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特許7317467光スイッチング要素において使用するための光スイッチング層
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】光スイッチング要素において使用するための光スイッチング層
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1347 20060101AFI20230724BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20230724BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20230724BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20230724BHJP
   G02F 1/137 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
G02F1/1347
G02F1/13 500
G02F1/13 505
G02F1/1334
G02F1/1337 525
G02F1/137
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017556530
(86)(22)【出願日】2016-04-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2016000546
(87)【国際公開番号】W WO2016173693
(87)【国際公開日】2016-11-03
【審査請求日】2019-03-29
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】15001239.1
(32)【優先日】2015-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593033142
【氏名又は名称】メルク・パテント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent GmbH
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250, 64293 Darmstadt
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ユンゲ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス バイアー
(72)【発明者】
【氏名】ティース デ ヨング
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】松川 直樹
【審判官】金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】特表平6-507505(JP,A)
【文献】特表2014-533375(JP,A)
【文献】特開平6-317795(JP,A)
【文献】特表2002-541515(JP,A)
【文献】特開2002-333610(JP,A)
【文献】特開2014-122262(JP,A)
【文献】特開2014-81630(JP,A)
【文献】国際公開第2015/055274(WO,A1)
【文献】Guglielmo Macrelli,Optical characterization of commercial large area liquid crystal devices,Solar Energy Materials and Solar Cells,1995年,39,123-131
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/13
G02F1/1333-1/1337
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング層Sを含むスイッチング要素を含む、窓要素であって、
前記スイッチング層Sは、複数の切替状態を有するとともに、
- スイッチング層の上面USLPおよびスイッチング層の下面LSLPと、
- USLPとLSLPとの間に配置された液晶媒体と、
を含み、
前記切替状態のうちの1つである散乱状態において、前記スイッチング層の上面USLPから入射方向D(=)で入射した平行光線が、前記スイッチング層によって偏向されて前記スイッチング層の下面LSLPから前方散乱方向D(<)に散乱され、前方散乱された光の下記式(1)で表される拡散透過率Tは20%を上回り、
=(I≧2.5°/I)×100[%] (1)
(ここで、式(1)において、I≧2.5°は、散乱角が2.5°以上である大角散乱の強度を表し、かつIは、全透過強度を表す。)、
もう1つの切替状態での前記拡散透過率Tが、5%未満であり、
前記スイッチング層Sが、そのいずれの切替状態であっても、前記平行光線の45%未満を前記スイッチング層の上面USLPから後方散乱方向D(>)に散乱させ、
前記液晶媒体は、0.1質量%~10.0質量%の範囲の液晶媒体における質量分率wを有するキラルドーパントを含有し、かつ90℃を上回る透明点を有し、かつポリマー分を含まない、かつ
前記液晶媒体の分子のピッチpは、1μm~5μmであり、かつ
前記スイッチング層Sが第1の層系列で配置されており、前記第1の層系列が、外側から内側に向かって
- 外側基材層、
- 外側導電層、
- 前記スイッチング層S、
- 内側導電層および
- 内側基材層
を含み、かつ
が20%を上回る前記切替状態において、前記液晶媒体の分子がキラルネマチック相で存在し、かつ前記キラルネマチック相が、ポリドメイン状に配列された相である、
窓要素。
【請求項2】
前記スイッチング層Sが平均屈折率nを有し、かつ前記液晶媒体の分子がピッチpを有し、積n×pが0.8μmを上回ることを特徴とする、請求項1記載の窓要素。
【請求項3】
前記キラルドーパントがらせん誘起力β=(p×c)-1μm-1を有し、ここで、pは、前記液晶媒体の分子のピッチをμmで示したものであり、cは、前記液晶媒体全体を基準とする前記キラルドーパントの濃度を質量%で示したものであり、βは5μm-1を上回ることを特徴とする、請求項1または2記載の窓要素。
【請求項4】
少なくとも1種の2色性色素を、前記液晶媒体の質量を基準として0.01質量%~25質量%の範囲の色素濃度で含むことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の窓要素。
【請求項5】
前記スイッチング層Sが3μm~200μmの厚さを有し、ある1つの切替状態で550nmの光線の波長で、全透過率Ttotalが60%~100%でありかつ前記拡散透過率Tが25%~100%であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の窓要素。
【請求項6】
UV光を遮断する1つまたは複数の層を含むことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の窓要素。
【請求項7】
前記スイッチング要素が、前記第1の層系列の前記外側基材層上または前記第1の層系列の前記内側基材層上に第2の層系列を有し、前記第2の層系列が、外側から内側に向かって
- 基材層、
- 導電層、
- 液晶媒体を含むスイッチング層、
- 導電層および
- 基材層
を含むことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の窓要素。
【請求項8】
前記スイッチング要素が、前記第1の層系列の前記外側基材層上または前記第1の層系列の前記内側基材層上に第3の層系列を有し、前記第3の層系列が、外側から内側に向かって
- 基材層、
- 導電層、
- 液晶媒体を含むスイッチング層、
- 導電層、
- 基材層、
- 導電層、
- 液晶媒体を含むスイッチング層、
- 導電層および
- 基材層
を含むことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の窓要素。
【請求項9】
前記第2の層系列のスイッチング層の前記液晶媒体が、少なくとも1種の2色性色素を、前記それぞれの液晶媒体の質量を基準として0.01質量%~25質量%の範囲の色素濃度で有することを特徴とする、請求項記載の窓要素。
【請求項10】
前記第3の層系列のスイッチング層の一方もしくは双方の前記液晶媒体が、少なくとも1種の2色性色素を、前記それぞれの液晶媒体の質量を基準として0.01質量%~25質量%の範囲の色素濃度で有することを特徴とする、請求項記載の窓要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング要素において使用するためのスイッチング層、該スイッチング層を含むスイッチング要素および該スイッチング要素を含む窓要素に関する。
【0002】
国際公開第2014/180525号(WO 2014/180525 A1)には、エネルギーの面の通過を調節するための装置を含む窓であって、該装置が、少なくとも2つのスイッチング層S(1)およびS(2)を含み、該スイッチング層が、それぞれ1種または複数種の2色性化合物を含有する液晶媒体を含み、かつ該装置が、配向層O(1)、O(2)、O(3)およびO(4)を含み、該スイッチング層と該配向層とが、互いに平行な面内でO(1)、S(1)、O(2)、O(3)、S(2)、O(4)の順に該装置内に存在し、該装置の少なくとも1つの切替状態において、O(2)に隣接するS(1)の液晶媒体の分子の配向軸OA(1)と、O(3)に隣接するS(2)の液晶媒体の分子の配向軸OA(2)とが存在し、該配向軸OA(1)と該配向軸OA(2)とが平行ではなく、かつ該スイッチング層の面に対して平行である窓が記載されている。
【0003】
Applied Physics Letters、第74巻、第26号(1999)には、第3945頁~第3947頁にスイッチング層の製造方法が記載されている。その際、厚さ約30μmのセル内で、Merck社よりZLI-4488-000の名称で入手可能なネマチック液晶混合物30質量%が、Cray Valley-Total社よりCN965の名称で入手可能な脂肪族ウレタンジアクリラート70質量%と混合される。この混合物に、Ciba-Geigy社よりIrgacure 651の名称で入手可能な光開始剤約1質量%を加えることにより光重合性混合物が得られ、これに水銀灯でUVが10分間照射され、その際、この混合物は場の強さ7Tの磁場内に置かれる。スイッチング層が生じ、この層は、約60Vから出発して達成可能な最大の曇りの状態に達する。
【0004】
上記実施形態のうちの1つによるスイッチング層を、スイッチング要素に統合することができる。このスイッチング要素を、窓要素、すなわち窓の透光性の構成要素に組み込むことができる。上記スイッチング層のうちの1つを有するスイッチング要素を含む窓要素は、「明」の状態と「暗」の状態との間での切替が可能であり、「暗」の切替状態では、その外壁内に1つまたは複数の窓の透光性の構成要素としてこの窓要素を含む部屋の遮光が達成され、その際、この遮光の程度を、このスイッチング要素に印加する電圧によって調節することができる。
【0005】
しかし、「暗」の切替状態で窓要素を通って室内に入射する太陽光も不快であると感じる人が多くいる。なぜならば、「暗い」太陽光によっても依然としてまぶしいと感じる人が多いためである。もうまぶしくないという状態にするためには、最終的には、もうまぶしいとは感じられないように見える「暗」の切替状態に達するまで、さらに「より暗い」切替状態へとスイッチング要素を切り替えることが確かに可能である。さらに、太陽光によるまぶしさに対する人の敏感さは様々な程度であることに留意すべきである。ようやくすべての人にとって十分に「暗い」切替状態が達成された時、そうした方法で遮光された室内はしばしば、作業が不可能ではないにしても少なくとも困難になるほどに暗い。そのため、作業に必要な明るさを人工照明により再度作り出す必要があるが、これはエネルギー的な観点から望ましくない。
【0006】
したがって本発明は、明/暗状態による調整に加えて、室内で必要な明るさを人工照明により生じさせる必要なく室内での太陽光によるまぶしさを個々に制御することを可能にするスイッチング要素を有する窓要素を提供することを課題とする。
【0007】
さらに、スイッチング要素において使用するためのスイッチング層であって、該スイッチング要素を、透けて見える状態から曇りの状態、すなわち透けて見えない状態に切替えることを可能にするスイッチング層を提供することを課題とする。ここで、曇りの状態とは、スイッチング要素を通る光が散乱される状態をいう。ここで、この曇りの切替状態によって、上述したようなまぶしさの低減とプライバシーの確保とから選択される1つまたは複数の効果が生じる。
【0008】
前記課題は、スイッチング要素において使用するためのスイッチング層Sであって、
前記スイッチング層Sは、複数の切替状態を有するとともに、
- スイッチング層の上面USLPおよびスイッチング層の下面LSLPと、
- USLPとLSLPとの間に配置された液晶媒体と、
を含み、前記切替状態のうちの1つにおいて、入射方向D(=)で前記スイッチング層の上面USLPに当たる平行光線が、前記スイッチング層Sを通る際にD(=)から偏向され、その結果、前記スイッチング層の下面LSLPから出た後、前記元の平行光線が、前記スイッチング層の下面LSLPから前方散乱方向D(<)に、したがって前方に散乱され、それにより前方散乱が生じ、前記前方散乱は拡散透過率Tとして測定され、Tは20%を上回り、Tは、式(1)
=(I≧2.5°/I)×100[%] (1)
により定義され、ここで、
≧2.5°は、散乱角が2.5°以上である大角散乱の強度を表し、かつ
は、全透過強度を表す、スイッチング層Sにより解決される。
【0009】
ここで、値Tは、380nm~780nmのスペクトル範囲にわたって平均をとったものを示す。示した強度は実施例に示す通りに求められ、値Tは実施例に示す通りに求められる。
【0010】
スイッチング要素に組み込まれる本発明によるスイッチング層Sによって、明/暗状態による調整に加えて、必要な明るさを室内の人工照明により生じさせる必要なく、太陽光によるまぶしさを個々に調節することができる。このことは、切替状態のうちの1つにおける本発明によるスイッチング層Sの拡散透過率が20%を上回ることにより可能となり、それにより、屋外から該スイッチング層を通って室内に入射する光線のまぶしさが少なくとも大幅に低減されると同時に、室内で十分な明るさが保たれ、それにより日中に人工照明なしで作業することが可能となる。このことは多くの人にとって極めて快適であると感じられ、さらにこのことによって、本発明によるスイッチング層Sを有するスイッチング要素を含む窓要素を備えた建築物のエネルギー必要量が低下する。
【0011】
本発明によるスイッチング層Sの定義において上記で使用される「強度」なる概念は好ましくは、当該スイッチング層を通る(光)透過強度または単に(光)透過率であると理解される。さらに好ましくは強度とは、380nm~780nmのスペクトル範囲の光の強度であると理解される。最も好ましくは強度とは、380nm~780nmの範囲の数値平均透過率であると理解される。
【0012】
本発明の範囲において、「切替状態」なる概念は、本発明によるスイッチング層Sがとりうる主に2つの状態、すなわち、
- ある1つの切替状態、この状態では、本発明によるスイッチング層Sは、20%を上回る拡散透過率Tを有し、人の目には均一に曇っているように見える、および
- もう1つの切替状態、この状態では、本発明によるスイッチング層Sは、20%以下の拡散透過率Tを有し、人の目には十分に透明または澄明であるように見える
であると理解される。
【0013】
しかし本発明によるスイッチング層が、さらなる切替状態、特に中間状態を有することも可能である。
【0014】
さらに、1つのスイッチング要素内で本発明によるスイッチング層Sを他のスイッチング層と組み合わせることで、完全に不透明な状態と、屋外に向かって視線が合う状態との間での切替が可能となる。特に屋外に向かって視線が合うことは、オーニングおよびブラインドによっては提供されない特性である。
【0015】
本発明の範囲において、「光線」なる概念は特に、UV-A領域、VIS領域およびNIR領域における電磁放射線であると理解される。特にこれは、窓に通常使用される材料(例えばガラス)によっては吸収されないかまたは無視できる程度にしか吸収されない波長の光線であると理解される。通常用いられている定義によれば、UV-A領域とは320nm~380nmの波長であり、VIS領域とは380nm~780nmの波長であり、NIR領域とは780nm~2000nmの波長であると理解される。
【0016】
本発明の範囲において、「液晶媒体」なる概念は、所定の条件下で液晶特性を有する材料であると理解される。典型的には液晶媒体は本発明によれば、その分子が細長い形状を有する、すなわちその分子がある1つの空間方向において他の2つの空間方向よりも明らかに長い(長軸)、少なくとも1種の化合物を含む。
【0017】
スイッチング層Sの液晶媒体は、このスイッチング層の少なくとも1つの状態において前方散乱性である。
【0018】
好ましい実施形態において、本発明によるスイッチング層Sは、切替状態のうちの1つにおいて、25%を上回る拡散透過率Tを有し、特に好ましくは30%を上回るTを有し、極めて特に好ましくは35%を上回るTを有し、最も好ましくは40%を上回るTを有する。
【0019】
もう1つの好ましい実施形態において、本発明によるスイッチング層Sは、もう1つの切替状態において5%未満の拡散透過率Tを有し、その際、拡散透過率Tが3%未満であることが特に好ましい。
【0020】
散乱性の切替状態は好ましくは、非散乱状態が生じる場合の電圧よりも低い印加電圧で生じる。特に、散乱性の切替状態に達するための印加電圧はゼロより明らかに大きく、好ましくは2V~10Vであり、特に好ましくは3V~7Vである。非散乱性の切替状態に達するための印加電圧は、好ましくは10V~35Vであり、特に好ましくは15V~30Vである。これは、液晶媒体がキラルドーパントを含有するスイッチング層Sの実施形態に該当する。それに対して、液晶媒体がポリマー分とネマチック配列小分子とを含む実施形態においては、好ましくは電圧を印加せずに非散乱状態が生じ、非散乱状態は好ましくは、30V~300Vの範囲の電圧で生じ、特に好ましくは40V~200Vの範囲の電圧で生じる。
【0021】
本発明によるスイッチング層Sの好ましい一実施形態において、液晶媒体はネマチック配列分子およびポリマー分を含み、このポリマー分は好ましくは、反応性メソゲンの重合により得られる高分子網目構造を含み、この反応性メソゲンは好ましくは、アクリラート基から選択される少なくとも1つの基を含み、特に好ましくはモノアクリラート基、ジアクリラート基またはトリアクリラート基、ビニルエーテル基およびエポキシ基から選択される少なくとも1つの基を含む。
【0022】
この場合、ネマチック配列分子は好ましくは、低分子化合物の意味での小分子である。
【0023】
好ましくは本発明による反応性メソゲンは、式(M-1)または(M-2):
【化1】
の基本構造を有し、ここで、基Cは、1つまたは複数の基Sに結合するメソゲン基を表す。特に好ましくはこのメソゲン基には、少なくとも1つの、アリール基、ヘテロアリール基またはシクロヘキシル基が含まれる。
【0024】
さらに基Sは、任意のスペーサー基を表す。このスペーサー基は、単結合、単一の原子または2個~20個の原子の長さを有する鎖を表しうる。好ましくはこのスペーサー基は、2個~10個の原子の長さを有する鎖を表し、特に好ましくはアルキレン基、アルキレンオキシ基またはアルキレンジオキシ基を表す。メソゲン基とは対照的に、このスペーサー基はあらゆる空間方向に自由に配列および移動しうるフレキシブルな基であり、一方でメソゲン基は典型的には、限定的な移動性を有する。
【0025】
基Rは、重付加反応において重合しうる任意の反応性基を表し、好ましくはアクリラート基、ビニルエーテル基またはエポキシ基を表し、特に好ましくはアクリラート基を表す。添え字nは、2~5、好ましくは2~4、特に好ましくは2の値を有する。
【0026】
式(M-1)または式(M-2)による反応性メソゲンであって、2つの式(M-1-1)または(M-2-1):
【化2】
のうちのいずれかに対応するものが特に好ましく、ここで、基CおよびSは、上記で定義した通りであり、R21は、任意の有機基を表し、好ましくはHを表すかまたは1個~10個の炭素原子を有するアルキル基を表し、特に好ましくはHを表す。
【0027】
極めて特に好ましくは、反応性メソゲンは、Merck社よりRM82の名称で入手可能である、以下の構造式:
【化3】
を有するジアクリラートであるか、または以下の構造式R#2もしくはR#3:
【化4】
のモノアクリラートである。
【0028】
さらに、ネマチック配列分子と高分子網目構造とは、互いに均一に分配されている。これは、ネマチック配列分子の液滴形成が少なくとも目視では観察されないことを意味する。
【0029】
好ましくは、ネマチック配列分子は、ネマチック液晶分子の混合物の形態で使用され、その際、この混合物は、屈折率異方性Δnおよび誘電異方性Δεを有する。好ましくは、ネマチック液晶分子の混合物は、0.03~0.40の範囲の、特に好ましくは0.06~0.30の範囲の屈折率異方性Δnおよび/または-50~+100の範囲の、特に好ましくは-15~+70の範囲の誘電異方性Δεを有する。好ましいのは、負の誘電異方性Δεを有する液晶混合物であり、これは特に好ましくは、-6~-3の値を有する。あるいは、正の誘電異方性Δεを有する液晶混合物も好ましく、これは特に好ましくは、3~50の値を有し、極めて特に好ましくは5~20の値を有する。
【0030】
好ましく使用されるネマチック液晶分子の混合物は、後述のベース混合物#1であり、これは特に、スイッチング層Sにおけるポリマーと組み合わせられる。
【0031】
本発明によるスイッチング層Sの好ましい一実施形態において、ネマチック配列分子は質量分率wLCを有し、高分子網目構造は質量分率wPNを有し、wPNは、質量wLC+wPNを基準として60質量%未満の範囲にあり、より好ましくは40質量%未満の範囲にあり、極めて特に好ましくは30質量%未満の範囲にある。好ましくは、それぞれ質量wLC+wPNを基準として、ネマチック配列分子は40質量%~98質量%の範囲の質量分率wLCを有し、高分子網目構造は60質量%~2質量%の範囲の質量分率wPNを有する。
【0032】
既に述べたように、高分子網目構造は、反応性メソゲンの重合により得られる。この目的のために好ましくは光開始剤が使用され、特に好ましくは、現在BASF社よりIrgacure 651の名称で入手可能である、以下の構造式:
【化5】
の光開始剤か、または以下の表にその構造を列挙する光開始剤が使用される。
【化6-1】
【0033】
【化6-2】
【0034】
好ましくは、この混合物は、重合と、それに続く本発明によるスイッチング層Sにおける使用と、のために、該混合物の質量を基準として、ネマチック配列分子60質量%~98質量%、反応性メソゲン40質量%~2質量%および光開始剤0.01質量%~5質量%を含む。
【0035】
反応性メソゲンは、複数の成分からなることができ、例えば単官能性および多官能性の反応性メソゲンからなることができる。多官能性反応性メソゲン成分によって、通常は架橋が生じる。
【0036】
もう1つの好ましい実施形態において、光開始剤は使用されない。反応性メソゲンの成分としては、340nmを上回る光によって単独で重合を開始しうる反応性メソゲンが使用される。この一例は、クマリン系をベースとする、以下の構造式に示されるメソゲンである。
【0037】
【化7】
【0038】
もう1つの好ましい実施形態において、本発明によるスイッチング層Sは、キラルドーパントを含有する液晶媒体を含む。
【0039】
本実施形態において好ましくは、スイッチング層Sが、Tが20%を上回る切替状態、つまり曇りの切替状態にある場合には、液晶媒体の分子は、キラルネマチック相で存在する。
【0040】
もう1つの好ましい実施形態において、Tが20%を上回る切替状態において存在するキラルネマチック相は、ポリドメイン状に配列された相である。本発明の範囲において「ポリドメイン状に配列された相」とは、液晶媒体の分子が、一様な配向軸も一様な共通の線状らせん軸も有しない状態を意味する。スイッチング層Sの、ポリドメイン状に配列された相は、均一であって、好ましくは視認可能な障害が面全体にわたって存在しないという利点を有する。特にこのことは、基材層に対して一様に平行ならせんを生じる相に対するおよび/またはいわゆるストライプドメインを有する相に対する利点である。ポリドメイン状に配列された相のもう1つの利点は、こうした相を、通常のプラナー配向性またはホメオトロピック配向性の配向層を用いて達成しうることであり、すなわち配向層を特別に追加的に処理しなくて済むことである。
【0041】
もう1つの好ましい実施形態において、ある切替状態にあるキラルネマチック相は、少なくとも局所的にねじれているか、あるいはまた、そこから形成されうる上位の巨視的な構造配置をとる。
【0042】
もう1つの好ましい実施形態において、もう1つの切替状態にある相はねじれておらず、すなわちホメオトロピック状もしくはプラナー状に配列しているか、またはわずかなねじれを有する。ここで、わずかなねじれとは、層の厚さにわたる5°~360°、好ましくは45°~300°、特に好ましくは90°、180°または270°の分子のねじれであると理解される。
【0043】
好ましくは、キラルドーパントはネマチック相で均一に分配されており、したがって液晶媒体の分子とキラルドーパントとは、互いに均一に分配されている。
【0044】
特に好ましくは、キラルドーパントはネマチック相で溶解している。
【0045】
好ましくは、キラルネマチック相はネマチック液晶混合物の形態で使用され、その際、この混合物は、屈折率異方性Δnおよび誘電異方性Δεを有する。好ましくは、この混合物は、0.03~0.40の範囲の、特に好ましくは0.07~0.30の範囲の屈折率異方性Δnおよび/または-50~+100の範囲の、特に好ましくは-15~+70の範囲の誘電異方性Δεを有する。これに加えてさらに、誘電異方性Δεに関して上記で示した好ましい値が該当する。
【0046】
好ましくは液晶混合物は、成分Iの少なくとも1種の化合物、成分IIの少なくとも1種の化合物および成分IIIの少なくとも1種の化合物を含む。
【0047】
成分Iの化合物は、F、CN、1個~10個の炭素原子を有するアルキル基、2個~10個の炭素原子を有するアルケニル基および1個~10個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択される少なくとも1つの末端基を含む2核化合物から選択される。
【0048】
成分IIの化合物は、F、CN、1個~10個の炭素原子を有するアルキル基、2個~10個の炭素原子を有するアルケニル基および1個~10個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択される少なくとも1つの末端基を含む3核化合物から選択される。
【0049】
成分IIIの化合物は、F、CN、1個~10個の炭素原子を有するアルキル基、2個~10個の炭素原子を有するアルケニル基および1個~10個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択される少なくとも1つの末端基を含む4核化合物から選択される。
【0050】
好ましくは、液晶媒体中の成分I、IIおよびIIIの化合物の割合の合計は、少なくとも70質量%であり、好ましくは少なくとも80質量%であり、特に好ましくは少なくとも85質量%である。
【0051】
好ましく使用される液晶分子の混合物は、本出願人がベース混合物#2と呼ぶ、以下に示す分子の混合物である。
【0052】
【化8-1】
【0053】
【化8-2】
【0054】
液晶分子のもう1つの好ましい混合物は、本出願人がベース混合物#3と呼ぶ、以下に示す分子の混合物である。
【0055】
【化9-1】
【0056】
【化9-2】
【0057】
【化9-3】
【0058】
実施例に記載するベース混合物#4も同様に好ましい。
【0059】
キラルドーパントとしては、以下に示す分子のうちの1つが好ましく使用され、その際、特に好ましいのは、以下に示すキラルドーパントS-5011またはS-811である。
【0060】
【化10-1】
【0061】
【化10-2】
【0062】
【化10-3】
【0063】
好ましくは、スイッチング層Sは平均屈折率nを有し、分子はピッチpを有し、ここで、積n×pは0.8μmを上回り、特に好ましくは1.0μmを上回り、極めて特に好ましくは1.2μmを上回り、特に好ましくは50μm~0.8μmの範囲にあり、極めて特に好ましくは25μm~0.8μmの範囲にある。
【0064】
さらに、好ましくはピッチpは0.5μm~50μmであり、特に好ましくは0.5μm~30μmであり、極めて特に好ましくは0.5μm~15μmである。最も好ましくは、pは1μm~5μmである。それによって、低い切替電圧を達成できることが判明した。とりわけ、切替可能な窓の安全性の理由から、低い切替電圧が有利である。
【0065】
当業者は、キラルドーパントとそのらせん誘起力βとを適切に選択することによって、またその濃度によって、値pを調整することができる。
【0066】
もう1つの好ましい実施形態において、キラルドーパントは、0.1質量%~30.0質量%の範囲の、好ましくは0.1質量%~10質量%の範囲の、液晶媒体における質量分率wを有する。
【0067】
キラルドーパントを含有する液晶媒体を含む本発明によるスイッチング層Sのもう1つの好ましい実施形態において好ましくは、らせん誘起力β=(p×c)-1μm-1を有するキラルドーパントが使用され、ここで、pは、液晶媒体の分子のピッチをμmで示したものであり、cは、液晶媒体全体を基準とするキラルドーパントの濃度を質量%で示したものであり、βは5μm-1を上回る。好ましくはキラルドーパントは、5μm-1~250μm-1の、特に好ましくは7μm-1~150μm-1のらせん誘起力を有する。
【0068】
さらに、値d/pが2を上回ることが好ましく、ここで、dはスイッチング層Sの厚さであり、pは液晶媒体の分子のピッチである。d/pが20を下回ることが特に好ましい。極めて特に好ましくは、d/pは3~10の値を有する。d/pが適切な値である場合に、特に強く散乱するスイッチング層、すなわち拡散透過率Tの高い値を有するスイッチング層Sを得ることができる。
【0069】
キラルドーパントを含有する液晶媒体を含む本発明によるスイッチング層Sの好ましい一実施形態において、スイッチング要素に組み込まれる本発明によるスイッチング層Sは、人の目には澄明に見える状態(この状態では、液晶媒体の分子が、ホメオトロピック配列をしており、すなわちスイッチング層の面USLPおよびLSLPに対して垂直に配列している)から、ポリドメイン状に配列された状態(この状態は、人の目には均一に曇って見える)への切替が可能である。この場合、ポリドメイン状態が顕微鏡下に構造化を示すという事実は、目視した時に均一に曇っているという特性を妨害するものではない。
【0070】
総じて液晶媒体は、好ましくは90℃を上回る、より好ましくは100℃を上回るまたは105℃を上回る、極めて特に好ましくは110℃を上回る、透明点を有する。
【0071】
さらに、本発明によるスイッチング層Sの液晶媒体は総じて、好ましくは1.0×10Ω・cmを上回る、特に好ましくは1.0×1011Ω・cmを上回る、比抵抗を有する。
【0072】
さらに、本発明によるスイッチング層Sが、少なくとも1種の2色性色素を、液晶媒体の質量を基準として0.01質量%~25質量%の範囲の色素濃度で、特に好ましくは0.1質量%~15質量%の範囲の色素濃度で含むことが好ましい。
【0073】
しかし特定の条件下では、スイッチング層Sが色素を含まない実施形態も好ましい。これは、スイッチング要素の構成がより単純となるとともに、明状態での透過率がより高くなるという利点を有する。さらにこの場合スイッチング要素の光学的外観は、白色であり、つまり着色されておらず、このことは、ある種の用途には望ましいものであり、また加熱および光照射の際のスイッチング要素の耐用年数は、好ましいことに比較的長い。
【0074】
本出願の範囲において、「2色性色素」なる概念は、吸収特性が偏光方向に対する分子の配向に依存する光吸収性化合物であると理解される。典型的には、本出願による2色性色素は細長い形状を有し、すなわち色素分子は、ある1つの空間方向が他の2つの空間方向よりも明らかに長い(長軸)。
【0075】
好ましくは本発明によるスイッチング層は、2種、3種または4種の、特に好ましくは3種の2色性色素を含み、この場合、これらの2色性色素の吸収スペクトルは好ましくは、人の目にとって黒色の印象が生じるように相補的である。
【0076】
好ましくは色素化合物は、アゾ化合物、アントラキノン、メチン化合物、アゾメチン化合物、メロシアニン化合物、ナフトキノン、テトラジン、リレン、ベンゾチアジアゾール、ピロメテン、ジケトピロロピロール、チエノチアジアゾールおよびマロノニトリルから選択される。そのうち特に好ましいのは、アゾ化合物、アントラキノン、リレンであって、特に国際公開第2014/090373号(WO 2014/090373)に開示されているもの、ベンゾチアジアゾールであって、特に国際公開第2014/187529号(WO 2014/187529)に開示されているもの、ジケトピロロピロールであって、特に未公開出願EP 13005918.1に開示されているもの、チエノチアジアゾールであって、特に未公開出願EP 14002950.5に開示されているものおよびマロノニトリルであって、特に未公開出願EP 14004145.0に開示されているものである。
【0077】
以下の色素を使用することが特に好ましく、その構造を以下に示す。
【0078】
【化11-1】
【0079】
【化11-2】
【0080】
少なくとも1種の2色性色素を用いた上述の好ましい実施形態は、本発明によるスイッチング層Sの液晶媒体がポリマー分を含まずに、小分子およびキラルドーパントを含む場合に特に好ましい。
【0081】
好ましくは本発明によるスイッチング層Sは、1μm~300μmの範囲の、特に好ましくは3μm~100μmの範囲の、極めて特に好ましくは20μm~100μmの範囲の厚さを有する。このことは、本発明によるスイッチング要素がちょうど1つのスイッチング層Sを有する場合に該当する。スイッチング要素が、連続して配置された複数のスイッチング層Sを有する場合、これらの層の厚さの合計は、好ましくは5μm~200μmであり、特に好ましくは10μm~100μmである。
【0082】
もう1つの好ましい実施形態において、本発明によるスイッチング層Sは、3μm~200μmの範囲の厚さを有し、好ましくは3μm~75μmの範囲の厚さを有し、曇りの切替状態で550nmの光線の波長で、全透過率Ttotalは60%~100%の範囲にあり、かつ拡散透過率Tは25%~100%の範囲にある。
【0083】
もう1つの好ましい実施形態において、本発明によるスイッチング層Sは、切替状態のうちの1つにおいて、平行光線の好ましくは45%未満、特に好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、極めて特に好ましくは5%未満を、スイッチング層の上面USLPから後方散乱方向D(>)に散乱させる。特に好ましくは、こうしたわずかな後方散乱は、スイッチング層のいずれの切替状態においても存在し、特にスイッチング層の散乱性の切替状態においても存在する。
【0084】
もう1つの好ましい実施形態において、本発明によるスイッチング層Sは、0%~80%の全透過率範囲内で全透過率の制御範囲を有し、この場合、この制御範囲は少なくとも15%である。
【0085】
本発明によるスイッチング層Sは、液晶媒体を含むさらなるスイッチング層と一緒に、多層のスイッチング層の装置内に存在することができる。この場合、これらの追加のスイッチング層は、さらなるスイッチング層Sであってもよくかつ/またはこれらは、散乱性の切替状態を有することなく明から暗に切り替わるスイッチング層であってもよい。特に好ましいのは、2つ、3つまたは4つのスイッチング層を含む、多層のスイッチング層の装置であり、殊に好ましいのは、2つまたは3つのスイッチング層を含む多層のスイッチング層の装置である。この場合、これらのスイッチング層のうちの少なくとも1つが、散乱性の切替状態を有しないスイッチング層であることが好ましい。散乱性の切替状態を有しないこのスイッチング層を利用して、これが明から暗へ切り替わることにより、スイッチング要素全体の透過率を、ひいてはスイッチング要素全体の明るさを、切り替えられるようにすることができる。
【0086】
本発明はさらに、上記の様式のスイッチング層Sを含むスイッチング要素を含み、この場合、このスイッチング層Sは第1の層系列内に配置されており、この第1の層系列は、外側から内側に向かって
- 外側基材層、
- 外側導電層、
- 該スイッチング層S、
- 内側導電層および
- 内側基材層
を含む。
【0087】
外側基材層および内側基材層は、ガラスまたはポリマーからなることができ、特にガラス、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタラート(PEN)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリメチルメタクリラート(PMMA)、ポリカーボナート(PC)、ポリイミド(PI)、COP(シクロオレフィンポリマー)、TAC(トリアセチルセルロース)からなることができる。
【0088】
本発明によるスイッチング要素は好ましくは、UV光を遮断する1つまたは複数の層を含む。特に本発明によるスイッチング要素は、350nm未満の、好ましくは360nm未満の、特に好ましくは380nm未満の波長を有する光を通さないかまたは極めてわずかな割合でしか通さない1つまたは複数の層を含む。このような層を有する装置は、より長期にわたって再現可能な状態で特性が変わることなく切替可能であることが判明した。
【0089】
外側導電層および内側導電層は、透明導電酸化物(TCO)、好ましくはITOまたはSnO:F、または薄い透明な金属および/もしくは金属酸化物の層からなることができ、例えば銀からなることができる。好ましくは外側導電層および内側導電層には、電気的接続部が設けられている。電力供給のために、好ましくは電池、充電式電池、スーパーキャパシタまたは外部電源が使用される。
【0090】
本発明によるスイッチング要素の好ましい一実施形態において、第1の層系列において、外側導電層とスイッチング層との間に外側配向層が配置されており、内側導電層とスイッチング層との間に内側配向層が配置されている。
【0091】
好ましくは、外側配向層および内側配向層は、ポリイミド層である。特に好ましくは、外側配向層および内側配向層は、本発明によるスイッチング層Sに隣接するその表面上に、ラビングされたポリイミドを有する。分子が外側配向層あるいは内側配向層に対してプラナー状に存在する(ホモジニアス配向あるいはプラナー配向)場合には、当業者に知られている所定の様式でラビングされたポリイミドは、本発明によるスイッチング層Sにおいてラビング方向に液晶媒体の分子の優先配向を生じさせる。あるいは、液晶媒体の分子の垂直(ホメオトロピック)配向を生じさせる配向層を使用することもできる。そのような配向層は好ましくはポリイミド材料からなり、当業者に知られており、また市販されている。さらに、配向材料のUV露光後に事後的にLCの優先方向を生じる配向層も好ましい。そのような材料は、「光配向」なる学術用語で知られている。
【0092】
本発明によるスイッチング要素のもう1つの好ましい実施形態において、スイッチング要素は、第1の層系列の外側基材層上および/または第1の層系列の内側基材層上に第2の層系列を有し、この第2の層系列は、外側から内側に向かって
- 基材層、
- 導電層、
- 液晶媒体を含むスイッチング層、
- 導電層および
- 基材層
を含む。
【0093】
上記の第2の層系列の好ましい一実施形態において、導電層とスイッチング層との間にはそれぞれ配向層が存在する。
【0094】
この場合、この第2の層系列の基材層、導電層および配向層の好ましい実施形態については、第1の層系列の対応する層について記載した際に既に説明したのと同一のことが当てはまる。好ましくは、第2の層系列のスイッチング層の液晶媒体は、前方散乱性ではない。あるいは、そして同様に好ましくは、第2の層系列のスイッチング層は、もう1つのスイッチング層S、すなわち散乱状態を有するスイッチング層であってもよい。
【0095】
本発明によるスイッチング要素のもう1つの好ましい実施形態において、スイッチング要素は、第1の層系列の外側基材層上および/または第1の層系列の内側基材層上に第3の層系列を有し、この第3の層系列は、外側から内側に向かって
- 基材層、
- 導電層、
- 配向層、
- 液晶媒体を含むスイッチング層、
- 配向層、
- 導電層、
- 基材層、
- 1つまたは複数のさらなる任意の層、例えばlowEコーティング、
- 任意の空気層、
- 任意の基材層、
- 導電層、
- 配向層、
- 液晶媒体を含むスイッチング層、
- 配向層、
- 導電層および
- 基材層
を含む。
【0096】
この場合、この第3の層系列の基材層、導電層および配向層の好ましい実施形態については、第1の層系列の対応する層について記載した際に既に説明したのと同一のことが当てはまる。好ましくは、第3の層系列のスイッチング層の液晶媒体は、前方散乱性ではない。あるいは、そして同様に好ましくは、第3の層系列のスイッチング層のうちの一方または双方、好ましくは一方は、スイッチング層S、すなわち散乱状態を有するスイッチング層であってもよい。
【0097】
特に好ましくは、第3の層系列は、外側から内側に向かって
- 基材層、
- 導電層、
- 液晶媒体を含むスイッチング層、
- 導電層、
- 基材層、
- 導電層、
- 液晶媒体を含むスイッチング層、
- 導電層および
- 基材層
を含む。
【0098】
上記の第3の層系列の好ましい一実施形態において、導電層とスイッチング層との間にはそれぞれ配向層が存在する。
【0099】
好ましくは、第2の層系列のスイッチング層の液晶媒体または第3の層系列のスイッチング層のうちの一方もしくは双方の液晶媒体は、少なくとも1種の2色性色素を、それぞれの液晶媒体の質量を基準として0.01質量%~25質量%の範囲の色素濃度で有する。好ましくは、液晶媒体中にはそれぞれ2種、3種または4種の、好ましくは3種またはそれを上回る2色性色素が存在し、この場合、これらの2色性色素の吸収スペクトルは好ましくは、人の目にとって黒色の印象が生じるように相補的であり、その際、特に好ましくは、色素D1、D2およびD3が使用される。所定の条件下では、4種、5種または6種の異なる色素が液晶媒体に含まれていることが好ましい。
【0100】
本出願によるスイッチング要素の好ましい実施形態は、以下のスイッチング層の組合せ物あるいは以下の個々のスイッチング層:
a)2色性色素を含有しない1つのスイッチング層S、
b)2色性色素を含有する1つのスイッチング層S、
c)双方ともに2色性色素を含有しない2つのスイッチング層S、
d)2色性色素を含有しない1つのスイッチング層Sと、2色性色素を含有する1つのスイッチング層S、
e)双方ともに2色性色素を含有する2つのスイッチング層S、
f)2色性色素を含有しない1つのスイッチング層Sと、1つのスイッチング層S1、
g)2色性色素を含有しない1つのスイッチング層Sと、2つのスイッチング層S1、
h)2色性色素を含有する1つのスイッチング層Sと、1つのスイッチング層S1、
i)2色性色素を含有する1つのスイッチング層Sと、2つのスイッチング層S1、
j)双方ともに2色性色素を含有しない2つのスイッチング層Sと、1つのスイッチング層S1、
k)2色性色素を含有しない1つのスイッチング層Sと、2色性色素を含有する1つのスイッチング層Sと、1つのスイッチング層S1、
l)双方ともに2色性色素を含有する2つのスイッチング層Sと、1つのスイッチング層S1、
m)双方ともに2色性色素を含有しない2つのスイッチング層Sと、2つのスイッチング層S1、
n)2色性色素を含有しない1つのスイッチング層Sと、2色性色素を含有する1つのスイッチング層Sと、2つのスイッチング層S1、
o)双方ともに2色性色素を含有する2つのスイッチング層Sと、2つのスイッチング層S1、
を含み、ここで、スイッチング層S1は、散乱状態を有しておらずかつ明の切替状態から暗の切替状態へと切り替わるスイッチング層である。
【0101】
好ましくは、スイッチング層S1は次のようなスイッチング層であり、すなわち、液晶媒体と少なくとも1種の2色性色素とを含有し、かつ好ましくはゲスト・ホスト原理によって切り替わる、すなわち液晶媒体の分子のねじれたネマチック配列からホメオトロピック配列へと切り替わるスイッチング層である。このようなスイッチング層は特に、国際公開第2014/135240号(WO 2014/135240)および国際公開第2014/180525号(WO 2014/180525)の出願に詳細に記載されており、ここに本明細書の一部を構成するものとしてその開示内容を援用する。
【0102】
さらに本発明は、上記の様式のスイッチング要素を含む窓要素を包含する。本発明の範囲において「窓要素」なる概念は、窓の透光性の構成要素、すなわち、好ましくは建築物の壁の一部である単一または複数のガラスがはめられた窓の板ガラスを意味する。この板ガラスは、入射する平行光線に対向する面(外面)と、入射する平行光線とは反対側の面(内面)とを有する。上述の様式のスイッチング要素を、本発明による窓要素の外面上に配置してもよいし、本発明による窓要素の内面上に配置してもよい。
【0103】
しかし、本発明によるスイッチング要素は窓でしか使用できないわけではなく、部屋の内部範囲において使用することもでき、例えば部屋と部屋との間の仕切壁および部屋の個々の区画を分離するための要素において使用することもできる。この場合、スイッチング要素を澄明状態から散乱状態へと切り替えることにより達成されるプライバシーによって、こうした室内部分の間に視覚的な障壁を作ることができる。
【0104】
さらに上記の様式のスイッチング要素を、プレハング加工されたファサード要素に組み込むことができ、その際、このプレハング加工されたファサード要素は、窓の外面の前に配置されている。そうすることで、入射する平行光線が、窓の内面に隣接する室内にいる観察者から比較的大きく離れて散乱される。こうして比較的大きく離れることによって、小さな散乱角度で散乱された光が観察者に当たらずに、観察者がまぶしさを感じなくなる可能性が高くなる。
【0105】
測定方法
光強度に関して本出願において使用される値の測定を、150mmの積分球(ウルブリヒト球)を備えたUV/VIS/NIR分光計Perkin Elmer Lambda 1050で行う。透過強度に関する値をそれぞれ、380nm~780nmのスペクトル範囲にわたって平均をとって求める。ここで、「平均をとる」とは、数値平均をとることであると理解される。
【0106】
大角散乱の透過強度I≧2.5°を測定するために、試料を積分球の試料保持器に直接据える。積分球を開放する。出射光が、光トラップに、すなわち非反射性の黒色媒体に、例えば黒色の非反射性の布に集まることによって、2.5°未満の開口角を有する光がこの球から出て、もはや測定されなくなる。
【0107】
実際に測定時に存在する積分球の開口角は4.8°であり、したがって実施する試験では、少なくとも2.5°の大角散乱に関するTではなく、少なくとも4.8°の大角散乱に関するTを求めた。したがって、特許請求の範囲に記載された少なくとも2.5°の大角散乱に関するTは、これよりも幾分大きく、実施例で測定された少なくとも4.8°の大角散乱に関するTと少なくとも等しい大きさであろうと推定することができる。
【0108】
全透過強度Iを測定するために、試料を積分球の入口で試料保持器に直接据える。積分球(ウルブリヒト球)を閉鎖すると、この積分球(ウルブリヒト球)は、試料を通るすべての光、すなわち非散乱光と散乱光の双方を検出器に導く。
【0109】
上記のI≧2.5°およびIの双方の値から、算出により、式(1):
observer=-I≧2.5° 式(1)
により透過強度Iobserverを得ることができる。
【0110】
後方散乱強度を測定するために、試料を、積分球の開放された出口開口部に据える。試料の後のさらなる光路内には、光トラップが存在する。1つまたは複数の試料をケーブルと接触させて、記載の値の水準で方形波電圧を供給する。試料から反射される光が積分球を通って検出器に到達し、これを測定する。反射しない光は、検出器に到達せずに積分球から出る。
【0111】
以下で、散乱しない、とは、Tの値が3%未満であり、好ましくは1%未満であることを表すことを意図している。構造および作製に起因して、ポリイミドにおけるスペーサーおよび比較的小さな損傷(例えばラビングの際の傷によるもの)により、実際の実施形態においては、Tの値が完全に0%に達することはありえない。
【0112】
実施例
本発明を、以下の(比較)例において詳説する。
【0113】
(比較)例のスイッチング層において、ベース混合物#1、#2、#3および#4を使用する。これらのベース混合物は、その成分、すなわち液晶分子を以下に列挙する質量分率で有する。
【0114】
ベース混合物#1は、誘電異方性Δεが-5.7であり、以下のものからなる:
CCN-33 13質量%
CZY-3-02 10質量%
CZY-4-02 10質量%
CZY-5-02 10質量%
CCZY-3-02 4質量%
PTY-3-02 14質量%
PTY-5-02 14質量%
CPTY-3-01 5質量%
CPTY-3-02 5質量%
CPTY-3-03 5質量%
CP-3-01 8質量%および
CGPC-3-3 2質量%。
【0115】
ベース混合物#2は、誘電異方性Δεが+41.8であり、屈折率異方性Δnが0.2574であり、透明点が92℃であり、以下のものからなる:
PZG-2-N 9質量%
PZG-3-N 10質量%
PZG-4-N 14質量%
PZG-5-N 2質量%
CP-3-N 2質量%
PPTUI-3-2 20質量%
PPTUI-3-4 28質量%および
CGPC-3-3 3質量%。
【0116】
ベース混合物#3は、誘電異方性Δεが+11.3であり、屈折率異方性Δnが0.1349であり、透明点が114.5℃であり、以下のものからなる:
CP-3-N 16質量%
CP-5-N 16質量%
CPG-3-F 5質量%
CPG-5-F 5質量%
CPU-3-F 15質量%
CPU-5-F 15質量%
CCGU-3-F 7質量%
CGPC-3-3 4質量%
CGPC-5-3 4質量%
CGPC-5-5 4質量%
CCZPC-3-3 3質量%
CCZPC-3-4 3質量%および
CCZPC-3-5 3質量%。
【0117】
ベース混合物#4は、誘電異方性Δεが-5.0であり、屈折率異方性Δnが=0.1531であり、透明点が81℃であり、以下のものからなる:
CY-3-O4 25質量%
CY-5-O2 9質量%
CCY-3-O2 7質量%
CCY-3-O3 4.5質量%
CPY-2-O2 10質量%
CPY-3-O2 10質量%
PYP-2-3 15質量%
PYP-2-4 10質量%
CCP-V-1 3質量%
CPP-3-2 2質量%
PP-1-2V1 3.5質量%
PGP-2-3 2質量%
PP-1-2V1 3.5質量%および
PGP-2-3 2質量%。
【0118】
ベース混合物#2および#3の成分の化学構造について、既に明示してある。ベース混合物#1および#4の成分の化学構造は略称の形態で示されており、その意味は、国際公開第2012/052100号(WO 2012/052100)の第3頁、第24行目から第67頁、第12行目に記載されている。
【0119】
比較例1
示した層系列を有する比較スイッチング要素1を製造する。
【0120】
【表1】
【0121】
配向層3および6ならびに配向層5aおよび8によって液晶分子を同一の方向に配列させ、その際、配向層5aは、配向層3に対して90°回転しており、配向層8は、配向層6に対して90°回転している。
【0122】
スイッチング層4および7はそれぞれ、24.5μmの厚さを有する。これらのスイッチング層4および7に含まれる液晶分子の配向軸は、
- スイッチオフ状態(U=0V)では、それぞれのスイッチング層の面から表して小さなプレティルト角、例えば1°のプレティルト角を伴うプラナー状であって、かつそれぞれの隣接する配向層のそれぞれのラビング方向に対して平行であり、
- スイッチオン状態(U=20V)では、それぞれの配向層に対して垂直である。
【0123】
比較スイッチング要素1は、スイッチング層4および7の電極での電圧が20Vである場合に、「明」の切替状態で73%の透過強度を有する。この場合、スイッチング層4および7内の液晶分子は、ホメオトロピック配向を生じている。
【0124】
比較スイッチング要素1は、スイッチング層4および7の電極での電圧が0Vである場合に、「暗」の切替状態で15%の透過強度Iobserverを有する。この場合、スイッチング層4および7内の液晶分子は、プラナー配向を生じている。この比較スイッチング要素1は、明および暗の切替状態ならびに中間状態のいずれにおいても散乱を示さない(1%未満)。
【0125】
比較例2
以下に概略的に示す層系列を有する比較スイッチング要素2を製造する。
【0126】
【表2】
【0127】
配向層13は、配向層15に対して90°回転している。
【0128】
スイッチング層14は、24.5μmの厚さを有する。このスイッチング層14に含まれる分子の配向軸は、
- スイッチオフ状態(U=0V)では、スイッチング層の面14から表して小さなプレティルト角、例えば1°のプレティルト角を伴うプラナー状であって、かつ配向層13および15のラビング方向に対して平行であり、
- スイッチオン状態(U=20V)では、配向層13および15に対して垂直である。
【0129】
比較スイッチング要素2は、スイッチング層14の電極での電圧が20Vである場合に、「明」の切替状態で73%の透過強度を有する。この場合、スイッチング層14内の液晶分子は、ホメオトロピック配向を生じている。
【0130】
比較スイッチング要素2は、スイッチング層14の電極での電圧が0Vである場合に、「暗」の切替状態で42%の測定された透過強度Iobserverを有する。この場合、スイッチング層14内の分子は、プラナー配向を生じている。この比較スイッチング要素2は、明および暗の切替状態ならびに中間状態のいずれにおいても散乱を示さない(1%未満)。
【0131】
比較例3
以下に概略的に示す層系列を有する比較スイッチング要素3を製造する。
【0132】
【表3】
【0133】
スイッチング層14’は、5μmの厚さを有する。このスイッチング層14’に含まれる液晶分子の配向軸は、
- スイッチオフ状態(U=0V)では、スイッチング層の面14’から表して5°のプレティルト角を伴うプラナー状であって、かつ配向層13’および15’のラビング方向に対して平行であり、
- スイッチオン状態(U=12V)では、配向層13’および15’に対して垂直である。
【0134】
比較スイッチング要素3は、「明」の切替状態で74%の透過強度を有する。この場合、スイッチング層14’内の液晶分子は、ホメオトロピック配向を生じている。
【0135】
比較スイッチング要素3は、「暗」の切替状態で22%の透過強度Iobserverを有する。この場合、スイッチング層14’内の液晶分子は、プラナー配向を生じている。この比較スイッチング要素3は、明および暗の切替状態ならびに中間状態のいずれにおいても散乱を示さない(1%未満)。
【0136】
実施例1
本発明によるスイッチング要素1は、以下に概略的に示す層系列を有するとともに、本発明によるスイッチング層Sを、表1に示す実施形態a)、b)またはc)で含む。その際、
- 「Gm#2」および「Gm#3」は、ベース混合物#2あるいはベース混合物#3を表し、
- 「S-5011」は、キラルドーパントS-5011を表し、
- 「λ」は、推定反射波長を表し、
- 「アンチパラレルラビングされたプラナー状」とは、スイッチング層Sに隣接する配向層20および21における配向が、小さなティルト角を伴うプラナー配向であって、この配向層20におけるティルト角と配向層21におけるティルト角とが互いに180°回転していることを表し、
- 「電圧」とは、澄明な状態あるいは曇りの状態でのスイッチング層Sの切替電圧を表し、その際、「澄明」とは「明」の切替状態のことであり、「曇り」とは「暗」の切替状態のことであり、「曇り」の切替状態において、スイッチング層Sの液晶分子はポリドメイン状に配列された状態にあり、この状態は、目視では均一な外観を有するが、顕微鏡下では様々な構造化を示しうる。
【0137】
表1-1は、実施形態a)、b)およびc)でのスイッチング要素1における切替状態および切替電圧を示し、その際、スイッチング層S4およびS7は、「明」または「暗」の状態で存在し、スイッチング層Sは、「澄明」または「曇り」の状態で存在する。
【0138】
表1:スイッチング層Sの実施形態
【表4】
【0139】
表1-1:スイッチング要素1における切替状態および切替電圧
【表5】
【0140】
スイッチング要素1の層系列
【表6】
【0141】
スイッチング要素1は、実施形態c)において、
- 切替状態1で、78%の透過強度を有し、
- 切替状態4で、9%の透過強度Iobserverを有し、かつ
- 切替状態4で、14%の透過強度Iを有する。
【0142】
その際、スイッチング要素1に対して、平行光線を基材層1に照射する。
【0143】
その結果、スイッチング要素1において、散乱性のスイッチング層の切り替えられた状態では、光線の{1-(9/14)}×100=36%が、散乱によってその元の平行方向から2.5°を上回って偏向される。「曇り」の切替状態では、スイッチング層Sの分子は、ポリドメイン状に配列された状態にある。
【0144】
相応する試験を、スイッチング層の態様a)およびb)についても行った。その際、測定したところ、散乱状態での拡散透過率に関する値は、上記で明示した態様c)と同程度であり、差はわずかであった。
【0145】
実施例2a)
本発明によるスイッチング要素2a)は、本発明による厚さ24.5μmのスイッチング層S2a)を、示した層系列において含む:
【表7】
【0146】
表1-2は、スイッチング要素2aにおける切替状態および切替電圧を示し、その際、スイッチング層S7は、「明」または「暗」の状態で存在し、スイッチング層S2aは、「明-澄明」または「暗-曇り」の状態で存在する。
【0147】
表1-2:スイッチング要素2aにおける切替状態および切替電圧
【表8】
【0148】
スイッチング要素2a)に対して、平行光線を基材層1に照射する。このスイッチング要素2a)は、
- 切替状態1で、75%の透過強度を有し、
- 切替状態4で、16%の透過強度Iobserverを有し、かつ
- 切替状態4で、ウルブリヒト球上で測定して、すなわち散乱光を伴って、28%の透過強度Iを有する。
【0149】
その結果、スイッチング要素2aにおいて、散乱性のスイッチング層の切り替えられた状態では、光線の{1-(16/28)}×100=43%が、散乱によってその元の平行方向から2.5°を上回って偏向される。「暗-曇り」の切替状態では、スイッチング層S2a)の分子は、ポリドメイン状に配列された状態にある。
【0150】
実施例2b)
本発明によるスイッチング要素2b)は、本発明による厚さ25μmのスイッチング層S2bを、以下に概略的に示す層系列において含む。
【0151】
表1-3は、スイッチング要素2bにおける切替状態および切替電圧を示し、その際、スイッチング層S4は、「明」または「暗」の状態で存在し、スイッチング層S2bは、「明-澄明」または「暗-曇り」の状態で存在する。
【0152】
表1-3:スイッチング要素2bにおける切替状態および切替電圧
【表9】
【0153】
【表10】
【0154】
スイッチング要素2b)に対して、平行光線を基材層1に照射する。このスイッチング要素2b)は、
- 切替状態1で、75%の透過強度を有し、
- 切替状態4で、16%の透過強度Iobserverを有し、かつ
- 切替状態4で、28%の透過強度Iを有する。
【0155】
その結果、スイッチング要素2bにおいて、散乱性のスイッチング層の切り替えられた状態では、光線の{1-(16/28)}×100=43%が、散乱によってその元の平行方向から2.5°を上回って偏向される。
【0156】
「暗-曇り」の切替状態では、スイッチング層S2b)の分子は、ポリドメイン状に配列された状態にある。
【0157】
実施例2c)
本発明によるスイッチング要素2c)は、本発明による2つのそれぞれ厚さ25μmのスイッチング層S2c1およびS2c2を、以下に概略的に示す層系列において含む。
【0158】
【表11】
【0159】
スイッチング要素2c)に対して、基材層1に垂直に入射する平行光線を照射する。
【0160】
以下の切替状態の切替を行う:
切替状態1:スイッチング層S2c1およびS2c2のどちらにも、それぞれ25Vの電圧が印加されている。この切替状態では、透過強度は76%である。どちらのスイッチング層も、「明-澄明」の状態にある。
【0161】
切替状態2:スイッチング層S2c1およびS2c2のいずれか一方に25Vの電圧が印加されており、もう一方のスイッチング層S2c1またはS2c2には、5Vの電圧が印加されている。この切替状態では、透過強度は、散乱光なしで27%である。この状態では、これら2つのスイッチング層のうちの一方は「明-澄明」の状態にあり、もう一方は「暗-曇り」の状態にある。
【0162】
切替状態3:スイッチング層S2c1およびS2c2の双方に、それぞれ5Vの電圧が印加されている。この切替状態では、透過強度Iobserverは11%である。どちらのスイッチング層も、「暗-曇り」の状態にある。
【0163】
切替状態3についてIを測定すると、16%である。
【0164】
その結果、スイッチング要素2cにおいて、散乱性のスイッチング層の切り替えられた状態では、光線の{1-(11/16)}×100=31%が、散乱によってその元の平行方向から2.5°を上回って偏向される。
【0165】
「暗-曇り」の切替状態では、スイッチング層S2c1およびS2c2の分子は、ポリドメイン状に配列された状態にある。
【0166】
実施例2d)
本発明によるスイッチング要素2d)は、本発明による2つのそれぞれ厚さ25μmのスイッチング層S2d1およびS2d2を、以下に概略的に示す層系列において含む。
【0167】
【表12】
【0168】
スイッチング要素2d)に対して、基材層1に垂直に入射する平行光線を照射する。
【0169】
切替状態1:スイッチング層S2d1およびS2d2のどちらにも、それぞれ25Vの電圧が印加されている。この切替状態では、透過強度は79%である。どちらのスイッチング層も、「澄明」の状態にある。
【0170】
切替状態2:スイッチング層S2d1およびS2d2のどちらにも、それぞれ5Vの電圧が印加されている。この切替状態では、透過強度Iobserverは、59%である。どちらのスイッチング層も、「曇り」の状態にある。
【0171】
切替状態3についてIを測定すると、79%である。
【0172】
その結果、スイッチング要素2dにおいて、散乱性のスイッチング層の切り替えられた状態では、光線の{1-(59/79)}×100=25%が、散乱によってその元の平行方向から2.5°を上回って偏向される。「曇り」の切替状態では、スイッチング層S2d1およびS2d2の分子は、ポリドメイン状に配列された状態にある。
【0173】
実施例3
本発明によるスイッチング要素3は、以下に概略的に示す層系列を有するとともに、本発明によるスイッチング層Sを、表2に示す実施形態a)、b)およびc)で含む。その際、
- 「Gm#2」および「Gm#3」は、ベース混合物#2あるいはベース混合物#3を表し、
- 「S-5011」は、キラルドーパントS-5011を表し、
- 「λ」は、推定反射波長を表し、
- 「アンチパラレルラビングされたプラナー状」とは、スイッチング層Sに隣接する配向層20および21における配向が、小さなティルト角を伴うプラナー配向であって、この配向層20におけるティルト角と配向層21におけるティルト角とが互いに180°回転していることを表し、
- 「電圧」とは、澄明な状態あるいは曇りの状態でのスイッチング層Sの切替電圧を表し、その際、「曇り」の切替状態において、スイッチング層Sの分子は、ポリドメイン状に配列された状態にある。
【0174】
表1-4は、実施形態a)、b)およびc)でのスイッチング要素3における切替状態および切替電圧を示し、その際、スイッチング層14は、「明」または「暗」の状態で存在し、スイッチング層Sは、「澄明」または「曇り」の状態で存在する。
【0175】
表2:
【表13】
【0176】
表1-4:スイッチング要素3における切替状態および切替電圧
【表14】
【0177】
スイッチング要素3の層系列
【表15】
【0178】
スイッチング要素3は、実施形態c)において、
- 切替状態1で、74%の透過強度を有し、
- 切替状態4で、23%の透過強度Iobserverを有し、かつ
- 切替状態4で、41%の透過強度Iを有する。
【0179】
その際、スイッチング要素3に対して、平行光線を基材層11に照射する。
【0180】
その結果、スイッチング要素3において、散乱性のスイッチング層の切り替えられた状態では、光線の{1-(23/41)}×100=44%が、散乱によってその元の平行方向から2.5°を上回って偏向される。
【0181】
「曇り」の切替状態では、スイッチング層Sの分子は、ポリドメイン状に配列された状態にある。
【0182】
相応する試験を、スイッチング層の態様a)およびb)についても行った。その際、測定したところ、散乱状態での拡散透過率に関する値は、上記で明示した態様c)と同程度であり、差はわずかであった。
【0183】
実施例3a
本発明によるスイッチング要素3aは、本発明によるスイッチング層14およびSを、以下に概略的に示す層系列において含む。
【0184】
【表16】
【0185】
以下の切替状態の切替を行う:
【表17】
【0186】
スイッチング要素3aは、実施形態c)において、
- 切替状態1で、88%の透過強度を有し、
- 切替状態4で、18%の透過強度Iobserverを有し、かつ
- 切替状態4で、53%の透過強度Iを有する。
【0187】
その際、スイッチング要素3aに対して、平行光線を基材層1に照射する。
【0188】
その結果、スイッチング要素3aにおいて、散乱性のスイッチング層の切り替えられた状態では、光線の{1-(18/53)}×100=66%が、散乱によってその元の平行方向から2.5°を上回って偏向される。
【0189】
「暗-曇り」の切替状態では、スイッチング層14およびSの分子は、ポリドメイン状に配列された状態にある。
【0190】
相応する試験を、スイッチング層の態様a)およびb)についても行った。その際、測定したところ、散乱状態での拡散透過率に関する値は、上記で明示した態様c)と同程度であり、差はわずかであった。
【0191】
実施例4
本発明によるスイッチング要素4は、本発明による厚さ24.5μmのスイッチング層Sを、以下に示す層系列において含む。
【0192】
【表18】
【0193】
このスイッチング要素4は、
- 「明-澄明」の切替状態で、74%の透過強度を有し(電圧=25V)、
- 「暗-曇り」の切替状態で、15%の透過強度Iobserverを有し(電圧=5V)、かつ
- 「暗-曇り」の切替状態で、21%の透過強度Iを有する。
【0194】
その際、スイッチング要素4に対して、平行光線を基材層11に照射する。
【0195】
その結果、スイッチング要素4において、散乱性のスイッチング層の切り替えられた状態では、光線の{1-(15/21)}×100=29%が、散乱によってその元の平行方向から2.5°を上回って偏向される。
【0196】
「暗-曇り」の切替状態では、スイッチング層Sの分子は、ポリドメイン状に配列された状態にある。
【0197】
実施例4b
本発明によるスイッチング要素4bは、本発明による厚さ24.5μmのスイッチング層S4bを、以下に示す層系列において含む。
【0198】
【表19】
【0199】
このスイッチング要素4bは、
- 「澄明」の切替状態で、90%の透過強度を有し(電圧=25V)、
- 「曇り」の切替状態で、42%の透過強度Iobserverを有し(電圧=5V)、かつ
- 「曇り」の切替状態で、90%の透過強度Iを有する。
【0200】
その際、スイッチング要素4bに対して、平行光線を基材層11に照射する。
【0201】
その結果、スイッチング要素4bにおいて、散乱性のスイッチング層の切り替えられた状態では、光線の{1-(42/90)}×100=53%が、散乱によってその元の平行方向から2.5°を上回って偏向される。
【0202】
「曇り」の切替状態では、スイッチング層S4bの分子は、ポリドメイン状に配列された状態にある。
【0203】
実施例5
本発明によるスイッチング要素5は、本発明によるスイッチング層Sを、以下の層系列において含む:
【表20】
【0204】
その際、スイッチング層14’は、5μmの層厚を有する。
【0205】
以下の切替状態の切替を行う:
【表21】
【0206】
スイッチング要素5は、
- 切替状態1で、74%の透過強度を有し、
- 切替状態4で、14%の透過強度Iobserverを有し、かつ
- 切替状態4で、23%の透過強度Iを有する。
【0207】
その際、スイッチング要素5に対して、平行光線を基材層11に照射する。
【0208】
その結果、スイッチング要素5において、散乱性のスイッチング層の切り替えられた状態では、光線の{1-(14/23)}×100=39%が、散乱によってその元の平行方向から2.5°を上回って偏向される。
【0209】
「曇り」の切替状態では、スイッチング層Sの分子は、ポリドメイン状に配列された状態にある。
【0210】
実施例6
本発明によるスイッチング要素6は、本発明による厚さ25μmのスイッチング層Sを、以下に概略的に示す層系列において含む。
【0211】
【表22】
【0212】
スイッチング層Sを製造するために、ベース混合物#1と、反応性メソゲンRM82と、光開始剤Irgacure 651とを上記の質量比で混合し、3分間にわたって光重合させる。
【0213】
スイッチング要素6は、
- 「澄明」の切替状態で、90%の透過強度を有し、
- 「曇り」の切替状態で、45%の透過強度Iobserverを有し、かつ
- 「曇り」の切替状態で、87%の透過強度Iを有する。
【0214】
「曇り」の切替状態についての切替電圧は、150Vである。その際、スイッチング要素6に対して、平行光線を基材層28に照射する。
【0215】
スイッチング要素6において、散乱性のスイッチング層の切り替えられた状態では、光線の{1-(45/87)}×100=48%が、散乱によってその元の平行方向から2.5°を上回って偏向される。
【0216】
実施例7
本発明によるスイッチング要素7は、本発明によるスイッチング層Sを、以下に概略的に示す層系列において含む。
【0217】
【表23】
【0218】
スイッチング層Sを製造するために、ベース混合物#4(透明点:81℃、光学異方性:0.1531、誘電異方性:-5.0)と、(Merck社よりRM82の名称で入手可能である)反応性メソゲンR#1と、光開始剤Irgacure 651とを上記の質量比で混合し、3分間にわたって光重合させる。
【0219】
スイッチング要素7は、
- 電圧0Vで、0.3%の拡散透過率および13%の後方散乱を示し、かつ
- 電圧60Vで、75.5%の拡散透過率および13%の後方散乱を示す。
【0220】
実施例8
本発明によるスイッチング要素8は、本発明によるスイッチング層Sを、以下に概略的に示す層系列において含む。
【0221】
【表24】
【0222】
スイッチング層Sを製造するために、ベース混合物#4(透明点:81℃、光学異方性:0.1531、誘電異方性:-5.0)と、反応性メソゲンR#1、R#2およびR#3と、光開始剤Irgacure 651とを上記の質量比で混合し、3分間にわたって光重合させる。
【0223】
スイッチング要素8は、
- 電圧0Vで、1.1%の拡散透過率および14%の後方散乱を示し、かつ
- 電圧50Vで、82.5%の拡散透過率および13%の後方散乱を示す。