(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池の容量低下と寿命予測のためのデータ駆動モデル
(51)【国際特許分類】
G01R 31/367 20190101AFI20230724BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20230724BHJP
G01R 31/378 20190101ALI20230724BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230724BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
G01R31/367
G01R31/392
G01R31/378
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 Q
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018195822
(22)【出願日】2018-10-17
【審査請求日】2021-10-14
(32)【優先日】2017-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(73)【特許権者】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリステン・アン・セヴェルソン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ディーン・ブラァツ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・シー・チュエ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・エム・アティア
(72)【発明者】
【氏名】ノーマン・ジン
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・ジェイ・ハリス
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・パーキンズ
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0115355(US,A1)
【文献】特開2008-275581(JP,A)
【文献】特開2016-133514(JP,A)
【文献】特開2015-090709(JP,A)
【文献】特開2017-110969(JP,A)
【文献】特開2016-176924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/44
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルの動作特性を予測するためのデータ駆動型予測モデリングで使用するための電池セルのデータを収集する方法であって、
(a)実験室内で電池サイクリング機器を使用して、電圧V1と電圧V2との間で複数の電池セルの充放電サイクリングを行うことによってデータセットを収集するステップと、
(b)前記サイクリング中に、各電池セルの1種類以上の物理的性質を連続的に測定するステップと、
(c)測定された前記1種類以上の物理的性質に基づいて、前記電池セルの各々の充電量対電圧曲線Q(V)を生成するステップであって、前記充電量対電圧曲線Q(V)は所与のサイクルでの各電池セルの残量に対する電圧を表す曲線である、該ステップと、
(d)前記充電量対電圧曲線のデータを使用して、電池セル充電量のサイクル間変化曲線ΔQ(V)を計算するステップであって、電池セル充電量のサイクル間変化曲線ΔQ(V)は、二つの異なるサイクル間の充電量対電圧曲線Q(V)の差である、該ステップと、
(e)前記ΔQ(V)の1種類以上の要約統計量を計算するステップであって、前記1種類以上の要約統計量は、電池セルの動作特性を示すモデルの作成に使用される、該ステップと、
(f)前記1種類以上の要約統計量を出力するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記電池セルの前記1種類以上の物理的性質は、電池セル電圧、電池セル電流、電池セル缶温度、および電池セル内部抵抗からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記連続的に測定するステップ(b)は、分光法を用いて電気化学インピーダンスを測定し、かつひずみゲージを用いてひずみを測定するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記電池セルの前記1種類以上の物理的性質は、各電池セルの内部抵抗を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記1種類以上の要約統計量は、最大、最小、平均、分散、歪度、および尖度からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項6】
電池セルをサイクリングすることによって収集されたデータから1種類以上の電池セル動作特性を予測する方法であって、
請求項1に記載の方法を実施して、ΔQ(V)の前記1種類以上の要約統計量を収集するステップと、
収集されたデータを用い
て機械学習モデルを訓練して、1種類以上の電池セル動作特性を、前記ΔQ(V)の前記1種類以上の要約統計量に関連付けるステップと、
前記訓練後の前記機械学習モデルを用いて、電池セルをサイクリングすることによって収集されたデータから1種類以上の電池セル動作特性を予測するステップであって、前記1種類以上の電池セル動作特性は、電池寿命を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記電池セル動作特性は、電池寿命、前記電池寿命の対数、および電池性能のブール分類からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年10月17日に出願された米国仮特許出願第62/573565号を基礎とする優先権を主張し、この出願の内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、一般的に電池寿命に関する。本発明は、特に、劣化メカニズムに関する事前の知識なしに、早期サイクルデータを使用して電池セルの寿命を正確に予測する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池は、低価格でかつ価格はさらに下がりつつあり、エネルギー密度が高く、寿命が長いため、幅広い用途に採用されている。しかし、多くの化学的、機械的、および電子的システムの場合と同様に、電池サイクル寿命が長いことで、何ヶ月から何年もの間、性能のフィードバックが遅れることが多い。早期のサイクルデータを使用してサイクル寿命が正確に予測できれば、電池製造、最適化、および使用における新機能の実現のための壁を打ち破ることになる。例えば、電池製造業者にあっては、セル開発サイクルを加速し、新しい製造バッチの検証を迅速に行い、そして予想される寿命までに新しく製造されたセルを等級付けすることが可能となる。さらに、家電製品や電気自動車のユーザは、電池の平均寿命を見積もることが可能となる。最後に、故障の早期予測により、急速充電やフォーメーションサイクリングなどの高スループットの最適化用途に供することが可能となるが、これは故障の早期予測以外の方法では、特別な時間と機器のコストのために実現できないものである。リチウムイオン電池の容量低下および/またはサイクル寿命を予測する技術は、動作条件を制御するときでさえ、サイクリングによる劣化が非線形でばらつきが大きいために困難であるが、その広い有用性を考えると極めて重要である。
【0004】
多くの研究がリチウムイオン電池のサイクル寿命をモデル化してきた。初期の研究では、電力と容量の減少を予測するための半経験的モデルへの適合が達成された。それ以来、他の多くの研究において、固体-電解質界面の成長、リチウムメッキ、活性物質の減少、およびインピーダンスの増加などの多様なメカニズムを説明する物理的および半経験的な電池劣化モデルが提案されてきた。電池管理システムの残存耐用年数の予測は、多くの場合これらの機械論的および半経験的モデルに依存している。クーロン効率やインピーダンス分光法などの特殊な診断測定によってもサイクル寿命を推定することができる。これらの化学的および/または機構特異的モデルにより予測は成功しているが、多くの劣化モードおよびそれらのセル内部の熱的および機械的不均一性との関連から、関連する条件下(例えば急速充電)でサイクリングされるセル全部を記述するモデルの開発は依然として困難である。
【0005】
サイクル寿命を予測するために統計的および機械学習技術を使用するアプローチは、魅力的な、メカニズムに非依存の代替的な選択肢である。最近、計算能力およびデータ生成における進歩により、これらの技術が様々なタスク、例えば材料特性の予測、化学合成経路の特定、エネルギー保存と触媒作用のための材料の発見等を含むタスクに関する進歩を加速させることが可能となった。実験室と現実世界の両方の条件下で収集されたデータを使用して、電池の残存利用可能時間を予測するための機械学習技術を応用した文献が増加している。一般的に、これらの研究は、故障までの軌跡に沿って少なくとも25%の劣化に対応するデータを蓄積した後、または寿命の初めの特殊な測定値を使用した後に予測を行い、モデルの解釈を含まない。典型的には劣化プロセスが非線形(初期のサイクルでは容量劣化は無視できる程度)であるため、および寿命の範囲内の限られた期間のなかで使用されてきデータセットは比較的小さいために、著しく少ない劣化からサイクル寿命を正確に早期予測することは難しい。例えば、非線形の劣化プロファイルを示す24個のセルについて、サイクル80での容量値群に対してサイクル500での容量値群の相関をとると、弱い相関しか認められなかった(ρ=0.1)。要するに、最先端の予測モデルを改良するとすれば、それは、精度をより高めること、予測をより早く行うこと、解釈可能性をより大きくすること、または広範囲のサイクリング条件へのより広い適用を可能にすること等となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
劣化メカニズムに関する予備知識なしに、早期のサイクルデータを使用して市販の電池セルのサイクル寿命を正確に予測する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
当技術分野におけるこのニーズに対処するために、寿命によって電池セルを予測するためにデータ駆動型予測モデリングを使用する方法が提供され、前記方法は、電池サイクリング機器を使用して、電圧V1と電圧V2との間の複数の電池セルをサイクリングすることによって訓練データセットを収集するステップと、前記サイクリング中に、各電池セルの電池セル電圧、電池セル電流、電池セル缶温度、および電池セル内部抵抗、または電池セル内部抵抗を含む電池セル物性を連続的に測定するステップと、非一時的コンピュータ媒体上のアルゴリズムを使用して、前記電池セルの各々の電圧曲線を生成するステップであって、前記電圧曲線は所与のサイクルでの容量に依存する、該ステップと、前記電圧曲線のデータを使用して、セル電圧対充電曲線Q(V)を出力するために電池セル充電のサイクル間変化を計算するステップであって、セル電圧対充電曲線Q(V)の出力はΔQ(V)である、該ステップと、前記ΔQ(V)の変換を生成するステップと、機械学習モデルをサイクリングされた前記複数の電池セル、または後日動作する追加の電池セルに適用して、予測された電池セル動作特性を出力するステップとを含む。
【0008】
本発明の一態様によれば、前記電池セルの物性は、電池セル電圧、電池セル電流、電池セル缶温度、および電池セル内部抵抗を含み得る。
【0009】
本発明の別の態様では、前記連続的に測定するステップは、分光法を用いる電気化学インピーダンスを測定し、かつひずみゲージを用いるひずみを測定するステップをさらに含む。
【0010】
本発明のさらに別の態様において、ΔQ(V)の変換を生成する前記ステップで生成される変換は、電圧V1における値、および電圧V2における値、または前記V1と前記V2との間の値を含む。
【0011】
本発明のさらに別の態様において、前記電池セル動作特性は、電池寿命、前記電池寿命の対数、および電池性能のブール分類からなる群から選択され、前記電池サイクル寿命は、寿命、エネルギー、または電力を含む。
【0012】
本発明の他の態様によれば、出力に関する前記電池セル動作特性が、寿命出力、予測サイクル寿命出力の対数、および電池性能出力の予測される分類からなる群から選択され、前記電池の寿命は、サイクル寿命、カレンダ寿命、エネルギー、または電力を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1A~
図1Fからなり、本発明の実施形態を示す。
図1Aは、LFP/グラファイトセルの最初の1,000サイクルの放電容量を示す。各曲線は、開示全体を通して行われたものであり、電池のサイクル寿命に応じて拡大縮小される。
図1Bは、
図1Aの詳細図であり、最初の100サイクルのみを示す。サイクル寿命の明確なランキングは、サイクル100によっては現れていない。
図1Cは、サイクル100における劣化状態のヒストグラムである。劣化が最大の劣化(90%)超のセルは除外され、残りの分布の詳細が表示されている。
図1Dは、サイクル2での放電容量の関数としてのサイクル寿命である。サイクル2の容量とサイクル寿命の対数との相関係数は-0.06である。
図1Eは、サイクル100での放電容量の関数としてのサイクル寿命を示す。サイクル100での容量とサイクル寿命の対数との相関係数は0.27である。
図1Fは、サイクル95から100までの放電容量曲線の傾きの関数としてのサイクル寿命を示す。この傾きとサイクル寿命の対数との相関係数は0.47である。
【
図2】
図2A~
図2Cからなり、本発明の実施形態を示す。
図2Aは、代表的な電池セルの100および10サイクル目の放電容量曲線を示す。
図2Bは、124セルについて、100番目と10番目のサイクルの間の電圧の関数としての放電容量曲線の差、ΔQ
100-10(V)を示す。
図2Cは、ΔQ
100-10(V)の分散の関数としてのサイクル寿命の対数-対数軸上にプロットしたものであり、相関係数は-0.93であった。すべてのプロットで、濃淡は最終サイクル寿命に基づいて決定される。cでは、濃淡がy軸と重複している。
【
図3】
図3A~
図3Cからなり、特徴ベースのモデルのいくつかの実施形態における観察、予測サイクル寿命を示す。訓練(トレーニング)データは、モデル構造と係数値を学習するために使用される。テストデータは、モデルの一般化可能性を評価するために使用される。後者はモデル開発後に生成されたので、1次テストと2次テストのデータセットは区別される。垂直の点線は、観察されたサイクル寿命に関連していつ予測されるかを示す。挿入図は、1次および2次テストデータについての残差(予測-観察)のヒストグラムを示す。
図3Aは、ΔQ
100-10(V)分散の対数のみを使用した「分散」モデルを示す。
図3Bは、表2に記載された放電サイクル情報のみに基づく6つの特徴を使用する「放電」モデルを示す。
図3Cは、表2に記載された9つの特徴を使用した「フル(完全)」モデルを示す。一部の温度プローブは実験中に接触が切れたので、4つのセルは完全モデル解析から除外した。
【
図4】
図4A~
図4Lからなり、3つのセルを周期的な低速の診断サイクルでテストした結果を示す。
図4A~
図4Cでは、プロットは低速サイクリングを用いたdQ/dVであり、
図4D~
図4Fでは、プロットは、低速サイクリングを使用したdV/dQであり、
図4G~
図4Iでは、プロットは、高速サイクリングを使用したdQ/dVであり、
図4G~
図4Iでは、プロットは、高速サイクリングを用いたΔQ(V)である。黒い実線は最初のサイクル(高速サイクルの場合はサイクル10)、灰色の点線はサイクル101または100(それぞれ高速と低速)、そして灰色の太い線は寿命の終了(80%SOH)である。ΔQ(V)については、100サイクル毎に細い灰色の点線が追加されている。低速サイクリングを用いて観察されたパターンは、LAMd
eNEおよびLLIと一致している。これらの特徴は急速充電中には不鮮明になる。本発明の実施形態によれば、高スループットデータセットを使用して訓練された分散ΔQ(V)の対数モデルは、寿命を15%以内で予測することができる。
【
図5】
図5Aおよび
図5Bからなり、ΔQ
i-j(V)の分散の対数のみを使用してデータセットを訓練およびテストするための、あるサイクルでのRMSE誤差を示し、分析に使用される放電サイクルは様々である。これらの誤差は、データの20のランダムな区分にわたって平均された訓練データセット(トレーニングデータセット)とテストデータセットに平均化される。サイクル80以降の誤差は比較的フラットである。サイクルj=55およびi=70付近の誤差の増加は、チャンバの温度変動によるものである(実験温度については
図15A~15Bを参照)。
【
図6】全セルに対するサイクル番号の関数としての平均セル温度を示す。本発明の実施形態によれば、濃淡はサイクル寿命を表す。
【
図7】3つの異なるセルについての温度プロファイルを時間およびサイクル番号の関数として示す。各線は100サイクルの増分を表し、濃い色合いは大きいサイクル番号を表す。10分前後のピークは充電中のピークであり、これは充電ポリシーの関数として実質的に変化する一方、本発明によれば、50分前後のピークは放電中のピークである。
【
図8】
図8A~
図8Iからなり、表3に記載されたフルモデルにおいて使用される9つの特徴を示す。線形モデルの特徴の係数値は、各グラフの上に示されている。訓練セル、1次テストセル、および2次テストセルは、それぞれ円、四角形、および三角形で表されている。本発明によれば、各特徴は訓練データに基づいてzスコア付けされている。
【
図9】「容量低下曲線」モデルについて観察、予測されたサイクル寿命を示す。訓練データは、モデル構造と係数値を学習するために使用される。テストデータは、モデルの一般化可能性を評価するために使用される。垂直の点線は、予測が、観察されたサイクル寿命に関連していつ行われるかを示す。モデルで使用されている特徴は表4にあります。挿入図は、本発明による、1次および2次試験データについての残差(予測-観測)のヒストグラムを示す。外れ値電池の残差は表示されていない。
【
図10】4つの代表的なセルについて、サイクル番号の関数として放電終了時の定電圧を保持している間に測定された容量を示す。本発明によれば、より低いカットオフ電位は2Vであり、現在のカットオフ条件はC/50である。
【
図11】周期的に低速で充電する電池の放電容量曲線を示す。本発明によれば、サイクル100では低速(C/10)充電および放電サイクルが使用され、その結果、以降のサイクルで放電容量が増加する。
【
図12】
図12A~
図12Cからなり、代替的なΔQ(V)特徴についてのインデクシング方式の結果を示す。
図12Aにおいて、早期インデックスが、各電池iについて黒いxで示される最大達成容量インデックスh
iに基づいて決定される。次にΔQ(V)が、各ΔQ(V)において使用された経過サイクル数が同数となるように、Q
k(V)-Q
hi(V)(式中k=j+h
i-max
ih
i)として計算される。
図12Bおよび
図12Cは、本発明による、訓練(トレーニング)データおよびテストデータについてΔQ(V)の分散を使用するモデルの平均誤差を示す。
【
図13】相対放電容量曲線を用いてΔQ(V)特徴を適用するための指標の選択の例を示す。各放電容量は、最大放電容量値(
図12Aに示す)によってスケーリングされる。本発明によれば、各×は相対放電容量0.995に対応するサイクルを示す。
【
図14】
図14Aおよび
図14Bからなり、ΔQ(V)特徴についての代替的なインデクシング方式の結果を示す。指標は、放電容量が相対容量低下に達したときに基づいている。相対容量は、放電容量軌跡を電池の最大容量で割って求められる。一例を
図S8に示す。モデルは、ΔQ(V)の分散を使用する。本発明の一実施形態によれば、400を超えるRMSE値は、読みやすさを改善するために閾値処理される。
【
図15】
図15Aおよび
図15Bからなり、最初の150サイクルにわたる各電池の平均温度を示す。本発明によれば、バッチ1で観察された温度の急上昇は、
図5で観察された性能の低下に対応する。
【
図16】
図5の結果に対応する係数の値を示す。本発明によれば、モデルは、yh
k=wx
k+b(式中、yh
kは電池kの予測サイクル寿命、x
kは電池kのΔQ(V)特性、wは係数、bはオフセット項)である。
【
図17】
図17Aおよび
図17Bからなり、本発明による、550サイクルの寿命閾値を使用した20回のランダム訓練/テスト分割についての平均AUCを示す。
【
図18】
図18Aおよび
図18Bからなり、本発明による、700サイクルの寿命閾値を使用した20回のランダム訓練/テスト分割についての平均AUCを示す。
【
図19】「分散分類器」を用いて、電池の寿命が550サイクルの寿命閾値を超えた確率と観察されたサイクル寿命を比較したものである。決定境界は0.5である。本発明によれば、ΔQ(V)=Q
5(V)-Q
4(V)の分散が分類モデルにおける唯一の特徴である。
【
図20】「分散分類器」を用いて、電池の寿命が550サイクルの寿命閾値を超えた確率vs観察されたサイクル寿命を示す。決定境界は0.5である。本発明によれば、この分類作業では5サイクルを使用した。
【
図22】
図22Aおよび
図22Bからなり、サイクル100における3つの電池についての電圧(黒四角)の関数としての放電容量に対するスプライン曲線当てはめ(実線)を示す。本発明によれば、平滑化スプラインは、放電容量と電圧との間の関係を正確に捉え、データのベクトル操作を容易化できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
リチウムイオン電池のような複雑で非線形のシステムの寿命を正確に予測することは、技術開発を加速するために非常に重要である。しかし、多様な経年劣化メカニズム、顕著なデバイスの変動性、および動的な動作条件が依然として大きな課題となっている。この問題を研究するために、急速充電条件下でサイクル処理された124個の市販のリン酸鉄リチウム/グラファイトセルのデータを含む包括的なデータセットが生成された。これらのセルは150から2,300サイクルにおよび広範囲のサイクル寿命を示し、また、寿命は公称容量からの20%の劣化と定義されている。また容量劣化を示していない初期サイクルからの放電電圧曲線を使用することにより、機械学習ツールを適用して、セルのサイクル寿命予測とサイクル寿命による分類の両方を行った。いくつかの実施例では、最良のモデルは最初の100サイクル(初期容量からの中央値0.2%の増加を示す)を使用してサイクル寿命を定量的に予測するために9.1%の試験誤差および最初の5サイクルを使用してサイクル寿命を2つのグループに分類するため4.9%のテスト誤差を達成する。本発明は、寿命の終了に対して少なくとも25%の容量低下を必要とする以前の予測モデルを超える有意な向上を達成する。さらに、意図的なデータ生成とデータ駆動型モデリングを組み合わせて、複雑で非線形な動的システムの動作を予測することが期待できる。
【0015】
データ駆動型モデリングは、適切な条件下で繰り返し使用されるリチウムイオン電池の診断および予測のための有望な手段である。本発明は、急速充電条件下でサイクル処理された市販のLFP/グラファイト電池から生成された、容量劣化をまだ示していない初期サイクル放電データを使用したサイクル寿命予測モデルを提供する。本明細書で提供される例では、モデルは、10回目および100回目のサイクルのみからのデータを使用して15%の予測誤差、および150~2,300サイクルの範囲の寿命を有する電池について最初の100サイクルを使用して8%もの低い誤差を達成する。モデルの成功は、初期サイクル中に容量の低下が見られないが電圧プロファイルに影響を与える劣化モードとの一貫性を実証することによって合理化されている。一般的に、早期予測モデルは、高電圧カソード材料の電圧低下など、最初は容量低下に寄与しない劣化モードに特に有効であると予想される。本発明は、物理的および半経験的モデルおよび特殊な診断法に基づくアプローチを補完することができる。おおまかに言って、本発明は、リチウムイオン電池などの複雑なシステムを理解し開発するためにデータ生成とデータ駆動型モデリングを組み合わせることの可能性を重視する。
【0016】
グラファイト負極が市販のリン酸鉄リチウム(LFP)/グラファイトセルの劣化の大部分を占めていることが一般に認められているので、ここでの結果はグラファイトをベースとする他のリチウムイオン電池に有用であり得る。ここで、サイクル寿命(または同義の語として、寿命の終了)は、公称容量の80%までのサイクル数として定義される。本明細書で提供されるのは、72の異なる急速充電条件を使用することによって150から2,300までの範囲のサイクル寿命を有する124個のセルを含むデータセットである。サイクル寿命を定量的の予測手法に、10回目および100回目のサイクルからの放電電圧曲線のみを使用して15%の予測誤差を達成する特徴ベースのモデルが含まれる。追加のサイクル、内部抵抗、および温度測定からのデータを取り込むことによって、テスト誤差はさらに9.1%まで減少する。さらに、最初の5サイクルからのデータを使用して、ここに示されているのは、低ライフタイムグループおよび高ライフタイムグループへの分類、および4.9%の誤分類テスト誤差の達成である。これらの結果は、データ生成とデータ駆動型モデリングを組み合わせて、将来にわたって複雑なシステムの動作を予測する力を示している。
【0017】
本発明のさらなる態様では、電圧V1と電圧V2との間の電池セルのサイクルは最大5サイクルである。本発明の一態様では、電圧V1と電圧V2との間の電池セルのサイクルは最大10サイクルである。本発明のさらなる態様では、電圧V1と電圧V2との間の電池セルのサイクルは10から100サイクルの範囲内である。他の実施形態によれば、電圧V1と電圧V2との間の電池セルのサイクルは最大100、または少なくとも100である。
【0018】
データ生成に関しては、リチウムイオン電池の容量をパラメータ化するスペースは、それらの多くの容量低下メカニズムおよび製造上のばらつきのために、高次元になると予測される。この空間を精査するために、市販のLFP/グラファイトセル(A123 Systems、モデルAPR18650M1A、公称容量1.1Ah)を、急速充電条件は様々であるが同一の放電条件(放電速度4Cで2.0V。なお、後述のように放電速度1Cは1.1Aである)で温度制御環境チャンバ(30℃)中で循環させた。充電条件を意図的に変えることによって、およそ150から2,300サイクルまでの広範囲のサイクル寿命(平均サイクル寿命806、標準偏差377)を捉えるデータセットが生成された。チャンバ内の気温は制御されているが、充放電中に発生する高い熱のために、セル内の温度はサイクル内で最大10℃変化する。この温度変動の程度は、内部インピーダンスと充電ポリシーに応じてセルごとに異なる。サイクル処理中、電圧、電流、電池缶の温度、および内部抵抗が連続的に測定されます。実験の詳細の完全な説明は後述する。データセットには約96,700のサイクル処理のデータが含まれており、このデータセットは管理された条件下でサイクル処理された市販のリチウムイオン電池で公に利用可能な最大のものであると推測される。
【0019】
図1A~
図1Bは、最初の1,000サイクルについてサイクル数の関数としての放電容量を示し、ここでグレースケールはサイクル寿命を表す。リチウムイオン電池でよく見られるように、容量低下は最初の100サイクルでは無視でき、寿命が近づくにつれて加速する。容量低下軌跡が互いに交差するという事実は、初期容量と寿命との間では相関が弱いことを示している。実際、サイクル寿命の対数と第2サイクル(ρ=-0.06、
図1D)および第100サイクル(サイクル100)での放電容量との間の相関関係は弱く(ρ=0.27、
図1E)、サイクル寿命の対数とサイクル100付近の容量低下率との間の相関関係も弱い(ρ=0.47、
図1F)。容量低下曲線に基づくこれらの相関関係の予測力が限定されていることから、各サイクルの全電圧曲線、並びにセルの内部抵抗や温度などの追加測定値を含むより大きな1組のサイクル処理データを考慮する代替的なデータ駆動型アプローチが本明細書で提供される。
【0020】
ここで機械学習に目を向けると、本発明は、早期予測モデルを構築するために特徴ベースの手法を使用する。このパラダイムでは、生データの変換である特徴が生成され、正則化フレームワークで使用される。一実施形態では、最終モデルは、サイクル寿命の対数を予測するために特徴のサブセットの線形結合を使用する。このサブセットは、エラスティックネット回帰(Elastic Net回帰)を使用して特定される。線形モデルと正則化フレームワークを選択することで、最終モデルの特徴サブセットの高い解釈可能性を維持しながら、複雑さが変化するドメイン固有の特徴を使用できる。計算フレームワークの説明は、以下の方法に関する議論のなかで行う。
【0021】
本発明は、初期放電容量、充電時間、およびセル缶温度などの(化学的性質および劣化メカニズムには関係ないが)リチウムイオン電池の分野知識に基づく特徴(表2)を含む。サイクル中の個々のセルの電気化学的進化を捉えるために、いくつかの特徴が放電電圧曲線に基づいて計算される(
図2A)。具体的には、Q(V)のサイクルごとの変化、所与のサイクルについての電圧の関数としての放電電圧曲線が考慮される。電圧範囲は各サイクルと同一であるので、サイクルを比較するための均一な基礎を維持するために、容量の関数としての電圧とは対照的に、電圧の関数としての容量が考慮される。例えば、サイクル20と30との間の放電電圧曲線の変化は、ΔQ
30-20(V)=Q
30(V)-Q
20(V)で示されると考えられ、ここで下付き文字はサイクル数を示す。このデータ変換、ΔQ(V)は、電圧曲線およびそれらの導関数が劣化診断に有効であった豊富なデータ源であるため、特に興味深いものである。
【0022】
これらのデータセットについてのΔQ(V)曲線は
図2Bに示されており、5サイクル目と1サイクル目、すなわちΔQ
5-1(V)を用いるのと同様に、100サイクル目と10サイクル目、すなわちΔQ
100-10(V)を用いている。本明細書で論じるのは後の時点でこれらのサイクル数を選択することである。次いで、各セルのΔQ(V)曲線について要約統計量(例えば、最小、平均、および分散)を計算した。各要約統計量は、与えられた2組の2サイクル間の電圧曲線の変化をとらえるスカラー量である。このデータ駆動型アプローチでは、これらの要約統計量は、それらの物理的意味ではなく、それらの予測能力に基づいて選択される。即座に、セルのサイクル寿命と、ΔQ
100-10(V)に適用される要約統計量、具体的には分散との間に明確な傾向が現れる(
図2C)。
【0023】
ΔQ100-10(V)に基づく特徴の高い予測力のために、(1)ΔQ100-10(V)の分散のみを用いて、(2)放電中に得られた追加の候補の特徴を考慮して、かつ(3)充電と放電の両方を含む特徴を考慮して3つの異なるモデルを調べた。すべての場合において、データは最初の100サイクルから取得された。これらの3つのモデルは、それぞれ次第に特徴が拡張され、温度などの追加データストリームを取得することによる費用対効果と予測精度の限界の両方を評価するために選択した。完全な20個の候補特徴のセットは表3に示されており、以下に詳細に説明する。訓練データ(トレーニングデータ、41個のセル)を使用してモデルの特徴を選択し、係数の値を設定し、そして1次テストデータ(43セル)はモデルの性能を評価するために使用する。次に、モデル開発後に作成された40個のセルの、目にみえない2次テストデータセットでモデルを評価する。後述する計算方法を説明で定義されている2つのメトリクス(測定基準)を使用して、サイクル寿命予測の性能を評価、すなわちサイクル単位での二乗平均平方根誤差(RMSE)および平均パーセント誤差を評価する。
【0024】
ここで結果に目を向けると、本明細書において示されるのは、増加する候補特徴集合サイズを使用してサイクル寿命を予測するための3つのモデルである。「分散」モデルとして示される第1のモデルは、サブセット選択を考慮せず、予測のためにΔQ
100-10(V)の対数の分散のみを使用する。驚くべきことに、この1つの特徴のみを使用すると、1次テストデータセットで約15%の平均誤差率と2次テストデータセットで約11%の平均誤差率を持つモデルとなる。2次テストデータセットの誤差メトリクスは、これらのデータはモデル開発時に生成されたものではなく、したがってモデル性能の厳密なテストであるため、重視される。第2の「放電」モデルは、最初の100サイクルにおける放電中の電圧および電流の測定値から導出された追加の情報を考慮する(表3の行ブロックの1および2)。13のうち6つの特徴を選択した。最後に、3番目の「完全(フル)」モデルは、使用可能なすべての特徴(表3のすべての行ブロックの特徴を含む)を考慮する。このモデルでは、20個の特徴のうち9個を選択した。予想通り、特徴を追加することで、テスト平均パーセント誤差は7.5%に減少し、追加テスト平均パーセント誤差はわずか10.7%に減少する。すべての場合において、平均パーセント誤差は15%未満で、異常モデルを除いた完全モデルでは7.5%まで低下している。表1および
図3は、訓練、1次テスト、および2次テストデータセットに適用された「分散」、「放電」、および「完全」モデルの性能を表示し、完全モデルで使用される特定の特徴およびモデル係数は
図6に表示されている。
【0025】
表1:
図3に示す結果に対するモデルメトリクス。訓練とテストは、それぞれモデルの学習とモデルのパフォーマンスの評価に使用されるデータを参照する。テストセット内の1つの電池が急速に80%の劣化状態(SOH)に達し、他の観察されたパターンと一致しない。したがって、括弧内の1次テスト結果はこの電池の除外に対応したものである。
【0026】
【0027】
サイクル寿命予測の性能は、初期のデータを用いて先行文献とナイーブモデルの両方に対してベンチマークされている。関連するメトリックは、正確な予測が可能となる前に起こらなければならない低下の程度である。本発明では、初期値に対して0.2%(中央値)の容量増加(第1および第3四分位パーセンタイルはそれぞれ0.06%および0.34%、
図1C参照)に対応する初期サイクルからの電圧曲線を使用して正確な予測が達成された。本発明者らの認識では、電池容量の劣化も特殊な測定も必要としない早期予測の実証は本発明以前にはない。実際、公表されているモデルは一般的に、この例示的な実施形態に匹敵する精度で予測を行う前に少なくとも5%の容量劣化に対応するデータを必要とする。ナイーブモデル、例えば単変量モデルおよび/または容量低下曲線からの情報のみを利用するモデルを使用したモデル性能もベンチマークされている(ベンチマークモデルについては後述)。特に、訓練データの平均サイクル寿命が予測に使用される場合、平均パーセント誤差は、1次テストデータと2次テストデータでそれぞれ約30%と36%である。最良のベンチマークモデルでは、一次テストデータと二次テストデータで、それぞれ25%と34%の誤差がある。
【0028】
非常に少ないサイクル数で予測が要求されるが予測精度に対する要求がそれほど厳しくないという状況、例えば分類/格付けの用途が考慮された。一例として、様々なサイクル寿命閾値について最初の5サイクルのみを使用して、セルを「低ライフタイム」または「高ライフタイム」グループのいずれかに分類するためにロジスティック回帰モデルが開発された。「分散分類器」については、第4サイクルと第5サイクルとの間でΔQ(V)分散特性var(ΔQ5-4(V))が使用し、88.8%のテスト分類精度を達成した。「完全分類器」については、正則化ロジスティック回帰を18個の候補特徴と共に使用して、95.1%の試験分類精度を達成した。これらの結果は、表2および下記で説明されている初期サイクル分類に詳述されている。このアプローチは、最初の数サイクルのデータしか使用されていない場合でもΔQ(V)の予測能力を示しており、より広くは、データ駆動型モデルをさまざまな使用ケースに合わせて調整できる柔軟性を示している。
【0029】
表2:サイクル寿命閾値が550サイクルの分類設定用のモデルメトリクス。訓練テストと1次/2次テストは、それぞれモデルの学習とモデル性能の評価に使用されるデータを参照する。
【0030】
【0031】
内部抵抗やケーシング温度などの追加データストリームに基づく特徴を含むモデルは、一般的に最も低い誤差を有し、1次予測能力は、単一の特徴「分散」モデルの性能によって証明されるようにΔQ(V)特徴の分散から得られる。この特徴は、特徴選択(「放電」と「完全(フル)」)の両方のモデルで一貫して選択されている。この軌道の他の変換も、単独でまたは分散と組み合わせてサイクル寿命を予測するために使用することができる。例えば、完全モデルは、ΔQ(V)の特徴の最小値と分散を選択する。分散特性の物理的意味は、放電エネルギー散逸の電圧依存性に関連しており、これは
図2Aの電圧曲線間の領域によって示されている。この領域の積分は、定電流(電池サイクリング機器またはガルバノスタット/ポテンショスタットを使用)条件下でのサイクル間のエネルギー散逸における総変化であり、そしてΔQ(V)の平均に正比例する。ゼロ分散は電圧に依存しないエネルギー散逸を示す。したがって、ΔQ(V)の分散は、開回路プロセスまたは反応速度プロセスのいずれかに起因する、電圧に対するエネルギー散逸の不均一性の程度を反映しており、これは後に戻る点である。
【0032】
本発明者らは、早期サイクル放電電圧曲線を使用して導き出された特徴は、容量低下が開始する前でも優れた予測性能を有することを観察した。この観察は、容量低下をすぐには起こさないが放電電圧曲線になお現れる劣化モードを調査することによって合理化され、そしてまた寿命末期近くでの急速な容量低下に関連している。
【0033】
本明細書に開示されたデータ駆動型アプローチは早期サイクル放電曲線からサイクル寿命の予測的特徴を明らかにすることに成功したが、高速データのみを使用して劣化モードを特定することは、開回路挙動による反応速度の畳み込みのために困難である。他の研究者達は以前に低速の診断サイクルを用いてこれらの反応速度効果を取り除き、LFP/グラファイトセルの劣化モードをそれらの結果としてのC/20での診断サイクルに対するdQ/dVおよびdV/dQの導関数シフトにマッピングした。1つの劣化モード-脱リチウム化負極の活性材料の喪失(LAMdeNE)-は、容量の変化なしに放電電圧のシフトをもたらす。この挙動は、この考察で検討したLFP/グラファイトセルの場合のように、負極が正極に対して大きすぎる場合に観察される。したがって、脱リチウム化負極材料の喪失により、全体の容量を変えることなくリチウムイオンが貯蔵される電位が変わる。以前に提案されたように、LAMdeNEが高率の場合には、負極容量は最終的にセル内に残っているリチウムイオン在庫(残存リチウムイオン量)を下回るであろう。この時点で、負極は充電中にリチウムイオンを収容するのに十分な部分を持たず、リチウムめっきを誘発する。めっきは不可逆性のさらなる原因であるため、容量損失は加速する。したがって、初期のサイクルでは、LAMdeNEは容量低下曲線に影響を与えずに電圧曲線をシフトさせ、高いサイクル数で急速な容量低下を引き起こす。この劣化モードは、リチウムイオン在庫の喪失(LLI)と関連して、同様の条件下で動作する市販のLFP/グラファイトセルで広く観察されており、今日使用されているほぼすべての市販のリチウムイオン電池に共通している。
【0034】
本発明者の実験における分解に対するLAM
deNEの寄与を調べるために、様々な充電速度(4C、6C、および8C)および一定の放電速度(4C)で、1回目、100回目、そしてライフサイクルの終わりにゆっくりとしたサイクリングを取り入れて、サイクルされた電池について追加の実験を行った。C/10での診断的放電曲線の導関数(
図4、第1行および第2行)をそれらと比較し、および4Cでの、第10、第101サイクルの、および寿命末期の(第3行および第4行)ΔQ(V)と比較する。診断サイクルで観察されたdQ/dVおよびdV/dQのシフトは、充電中にリチウムがグラファイトに貯蔵される電位のシフトに対応し、LAMdeNEおよびLLIが同時に作動することに整合する。電圧低下を示している高電圧カソード材料など、最初に容量低下では現れない他の劣化モードが報告されている。LAM
deNEは、ΔQ(V)の分散とサイクル寿命との間で観察された相関と整合して、放電電圧曲線の全体ではなく、ごく一部を変化させることに留意されたい。
【0035】
本発明者らは、上記の合理化が、反応速度によってほとんど影響されない低速の診断サイクリングを使用することを認識している。ただし、予測は高速放電データを使用して開発された。したがって、これらの放電電圧曲線は、C/10のdQ/dVおよびdV/dQ導関数では観察されない反応速度的劣化モードを反映している可能性がある。充電と放電の両方の終わりに定電圧保持が行われたので、反応速度的劣化モードは放電電圧曲線では現れるが、容量低下曲線では現れないことがある。診断サイクル(1番目と100番目のサイクル)の間の放電エネルギーの変化は、10番目と101番目の高速サイクルの間の変化の53%から66%であり、これは、劣化が低速劣化モードと高速劣化モードの両方の影響を受けることを示している(反応速度的劣化に関する説明に関しては下記を参照)ことに留意されたい。初期サイクル中のこれらの反応速度的寄与はまた、電圧曲線を不均一に歪める可能性がある動態における非線形性などのサイクル寿命にも関連する可能性があり、現在進行中の研究の一部である。
【0036】
上記のように、劣化メカニズムを特定するために、dQ/dVとdV/dQのような微分が広く使用されている。これらのアプローチでは、
図4A~
図4Cと
図4G~
図4Iとの比較で分かるように、充電のばらつきのために高速では特徴が不明確になるため、低速の診断サイクルが必要である。これらの診断サイクルはしばしば容量低下の軌跡を中断する一時的な容量回復を誘発し(
図9参照)、電池の履歴を複雑化する。したがって、高速で収集されたΔQ(V)に要約統計量を適用することによって、低速診断サイクルと数値の微分の両方が同時に回避され、それによって信号対雑音比が減少する。
【0037】
最後に、ΔQ(V)の特徴に対して選択されたサイクルインデックスの影響を理解するために、モデル開発中に追加の分析を行った。訓練データセットおよびテストデータセットについて、差の分散Q
i(V)-Q
j(V)のみを使用する線形モデルが調査され、
図5Aおよび
図5Bに表示されている。このモデルは、i>60の場合のインデクシング方式には比較的鈍感であることがわかっており、さらに高速のサイクルを使用した予測が可能であることを示唆している。この傾向は、
図14Aおよび
図14Bに示すモデル係数によってさらに確認される。インデクシング方式に対するモデルの鈍感さは、サイクル数に関して線形劣化を意味しているという仮説がたてられており、これはしばしばLAMモードに対して仮定としておかれる。さらに、放電容量が最初に増加するので、特定された容量低下は、開発のために、固定されたインデクシングよりより大きいサイクル数を要する(相対的インデクシング方式に関する後述の説明を参照)。
【0038】
ここで例示的な実験に目を向けると、この実施例では、124個の市販の高出力LFP/グラファイトA123 APR18650M1Aセルを使用した。電池の公称容量は1.1Ah、公称電圧は3.3Vである。製造元が推奨する急速充電プロトコルは3.6C CC-CVである。これらのセルの時間率容量は、
図21Aおよび
図21Bに示されている。
【0039】
すべてのセルを、48チャンネルArbin(登録商標)LBT電池サイクラーの4点コンタクトを備えた円筒形の固定具でテストした。試験は環境チャンバ(Amerex Instruments)中30℃の一定温度で実施した。セル缶温度は、プラスチック断熱材の小部分を剥ぎ取り、熱エポキシ(OMEGATHERM(登録商標)201)およびKapton(登録商標)テープを使用してT型熱電対を裸の金属ケーシングに接触させることによって記録した。
【0040】
セルは、様々な急速充電ポリシーの候補でサイクリングしたが、同じように放電させた。セルは、72の異なる1ステップおよび2ステップ充電ポリシーのいずれかで、0%から80%のSOCまで充電した。各ステップは、特定のSOC範囲に適用される単一のCレートであり、例えば、2ステップポリシーでは、0%から50%SOCまでの6C充電ステップと、それに続く50%から80%SOCまでの4Cステップが考えられる。72の充電ポリシーは、0%から80%のSOC範囲内の現在のステップのさまざまな組み合わせを表す。0%から80%SOCまでの充電時間は9~13.3分の範囲であった。内部抵抗測定は、30msのパルス幅で±3.6℃の10パルスを平均することによって80%SOCで充電中に得られた。ここで、1Cは1.1A、すなわち1時間で公称容量(1.1Ah)を完全に(放電)するのに必要な電流である。次に、全てのセルを、一様な1C CC-CV充電ステップで3.6Vまで、およびC/50の電流カットオフで80%から100%のSOCまで充電した。引き続いて、全てのセルを、C/50の電流カットオフで4Cから2.0VまでのCC-CV放電で放電した。この作業で使用される電圧カットオフは、製造元が推奨するものに従う。
【0041】
セルおよびサイクルにわたる電圧-容量データを標準化するために、全ての4C放電曲線をスプライン関数に当てはめて線形補間した(
図22A~22B参照)。容量を電圧の関数として適合させ、3.5Vから2.0Vまでの1000個の線形の間隔の電圧点で評価した。これらの均一サイズのベクトルにより、減算などの簡単なデータ操作が可能になった。
【0042】
本発明は、モデル当てはめ、係数値の選択、およびモデル選択(モデル構造の選択)を使用する。これらのタスクの両方を同時に実行するために、正則化手法を採用した。線形モデルは、以下の式
を使用した。ここで
である。正則化手法を適用する場合、過剰当てはめを回避するために、最小二乗最適化公式にペナルティ項を追加する。2つの正則化手法、LassoとElastic Netは、スパース係数ベクトルを見つけることによって線形モデルの近似と選択を同時に行う。
次の式、
であり、式中yは観測された電池寿命のn次元ベクトル、Xは特徴のn×p行列、λは非負のスカラーである。項
は通常の最小二乗法で求められ、最適化は二乗誤差を最小化するので二乗損失とも呼ばれる。第2項P(w)は、採用されている正則化手法によって異なる。Lassoの場合には、
であり、Elastic Netの場合は、
がおよび
であり、式中αは0と1の間のスカラーである。どちらの定式化もスパースモデルになる。Elastic Netは、特徴エンジニアリング用途でよく見られるように、p>>nの場合にパフォーマンスが向上することが分かっているが、追加のハイパーパラメータ(Lassoのλのみとは対照的にαとλ)の当てはめを行う必要があります。この用途の場合のように、Elastic Netは、特徴間に高い相関がある場合にも好ましい。ハイパーパラメータの値を選択するために、4倍交差検証およびモンテカルロサンプリングが適用される。
【0043】
モデル開発データセットは、訓練データ(トレーニングデータ)と1次テストデータと呼ばれる2つの同サイズのセクションに分けられる。トレーニングデータは、ハイパーパラメータαおよびλを選択し、係数wの値を決定するために使用される。訓練データは、相互検証のためにキャリブレーションセットと検証セットにさらに分割される。テストデータは、モデルの係数または式の学習には使用されていないので、一般化可能性の尺度として使用される。
【0044】
モデルの性能を評価するために二乗平均平方根誤差(RMSE)と平均パーセント誤差が選択される。RMSEは
と定義される。式中、
である。平均パーセント誤差は、
と定義される。式中の全ての変数は上記の通りである。
【0045】
ここで、試験中のセル状態について説明すると、
図6はサイクル数の関数としての全セルの平均温度を示す。各セルの平均温度は、主に充電ポリシー、恒温チャンバ内の位置、およびセルの内部インピーダンスに応じて約6℃異なり得る。
【0046】
図7は、3つの異なるセルに対するサイクル数の関数としての温度プロファイルを示す。急速充電および放電ステップ中に温度が大幅に上昇し、10℃近く変動する。セルのインピーダンスが増加するにつれて、温度プロファイルは一般にサイクル数の関数として上昇する。セルと熱電対の間の接触は、サイクル中にも変化する可能性があることに留意されたい。
【0047】
それぞれの特徴の式を以下に示すが、これらの式は、上から下に表3と同様の順番に示されている(特に明記しない限り、logは底が10の対数を意味する)。これらの特徴は、
であり、
である。特徴は、
である。
【0048】
ΔQ(V)が複数のサイクルにわたる電池のエネルギーの変化に関連し得ることに注目すると興味深い。ガルバノスタット的にV
1とV
2の間を循環する電池の場合、エネルギーは次式、
で与えられ、ΔEは、
で与えられる。ΔQ(V)の様々な変換はエネルギーの変化と相関している。
【0049】
本発明者の3つのモデルにおいて選択された特徴を表3に示す。
【0050】
表3:サイクル寿命閾値が550サイクルの分類設定用のモデルメトリクス。訓練テストと1次/2次テストは、それぞれモデルの学習とモデル性能の評価に使用されるデータを参照する。
【0051】
【0052】
さまざまなモデル実装について考慮される特徴。最も単純なモデルはΔQ100-10(V)の対数分散のみを使用し、モデル選択を考えない。より複雑なモデルは、放電情報(最初の2つのセクション)と追加の測定値(全セクション)のみを使用して考慮される。
【0053】
ベンチマークのために以下の4つの単純なモデルを考えた。
1.「一定」:すべての予測にトレーニングセットの平均サイクル寿命を使用、
2.「サイクル100での放電」:100番目のサイクルでの放電容量のみを使用する単変量モデル、
3.「サイクル91-100の放電の傾き」:サイクル91-100の放電容量に対する線形当てはめの傾きのみを使用した単変量モデル、
4.「多変量放電モデル」:表4に記載された特徴を用いた特徴選択を伴う多変量モデル(これらの特徴は表3の第セクションであることに留意されたい)。
【0054】
表4:Q(n)のみのモデルで選択される6つの特徴
【0055】
【0056】
すべての分析で、訓練、1次テスト、および2次テストへの同じデータ分割が使用される。結果として得られる最良のモデルを
図9に示す。全ての誤差が表5に報告されている。
【0057】
表5:「容量低下曲線」モデルで選択された6つの特徴
【0058】
【0059】
表5-2:ベンチマークモデルのモデルメトリクス。訓練とテストは、それぞれモデルの学習とモデルのパフォーマンスの評価に使用されるデータを参照する。テストセット内の1つの電池は急速に80%SOHに達し、他の観察されたパターンと一致しない。したがって、括弧内のテスト結果はこの電池の除外対象に対応する。
容量低下曲線の特徴のみでは、特に長寿命の電池では、サイクル寿命をうまくとらえることができない。全てベンチマークモデルの誤差は、本文に提示されているものよりもかなり大きくなっている。
【0060】
反応速度的劣化の効果は、システム内で定電圧保持中に放電される容量を調べることによって考慮される。これは、反応速度的劣化のアクセス可能なメトリックである。実際、サイクル数と共にこの容量が連続的に増加することが観察され(
図10)、これはインピーダンスが経時的に増加することを示す指標の1つである。しかし、LAMは局所的な電流密度、ひいてはインピーダンスの増加を引き起こすので、界面/境界相効果による真のインピーダンス増加とLAMによる効果的な増加とを区別することはできない。
【0061】
3つの充電条件のそれぞれにおける代表的な遅い(C/10)サイクルと速い(4C)サイクルとの間の放電エネルギーの変化を表6(サイクル~100と寿命開始時との比較)および表7(寿命終了時と寿命開始時との比較)に示す。低速サイクリングと高速サイクリングとの間のエネルギーの変化の間の比が、LAMのようなOCV劣化モードからの寄与の1つの尺度となる。一般に、低速放電中のエネルギーの変化は、高速放電中のエネルギーの総変化の50%~80%である。
【0062】
表6:低速(C/10)診断サイクルおよび高速(4C)標準サイクルについての~サイクル100と寿命開始時との間の放電エネルギーの変化の比較。
【0063】
【0064】
表7:低速(C/10)診断サイクルおよび高速(4C)標準サイクルについての寿命開始時と寿命終了時との間の放電エネルギーの変化の比較。
【0065】
【0066】
診断サイクリングの場合の、診断サイクル後の放電容量の短時間の上昇が
図11に示されている。
【0067】
相対インデックス方式の場合、本開示全体を通して、ΔQ(V)は、固定インデックスに基づいて定義され、例えば電池性能に関係なく、ΔQ(V)=Q100(V)-Q10(V)である。この固定インデクシング方式を相対インデクシング方式と比較するために、追加の分析を行った。相対インデクシングのパラダイムでは、相対容量の低下に基づいてインデックスが選択される。ベースライン容量には、主に3つの選択肢がある。製造元によって報告されたセルの公称容量、セルの初期容量、またはセルの最大容量である。分析に使用したセルの公称容量は1.1Ahである。多くのセルがこの容量に達することはなかった。つまり、これは有用なベースラインではない。大部分のセルでは、容量の初期増加が見られる。これをスケーリングに使用すると、最初の低下が観察されるサイクルが変わる。このことから、容量ベンチマークの最良の選択肢として最大値が残る。
【0068】
その最大値によってスケーリングされた容量を使用する2つの可能なインデクシング方式を調べた。第1の方式では、最大値の後の固定数のサイクルを使用した。この手順の結果を
図12A~
図12Cに示す。結果として得られるモデルの誤差は、
図5と同様のパターンで低下する。ただし、予測力を向上には時間がかかり、固定インデックス方式で見られるほど低くはならない。
【0069】
2番目のインデックス方式では、特定の相対容量低下が達成された時期に基づいて各インデックスの選択を考える。
図13は、スケーリングされた容量曲線と、相対容量0.995に対応するサイクルの選択の例を示す。データセット内の全てのセルについて、99.5%の容量低下が達成される前に250サイクル以上が経過した。したがって、このタイプのインデクシング方式では、予測が可能になる時期がと明らかに遅くなる。結果として得られたモデルに対する誤差を
図14に示す。グレースケールバーは、
図5と一致するように設定されている。これら2つの図を比較すると、相対インデックス方式モデルは固定インデックス方式モデルよりも誤差が大きいことがわかる。
【0070】
当初、この結果は驚くべきものに見えるかもしれない。しかし、相対インデックス方式には、再スケーリングによってセルを区別する傾向を縮小する効果がある。したがって、固定インデックス方式はこの予測タスクに適している。
【0071】
実験的な温度変動に関して、本発明者らのサイクリング実験(「バッチ1」)の1回の実行中に、恒温チャンバでは2回の短時間の温度上昇がみられた(
図15A)。これは、テストおよび訓練データセット内のセルの約50%に影響を与えました。この効果は、i=60からi=70の場合についての
図5の大誤差領域の原因である可能性が高い。その後の訓練および試験データセットの他の50%のセルを含む実験の実施中(「バッチ2」)、温度は一定のままであった。
【0072】
図5におけるΔQ(V)の特徴にマッピングする、サイクルインデックスの関数としての係数の値を、
図16に示す。
【0073】
今や早期サイクル分類に目を向けると、2つの閾値を用いて2つのタイプの分類分析が行われた。第1の分析は、ΔQ(V)の対数の分散のみを使用して、電池を「低ライフタイム」または「高ライフタイム」として分類する。データは、
図5と同様に、前と同じ訓練-テスト分割を使用して42個のセルの訓練およびテストグループに均等に分割される。テストデータは、訓練データに基づいて調整されます。次いで、受信者動作曲線下面積(AUC)を計算する。AUCは分類作業のための一般的な指標であり、真陽性率-偽陽性率のトレードオフ曲線の下の面積の尺度である。0.5のAUCは無作為分類に相当し、1のAUCは完全な分離である。訓練/テスト分割の20個のBootstrapサンプルおよびこれらの試行にわたる平均AUCを実行する。寿命閾値がそれぞれ550および700の場合について、結果をそれぞれ
図17A~
図17Cおよび
図18A~
図28Bに示す。
【0074】
初期サイクル(i、j<10)の場合、性能はi=j+1の対角線に沿って最高である。この傾向は両方の閾値で見られる。この観察は、チャンバ内の温度変動を考慮することによって合理化される(
図15A~
図15B参照)。5サイクルのスケールの温度変動では、温度が最も類似しているため、これらの初期サイクルの状況での連続したサイクルのパフォーマンスが非常に高いとの仮定が成り立つ。低下の影響は温度変動の影響で置き換えられるため、この影響は低下が大きい予測にはそれほど重要でない。この結果は、これらの工場をベースにした用途のための安定した温度制御の重要性を強調するものである。
【0075】
第2の分析のモデル構築のみかけは、最初の5つのサイクルからの特徴のみを使用する分類設定の
図3A~
図3Cに示すもの同一である。寿命閾値として550サイクルを選択して、電池を「低ライフタイム」クラスと「高ライフタイム」クラスに分類するためのロジスティック回帰モデルを開発した。ロジスティック回帰では、論理関数を使用してイベントの確率を推定する。確率の値は0から1の範囲である。前述した正規化線形モデルと同様に、ロジスティック損失基準をモデルの訓練とサブセット選択の同時実行のためにl1正則化と共に使用した。
【0076】
第1に、ΔQ(V)=Q
5(V)-Q
4(V)の分散のみを使用し、サブセット選択を使用しないモデルを学習させる。このモデルは「分散分類器」と呼ばれる。これらのインデックスは、予測を最初の5サイクルに限定すること、ならびに
図15A~
図15Bおよび
図16に提示した分析に基づいて選択した。学習済みモデルの係数の重みは-0.433である。120ポイント中誤って分類されたのは16ポイントだけであり、非常に早いサイクルでも本発明者らの方法のパフォーマンスの高さを示している。精度情報は、混同行列を使って表8にも示されている。混同行列は、各クラスの分類精度の標準的な表現である。
【0077】
図19は、「分散分類器」を使用して、サイクル寿命が550サイクルを超える確率(言い換えれば、電池が「高ライフタイム」クラスにある確率)を示す。この図では、左下および右上の象限内の点は正しく分類されているが、右下および左上の象限内の点は誤って分類されている。判定境界として0.5の確率を選択した。
【0078】
表8:最大サイクル数5および寿命閾値550を用いた「分散分類器」を用いた分類作業のための混同行列。加算式の値は、それぞれ訓練(トレーニング)、1次テスト、および2次テストのものである。精度は、訓練、1次テスト、および2次テストでそれぞれ82.1%、78.6%、および97.5%である。3つのグループにはそれぞれ39、41、および40のセルがある。
【0079】
【0080】
第2のモデル、「完全分類器」もサブセット選択を用いて構築されている。完全モデル(表1)からの20個の特徴のうち18個が特徴候補である。ただし、これらの特徴は、サイクル5までの情報のみを引き出すように編集されている。遅いサイクルの傾きと切片(周期91と100の間の線形近似(当てはめ)のための傾きと切片)は、20の特徴のうちの2つを取り除いたこの設定では類似していない。ここでも、サイクル5および4をΔQ(V)に使用した。選択された特徴およびそれらの重み付けは、550サイクルの閾値の場合が表9に提示されている。
【0081】
表9:「完全分類器」におけるl1正規化ロジスティック回帰における選択された特徴。18の特徴のうち4つを選択した。
【0082】
【0083】
温度積分は最も重要度の高い機能であることが判明し、これは、非常に早期のサイクルの予測タスクにおける温度の重要性に関する以前の合理化と一致している。最小と分散の2つのΔQ5-4(V)特徴が選択され、この特徴の予測力をさらに示している。
【0084】
図20は、「完全分類器」について、サイクル寿命が550サイクルを超える確率(言い換えれば、電池が「高ライフタイム」クラスにある確率)を表す。この図は、
図1と同様に読まれるべき図である。ここでも、0.5の確率を判定境界として選択した。
【0085】
120ポイントのうち誤分類されたのは5つであり、非常に早期のサイクルでも高性能であることを強調する事実である。この情報は表10の混同行列にも示されている。
【0086】
表10:最大サイクル数5と寿命閾値550を使用した「完全分類器」を使用した分類タスクの混同行列。加算式の値は、それぞれ訓練(トレーニング)、1次テスト、および2次テストの値である。精度は、訓練、1次テスト、および2次テストでそれぞれ97.4%、92.7%、97.5%である。3つのグループにはそれぞれ39、41、および40のセルがあります。
【0087】
【0088】
4つのセルは予想外に高い測定ノイズを有し、分析から除外された。A123 18650 M1A電池の充電および放電中の時間率容量を
図21Aおよび
図21Bに示す。平滑化スプラインの適合度は、
図22Aおよび
図22Bに示されている。
【0089】
【0090】
以上、本発明をいくつかの例示的な実施形態によって説明してきたが、これらは発明の範囲を限定するものでなく全ての態様が例示的であることを意図している。したがって、本発明は、詳細な実施において多くの変形形態が実施可能であり、それらは当業者によって本明細書に含まれる説明から導き出すことができる。例えば、歪みおよびインピーダンス分光法などのデータストリームを予測アルゴリズムへの入力として使用することができ、カレンダ寿命、エネルギーおよび電力出力が、予測アルゴリズムの出力となり得る。アルゴリズムに関して、実施形態には、非線形の教師なしの特徴選択なども含まれ得る。
【0091】
そのような変形形態はすべて、添付の特許請求の範囲およびそれらの法的な均等物によって定められる本発明の範囲および精神の範囲内にあると見なされる。