(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】表示装置およびアイコンの故障判定方法
(51)【国際特許分類】
G09G 5/00 20060101AFI20230724BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20230724BHJP
G09G 5/377 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
G09G5/00 X
B60K35/00 Z
G09G5/377 100
G09G5/00 550X
(21)【出願番号】P 2019077498
(22)【出願日】2019-04-16
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】小幡 喜重郎
【審査官】西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-516212(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003669(WO,A1)
【文献】特開2013-232091(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015012889(DE,A1)
【文献】国際公開第2015/097855(WO,A1)
【文献】特開2012-175183(JP,A)
【文献】特開平11-110547(JP,A)
【文献】国際公開第2018/034214(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 5/00 - 5/42
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイコンを表示する機能を備えた表示装置であって、
n×mの画素サイズを有するアイコンの画像データを生成する生成手段と、
生成されたアイコンの画像データを背景データと合成する合成手段と、
前記合成手段によって合成された画像データから、n×mの画素サイズを有するアイコンの画像データを切り出す切り出し手段と、
前記合成手段によって合成された画像データを表示する表示手段と、
n×mの画素サイズを有し、かつ背景が黒画面となるアイコンの基準画像データを記憶する記憶手段と、
前記生成手段によって生成されたアイコンの画像データに対応するアイコンの基準画像データを前記記憶手段から読出し、前記切り出されたアイコンの
n×mの画素サイズを有する画像データと前記記憶手段から読み出されたアイコンの
背景が黒画面となるn×mの画素サイズを有する基準画像データとの各画素間の相関値を計算する計算手段と、
前記相関値に基づき前記合成手段で合成されたアイコンの画像データの故障を判定する判定手段と、
を有する表示装置。
【請求項2】
表示装置はさらに、前記判定手段の判定結果に基づき前記表示手段に故障を表示させる表示制御手段とを含む、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記生成手段は、車両の警告灯に関するアイコンの画像データを生成し、前記背景データは、車両のインスツルメンツパネルのメータ類を表す画像データを含む、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記計算手段は、正規化相互相関係数を用いて前記切り出されたアイコンの画像データと前記アイコンの基準画像データの類似度を算出する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
表示装置に表示されるアイコンの故障判定方法であって、
n×mの画素サイズを有するアイコンの画像データを生成するステップと、
前記生成されたアイコンの画像データを背景データと合成するステップと、
前記合成された画像データから、n×mの画素サイズを有するアイコンの画像データを切り出すステップと、
記憶手段に格納された、n×mの画素サイズを有し、かつ背景が黒画面となるアイコンの基準画像データを記憶する記憶手段から、前記生成するステップにより生成されたアイコンの画像データに対応するアイコンの基準画像データを前記記憶手段から読み出すステップと、
前記切り出されたアイコンの
n×mの画素サイズを有する画像データと前記読み出されたアイコンの
背景が黒画面となるn×mの画素サイズを有する基準画像データとの各画素間の相関値を計算するステップと、
前記相関値に基づき前記合成されたアイコンの画像データの故障を判定するステップと、
を含む故障判定方法。
【請求項6】
前記生成するステップは、車両の警告灯に関するアイコンの画像データを生成し、前記背景データは、車両のインスツルメンツパネルのメータ類を表す画像データを含む、請求項5に記載の故障判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイコンの故障判定に関し、特に、車両のインスツルメンツパネル等に表示される警告灯のアイコンの故障判定に関する。
【背景技術】
【0002】
インスツルメンツパネル内に配置された速度計、タコメータ、燃料計などの針式メータを、液晶パネルに置き換える車両が増えつつある。このようなメータパネル内の警告灯表示に関する画像データは、機能安全対象となり、つまり、間違った表示は許されず、アイコンの画像データには故障診断が求められる。画像データの診断に関し、例えば、特許文献1は、入力画像と出力画像とを比較することで異常画像を迅速に検知する方法を開示している。また、特許文献2は、印刷用の画像処理が施された画像データと、この画像データを印刷したときの画像の読取りデータとを比較することで印刷された画像の良否を判定する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-345091号公報
【文献】特開2013-46092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1に示すように、車両のインスツルメンツパネルPには、車両の走行や運転操作等に関する異常や故障(例えば、シートベルト着用、ガソリン残量、半ドアなど)を警告するための警告灯が表示される。インスツルメンツパネルPを液晶パネルで構成する場合、警告灯は、法令や規格で決められた固定のアイコンの画像データを液晶ドットパターンで表示することにより行われる。警告灯の故障判定は、警告灯のアイコンが液晶パネルに正しく表示されているか否かを検査することが一般的であり、例えば、チェックサムやCRCなどの検査符号を用いて、アイコンの画像データのビット誤りの有無を判定している。正しいアイコンの画像データから生成されたCRCと、描画処理後のアイコンの画像データから生成されたCRCとを比較し、両者が異なる場合にはビット誤りがあると判定する。ビット誤りがあると判定された場合には、例えば、液晶パネル全体を黒画面にする等により、運転者にその故障の存在を明確に伝えるような実装が行われる。
【0005】
ところが、最近のメータ類のパネル表示では、柔軟なデザインが求められ、警告灯の背面に、デザインが描画されるケースが出てきた。
図2(A)は、黒画面の背景に警告灯のアイコンが合成された一般的な警告灯表示10であるが、このような黒画面の背景に、
図2(B)に示すように、模様やグラデーションが描画される警告灯表示20が使用されることがあり、しかもこの背景画像は、動作モード、例えば昼間または夜間で変更される場合もある。このような場合、背景データが変化すると、背景データに合成される警告灯のアイコンの画像データが影響を受け、CRCによるビット単位の誤り検出では、アイコンの正しい故障判定をすることができなくなる、という課題がある。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決し、警告灯などのアイコンの故障判定を正確に行うことができる表示装置およびアイコンの故障判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る表示装置は、アイコンを表示する機能を備えたものであって、アイコンの画像データを生成する生成手段と、生成されたアイコンの画像データを背景データと合成する合成手段と、前記合成手段によって合成された画像データを表示する表示手段と、アイコンの基準画像データを記憶する記憶手段と、前記合成手段により合成された画像データから切り出されたアイコンの画像データと前記記憶手段から読み出されたアイコンの基準画像データとの相関値を計算する計算手段と、前記相関値に基づき前記合成手段で合成されたアイコンの画像データの故障を判定する判定手段とを有する。
【0008】
ある実施態様では、表示装置はさらに、前記判定手段の判定結果に基づき前記表示手段に故障を表示させる表示制御手段とを含む。ある実施態様では、前記記生成手段は、車両の警告灯に関するアイコンの画像データを生成し、前記背景データは、車両のインスツルメンツパネルのメータ類を表す画像データを含む。ある実施態様では、前記アイコンの基準用画像データは、背景が黒画面である。
【0009】
本発明に係る表示装置に表示されるアイコンの故障判定方法は、アイコンの画像データを生成するステップと、前記生成されたアイコンの画像データを背景データと合成するステップと、前記合成された画像データから切り出されたアイコンの画像データとアイコンの基準画像データとの相関値を計算するステップと、前記相関値に基づき前記合成されたアイコンの画像データの故障を判定するステップとを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、合成された画像データから切り出されたアイコンの画像データとアイコンの基準画像データとの相関値に基づき合成されたアイコンの画像データの故障を判定するようにしたので、アイコンの画像データの背景部分の画像が多少変わったとしても、それを許容してアイコンの画像データが正しいものと判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】車両のインスツルメンツパネルの例を示す示である。
【
図2】
図2(A)は、背景が黒画面の警告灯のアイコンの例を示し、
図2(B)は、背景がデザイン化された警告灯のアイコンの例を示す図である。
【
図3】本発明の実施例に係る車載用表示装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4(A)は、背景画像データD1の例示、
図4(B)は、描画用のアイコン画像データD2の例示、
図4(C)は、合成された画像データD3の例示、
図4(E)は、切り出されたアイコン画像データD4の例示、
図4(E)は、基準用の正解アイコン画像データD5の例示である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本発明に係る表示装置は、液晶等のディスプレイにアイコン等の画像データを表示する機能を備えた電子装置、コンピュータ装置、車載装置、多機能型携帯端末装置、タブレット端末などであることができる。表示媒体は、特に限定されないが、例えば、液晶パネル、有機ELパネル、プロジェクタなどである。
【実施例】
【0013】
以下の実施例では、インスツルメンツパネルを液晶パネルで構成し、そこにメータ類や警告灯などを表示する機能を備えた車載用表示装置を例示する。
図3は、本発明の実施例に係る車載用表示装置100の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、車載用表示装置100は、背景画像生成部110、アイコン画像生成部120、合成部130、アイコン画像切出し部140、表示制御部150、液晶パネル160、正解アイコンデータ記憶部170、相関計算部180および比較部190を含んで構成される。液晶パネル160は、インスツルメンツパネルP(
図1を参照)を構成し、液晶パネル160には、スピードメーター、タコメータ、燃料計、ラジエータ温度計などのメータ類に加えて、車両の走行や運転操作の異常や警告を表す警告灯などが表示される。また、
図3に示す各部の構成は、メモリ、プロセッサ、マイクロコントローラ、ASIC、ロジック等のハードウエアや、ハードウエアに実装されるファームウエアやプログラム等のソフトウエアにより実施される。
【0014】
背景画像生成部110は、インスツルメンツパネルPに表示するメータ類の背景画像データD1を生成する。ここでは、メータ類の画像上に警告灯のアイコンを合成するため、メータ類の画像を背景画像と称している。背景画像生成部110は、ここには図示しないECU(Electronic Control Unit)またはECM(Engine Control Module)からの指示S1に応答して、例えば
図4(A)に示すように、車速やエンジンの回転数などの車両の状態を表す背景画像データD1を生成する。背景画像データD1は、例えば、RGBの三原色の階調を8ビットで規定する24ビットの画像データから構成される。背景画像生成部110によって生成された背景画像データD1は合成部130へ提供される。
【0015】
アイコン画像生成部120は、インスツルメンツパネルPに表示する警告灯に関するアイコンの画像データD2を生成する。アイコン画像生成部120は、ECUやECMからの指示S2に応答して、例えば
図4(B)に示すように、警告灯を表すアイコンの画像データD2を生成する。アイコンの画像データD2は、法令や規格に則った異常や警告を表す画像を含み、決められたフォーマットで構成される。例えば、アイコンの画像データD2は、RGBの三原色の階調を8ビットで規定する24ビットの画像データから構成され、n×mの画素サイズを有する。アイコン画像生成部120によって生成されるアイコンの画像データD2には、
図2(A)に示すように背景が黒画面のものや、
図2(B)に示すように背景に模様やグラデーションが施されたものが含まれる。アイコン画像生成部120によって生成されたアイコンの画像データD2は合成部130へ提供される。
【0016】
合成部130は、背景画像データD1とアイコンの画像データD2とを受け取り、両者を合成し、液晶パネル160で描画するための画像データD3を作成する。
図4(C)に、合成された画像データD3を例示する。この画像データD3は、液晶パネル160で描画される表示データである。
【0017】
アイコン画像切出し部140は、合成された画像データD3からアイコンの画像データD4の切り出しを行う。切り出すサイズは、合成前のアイコンの画像データの画素サイズと同じである。
図4(D)に、切り出されたアイコンの画像データを例示する。切り出されたアイコンの画像データD4は、背景画像データD1と合成されているため、合成前のアイコンの画像データD2と必ずしも同一とは限らない。例えば、
図2(A)に示すように、アイコンの画像データの背景が黒画面であれば、その黒画面は、背景画像による影響を受けないため合成によって変化しないが、アイコンの背景が黒画面以外の背景画像であって、背景画像データD1を透過する色であったり、あるいは、背景画像データD1と混合する色に変化されたり、あるいは昼夜モードによって輝度が変化されれば、アイコンの警告や異常を表す画像に変化が無くてもその背景が変わる可能性がある。
【0018】
合成部130で合成された画像データD3は、表示制御部150に提供され、表示制御部150は、画像データD3により液晶パネル160を駆動する。これにより、運転者は、インスツルメンツパネルPに表示されたメータ類や警告灯などを視認する。
【0019】
正解アイコンデータ記憶部170は、基準用の正解アイコン画像データを格納する。基準用の正解アイコン画像データは、アイコン画像生成部120で生成されるアイコンの画像データと同じフォーマットで構成される。正解アイコン画像データは、合成されてもその背景が変化しないように、
図2(A)に示すように背景が黒画面の画像データである。アイコン画像生成部120が複数種の警告灯に関するアイコンの画像データを生成する場合には、正解アイコンデータ記憶部170は、それに対応して複数種の警告灯に関する正解アイコン画像データを記憶する。正解アイコンデータ記憶部170は、ECU/ECMからの指示S2によってアイコン画像生成部120がアイコンの画像を生成するとき、これに対応する基準用の正解アイコン画像データを読出し、これを相関計算部180に提供する。
図4(E)に、読み出された正解アイコン画像データを例示する。
【0020】
相関計算部180は、アイコン画像切出し部140で切り出されたアイコンの画像データD4と、正解アイコンデータ記憶部170から読み出された正解アイコン画像データD5を受け取り、両者の相関値または相関係数を計算する。2つの画像データの相関(類似度)は、例えば、2次元の内積計算(正規化相互相関係数の算出)を使うことができ、2つの画像データの各画素の輝度値が類似するほど相関値が大きくなり、画像が完全一致した場合には「1」、全く異なる場合は「0」の相関値を出力し、その出力値の範囲は、最小値0~最大値1までの範囲の連続値となる。
【0021】
比較部190は、相関計算部180からの出力値と判定閾値とを比較し、相関計算の出力値が閾値以上であれば、切り出されたアイコンの画像データは正しいと判定する。他方、出力値が閾値未満であれば、切り出されたアイコンの画像データは故障していると判定する。判定結果は、例えば、表示制御部150へ提供され、表示制御部150は、液晶パネル全体を黒画面にして運転者にアイコンの故障を通知する。
【0022】
このように本実施例によれば、従来のビット単位でアイコンの画像データの誤りを検出する方法とは異なり、対比するアイコンの画像データの相関値または相関係数を計算することで両者の類似度を求めるようにしたので、アイコンの画像データの背景部分が描画処理によって多少変わったとしても、警告灯のアイコンを運転者が見た際に、警告灯表示として判別可能な程度の変化であれば、判定閾値の調整によりそれを許容してアイコンの画像データが正しいと判定することが可能になる。また、合成部130とアイコン画像切出し部140との間に、不可逆圧縮/伸張のアルゴリズムが挿入されたとしても、両者の類似度からアイコンの画像データが正しいと判定することができる。さらに、アイコン画像生成部120によって生成されたアイコン画像データそのものに故障があった場合には、切り出されたアイコンの画像データD4にも生成の故障が反映されるため、アイコン画像生成部120によるアイコンの故障も検出することができる。
【0023】
なお、上記の例では、相関計算部180は、正規化相互相関係数を用いて2つの画像の類似度(相関)を算出したが、類似度の算出方法は、これ以外にも、例えば、画素値の差分の二乗和(SSD)、画素値の差分の絶対値の和(SAD)などの方法を用いることも可能である。
【0024】
さらに上記実施例では、インスツルメンツパネル内に警告灯のアイコンを表示する例を示したが、本発明は、これに限定されることなく、他の情報に関するアイコンの故障判定にも適用することができる。さらに上記実施例は、アイコンをインスツルメンツパネルに表示する例を示したが、本発明は、これに限定されることなく、インスツルメンツパネル以外の場所に設置されたディスプレイにアイコンを表示する表示装置にも適用することができる。
【0025】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0026】
100:車載用表示装置 110;背景画像生成部
120:アイコン画像生成部 130:合成部
140:アイコン画像切出し部 150:表示制御部
160:液晶パネル 170正解アイコンデータ記憶部
180:層間計算部 190:比較部