(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】吸音構造体及び吸音構造体の設置方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20230724BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20230724BHJP
E04B 1/86 20060101ALI20230724BHJP
E01F 8/00 20060101ALI20230724BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20230724BHJP
B32B 3/24 20060101ALI20230724BHJP
B32B 27/42 20060101ALI20230724BHJP
G10K 11/168 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
G10K11/16 140
E04B1/82 V
E04B1/86 D
E01F8/00
B32B27/12
B32B3/24 Z
B32B27/42 102
G10K11/168
(21)【出願番号】P 2018196570
(22)【出願日】2018-10-18
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000107044
【氏名又は名称】ショーボンド建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514250078
【氏名又は名称】中日本高速技術マーケティング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000239862
【氏名又は名称】平岡織染株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510144591
【氏名又は名称】BASFジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100224926
【氏名又は名称】内田 雄久
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】竹村 浩志
(72)【発明者】
【氏名】朝本 康太
(72)【発明者】
【氏名】奈良岡 茂
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 紳一郎
(72)【発明者】
【氏名】今井 巧
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-076210(JP,A)
【文献】特開2011-221257(JP,A)
【文献】特開2016-069824(JP,A)
【文献】特許第6342564(JP,B1)
【文献】特開2006-010736(JP,A)
【文献】特開2006-241775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16
E04B 1/82
E04B 1/86
E01F 8/00
B32B 27/12
B32B 3/24
B32B 27/42
G10K 11/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外のコンクリート製の天井に設置される吸音構造体であって、
メッシュ状に形成されるメッシュ部を有する樹脂製の収容部と、
前記収容部に収容される難燃性樹脂層と、
前記収容部に収容される不織布層と、を備え、
前記不織布層は、撥水性を有し、前記メッシュ部と前記難燃性樹脂層との間に配置され、
前記収容部は、前記天井に対して
起立するように揺動自在に取り付けられること
を特徴とする吸音構造体。
【請求項2】
前記収容部は、着脱機構を介して前記天井に着脱自在であり、
前記着脱機構は、面ファスナー、線ファスナー、マグネットの少なくとも何れかを含むこと
を特徴とする請求項1記載の吸音構造体。
【請求項3】
前記収容部は、前記天井に固定される線材に吊り下げ可能な吊下部が設けられること
を特徴とする請求項1又は2記載の吸音構造体。
【請求項4】
前記収容部は、前記線材を中心として前記天井に対して開閉できること
を特徴とする請求項3記載の吸音構造体。
【請求項5】
前記収容部は、着脱機構を介して前記天井に着脱自在であり、
前記着脱機構は、前記収容部を挟んで両側の側壁部に取り付けられ、
前記収容部は、前記着脱機構の一方を中心として前記天井に対して開閉できること
を特徴とする請求項1~3の何れか1項記載の吸音構造体。
【請求項6】
前記難燃性樹脂層は、メラミン樹脂が用いられること
を特徴とする請求項1~5の何れか1項記載の吸音構造体。
【請求項7】
前記収容部は、前記メッシュ部が下方に向けて形成されること
を特徴とする請求項1~6の何れか1項記載の吸音構造体。
【請求項8】
前記収容部は、前記メッシュ部が側方に向けて形成されること
を特徴とする請求項1~7の何れか1項記載の吸音構造体。
【請求項9】
前記天井と前記収容部との間に配置される剥落防止層を更に備え、
前記剥落防止層は、前記天井のコンクリートの剥落を防止するためのものであること
を特徴とする請求項1~8の何れか1項記載の吸音構造体。
【請求項10】
前記剥落防止層は、透明性を有すること
を特徴とする請求項9記載の吸音構造体。
【請求項11】
請求項3に記載の吸音構造体を屋外のコンクリート製の天井に設置する吸音構造体の設置方法であって、
前記天井に固定された線材に、前記収容部に設けられた前記吊下部を吊り下げ、
前記線材に前記吊下部を吊り下げた状態で、前記収容部を前記線材の長手方向に移動し、
前記天井に対して
起立するように揺動自在な前記収容部を着脱機構を介して前記天井に着脱自在に設置すること
を特徴とする吸音構造体の設置方法。
【請求項12】
前記収容部を前記線材の長手方向に移動した後に、前記線材を中心として前記天井に対して開閉できる前記収容部を前記着脱機構を介して前記天井に着脱自在に設置すること
を特徴とする請求項11記載の吸音構造体の設置方法。
【請求項13】
前記着脱機構は、前記収容部を挟んで両側の側壁部に取り付けられ、
前記収容部を前記線材の長手方向に移動した後に、前記着脱機構の一方を中心として前記天井に対して開閉できる前記収容部を前記着脱機構を介して前記天井に着脱自在に設置すること
を特徴とする請求項11記載の吸音構造体の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外のコンクリート製の天井に設置される吸音構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
高架道路や高架鉄道等の高架橋のうちその下方に道路が併設された高架橋では、下方の道路を走行する自動車による騒音が高架橋の裏面で反射し、道路周辺の騒音を増大させることがある。高架橋としては、例えばコンクリート製の床版が用いられており、床版の裏面としての天井には、吸音構造体が設置される。
【0003】
従来、道路交通騒音を軽減することを目的として、特許文献1の吸音構造体が提案されている。
【0004】
特許文献1の吸音構造体は、枠体の前面に配置された多孔板と、枠体の中に配置された繊維質吸音材を有する吸音構造体において、グラスウール等の繊維質吸音材が平らで厚さが50~110mmであり、かつプラスチックフィルムに覆われ、さらに多孔板と繊維質吸音材の間に厚さ10mm~30mmの空気層が設けられていることを特徴とする。
【0005】
特許文献1の吸音構造体によれば、下方に道路が併設された高架橋の裏面に、中空枠体内に繊維質吸音材を配置した吸音構造体を設置して、高架橋自体からの構造物音や下方の道路からの交通騒音を吸音して騒音を低減することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の吸音構造体は、繊維質吸音材として所定の重量を有するグラスウールが用いられている。このため、特許文献1の吸音構造体は、このグラスウールの重量を支持するために、金属製の多孔板を用いる必要があることから、吸音構造体を軽量化することができないという問題点があった。
【0008】
特に近年では、高架橋等の橋下における車両事故等による火災等が数多く発生している。このような火災等の事故の発生により、最悪の場合には、高架橋から吸音構造体が落下する虞がある。この点、特許文献1の吸音構造体は、上記したような所定の重量を有することから、高架橋から落下した場合には大変危険である。したがって、吸音構造体には、万が一落下したとしても安全性が確保されるように、その重量の軽量化が求められている。
【0009】
加えて、高架橋の裏面に設置される吸音構造体は、屋外に設置されるものの、太陽光、雨水、結露等によって吸音材が劣化してしまった場合には、騒音を効果的に低減させることができないものとなる。このため、吸音構造体は、太陽光、雨水、結露等に対する耐候性の向上も求められる。
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、屋外のコンクリート製の天井に設置される吸音構造体であって、騒音を低減することが可能となり、軽量化を図ることが可能となり、耐候性を向上させることが可能となる吸音構造体及び吸音構造体の設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係る吸音構造体は、屋外のコンクリート製の天井に設置される吸音構造体であって、メッシュ状に形成されるメッシュ部を有する樹脂製の収容部と、前記収容部に収容される難燃性樹脂層と、前記収容部に収容される不織布層と、を備え、前記不織布層は、撥水性を有し、前記メッシュ部と前記難燃性樹脂層との間に配置され、前記収容部は、前記天井に対して起立するように揺動自在に取り付けられることを特徴とする。
【0012】
第2発明に係る吸音構造体は、第1発明において、前記収容部は、着脱機構を介して前記天井に着脱自在であり、前記着脱機構は、面ファスナー、線ファスナー、マグネットの少なくとも何れかを含むことを特徴とする。
【0013】
第3発明に係る吸音構造体は、第1発明又は第2発明において、前記収容部は、前記天井に固定される線材に吊り下げ可能な吊下部が設けられることを特徴とする。
第4発明に係る吸音構造体は、第3発明において、前記収容部は、前記線材を中心として前記天井に対して開閉できることを特徴とする。
第5発明に係る吸音構造体は、第1発明~第3発明の何れかにおいて、前記収容部は、着脱機構を介して前記天井に着脱自在であり、前記着脱機構は、前記収容部を挟んで両側の側壁部に取り付けられ、前記収容部は、前記着脱機構の一方を中心として前記天井に対して開閉できることを特徴とする。
【0014】
第6発明に係る吸音構造体は、第1発明~第5発明の何れかにおいて、前記難燃性樹脂層は、メラミン樹脂が用いられることを特徴とする。
【0015】
第7発明に係る吸音構造体は、第1発明~第6発明の何れかにおいて、前記収容部は、
前記メッシュ部が下方に向けて形成されることを特徴とする。
【0016】
第8発明に係る吸音構造体は、第1発明~第7発明の何れかにおいて、前記収容部は、前記メッシュ部が側方に向けて形成されることを特徴とする。
【0017】
第9発明に係る吸音構造体は、第1発明~第8発明の何れかにおいて、前記天井と前記収容部との間に配置される剥落防止層を更に備え、前記剥落防止層は、前記天井のコンクリートの剥落を防止するためのものであることを特徴とする。
【0018】
第10発明に係る吸音構造体は、第9発明において、前記剥落防止層は、透明性を有することを特徴とする。
【0019】
第11発明に係る吸音構造体の設置方法は、第3発明の吸音構造体を屋外のコンクリート製の天井に設置する吸音構造体の設置方法であって、前記天井に固定された線材に、前記収容部に設けられた前記吊下部を吊り下げ、前記線材に前記吊下部を吊り下げた状態で、前記収容部を前記線材の長手方向に移動し、前記天井に対して起立するように揺動自在な前記収容部を着脱機構を介して前記天井に着脱自在に設置することを特徴とする。
第12発明に係る吸音構造体の設置方法は、第11発明において、前記収容部を前記線材の長手方向に移動した後に、前記線材を中心として前記天井に対して開閉できる前記収容部を前記着脱機構を介して前記天井に着脱自在に設置することを特徴とする。
第13発明に係る吸音構造体の設置方法は、第11発明において、前記着脱機構は、前記収容部を挟んで両側の側壁部に取り付けられ、前記収容部を前記線材の長手方向に移動した後に、前記着脱機構の一方を中心として前記天井に対して開閉できる前記収容部を前記着脱機構を介して前記天井に着脱自在に設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、騒音を低減することが可能となり、軽量化を図ることが可能となり、耐候性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明を適用した吸音構造体が用いられるコンクリート製の天井を示す図である。
【
図2】本発明を適用した吸音構造体を示す断面図である。
【
図3】本発明を適用した吸音構造体を示す斜視図である。
【
図4】(a)は、収容部の上壁部が天井に取り付けられた状態を示す図であり、(b)は、収容部の上壁部が天井に取り外された状態を示す図である。
【
図5】剥落防止層を備える形態を示す断面図である。
【
図6】収容部の側壁部にメッシュ部が形成される形態を示す断面図である。
【
図8】剥落防止層と着脱機構とを備える形態を示す図である。
【
図10】落下防止機構の第2変形例を示す図である。
【
図11】本発明を適用した吸音構造体の設置方法を説明するための図である。
【
図12】本発明を適用した吸音構造体の設置方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を適用した吸音構造体を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明を適用した吸音構造体1が設置される屋外のコンクリート製の天井9を示す図である。
【0024】
本発明を適用した吸音構造体1は、屋外のコンクリート製の天井9に設置される。コンクリート製の天井9は、例えば、高架橋として用いられるコンクリート製の床版の裏面である。天井9の下方には、車両や歩行者等が通行する道路8が併設されている。天井9には、本発明を適用した吸音構造体1が複数設置されている。
【0025】
図2は、本発明を適用した吸音構造体1を示す断面図である。
図3は、本発明を適用した吸音構造体1を示す斜視図である。
【0026】
本発明を適用した吸音構造体1は、収容部2と、難燃性樹脂層3と、不織布層4と、を備える。また、本発明を適用した吸音構造体1は、更に落下防止機構5を備えていてもよい。
【0027】
収容部2は、樹脂製であり、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニロン樹脂、ポリプロピレン樹脂等が用いられる。収容部2は、外形が略直方体形状に形成され、内部に空間が形成される。収容部2は、天井9に対向する上壁部21と、上壁部21に対して平行な下壁部22と、上壁部21と下壁部22とを繋ぐ4つの側壁部23とを有して、略直方体形状に形成される。収容部2は、上壁部21が着脱機構29を介して天井9に着脱自在とされる。なお、収容部2は、ガラス繊維が混入されていてもよく、このとき、収容部2は、難燃性を有するものとなる。
【0028】
収容部2は、下壁部22にメッシュ状のメッシュ部24が形成され、メッシュ部24が下方に向けて配置される。メッシュ部24は、所定の開口率で開口されるものである。メッシュ部24は、収容部2と同じ材質のものが用いられてもよい。なお、メッシュ部24は、更にポリエステル繊維が混入されていてもよい。
【0029】
着脱機構29は、面ファスナー、線ファスナー、マグネット等が用いられる。
【0030】
難燃性樹脂層3は、メラミン樹脂が用いられ、収容部2の内部に収容される。難燃性樹脂層3は、難燃性を有する。難燃性樹脂層3は、樹脂を発泡させた発泡体が用いられ、好ましくはメラミン樹脂を発泡させたメラミンフォームである。これにより、難燃性樹脂層3は、所定の形状を維持することができる。難燃性樹脂層3は、例えば直方体形状に形成される場合には、その直方体形状を維持することができる。なお、難燃性樹脂層3は、ウレタン樹脂が用いられ、ウレタン樹脂を発泡させたウレタンフォームであってもよい。また、難燃性樹脂層3は、ポリエステル樹脂等が用いられてもよい。難燃性樹脂層3は、メラミン樹脂が用いられるのが好ましい。これは、メラミン樹脂の密度が9.0kg/m3程度であり、ウレタン樹脂等の密度よりも小さいためである。
【0031】
不織布層4は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、フェノール系樹脂等の撥水性を有する不織布が用いられる。不織布層4は、収容部2のメッシュ部24と難燃性樹脂層3との間に配置される。不織布層4の厚さは、難燃性樹脂層3の厚さよりも小さくなる。
【0032】
落下防止機構5は、収容部2の落下を防止するものである。落下防止機構5は、
図2及び
図3に示すように、収容部2の側壁部23に設けられる環状の吊下部51と、環状の吊下部51に挿通されるワイヤ等の線材52と、線材52が挿通されて天井9に固定されるアイボルト等の固定部53とを有する。
【0033】
吊下部51は、線材52に吊り下げ可能なものとして環状に形成され、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニロン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の樹脂製である。吊下部51は、収容部2の側壁部23に1以上で設けられる。また、吊下部51は、収容部2と一体となって形成されてもよい。
【0034】
図4(a)は、収容部2の上壁部21が天井9に取り付けられた状態を示す図であり、
図4(b)は、収容部2の上壁部21が天井9に取り外された状態を示す図である。
【0035】
図4(a)に示すように、収容部2の上壁部21が着脱機構29を介して天井9に取り付けられている。
図4に示す形態において、着脱機構29は、例えば面ファスナーが用いられる。収容部2の上壁部21が天井9から取り外された場合には、
図4(b)に示すように、落下防止機構5の線材52を中心として収容部2を移動(揺動)させることができ、いわば天井9に対して収容部2を開閉させることができる。このとき、線材52は、収容部2に設けられた吊下部51に挿通されるとともに、固定部53を介して天井9に固定されている。このため、落下防止機構5は、収容部2の上壁部21が天井9から取り外された場合であっても、収容部2が天井9に取り付けられた状態を維持することができ、収容部2の落下を防止するものとなる。
【0036】
本発明を適用した吸音構造体1によれば、不織布層4がメッシュ部24と難燃性樹脂層3との間に配置される。これにより、道路8を走行する車両等による騒音が発生したとき、発生した騒音の一部がメッシュ部24を通過することとなる。そして、メッシュ部24を通過した音の一部が、不織布層4を透過することで、減衰されて難燃性樹脂層3に到達する。難燃性樹脂層3に到達した音が、減衰されつつ収容部2の上壁部21近傍で反射し、反射した音が不織布層4を透過することで、減衰されてメッシュ部24を通過することとなる。このため、本発明を適用した吸音構造体1によれば、騒音を低減することが可能となる。
【0037】
本発明を適用した吸音構造体1によれば、不織布層4がメッシュ部24と難燃性樹脂層3との間に配置される。これにより、メッシュ部24と不織布層4とにおいても音を減衰させることができる。このため、例えば、平均斜入射吸音率が0.9以上といった道路交通騒音対策に求められる吸音性能を確保するのに必要な難燃性樹脂層3の厚さを薄くすることができ、軽量化を図ることが可能となる。
【0038】
本発明を適用した吸音構造体1によれば、撥水性を有する不織布層4がメッシュ部24と難燃性樹脂層3との間に配置される。これにより、結露や雨水等が天井9に発生した場合には、収容部2のメッシュ部24を伝って収容部2の内部に浸透しようとするものの、撥水性を有する不織布層4が結露や雨水等の浸透を抑制することができる。このため、結露や雨水等による難燃性樹脂層3の劣化を抑制することができ、耐候性を向上させることが可能となる。
【0039】
また、本発明を適用した吸音構造体1によれば、不織布層4がメッシュ部24と難燃性樹脂層3との間に配置される。これにより、難燃性樹脂層3は太陽光に直接晒されることがない。このため、太陽光に含まれる紫外線等による難燃性樹脂層3の劣化を抑制することができ、耐候性を向上させることが可能となる。
【0040】
また、本発明を適用した吸音構造体1によれば、難燃性樹脂層3を備えることにより、難燃性を有する。このため、火災が発生したとしても、延焼を防止することが可能となる。
【0041】
本発明を適用した吸音構造体1によれば、従来の吸音構造体のように金属製の多孔板が用いられることがないため、腐食の発生を防止することが可能となる。
【0042】
また、本発明を適用した吸音構造体1によれば、樹脂製の収容部2と、難燃性樹脂層3と、不織布層4とを備える。これにより、アルミ押し出し成型品が用いられる従来の吸音構造体の重量よりも軽量化を図ることが可能となる。その結果、万が一天井9から落下した場合であってもその被害を小さくすることができ、天井9の下方を通行する車両や歩行者等に対する安全性を向上させることが可能となる。
【0043】
本発明を適用した吸音構造体1によれば、難燃性樹脂層3にメラミン樹脂が用いられる。これにより、更なる軽量化を図ることが可能となる。
【0044】
更に、本発明を適用した吸音構造体1によれば、難燃性樹脂層3にメラミンフォーム等の発泡体が用いられる。これにより、収容部2に難燃性樹脂層3が収容されたとき、収容部2が所定の形状に維持され易くなる。このため、施工性を向上させることが可能となる。
【0045】
ここで、押し出しアルミ成型品が用いられる従来の吸音構造体は、所定の重量を有していることから、ボルト等の固定手段により天井に固定する必要があった。これにより、従来の吸音材は、天井に対して容易に着脱することができないものであった。このため、従来の吸音板が固定されたコンクリート製の天井については、目視点検することができず、コンクリート製の天井の劣化状況を把握することができないものであった。
【0046】
これに対して、本発明を適用した吸音構造体1によれば、収容部2は、着脱機構29を介して天井9に着脱自在である。これにより、吸音構造体1を天井9に対して容易に着脱することができ、吸音構造体1が取り付けられていた領域においてもコンクリート製の天井9の略全域を目視点検することが可能となる。このため、従来では把握することができなかったコンクリート製の天井9の劣化状況を把握できる。
【0047】
更に、本発明を適用した吸音構造体1によれば、収容部2の落下を防止する落下防止機構5を有する。これにより、着脱機構29を介して天井9に取り付けられた収容部2が落下するのを防止することが可能となる。また、点検時等に収容部2の上壁部21が天井9から取り外された場合であっても、収容部2が落下防止機構5を介して天井9に取り付けられた状態を維持することができる。このため、天井9に対する収容部2の着脱をより短時間で行うことが可能となる。
【0048】
図5は、剥落防止層6を備える形態を示す断面図である。
図5に示すように、本発明を適用した吸音構造体1は、収容部2と、難燃性樹脂層3と、不織布層4と、剥落防止層6を備えていてもよい。
【0049】
剥落防止層6は、樹脂製であり、例えば、塩化ビニル樹脂、ビニロン樹脂、ポリプロピレン樹脂等がシート状に形成された繊維シートが用いられる。剥落防止層6は、天井9と収容部2との間に配置され、収容部2に溶着により一体化される。剥落防止層6は、溶着用金網61を有し、この溶着用金網61を介して収容部2に溶着により一体化されてもよい。溶着用金網61は、収容部2の側壁部23から側方に延びるとともに収容部2に一体化された取付部25に取り付けられる。
【0050】
実際に剥落防止層6を収容部2に溶着する場合、先ず、天井9に剥落防止層6を貼り付ける。その後、難燃性樹脂層3と不織布層4とを収容した収容部2を溶着用金網61を介して剥落防止層6に溶着する。
【0051】
本発明を適用した吸音構造体1によれば、天井9と収容部2との間に配置される剥落防止層6を更に備える。これにより、天井9を構成するコンクリートが剥落しようとしても、剥落防止層6がそのコンクリートの剥落を防止することが可能となる。このため、天井9の下方を走行する車両等に対する安全性を更に向上させることが可能となる。
【0052】
なお、剥落防止層6は、エポキシ樹脂等を主成分とするエポキシ樹脂系接着剤が用いられ、透明性を有してシート状に形成されてもよい。このとき、透明性を有する剥落防止層6を備えることにより、収容部2と天井9との間に剥落防止層6が配置されていたとしても、互いに所定の距離だけ離間して天井9に設けられた吸音構造体1同士の間の領域において、コンクリート製の天井9の目視点検することが可能となる。このため、透明性を有する剥落防止層6を備えることにより、コンクリートの剥落を防止することが可能となり、かつ、天井9の一部を目視点検することが可能となる。
【0053】
図6は、収容部2の第1変形例を示す図である。収容部2は、
図6に示すように、略直方体形状に形成され、側壁部23、23にそれぞれメッシュ部24が形成される。このとき、収容部2には、一対の不織布層4、4が収容される。不織布層4は、メッシュ部24と難燃性樹脂層3との間に配置される。また、難燃性樹脂層3は、一対の不織布層4、4の間に配置される。
図6に示す実施形態においても、上述した作用効果を奏する。なお、下壁部22に更にメッシュ部24が形成されていてもよく、このとき、下壁部22に形成されたメッシュ部24と難燃性樹脂層3との間には不織布層4が設けられる。
【0054】
図7は、着脱機構29の第1変形例を示す図である。着脱機構29は、
図7(a)に示すように、例えば線ファスナーからなる。着脱機構29は、収容部2を挟んで両側にそれぞれ設けられて、それぞれの着脱機構29は、収容部2の側壁部23に取り付けられる。収容部2は、側壁部23に取り付けられた着脱機構29を介して天井9に着脱自在とされる。一方の着脱機構29による収容部2の天井9への取り付けを解除した場合、
図7(b)に示すように、天井9に固定された他方の着脱機構29を中心として収容部2を移動(揺動)させることができ、いわば天井9に対して収容部2を開閉させることができる。
【0055】
図8は、剥落防止層6と着脱機構29とを備える形態を示す図である。剥落防止層6は、
図8(a)に示すように、エポキシ樹脂等を主成分とするエポキシ樹脂系接着剤等が用いられ、透明性を有してシート状に形成される。着脱機構29は、剥落防止層6を介して天井9に着脱自在に取り付けられる。このとき、吸音構造体1を天井9に対して容易に着脱することができ、収容部2と天井9との間に剥落防止層6が配置されていたとしても、
図8(b)に示すように、吸音構造体1が取り付けられていた領域においてもコンクリート製の天井9の目視点検することが可能となる。このため、
図8に示す形態によれば、コンクリートの剥落を防止することが可能となり、かつ、天井9の略全域を目視点検することが可能となる。
【0056】
図9は、落下防止機構5の第1変形例を示す図である。
図9(a)は、収容部2の上壁部21が天井9に取り付けられた状態を示す図であり、
図9(b)は、収容部2の上壁部21が天井9に取り外された状態を示す図である。
【0057】
落下防止機構5は、吊下部54を有する。吊下部54は、線材52に吊り下げ可能なものであり、例えば、カラビナ、S字フック等の線材52及び収容部2に着脱自在な部材が用いられる。吊下部54は、線材52に吊り下げられた状態で、線材52の長手方向に向けて移動可能である。吊下部54は、収容部2の側壁部23に1以上で設けられる。また、吊下部54は、難燃性樹脂層3を挟んで両側の側壁部23にそれぞれ設けられてもよい。
【0058】
図9(a)に示すように、収容部2の上壁部21が着脱機構29を介して天井9に取り付けられている。線材52に着脱自在な吊下部54が線材52から取り外されるとともに、収容部2の上壁部21が天井9から取り外された場合には、
図9(b)に示すように、落下防止機構5の線材52を中心として収容部2を移動(揺動)させることができ、いわば天井9に対して収容部2を開閉させることができる。このとき、線材52は、収容部2に設けられた吊下部54に吊り下げられるとともに、固定部53を介して天井9に固定されている。このため、落下防止機構5は、収容部2の上壁部21が天井9から取り外された場合であっても、収容部2が天井9に取り付けられた状態を維持することができ、収容部2の落下を防止するものとなる。
【0059】
図10は、落下防止機構5の第2変形例を示す図である。なお、吊下部54は、
図10に示すように、側壁部23から側方に延びるとともに収容部2に一体化された取付部25を介して収容部2に取り付けられてもよい。このときであっても、上述した作用効果を発揮できる。なお、取付部25には、吊下部54を挿通させるための孔が形成されていてもよい。
【0060】
図11及び
図12は、本発明を適用した吸音構造体の設置方法を説明するための図である。なお、
図11及び
図12は、線材52の長手方向に直交する方向から見た図である。本発明を適用した吸音構造体の設置方法は、先ず、
図11(a)に示すように、線材52が天井9に固定部53を介して固定された状態から開始する。そして、本発明を適用した吸音構造体の設置方法は、
図11(b)に示すように、天井9に固定された線材52に、収容部2に設けられた吊下部54を吊り下げる。
【0061】
次に、本発明を適用した吸音構造体の設置方法は、
図12(a)に示すように、線材52に吊下部54を吊り下げた状態で、収容部2を線材52の長手方向(図中矢印P方向)に移動させる。
【0062】
次に、本発明を適用した吸音構造体の設置方法は、
図12(b)に示すように、収容部2を着脱機構29を介して天井9に設置する。このとき、収容部2に吊下部54が設けられる。これにより、収容部2を天井9に設置する際に、収容部2が落下しようとしたとしても、吊下部54が線材52に吊り下げられるものとなる。このため、収容部2の落下を防止することができる。
【0063】
このようにして、1つの吸音構造体1が天井9に設置される。上述した手順を繰り返して、天井9に複数の吸音構造体1を設置して完了する。
【0064】
本発明を適用した吸音構造体の設置方法によれば、線材52に吊下部54を吊り下げた状態で、収容部2を線材52の長手方向(図中矢印P方向)に移動させる。これにより、収容部2を天井9に設置する位置を微調整できる。このため、施工性を向上させることが可能となる。
【0065】
また、本発明を適用した吸音構造体の設置方法によれば、収容部2に吊下部54が設けられる。これにより、収容部2を天井9に設置する際に、収容部2が落下しようとしたとしても、吊下部54が線材52に吊り下げられるものとなる。このため、収容部2の落下を防止することができ、天井9に吸音構造体1を設置する際の安全性を向上させることが可能となる。
【0066】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、上述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【符号の説明】
【0067】
1 :吸音構造体
2 :収容部
21 :上壁部
22 :下壁部
23 :側壁部
24 :メッシュ部
25 :取付部
29 :着脱機構
3 :難燃性樹脂層
4 :不織布層
5 :落下防止機構
51 :吊下部
52 :線材
53 :固定部
54 :吊下部
6 :剥落防止層
61 :溶着用金網
8 :道路
9 :天井