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特許7317425半導体電力変換デバイスのための正の抵抗温度係数(PTC)を有するゲートネットワーク
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】半導体電力変換デバイスのための正の抵抗温度係数(PTC)を有するゲートネットワーク
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20230724BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20230724BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20230724BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20230724BHJP
   H01L 29/49 20060101ALI20230724BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20230724BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20230724BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
H01L29/78 652Q
H01L21/265 Z
H01L21/28 301B
H01L21/28 301D
H01L21/28 301S
H01L29/58 G
H01L29/78 652F
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
H01L29/78 655F
H01L29/78 657G
H01L29/78 658F
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019570020
(86)(22)【出願日】2018-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 US2018040663
(87)【国際公開番号】W WO2019010144
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】15/643,146
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】ロズィー,ペーター アルマーン
(72)【発明者】
【氏名】ボロトニコフ,アレクサンダー ヴィクトロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】カストロ,ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】マリ コルベロ,アルバロ ジョージ
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/040662(WO,A1)
【文献】特開2013-055214(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0004535(US,A1)
【文献】特開2008-218611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/265、21/28、
21/336、21/58、
29/12、29/739、29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素(SiC)電力変換デバイスであって、
前記SiC電力変換デバイスの活性領域に配置された、複数のSiC金属・酸化物・半導体ベース(MOSベース)トランジスタデバイスセルそれぞれの複数のゲート電極と、
前記SiC電力変換デバイスのゲートパッド・バス領域に配置されたゲートパッドと、
前記SiC電力変換デバイスの前記ゲートパッド・バス領域に配置されたゲートバスであって、前記ゲートバスは、前記ゲートパッドと、前記SiC電力変換デバイスの前記活性領域の前記複数のゲート電極の少なくとも一部との間に延びて電気的に接続するゲートバスと、
を含む、ゲートネットワークであって、
前記ゲートネットワークの、前記ゲートパッド、前記ゲートバス、前記複数のゲート電極、またはそれらの組み合わせの、少なくとも一部は、2000パーツパーミリオン毎度C(ppm/℃)より大きく3200ppm/℃以下の正の抵抗温度係数を有するゲートネットワークを備え、
前記ゲートネットワークは、金属シリサイド層の下方に配置されたドープされたポリシリコン層を含み、
前記金属シリサイド層は、ケイ化モリブデン(MoSi)、ケイ化タンタル(TaSi)、ケイ化タングステン(WSi)、ケイ化コバルト(CoSi)、ケイ化ニッケル(NiSi)、またはケイ化チタン(TiSi )を含む、炭化ケイ素(SiC)電力変換デバイス。
【請求項2】
前記正の抵抗温度係数は、2250ppm/℃より大きく3200ppm/℃以下である、請求項1に記載の炭化ケイ素電力変換デバイス。
【請求項3】
前記正の抵抗温度係数は、2400ppm/℃と3200ppm/℃との間である、請求項2に記載の炭化ケイ素電力変換デバイス。
【請求項4】
前記ゲートネットワークの、前記ゲートパッド、前記ゲートバス、および前記複数のゲート電極のすべてが、同じ正の抵抗温度係数を有する、請求項1に記載の炭化ケイ素電力変換デバイス。
【請求項5】
前記SiC電力変換デバイスは、150℃の接合部温度(Tj)で動作している全等価直列ゲート抵抗(Rg)であって、25℃のTjで動作している前記SiC電力変換デバイスのRgより25%から40%大きいものを有する、請求項1に記載の炭化ケイ素電力変換デバイス。
【請求項6】
150℃のTjで動作している前記SiC電力変換デバイスのRgは、25℃のTjで動作している前記SiC電力変換デバイスのRgより30%から40%大きい、請求項5に記載の炭化ケイ素電力変換デバイス。
【請求項7】
前記ゲートネットワークのシート抵抗は、25℃で、2オーム毎スクエア(オーム/スクエア)と50オーム/スクエアとの間である、請求項1に記載の炭化ケイ素電力変換デバイス。
【請求項8】
前記ゲートネットワークの前記ゲートパッドのみが、2000ppm/℃より大きく3200ppm/℃以下の前記正の抵抗温度係数を有する、請求項1に記載の炭化ケイ素電力変換デバイス。
【請求項9】
前記ゲートパッド、前記ゲートバス、および前記複数のゲート電極のうち、1つのみが、前記正の抵抗温度係数を有する、請求項1に記載の炭化ケイ素電力変換デバイス。
【請求項10】
前記ゲートパッドは、ゲート金属コンタクト領域に隣接して配置された複数の集積抵抗を有する集積抵抗ネットワークを含み、
前記複数のSiC MOSベーストランジスタデバイスセルは、前記デバイスの前記活性領域のそれぞれ異なる部分に配置され、
前記複数のゲート電極の第1部分は、前記複数の集積抵抗のうちの第1集積抵抗、前記ゲートバス、および前記ゲート金属コンタクト領域を介して、外部ゲート接続に電気的に接続され、
前記デバイスの前記活性領域の第2部分内の、前記複数のゲート電極の第2部分は、前記複数の集積抵抗のうちの第2集積抵抗および前記ゲート金属コンタクト領域を介して、前記外部ゲート接続に電気的に接続され、
前記第1集積抵抗および前記第2集積抵抗は、異なるそれぞれの抵抗値を有する、
請求項1に記載の炭化ケイ素電力変換デバイス。
【請求項11】
前記複数のSiC MOSベーストランジスタデバイスセルは、複数の金属・酸化物・半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)デバイスセルまたは複数の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)デバイスセルである、請求項1に記載の炭化ケイ素電力変換デバイス。
【請求項12】
炭化ケイ素(SiC)電力変換デバイスの半導体層の表面にゲートネットワークを形成することを含み、
前記ゲートネットワークは、
前記SiC電力変換デバイスの活性領域に配置された複数のSiC金属・酸化物・半導体ベース(MOSベース)トランジスタデバイスセルの複数のゲート電極と、
前記SiC電力変換デバイスのゲートパッド・バス領域に配置され、前記複数のゲート電極のそれぞれに電気的に接続されたゲートパッドと、を含み、
前記ゲートネットワークの少なくとも一部は、2000パーツパーミリオン毎度C(ppm/℃)より大きく3200ppm/℃以下の正の抵抗温度係数を有し、
前記ゲートネットワークは、金属シリサイド層の下方に配置されたドープされたポリシリコン層を含み、
前記金属シリサイド層は、ケイ化モリブデン(MoSi)、ケイ化タンタル(TaSi)、ケイ化タングステン(WSi)、ケイ化コバルト(CoSi)、ケイ化ニッケル(NiSi)、またはケイ化チタン(TiSi )を含む、
方法。
【請求項13】
前記ゲートネットワークを形成することは、
前記半導体層の前記表面上にゲート材料層を成膜することと、
前記ゲート材料層の一部を選択的にエッチングし、前記ゲートネットワークを形成することと、を含み、
前記ゲート材料層は、25℃で3オーム毎スクエアと6オーム毎スクエアとの間のシート抵抗を有する、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ゲート材料層を成膜することは、
ドープされたポリシリコン層を前記半導体層の前記表面上に成膜することと、
前記ドープされたポリシリコン層上にシリサイド層を成膜し、前記ゲート材料層を形成することと、を含み、
前記ドープされたポリシリコン層は、2500オングストローム(Å)と4000Åとの間の厚さを有し、
前記シリサイド層は、1500Åと4000Åとの間の厚さを有する、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記複数のSiC MOSベーストランジスタデバイスセルのそれぞれについて、前記SiC電力変換デバイスの前記表面に隣接するボディ/ソースコンタクト領域、ウェル領域、およびソース領域を注入することにより、前記ゲートネットワークを形成する前に前記SiC電力変換デバイスの前記活性領域を製造することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記ゲートネットワークを形成する前に、前記SiC電力変換デバイスの前記活性領域の前記半導体層の前記表面にゲート誘電体を形成し、前記ゲートパッド・バス領域の前記SiC電力変換デバイスの前記表面にフィールド酸化膜層を形成することと、
前記ゲートネットワークを形成した後、前記ゲートネットワーク上に直接、前記SiC電力変換デバイスの前記表面上の層間絶縁膜(ILD)を形成することと、
前記SiC電力変換デバイスの前記表面に配置された前記ゲート誘電体、前記ILD、またはその両方の一部を選択的に除去して前記ゲートパッド・バス領域にゲートビアおよびバスビアを形成し、前記SiC電力変換デバイスの前記活性領域の前記複数のSiC MOSベーストランジスタデバイスセルのそれぞれの前記ボディ/ソースコンタクト領域を露出させることと、
前記SiC電力変換デバイスの前記活性領域の前記複数のSiC MOSベーストランジスタデバイスセルの前記ボディ/ソースコンタクト領域上に直接ソース金属を成膜するとともに、前記SiC電力変換デバイスの前記ゲートパッド・バス領域の前記ゲートビアの中にゲートパッド金属を成膜し、前記SiC電力変換デバイスの前記ゲートパッド・バス領域の前記バスビアの中にゲートバス金属を成膜することと、
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
炭化ケイ素(SiC)電力変換デバイスであって、
活性領域のそれぞれ異なる部分に配置された複数のSiC金属・酸化物・半導体ベース(MOSベース)トランジスタデバイスセルそれぞれの複数のゲート電極を備える、活性領域と、
集積抵抗ネットワークに隣接して配置されたゲート金属コンタクト領域を含むゲートパッドを備える、ゲートパッド・バス領域と、
前記ゲートパッドと、前記デバイスの前記活性領域の第1部分の前記複数のゲート電極の第1部分との間に延びる第1ゲートバスと、を備え、
前記複数のゲート電極の前記第1部分は、前記集積抵抗ネットワークの第1部分、および、前記第1ゲートバスを介して、前記ゲート金属コンタクト領域に電気的に接続され、
前記デバイスの前記活性領域の第2部分内の、前記複数のゲート電極の第2部分は、前記集積抵抗ネットワークの第2部分を介して、前記ゲート金属コンタクト領域に電気的に接続され、
前記集積抵抗ネットワークの前記第1部分の抵抗値は、前記集積抵抗ネットワークの前記第2部分の抵抗値と異なり、
前記複数のゲート電極、前記ゲートパッド、前記第1ゲートバス、またはそれらの組み合わせの、少なくとも一部は、2000パーツパーミリオン毎度C(ppm/℃)より大きく3200ppm/℃以下の正の抵抗温度係数を有し、
前記複数のゲート電極、前記ゲートパッド、前記第1ゲートバス、またはそれらの組み合わせの、少なくとも一部は、金属シリサイド層の下方に配置されたドープされたポリシリコン層を含み、
前記金属シリサイド層は、ケイ化モリブデン(MoSi)、ケイ化タンタル(TaSi)、ケイ化タングステン(WSi)、ケイ化コバルト(CoSi)、ケイ化ニッケル(NiSi)、またはケイ化チタン(TiSi )を含む、
炭化ケイ素(SiC)電力変換デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、全体として半導体電力変換デバイスに関し、より具体的には、炭化ケイ素(silicon carbide、SiC)電力変換デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換システムは、現代の電気システム全体で広く使用され、電力を負荷によって消費するために、ある形式から別の形式に変換する。この電力変換工程において、多くのパワーエレクトロニクスシステムが、サイリスタ、ダイオード、および様々な種類のトランジスタ(例えば、金属・酸化物・半導体電界効果トランジスタ(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor、MOSFET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(insulated gate bipolar transistor、IGBT)、およびその他の適切なトランジスタ)のような、様々な半導体デバイスおよび半導体素子を利用する。より大きな電力変換システムは、電力を変換するために協働する多くの電力変換デバイス(例えば、電力モジュールに配置される)を含む場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ゲート抵抗は、SiC MOSFET電力変換デバイスおよびSiC IGBT電力変換デバイスなどの、SiC電力変換デバイスの性能に大きく影響する場合がある。一般に、このようなデバイスは、高速なスイッチング時間と低いスイッチング損失を可能にするために、低いゲート抵抗を有するように設計されている。加えて、デバイスがオフになるとき、SiC電力変換デバイスのドレイン-ソースのピーク電圧がオーバーシュートし、デバイスの定格電圧または最大電圧(Vmax)を一時的に超える可能性がある。そのことは、その電力変換デバイス、および電力モジュールのその他の素子に、ストレスを与える可能性がある。電圧のオーバーシュートを低減し、発振を回避または抑制するために、外部抵抗(例えば、スタンドアローン、表面実装、またはスルーチップの抵抗)を使用して、電力変換デバイスの外部ゲート抵抗を変えることができるが、このような外部抵抗は、一般に電力モジュールの追加的なコストと複雑さを増大させ、デバイスのスイッチング損失を増加し、デバイスパッケージ内の貴重な限られたスペースを消費する。
【0004】
加えて、対応するSiのものとは異なり、SiC電力変換デバイスは、一般に、接合部温度(Tj)とも呼ばれる半導体ダイの表面温度がデバイスの動作中に上昇すると、相互コンダクタンスの増加を示す。この相互コンダクタンスの増加の結果として、SiC電力変換デバイスがスイッチングしているとき、スイッチング過渡が比較的速くなり(例えば、ターンオン時間が速くなる)、電圧と電流が、単位時間あたりさらに大幅に変化する。その結果、他の電力変換デバイスよりも高い温度で動作している電力変換デバイスは、スイッチング過渡時により多くの電流を処理および伝導する傾向があり、モジュールが動的に不均衡になるから、電力変換デバイスにストレスを与える可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態において、炭化ケイ素(SiC)電力変換デバイスは、SiC電力変換デバイスの活性領域に配置されたSiC金属・酸化物・半導体ベース(MOSベース)トランジスタデバイスセルの複数のゲート電極を有するゲートネットワークと、SiC電力変換デバイスのゲートパッド・バス領域に配置されたゲートパッドとを含む。ゲートネットワークは、SiC電力変換デバイスのゲートパッド・バス領域に配置されたゲートバスも含む。ここで、ゲートバスは、ゲートパッドと、SiC電力変換デバイスの活性領域の複数のゲート電極の少なくとも一部との間に延びて電気的に接続する。ゲートネットワークの、ゲートパッド、ゲートバス、複数のゲート電極、またはそれらの組み合わせの、少なくとも一部は、約2000パーツパーミリオン毎度C(ppm/℃)より大きい正の抵抗温度係数を有する。
【0006】
別の実施形態において、方法は、このSiC電力変換デバイスの活性領域に配置された複数のSiC金属・酸化物・半導体ベース(MOSベース)トランジスタデバイスセルの複数のゲート電極を有する炭化ケイ素(SiC)電力変換デバイスの半導体層の表面のゲートネットワークと、このSiC電力変換デバイスのゲートパッド・バス領域に配置され、その複数のゲート電極のそれぞれに電気的に接続されたゲートパッドと、を形成することを含む。ゲートネットワークの少なくとも一部は、約2000パーツパーミリオン毎度C(ppm/℃)より大きい正の抵抗温度係数を有する。
【0007】
別の実施形態において、炭化ケイ素(SiC)電力変換デバイスは、活性領域のそれぞれ異なる部分に配置された複数のSiC金属・酸化物・半導体ベース(MOSベース)トランジスタデバイスセルのそれぞれの複数のゲート電極を有する活性領域を含む。このデバイスは、集積抵抗ネットワークに隣接して配置されたゲート金属コンタクト領域を含むゲートパッドを有するゲートパッド・バス領域、および、ゲートパッドと、デバイスの活性領域の第1部分内の複数のゲート電極の第1部分との間に延びる第1ゲートバスを含む。複数のゲート電極の第1部分は、集積抵抗ネットワークの第1部分および第1ゲートバスを介して、ゲート金属コンタクト領域に電気的に接続されており、デバイスの活性領域の第2部分内の、複数のゲート電極の第2部分は、集積抵抗ネットワークの第2部分を介して、ゲート金属コンタクト領域に電気的に接続されている。集積抵抗ネットワークの第1部分の抵抗値は、集積抵抗ネットワークの第2部分の抵抗値と大幅に異なる。加えて、複数のゲート電極、ゲートパッド、第1ゲートバス、またはそれらの組み合わせの、少なくとも一部は、約2000パーツパーミリオン毎度C(ppm/℃)より大きい正の抵抗温度係数を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のこれらおよびその他の特徴、態様、および利点は、図面全体を通して同様の符号は同様の部分を表す、添付の図面を参照して以下の詳細な説明が読まれるとき、よりよく理解されるようになるであろう。
図1】本アプローチの実施形態による、いくつかのMOSFETデバイスセルを有する活性領域を含み、活性領域内のデバイスセルのゲート電極に電気的に接続されたゲートパッドを有するゲートネットワークを含む、電力変換デバイスの一部の上面図である。ここで、ゲートネットワークの少なくとも一部は、正の抵抗温度係数(positive temperature coefficient of resistance、PTC)を有する。
図2】本技術の実施形態による、図1の電力変換デバイスを製造する工程の一部のフロー図である。
図3】本アプローチの実施形態による、図2の製造工程の開始時の例示的な電力変換デバイスの表面の上面図である。
図4】本アプローチの実施形態による、デバイスの活性領域およびゲートパッド・バス領域の一部の上に誘電体層を成膜した後の図3に示す電力変換デバイスの表面の上面図である。
図5】本アプローチの実施形態による、PTCを有するゲートネットワークを形成した後の図4に示す電力変換デバイスの表面の上面図である。
図6】本アプローチの実施形態による、デバイスの表面上に誘電体層を形成し、次にデバイスの表面を選択的にエッチングしてゲートパッド・バス領域にゲートおよびバスビアを形成するとともに、活性領域内の複数のデバイスセルのボディ/ソースコンタクト領域を露出した後の図5に示す電力変換デバイスの表面の上面図である。
図7】本アプローチの実施形態による、デバイスのゲートパッド・バス領域内にゲートパッド金属およびゲートバス金属を成膜した後、デバイスの活性領域内にソース金属を成膜した後の図6に示す電力変換デバイスの表面の上面図である。
図8A】本アプローチの実施形態による、1-1線に沿った、図7に示す電力変換デバイスの断面図である。
図8B】本アプローチの実施形態による、2-2線に沿った、図7に示す電力変換デバイスの断面図である。
図9A】本アプローチの実施形態による、ダイオードと、PTCを有するゲートネットワークを備える、電力変換デバイス(すなわち、SiC MOSFET電力変換デバイス)と、を含む、電力変換モジュールの回路の一部の図である。ここで、電力変換デバイスは、ターンオフされている。
図9B】本アプローチの実施形態による、図9Aに示す回路の電力変換デバイスのターンオフに対応する、ゲート電圧対時間のプロットである。
図10A】本アプローチの実施形態による、特定の(一定の)温度でのそれぞれ異なる全等価直列ゲート抵抗(Rg)を可能にする、それぞれ異なるゲートネットワークを有する電力変換デバイスを備える、図9Aに示す回路の実施形態の、MOSFETのターンオフの波形を示すグラフである。
図10B】本アプローチの実施形態による、特定の(一定の)温度でのそれぞれ異なる全等価直列ゲート抵抗(Rg)を可能にする、それぞれ異なるゲートネットワークを有する電力変換デバイスを備える、図9Aに示す回路の実施形態の、MOSFETのターンオフの波形を示すグラフである。
図11A】本アプローチの実施形態による、電力変換デバイスがオンにされている、9Aの回路の一部の図である。
図11B】本アプローチの実施形態による、図9Aに示す回路の電力変換デバイスのターンオンについての、ゲート電圧対時間のプロットである。
図12A】本アプローチの実施形態による、特定の(一定の)温度でのそれぞれ異なる全等価直列ゲート抵抗(Rg)を可能にする、それぞれ異なるゲートネットワークを有する電力変換デバイスを備える、図11Aに示す回路の実施形態の、ダイオードのターンオフの波形を示すグラフである。
図12B】本アプローチの実施形態による、特定の(一定の)温度でのそれぞれ異なる全等価直列ゲート抵抗(Rg)を可能にする、それぞれ異なるゲートネットワークを有する電力変換デバイスを備える、図11Aに示す回路の実施形態の、ダイオードのターンオフの波形を示すグラフである。
図13】本アプローチの実施形態による、ゲートネットワークを有する電力変換デバイスの温度(℃)の関数としての、Rg(25℃でRgに正規化されている)を示すグラフである。
図14】本アプローチの実施形態による、電圧オーバーシュート(%)および(任意の単位の)スイッチング損失の両方を、両方とも(任意の単位の)Rgの関数として示すグラフである。
図15】本アプローチの実施形態による、PTCを有するゲートネットワークを備える電力変換デバイスの上面図であり、ここで、ゲートネットワークのゲートパッドは、少なくとも2つの異なるそれぞれの抵抗値を有する複数の集積抵抗を備える、集積抵抗ネットワークも含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1つまたは複数の具体的な実施形態を以下で説明する。これらの実施形態の簡潔な説明を提供するため、実際の実装のすべての特徴が、本明細書内で説明されているわけではない。そのような実際の実装の開発では、あらゆるエンジニアリングまたは設計のプロジェクトにおけるように、実装ごとに異なり得るシステム関連およびビジネス関連の制約に従うことなど、開発者の具体的な目標を達成するために、実装に固有の多くの決定を行わなければならないことが理解されるべきである。その上、そのような開発努力は複雑で時間がかかり得るが、それでも、本開示の利益を受ける当業者にとっては、設計、製造、および生産の日常業務であることが理解されるべきである。
【0010】
別段定義されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用される「第1」、「第2」などの用語は、順序、量、または重要性を示すものではなく、ある要素を別の要素と区別するために使用される。また、本開示の様々な実施形態の要素を導入するとき、冠詞「a」、「an」、および「the」は、1つまたは複数のその要素があることを意味するように意図されている。「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(備える)(having)」という用語は、包括的であるように意図されており、かつ、列記された要素以外の追加的な要素があり得ることを意味するように意図されている。範囲が開示される場合、同じ構成要素または特性を対象とするすべての範囲の端点は、含まれるものであり、独立して併合されることができる。数量に関して使用される「約」という修飾語は、記載された値を含み、かつ、文脈によって指示される意味を有する(例えば、工程のばらつきの程度、または特定の数量の測定に関連する誤差を含む)。
【0011】
本明細書で使用される「層(layer)」という用語は、下地表面の少なくとも一部の上に、連続的または不連続的な方法で配置された材料を指す。さらに、「層(layer)」という用語は、必ずしも配置された材料の均一な厚さを意味するものではなく、配置された材料は、別段明記しない限り、均一または可変の厚さを有し得る。その上さらに、本明細書で使用される「層(a layer)」という用語は、文脈から明確に別段の指示がされていない限り、単一の層または複数の層を指す。さらに、本明細書で使用される「上に配置される(disposed on)」という句は、別段、特に示されない限り、互いに直接接触して配置される層、または間に介在層を有することによって、間接的に配置される層を指す。本明細書で使用される「隣接の(adjacent)」、「上に直接(directly on)」、「わたって直接(上に直接)(directly over)」、「下に直接(directly under)」という用語は、互いに隣接して配置され、かつ互いに直接接触する、2つの層または特徴部分を指す。対照的に、「上に(on)」、「上方に(above)」、「下方に(below)」という用語は、層/領域の互いに対する相対的な位置を記述するものであり、2つの層または特徴部分が、互いに隣接して配置されることも、互いに直接接触していることも、必ずしも必要としない。本明細書で使用される「上部(top)」または「上部(upper)」という用語は、基板層から相対的に最も遠い、特定の特徴部分を指す。
【0012】
本明細書で使用される「ゲートネットワーク」は、ゲートパッド金属と複数の能動デバイスセルとの間の電気経路の一部である、電力変換デバイスの構成要素を指す。したがって、ゲートネットワークは、例えば、電力変換デバイスの、ゲートパッド(以下で説明するように、潜在的に集積抵抗ネットワークを有する)、ゲートバスおよびゲート電極を含んでよい。本明細書中で正の抵抗温度係数(positive temperature coefficient of resistance、正のTCR)とも呼ばれる「正の抵抗温度係数(PTC)」という用語は、特定の温度範囲で、温度の上昇とともに増加し、かつ温度の低下とともに減少する抵抗率を有する、デバイスの構成要素および材料を表すために、本明細書で使用される。材料の抵抗温度係数(temperate coefficient of resistance)は、パーツパーミリオン毎度C(ppm/℃)の単位を有し、次の式に従って計算される。
【数1】
ここで、R(T)は、特定の温度(T)での材料の抵抗であり、一方、ThighおよびTlowは、材料の抵抗が変化する、温度範囲を表す。本明細書で使用される「Rg」は、電力変換デバイスのトランジスタゲートの全等価直列抵抗を表し、かつこれを指す。ある実施形態において、Rgとは別個の分離した、かつ0以上の値を有し得る、外部抵抗素子(すなわち、Rg-external)も存在し得ることが、理解されるべきである。
【0013】
上記のように、SiC電力変換デバイス(例えば、SiC MOSFETおよびSiC IGBT)は一般に、高速なスイッチングと低いスイッチング損失を可能にするために、低いゲート抵抗を有するように設計されている。しかし、現在のところ、SiC電力変換デバイスについては、ゲート抵抗を低くすることで、電圧オーバーシュートがより顕著になる可能性があり、このことが、スイッチング損失を不所望に増加する可能性があり、また半導体モジュールまたは他のシステム構成要素に障害を引き起こす可能性のある、発振とオーバーシュートを誘起する可能性があることが、認識されている。加えて、上記のように、Si電力変換デバイスとは異なり、SiC電力変換デバイスは、一般に、接合部温度(Tj)の増加とともに相互コンダクタンスの増加を示し、そのことは、比較的高い温度でSiC電力変換デバイスがスイッチングしているとき、スイッチング過渡が比較的速くなること(例えば、ターンオン時間が速くなる)、および、電圧と電流が、単位時間あたりさらに大幅に変化することをもたらす。
【0014】
上記を念頭に置いて、本実施形態は、正の抵抗温度係数(PTC)を有するゲートネットワークを含む、半導体電力変換デバイス(例えば、SiC MOSFETおよびSiC IGBT)を対象とする。開示されるゲートネットワークにより、電力変換デバイスが、電力変換デバイスの典型的な動作温度の範囲(例えば、約25℃から約150℃の間)で、可変の全等価直列ゲート抵抗(Rg)を有することが可能になる。以下に詳細に説明するように、ある実施形態において、開示されるゲートネットワークは、一般に、近くのデバイスセルに熱的に近接しており、これらのセルの接合部温度の変化に応じて、抵抗率を変えることができる。以下で説明するように、ゲートネットワークの実施形態は、典型的な動作温度の範囲で、デバイスセルのピーク電圧が、最大電圧定格(Vmax)未満に維持され、リンギング、チップ間の発振を回避し、デバイスセルのスイッチング損失を低減することを、確実にするために、適切な抵抗率を有するように設計されている。さらに、開示されるゲートネットワークは、正の抵抗温度係数を有しないゲートネットワークと比べると、実装するために追加の処理ステップを必要としない。
【0015】
上記を念頭に置いて、図1は、電力変換デバイス12(例えば、SiCエピタキシャル半導体層10を有する、SiC電力変換デバイス)の実施形態の一部の上面図を示す。デバイス12は、ゲートパッド16およびゲートバス18(例えば、ゲートバス18Aおよび18B)を有する、ゲートパッド・バス領域14(破線の輪郭によって示される)を含む。図示されたデバイス12は、ゲートパッド・バス領域14の破線の輪郭の外側の領域である、活性領域20をさらに含む。図示された活性領域20は、ゲートパッド・バス領域14の両側に配置された、いくつかのデバイスセル22(例えば、ストライプ型のMOSFETデバイスセル22)を含む。本技術は、本明細書において、図示されたストライプ型のMOSFETデバイスセル22との関連で説明されるが、本技術は、ダイオード、サイリスタ、トランジスタ(例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、接合型電界効果トランジスタ(junction field-effect transistor、JFET)、金属・半導体電界効果トランジスタ(metal-semiconductor field-effect transistor、MESFET)など)、または、任意の種類の能動セル形状(例えば、正方形、ストライプ、六角形など)を用いたゲート電極を利用する、任意のその他の適切なデバイスなどの、他の種類の半導体デバイス構造に適用でき得るということが、理解されるべきである。加えて、本アプローチは、他の種類の材料系(例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、ヒ化ガリウム(GaAs)、ダイヤモンド(C)、または任意のその他の適切なワイドバンドギャップ半導体)に適用でき得る。当業者は、図1が、本開示の技術の実際の実装に含まれる、デバイス12のある特定の特徴部分(例えば、ある特定のゲート電極、ゲート誘電体、層間絶縁膜、ソース金属、終端、パッケージ)を例示の目的のために省略していることを理解するであろう。そのいくつかは、以下でより詳細に説明される。
【0016】
図1の図示されたストライプ型のMOSFETデバイスセル22は、半導体層10の表面32に隣接して配置された、ボディ/ソースコンタクト領域24(例えば、共通コンタクト)、ソース領域26、チャネル領域28、および接合型電界効果トランジスタ(JFET)領域30を含む。さらに、半導体層10をよりよく見ることができるように、図1のMOSFETセル22の一部のみが、ゲート電極34を含むものとして示されているのであるが、電力変換デバイス12の実際の実装では、デバイスセル22のすべてが、一般に、半導体層10の表面32の、ソース領域26、チャネル領域28、および接合型電界効果トランジスタ(JFET)領域30の、実質的にすべての上方に、少なくとも部分的に配置された、それぞれのゲート電極34を含む。例示的な電力変換デバイス12の断面図は、図8Aおよび図8Bに関連して以下で説明され、これらのデバイスセル22の構造に関する追加的な詳細を提供することに留意してよい。
【0017】
図1に示すように、図示された電力変換デバイス12のゲートネットワーク33は、ゲートパッド16、ゲートバス18、およびゲート電極34を含み、ここで、ゲートネットワーク33の少なくとも一部は、特定の温度範囲(例えば、25℃と150℃との間)で特定の量より大きい(例えば、2000ppm/℃より大きい)PTCを有する。図示されたゲートパッド16は、ゲート金属コンタクト領域36を含む。図15に関連して以下で説明するように、他の実施形態では、ゲートパッド16は、ゲート金属コンタクト領域36に隣接して配置された、集積抵抗ネットワークも含んでよい。ゲートパッド金属(図1には図示せず)は、ゲート金属コンタクト領域36上に直接配置され、ゲートパッド16およびゲートバス18を介して、または通して、外部ゲート接続40に、(例えば、ワイヤボンド38を介して)ワイヤボンディングされる。外部ゲート接続40は、電力変換デバイス12のゲート電極34を動作させるために、適切なゲートバイアスを提供する。したがって、外部ゲート接続40によって、適切なゲート電圧パルスが、ゲート金属コンタクト領域36に印加されるとき、過渡電流は、一般に、矢印37によって示されるように、ゲートネットワーク33を通して(例えば、ゲートパッド16、ゲートバス18を通して、そしてデバイスセル22の電極34に沿って)、流れる。
【0018】
述べたように、図示されたゲートネットワーク33の少なくとも一部は、正の抵抗温度係数(PTC)を有する。より具体的には、図示された実施形態については、ゲートパッド16とゲート電極34の両方が、PTC材料で作られ、かつPTC特性を示す。他の実施形態では、電力変換デバイス12は、ゲートパッド16、ゲートバス18、またはゲート電極34のうちの1つのみが、PTC材料で作られ、かつ/またはPTC特性を示す、ゲートネットワーク33を含んでよい。ある実施形態において、ゲートネットワーク33の他の部分(例えば、ゲート金属コンタクト領域36、バス18)は、一般に、ゲートネットワーク33の残りの部分と同じ材料で作られてよいが、これらの領域のPTC特性は、金属(例えば、ゲートパッド金属、ゲートバス金属)が、これらの領域上に直接成膜される場合、大きく抑制される可能性があることが、理解されてよい。他の実施形態では、バス18は、そのような金属層を含まなくてよく、したがって、ゲートパッド16およびゲート電極34に加えて(またはそれらの代わりに)、PTCを有してよい。
【0019】
上記を念頭に置いて、図2は、本技術の実施形態による、図1に示す、PTCを有するゲートネットワーク33を備える、電力変換デバイス12を製造するための、工程50の一部またはサブセットの実施形態を示すフロー図である。さらに、製造のそれぞれ異なる段階の、例示的な半導体電力変換デバイス12の表面の上面図を提供する図3~7が、図示された工程50の説明全体を通して参照される。図示された工程50は、半導体電力変換デバイス12の半導体層10を製造すること(ブロック52)から始まる。例えば、図3は、電力変換デバイス12の実施形態の、半導体層10(例えば、SiCエピタキシャル層)の表面32を示す。図示されたデバイス10の活性領域20は、すべて半導体層10の表面32に隣接して配置された、部分的に形成された複数のデバイスセル22の、ボディ/ソースコンタクト領域24、ソース領域26、チャネル領域28、およびJFET領域30を含む。理解され得るように、デバイスセル22のこれらの領域は、一般に、半導体層10のマスキングおよびドーピングの連続を介して、形成および画定される。その上さらに、JFET領域30およびソース領域26は、第1導電型(例えば、n型またはp型)を有し、ボディ/ソースコンタクト領域24およびウェル/チャネル領域28は、第1導電型とは反対の、第2導電型(例えば、n型またはp型)を有することに、留意してよい。加えて、図3に示すように、領域24および28と同様に、ゲートパッド・バス領域14は、第2導電型の注入領域46を含む。
【0020】
図2に示す工程50は、半導体層10の表面32に(例えば、表面32上に、または表面32にわたって)、誘電体層を形成すること(ブロック54)へと続く。例えば、図4は、図3の電力変換デバイス12の上面68を示しており、上面68において、活性領域20は、ゲート誘電体層70で実質的に覆われている。加えて、デバイス12のゲートパッド・バス領域14は、ゲート誘電体層70よりも大幅に厚い(例えば、Z軸に沿って5倍~20倍厚い)フィールド酸化膜層76を有する、ゲートパッド領域72、およびゲートバス領域74(例えば、ゲートバス領域74Aおよび74B)を含む。例えば、ゲート誘電体層70およびフィールド酸化膜層76は、別個の酸化物成長または酸化物成膜のステップ中に形成されてよい。
【0021】
図2に戻ると、図示された工程50は、PTC材料を使用して、電力変換デバイス12のゲートネットワーク33を形成すること(ブロック56)へと続く。例えば、これは、電力変換デバイスの活性領域20にゲート電極34を形成すること、ならびにデバイス12のゲートパッド・バス領域14にゲートパッド16およびゲートバス18を形成することを含み得る。ある実施形態において、ゲートネットワーク33の一部またはすべて(例えば、ゲートパッド16、ゲートバス18、およびゲート電極34の、一部またはすべて)は、同じPTC材料から形成されてよい。例えば、図5は、ゲート電極34、ゲートパッド16、およびゲートバス18(例えば、ゲートバス18Aおよび18B)を含む、ゲートネットワーク33を形成した後の、電力変換デバイス12の表面80を示す。より具体的には、ゲート電極34は、デバイス12の活性領域20のゲート誘電体層70上に直接成膜され、ゲートパッド16およびゲートバス18(例えば、ゲートバス18Aおよび18B)は、(図4に示すように)デバイス12のゲートパッド・バス領域14の一部内のフィールド酸化膜層76上に直接成膜される。
【0022】
図5に示す実施形態については、ゲート電極34、ゲートパッド16、およびゲートバス18を含む、ゲートネットワーク33は、約2000ppm/℃より大きい正の抵抗温度係数(PTC)を有する、少なくとも1種類の低インピーダンスのゲート材料82で作られる。例えば、ゲート材料82は、金属シリサイド(例えば、ケイ化モリブデン(MoSi)、ケイ化タンタル(TaSi)、ケイ化タングステン(WSi)、ケイ化コバルト(CoSi)、ケイ化ニッケル(NiSi)、ケイ化チタン(TiSi))層の下方に直接配置される、高度にドープされたポリシリコンであってよい。すなわち、ある実施形態において、ゲートネットワーク33(例えば、ゲート電極34、ゲートパッド16、およびゲートバス18)はすべて、金属シリサイド層(例えば、TaSi)の下方に(例えば、金属シリサイド層(例えば、TaSi)の下に、または金属シリサイド層(例えば、TaSi)の下方に直接)配置された、ポリシリコン層(例えば、n-ドープされたpolySi)を含む、同じゲート材料82から作られる。ある実施形態において、ゲートパッド16の一部のみが約2000ppm/℃より大きいPTCを有してよく、ゲートバス18および/またはゲート電極34が、大幅に小さいPTC(例えば、2000ppm/℃より小さい、1500ppm/℃より小さい、1000ppm/℃より小さい)を有するか、またはPTC特性を示さなくてよい。ある実施形態において、上記のPTCを有するゲートパッド16、ゲートバス18、および/またはゲート電極34を形成するゲート材料82はまた、25℃で、約2オーム毎スクエア(オーム/スクエア)と約50オーム/スクエアとの間(例えば、約3オーム/スクエアと約6オーム/スクエアとの間)の間の、シート抵抗を有してもよい。さらに、ある実施形態において、ゲートパッド16およびゲート電極34は、実質的に同じシート抵抗を有してよい。
【0023】
図5に示すように、ある実施形態において、ゲート材料82は、最初に、図4に示すデバイス12の表面68の、かなりの部分の上に成膜されてよく、次に、選択的にエッチングされて、デバイスの表面80にゲートネットワーク33を形成してよい。図5では、ゲートネットワーク33のPTC(例えば、ゲートパッド16、ゲートバス18、ゲート電極34のPTC)は、抵抗の記号81によって図式的に表されている。ゲート電極34がPTC特性を示す実施形態については、ゲートネットワーク33は、半導体層の表面の領域の、かなりの部分の上方に位置するため、ゲートネットワーク33は、実質的にすべてのデバイスセル22の近くにある(例えば、近接しているか、または熱的に近接している)。したがって、そのような実施形態については、開示されるゲートネットワーク33の個々の部分(例えば、個々のゲート電極34)は、近くのデバイスセル22の接合部温度の変化に応じて、独立して抵抗率を変えることができる。加えて、図15に関連して以下に説明するように、ある実施形態において、ゲートパッド16は、集積抵抗ネットワークを追加的に含んでよい。この集積抵抗ネットワークは、ゲートネットワーク33の残りの部分と一緒に、ゲート材料82から製造される。
【0024】
ゲートネットワーク33は、一般に、マスキング/リソグラフィー/注入/エッチング工程を使用して製造される。ある実施形態において、これは、高度にドープされた(例えば、n+ドープされ、またはp+ドープされた)polySiが、最初に表面80上に成膜され(例えば、約2500オングストローム(Å)と約4000Åとの間の厚さまで)、その後、シリサイド層が、成膜されて(例えば、約1500オングストローム(Å)と約4000Åとの間の厚さまで)、シリサイドpolySi層が形成され、続いて、このシリサイド・polySi層が、パターン化およびエッチングされ、デバイス12のゲートネットワーク33(例えば、ゲートパッド16、ゲートバス18、およびゲート電極34)が形成される、2ステップ成膜工程を伴う。述べたように、開示されるゲートネットワーク33は、追加的な製造ステップを必要とせず、かつ外部チップ抵抗を使用せずに、典型的な接合部温度の範囲(例えば、25℃と、150℃または175℃と、の間)で、デバイスのピーク電圧が、最大電圧(Vmax)未満に維持され、デバイスのスイッチング損失を低減することを、確実にする。
【0025】
図2に戻ると、図示された工程50は、電力変換デバイス12の表面のかなりの部分の上に誘電体層を形成すること(ブロック60)へと続く。ある実施形態において、ブロック60で成膜される誘電体層は、層間絶縁膜層(interlayer dielectric layer、ILD)と呼ばれる場合がある。続いて、電力変換デバイス12の表面は、選択的にエッチングされて(ブロック62)、デバイスのゲートパッド・バス領域の、ゲートパッド16のゲート金属コンタクト領域36、およびゲートバス18のゲートバス金属コンタクト領域91を露出させ、デバイス12の活性領域20の、デバイスセル22のボディ/ソースコンタクト領域24を露出させてよい。例えば、図6は、ブロック60および62に記載されたステップを行った後の、電力変換デバイス12の表面83の例を示す。図6に示すように、デバイス12の表面83は、デバイス12の表面のかなりの部分(例えば、ゲート電極34、ゲートバス18、ゲートパッド16)の上に配置された、ILD92を含む。さらに、図6では、誘電体の一部(例えば、ゲート誘電体層70)が、選択的に除去されており、後のソースメタライゼーションのために、デバイス12の活性領域20の、デバイスセル22のボディ/ソースコンタクト領域24を露出している。加えて、ILD92の一部が、エッチングされており、後のメタライゼーションのために、デバイス12のゲートパッド・バス領域14において、ゲートパッド16のゲート金属コンタクト領域36を露出するゲートビア86を形成し、ゲートバス18のゲートバス金属コンタクト領域91を露出するバスビア88を形成している。
【0026】
図2に戻ると、図示された工程50は、活性領域の複数のストライプ型のデバイスセル22の、ボディ/ソースコンタクト領域24上にソース金属を成膜し、電力変換デバイス12のゲートパッド・バス領域14において、ゲートパッド16のゲート金属コンタクト領域38上にゲートパッド金属78を直接成膜するとともに、ゲートバス金属コンタクト領域91上にゲートバス金属79を成膜すること(ブロック64)で終了する。例えば、ある実施形態において、ブロック62で露出した、デバイス12の表面83の一部が、成膜された金属と直接接触するように、図6に示すデバイス12の、表面83のかなりの部分の上に、1種類または複数種類の金属(例えば、アルミニウム)を成膜(例えば、蒸着、スパッタ、化学的気相成長法により成膜)してよい。続いて、図7のデバイス12の表面93で示すように、成膜された金属層94は、選択的にエッチングされて、デバイス12のゲートパッド・バス領域14に配置されたゲートパッド金属78を形成し、これを、デバイス12の活性領域20に配置されたソース金属98から、電気的に分離する。加えて、成膜された金属層94は、選択的にエッチングされて、ゲートパッド16上に配置されたゲートパッド金属78を、ゲートバス18上に配置されたゲートバス金属79から、電気的に分離する。ゲートバス金属79は、ゲートバス18のインピーダンスを低減することが理解されてよい。図7に示すように、ゲートパッド金属78は、ワイヤボンド38を介して外部ゲート接続40に電気的に結合され、ソース金属98は、ワイヤボンド102を介して外部ソース接続100に電気的に結合されて、電力変換デバイス12の動作を可能にする。
【0027】
図8Aは、図7に示す電力変換デバイス12の実施形態の、1-1線に沿った断面図を示す。より具体的には、図8Aのデバイス12の断面図は、上記のように、ボディ/ソースコンタクト領域24、ソース領域26、チャネル領域28(ウェル領域104の一部)、およびJFET領域30を含む、複数のデバイスセル22を示す。加えて、図示されたデバイス12は、ゲート誘電体層70によって、ソース領域26、チャネル領域28、およびJFET領域30の、一部から分離され、ILD92によってソース金属98から分離された、ゲート電極34を含む。図示されたソース金属98は、ボディ/ソースコンタクト領域24上に直接ある、第1部分98A(例えば、コンタクト部分98A)と、第1部分98A上に直接配置された、第2部分98Bとを含む。図8Aはさらに、半導体層10が、基板層110の上方(例えば、上に直接)に配置されていることを示す。図示されたデバイス12は、半導体層10とは反対側の、基板層110の表面上に成膜された、ドレイン金属112も含む。ILD92を通してソース金属98に結合され、ゲート誘電体70を通して下地半導体領域に結合された、ゲート電極34に関連する容量が存在し、これは、スイッチング過渡中に充電および放電される、容量性負荷として作用することに、留意すべきである。
【0028】
図8Bは、図7の電力変換デバイス12の実施形態の、代わりに2-2線に沿った、別の断面図を示す。より具体的には、図8Bの断面図は、デバイスの活性領域20と、デバイスのゲートパッド・バス領域14との間の、境界の一部を示す。したがって、図8Bは、活性領域20から延び、ゲートパッド16に電気的かつ物理的に接続され、PTCを有する(例えば、約2000ppm/℃より大きい)同じゲート材料82からすべて形成された、デバイスセル22(図示せず)のゲート電極34を示す。加えて、ゲートビア86は、ゲートパッド金属78が、ゲートパッド16のゲート金属コンタクト領域36に直接接触することを可能にする、ILD92の開口部を提供する。したがって、図示されたゲートネットワーク33の過渡的なゲート電流(またはゲート電荷)の流路は、ゲートパッド金属78、ゲートパッド16、およびゲート電極34を含む。デバイス12のある実施形態において、図8Bに示すように、多数(例えば、数十個または数百個)のMOSFETセル22が、ゲートパッド16に直接、電気的に接続された、ゲート電極34を有してよいことに留意してよい。
【0029】
上記のように、現在のところ、SiC電力変換デバイスついては、Rgを低く、接合部温度(Tj)を高くすることで、電圧オーバーシュートがより顕著になる可能性があり、このことが、スイッチング損失を不所望に増加し、かつ電力変換デバイスおよびその他のシステム構成要素にストレスを与え、早期の破壊的な障害につながる可能性があることが、認識されている。上記のように、ゲートネットワーク33はPTCを有し、したがってTjとともに適切に変化する抵抗を提供するように設計され、デバイスセルのピーク電圧が、デバイスの予想される動作接合部温度の範囲にわたって、所定の最大電圧値(すなわち、Vmax)未満に維持されることを確実にする。例として、以下で説明するように、電力変換デバイス12の通常の(例えば、定格の)動作中に観測される温度に基づいて、所定のTlow(例えば、20℃、25℃、80℃)から所定のThigh(例えば、150℃、175℃)までである。加えて、以下で説明するように、ゲートネットワーク33のゲート材料82は、接合部温度の低下に伴って抵抗が低下するため、このことは、接合部温度が最大動作接合部温度未満(すなわち、Tj<Thigh)のとき、ゲートネットワーク33が、デバイス12のスイッチング損失を大幅に低減することを可能にする。以下で説明するように、ゲートネットワーク33のPTC挙動は、高い接合部温度でゲート抵抗を増加させる、フィードバック機構を提供する。高い接合部温度でゲート抵抗を増加させることに対応して、より高い接合部温度での損失の増加という犠牲を払って、電力変換デバイスのターンオフおよびダイオードのターンオフに関連する、電圧オーバーシュートおよびリンギングが減少する。
【0030】
図9Aは、電力モジュール122の回路120の一部を示す。本明細書で使用される「電力変換システム」は、1個または複数個の電力モジュールを使用して、電力をある形式から別の形式(例えば、DCからAC、ACからDC、DCからDC)に変換するように設計されたシステムを指す。本明細書で使用される「電力モジュール」は、複数の電力変換デバイス(例えば、SiC MOSFET電力変換デバイス12)とともに、それらの動作を助けるための補助素子(例えば、ダイオード、インダクタ、コンデンサ、抵抗)を含む、電力変換システムのサブシステムを指す。図示された回路120は、特定の(一定の)温度で動作するときに特定の(一定の)Rgを可能にする、PTCを有するゲートネットワーク33を備える、電力変換デバイス12(すなわち、SiC MOSFET電力変換デバイス12)の実施形態を含む。図示された回路120では、電力変換デバイス12は、回路120の第1VDC脚部124に直接、電気的に接続され、互いに並列に電気的に接続されているインダクタ128およびダイオード130を介して、回路120の反対側のVDC脚部126に電気的に接続されている。図9Bのゲート電圧信号曲線136によって示されるように、図9Aに示す回路120は、電力変換デバイス12のターンオフ、およびダイオード130の対応するターンオンに関連する。したがって、図9Aは、初期電流を表す矢印132を含み、図示された回路120の電力変換デバイス12のターンオフに関連する、負荷電流を表す矢印134を含む。
【0031】
図10Aおよび10Bは、特定の(一定の)温度でのそれぞれ異なる全等価直列ゲート抵抗(Rg)を可能にする、それぞれ異なるゲートネットワーク33を有する電力変換デバイス12を備える、図9Aに示す回路120の実施形態の、MOSFETのターンオフの波形を示すグラフである。より具体的には、図10Aは、特定のRg(すなわち、R1<R2<R3<R4)を可能にする特定のゲートネットワーク33を有する、電力変換デバイス12をそれぞれ含む、回路120の4つの実施形態についての、時間に対する、電力変換デバイス12のドレイン電流を示す、グラフ140である。図10Bは、増加するRgの値R1、R2、R3およびR4に起因する電圧オーバーシュート(VO-R1、VO-R2、VO-R3、VO-R4)を示す、図10Aで表された回路120の同じ4つの実施形態についての、時間に対する、電力変換デバイス12のドレイン-ソース電圧を示す、グラフ150である。
【0032】
図10Aおよび図10Bで表された回路120の実施形態については、Rgが増加するにつれて、電力変換デバイス12のターンオフ過渡が遅くなる(例えば、より遅いターンオフ電流の時間変化率、より小さいdi/dt)。加えて、電力変換デバイス12のターンオフエネルギー損失(Eoff)は、過渡時間にわたるID(t)×VDS(t)の積分によって与えられるため、Eoffは、Rgの増加とともに増加する。Rgが減少するにつれて、ターンオフ過渡は速度を増す(例えば、電力変換デバイス12のターンオフ電流のより速い時間変化、より大きいdi/dt)。加えて、電圧オーバーシュートは、実質的に、電流転流ループの寄生インダクタンス(Lparasitic)とターンオフ過渡との積(すなわち、Lparasitic×di/dt)によるため、電圧オーバーシュートもRgの減少とともに増加する。したがって、本実施形態については、開示されるゲートネットワーク33は、Eoffを最小化しながらピーク電圧をVmax未満に維持するRgを可能にする、抵抗率を有するように設計されている。例えば、図10Aおよび図10Bで表されたRg値のうち、R3で示されるRg値は、図9Aの回路120の、電力変換デバイス12のターンオフ過渡についてのEoffを最小化しながら、ピーク電圧をVmax未満に維持する。
【0033】
図11Aは、図9Aに示す回路120の一部であり、図11Bの電圧プロットの曲線160によって示されるように、図11Aの回路120は、ダイオード128のターンオフ、およびデバイスセル22の対応するターンオンに関連する。上記の要素に加えて、図11Aに示す回路120は、デバイスセル22がターンオンし、ダイオード130がターンオフするときの、回路120を通る、初期電流を示す矢印160、負荷電流を示す矢印162、およびダイオード回復電流を示す矢印164を含む。図12Aおよび12Bは、特定の(一定の)温度でより高いまたはより低い抵抗率を有する、開示されるゲートネットワーク33を有する結果として、それぞれ異なるRgを有するデバイスセル22を含む、図11Aの回路120のそれぞれ異なる実施形態の、ダイオードのターンオンの波形である。
【0034】
より具体的には、図12Aは、特定のRg(すなわち、R5<R6<R7<R8)を有する電力変換デバイス12を備える、回路120の4つの実施形態についての、時間に対する、(図11Aの)ダイオード130のドレイン電流を示す、グラフ170である。図12Bは、増加するRgの値R5、R6、R7およびR8に起因する電圧オーバーシュート(VO-R5、VO-R6、VO-R7、VO-R8)を示す、図12Aで表された回路120の同じ4つの実施形態についての、時間に対する、ダイオード130のカソード-アノード電圧(または「逆」)を示す、グラフ180である。図示されているように、Rgが増加するにつれて、電力変換デバイス12のターンオン過渡は、遅くなる(例えば、より遅い、ダイオード130のターンオフ電流の時間変化率)。Rgが減少するにつれて、ターンオフ過渡は速度を増し(例えば、ダイオード130のターンオフ電流のより速い時間変化)、電流転流ループの寄生インダクタンス(Lparasitic)により、Lparasitic×di/dtに応じて電圧オーバーシュートが増加する。したがって、本実施形態については、ゲートネットワーク33の抵抗率の範囲は、一般に、Eoffを最小化しながらピーク電圧をVmax未満に維持するRgを可能にするように、選択されている。例えば、図12Aおよび図12Bで表されたRg値のうち、R7で示されるRg値は、ダイオード130のEoffを最小化しながら、ダイオード130のピーク電圧をVmax(例えば、ダイオード130の定格電圧)未満に維持する。一般に、図10Aおよび図10Bで表されたR1、R2、R3、およびR4は、図12Aおよび図12Bで表されたR5、R6、R7、およびR8と同じでなくてよいことに留意してよい。換言すれば、開示されるゲートネットワーク33は、図10Aおよび図10Bに示すデバイスセル22のターンオフの波形と、図12Aおよび図12Bに示すダイオード130のターンオフの波形と、の両方に基づく適切なRgを可能にするために、TlowとThighとの間の温度範囲にわたって、特定の範囲の抵抗率を有するように、設計されることができることが理解されてよい。
【0035】
図13は、開示されるゲートネットワーク33を含む電力変換デバイス12の実施形態についての、度C(℃)で表した接合部温度(すなわち、Tj)の関数としての、正規化されたRg(すなわち、Rg/25℃でのRg)を示す、グラフ190である。ゲートネットワーク33のPTC特性およびPTC挙動により、Rgは、曲線194によって示されるように、電力変換デバイス12のTjの増加とともに増加し、電力変換デバイス12のTjの減少とともに減少する。例えば、ある実施形態において、曲線194によって示されるように、Tjが動作範囲(例えば、破線のボックス192によって示されるように、25℃のTlowと150℃のThighとの間のΔT)内で増減するにつれて、Rgは、温度変化に応じて、約25%より大きく増加または減少する。ある実施形態において、図13で表されたデバイス12の実施形態の、開示されるゲートネットワーク33は、TlowとThighとの間で、約25%と約40%との間(例えば、約30%と40%との間)のRgの増加を可能にして、開示されているように、スイッチング損失を低減する。
【0036】
本実施形態については、ゲートネットワーク33は、ゲートネットワーク33の構成要素(例えば、ゲートパッド16、ゲート電極34)を製造するために使用される構造および材料によって決定される、正の抵抗温度係数値(PTC)を有する。例えば、ゲートネットワーク33が、金属シリサイド/poly Si層(例えば、n+ドープされたpolySi上の、TaSi)で構築される場合、金属シリサイド層およびpoly Si層の相対的な厚さは、ゲートネットワーク33のPTC値に影響を及ぼす。例えば、ある実施形態において、ゲートネットワーク33は、約2000ppm/℃より大きい、PTCまたはPTC値を有する。ある実施形態において、ゲートネットワーク33の、PTCまたはPTC値は、約2250ppm/℃より大きくてよい(例えば、約2400ppm/℃と3200ppm/℃との間)。比較すると、poly-Si抵抗のPTCは、通常のドーピングでの負の値から、退化性ドーピングでの最大数百ppm/℃までの範囲とすることができる。したがって、特定の開示されるゲート材料82(例えば、特定の金属シリサイド/poly-Si層)は、より低いシート抵抗値と、poly-Si単独のものの10倍またはそれより大きいPTC値と、の両方を提供することが理解されてよい。
【0037】
図14は、本アプローチの電力変換デバイス12の実施形態について、電圧オーバーシュート(%)および(任意の単位の)スイッチング損失の両方を、(任意の単位の)Rgの関数として示す、二重y軸のx-yグラフ200である。曲線202は、動作範囲の最小接合部温度Tlow(例えば、25℃)での、電力変換デバイス12の電圧オーバーシュートを表し、一方、曲線204は、動作範囲の最大接合部温度Thigh(例、150℃)での、デバイス12の電圧オーバーシュートを表す。同様に、曲線206は、動作範囲の最小接合部温度(Tlow)での、デバイス12のスイッチング損失を表し、一方、曲線208は、動作範囲の最大接合部温度(Thigh)での、デバイス12のスイッチング損失を表す。
【0038】
上記を念頭に置いて、比較のデバイス(例えば、ゲートネットワークがPTCを有しない、図1の電力変換デバイス12と実質的に同様の電力変換デバイス)は、接合部温度がTlowであるか、Thighであるかにかかわらず、破線210によって示されるように、実質的に一定のRgを有する。したがって、比較の電力変換デバイス(一定のRgを有する)については、Tlowでの電圧オーバーシュートは、破線212で示され、Thighでの電圧オーバーシュートは、破線214で示される(デバイスの定格最大電圧Vmaxに対応する)。同様に、比較の電力変換デバイス(一定のRgを有する)については、Tlowでのスイッチング損失は、破線216で示され、一方、Thighでのスイッチング損失は、破線218で示される。
【0039】
これを念頭に置いて、本アプローチの実施形態について、開示されるゲートネットワーク33は、矢印220によって示されるように、Thigh未満の接合部温度(例えば、TlowとThighとの間)でのRgの減少を伴う、可変のRgを可能にする。すなわち、ゲートネットワーク33の1つまたは複数の構成要素が、PTCを有するから、デバイス12のRgは、Tlowでの最小のRg(破線222によって示される)と、Thighでの最大のRg(破線210によって示される)と、の間で変化する。図14で表された比較については、Thighでの本アプローチの電力変換デバイス12のRg(破線210によって示される)は、一定のRgを有する、比較の電力変換デバイスのものと、実質的に同じであることに留意してよい。その結果、電力変換デバイス12の、表された実施形態の、Thighでの電圧オーバーシュートおよびスイッチング損失は、比較のデバイス12の、Thighでの電圧オーバーシュートおよびスイッチング損失と、実質的に同じである。換言すれば、破線214によって示される、Thighでの電圧オーバーシュート、および破線218によって示される、Thighでのスイッチング損失は、Thighで動作するとき、本アプローチの電力変換デバイス12と、一定のRgを有する比較のデバイスとの両方についての、電圧オーバーシュートおよびスイッチング損失を示す。したがって、図示されているように、本アプローチの電力変換デバイス12、および比較の電力変換デバイス(一定のRgを有する)は、両方とも、TlowとThighとの間のすべての温度で、電圧オーバーシュートを、最大許容電圧オーバーシュート制限未満(例えば、Vmax未満)に維持する。
【0040】
図14で表された本開示の電力変換デバイス12の実施形態については、Tlowでの電圧オーバーシュートは、破線224によって示され、Tlowでのスイッチング損失は、破線226によって示される。デバイス12の、表された実施形態については、矢印228によって示されるように、Thigh未満の接合部温度(Tj)でのRgの減少は、Tlowでの比較のデバイスと比べて、わずかな電圧オーバーシュート(%)の増加をもたらす。しかし、矢印230によって示されるように、Tj<Thighの場合のRgの減少は、Tlowでの比較のデバイスと比べて、本アプローチのデバイス12の、スイッチング損失の大幅な減少ももたらす。換言すれば、現在のところ、最高動作温度より低いすべての接合部温度(すなわち、Tj<Thighの場合)で一定のRgを有する、比較のデバイスは、スイッチングが実際に必要とされるよりも遅くなり、より大きなスイッチング損失をもたらすであろうということが認識されている。対照的に、開示されるゲートネットワーク33は、電力変換デバイス12の本実施形態が、最大動作温度より低いすべての接合部温度で(すなわち、Tj<Thighで)、より速くスイッチングすることを可能にし、それによりスイッチング損失を低減する。さらに、本デバイス12の実施形態については、接合部温度が最大動作温度に近づくにつれて(すなわち、TjがThighに近づくにつれて)、開示されるゲート材料82は、Rgが増加し、電力変換デバイス12のスイッチング速度を遅くして、電圧オーバーシュートを最小化し、デバイス12の安全動作領域を拡大する。したがって、デバイス12の開示されるゲートネットワーク33は、接合部温度がThighに達するとき、比較の電力変換デバイスと同様の性能を維持し、一方、接合部温度がThighより低いとき、スイッチング損失を大幅に低減することにより、比較の電力変換デバイスと比べて、劇的に改善された性能を示す。
【0041】
ある実施形態において、本技術は、すべての目的について全体が参照により本明細書に組み込まれる、「INTEGRATED GATE RESISTORS FOR SEMICONDUCTOR POWER CONVERSION DEVICES」という名称の、2017年5月18日に出願された、同時係属中の米国特許出願第15/599,119号に開示の技術と組み合わせることができるということに、さらに留意すべきである。すなわち、典型的な半導体電力変換デバイスでは、適切な電圧パルスがゲートパッドに印加されるとき、ゲートパッドにより近接する(例えば、ゲートパッドへのより短い電気経路を有する)デバイスセルが、ゲートパッドからより遠くに配置されたデバイスセルよりも速く応答(例えば、活性化または非活性化、電流の導通または電流の流れの遮断、ターンオンまたはターンオフ)する場合があり、その結果生じる伝播遅延の差が、電力変換デバイスの電流/電圧分布の望ましくない局所化を生む可能性があることが、理解されてよい。
【0042】
これを念頭に置いて、ある実施形態において、上記のゲートネットワークに加えて、電力変換デバイスは、集積抵抗ネットワークを有するゲートパッドを含んでよい。この集積抵抗ネットワークは、一般に、電力変換デバイスのそれぞれ異なる領域に配置された、ゲート金属コンタクト領域とデバイスセルのゲート電極との間に、それぞれ異なる抵抗(例えば、最少の2つの異なる抵抗値)を提供する。集積抵抗ネットワークは、複数の集積抵抗を含む。ここで、各集積抵抗は、その集積抵抗を介して外部ゲート接続に電気的に結合されたゲート電極を備えるデバイスセルのグループの、スイッチング速度を適切に調節(例えば、低減)するそれぞれの抵抗を有する寸法になっている。したがって、集積抵抗ネットワークは、コスト、複雑さ、および外部チップ抵抗の寸法の増加を回避しながら、ゲートパッドに対するデバイスセルの位置にかかわらず、デバイスセルが、同期して(例えば、最小限の伝播遅延差で)動作することを確実にすることができる。したがって、現在のところ、本開示のゲート材料は、集積抵抗ネットワーク、およびPTC特性を有する開示されるゲートネットワークの構成要素の両方の製造を可能にすることが認識されている。例えば、ある実施形態において、電力変換デバイスのゲートネットワークは、集積抵抗ネットワークを有するゲートパッドを含んでよく、PTC特性を示す1つまたは複数の構成要素(例えば、ゲート電極、ガスバス、ゲートパッドの一部)も含んでよい。
【0043】
具体的な例として、図15は、領域A1、A2、A3、およびA4に配置されたゲート電極(図示せず)を有するデバイスセルを含む、電力変換デバイス12の実施形態の表面の概略図である。図示された実施形態については、領域A1のデバイスセルのゲート電極は、ゲートバス18Aを介してゲートパッド16に電気的に結合され、領域A3のデバイスセルのゲート電極は、ゲートバス18Bを介してゲートパッド16に電気的に結合される。一方、図8Bについての上記のように、領域A2およびA4は、ゲートパッド16に直接、電気的に結合される。さらに、ゲートパッド16を中心からずらす(すなわち、デバイス12の表面の中央に配置しない)ことが、設計の見込みからは有利であり得ることに留意してよい。しかし、図15に示す中心からずれたゲートパッド16は、開示される集積抵抗ネットワーク190の恩恵を受けることなく、より大きな伝播遅延差を示すことにも留意してよい。したがって、開示される集積抵抗ネットワーク190は、電力変換デバイス12のデバイスセル22の伝播遅延差を低減しながら、ゲートパッド16およびゲートバス18の配置の、より高い自由度を可能にすることが理解されるべきである。
【0044】
図15の拡大部分に示すように、図示された実施形態のゲートパッド16は、少なくとも2つの異なるそれぞれの抵抗値を有する、複数の集積抵抗192(すなわち、集積抵抗R1、R2、R3、およびR4と標識される)を備える集積抵抗ネットワーク190を含む。より具体的には、PTC(例えば、約2000ppm/℃より大きい)を有するゲート材料82が、成膜およびパターン化されるとき(例えば、図2のブロック56)、ゲートパッド・バス領域14のゲート材料82の追加的な部分が、除去される。これらのエッチングされた部分194は、ゲート材料82の連続性を断ち、ゲート金属コンタクト領域36に隣接して配置された集積抵抗ネットワーク190を含むゲートパッド16が、結果として得られる。集積抵抗R1、R2、R3、およびR4はそれぞれ、並列に電気的に接続された1つまたは複数の抵抗セグメント198(例えば、抵抗性経路198)を含むか、またはそれらからなる。加えて、ゲートネットワーク33全体が、一般に、PTC特性を有するゲート材料82で作られているため、ある実施形態において、ゲートパッド16の一部(例えば、抵抗セグメント198、抵抗ネットワーク190の残りの部分)、ゲート電極、またはそれらの組み合わせは、PTC特性を示し得ることも、理解されてよい。したがって、ある実施形態において、集積抵抗ネットワーク190を含む、開示されるゲートネットワーク33は、電力変換デバイスのそれぞれ異なる領域に配置されたデバイスセルが、同期して動作することを可能にし、一方でまた、比較的低い温度(Tj<Thigh)で動作しているデバイスセルのスイッチング損失を低減し、かつデバイスセルのピーク電圧が、最大電圧定格(Vmax)未満に維持されることを確実にするものでもある。
【0045】
本開示の技術的効果には、ゲートパッドおよび/またはゲート電極が、正の抵抗温度係数(PTC、正のTCR)を有する材料で作られているような、ゲートネットワークを含む、半導体電力変換デバイスの製造が含まれる。開示されるPTCゲート材料のPTC特性は、動作接合部温度の範囲(例えば、約25℃のTlowと約150℃のThighとの間)で、可変の全等価直列ゲート抵抗(Rg)を提供する。以下に詳細に説明するように、開示されるゲートネットワークは、電力変換デバイスのデバイスセルに熱的に近接しており、近くのデバイスセルの接合部温度の変化に応じて、抵抗率を変える。ゲートネットワークの実施形態は、特に接合部温度がThighに達するとき、デバイスセルのピーク電圧が、最大電圧(Vmax)未満に維持されることを確実にし、一方で、接合部温度がThigh未満のとき、デバイスセルのスイッチング損失を低減するために、適切な抵抗率を有するように設計されている。加えて、ある実施形態において、電力変換デバイスは、ゲートパッドに対するデバイスセルの位置にかかわらず、電力変換デバイスのデバイスセルの伝播遅延差を最小化するような寸法になっている複数の集積抵抗を備える、集積抵抗ネットワークを含む、ゲートパッドを追加的に有してもよい。
【0046】
この書面による説明は、例を用いて、最良の態様を含め本発明を開示し、また、あらゆるデバイスまたはシステムを作製および使用し、あらゆる組み込まれた方法を行うことを含め、あらゆる当業者が、本発明を実施することができるようにもする。本発明の特許を受けることができる範囲は、請求項によって定められ、当業者が思いつく他の例を含み得る。そのような他の例は、それらが、請求項の文字通りの言葉との違いを有しない構造要素を備える場合、またはそれらが、請求項の文字通りの言葉との違いに実質がない、同等の構造要素を含む場合、請求項の範囲内にあることが意図されている。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15