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▶ イッサム リサーチ デベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティー オブ エルサレム リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】高繊維含量の低糖食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/135 20160101AFI20230724BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20230724BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20230724BHJP
   A23L 2/84 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
A23L33/135
A23L2/02 A
A23L2/02 B
A23L2/02 C
A23L2/02 F
A23L2/00 G
A23L2/84 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019521015
(86)(22)【出願日】2017-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-09
(86)【国際出願番号】 IL2017051167
(87)【国際公開番号】W WO2018078623
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】62/412,855
(32)【優先日】2016-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/490,611
(32)【優先日】2017-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511171017
【氏名又は名称】イッサム リサーチ デベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティー オブ エルサレム リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シャピーラ,ロニ
(72)【発明者】
【氏名】バラチンスキー,エラン
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/051102(WO,A1)
【文献】欧州特許第00458358(EP,B1)
【文献】国際公開第2015/086746(WO,A1)
【文献】特表2010-518817(JP,A)
【文献】特開平08-173109(JP,A)
【文献】カナダ国特許出願公開第02985875(CA,A1)
【文献】Biosci. Biotechnol. Biochem., 2010年,Vol.74, No.9,p.100269-1-9
【文献】BCAIJ, 2014年,Vol.8, No.4,p.115-119
【文献】日本食品工業会誌, 1982年,第29巻, 第2号,p.105-110
【文献】澱粉科学, 1981年,第28巻, 第2号,p.109-117
【文献】An Overview of the Recent Developments on Fructooligosaccharide Production and Applications,Food Bioprocess Technol., 2013年,DOI 10.1007/s11947-013-1221-6
【文献】Process Biochemistry, 2002年,Vol.38,p.701-706
【文献】Process Biochemistry, 2004年,Vol.39,p.703-709
【文献】Journal of Food Biochemistry, 2001年,Vol.25,p.257-266
【文献】J. Chem. Technol. Biotechnol., 2011年,Vol.86,p.42-46,DOI 10.1002/jctb.2481
【文献】澱粉科学, 1989年,Vol.36, No.2,p.123-130
【文献】J. Dairy Sci., 2014年,Vol.97,p.694-703,http://dx.doi.org/10.3168/jds.2013-7492
【文献】Biotechnology Letters, 1994年,Vol.16, No.11,p.1145-1150
【文献】J. Agric. Food Chem., 2011年,Vol.59,p.10477-10484,dx.doi.org/10.1021/jf2022012
【文献】JOURNAL OF FOOD SCIENCE, 1986年,Vol.51, No.3,p.854-855
【文献】Acta Scientiarum. Biological Sciences, 2010年,Vol.32, No.3,p.229-233
【文献】Biotechnology Letters, 2001年,Vol.23,p.339-344
【文献】LWT - Food Science and Technology, 2009年,Vol.42,p.1031-1033
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 31/00-33/29
A23L 2/00-2/84
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジュース飲料を調製するためのプロセスであって、単糖類及び/若しくは二糖類又は単糖類及び/若しくは二糖類を含む組成物を含有する天然ジュースと、天然ジュースの単糖類及び/又は二糖類の含量を低下させ、前記単糖類及び/若しくは二糖類を少なくとも1種類のオリゴ糖及び/又は多糖類に変換するのに活性のある死んだザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)細胞とを接触させ、それによって、出発天然ジュースと比較して単糖類及び/又は二糖類の含量が低下し、少なくとも1種類のオリゴ糖及び/又は多糖類の含量が増加した加工ジュース飲料を取得する工程を含む、プロセス。
【請求項2】
前記死んだザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)細胞が固定される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
固定化された前記死んだザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)細胞が、ベッド又はカラムに充填されている、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記加工ジュース飲料が、前記出発天然ジュース中の含量と比較して、量が低下した少なくとも1種類のグルコース、フルクトース、スクロース及びこれらの任意の組み合わせを含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記加工ジュース飲料が、前記出発天然ジュース中の量と比較して、量が増加した少なくとも1種類のフルクタン、フラクトオリゴ糖(FOS)、ソルビトール、グルコン酸及びこれらの任意の組み合わせを含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記加工ジュース飲料が、基本的に微生物細胞を欠く、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記加工ジュース飲料が、基本的に遊離酵素又は複数の遊離酵素を欠く、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、食品、特に、糖度が低下し、食物繊維に富むジュース飲料を生成するためのプロセス及び生成された食品を提供する。該食品は、出発材料嗜好試験を遵守しながら、低カロリーであり、かつ有益な量の食物繊維を含有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
飲料からの食事エネルギー摂取量の増加は、過去数十年の間、北米で見られる肥満の蔓延に関わる主な要因である。今日、アメリカ人は、30年前よりも1日あたり150~300カロリー以上を消費し、カロリー飲料は、この増加の50%を占めている。飲料からのエネルギー摂取量は、現在、一般的なアメリカの人口の1日の合計エネルギー摂取量の21%を表す。短期的なヒト研究の証拠から、液体形態で消費されるカロリーが、固形食品からのカロリーと比較して満腹感が弱く、貧弱なエネルギー補償を導くことが示唆される。これらの知見は、液体カロリーの消費量の増加が体重増加をもたらす可能性があり、逆に、液体カロリー摂取量の減少が体重減少につながる可能性があることを示唆している。糖を添加しなくても、フルーツジュースは、ソフトドリンクとほぼ同量の糖を含有している。フルーツジュースのカロリー含量に主に寄与しているものは、単糖のグルコース及びフルクトースである。「100%フルーツジュース」を含有するものとして定義される飲料では、糖は、主にフルクトースに由来する。グルコースの摂取は、食物摂取を調節する体内の化学物質(例えば、インスリン)の放出を刺激することが知られている。フルクトースは、一方で、ほとんど食欲を抑制せず、新しい脂肪細胞の形成に優先的に関連していると思われる。
【0003】
微生物は、2つの主要なプロセス:生体内鉱質形成及び生物変換によってジュースのカロリー含量を低下させることができる。
【0004】
単糖及び二糖類(グルコース、フルクトース及びスクロース)の二酸化炭素及び水(好気呼吸による生体内鉱質形成)への完全な変換は、多くの生物によって好気的条件下で達成することができる。これらの糖の代謝は、酵母種によって最も効率的に達成される。酵母は、呼吸又は発酵を利用するそれらのエネルギー生成の様式に応じて、いくつかのグループに分類することができる。最も知られている酵母種のパン酵母及びワイン酵母のサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は、様々な成長条件に容易に適合する。例えば、グルコースは、酸素及び他の炭素源の存在に応じて、S.セレビシエによっていくつかの異なる経路で利用することができる。一方、クルイベロミセス属、ロドトルラ属及びクリプトコッカス属の酵母は、偏性呼吸である(制限された酸素環境で発酵も成長もしない)。
【0005】
酵母クルイベロミセスは、S.セレビシエとは異なり、グルコース濃度に敏感ではない。グルコース濃度が高い時、サッカロマイセスは、好気的条件下でさえ糖をエタノールにするのに利用する(クラブトリー効果)。クルイベロミセスは、クラブトリー陰性であり、したがって、グルコース/フルクトース濃度が高くても、好気的条件下でバイオマス、CO及び水を生成し、エタノールを生成しない。大腸菌及びアスペルギルス・ニガー・バール・アワモリ(Aspergillus niger var awamori)の他に、K.ラクティスは、大規模にキモシンを生成するために、発酵業界で生育される主な生物の1つである。キモシンは、チーズ生成に使用されている。
【0006】
植物、真菌及び一部の細菌は、単糖を多糖類へ変換することができる。セルロース、ヘミセルロース、ペクチン、ガム、粘質物、及びリグニンのような多糖類は、食物繊維である。これらの繊維は化学的に無関係であるが、これらの全ては、ヒトの消化器系による分解に抵抗性がある。
【0007】
グルコースポリマーセルロースは、細胞壁の主要成分として、全ての植物によって生成される。セルロースは、緑色植物、藻類及び卵菌類(真菌のスーパーファミリー)の多くの形態の一次細胞壁の構造成分である。細菌のいくつかの種は、セルロースを合成することができ、次いで、それを分泌し、バイオフィルムを形成する。セルロースは、数百~一万を超える直鎖のβ(1→4)結合D-グルコース単位からなる多糖類であり、地球上で最も一般的な有機化合物である。セルロースは、味がなく、無臭である。維管束植物では、セルロースは、ロゼット末端複合体(RTC)による原形質膜で合成される。RTCは、個々のセルロース鎖を合成するセルロース合成酵素を含有する、直径が約25nmの六量体タンパク質構造である。RTCは、少なくとも3つの異なるセルロース合成酵素を含有する。セルロース合成は、連鎖開始後に鎖伸長が続く2つの明確に別々のプロセスを必要とする。合成酵素タンパク質アイソフォーム(CesA)グルコシルトランスフェラーゼ酵素は、ステロイドプライマー、シトステロール-β-グルコシド、及びウリジン二リン酸(UDP)-グルコースを用いるセルロース重合を開始する。セルロース合成酵素は、成長しているセルロース鎖を伸長するためにUDP-D-グルコース前駆体を利用する。
【0008】
アエロバクター属、アセトバクター属、アクロモバクター属、アグロバクテリウム属、アルカリゲネス属、アゾトバクター属、シュードモナス属、リゾビウム属及びサルシナ属の細菌は、セルロースを合成する。アセトバクター種の中で最も広範に研究されたメンバーは、孔から成長培地中にグルカン鎖を押し出すA.キシリナム種である。これらの鎖はミクロフィブリルに凝集し、束ねられ、微生物セルロースリボンを形成する。様々な種類の糖が基質として使用される。生成は、主に液体と空気の界面で起きる。アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)は、自然界で最も多産のセルロース生成菌である。典型的な単細胞は、1時間で、最大108個のグルコース分子をセルロースに変換することができる。このセルロース生成速度は、百万個もの多くの細胞を1つの液滴に充填することができ、これらの「工場」の各々は、毎時最大108個のグルコース分子をセルロースに変換することができることを考慮すると、素晴らしいことである。
【0009】
フルクタンは、植物、酵母、真菌及び細菌によって生成されるフルクトースポリマーである。短鎖長を有するフルクタンは、フラクトオリゴ糖(FOS)として知られているが、より長い鎖のフルクタンは、イヌリン又はレバンと呼ばれる。FOSは、スクロースに対するβ-フルクトシダーゼ酵素のトランスフルクトシル化作用によって調製することができる。生じた混合物は、nが1~5の範囲のグルコース-フルクトース(GFn)の一般式を有するオリゴ糖を含有する。FOSは、オーレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)、アウレオバシジウム種、アースロバクター種、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリザ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・フォエニシス(Aspergillus phoenicis)、アスペルギルス・シドヴィ(Aspergillus sydowii)、麦角菌(Claviceps purpurea)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、ペニシリウム・フレクエンタス(Penicillium frequentans)、ペニシリウム・スピナロザム(Penicillium spinulosum)、フィトフトラ・パラシティカ(Phytophthora parasitica)、スコプラリオプシス・ブレビカウリス(Scopulariopsis brevicaulis)、及びサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を含む多種多様な微生物によって天然に生成される。
【0010】
より長いフルクタンは、隣接フルクトース単位の間に、主にβ(2→1)グリコシド結合を含むイヌリンと、主にβ(2→6)グリコシド結合を含むレバンで構成されている。FOSのうち、レバンは、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)、エルウィニア・アミロボーラ(Erwinia amylovora)、アセトバクター・スボキシダンス(Acetobacter suboxydans)、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)、及びアエロバクター・レバニカム(Aerobacter levanicum)などのいくつかのグラム陰性種、並びに枯草菌、パエニバチルス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)、バチルス・アミロリケファシエン(Bacillus amyloliquefaciens)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、アクチノマイセス・ビスコーズス(Actinomyces viscosus)及びコリネバクテリウムのいくつかのメンバーなどのいくつかのグラム陽性細菌を含む微生物によって天然に生成される。
【0011】
レバンは、共に連結して、数十万単位で構成される超分子を形成することができる非構造炭水化物を形成する。ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)及びアセトバクターのメンバーは、レバン生成に関して最も調べられた細菌である。レバンを含むフルクタンは、消化管の微生物叢含量の性質を変更することによって、かつ他の栄養素及び化学物質の吸光度を変更することによって作用する水溶性食物繊維である。可溶性繊維は、水を吸収して、消化管中の細菌によって発酵されるゼラチン状の粘性物質になる。フルクタンが存在すると、胃を満たし、満腹感を与えるので、体重を制御するのに役立つ。粘性により、可溶性繊維は、胆汁酸プールの組成を変え、より低いコレステロールレベルをもたらし、食事脂肪吸収を減少させることが示唆されている(Queenan K Mら、2007.Nutr.6:6-14)。それらは、血流へのグルコースの吸収を遅らせ、血糖値の大きな揺れを防止することも示唆された。水溶性食物繊維は、便秘の低下及び便通の改善の追加の有益な効果を有することができる。
【0012】
異なる目標を目指して、フルーツジュース中の糖度を低下させる様々な手法がとられてきた。例えば、米国特許第4,579,739号は、共生能力及び酵母の全ての後味を排除する相乗官能受容効果をもたらす能力について選択された少なくとも1種の酵母と少なくとも1種の乳酸菌の組み合わせでマストを発酵することを含む、天然炭酸飲料の製造プロセスを開示しており、前者は、サッカロマイセス・セレビシエ及びクルイベロミセス・ラクチスの群から選択され、後者は、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)及びラクトバチルス・ヒルガルディー(Lactobacillus hilgardii)の群から選択される。該マストは、1ml当たり酵母菌及びラクトバチルス菌のそれぞれの数は、1:10~1:500の比を有するように接種される。該マストは、天然要素、特に、酵母の成長及び活性に必要な同化窒素も含有する発酵性糖の水溶液である。該マストは、したがって、フルーツジュース、野菜ジュース、植物の種子、根又は葉からの抽出物であり得る。
【0013】
米国特許第4,971,813号は、フルーツ又は野菜ジュースからの芳香及び風味揮発性物質を分離並びに回収するためのプロセス並びにジュース中の糖の量を低下させるためのプロセスを開示している。該プロセスは、特定の温度範囲のジュースをより低い温度の真空チャンバ内に噴霧することでミクロエアロゾルを形成させ、次いで、回収されたジュース画分を酵母で処理することにより、ジュースから芳香/風味揮発性物質を除去することを含む。この発酵反応中に形成されるアルコールは、蒸留によって、好ましくは、揮発性物質が除去されるのと同じエアロゾル化プロセスによって除去される。芳香及び風味揮発性物質は、優れた味で、低カロリーのフルーツジュースを提供するためにジュースにもどされる。
【0014】
日本特許出願JP1983198117は、飲用のために改良された風味を有する低アルコール含量の発酵飲料を取得するためのプロセスを開示している。該プロセスは、アルコール発酵が行われるように、クルイベロミセス・ラクチス種又はクルイベロミセス・フラジリス種の予備培養酵母をフルーツ又は野菜の搾汁液に加えることを含む。次いで、微生物細胞を分離して、発酵液を得て、これを濃縮及び/又は乾燥させ、目的のアルコール濃度、好ましくは、1%未満(w/v)の濃度のエタノールが得られるように調整され得る。
【0015】
欧州特許EP0440975は、糖含有フルーツジュース又は他の糖含有基質から生成される、エタノール含量が低下した発酵生成物を開示している。該生成物は、発酵を誘導するために、0.01~5重量%の酵母(乾燥物質として計算される)、必要であれば、同化窒素化合物及び/又はリン化合物を、5~30重量%の発酵性糖含量を有する基質の第1の部分に添加し、1~10体積%、特に、最大7.5体積%のエタノール含量が基質をもたらすまで、0.1~2体積部の空気又は基質の体積部及び毎分換気量当たり空気と等しい量の酸素で混合物を処理することによって取得され;この時点で、基質の第2の部分は、空気又は酸素と共に継続通気で添加される。
【0016】
欧州特許EP0554488は、「甘味」を除いて、元の官能特性を維持しながら、糖含有食品の糖度を選択的に低下させるためのプロセスを開示している。元の食材は、微生物種と制御発酵に供され、特定の食材に最も適する種が、糖分解に適する様々な種の微生物からISOガイドライン8587に従って官能分析に基づいて選択される。得られる食材は、元の出発生成物と比較して同等の特性を有しながら、糖度が低下している。
【0017】
米国出願公開第2004/0234658号は、フルーツジュース、特に、ブドウジュースの糖度の低下の制御用プロセスであって、元のフルーツジュース、必要であれば、事前に清澄化されたものを、実質的に糖に透過性の選択的限外濾過に供し、その後、実質的に糖に不透性の選択的ナノ濾過に供することを含むプロセスを開示している。次いで、得られた2回の濾過残留物は、限外濾過の透過物又は濃縮物の残りと、必要であれば、未処理の元のフルーツジュースの部分と混合され、ナノ濾過の保持液若しくは濃縮物の結晶化又は厄介な物質の形成の現象を除去又は制限するために、限外濾過透過液が処理される。
【0018】
米国特許出願公開第2008/0044531号は、糖含有(例えば、スクロース、フルクトース、グルコース)飲料(例えば、フルーツジュース、野菜ジュース)を処理するための方法であって、飲料から糖を選択的に除去することができるイオン吸着材料の充填層と接触する飲料の流れを通過させ、該充填層から糖減少飲料を分離することを含む方法を開示している。高甘味度の天然及び/又は人工の甘味料を、該糖減少飲料に添加し、元の飲料と同じ風味及び栄養含量を有するが、カロリー量がより低い飲料製品を生成することができる。糖低下飲料はまた、飲料及び食品産業用の香料として、又はカロリー低下食物及びフルカロリー食物(例えば、ゼリー、キャンディなど)の成分構成要素として使用することができる。糖低下飲料は、標準的なジュースと比較して、より少ないエネルギーを使用して、より高いレベルに濃縮することができる。得られた濃縮物はまた、標準的なジュース濃縮物と比較して有意な冷凍保存コスト及び配送コストを実現している。
【0019】
米国特許第9,375,027号は、フルーツ生成物中の利用可能な糖の一部が非消化性ポリマーに変換され、それによって、エネルギー含量が低下し、同時にジュース中で安定な生成物中にプレバイオティック成分を形成することにより栄養価が増加するフルーツジュース、ピューレ、及び他の食品が開示されている。さらに開示されているのは、フルーツ内に天然に存在する糖以外の全ての成分を保存することを可能にするジュース及びピューレの製造方法である。
【0020】
米国出願公開第2013/0216652号は、食品中の固有の糖を、フラクト-オリゴ糖、及びグルコ-オリゴ糖などの非消化性炭水化物並びに非消化性オリゴ糖へ酵素的に変換するのに十分な条件下で、十分な量の少なくとも1つのトランスグリコシダーゼと該食品を接触させることによって、ジュースなどの食品又は糖ベースのすぐ飲める製品中の固有の糖度を低下させ、ひいては、より栄養のある生成物を形成する方法を開示している。本発明はまた、本発明の方法によって生成された栄養食品に関する。
【0021】
しかしながら、フルーツ又は野菜のジュース飲料の糖度を低下させる一方で、ジュースの食物繊維を高めるための、低コストのプロセス及びそのようにして得られたジュース飲料の必要性が認められており、かつそれが得られると非常に都合がよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、食品、特に、フルーツ又は野菜から得られたジュース中の糖度を低下させ、食物繊維、糖アルコール(天然の低カロリー甘味料)及び酸性度調整剤で食品を強化するためのプロセスを提供する。さらに、本発明は、低カロリーの高繊維食品、特に、炭酸化されておらず、基本的にアルコールを欠くジュース飲料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、フルーツジュース、特にリンゴジュースを、死んだ形態若しくは生きている形態の特定の微生物又は酵母と細菌若しくは真菌の特定の組み合わせと接触させると、(スクロース、フルクトース、及びグルコースを含む)ジュースの糖度が低下するだけでなく、糖の単糖又は二糖がオリゴ糖及び/又は多糖類、糖アルコール及びグルコン酸へ変換されるという予期せぬ発見に部分的に基づいている。生じるジュースは、糖度及びカロリーが低く、消費者の消化及び満腹感に寄与する有益な栄養オリゴ糖並びに/又は多糖を含有する。死んだ微生物又は生きている微生物(複数可)の添加は、ジュースの味に負の影響を与えず、おいしさの特性を保持しているが、甘味は低下している。死んだ微生物(複数可)を使用する場合、死んだ微生物(複数可)の細胞内に酵素活性を保持する特定の方法で死滅させる。
【0024】
本発明のプロセス及び生成物は、少なくとも、(1)無傷の微生物細胞(死んだ又は生きている)が使用され、その結果、高価な単離された酵素も、遺伝子改変された微生物又は酵素も使用する必要がなく、かつ該微生物細胞は、ジュースに存在する単糖及び二糖の量を低下させ、糖をオリゴ糖及び/又は多糖(複数可)に変換するのに活性があり;(2)細胞、特に、死細胞は固定化することができ、必要に応じてさらに、容易な取り扱いのためにカラム又はベッドに充填され;(3)糖度の低下は、典型的には甘い食品に存在する全ての主要なサッカリン、グルコース、フルクトース及びスクロースの含量の低下から生じ;並びに(4)ソルビトール及びグルコン酸を含む追加の有益な生成物が生成される、という点で、低糖で、高いオリゴ糖及び/又は多糖の食品を生成するための従来の公知のプロセスよりも都合がよい。
【発明の効果】
【0025】
特定の態様によれば、本発明は、低糖高繊維食品を調製するためのプロセスであって、出発食品の糖度を低下させ、単糖類若しくは二糖類を少なくとも1種類のオリゴ糖及び/又は多糖に変換するのに活性のある少なくとも一種類の微生物細胞と、糖又は糖を含む組成物を含有する出発食品とを接触させ、それによって、出発食品と比較して糖度が低下し、少なくとも1種類のオリゴ糖及び/又は多糖の含量が増加した加工食品を取得する工程を含むプロセスを提供する。
【0026】
特定の実施形態によれば、該微生物細胞は、死細胞、生細胞及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の例示的な実施形態によれば、該微生物細胞は死細胞である。
【0027】
単糖又は二糖をオリゴ糖及び/又は多糖類に変換する活性を保持する、非増殖性で生きられない死んだ微生物細胞を取得するために、当技術分野で知られている任意の方法を、本発明の教示に従って使用することができる。
【0028】
特定の例示的な実施形態によれば、死んだ微生物細胞は、生細胞を約50%~約90%のエタノールに曝露することによって得られる。追加の特定の例示的な実施形態によれば、該微生物細胞は、約30分間、生細胞を50%~90%のエタノールに曝露することによって得られる。
【0029】
適用可能な場合、死んだ微生物細胞は、細胞壁の完全性及び/又は機能性を保っていることを明示的に理解されたい。細胞壁の存在は、本発明の特定の実施形態に係る懸濁形態並びに固定された形態で死んだ微生物細胞を使用するのに役立ち得る。特定の実施形態によれば、細胞膜(原形質膜(plasma membrane)又は原形質膜(plasmalema)とも呼ばれる)は、少なくとも部分的に破壊される。
【0030】
特定の実施形態によれば、死んだ微生物細胞は、マトリックス中又はマトリックス上に固定されている。
【0031】
特定の実施形態によれば、該出発食品又は該出発食品を含む組成物は、7.0未満のpHを有する。いくつかの実施形態によれば、該出発食物材料又は該出発食物材料を含む組成物のpHは、約2.5~約6.5である。
【0032】
特定の実施形態によれば、該出発食品は液体である。
【0033】
特定の実施形態によれば、該出発食品は、糖を含む天然ジュース又はすぐに飲める製品である。特定の実施形態によれば、天然ジュース又はすぐに飲める製品のpHは約2.5~約4.5である。
【0034】
特定の実施形態によれば、得られた加工食品は、さらに、少なくとも1種類の糖アルコールを含む。特定の例示的な実施形態によれば、該糖アルコールはソルビトールである。特定の実施形態によれば、得られた加工食品は、さらにグルコン酸を含む。特定の例示的な実施形態によれば、得られた加工食品は、さらにソルビトール及びグルコン酸を含む。
【0035】
特定の実施形態によれば、得られた加工食品は、糖を含有する出発食品中の含量と比較して、低下したフルクトース、スクロース及びグルコース含量を含む。
【0036】
特定の実施形態によれば、本発明のプロセスによって得られる加工食品は、出発食品と同等の味及び芳香を有し、甘味が低下している。
【0037】
特定の実施形態によれば、単糖類又は二糖類(グルコース/フルクトース/スクロース)のオリゴ糖及び/又は多糖類への変換は、ヒトの消費に適していない有害な副生成物の生成と関連しない。
【0038】
特定の例示的な実施形態によれば、生成されるオリゴ糖又は多糖類はフルクトースのポリマーである。いくつかの実施形態によれば、フルクトースのポリマーは、短鎖長のオリゴ糖(フラクトオリゴ糖、FOS)及び長鎖長のフルクタン多糖類を含むフルクタンである。いくつかの例示的な実施形態によれば、フルクタン多糖はレバンである。
【0039】
特定の例示的な実施形態によれば、本発明のプロセスにより得られる食品は、100mlのジュース当たり約1mg~約15g(0.001%~15%w/v)の濃度の多糖(複数可)を含む。
【0040】
出発食品の糖度を低下させ、単糖類又は二糖類、特に、フルクトース、グルコース及びスクロースを多糖類(複数可)に変換するのに十分な時間並びに適切な条件下で、死んだ微生物細胞又は生きている微生物細胞と出発食品を接触させる。正確なインキュベーション時間及び条件は、出発食品の種類及び使用される微生物細胞の種類に依存する。
【0041】
特定の実施形態によれば、出発食品が天然ジュースである場合、天然ジュースは、透明ジュース、ジュース懸濁液、さらにピューレであり得る。
【0042】
特定の実施形態によれば、該微生物細胞と該出発食品又は該出発食品を含む組成物とを接触させることは、該出発食品又は該出発食品を含む組成物に死んだ微生物細胞又は生きている微生物細胞を添加することを含む。これらの実施形態によれば、本方法は、必要に応じて、必要なインキュベーション時間後に、該微生物細胞を加工食品又は該組成物から分離することをさらに含む。
【0043】
特定の例示的な実施形態によれば、該微生物細胞は死んでおり、該死んだ微生物細胞は、マトリックス上又はマトリックス内に固定される。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、該微生物細胞と該出発食品又は該出発食品を含む組成物とを接触させることは、該出発食品又は該出発食品を含む組成物に死んだ固定化微生物細胞を含有するマトリックスを添加することを含む。これらの実施形態によれば、本方法は、さらに、必要なインキュベーション時間後に、該マトリックスを該食品又は該組成物から分離することを含む。いくつかの実施形態によれば、該マトリックスは、ビーズの形態である。
【0045】
特定の例示的な実施形態によれば、該マトリックスは、ベッド又はカラムに充填されている。これらの実施形態によれば、該微生物細胞と該出発食品又は該出発食品を含む組成物とを接触させることは、該出発食品又は該出発食品を含む組成物をカラムに通すことを含む。特定の例示的な実施形態によれば、該出発食品又は該出発食品を含む組成物は、1時間当たり0.01~10カラム容量の速度でカラムに通される。
【0046】
特定の実施形態によれば、該微生物細胞は、酵母、細菌及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0047】
特定の実施形態によれば、該酵母は、キサントフィロミセス・デンドロロウス(Xanthophyllomyces dendrorhous)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、オガタエア・ポリモルファ(Ogataea polymorpha)、メツシュニコウィア・フルクチコラ(Metschnikowia fructicola)、サッカロマイセス・セレビシエ、オリーブから単離された酵母及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、該酵母は、キサントフィロミセス・デンドロロウスである。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、該酵母は、クラブトリー(Crabtree)陰性種である。本明細書で使用する用語「クラブトリー陰性」は、好気的条件下で、エタノール生成が全くないか又はわずかであり、糖をバイオマス、CO及び水に変換する酵母の能力を指す。これらの実施形態によれば、該酵母は、クルイベロミセス・ラクチス、オガタエア・ポリモルファ、メツシュニコウィア・フルクチコラ、オリーブから単離された酵母及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0050】
特定の実施形態によれば、該細菌は、ザイモモナス・モビリス、アセトバクター・キシリナム、サルシナ・ヴェントリクリ(Sarcina ventriculi)、グルコノバクター・キシリナス(Gluconobacter xylinus)、シュードモナス種#142(カプリアビダス種ATTC 55702とも呼ばれる)、ミクロバクテリウム・レバニフォルマンス(Microbacterium laevaniformans)、パエニバチルス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)(以前は納豆菌として知られていた)、バチルス・マセランス(Bacillus macerans)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus Salivarius)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、アエロバクター・レバニカム(Aerobacter levanicum)(ヘルビコラとも呼ばれる)及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0051】
特定の例示的な実施形態によれば、該微生物細胞は、細菌ザイモモナス・モビリスの死細胞である。
【0052】
追加の例示的な実施形態によれば、該微生物細胞は、細菌バチルス・リケニフォルミスの死細胞である。
【0053】
特定の実施形態によれば、該プロセスは、少なくとも1種類の酵母種及び少なくとも1種類の細菌種若しくは真菌種の死細胞又は生細胞の組み合わせと該出発食品とを接触させることを含む。該細胞は、死んでいるか又は生存し得る。特定の実施形態によれば、死細胞と生細胞の組み合わせが使用される。
【0054】
特定の例示的な実施形態によれば、酵母と細菌又は真菌の細胞の組み合わせが使用される場合、該酵母は、キサントフィロミセス・デンドロロウス、クルイベロミセス・ラクチス、オガタエア・ポリモルファ、メツシュニコウィア・フルクチコラ、サッカロマイセス・セレビシエ、及びオリーブから単離された酵母からなる群から選択される。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。特定の例示的な実施形態によれば、該酵母は、クルイベロミセス・ラクチスである。他の例示的な実施形態によれば、該酵母はメツシュニコウィア・フルクチコラである。
【0055】
特定の例示的な実施形態によれば、少なくとも1種類の酵母種と少なくとも1種類の細菌種の組み合わせが使用される場合、該細菌は、ザイモモナス・モビリス、アセトバクター・キシリナム、サルシナ・ヴェントリクリ、グルコノバクター・キシリナス、シュードモナス種#142(カプリアビダス種ATTC 55702とも呼ばれる)、ミクロバクテリウム・レバニフォルマンス、パエニバチルス・ポリミキサ、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・ズブチリス(以前は納豆菌として知られていた)、バチルス・マセランス、ストレプトコッカス・サリバリウス、ロイコノストック・メセンテロイデス及びアエロバクター・レバニカム(ヘルビコラとも呼ばれる)からなる群から選択される。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0056】
特定の追加の例示的な実施形態によれば、死んだ酵母細胞又は生きている酵母細胞と死んだ細菌細胞又は生きている細菌細胞の組み合わせが使用される場合、該細菌細胞は、細菌ザイモモナス・モビリスの細胞である。さらなる例示的な実施形態によれば、該細菌細胞は、バチルス・リケニフォルミスの細胞である。
【0057】
他の例示的な実施形態によれば、死細胞又は生きている細胞が真菌又は酵母と真菌の組み合わせの細胞である場合、該真菌は、アウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・フォエティダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・オリザ(Aspergillus oryza)、スクレロティニア・スクレロチオラム(Sclerotinia sclerotiorum)及びスコプラリオプシス・ブレビカウリス(Scopulariopsis brevicaulis)からなる群から選択される。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。特定の実施形態によれば、死んだ微生物細胞又は生きている微生物細胞は、真菌アスペルギルス・ジャポニカスである。
【0058】
特定の実施形態によれば、死んだ酵母細胞及び死んだ細菌細胞又は死んだ真菌細胞の組み合わせが使用される。他の実施形態によれば、生きている酵母細胞と生きている細菌細胞又は生きている真菌細胞の組み合わせが使用される。
【0059】
特定の実施形態によれば、該出発食品と死んだ微生物細胞又は生きている微生物細胞とを接触させることは、該出発食品又は該出発食品を含む組成物に微生物細胞を懸濁することを含み、該プロセスはさらに、加工食品又は加工食品を含む組成物から該微生物細胞を分離することを含む。特定の現在の例示的な実施形態によれば、該微生物細胞が死細胞である場合、該出発食品と死んだ微生物細胞とを接触させることは、死んだ固定化微生物細胞と接触する該出発食品又は該出発食品を含む組成物の流れを通過させることを含み、前記プロセスはさらに、該加工食品又は該加工食品を含む組成物を収集することを含む。
【0060】
死んだ微生物細胞又は生きている微生物細胞が該出発食品と接触する条件は、とりわけ、温度、pH、酸素濃度及び持続時間を含めて、微生物細胞種(酵母、細菌及び真菌を含む)、これらの組み合わせ及び該出発食品の種類に依存する。予想外にも、本発明は、これから、酸性pH条件下で、フルクトース、グルコース及びスクロースのオリゴ糖及び/又は多糖への変換を示す。酸性pHは、天然ジュースの典型的なpHである。
【0061】
いくつかの実施形態によれば、本プロセスはさらに、該出発食品と死んだ微生物細胞又は生きている微生物細胞とを接触させる工程を少なくとも1回繰り返すことを含む。
【0062】
特定の実施形態によれば、該プロセスは、バッチプロセス、半連続プロセス、連続プロセス又はこれらの組み合わせとして実行される。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0063】
特定の実施形態によれば、該プロセスは、さらに、エタノール除去工程を含む。エタノール除去は、当技術分野で公知の任意の方法によって実行することができる。特定の実施形態によれば、得られた食品中のエタノール含量は、0.5%v/v未満である。追加の実施形態によれば、該エタノール濃度は、0.1%(v/v)未満である。
【0064】
いくつかの実施形態によれば、該プロセスは、さらに、糖度が低下し、かつオリゴ糖及び/又は多糖(複数可)の含量が高い得られた加工食品に人工甘味料を添加することを含む。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、滅菌条件は該プロセス全体を通して維持される。追加の又は代替的な実施形態によれば、該プロセスは、さらに糖度が低下し、かつオリゴ糖及び/又は多糖(複数可)の含量が高い得られた加工食品を低温殺菌することを含む。
【0066】
さらに追加の実施形態によれば、該出発食品がジュース又はすぐに飲める液体である場合、該プロセスは、さらに、事前に低温殺菌を行う場合又は行わない場合で、糖度が低下し、かつオリゴ糖及び/又は多糖(複数可)の含量が高い得られた加工飲料を濃縮することを含む。
【0067】
さらに追加の態様によれば、本発明は、対応する出発未加工食品と比較して、糖度及びカロリー含量が低下し、少なくとも1種類のオリゴ糖及び/又は多糖類の含量が増加した加工食品を提供し、該オリゴ糖及び/又は多糖は、フルクタン及びフラクトオリゴ糖(FOS)からなる群から選択され、さらにソルビトール及びグルコン酸の少なくとも1つを含む。
【0068】
特定の実施形態によれば、糖度が低下し、多糖含量が高く、ソルビトール及び/又はグルコン酸を含む加工食品は、本発明のプロセスにより生成される。
【0069】
特定の実施形態によれば、該加工食品は、対応する出発未加工食品と比較して、フルクトース、グルコース及びスクロースの少なくとも1つの含量が低下している。他の実施形態によれば、該加工食品中の少なくとも1種類の多糖は、フルクタン及びフルクトオリゴ糖を含むが、これらに限定されないフルクトースのポリマーである。いくつかの実施形態によれば、該フルクタンはレバンである。
【0070】
いくつかの実施形態によれば、糖度が低下し、多糖含量が高く、ソルビトール及び/又はグルコン酸を含む加工食品は、甘味が低下した対応する出発未加工食品と比較して同等の味及び芳香を有する。
【0071】
追加の実施形態によれば、該加工食品は、0.5%未満のエタノールを含む。他の実施形態によれば、該加工食品は基本的にCOを含まない。
【0072】
特定の実施形態によれば、該加工食品は、基本的に微生物細胞を欠いている。特定の例示的な実施形態によれば、該加工食品は、微生物細胞を欠いている。特定の実施形態によれば、該加工食品は、基本的に遊離酵素を欠いている。特定の例示的な実施形態によれば、該加工食品は、遊離酵素を欠いている。
【0073】
特定の例示的な実施形態によれば、該出発未加工食品は、糖を含む天然ジュース又はすぐ飲める製品である。
【0074】
特定の追加の態様によれば、本発明は、出発食品の糖度を低下させ、単糖類及び二糖類を少なくとも1種類のオリゴ糖並びに/又は多糖に変換するためのプロセスであって、食品の糖度を低下させ、単糖類若しくは二糖類を少なくとも1種類のオリゴ糖及び/又は多糖に変換するのに活性のある少なくとも1種類の死んだ微生物細胞と、該出発食品又は該出発食品を含む組成物とを接触させることを含むプロセスを提供する。
【0075】
少なくとも1種類の微生物細胞は、上述のとおりである。いくつかの例示的な実施形態によれば、該少なくとも1種類の死んだ微生物細胞は、細菌ザイモモナス・モビリスである。
【0076】
いくつかの例示的な実施形態によれば、該少なくとも1種類の死んだ微生物細胞は、酵母オウレオバシディウム・プルランスである。
【0077】
追加の例示的な実施形態によれば、該出発食品を、オウレオバシディウム・プルランスとザイモモナス・モビリスの組み合わせに接触させる。
【0078】
特定の実施形態によれば、少なくとも1種類の死細胞は、ビーズ内に固定されている。いくつかの実施形態によれば、該ビーズはカラムに充填されている。これらの実施形態によれば、該プロセスは、前記出発食品と少なくとも1種類の微生物細胞とを接触させるように、該出発食品をカラムに通すことを含む。
【0079】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の説明及び図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】出発未処理ジュース中のレベルと比較して、死んだザイモモナス・モビリス細胞を含有するカラムを通過した後の加工リンゴジュース中のグルコース及びフルクトースレベルを示す。
図2】時間の関数としてのショ糖濃度の減少を実証する。酵母オウレオバシディウム・プルランスを用いて、18.5時間後に29%の減少が実証されている。
図3-1】死んでいる固定されたザイモモナス・モビリス細胞とのインキュベーション後のリンゴジュース中の糖度の低下並びにソルビトール及びグルコン酸の生成を実証する。図3A:スクロース含量、図3B:ソルビトール、図3C:グルコン酸。対照-出発リンゴジュース。2時間-インキュベーションの2時間後の含量。22時間-インキュベーションの22時間後の含量。
図3-2】死んでいる固定されたザイモモナス・モビリス細胞とのインキュベーション後のリンゴジュース中の糖度の低下並びにソルビトール及びグルコン酸の生成を実証する。図3A:スクロース含量、図3B:ソルビトール、図3C:グルコン酸。対照-出発リンゴジュース。2時間-インキュベーションの2時間後の含量。22時間-インキュベーションの22時間後の含量。
図4】異なる微生物とのインキュベーション中のリンゴジュースの糖度変化を示す。図4A:クルイベロミセス・ラクチス。図4B:ザイモモナス・モビリス。図4C:グルコノバクター・キシリナス。
図5-1】異なる微生物とのインキュベーション中のリンゴジュースのBRIXの変化を示す。
図5-2】異なる微生物とのインキュベーション中のリンゴジュースのBRIXの変化を示す。
図6】バチルス・リケニフォルミスとの接触の繰り返しによるBRIX低下を示す。
図7-1】アスペルギルス・ジャポニカスとインキュベートしたリンゴジュースのBRIXの変化に対する異なる成長条件の効果を示す。図7A:通気及び成長温度の効果、図7B:ジュースのpHの効果、図7C:酵母抽出物の添加の効果、図7D:硝酸アンモニウムの添加の効果、図7E:ペプトン又はスクロース添加の効果。
図7-2】アスペルギルス・ジャポニカスとインキュベートしたリンゴジュースのBRIXの変化に対する異なる成長条件の効果を示す。図7A:通気及び成長温度の効果、図7B:ジュースのpHの効果、図7C:酵母抽出物の添加の効果、図7D:硝酸アンモニウムの添加の効果、図7E:ペプトン又はスクロース添加の効果。
図7-3】アスペルギルス・ジャポニカスとインキュベートしたリンゴジュースのBRIXの変化に対する異なる成長条件の効果を示す。図7A:通気及び成長温度の効果、図7B:ジュースのpHの効果、図7C:酵母抽出物の添加の効果、図7D:硝酸アンモニウムの添加の効果、図7E:ペプトン又はスクロース添加の効果。
【発明を実施するための形態】
【0081】
発明の詳細な説明
本発明は、食品の他の特性に負の影響を与えることなく、特に、甘味を低下させるだけで、芳香及び味に負の影響を与えることなく、食品中の食物繊維の含量を高めるのと同時に、糖を含有する食品、特に、天然ジュース飲料の糖度を低下させるためのプロセスを提供する。本発明の特有のプロセスは、高価で、かつ/又は遺伝子操作した単離酵素を使用する必要がなく、少なくとも、無傷の微生物細胞、特に、酵素機能を保持したまま固定化することができる死細胞を操作及び採用する簡単さの点で、これまで知られているプロセスよりも都合がよい。得られた加工食品は、満腹感を消費者に提供しながら低カロリーであり、出発、特に、天然の食品の芳香及び味を保持している。該加工食品は、大量の微生物細胞も、いかなる酵素も含有していない。食品がジュースである場合、本発明のプロセスにより得られるジュースは、炭酸ではなく、基本的にアルコールを欠く。
【0082】
本発明は、これから、特定の種類又は複数の種類の微生物細胞、特に、対応する生きている微生物細胞が有する、糖低下能並びに単糖類及び二糖類のオリゴ糖類並びに/又は多糖類への変換能を保持している死んだ微生物細胞と、糖を含有する食品とを接触させることを開示する。特定の態様において、本発明は、この二重活性を提供する酵母及び細菌又は真菌種の細胞の組み合わせ(死んでいる、生きている又はこれらの組み合わせ)を開示する。
【0083】
定義
単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「その」は、文脈が特に明確に指示しない限り、複数の対象を含む。
【0084】
文脈が特に明確に必要としない限り、明細書を通して、単語「含む」、及び「含むこと」などは、排他的又は網羅的な意味とは対照的に、包括的な意味、すなわち、「含むが、これらに限定されない」と言う意味で解釈されるべきである。
【0085】
本明細書で使用する単語「約」は、一般に、数字の範囲の両方の数を指し、かつ数値±5%を指すと理解されるべきである。さらに、本明細書では、全ての数値範囲は、範囲内の各全整数を含むと理解されるべきである。
【0086】
本明細書で使用する用語「単糖」は、他の糖を取得するために加水分解しないグルコース又はフルクトースなどの単糖を指す。
【0087】
本明細書で使用する用語「二糖」は、2つの共有結合した単糖単位を含む任意の化合物を指す。この用語は、スクロース、ラクトース及びマルトースのような化合物を包含するが、これらに限定されない。用語「スクロース」は、グルコースのC-1炭素原子及びフルクトースのC-2炭素原子がグリコシド結合に関与している1モルのD-グルコースと1モルのD-フルクトースで構成された二糖を意味する。
【0088】
本明細書で使用する用語「オリゴ糖」は、グリコシド結合によって連結された2~10個の単糖単位を有する化合物を指す。用語「フラクトオリゴ糖」(FOS)」は、D-フルクトース及びD-グルコース単位で構成された短鎖オリゴ糖を意味する。例えば、いくつかのFOSは、末端位置にD-グルコースの1分子及び2~6個のD-フルクトース単位で構成される。FOS中のフルクトース残基間の結合は、β-(2-1)グリコシド結合である。
【0089】
本明細書で使用する用語「多糖」は、グリコシド結合により共に結合された単糖単位の長鎖で構成される高分子炭水化物分子を指し、加水分解時に構成要素の単糖又はオリゴ糖をもたらす。それらは、線形構造から高度に分岐した構造に及ぶ。特定の実施形態によれば、本発明の多糖はフルクタンである。フルクタンは、通常は、スクロース単位とフルクトース残基、(すなわちグルコース-フルクトース二糖類)、そうでない場合は、還元末端であるもので構築される。フルクトース残基の結合位置は、フルクタンの種類を決定する。結合は、通常、2つの主要なヒドロキシル基(OH-1又はOH-6)の1つで生じ、2つの基本的な種類の単純フルクタンが存在する:
1-結合:イヌリンにおいて、フルクトシル残基は、β-2,1結合によって結合されており、
6-結合:レバン(又はフレイン(phlein))において、フルクトシル残基は、β-2,6結合によって結合されている。
【0090】
フルクタンの第3の種類、グラミナン(graminan)型は、β-2,1結合及びβ-2,6結合の両方を含有する。
【0091】
用語「食物繊維」は、植物由来の食物の消化しにくい部分を指す。食物繊維は、(1)水に溶解し、結腸で容易に気体及び生理活性副生成物へと発酵され、かつプレバイオティックで、粘性であり得る可溶性繊維(胃排出を遅らせ、ひいては、満腹感の延長を引き起こすことができる)、及び(2)水に溶解せず、代謝的に不活性であり、膨化を提供するか、又はプレバイオティクスで、大腸で代謝発酵し得る不溶性繊維(膨化繊維は、消化器系内を移動するので、水を吸収し、排便を緩和する)を含む。特定の例示的な実施形態によれば、用語「食物繊維」は、可溶性繊維を指すために本明細書で使用される。
【0092】
微生物細胞に関連して、本明細書で使用する用語「生きている細胞」、「生細胞」及び「生存細胞」は、本明細書で互換的に使用され、適合性のある培地上で成長させた場合に増殖し、生存能力試験(例えば、ヨウ化プロピジウム染色)で調べた場合に、生存可能であることが判明した細胞を指す。
【0093】
本明細書で使用する用語「死細胞」は、適合性のある培地上で成長させた場合に増殖せず、生存能力試験(例えば、ヨウ化プロピジウム染色)で調べた場合に、生存不能であることが判明する一方で、少なくともある程度まで、食品中の糖度を低下させ、単糖類若しくは二糖類をオリゴ糖及び/又は多糖に変換する、対応する生細胞の能力を保持している細胞を指す。
【0094】
本明細書で使用する用語「遊離酵素」又は「複数の遊離酵素」は、微生物細胞(死んでいるか、又は生きている)と関連していない酵素若しくは複数の酵素又は単離酵素を指す。特定の実施形態によれば、この用語は、出発食品に意図的に添加される単離酵素(複数可)を指す。
【0095】
本明細書で使用する用語「カラム容積/時」、「ベッド容積/時」及び「マトリックス容積/時」は、本明細書で互換的に使用され、1時間以内のマトリックス/ベッド/カラムの同一単位容積を通過した変量の1単位容積を指す。
【0096】
一態様によれば、本発明は、低糖の高繊維食品を調製するためのプロセスであって、食品の糖度を低下させ、単糖類若しくは二糖類をオリゴ糖及び/又は多糖に変換する能力を有する、死んでいるか又は生きている微生物細胞のうちの少なくとも1種類と、糖又は糖を含む組成物を含有する出発食品とを接触させ、それによって、糖度が低下し、オリゴ糖及び/又は多糖含量が高い食品を取得する工程を含むプロセスを提供する。
【0097】
特定の例示的な実施形態によれば、該微生物細胞は死細胞である。
【0098】
単糖若しくは二糖をオリゴ糖及び/又は多糖に変換する死んだ微生物細胞の能力を保持しながら、微生物細胞を死滅させる方法は、当技術分野で知られている。当技術分野で一般的に用いられる方法は、エタノール;胆汁塩又は胆汁塩様化合物(例えば、コール酸ナトリウム);合成洗剤(例えば、Tween 20、SDS、トリトンX100);グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類;又はホルムアルデヒドを含む溶液中で生細胞をインキュベートすることを含む。当業者に知られているように、溶液濃度及び細胞の微生物密度は、溶液及び微生物細胞の種類に応じて決定される。
【0099】
特定の例示的な実施形態によれば、死細胞は、遠心分離により成長培地から生きている微生物細胞を単離し、1時間、1リットルの70%エタノール中1gの細胞の濃度で、70%エタノールとペレットをインキュベートすることによって得られる。特定の実施形態によれば、インキュベーションの終わりに、細胞は、溶液から分離され、固定される。いくつかの例示的な実施形態によれば、固定化マトリックスはアルギン酸塩である。死んだ微生物細胞を含有するマトリックスは、さらに、マトリックス内で70%エタノールの循環によって滅菌され得る。
【0100】
特定の実施形態によれば、該出発食品は、天然ジュース又は糖を含有するすぐに飲める製品である。
【0101】
原料からジュースを押し出し、必要に応じて、本発明のプロセスに供する前に得られたジュースを前処理するための、当技術分野で知られている任意の方法は、本発明の教示を用いて使用することができる。
【0102】
特定の実施形態によれば、該ジュースは、圧搾又は粉砕によって原料から押し出される。本明細書で使用する用語「圧搾」及び「粉砕」は、原料の食用部分から、流体、ペースト、又は任意の密度若しくは粗さの懸濁液を提供する任意の分解手順を含むことを意図している。前記圧搾又は粉砕は、本発明のジュース製品が製造される天然ジュースを提供し、天然ジュースは、液体、懸濁パルプ、マッシュ、スラリー、又はピューレの一貫性を有し得る。特定の例示的な実施形態によれば、原料はフルーツである。
【0103】
糖を含有する任意のフルーツ又は野菜ジュースは、本発明の教示に従って加工することができる。したがって、該プロセスは、リンゴ、クランベリー、梨、桃、スモモ、アンズ、ネクタリン、ブドウ、チェリー、スグリ、ラズベリー、グーズベリー、ブラックベリー、ブルーベリー、イチゴ、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ジャガイモ、トマト、セロリ、ルバーブ、ニンジン、ダイコン、キュウリ、パイナップル、カスタードアップル、ココナッツ、ザクロ、キウイ、マンゴー、パパイヤ、バナナ、スイカ及びカンタループに等しく適用可能である。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの例示的な実施形態によれば、該ジュースは、リンゴ、梨、クランベリー、オレンジ、イチゴ、ブドウ又はチェリーである。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0104】
本発明のプロセスは、効率的でコスト効果の高い方法で、食品、特に、ジュース内の食物繊維の生成と天然ジュースの糖度の低下を兼ね備えている。単糖の食物繊維へのそのような変換に必要な酵素の生成者として微生物を使用すると、酵素を分離及び精製する必要がない。死んだ微生物細胞を使用することは、死細胞としてさらにより都合がよく、一度生成されると、環境条件に影響を受けず、さらに、酵素活性は、律速条件、例えば、基質フィードバック阻害を受けない。予想外に、本発明の教示による単糖のオリゴ糖及び/又は多糖類への変換は、酸性pHでも生じた。従来、そのような変換において活性のある酵素は、ほぼ天然pHのみで活性であることが示された。特定の例示的な実施形態によれば、死んだ微生物細胞は、マトリックス内、典型的にはビーズに固定される。該微生物細胞含有マトリックスは、天然ジュースと微生物細胞の接触がインキュベーション中に生じるように、天然ジュース又は天然ジュースを含む組成物に直接添加することができる。或いは、該微生物細胞含有マトリックスを充填して、ベッド又はカラムを形成し、該ベッド又はカラムを通して天然ジュースを通過させることによって、天然ジュースを微生物細胞と接触させる。
【0105】
本明細書で使用する用語「糖度を低下させる」又は「低下した糖度」は、本発明の教示による微生物細胞と接触させていない対応する食品中の糖の濃度レベル未満である食品、特に、天然ジュース中の糖、特に、グルコース、フルクトース及びスクロースの濃度レベルを指す。
【0106】
特定の実施形態によれば、本発明のプロセスによって得られる加工食品中の総糖度は、出発食品中の総糖度と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、及び95%又はそれ以上低下する。いくつかの実施形態によれば、加工食品中のフルクトース含量は、出発食品中の含量と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、及び95%又はそれ以上低下する。いくつかの実施形態によれば、加工食品中のスクロース含量は、出発食品中の含量と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、及び95%又はそれ以上低下する。いくつかの実施形態によれば、加工食品中のグルコース含量は、出発食品中の含量と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、及び95%又はそれ以上低下する。
【0107】
特定の実施形態によれば、本発明のプロセスは、オリゴ糖及び/又は多糖類の安定生成を提供する。すなわち、加工食品中のオリゴ糖及び/又は多糖の含量低下は全くないか、又はわずかな低下である。
【0108】
特定の例示的な実施形態によれば、本発明のプロセスによって得られる加工食品がジュースである場合、該ジュースは、100mlジュースあたり1mg~15gの濃度(0.001%~15%w/v)でオリゴ糖及び/又は多糖を含む。
【0109】
特定の実施形態によれば、該プロセスは、少なくとも1種類の酵母種及び少なくとも1種類の細菌種若しくは真菌種の死細胞又は生細胞の組み合わせと該出発食品とを接触させることを含む。
【0110】
特定の実施形態によれば、該出発食品を、少なくとも1種類の酵母種の細胞と少なくとも1種類の細菌種又は真菌種の細胞の組み合わせと同時に接触させる。他の実施形態によれば、該出発食品を、少なくとも酵母種の細胞と接触させ、連続して、少なくとも1種類の細菌種又は真菌種の細胞と接触させる。特定の例示的な実施形態によれば、該出発食品を、最初に少なくとも1種類の酵母種と接触させ、その後、少なくとも1種類の細菌種又は真菌種と接触させる。
【0111】
生じた低カロリー高食物繊維食品、特に、飲料は、基本的に、元の食品、フルーツ又は野菜ジュースと同じ栄養的メリットを含有するが、糖の除去及び食物繊維及び糖アルコールへの糖の変換により、著しくカロリーが低い。都合のよいことに、生じた加工食品は、さらに、酸性度調整剤として食品業界で知られ、ひいては、生じた生成物の安定性に寄与し得るグルコン酸を含有し得る。さらに、グルコン酸は、得られた食品にカロリーを加えず(そのカロリー値は0である)、そのようなイオンとグルコン酸塩を形成する能力に基づいて、食品中に存在し得る鉄、カルシウム及び他のイオンのための担体として機能し得る。グルコン酸塩は、これらの必須微量元素のより良好な生物学的利用能を提供する。
【0112】
しかしながら、本発明の低カロリー高食物繊維加工食品を取得するために、全ての糖が除去/変換されなければならないわけではないことを理解されたい。
【0113】
特定の実施形態によれば、本発明の食品は、由来する食品の50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%又はそれ未満のカロリー含量を有し得る。同時に、低カロリー食品は、出発食品に匹敵する味プロファイル及び口の感触を有し得る。
【0114】
一部の食品では、固有の糖度の低下は、消費者がそう期待する製品の味に影響を与える可能性がある。場合によって、甘味を添加するために、天然又は人工の甘味料を添加することができる。甘味料(複数可)は、所望の栄養特性、嗜好プロファイル、及び他の要因に応じて選択され得る。特定の実施形態において、甘味料は、エリトリトール、タガトース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラムノース、トレハロース、アスパルテーム、シクラメート、サッカリン、スクラロース、グリチルリジン、マリトール、乳糖、ロハン郭(Lo Han Guo)、レバウディオサイド、ステビオール配糖体、キシロース、アラビノース、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるが、これらに限定されない。各可能性は本発明の別々の実施形態を表す。
【0115】
本発明の食品がジュース飲料である場合、香料として、又は飲料若しくは食品中の食物繊維のサプリメントとしても使用することができる。糖低下飲料は、さらに、低カロリー製品(例えば、ゼリー、フィリング、フルーツ調製物、キャンディー、又はケーキなど)のための成分として使用することができる。
【0116】
本発明の低カロリー高食物繊維飲料は、必要に応じて、10%~90%以上濃縮することができる。この濃縮物は、糖の低下により、標準的なジュース濃度と比較して著しく体積が低下している。濃縮ジュースの加工コストは、ジュースの流れの中の糖の欠如により著しく低下する。糖低下濃縮物は、より低い体積により、標準的な濃縮物と比較して、冷凍輸送及び冷凍保存コストが著しく低くなる。濃縮プロセスが熱及び時間をあまり必要としないので、ジュースの熱、芳香、及び栄養劣化も低下する。
【0117】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態をより完全に説明するために提示されている。しかしながら、それらは、決して、本発明の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される原理の多くの変形及び改変を容易に考案することができる。
【0118】
実施例
材料及び方法
微生物成長条件
細菌ザイモモナス・モビリスを、30℃で、嫌気的条件下で、2%酵母エキス及び2%グルコースを含有する成長培地で、48時間(又は最大10細胞/mlの濃度まで)成長させた。
【0119】
酵母オウレオバシディウム・プルランスを、30℃で、好気的条件下で、2.4%ジャガイモデキストロースブロスの成長培地中で48時間成長させた。
【0120】
酵母のクルイベロミセス・ラクチス、オガタエア・ポリモルファ、メツシュニコウィア・フルクチコラ、キサントフィロミセス・デンドロロウス又はオリーブから単離された酵母;細菌のグルコノバクター・キシリナス、シュードモナス種#142、ミクロバクテリウム・レバニフォルマンス、パエニバチルス・ポリミキサ、又はバチルス・リケニフォルミス;又は真菌のアスペルギルス・ジャポニカスを、その特定の成長培地中で、それぞれ48時間成長させた。X.デンドロロウスを、20℃でインキュベートした。K.ラクティス、シュードモナス種#142、オリーブから単離された酵母、P.ポリミキサ、A.ジャポニカス及びG.キシリナスを30℃でインキュベートした。O.ポリモルファ及びM.フルクチコラを室温で成長させ、B.リケニフォルミス及びM.レバニフォルマンスを37℃で成長させた。全ての培養物を500mlフラスコ中で、200RPMで回転させる一方で、Z.モビリスを、30℃で嫌気的にインキュベートした。
【0121】
死んだ微生物細胞の取得
上述したように、細菌、酵母又は真菌を成長させた。培養物が所望の細胞密度に達した後に、細胞を遠心分離し、直ちに1時間、70%エタノールに懸濁した。次いで、懸濁液を遠心分離し、細胞ペレットを形成させた。細胞の成長能を確認するために、ペレットからの細胞の試料を成長培地上に置いた。成長が観察されなかった場合は、ペレット中の細胞を「死んだ微生物細胞」と命名した。必要に応じて、細胞を「死細胞」と命名する前に、ヨウ化プロピジウム染色又は他の既知の生存染色手順を用いて、生存能力検査を行う。
【0122】
糖の決定:
糖(二糖類、単糖類及び糖アルコール)を、屈折率検出器(LDC Analytical,Riviera Beach,FL)を用いて、糖パックIカラム(6.5×300mm、Waters,Milford,MA)を取り付けた分析用HPLCシステム(Pump System 320,Kontron,Switzerland)で分離した。0.5ml/分の流速で、水を溶媒として使用した。
【0123】
FOS/レバンの定量
FOS/レバンを、イソプロパノールの1.5倍量を用いて、処理したジュース試料及び未処理ジュース試料から沈殿させた。沈殿物を空気乾燥させ、さらに37℃で48時間乾燥させ、秤量するか、又は0.1MのHClに再懸濁し、100℃で1時間加水分解した。生じた単糖をHPLCによって定量した。
【0124】
酢酸分析
試料中の酢酸イオンの定量分析を、イオン伝導度検出器(Dionex ICS 3000)を備えたイオンクロマトグラフを用いて行った。アニオンを、水酸化物選択性陰イオン交換分析カラム(AS11,250×4mm,Dionex)で分離した。
【0125】
エタノールの分析
エタノールの定性的及び定量的分析を、7683オートサンプラーを有するAgilentモデル5973N MSD質量分析計(MS)及びフィルム厚さが0.25μm i.d.である30m×0.25μm i.d.HP-5(架橋フェニルメチルシロキサン)カラム備えたモデル6890ガスクロマトグラフ(GC)(Agilent,Palo Alto,CA)を用いて作製した。初期オーブン温度を6分間、40℃に維持した。次いで、温度を150℃まで2.5℃/分の速度で増加させ、最終的に250℃まで90℃/分の速度で増加させた。注入口及びイオンソースを、それぞれ、250℃及び280℃に維持した。スプリット比は10:1で、2μLの試料を注入した。2分の溶媒遅延があり、その後、質量スペクトルをm/z 35から300まで収集し、5.27スキャン/秒であった。化合物同定を、対応する参照標準(Aldrich Chemical Co.,St.Louis,MO;Bedoukian Research社,Danbury,CT)のものと質量スペクトル及び保持時間を比較することにより行った。同定した成分を定量する目的のために、線形回帰モデルを、内部標準としてシクロヘキサノンを用い、標準希釈法を使用して決定した。標的イオンを、質量分析システムにより各成分の同定及び定量に使用した。
【0126】
BRIX決定
BRIX(又はDegrees Brix,symbol Bx)は、水溶液の糖度である。BRIXの1度は、溶液100グラム中スクロース1グラムである。BRIXを、ref-85デジタル屈折計を用いて決定した。
【0127】
ビーズ内及び/又はビーズ上への微生物死細胞の固定
以下のように、固定化ビーズ及び死んだ微生物細胞のマトリックスを調製した:
以下のように、1000ml複合溶液を調製した:
溶液A:100mg/lのNa-EDTA溶液500ml中10gのアルギン酸ナトリウム(SIGMA)
溶液B:100mg/lのNa-EDTA溶液500ml中10gのゲルライト(SIGMA)
溶液A及び溶液Bを、120℃で20分間別々に滅菌し、次いで、まだ温かいうちに混合した。
【0128】
次いで、複合溶液を室温まで冷却し、上述のように調製した死んだ微生物細胞ペレットを溶液中に再懸濁した。細胞濃度は体積あたり少なくとも4%湿重量(湿潤w/v)であった。典型的には、該細胞濃度は6%湿潤w/vであった。
【0129】
細胞の捕捉
捕捉手順の前に、複合溶液-細胞の混合物を均質化した。ホモジネートで残ったデブリを、ホモジネートから濾過して除去した。
【0130】
次いで、混合した複合細胞溶液を、0.005%キトサン(高分子量、FLUKA)を含有するpH6.2~6.8の1% CaCl溶液に滴加した。生じたビーズの好ましい平均直径は、その質量に対するビーズの表面積間の比を拡大するために、2mm以下でなければならない。ビーズを形成した後、溶液を25℃で4時間撹拌した。次いで、微生物死細胞ビーズを含有する溶液を、24時間、4℃に移した。該ビーズを、広い開放漏斗を用いてカラムに移し、下部バルブを開けて、アクセス液体の除去を確実にし、カラム内に全てのビーズを維持した。該カラムを、1ベッドボリューム/時の流量で、10ベッドボリュームで洗浄し、塩化カルシウムの残りを除去した。
【0131】
実施例1:ザイモモナス・モビリスの固定化死細胞と接触させたリンゴジュースの糖度の変化
上述したように、ザイモモナス・モビリスの死細胞を固定化し、カラムに充填した。市販のリンゴジュースを、0.2ベッドボリューム(BV)/時の速度でカラムに通した。上述の節の「材料及び方法」で説明したように、グルコース及びフルクトースのレベルを決定した。図1は、明らかに、処理ジュースにおいて両方の糖の含量の低下を示す。
【0132】
実施例2:オーレオバシジウム・プルランスの固定化死細胞と接触させたリンゴジュースの糖度の経時的変化
市販のリンゴジュースを、18.5時間、30℃で、死んだ固定化オーレオバシジウム・プルランス酵母細胞を含有するキトサンビーズとインキュベートした。試料を、0、7及び18.5時間目に収集した。スクロース濃度を、農業研究機関(Agriculture Research Organization)、Volcani centerで、HPLCにより測定した。
【0133】
図2は、ジュース中の糖度が連続的に低下することを示す。固定化酵母オーレオバシジウム・プルランスとのインキュベーションの18.5時間後、糖度が29%低下した。
【0134】
実施例3:ザイモモナス・モビリスの固定化死細胞と接触させたリンゴジュースにおける多糖類の生成
様々な温度下で、死んだ固定化ザイモモナス・モビリス細胞と接触させたリンゴジュースにおけるFOS及び/又はレバン生成を調べた。ジュースを、0.2BV/時の速度で、死んだ固定化細菌を含有するカラムに通した。10mlの処理ジュース、及び供給源の未処理出発ジュース製品を、上述の節の「材料及び方法」で説明したように、FOS/レバンの分析のために採取した。結果を以下の表1に示す。
【0135】
表1:異なる温度下で、Z.モビリスの固定化死細胞を通過したリンゴジュース中のレバン/FOSの生成
【表1】
【0136】
表1から明らかなように、該ジュースを55℃の温度で、固定化Z.モビリス死細胞と接触させた場合に、最高のレバン/FOS含量が得られた。
【0137】
より高いレバン/FOSレベルは、最初の実行(1BV/時)から得られたジュースを固定化Z.モビリス死細胞とより長い期間、再インキュベートすることによって取得することができるという可能性を調べた。そのため、該ジュースを、11又は23日間、固定化Z.モビリス死細胞とインキュベートした。結果を、本明細書以下の表2に示す(日「0」は、最初の実行後のジュースを表す)。
【0138】
表2:インキュベーション時間の関数として、Z.モビリスの固定化死細胞とインキュベートしたリンゴジュース中のレバン及び/又はFOSの生成
【表2】
表2から分かるように、最初の実行後に得られたジュースのさらなるインキュベーションには利点がない。
【0139】
実施例4:ザイモモナス・モビリスの固定化死細胞と接触させたリンゴジュースの糖度の変化
細菌ザイモモナス・モビリスの固定化死細胞を有するビーズを、上述のように調製した。市販のリンゴジュースを、死んだ固定化細菌細胞と18.5時間インキュベートした。試料を、0、7及び18時間の時点で採取した。糖度を、エルサレムのヘブライ大学の農業食料環境学部の部門間ユニットでGC-MSを用いて測定した。
【0140】
スクロース含量は、インキュベーションの2時間後という速さで著しく低下した。実験の終わりに、スクロース含量は、その初期濃度の約18%であった(表3)。予想外に、これらの条件下で、ソルビトール(図3、表3)、及びグルコン酸(図3)が生成された。図1及び図3から明らかなように、本発明のプロセスを用いて、リンゴジュース(スクロース、グルコース及びフルクトース)の全ての主要な糖の濃度は、著しく低下した。上述の表2に示すように、糖は、フラクトオリゴ糖(FOS)及びフルクト多糖(レバン)に変換された。
【0141】
表3:固定化ザイモモナス・モビリス死細胞とインキュベートしたリンゴジュースにおける糖低下及びソルビトール蓄積
【表3】
【0142】
実施例5:ジュースの糖度に対する生きている微生物細胞の培養条件の効果
希釈したリンゴジュースと最初にインキュベートした微生物細胞を収集し、洗浄し、次いで、糖度を低下させる能力を調べるためにリンゴジュースに再懸濁した。
【0143】
K.ラクティス、O.ポリモルファ、M.フルクチコラ、Z.モビリス、G.キシリナス、シュードモナス種#142、オリーブから単離した酵母、B.リケニフォルミス、P.ポリミキサ、X.デンドロロウス又はM.レバニフォルマンスを、KOHによりpH7.0に調整したリンゴジュース100mlに1:200希釈したそれらの特定の成長培地で48時間成長させ(新鮮なリンゴジュースに希釈したX.デンドロロウスを除いて)、さらに48時間成長させた。細胞を遠心分離し、ペレットを蒸留水(DW)で2回洗浄した。ペレットをリンゴジュース10mlに再懸濁し、酵母及び細菌についてそれぞれ1.8×10又は1.8×1010CFU/mlの濃度になるようにした。
【0144】
次いで、上述したように、細胞を回転させながらインキュベートした。試料を、指定時間に採取し、OD600、糖度、及びFOS含量について試験した。BRIX値も決定した。指定した試料を、エタノール又は酢酸含量について分析した。
【0145】
試験した全ての微生物(シュードモナス種#142を除く)は、異なる速度ではあるが、糖度を低下させることができた。代表的なデータを、図4に示す。K.ラクティスは、わずか約0.5時間で2.8%から0.065%にスクロース含量を、2.5時間で3%から0.005%にグルコース含量を、かつ3時間で7%から0.33%にフルクトース含量を低下させた。Z.モビリスは、25.5時間後に全ての糖をほぼゼロに低下させた。G.キシリナスは、グルコース含量のみを、唯一105.5時間のインキュベーション後に低下させることができた。酢酸生成の分析により、G.キシリナスが、これらの実験条件下で酢酸を生成することが明らかになった。したがって、G.キシリナスは、本発明のプロセスでの使用に適さないと結論付けられた。
【0146】
実施例6:異なる生きている微生物細胞とのインキュベーション中のリンゴジュースのBRIXの変化
図5に示すように、オリーブから単離した酵母は、最速の方法でリンゴジュースのBRIXを低下させ、インキュベーションの約2時間以内に約6のBRIXになった。リンゴジュースBRIXを同じ値(約6)に低下させるのに、M.フルクチコラとのインキュベーションでは2.5時間、K.ラクティスでは3.5時間、Z.モビリスでは5.5時間及びO.ポリモルファとのインキュベーションでは19.5時間を要した。M.レバニフォルマンス及びP.ポリミキサも、マイナーな効果を有することが判明し、23時間後には約10にBRIXを低下させた。B.リケニフォルミスは、24時間のインキュベーションの間に維持されるBRIX値を低下させるのに有効ではないことが判明した。
【0147】
エタノール分析用の試料を、試料が約9及び約6のBRIXに達した時点で採取した。エタノール含量分析により、表4~8に記載したように、K.ラクティス、Z.モビリス及びM.フルクチコラは、試験した実験条件下でエタノールを生成することが明らかになった。O.ポリモルファは、試料が約9のBRIXに達した時に、最小量のエタノールを生成した。M.フルクチコラは、試料が約6のBRIXに達した時に、最小量のエタノールを生成した。B.リケニフォルミスは、エタノールを生成しなかった。パン酵母S.セレビシエを同じ条件下で試験した場合に、エタノールの量は、Z.モビリスで得られたものと同様であったことに留意されたい。
【0148】
表4:K.ラクティスとインキュベートしたリンゴジュース中のBRIX値及びエタノール含量
【表4】
【0149】
表5:Z.モビリスとインキュベートしたリンゴジュース中のエタノール含量
【表5】
【0150】
表6:M.フルクチコラとインキュベートしたリンゴジュース中のエタノール含量
【表6】
【0151】
表7:O.ポリモルファとインキュベートしたリンゴジュース中のエタノール含量
【表7】
【0152】
表8:オリーブから単離した酵母とインキュベートしたリンゴジュース中のエタノール含量
【表8】
【0153】
B.リケニフォルミスはエタノールを生成しなかったので、細菌の2つの異なるバッチとリンゴジュースをインキュベートすることが、BRIXレベルを低下させるのに役立つかどうかを検討した。リンゴジュースに約1010CFU/mlのB.リケニフォルミスを30分間浸漬すると、BRIXが10.1に低下するが、同じジュースに追加の細菌バッチを浸漬すると、BRIXが8.8に低下することが判明した(図6)。都合のよいことに、エタノール又は酢酸は全く生成されなかった。
【0154】
実施例7:多糖の生成
以下のように、生きているZ.モビリスによるFOS生成を調べた:細菌を22時間、リンゴジュースに浸漬した。次いで、FOSを処理ジュースから又は未処理試料から沈殿させ、加水分解した。次いで、単糖含量を分析し、細菌で処理したジュースにおいてグルコース含量で1.6倍の増加及びフルクトース含量で1.4倍の増加が明らかになった。この結果は、この実験系においてZ.モビリスによるFOSの形成を示す。
【0155】
Z.モビリス、P.ポリミキサ、又はX.デンドロロウスを用いて、インキュベーション時間中にFOS含量をさらに評価した。試料を指定時間に採取し、FOSを沈殿させ、秤量した。結果を、以下の表9に示す。
【0156】
表9:FOS含量(mg/100mlジュース)
【表9】
【0157】
表9から明らかなように、最高FOS含量を、異なる微生物について異なるインキュベーション時間で取得した。5.5時間のインキュベーションは、Z.モビリス及びP.ポリミキサに最も効果的であることが判明し、12時間のインキュベーション時間は、X.デンドロロウスに最も効果的であった。M.レバニフォルマンスは、実験条件下ではわずかな量しかFOSを形成しなかった。
【0158】
FOS形成微生物で5.5時間一度処理したリンゴジュースを、該微生物の第2のバッチと5時間再インキュベートすることによってより高いFOSレベルが取得できる可能性を調べた。第2のインキュベーション時間後に、P.ポリミキサとインキュベートしたリンゴジュース中のFOS含量は70mg/ジュース100mlであり、Z.モビリスとインキュベートしたリンゴジュース中のFOS含量は110mg/100mlであり、X.デンドロロウスとインキュベートしたリンゴジュース中のFOS含量は190mg/100mlであった。したがって、X.デンドロロウスについてのみ、第2のインキュベーション時間は、FOSのさらなる生成に有意であった。
【0159】
実施例8:生きているA.ジャポニカスのBRIX低下活性に対する様々な成長条件の効果の検討
BRIX低下及びFOS収量に及ぼす影響を調べるために、A.ジャポニカスを用いた成長実験を、異なる成長条件を用いて繰り返した。対照条件は、上述したとおり(好気性、30℃)であったが、通気がより多かった。以下の条件を調べた:通気及び成長温度(図7A);5.6のジュースのpH又はpH=7まで毎日滴定したジュースのpH(図7B);0.1%又は1%の酵母エキスの添加(図7C);0.1%又は1%の硝酸アンモニウムの添加(図7D);1%のペプトン又は1%のスクロースの添加(図7E)。BRIXを、示した時間でチェックした。
【0160】
図7から明らかなように、30℃で、好気的条件下で、1%の酵母エキスを含有するリンゴジュース中で真菌を成長させると、BRIX値が最も著しく減少した。全ての指定成長条件下で、A.ジャポニカスによるFOS生成はわずかであった。
【0161】
特定の実施形態の上記の説明は、本発明の一般的な性質を完全に明らかにしているので、過度の実験を行うことなく、一般的な概念から逸脱することなく、現在の知識を適用することによりそのような特定の実施形態を容易に変更し、かつ/又は様々な適用に適合させることができ、したがって、そのような適合及び変更は、開示された実施形態の均等物の意味及び範囲内で理解されるべきであり、かつ理解されることが意図される。本明細書で用いられる表現又は専門用語は、説明の目的のためのものであり、限定するものではないことを理解されたい。様々な開示された機能を実行するための手段、材料、及び工程は、本発明から逸脱することなく、様々な別の形態をとり得る。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】