(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】アニロックスロールのレーザ洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B41F 35/04 20060101AFI20230724BHJP
B41F 35/00 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
B41F35/04
B41F35/00 A
(21)【出願番号】P 2023036523
(22)【出願日】2023-03-09
【審査請求日】2023-03-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592172448
【氏名又は名称】小▲柳▼津 清
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100104396
【氏名又は名称】新井 信昭
(72)【発明者】
【氏名】小柳津 清
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-522413(JP,A)
【文献】国際公開第2018/198427(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/133415(WO,A1)
【文献】特開2018-103600(JP,A)
【文献】米国特許第6354213(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 35/00-35/06
B08B 5/00
B08B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルが形成されたアニロックスロールを周方向に回転させながらレーザ光を照射し、当該セル内及び当該セルの周辺に付着したインク残滓を蒸発又は昇華させて洗浄するためのアニロックスロールのレーザ洗浄装置であって、
当該アニロックスロールの軸方向と略平行な案内レールに案内され所望位置で停止可能に双方向自走でき、洗浄のために設置されたアニロックスロールと対向する出光開口を有する洗浄装置本体と、
当該洗浄装置本体の内部でレーザ光を集光する集光レンズを通過したレーザ光の光路(以下、「レーザ光路」という)の周囲を、当該レーザ光路におけるレーザ光の進行を妨げずに当該出光開口近傍において所定長だけ囲む拡散抑制壁と、
当該レーザ光路のうちの当該拡散抑制壁に包囲された光路(以下、「包囲光路」という)に臨む吸気口と集塵装置を接続可能な排気口とを有する集塵管と、が設けられ、
当該集塵装置を当該集塵管の排気口に接続し駆動させることで、当該アニロックスロールに照射した当該レーザ光が蒸発又は昇華させたインク残渣(以下、「蒸発等インク残渣」という)を、少なくとも当該出光開口と当該包囲光路と当該吸気口とを経由して吸引可能に構成されている、
ことを特徴とするアニロックスロールのレーザ洗浄装置。
【請求項2】
前記拡散抑制壁には、前記集光レンズ側を塞ぐ入光側板と前記出光開口側を塞ぐ出光側板とが設けられ、
当該入光側板には入光開口が当該出光側板には出光開口が、それぞれ形成されることで、前記包囲光路は当該入光開口から始まり当該出光開口で終わるように構成され、
前記蒸発等インク残渣は、当該出光開口を経由して吸引可能に構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載のアニロックスロールのレーザ洗浄装置。
【請求項3】
前記出光側板を前記入光側板より下に位置させたとき、前記出光側板の内面に再生成堆積した蒸発等インク残渣を前記出光開口から掻き出し排除するための排除機構が、前記出光側板若しくは前記拡散抑制壁又は前記出光側板と前記拡散抑制壁の双方に渡り設けられている、
ことを特徴とする請求項2記載のアニロックスロールのレーザ洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄装置本体と前記アニロックスロールとの相対距離を所望長さだけ変更可能に構成され、
前記洗浄装置本体の内部の前記レーザ光路を妨げない位置又は前記洗浄装置本体の外部には、前記出光開口から前記アニロックスロールに対し近接離反可能なかつ接触子を有するスライドユニットと、当該スライドユニットを近接方向に付勢するバネ部材と、を備え、
前記洗浄装置本体と前記アニロックスロールとの相対距離を変更することで、当該接触子を、当該バネ部材の付勢力を用いて前記アニロックスロールに弾力着地可能に構成されている、
ことを特徴とする請求項1ないし3何れか記載のアニロックスロールのレーザ洗浄装置。
【請求項5】
前記バネ部材の付勢力に抗しながら前記スライドユニットを、使用者が前記アニロックスロールから所望位置まで離反させた上で、前記スライドユニットを前記洗浄装置本体に対して解除可能に固定するロック機構が、さらに設けられている、
ことを特徴とする請求項4記載のアニロックスロールのレーザ洗浄装置。
【請求項6】
前記接触子は周方向に回転する前記アニロックスロールに従動回転可能な少なくとも1個の回転検知ローラを含み、
前記スライドユニットには当該回転検知ローラが接触検知した前記アニロックスロールの回転を直接若しくは間接に受けて電気信号を出力するエンコーダと、が設けられている、
ことを特徴とする請求項
4記載のアニロックスロールのレーザ洗浄装置。
【請求項7】
前記接触子は周方向に回転する前記アニロックスロールに従動回転可能な少なくとも1個の回転検知ローラを含み、
前記スライドユニットには当該回転検知ローラが接触検知した前記アニロックスロールの回転を直接若しくは間接に受けて電気信号を出力するエンコーダと、が設けられている、
ことを特徴とする請求項5記載のアニロックスロールのレーザ洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アニロックスロールを使用する印刷機(たとえば、フレキソ印刷機やグラビア印刷機等)において、インキ調量ローラとして用いられるアニロックスロールを洗浄するためのアニロックスロール洗浄装置に係り、詳しくは、アニロックスロールのロール面を覆うセル(インキ溜め用の小孔)をレーザ光照射により洗浄再生するアニロックスロールのレーザ洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(第1の先行技術)
アニロックスロールのレーザ洗浄装置として、特許文献1に開示されたレーザ洗浄装置(以下、「第1の洗浄装置」という)が知られている。
図8に引用する第1の洗浄装置(特許文献1の
図5。一部の部材名を出願人が付加)におけるレーザ光62cは、回転するアニロックスロール12の近傍のハウジング108内を通過しセル18内及びその周辺に照射する。ハウジング108には、光源(図示せず)に近い側に入光開口が、また、その反対側すなわちアニロックスロールに近い側に出光開口がそれぞれ形成されている。ハウジング108の内部のレーザ光62cの進行方向(
図8の上から下方向)ほぼ中央には、入光開口から入光したレーザ光62cを集光して出光開口からアニロックスロール方向に出光させるための集光レンズ60が支持されている。この集光レンズ60によりハウジング108の内部は、光源側の入光側分室とアニロックスロール12側の出光側分室に二分されている。出光側分室には、矢印110で示される圧縮空気が送り込まれる。この圧縮空気110は、剥離された残渣破片をレンズ60に衝突させない(残渣を付着させない)目的のため、その気流が出口開口からセル18に向かって流れるように設定されている。符号64は、レーザ光62cにより破壊された残渣の破片をセル18の外へ吹き飛ばすための圧縮空気を示す。レンズ60とアニロックスロール12との距離は、ねじカップリング80によって調節される。ねじカップリング80の一端はベアリング78によって支持され、ベアリング78とアニックスロール12表面のセラミック被膜16との間には、堆積した残渣等の影響を減らすためクッションとして圧縮空気84が送り込まれる。レーザ光62cを生成する集光光学系はフレーム36に支持され、フレーム36は案内レールによってアニロックスロール12の軸方向とほぼ平行な方向にスライド移動可能に構成されている。
【0003】
以上のとおり、第1の洗浄装置では、レンズ60への残渣付着、セル18内からの残渣吹き飛ばし、そしてベアリング78とアニロックスロール12間の残渣吹き飛ばしのために、一貫して圧縮空気のみが使用されている。
【0004】
(第2の先行技術)
一方、特許文献2には、レーザ光を照射してアニロックスロールの残渣を洗浄するためのレーザ洗浄装置(以下、「第2の洗浄装置」という))が開示されている。第2の洗浄装置は、本発明の発明者が開発したものである。第2の洗浄装置は、アニックスロールのローラ軸とほぼ平行な案内レールに案内されてアニロックスロールの軸方向とほぼ平行にスライド移動できる洗浄装置本体と、洗浄装置本体からアニロックスロール方向に所定長さだけ突き出す脚部と、脚部の開放端に回転自在に取り付けられた複数の車輪とを有している。案内レールは、支持柱体によって両端それぞれが支持され、支持柱体は洗浄装置本体(すなわち、案内レール)とアニロックスロールとの距離を調整可能とするための調整機構を有している。また、それぞれの車輪は、調整機能を使って洗浄装置本体をアニロックスロールに近づけ、それらをアニックスロール表面に着地させるようになっている。それぞれの車輪の着地により、アニロックスロールのロール面上に洗浄装置本体から出光したレーザ光のスポット結像に最適の光路長(焦点距離)を確保できるように構成されている。
【0005】
一方、第2の洗浄装置は再付着や環境保全に配慮されていて、スポット照射によってセル内から除去されたインキやニスの残渣を吸引排気するためのバキュームクリーナとを備えている。より具体的には、バキュームクリーナの吸引ノズル先端をアニロックスロールの近くに設置して吸引排気するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許6,354,213号公報
【文献】日本国特許第6362053号公報(段落0030,0047、
図2、
図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(第1の洗浄装置の課題)
しかしながら、第1の洗浄装置によれば、レーザ光62cにより破壊された残渣は、圧縮空気の採用によりアニロックスロール12から剥離されるであろうが、剥離された残渣はその周囲に飛散・拡散されてしまうことが容易に想像できる。飛散・拡散した残渣は、ハウジング内にあるレンズ60やアニロックスロール12の表面などに再付着する可能性があり、また、作業環境を悪化させる要因となりうる。特にレンズ60への再付着は、効率の良いレーザ光照射の妨げることになり、ひいては、レーザ洗浄そのものに悪影響を与えかねない、という欠点がある。
【0008】
(第2の洗浄装置の課題)
一方、第2の洗浄装置によれば、車輪をアニロックスロールの表面に着地させることで、アニロックスロールのロール面上にレーザスポットを結像させるのに最適の光路長を確保できることは、さらに、バキュームクリーナの働きで剥離残渣の再付着や環境悪化を防いでいること、はその通りであるが、より使い勝手を高めるために改良の余地があった。それは、まず車輪をアニロックスロールに着地させる際の距離調整の方法についてである。支持柱体の調整機構は案内レールの両端、つまり、車輪と幾分離れた位置にあるため作業者は、車輪着地の様子を監視しながら、調整機構の調整を行う必要がある。ほとんどの場合の使用者は、しゃがんだ状態で車輪とアニロックスロールの距離を見た後、立ち上がってもしくは姿勢を変えて調整機能の調整をすることになる。つまり、一人でも不可能ではないが、効率よい車輪の着地作業のためには複数の使用者の存在が強く望まれる。この着地作業を、たとえ一人でも効率よく行えるようにすることが第1の改良すべき点である。着地作業が効率よくできないと、それは、求めるレーザスポットを結像させることの難しさにつながるからである。
【0009】
また、残渣の吸引排気については、上記のとおりバキュームクリーナの吸引ノズル先端をアニロックスロールの近くに設置して吸引排気するだけでは、必ずしも効率がよくない。レーザ光の通過経路内において吸引排気することがレンズを含む光学系に対する悪影響を効率よく取り除けることが望ましい。この要求に応えることが、第2の改良すべき点である。効率のよい塵埃除去は、洗浄装置本体の中にある光学系、特に集光レンズの汚れを防いで、効率のよいレーザ光照射に貢献するからである。
【0010】
(本発明の目的)
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものである。すなわち、光学系、特に集光レンズに対する剥離残渣(蒸発等インク残渣)の付着を抑制すること、さらに、集光レンズとアニックスロールとの距離調整を簡便にすることにより、光学系の基本性能を十分に発揮させ、これにより効率の良いレーザ洗浄を実現するアニロックスロールの洗浄装置を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明は、次の特徴を備えている。その特徴について本欄では請求項別に記載しているが、何れかの請求項発明の説明において行う用語の定義等は、その性質上不可能な場合を除き、記載順などに関係なく他の請求項発明にも適用があるものとする。
【0012】
(請求項1記載の発明の特徴)
請求項1記載の発明に係るアニロックスロールのレーザ洗浄装置(以下、「請求項1の洗浄装置」という)は、複数のセルが形成されたアニロックスロールを周方向に回転させながらレーザ光を照射し、当該セル内及び当該セルの周辺に付着したインク残滓を蒸発又は昇華させて洗浄するためのアニロックスロールのレーザ洗浄装置である。請求項1の洗浄装置は、当該アニロックスロールの軸方向と略平行な案内レールに案内され所望位置で停止可能に双方向自走でき、洗浄のために設置されたアニロックスロールと対向する出光開口を有する洗浄装置本体と、当該洗浄装置本体の内部でレーザ光を集光する集光レンズを通過したレーザ光の光路(以下、「レーザ光路」という)の周囲を、当該レーザ光路におけるレーザ光の進行を妨げずに当該出光開口近傍において所定長だけ囲む拡散抑制壁と、当該レーザ光路のうちの当該拡散抑制壁に包囲された光路(以下、「包囲光路」という)に臨む吸気口と集塵装置を接続可能な排気口とを有する集塵管と、が設けられ、当該集塵装置を当該集塵管の排気口に接続し駆動させることで、当該アニロックスロールに照射した当該レーザ光が蒸発又は昇華させたインク残渣(以下、「蒸発等インク残渣」という)を、少なくとも当該出光開口と当該包囲光路と当該吸気口とを経由して吸引可能に構成されている。以上が請求項1の洗浄装置の特徴である。
【0013】
請求項1の洗浄装置によれば、洗浄装置本体は、案内レールに案内されて双方向に自走して周方向に回転するアニロックスロールにレーザ光を照射する。レーザ光照射により発生する蒸発等インク残渣は、集塵装置の駆動による吸引力により、出光開口から拡散抑制壁に包囲された包囲光路に吸引され、さらに、吸気口を抜け集塵管を通って最終的に集塵装置内に吸引される。レーザ光の照射位置は、案内レールに沿った洗浄装置本体の自走により移動する。包囲光路は気密ではないから、蒸発等インク残渣は上記経路以外の経路を介して吸引される場合もあり、これを排除する趣旨ではない。拡散抑制壁は、出光開口から流入する蒸発等インク残渣が洗浄装置本体内で拡散することを抑制し、集塵装置の吸引とあいまって集光レンズ等に蒸発等インク残渣が付着するのを妨げる。この付着妨げにより、集光レンズを含む光学系の基本性能を十分に発揮させ、これにより効率の良いレーザ洗浄を実現する。
【0014】
(請求項2記載の発明の特徴)
請求項2記載の発明に係るアニロックスロールのレーザ洗浄装置(以下、「請求項2の洗浄装置」という)は、請求項1の洗浄装置の好ましい態様例として、前記拡散抑制壁には、前記集光レンズ側を塞ぐ入光側板と前記出光開口側を塞ぐ出光側板とが設けられ、当該入光側板には入光開口が当該出光側板には出光開口が、それぞれ形成されることで、前記包囲光路は当該入光開口から始まり当該出光開口で終わるように構成され、前記蒸発等インク残渣は、当該出光開口を経由して吸引可能に構成されている、ことを特徴とする。
【0015】
請求項2の洗浄装置によれば、入光側板と出光側板を備えることにより、包囲空間における蒸発等インク残渣の拡散抑制度がより高まる。一方で、入口開口と出口開口は、レーザ光の進行を妨げない、すなわち、包囲光路の機能を失わせない、という作用効果を奏する。
【0016】
(請求項3記載の発明の特徴)
請求項3記載の発明に係るアニロックスロールのレーザ洗浄装置(以下、「請求項3の洗浄装置」という)は、請求項2の洗浄装置の好ましい態様例として、前記出光側板を前記入光側板より下に位置させたとき(使用時に下に位置するとは限らない)、前記出光側板の内面に再生成堆積した蒸発等インク残渣を前記出光開口から掻き出し排除するための排除機構が、前記出光側板若しくは前記拡散抑制壁又は前記出光側板と前記拡散抑制壁の双方に渡り設けられている、
ことを特徴とする。
【0017】
請求項3の洗浄装置によれば、再生成堆積した蒸発等インク残渣を掻き出し排除することで、少なくとも出光側板の内面を簡単に洗浄することができる。再生成堆積した蒸発等インク残渣を放置すると、出口開口からアニロックスロール上に落下するなどの不都合が起こりえる。簡単であれば頻繁に洗浄しても苦にならないので、結果として、レーザ洗浄の効果を高めることができる。
【0018】
(請求項4記載の発明の特徴)
請求項4記載の発明に係るアニロックスロールのレーザ洗浄装置(以下、「請求項4の洗浄装置」という)は、請求項1ないし3何れかの洗浄装置の好ましい態様例として、前記洗浄装置本体と前記アニロックスロールとの相対距離を所望長さだけ変更可能に構成され、前記洗浄装置本体の内部の前記レーザ光路を妨げない位置又は前記洗浄装置本体の外部には、前記出光開口から前記アニロックスロールに対し近接離反可能なかつ接触子を有するスライドユニットと、当該スライドユニットを近接方向に付勢するバネ部材と、を備え、前記洗浄装置本体と前記アニロックスロールとの相対距離を変更することで、当該接触子を、当該バネ部材の付勢力を用いて前記アニロックスロールに弾力着地可能に構成されている、ことを特徴とする。
【0019】
請求項4の洗浄装置によれば、洗浄装置本体とアニロックスロールとの相対距離を変更することができる。変更は、洗浄装置本体を動かすか、もしくはアニロックスロールを動かすか、または、洗浄装置本体とアニロックスロールの両方を動かすことにより行える。スライドユニット、より具体的にはそれが有する接触子はアニロックスロールに向かって弾性的に近接方向に突き出している。この弾性力はバネ部材の付勢力である。洗浄装置とアニロックスロールの相対距離を縮めると、やがて接触子はアニロックスロールに着地する。この着地の際の接触子は、バネ部材の付勢力に逆らいながら、僅かに離反方向に移動する。これが、接触子の弾性着地である。弾性着地を可能とすることにより、アニロックスロールの破損を避けながら(したがって、必要最小限の人員、通常は一人の使用者で足りる)相対距離変更の調整を簡単に行うことができる。さらに、洗浄時にアニロックスロールが、それを回転させる機構の回転ブレなどにより上下動しても、バネ部材がそれを弾性吸収する。さらにこの相対距離を、洗浄装置本体内の集光レンズによって集光されたレーザ光のスポットがアニロックスロールのロール面上で結像させるのに好適な距離(光路長)と同じに設定しておけば、アニロックスロールと洗浄装置本体との相対距離を目視しながら簡単設定できる。相対距離の簡単設定により集光レンズを含む光学系の基本性能を十分に発揮させ、これにより効率の良いレーザ洗浄を実現する。
【0020】
(請求項5記載の発明の特徴)
請求項5記載の発明に係るアニロックスロールのレーザ洗浄装置(以下、「請求項5の洗浄装置」という)は、請求項4の洗浄装置の好ましい態様例として、前記バネ部材の付勢力に抗しながら前記スライドユニットを、使用者が前記アニロックスロールから所望位置まで離反させた上で、前記スライドユニットを前記洗浄装置本体に対して解除可能に固定するロック機構が、さらに設けられている、ことを特徴とする。
【0021】
請求項5の洗浄装置によれば、所望位置まで離反させたスライドユニットを、ロック機構によりそこに固定することができる。離反させるのは、使用者、すなわち人力で行うことができる。何らかの理由により接触子をアニロックスロールから離反させたいと考えた使用者は、ロック機構を使うことで接触子を離反させた状態を保つことができる。
【0022】
(請求項6記載の発明の特徴)
請求項6記載の発明に係るアニロックスロールのレーザ洗浄装置(以下、「請求項6の洗浄装置」という)は、請求項4の洗浄装置の好ましい態様例として、前記接触子は周方向に回転する前記アニロックスロールに従動回転可能な少なくとも1個の回転検知ローラを含み、前記スライドユニットには当該回転検知ローラが接触検知した前記アニロックスロールの回転を直接若しくは間接に受けて電気信号を出力するエンコーダと、が設けられている、ことを特徴とする。
【0023】
請求項6の洗浄装置によれば、アニロックスロールと洗浄装置本体との相対距離を目視しながら簡単に設定できるという請求項4の洗浄装置の作用効果を維持したまま、エンコーダの電気信号を目的に合わせて処理することでアニロックスロールの回転状況を監視することができる。バネ部材のバネ力に逆らいながらスライドユニット(接触子)を離反させると、回転検知ローラとアニロックスロールとの接触が解除されて回転が検知されなくなる。
【0024】
(請求項7記載の発明の特徴)
請求項7記載の発明に係るアニロックスロールのレーザ洗浄装置(以下、「請求項7の洗浄装置」という)は、請求項5の洗浄装置の好ましい態様例として、前記接触子は周方向に回転する前記アニロックスロールに従動回転可能な少なくとも1個の回転検知ローラを含み、前記スライドユニットには当該回転検知ローラが接触検知した前記アニロックスロールの回転を直接若しくは間接に受けて電気信号を出力するエンコーダと、が設けられている、ことを特徴とする。
【0025】
請求項7の洗浄装置によれば、使用者が、所望位置まで離反させたスライドユニットを、ロック機構によりそこに固定することができるという請求項5の洗浄装置の作用効果を維持したまま、エンコーダの電気信号を目的に合わせて処理することでアニロックスロールの回転状況を監視することができる。バネ部材のバネ力に逆らいながらスライドユニット(接触子)を離反させると、回転検知ローラとアニロックスロールとの接触が解除されて回転が検知されなくなる。
【発明の効果】
【0026】
集塵装置を設けた場合は、その集塵によって光学系、特に集光レンズに対する剥離残渣(蒸発等インク残渣)の付着を抑制することができる。さらに、洗浄装置本体すなわち集光レンズとアニックスロールとの距離調整を簡便にすることにより、光学系の基本性能を十分に発揮させ、これにより効率の良いレーザ洗浄を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施形態に係るアニロックスロールのレーザ洗浄装置の概略図である。
【
図2】
図2に示すレーザ洗浄装置の部分拡大図である。
【
図3】一部を省略した拡散抑制壁と排除機構を示す斜視図である。
【
図4】
図3の省略部分を戻したA-A断面図である。
【
図5】洗浄装置本体とスライドユニットの関係を示す図である。
【
図6】洗浄装置本体とスライドユニットの関係を示す図である。
【
図7】入光側板を省略した拡散抑制壁における排除機構の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
各図を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)を説明する。
図1および2に示す符号1は、アニロックスロール111(以下、「ロール111」という)を洗浄するためのレーザ洗浄装置(以下、「洗浄装置」という)を示す。ロール111は、印刷時にインキ転移システムの一部を構成するロールのことである。ロール111の表面には、複数(実際には無数といえるほどの)セル(微細なくぼみ)113が形成されている。ロール111は、
図5および6に示すように、その長さ方向の両端部に転がり接触する、たとえば4個(図に示される2個の裏に別の2個がある。)の駆動ローラ112により、周方向に所定速度で回転される。駆動ローラ112の駆動源は、図外の制御されたモータである。
【0029】
(洗浄装置の構造)
洗浄装置1は、洗浄装置本体3が主要な構成部材である。本実施形態の洗浄装置本体には、光学系7の一部となるレーザ光源7aと、集塵装置115が、それぞれの接続部材を介して外付けされるようになっている。これらの外付けは、洗浄装置1をできるだけ小型・軽量化し、それ自体を移動させやすいようにするためである。発熱対策や排気処理の便宜のためでもある。が、可能であるなら、レーザ光源7aと集塵装置115を、洗浄装置本体3に内蔵または付属させることを妨げない。
【0030】
洗浄装置本体3の外観に何ら制限はないが、本実施形態では、
図1に示す正面視においてほぼ逆Lの形になっている。すなわち、横長のレール通過部3aと、レール支持部3aの一端から折れ曲がるように突き出る照射集塵部3bを有している。洗浄装置本体3の全体は金属製の容器である。洗浄装置本体3のアニロックスロール111と対向する出光開口3cを有する。
【0031】
(レール通過部の構造)
レール通過部3aの内部には、洗浄装置本体3に固定された自走ユニット5が設けられ、さらに、水平方向に延びる案内レール101を貫通設置できるように構成されている。自走ユニット5は、たとえば8個(
図1において4個は隠れて見えない)の自走ローラ5aによって上下に挟まれている。自走ローラ5aがモータ5bによって駆動されることで洗浄装置本体3全体が案内レール101に案内されて双方向自走(
図1の双方向矢印3x)可能に構成されている。案内レール101の軸方向は、ロール111の軸方向と可及的に平行にしてあり、これによって、浄化装置本体3全体がロール111の軸方向に沿って往復自走かつ所望位置で制御停止できるようになっている。外付けにした関係上、集塵装置115と連結するための集塵管11と、レーザ光源7aと光学的接続するための光学ケーブル7bは、洗浄装置本体3の移動に追随できるように十分な長さと柔軟性を備えている。なお、
図1の符号11bは、集塵装置115に連結する集塵管11の排気口を示す。反対側になる集塵管11の吸気口は、
図1に11aで示す。
【0032】
(案内レールと支持柱の構造)
案内レール101は、アニロックスロール111の長さより十分に長い中空の金属材であって、洗浄装置本体3を吊り下げ保持できる十分な強度と、自動ローラ5aを転がり接触させられる断面形状を有している。案内レール101は、その両端(
図1の左端は省略)を縦設置された支持柱103によって支えられている。支持柱103は、その長さ方向に延びる長孔105を備え、長孔105に差し込んだ締付ボルト107の締付により、案内レール101を支持柱105に解除可能に締付固定できる。締付ボルト107は、長孔105内の所望位置で締め付けられるようになっていて、この位置を変えることにより案内レール101のロール111に対する相対距離D(
図6)を変更可能になっている。締付ボルト107による位置変更に代えて、もしくは、これと併せて駆動ローラ112を位置変更することで、案内レール101のロール111に対する相対距離を変更できるように構成してもよい。相対距離を変更するのは、集光レンズ7fのレーザスポットがロール111のセル113の中及びセル113の周辺に付着したインク残渣Zにできるだけ合うように調整するためである。
【0033】
光学系7は、前記したレーザ光源7aと光学ケーブル7bにより光学的連結されたレーザヘッド7cと、レーザヘッド7cから出光したレーザ光Lのビーム径を広げるためのエキスパンドレンズ7dと、エキスパンドレンズ7dから出光したレーザ光Lを制御照射するためのガルバノミラー7eと、ガルバノミラー7eによって反射されたレーザ光Lを集光してピンポイント照射するための集光レンズ7fを含めて構成されている。レーザ光源7aは洗浄装置本体3に外付けであることは前述したとおりであり、レーザヘッド7cとエキスパンドレンズ7dとガルバノミラー7eは、洗浄装置本体3のレール通過部3a内の所定個所に設置されている。集光レンズ7fは、照射集塵部3bの所定個所に支持されている。なお、レーザ光源7aから出光したレーザ光Lが集光レンズ7fを抜けて照射されるまでの全光路のことを、レーザ光路La(
図3)と呼ぶことにする。さらにレーザ光路Laのうち、後述する拡散抑制壁9に包囲された部分を特に包囲光路Lb(
図2)と呼ぶことにする。
【0034】
包囲光路Lbを抜けたレーザ光Lは、浄化装置本体3の出光開口3cから周方向に回転するロール111にレーザ光Lを照射し、それぞれのセル113内及び場合によってはセル113の周辺に付着したインク残滓を蒸発又は昇華させることで洗浄を行う。ロール111のレーザ洗浄を行う一方、レーザ照射の開始・継続・停止のための光学系7や自走ユニット5などの制御を司るのは、制御部19(
図1)である。なお、蒸発又は昇華させたインク残渣のことを、以後「蒸発等インク残渣Z」という。
【0035】
(拡散抑制壁の構造)
図1ないし4および7を参照する。レーザ光Lの進行を妨げずに出光開口3c近傍においてレーザ光路Laを、浄化装置本体3内において所定長だけ囲む拡散抑制壁9が設けられている。拡散抑制壁9によって包囲されたレーザ光路Laのことを包囲光路Lbと呼ぶことは前述した。拡散抑制壁9は、レーザ光Lの照射によってロール111の周囲で発生した蒸発等残渣Zは暖められた外気の上昇等に伴い、出光開口3cを抜けて洗浄装置3内に侵入してくる。侵入した蒸発等残渣Zを放置すると、それが拡散し集光レンズ7fその他の個所に付着するので、効率の良いレーザ洗浄を実現することができない。その拡散を抑制するのが拡散抑制壁9である。
【0036】
本実施形態の拡散抑制壁9は、
図3にも示すように略長方体形状に形成してあるが、この形に限定する必要はない。たとえば、円柱体形状や逆さ漏斗形状などに形成することもできる。拡散抑制壁9の、その機能を高めるために好ましい態様として、拡散抑制壁9の集光レンズ7f側を塞ぐように入光側板9aを、同じくロール111側(出光開口3c側)を塞ぐように出光側板9cをそれぞれ設ける。つまり、箱状に形成する。その上で入光側板9aには入光開口9bを、出光側板9cには出光開口9dを、それぞれ貫通形成する。これにより包囲光路Lbは、入光開口9bから始まり出光開口9dで終わることになる。入光開口9bと出光開口9dそれぞれの大きさや形状(本実施形態では四角形)は、レーザ光Lの通過を妨げない範囲であれば何ら制限はないが、拡散抑制の観点からできるだけ小さく(拡散抑制範囲を広げる)することが望まれる。なお、本実施形態では、洗浄装置本体3の下端を開放し(出光開口3cの省略)、その代わりに出光側板9cを洗浄装置3の下端に露出させてある。すなわち、露出させた出光側板9cの出光開口9dは、出光開口3cの機能を兼ね備えることになる。
【0037】
入光側板9cには、貫通口を介して集塵管11が気密に差し込み固定され、これによって集塵管11の吸引口11aが包囲光路Lbに臨む状態になる。前述のように集塵管11の排気口11bは、洗浄装置本体3の外部にある集塵装置115に気密接続される。ここで集塵装置115の駆動により拡散抑制壁9ない(包囲光路Lbない)はその周囲に比べて陰圧になる。その結果、レーザ光Lの照射でロール111の近傍に発生した蒸発等インク残渣Zは、主として出光開口3c少なくとも出光開口9d(3c)と包囲光路Lbと吸気口11aとを経由して吸引排除される。入光開口9bからも拡散抑制壁9内に空気が流入するので、それに蒸発等残渣Zが含まれているならそれも吸引排除される。
【0038】
発明者らが行った実験によると、蒸発等残渣Zの吸引排除を完全に行うことは難しい場合があり、その場合は拡散抑制壁9や出光側板9cの内側に再生成した蒸発等インク残渣Zが僅かに堆積する。蒸発等インク残渣Zが堆積するということ自体は、その分だけ集光レンズ7fに蒸発等残渣Zが付着する可能性を低くすることに貢献しているといえる。再生成堆積した蒸発等インク残渣Zの処理については、次項以下で述べる。
【0039】
(再生成した蒸発等残渣の処理)
出光側板9cを入光側板9aより下に位置させたとき(つまり、
図1ないし4に示す状態のとき)、出光側板9aの内面に再生成堆積した蒸発等インク残渣Zを出光開口9c(3c)から掻き出し排除するための排除機構17が設けられていることが好ましい。排除機構17は、出光側板9cの上に載せられ出光開口9dより幅広のスライド板17aと、スライド板17aの幅方向一端から一体起立する起立板17bによりL字状に形成され、併せてスライド板17aの長さ方向一端から横に突き出す摘み片17cにより構成されている。スライド板17aは、出光側板9cの上で起立板17bとともに出光側19cの上で、その長さ方向に起立板17bとともにスライド可能に置かれている。
【0040】
摘み片17cは、拡散抑制壁9の一部を構成する側板9e(
図4。
図3では省略されている)にスライド方向(
図4の紙面垂直方向)に沿って形成されたスライド長孔9f(
図4の断面に隠れて見えない。
図7)から突き出している。摘み片17cは、これを使用者が摘まんで排除機構17をスライドさせられるように構成されている。なお、上述の出光側板9cを入光側板9aより下に位置させたときなる条件は、浄化装置本体3の下方にロール111が配される状態を前提としている。浄化装置本体3とロール111が、それぞれ、たとえば水平方向に配されるのであれば、排除機構17を設けることの要否、設ける場合の構造については上記と異なってくることを付言しておく。
【0041】
上記のとおり、排除機構17は、出光側板9cと拡散抑制壁9の双方に渡って設けているが、出光側板9c若しくは拡散抑制壁9の何れかにのみ設けることを妨げるものではない。ここで使用者が摘まみ片17cをつまんで排除機構17の全体を長孔9f(
図7)に沿ってスライドさせると、スライド板17aが出光側板9cの内面を摺動して再生成堆積した蒸発等インク残渣Zを出光開口9d(3c)から掻き出し排除することができる。出光側板9cの内側を清掃することにより蒸発等インク残渣Zが再飛散等を未然に防ぐことができる。
【0042】
なお、スライドさせた排除機構17が自然に元の位置に戻させるためのバネ部材のような復帰部材(図示を省略)を拡散抑制壁9の内側に設けておくと、使用者によるスライド操作の後の排除機構17が自力復帰する。自立復帰により出光開口9d(3c)を常に開口状態に保てるので使い勝手がよくなる。
【0043】
(相対距離の決定)
洗浄装置本体3とロール111との相対距離Dを所望長さだけ変更可能であることは、案内レール101と支持柱103の構造説明の中で既に述べた。洗浄装置本体3の内部のレーザ光路Laを妨げない位置に(洗浄装置本体3の外部でもよい)には、出光開口3c(9d)からロール111に対し近接離反(近づいたり離れたり)可能なスライドユニット13と、スライドユニット13を近接方向に付勢するバネ部材13bを備えている。スライドユニット13は、ロール111に向かって突き出す接触子13aを、さらに有している。これらの構成によりバネ部材13bの付勢力に逆らいながら、接触子13aを離反方向、つまり洗浄装置本体3の内側方向に、押し入れられるようになっている。
【0044】
ここで、洗浄装置本体3とロール111との相対距離Dを前述の方法で変更することで、接触子13aを、バネ部材13bの付勢力を用いてロール111に弾力着地(クッション性を持ちつつ接触させる)可能になる。弾性着地を可能とすることにより、ロール111の破損を避けながら(したがって、必要最小限の人員、通常は一人の使用者で足りる)相対距離変更の調整を簡単に行うことができる。さらに、洗浄時にロール111が、それを回転させる機構、たとえば、
図5および6に示す駆動ローラ112の回転ブレなどにより上下動しても、バネ部材13bがそれを弾性吸収するので洗浄作業への悪影響を最小限にすることができる。
【0045】
接触子13aについて、上述した弾性着地の他にも重要な機能がある。それは、洗浄装置本体3とロール111との相対距離Dの簡単設定である。つまり、相対距離Dを洗浄装置本体3の中の集光レンズ7fによって集光されたレーザ光Lのスポット(焦点)がロール111のロール面上で結像させるのに好適な距離(光路長、焦点距離F)と同じに設定しておけば、ロール111と洗浄装置本体3との相対距離Dを目視しながら簡単設定できるようになる。相対距離Dの簡単設定により集光レンズ7fを含む光学系7の基本性能を十分に発揮させ、これにより効率の良いレーザ洗浄を実現する。
【0046】
目視可能とするため本実施形態では、洗浄装置本体3の外側の容易に目視できる個所にスライドユニット13と連動してスライドする位置決めスライダー15を取り付けてある。ここで使用者は、バネ部材13bの付勢力に抗しながらスライドユニット13(接触子13a)を、使用者がロール111から後述する所望位置まで人力離反(人の手で離反させること)させた上で、スライドユニット13を洗浄装置本体3に固定する。この固定は、抜き取りにより解除可能であり、位置決めピン15a(ロック機構15a)を、位置決めスライダー15を、その外側から洗浄装置本体3に差し込むことで行うようになっている。位置決めスライダーを固定することで、これと連動する接触子13aの突き出し量を決定できる。位置決めスライダー15の代わりにスライドユニット13を固定するように構成してもよい。
【0047】
位置決めピン15aの差込位置が、上述の所望位置になる。所望位置は、集光レンズ7fによって集光されたレーザ光Lのスポット(焦点)がロール111のロール面上で結像させるのに好適な距離(光路長、焦点距離F)と同じに設定しておくべきことは言うまでもない。なお、何らかの理由により接触子13aをロール111から離反させたいと考えた使用者は、所望位置より遠い位置でロック機構15aを使うことで接触子13aを離反させた状態を保つことができる。
【0048】
(接触子の好例)
好ましい態様例として接触子13aは周方向に回転するロール111に従動回転可能な少なくとも1個の回転検知ローラを含む(以後、「回転検知ローラ13a」と呼ぶ。
図5、6)。スライドユニット13には回転検知ローラ13aが接触検知したロール111の回転を直接若しくは間接に受けて電気信号を出力するエンコーダ13dと、が設けられている。本実施形態では、回転検知ローラ13aが検知したロール111の回転を一組の傘歯車13cを介してエンコーダ13dに伝達するようになっている。エンコーダ13dの電気信号を制御部9(
図1)に送信し、目的に合わせて処理することでロール111の回転状況を監視することができる。バネ部材13bの付勢力に逆らいながらスライドユニット13(回転検知ローラ13a)を使用者が離反させると、回転検知ローラ13aとロール111との接触が解除されて回転が検知されなくなる。回転検知がされないときはレーザ光Lを照射しないように設定しておけば、使用者による離反によってレーザ光Lの照射停止することができる。
【0049】
(排除機構の変形例)
図7に示す符号18は、変形例に係る排除機構18は、出光開口9dより幾分幅広で所定高さのスライド縦板18aと、スライド縦板18aの幅方向両端から鋭角逆八の字状に広がる所定長の寄せ板18bと、スライド縦板18aから伸びて拡散抑制壁9の長さ方向(
図7の上下方向)に形成された長孔9fから外へ突き出る摘み片18cとを備えている。ここで、使用者が摘み片18cを排除方向に操作すると排除機構18全体がその方向に移動する。この移動により、両寄せ板18は出光開口9dに向かって蒸発等残渣Zを掻き寄せ、これをスライド縦板18aとともに出光開口9dから落下させる。2点鎖線で示す状態が排除機構18を移動させた状態である。使用者が手を離すと、排除機構18はバネ部材18の引っ張り力により実線で示す元の位置にまで自動的に戻る。スライド縦板18aの両脇の寄せ板18bそれぞれの働きにより、出光側板9cの上に再生成堆積した蒸発等残渣Zを出光開口9dから効率よく外部排除することができる。
【符号の説明】
【0050】
1:レーザ洗浄装置(洗浄装置)、3:洗浄装置本体、3a:レール通過部3b:照射集塵部、3c:出光開口、3x:双方向矢印、5:自走ユニット、5a:自走ローラ、5b:モータ、7:光学系、7a:レーザ光源、7b:光学ケーブル、7c:レーザヘッド、7d:エキスパンドレンズ、7e:ガルバノミラー、7f:集光レンズ、9:拡散抑制壁、9a:入光側板、9b:入光開口、9c:出光側板、9d:出光開口、9e:側板、9f:長孔、11:集塵管、11a:吸気口、11b:排気口、13:スライドユニット、13a:接触子(回転検知ローラ)、13b:バネ部材、13c:一組の傘歯車、13d:エンコーダ
15:位置決めスライダー、15a位置決めピン(ロック機構)、17:排除機構、17a:スライド板、17b:起立板、17c:摘み片、18:排除機構、18a:スライド縦板、18b:寄せ板、18c:摘み片、18s:バネ部材
19:制御部、101:案内レール、103:支持柱、105:長孔、107:締付ボルト、111:アニロックスロール(ロール)、112:駆動ローラ、113:セル、115:集塵装置、D:相対距離、F:焦点距離、L:レーザ光
La:レーザ光路、Lb:包囲光路、Z:残渣(蒸発等インク残渣)
【要約】
【目的】 集光レンズ等に対する蒸発等インク残渣の付着を抑制することにより、効率の良いレーザ洗浄を実現する。
【解決手段】 洗浄装置本体(3)の内部での集光レンズ7fを通過したレーザ光の光路周囲を、出光開口近傍において所定長だけ囲む拡散抑制壁(9)と、当該拡散抑制壁に包囲された光路に集塵装置(115)の集塵管(11)を接続して集塵する。拡散抑制壁により蒸発等インク残渣Zの拡散が抑制しながら集塵するので集塵効率がよい。その結果、集光レンズ等に蒸発等インク残渣が付着することを抑制できる。
【選択図】
図2