(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】固形ルウ
(51)【国際特許分類】
A23L 23/00 20160101AFI20230724BHJP
【FI】
A23L23/00
(21)【出願番号】P 2018218998
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000228
【氏名又は名称】江崎グリコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 耕司
(72)【発明者】
【氏名】林 啓太郎
【審査官】山本 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-019515(JP,A)
【文献】特開平10-327823(JP,A)
【文献】特開2001-252055(JP,A)
【文献】特開2005-160374(JP,A)
【文献】特開平07-039351(JP,A)
【文献】特開2013-110982(JP,A)
【文献】特開2018-033327(JP,A)
【文献】特開平04-370078(JP,A)
【文献】特開2006-271343(JP,A)
【文献】粉体食品の粒度と粒度分布,食品科学便覧,1978年,p.262
【文献】総合食料工業,1978年,pp.1132-1135
【文献】リリース/エスビー食品/新製品/アレルゲンフリー(27品目不使用)カレーフレーク,[オンライン],[検索日2023年3月9日],2015年02月09日,https://www.sbfoods.co.jp/company/newsrelease/2015/1502_pro_allergy_free.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体原料(但し小麦粉を除く)
を50~90質量%、油脂
を10~50質量%、及びHLB7以下の乳化剤を
0.1~3質量%含み、前記粉体原料が澱粉を含み、前記粉体原料の粒径300μm以下の粒子の割合が80%以上であり、前記乳化剤がショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドかなる群から選ばれる少なくとも1種である、固形ルウ。
【請求項2】
前記澱粉が馬鈴薯澱粉及びタピオカ澱粉からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の固形ルウ。
【請求項3】
前記乳化剤がショ糖脂肪酸エステルである、請求項1又は2に記載の固形ルウ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形ルウに関する。
【背景技術】
【0002】
通常固形ルウは、食用油脂、小麦粉、調味料などを加熱混合して製造され、調理時には小麦粉の糊化による特有の濁りのある不透明な“外観”、ボディ感のある“風味”、舌の上に残るぽってりとした“粘性”といった特徴を有しており、カレーやシチューといった調理メニューに使用されるのが一般的である。
【0003】
あんかけの様な、濁りの少ない透明感のある外観の調理品には小麦粉による糊化は不適であった。あんかけ様の濁りの少ない透明感のある外観の調理品として、うどんのあんかけ、中華総菜用のたれが知られている。透明感のある中華総菜用のたれ、あんかけのあんを得る方法として、特許文献1は馬鈴薯澱粉、タピオカでん粉などを使用する液状のたれを開示しているが、固形ルウについての記載はない。
【0004】
特許文献2は、固形ルウのブルーム抑制技術として乳化剤を使用する方法を開示しているが、これらの技術を馬鈴薯澱粉を用いた固形ルウに用いても、ブルームの発生が抑えられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-311363号公報
【文献】特開平10-313783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ブルームの発生がなく、調理溶解時に透明感のある固形ルウを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の固形ルウを提供するものである。
項1. 粉体原料、油脂及びHLB7以下の乳化剤を含み、前記粉体原料が澱粉を含み、前記粉体原料の粒径300μm以下の粒子の割合が80%以上であり、前記乳化剤がショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、固形ルウ。
項2. 前記澱粉が馬鈴薯澱粉及びタピオカ澱粉からなる群から選ばれる少なくとも1種である、項1に記載の固形ルウ。
項3. 前記乳化剤がショ糖脂肪酸エステルである、項1又は2に記載の固形ルウ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、澱粉を使用してもブルームの発生がなく、透明性のあるあんかけを作ることが出来る固形ルウを製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、粉体原料は澱粉を含む。粉体原料に含まれる澱粉としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、甘藷澱粉が挙げられ、好ましくは馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉が挙げられる。澱粉は乾燥澱粉が好ましく、乾燥澱粉の水分含量は好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。固形ルウ中の澱粉の含有量は、好ましくは10~35質量%、より好ましくは15~30質量%である。
【0010】
澱粉以外の粉体原料としては、食塩、粉末糖(ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、ザラメ、グラニュー糖、上白糖、中白糖、三温糖、粉糖、コーヒーシュガー、ブラウンシュガー、和三盆糖、黒糖など)、アミノ酸(グルタミン酸ナトリウム、アラニン、グリシンなど)、野菜パウダー(しょうがパウダー、ほうれん草パウダー、にんじんパウダー、かぼちゃパウダー、ブロッコリーパウダー、れんこんパウダー、ゆずパウダー、とうもろこしパウダー、ごぼうパウダーなど)、香辛料(ニンニクパウダー、唐辛子パウダー、コショウパウダー、わさびパウダー、山椒パウダー、カレー粉など)、粉乳(全粉乳、脱脂粉乳、調製粉乳など)、クリーミングパウダー、カラメル、粉末しょうゆ、デキストリン、有機酸(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸など)等が挙げられる。固形ルウ中の澱粉以外の粉体原料の含有量は、好ましくは30~65質量%、より好ましくは40~55質量%である。また、澱粉を含む全ての粉体原料の含有量は、好ましくは50~90質量%、より好ましくは60~80質量%である。
【0011】
油脂としては、任意の植物油脂および動物油脂ならびにこれらを原料として得られた硬化油が挙げられ、具体的には、菜種油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、コーン油、サフラワー油、パーム油、米油、牛脂、ギー、バター、バターオイル、ラードが挙げられる。油脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。固形ルウ中の油脂の含有量は、好ましくは10~50質量%、より好ましくは20~40質量%である。
【0012】
乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリドが挙げられる。好ましい乳化剤はショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルであり、さらに好ましくはショ糖脂肪酸エステルである。乳化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。乳化剤のHLBは7以下が好ましく、より好ましくはHLBは1~7、さらに好ましくはHLB3~7である。固形ルウ中の乳化剤の含有量は、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.1~1質量%である。
【0013】
本発明で使用する粉体原料の粒径300μm以下の粒子の割合は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは83%以上である。粉体原料の粒径300μm以下の粒子の割合が上記の範囲内にあれば、固形ルウの保存時のブルーム発生が抑制される。粉体原料の粒径は、動的光散乱法、レーザ回折・散乱法或いは画像イメージング法に基づく粒度分布測定装置により測定することができ、例えば、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-950, HORIBA)により測定することができる。
【0014】
本発明の固形ルウは熱水に溶解することで和風、洋風、中華風などの任意の味付けの濁りの少ない透明感のあるたれ、あんかけなどを得ることができる。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0016】
なお、粉体原料の粒度分布測定は、以下のように測定した。
〔粒度分布測定〕
機器:Laser Scattering Particle Size Distribution Analyzer Partica LA-950(HORIBA)
測定条件:
<サンプル調整>
15mlチューブに0.1gのサンプルと2mlのエタノールを入れて超音波処理を2分間行った。十分に分散していることを確認してサンプルとした。
<測定>
エタノールを溶媒として循環系で測定を行った。超音波処理を10秒間行った後、測定を開始した。
<測定条件>
・攪拌速度:5
・循環速度:5
・超音波処理:5
【0017】
実施例1~3及び比較例1~2
表1に示す配合で、以下の(i)~(vi)の手順に従い固形ルウを作製した。
(i) 油脂、乾燥馬鈴薯澱粉、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル(HLB5))を攪拌釜に投入し、60℃で5分間攪拌。
(ii) 120℃まで昇温後加熱を止め、10分間攪拌。
(iii) 食塩・粉糖(グラニュー糖)を釜に投入。
(iv) 残りの粉体原料を釜に投入。
(v) 60℃で10分間攪拌。
(vi) トレーにルウを充填。4℃で30分間冷却固化し、ブルーム発生有無を確認する。
【0018】
得られた固形ルウを冷蔵庫で1日保存後にブルームの発生の有無を以下のブルーム防止判定基準に従い判定した。
【0019】
結果を表1に示す。なお、表1~3の各数値は「質量%」を意味する。
<ブルーム防止判定基準>
〇:白くなっておらず、ブルームが防止されている。
△:僅かに白くなっている。
×:白くなっており、ブルーム防止効果がない。
【0020】
【0021】
実施例4~5及び比較例3~4
表2に示す配合で、上記の(i)~(vi)の手順に従い固形ルウを作製した。得られた固形ルウを冷蔵庫で1日保存後にブルームの発生の有無を上記のブルーム防止判定基準に従い判定した。
【0022】
結果を表2に示す。
【0023】
【0024】
実施例6
乳化剤を実施例1のショ糖脂肪酸エステル(HLB5)0.3質量%から下記の表3に示すものに変更した以外は上記の(i)~(vi)の手順に従い固形ルウを製造し、ブルームの発生の有無を上記のブルーム防止判定基準に従い判定した。結果を表3に示す。
【0025】