(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】金券類売買システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0601 20230101AFI20230724BHJP
G06Q 20/06 20120101ALI20230724BHJP
【FI】
G06Q30/0601
G06Q20/06
(21)【出願番号】P 2023024693
(22)【出願日】2023-02-20
【審査請求日】2023-02-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】322008690
【氏名又は名称】株式会社世田谷
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】弁理士法人井上国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077919
【氏名又は名称】井上 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172638
【氏名又は名称】伊藤 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100153899
【氏名又は名称】相原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100159363
【氏名又は名称】井上 淳子
(72)【発明者】
【氏名】西 公範
【審査官】石田 紀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-133829(JP,A)
【文献】特許第7049723(JP,B1)
【文献】特開2012-123830(JP,A)
【文献】特開2001-351039(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0138392(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の商品又は役務の提供者、及び、前記商品又は前記役務の享受者の間における取引に適用可能な疑似貨幣・チケット・金券を含む金券類が、前記提供者より付与される前記享受者である第1享受者が、携帯する第1端末と、
前記金券類が前記提供者より付与される前記享受者であって、前記第1享受者における前記取引の頻度よりも大きい頻度にて前記提供者と取引する第2享受者が、携帯する第2端末と、
前記第1端末、及び、前記第2端末と、情報通信可能に接続されたサーバと、
を備えた
金券類売買システムであって、
前記サーバは、
前記提供者より付与された前記金券類の額面の値、前記金券類の適用可能期限、及び、前記取引の頻度を、前記享受者ごとにそれぞれ取得し記憶する記憶部と、
前記金券類の額面の値に対応する第1変数、現時点から前記金券類の適用可能期限までの期間である権利残存期間に対応する第2変数、及び、前記取引の頻度に対応する第3変数を、前記享受者ごとにそれぞれ設定する変数設定部と、
前記第1変数、前記第2変数、前記第3変数、及び、前記金券類の価値を定量化した値の関係を規定する関数であって、金融工学に基づいて構築されたモデルに対応する関数と、前記設定された第1変数と、前記設定された第2変数と、前記設定された第3変数とに基づいて、前記金券類の価値を定量化した値を、前記享受者ごとに決定する価値決定部と、
前記第1享受者に付与された前記金券類の買取価格を、前記第1享受者に紐づく前記価値を定量化した値に基づいて設定し、前記買取価格に対応する情報を前記第1端末に通知する買取価格通知部と、
前記第1享受者から買い取られた前記金券類の売却価格を、前記第2享受者に紐づく前記価値を定量化した値に基づいて設定し、前記売却価格に対応する情報を前記第2端末に通知する売却価格通知部と、
を備え
、
前記サーバの前記変数設定部は、
前記第1変数として、
前記金券類の額面の金額そのものが用いられ、
前記第2変数として、
前記権利残存期間に少なくとも媒介変数を乗じた値が用いられ、
前記第3変数として、
前記取引の頻度に少なくとも媒介変数を乗じた値が用いられるように構成され、
前記サーバの前記価値決定部は、
前記金融工学に基づいて構築されたモデルに対応する関数として、
下記式(1)にて規定される関数が用いられ、
【数1】
前記式(1)において、
N(d1)及びN(d2)は、
d1及びd2を変数とする標準正規分布の累積確立密度関数をそれぞれ表し、
前記d1及び前記d2は、
下記式(2)及び下記式(3)にてそれぞれ規定され、
【数2】
【数3】
前記式(1)、前記式(2)、及び、前記式(3)において、
Cは、前記金券類の価値金額を表し、
Sは、前記第1変数を表し、
tは、前記第2変数を表し、
σは、前記第3変数を表し、
Kは、前記金券類における前記取引の際に適用可能な額面の金額を表し、
qは、前記金券類における配当利回りを表し、
rは、前記金券類における安全利子率を表し、
eは、ネイピア数を表し、
Lnは、自然対数を表し、
前記金券類の価値を定量化した値として、
前記金券類の価値金額を決定するよう構成された
金券類売買システム。
【請求項2】
所定の商品又は役務の提供者、及び、前記商品又は前記役務の享受者の間における取引に適用可能な疑似貨幣・チケット・金券を含む金券類が、前記提供者より付与される前記享受者である第1享受者が、携帯する第1端末と、
前記金券類が前記提供者より付与される前記享受者であって、前記第1享受者における前記取引の頻度よりも大きい頻度にて前記提供者と取引する第2享受者が、携帯する第2端末と、
前記第1端末、及び、前記第2端末と、情報通信可能に接続されたサーバと、
を備えた
金券類売買システムであって、
前記サーバは、
前記提供者より付与された前記金券類の額面の値、前記金券類の適用可能期限、及び、前記取引の頻度を、前記享受者ごとにそれぞれ取得し記憶する記憶部と、
前記金券類の額面の値に対応する第1変数、現時点から前記金券類の適用可能期限までの期間である権利残存期間に対応する第2変数、及び、前記取引の頻度に対応する第3変数を、前記享受者ごとにそれぞれ設定する変数設定部と、
前記第1変数、前記第2変数、前記第3変数、及び、前記金券類の価値を定量化した値の関係を規定する関数であって、金融工学に基づいて構築されたモデルに対応する関数と、前記設定された第1変数と、前記設定された第2変数と、前記設定された第3変数とに基づいて、前記金券類の価値を定量化した値を、前記享受者ごとに決定する価値決定部と、
前記第1享受者に付与された前記金券類の買取価格を、前記第1享受者に紐づく前記価値を定量化した値に基づいて設定し、前記買取価格に対応する情報を前記第1端末に通知する買取価格通知部と、
前記第1享受者から買い取られた前記金券類の売却価格を、前記第2享受者に紐づく前記価値を定量化した値に基づいて設定し、前記売却価格に対応する情報を前記第2端末に通知する売却価格通知部と、
を備え、
前記サーバの前記変数設定部は、
前記第1変数として、
前記金券類の額面の金額そのものが用いられ、
前記第2変数として、
前記権利残存期間に少なくとも媒介変数を乗じた値が用いられ、
前記第3変数として、
前記取引の頻度に少なくとも媒介変数を乗じた値が用いられるように構成され、
前記サーバの前記価値決定部は、
前記金融工学に基づいて構築されたモデルに対応する関数として、
下記式(4)にて規定される関数が用いられ、
【数4】
前記式(4)において、
前記P、前記Cu、及び、前記Cdは、
下記式(5)、下記式(6)、及び、下記式(7)にて規定され、
【数5】
【数6】
【数7】
前記式(6)、及び、前記式(7)において、
Max[A,B]は、2つの引数である前記A及びBのうち大きい方の数値を返す統計関数であり、
前記Su、及び、前記Sdは、
下記式(8)、及び、下記式(9)にて規定され、
【数8】
【数9】
前記式(4)乃至前記式(9)において、
nは、ゼロ以上の整数であって、対応する前記整数にて前記権利残存期間を分割する期間数を表し、
iは、ゼロから前記期間数nのうちより選択される整数を表し、
C(i)は、前記金券類の価値金額を表し、
S(i)は、前記第1変数を表し、
tは、前記第2変数を表し、
σは、前記第3変数を表し、
Kは、前記金券類における前記取引の際に適用可能な額面の金額を表し、
qは、前記金券類における配当利回りを表し、
rは、前記金券類における安全利子率を表し、
eは、ネイピア数を表し、
前記金券類の価値を定量化した値として、
前記金券類の価値金額を決定するよう構成された
金券類売買システム。
【請求項3】
所定の商品又は役務の提供者、及び、前記商品又は前記役務の享受者の間における取引に適用可能な疑似貨幣・チケット・金券を含む金券類が、前記提供者より付与される前記享受者である第1享受者が、携帯する第1端末と、
前記金券類が前記提供者より付与される前記享受者であって、前記第1享受者における前記取引の頻度よりも大きい頻度にて前記提供者と取引する第2享受者が、携帯する第2端末と、
前記第1端末、及び、前記第2端末と、情報通信可能に接続されたサーバと、
を備えた
金券類売買システムであって、
前記サーバは、
前記提供者より付与された前記金券類の額面の値、前記金券類の適用可能期限、及び、前記取引の頻度を、前記享受者ごとにそれぞれ取得し記憶する記憶部と、
前記金券類の額面の値に対応する第1変数、現時点から前記金券類の適用可能期限までの期間である権利残存期間に対応する第2変数、及び、前記取引の頻度に対応する第3変数を、前記享受者ごとにそれぞれ設定する変数設定部と、
前記第1変数、前記第2変数、前記第3変数、及び、前記金券類の価値を定量化した値の関係を規定する関数であって、金融工学に基づいて構築されたモデルに対応する関数と、前記設定された第1変数と、前記設定された第2変数と、前記設定された第3変数とに基づいて、前記金券類の価値を定量化した値を、前記享受者ごとに決定する価値決定部と、
前記第1享受者に付与された前記金券類の買取価格を、前記第1享受者に紐づく前記価値を定量化した値に基づいて設定し、前記買取価格に対応する情報を前記第1端末に通知する買取価格通知部と、
前記第1享受者から買い取られた前記金券類の売却価格を、前記第2享受者に紐づく前記価値を定量化した値に基づいて設定し、前記売却価格に対応する情報を前記第2端末に通知する売却価格通知部と、
を備え、
前記サーバの前記変数設定部は、
前記第1変数として、
前記金券類の額面の金額そのものが用いられ、
前記第2変数として、
前記権利残存期間に少なくとも媒介変数を乗じた値が用いられ、
前記第3変数として、
前記取引の頻度に少なくとも媒介変数を乗じた値が用いられるように構成され、
前記サーバの前記価値決定部は、
前記金融工学に基づいて構築されたモデルに対応する関数として、
下記式
(10)にて規定される関数が用いられ、
【数10】
前記式(10)において、
Max[A,B]は、2つの引数である前記A及びBのうち大きい方の数値を返す統計関数であり、
前記Sは、
下記式(11)にて規定され、
【数11】
前記式(10)及び前記式(11)において、
εは、標準正規乱数を表し、
mは、1以上の整数であって、対応する前記整数にて前記権利残存期間を分割する期間数を表し、
jは、1から前記期間数mのうちより選択される整数を表し、
C(j)は、前記金券類の価値金額を表し、
S(j)は、前記第1変数を表し、
tは、前記第2変数を表し、
σは、前記第3変数を表し、
Kは、前記金券類における前記取引の際に適用可能な額面の金額を表し、
qは、前記金券類における配当利回りを表し、
rは、前記金券類における安全利子率を表し、
eは、ネイピア数を表し
、
前記金券類の価値を定量化した値として、
前記金券類の価値金額を決定するよう構成された
金券類売買システム。
【請求項4】
請求項1
乃至請求項
3の何れか一項に記載の金券類売買システムにおいて、
前記第2端末は、
前記第2端末を携帯した状態の前記第2享受者の位置情報を、前記サーバに送信可能に構成され、
前記サーバの前記売却価格通知部は、
前記第2享受者の位置情報を取得し、前記第2享受者の位置が前記提供者と取引するための取引場所に近接したと判定された場合、前記売却価格に対応する情報を前記第2端末に通知する
金券類売買システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品又は役務の提供者から享受者へ付与する金券類を、異なる享受者間で売買するためのシステムである金券類売買システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の商品又は役務における取引に適用されるクーポンが知られている。この種のクーポンは、例えば、金券や割引券としての機能を有していることが多い。この種のクーポンは、取引の際に、商品又は役務の提供者に提示できるよう、一般的には、紙クーポンや電子クーポンの形態で、商品又は役務の享受者に保有されるようになっている。
【0003】
この種のクーポンは、所定の商品又は役務の享受者により提示されたとき、商品又は役務の提供者により予め決定された既定価格から減額した価格での取引を成立させる権利を享受者に付与する。この権利の有効期限は、提供者により規定されることが多い。このように権利を付与することで、享受者の需要を喚起でき、提供者は、取引回数を増大さるための集客効果等を期待できる。従って、クーポンは、マーケティングのための有効なツールとなり得る。
【0004】
ところで、享受者がショールーミング等を行うことにより、店舗での売上減少を抑制する目的で、下記特許文献1では、享受者にクーポンを付与するためのシステムが、開示されている。当該システムによれば、オンラインショップのウェブサイトでその商品をお気に入りに登録したり、実店舗でその商品を手に取ったり試着したりした後に、商品の購入確率が所定の購入閾値を超えたときに、商品に関する情報である商品の詳細情報(広告を含む)やクーポンを、享受者の端末に対して配信できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
上記特許文献1のシステムによれば、適切なタイミングにて金券類が享受者に配信されるため、享受者による金券類の使用を期待できる。しかしながら、金券類の条件や、顧客である享受者の性質等によっては、金券類が付与されても、権利を行使する魅力が小さく感じられる場合があり、提供者が想定していた集客効果が得られない場合がある。
【0007】
このような場合には、金券類の実際の価値金額は、額面金額から乖離すると考えられる。このため、役務又は商品の提供者が金券類を発行したとしても、あまり使われることがなく、金券類のための引当金に大きく影響を与える事象が生じ得る。従って、金券類が有効活用されることが好適である。係る観点より、異なる享受者間で金券類が売買可能とされることで、金券類の有効活用が達成されることが望まれていた。
【0008】
本発明の目的は、異なる享受者間で金券類が売買可能とされることで、金券類の有効活用が達成され得るシステムを提供することにある。
【0009】
本発明の金券類売買システムは、所定の商品又は役務の提供者、及び、前記商品又は前記役務の享受者の間における取引に適用可能な疑似貨幣・チケット・金券を含む金券類が、前記提供者より付与される前記享受者である第1享受者が、携帯する第1端末と、前記金券類が前記提供者より付与される前記享受者であって、前記第1享受者における前記取引の頻度よりも大きい頻度にて前記提供者と取引する第2享受者が、携帯する第2端末と、前記第1端末、及び、前記第2端末と、情報通信可能に接続されたサーバと、を備える。前記サーバは、前記提供者より付与された前記金券類の額面の値、前記金券類の適用可能期限、及び、前記取引の頻度を、前記享受者ごとにそれぞれ取得し記憶する記憶部と、前記金券類の額面の値に対応する第1変数、現時点から前記金券類の適用可能期限までの期間である権利残存期間に対応する第2変数、及び、前記取引の頻度に対応する第3変数を、前記享受者ごとにそれぞれ設定する変数設定部と、前記第1変数、前記第2変数、前記第3変数、及び、前記金券類の価値を定量化した値の関係を規定する関数であって、金融工学に基づいて構築されたモデルに対応する関数と、前記設定された第1変数と、前記設定された第2変数と、前記設定された第3変数とに基づいて、前記金券類の価値を定量化した値を、前記享受者ごとに決定する価値決定部と、前記第1享受者に付与された前記金券類の買取価格を、前記第1享受者に紐づく前記価値を定量化した値に基づいて設定し、前記買取価格に対応する情報を前記第1端末に通知する買取価格通知部と、前記第1享受者から買い取られた前記金券類の売却価格を、前記第2享受者に紐づく前記価値を定量化した値に基づいて設定し、前記売却価格に対応する情報を前記第2端末に通知する売却価格通知部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の金券類売買システムにおいては、前記第2端末は、前記第2端末を携帯した状態の前記第2享受者の位置情報を、前記サーバに送信可能に構成され、前記サーバの前記売却価格通知部は、前記第2享受者の位置情報を取得し、前記第2享受者の位置が前記提供者と取引するための取引場所に近接したと判定された場合、前記売却価格に対応する情報を前記第2端末に通知する。
【0011】
本発明の金券類売買システムにおいては、前記サーバの前記変数設定部は、前記第1変数として、前記金券類の額面の金額そのものが用いられ、前記第2変数として、前記権利残存期間に少なくとも媒介変数を乗じた値が用いられ、前記第3変数として、前記取引の頻度に少なくとも媒介変数を乗じた値が用いられるように構成され、前記サーバの前記価値決定部は、前記金融工学に基づいて構築されたモデルに対応する関数として、下記式(1)にて規定される関数が用いられ、
【数1】
前記式(1)において、N(d1)及びN(d2)は、d1及びd2を変数とする標準正規分布の累積確立密度関数をそれぞれ表し、前記d1及び前記d2は、下記式(2)及び下記式(3)にてそれぞれ規定され、
【数2】
【数3】
前記式(1)、前記式(2)、及び、前記式(3)において、Cは、前記金券類の価値金額を表し、Sは、前記第1変数を表し、tは、前記第2変数を表し、σは、前記第3変数を表し、Kは、前記金券類における前記取引の際に適用可能な額面の金額を表し、qは、前記金券類における配当利回りを表し、rは、前記金券類における安全利子率を表し、eは、ネイピア数を表し、Lnは、自然対数を表し、前記金券類の価値を定量化した値として、前記金券類の価値金額を決定するよう構成される。
【0012】
本発明の金券類売買システムにおいては、前記サーバの前記変数設定部は、前記第1変数として、前記金券類の額面の金額そのものが用いられ、前記第2変数として、前記権利残存期間に少なくとも媒介変数を乗じた値が用いられ、前記第3変数として、前記取引の頻度に少なくとも媒介変数を乗じた値が用いられるように構成され、前記サーバの前記価値決定部は、前記金融工学に基づいて構築されたモデルに対応する関数として、下記式(4)にて規定される関数が用いられ、
【数4】
前記式(4)において、前記P、前記Cu、及び、前記Cdは、下記式(5)、下記式(6)、及び、下記式(7)にて規定され、
【数5】
【数6】
【数7】
前記式(6)、及び、前記式(7)において、Max[A,B]は、2つの引数である前記A及びBのうち大きい方の数値を返す統計関数であり、前記Su、及び、前記Sdは、下記式(8)、及び、下記式(9)にて規定され、
【数8】
【数9】
前記式(4)乃至前記式(9)において、nは、ゼロ以上の整数であって、対応する前記整数にて前記権利残存期間を分割する期間数を表し、iは、ゼロから前記期間数nのうちより選択される整数を表し、C(i)は、前記金券類の価値金額を表し、S(i)は、前記第1変数を表し、tは、前記第2変数を表し、σは、前記第3変数を表し、Kは、前記金券類における前記取引の際に適用可能な額面の金額を表し、qは、前記金券類における配当利回りを表し、rは、前記金券類における安全利子率を表し、eは、ネイピア数を表し、前記金券類の価値を定量化した値として、前記金券類の価値金額を決定するよう構成される。
【0013】
本発明の金券類売買システムにおいては、前記サーバの前記変数設定部は、前記第1変数として、前記金券類の額面の金額そのものが用いられ、前記第2変数として、前記権利残存期間に少なくとも媒介変数を乗じた値が用いられ、前記第3変数として、前記取引の頻度に少なくとも媒介変数を乗じた値が用いられるように構成され、前記サーバの前記価値決定部は、前記金融工学に基づいて構築されたモデルに対応する関数として、下記式(10)にて規定される関数が用いられ、
【数10】
前記式(10)において、Max[A,B]は、2つの引数である前記A及びBのうち大きい方の数値を返す統計関数であり、前記Sは、下記式(11)にて規定され、
【数11】
前記式(10)及び前記式(11)において、εは、標準正規乱数を表し、mは、1以上の整数であって、対応する前記整数にて前記権利残存期間を分割する期間数を表し、jは、1から前記期間数mのうちより選択される整数を表し、C(j)は、前記金券類の価値金額を表し、S(j)は、前記第1変数を表し、tは、前記第2変数を表し、σは、前記第3変数を表し、Kは、前記金券類における前記取引の際に適用可能な額面の金額を表し、qは、前記金券類における配当利回りを表し、rは、前記金券類における安全利子率を表し、eは、ネイピア数を表し、前記金券類の価値を定量化した値として、前記金券類の価値金額を決定するよう構成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、異なる享受者の間にて金券類の売買が可能となる。ここにおいて、異なる享受者の性質が考慮され、第1享受者からの買取価格、及び、第2享受者への売却価格が決定され得る。従って、第1享受者及び第2享受者の両者にとって、魅力的な価格を設定でき、異なる享受者間での金券類の売買を促進できる。この結果、金券類の有効活用が達成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る金券類売買システムの全体概略図である。
【
図2】
図1に示す第1端末(第2端末)及び店舗端末が、店舗での決済時に用いられる様子の一例を示す図である。
【
図3】
図1に示すサーバが備える記憶部にて記憶されるデータの一例を示す図である。
【
図4】
図1に示す第1端末の表示画面に表示される情報の一例を示す図である。
【
図5】
図1に示す第2端末と店舗との位置関係を説明するための図である。
【
図6】
図1に示すサーバが備える価値決定部にて決定されるポイントの価値金額の例として、第1変数及び第3変数を変化させた場合におけるポイントの価値金額の試算例を説明するためのグラフである。
【
図7】
図1に示すサーバが備える価値決定部にて決定されるポイントの価値金額の例として、第2変数及び第3変数を変化させた場合におけるポイントの価値金額の試算例を説明するためのグラフである。
【
図8】
図1に示すサーバが備える価値決定部にて決定されるポイントの価値金額の例として、媒介変数a及び第3変数を変化させた場合におけるポイントの価値金額の試算例を説明するためのグラフである。
【
図9】
図1に示すサーバが備える価値決定部にて決定されるポイントの価値金額の例として、媒介変数b及び第3変数を変化させた場合におけるポイントの価値金額の試算例を説明するためのグラフである。
【
図10】
図1に示す金券類売買システムにおける実際の作動を示すフローチャートの前半部分である。
【
図11】
図1に示す金券類売買システムにおける実際の作動を示すフローチャートの後半部分である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る金券類売買システムのサーバが備える価値決定部にて、金券類の価値金額を決定するためのプロセスの例として、i=nからi=0に向かってCの値を決定していく方法を説明するための図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る金券類売買システムのサーバが備える価値決定部にて、金券類の価値金額を決定するためのプロセスの例として、パラメータを用いてCの値を決定する一例を説明するための図である。
【
図14】本発明の第2実施形態に係る金券類売買システムのサーバが備える価値決定部にて、金券類の価値金額を決定するためのプロセスの例として、i=0からi=nに向かってSの値を決定していく方法を説明するための図である。
【
図15】本発明の第2実施形態に係る金券類売買システムのサーバが備える価値決定部にて、金券類の価値金額を決定するためのプロセスの例として、パラメータを用いてSの値を決定する一例を説明するための図である。
【
図16】本発明の第2実施形態に係る金券類売買システムのサーバが備える価値決定部により決定されるS,Cの値の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による金券類売買システム100の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
[第1実施形態]
<金券類売買システム>
図1は、本発明の第1実施形態に係る金券類売買システム100の全体構成図である。金券類売買システム100は、第1端末10、第2端末20、及び、サーバ30を備えている。サーバ30は、第1端末10、及び、第2端末20と、第1通信ネットワークN1を介し、情報通信可能に接続されている。また、サーバ30は、店舗端末40とも、第2通信ネットワークN2を介し、情報通信可能に接続されている。
【0018】
第1端末10は、第1享受者10aにより携帯される端末であり、例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット等の移動通信端末であってもよい。第1享受者10aは、取引によって、所定の商品又は役務の提供者から、その商品又は役務を享受する者である。更に、第1享受者10aには、金券類を提供者から付与されるようになっている。
【0019】
第2端末20は、第2享受者20aにより携帯される端末であり、例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット等の移動通信端末であってもよい。第2享受者20aは、取引によって、所定の商品又は役務の提供者から、その商品又は役務を享受する者である。更に、第2享受者20aにも、金券類を提供者から付与されるようになっている。
【0020】
第1端末10、及び、第2端末20は、第1通信ネットワークN1を介し、それぞれの位置情報をサーバ30に送信可能に構成されている。サーバ30に送信される位置情報は、第1端末10を携帯した状態の第1享受者10aの位置情報、及び、第2端末20を携帯した状態の第2享受者20aの位置情報である。これらの位置情報は、第1端末10、及び、第2端末20にて、GPS衛星からの電波が受信されることに基づいて生成され、緯度・経度に対応する情報であってもよい。当該位置情報は、第1端末10、及び、第2端末20が移動するのに伴って変化し、常時サーバ30に送信されるようになっている。サーバ30では、店舗端末40が設置されている各店舗40aの位置情報も予め記憶されており、店舗40aに対する第1端末10、及び、第2端末20の相対的な位置関係が、算出可能となっている。
【0021】
本実施形態においては、提供者及び第1享受者10aにおける取引の頻度は、提供者及び第2享受者20aにおける取引の頻度よりも、小さいものとする。即ち、第2享受者20aは、第1享受者10aにおける取引の頻度よりも大きい頻度にて、提供者と取引する者であり、第1享受者10aとは異なる者である。取引の頻度としては、例えば、所定期間における取引回数(例えば、1年間における取引回数等)であってもよい。提供者は、例えば、店舗40aを介して商品又は役務を提供する者であってもよく、店舗40aを運営する会社、組織等であってもよい。
【0022】
ここにおいて、金券類は、提供者及び享受者の間における取引に適用可能なものであり、疑似貨幣・チケット・金券を含む。金券類は、例えば、提供者の提示価格から金券類の額面の値で割引いて、取引を成立させる権利を行使可能なものであってもよいし、金券類そのものと引き換えて、提供者の商品又は役務を享受する権利を行使可能なものであってもよい。金券類の適用(即ち、上記権利の行使)には、適用期限が規定されていてもよい。より具体的には、疑似貨幣としては、例えば、販促用のポイント、クーポン、商品の割引券(食料品、弁当・惣菜の値引きシール等)等が挙げられる。チケット・金券としては、例えば、列車座席(新幹線のグリーン車席、グランクラス(登録商標)席、普通車指定席等)の指定券、航空券、船乗船券、バス座席の指定券、映画チケット、コンサートチケット、スポーツ観戦チケット、ホテル・旅館の宿泊チケット等が挙げられる。なお、ここに記載したものは、金券類の一例であり、これらに限定されない。
【0023】
本実施形態においては、金券類が販促用のポイントであるものとして説明する。ポイントは、例えば、取引した際の決済金額に応じて、提供者から享受者に付与されるものであってもよい。また、ポイントは、サーバ30にて各享受者に紐付いて積算されていき、各享受者は、積算されているポイントから、任意のポイントを取引時に用いることができるようになっている。取引時においては、例えば、提供者の提示価格から、享受者が用いるポイントの額面の値(金額)を割引いた金額にて、取引を成立させることができる。ポイントが使用されると、積算値から使用した分が減じられることになる。ポイントの集計は、享受者ごとにサーバ30にて管理することができる。
【0024】
図2に示すように、例えば、店舗40aに設置された店舗端末40と、第1端末10(又は第2端末20)とにより、取引のための決済が可能となっていてもよい。より具体的には、第1端末10(又は第2端末20)の第1享受者10a(又は第2享受者20a)による操作によって、決済用のアプリ等を起動させ、第1端末10(又は第2端末20)の表示部に、識別コードを表示するようにしてもよい。例えば、決済用のアプリ画面にて、商品又は役務の提示価格、及び、適用するポイントの値がそれぞれ入力されると、これらの情報が格納された識別コードが生成される。当該識別コードは、例えば、QRコード(登録商標)等であり、店舗端末40のバーコードリーダにて読み取り可能に構成されている。
【0025】
取引する際には、第1端末10(又は第2端末20)に表示された識別コードを、店舗端末40のバーコードリーダに近接させる。これにより、識別コードに格納された情報が読み取られ、商品又は役務の提示価格から、適用したポイントの分が割引かれた金額にて、決済されるようになっている。決済金額の情報は、店舗端末40からサーバ30に送信されて、サーバ30にて決済金額に応じたポイントが算出されるようになっている。また、決済金額の情報は、店舗端末40又は第1端末10(又は第2端末20)を介して、クレジット決済システムにも、提供されるようになっている。
【0026】
例えば、商品又は役務の提示価格が「1,000円」であり、適用するポイントの値が「100pt」であるものとする。当該ポイントは、取引に際し「1pt」=「1円」の割引を可能とするものであるとする。この場合、「100pt」のポイントの額面金額「100円」が、提示価格「1,000円」から割り引かれることになる。即ち、決済金額は、「1,000円」-「100円」=「900円」となる。決済金額「900円」の情報は、店舗端末40から、第2通信ネットワークN2を介してサーバ30に送信される。サーバ30では、決済金額「900円」に応じたポイントが算出される。具体的には、ポイント還元率が「1%」である場合には、「900円」×「0.01」=「9pt」が享受者に付与されることになり、付与されたポイントが享受者に紐付いて積算されていく。
【0027】
金券類売買システム100では、上述のように、取引に応じてポイントが享受者に付与され、取引時にポイントが適用可能となっている。それに加え、金券類売買システム100では、取引の頻度が異なる第1享受者10a、及び、第2享受者20aの間で、ポイントの売買が可能となっている。例えば、取引頻度が小さい第1享受者10aからは、第1享受者10aに付与されたポイントを買取り、買い取られたポイントが、取引頻度が大きい第2享受者20aへ売却されるようにしてもよい。このように、異なる享受者の間にてポイントの売買が可能となるよう、サーバ30にて演算処理が実行され、サーバ30から第1端末10及び第2端末20へ、ポイント売買のための情報送信がなされるようになっている。
【0028】
<サーバ>
図1に示すように、サーバ30は、記憶部31と、ポイント管理部32と、変数設定部33と、価値決定部34と、買取価格通知部35と、売却価格通知部36と、を備えている。記憶部31は、所定のメモリ等にて構成されている。ポイント管理部32、変数設定部33、価値決定部34、買取価格通知部35、及び、売却価格通知部36は、電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されている。
【0029】
記憶部31は、提供者より付与された金券類(ポイント)の額面の値(額面の金額)、金券類(ポイント)の適用可能期限、及び、取引の頻度を、享受者ごとにそれぞれ取得し記憶する。ポイント管理部32は、第1端末10及び第2端末20から送信される決済金額から、ポイントを算出したり、店舗端末40を介した取引が実行された日にちから、適用可能期限や取引の頻度を算出し、享受者ごとに各取引に対応するよう記録部に記録指示していく。また、ポイント管理部32により、取引が実行された回数から、取引の頻度が算出されて、記録部に記録指示されてもよい。
【0030】
図3に示すように、記憶部31では、例えば、ポイントプログラムに参加している複数の享受者ごとに、各取引に対応するよう「取引No.」がアサインされて、それぞれの情報が「取引No.」に紐付けられてもよい。即ち、同一人物の享受者において、複数の取引があった場合には、各取引に対して異なる「取引No.」が1回ずつアサインされる。各「取引No.」ごとに、「取引した年月日」、「ポイント適用可能期限」、「付与ポイント」、「ポイント価値金額」が記憶される。「取引頻度」の欄には、例えば、1年における取引回数が記録されてもよい。より具体的には、記憶部31に記憶されている「取引No.」の年間アサイン数に相当し、取引が完了する毎に、1つずつ自動的にインクリメントされるようにしてもよい。
【0031】
「取引した年月日」の欄には、店舗端末40を介した取引が実行され、店舗端末40からサーバ30へ情報送信されたタイミングにて、年月日が記憶されるようにしてもよい。「ポイント適用可能期限」の欄には、「取引した年月日」(即ち、ポイントが付与される日にち)から起算して、ポイントを適用可能な期限である満期を算出し記憶されるようにしてもよい。例えば、ポイント付与日から4ヶ月後に満期が到達するよう設定されている場合には、「ポイント適用可能期限」の欄には、「取引した年月日」から4ヶ月後の年月日が記憶される。
【0032】
「付与ポイント」の欄には、店舗端末40を介した取引での決済金額に応じて、対象の享受者に付与されるポイント数を算出し記憶されるようにしてもよい。付与されたポイント数は、金券類(ポイント)の額面の値(額面の金額)に相当する。例えば、ポイント還元率が1%に設定されている場合には、「付与ポイント」の欄には、決済金額に1%を乗じた値が記憶される。「ポイント価値金額」の欄には、価値決定部34にて決定されたポイントの価値金額Cが記憶される。なお、記憶部31での情報の記憶態様は一例であり、これに限定されず、他の記憶態様が用いられてもよい。
【0033】
変数設定部33は、第1変数S、第2変数t、及び、第3変数σを、享受者ごとに設定する。第1変数S、第2変数t、及び、第3変数σは、価値決定部34におけるポイントの価値金額Cの決定に、用いられるようになっている。第1変数Sは、金券類(ポイント)の額面の値(額面金額)に対応する。第2変数tは、現時点から金券類(ポイント)の適用可能期限までの期間である権利残存期間に対応する。第3変数σは、取引の頻度に対応する。
【0034】
本実施形態では、第1変数Sは、記憶部31の「付与ポイント」の欄に記憶されている何れかのポイントの額面の金額に基づいて、設定される。第2変数tは、記憶部31の「ポイント適用可能期限」の欄に記憶されている何れかの適用可能期限に基づいて、設定される。第3変数σは、記憶部31の「取引頻度」の欄に記憶されている取引の頻度に基づいて設定される。
【0035】
価値決定部34は、関数と、変数設定部33にて設定された第1変数Sと、第2変数tと、第3変数σとに基づいて、金券類の価値を定量化した値として、ポイントの価値金額Cを享受者ごとに決定する。当該関数は、第1変数S、第2変数t、及び、第3変数σと、ポイントの価値金額Cと、の関係を規定するものであり、金融工学に基づいて構築されたモデルに対応する。本実施形態においては、ポイントの価値金額Cは、例えば、「取引No.」ごとに単数又は複数決定されてもよく、特に、第1享受者10aからの買取対象(即ち、第2享受者20aへの売却対象)となるポイントに対応するよう決定されてもよい。なお、ポイントの価値金額Cの決定の具体的なプロセスについては、後に詳述する。
【0036】
買取価格通知部35は、第1享受者10aに付与された金券類(ポイント)の買取価格を、第1享受者10aに紐づくポイントの価値金額Cに基づいて設定し、買取価格に対応する情報を第1端末10に通知する。「第1享受者10aに紐づくポイントの価値金額C」としては、例えば、第1享受者10aの取引の頻度(第3変数σ)と、第1享受者10aの何れかの「取引No.」における、適用可能期限(第2変数t)と、買取対象のポイントの額面金額(第1変数S)とに基づいて、決定されるものであってもよい。第1享受者10aの何れかの「取引No.」における「付与ポイント」が、買取対象となるよう選択されてもよい。買取価格は、例えば、買取対象のポイントに対応する価値金額Cよりも高い価格となるよう設定されてもよく、ポイントの価値金額Cに所定の係数を乗じた値に設定されたり、買取価格が自然数となるよう端数処理されてもよい。
【0037】
図4に示すように、買取価格に対応する情報には、例えば、買取対象のポイント数、サーバ30にて設定された買取価格、及び、第1享受者10aに売却意思を確認するための情報等が、含まれてもよい。より具体的には、買取価格通知部35により、買取価格に対応する情報が、第1通信ネットワークN1を介して第1端末10に通知されると、当該情報が第1端末10の表示画面に表示されるようにしてもよい。例えば、第1端末10の表示画面にて、「100ポイント今なら20円で売却できます」等のメッセージとともに、画面上で操作可能な「Yes」及び「No」を示すアイコンが、表示枠内に自動的に表示されてもよい。
【0038】
画面に表示されている「Yes」の部位が第1享受者10aによりタップされると、売却意思ありとして、第1享受者10aによる買取対象のポイントの行使権利が失効するよう、サーバ30に情報通知されてもよい。これに加え、買取価格の金額が、提供者から第1享受者10aに入金されるよう、決済システムにて処理されるようにしてもよい。他方、画面に表示されている「No」の部位が第1享受者10aによりタップされると、売却意思なしとして、買取対象のポイントの買取は行われない。なお、買取価格通知部35による第1端末10への通知は、所定のタイミングで自動的に実行されてもよい。
【0039】
売却価格通知部36は、第1享受者10aから買い取られた金券類(ポイント)の売却価格を、第2享受者20aに紐づくポイントの価値金額Cに基づいて設定し、売却価格に対応する情報を第2端末20に通知する。「第2享受者20aに紐づくポイントの価値金額C」としては、例えば、第2享受者20aの取引の頻度(第3変数σ)と、上述した買取価格通知部35にて用いられる適用可能期限(第2変数t)と、上述した買取価格通知部35にて用いられるポイントの額面金額(第1変数S)とに基づいて、決定されるものであってもよい。第1享受者10aから買い取られた「付与ポイント」が、第2享受者20aへの売却対象のポイントとされてもよい。売却価格は、例えば、売却対象のポイントに対応する価値金額Cよりも低い価格となるよう設定されてもよく、ポイントの価値金額Cに所定の係数を乗じた値に設定されたり、売却価格が自然数となるよう端数処理されてもよい。
【0040】
図5に示すように、売却価格通知部36は、第2端末20から送信される第2享受者20aの位置情報を取得し、第2享受者20aの位置が店舗40aに近接したと判定された場合、売却価格に対応する情報を第2端末20に通知する。ここにおいて、店舗40aは、提供者と享受者とが取引するための取引場所であり、店舗端末40が設置されている場所である。例えば、予めサーバ30にて記憶されている複数の店舗40aに対応するそれぞれの緯度・経度と、GPSにて検出された第2享受者20a(第2端末20)の緯度・経度と、を比較して、店舗40a及び第2享受者20aの相対的な離間距離D1が算出されるようにしてもよい。離間距離D1が、店舗40aを中心とした円における所定の半径R1以下である場合(
図5における実線の離間距離D1を参照)、第2享受者20aの位置が店舗40aに近接したと判定されてもよい。他方、離間距離D1が、半径R1より大きい場合(
図5における一点鎖線の離間距離D1を参照)、第2享受者20aの位置が店舗40aに近接していないと判定されてもよい。
【0041】
売却価格に対応する情報には、売却対象のポイント数、サーバ30にて設定された売却価格、及び、第2享受者20aに買取意思を確認するための情報等が、含まれてもよく、例えば、第2端末20の表示画面にて、
図4に対応するメッセージ、アイコンが、表示枠内に自動的に表示されてもよい。
【0042】
画面に表示されている「Yes」の部位が第2享受者20aによりタップされると、買取意思ありとして、第2享受者20aによる売却対象のポイントの行使権利が有効となるよう、第2端末20にて店舗決済用の識別コード(QRコード(登録商標)等)が生成されたり、サーバ30に情報通知されてもよい。これに加え、売却価格の金額が、第2享受者20aから提供者に入金されるよう、決済システムにて処理されるようにしてもよい。他方、画面に表示されている「No」の部位が第2享受者20aによりタップされると、買取意思なしとして、売却対象のポイントの売却は行われない。なお、売却価格通知部36による第2端末20への通知は、第1享受者10aの売却意思に対応する情報がサーバ30に送信された後に、第2享受者20aの位置が店舗40aに近接したと判定された場合、自動的に実行されてもよい。
【0043】
<ポイントの価値金額の決定>
提供者から享受者に付与されたポイントを、享受者が取引の際に適用することで、提示価格からポイントの額面金額を減額した価格での取引を成立させる権利が、享受者に付与されることになる。この権利の有効期限は、ポイントの適用可能期限として提供者により規定される。この種のポイントにおいては、現時点にて未使用の状態であっても、享受者が上述した権利を行使する際に減額可能な金額は、享受者が適用するポイント数に相当する。取引の際にポイントを適用する場合、実際に減額される金額は、ポイントの額面金額と一致する。従って、ポイントは、表面的には、ポイント数に対応する額面金額の価値を有する。
【0044】
ところで、ポイントの条件や、顧客である享受者の性質等によっては、ポイントが付与されても、提供者が想定していた集客効果が得られない場合がある。例えば、ポイントの条件として、額面金額が小さい(減額の度合が極端に小さい)場合、また、現時点から適用可能期限までの期間が短い場合、享受者が上述の権利を得たとしても、行使する魅力が小さく感じられる場合が多い。また、享受者の性質として、取引頻度や来店回数が小さい者にとっては、同様に、上述の権利を行使する魅力が小さく感じられる場合が多い。
【0045】
このような場合には、ポイントの実際の価値金額は、額面金額から乖離すると考えられる。このため、役務又は商品の提供者が促販用にポイントを発行したとしても、あまり使われることがなく、ポイントのための引当金に大きく影響を与える事象が生じ得る。従って、ポイントが有効活用されることが好適である。本実施形態では、金券類売買システム100により、異なる享受者間でポイントが売買可能とされることで、ポイントの有効活用が達成され得る。
【0046】
異なる享受者間において、ポイント売買を促進するにあたり、ポイントの買取価格・売却価格は、ポイントの実際の価値金額に基づいて決定されると好適である。本実施形態では、モデルを用い金券類(ポイント)の価値を定量化し、価値金額Cを決定する。定量化のためのモデルは、金融工学に基づいて構築されている。例えば、株式取引におけるオプション(特に、エキゾチックオプション)は、下記5つの特徴を有する。その5つの特徴は、1.種類が豊富である、2.満期がある、3.株を購入する権利を買う者・株を購入する権利を売る者がいる、4.ボラティリティが高いと権利行使されやすい、5.オプション価格が大きく変動する、というものである。これらの特徴があることに基づき、変動するオプション価格と、所定の種々変数との関係を規定したモデルが、多数提案されている。即ち、所定の種々変数と、上記規定関係を規定したモデルと、に基づいて、オプション価格を定量化することができる。
【0047】
他方、金券類は、上記5つの特徴と照らし合わせると、1.種類が豊富である、2.有効期限がある、3.金券類を取得する者・金券類を発行する者がいる、4.来店頻度や取引頻度が高いと権利行使されやすい、5.金券類の価値が大きく変動する、点において、上述のオプションと類似している。一方、この金券類としてのポイントは、享受者に向けて促販用に付与されるものであり、享受者が対価を投じて権利取得するものではない。このため、享受者のポイント保有に際する配当および利子が発生しない。この点は、ポイント特有の性質である。
【0048】
本実施形態では、上述したオプションと類似する点と、ポイント特有の性質とを鑑みて、金券類の価値を定量化するモデルが構築されている。変数設定部33では、具体的には、第1変数S、第2変数t、第3変数σ、及び、ポイントの価値金額Cの関係を規定する関数C(S,t,σ)が用いられる。関数C(S,t,σ)は、下記式(1)にて規定される。
【数12】
【0049】
式(1)において、N(d1)及びN(d2)は、d1及びd2を変数とする標準正規分布の累積確立密度関数をそれぞれ表す。d1及びd2は、下記式(2)及び下記式(3)にてそれぞれ規定される。
【数13】
【数14】
【0050】
式(1)、式(2)、及び、式(3)において、Kは、金券類(ポイント)における取引の際に適用可能な額面の金額を表す。qは、金券類(ポイント)における配当利回りを表す。rは、金券類(ポイント)における安全利子率を表す。eは、ネイピア数を表す。Lnは、自然対数を表す。
【0051】
本実施形態の金券類としてのポイントにおいては、取引の際にポイントを適用する場合、実際に減額される金額は、ポイントの額面金額と一致する。また、当該ポイントは、享受者に向けて促販用に付与されるものであり、享受者が対価を投じて権利取得するものではない。このため、享受者のポイント保有に際する配当および利子が発生しない。これらの観点から、式(1)、式(2)、及び、式(3)において、下記式(4)、式(5)、及び、式(6)に示すように、S及びKが等しく、q及びrがゼロとなるよう設定されてもよい。
【0052】
K=S …(4)
q=0 …(5)
r=0 …(6)
【0053】
この関数C(S,t,σ)と、第1変数Sと、第2変数tと、第3変数σと、に基づいて、金券類の価値を定量化した値として、ポイントの価値金額Cが決定される。変数設定部33では、第1変数Sとして、金券類(ポイント)の額面の金額そのものが用いられる。第2変数tとして、現時点から適用可能期限までの期間である権利残存期間に少なくとも媒介変数aを乗じた値が用いられる。第3変数σとして、取引の頻度に少なくとも媒介変数bを乗じた値が用いられる。
【0054】
より具体的には、第1変数S、第2変数t、及び、第3変数σは、ポイントの額面金額(ポイント数)S1、権利残存期間t1、取引の頻度σ1、媒介変数a,b、下記式(7)、式(8)、及び、式(9)に基づいて、設定されてもよい。媒介変数a,bは、それぞれ0<a≦1、1≦bの範囲に推移するよう、調整されてもよい。
【0055】
S=S1 …(7)
t=a*(t1/365) …(8)
σ=b*((σ1/365)*100) …(9)
【0056】
上記式(8)に示すように、第2変数tは、権利残存期間t1の日数を365日(1年)で除した値に、媒介変数aを乗じた値に設定される。上記式(9)に示すように、第3変数σは、提供者および享受者の取引の頻度σ1(365日(1年)間の取引回数)を365日(1年)で除した値に、100を乗じた値に、更に媒介変数bを乗じた値に設定される。
【0057】
なお、式(1)、式(2)、及び、式(3)は、オプション価格を定量化するブラック・ショールズモデルと相似である。ブラック・ショールズモデルにおいて、コールオプション価格は、Cに相当する。原資産価格は、Sに相当する。期間は、tに相当する。ボラティリティは、σに相当する。行使価格は、Kに相当する。配当利回りは、qに相当する。安全利子率は、rに相当する。ここにおいて、ボラティリティは予想変動率であり、ボラティリティが大きいほど権利行使される可能性がより高くなる傾向がある。ポイントの価値金額Cの決定に際し、上記傾向を応用することは可能である。本実施形態では、この観点から、第3変数σを、取引の頻度に対応する値としている。
【0058】
<<試算例1>>
図6は、試算例1におけるポイントの価値金額Cおよび各変数の関係を示すグラフである。試算例1は、上記式(1)~式(9)を用い、第1変数S、及び、第3変数σを異ならせ、第2変数tを固定した場合における、ポイントの価値金額Cの試算例である。試算例1では、ポイントの額面金額S1(即ち、ポイント数)が異なり、現時点から適用可能期限までの期間である権利残存期間t1が同一である2種類のポイントを想定する。2種類のポイントの条件それぞれに対し、提供者および享受者の取引の頻度σ1を大きく変化させ、ポイントの価値金額Cの変化傾向を出力した。2種類のポイントの額面金額S1として、100円(100pt)および200円(200pt)に対応して、試算例1-1および試算例1-2の条件を以下に示す。なお、試算例1-1および試算例1-2においては、媒介変数a,bを、それぞれ「1」に設定した。
【0059】
試算例1-1の条件:
S1=100円(100pt)
t1=6日間
σ1=1~365回
a=b=1
【0060】
試算例1-2の条件:
S1=200円(200pt)
t1=6日間
σ1=1~365回
a=b=1
【0061】
図6(a)は、試算例1-1に対応するグラフであり、グラフ右側縦軸はポイントの価値金額C、グラフ横軸は取引の頻度σ1および第3変数σを示している。σ1≦73、σ≦20.00の範囲では、C=0に推移した。σ1=74、σ=20.27以降、Cが増大し100円に漸近していく。ポイントの価値金額Cは、第3変数σが大きいほどより大きい値に決定される。グラフ左側縦軸は、10,000人の享受者に100ptのポイントを付与したときに、取引の頻度σ1に対応する分布を介した人数を示している。
図6(a)の分布は、10,000人中の450人が、年間80回の取引頻度(年間80日の来店回数)をもつことを仮定し、ポアソン分布の確率質量関数に基づいて算出されたものである。10,000人とS1=100円を乗じた総金額は1,000,000円であるのに対し、上記分布に応じた人数とポイントの価値金額Cを乗じた総金額は1,868円である。即ち、ポイントの表面的な価値が、額面上1,000,000円であるのに対し、試算例1-1によれば、ポイントの価値が1,868円と定量化される。以下のグラフにおいて、グラフの左右縦軸および横軸は、
図6(a)のものと同じである。
【0062】
図6(b)は、試算例1-2に対応するグラフである。σ1≦92、σ≦25.21の範囲では、C=0に推移した。σ1=93、σ=25.48以降、Cが増大し200円に漸近していく。
図6(a)と比較してわかるように、ポイントの価値金額Cは、第1変数Sが大きいほどより大きい値に決定される。
図6(b)の分布は、10,000人中の330人が、年間150回の取引頻度(年間150日の来店回数)をもつことを仮定し、ポアソン分布の確率質量関数に基づいて算出されたものである。10,000人とS1=200円を乗じた総金額は2,000,000円であるのに対し、上記分布に応じた人数とポイントの価値金額Cを乗じた総金額は858,822円である。即ち、ポイントの表面的な価値が、額面上2,000,000円であるのに対し、試算例1-2によれば、ポイントの価値が858,822円と定量化される。
【0063】
<<試算例2>>
図7は、試算例2におけるポイントの価値金額Cおよび各変数の関係を示すグラフである。試算例2は、上記式(1)~式(9)を用い、第1変数Sを固定し、第2変数t、及び、第3変数σを異ならせた場合における、ポイントの価値金額Cの試算例である。試算例2では、ポイントの額面金額S1が同一であり、現時点から適用可能期限までの期間である権利残存期間t1が異なる4種類のポイントを想定する。4種類のポイントの条件それぞれに対し、提供者および享受者の取引の頻度σ1を大きく変化させ、ポイントの価値金額Cの変化傾向を出力した。4種類のポイントの権利残存期間t1として、6日、5日、1日、及び、58日に対応して、試算例2-1、試算例2-2、試算例2-3、及び、試算例2-4の条件を以下に示す。なお、試算例2-1、試算例2-2、試算例2-3、及び、試算例2-4においては、媒介変数a,bを、それぞれ「1」に設定した。
【0064】
試算例2-1の条件:
S1=100円(100pt)
t1=6日間
σ1=1~365回
a=b=1
【0065】
試算例2-2の条件:
S1=100円(100pt)
t1=5日間
σ1=1~365回
a=b=1
【0066】
試算例2-3の条件:
S1=100円(100pt)
t1=1日間
σ1=1~365回
a=b=1
【0067】
試算例2-4の条件:
S1=100円(100pt)
t1=58日間
σ1=1~365回
a=b=1
【0068】
図7(a)は、試算例2-1、試算例2-2、及び、試算例2-3にそれぞれ対応するグラフである。なお、試算例2-1の条件は、上述した試算例1-1のものと同じであり、試算例2-1のグラフについての説明は省略する。試算例2-2に対応するグラフにおいては、σ1≦80、σ≦21.92の範囲では、C=0に推移した。σ1=81、σ=22.19以降、Cが増大し100円に漸近していく。試算例2-2のt1=5日間は、試算例2-1のt1=6日間よりも、1日だけ期限が短縮されている。この場合、各グラフの立ち上がり領域に対応する取引頻度(例えば、1週間に1~3回ほどの取引の頻度に相当)がある者において、ポイントの価値が大きく変化することがわかる。一方、各グラフの平坦領域に対応する取引頻度(例えば、毎日の取引頻度や、週1回よりも少ない頻度に相当)がある者においては、ポイントの価値はほとんど不変であることがわかる。
【0069】
試算例2-3に対応するグラフにおいては、σ1≦179、σ≦49.04の範囲では、C=0に推移した。σ1=180、σ=49.32以降、Cが増加傾向にあるが、本試算のσの範囲においては100円に到達しない。試算例2-3のt1=1日間である場合、たとえ年間毎日の取引頻度がある者であっても、ポイントの価値金額Cは100円を下回ることがわかる。また、取引頻度が小さい者にとっては、ほとんど価値がないことがわかる。
【0070】
図7(a)の分布は、10,000人中の450人が、年間80回の取引頻度(年間80日の来店回数)をもつことを仮定し、ポアソン分布の確率質量関数に基づいて算出されたものである。10,000人とS1=100円を乗じた総金額は1,000,000円であるのに対し、上記分布に応じた人数とポイントの価値金額Cを乗じた総金額は、試算例2-1、試算例2-2、及び、試算例2-3にて、1,868円、380円、及び、0円である。即ち、ポイントの表面的な価値が、額面上1,000,000円であるのに対し、試算例2-1、試算例2-2、及び、試算例2-3によれば、ポイントの価値が1,868円、380円、及び、0円と定量化される。
【0071】
図7(b)は、試算例2-4に対応するグラフである。σ1≦23、σ≦6.30の範囲では、C=0に推移した。σ1=24、σ=6.58以降、Cが増大し100円に漸近していく。
図7(a)と比較してわかるように、ポイントの価値金額Cは、第2変数tが大きいほどより大きい値に決定される。試算例2-4のt1=58日間である場合、取引頻度が週1回程度である者にとっても、ポイントの価値金額Cが100円に近くに推移することがわかる。
【0072】
図7(b)の分布は、10,000人中の400人が、年間100回の取引頻度(年間100日の来店回数)をもつことを仮定し、ポアソン分布の確率質量関数に基づいて算出されたものである。10,000人とS1=100円を乗じた総金額は1,000,000円であるのに対し、上記分布に応じた人数とポイントの価値金額Cを乗じた総金額は、999,933円である。即ち、ポイントの表面的な価値が、額面上1,000,000円であるのに対し、試算例2-4によれば、ポイントの価値が999,933円と定量化される。
【0073】
<<試算例3>>
図8は、試算例3におけるポイントの価値金額Cおよび各変数の関係を示すグラフである。試算例3は、上記式(1)~式(9)を用い、第1変数Sを固定し、第2変数t、及び、第3変数σを異ならせた場合における、ポイントの価値金額Cの試算例である。試算例3では、ポイントの額面金額S1、及び、権利残存期間t1が同一であり、媒介変数aを異ならせることで第2変数tが異なる7種類のポイントを想定する。7種類のポイントの条件それぞれに対し、提供者および享受者の取引の頻度σ1を大きく変化させ、ポイントの価値金額Cの変化傾向を出力した。7種類のポイントの媒介変数aとして、a=1~0.143に対応して、試算例3-1、試算例3-2、試算例3-3、試算例3-4、試算例3-5、試算例3-6、及び、試算例3-7の条件を以下に示す。なお、試算例3-1、試算例3-2、試算例3-3、試算例3-4、試算例3-5、試算例3-6、及び、試算例3-7においては、媒介変数bを「1」に設定した。
【0074】
試算例3-1の条件:
S1=100円(100pt)
t1=7日間
σ1=1~365回
a=1
b=1
【0075】
試算例3-2の条件:
S1=100円(100pt)
t1=7日間
σ1=1~365回
a=0.857
b=1
【0076】
試算例3-3の条件:
S1=100円(100pt)
t1=7日間
σ1=1~365回
a=0.714
b=1
【0077】
試算例3-4の条件:
S1=100円(100pt)
t1=7日間
σ1=1~365回
a=0.571
b=1
【0078】
試算例3-5の条件:
S1=100円(100pt)
t1=7日間
σ1=1~365回
a=0.429
b=1
【0079】
試算例3-6の条件:
S1=100円(100pt)
t1=7日間
σ1=1~365回
a=0.286
b=1
【0080】
試算例3-7の条件:
S1=100円(100pt)
t1=7日間
σ1=1~365回
a=0.143
b=1
【0081】
図8は、試算例3-1、試算例3-2、試算例3-3、試算例3-4、試算例3-5、試算例3-6、及び、試算例3-7にそれぞれ対応するグラフである。権利残存期間t1を一定とした状態において、媒介変数aを異ならせて設定することで、第2変数tの変化におけるリスクの把握指標を検討することができる。試算例3-1、試算例3-2、試算例3-3、試算例3-4、試算例3-5、試算例3-6、及び、試算例3-7の第2変数tは、7日間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間、及び、1日間に相当する。媒介変数aが小さくなるほど、ポイントの価値金額Cはより小さくなっていく。例えば、取引の頻度σ1=121回である場合、媒介変数a=1(試算例3―1)にてC≒40円である一方、媒介変数a=0.143(試算例3―7)にてポイントの価値金額Cは略0円となる。
【0082】
<<試算例4>>
図9は、試算例4におけるポイントの価値金額Cおよび各変数の関係を示すグラフである。試算例4は、上記式(1)~式(9)を用い、第1変数S、及び、第2変数tを固定し、第3変数σを異ならせた場合における、ポイントの価値金額Cの試算例である。試算例4では、ポイントの額面金額S1、及び、権利残存期間t1が同一であり、同じ取引頻度σ1においても媒介変数bを異ならせた6種類のポイントを想定する。6種類のポイントの条件それぞれに対し、提供者および享受者の取引の頻度σ1を大きく変化させ、ポイントの価値金額Cの変化傾向を出力した。6種類のポイントの媒介変数bとして、b=1~1.5に対応して、試算例4-1、試算例4-2、試算例4-3、試算例4-4、試算例4-5、及び、試算例4-6の条件を以下に示す。なお、試算例4-1、試算例4-2、試算例4-3、試算例4-4、試算例4-5、及び、試算例4-6においては、媒介変数aを「1」に設定した。
【0083】
試算例4-1の条件:
S1=100円(100pt)
t1=7日間
σ1=1~365回
a=1
b=1
【0084】
試算例4-2の条件:
S1=100円(100pt)
t1=7日間
σ1=1~365回
a=1
b=1.1
【0085】
試算例4-3の条件:
S1=100円(100pt)
t1=7日間
σ1=1~365回
a=1
b=1.2
【0086】
試算例4-4の条件:
S1=100円(100pt)
t1=7日間
σ1=1~365回
a=1
b=1.3
【0087】
試算例4-5の条件:
S1=100円(100pt)
t1=7日間
σ1=1~365回
a=1
b=1.4
【0088】
試算例4-6の条件:
S1=100円(100pt)
t1=7日間
σ1=1~365回
a=1
b=1.5
【0089】
図9は、試算例4-1、試算例4-2、試算例4-3、試算例4-4、試算例4-5、及び、試算例4-6にそれぞれ対応するグラフである。取引の頻度σ1を一定とした状態において、媒介変数bを異ならせて設定することで、第3変数σの変化におけるリスク指標を検討することができる。媒介変数bが大きくなるほど、ポイントの価値金額Cはより大きくなっていく。例えば、取引の頻度σ1=121回である場合、媒介変数b=1(試算例4―1)にてC≒40円である一方、媒介変数b=1.1(試算例4―2)にてC≒70円となる。
【0090】
<実際の作動>
図10及び
図11は、金券類売買システム100の実際の作動を示す一連のフローチャートである。複数の享受者において、既に店舗40aでの取引が幾つか行われた状態であって、ポイント管理部32の作動によって、取引の決済に応じたポイントがそれぞれ付与されるように、サーバ30の記憶部31にて複数の享受者の付与ポイントが、取引No.に対応するようそれぞれ記憶されているものとする(
図3を参照)。
【0091】
先ず、サーバ30にて、記憶部31に記憶されている各享受者の取引頻度から、第1享受者10a、及び、第2享受者20aが設定される。複数の享受者のうち、小さい取引頻度(=σ1)をもつ第1享受者10aと、大きい取引頻度(=σ1)をもつ第2享受者20aと、がピックアップされる(ST1)。
図3に示すように、例えば、「メンバー氏名:○○ ○○」の取引頻度と、「メンバー氏名:△△ △△」の取引頻度とを比較し、取引頻度が小さい方の享受者を第1享受者10aとし、他方を第2享受者20aとしてもよい。
【0092】
次に、ステップST1にて設定された第1享受者10aにおいて、記憶部31に記憶されている各付与ポイントの中から、買取対象とする付与ポイントを1つ選択し、当該付与ポイントが属する取引No.が設定される(ST2)。
図3に示すように、例えば、「メンバー氏名:○○ ○○」のデータ、及び、「メンバー氏名:△△ △△」のデータが、それぞれ第1享受者10aのデータ、及び、第2享受者20aのデータに対応するとした場合、「メンバー氏名:○○ ○○」における複数の「付与ポイント」の中から1つが選択されてもよい。そして、選択された「付与ポイント」に対応する「取引No.」が、設定される。
【0093】
次に、ステップST1にて設定された第1享受者10a、及び、第2享受者20aごとに、変数設定部33によって、第1変数S、第2変数t、及び、第3変数σが設定される(ST3)。より具体的には、第1変数S、第2変数t、及び、第3変数σは、ポイントの額面金額(ポイント数)S1、権利残存期間t1、取引の頻度σ1、媒介変数a,b、上記式(7)、式(8)、及び、式(9)に基づいて、設定される。
【0094】
図3に示すように、例えば、「メンバー氏名:○○ ○○」のデータ、及び、「メンバー氏名:△△ △△」のデータが、それぞれ第1享受者10aのデータ、及び、第2享受者20aのデータに対応するとした場合、以下のようにS1、t1、及び、σ1が設定されてもよい。第1享受者10aにおいては、ポイントの額面金額(ポイント数)S1には、ステップST2にて設定された「取引No.」に対応する「付与ポイント」が用いられ、権利残存期間t1には、現時点から、ステップST2にて設定された「取引No.」に対応する「ポイント適用可能期限」までの期間が用いられ、取引の頻度σ1には、現時点での第1享受者10aの年間取引回数が用いられる。第2享受者20aにおいては、ポイントの額面金額(ポイント数)S1には、ステップST2にて設定された「取引No.」に対応する「付与ポイント」が用いられ、権利残存期間t1には、現時点から、ステップST2にて設定された「取引No.」に対応する「ポイント適用可能期限」までの期間が用いられ、取引の頻度σ1には、現時点での第2享受者20aの年間取引回数が用いられる。なお、媒介変数a,bは、予め設定されていてもよい。
【0095】
次に、ステップST1にて設定された第1享受者10a、及び、第2享受者20aごとに、価値決定部34によって、ポイントの価値金額Cが決定される(ST4)。より具体的には、第1享受者10aに紐付いたポイントの価値金額Cは、ステップST3にて設定された第1享受者10aにおける第1変数S、第2変数t、及び、第3変数σと、上記式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、及び、式(6)とに基づいて、決定される。第2享受者20aに紐付いたポイントの価値金額Cは、ステップST3にて設定された第2享受者20aにおける第1変数S、第2変数t、及び、第3変数σと、上記式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、及び、式(6)とに基づいて、決定される。
【0096】
次に、ステップST2にて設定された「取引No.」に対応するポイントの買取価格が、買取価格通知部35によって、第1享受者10aに紐づくポイントの価値金額Cに基づいて、設定される(ST5)。より具体的には、買取価格は、ステップST4にて決定された第1享受者10aに紐づくポイントの価値金額Cに、所定の係数を乗じ、更に、買取価格が自然数となるよう端数処理された値に設定される。
【0097】
次に、ステップST2にて設定された「取引No.」に対応するポイントの売却価格が、売却価格通知部36によって、第2享受者20aに紐づくポイントの価値金額Cに基づいて、設定される(ST6)。より具体的には、売却価格は、ステップST4にて決定された第2享受者20aに紐づくポイントの価値金額Cに、所定の係数を乗じ、更に、売却価格が自然数となるよう端数処理された値に設定される。
【0098】
次に、ステップST2にて設定された「取引No.」に対応するポイント、及び、ステップST5にて設定された買取価格の情報が、買取価格通知部35によって、サーバ30から第1端末10に送信される(ST7)。これにより、第1享受者10aに売却意思を確認するための情報等(メッセージ、アイコン等)が、第1端末10の表示画面に表示される(
図4を参照)。
【0099】
次に、第1端末10にて、買取対象のポイント売却のための操作が、第1享受者10aによってなされたか否かが判定される(ST8)。より具体的には、
図4に示すように、第1端末10の表示画面にて、「100ポイント今なら20円で売却できます」等のメッセージとともに、画面上で操作可能な「Yes」及び「No」を示すアイコンが、表示枠内に自動的に表示される場合、第1享受者10aにより「Yes」のアイコンがタップされたとき、売却のための操作がなされたとして判定される。この場合、ステップST8にて「Yes」と判定されて、第1享受者10aの売却意思が、第1端末10からサーバ30に送信される(ST9)。一方、第1享受者10aにより「No」のアイコンがタップされたとき、ステップST8にて「No」と判定されて、第1享受者10aからのポイントの買取は実行されないことになる。
【0100】
ステップST9を経て、第1享受者10aの売却意思がサーバ30に到達した後に、
図10の下端における結合子「1」から、
図11の上端における結合子「1」に移行する。
【0101】
次に、第2端末20の位置情報が、第2端末20からサーバ30に送信される(ST10)。第2端末20の位置情報としては、現時点における第2端末20の緯度・経度であってもよい。
【0102】
次に、サーバ30にて、売却価格通知部36によって、第1享受者10aの売却意思があり、且つ、
図5に示す離間距離D1が、店舗40aを中心とした円における所定の半径R1以下であるか否かが、判定される(ST11)。ステップST9にて、第1端末10からサーバ30への通知が送達した場合には、第1享受者10aの売却意思があると判定されてもよい。離間距離D1は、ステップST10にて送信された第1端末10の位置情報を取得し、予め記憶されている店舗40aの位置情報も参照して算出されてもよい。ステップST11にて両条件が充足せず「No」と判定されると、同ステップの判定が繰り返し実行される。
【0103】
一方、ステップST11にて両条件が充足し「Yes」と判定されると、ステップST2にて設定された「取引No.」に対応するポイント、及び、ステップST6にて設定された売却価格の情報が、売却価格通知部36によって、サーバ30から第2端末20に送信される(ST12)。これにより、第2享受者20aに買取意思を確認するための情報等(メッセージ、アイコン等)が、第2端末20の表示画面に表示される。
【0104】
次に、第2端末20にて、売却対象のポイント買取のための操作が、第2享受者20aによってなされたか否かが判定される(ST13)。より具体的には、
図4に示すメッセージ、アイコンと同様のものが、第2端末20の表示画面に表示されてもよい。この場合、第2享受者20aにより「Yes」のアイコンがタップされたとき、買取のための操作がなされたとして判定される。この場合、ステップST13にて「Yes」と判定されて、第2享受者10aの買取意思が、第2端末20からサーバ30に送信される(ST14)。一方、第2享受者20aにより「No」のアイコンがタップされたとき、ステップST13にて「No」と判定されて、第2享受者20aへのポイントの売却は実行されないことになる。そして、ステップST13にて「Yes」と判定された後、第2端末20では、決済時に、買取ったポイントを適用できるよう、
図2に示すように表示画面に識別コードが生成される(ST15)。
【0105】
<実施形態の効果>
以上説明したように、上記実施形態にかかる金券類売買システム100は、第1享受者10aが携帯する第1端末10と、第2享受者20aが携帯する第2端末20と、第1端末10及び第2端末20と情報通信可能に接続されたサーバ30と、を備える。サーバ30は、記憶部31と、変数設定部33と、価値決定部34と、買取価格通知部35と、売却価格通知部36と、を備える。買取価格通知部35により、第1享受者10aに付与された金券類(ポイント)の買取価格が、第1享受者10aに紐づくポイントの価値金額Cに基づいて設定され、当該買取価格に対応する情報が第1端末10に通知される。売却価格通知部36により、第1享受者10aから買い取られた金券類(ポイント)の売却価格を、第2享受者20aに紐づくポイントの価値金額Cに基づいて設定し、売却価格に対応する情報が第2端末20に通知される。
【0106】
これによれば、異なる享受者の間にて金券類(ポイント)の売買が可能となる。ここにおいて、異なる享受者の性質としての取引頻度、権利残存期間、ポイントの額面金額が考慮され、第1享受者10aからの買取価格、及び、第2享受者20aへの売却価格が決定され得る。従って、第1享受者10a及び第2享受者20aの両者にとって、魅力的な価格を設定でき、異なる享受者間での金券類(ポイント)の売買を促進できる。この結果、金券類(ポイント)の有効活用が達成され、役務又は商品の提供者にとっても、金券類(ポイント)のための引当金への影響を抑制できる。換言すると、促販用の金券類(ポイント)を、より積極的に発行する機会を創出できる。
【0107】
また、上記実施形態においては特に、変数設定部33により、第1変数S、第2変数t、及び、第3変数σが、異なる享受者ごとに設定される。第1変数S、第2変数t、及び、第3変数σは、金券類(ポイント)の額面金額、権利残存期間、及び、取引の頻度に対応する変数である。これらの要素は、魅力を感じる度合に影響を与えるものとなり、異なる享受者ごとに異ならせて設定され得る。価値決定部34により、上記各変数、及び、金融工学に基づいて構築されたモデルが用いられ、金券類(ポイント)の価値金額Cが、異なる享受者ごとに決定される。即ち、第1変数S、第2変数t、及び、第3変数σのそれぞれの変動に応じて、金券類(ポイント)の価値金額Cも変動する関係を利用し、各変数の変動による感度を調整することができる。従って、この関係を規定する関数C(S,t,σ)が用いられることで、異なる享受者ごとに、金券類(ポイント)の価値を適切に定量化することができる。この結果、第1享受者10aからの買取価格、及び、第2享受者20aへの売却価格を、適切に決定できる。
【0108】
また、上記実施形態においては特に、第2端末20は、第2端末20を携帯した状態の第2享受者20aの位置情報を、サーバ30に送信可能に構成されている。売却価格通知部36は、第2享受者20aの位置情報を取得し、第2享受者20aの位置が提供者と取引するための取引場所である店舗40aに近接したと判定された場合、売却価格に対応する情報を第2端末20aに通知する。これによれば、第2享受者20aが店舗40aに近接した際に、第2享受者20aへの金券類(ポイント)の売却が、自動的に提案され得る。従って、第2享受者20aによる買取を更に促進でき、提供者と第2享受者20aとの取引も促進できる。
【0109】
また、上記実施形態においては特に、変数設定部33では、第1変数Sとして、金券類(ポイント)の額面金額S1そのものが用いられ、第2変数tとして、権利残存期間t1に少なくとも媒介変数aを乗じた値が用いられ、第3変数σとして、取引の頻度σ1に少なくとも媒介変数bを乗じた値が用いられる。これによれば、権利残存期間t1を一定とした状態において、媒介変数aを異ならせて設定することで、第2変数tの変化におけるリスク指標を検討することができる。また、取引の頻度σ1を一定とした状態において、媒介変数bを異ならせて設定することで、第3変数σの変化におけるリスク指標を検討することができる。
【0110】
また、上記実施形態においては特に、第1変数Sは、金券類(ポイント)の額面金額S1が大きいほどより大きい値に設定される。第2変数tは、権利残存期間t1が長いほどより大きい値に設定される。第3変数σは、取引の頻度σ1が大きいほどより大きい値に設定される。このように、各変数を、適切な変化傾向をもって設定することができる。また、関数C(S,t,σ)は、ポイントの価値金額Cが、第1変数Sが大きいほどより大きい値となり、第2変数tが大きいほどより大きい値となり、第3変数σが大きいほどより大きい値となるよう規定される。このため、適切な変化傾向をもつ関数C(S,t,σ)を用い、金券類(ポイント)の価値を精度良く定量化することができる。
【0111】
また、上記実施形態においては特に、価値決定部34では、関数C(S,t,σ)として、上記式(1)にて規定されたものが用いられる。このモデルは、金融工学に基づいて構築されたものである。即ち、実績あるモデルの改良で、精度が高い関数C(S,t,σ)を構築することができる。このため、金券類(ポイント)の価値金額Cを、更に精度良く且つ容易に定量化することができる。また、関数C(S,t,σ)では、式(2)~式(6)において、S及びKが等しく、q及びrがゼロとなるように構成される。このように、金券類(ポイント)の性質を反映しつつ、各式での計算を簡略化できる。従って、金券類(ポイント)の価値金額Cの決定に際し、精度を担保しつつ、計算負荷を低減することができる。
【0112】
また、上記実施形態においては特に、金融工学に基づくモデルとして、ブラック・ショールズモデルが利活用される。このモデルにより、ヨーロピアンタイプ、エキゾチックタイプの金券類であって、例えば、ポイントやクーポン等に対し、価値の定量化が有効となる。例えば、概算として、理論価格やリスクを早期に把握するといったニーズに、ブラック・ショールズモデルの利活用は適切である。
【0113】
特に、ポイントやクーポンを使う現場では、取り扱うデータが大量となる場合が多い。例えば、顧客数が100万人単位で、商品数も100万点単位となることがある。この場合、データ手入力による処理では対応が非常に難しく、2項モデル等での計算によれば、時間を要することになる。ポイントやクーポンによっては、満期まで1週間という場合もあり、理論価格やリスクの把握のために、上記顧客数・商品数に応じた計算を2項モデル等で完了させるのは、あまり実用的ではない。このような場合に、短時間(数分~1,2時間程度)で結果を見る目的では、ブラック・ショールズモデルは適しているといえる。
【0114】
なお、上記実施形態においては、金券類(ポイント)の価値金額Cの決定に際し、金融工学に基づくモデルとして、ブラック・ショールズモデルが用いられているが、これに代えて、Hestonモデルが用いられてもよい。
【0115】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る金券類売買システム100について説明する。本発明の第2実施形態は、価値決定部34にて金券類の価値金額Cを決定する態様が異なる点において、上述した第1実施形態と異なっており、それ以外の点については第1実施形態と同じである。以下、第2実施形態の、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0116】
第2実施形態の価値決定部34でも、オプションと類似する点と、金券類特有の性質とを鑑みて、金券類の価値を定量化するモデルが用いられる。具体的には、第1変数S(i)、第2変数t、第3変数σ、期間数n、行使価格K、配当利回りq、及び、安全利子率rの各変数と、金券類の価値金額C(i)との関係を規定する関数C(S(i),t,σ,n,K,q,r)(以下、単に「関数C」と称呼する場合もある)が用いられる。関数Cは、下記式(11)にて規定される。
【数15】
【0117】
上記式(11)において、P、Cu、及び、Cdは、下記式(12)、下記式(13)、及び、下記式(14)にて規定される。
【数16】
【数17】
【数18】
【0118】
式(13)、及び、式(14)において、Max[A,B]は、2つの引数であるA及びBのうち大きい方の数値を返す統計関数である。この場合、式(13)においては、Su(i+1)-K、及び、0(ゼロ)を比較し、これらのうち大きい方の数値がCu(i+1)となる。式(14)においては、Sd(i+1)-K、及び、0(ゼロ)を比較し、これらのうち大きい方の数値がCd(i+1)となる。Su、及び、Sdは、下記式(15)、及び、下記式(16)にて規定される。
【数19】
【数20】
【0119】
式(11)乃至式(16)において、nは、ゼロ以上の整数であって、対応する整数にて権利残存期間を分割する期間数を表す。iは、ゼロから期間数nのうちより選択される整数を表す。C(i)は、金券類の価値金額を表す。S(i)は、第1変数を表す。tは、第2変数を表す。σは、第3変数を表す。Kは、金券類における取引の際に適用可能な額面の金額を表す。qは、金券類における配当利回りを表す。rは、金券類における安全利子率を表す。eは、ネイピア数を表す。
【0120】
この関数Cと、少なくとも、第1変数S(i)と、第2変数tと、第3変数σと、に基づいて、金券類の価値を定量化した値として、金券類の価値金額C(i)が決定される。変数設定部33では、第1変数S(i)として、金券類の額面の金額S1そのものが用いられ、第2変数tとして、権利残存期間t1に少なくとも媒介変数aを乗じた値が用いられ、第3変数σとして、取引の頻度σ1に少なくとも媒介変数bを乗じた値が用いられる。これらの各変数の設定は、第1実施形態のものと同じであってもよい。
【0121】
なお、式(11)乃至式(16)は、オプション価格を定量化する2項モデル(バイノミナルモデル)と相似である。2項モデルにおいて、コールオプション価格は、C(i)に相当する。原資産価格は、S(i)に相当する。期間は、tに相当する。ボラティリティは、σに相当する。行使価格は、Kに相当する。配当利回りは、qに相当する。安全利子率は、rに相当する。ここにおいて、ボラティリティは予想変動率であり、ボラティリティが大きいほど権利行使される可能性がより高くなる傾向がある。金券類の価値金額C(i)の決定に際し、上記傾向を応用することは可能である。第2実施形態においても、この観点から、第3変数σを、取引の頻度に対応する値としている。
【0122】
第2実施形態のように、金融工学モデルとして2項モデルを利活用する場合には、ヨーロピアンタイプ、アメリカンタイプ、エキゾチックタイプの金券類であって、全てのタイプの金券類に対し、価値の定量化が可能となる。ここにおいて、金券類の例としては、上述した第1実施形態のものと同じであってもよく、ポイント・クーポンに限らず、その他の種類の金券類の例に対しても、2項モデルを適用することができる。
【0123】
第1実施形態のブラック・ショールズモデルに比して、第2実施形態の2項モデルによれば、計算速度は劣るが、理論価格やリスクをより精度良く把握することが可能となる。例えば、時間を急ぐ必要はないが、金券類による割引金額が大きく、金券類を発行する企業の財務に影響を与えると予想される場合等に、理論価格やリスクを精度良く把握するといったニーズに、2項モデルの利活用は適切である。
【0124】
図12に示すように、2項モデルによれば、オプション価格に対応する金券類の価値金額C(i)は、整数iが期間数nから0までデクリメントされるのに応じて決定されていく。整数i=nのとき、決定されるC(i=n)の個数はn+1個であり、n+1個の各金券類の価値金額C(i=n)は、上記式(13)、上記式(14)を用いてそれぞれ決定される。整数i=nの各金券類の価値金額C(i=n)のうち、上下方向に隣り合う2つのC(i=n)に基づいて、整数i=n―1の各金券類の価値金額C(i=n―1)が決定されていく。これを順次繰り返していき、整数i=0の金券類の価値金額C(i=0)まで決定される。例えば、整数i=2において、金券類の価値金額201,202,203の3つが決定されたとする。この場合、隣り合う金券類の価値金額201,202に基づいて、整数i=1の金券類の価値金額204が決定され、隣り合う金券類の価値金額202,203に基づいて、整数i=1の金券類の価値金額205が決定される。
【0125】
図13に示すように、C(i)は、Cu(i+1)及びCd(i+1)に基づいて決定される。より具体的には、Cu(i+1)にパラメータP/Rを乗じたものと、Cd(i+1)にパラメータ(1―P)/Rを乗じたものとの和が、C(i)となる。C(i)が、
図12における金券類の価値金額204である場合、Cu(i+1)及びCd(i+1)は、
図12における金券類の価値金額201,202に対応する。また、C(i)が、
図12における金券類の価値金額205である場合、Cu(i+1)及びCd(i+1)は、
図12における金券類の価値金額202,203に対応する。パラメータP/R及び(1―P)/Rにおいて、Pは、上記式(12)にて規定される。Rは、下記式(12a)にて規定される。従って、上記式(11)にてC(i)を決定することができる。
【数21】
【0126】
図14に示すように、2項モデルによれば、原資産価格に対応する第1変数S(i)は、整数iが0から期間数nまでインクリメントされるのに応じて決定されていく。整数i=0のとき、決定されるS(i=0)の個数は1個であり、この第1変数S(i=0)が入力されることで、整数i=1~nまで順次S(i)が決定されていく。整数i=nにおけるS(i=n)の個数はn+1個となり、n+1個の各S(i=n)、上記式(13)、上記式(14)を用いて、n+1個のC(n)がそれぞれ決定される。例えば、整数i=1において、原資産価格401,402の2つが決定されたとする。この場合、原資産価格401に基づいて、整数i=2の原資産価格403,404が決定され、原資産価格402に基づいて、整数i=2の原資産価格404,405が決定される。
【0127】
図15に示すように、S(i)に基づいて、Su(i+1)及びSd(i+1)が決定される。より具体的には、S(i)にパラメータUを乗じたものがSu(i+1)となり、S(i)にパラメータDを乗じたものがSd(i+1)となる。S(i)が、
図14における原資産価格401である場合、Su(i+1)及びSd(i+1)は、
図14における原資産価格403,404に対応する。また、S(i)が、
図14における原資産価格402である場合、Su(i+1)及びSd(i+1)は、
図14における原資産価格404,405に対応する。パラメータU及びDにおいて、Uは、下記式(12b)にて規定される。Dは、下記式(12c)にて規定される。なお、上記式(12)のPは、R,U,Dを用い、下記式(12d)にて規定されてもよい。以上より、上記式(15)、式(16)にて、Su(i+1)及びSd(i+1)を決定することができる。
【数22】
【数23】
【数24】
【0128】
<金券類の価値金額の試算例>
第2実施形態が備えるサーバ30にて決定される金券類の価値金額C(i)について、以下、具体的な試算例を説明する。金券類売買システム100の作動において、
図10のフローチャートにおけるステップST3に到達すると、変数設定部33によって、第1実施形態の上記(7)式、(8)式、(9)式に基づいて、第1変数S(i)、第2変数t、及び、第3変数σが設定される。一例として、第1変数S(i)は、整数i=0(ゼロ)におけるS(i=0)に設定されるものとし、金券類の額面金額S1、権利残存期間t1、取引の頻度σ1、媒介変数a,bを下記の条件とした場合に、第1変数S(i)、第2変数t、及び、第3変数σを下記のとおり設定した。
【0129】
S1=100円
t1=半年
σ1=1回/年
a=b=1
S(i=0)=100
t=0.5
σ=0.3
【0130】
金券類売買システム100の作動において、
図10のフローチャートにおけるステップST4に到達すると、価値決定部34によって、ステップST3にて設定された第1変数S(i)、第2変数t、第3変数σ、期間数n、上記式(15)、式(16)に基づいて、Su(i+1)及びSd(i+1)が決定される(上記式(15)、式(16)、
図14、
図15を参照)。一例として、期間数n、権利行使価格K、安全利子率r、及び、配当利回りqが、下記のとおり設定されるものとする。この場合、
図16に示すように、各ノードの上段部に表示されるSの値が、i=1~4の区間に亘って、それぞれ決定されていく。
【0131】
n=4
K=100
r=0.1
q=0.2
【0132】
更に、価値決定部34によって、上記決定されたSu(i+1)及びSd(i+1)、権利行使価格K、上記式(13)、式(14)に基づいて、Cu(i+1)及びCd(i+1)が決定される(上記式(13)、式(14)を参照)。
図16に示すように、i=4におけるノードの下段部に表示されるCの値が、i=4の各Sの値に対応して、それぞれ決定される。i=4におけるノードにおいて、Cの値は、上記式(13)、式(14)に従い、SからKを減じた値と、0(ゼロ)とを比較し、大きい方の値に決定される。
【0133】
更に、価値決定部34によって、ステップST3にて設定された第1変数S(i)、第2変数t、第3変数σ、期間数n、安全利子率r、配当利回りq、上記式(12)に基づいて、Pが設定される(上記式(12)を参照)。
【0134】
更に、価値決定部34によって、上記設定されたP、上記決定されたCu(i+1)及びCd(i+1)、ステップST3にて設定された第2変数t、期間数n、安全利子率r、配当利回りq、上記式(11)に基づいて、金券類の価値金額C(i)が決定される(上記式(11)、
図12、
図13を参照)。
図16に示すように、各ノードの下段部に表示されるCの値が、i=3~0の区間に亘って、それぞれ決定されていく。一例として、
図16に示すように、i=0におけるSの値、及び、Cの値に着目すると、S=100、C=5.25である。現時点から半年後に適用可能期限満了を迎える金券類であり、表面上の額面金額が100円であるものであっても、第2実施形態による理論上の金券類の価値金額C(i)は、5.25円である。このようにして、金券類の価値が定量化される。従って、第2実施形態によっても、金券類の価値金額C(i)を、精度良く且つ容易に定量化することができる。
【0135】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る金券類売買システム100について説明する。本発明の第3実施形態は、価値決定部34にて金券類の価値金額Cを決定する態様が異なる点において、上述した第1、第2実施形態と異なっており、それ以外の点については第1、第2実施形態と同じである。以下、第3実施形態の、第1、第2実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0136】
第3実施形態の価値決定部34でも、オプションと類似する点と、金券類特有の性質とを鑑みて、金券類の価値を定量化するモデルが用いられる。具体的には、第1変数S(j)、第2変数t、第3変数σ、期間数m、行使価格K、配当利回りq、及び、安全利子率rの各変数と、金券類の価値金額C(j)との関係を規定する関数C(S(j),t,σ,m,K,q,r)(以下、単に「関数C」と称呼する場合もある)が用いられる。関数Cは、下記式(17)にて規定される。
【数25】
【0137】
式(17)において、Max[A,B]は、2つの引数であるA及びBのうち大きい方の数値を返す統計関数である。この場合、式(17)においては、S(j)-K、及び、0(ゼロ)を比較し、これらのうち大きい方の数値が数列和に用いられる。S(j)は、下記式(18)にて規定される。
【数26】
【0138】
式(17)及び式(18)において、εは、標準正規乱数を表す。mは、1以上の整数であって、対応する整数にて権利残存期間を分割する期間数を表す。jは、1から期間数nのうちより選択される整数を表す。C(j)は、金券類の価値金額を表す。S(j)は、第1変数を表す。tは、第2変数を表す。σは、第3変数を表す。Kは、金券類における取引の際に適用可能な額面の金額を表す。qは、金券類における配当利回りを表す。rは、金券類における安全利子率を表す。eは、ネイピア数を表す。
【0139】
この関数Cと、少なくとも、第1変数S(j)と、第2変数tと、第3変数σと、に基づいて、金券類の価値を定量化した値として、金券類の価値金額C(j)が決定される。変数設定部33では、第1変数S(j)として、金券類の額面の金額S1そのものが用いられ、第2変数tとして、権利残存期間t1に少なくとも媒介変数aを乗じた値が用いられ、第3変数σとして、取引の頻度σ1に少なくとも媒介変数bを乗じた値が用いられる。これらの各変数の設定は、第1、第2実施形態のものと同じであってもよい。
【0140】
上記式(17)及び式(18)は、オプション価格を定量化するためのモンテカルロシミュレーションと相似である。モンテカルロシミュレーションにおいて、コールオプション価格は、C(j)に相当する。原資産価格は、S(j)に相当する。期間は、tに相当する。ボラティリティは、σに相当する。行使価格は、Kに相当する。配当利回りは、qに相当する。安全利子率は、rに相当する。
【0141】
第3実施形態のように、金融工学モデルとしてモンテカルロシミュレーションを利活用する場合には、第2実施形態の2項モデルと同様、全てのタイプの金券類に対し、価値の定量化が可能となる。第1実施形態のブラック・ショールズモデルに比して、モンテカルロシミュレーションによれば、第2実施形態の2項モデルと同様、計算速度は劣るが、理論価格やリスクをより精度良く把握することが可能となる。例えば、時間を急ぐ必要はないが、金券類による割引金額が大きく、金券類を発行する企業の財務に影響を与えると予想される場合等に、理論価格やリスクを精度良く把握するといったニーズに、モンテカルロシミュレーションの利活用は適切である。
【0142】
金券類売買システム100の作動において、
図10のフローチャートにおけるステップST3に到達すると、変数設定部33によって、第1実施形態の上記(7)式、(8)式、(9)式に基づいて、第1変数S(j)、第2変数t、及び、第3変数σが設定される。一例として、第1変数S(j)は、整数j=1におけるS(j=1)に設定されるものとする。
【0143】
金券類売買システム100の作動において、
図10のフローチャートにおけるステップST4に到達すると、価値決定部34によって、ステップST3にて設定された第1変数S(j)、第2変数t、第3変数σ、期間数m、安全利子率r、配当利回りq、上記式(18)に基づいて、j=1~mまで漸化的にSの値が決定されていく(上記式(18)を参照)。上記決定された各Sの値は、標準正規乱数εに基づく値となっており、価値決定部34によって、S(j)として上記式(17)に順次代入されていく。
【0144】
更に、価値決定部34によって、上記代入される各Sの値、第2変数t、第3変数σ、期間数m、安全利子率r、配当利回りq、権利行使価格K、上記式(17)に基づいて、数列和を算出して金券類の価値金額C(j)が決定される(上記式(17)を参照)。このようにして、金券類の価値が定量化される。従って、第3実施形態によっても、金券類の価値金額C(i)を、精度良く且つ容易に定量化することができる。
【0145】
[変形例]
第1、第2、第3実施形態においては、金券類の価値金額Cを決定するに際し、それぞれ1種類の金融工学モデルが用いられているが、価値決定部34にて、複数の異なるモデル(例えば、ブラック・ショールズモデル、2項モデル、モンテカルロシミュレーション等)を備え、当該複数の異なるモデルから、金券類の種類に応じ活用されるモデルが適宜選択されるようにしてもよい。
【0146】
なお、各実施形態の金券類売買システム100における関数、各変数等は、特許請求の範囲のものであればよく、上記各実施形態のものに限定されない。上記各実施形態にて規定された関数に代えて、変形例として他の式・関数が用いられてもよい。他の式・関数としては、例えば、種々のエキゾチックオプションに対応するモデルに基づいて構築されたものが用いられる。種々のエキゾチックオプションとしては、デジタルオプション、スプレッドオプション、パワーオプション、エクスチェンジオプション、キャッシュオンデリバリーオプション、バリアオプション(ノックイン、ノックアウトオプション)、ルックバックオプション、コンパウンドオプション、チューザーオプション、エイジアンオプション、ダブルバリアオプション、クリケットオプション、バスケットオプション、レインボーオプション、江戸っ子オプションの中から、金券類の種類に応じて選定されると好適である。
【0147】
10…第1端末、10a…第1享受者、20…第2端末、20a…第2享受者、30…サーバ、31…記憶部、33…変数設定部、34…価値決定部、35…買取価格通知部、36…売却価格通知部、40…店舗端末、40a…店舗、100…金券類売買システム、C…金券類の価値金額、C(S,t,σ)…関数、C(S(i),t,σ,n,K,q,r)…関数、C(S(j),t,σ,m,K,q,r)…関数、S…第1変数、S(i)…第1変数、S(j)…第1変数、t…第2変数、σ…第3変数、S1…金券類の額面金額、t1…権利残存期間、σ1…取引の頻度
【要約】
【課題】 異なる享受者間で金券類が売買可能とされることで、金券類の有効活用が達成され得るシステムを提供する。
【解決手段】 金券類売買システム100は、第1享受者10aが携帯する第1端末10と、第2享受者20aが携帯する第2端末20と、第1端末10及び第2端末20と情報通信可能に接続されたサーバ30と、を備える。サーバ30は、記憶部31と、変数設定部33と、価値決定部34と、買取価格通知部35と、売却価格通知部36と、を備える。買取価格通知部35により、第1享受者10aに付与された金券類の買取価格が、第1享受者10aに紐づく価値金額Cに基づいて設定され、当該買取価格に対応する情報が第1端末10に通知される。売却価格通知部36により、第1享受者10aから買い取られた金券類の売却価格を、第2享受者20aに紐づく価値金額Cに基づいて設定し、売却価格に対応する情報が第2端末20に通知される。
【選択図】
図1