(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】成形体及び成形型
(51)【国際特許分類】
H02K 3/50 20060101AFI20230724BHJP
H02K 15/12 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
H02K3/50 A
H02K15/12 E
(21)【出願番号】P 2018079236
(22)【出願日】2018-04-17
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000132932
【氏名又は名称】株式会社タカギセイコー
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】朝日 篤
(72)【発明者】
【氏名】廣田 和也
(72)【発明者】
【氏名】大西 義文
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-308250(JP,A)
【文献】特開2018-023222(JP,A)
【文献】特開2003-163051(JP,A)
【文献】登録実用新案第3113104(JP,U)
【文献】特開2002-050428(JP,A)
【文献】実開昭56-116853(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/50
H02K 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂部と、
前記第1樹脂部に被覆されるとともに、前記第1樹脂部の第1端部から突出する突出部を有する金属部と、
前記突出部の延在方向において前記第1端部に対して前記突出部とは反対側に位置する第2端部を有し、前記第1樹脂部を前記突出部の延在方向に突出させた状態で、前記第1樹脂部を被覆する第2樹脂部と、を有し、
前記第1樹脂部は、複数の前記金属部を各別に被覆し、
前記第2樹脂部は、前記第1樹脂部をまとめて被覆し、
前記金属部は、回転電機のコイルと外部電源との間を電気的に接続するバスバーであって、前記突出部の延在方向に交差する方向において、前記第2樹脂部から突出する第1延在部を備え、
前記第1樹脂部には、
前記第1樹脂部のうち前記第1延在部の延在方向
を向く部分から前記突出部の延在方向
を向く部分に亘って
連続的に開口するとともに、前記第1延在部及び前記突出部がまとめて挿入可能な挿入開口部が形成され、
前記第2樹脂部は、前記第1延在部を突出させた状態で、前記挿入開口部のうち前記第1延在部の延在方向
を向く部分を塞ぐとともに前記第1樹脂部を被覆する第1モールド部を備えている成形体。
【請求項2】
前記第1樹脂部のうち、前記第1端部と前記第2端部との間に位置する部分が平坦面に形成され、
前記第1端部のうち前記延在方向において前記突出部側を向く先端面と前記平坦面との境界部分は、湾曲面に形成されている
請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記第1樹脂部は、前記金属部に装着されている請求項1
又は請求項2に記載の成形体。
【請求項4】
請求項1から請求項
3の何れか1項に記載の成形体を成形するための成形型であって、
前記第1樹脂部及び前記金属部を保持するとともに、前記第2樹脂部を成形するキャビティを画成する型本体を備え、
前記型本体は、前記第1端部のうち、前記延在方向に交差する方向を向く面を保持する保持部を有している成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体及び成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機では、各相のコイルと外部電源とを電気的に接続するために、バスバーユニットが用いられることがある。バスバーユニットは、金属材料により形成された複数本のバスバーが、樹脂材料によってモールドされて構成されている。
【0003】
上述したバスバーユニットでは、品質の向上を図るために、例えば下記特許文献1に記載された構成が知られている。下記特許文献1に記載のバスバーユニットは、複数本のバスバーを各別に保持するキャップと、複数本のバスバーをキャップともにまとめてモールドする外側保持部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、バスバーユニット等の成形体では、更なる品質の向上が求められている。
【0006】
本発明は、品質の向上を図ることができる成形体及び成形型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る成形体は、第1樹脂部(例えば、実施形態におけるキャップ61)と、前記第1樹脂部に被覆されるとともに、前記第1樹脂部の第1端部(例えば、実施形態におけるキャップ突出部85)から突出する突出部を有する金属部(例えば、実施形態におけるバスバー31)と、前記突出部の延在方向(例えば、実施形態における延在方向L1)において前記第1端部に対して前記突出部とは反対側に位置する第2端部(例えば、実施形態における第2モールド部82)を有し、前記第1樹脂部を前記突出部の延在方向に突出させた状態で、前記第1樹脂部を被覆する第2樹脂部と、を有し、前記第1樹脂部は、複数の前記金属部を各別に被覆し、前記第2樹脂部は、前記第1樹脂部をまとめて被覆し、前記金属部は、回転電機のコイルと外部電源との間を電気的に接続するバスバーであって、前記突出部の延在方向に交差する方向において、前記第2樹脂部から突出する第1延在部(例えば、実施形態における第1延在部41)を備え、前記第1樹脂部には、前記第1樹脂部のうち前記第1延在部の延在方向を向く部分から前記突出部の延在方向を向く部分に亘って連続的に開口するとともに、前記第1延在部及び前記突出部がまとめて挿入可能な挿入開口部(例えば、実施形態における挿入開口部60)が形成され、前記第2樹脂部は、前記第1延在部を突出させた状態で、前記挿入開口部のうち前記第1延在部の延在方向を向く部分を塞ぐとともに前記第1樹脂部を被覆する第1モールド部(例えば、実施形態における第1モールド部81)を備えている。
【0008】
(2)上記(1)の態様に係る成形体において、前記第1樹脂部のうち、前記第1端部と前記第2端部との間に位置する部分が平坦面に形成され、前記第1端部のうち前記延在方向において前記突出部側を向く先端面と前記平坦面との境界部分は、湾曲面に形成されている。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)の態様に係る成形体において、前記第1樹脂部は、前記金属部に装着されていてもよい。
【0012】
(4)上記(1)から(3)の何れかに記載の成形体を成形するための成形型であって、前記第1樹脂部及び前記金属部を保持するとともに、前記第2樹脂部を成形するキャビティを画成する型本体を備え、前記型本体は、前記第1端部のうち、前記延在方向に交差する方向を向く面を保持する保持部を有している。
【発明の効果】
【0013】
上記(1),(4)の態様によれば、金属部が第1樹脂部に被覆されることで、金属部のうち、第2樹脂部の成形部分を第1樹脂部によって補強できる。これにより、第2樹脂部の成形時において、成形圧等によって金属部が型本体内で位置ずれしたり、撓んだりするのを抑制し、型本体内で金属部を高精度に位置決めできる。これにより、製造工程の簡素化が可能になり、低コスト化や品質の安定化を図ることができる。
【0014】
ここで、上記(1),(4)の態様では、第2樹脂部が第1樹脂部を突出させた状態で、第1樹脂部を被覆する構成とした。
この構成によれば、第1被覆部と第2被覆部との境界部分が、延在方向において第1端部よりも後退した位置(第1端部に対して突出部とは反対側の位置)に設定される。そのため、第1樹脂部のうち、延在方向に交差する方向を向く面であって、第1端部と第2端部との間に位置する部分に型本体を接触させ、第1樹脂部を保持できる。よって、型本体の保持部と第1樹脂部との接触面積を確保できる。これにより、例えば第1樹脂部の寸法ばらつき等によって、第1樹脂部の外面と型本体の保持部との間に作用する面圧が低い場合であっても、第2樹脂部の成形時において、第1端部の外面と保持部の内面との間を通じて保持部内に樹脂材料が流れ込むのを抑制できる。その結果、樹脂材料が第1端部の外面にバリとなって残存するのを抑制できる。
したがって、品質に優れた成形体を提供できる。
また、第1樹脂部が金属部を各別に保持しているので、型本体内において、各金属部を所望の位置にセットし易くなる。この状態で、第2樹脂部によって各金属部を一体化することで、各金属部の相対位置が高精度に位置決めされた成形体を提供できる。
さらに、例えば回転電機と外部電源との接続に線材等を用いる場合に比べて剛性を確保できる。しかも、本態様では、上述したように品質に優れた成形体を提供できるので、回転電機と外部電源とを接続した状態において、金属部の捩れや撓み等を抑制できる。これにより、成形体に作用する応力を低減でき、成形体の耐久性を向上させることができる。
【0015】
上記(2)の態様によれば、第2樹脂部の成形時において、第1端部を型本体により保持し易くなる。そのため、成形体の品質をより向上させることができる。
【0017】
上記(3)の態様によれば、金属部とは別で形成された第1樹脂部が金属部に装着されるため、製造工程の更なる簡素化を図ることができる。また、第1樹脂部と第2樹脂部とを例えば二色成形等により形成する場合と異なり、一次成形時(第1樹脂部の成形時)に射出圧等によって金属部が位置ずれするのを抑制できる。これにより、更なる品質の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る回転電機の全体構成を示す断面図である。
【
図2】実施形態に係るステータの一部を示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係るバスバーユニットの斜視図である。
【
図4】本実施形態に係るバスバーユニットにおいて、外側保持部を取り外した状態を示す部分斜視図である。
【
図6】外側保持部の成形工程を説明する工程図であって、
図5のVI-VI線に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[回転電機]
図1は、実施形態に係る回転電機1の全体構成を示す概略構成図(断面図)である。
図1に示す回転電機1は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に搭載される走行用モータである。但し、本発明の構成は、走行用モータに限らず、発電用モータやその他用途のモータ、又は車両用以外の回転電機(発電機を含む)にも適用可能である。
【0021】
回転電機1は、ケース3と、ステータ5と、ロータ7と、出力シャフト9と、を備えている。
出力シャフト9は、ケース3に回転可能に支持されている。
ロータ7は、出力シャフト9に外嵌されている。なお、以下の説明では、出力シャフト9の軸線Oに沿う方向を単に軸方向といい、軸線Oに直交する方向を径方向といい、軸線O周りの方向を周方向という場合がある。
【0022】
図2は、ステータ5の一部を示す斜視図である。
図2に示すように、ステータ5は、ステータコア11と、ステータコア11に装着されたコイル13と、コイル13と外部電源(不図示)とを接続するバスバーユニット(成形体)15と、を備えている。
【0023】
ステータコア11は、ロータ7(
図1参照)を径方向の外側から取り囲む筒状に形成されている。具体的に、ステータコア11は、筒状のバックヨーク部19と、ティース部21と、を有している。
バックヨーク部19は、上述したケース3(
図1参照)に固定されている。
ティース部21は、バックヨーク部19の内周面から径方向の内側に向けて突出している。ティース部21は、周方向に間隔をあけて複数形成されている。そして、周方向で隣り合うティース部21間には、コイル13が挿通されるスロット23が形成されている。すなわち、スロット23は、ステータコア11を軸方向に貫通している。
【0024】
コイル13は、U相、V相、W相により構成された3相コイルである。本実施形態の各相のコイル13は、対応する複数のセグメントコイル24が互いに接続されることで形成されている。各セグメントコイル24は、ステータコア11のスロット23に挿入されてステータコア11に装着されている。同相のセグメントコイル24同士は、ステータコア11に対して軸方向の第1側において、TIG溶接やレーザ溶接等で接合されている。
【0025】
なお、コイル13の構成は、適宜変更が可能である。例えば、コイル13は、セグメントコイル24に限らず、ティース部21に巻回する等の方法でステータコア11に装着しても構わない。本実施形態のコイル13は、分布巻きによりステータコア11に装着されているが、この構成のみに限らず、集中巻きによりステータコア11に装着されていても構わない。
【0026】
<バスバーユニット>
バスバーユニット15は、複数のバスバー(金属部)31と、第1被覆部32と、第2被覆部33と、を備えている。
各バスバー31は、金属(例えば、銅)等の導電性を有する板材に対して板金加工を施すことにより立体的な形状に形成されている。各バスバー31は、周方向に並んで配置されている。各バスバー31は、互いに対応する形状に形成されている。そのため、以下の説明では、一のバスバー31を例にして説明する。また、他のバスバー31において、一のバスバー31に対応する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0027】
図3は、バスバーユニット15の斜視図である。
図4は、外側保持部62を取り外した状態におけるバスバーユニット15の部分斜視図である。
図3、
図4に示すように、バスバー31は、第1延在部41と、第1延在部41に接続された第2延在部42(
図4参照)と、第2延在部42に接続された第3延在部43と、第3延在部43に接続された第4延在部44と、を備えている。なお、以下の説明では、第1延在部41の延在方向をX方向といい、第2延在部42の延在方向をY方向といい、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向という場合がある。本実施形態において、X方向は軸方向に一致している。
【0028】
第1延在部41の+X方向端部には、外部接続端子51が連設されている。
図2に示すように、外部接続端子51は、第1延在部41における+X方向端部から+Z方向(ステータコア11から離間する向き)に延在している。外部接続端子51は、図示しない外部電源の端子台に電気的に接続される。
【0029】
図4に示すように、第2延在部42は、第1延在部41における-X方向端部から+Y方向に延設されている。本実施形態において、第2延在部42の延在方向は、第1延在部41の延在方向と同一平面上において、第1延在部41に対して直交している。但し、第2延在部42の延在方向は、適宜変更が可能である。
【0030】
第3延在部43は、+Z方向端部が第2延在部42における+Y方向端部に接続されている。第3延在部43は、第2延在部42における+Y方向端部から第1延在部41及び第2延在部42のそれぞれの延在方向に交差する方向に延在している。具体的に、第3延在部43は、+Z方向から-Z方向に向かう従い+Y方向に向けて延在している。
【0031】
図3に示すように、第4延在部44は、+Z方向端部が第3延在部43における-Z方向端部に接続されている。第4延在部44は、第3延在部43における-Z方向端部から上述した各延在部41~43それぞれの延在方向に交差する方向に延在している。具体的に、第4延在部44は、-Z方向に向かうに従い-Y方向に延在している。
【0032】
第4延在部44における-Z方向端部にはコイル接続端子53が形成されている。コイル接続端子53は、第4延在部44における-Z方向端部から+X方向に延在している。
図2に示すように、各バスバー31のコイル接続端子53は、ステータコア11に対して軸方向の第1側に引き出された対応する各相のコイル13(セグメントコイル24)に各別に接続されている。これにより、外部電源と各相のコイル13とが、各バスバー31によって各相ずつ電気的に接続されている。コイル13には、バスバー31を通じて外部電源から電力が供給される。
【0033】
なお、
図1に示すように、コイル13のうち、ステータコア11から軸方向に突出した部分や、バスバーユニット15の一部(コイル接続端子53の周辺)には、粉体塗装が施されている(
図1における粉体塗装部55)。粉体塗装部55は、例えば絶縁性の粉体粒子(粉体塗料)が流動性を有した状態で供給され、その粉体粒子がさらに加熱されて熱硬化することで形成される。
【0034】
図3に示すように、第1被覆部32は、各バスバー31のうち、第1延在部41から第3延在部43に至る部分をまとめて覆っている。具体的に、第1被覆部32は、各バスバー31のうち、第1延在部41における-X方向端部、第2延在部42の全域及び第3延在部43における-Y方向端部(以下、バスバー31の被覆領域31aという場合がある。)を被覆している。第1被覆部32は、キャップ(第1樹脂部)61と、外側保持部(第2樹脂部)62と、を有している。
【0035】
図4に示すように、キャップ61は、絶縁材料(樹脂材料)により形成されている。キャップ61は、各バスバー31の被覆領域31aにそれぞれ別々に装着されている。但し、キャップ61は、各バスバー31それぞれにインサート成形等によって形成してもよい。なお、各キャップ61は、それぞれ同等の構成により形成されているため、以下の説明では一のキャップ61を例にして説明する。
【0036】
キャップ61は、バスバー31の被覆領域31aを挟み込んで、被覆領域31aを内部に保持している。キャップ61には、バスバー31を挿入するための挿入開口部60が形成されている。挿入開口部60は、キャップ61に対して+X方向からバスバー31を挿入可能に構成されている。具体的に、各挿入開口部60は、キャップ61のうち+X方向を向く部分から+Y方向を向く部分に亘って形成されている。
【0037】
キャップ61は、第1延在部41及び第2延在部42を収容する第1収容部63と、第3延在部43を収容する第2収容部64と、を有している。
第1収容部63は、第1延在部41及び第2延在部42に倣って形成されている。第1収容部63は、第1延在部41における-X方向端部及び第2延在部42の全域をZ方向の両側及び-X方向から覆っている。
【0038】
第2収容部64は、第3延在部43に倣って形成されている。第2収容部64は、第3延在部43をZ方向の両側及び-X方向から覆っている。上述した挿入開口部60は、第1収容部63及び第2収容部64における+X方向端面上で開口するとともに、第2収容部64における+Y方向端面上で開口している。なお、第1収容部63及び第2収容部64の内面は、少なくとも一部がバスバー31に接触していればよい。
【0039】
外側保持部62は、各バスバー31をY方向に間隔をあけた状態で一体に固定している。本実施形態において、外側保持部62は、各バスバー31の被覆領域31aを、キャップ61とともに被覆している。具体的に、外側保持部62は、各キャップ61を被覆するキャップ被覆部71と、キャップ被覆部71同士を接続する接続部72と、を有している。すなわち、本実施形態の外側保持部62は、Y方向で隣り合うキャップ被覆部71同士が接続部72により接続されている。なお、外側保持部62は、各キャップ61と同様の材料により形成されている。但し、外側保持部62は、絶縁材料であれば、キャップ61と異なる材料により形成しても構わない。また、本実施形態において、外側保持部62は、キャップ61の外側のみを被覆しているが、外側保持部62の一部がキャップ61の内側に進入していても構わない。
【0040】
キャップ被覆部71は、キャップ61よりも一回り大きく形成されている。キャップ被覆部71は、第1収容部63を被覆する第1モールド部81と、第2収容部64を被覆する第2モールド部(第2端部)82と、を有している。
第1モールド部81は、挿入開口部60を塞いだ状態で第1収容部63の周囲を被覆している。本実施形態において、第1モールド部81における+X方向端部は、バスバー31の第1延在部41に直接密接している。第1モールド部81のうち、-X方向端部には、キャップ61(第1収容部63)を外部に露出させる露出孔84が形成されている。
【0041】
図5は、
図3のV部拡大図である。
図5に示すように、第2モールド部82は、挿入開口部60を塞いだ状態で第2収容部64の周囲を被覆している。
【0042】
ここで、本実施形態のバスバーユニット15では、第3延在部43の延在方向(以下、単に延在方向L1という。)において、第3延在部43がキャップ61(第2収容部64)の挿入開口部60を通じて突出している。すなわち、第3延在部43のうち、キャップ61から突出した部分が、本実施形態の突出部を構成している。
また、延在方向L1において、第2収容部64は、第2モールド部82から突出したキャップ突出部(第1端部)85を有している。キャップ突出部85は、全周に亘って第2モールド部82から外部に露出している。
【0043】
第2収容部64の外面のうち、第3延在部43の厚さ方向(以下、単に厚さ方向L2という。)の両側を向く面(以下、表面64a及び裏面64bという。)は、厚さ方向L2に直交する平坦面とされている。したがって、第2収容部64の表面64a及び裏面64bは、第2モールド部82から突出した部分、及び第2モールド部82との界面に亘って平坦な連続面とされている。なお、第2収容部64の表面64a及び裏面64bは、少なくともキャップ突出部85に位置する部分が平坦に形成されていればよい。
【0044】
第2収容部64の外面のうち、延在方向L1を向く先端面64c(キャップ突出部85の先端面)と表面64aとがなす角部、先端面64cと裏面64bとがなす角部は湾曲面に形成されている。但し、先端面64c及び表面64a、並びに先端面64c及び裏面64bは、それぞれ直交していてもよい。なお、本実施形態では、第2収容部64の外面のうち、第3延在部43の幅方向(以下、単に幅方向L3という。)を向く両端面は、幅方向L3に直交する平坦面とされている。第2収容部64における幅方向L3を向く両端面は、延在方向L1の先端部が第2モールド部82から突出した状態で、第2モールド部82に覆われている。
【0045】
図3に示すように、第2被覆部33は、上述した第4延在部44における-Z方向端部からコイル接続端子53における-X方向端部に至る部分を被覆している。第2被覆部33は、上述した第1被覆部32と同様に、バスバー31(第4延在部44)に各別に装着されるキャップ90と、キャップ90及びバスバー31を一体にする外側保持部91と、を有している。
【0046】
[バスバーユニットの製造方法]
次に、上述したバスバーユニット15の製造方法について説明する。以下の説明では、第1被覆部32の製造方法について主に説明する。
図4に示すように、各バスバー31にキャップ61を装着する。具体的には、挿入開口部60を通してバスバー31を+X方向からキャップ61内に挿入する。これにより、各バスバー31のうち、第1延在部41から第3延在部43に至る被覆領域31aがキャップ61により各別に保持される。
【0047】
図6は、外側保持部62の成形工程を説明する工程図であって、
図5のVI-VI線に相当する断面図である。
続いて、
図6に示すように、各バスバー31を成形型100内にセットし、各バスバー31の被覆領域31aをキャップ61とともにまとめてモールドする。本実施形態の成形型100は、第1型(型本体)101と、第1型101に対して幅方向L3に相対移動可能に構成された第2型(不図示)と、を備えている。そして、第1型101及び第2型に画成された空間は、外側保持部62を成形するためのキャビティCを構成している。すなわち、キャビティCは、第1モールド部81を成形する第1成形部C1と、第2モールド部82を成形する第2成形部C2と、接続部72を成形する第3成形部C3と、を有している。
【0048】
ここで、第1型101において、第2成形部C2よりも延在方向L1の先端側には、保持部110が形成されている。保持部110は、外側保持部62の成形時において、キャップ突出部85を保持する。保持部110は、キャップ突出部85の外面形状に倣って形成されている。バスバー31は、キャップ突出部85が保持部110に嵌合(軽圧入)された状態で、成形型100内にセットされる。この場合、保持部110の内面は、キャップ突出部85の先端面64cに加え、表面64a及び裏面64bに至る部分に密接する。そのため、第2成形部C2と保持部110との境界部分は、キャップ61の表面64a及び裏面64b(キャップ突出部85の先端面64cよりも延在方向L1の第2側)に設定される。
【0049】
上述した成形型100を用いて外側保持部62を成形するには、まず各バスバー31の被覆領域31aを成形型100の第1型101及び第2型により幅方向L3で挟み込む。続いて、成形型100内に溶融状態の樹脂材料Jを充填する。すると、成形型100内のキャビティC内において、樹脂材料Jがキャップ61を覆うように充填される。本実施形態では、キャップ突出部85が保持部110内に軽圧入されているため、保持部110の内面とキャップ突出部85の外面とが密接している。そのため、第2成形部C2内を流れる樹脂材料Jが、保持部110内に流れ込むのが抑制される。
【0050】
樹脂材料Jの充填後、成形型100内の樹脂材料Jを固化させる。その後、型開きすることで、上述したバスバーユニット15が完成する。
【0051】
このように、本実施形態では、バスバー31にキャップ61を装着することで、バスバー31のうち、外側保持部62の成形部分をキャップ61によって補強できる。これにより、外側保持部62の成形時において、成形圧等によってバスバー31が成形型100内で位置ずれしたり、撓んだりするのを抑制し、成形型100内でバスバー31を高精度に位置決めできる。これにより、製造工程の簡素化が可能になり、低コスト化や品質の安定化を図ることができる。
【0052】
ここで、本実施形態では、外側保持部62がキャップ突出部85を延在方向L1に突出させた状態でキャップ61を被覆する構成とした。
この構成によれば、キャップ61と外側保持部62との境界部分が、延在方向L1においてキャップ61の先端面64cよりも後退した位置に設定される。そのため、成形型100の保持部110をキャップ突出部85の表面64a及び裏面64bに接触させることができるので、保持部110とキャップ突出部85との接触面積を確保できる。これにより、例えばキャップ61の寸法ばらつき等によって、キャップ61の外面と保持部110との間に作用する面圧が低い場合であっても、外側保持部62の成形時において、キャップ突出部85の外面と保持部110の内面との間を通じて保持部110内に樹脂材料Jが流れ込むのを抑制できる。その結果、樹脂材料Jがキャップ突出部85の外面にバリとなって残存するのを抑制できる。
したがって、品質に優れたバスバーユニット15を提供できる。
【0053】
本実施形態では、キャップ突出部85の表面64a及び裏面64bが平坦面に形成された構成とした。
この構成によれば、外側保持部62の成形時において、キャップ突出部85を保持し易くなる。そのため、バスバーユニット15の品質をより向上させることができる。
【0054】
本実施形態では、キャップ61によってバスバー31を各別に保持し、外側保持部62によって各キャップ61をまとめて被覆する構成とした。
この構成によれば、キャップ61がバスバー31を各別に保持しているので、成形型100内において、各バスバー31を所望の位置にセットし易くなる。この状態で、外側保持部62によって各バスバー31を一体化することで、各バスバー31の相対位置が高精度に位置決めされたバスバーユニット15を提供できる。
【0055】
本実施形態では、キャップ61がバスバー31に装着された構成とした。
この構成によれば、バスバー31とは別で形成されたキャップ61がバスバー31に装着されるため、製造工程の更なる簡素化を図ることができる。また、第1樹脂部と第2樹脂部とを例えば二色成形等により形成する場合と異なり、一次成形時(第1樹脂部の成形時)に射出圧等によってバスバー31が位置ずれするのを抑制できる。これにより、更なる品質の安定化を図ることができる。
【0056】
本実施形態では、本発明に係る金属部がバスバー31である構成とした。
この構成によれば、例えば回転電機1と外部電源との接続に線材等を用いる場合に比べて剛性を確保できる。しかも、本実施形態では、上述したように品質に優れたバスバーユニット15を提供できるので、回転電機1と外部電源とを接続した状態において、バスバー31の捩れや撓み等を抑制できる。これにより、バスバーユニット15に作用する応力を低減でき、バスバーユニット15の耐久性を向上させることができる。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
例えば、本実施形態では、キャップ61が絶縁材料により形成された場合について説明したが、この構成のみに限らず、導電性を有する材料によりキャップ61を形成しても構わない。
上述した実施形態では、別体のキャップ61を第1樹脂部として用いる構成について説明したが、この構成のみに限らず、第1樹脂部と第2樹脂部とを二色成形によって形成しても構わない。
上述した実施形態では、バスバー31が異なる向きに延在する複数の延在部41~44を備える構成について説明したが、この構成のみに限らず、バスバー31の形状は適宜変更が可能である。例えば、バスバー31は、直線状でも、2方向のみに屈曲されていても構わない。また、バスバー31の各延在部のなす角度についても適宜変更が可能である。
【0058】
上述した実施形態では、複数本のバスバー31を外側保持部62により一体化する構成について説明したが、この構成のみに限られない。バスバー31を外側保持部62により一本毎被覆してもよい。
上述した実施形態では、本発明に係る成形体を回転電機1に用いるバスバーユニット15に採用した場合について説明したが、この構成のみに限られない。成形体は、回転電機1以外(例えば、PCU等の車載機器)のバスバーユニットに採用してもよい。また、成形体は、レゾルバ、一体成型型ボビン等、コイルとインシュレータとを一体形成する場合に採用してもよい。その他、成形体は、意匠性の観点から多色成形が必要となる部分等に採用してもよい。
【0059】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…回転電機
13…コイル
15…バスバーユニット(成形体)
31…バスバー(金属部)
61…キャップ(第1樹脂部)
62…外側保持部(第2樹脂部)
82…第2モールド部(第2端部)
85…キャップ突出部(第1端部)
100…成形型
101…第1型(型本体)