(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】情報処理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20230724BHJP
G06Q 30/0645 20230101ALI20230724BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q30/0645
(21)【出願番号】P 2019054915
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】多久 俊平
【審査官】藤澤 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-190249(JP,A)
【文献】特開2014-041475(JP,A)
【文献】特開2013-027154(JP,A)
【文献】特開2018-207590(JP,A)
【文献】特開2016-181109(JP,A)
【文献】特開2018-121477(JP,A)
【文献】特開2017-162180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電池を用いて走行する車両を利用者に利用させて収益を得るモビリティサービスにおいて、当該車両の利用料金に応じた需要を基に得られる収益又は利益を算出する第1算出手段と、
電力の需給に関する情報である電力需給情報を取得し、当該電力需給情報に従って前記モビリティサービスで利用されていない前記車両の放電又は充電を制御することによって得られる収益又は利益を算出する第2算出手段と、
前記第1算出手段により算出された収益又は利益と、前記第2算出手段により算出された収益又は利益との合計が予め定められた条件を満たす場合の前記車両の利用料金の情報を出力する出力手段と
を備える情報処理システム。
【請求項2】
前記予め定められた条件は、前記合計が最大になるという条件であること
を特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記予め定められた条件は、前記合計が予め定められた閾値以上になるという条件であること
を特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記電力需給情報は、特定の時間帯に電力の需給を調整できる調整力を供給することによって得られる収益の情報であること
を特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記電力需給情報は、特定の時間帯に一定量の電力を供給することによって得られる収益の情報であること
を特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記電力需給情報は、前記車両の放電及び充電の少なくとも何れか一方が可能な設備が設けられた場所の最大需要電力を抑制することによって、当該場所の電気料金が削減されることを示す情報であること
を特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記モビリティサービスで利用されていない前記車両は、当該モビリティサービスで用意された全ての車両から当該モビリティサービスで利用される車両を除いた残りの車両のうち、前記第2算出手段により算出される収益又は利益を得るための特定の条件を満たす車両であること
を特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記特定の条件は、前記第2算出手段により算出される収益又は利益が前記車両の放電によって得られる場合に、当該収益又は当該利益を得るために指定された時点において、当該車両の充電電力量の残量が予め定められた閾値以上であるという条件であること
を特徴とする請求項7に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記特定の条件は、前記第2算出手段により算出される収益又は利益が前記車両の放電又は充電によって得られる場合に、当該収益又は当該利益を得るために指定された時点において、当該車両が放電又は充電が可能な設備に到着することが可能であるという条件であること
を特徴とする請求項7に記載の情報処理システム。
【請求項10】
前記需要は、前記車両の利用料金とともに、当該車両の利用料金以外の情報であり、当該需要を表す指標と当該利用料金との関係に予め定められている情報を基に算出されること
を特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項11】
充電池を用いて走行する車両を利用者に利用させて収益を得るモビリティサービスにおいて、当該モビリティサービスの需要を基に得られる収益又は利益を算出する第1算出手段と、
電力の需給に関する情報である電力需給情報を取得し、当該電力需給情報に従って前記モビリティサービスで利用されていない前記車両の放電又は充電を制御することによって得られる利益又は収益を算出する第2算出手段と、
前記第1算出手段により算出された収益又は利益と前記第2算出手段により算出された収益又は利益とにより変更される、前記車両の利用料金の情報を出力する出力手段と
を備える情報処理システム。
【請求項12】
電力の需給に関する情報である電力需給情報を取得する取得手段と、
充電池を用いて走行する車両を利用者に利用させて収益を得るモビリティサービスにおいて、前記電力需給情報に従って
当該モビリティサービスで利用されていない当該車両の放電又は充電を制御することによって得られる収益又は利益を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された収益又は利益に応じて変更される、前記車両の利用料金の情報を出力する出力手段と
を備える情報処理システム。
【請求項13】
コンピュータに、
充電池を用いて走行する車両を利用者に利用させて収益を得るモビリティサービスにおいて、当該車両の利用料金に応じた需要を基に得られる収益又は利益を算出する第1算出機能と、
電力の需給に関する情報である電力需給情報を取得し、当該電力需給情報に従って前記モビリティサービスで利用されていない前記車両の放電又は充電を制御することによって得られる収益又は利益を算出する第2算出機能と、
前記第1算出機能により算出された収益又は利益と、前記第2算出機能により算出された収益又は利益との合計が予め定められた条件を満たす場合の前記車両の利用料金の情報を出力する機能と
を実現させるためのプログラム。
【請求項14】
コンピュータに、
充電池を用いて走行する車両を利用者に利用させて収益を得るモビリティサービスにおいて、当該モビリティサービスの需要を基に得られる収益又は利益を算出する第1算出機能と、
電力の需給に関する情報である電力需給情報を取得し、当該電力需給情報に従って前記モビリティサービスで利用されていない前記車両の放電又は充電を制御することによって得られる利益又は収益を算出する第2算出機能と、
前記第1算出機能により算出された収益又は利益と前記第2算出機能により算出された収益又は利益とにより変更される、前記車両の利用料金の情報を出力する機能と
を実現させるためのプログラム。
【請求項15】
コンピュータに、
電力の需給に関する情報である電力需給情報を取得する機能と、
充電池を用いて走行する車両を利用者に利用させて収益を得るモビリティサービスにおいて、前記電力需給情報に従って
当該モビリティサービスで利用されていない当該車両の放電又は充電を制御することによって得られる収益又は利益を算出する機能と、
算出された収益又は利益に応じて変更される、前記車両の利用料金の情報を出力する機能と
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、電力系統が電力の供給を要請している供給時間帯の情報を含む電力供給要請情報、及び車両の利用予約情報を取得する取得部と、前記利用予約情報に基づいて、前記供給時間帯において前記車両から前記電力系統に供給する供給電力を算出する算出部と、算出された前記供給電力を前記電力系統に通知する通知部と、を備える情報処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
EV(Electric Vehicle:電気自動車)は大容量の充電池を搭載している。そのため、車両としての役割の他、充電器や充放電器とつながることで、電力系統に対する調整力としての役割などを担うことができる。例えば、利用者の希望に応じてEVを利用させるモビリティサービスでは、EVが利用されていない時間に充電器や充放電器とつなげて、電力系統に対する調整力等を供出することで、収益又は利益を得ることが可能である。そこで、モビリティサービスでは、電力関連の収益又は利益を考慮して、モビリティサービスの利用料金を設定することが望ましい。なお、収益とは、サービスの対価として受け取る金額である。利益とは、収益から費用を差し引いた金額である。
本発明の目的は、電力関連の収益又は利益を考慮してモビリティサービスの利用料金を設定することを可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明は、充電池を用いて走行する車両を利用者に利用させて収益を得るモビリティサービスにおいて、当該車両の利用料金に応じた需要を基に得られる収益又は利益を算出する第1算出手段と、電力の需給に関する情報である電力需給情報を取得し、当該電力需給情報に従って前記モビリティサービスで利用されていない前記車両の放電又は充電を制御することによって得られる収益又は利益を算出する第2算出手段と、前記第1算出手段により算出された収益又は利益と、前記第2算出手段により算出された収益又は利益との合計が予め定められた条件を満たす場合の前記車両の利用料金の情報を出力する出力手段とを備える情報処理システムである。
ここで、前記予め定められた条件は、前記合計が最大になるという条件であることを特徴とすることができる。
また、前記予め定められた条件は、前記合計が予め定められた閾値以上になるという条件であることを特徴とすることができる。
そして、前記電力需給情報は、特定の時間帯に電力の需給を調整できる調整力を供給することによって得られる収益の情報であることを特徴とすることができる。
また、前記電力需給情報は、特定の時間帯に一定量の電力を供給することによって得られる収益の情報であることを特徴とすることができる。
さらに、前記電力需給情報は、前記車両の放電及び充電の少なくとも何れか一方が可能な設備が設けられた場所の最大需要電力を抑制することによって、当該場所の電気料金が削減されることを示す情報であることを特徴とすることができる。
そして、前記モビリティサービスで利用されていない前記車両は、当該モビリティサービスで用意された全ての車両から当該モビリティサービスで利用される車両を除いた残りの車両のうち、前記第2算出手段により算出される収益又は利益を得るための特定の条件を満たす車両であることを特徴とすることができる。
また、前記特定の条件は、前記第2算出手段により算出される収益又は利益が前記車両の放電によって得られる場合に、当該収益又は当該利益を得るために指定された時点において、当該車両の充電電力量の残量が予め定められた閾値以上であるという条件であることを特徴とすることができる。
さらに、前記特定の条件は、前記第2算出手段により算出される収益又は利益が前記車両の放電又は充電によって得られる場合に、当該収益又は当該利益を得るために指定された時点において、当該車両が放電又は充電が可能な設備に到着することが可能であるという条件であることを特徴とすることができる。
そして、前記需要は、前記車両の利用料金とともに、当該車両の利用料金以外の情報であり、当該需要を表す指標と当該利用料金との関係に予め定められている情報を基に算出されることを特徴とすることができる。
また、かかる目的のもと、本発明は、充電池を用いて走行する車両を利用者に利用させて収益を得るモビリティサービスにおいて、当該モビリティサービスの需要を基に得られる収益又は利益を算出する第1算出手段と、電力の需給に関する情報である電力需給情報を取得し、当該電力需給情報に従って前記モビリティサービスで利用されていない前記車両の放電又は充電を制御することによって得られる利益又は収益を算出する第2算出手段と、前記第1算出手段により算出された収益又は利益と前記第2算出手段により算出された収益又は利益とにより変更される、前記車両の利用料金の情報を出力する出力手段とを備える情報処理システムである。
さらに、かかる目的のもと、本発明は、電力の需給に関する情報である電力需給情報を取得する取得手段と、充電池を用いて走行する車両を利用者に利用させて収益を得るモビリティサービスにおいて、前記電力需給情報に従って当該モビリティサービスで利用されていない当該車両の放電又は充電を制御することによって得られる収益又は利益を算出する算出手段と、前記算出手段により算出された収益又は利益に応じて変更される、前記車両の利用料金の情報を出力する出力手段とを備える情報処理システムである。
また、本発明をプログラムとして捉えた場合、本発明が適用されるプログラムは、コンピュータに、充電池を用いて走行する車両を利用者に利用させて収益を得るモビリティサービスにおいて、当該車両の利用料金に応じた需要を基に得られる収益又は利益を算出する第1算出機能と、電力の需給に関する情報である電力需給情報を取得し、当該電力需給情報に従って前記モビリティサービスで利用されていない前記車両の放電又は充電を制御することによって得られる収益又は利益を算出する第2算出機能と、前記第1算出機能により算出された収益又は利益と、前記第2算出機能により算出された収益又は利益との合計が予め定められた条件を満たす場合の前記車両の利用料金の情報を出力する機能とを実現させるためのプログラムである。
さらに、本発明をプログラムとして捉えた場合、本発明が適用されるプログラムは、コンピュータに、充電池を用いて走行する車両を利用者に利用させて収益を得るモビリティサービスにおいて、当該モビリティサービスの需要を基に得られる収益又は利益を算出する第1算出機能と、電力の需給に関する情報である電力需給情報を取得し、当該電力需給情報に従って前記モビリティサービスで利用されていない前記車両の放電又は充電を制御することによって得られる利益又は収益を算出する第2算出機能と、前記第1算出機能により算出された収益又は利益と前記第2算出機能により算出された収益又は利益とにより変更される、前記車両の利用料金の情報を出力する機能とを実現させるためのプログラムである。
そして、本発明をプログラムとして捉えた場合、本発明が適用されるプログラムは、コンピュータに、電力の需給に関する情報である電力需給情報を取得する機能と、充電池を用いて走行する車両を利用者に利用させて収益を得るモビリティサービスにおいて、前記電力需給情報に従って当該モビリティサービスで利用されていない当該車両の放電又は充電を制御することによって得られる収益又は利益を算出する機能と、算出された収益又は利益に応じて変更される、前記車両の利用料金の情報を出力する機能とを実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電力関連の収益又は利益を考慮してモビリティサービスの利用料金を設定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施の形態に係るEV管理システムの全体構成例を示す図である。
【
図2】本実施の形態に係るEV管理サーバのハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】本実施の形態に係るEV管理サーバの機能構成の一例を示す図である。
【
図4】モビリティ料金の情報を出力する処理手順の一例を示したフローチャートである。
【
図5】モビリティ料金の情報を出力する処理の具体例を説明するための図である。
【
図6】収益とモビリティ仮料金との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0009】
<EV管理システムの全体構成>
図1は、本実施の形態に係るEV管理システム1の全体構成例を示す図である。本実施の形態に係るEV管理システム1は、EV管理サーバ100、ステーション200、EV300を備える。なお、EV300は、電気自動車(プラグインハイブリッド車等も含む)である。言い換えると、EV300は、充電池301を用いて走行する車両である。
本実施の形態では、情報処理システムの一例として、EV管理システム1、EV管理サーバ100が用いられる。
【0010】
EV管理サーバ100は、EV300のモビリティサービスの運用を管理するサーバ装置である。このEV管理サーバ100は、例えば、EV300のモビリティサービスを提供する会社のサーバ装置として設けられる。
ここで、モビリティサービスとは、利用者の希望に応じてEV300を利用者に利用させて収益を得るサービスである。例えば、EV300をタクシーとして利用する場合や、EV300のレンタカーサービスが例示される。また、例えば、利用者間でEV300を共同で利用するサービスであるカーシェアリングサービスや、1台のEV300に複数の利用者が一緒に乗り合わせるライドシェアサービスが例示される。
なお、以下では、モビリティサービスの一例として、レンタカーサービスやカーシェアリングサービスなどのEV300を貸し出すものを例に挙げて説明する。また、以下では、モビリティサービスにおけるEV300の利用者を、単に「利用者」と称する場合がある。
【0011】
ここで、EV管理サーバ100は、モビリティサービスで用意された全てのEV300について、EV300の車両に関する情報(例えば、EV300を識別するためにEV300毎に付与された車両IDや、EV300の車種、EV300の性能などの情報)を保持する。
また、EV管理サーバ100は、インターネット等のネットワークを介して、EV300から、常時(例えば5分毎)又は必要に応じて、EV300の位置情報、EV300に充電された電力量の残量(SOC(State Of Charge))等の各種情報を取得する。
さらに、EV管理サーバ100は、利用者の端末装置等を介して、利用者からEV300の利用の予約を受け付ける。
そして、EV管理サーバ100は、各EV300について、利用者によるEV300の利用及びEV300の充電(及び放電)を管理する。
【0012】
より具体的には、例えば、EV管理サーバ100は、利用者によるEV300の利用について、EV300を利用者に利用させる際の利用料金(以下、「モビリティ料金」と称する)や、EV300を利用者に利用させるスケジュールなどの管理を行う。モビリティ料金は、例えば、EV300の1台1時間当たりの利用料金である。
また、例えば、EV管理サーバ100は、EV300の充電(及び放電)について、例えば、EV300に充電された電力量の残量、EV300に充電するタイミング、EV300に充電する時間などの管理を行う。
【0013】
さらに、EV管理サーバ100は、リソースアグリゲータ400から、電力の需給に関する情報(以下、「電力需給情報」と称する)を取得する。この電力需給情報には、EV300を用いて電力の需給に対応した場合に得られる収益又は利益の情報が含まれる。言い換えると、電力需給情報は、例えば、送配電事業者500や再生可能エネルギー発電事業者(例えば、太陽光発電、風力発電などの発電事業者)600、小売電気事業者700などの事業者の需給調整に寄与することで得られるインセンティブに関する情報である。EV管理サーバ100は、電力需給情報を取得すると、モビリティサービスで得られる収益(以下、「モビリティ収益」と称する)と、電力需給情報に従ってEV300の放電又は充電を制御することによって得られる収益(以下、「電力関連収益」と称する)との合計を最大化するようなモビリティ料金を特定する。
【0014】
ここで、リソースアグリゲータ400とは、送配電事業者500、再生可能エネルギー発電事業者600、小売電気事業者700などの電力需給に関する各事業者の要求と、工場やオフィス、家庭などが保有する電力とをマッチングして、各事業者の要求に沿って電力の需給を調整するとともに、要求に協力した者に対して対価を支払う事業者である。
例えば、リソースアグリゲータ400は、周波数調整や需給バランス調整を行うために必要な電力を送配電事業者500に供給したり、再生可能エネルギー発電事業者600や小売電気事業者700等の事業者の計画値と実測値との誤差を縮小させるために必要な電力を各事業者に供給したりする。リソースアグリゲータ400は、このような電力の需給を調整するために、電力需給情報を発信して、EV管理サーバ100に対して電力需給の要請を行う。
【0015】
ただし、EV管理サーバ100が電力需給情報を取得する取得先は、リソースアグリゲータ400に限られない。例えば、EV管理サーバ100は、送配電事業者500、再生可能エネルギー発電事業者600、小売電気事業者700などの各事業者から、直接、電力需給情報を取得してもよい。
【0016】
また、以下では、特に言及しない限り、EV管理サーバ100が、モビリティ収益と電力関連収益とを基にモビリティ料金を特定する例について説明する。ただし、本実施の形態では、収益を基にモビリティ料金を特定する構成に限定されない。例えば、EV管理サーバ100は、モビリティサービスで得られる利益と、電力需給情報に従ってEV300の放電又は充電を制御することによって得られる利益とを基に、モビリティ料金を特定してもよい。
【0017】
ステーション200は、EV300の貸し出しやEV300の充電(又は放電)を行う場所である。
例えば、利用者は、ステーション200でEV300の貸し出しを受ける。また、利用者は、貸し出しを受けたEV300を利用して、利用した後にはEV300をステーション200に返却する。なお、EV300の貸し出しを受けるステーション200とEV300を返却するステーション200とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、ステーション200には、EV300の充電及び放電を行うための充放電設備201が設けられている。ステーション200の管理者やEV300を利用する利用者等が、EV300を充放電設備201に接続することにより、充放電設備201からEV300に電力が供給されてEV300の充電が行われたり、EV300の放電が行われたりする。
【0018】
EV300は、充電池301を用いて走行する車両である。EV300は、充放電プラグ等を介してステーション200の充放電設備201に接続されて、充電や放電を行う。また、EV300に設けられた車載器(不図示)は、EV管理サーバ100等の他装置との間で通信を行い、GPS(Global Positioning System)等によって取得したEV300の位置情報や、EV300に充電された充電電力量の残量等の各種情報を出力する。
【0019】
なお、
図1に示す例では、ステーション200を2つ示したが、ステーション200の数は2つに限定されない。EV管理システム1には、EV管理サーバ100で管理される数のステーション200が存在する。また、ステーション200に設けられる充放電設備201の数は2つに限定されない。さらに、EV300については、モビリティサービスで用意された数のEV300が存在する。なお、EV300の数は1つであってもよい。
【0020】
<EV管理サーバのハードウェア構成>
次に、本実施の形態に係るEV管理サーバ100のハードウェア構成について説明する。
図2は、本実施の形態に係るEV管理サーバ100のハードウェア構成例を示す図である。
【0021】
図示するように、EV管理サーバ100は、プログラム(ファームウェアを含む)の実行を通じて装置全体を制御するCPU(Central Processing Unit)101と、BIOS(Basic Input Output System)やファームウェア等のプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)102と、プログラムの実行領域として使用されるRAM(Random Access Memory)103とを備える。
【0022】
また、EV管理サーバ100は、OS(Operating System)やアプリケーション等の各種プログラム、各種プログラムに対する入力データ、各種プログラムからの出力データ等を記憶する記憶領域であるHDD(Hard Disk Drive)104を備える。そして、ROM102やHDD104等に記憶されたプログラムが、RAM103に読み込まれてCPU101に実行されることにより、EV管理サーバ100の機能が実現される。
さらに、EV管理サーバ100は、外部との通信を行うための通信インタフェース(通信I/F)105と、ビデオメモリやディスプレイ等からなる表示機構106と、キーボードやマウス、タッチパネル等の入力デバイス107とを備える。
【0023】
<EV管理サーバの機能構成>
次に、本実施の形態に係るEV管理サーバ100の機能構成について説明する。
図3は、本実施の形態に係るEV管理サーバ100の機能構成の一例を示す図である。EV管理サーバ100は、モビリティ仮料金設定部111、モビリティ車両利用率算出部112、モビリティ収益算出部113、電力需給可能台数算出部114、電力収益算出部115、収益合計算出部116、モビリティ料金出力部117を備える。
【0024】
モビリティ仮料金設定部111は、リソースアグリゲータ400等から電力需給情報を取得すると、仮のモビリティ料金(以下、「モビリティ仮料金」と称する)を設定する。
ここで、モビリティ仮料金設定部111は、予め定められた数のモビリティ仮料金を設定する。予め定められた数は、後述するように、収益合計算出部116が算出する収益の合計を最大にするようなモビリティ料金を特定できる数であればよい。言い換えると、モビリティ仮料金と、収益合計算出部116が算出する収益の合計との関係を把握できる数であればよい。
【0025】
モビリティ車両利用率算出部112は、モビリティ仮料金毎に、利用者に利用されるEV300の利用率を算出する。EV300の利用率とは、モビリティサービスで用意された全てのEV300のうち、利用者に利用されると予測されるEV300の割合である。言い換えると、EV300の利用率は、モビリティサービスの需要を表す指標といえる。
例えば、EV300の1台1時間当たりのモビリティ料金と利用率との相関関係が予め定められている。この相関関係では、例えば、モビリティ料金が安いほどEV300の利用率が上がり、モビリティ料金が高いほどEV300の利用率が下がるように定められている。モビリティ車両利用率算出部112は、この相関関係を基に、モビリティ仮料金毎に、EV300の利用率を算出する。
【0026】
モビリティ収益算出部113は、モビリティ仮料金毎に、モビリティ車両利用率算出部112によって算出された利用率でEV300が利用された場合のモビリティ収益を算出する。言い換えると、モビリティ収益算出部113は、モビリティ仮料金に応じたEV300の需要を基にモビリティ収益を算出する。
例えば、モビリティ収益算出部113は、EV300の1台1時間当たりの利用料金と、モビリティ車両利用率算出部112によって算出された利用率で利用されるEV300の台数とを掛け合わせて、1台1時間当たりのモビリティ収益を算出する。
【0027】
電力需給可能台数算出部114は、モビリティ仮料金毎に、電力の需給に利用可能なEV300の台数を算出する。
例えば、電力需給可能台数算出部114は、モビリティサービスで利用されていないEV300を、電力の需給に利用可能なEV300とする。より具体的には、例えば、電力需給可能台数算出部114は、モビリティサービスで用意された全てのEV300から、モビリティ車両利用率算出部112によって算出された利用率で利用されるEV300を除いて、電力の需給に利用可能なEV300の台数を算出する。
【0028】
電力収益算出部115は、モビリティ仮料金毎に、電力の需給に利用可能なEV300によって得られる電力関連収益を算出する。ここで、電力収益算出部115は、モビリティ仮料金毎に、リソースアグリゲータ400等から取得した電力需給情報に従ってEV300の放電又は充電を制御することによって得られる電力関連収益を算出する。
【0029】
例えば、電力収益算出部115は、リソースアグリゲータ等からの電力需給情報により、特定の時間帯に電力の需給を調整できる調整力を供出することによって得られる収益の情報を取得する。ここで、調整力とは、一般に、ΔkW価値と呼ばれるものであり、周波数等を調整して電力の品質を維持する価値である。上述したように、リソースアグリゲータ400等の要請に従って、送配電事業者500や再生可能エネルギー発電事業者600、小売電気事業者700等の事業者に調整力を供出することで、電力関連収益が得られる。そこで、電力収益算出部115は、電力需給情報に対して、電力需給可能台数算出部114が算出したEV300の台数を考慮して、電力需給収益を算出する。
【0030】
収益合計算出部116は、モビリティ仮料金毎に、モビリティ収益算出部113が算出したモビリティ収益と、電力収益算出部115が算出した電力関連収益との合計を算出する。
【0031】
モビリティ料金出力部117は、収益合計算出部116が算出した収益の合計が最大となる場合のモビリティ料金の情報を出力する。出力された情報が、例えば画面に表示されることにより、EV管理サーバ100の管理者等にモビリティ料金の情報が通知される。
ここで、収益合計算出部116が算出する収益の合計は、モビリティ仮料金設定部111が設定するモビリティ仮料金に応じて変化する。そこで、モビリティ料金出力部117は、モビリティ仮料金設定部111が設定したモビリティ仮料金と、収益合計算出部116が算出した収益の合計との関係を基に、収益合計算出部116が算出した収益の合計を最大とするモビリティ料金を特定する。そして、モビリティ料金出力部117は、特定したモビリティ料金の情報を出力する。また、モビリティ料金出力部117は、特定したモビリティ料金の値を実際のモビリティ料金として設定してもよい。
【0032】
そして、EV管理サーバ100を構成する各機能部は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。具体的には、例えば、EV管理サーバ100を
図2に示したハードウェア構成にて実現した場合、ROM102やHDD104等に記憶された各種プログラムが、RAM103に読み込まれてCPU101に実行されることにより、
図3に示すモビリティ仮料金設定部111、モビリティ車両利用率算出部112、モビリティ収益算出部113、電力需給可能台数算出部114、電力収益算出部115、収益合計算出部116、モビリティ料金出力部117等の機能部が実現される。
【0033】
また、本実施の形態では、第1算出手段の一例として、モビリティ収益算出部113が用いられる。取得手段、算出手段、第2算出手段の一例として、電力収益算出部115が用いられる。出力手段の一例として、モビリティ料金出力部117が用いられる。
【0034】
<モビリティ料金の情報の出力手順>
次に、EV管理サーバ100がモビリティ料金の情報を出力する処理手順について説明する。
図4は、モビリティ料金の情報を出力する処理手順の一例を示したフローチャートである。
また、以下では、処理のステップを記号の「S」と表記する場合がある。
【0035】
まず、リソースアグリゲータ400等から電力需給情報が送信されることにより、EV管理サーバ100は、電力需給情報を取得する。そして、モビリティ仮料金設定部111は、予め定められた数のモビリティ仮料金を設定する(S101)。次に、モビリティ車両利用率算出部112は、S101で設定されたモビリティ仮料金毎に、利用者に利用されるEV300の利用率を算出する(S102)。
【0036】
次に、モビリティ収益算出部113は、S101で設定されたモビリティ仮料金毎に、S102で算出された利用率でEV300が利用された場合のモビリティ収益を算出する(S103)。次に、電力需給可能台数算出部114は、S101で設定されたモビリティ仮料金毎に、電力の需給に利用可能なEV300の台数を算出する(S104)。ここで、電力需給可能台数算出部114は、例えば、モビリティサービスで用意された全てのEV300から、S102で算出された利用率で利用されるEV300を除いて、電力の需給に利用可能なEV300の台数を算出する。
【0037】
次に、電力収益算出部115は、S101で設定されたモビリティ仮料金毎に、リソースアグリゲータ400等から取得した電力需給情報に従って電力の需給にEV300を用いた場合に得られる電力関連収益を算出する。(S105)。次に、収益合計算出部116は、S101で設定されたモビリティ仮料金毎に、S103で算出されたモビリティ収益と、S105で算出された電力関連収益との合計を算出する(S106)。
【0038】
次に、モビリティ料金出力部117は、S106で算出された収益の合計が最大となる場合のモビリティ料金の情報を出力する(S107)。ここで、モビリティ料金出力部117は、S101で設定されたモビリティ仮料金と、S106で算出された収益の合計との関係を基に、S106で算出された収益の合計を最大とするモビリティ料金を特定する。また、モビリティ料金出力部117は、特定したモビリティ料金の値を実際のモビリティ料金として設定してもよい。そして、本処理フローは終了する。
【0039】
<モビリティ料金の情報を出力する処理の具体例>
次に、
図5及び
図6を参照しながら、EV管理サーバ100がモビリティ料金の情報を出力する処理の具体例について説明する。
なお、以下に示すステップ(即ち、記号の「S」)は、
図4の各ステップに対応するものとする。
【0040】
図5は、モビリティ料金の情報を出力する処理の具体例を説明するための図である。この例では、モビリティサービスで用意されたEV300が100台存在する。
ここで、リソースアグリゲータ400等から電力需給情報が送信されることにより、モビリティ仮料金設定部111は、予め定められた数のモビリティ仮料金を設定する(S101)。この例では、
図5に示すように、モビリティ仮料金設定部111は、100円毎に、100~1000(円/台/h)のモビリティ仮料金(即ち、EV300の1台1時間当たり、100~1000円の利用料金)を設定する。
【0041】
次に、モビリティ車両利用率算出部112は、モビリティ仮料金毎に、EV300の利用率を算出する(S102)。この例では、EV300の1台1時間当たりの利用料金と、その利用料金で貸し出す場合に利用されると予測されるEV300の割合との相関関係が予め定められている。モビリティ車両利用率算出部112は、この相関関係を基に、モビリティ仮料金毎に、EV300の利用率を算出する。
例えば、
図5に示すように、モビリティ仮料金が100(円/台/h)の場合、EV300の利用率は92%と算出される。この例では、モビリティサービスで用意されたEV300の全台数は100台であるため、100(円/台/h)でEV300を貸し出す場合に利用者に利用されると予測されるEV300の台数は92台となる。
【0042】
次に、モビリティ収益算出部113は、モビリティ仮料金毎に、モビリティ収益を算出する(S103)。この例では、モビリティ収益算出部113は、モビリティ仮料金と、利用者に利用されると予測されるEV300の台数とを掛け合わせることにより、モビリティ収益を算出する。例えば、モビリティ仮料金が100(円/台/h)の場合、利用者に利用されると予測されるEV300の台数は92台であるため、100(円/台/h)×92台=9200(円/h)となる。
【0043】
次に、電力需給可能台数算出部114は、モビリティ仮料金毎に、電力の需給に利用可能なEV300の台数を算出する(S104)。この例では、モビリティサービスで用意されたEV300の台数(この例では、100台)から、モビリティサービスで利用されると予測されるEV300の台数を除いて、電力の需給に利用可能なEV300の台数が算出される。例えば、モビリティ仮料金が100(円/台/h)の場合、利用者に利用されると予測されるEV300の台数は92台であるため、電力の需給に利用可能なEV300の台数は8台となる。
【0044】
次に、電力収益算出部115は、モビリティ仮料金毎に、電力需給情報に従って電力の需給にEV300を用いた場合に得られる電力関連収益を算出する(S105)。
例えば、リソースアグリゲータ400等から取得した電力需給情報において、特定の時間帯に調整力(即ち、ΔkW価値)を供出することで、50(円/ΔkW/h)の収益を得られるという情報を受けたとする。50(円/ΔkW/h)とは、電力1kWを既定の時間内に供給できる調整力の1時間当たりの収益が50円であることを示す。ここで、EV300の1台当たりの放電出力が10kWとすると、10(kW/台)×50(円/ΔkW/h)=500(円/台/h)の収益(即ち、EV300の1台1時間当たり、500円の収益)が得られる。例えば、モビリティ仮料金が100(円/台/h)の場合、電力の需給に利用可能なEV300の台数は8台であるため、電力関連収益は、500(円/台/h)×8台=4000(円/h)となる。なお、EV300の1台当たりの放電出力は、放電に用いられる充放電設備201の性能などによって決定される。
【0045】
次に、収益合計算出部116は、モビリティ仮料金毎に、モビリティ収益と電力関連収益との合計を算出する(S106)。例えば、モビリティ仮料金が100(円/台/h)の場合、モビリティ収益は、9200(円/h)である。また、電力関連収益は、4000(円/h)である。よって、収益の合計は、13200(円/h)となる。
【0046】
次に、モビリティ料金出力部117は、収益の合計が最大となる場合のモビリティ料金を特定する(S107)。
図6は、収益とモビリティ仮料金との関係の一例を示す図である。
図6に示す例において、縦軸は収益(円/h)であり、横軸はモビリティ仮料金(円/台/h)である。ここで、モビリティ仮料金とモビリティ収益との関係、モビリティ仮料金と電力関連収益との関係、モビリティ仮料金と収益の合計との関係がそれぞれ示されている。そして、モビリティ仮料金が約840(円/台/h)の場合に、収益の合計が最大となる。そこで、モビリティ料金出力部117は、約840(円/台/h)というモビリティ料金の情報を出力する。モビリティ料金の情報が出力されることにより、EV管理サーバ100の管理者等にモビリティ料金の情報が通知される。また、モビリティ料金出力部117は、実際のモビリティ料金の値を約840(円/台/h)に設定してもよい。
【0047】
付言すると、電力関連収益を得ることなく、モビリティサービスのみを行う場合には、
図6に示すように、モビリティ料金を約740円(円/台/h)とすることにより、モビリティ収益が最大となる。一方、本実施の形態のように、モビリティサービスで利用されていないEV300を電力の需給に用いて電力関連収益を得る場合には、モビリティ料金を約840円(円/台/h)にすることにより、モビリティ収益と電力関連収益との合計が最大となる。
【0048】
なお、この例では、リソースアグリゲータ400等から取得した電力需給情報において、特定の時間帯に調整力(ΔkW価値)を供出することで、50(円/ΔkW/h)の収益を得られるという情報を受けることとした。ただし、調整力として電力を供出するのではなく、調整力として電力の供出を受けることによって収益を得ることも考えられる。例えば、事業者の保有する電力が余剰になった場合に、その余剰になった電力の供給を受けることにより収益を得る場合がある。このように、電力需給情報により、特定の時間帯に調整力(ΔkW価値)として電力の供出を受けることによって収益を得られるという情報を受けてもよい。
【0049】
<電力需給情報の他の例>
また、
図5及び
図6に示す例では、電力需給情報により、特定の時間帯に電力の需給を調整できる調整力によって得られる収益の情報を受けることとした。しかし、電力需給情報の収益の情報は、このような調整力についての収益の情報に限られない。
【0050】
(一定量の電力の需給による収益の例)
例えば、EV管理サーバ100は、リソースアグリゲータ400等から取得した電力需給情報により、卸電力市場へ特定の時間帯に一定量の電力を供給することによって得られる収益の情報を取得してもよい。卸電力市場とは、電力を供給する供給側と電力小売事業者などの需要側とが取引を行う市場である。また、ここでの電力は、一般に、kWh価値と呼ばれるものであり、実際に発電された電力(kWh)の価値である。
【0051】
より具体的には、例えば、リソースアグリゲータ400や電力小売事業者から取得した電力需給情報において、特定の時間帯に電力を供給することで、100(円/kWh)の収益を得られるという情報を受けたとする。ここで、EV300の1台当たりの放電出力が6kWであり、EV300を充電した時の平均の電気料金が20(円/kWh)であったとする。この場合、電力関連収益は、(100-20)(円/kWh)×6(kW/台)=480(円/台/h)となる。即ち、EV300の1台1時間当たりに得られる収益が、480円となる。
なお、EV300を充電した時の平均の電気料金は、例えば、モビリティサービスで用意された全てのEV300の過去の充電の電気料金を平均して計算される。また、例えば、個々のEV300毎に、EV300の過去の充電の電気料金を平均して計算してもよい。
【0052】
付言すると、
図5及び
図6に示す例では、EV300の1台当たりの電力関連収益を、500(円/台/h)とした。一方、この例では、EV300の1台当たりの電力関連収益は、480(円/台/h)となる。例えば、
図5に示すように、モビリティ仮料金が100(円/台/h)の場合、電力の需給に利用可能なEV300の台数は8台である。そのため、この場合の電力関連収益は、480(円/台/h)×8台=3840(円/h)となる。このような電力関連収益をモビリティ仮料金毎に算出し、収益の合計が最大となるようにモビリティ料金を特定すればよい。
【0053】
また、この例では、電力を供給することで収益を得ることとしたが、例えば、電気料金の高い時に充電を抑制し、電気料金の安い時に充電を促進することにより、利益を得ることとしてもよい。例えば、電力需給情報において、特定の時間帯に電気料金が基準値よりも50(円/kWh)高くなるという情報を受けたとする。また、EV300の1台当たりの充電電力を6kWとする。この場合、コスト削減による利益が、50(円/kWh)×6(kW/台)=300(円/台/h)となる。即ち、EV300の1台1時間当たりに得られる電力関連の利益が、300円となる。
【0054】
(電力の基本料金削減による収益の例)
例えば、過去1年間の電力ピークによって基本料金が決まる契約をしている場合、電力ピークを抑制することにより基本料金が削減され、利益を得ることができる。
なお、電力ピークとは、最大需要電力を示す。例えば、30分毎の平均使用電力のうち、月間で最も大きい値がその月の最大需要電力となり、過去1年間の各月の最大需要電力のうちの最も大きい値が電力ピークとされ、基本料金が決定される。
【0055】
例えば、ステーション200がショッピングモールに設けられている場合、受電点以下に、EV300以外の電力負荷(例えば、ショッピングモールの建物)が存在する。そして、受電点以下の電力負荷全体の電力の基本料金は、電力負荷全体の過去1年間の電力ピークによって決まることになる。そこで、電力負荷全体の電力ピークの時間帯に、EV300から放電させたり、EV300の充電を抑制したりすることにより、電力ピークが抑制されて、基本料金が削減される。
【0056】
より具体的には、例えば、EV管理サーバ100は、ショッピングモールの電力負荷全体を監視しているエネルギーサービス事業者やリソースアグリゲータ400から、電力需給情報を取得する。この電力需給情報には、特定の時間帯にショッピングモールの電力ピークが立つことが予測されるため、その電力ピークを抑制することにより、ショッピングモールの電気料金について500円/kW相当の基本料金削減になる、という情報が含まれている。ここで、EV300の1台当たり1時間当たりの放電出力を、6kW/hとする。この場合、電力関連収益は、500(円/kW)×6(kW/台/h)=3000(円/台/h)となる。このように、EV300から放電することにより、ショッピングモールの電力負荷全体の電力ピークが抑制されて、基本料金が削減される。その結果、EV300の1台1時間当たりに得られる電力関連の利益が、3000円となる。
【0057】
付言すると、
図5及び
図6に示す例では、EV300の1台当たりの電力関連収益を、500(円/台/h)とした。一方、この例では、EV300の1台当たりの電力関連収益は、3000(円/台/h)となる。例えば、
図5に示すように、モビリティ仮料金が100(円/台/h)の場合、電力の需給に利用可能なEV300の台数は8台である。そのため、この場合の電力関連収益は、3000(円/台/h)×8台=24000(円/h)となる。このような電力関連収益をモビリティ仮料金毎に算出し、収益の合計が最大となるようにモビリティ料金を特定すればよい。
【0058】
なお、対象となる受電点のステーション200で、放電可能なEV300の台数に制限がある場合には、その制限を超える台数のEV300による利益は得られない。
また、この例では、EV300から放電させることによって電力ピークを抑制する例について説明したが、EV300の充電を抑制することによって電力ピークを抑制し、基本料金削減の利益を得ることとしてもよい。
【0059】
さらに、一例として、ステーション200がショッピングモールに設けられることとしたが、ステーション200が設けられる場所は、受電点以下にEV300以外の電力負荷が存在する場所であればよい。例えば、ステーション200がレンタカーサービスの建物のある店舗に設けられている場合や、ステーション200が機械式駐車場に設けられている場合も、受電点以下にEV300以外の電力負荷が存在するため、電力ピーク抑制による基本料金の削減が可能である。
【0060】
また、EV管理サーバ100は、複数の電力需給情報を取得してもよい。例えば、EV管理サーバ100は、リソースアグリゲータ400等から、電力需給情報として、送配電事業者500へ調整力を供出することによって得られる収益の情報、卸電力市場へ電力を供給することによって得られる収益の情報を取得する。この場合、例えば、電力の需給に利用可能なEV300を、送配電事業者500へ調整力を供出するEV300と、卸電力市場へ電力を供給するEV300の何れかに割り当てて、それぞれの収益を合計して電力関連収益を算出する。ここで、電力関連収益が最大となるようにEV300の割り当てを行ってもよい。
【0061】
<変形例>
次に、本実施の形態の変形例について説明する。
【0062】
(モビリティ料金出力部117が特定するモビリティ料金の他の例)
上述した例では、モビリティ料金出力部117は、収益合計算出部116が算出した収益の合計が最大となる場合のモビリティ料金を特定した。しかし、モビリティ料金出力部117が特定するモビリティ料金は、収益合計算出部116が算出した収益の合計を最大とするものに限られない。
【0063】
例えば、モビリティ料金出力部117は、収益合計算出部116が算出した収益の合計が予め定められた目標値以上になる場合のモビリティ料金を特定してもよい。
図6に示す例において、収益の合計の目標値を60000円にした場合、収益の合計が目標値以上になるモビリティ料金として、例えば、約720~920(円/台/h)の範囲の料金が特定される。
【0064】
このように、本実施の形態において、モビリティ料金出力部117は、収益合計算出部116が算出した収益の合計が予め定められた条件を満たす場合のモビリティ料金を特定する。ここでの予め定められた条件は、例えば、収益の合計が最大になるという条件、収益の合計が予め定められた目標値以上になるという条件である。
【0065】
また、モビリティ料金出力部117は、収益の合計に対する予め定められた条件とともに、他の条件も考慮して、モビリティ料金を特定してもよい。例えば、他の条件として、モビリティ料金が高くなり過ぎないようにモビリティ料金に上限を設けたり、モビリティ料金が安くなり過ぎないようにモビリティ料金に下限を設けたりしてもよい。
【0066】
(電力の需給に利用可能なEV300の台数を算出する場合の他の例)
上述した例では、電力需給可能台数算出部114は、モビリティサービスで用意された全てのEV300から、モビリティサービスで利用されるEV300を除いて、電力の需給に利用可能なEV300の台数を算出した。即ち、モビリティサービスで利用されないEV300を全て、電力の需給に利用可能なEV300とした。しかし、本実施の形態ではこのような構成に限られない。
【0067】
例えば、電力需給可能台数算出部114は、モビリティサービスで用意された全てのEV300から、モビリティサービスで利用されるEV300を除いた残りのEV300のうち、電力関連収益を得るための特定の条件を満たすEV300を、電力の需給に利用可能なEV300とする。
【0068】
具体的には、例えば、電力需給可能台数算出部114は、モビリティサービスで用意された全てのEV300から、モビリティサービスで利用されるEV300を除いた残りのEV300のうち、電力関連収益を得るために指定された時点において、充電池301の充電電力量の残量が予め定められた閾値以上のEV300を、電力の需給に利用可能なEV300とする。
例えば、電力需給情報において、EV300の1台当たり、6kWの電力出力が30分間必要とされる場合、充電電力量の残量が少なくとも3kWh以上でなければ、電力の需給に利用できない。この場合、電力需給可能台数算出部114は、電力関連収益を得るために指定された時点において、充電池301の充電電力量の残量が3kWh以上のEV300を、電力の需給に利用可能なEV300とする。
【0069】
なお、充電池301の充電電力量の残量は、EV300全体で算出してもよいし、EV300毎に算出してもよい。
例えば、電力需給可能台数算出部114は、EV300全体で、充電電力量の残量の推移を記録し、月毎や曜日毎、時間帯毎の統計を算出しておく。この統計を基に、充電電力量の残量が予め定められた閾値以上になると予測されるEV300の台数を算出する。
また、例えば、電力需給可能台数算出部114は、EV300毎に、EV300を貸し出すスケジュール、EV300を充電するスケジュールを基に、EV300の充電電力量の残量を予測する。そして、EV300毎に、充電電力量の残量が予め定められた閾値以上になるか否かを判断する。
【0070】
また、例えば、電力需給可能台数算出部114は、モビリティサービスで用意された全てのEV300から、モビリティサービスで利用されるEV300を除いた残りのEV300のうち、電力関連収益を得るために指定された時点において、ステーション200に到着可能なEV300を、電力の需給に利用可能なEV300としてもよい。
具体的には、例えば、電力需給情報において、2019年3月1日の0時に電力を供給することが必要とされる場合、2019年3月1日の0時までにステーション200に到着できなければ、電力の需給に利用できない。この場合、電力需給可能台数算出部114は、2019年3月1日の0時までに何れかのステーション200に到着可能なEV300を、電力の需給に利用可能なEV300とする。
【0071】
なお、ステーション200に到着できるか否かは、EV300全体で算出してもよいし、EV300毎に算出してもよい。
例えば、電力需給可能台数算出部114は、EV300全体で、各EV300の存在する位置を記録し、月毎や曜日毎、時間帯毎の統計を算出しておく。この統計を基に、指定された時点までにステーション200に到着できると予測されるEV300の台数を算出する。
また、例えば、電力需給可能台数算出部114は、EV300毎に、EV300の貸し出しスケジュールを基に、ステーション200の到着可否を判断する。例えば、電力関連収益を得るために指定された時点の付近に貸し出しの予約がされているEV300は、指定された時点までにステーション200に到着できないと判断される。
ここで、電力ピークを抑制して電力の基本料金を削減する場合には、対象となる受電点のステーション200に到着可能なEV300が、電力の需給に利用可能なEV300として扱われる。
【0072】
(EV300の利用率を算出する場合の他の例)
また、モビリティ車両利用率算出部112は、利用者に利用されるEV300の利用率を算出する場合に、モビリティ仮料金とともに、モビリティ仮料金以外の情報を用いてもよい。モビリティ仮料金以外の情報としては、例えば、EV300を貸し出すエリアや曜日、時間帯、天候などの情報が挙げられる。
【0073】
例えば、都市部や地方などのエリアに対して、モビリティ仮料金と利用率との関係を予め定めておく。具体的には、例えば、都市部と地方とを比較して、都市部では、モビリティ仮料金を高くしても利用率が下がりづらい傾向にあることを定めておく。モビリティ車両利用率算出部112は、このようなモビリティ仮料金と利用率との関係を基に、エリア毎にEV300の利用率を算出する。また、例えば、モビリティ車両利用率算出部112は、EV300が利用された時の利用料金をエリア毎に記録しておき、記録したデータを基に、エリア毎のEV300の利用率を算出してもよい。
【0074】
また、例えば、曜日や時間帯などの日時に対して、モビリティ仮料金と利用率との関係を予め定めておく。具体的には、例えば、平日と週末とを比較して、モビリティ仮料金が同じ場合には、平日の方が週末よりも利用率が高い傾向にあることを定めておく。また、例えば、深夜と日中とを比較して、深夜では、モビリティ仮料金を高くしても利用率が下がりづらい傾向にあることを定めておく。モビリティ車両利用率算出部112は、このようなモビリティ仮料金と利用率との関係を基に、曜日や時間帯によるEV300の利用率を算出する。また、例えば、モビリティ車両利用率算出部112は、EV300の利用率の推移を曜日毎、時間帯毎に記録しておき、記録したデータを基に、曜日や時間帯によるEV300の利用率を算出してもよい。
【0075】
さらに、例えば、雨や晴れなどの天候に対して、モビリティ仮料金と利用率との関係を予め定めておく。具体的には、例えば、雨の場合と晴れの場合とを比較して、雨の場合にはモビリティ仮料金を高くしても利用率が下がりづらい傾向にあることを定めておく。モビリティ車両利用率算出部112は、このようなモビリティ仮料金と利用率との関係を基に、EV300の利用率を算出する。また、例えば、モビリティ車両利用率算出部112は、EV300の利用率の推移を天候毎に記録しておき、記録したデータを基に、天候によるEV300の利用率を算出してもよい。
【0076】
なお、モビリティ車両利用率算出部112は、EV300を貸し出すエリアや曜日、時間帯、天候などの情報のうちの複数の情報を用いて利用率を算出してもよい。
また、モビリティ車両利用率算出部112は、モビリティ仮料金の情報を用いずに、EV300を貸し出すエリアや曜日、時間帯、天候などの情報を基に、EV300の利用率、言い換えると、モビリティサービスの需要を算出してもよい。即ち、モビリティ車両利用率算出部112は、モビリティ仮料金毎に利用率を変化させるのではなく、EV300を貸し出すエリアや曜日、時間帯、天候などの情報により、EV300の利用率を変化させてもよい。
【0077】
(収益の単位の他の例)
上述した例では、モビリティ収益の単位として、EV300の1台1時間当たりの利用料金(円/台/h)を用いたが、利用料金としては、このような時間に換算したものに限られない。例えば、距離に換算した利用料金として、EV300の1台1km当たりの利用料金(円/台/km)を用いてもよい。また、時間に換算した利用料金と距離に換算した利用料金とを組み合わせてもよい。なお、電力関連収益では、時間に換算した利用料金が用いられるため、モビリティ収益と電力関連収益とを合計する場合には、距離に換算した利用料金は時間に換算した利用料金に変換される。
【0078】
(他の変形例)
上述した例では、モビリティ料金出力部117は、収益合計算出部116が算出した収益の合計が予め定められた条件を満たす場合のモビリティ料金を特定した。ただし、本実施の形態では、収益の合計を算出しなくてもよい。
例えば、モビリティ料金出力部117は、モビリティ収益と電力関連収益とにより、モビリティ料金を特定してもよい。例えば、モビリティ料金出力部117は、モビリティ収益及び電力関連収益が共に閾値以上になる場合のモビリティ料金の情報を出力したり、モビリティ料金を設定したりしてもよい。また、例えば、モビリティ料金出力部117は、モビリティ収益及び電力関連収益が共に一定の範囲内の額になる場合のモビリティ料金の情報を出力したり、モビリティ料金を設定したりしてもよい。
【0079】
さらに、モビリティ料金出力部117は、モビリティ収益によらず、電力関連収益により、モビリティ料金を特定してもよい。即ち、本実施の形態では、電力関連収益に応じてモビリティ料金を変更するために、電力関連収益を考慮して、モビリティ料金を特定する構成であればよい。
例えば、モビリティ料金出力部117は、電力需給情報によって電力需給の要請がされた場合に、一定数のEV300を電力の需給に用いた場合に得られる電力関連収益が閾値以上であれば、EV300の利用を控えるために、一定額以上のモビリティ料金に上げる旨の通知を出力してもよい。また、一定数のEV300を電力の需給に用いた場合に得られる電力関連収益が閾値未満であれば、EV300の利用を促進するために、一定額未満のモビリティ料金に下げる旨の通知を出力してもよい。
また、例えば、モビリティ料金出力部117は、電力需給情報によって電力需給の要請がされた場合に、EV300の充電にかかる電気料金が閾値未満であれば、EV300の利用を控えるために、一定額以上のモビリティ料金に上げる旨の通知を出力したり、EV300の充電にかかる電気料金が閾値以上であれば、EV300の利用を促進するために、一定額未満のモビリティ料金に下げる旨の通知を出力したりしてもよい。
【0080】
なお、このような変形例においても、モビリティ収益や電力関連収益の代わりに、モビリティサービスで得られる利益、電力関連の利益を用いてもよい。
【0081】
また、本実施の形態では、ステーション200に、充電及び放電の両方に対応した充放電設備201を設ける構成に限られない。ステーション200には、充電及び放電の少なくとも何れか一方が可能な設備を設けるとよい。また、充電器は設けられているが、放電器は設けられていないステーション200があったり、放電器は設けられているが、充電器は設けられていないステーション200があったりしてもよい。
【0082】
さらに、本実施の形態では、EV管理サーバ100の機能の一部を他装置で実現してもよい。例えば、モビリティ仮料金設定部111、モビリティ車両利用率算出部112、モビリティ収益算出部113、電力需給可能台数算出部114、電力収益算出部115、収益合計算出部116、モビリティ料金出力部117等の一部の処理を、他装置で実行してもよい。
【0083】
また、本発明の実施の形態を実現するプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD-ROM等の記録媒体に格納して提供することも可能である。
【0084】
なお、上記では種々の実施形態および変形例を説明したが、これらの実施形態や変形例どうしを組み合わせて構成してももちろんよい。
また、本開示は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0085】
1…EV管理システム、100…EV管理サーバ、111…モビリティ仮料金設定部、112…モビリティ車両利用率算出部、113…モビリティ収益算出部、114…電力需給可能台数算出部、115…電力収益算出部、116…収益合計算出部、117…モビリティ料金出力部、200…ステーション、201…充放電設備、300…EV、301…充電池、400…リソースアグリゲータ