(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】研磨装置及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/20 20120101AFI20230724BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
B24B37/20
H01L21/304 621D
H01L21/304 622F
(21)【出願番号】P 2019052002
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】側瀬 聡文
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-134710(JP,A)
【文献】特開平10-296621(JP,A)
【文献】特開2003-282493(JP,A)
【文献】特表2003-509852(JP,A)
【文献】特開平10-071544(JP,A)
【文献】特開2013-141716(JP,A)
【文献】特開2004-140215(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0508082(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0166785(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/20
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持し、固定された保持部と、
前記基板の表面に研磨剤を供給する供給部と、
前記基板の表面に平行な方向に延びる回転軸と、前記回転軸の周囲に設けられた弾性体を有し、前記弾性体が前記回転軸を中心として回転することにより前記基板の表面を研磨する研磨部であって、研磨中の前記弾性体と前記基板の表面との接触面積が前記基板の表面積よりも小さく、研磨中の前記弾性体の速度ベクトルの前記基板の表面の法線方向成分の方向が、前記弾性体が前記基板の表面に接触する前後で逆転し、前記弾性体の前記回転軸の延びる方向の長さが前記基板の前記回転軸の延びる方向の最大長さより長い、研磨部と、
前記研磨部を、前記基板の表面に平行な方向に前記基板に対して移動させる移動機構と、
を備える研磨装置。
【請求項2】
前記弾性体は前記基板の表面に垂直な断面において円又は楕円であり、前記弾性体を回転させる第1の回転機構を、更に備える請求項1記載の研磨装置。
【請求項3】
前記弾性体の貯蔵弾性率は、0.01GPa以上10GPa以下である請求項1
又は請求項2記載の研磨装置。
【請求項4】
前記弾性体は、樹脂又は不織布を含む請求項1ないし請求項
3いずれか一項記載の研磨装置。
【請求項5】
前記研磨剤は、砥粒を含む請求項1ないし請求項
4いずれか一項記載の研磨装置。
【請求項6】
前記研磨部を複数有する請求項1ないし請求項
5いずれか一項記載の研磨装置。
【請求項7】
固定された保持部の上に基板を載置し、
前記基板の表面に研磨剤を供給し、
前記基板の表面に平行な方向に延びる回転軸の周囲に設けられ、前記回転軸の延びる方向の長さが前記基板の前記回転軸の延びる方向の最大長さより長い弾性体を、前記基板の表面積よりも接触面積が小さくなるように、前記基板の表面に接触させ、
前記弾性体が前記回転軸を中心として回転することにより、前記弾性体の速度ベクトルの前記基板の表面の法線方向成分の方向が、前記弾性体が前記基板の表面に接触する前後で逆転するように前記弾性体を動か
し、前記基板の表面に平行な方向に前記基板に対して前記弾性体を移動させて前記基板の表面を研磨する研磨方法。
【請求項8】
前記弾性体の表面は前記基板の表面に垂直な断面において円又は楕円である請求項
7記載の研磨方法。
【請求項9】
前記弾性体が前記基板に接触する部分の前記回転軸に垂直な方向の幅が、前記基板に形成されたパターンの最小寸法以下である請求項
8記載の研磨方法。
【請求項10】
前記弾性体の任意の一点が前記基板に接触する間に移動する前記基板の表面での距離が、前記基板に形成されたパターンの最小寸法以下である請求項
7又は請求項8記載の研磨方法。
【請求項11】
前記弾性体は、樹脂又は不織布を含む請求項
7ないし請求項
10いずれか一項記載の研磨方法。
【請求項12】
前記研磨剤は、砥粒を含む請求項
7ないし請求項
11いずれか一項記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、研磨装置及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、メモリデバイスやロジックデバイスのような半導体装置は、基板の上に膜の堆積や、膜のエッチングを繰り返すことによって、基板の上に所望の回路パターンを形成することで製造される。例えば、膜の堆積や、膜のエッチングの際に、基板の表面に基板表面から突出する凸欠陥が形成される場合がある。
【0003】
基板の表面に凸欠陥が生じると、例えば、回路パターンを形成するためのリソグラフィ工程において、デフォーカスにより所望の回路パターンが形成できないという問題が生じる。特に、半導体装置の微細化が進み、回路パターンの最小寸法が小さくなると、上記問題は深刻となる。
【0004】
例えば、凸欠陥の上に更に膜が堆積されると、埋め込まれた凸欠陥の上にサイズの拡大した凸欠陥が形成されることになる。膜の積層数が増えるにつれて、凸欠陥のサイズは拡大して行く。このため、デフォーカスにより所望の回路パターンが形成できない領域も拡大し、上記問題は更に深刻となる。
【0005】
例えば、メモリデバイスのメモリセルを三次元構造にすると、基板の上に形成される膜の積層数が飛躍的に増加する。このため、凸欠陥が回路パターンの形成に与える影響が大きくなり、半導体装置の歩留りの低下につながる。したがって、基板の表面の凸欠陥を効果的に除去する処理が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、基板の表面の凸欠陥を効果的に除去する研磨装置及び研磨方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の研磨装置は、基板を保持し、固定された保持部と、前記基板の表面に研磨剤を供給する供給部と、前記基板の表面に平行な方向に延びる回転軸と、前記回転軸の周囲に設けられた弾性体を有し、前記弾性体が前記回転軸を中心として回転することにより前記基板の表面を研磨する研磨部であって、研磨中の前記弾性体と前記基板の表面との接触面積が前記基板の表面積よりも小さく、研磨中の前記弾性体の速度ベクトルの前記基板の表面の法線方向成分の方向が、前記弾性体が前記基板の表面に接触する前後で逆転し、前記弾性体の前記回転軸の延びる方向の長さが前記基板の前記回転軸の延びる方向の最大長さより長い、研磨部と、前記研磨部を、前記基板の表面に平行な方向に前記基板に対して移動させる移動機構と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】第1の実施形態の研磨装置の研磨部の説明図。
【
図3】第1の実施形態の研磨装置及び研磨方法の作用及び効果の説明図。
【
図4】第1の実施形態の研磨方法の作用及び効果の説明図。
【
図5】第1の実施形態の研磨方法の作用及び効果の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材などには同一の符号を付し、一度説明した部材などについては適宜その説明を省略する。
【0011】
以下、実施形態の研磨装置及び研磨方法を、図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の研磨装置は、基板を保持する保持部と、基板の表面に研磨剤を供給する供給部と、弾性体を用いて基板の表面を研磨する研磨部であって、弾性体と基板の表面との接触面積が基板の表面積よりも小さく、研磨中の弾性体の速度ベクトルの基板の表面の法線方向成分の方向が、弾性体が基板の表面に接触する前後で逆転する研磨部と、を備える。
【0013】
また、第1の実施形態の研磨方法は、基板の表面に研磨剤を供給し、基板の表面積よりも接触面積が小さくなるように弾性体を基板の表面に接触させ、弾性体の速度ベクトルの基板の表面の法線方向成分の方向が、弾性体が基板の表面に接触する前後で逆転するように弾性体を動かして基板の表面を研磨する。
【0014】
図1は、第1の実施形態の研磨装置の模式図である。
図1(a)は研磨装置の断面図、
図1(b)は研磨装置の上面図である。第1の実施形態の研磨装置100は、半導体ウェハ等の基板の表面を研磨する研磨装置である。
【0015】
第1の実施形態の研磨装置100は、ステージ10(保持部)、支持軸12、研磨剤供給ノズル14(供給部)、研磨部16、第1の回転機構18、移動機構20、筐体22、制御部24を備える。研磨部16は、研磨パッド16a(弾性体)及び回転軸16bを有する。
【0016】
ステージ10は、被研磨対象となる半導体ウェハW(基板)を載置する。半導体ウェハWは、例えば、裏面側から真空吸着されることによりステージ10上に固定される。半導体ウェハWの表面は上を向いている。すなわち、半導体ウェハの表面は、ステージ10の反対側にある。
【0017】
支持軸12は、ステージ10を支持する。支持軸12は、ステージ10を固定する。
【0018】
研磨剤供給ノズル14は、半導体ウェハWの表面にスラリーを供給する。スラリーは研磨剤の一例である。
【0019】
スラリーには、砥粒が含まれる。砥粒は、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウム、又は、酸化セリウムを含む粒子である。
【0020】
研磨部16は、ステージ10の半導体ウェハW側に設けられる。研磨部16により、半導体ウェハWの表面が研磨される。
【0021】
研磨部16は、研磨パッド16a及び回転軸16bを有する。研磨パッド16aは、回転軸16bの周囲に設けられる。
【0022】
研磨パッド16aは弾性体の一例である。研磨パッド16aの貯蔵弾性率は、例えば、0.01GPa以上10GPa以下である。研磨パッド16aの貯蔵弾性率は、JIS K7244-4「プラスチック-動的機械特性の試験方法 第4部:引張振動-非共振法」に記載された方法により測定される貯蔵弾性率である。
【0023】
研磨パッド16aは、例えば、樹脂又は不織布を含む。研磨パッド16aは、例えば、ポリウレタン樹脂である。
【0024】
研磨パッド16aは、半導体ウェハWの表面に垂直な断面において、例えば、円又は楕円である。
図1では、研磨パッド16aの表面の半導体ウェハWの表面に垂直な断面が、円である場合を示す。
【0025】
回転軸16bは、ステージ10の表面に平行な方向に延びる。回転軸16bは、半導体ウェハWの表面に平行である。回転軸16bが回転することにより、研磨パッド16aが回転軸16bを中心として研磨パッド16aの円周方向に回転する。研磨パッド16aは回転運動する。
【0026】
図2は、第1の実施形態の研磨装置の研磨部の説明図である。
図2は、研磨部16と半導体ウェハWの表面の拡大図である。
図2は、半導体ウェハWの表面を研磨中の状態を示す。
【0027】
図2は、研磨パッド16aが半導体ウェハWの表面に接触している状態を示す。研磨パッド16aが半導体ウェハWの表面に接触することで、研磨パッド16aは弾性変形する。
【0028】
半導体ウェハWの表面を研磨中の研磨パッド16aと、半導体ウェハWの表面との接触部(
図2中のS)の接触面積は、半導体ウェハWの表面積よりも小さい。言い換えれば、研磨パッド16aは、半導体ウェハWの表面の一部にのみ接する。接触部Sの最小幅(Wmin)は、例えば、半導体ウェハWの直径の100分の1以下である。
【0029】
研磨中の研磨パッド16aの速度ベクトルの半導体ウェハWの表面の法線方向成分の方向は、研磨パッド16aが半導体ウェハWの表面に接触する前後で逆転する。例えば、回転中の研磨パッド16aが半導体ウェハWの表面に接触する前の速度ベクトルは、
図2のベクトルVaである。また、例えば、回転中の研磨パッド16aが半導体ウェハWの表面に接触し終わった後の速度ベクトルは、
図2のベクトルVbである。
【0030】
ベクトルVaの半導体ウェハWの表面の法線方向成分は、
図2のベクトルVaxである。ベクトルVbの半導体ウェハWの表面の法線方向成分は、
図2のベクトルVbxである。ベクトルVaxの向きとベクトルVbxの向きは逆転している。
【0031】
第1の回転機構18は、研磨パッド16aを、回転軸16bを中心に研磨パッド16aの円周方向に回転させる。第1の回転機構18は、例えば、モータと、回転軸16bを回転可能に保持するベアリングを備える。
【0032】
移動機構20は、研磨部16とを、半導体ウェハWの表面に平行な方向に半導体ウェハWに対して移動させる。移動機構20は、研磨部16を半導体ウェハWの表面に平行な方向に移動させる。移動機構20を用いて研磨部16を移動させることで、半導体ウェハWの表面の全面を研磨することが可能となる。移動機構20は、例えば、モータと、モータの回転運動を直線運動に変換する変換機構を備える。
【0033】
筐体22は、ステージ10、支持軸12、研磨剤供給ノズル14(供給部)、研磨部16、第1の回転機構18、移動機構20等を内蔵する。筐体22は、ステージ10、支持軸12、研磨剤供給ノズル14(供給部)、研磨部16、第1の回転機構18、移動機構20等を保護する。
【0034】
制御部24は、研磨剤供給ノズル14、研磨部16、第1の回転機構18、及び、移動機構20を制御する。例えば、研磨剤供給ノズル14からのスラリーの供給開始及び終了、スラリーの供給量を制御する。また、第1の回転機構18及び移動機構20を制御して、研磨パッド16aの回転速度、移動速度を制御する。制御部24は、例えば、回路基板等のハードウェアであっても、ハードウェアとメモリに記憶される制御プログラム等のソフトウェアとの組み合わせであっても構わない。
【0035】
次に、第1の実施形態の研磨方法について説明する。第1の実施形態の研磨装置100を用いる場合を例に説明する。
【0036】
第1の実施形態の研磨方法は、半導体ウェハWの表面を研磨する。被研磨対象となる半導体ウェハWには、例えば、膜の堆積や、膜のエッチングを繰り返すことによって、回路パターンが形成されている。被研磨対象となる半導体ウェハWの表面には、例えば、絶縁膜及び導電膜の少なくともいずれか一方が露出している。
【0037】
最初に、筐体22内に半導体ウェハWを搬入し、ステージ10の上に載置する。半導体ウェハWは、例えば、裏面側から真空吸着することによりステージ10上に固定される。
【0038】
次に、半導体ウェハWの表面にスラリーを供給する。スラリーは、研磨剤供給ノズル14から供給される。
【0039】
次に、研磨部16の研磨パッド16aを、半導体ウェハWの表面に接触させる。研磨パッド16aと、半導体ウェハWの表面との接触部(
図2中のS)の接触面積は、半導体ウェハWの表面積よりも小さい。
【0040】
研磨パッド16aを回転軸16bを中心に、研磨パッド16aの円周方向に回転させる。研磨中の研磨パッド16aの速度ベクトルの半導体ウェハWの表面の法線方向成分の方向は、研磨パッド16aが半導体ウェハWの表面に接触する前後で逆転する。研磨パッド16aにより半導体ウェハWの表面が研磨される。研磨パッド16aの表面は複数の凹凸を有し、半導体ウェハWの表面を研磨中、スラリーが複数の凹凸にとどまる。
【0041】
研磨パッド16aを回転させながら、
図1(b)中の矢印で示すように、研磨部16を半導体ウェハWの表面に平行な方向に移動させる。研磨部16を移動させることで、半導体ウェハWの表面の全面を研磨する。
【0042】
半導体ウェハWの表面の全面の研磨が終了した後、半導体ウェハWの表面へのスラリーの供給を終了する。その後、半導体ウェハWを筐体22の外に搬出する。
【0043】
次に、第1の実施形態の研磨装置100及び研磨方法の作用及び効果について説明する。
【0044】
半導体装置の製造中に半導体ウェハの表面に凸欠陥が生じると、例えば、リソグラフィ工程において、デフォーカスにより所望の回路パターンが形成できないという問題が生じる。特に、半導体装置の微細化が進み、回路パターンの最小寸法が小さくなると、上記問題は深刻となる。
【0045】
さらに、例えば、凸欠陥の上に更に膜が堆積されると、埋め込まれた凸欠陥の上に拡大した凸欠陥が形成される。膜の積層数が増えるにつれて、凸欠陥は拡大して行く。このため、デフォーカスにより所望の回路パターンが形成できない領域も拡大し、上記問題は更に深刻となる。
【0046】
第1の実施形態の研磨装置及び研磨方法によれば、半導体ウェハの表面の凸欠陥を効果的に除去することが可能となる。
【0047】
図3は、第1の実施形態の研磨装置及び研磨方法の作用及び効果の説明図である。
図3(a)は凸欠陥の模式図である。
図3(b)は比較例の研磨方法の説明図である。
図3(c)は第1の実施形態の研磨方法の説明図である。
【0048】
例えば、
図3(a)に示すような凸欠陥30が半導体ウェハWの上に存在すると仮定する。凸欠陥30は、下層に存在する異物29の上に膜形成が行われることによって形成された凸欠陥30である。
【0049】
図3(a)のような凸欠陥30は、半導体ウェハWの表面に付着している欠陥ではなく、表面と一体化した欠陥である。したがって、例えば、ウェットエッチング洗浄やブラシ洗浄等の機械的作用の小さい洗浄では除去することが困難である。
【0050】
図3(b)は、研磨パッド17を半導体ウェハWの表面に対して平行移動させる研磨方法を示す。この場合は、半導体ウェハWの表面に平行な方向に働くせん断応力により凸欠陥30が除去される。
【0051】
もっとも、研磨パッド17が横方向に移動し続け、せん断応力が連続的に印加される。このため、例えば、除去された凸欠陥30が研磨パッド17によって半導体ウェハWの表面を引きずられ、半導体ウェハWの表面に大きなスクラッチが形成されるおそれがある。また、例えば、下層に埋まっていた異物29が引きずり出され、更に半導体ウェハWの表面をこの異物29が引きずられることで、半導体ウェハWの表面に更に大きなスクラッチが形成されるおそれがある。
【0052】
第1の実施形態の研磨方法では、比較例と同様に、研磨パッド16aの接触部分では半導体ウェハWの表面に平行な方向にせん断応力が働き、凸欠陥30が除去される。一方、第1の実施形態の研磨方法では、比較例と異なり、研磨パッド16aが回転している。このため、研磨パッド16aは凸欠陥30の除去後、上向き方向に運動する。したがって、凸欠陥30が引きずられることによるスクラッチや、下層に埋まっていた異物が引きずり出され、更にこの異物29が引きずられることによるスクラッチは生じない。
【0053】
第1の実施形態の研磨装置及び研磨方法によれば、半導体ウェハの表面にスクラッチを生じさせることなく、半導体ウェハの表面の凸欠陥を効果的に除去することが可能となる。
【0054】
図4は、第1の実施形態の研磨方法の作用及び効果の説明図である。
図4に示すように、研磨パッド16aが半導体ウェハWに接触する部分の研磨パッド16aの円周方向の幅(
図4中のWx)が、半導体ウェハWに形成されたパターンの最小寸法以下であることが好ましい。
図4の場合、半導体ウェハWに形成されたパターンの最小寸法は、配線40の幅(
図4中のL1)、又は、配線40の間隔(
図4中のL2)である。
【0055】
上記条件を充足することで、研磨パッド16aが凸欠陥30等を引きずることにより生じるスクラッチの長さが、半導体ウェハWに形成されたパターンの最小寸法以下となる。したがって、例えば、配線40の断線や、配線40の間のショートが抑制される。
【0056】
図5は、第1の実施形態の研磨方法の作用及び効果の説明図である。
図5は、研磨部16が半導体ウェハWに対して水平方向に移動する場合を示す。
【0057】
図5に示すように、研磨パッド16aの任意の一点(
図5中ではA)が半導体ウェハWに接触する間に移動する半導体ウェハWの表面での距離(
図5中のd)が、半導体ウェハWに形成されたパターンの最小寸法以下であることが好ましい。
図5の場合、半導体ウェハWに形成されたパターンの最小寸法は、配線40の幅(
図5中のL1)、又は、配線40の間隔(
図5中のL2)である。
【0058】
上記条件を充足することで、研磨パッド16aが凸欠陥30等を引きずることにより生じるスクラッチの長さが、半導体ウェハWに形成されたパターンの最小寸法以下となる。したがって、例えば、配線40の断線や、配線40の間のショートが抑制される。
【0059】
研磨パッド16aの貯蔵弾性率は、0.01GPa以上10GPa以下であることが好ましく、0.1GPa以上1GPa以下であることがより好ましい。上記下限値より貯蔵弾性率が高いことで、例えば、凸欠陥の除去効率が高くなる。また、上記上限値より貯蔵弾性率が低いことで、例えば、凸欠陥以外の領域が削られることが抑制される。
【0060】
凸欠陥を効果的に除去する観点から、研磨パッド16aは、樹脂又は不織布を含むことが好ましい。
【0061】
以上、第1の実施形態の研磨装置及び研磨方法によれば、凸欠陥を効果的に除去することが可能となる。
【0062】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の研磨装置は、保持部を回転させることにより、基板を基板の中心を回転中心として回転させる第2の回転機構を、更に備える点で、第1の実施形態と異なっている。また、第2の実施形態の研磨方法は、基板を基板の中心を回転中心として回転させる点で、第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0063】
図6は、第2の実施形態の研磨装置の模式図である。
図6(a)は研磨装置の断面図、
図6(b)は研磨装置の上面図である。第2の実施形態の研磨装置200は、半導体ウェハ等の基板の表面を研磨する研磨装置である。
【0064】
第2の実施形態の研磨装置200は、ステージ10(保持部)、支持軸12、研磨剤供給ノズル14(供給部)、研磨部16、第1の回転機構18、移動機構20、筐体22、制御部24、第2の回転機構26を備える。研磨部16は、研磨パッド16a(弾性体)及び回転軸16bを有する。
【0065】
第2の回転機構26は、ステージ10を回転させることにより、半導体ウェハWを半導体ウェハWの中心Cを回転中心として回転させる。第2の回転機構26は、支持軸12を回転させる。
【0066】
第2の回転機構26は、例えば、モータと、支持軸12を回転可能に保持するベアリングを備える。第2の回転機構26は、制御部24によって制御される。
【0067】
第2の実施形態の研磨方法は、半導体ウェハWを半導体ウェハWの中心Cを回転中心として回転させる。半導体ウェハWを回転させることで、研磨パッド16aの接触部分でのせん断応力が大きくなる。したがって、凸欠陥の除去性能が向上する。
【0068】
以上、第2の実施形態の研磨装置及び研磨方法によれば、第1の実施形態と比較して、更に、凸欠陥を効果的に除去することが可能となる。
【0069】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の研磨装置は、研磨部を複数有する点で、第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0070】
図7は、第3の実施形態の研磨装置の模式図である。
図7(a)は研磨装置の断面図、
図7(b)は研磨装置の上面図である。第3の実施形態の研磨装置300は、半導体ウェハ等の基板の表面を研磨する研磨装置である。
【0071】
第3の実施形態の研磨装置300は、ステージ10(保持部)、支持軸12、研磨剤供給ノズル14(供給部)、研磨部16、第1の回転機構18、移動機構20、筐体22、制御部24、第2の回転機構26を備える。研磨部16は、研磨パッド16a(弾性体)及び回転軸16bを有する。
【0072】
研磨装置300は、研磨部16を複数有する。
図7は、研磨部16を2個有する場合を例示している。研磨部16は、3個以上であっても構わない。
【0073】
研磨装置300は、研磨部16を複数有することで、研磨処理の時間を短縮できる。
【0074】
以上、第3の実施形態の研磨装置によれば、第1の実施形態と同様、凸欠陥を効果的に除去することが可能となる。また、研磨処理の時間を短縮できる。
【0075】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の研磨装置は、弾性体の長さが、基板の最大長さよりも長い点で、第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0076】
図8は、第4の実施形態の研磨装置の模式図である。
図8(a)は研磨装置の断面図、
図8(b)は研磨装置の上面図である。第4の実施形態の研磨装置400は、半導体ウェハ等の基板の表面を研磨する研磨装置である。
【0077】
第4の実施形態の研磨装置400は、ステージ10(保持部)、支持軸12、研磨剤供給ノズル14(供給部)、研磨部16、第1の回転機構18、移動機構20、筐体22、制御部24、第2の回転機構26を備える。研磨部16は、研磨パッド16a(弾性体)及び回転軸16bを有する。
【0078】
研磨装置400の研磨パッド16aの長さ(
図8中のL3)は、半導体ウェハWの最大長さ(
図8中の直径D)よりも大きい。
【0079】
研磨装置400は、研磨パッド16aの長さL3が、半導体ウェハWの直径Dよりも長いことで、研磨処理の時間を短縮できる。
【0080】
以上、第4の実施形態の研磨装置によれば、第1の実施形態と同様、凸欠陥を効果的に除去することが可能となる。また、研磨処理の時間を短縮できる。
【0081】
第1ないし第4の実施形態では、研磨パッド16aの表面の半導体ウェハWの表面に垂直な断面が、円である場合を例に説明したが、研磨パッド16aの断面は楕円であっても構わない。
【0082】
第1乃至第4の実施形態では、研磨パッド16aが回転運動する場合を例に説明したが、研磨パッド16aが振り子のような往復運動をする構成であっても構わない。この場合、例えば、研磨パッド16aの断面の形状を円の一部とすることができ、研磨パッド16aのサイズを小さくすることが可能である。例えば、研磨パッド16aの断面の形状を扇形とすることができる。
【0083】
また、第1、第3、及び、第4の実施形態では、ステージ10が固定され、研磨部16が水平方向に移動する場合を例に説明したが、研磨部16が固定され、ステージ10が水平方向に移動する構成とすることも可能である。
【0084】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
10 ステージ(保持部)
14 研磨剤供給ノズル(供給部)
16 研磨部
16a 研磨パッド(弾性体)
18 第1の回転機構
20 移動機構
26 第2の回転機構
100 研磨装置
200 研磨装置
300 研磨装置
400 研磨装置
W 半導体ウェハ(基板)