一方の巻付アーム25からの突出部に六角形状のねじ操作片45が取り付けられている。
【0032】
したがって、ねじ操作片45を適宜の工具等で把持して歯車軸44および左右の操作側傘歯車43と一体に回転させることにより、左右一対のねじ軸41を回転させ、各ねじ軸41とねじ結合する前後一対の支持体31を、それぞれの支持するサポートロール27と一体にシート移送方向に沿って互いに逆方向に移動させることができる。
【0033】
そして、サポートロール用エアシリンダ34を操作することにより、サポートロールレバー40、回動プレート39、サポートロール回動軸38およびサポートロール27を、サポートロール回動軸38の軸心のまわりに一体に回動させて、サポートロール27の位置を微調整することができる。
【0034】
また、前記張力調整機構は、上流側のテンションロール28を案内ベルト30(
図5、
図6では省略)の張力が変化する方向に移動させるもので、シート幅方向と平行な軸心を有し、両端部を左右の巻付アーム25に回転自在に支持されたテンションロール回動軸46と、テンションロール回動軸46に固定され、上流側のテンションロール28を回転自在に支持する左右一対のテンションロールレバー47と、テンションロール回動軸46を回動させるテンションロール操作部48とを備えている。テンションロール操作部48は、テンションロール回動軸46の巻付アーム25からの突出部に固定された操作側レバー49と、テンションロール用エアシリンダ50とからなり、そのテンションロール用エアシリンダ50の本体部が巻付アーム25に回動自在に支持され、ロッド先端部が操作側レバー49に回動自在に連結されている。なお、下流側のテンションロール28は、両端部を左右の巻付アーム25に回転自在に支持されている。
【0035】
したがって、テンションロール用エアシリンダ50を操作することにより、操作側レバー49、テンションロール回動軸46、テンションロールレバー47および上流側のテンションロール28を、テンションロール回動軸46の軸心のまわりに一体に回動させて、案内ベルト30の張力を調整することができる。
【0036】
前記押さえロール位置調整機構は、押さえロール29を回転自在に支持し、両側の巻付アーム25によって鉛直面内でシート移送方向と直交する方向にスライド可能に保持された左右一対のスライド片51と、押さえロール用エアシリンダ52とからなり、その押さえロール用エアシリンダ52の本体部が巻付アーム25に固定され、ロッド先端部がスライド片51に連結されている。
【0037】
したがって、押さえロール用エアシリンダ52を操作することにより、スライド片51と押さえロール29を一体にスライドさせて、押さえロール29の位置を調整することができる。
【0038】
次に、このシート巻取装置における巻取位置のスプール15へのシート巻付動作を説明する。上流側から供給されるシートSをスプール15の上面側から巻き付けていく(以下、「上巻」と称する。)場合、まず、
図1に示すように巻付ユニット4の上下のガイド機構20a、20bが開き(巻取位置のスプール15から離れ)、交換位置で新たなスプール15を装着された巻取軸14が巻取位置へ送られてきている巻取準備状態で、その新たなスプール15の上方にシートSを通す。
【0039】
そして、第1巻付シリンダ21aと第2巻付シリンダ21bを操作することにより、上下のガイド機構20a、20bを回動させて、
図4に示すように、上下のガイド機構20a、20bを閉じた状態(巻取位置のスプール15に接近した状態)とする。
【0040】
このとき、
図7(a)に示すように、各ガイド機構20a、20bは、一対のサポートロール27がスプール15の軸心に対して上流側と下流側に位置し、押さえロール29がスプール15の上下に位置している。そして、上側のガイド機構20aは、その一対のサポートロール27と押さえロール29が案内ベルト30およびシートSをスプール15の上面側に押し付け(密着させ)、下側のガイド機構20bの一対のサポートロール27と押さえロール29は、案内ベルト30のみをスプール15の下面側に押し付けている。また、図示は省略するが、上下のガイドロール22とシートクランプ23および切断刃24がターレット回動軸12の近傍でシートSに近接している。
【0041】
上記の
図7(a)の状態から、上下のシートクランプ23を操作してシートSを挟み付け、切断刃24をシート幅方向に走行させてシートSを切断する。その後、
図7(b)に示すように、引取ロール3(
図1参照)を逆転させて、シートSの上流側の切断端部が巻取位置に達するまでシートSを引き戻す。そして、巻取位置の巻取軸14に連結された第2モータ17(
図1参照)を駆動することにより、
図7(c)に示すように、その巻取軸14をスプール15と一体に回転(図中の左回転)させ、シートSの上流側の切断端部を、下側のガイド機構20bの案内ベルト30とスプール15との間に送り込み、さらに上側のガイド機構20aの案内ベルト30とスプール15との間に送り込んで、そのスプール15にシートSを巻き付けていく。
【0042】
その後、シートSのスプール15への巻付量が所定量に達した時点で上下のガイド機構20a、20bを開き、スプール15に巻き取られていくシートSに干渉しないようにする。そして、巻取位置の巻取軸14が所定量のシートSを巻き取った時点で、ターレット機構5のターレットアーム13を180°上巻回動させることにより、2本の巻取軸14を巻取位置と交換位置との間で入れ替えて巻取準備状態とし、交換位置に送られてきた巻取軸14からシートSを巻き取ったスプール15を取り外し、その巻取軸14に新たなスプール15を装着する。
【0043】
上記の動作を繰り返すことにより、シートSが比較的剛性の高いものであっても、その切断端部を確実にかつ自動的に巻取位置のスプール15に密着させて、巻取作業を連続的に行うことができる。
【0044】
また、図示は省略するが、上流側から供給されるシートSをスプール15の下面側から巻き付けていく(以下、「下巻」と称する。)場合も、その手順は上記の上巻の場合とほぼ同じである。すなわち、まず、巻付ユニット4の上下のガイド機構20a、20bが開いた巻取準備状態でスプール15の下方にシートSを通した後、上下のガイド機構20a、20bを閉じた状態とし、切断刃24でシートSを切断する。そして、引取ロール3を逆転させて、シートSをその上流側の切断端部が巻取位置に達するまで引き戻し、巻取位置の巻取軸14をスプール15と一体に回転(上巻の場合と逆方向)させ、そのスプール15にシートSを巻き付けていく。
【0045】
その後、シートSのスプール15への巻付量が所定量に達した時点で上下のガイド機構20a、20bを開き、巻取位置の巻取軸14が所定量のシートSを巻き取った時点で、ターレット機構5のターレットアーム13を180°下巻回動させて、2本の巻取軸14の位置を入れ替えて巻取準備状態とし、交換位置に送られてきた巻取軸14に対してスプール15の交換を行うようにすればよい。
【0046】
そして、このシート巻取装置では、上記のようにしてシート巻付動作が行われるので、上流側から連続的に供給されるシートSを分割して複数のスプール15に巻き取る場合に、2本の巻取軸14を巻取位置と交換位置で入れ替える際のターレットアーム13の回動方向(ターレット機構5の作動方向)を適切に選択することによって、スプール15間で同じ巻き方を続けたり正巻と逆巻を切り替えたりすることができる。
【0047】
すなわち、上巻の場合には、巻き取ったシートSがターレット回動軸12の上方を通過するようにターレットアーム13を回動(
図1における左回転)させれば、新たなスプール15を装着した巻取軸14が下方から巻取位置に送られてきて、新たなスプール15の上方をシートSが通されるので、同じ巻き方が続けられる。一方、これと逆方向にターレットアーム13を回動(
図1における右回転)させれば、新たなスプール15の下方をシートSが通されるので、正巻と逆巻を切り替える(正巻から逆巻に、または逆巻から正巻に巻き方を変える)ことができる。また、下巻の場合には、巻き取ったシートSがターレット回動軸12の上方を通過するようにターレットアーム13を回動させれば、正巻と逆巻を切り替えることができ、これと逆方向にターレットアーム13を回動させれば、同じ巻き方を続けることができる。
【0048】
また、このシート巻取装置では、使用しているスプール15を外径の異なるものに切り替える際も、巻取準備状態で上下のガイド機構20a、20bのサポートロール位置調整機構および押さえロール位置調整機構を作動させて、サポートロール27および押さえロール29を新たなスプール15の外径に合わせて移動させるとともに、張力調整機構を作動させて案内ベルト30の張力を適切な大きさに調整することによって、巻付ユニット4の各構成要素の脱着作業等を行うことなく、新たなスプール15を用いた巻取作業を開始することができる。
【0049】
例えば、
図4に示しているスプール15を基準として、それよりも外径の大きいスプール15を使用するときの巻付開始時の状態を
図8に示す。この
図8の状態は、
図4の状態から、サポートロール位置調整機構のねじ操作片45を操作してねじ軸41を回転させることにより、上流側と下流側のサポートロール27をその支持体31と一体に互いに離れる方向にスライドさせたうえ、サポートロール用エアシリンダ34を操作して各サポートロール27の位置を微調整し、押さえロール位置調整機構の押さえロール用エアシリンダ52を操作して押さえロール29を両サポートロール27から離れる方向に移動させるとともに、張力調整機構のテンションロール用エアシリンダ50を操作して上流側のテンションロール28を回動させることにより、案内ベルト30の張力を調整したものである。
【0050】
このシート巻取装置は、上述のように、スプール15の外径の切り替えの際、サポートロール位置調整機構、押さえロール位置調整機構および張力調整機構を作動させることによって容易に対応できるので、巻付ユニットの各構成要素の脱着作業等が必要となる従来のものに比べて、ラインの稼働率を大きく向上させ、作業負荷の大幅な低減を図ることができる。
【0051】
なお、本発明のシート巻取装置は、実施形態のような樹脂シートだけでなく、紙やラミネート紙等の帯状のシートも巻取対象とすることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 基台
2 スタンド(固定部材)
3 引取ロール
4 巻付ユニット
5 ターレット機構
11 支持フレーム
12 ターレット回動軸
13 ターレットアーム
14 巻取軸
15 スプール
20a、20b ガイド機構
24 切断刃
25 巻付アーム
27 サポートロール
28 テンションロール
29 押さえロール
30 案内ベルト
31 支持体
32 ねじ結合部
33 回動部
34 サポートロール用エアシリンダ(補助操作部)
37 スライドプレート
40 サポートロールレバー
41 ねじ軸
50 テンションロール用エアシリンダ
52 押さえロール用エアシリンダ
S シート