(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20230724BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20230724BHJP
H04N 13/346 20180101ALI20230724BHJP
H04N 13/363 20180101ALI20230724BHJP
H04N 13/31 20180101ALI20230724BHJP
G02B 30/26 20200101ALI20230724BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
H04N13/346
H04N13/363
H04N13/31
G02B30/26
(21)【出願番号】P 2019022752
(22)【出願日】2019-02-12
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加邉 正章
(72)【発明者】
【氏名】小糸 健夫
(72)【発明者】
【氏名】中岡 知球
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0264341(US,A1)
【文献】特開2019-015823(JP,A)
【文献】特開2018-202927(JP,A)
【文献】国際公開第2014/136610(WO,A1)
【文献】特開2019-062532(JP,A)
【文献】国際公開第2019/225400(WO,A1)
【文献】特開2012-186653(JP,A)
【文献】特開2015-215510(JP,A)
【文献】特開2020-072405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
G02B 30/00-30/60
B60K 35/00
H04N 13/31,13/346,13/363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向と、前記第1方向に直交する第2方向とに並んだ副画素群を備え、前記副画素群の内の第1副画素群を含む第1領域と前記副画素群の内の第2副画素群を含む第2領域とを含む表示部と、
前記第1領域に重畳
し、前記第2領域に重畳しない光制御素子と、
前記表示部によって表示される画像が投影される投影面と、
前記画像を前記投影面に投影するための1つ以上のミラーと1つ以上のレンズの少なくとも一方と、
を具備し、
前記投影面を見るユーザによって知覚される虚像は、前記第1領域に対応し、立体的な虚像として知覚される第1虚像と、前記第2領域に対応し、平面的な虚像として知覚される第2虚像とを含
み、
前記表示部は、周縁部と、前記第1副画素群を構成する複数の第1副画素の間と、前記第2副画素群を構成する複数の第2副画素の間に配置される遮光体を備え、
前記第1領域は、前記第2領域に最も近い第1副画素群の行と、前記第2領域の間に、1行以上の第1副画素群を配置可能な大きさの第3領域を含み、
前記第3領域には、前記遮光体の一部と第1遮光体が、全面に亘って配置される、
表示装置。
【請求項2】
前記虚像は、前記ユーザに対して、上部に前記第1虚像を含み、下部に前記第2虚像を含む、請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記光制御素子は、前記第1遮光体に重畳する第2遮光体をさらに備える、請求項
1記載の表示装置。
【請求項4】
前記第2虚像は、前記ユーザによって第1奥行き位置に知覚され、
前記第1虚像は、前記ユーザによって第2奥行き位置から第3奥行き位置までの範囲に知覚される、請求項1または請求項2記載の表示装置。
【請求項5】
前記範囲は、前記第1奥行き位置を含む、請求項
4記載の表示装置。
【請求項6】
前記第1奥行き位置は、前記範囲よりも前記ユーザの視点に近い位置である、請求項
4記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1副画素群は、前記立体的な虚像を前記ユーザに知覚させるための複数の視点の複数の画像をそれぞれ表示する複数の副画素群を含み、
前記第2副画素群は、前記平面的な虚像を前記ユーザに知覚させるための1つの視点の画像を表示する、請求項1記載の表示装置。
【請求項8】
前記投影面には、前記第1副画素群を用いて表示された複数の視点の複数の画像が、前記光制御素子を介して投影され、前記第2副画素群を用いて表示された1つの視点の画像が投影される、請求項1記載の表示装置。
【請求項9】
第1方向と、前記第1方向に直交する第2方向とに並んだ副画素群を備え、前記副画素群の内の第1副画素群を含む第1領域と前記副画素群の内の第2副画素群を含む第2領域とを含む表示部と、
前記第1領域に重畳し、前記第2領域に重畳しない光制御素子と、
前記表示部によって表示される画像が投影される投影面と、
前記画像を前記投影面に投影するための1つ以上のミラーと1つ以上のレンズの少なくとも一方と、
を具備し、
前記投影面を見るユーザによって知覚される虚像は、前記第1領域に対応し、立体的な虚像として知覚される第1虚像と、前記第2領域に対応し、平面的な虚像として知覚される第2虚像とを含み、
前記光制御素子に重畳される第1副画素群のうち前記第2領域に最も近い第1副画素群の行は、平面的な虚像を前記ユーザに知覚させるための画像を表示する、
表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のフロントガラス等の投影面に映像を反射させてドライバーの視野内に情報を表示するヘッドアップディスプレイ(HUD)が普及しつつある。HUDはドライバーに対して、例えばフロントガラスから4メートルほど先の位置に虚像を知覚させる。これによりドライバーは視線を大きく動かすことなく経路案内や緊急情報等を視認できるので、運転時の安全性が向上する。
【0003】
HUDは三次元画像を表示可能な表示装置を備えることがある。ユーザ(視聴者)に三次元画像を知覚させるためには、ユーザの右目で右目用の画像が知覚され、左目で左目用の画像が知覚される必要がある。これを実現するための方法として例えば、ユーザが偏光眼鏡やシャッター眼鏡等の特殊な眼鏡を装着する方法と、表示装置にバリアやレンチキュラーレンズ等の光制御素子を設ける方法とがある。
【0004】
例えば車載のHUDに三次元画像を表示可能な表示装置が設けられる場合には、運転の妨げとなり得る眼鏡等をドライバーが装着する必要がないように、表示装置に光制御素子を設ける方法が用いられることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、表示装置に光制御素子を設ける方法では、ユーザによって知覚される虚像の解像度が低下する場合がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、虚像の表示品位を向上できる表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態によれば、表示装置は、表示部と、光制御素子と、投影面と、1つ以上のミラーと1つ以上のレンズの少なくとも一方とを具備する。前記表示部は、第1方向と、前記第1方向に直交する第2方向とに並んだ副画素群を備える表示部であって、前記副画素群の内の第1副画素群を含む第1領域と前記副画素群の内の第2副画素群を含む第2領域とを含む。前記光制御素子は、前記第1領域に重畳し、前記第2領域に重畳しない。前記投影面は、前記表示部によって表示される画像が投影される。前記1つ以上のミラーと1つ以上のレンズの少なくとも一方は、前記画像を前記投影面に投影するためのものである。前記投影面を見るユーザによって知覚される虚像は、前記第1領域に対応し、立体的な虚像として知覚される第1虚像と、前記第2領域に対応し、平面的な虚像として知覚される第2虚像とを含む。前記表示部は、周縁部と、前記第1副画素群を構成する複数の第1副画素の間と、前記第2副画素群を構成する複数の第2副画素の間に配置される遮光体を備える。前記第1領域は、前記第2領域に最も近い第1副画素群の行と、前記第2領域の間に、1行以上の第1副画素群を配置可能な大きさの第3領域を含む。前記第3領域には、前記遮光体の一部と第1遮光体が、全面に亘って配置される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】同実施形態の表示装置によって形成される虚像の例を示す図。
【
図3】同実施形態の表示装置に設けられるディスプレイの構成例を示す断面図。
【
図4】
図3のディスプレイ内の表示パネルおよび光制御素子の一構成例を示す平面図。
【
図5】
図3のディスプレイ内の表示パネルおよび光制御素子の別の一構成例を示す平面図。
【
図6】
図3のディスプレイ内の表示パネルおよび光制御素子の一構成例を示す断面図。
【
図7】
図3のディスプレイ内の光制御素子の一構成例を示す平面図。
【
図8】
図3のディスプレイ内の表示パネルに配置された副画素群に対する画像の第1配置例を示す図。
【
図9】
図3のディスプレイ内の表示パネルに配置された副画素群に対する画像の第2配置例を示す図。
【
図10】
図3のディスプレイ内の表示パネルに配置された副画素群に対する画像の第3配置例を示す図。
【
図11】
図3のディスプレイ内の表示パネルに配置された副画素群に対する画像の第4配置例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、いくつかの実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0011】
図1は本実施形態に係る表示装置を概略的に示す図である。この表示装置は、例えばヘッドアップディスプレイ(HUD)1である。HUD1は、画像が投影面に投影されることにより形成される虚像をユーザに知覚させる。
【0012】
図1に示すように、表示装置の構成を説明するために規定する座標系において、X
H方向およびY
H方向は互いに直交し、Z
H方向はX
H方向およびY
H方向と直交している。X
H方向はユーザの視点VPに対する水平方向に相当し、Y
H方向は視点VPに対する垂直方向に相当し、Z
H方向は視点VPに対する奥行き方向に相当する。また、視点VPからX
H方向およびY
H方向によって規定されるX
H-Y
H平面を観察することを平面視とも称する。
【0013】
HUD1は、ディスプレイ2と、1つ以上のミラーM1,M2と、投影面PSとを備える。ディスプレイ2は、ディスプレイ2によって取得または生成される表示信号に基づく画像を画面に表示する。1つ以上のミラーM1,M2は、例えば平面ミラーM1と凹面ミラーM2とを含む。
【0014】
ディスプレイ2の画面に表示された画像は、平面ミラーM1および凹面ミラーM2を介して、投影面PSに投影される。より具体的には、表示された画像を構成する光線が平面ミラーM1および凹面ミラーM2により反射、集光され、投影面PSに投影される。また凹面ミラーM2は、例えば垂直方向の曲率半径が730mmであり、画像を拡大するように光線を反射し得る。
【0015】
投影面PSは、例えば自動車のフロントガラスの内面であり、水平方向の曲率半径が例えば1700mmである。投影された画像は、投影面PSによって、視点VPを有するユーザ(ドライバー)側に反射され、ユーザに対して投影面PSよりも遠い位置(例えば、投影面PSから数メートル先の位置)に虚像Vを形成する。つまり、ユーザは投影面PSよりも遠い位置に虚像Vを知覚する。
【0016】
HUD1を構成する1つ以上のミラーM1,M2は2つの凹面ミラーであってもよい。また、平面ミラーおよび凹面ミラーに限らず、ハーフミラー、フレネルミラー等の他の光学部材が選択可能である。1つ以上のミラーM1,M2の代わりに、あるいは1つ以上のミラーM1,M2に加えて、1つ以上のレンズが用いられてもよい。また、投影面PSはフロントガラスではなく、ドライバーの前方に設置される透明な反射板であってもよい。ディスプレイ2の画面に表示された画像は、平面ミラーM1および凹面ミラーM2により反射、集光され、この反射板に投影される。
【0017】
ディスプレイ2は三次元画像および二次元画像を表示可能である。ディスプレイ2が三次元画像を表示可能であるとは、ディスプレイ2に複数の視点に対応する複数の画像が表示され、当該ディスプレイ2を見るユーザが、両目で2つの視点の画像をそれぞれ捉えることにより、立体的な画像を知覚できることを云う。
【0018】
三次元画像を表示するために、ディスプレイ2の画面の一部にはバリアやレンチキュラーレンズ等の光制御素子が配置されている。光制御素子は、ディスプレイ2の画面に表示される右目用の画素群がユーザの右目で知覚され、表示される左目用の画素群がユーザの左目で知覚されるように、ディスプレイ2から出射される光線を制御する。これによりユーザは三次元画像を知覚できる。
【0019】
ディスプレイ2によって三次元画像が表示され、ミラーM1,M2を介して投影面PSに投影される場合、ユーザによって立体的な虚像として知覚される虚像V1が形成される。一方、ディスプレイ2によって二次元画像が表示され、ミラーM1,M2を介して投影面PSに投影される場合、ユーザによって平面的な虚像として知覚される虚像V2が形成される。虚像V2は、例えばXH-YH平面と平行な平面として形成される。
【0020】
例えば
図1に示すように、三次元画像に対応する虚像V1は、ユーザによって、視点VPに対して奥行き位置zaから奥行き位置zcまでの範囲に知覚される。また二次元画像に対応する虚像V2は、ユーザによって、視点VPに対して特定の奥行き位置zbに知覚される。これによりユーザは、虚像V1を立体的な虚像として知覚し、虚像V2を平面的な虚像として知覚する。
【0021】
図1では、虚像V2が知覚される奥行き位置zbが、虚像V1が知覚される奥行き位置zaから奥行き位置zcまでの範囲内にある例が示されているが、奥行き位置zbは、ユーザの視点VPに対して、この範囲よりも視点VPに近い位置(すなわち奥行き位置zaよりも手前の位置)であってもよいし、奥行き位置zcよりもさらに奥の位置であってもよい。
【0022】
ところで、光制御素子が配置されたディスプレイ(すなわち、表示パネルに光制御素子が重畳されたディスプレイ)では、当該ディスプレイが有する解像度よりも、ユーザによって知覚される画像の解像度は低くなる。例えば、ディスプレイに右目用と左目用の2視点の画像が表示される場合、ユーザによって知覚される画像の解像度は、ディスプレイの解像度の半分になる。
【0023】
しかし、例えば自動車に設置されるHUDでは、視認性の低下、すなわち解像度の低下が好ましくない情報が表示され得る。このような情報は、できるだけ高い解像度で表示されることが望ましい。
【0024】
そのため本実施形態では、ディスプレイ2に、光制御素子が重畳される三次元表示のための第1領域と、光制御素子が重畳されない第2領域とを設ける。そして例えば、奥行き感が得られることが好ましい画像が第1領域に表示され、解像度の低下が好ましくない画像が第2領域に表示される。投影面PSを見るユーザは、第1領域に表示された画像に対応する立体的な虚像を知覚すると共に、第2領域に表示された画像に対応する平面的な虚像を知覚する。これにより、ユーザによって知覚される虚像の表示品位を向上できる。
【0025】
図2は、ユーザが視点VPで知覚する虚像Vの例を示す。虚像Vでは、奥行き感が得られることが好ましい画像(ここでは矢印)が虚像V1として立体的に形成され、解像度の低下が好ましくない画像や立体的に形成される必要がない画像が虚像V2として平面的に形成される。解像度の低下が好ましくない画像とは、例えば、文字、記号、マーク、標識(例えば交通標識)等を含む画像のような、解像度が低下した場合に視認性が低下する画像である。
図2に示すように、ユーザにシートベルトの装着を促すマーク201や、ユーザに車の接近を警告する文字列202は、解像度の低下が好ましくない画像であり、解像度が低下しない虚像V2として平面的に形成される。
【0026】
虚像Vでは、ユーザに対して、上部に立体的に形成される虚像V1が配置され、下部に平面的に形成される虚像V2が配置されてもよい。ドライバーは、遠くを見ようとするときにフロントガラス(投影面PS)の上部に視線を移動し、近くを見ようとするときにフロントガラスの下部に視線を移動する特性を有する。虚像V1と比較して近くに形成され得る虚像V2が、虚像V1の下部に配置されることにより、この特性に適応できる。
【0027】
図3はディスプレイ2の構成例を示す断面図である。ディスプレイ2の構成を説明するために規定する座標系において、X
D方向およびY
D方向は互いに直交し、Z
D方向はX
D方向およびY
D方向と直交している。X
D方向およびY
D方向はディスプレイ2を構成する基板の主面と平行であり、Z
D方向は当該主面に直交する。つまり、Z
D方向はディスプレイ2の厚さ方向に相当する。
【0028】
ディスプレイ2は、表示パネル10と光制御素子20と照明装置30とを備える。表示パネル10は、例えば液晶パネルである。表示パネル10は、第1基板11および第2基板12を備えている。第2基板12は、第1基板11の上に位置している。なお、ここでは、第1基板11から第2基板12に向かう方向を「上側」(あるいは、単に上)と称し、第2基板12から第1基板11に向かう方向を「下側」(あるいは、単に下)と称する。「第1部材の上の第2部材」および「第1部材の下の第2部材」とした場合、第2部材は、第1部材に接していてもよいし、第1部材から離間していてもよい。
【0029】
光制御素子20は表示パネル10の上に位置する。光制御素子20は、後述するように複数の光制御部を備える。光制御素子20は透明樹脂40により表示パネル10に固定される。
【0030】
照明装置30は表示パネル10の下に位置する。第1偏光板51は第1基板11の下面11Bに接着されている。第2偏光板52は光制御素子20の上面20Aに接着されている。第2偏光板52は第2基板12の上面12Aに接着されてもよいし、光制御素子20の下面20Bに接着されてもよい。また光制御素子20は、第1偏光板51と第1基板11との間に、あるいは照明装置30と第1偏光板51との間に、位置していてもよい。また光制御素子20は、表示パネル10に内蔵されていてもよい。
【0031】
なお表示パネル10は、液晶パネルに限らず、有機エレクトロルミネッセンス表示素子やμLED等を有する自発光型の表示パネル、電気泳動素子等を有する電子ペーパ型の表示パネルであってもよい。
【0032】
表示パネル10は、例えば第1基板11の背面側からの光を選択的に透過させることで画像を表示する透過型の表示パネルである。なお、表示パネル10は、第2基板12の前面側からの光を選択的に反射させることで画像を表示する反射型の表示パネルであってもよいし、透過表示機能および反射表示機能を備える表示パネルであってもよい。表示パネル10が反射型の表示パネルである場合、照明装置30が省略されてもよいし、照明装置30が表示パネル10の上に位置していてもよい。
【0033】
図4は表示パネル10および光制御素子20の一構成例を示す平面図である。表示パネル10は、第1基板11と第2基板12とが重畳する部分に表示部DAを備えている。
【0034】
表示部DAは、XD方向と、XD方向に直交するYD方向とにマトリクス状に並んだ副画素群SPを備える。一例として副画素群SPは、赤色を表示する赤副画素SPRと、緑色を表示する緑副画素SPGと、青色を表示する青副画素SPBとで構成される。また、表示部DAの内、副画素群SPが配置されていない領域には、ブラックマトリクスBM1と称される遮光体が設けられている。つまりブラックマトリクスBM1は、副画素SP間と表示パネル10表面の周縁部とに配置されている。
【0035】
ブラックマトリクスは、その光学濃度(OD値)が3以上であることが望ましい。ブラックマトリクスは光吸収体であってもよいし、光反射体であってもよい。ブラックマトリクスは、クロム、モリブデン、あるいは銀を含む化合物などの金属材料によって形成されてもよいし、黒色の樹脂材料によって形成されてもよい。
【0036】
以下の説明では、副画素の色を特定しない場合に、1つの副画素を単に副画素SPと称することがある。また、XD方向を水平方向と称し、YD方向を垂直方向と称する場合がある。各副画素SPは同一のサイズの長方形の形状を有している。各副画素SPは、XD方向に幅WSPを有し、YD方向に高さHSPを有する。高さHSPは、例えば幅WSPよりも大きい。なお、各副画素SPは平行四辺形の形状を有し、YD方向に対して特定の角度(例えば4°以上16°以下の角度)で傾いていてもよい。XD方向に並んだ複数の副画素SPは「行」を構成し、YD方向に並んだ複数の副画素SPは「列」を構成する。
【0037】
X
D方向に隣接する2つの副画素SPは互いに異なる色を表示し得る。Y
D方向に隣接する2つの副画素SPは同一の色を表示し得る。
図4に示す例では、X
D方向に赤副画素SPR、緑副画素SPG、青副画素SPBの順に複数の副画素が並び、またY
D方向に同一色の複数の副画素SPが並んでいる。
【0038】
例えば、n色の副画素がX
D方向に並び、これらn個の副画素のセットがX
D方向に並んでいる場合、高さH
SPは幅W
SPのn倍である。nは2以上の自然数である。
図4に示した例では、nは3である。したがって、高さH
SPは幅W
SPの3倍である。
【0039】
表示部DAには、表示部DA内に含まれる副画素群SPの内の第1副画素群SP1を含む第1領域DA1と、副画素群SPの内の第2副画素群SP2を含む第2領域DA2とが設けられる。第1領域DA1には斜線で示される光制御素子20が重畳する。一方、第2領域DA2には光制御素子20が重畳していない。つまり、範囲1Aでは副画素群SP1上に光制御素子20が重畳しているのに対して、範囲1Bでは副画素群SP2上に光制御素子20が重畳していない。
【0040】
第1領域DA1は三次元画像を表示するための領域として用いられ、したがって第1領域DA1内の第1副画素群SP1は、複数の視点に対応する複数の画像をそれぞれ表示するための複数の副画素群を含む。第2領域DA2は二次元画像を表示するための領域として用いられ、したがって第2領域DA2内の第2副画素群SP2は1つの視点の画像を表示するために用いられる。
【0041】
あるいはHUD1において、第1領域DA1内の第1副画素群SP1は、立体的な虚像V1をユーザに知覚させるための複数の視点の複数の画像をそれぞれ表示する複数の副画素群を含むと云える。また第2領域DA2内の第2副画素群SP2は、平面的な虚像V2をユーザに知覚させるための1つの視点の画像を表示すると云える。
【0042】
なお
図5に示すように、第2領域DA2との境界に最も近い、第1領域DA1内の1行以上の副画素群SP1が、ブラックマトリクスBM2に置き換えられてもよい。つまり表示パネル10は、第2領域DA2に接する、第1領域DA1内の第3領域にブラックマトリクスBM1,BM2(第1遮光体)を備えている。この第3領域に対応する範囲1Cでは、ブラックマトリクスBM1,BM2上に光制御素子20が重畳している。なお、光制御素子20は、第3領域のブラックマトリクスBM1,BM2に重畳するブラックマトリクス(第2遮光体)を備えていてもよい。
【0043】
図6は表示パネル10および光制御素子20の一構成例を示す断面図である。
図6(A)は、範囲1Aの内の第1副画素群SP1が配置された位置の断面図に相当し、表示パネル10上に光制御素子20が重畳している。表示パネル10の上面には第1副画素群SP1とブラックマトリクスBM1とが配置されている。ブラックマトリクスBM1は、副画素間と、表示パネル10上面の周縁部とに配置されている。
【0044】
光制御素子20は基材21と複数の光規制体22とを備える。基材21はガラス、樹脂等の透明基板である。光規制体22は、自身を透過する光線を制限するものであり、光制御部として機能する。光規制体22は、例えば、XD方向に並んだ複数の副画素SPに重畳する遮光体23と、少なくとも1つの副画素SPに重畳する開口24とを備える。換言すると、複数の遮光体23は、開口24の幅に相当する間隔をおいてXD方向に並んでいる。
【0045】
遮光体23は、その光学濃度(OD値)が3以上であることが望ましい。遮光体23は光吸収体であってもよいし、光反射体であってもよい。遮光体23は、クロム、モリブデン、あるいは銀を含む化合物などの金属材料によって形成されてもよいし、黒色の樹脂材料によって形成されてもよい。本実施形態では、例えば光規制体22としてエマルジョンマスクが用いられる。
【0046】
遮光体23はXD方向に幅W23を有し、開口24はXD方向に幅W24を有している。1つの光規制体22の幅W22は、すなわちXD方向に並んだ光規制体22のピッチは、幅W23と幅W24との和に相当する。
【0047】
遮光体23の幅W23は開口24の幅W24よりも大きい。X
D方向に並んだ2つの光規制体22は複数の副画素SPに重畳している。遮光体23を挟んで隣り合う2つの開口24は、例えば、互いに異なる色の副画素SPに重畳する。例えば、
図6(A)の左側に位置する開口24は赤副画素SPRに重畳し、
図6(A)の右側に位置する開口24は青副画素SPBに重畳している。
【0048】
開口24の幅W24は、副画素SPの幅WSPよりも大きくてもよいし、同等であってもよいし、小さくてもよい。幅W24が幅WSPよりも小さい場合、開口24を透過する光線の数を低減することができ、視認される画像の解像度を向上できる。一方で、視認される画像の輝度低下を抑制する観点では、幅W24は幅WSPとほぼ等しくなることが望ましい。また、1つの開口24は複数の副画素SPに重畳してもよい。
【0049】
なお光制御素子20には、複数の光規制体22の代わりに、副画素SPの各々から出射される光線を制御可能な別の種類の光制御体が設けられていてもよく、例えば複数のレンズが設けられていてもよい。
【0050】
図6(B)は、範囲1Bの内の副画素群SP2が配置された位置の断面図に相当し、表示パネル10上に光制御素子20が重畳していない。表示パネル10の構成については、
図6(A)と同様である。
【0051】
図6(C)は、範囲1Cの断面図に相当し、上面にブラックマトリクスBM1,BM2が配置された表示パネル10上に光制御素子20が重畳している。なお、範囲1Cの光制御素子20には、光規制体22の代わりにブラックマトリクスが配置されてもよい。あるいは、範囲1Cの表示パネル10上面にブラックマトリクスBM2を配置することなく、範囲1Cの光制御素子20において、光規制体22の代わりにブラックマトリクスが配置されてもよい。
【0052】
なお範囲1Aにおいても、上面にブラックマトリクスBM1が配置された表示パネル10上に光制御素子20が重畳されている部分については、範囲1Cと同様の断面図になる。
【0053】
図7は光制御素子20のより具体的な構成例を示す平面図である。光制御素子20において、複数の光規制体22はX
D方向に並んでいる。光規制体22を構成する遮光体23および開口24は、X
D方向およびY
D方向とは異なる斜め方向に延出している。遮光体23の各々は、X
D方向に並んだ一対のエッジE23を有している。一対のエッジE23は平行である。開口24は、X
D方向に隣接する遮光体23の互いに向かい合うエッジE23の間に位置する。
【0054】
光規制体22は、表示部DAに重畳し、副画素の複数の行に跨って直線的に延出している。光規制体22、遮光体23および開口24のそれぞれは、YD方向に対して角度θで傾いている。
【0055】
図8から
図10を参照して、表示部DA内の副画素群SPを用いて表示される画像について説明する。副画素群SPには、立体的な虚像V1(あるいは画像)をユーザに知覚させるための複数の視点に対応する複数の画像と、特定の奥行き位置にある平面的な虚像V2(あるいは画像)をユーザに知覚させるための1つの視点の画像とが表示される。この複数の視点の数は、2つ以上であればいくつであってもよい。視点の数が多いほど、ユーザが視点を移動したとしても、知覚される虚像が破綻する可能性は低くなる。
【0056】
ここでは、立体的な虚像V1をユーザに知覚させるための複数の視点に対応する複数の画像として、4つの視点VP1,VP2,VP3,VP4にそれぞれ対応する第1画像、第2画像、第3画像、および第4画像が用いられる場合を例示する。第1画像、第2画像、第3画像、および第4画像は、ある1つのシーン(オブジェクト)を第1視点VP1、第2視点VP2、第3視点VP3、および第4視点VP4からそれぞれ撮像した場合に得られる画像である。また、ユーザに特定の奥行き位置にある平面的な虚像V2を知覚させるための1つの視点の画像として、第0画像が用いられる。
【0057】
表示部DAには、第1~第4画像が表示される第1領域DA1と、第0画像が表示される第2領域DA2とが設けられている。そして、第1領域DA1には光制御素子20が重畳されている一方、第2領域DA2には光制御素子20が重畳されていない。第1~第4画像の各々は、例えば第1領域DA1と同一の解像度を有している。第0画像は、例えば第2領域DA2と同一の解像度を有している。
【0058】
図8は、表示部DA内の各副画素SPに表示されるべき画像を示している。各副画素SPを表す領域には、当該副画素SPにその一部が表示される画像の番号が示されている。ここでは、表示される画像が第1画像であれば“1”、第2画像であれば“2”、第3画像であれば“3”、第4画像であれば“4”、第0画像であれば“0”が、各副画素SPを表す領域に示されている。
【0059】
第1領域DA1では、例えば4つの副画素群801,802,803,804を用いて、4つの視点VP1,VP2,VP3,VP4に対応する第1~第4画像の一部がそれぞれ表示される。4つの副画素群801,802,803,804は、XD方向に順に並んでいる。各副画素群801,802,803,804では、例えば、XD方向に対して5個の副画素が並び、YD方向に対して1個から3個の副画素が並んでいる。
【0060】
副画素群801から出射される光線は、2つの遮光体23間の開口24を通過して第1視点VP1に到達する。そのため、副画素群801は、第1視点VP1に対応する第1画像の一部を表示するために用いられる。副画素群801には、第1領域DA1内での副画素群801の位置に対応する、第1画像内の一部が表示される。
【0061】
副画素群802から出射される光線は、2つの遮光体23間の開口24を通過して第2視点VP2に到達する。そのため、副画素群802は、第2視点VP2に対応する第2画像の一部を表示するために用いられる。副画素群802には、第1領域DA1内での副画素群802の位置に対応する、第2画像内の一部が表示される。
【0062】
副画素群803から出射される光線は、遮光体23間の開口24を通過して第3視点VP3に到達する。そのため、副画素群803は、第3視点VP3に対応する第3画像の一部を表示するために用いられる。副画素群803には、第1領域DA1内での副画素群803の位置に対応する、第3画像内の一部が表示される。
【0063】
また、副画素群804から出射される光線は、遮光体23間の開口24を通過して第4視点VP4に到達する。そのため、副画素群804は、第4視点VP4に対応する第4画像の一部を表示するために用いられる。副画素群804には、第1領域DA1内での副画素群804の位置に対応する、第4画像内の一部が表示される。
【0064】
第1領域DA1では、上記の副画素群801,801,803,804と同様にして、各副画素SP1にいずれの画像が表示されるかが決定され得る。したがって第1領域DA1では、4つの視点VP1,VP2,VP3,VP4に対応する4つの画像の一部が、XD方向およびYD方向に特定のパターンで配置される。
【0065】
ユーザは、例えば以下の場合に、第1領域DA1から出射される光線により立体的な虚像V1を知覚できる。
(1)副画素群801から第1視点VP1に出射される光線を右目で、副画素群802から第2視点VP2に出射される光線を左目で捉えた場合
(2)副画素群802から第2視点VP2に出射される光線を右目で、副画素群803から第3視点VP3に出射される光線を左目で捉えた場合
(3)副画素群803から第3視点VP3に出射される光線を右目で、副画素群804から第4視点VP4に出射される光線を左目で捉えた場合
このように
図8に示す例では、ある番号の視点(例えば第1視点VP1)に出射される光線を右目で、当該番号より1つ大きい番号の視点(例えば第2視点VP2)に出射される光線を左目で捉えることにより、ユーザが立体的な虚像を適切に知覚できる。
【0066】
上述したように、第1領域DA1内の副画素群SP1は第1~第4画像を表示するために分配される。そして、分配された副画素群SP1には第1~第4画像の一部が表示される。この分配により、表示される第1~第4画像の各々の解像度は第1領域DA1の解像度の約1/4になる。そのため、各視点VP1,VP2,VP3,VP4において、第1領域DA1から出射された光線により知覚される虚像V1の解像度は、第1領域DA1の表示性能の解像度の約1/4になり、低下する。
【0067】
また、第2領域DA2内の副画素群SPは、第0画像を表示するために用いられる。第2領域DA2内の副画素群SPには、第0画像の一部ではなく、第0画像の全体が表示され得る。第2領域DA2上には光制御素子20が重畳されていないので、第2領域DA2内の副画素群SPから出射される光線は、いずれの視点VP1,VP2,VP3,VP4にも到達する。したがって、各視点VP1,VP2,VP3,VP4において、第2領域DA2から出射された光線により知覚される虚像V2の解像度は、第2領域DA2の解像度と同一であり、低下しない。そのため、文字、記号等を含む、解像度の低下が好ましくない画像は、第2領域DA2内の副画素群SPを用いて表示する。これにより、対応する虚像V2を、視認性を低下させることなくユーザに知覚させることができる。
【0068】
ディスプレイ2には、表示部DA内の副画素群SPが、
図8に示したようなレイアウトで、第0画像と第1~第4画像の一部とを表示するように構成された表示信号が入力される。ディスプレイ2はこの表示信号に従った制御により、副画素群SPを用いて第0画像と第1~第4画像の一部とを表示する。
【0069】
表示信号は別の情報処理装置等によって生成され、ディスプレイ2に入力され得る。また表示信号は放送信号であってもよい。このような場合、ディスプレイ2は少なくとも表示信号を受信するための通信デバイスを備えている。なお、表示信号はディスプレイ2内のプロセッサ等の回路を用いて生成されてもよい。
【0070】
図1に示したHUD1の投影面PSには、第1副画素群SP1を用いて表示された複数の視点の複数の画像(例えば第1~第4画像)が、光制御素子20とミラーM1,M2とを介して投影され、第2副画素群SP2を用いて表示された1つの視点の画像(例えば第0画像)がミラーM1,M2を介して投影される。
【0071】
HUD1の視点VPは、より詳しくはユーザの右目の視点VPRと左目の視点VPLとを含む。右目の視点VPRには、第1領域DA1内の、ある画像(例えば第1画像)が表示された副画素群SP1から出射され、開口24を通過した第1光線が、ミラーM1,M2および投影面PSを介して到達する。左目の視点VPLには、第1領域DA1内の、別の画像(例えば第2画像)が表示された副画素群SP1から出射され、開口24を通過した第2光線が、ミラーM1,M2および投影面PSを介して到達する。さらに、これら2つの視点VPR,VPLには、第0画像が表示された第2領域DA2内の副画素群SP2から出射された第3光線が、ミラーM1,M2および投影面PSを介して到達する。
【0072】
ユーザは右目で第1光線を捉え、且つ左目で第2光線を捉えることによって、立体的な虚像V1を知覚できると共に、両目で第3光線を捉えることによって平面的な虚像V2を知覚できる。つまりユーザは、奥行き感が得られることが好ましい画像に対応する虚像V1と、解像度の低下が好ましくない文字や記号等を含む画像に対応する虚像V2とを知覚できる。したがって、HUD1において形成される虚像Vの表示品位を向上できる。
【0073】
なお、第1領域DA1と第2領域DA2との境界付近では、表示パネル10および光制御素子20の組み立ての精度等によっては、例えば第1領域DA1の一部に光制御素子20が重畳していなかったり、第2領域DA2の一部に光制御素子20が重畳していたりする場合がある。このような場合、各領域DA1,DA2から出射される光線が、意図しない視点で知覚される可能性がある。
【0074】
そのため、
図5を参照して上述したように、第2領域DA2との境界に最も近い、第1領域DA1内の1行以上の副画素群SP1はブラックマトリクスBM2に置き換えられてもよい。この場合、
図9に示すように、ブラックマトリクスBM2の部分は第1~第4画像の表示に用いられないので、この1行以上の副画素群SP1にたとえ光制御素子20が重畳していなかったとしても、意図しない虚像がユーザに知覚されることを回避できる。
【0075】
また、第2領域DA2内の副画素群SP2に近接する、第1領域DA1内の副画素群SP1の一部を用いて、平面的な虚像V2をユーザに知覚させるための第0画像が表示されてもよい。例えば
図10に示すように、第2領域DA2との境界に最も近い、第1領域DA1内の1行以上の副画素群SP1が、平面的な虚像V2を知覚させるための第0画像の表示に用いられ得る。
【0076】
この1行以上の副画素群SP1に光制御素子20が重畳していない場合、この副画素群SP1を用いて表示された第1~第4画像の一部はそのままユーザに知覚される。つまり、視点毎のいずれか2つの画像がユーザの右目および左目にそれぞれ知覚されずに、表示された第1~第4画像の一部がユーザの両目で知覚される。したがって、意図しない内容の虚像がユーザに知覚される。
【0077】
これに対して、第0画像の一部が、光制御素子20が重畳していない1行以上の副画素群SP1を用いて表示される場合、ユーザに知覚される虚像の解像度は低下するものの、その虚像から知覚(認識)される内容は変化しない。したがって、この1行以上の副画素群SP1にたとえ光制御素子20が重畳していなかったとしても、意図しない画像がユーザに知覚されることを回避できる。
【0078】
以上により、表示パネル10および光制御素子20の組み立ての精度が低い場合等にも、意図した虚像Vをユーザに知覚させることができ、ユーザによる視認性への影響が軽減される。
【0079】
また
図11は、表示部DA内の副画素群SPにいずれの画像が表示されるかを示す別の例を示す。ここでは、立体的な虚像V1(あるいは画像)をユーザに知覚させるための複数の視点に対応する複数の画像として、2つの視点VP1,VP2にそれぞれ対応する第1画像および第2画像が用いられている。第1画像および第2画像は、ある1つのシーンを第1視点VP1および第2視点VP2からそれぞれ撮像した場合に得られる画像である。また、特定の奥行き位置にある平面的な虚像V2をユーザに知覚させるための1つの視点の画像として、第0画像が用いられる。
【0080】
表示部DAには、第1および第2画像のいずれかが表示される第1領域DA1と、第0画像が表示される第2領域DA2とが設けられている。そして、第1領域DA1には光制御素子20が重畳されている一方、第2領域DA2には光制御素子20が重畳されていない。第1および第2画像の各々は、例えば第1領域DA1と同一の解像度を有している。第0画像は、例えば第2領域DA2と同一の解像度を有している。
【0081】
第1領域DA1では、例えば2つの副画素群111,112を用いて、2つの視点VP1,VP2に対応する第1および第2画像の一部がそれぞれ表示される。2つの副画素群111,112は、XD方向に順に並んでいる。各副画素群111,112では、例えば、XD方向に対して10個の副画素が並び、YD方向に対して1個から3個の副画素が並んでいる。
【0082】
副画素群111から出射される光線は、2つの遮光体23間の開口24を通過して第1視点VP1に到達する。そのため、副画素群111は、第1視点VP1に対応する第1画像の一部を表示するために用いられる。副画素群111には、第1領域DA1内での副画素群111の位置に対応する、第1画像内の一部が表示される。
【0083】
また、副画素群112から出射される光線は、2つの遮光体23間の開口24を通過して第2視点VP2に到達する。そのため、副画素群112は、第2視点VP2に対応する第2画像の一部を表示するために用いられる。副画素群112には、第1領域DA1内での副画素群112の位置に対応する、第2画像内の一部が表示される。
【0084】
第1領域DA1では、上記の副画素群111,112と同様にして、各副画素SP1にいずれの画像が表示されるかが決定され得る。したがって第1領域DA1では、2つの視点VP1,VP2に対応する2つの画像の一部が、XD方向およびYD方向に特定のパターンで配置される。
【0085】
ユーザは、第1視点VP1に出射される光線を右目で、第2視点VP2に出射される光線を左目で捉えた場合に、第1領域DA1から出射される光線により立体的な虚像V1を知覚できる。
【0086】
上述したように、第1領域DA1内の副画素群SP1は第1および第2画像を表示するために分配される。そして、分配された副画素群SP1には第1および第2画像の一部が表示される。この分配により、表示される第1および第2画像の各々の解像度は第1領域DA1の解像度の約1/2になる。そのため、各視点VP1,VP2において、第1領域DA1から出射された光線により知覚される虚像V1の解像度は、第1領域DA1の表示性能の解像度の約1/2になり、低下する。
【0087】
また、第2領域DA2内の副画素群SP2は、第0画像を表示するために用いられる。第2領域DA2内の副画素群SP2には、第0画像の一部ではなく、第0画像の全体が表示され得る。第2領域DA2上には光制御素子20が重畳されていないので、第2領域DA2内の副画素群SP2から出射される光線は、いずれの視点VP1,VP2にも到達する。したがって、各視点VP1,VP2において、第2領域DA2から出射された光線により知覚される虚像V2の解像度は、第2領域DA2の解像度と同一であり、低下しない。そのため、文字、記号等を含む解像度の低下が好ましくない画像は、第2領域DA2内の副画素群SP2を用いて表示することにより、対応する虚像V2を、視認性を低下させることなくユーザに知覚させることができる。
【0088】
ディスプレイ2には、表示部DA内の副画素群SPが、
図11に示したようなレイアウトで、第0画像と第1および第2画像の一部とを表示するように構成された表示信号が入力される。ディスプレイ2はこの表示信号に従った制御により、副画素群SPを用いて第0画像と第1および第2画像の一部とを表示する。
【0089】
上述したように、
図1に示したHUD1の視点VPは、より詳しくはユーザの右目の視点VP
Rと左目の視点VP
Lとを含む。右目の視点VP
Rには、第1領域DA1内の第1画像が表示された副画素群SP1から出射され、開口24を通過した第1光線が、ミラーM1,M2および投影面PSを介して到達する。左目の視点VP
Lには、第1領域DA1内の第2画像が表示された副画素群SP1から出射され、開口24を通過した第2光線が、ミラーM1,M2および投影面PSを介して到達する。さらに、これら2つの視点VP
R,VP
Lには、第0画像が表示された第2領域DA2内の副画素群SP2から出射された第3光線が、ミラーM1,M2および投影面PSを介して到達する。
【0090】
ユーザは右目で第1光線を捉え、且つ左目で第2光線を捉えることによって、立体的な虚像V1を知覚できると共に、両目で第3光線を捉えることによって平面的な虚像V2を知覚できる。つまりユーザは、奥行き感が得られることが好ましい画像に対応する虚像V1と、解像度の低下が好ましくない文字や記号等を含む画像に対応する虚像V2とを知覚できる。したがって、HUD1において形成される虚像Vの表示品位を向上できる。
【0091】
なお、第1領域DA1に2視点の第1および第2画像を表示する場合にも、
図9および
図10を参照して上述した、第1領域DA1と第2領域DA2との境界付近に関して変形した構成を適用できる。
【0092】
以上説明したように、本実施形態によれば、虚像の表示品位を向上できる。
【0093】
なお、この発明は、上記各実施形態そのものに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0094】
本明細書にて開示した構成から得られる表示装置の一例を以下に付記する。
(1)
第1方向と、前記第1方向に直交する第2方向とに並んだ副画素群を備え、前記副画素群の内の第1副画素群を含む第1領域と前記副画素群の内の第2副画素群を含む第2領域とを含む表示部と、
前記第1領域に重畳する光制御素子と、
前記表示部によって表示される画像が投影される投影面と、
前記画像を前記投影面に投影するための1つ以上のミラーと1つ以上のレンズの少なくとも一方と、
を具備し、
前記投影面を見るユーザによって知覚される虚像は、前記第1領域に対応し、立体的な虚像として知覚される第1虚像と、前記第2領域に対応し、平面的な虚像として知覚される第2虚像とを含む、表示装置。
(2)
前記虚像は、前記ユーザに対して、上部に前記第1虚像を含み、下部に前記第2虚像を含む、(1)記載の表示装置。
(3)
前記表示部は、前記第2領域に接する、前記第1領域内の第3領域に第1遮光体を備える、(1)または(2)記載の表示装置。
(4)
前記光制御素子は、前記第1遮光体に重畳する第2遮光体をさらに備える、(3)記載の表示装置。
(5)
前記表示部は、さらに、前記第2副画素群に近接する前記第1副画素群の一部を用いて、平面的な虚像を前記ユーザに知覚させるための画像を表示する、(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の表示装置。
(6)
前記第2虚像は、前記ユーザによって第1奥行き位置に知覚され、
前記第1虚像は、前記ユーザによって第2奥行き位置から第3奥行き位置までの範囲に知覚される、(1)または(2)記載の表示装置。
(7)
前記範囲は、前記第1奥行き位置を含む、(6)記載の表示装置。
(8)
前記第1奥行き位置は、前記範囲よりも前記ユーザの視点に近い位置である、(6)記載の表示装置。
(9)
前記第1副画素群は、前記立体的な虚像を前記ユーザに知覚させるための複数の視点の複数の画像をそれぞれ表示する複数の副画素群を含み、
前記第2副画素群は、前記平面的な虚像を前記ユーザに知覚させるための1つの視点の画像を表示する、(1)記載の表示装置。
(10)
前記投影面には、前記第1副画素群を用いて表示された複数の視点の複数の画像が、前記光制御素子を介して投影され、前記第2副画素群を用いて表示された1つの視点の画像が投影される、(1)記載の表示装置。
【符号の説明】
【0095】
1…ヘッドアップディスプレイ(HUD)、2…ディスプレイ、VP…視点、M1…平面ミラー、M2…凹面ミラー、PS…投影面、V,V1,V2…虚像、10…表示パネル、20…光制御素子、30…照明装置、40…透明樹脂、11…第1基板、12…第2基板、22…光規制体、23…遮光体、24…開口、51…第1偏光板、52…第2偏光板、DA…表示部、DA1…第1領域、DA2…第2領域、SP,SP1,SP2…副画素、BM1,BM2…ブラックマトリクス。