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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】熱成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/26 20060101AFI20230724BHJP
   B29C 51/42 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
B29C51/26
B29C51/42
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022125834
(22)【出願日】2022-08-05
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】304050369
【氏名又は名称】株式会社浅野研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺本 一典
(72)【発明者】
【氏名】高井 章伍
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-240099(JP,A)
【文献】国際公開第2016/171175(WO,A1)
【文献】特開2021-084236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/26
B29C 51/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を用いて樹脂シートを成形する熱成形装置において、
厚みのある前記樹脂シートの外周を保持する搬送枠部材と、
前記搬送枠部材を搬送する横行装置と、を備え、
前記搬送枠部材には吸気機構がえられ、前記搬送枠部材が前記樹脂シートの外周と当接し、前記吸気機構によって吸気することで前記樹脂シートを保持し、前記横行装置によって搬送され
前記搬送枠部材の上面には、前記樹脂シートを加熱するための熱板が当接して配置され、前記熱板を貫通して前記吸気機構と接続する吸気路が形成されていること、
を特徴とする熱成形装置。
【請求項2】
請求項に記載の熱成形装置において、
前記搬送枠部材内に前記樹脂シートが配置され、
前記横行装置に保持された前記搬送枠部材に当接するように前記熱板が配置され、前記吸気機構により前記樹脂シートが吸着保持された後、加熱装置によって前記樹脂シートが加熱され、前記金型を用いて成形されること、
を特徴とする熱成形装置。
【請求項3】
請求項に記載の熱成形装置において、
前記搬送枠部材と前記熱板と前記樹脂シートの上面で囲まれた空間が、前記吸気路と接続し、前記吸気機構により前記樹脂シートが吸着保持されること、
を特徴とする熱成形装置。
【請求項4】
請求項に記載の熱成形装置において、
前記搬送枠部材が、
前記樹脂シートの側面を保持する側面支持部材と、
該側面支持部材の移動を前記樹脂シートの幅方向又は奥行方向に規制して摺動可能に案内するスライドガイドと、を備え、
前記支持部材には、前記樹脂シートの端面に当接する当接面に複数の吸気孔を備え、該吸気孔が前記側面支持部材の内部に形成される流路に連通し、前記流路は前記熱板の当接面側に開口して前記吸気路と連通すること、
を特徴とする熱成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクラップレス成形を実現するために、必要なサイズにトリミングした後の樹脂シートを搬送可能な機構を備える熱成形装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱成形機を用いた樹脂シートの成形では、従来、シートの一部をクランプして搬送する方法が一般的に用いられてきた。この場合、樹脂シートの一部はクランプをする為の場所として用意され、熱成形された後に成形品をトリミングする必要がある。トリミングされた後、成形品とその残材がスクラップとして回収される。
【0003】
特許文献1には、熱成形装置及び熱成形方法に関する技術が開示されている。特許文献1の熱成形装置は、シート搬送機構、成形機構、輻射加熱機構を備えており、シートの両端をクランプ搬送機構によってクランプして長尺シートを引き出しながら搬送する構成となっている。シートは成形機構によって成形された後に、成形品取出機構にて製品とスクラップに切り分けられる。なお、所定の長さでシートをカットして取り出す方式でも類似の方法で搬送可能であると紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-23205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される技術を用いる場合、上述した通りシートを成形した後にトリミングを行うことでスクラップと製品を切り分けている。このため、成形品が三次元形状である場合には三次元形状に対応したトリミング装置を用いる必要があるが、形状によってはトリミングが困難でコストがかかる問題がある。また、昨今の環境性を求められるというニーズに合わせて、できるだけスクラップの分量を少なくすることが求められている。
【0006】
そこで、樹脂シートをスクラップレス、或いは可能な限り発生するスクラップの量を削減して、成形可能な熱成形装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による熱成形装置は、以下のような特徴を有する。
【0008】
(1)金型を用いて樹脂シートを成形する熱成形装置において、
厚みのある前記樹脂シートの外周を保持する搬送枠部材と、
前記搬送枠部材を搬送する横行装置と、を備え、
前記搬送枠部材には吸気機構が供えられ、前記搬送枠部材が前記樹脂シートの外周と当接し、前記吸気機構によって吸気することで前記樹脂シートを保持し、前記横行装置によって搬送されること、
を特徴とする。
【0009】
上記(1)に記載の態様により、樹脂シートの側面(外周面)を保持して樹脂シートの搬送を行うことが可能になる。この結果、成形に使う金型より小さな樹脂シートの搬送が可能となり、先にトリミングした樹脂シートを扱うことができる。金型の面積よりも樹脂シートが小さくても、厚手の樹脂シートの側面を保持して搬送する構成であるため、樹脂シートの成形後のトリミングが不要となる。この結果、例えば樹脂シートを三次元形状に成形した場合の加工の容易性が向上する。
【0010】
また、樹脂シートの保持方法は、搬送枠部材に吸気機構を備えており、樹脂シートの全周を吸気することで保持する構成となっている。このため、樹脂シートの表面及び裏面に触れないように保持することができる。したがって、透明な樹脂シートなどを成形する場合にも、表面や裏面に搬送する際の影響、即ち樹脂シートをクランプすることでできる凹凸や細かい傷などの発生の抑制が期待出来る。
【0011】
(2)(1)に記載の熱成形装置において、
前記搬送枠部材の上面には、前記樹脂シートを加熱するための熱板が当接して配置され、前記熱板を貫通して前記吸気機構と接続する吸気路が形成されていること、
が好ましい。
【0012】
上記(2)に記載の態様により、熱板を樹脂シートに密着させて均一に樹脂シートの加熱が可能となる。熱板を貫通する形での吸気路を形成することで、熱板が樹脂シートの全面を覆う状態を作り出すことができる。熱板で樹脂シートを均一に加温するためには、樹脂シートの全面を熱板で覆うことが好ましい。
【0013】
(3)(2)に記載の熱成形装置において、
前記搬送枠部材内に前記樹脂シートが配置され、
前記横行装置に保持された前記搬送枠部材に当接するように前記熱板が配置され、前記吸気機構により前記樹脂シートが吸着保持された後、加熱装置によって前記樹脂シートが加熱され、前記金型を用いて成形されること、
が好ましい。
【0014】
上記(3)に記載の態様により、樹脂シートを搬送枠部材で吸着保持した後に、加熱する方式としているので、樹脂シート加熱による線膨張の影響を受けずに搬送枠部材での保持が可能となる。このため、成形品の歩留まりを上げ、形状精度向上に寄与することが可能である。
【0015】
(4)(2)に記載の熱成形装置において、
前記搬送枠部材と前記熱板と前記樹脂シートの上面で囲まれた空間が、前記吸気路と接続し、前記吸気機構により前記樹脂シートが吸着保持されること、
が好ましい。
【0016】
上記(4)に記載の態様により、搬送枠部材と熱板と樹脂シートの上面で囲まれた空間が負圧になるため、搬送枠部材で樹脂シートの側面を支持し(1)の態様と同様に樹脂シートの成形後のトリミングが不要となり、(1)の態様と同様に厚みのある樹脂シートの搬送が可能となる。
【0017】
(5)(2)又は(3)のいずれかに記載の熱成形装置において、
前記搬送枠部材が、
前記樹脂シートの側面を保持する支持部材と、
該支持部材の移動を前記樹脂シートの幅方向又は奥行方向に規制して摺動可能に案内するスライドガイドと、を備え、
前記支持部材には、前記樹脂シートの端面に当接する当接面に複数吸気孔を備え、該吸気孔が前記支持部材内部に形成される流路に連通し、前記流路は前記熱板当接面側に開口して前記吸気路と連通すること、
が好ましい。
【0018】
上記(5)に記載の態様により、スライドガイドによってガイドされることで、樹脂シートの膨張に対応し、かつ樹脂シートの搬送時にチャック或いはアンチャックする機構として機能する。このため、スムーズかつ確実に樹脂シートを搬送枠部材によって保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態の、搬送枠部材の斜視図である。
図2A】第1実施形態の、樹脂シート投入時の模式図である。
図2B】第1実施形態の、横行装置でクランプする際の模式図である。
図2C】第1実施形態の、熱板より給気する状態を示す模式図である。
図2D】第1実施形態の、樹脂シートを加熱する様子示す模式図である。
図2E】第1実施形態の、成形位置で金型を移動させる様子を示す模式図である。
図2F】第1実施形態の、成形位置でのアンクランプ状態を示す模式図である。
図2G】第1実施形態の、成形位置で上型が降下する様子を示す模式図である。
図2H】第1実施形態の、成形時の様子を示す模式図である。
図3】第1実施形態の、熱成形装置の概略図である。
図4】第1実施形態の、搬送枠部材の平面図である。
図5】第1実施形態の、側面支持部材の断面図である。
図6】第2実施形態の、側面支持部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明に係る第1の実施形態の熱成形装置10の概略について説明をする。図1に、第1実施形態の搬送枠部材100の斜視図を示す。図2A図2Hに、成形手順を模式図に示す。図3に、熱成形装置10の概略図を示す。熱成形装置10の構成は、図3に示すように投入部St1、加熱部St2、成形部St3の3つのポジションに分かれており、図1に示すような搬送枠部材100によって投入部St1で投入された樹脂シートSを搬送する。成形に用いる樹脂シートSは厚みが5mm程で、熱成形装置10に投入する前に所定の大きさにカットされた透明な素材を用いている。
【0021】
搬送枠部材100は、四方に配置される側面支持部材105と四隅に配置されるスライドガイド110よりなる。側面支持部材105はスライドガイド110に端面をガイドされて、中央に保持される樹脂シートSに対して近接・離間する構造である。図4に、搬送枠部材100の平面図を示す。図4では、中央に配置される樹脂シートSに対して、側面に配置された側面支持部材105が近接する様子を示している。スライドガイド110は側面支持部材105をガイドする機能を備えているので、側面支持部材105は脱落しないように移動可能である。
【0022】
図5に、側面支持部材105の断面を示す。図5図1のAA断面図にあたる。側面支持部材105は、その内部に流路105aが形成されており、樹脂シートSの側面側に開口する様に設けられた複数の吸気孔105bと連通している。吸気孔105bは樹脂シートSの側面との当接面105dに複数開口されており、上面側に設けられた開口部105cと連通している。したがって、図1に示すように、搬送枠部材100の上面には4箇所に開口部105cが見えることになる。この開口部105cには吸気路107が接続され、図示されていないチューブ及び真空ポンプなどの吸気機構に接続されている。
【0023】
したがって、樹脂シートSの側面と側面支持部材105の当接面105dの対向させた状態で、流路105a内を負圧にすることで吸気孔105bから空気を吸引して、後述するように樹脂シートSを保持する力を得る。なお、図6では樹脂シートSと側面支持部材105との間のリークを防ぐ為に薄板106を上下に配置しているが、当接面105dに図示しない弾性部材を設けてリークを防ぐ手法でも良い。
【0024】
第1実施形態の熱成形装置10は、上述したような搬送枠部材100を用いて樹脂シートSを搬送する。次に、図2A乃至図2Hを用いて熱成形装置10を用いた成形過程について説明する。
【0025】
投入部St1では、図2Aに示すように、樹脂シートSを搬送枠部材100にセットする。搬送枠部材100の下部には、樹脂シートSの下面に接して樹脂シートSが脱落しないよう支持するシートサポート150が配置されており、樹脂シートSが脱落しないように支持している。搬送枠部材100は樹脂シートSに対して、図4に示すように若干広がっており、事前に所定の大きさにカットされた樹脂シートSを投入した後に側面支持部材105は樹脂シートSに対して近接するように移動される。この側面支持部材105の移動機構については特に限定しないが、必要に応じて空圧シリンダや電動駆動機構などの移動手段を付加することを妨げない。
【0026】
次に、図2Bに示すように、樹脂シートSの上面に密着させることで加熱を行う熱板160を配置する。熱板160は所定の熱容量がある部材であれば良く、樹脂シートSの上面に対して接することで、熱を伝達する機能を有する。更に、搬送枠部材100を前述の投入部St1、加熱部St2、成形部St3まで移動させる横行装置200によって搬送枠部材100をチャックする。
【0027】
次に、図2Cに示すように、熱板160を貫通する吸気路107を介して前述した開口部105cより吸気する。図5では吸気路107だけを示したが、実際には吸気路107は熱板160を貫通して吸気を行う。樹脂シートSの側面と側面支持部材105の当接面105dの対向させた状態で、流路105a内を負圧にすることで吸気孔105bから空気を吸引して、樹脂シートSを側面支持部材105に吸着させる。これによって、搬送枠部材100が樹脂シートSを保持することが可能となる。この状態で、シートサポート150から樹脂シートSを持ち上げることが可能となる。
【0028】
次に、図2Dに示すように、加熱装置Hによって樹脂シートSを加熱する。図2Dは、加熱部St2に横行装置200を用いて樹脂シートSを移動させた後に、加熱装置Hによる加熱を行っている。加熱装置Hは輻射加熱又は熱風加熱の何れでも良く、その他の加熱方法を用いることを妨げない。加熱装置Hを用いて樹脂シートSを所定の時間加熱し、横行装置200を用いて次の工程に移動する。
【0029】
次に、図2Eに示すように成形部St3に搬送枠部材100を移動させ、下型220を持ち上げて樹脂シートSと当接させるようにする。そして、図2Fに示すように熱板160と搬送枠部材100を退去させて、図2Eに示すように上型210を降下させ、図2Hに示すように型締めして樹脂シートSの成形を行うことで、成形品Pを得ることができる。この後、図示しない払出部にて成形品Pの払い出しが行われる。
【0030】
第1実施形態の熱成形装置10は上記構成であるため、以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0031】
まず、樹脂シートSのスクラップレス成形をすることが可能になる。これは、金型(上型210、下型220)を用いて樹脂シートSを成形する熱成形装置10において、厚みのある樹脂シートSの外周(外周面)を保持する搬送枠部材100と、搬送枠部材100を搬送する横行装置200と、搬送枠部材100には吸気機構(流路105a、吸気孔105b、開口部105c、吸気路107)が供えられ、搬送枠部材100が樹脂シートSの外周と当接し、吸気機構によって吸気することで樹脂シートSを保持し、横行装置200によって搬送されるからである。
【0032】
すなわち、図1に示すように、予め定寸にカットされた樹脂シートSを用いて、図2Hに示すように成形品Pを得ることができるので、成形後に成形品Pを改めてトリミングする必要が無い。これは、樹脂シートSの側面を搬送枠部材100によって保持しながら搬送することで、上型210及び下型220よりも面積の狭い樹脂シートSを用いることができるからであり、このためにスクラップレスの成形を実現することが可能となる。尤も、樹脂シートSをカットする際に端材が出るが、成形するためにクランプする部分を用意する場合よりも遥かに少なくすることができる。
【0033】
また、樹脂シートSを搬送枠部材100で搬送するにあたって、側面支持部材105に設けた流路105a内部を負圧にすることで、樹脂シートSの側面を吸着して保持する方式を採用している。流路105aは搬送枠部材100の4辺をそれぞれ構成する側面支持部材105に1本ずつ設けられえる。側面支持部材105は、その端部がスライドガイド110と摺動可能に係合しているため、搬送枠部材100の内側に配置される樹脂シートSに対して、近接・離間するように移動可能となっている。このような構造を採用するために、樹脂シートSの投入・取り出しが容易となる。
【0034】
すなわち、樹脂シートSの投入・取り出しの際には、側面支持部材105が外側に、つまり樹脂シートSから離間する様に移動することで、樹脂シートSと側面支持部材105とが干渉しにくくなる。また、保持する際には樹脂シートSに近接することで、吸気孔105bから空気を吸引して樹脂シートSが脱落しないように保持が可能となる。
【0035】
なお、本実施形態では側面支持部材105が4辺とも自在に移動できる構成としてあるが、4辺のうち隣り合う2辺、つまりL字型に配置された側面支持部材105を2か所動かないようにして基準とし、可動するように設けられた2本の側面支持部材105で押し付けるように移動する構成とすることもできる。こうすることで、樹脂シートSの位置決め精度を上げることも可能であるので、必要に応じて適宜選択することが望ましい。
【0036】
また、樹脂シートSの厚みが増えたり、面積が広くなったりして重量が増した場合には、側面支持部材105の当接面105dに設ける吸気孔105bの数を増減したり、当接面105dと樹脂シートSとの接触面積を増やすためにゴムなどの弾性部材を設けることで、保持力を高めることを妨げない。更に、図5に示すような薄板106を設けるなどの工夫により、より保持力を高めることが可能である。
【0037】
また、搬送枠部材100内に樹脂シートSが配置されて、横行装置200に保持された搬送枠部材100に当接するように熱板160が配置され、吸気機構(流路105a、吸気孔105b、開口部105c、吸気路107を通じて図示しない真空ポンプやブロアなどによって吸気する機構)により樹脂シートSが吸着保持された後、加熱装置Hによって樹脂シートSが加熱され、金型(上型210、下型220)を用いて形成される。
【0038】
このように搬送枠部材100で樹脂シートSを保持した後に熱板160を当接させ、その後に加熱装置Hによって樹脂シートSが加熱される手順とすることで、樹脂シートSの加熱による膨張に対応することができる。このため、樹脂シートSを保持している側面支持部材105は空圧シリンダなどで加圧するような構成となっていることが好ましい。
【0039】
次に、本発明の第2の実施形態の熱成形装置10Aの概略について説明をする。第2実施形態の熱成形装置10Aは、第1実施形態の熱成形装置10と類似した構成であるが、細部で異なる。以下、異なる構成について図6を用いて説明する。
【0040】
図6には、第2実施形態の熱形成装置の側面支持部材の断面図を示す。図6図1のAA断面図に相当する。熱成形装置10Aが備える側面支持部材105Aは、図6に示される様に略L字状の断面形状であり、熱板106の下面と当接する側に切欠部105fを備えている。側面支持部材105の当接面105dは、第1実施形態と同様に樹脂シートSに当接し、樹脂シートSの上面と熱板106の下面との間には隙間105eが形成されて、吸気路107に接続されている。
【0041】
吸気路107は図示されていないチューブ及び真空ポンプに接続される。したがって、第1実施形態のように側面支持部材105の内部に流路105aが形成されるのではなく、樹脂シートSの上面に形成される隙間105eと吸気路107が連通する構成となる。
【0042】
第2実施形態の熱成形装置10Aはこのような構成であり、第1実施形態と同様に樹脂シートSを、搬送枠部材100を用いて搬送することが可能である。したがって、第1実施形態と同様に、予め定寸にカットされた樹脂シートSを用いて成形が可能であり、スクラップレスの成形を実現することが可能となる。
【0043】
以上、本発明に係る熱成形装置10に関する説明をしたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、本実施形態では、樹脂シートSに透明な素材を用いるとしているが、不透明な素材であっても適用が可能である。
【0044】
また、その厚みは5mmとしているが、これに限定されるものではない。ただし、側面支持部材105を用いる関係で厚手の樹脂シートSの方が吸着し易くなる。尤も、厚みが増すと重量が重くなるため、搬送枠部材100による吸着搬送が実現可能な範囲での適用が好ましい。また、樹脂シートSは矩形でなくとも搬送枠部材100の形状を工夫することで対応が可能である。
【符号の説明】
【0045】
S 樹脂シート
10 熱成形装置
100 搬送枠部材
105a 流路
105b 吸気孔
105c 開口部
107 吸気路
200 横行装置
210 上型
220 下型
【要約】
【課題】樹脂シートをスクラップレス、或いは可能な限り発生するスクラップの量を削減して、成形可能な熱成形装置の提供を目的とする。
【解決手段】金型(上型210、下型220)を用いて樹脂シートSを成形する熱成形装置10において、厚みのある樹脂シートSの外周を保持する搬送枠部材100と、搬送枠部材100を搬送する横行装置200と、搬送枠部材100には吸気機構(流路105a、吸気孔105b、開口部105c、吸気路107)が供えられ、搬送枠部材100が樹脂シートSの外周と当接し、吸気機構によって吸気することで樹脂シートSを保持し、横行装置200によって搬送する。
【選択図】図1
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3
図4
図5
図6