(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】電解銅箔及びこれを用いた二次電池
(51)【国際特許分類】
C25D 1/04 20060101AFI20230724BHJP
C25D 1/00 20060101ALI20230724BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20230724BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20230724BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230724BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20230724BHJP
【FI】
C25D1/04 311
C25D1/00 311
H01M4/13
H01M4/66 A
H01M10/052
H01M10/0566
(21)【出願番号】P 2019004183
(22)【出願日】2019-01-15
【審査請求日】2019-01-15
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0055848
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515059290
【氏名又は名称】ロッテ エナジー マテリアルズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソル-キ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,テジン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,キドク
【合議体】
【審判長】池渕 立
【審判官】山本 佳
【審判官】土屋 知久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-160503号公報(JP,A)
【文献】特開2008-013847号公報(JP,A)
【文献】特開2009-138245号公報(JP,A)
【文献】特開2017-195059号公報(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0102544号明細書(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D1/00
C25D7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池用電解銅箔であって、前記電解銅箔上にコーティングされた陰極活物質が1.0g/cm
3以上のローディングレベルを有する二次電池用陰極集電体として前記電解銅箔は使用され、前記電解銅箔におけるTOCの含有量が3ppm以下であり、前記電解銅箔における塩素(Cl)の含有量が4ppm以下であり、
前記電解銅箔は、2μmから35μmの厚さを有し、前記電解銅箔は、以下の式(1)
厚さ(μm)/(引張強度(kgf/mm
2)*延伸率(%))≦0.1 (1)
を満たす厚さ、引張強度、及び延伸率を有し、
前記電解銅箔がエリクソンテストにおいて
テストされる際に、2μmから35μmの厚さを有する前記電解銅箔が単層または2以上の層の積層体で構成されて厚さが35μm以上になる場合に、求めた破断高さは3mm以上であり、
前記電解銅箔の引張強度は、45kgf/mm
2以上であり、前記銅箔の延伸率は、3%以上であることを特徴とする、電解銅箔。
【請求項2】
負極集電体を含むリチウム二次電池用負極であって、請求項1に記載の電解銅箔を前記負極集電体として使用して、負極活物質が、1.0g/cm
3以上のローディングレベルで前記電解銅箔にコーティングされることを特徴とするリチウム二次電池用負極。
【請求項3】
電池ケース、電極組立体、及び電解液を含むリチウム二次電池であって、前記電極組立体及び電解液は前記電池ケース内に収納され、前記電極組立体は、
負極集電体を含む負極であり、請求項1に記載の電解銅箔が前記負極集電体として使用され、前記電解銅箔にコーティングされた負極活物質を含む負極と、
前記負極と電気的に接続され、リチウム化合物を含む正極活物質でコーティングされた正極と、
前記負極と前記正極との間に介在されるセパレータと、
を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解銅箔及びこれを用いた二次電池に関し、より詳細には、引張強度と延伸率が同時に向上され、高強度を有する電解銅箔及びこれを利用して、陰極活物質のローディングレベルを増加させて容量効率と寿命特性などの信頼性を向上させながら、同時に3次元圧縮特性などの安全性を向上させた二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電解銅箔は、電気めっき法を用いて銅原箔を製造する製箔工程と、銅原箔の表面処理を介して機能を付与する後処理工程に区分される。このような電解銅箔は、従来の銅箔より厚さと物性の制御が容易であるという利点があり、これによって印刷回路基板のような電子機器の基礎素材として使用されたり、あるいは二次電池の極板にとして使用されるなど、多様に適用される。
【0003】
通常、電解銅箔は、チタニウムでできた円筒状の陰極(ドラムとも呼ばれる)と一定の間隔を維持する形の鉛合金又はイリジウム酸化物が被覆されたチタニウムでできた陽極、電解液及び電流の電源を含む電解槽で製造される。電解液は、硫酸および/または硫酸銅からなり、円筒形陰極を回転させながら陰極と陽極との間に直流電流を流すと、陰極に銅が電着(electrodeposited)されて連続的に電解銅箔が製造される。このように、電気分解方法で銅イオンを金属に還元させる工程を製箔工程という。
【0004】
製箔工程で得られた銅原箔は必要に応じて、絶縁基板との密着性を向上させるために、よどみ処理工程(nodule)、銅イオンの拡散を防止する拡散防止処理、外部からの酸化を防止するための防錆処理、絶縁基板との密着性を補完させる化学的密着性の向上処理などの追加的な後処理工程を通じて製造される。このような後処理工程(表面処理工程)を経ると、ロープロファイル(lowprofile)印刷回路用銅箔になって、表面処理工程の中で防錆処理のみ進行されると二次電池用として使用される。
【0005】
一方、電解銅箔を製造する過程で電解液を構成する物質を制御することにより電解銅箔の強度を制御することができる。日本登録特許第5588607号(2014.08.01、三井金属鉱業(株))では電解液中Clが過剰に含まれて延伸率が低下して問題になる。日本登録特許第5373970号公報(2013.09.27、三井金属鉱業(株))はヨウ素を添加することによって製造された電解銅箔でカール(curl)が発生し、延伸率が低下して問題になる。日本登録特許第5771392号公報(2015.07.03、日本電解(株))および日本登録特許第5595301号公報(2014.08.15、日本石油金属(株))でも電解液中に添加される添加剤の構成によって電解銅箔の引張強度を向上させたのに対し延伸率が低下してカールが発生して問題になる。
【0006】
前述した日本登録特許によって製造された電解銅箔は、電解液の添加剤の構成において、Clの含有量が大体35ppm以上であり、Clの含有量が35ppm以上であるとCl過多による連続生産時の電極の腐食やそれによる物性の変化が生じ、連続生産性が低下するという問題がある。また、前述したような添加剤の構成は、電解銅箔のカールを発生させ、このような電解銅箔を二次電池用極板として適用して活物質を極板上にコーティングする際に工程不良を発生させる。また、電解銅箔の厚さは12μm以上で3%の延伸率を持つが、実際の二次電池に適用する厚さである10μm以下では、延伸率が低下して、これを二次電池に適用する際に寿命と安全性が低下し、工程不良を頻繁に発生させる問題がある。
【0007】
これを改善し、薄い厚さでも高い延伸率と高強度を有する電解銅箔を提供するために、様々な研究が進められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、先行技術が有する各種の欠点を解消することができる薄い厚さでも高強度を持ち、延伸率が向上された電解銅箔及びこれを用いた二次電池を提供することである。
【0009】
また、本発明の他の目的は、3軸の多方向の延伸率が向上された電解銅箔及びこれを用いた二次電池を提供することである。
【0010】
また、本発明のもう一つの目的は、陰極活物質のローディングレベルを増加させ、非容量を増加させ、向上された寿命特性と信頼性と共に安定性が増加された電解銅箔及びこれを用いた二次電池を提供することである。
【0011】
また、本発明のその他の目的は、薄い厚さでも高強度を有することにより、高い電気的性能を有するPCB用配線として使用される電解銅箔及びこれを用いた二次電池を提供することである。
【0012】
また、本発明の他の目的は、二次電池の特性において、耐衝撃性を強化するために電解銅箔の3次元的な圧縮特性を向上させるためである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一側面によると、本発明は、TOC(TotalOrganicCarbon)は、4ppm以下であり、Cl(塩素)は、10ppm以下であり、下記式(1)を満足させる単層または2以上の積層体で構成された電解銅箔を含む。
【0014】
厚さ(μm)/(引張強度(kgf/mm2)*延伸率(%))≦0.1 (1)
【0015】
前記電解銅箔の厚さが35um以上でのエリクソンテスト(Erichsentest)で求めた破断高さが3mm以上である。
【0016】
前記電解銅箔の引張強度は、45kgf/mm2以上であり、延伸率は、3%以上である。
【0017】
前記電解銅箔の光沢度(Gs(60°))が100以上である。
【0018】
本発明の他の側面によると、本発明は、前述した電解銅箔を陰極集電体として使用して、これにローディングレベル(loadinglevel)1.0g/cm3以上に陰極活物質がコーティングされたチウム二次電池用陰極を含む。
【0019】
本発明のもう一つの側面によると、本発明は、前述した電解銅箔を陰極集電体として用いて、前記電解銅箔上に陰極活物質がコーティングされた陰極と、前記陰極と電気的に接続され、リチウム化合物を含む陽極活物質がコーティングされた陽極と、前記陰極と陽極との間に介在されるセパレータとを含む電極組立体と、前記電極組立体を電解液とともに電池ケース内に収納して形成されたリチウム二次電池を含む。
【0020】
本発明のその他の側面によると、本発明は、前述した電解銅箔がいずれか一面に備えられた印刷回路基板を含む。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したような本発明によると、先行技術が有する各種の欠点を解消することができる薄い厚さでも高強度を持ち、延伸率が向上された電解銅箔及びこれれを用いた二次電池を提供することができる。
【0022】
また、本発明によると、3軸の多方向の延伸率が向上された電解銅箔及びこれを用いた二次電池を提供することができる。
【0023】
また、本発明によると、陰極活物質のローディングレベルを増加させ、非容量を増加させ、向上された寿命特性と信頼性と共に安定性が増加された電解銅箔及びこれを用いた二次電池を提供することができる。
【0024】
また、本発明によると、薄い厚さでも高強度を有することにより、高い電気的性能を有するPCB用配線として使用される電解銅箔及びこれを用いた二次電池を提供することができる。
【0025】
また、本発明によると、大容量の二次電池の耐衝撃性のテストで安全性が向上された電解銅箔及びこれを用いた二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】二次電池に対する3軸の多方向に対するテストを実行する装置を概略的に示した図である。
【
図2】電解銅箔に対するエリクソンテストを概略的に示した図である。
【
図3】本発明の実施例に記載されたTOCを説明するための概略的な図である。
【
図4】本発明の他の実施例による二次電池用電解銅箔を陰極集電体として用いて製造された電極組立体を概略的に示す図である。
【
図5】本実施例に係るエリクソンテストを実行した機器を示した図である。
【
図6】本実施例に係るエリクソンテストを実行した機器を示した図である。
【
図7】実施例と比較例について、それぞれ重なり(ネストされた)の枚数を異にして、エリクソンテストを行った結果を示した写真である。
【
図8】
図7で実施例3、4、および比較例2に対する拡大写真である。本発明の実施例に係る第1組のCBN粒子の間に第2組のCBN粒子が分散されている状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
他の実施例の具体的な事項は、詳細な説明及び図面に含まれている。
【0028】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は添付される図面と共に詳細に後述されている実施例を参照すると明確になるだろう。しかし、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、異なる多様な形態で具現されることができ、以下の説明ではいくつかの部分が他の部分と接続されているとすると、これは直接接続されている場合だけではなく、その中間に他の媒体を挟んで接続されている場合も含む。また、図面で本発明と関係のない部分は、本発明の説明を明確にするために省略しており、明細書全体を通じて類似した部分については同一の符号を付けた。
【0029】
以下、添付された図面を参照して、本発明について説明する。
【0030】
本発明の一実施例は、TOCは、4ppm以下であり、Cl(塩素)は、10ppm以下であり、下記式(1)を満足させる単層または2以上の積層体で構成された電解銅箔を含む。
【0031】
厚さ(μm)/(引張強度(kgf/mm2)*延伸率(%))≦0.1 (1)
【0032】
前記電解めっきで製造された電解銅箔で、前記電解銅箔が35μm以上の厚さになるように、前記電解銅箔を1つ以上積層して電解銅箔組立体を形成し、前記電解銅箔組立体を利用して、エリクソンテストで求めた破断高さが3mm以上である。
【0033】
最近、二次電池の小型化と軽量化の傾向によって、二次電池の高エネルギー密度のために陰極活物質のローディングレベルが増加させる一方で、前記ローディング容量が増大されることにより、陰極集電体の厚さを減少させることに対する需要が拡大されている。一方、既存の陰極集電体の電解銅箔の引張強度、延伸率、靭性(toughness)によっては、高エネルギー密度の陰極を製造するには限界がある。この時、陰極活物質の種類は、天然黒鉛、人造黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、SiAlloy、Sioxide、Si-C、Si、Sn金属層、Li金属層などがある。
【0034】
また、陰極集電体である電解銅箔の厚さが減少することにより、靭性が低下され、これに陰極を製造する過程で、圧延工程時、前記陰極にクラック(crack)が発生したり、前記陰極が変形するなどの問題が発生した。また、過剰なエネルギー密度を有するように製造された陰極を二次電池に用いる場合には、高密度に製造された陰極によって可逆的な充放電を行う過程で、陰極のクラックや変形に起因する内抵抗の増加により発熱が生じるなどのように安全性の問題がある。
【0035】
高エネルギー密度の自動車用二次電池の場合には、圧縮と貫通に対する安全性テストがあり、このような安全性テストは、電解銅箔の物性に大きく左右する。これにより、前記二次電池の延伸率を測定する場合には、従来の1軸に引っ張るテストではなく、3軸の多方向に引っ張る安全性テストが行われており、前記3軸の多方向に対するテストは、従来より3次元的延伸率が重要な要素として作用している。
【0036】
従来の電解銅箔の場合には、低い引張強度と靭性によって陰極活物質のローディングレベルが増加される場合、クラックやバー(burr)などによる変形不良が発生した。これを解決するために引張強度を増加させる場合には、二次電池に対する3軸の多方向に対するテスト時に不良が発生し、問題になる。
【0037】
前記電解銅箔は、下記の電解液を用いて製造することができる。前記電解液は、銅濃度:60~120g/L、硫酸濃度:50~200g/L、塩素濃度:5~30ppm、TOC濃度:10ppm以上からなることができ、添加剤A、添加剤B、添加剤Cおよび添加剤Dのいずれか一つ以上の添加剤をさらに含む。
【0038】
前記添加剤Aは、チオ尿素系化合物と窒素を含むヘテロ環にチオール基が接続された化合物からなる群から選択された一つ以上であり、前記添加剤Bは、硫黄原子を含む化合物のスルホン酸またはその金属塩であり、ビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィドジナトリウム塩、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、3-(N、N-ジメチルチオルカルバモイル)-チオプロパンスルホン酸ナトリウム塩、3-[(アミノ-イミノメチル)チオ]-1-プロパンスルホン酸ナトリウム塩、o-エチルジチオカーボネート-S-(3-スルホプロピル)-エステルナトリウム塩を含む。前記添加剤Cは、添加剤Bを除く硫黄原子を含む化合物のスルホン酸またはその金属塩であり、その中でチオ尿素とチオ尿素誘導体を含み、2-メルカプト-5-ベンズイミダゾールスルホン酸、3(5-メルカプト-1H-テトラゾリル)ベンゼンスルホン酸及び3-(ベンゾチアゾリル-2-メルカプト)-プロフィール-スルホン酸ナトリウム塩を含む。前記添加剤Dは、非イオン性水溶性高分子であり、非イオン性水溶性高分子であり、接着剤、ゼラチン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、デンプン、セルロース系水溶性高分子(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなど)などの高分子多糖類、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミドなどが含む。
【0039】
前記チオ尿素、チオ尿素誘導体としては、チオ尿素(CH4N2S)、N、N'-ジメチルチオ尿素(C3H8N2S)、N、N'-ジエチルチオ尿素(C5H12N2S)、テトラメチルチオ尿素(C5H12N2S)、チオセミカバーザイド(CH5N3S)、N-アリルチオ尿素(C4H8N2S)、エチレンチオ尿素(C3H6N2S)などの水溶性のチオ尿素、チオ尿素誘導体を挙げることができる。
【0040】
これらの添加剤A、B、CおよびDは、必ずこれらに限定されず、当該技術分野で添加剤として使用することができるものであればいずれも可能である。
【0041】
図1は、二次電池に対する3軸の多方向に対するテストを実行する装置を概略的に示した図であり、
図2は、電解銅箔に対するエリクソンテストを概略的に示した図である。
【0042】
図1及び
図2を参照すると、二次電池に対する3軸の多方向に対するテストは、電解銅箔に対するエリクソンのテストに対応が可能である。本発明の実施例に係る電解銅箔は、前記3軸多方向に対するテストに対応するエリクソンテスト時に、前記電解銅箔が破断される高さ(破断高さ)が増加され、これに本実施例に係る電解銅箔を適用した二次電池は、3軸多方向に対するテスト時、強度および3軸延伸率を向上させ、安全性を増加させる。前記エリクセンテストはKSB0812、ISO1520で規定されたエリクセンテスト中、材料の規定外のテスト方法である0.8066KNのしわ防止力を加えるB試験法を使用する。
【0043】
本実施例に係る電解銅箔は、二次電池用の陰極を構成する陰極集電体として使用される。この時、前記エリクソンテストでの破断高さが3mm未満の場合には、前記電解銅箔を陰極集電体として用いた二次電池は、引張強度および3軸延伸率が低く、二次電池の安全性に問題になる。エリクセンテストはKSB0812およびISO8490に基づいて実施した。
【0044】
図3は、本発明の実施例に記載されたTOCを説明するための概略的な図である。前記電解銅箔は、銅箔の内部のTOCは、4ppm以下であり、Cl(塩素)は、10ppm以下である。
【0045】
図3を参照すると、TOCとは、TotalOrganicCarbonの略として、DINEN1484規格に規定されている。
【0046】
これは、銅電解液に含まれて電解銅箔の内部結晶粒サイズを小さくする役割をする。もし、銅電解液にTOCでないTIC(TotalinorganicCarbon)で呼ばれる溶解された二酸化炭素(dissolvedcarbondioxide)が存在するか、電池の製造工程の中で真空乾燥に高温で長時間放置したとき、粒の中に存在する多数の添加剤が結晶粒界(grainboundary)に拡散されてグレイン(grain)の異常成長と結晶構造の変化を起こす。また、真空乾燥した後、電解銅箔の物性変化は陰極活物質との密着性および応力を変化させて、二次電池の充放電時、陰極活物質の脱離およびクラックの発生を引き起こす。
【0047】
このように、前記TOCは、結晶粒界に不純物を形成させるため、結晶粒の異常成長を抑制し、引張強度を増大させる。一方、前記電解銅箔内のTOCの含有量が4ppmを超える場合には、延伸率が低下して、前記電解銅箔上に陰極活物質をコーティングする場合、クラックが発生したり、ひどい場合に、前記電解銅箔が破断するなどの問題が発生する。
【0048】
また、前記電解銅箔内のClの含有量が10ppmを超える場合には、前記電解銅箔を用いた二次電池のサイクル特性が低下し、エリクソンテストに対する成形性が低下して、二次電池の安全性に問題が発生する。好ましくは、前記TOCを4ppm以下にし、前記Clを10ppm以下にすると、前記電解銅箔を高密度を有する陰極集電体として利用することができて、二次電池の寿命特性と安定性が向上される。
【0049】
前記電解銅箔の厚さは、2μm乃至35μmであり、TOCは、4ppm以下であり、Cl(塩素)は、10ppm以下であり、下記式(1)を満足させる単層または2以上の積層体で構成された電解銅箔を含む。
【0050】
厚さ(μm)/(引張強度(kgf/mm2)*延伸率(%))≦0.1 (1)
【0051】
前記電解銅箔の厚さが2μm未満の場合には、前記電解銅箔上に陰極活物質をコーティングして圧延する過程でクラックが発生したり、変形して問題になり、前記電解銅箔を、ロールを用いて陰極活物質をコーティングする過程で、前記電解銅箔が垂れるなどの問題が発生して、大量生産が難しい。一方、前記電解銅箔の厚さが35μm超える場合、前記電解銅箔を陰極集電体として使用する場合は、電気エネルギーを発生していない部分の体積が増加して、二次電池の単位容量を低下させる。
【0052】
また、引張強度と延伸率は、前記電解銅箔の厚さに依存して備えられるが、互いにその機能がトレード-オフ(trade-off)される関係で、前記引張強度と延伸率は、前記式(1)に従うことが好ましい。前記式(1)の値が0.1を超える場合には、前記エリクソンテスト時、破断高さが低下して、3軸変形の延伸率の時に問題となる。
【0053】
前記電解銅箔において、引張強度は、30kgf/mm2以上であり、延伸率は、3%以上である。
【0054】
前記引張強度が30kgf/mm2未満の場合には、前記電解銅箔上に陰極活物質のローディングレベルを増加させると、変形やバーが発生するなどの問題が生じる。
【0055】
また、前記延伸率が3%未満の場合には、前記電解銅箔に陰極活物質をコーティングする場合、陰極活物質をコーティングした後、圧延する過程で、前記電解銅箔にクラックが発生するなどの問題が生じる。
【0056】
前記電解銅箔は、光沢度(Gs(60°))が100以上である。
【0057】
前記電解銅箔の光沢度(Gs(60°))が100未満の場合には、前記電解銅箔の表面粗さによって、前記陰極活物質が均一にコーティングされてないため、問題になる。
【0058】
前記電解銅箔は、リチウム二次電池の陰極集電体を含み、前記陰極集電体の一面にコーティングされた陰極活物質のローディングレベルは、1.0g/cm3以上であり、陰極活物質を除いた電解銅箔の厚さは、2μm以上ある。
【0059】
前記電解銅箔の厚さが2μm未満の場合、陰極活物質の高いローディングレベルを安定的に支持できず、厚さが35μmを超える場合、二次電池の体積を増加させて、スリム化および小型化二次電池を製造しにくく、二次電池の比容量が低くなって問題になる。また、前記陰極活物質のローディングレベルは、前記電解銅箔の厚さに依存することができるが、前述した範囲の厚さ内で、前記陰極活物質のローディングレベルは1.0g/cm3以上の場合、安全性を一緒に維持しながら、効率的に電気エネルギーを発生する。
【0060】
本発明の他の実施例によると、本発明は、前述した電解銅箔を用いた二次電池を含む。前記二次電池は、前記電解銅箔を陰極集電体として用いて、前記陰極集電体である電解銅箔上に陰極活物質がコーティングされた陰極を含む。前記二次電池は、前記陰極と、前記陰極と電気的に接続され、リチウム化合物を含む陽極活物質がコーティングされた陽極と、前記陰極と陽極との間に介在されるセパレータとを含む電極組立体と、前記電極組立体を電解液とともに電池ケース内に収納して形成される。
【0061】
本発明は、前記二次電池を用いた電子機器を含むことができ、前記二次電池を用いた自動車をさらに含む。
【0062】
本発明の他の実施例によれば、本発明は、前述した電解銅箔と、前記電解銅箔のいずれか一面に備えられた印刷回路基板を含む。また、本実施例に係る印刷回路基板を利用する電子機器を含む。
【0063】
以下では、
図4を参照して、本発明の他の実施例について説明する。後述する内容を除いては、
図1乃至
図3と一緒に説明した実施例に記載された内容と同様なので、これに対する詳細は省略する。
【0064】
図4は、本発明の他の実施例による二次電池用電解銅箔を陰極集電体として用いて製造された電極組立体を概略的に示す図である。
【0065】
図4を参照すると、本実施例に係る二次電池は、前述した二次電池用電解銅箔を陰極集電体として用いて、前記電解銅箔上に陰極活物質がコーティングされた陰極110と、前記陰極110と電気的に接続され、リリュム化合物を含む陽極活物質がコーティングされた陽極120と、前記陰極110と陽極120との間に介在されるセパレータ130とを含む電極組立体100と、前記電極組立体110を電解液とともに電池ケース内に収納して形成される。前記陰極において、陰極活物質のローディングレベルは、1.0g/cm
3以上であり、陰極活物質を除いた電解銅箔の厚さは、2μm以上である。
【0066】
前記陰極110および陽極120には、それぞれ電極タブ111、122が溶接されており、電池ケースに備えられる電極端子と接続されたり、それ自体で、電極端子の機能をする。
【0067】
前記陽極120は、リチウム化合物と導電剤、結合剤及び溶媒を混合して、スラリー形態の陽極活物質組成物を準備する。前記陽極活物質組成物を陽極集電体であるアルミニウム集電体上に直接にコーティング及び乾燥して、陽極活物質が形成された陽極極板を製造する。別の方法では、前記陽極活物質組成物を別の支持体上にキャスティングし、この支持体から剥離して得られたフィルムを、前記アルミニウム集電体上にラミネートして陽極活物質が形成された陽極120極板を製造する。
【0068】
陰極110は、次のように製造される。陰極110は、陰極活物質を使用することを除いては、陽極120と同様の方法で製造される。また、陰極活物質組成物において、導電剤、結合剤及び溶媒は、陽極120の場合と同じものを使用することも可能である。
【0069】
例えば、陰極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒を混合して陰極活物質組成物を製造し、これを電解銅箔に直接コーティングして陰極110極板を製造する。別の方法では、前記陰極活物質組成物を別の支持体上にキャスティングし、この支持体から剥離させた陰極活物質フィルムを、前記電解銅箔にラミネートして陰極極板を製造する。
【0070】
次に、前記陰極110と陽極120との間に挿入されるセパレータ130が用意される。前記セパレータは、リチウム電池で通常的に使用されるものであれば、すべての使用が可能である。電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら、電解液含湿能力に優れたものを使用する。
【0071】
次に、電解液が用意される。例えば、前記電解液は、有機電解液にリチウム塩と一緒に少量の添加剤をさらに含むことも可能である。
【0072】
前記陰極110、陽極120は、セパレータ130を介した状態で巻取りしたり、あるいは折ることによって電池ケースに収容される。前記電池ケースは、角形または円筒形の缶タイプであるか、あるいはポーチの形態で備えられる。
【0073】
前述した陰極110、陽極120およびセパレータ130からなる電極組立体100と一緒に電解液および電池ケースは、当該技術分野で二次電池の材料として使用されることができるものであればいずれも可能である。
【0074】
本発明のもう一つの側面によると、本発明は、前述した二次電池を用いる電子機器と自動車をさらに含む。
【0075】
以下、本発明の実施例及び比較例を記載する。しかし、下記実施例は、本発明の好ましい一実施例だけであり、本発明の権利範囲が下記実施例により制限されるものではない。
【0076】
1.電解銅箔の製造
銅からなる基材を下記組成を有する硫酸銅電解液が備えられた電解槽内で、表1に記載されたような厚さを有する電解銅箔を製造した。
【0077】
(1)硫酸銅電解液
銅濃度:60~120g/L
硫酸濃度:50~200g/L
塩素濃度:5~30ppm
TOC濃度:10ppm以上
(2)電解槽の条件
電解液の温度:40℃乃至70℃
電流密度:20A/dm2~100A/dm2
【0078】
【0079】
添加剤A:N,N'-ジエチルチオ尿素
添加剤B:3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸
添加剤C:3-(ベンゾチアゾリル-2-メルカプト)-プロフィール-スルホン酸ナトリウム塩
添加剤D:ポリエチレングリコール(M.W1000)
【0080】
2.TOC、Clの含有量の測定
表1に記載されたように、製造された電解銅箔の重量2.9gを過硫酸皮膜液に完全に溶解した後、TOC測定し、ICPでCl測定した。
【0081】
TOCは、DINEN1484:1997規格に基づいて、日本島津社のTOC-V機器で測定し、Cl濃度は、IPCTM650の規定に基づいて、日本Dionex社のICS-1000機器で測定した。
【0082】
【0083】
3.エリクソンテスト測定
図5及び
図6に記載された装置を利用して、エリクソンテストを実行した。エリクソンテストは、成形性試験で最も古く、最も広く普及した試験方法として、電解銅箔を試験片に準備して、各実施例について、パンチで押して、破断までのエリックセン値である破断高さ(mm)を測定した。測定方法と基準は、KSB0812およびISO8490を参照して実施した。
【0084】
(1)テスト条件
荷重:10kN
パンチの移動速度:10mm/min
球状サイズ:Φ20
(2)エリクセンテスト結果破断高さの測定方法
破断が起こる時点の高さの測定(
図4を参照)
【0085】
4.二次電池の圧縮テスト
二次電池の圧縮テストでは、JISC8714規格の実験でテストを進行した。
【0086】
【0087】
【0088】
図7は、実施例と比較例について、それぞれ重なり(ネストされた)の枚数を異にして、エリクソンテストを行った結果を示した写真であり、
図8は、
図7で実施例3、4、および比較例2に対する拡大写真である。
【0089】
前述した実施例と比較例を参照すると、比較例1は、厚さが35μmの場合と同じ、他の厚さである実施例3乃至実施例5よりもエリクソンのテストの結果が悪さを確認できた。また、比較例2は、厚さが50μmに厚い場合にもエリクソンテストの結果は、劣悪であり、電池の圧縮テストでも悪い結果が示されるのが確認できた。
【0090】
本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具大的な形態で実施されることができることを理解できるだろう。したがって、以上で記述した実施例は、すべての方面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。本発明の範囲は、前記詳細な説明よりも、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその均等な概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0091】
100:電極組立体
110:陰極
120:陽極
130:セパレータ