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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】感光性積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/16 20060101AFI20230724BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20230724BHJP
   G03F 7/38 20060101ALI20230724BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20230724BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20230724BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20230724BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20230724BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20230724BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
B32B27/16
G03F7/004 512
G03F7/38 511
H05K3/18 D
H05K3/06 E
B32B27/36
B32B15/08 K
B32B15/20
B32B27/32 Z
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019070806
(22)【出願日】2019-04-02
(65)【公開番号】P2019194007
(43)【公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2018088407
(32)【優先日】2018-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩輔
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-188924(JP,A)
【文献】特開平08-054734(JP,A)
【文献】国際公開第2017/213056(WO,A1)
【文献】特開2007-086292(JP,A)
【文献】特開2010-271709(JP,A)
【文献】特開2007-094361(JP,A)
【文献】特開2016-097595(JP,A)
【文献】特開2016-122031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/16
G03F 7/004
G03F 7/38
H05K 3/18
H05K 3/06
B32B 27/36
B32B 15/08
B32B 15/20
B32B 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持フィルムと、前記支持フィルム上に形成された感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層と、を備える感光性樹脂積層体を基板に積層して、前記基板と前記感光性樹脂積層体との積層体である第1の積層体を形成する第1の積層体形成工程と、
第1の積層体から支持フィルムを剥離して、支持フィルムが剥離された感光性樹脂組成物層を露光し、露光部と未露光部を有する感光性樹脂組成物層を形成する露光工程と、
露光部と未露光部を有する感光性樹脂組成物層にカバーフィルムを積層して、第2の積層体を形成する第2の積層体形成工程と、
を含む感光性積層体の製造方法。
【請求項2】
前記第2の積層体をロール状に巻き取る第2の積層体ロール製造工程を含む、請求項1に記載の感光性積層体の製造方法。
【請求項3】
前記カバーフィルムはポリエチレンフィルムである、請求項1又は2に記載の感光性積層体の製造方法。
【請求項4】
前記カバーフィルムは、離形処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである、請求項1又は2に記載の感光性積層体の製造方法。
【請求項5】
前記第1の積層体形成工程は、前記感光性樹脂積層体からカバーフィルムを剥離する工程を含み、かつ
前記第2の積層体形成工程の前記カバーフィルムは、前記第1の積層体形成工程で前記感光性樹脂積層体から剥離したカバーフィルムである、請求項1~4のいずれか1項に記載の感光性積層体の製造方法。
【請求項6】
前記第2の積層体形成工程は、30℃~150℃の範囲内の温度で加熱されたホットロールで前記カバーフィルムを押圧することにより、前記露光部と未露光部を有する感光性樹脂組成物層に前記カバーフィルムを積層する工程を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の感光性積層体の製造方法。
【請求項7】
前記第2の積層体形成工程は、複数の前記第2の積層体の基板同士を重ねる工程を含む、請求項1に記載の感光性積層体の製造方法。
【請求項8】
前記第1の積層体形成工程は、前記基板の両面に前記感光性樹脂積層体を積層する工程を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の感光性積層体の製造方法。
【請求項9】
前記基板は、金属層を含む基板である、請求項1~8のいずれか1項に記載の感光性積層体の製造方法。
【請求項10】
前記基板は、銅層を含む基板である、請求項1~9のいずれか1項に記載の感光性積層体の製造方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の感光性積層体の製造方法により得られる感光性積層体から前記第2の積層体を引き出し、前記カバーフィルムを剥離して、前記露光部と未露光部を有する感光性樹脂組成物層を現像する現像工程を含むレジストパターンの形成方法。
【請求項12】
基板と、
前記基板の少なくとも一方の面に形成された未露光部と露光部を有するネガ型感光性樹脂組成物層と、
前記未露光部と露光部を有するネガ型感光性樹脂組成物層上に設けられたカバーフィルムと、
を備える感光性積層体。
【請求項13】
前記カバーフィルムがポリエチレンフィルムである、請求項12に記載の感光性積層体。
【請求項14】
前記カバーフィルムが、離形処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである、請求項12に記載の感光性積層体。
【請求項15】
前記未露光部と露光部を有するネガ型感光性樹脂組成物層は、前記基板の両方の面に形成される、請求項12~14のいずれか1項に記載の感光性積層体。
【請求項16】
複数の前記感光性積層体が、複数の前記基板が接するように積み重ねられている、請求項12~14のいずれか1項に記載の感光性積層体。
【請求項17】
前記基板は、金属層を含む基板である、請求項12~16のいずれか1項に記載の感光性積層体。
【請求項18】
前記基板は、銅層を含む基板である、請求項12~17のいずれか1項に記載の感光性積層体。
【請求項19】
前記ネガ型感光性樹脂組成物層の前記カバーフィルムと接する面の粘着力が、1.0gf/inch以上20gf/inch以下である、請求項12~18のいずれか1項に記載の感光性積層体。
【請求項20】
基板と、
前記基板の両方の面に形成された未露光部と露光部を有する感光性樹脂組成物層と、
前記未露光部と露光部を有する感光性樹脂組成物層上に設けられたカバーフィルムと、
を備える、感光性積層体。
【請求項21】
基板と、
前記基板の少なくとも一方の面に形成された未露光部と露光部を有する感光性樹脂組成物層と、
前記未露光部と露光部を有する感光性樹脂組成物層上に設けられたカバーフィルムと、
を備える感光性積層体であって
複数の前記感光性積層体が、複数の前記基板が接するように積み重ねられている、感光性積層体。
【請求項22】
請求項1~10のいずれか1項に記載の感光性積層体の製造方法に用いられる感光性樹脂積層体であって、
支持フィルムと、前記支持フィルム上に形成された感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層と、前記感光性樹脂組成物層に積層されたカバーフィルムとを、備え、
前記感光性樹脂組成物層の前記カバーフィルムと接する面の粘着力が、1.0gf/inch以上20gf/inch以下である、感光性樹脂積層体。
【請求項23】
前記支持フィルムが、離形処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである、請求項22に記載の感光性樹脂積層体。
【請求項24】
請求項12~21のいずれか1項に記載の感光性積層体を現像する工程を含む、レジストパターンの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性積層体の製造方法、感光性樹脂積層体、レジストパターンの形成方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板はフォトリソグラフィー法によって製造されている。フォトリソグラフィー法とは、感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、パターン露光して該感光性樹脂組成物の露光部を重合硬化(ネガ型の場合)又は現像液に対して可溶化(ポジ型の場合)させるとともに未露光部(ネガ型の場合)又は露光部(ポジ型の場合)を現像液で除去して基板上にレジストパターンを形成し、エッチング又はめっき処理を施して導体パターンを形成した後、該レジストパターンを該基板上から剥離除去することによって、基板上に導体パターンを形成する方法をいう。
【0003】
フォトリソグラフィー法においては、通常、感光性樹脂組成物を基板上に塗布するときに、感光性樹脂組成物の溶液を基板に塗布して乾燥させる方法、又は支持フィルムと感光性樹脂組成物から成る層(以下、「感光性樹脂組成物層」ともいう。)、及び必要によりカバーフィルム、を順次積層した感光性樹脂積層体(以下、「ドライフィルムレジスト」ともいう。)を基板に積層する方法のいずれかが使用される。プリント配線板の製造においては、後者のドライフィルムレジストが使用されることが多い。
【0004】
上記のドライフィルムレジストを用いてプリント配線板を製造する方法について、以下に簡単に述べる。
先ず、ドライフィルムレジストが、カバーフィルム、例えばポリエチレンフィルムを有する場合には、感光性樹脂組成物層からこれを剥離する。次いで、ラミネーターを用いて、基板、例えば銅張積層板の上に、該基板、感光性樹脂組成物層及び支持フィルムの順序になるように感光性樹脂組成物層及び支持フィルムを積層する。次いで、配線パターンを有するフォトマスクを介して、該感光性樹脂組成物層を、超高圧水銀灯が発するi線(365nm)等を含む紫外線で露光することによって、露光部分(例えばネガ型の場合)を重合硬化させる。次いで、支持フィルム、例えばポリエチレンテレフタレートを剥離する。次いで、現像液、例えば弱アルカリ性水溶液により感光性樹脂組成物層の未露光部分(例えばネガ型の場合)を溶解又は分散除去して、基板上にレジストパターンを形成させる。
【0005】
近年、レジストパターン形成方法を改良することが提案されている。例えば、特許文献1には、露光工程と現像工程の間に、露光された感光性樹脂組成物層と基板を、押圧加熱機構を用いて押圧下で加熱する工程を行うことによって、狭ピッチの配線パターンを形成でき、かつ密着性に優れるレジストパターンを与えられることが記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-191318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のドライフィルムレジストを用いるレジストパターンの形成は、異物の影響を抑制することについて未だに検討の余地がある。
したがって、本発明は、異物の影響を受け難い感光性積層体及びそれを用いるレジストパターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の技術的手段により解決されることができる。
[1]
支持フィルムと、前記支持フィルム上に形成された感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層と、を備える感光性樹脂積層体を基板に積層して、前記基板と前記感光性樹脂積層体との積層体である第1の積層体を形成する第1の積層体形成工程と、
前記第1の積層体から前記支持フィルムを剥離して、前記支持フィルムが剥離された感光性樹脂組成物層を露光し、露光部と未露光部を有する感光性樹脂組成物層を形成する露光工程と、
前記露光部と未露光部を有する感光性樹脂組成物層にカバーフィルムを積層して、第2の積層体を形成する第2の積層体形成工程と、
を含む感光性積層体の製造方法。
[2]
前記第2の積層体をロール状に巻き取る第2の積層体ロール製造工程を含む、[1]に記載の感光性積層体の製造方法。
[3]
前記カバーフィルムはポリエチレンフィルムである、[1]又は[2]に記載の感光性積層体の製造方法。
[4]
前記カバーフィルムは、離形処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである、[1]又は[2]に記載の感光性積層体の製造方法。
[5]
前記第1の積層体形成工程は、前記感光性樹脂積層体からカバーフィルムを剥離する工程を含み、かつ
前記第2の積層体形成工程の前記カバーフィルムは、前記第1の積層体形成工程で前記感光性樹脂積層体から剥離したカバーフィルムである、[1]~[4]のいずれか1項に記載の感光性積層体の製造方法。
[6]
前記第2の積層体形成工程は、30℃~150℃の範囲内の温度で加熱されたホットロールで前記カバーフィルムを押圧することにより、前記露光部と未露光部を有する感光性樹脂組成物層に前記カバーフィルムを積層する工程を含む、[1]~[5]のいずれか1項に記載の感光性積層体の製造方法。
[7]
前記第2の積層体形成工程は、複数の前記第2の積層体の基板同士を重ねる工程を含む、[1]に記載の感光性積層体の製造方法。
[8]
前記第1の積層体形成工程は、前記基板の両面に前記感光性樹脂積層体を積層する工程を含む、[1]~[7]のいずれか1項に記載の感光性積層体の製造方法。
[9]
前記基板は、金属層を含む基板である、[1]~[8]のいずれか1項に記載の感光性積層体の製造方法。
[10]
前記基板は、銅層を含む基板である、[1]~[9]のいずれか1項に記載の感光性積層体の製造方法。
[11]
[1]~[10]のいずれか1項に記載の感光性積層体の製造方法により得られる感光性積層体から前記第2の積層体を引き出し、前記カバーフィルムを剥離して、前記露光部と未露光部を有する感光性樹脂組成物層を現像する現像工程を含むレジストパターンの形成方法。
[12]
基板と、
前記基板の少なくとも一方の面に形成された未露光部と露光部を有する感光性樹脂組成物層と、
前記未露光部と露光部を有する感光性樹脂組成物層上に設けられたカバーフィルムと、
を備える感光性積層体。
[13]
前記カバーフィルムがポリエチレンフィルムである、[12]に記載の感光性積層体。
[14]
前記カバーフィルムが、離形処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである、[12]に記載の感光性積層体。
[15]
前記未露光部と露光部を有する感光性樹脂組成物層は、前記基板の両方の面に形成される、[12]~[14]のいずれか1項に記載の感光性積層体。
[16]
複数の前記感光性積層体が、複数の前記基板が接するように積み重ねられている、[12]~[14]のいずれか1項に記載の感光性積層体。
[17]
前記基板は、金属層を含む基板である、[12]~[16]のいずれか1項に記載の感光性積層体。
[18]
前記基板は、銅層を含む基板である、[12]~[17]のいずれか1項に記載の感光性積層体。
[19]
前記感光性樹脂組成物層の前記カバーフィルムと接する面の粘着力が、1.0gf/inch以上20gf/inch以下である、[12]~[18]のいずれか1項に記載の感光性積層体。
[20]
[1]~[10]のいずれか1項に記載の感光性積層体の製造方法に用いられる感光性樹脂積層体であって、
支持フィルムと、前記支持フィルム上に形成された感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層と、前記感光性樹脂組成物層に積層されたカバーフィルムとを、備え、
前記感光性樹脂組成物層の前記カバーフィルムと接する面の粘着力が、1.0gf/inch以上20gf/inch以下である、感光性樹脂積層体。
[21]
前記支持フィルムが、離形処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである、[20]に記載の感光性樹脂積層体。
[22]
[12]~[19]のいずれか1項に記載の感光性積層体を現像する工程を含む、レジストパターンの形成方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1の積層体から支持フィルムを剥離して露光を行うので、支持フィルム中の異物の影響を受け難い。
また、本発明によれば、第2の積層体がカバーフィルムを備えているため、得られる感光性積層体を保管しておける。
さらに、本発明によれば、感光性積層体から第2の積層体を繰り出して、現像を行うだけで、任意のタイミングで配線パターンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態におけるフレキシブル基材へのドライフィルムレジストの積層工程及び第1の積層体の巻き取り工程を示す模式的フロー図である。
図2図2は、本発明の一実施形態における支持フィルム剥離後の露光工程、カバーフィルム積層工程、及び第2の積層体の巻き取り工程を示す模式的フロー図である。
図3図3は、本発明の一実施形態における第2の積層体の巻き出し工程、現像工程及び剥離工程を示す模式的フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための例示の形態(以下、「本実施形態」と略記する。)について具体的に説明する。
【0012】
<感光性積層体の製造方法>
本実施形態の感光性積層体は、例えば、以下の工程:
・支持フィルムと、支持フィルム上に形成された感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層と、を備える感光性樹脂積層体を基板(又は基材)に積層して、基板と感光性樹脂積層体との積層体である第1の積層体を形成する第1の積層体形成工程;
・第1の積層体から支持フィルムを剥離して、支持フィルムが剥離された感光性樹脂組成物層を露光し、露光部と未露光部を有する感光性樹脂組成物層を形成する露光工程;及び
・露光部と未露光部を有する感光性樹脂組成物層にカバーフィルムを積層して、第2の積層体を形成する第2の積層体形成工程;
を含む方法により製造されることができる。
本実施形態における積層方法としては、既知の方法を採用することができる。
【0013】
例えば、感光性樹脂組成物層を構成する各成分を適当な溶媒に溶解して、塗工液を調製する。第1の積層体形成工程では、支持フィルム上にこの塗工液を塗布した後、乾燥して溶媒を除去し、支持フィルム上に感光性樹脂組成物層を形成することにより、支持フィルムと感光性樹脂組成物層から構成される樹脂組成物層と、を備える感光性樹脂積層体を製造することができる。
得られた感光性樹脂積層体の感光性樹脂組成物層の上に、カバーシートを更にラミネートして、カバーシートを備える感光性樹脂積層体を形成してもよい。
【0014】
塗工液を調製するときに用いられる溶媒は、例えば、メチルエチルケトン(MEK)に代表されるケトン;メタノール、エタノール、及びイソプロパノールに代表されるアルコール等が挙げられる。使用する溶媒の量を適当に加減して、25℃における塗工液の粘度を500mPa・s~4,000mPa・sの範囲に調節したうえで塗工に供することが望ましい。
本実施形態に係る感光性積層体の製造方法により得られる感光性積層体を使用して、レジストパターンを形成することができるので、第1の積層体形成工程、露光工程及び第2の積層体形成工程については、以下の項目<レジストパターンの形成方法>とともに詳述する。
【0015】
<レジストパターンの形成方法>
本実施形態の感光性積層体を用いて、所望のリジッド基板、又はフレキシブル基材上にレジストパターンを形成することができる。
レジストパターンの形成方法は、例えば、以下の工程:
・本実施形態の感光性樹脂積層体の感光性樹脂組成物層を、基板又は基材上に密着させるラミネート工程(第1の積層体形成工程)と、
・感光性樹脂積層体の支持フィルムを剥離する支持フィルム剥離工程と、
・感光性樹脂積層体を露光し、露光部と未露光部を有する感光性樹脂組成物層を形成する露光工程と、
・露光後に新たなカバーフィルムを形成し、基板を積み重ねるか、又は巻き取る工程(第2の積層体形成工程)と、
・第2の積層体からカバーフィルムを剥離して、露光部と未露光部を有する感光性樹脂組成物層を現像する現像工程と
を含む。
所望により、レジストパターンの形成方法は、これらの工程の実施中又はこれらの工程同士の間に、加熱工程を更に含んでもよく、また用途に応じて、現像工程前に第2の積層体を保管する保管工程を行ってよく、かつ/又は現像工程後に、エッチング工程及び/若しくは剥離工程を行ってよい。
【0016】
図1~3は、本実施形態に係るレジストパターンの形成方法の一連の流れを模式的に示す。また、図1~3には、各工程における被処理物の断面又は側面の状態をA~Jとして表す。図1~3を参照して、レジストパターンの形成方法の各工程を以下に説明する。なお、以下の説明では、感光性樹脂積層体をドライフィルムレジストということがある。
【0017】
[ラミネート工程(第1の積層体形成工程)]
ラミネート工程は、感光性樹脂積層体の感光性樹脂組成物層を、基材上に密着させる工程である。
基材としては、例えば、シリコンウェハ、リジッド基板、フレキシブル基材(図1のA)等を用いることができる。感光性樹脂組成物層を基材上に密着させるときには、例えば、ホットラミネータ等の装置を適宜の用いてよい。リジッド基板は、ラミネート後に感光性樹脂組成物層へ直接積み重ねてよく、またフレキシブル基材は、ラミネート後にロール状に巻き取られた状態であってもよい。フレキシブル基材は、芯基材と金属層から成り、芯基材は、例えば、ポリイミド、シクロオレフィンポリマー(COP)などで形成されてよく、金属層は、銅層、銅以外の金属層、銅と他の金属との合金を含む層などで形成されてよい。ラミネートは、真空状態、又は常圧の状態で行ってよい。
【0018】
ドライフィルムレジストがカバーフィルム(1)を備える場合(図1のB)には、剥離ロールを用いて、巻き出されたドライフィルムレジストからカバーフィルム(1)を剥離し、カバーフィルムの無い状態のドライフィルムレジスト(図1のC)をラミネートロールに供してよい。第1の積層体形成工程が、感光性樹脂積層体からカバーフィルム(1)を剥離する工程を含む場合には、経済性、生産性及び環境への配慮などの観点から、第1の積層体形成工程で感光性樹脂積層体から剥離したカバーフィルム(1)は、後述される第2の積層体形成工程のカバーフィルム(2)として使用されることが好ましい。基板と感光性樹脂組成物層との積層体である第1の積層体は、巻き取りロールにより巻き取られることができる。なお、図1~3は、基材の両面にドライフィルムレジストの感光性樹脂組成物層を積層した状態(図1のD)に基づいて、各工程を模式的に示しているが、基材の片面に感光性樹脂組成物層を積層する態様を除く意図ではない。
【0019】
[支持フィルム剥離工程]
支持フィルム剥離工程において、感光性樹脂積層体の支持フィルムを剥離する。この操作により、感光性樹脂積層体の樹脂組成物層が露出され、この状態(図2のE)で次工程の露光が行われる。
【0020】
[露光工程]
次いで、露光工程において、感光性樹脂積層体を露光し、露光部と未露光部を有する感光性樹脂組成物層を形成する。露光は、感光性樹脂積層体の支持フィルムが設けられていた側から行われる。
本工程では、パターン状の露光が行われる。このパターン状の露光は、例えば、所望の配線パターンを有するマスクフィルムを感光性樹脂組成物層に密着させた状態で、該マスクフィルムを介して露光する方法(図2)、所望の配線パターンをダイレクトイメージング露光法によって露光する方法(図示せず)、又はフォトマスクの像を、レンズを介して投影する露光法によって露光する方法(図示せず)によって行われてよい。
【0021】
露光に用いる光は、紫外領域の輝線を含む光が好ましく、例えば、半導体レーザ、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、エキシマレーザ等の光源からの光を使用することができる。所望により、光源から発生した光をレンズに通してよい。露光量は、樹脂組成物層に含まれる感光性樹脂組成物の組成、所望の線幅等に応じて、適宜に設定されてよい。
【0022】
[カバーフィルム形成工程(第2の積層体形成工程)]
露光工程後にパターン露光された感光性樹脂組成物層上にカバーフィルム(2)を形成するか、又はカバーフィルム(2)を積層して、第2の積層体(図2のF)を形成する。カバーフィルム(2)として適宜選択されるフィルムをパターン露光された感光性樹脂組成物層上にラミネートすることで第2の積層体を形成してもよい。カバーフィルム(2)としては、低密度ポリエチレン若しくはポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルム、または該フィルムの離形処理されたフィルムを用いてもよい。また、カバーフィルム(2)のラミネート工程においては、例えばホットロールを用いる押圧などにより、30℃~150℃に加温してラミネートを行ってもよい。カバーフィルム(2)としてラミネートされたフィルムと感光性樹脂組成物間の粘着性は、1.0gf/inch以上20gf/inch以下(1.0gf/2.54cm以上20gf/2.54cm以下)であることが望ましく、該範囲であればカバーフィルムとしてフィルムを感光性樹脂組成物層上に容易にラミネートし、ラミネート後の基板表面をシワ又はエアーボイドが無く、均一に形成できる。なお、1インチ(inch)は、2.54cmへ換算可能である。保存安定性、異物の影響などの観点から、得られた第2の積層体をロール状に巻き取ることが好ましい。
【0023】
[感光性積層体保管工程]
カバーフィルムが形成された感光性積層体(第2の積層体)は、該積層体がフレキシブル基板の状態となっている場合は、ロール状に巻き取るか、又は枚葉上に積み重ねることで保管を行ってよい。該積層体がリジッド基板状態となっている場合には、基板同士を直接積み重ねることでも保管を行ってよい。
【0024】
[現像工程]
露光工程の後に基板の積み重ね又は巻取りによって保管された後に、現像工程がある。現像工程は、アルカリ水溶液から成る現像液を用いて、ネガ型レジストの場合は未露光部を現像除去し、ポジ型レジストの場合は露光部を現像除去することにより、レジストパターンを基板上に形成する工程である。
アルカリ水溶液としては、NaCO、KCO、KOH、NaOH、TMAH水溶液などを用いることが好ましい。アルカリ水溶液は、感光性樹脂組成物に合わせて適宜選択されるが、約0.2質量%以上3質量%以下の濃度、かつ20℃以上40℃以下の温度のNaCO水溶液若しくはKOH水溶液、又はTMAH水溶液を使用することが好ましい。異物又は現像性の観点から、現像工程を行う直前に、第2の積層体からカバーフィルムを剥離すること(図3のG)が好ましい。
【0025】
上記の各工程を経てレジストパターンを得ることができる。現像工程で除去された部分では、基板表面(例えば銅張積層板の銅面)が露出することになる(図3のH)。
【0026】
<回路基板の製造方法>
上記の<レジストパターンの形成方法>にて得られたレジストパターンを有する基板を用いて、回路基板を製造することができる。
本実施形態における回路基板の製造方法は、
上記の<レジストパターンの形成方法>に従ってレジストパターンを有する基板を製造し、次いで
このレジストパターンを有する基板に対してエッチング又はめっきを施すことによって基板上に回路を形成する回路形成工程
を含む方法である。
回路形成工程の後に、レジストパターンを剥離するレジストパターン剥離工程を更に含んでもよい。
【0027】
[回路形成工程]
回路形成工程では、レジストパターンを有する基板に対してエッチング又はめっきを施すことによって、基板上に回路を形成する(例えば図3のIで示される状態の形成)。
エッチングの場合、レジストパターンを有する基板に、上からエッチング液を吹き付けて、レジストパターンによって覆われていない基板面をエッチングして、所望の回路パターンを形成する。エッチング方法としては、酸性エッチング、アルカリエッチング等を挙げることができ、使用する感光性積層体に適した方法を選択して行なわれる。
【0028】
[レジストパターン剥離工程]
レジストパターン剥離工程では、回路形成後の基板からレジストパターンを剥離する(例えば図3のJで示される状態の形成)。レジストパターンの剥離は、例えば、ネガ型レジストにおいては回路形成後の基板を現像液よりも強いアルカリ性水溶液(剥離液)によって処理することによって行われる。またポジ型レジストの場合は、溶剤への浸漬による溶解工程を行うか、又はパターン全面へ露光を行った後に現像工程を通してもよい。レジストパターン剥離用のアルカリ水溶液については、特に制限はない。剥離液には、少量の水溶性有機溶媒を加えてもよい。
【0029】
<感光性積層体、感光性樹脂積層体>
本発明の別の態様は、基板と、基板の少なくとも一方の面に形成された未露光部と露光部を有する感光性樹脂組成物層と、未露光部と露光部を有する感光性樹脂組成物層上に設けられたカバーフィルムと、を備える感光性積層体である。感光性積層体の厚さ方向に沿った側面又は断面の一例が、図2のFに示される。図2のFは、基材の両面にドライフィルムレジストの感光性樹脂組成物層とカバーフィルムとを積層した状態を模式的に示しているが、基材の片面に感光性樹脂組成物層とカバーフィルムとを積層した態様を除く意図ではない。
本発明のさらなる態様は、上記で説明された感光性積層体の製造方法に用いられる感光性樹脂積層体であり、支持フィルムと、支持フィルム上に形成された感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層と、感光性樹脂組成物層に積層されたカバーフィルムとを備え、かつ感光性樹脂組成物層のカバーフィルムと接する面の粘着力が1.0gf/inch以上20gf/inch以下である。
【0030】
感光性積層体は、基板、未露光部と露光部を有する感光性樹脂組成物層、及びカバーフィルムという層構成を有する限り、任意の方法により得られることができ、例えば、上記で説明された<感光性積層体の製造方法>又は<レジストパターンの形成方法>に従って製造されるか、又は基板、未露光部と露光部を有する感光性樹脂組成物層、及びカバーフィルムを順次に積層することにより製造されることができる。例えば、バーコーター、ロールコーター、巻き出しロール、巻き取りロール、剥離ロール、ラミネートロール、光源、レンズ、パターンマスク、現像機、エッチング装置などを使用して、感光性積層体を得ることができる。
異物の影響を受け難くし、かつ/又は保管安定性を改良するという観点から、複数の感光性積層体を積み重ねることが好ましく、複数の基板が接するように複数の感光性積層体を積み重ねることがより好ましい。例えば、フレキシブル基板の場合には複数の感光性積層体を枚葉状に積み重ねることができ、リジッド基板の場合には、複数の感光性積層体の複数のリジッド基板を直接積み重ねることができる。
感光性積層体を構成する基板は、上記項目[ラミネート工程(第1の積層体形成工程)]において説明されたとおりである。その他の構成要素について以下に説明する。
【0031】
[感光性樹脂組成物]
本実施形態では、感光性樹脂組成物は、任意の支持フィルムに適用されることにより、感光性樹脂組成物層を形成することができる。一般に、フォトリソグラフィー法では、感光性樹脂組成物は、露光によって露光部が重合硬化して未露光部が現像液に対して可溶化するネガ型と、露光によって露光部が現像液に対して可溶化するポジ型に大別される。
【0032】
[ネガ型感光性樹脂組成物]
感光性樹脂組成物層を構成するためのネガ型感光性樹脂組成物としては、(A)アルカリ可溶性高分子、(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物及び(C)光重合開始剤を含む感光性樹脂組成物を使用できる。また、本実施形態では、ネガ型感光性樹脂組成物は、任意の支持フィルムに適用されることにより、感光性樹脂組成物層を形成することができる。以下、ネガ型感光性樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0033】
(A)アルカリ可溶性高分子
(A)アルカリ可溶性高分子は、アルカリ性溶液に溶解できる高分子である。また、本実施形態では、(A)アルカリ可溶性高分子は、カルボキシル基を有することが好ましく、100~600の酸当量を有することがより好ましく、そしてカルボキシル基含有単量体を共重合成分として含む共重合体であることがさらに好ましい。さらに、(A)アルカリ可溶性高分子は熱可塑性でもよい。
【0034】
(A)アルカリ可溶性高分子の酸当量は、感光性樹脂組成物層の現像耐性、並びにレジストパターンの解像性及び密着性の観点から100以上であることが好ましく、一方で、感光性樹脂組成物層の現像性及び剥離性の観点から600以下であることが好ましい。また、(A)アルカリ可溶性高分子の酸当量は、200~500であることがより好ましく、250~450であることがさらに好ましい。本明細書において、酸当量とは、分子中に1当量のカルボキシル基を有する重合体の質量(グラム)を意味し、電位差滴定法(例えば平沼産業(株)製平沼自動滴定装置(COM-555)を使用し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いる方法)で測定される値である。
【0035】
(A)アルカリ可溶性高分子の重量平均分子量は、5,000~500,000であることが好ましい。(A)アルカリ可溶性高分子の重量平均分子量は、ドライフィルムレジストの厚みを均一に維持し、現像液に対する耐性を得るという観点から5,000以上であることが好ましく、一方で、ドライフィルムレジストの現像性を維持するという観点から500,000以下であることが好ましい。また、(A)アルカリ可溶性高分子の重量平均分子量は、10,000~200,000であることがより好ましく、40,000~130,000であることがさらに好ましい。さらに、(A)アルカリ可溶性高分子の分散度は1.0~6.0であることが好ましい。
【0036】
本明細書において、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン(例えば昭和電工(株)製Shodex STANDARD SM-105)の検量線を用いて測定した重量平均分子量を意味する。重量平均分子量は、日本分光(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用して、例えば以下の条件で測定することができる。
示差屈折率計:RI-1530
ポンプ:PU-1580デガッサー:DG-980-50
カラムオーブン:CO-1560
カラム:順にKF-802.5、KF-806M×2、KF-807
溶離液:THF
【0037】
(A)アルカリ可溶性高分子は、後述する第一の単量体の少なくとも1種を重合することにより得られることが好ましい。また、(A)アルカリ可溶性高分子は、第一の単量体の少なくとも1種と後述する第二の単量体の少なくとも1種とを共重合することにより得られることがより好ましい。
【0038】
第一の単量体は、分子中にカルボキシル基を含有する単量体である。第一の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸無水物、及びマレイン酸半エステル等が挙げられる。これらの中でも、特に(メタ)アクリル酸が好ましい。また、本明細書では、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、そして「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」を意味する。
【0039】
第二の単量体は、非酸性であり、かつ分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有する単量体である。第二の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びベンジル(メタ)アクリレート;酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類;並びに(メタ)アクリロニトリル、スチレン、及び重合可能なスチレン誘導体(例えば、メチルスチレン、ビニルトルエン、tert-ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、4-ビニル安息香酸、スチレンダイマー、スチレントリマー等)等が挙げられる。これらの中でも、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0040】
本実施形態では、レジストパターンの解像性を向上させるという観点から、(A)アルカリ可溶性高分子は、その構造の側鎖に芳香族基を有することが好ましい。側鎖に芳香族基を有する(A)アルカリ可溶性高分子は、上記の第一の単量体及び/又は第二の単量体として、芳香族基を有する化合物を使用することにより調製されることができる。芳香族基を有する単量体としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、スチレン、ケイ皮酸、重合可能なスチレン誘導体(例えば、メチルスチレン、ビニルトルエン、tert-ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、4-ビニル安息香酸、スチレンダイマー、スチレントリマー等)等が挙げられる。その中でも、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0041】
本実施形態では、(A)アルカリ可溶性高分子は、上記の第一の単量体、又はこれと第二の単量体とを既知の重合法、好ましくは付加重合、より好ましくはラジカル重合により重合させることにより調製されることができる。
【0042】
本実施形態では、感光性樹脂組成物中の(A)アルカリ可溶性高分子の含有量(感光性樹脂組成物の固形分総量を基準とする。以下、特に明示しない限り、各含有成分において同様である。)は、好ましくは10質量%~90質量%の範囲であり、より好ましくは20質量%~80質量%の範囲であり、さらに好ましくは30質量%~60質量%の範囲である。(A)アルカリ可溶性高分子の含有量は、感光性樹脂組成物層のアルカリ現像性を維持するという観点から10質量%以上であることが好ましく、一方で、露光によって形成されるレジストパターンがレジスト材料としての性能を十分に発揮するという観点から90質量%以下であることが好ましい。
【0043】
(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物
(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物は、その構造中にエチレン性不飽和基を有することによって重合性を有する化合物である。本実施形態では、感光性樹脂組成物は、(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物として、下記一般式(I):
【化1】
{式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、Xは、炭素数2~6のアルキレン基を表し、複数存在する場合のXは互いに同一でも異なっていてもよく、n及びnは、それぞれ独立に、0又は正の整数であり、そしてn+nは、2~40である。}で表される化合物は、解像性及び密着性が優れた感光性樹脂を得るために好ましい。
【0044】
また、上記一般式(I)中の芳香環はヘテロ原子及び/又は置換基を有していてもよい。ヘテロ原子としては、例えば、ハロゲン原子等が挙げられ、そして置換基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~18のアリール基、フェナシル基、アミノ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~20のジアルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボニル基、メルカプト基、炭素数1~10のアルキルメルカプト基、アリル基、水酸基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルキル基の炭素数が1~10のカルボキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1~10のアシル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルコキシカルボニル基、炭素数2~10のアルキルカルボニル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のN-アルキルカルバモイル基若しくは複素環を含む基、又はこれらの置換基で置換されたアリール基等が挙げられる。また、これらの置換基は縮合環を形成しているか、又はこれらの置換基中の水素原子がハロゲン原子等のヘテロ原子に置換されていてもよい。さらに、上記一般式(I)中の芳香環が複数の置換基を有する場合には、複数の置換基は同一であるか、又は異なっていてよい。
【0045】
上記一般式(I)において、Xは、解像性の観点から炭素数2以上が好ましく、現像性の観点から炭素数6以下が好ましい。更に好ましくは、炭素数2~4である。また、n+nは、現像性の観点から2以上が好ましく、解像性の観点から40以下が好ましい。n+nは、より好ましくは2~20であり、さらに好ましくは2~15であり、よりさらに好ましくは2~10である。上記一般式(I)で表される化合物の具体例としては、例えば、ビスフェノールAをアルキレンオキシド変性し、両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物があり、アルキレンオキシド変性にはエチレンオキシド変性、プロピレンオキシド変性、ブチレンオキシド変性、ペンチレンオキシド変性、へキシレンオキシド変性等がある。両末端に(メタ)アクリロイル基を有するエチレンオキシド変性ビスフェノールAとしては、例えば、ビスフェノ-ルAの両端にそれぞれ平均1モルずつのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコ-ルのジメタクリレ-ト(サートマー製 SR-348、Miwon製 M-249、エターナル製 EM-3260)、ビスフェノ-ルAの両端にそれぞれ平均2モルずつのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコ-ルのジメタクリレ-ト(新中村化学工業(株)製NKエステルBPE-200)及びビスフェノ-ルAの両端にそれぞれ平均3モルずつのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコ-ルのジメタクリレ-ト、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(新中村化学工業(株)製NKエステルBPE-500)、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパン等の2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは、単独で使用しても2種以上併用してもよい。それらの中でも、ビスフェノ-ルAの両端にそれぞれ平均1モルずつのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコ-ルのジメタクリレ-トは、解像性の観点から好ましい。
【0046】
また、本実施形態では、感光性樹脂組成物は、(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物として、上記一般式(I)で表される化合物だけでなく、その他の化合物も含んでよい。その他の化合物としては、例えば、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン性不飽和結合を一つ有する光重合性化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物、多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる上記一般式(I)以外の化合物、グリシジル基含有化合物にα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、フタル酸系化合物等が挙げられる。これらは、単独で使用しても2種以上併用してもよい。
【0047】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ノナエチレングリコールジアクリレート、平均12モルのプロピレンオキサイドを付加したポリプロピレングリコ-ルにエチレンオキサイドをさらに両端にそれぞれ平均3モルずつ付加したポリアルキレングリコ-ルのジメタクリレ-ト等が挙げられる。密着性及び解像性の観点から、平均12モルのプロピレンオキサイドを付加したポリプロピレングリコ-ルにエチレンオキサイドをさらに両端にそれぞれ平均3モルずつ付加したポリアルキレングリコ-ルのジメタクリレ-トが(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物に含まれることが好ましい。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0048】
エチレン性不飽和結合を一つ有する光重合性化合物としては、例えば、ノニルフェノキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレート、ブチルフェノキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ブチルフェノキシポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0049】
ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、又はジイソシアネート化合物(例えば、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート)と、一分子中にヒドロキシル基と(メタ)アクリル基を有する化合物(例えば、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、オリゴプロピレングリコールモノメタクリレート)とから得られるウレタン化合物が挙げられる。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネートとオリゴプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマーPP1000)との反応物である。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0050】
多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる上記一般式(I)以外の化合物としては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO及びPO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0051】
グリシジル基含有化合物にα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシ-プロピルオキシ)フェニル等が拳げられる。
【0052】
フタル酸系化合物としては、例えば、γ-クロロ-β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、β-ヒドロキシアルキル-β’-(メタ)アクリロルオキシアルキル-o-フタレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。
【0053】
その他にも、(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物としてトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート又は(2,2-ビス{4-(メタクリロキシペンタエトキシ)シクロヘキシル}プロパン等を含んでもよい。
【0054】
本実施形態では、感光性樹脂組成物中の(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の含有量は、好ましくは5質量%~70質量%の範囲であり、より好ましくは20質量%~60質量%の範囲であり、さらに好ましくは30質量%~60質量%の範囲である。(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の含有量は、感光性樹脂組成物層の硬化不良及び現像時間の遅延を抑えるという観点から5質量%以上であることが好ましく、一方で、レジスト材料のコールドフロー及び硬化レジストの剥離遅延を抑えるという観点から70質量%以下であることが好ましい。
【0055】
(C)光重合開始剤
(C)光重合開始剤は、光によりモノマーを重合させる化合物である。本実施形態では、レジストパターンの解像性及び硬化レジストの強度を向上させるという観点から、感光性樹脂組成物は、(C)光重合開始剤としてヘキサアリールビスイミダゾール化合物を含むことが好ましい。
【0056】
ヘキサアリールビスイミダゾール化合物としては、例えば、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体(以下、「トリアリールイミダゾリル誘導体の二量体」又は「トリアリールイミダゾリル二量体」ともいう)等が挙げられる。
【0057】
ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体としては、例えば、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾリル二量体(以下、「2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,1’-ビスイミダゾール」又は「2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体」ともいう)、2,2’,5-トリス-(o-クロロフェニル)-4-(3,4-ジメトキシフェニル)-4’,5’-ジフェニルイミダゾリル二量体、2,4-ビス-(o-クロロフェニル)-5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ジフェニルイミダゾリル二量体、2,4,5-トリス-(o-クロロフェニル)-ジフェニルイミダゾリル二量体、2-(o-クロロフェニル)-ビス-4,5-(3,4-ジメトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、2,2’-ビス-(2-フルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、2,2’-ビス-(2,3-ジフルオロメチルフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、2,2’-ビス-(2,4-ジフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、2,2’-ビス-(2,5-ジフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、2,2’-ビス-(2,6-ジフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、2,2’-ビス-(2,3,4-トリフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、2,2’-ビス-(2,3,5-トリフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、2,2’-ビス-(2,3,6-トリフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、2,2’-ビス-(2,4,5-トリフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、2,2’-ビス-(2,4,6-トリフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、2,2’-ビス-(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、2,2’-ビス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、及び2,2’-ビス-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。
【0058】
特に、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体は、レジストパターンの解像性及び硬化レジストの強度を向上させるために好ましい。
【0059】
本実施形態では、感光性樹脂組成物中のヘキサアリールビスイミダゾール化合物の含有量は、感光性樹脂組成物層の剥離特性及び/又は感度を向上させるという観点から、0.05質量%~7質量%であることが好ましく、0.1質量%~6質量%であることがより好ましい。
【0060】
本実施形態では、感光性樹脂組成物層は、(C)光重合開始剤として、ヘキサアリールビスイミダゾール化合物だけでなく、その他の光重合開始剤も含んでよい。その他の光重合開始剤としては、例えば、アクリジン化合物、N-アリールアミノ酸、有機ハロゲン化合物、光増感剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。
【0061】
アクリジン化合物は、樹脂に良好な剥離特性を与えるために好ましい。アクリジン化合物としては、例えば、アクリジン、9-フェニルアクリジン、1,6-ビス(9-アクリジニル)ヘキサン、1,7-ビス(9-アクリジニル)ヘプタン、1,8-ビス(9-アクリジニル)オクタン、1,9-ビス(9-アクリジニル)ノナン、1,10-ビス(9-アクリジニル)デカン、1,11-ビス(9-アクリジニル)ウンデカン、1,12-ビス(9-アクリジニル)ドデカン等が挙げられる。これらの中でも、感光性樹脂組成物層のh線感度を向上させるという観点から、9-フェニルアクリジンが好ましい。また、これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。さらに、本実施形態では、感光性樹脂組成物中のアクリジン化合物の含有量は、良好な剥離特性を得るという観点から、0.1質量%~2質量%の範囲であることが好ましい。
【0062】
N-アリールアミノ酸の例としては、例えば、N-フェニルグリシン、N-メチル-N-フェニルグリシン、N-エチル-N-フェニルグリシン等が挙げられる。これらの中でも、N-フェニルグリシンが好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。また、本実施形態では、感光性樹脂組成物中のN-アリールアミノ酸の含有量は、感光性樹脂組成物層の剥離特性及び/又は感度を向上させるという観点から、0.05質量%~5質量%であることが好ましく、0.1質量%~2質量%であることがより好ましい。
【0063】
有機ハロゲン化合物としては、例えば、臭化アミル、臭化イソアミル、臭化イソブチレン、臭化エチレン、臭化ジフェニルメチル、臭化ベンジル、臭化メチレン、トリブロモメチルフェニルスルホン、四臭化炭素、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート、トリクロロアセトアミド、ヨウ化アミル、ヨウ化イソブチル、1,1,1-トリクロロ-2,2-ビス(p-クロロフェニル)エタン、クロル化トリアジン化合物等が挙げられる。これらの中でも、トリブロモメチルフェニルスルホンが好ましい。また、これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。さらに、本実施形態では、感光性樹脂組成物中の有機ハロゲン化合物の含有量は、感光性樹脂組成物層の剥離特性及び/又は感度を向上させるという観点から、0.05質量%~5質量%であることが好ましく、0.1質量%~3質量%であることがより好ましい。
【0064】
光増感剤としては、例えば、2-エチルアントラキノン、オクタエチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルアントラキノン、及び3-クロロ-2-メチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン[4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン]、及び4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、メチルベンゾイン、及びエチルベンゾイン等のベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、並びに1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-O-ベンゾインオキシム、及び1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム等のオキシムエステル類等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。
【0065】
本実施形態では、感光性樹脂組成物は、光増感剤としてピラゾリン化合物を含むこともできる。ピラゾリン化合物としては、例えば、1-フェニル-3-(4-tert-ブチル-スチリル)-5-(4-tert-ブチル-フェニル)-ピラゾリン、1-(4-(ベンゾオキサゾール-2-イル)フェニル)-3-(4-tert-ブチル-スチリル)-5-(4-tert-ブチル-フェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(4-ビフェニル)-5-(4-tert-ブチル-フェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(4-ビフェニル)-5-(4-tert-オクチル-フェニル)-ピラゾリン等が挙げられる。これらの中でも、1-フェニル-3-(4-ビフェニル)-5-(4-tert-ブチル-フェニル)-ピラゾリンが好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。
【0066】
本実施形態では、感光性樹脂組成物中の光増感剤の含有量は、感光性樹脂組成物層の剥離特性及び/又は感度を向上させるという観点から、0.05質量%~5質量%であることが好ましく、0.1質量%~3質量%であることがより好ましく、0.1質量%~1質量%であることがさらに好ましい。
【0067】
本実施形態では、感光性樹脂組成物中の(C)光重合開始剤の含有量は、0.01質量%~20質量%であることが好ましい。(C)光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物層の感度の観点から0.01質量%以上であることが好ましく、一方で、レジストパターンの解像度の観点から20質量%以下であることが好ましい。また、(C)光重合開始剤の含有量は、0.1質量%~10質量%であることがより好ましく、0.1質量%~6質量%であることがさらに好ましい。さらに、(C)光重合開始剤としては、上記で列挙した化合物の1種類を単独で使用するか、又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
(D)その他の成分
本実施形態では、感光性樹脂組成物は、所望により、染料、可塑剤、酸化防止剤、安定化剤等の添加剤を含むことが好ましい。
【0069】
染料としては、例えば、トリス(4-ジメチルアミノフェニル)メタン[ロイコクリスタルバイオレット]、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)フェニルメタン[ロイコマラカイトグリーン]、フクシン、フタロシアニングリーン、オーラミン塩基、パラマジエンタ、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン(保土ヶ谷化学(株)製 アイゼン(登録商標) MALACHITE GREEN)、ベイシックブルー20、ダイアモンドグリーン(保土ヶ谷化学(株)製 アイゼン(登録商標) DIAMOND GREEN GH)等が挙げられる。これらの中でも、着色性、色相安定性及び露光コントラストを向上させるという観点から、ダイアモンドグリーン及びロイコクリスタルバイオレットが好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。
【0070】
本実施形態では、感光性樹脂組成物中の染料の含有量は、好ましくは0.001質量%~3質量%の範囲であり、より好ましくは0.01質量%~2質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0.04質量%~1質量%の範囲である。染料の含有量は、良好な着色性を得るという観点から0.001質量%以上であることが好ましく、一方で、感光性樹脂組成物層の感度を維持するという観点から3質量%以下であることが好ましい。
【0071】
可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンモノエチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノエチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノエチルエーテル等のグリコール・エステル類、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル類、o-トルエンスルホン酸アミド、p-トルエンスルホン酸アミド、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリ-n-プロピル、及びアセチルクエン酸トリ-n-ブチル、ビスフェノールAの両側にそれぞれプロピレンオキサイドを付加したプロピレングリコール、ビスフェノールAの両側にそれぞれエチレンオキサイドを付加したエチレングリコール等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。
【0072】
本実施形態では、感光性樹脂組成物中の可塑剤の含有量は、好ましくは0.1質量%~50質量%であり、より好ましくは、1質量%~20質量%である。可塑剤の含有量は、感光性樹脂組成物層の現像時間の遅延を抑え、硬化膜に柔軟性を付与するという観点から0.1質量%以上であることが好ましく、一方で、硬化膜の硬化不足及びコールドフローを抑えるという観点から50質量%以下であることが好ましい。
【0073】
酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルフォスファイト(例えば、旭電化工業社製、商品名:TPP)、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト(例えば、旭電化工業社製、商品名2112)、トリス(モノノニルフェニル)フォスファイト(例えば旭電化工業社製、商品名:1178)、ビス(モノノニルフェニル)-ジノニルフェニルフォスファイト(例えば、旭電化工業社製、商品名:329K)等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。
【0074】
本実施形態では、感光性樹脂組成物中の酸化防止剤の含有量は、好ましくは0.01質量%~0.8質量%の範囲であり、より好ましくは、0.01質量%~0.3質量%の範囲である。酸化防止剤の含有量は、レジストパターンの色相安定性を良好に発現させ、かつ感光性樹脂組成物層の感度を向上させるという観点から0.01質量%以上であることが好ましく、一方で、レジストパターンの発色性を抑えながら色相安定性を良好に発現させ、かつ密着性を向上させるという観点から0.8質量%以下であることが好ましい。
【0075】
安定化剤は、感光性樹脂組成物の熱安定性及び/又は保存安定性を向上させるという観点から、使用されることが好ましい。安定化剤としては、例えば、ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾール類、カルボキシベンゾトリアゾール類、及びグリシジル基を有するアルキレンオキシド化合物から成る群から選ばれる少なくとも1つの化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。
【0076】
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、p-メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、tert-ブチルカテコール、塩化第一銅、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩(例えば、ニトロソフェニルヒドロキシルアミンが3モル付加したアルミニウム塩等)、ジフェニルニトロソアミン等が挙げられる。これらの中でも、ニトロソフェニルヒドロキシルアミンが3モル付加したアルミニウム塩が好ましい。また、これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。
【0077】
ベンゾトリアゾール類としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-クロロ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-トリルトリアゾール、ビス(N-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-(2-ジ-n-ブチルアミノメチル)-5-カルボキシルベンゾトリアゾールと1-(2-ジ-n-ブチルアミノメチル)-6-カルボキシルベンゾトリアゾールの1:1(モル比)混合物等が挙げられる。これらの中でも、1-(2-ジ-n-ブチルアミノメチル)-5-カルボキシルベンゾトリアゾールと1-(2-ジ-n-ブチルアミノメチル)-6-カルボキシルベンゾトリアゾールの1:1(モル比)混合物が好ましい。また、これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。
【0078】
カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、4-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、5-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、及びN-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。
【0079】
グリシジル基を有するアルキレンオキシド化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(例えば、共栄社化学(株)製エポライト1500NP)、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、共栄社化学(株)製エポライト400E)、ビスフェノールA-プロピレンオキシド 2モル付加物ジグリシジルエーテル(例えば、共栄社化学(株)製エポライト3002)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(例えば、共栄社化学(株)製エポライト1600)等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。
【0080】
本実施形態では、ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾール類、カルボキシベンゾトリアゾール類、及びグリシジル基を有するアルキレンオキシド化合物の、感光性樹脂組成物中の合計含有量は、好ましくは0.001質量%~3質量%の範囲であり、より好ましくは0.05~1質量%の範囲である。この合計含有量は、感光性樹脂組成物に良好な保存安定性を付与するという観点から0.001質量%以上であることが好ましく、一方で、感光性樹脂組成物層の感度を維持するという観点から3質量%以下であることが好ましい。
【0081】
[ポジ型感光性樹脂組成物]
本実施形態に係るポジ型感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性フェノール樹脂及び(B)1,2-ナフトキノンジアジド基を含む感光剤を含み、所望により、さらに(C)側鎖に芳香族ヒドロキシ化合物に由来する基を有するアルカリ可溶性樹脂、(D)可塑剤、その他の成分などを含んでよい。
【0082】
(A)アルカリ可溶性フェノール樹脂
(A)アルカリ可溶性フェノール樹脂は、例えば、フェノール化合物と、アルデヒド及び/又はケトンとを原料として、縮重合反応により得られる。
【0083】
フェノール化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール;エチルフェノール、ブチルフェノール、トリメチルフェノール等のアルキルフェノール;メトキシフェノール、2-メトキシ-4-メチルフェノール等のアルコキシフェノール;ビニルフェノール、アリルフェノール等のアルケニルフェノール;フェニルフェノール等のアリールフェノール;ベンジルフェノール等のアラルキルフェノール;メトキシカルボニルフェノール等のアルコキシカルボニルフェノール;ベンゾイルオキシフェノール等のアリールカルボニルフェノール;クロロフェノール等のハロゲン化フェノール;カテコール、レゾルシノール等のポリヒドロキシベンゼン;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール;並びに、α-又はβ-ナフトール等のナフトール化合物、p-ヒドロキシフェニル-2-エタノール、p-ヒドロキシフェニル-3-プロパノール、p-ヒドロキシフェニル-4-ブタノール等のヒドロキシアルキルフェノール;ヒドロキシエチルクレゾール等のヒドロキシアルキルクレゾール;ビスフェノールのモノエチレンオキサイド付加物;ビスフェノールのモノプロピレンオキサイド付加物等のアルコール性水酸基含有フェノール化合物;並びに、p-ヒドロキシフェニル酢酸、p-ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p-ヒドロキシフェニルブタン酸、p-ヒドロキシ桂皮酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフェニル安息香酸、ヒドロキシフェノキシ安息香酸、ジフェノール酸等のカルボキシル基含有フェノール化合物などが挙げられる。上述のフェノール化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0084】
アルデヒド及び/又はケトンとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド、メトキシフェニルアセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、クロロアセトアルデヒド、クロロフェニルアセトアルデヒド、アセトン及びグリセルアルデヒドが挙げられる。また、アルデヒド及び/又はケトンとしては、例えば、グリオキシル酸、グリオキシル酸メチル、グリオキシル酸フェニル、グリオキシル酸ヒドロキシフェニル、ホルミル酢酸、ホルミル酢酸メチル、2-ホルミルプロピオン酸、2-ホルミルプロピオン酸メチル、ピルビン酸、レプリン酸、4-アセチルブチル酸、アセトンジカルボン酸、及び3,3’-4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸も挙げられる。また、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等のホルムアルデヒドの前駆体が用いられてもよい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0085】
上記縮重合反応には、酸性触媒を用いることが好ましい。この酸性触媒を用いることにより、ノボラック型フェノール樹脂が得られ易くなり、異物の発生をより有効に防ぐことができる。酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、蟻酸、酢酸、p-トルエンスルホン酸及びシュウ酸が挙げられる。酸性触媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。なお、アルカリ可溶性フェノール樹脂の合成条件は公知の条件であってもよい。
アルカリ可溶性フェノール樹脂を得るための原料中におけるアルデヒド及び/又はケトンの含有量は、縮重合反応の迅速な進行の観点から、フェノール化合物1モルに対し、0.7~1モルであることが好ましい。
また、(A)アルカリ可溶性フェノール樹脂は、上述のフェノール化合物とm-キシレンのようなフェノール以外の化合物との縮重合生成物であってもよい。この場合、縮重合に用いられるフェノール化合物に対するフェノール以外の化合物のモル比は、0.5未満であることが好ましい。
【0086】
(A)アルカリ可溶性フェノール樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量は、塗膜性を向上させる観点、並びに、現像性の低下を抑える観点から、300~100,000が好ましく、1,000~20,000がより好ましい。重量平均分子量は、塗膜性の観点から300以上が好ましく、また、現像性の観点から、100,000以下が好ましい。
また、鎖延長剤を用いてフェノール樹脂の多量体化を行い、上記重量平均分子量の範囲となるように分子量を増大させてもよい。鎖延長剤としては、例えば、カルボキシル基と反応可能なジエポキシ化合物やジオキサゾリン化合物、及び水酸基と反応可能なジイソシアネート化合物が挙げられる。
【0087】
(A)アルカリ可溶性フェノール樹脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。2種以上を組み合わせて用いる場合のアルカリ可溶性フェノール樹脂としては、例えば、互いに異なる種類の単量体から得られる2種以上のアルカリ可溶性フェノール樹脂、互いに異なる重量平均分子量を有する2種以上のアルカリ可溶性フェノール樹脂、並びに、互いに異なる分散度を有する2種以上のアルカリ可溶性フェノール樹脂が挙げられる。
(A)アルカリ可溶性フェノール樹脂のポジ型感光性樹脂組成物中の配合割合は、感光性樹脂組成物全体の量に対して20質量%~90質量%が好ましく、25質量%~85質量%がより好ましく、30質量%~80質量%がさらに好ましい。この配合割合は、パターン形成性を向上させるという観点から20質量%以上が好ましく、またレジスト膜の脆さを防ぐという観点から90質量%以下が好ましい。
【0088】
(B)1,2-ナフトキノンジアジド基を含む感光剤
(B)1,2-ナフトキノンジアジド基を含む感光剤は、水酸基又はアミノ基を有する有機化合物(以下単に「有機化合物」という。)に、スルホ基及び/又はスルホニルクロリド基を有する1,2-ナフトキノンジアジド化合物を反応させて得られる化合物である。この場合、有機化合物の水酸基又はアミノ基と、1,2-キノンジアジド化合物のスルホ基又はスルホニルクロリド基とが結合する。なお、この結合は、得られる1,2-キノンジアジド化合物の分子内に少なくとも一つあればよい。
スルホ基及び/又はスルホニルクロリド基を有する1,2-キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホン酸、1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸(別名:6-ジアゾ-5,6-ジヒドロ-5-オキソ-1-ナフタレンスルホン酸)、1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホニルクロリド、及び1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロリドが挙げられる。中でも、1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホン酸、1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸、1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホニルクロリド、及び1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロリドから成る群より選ばれる1種以上の化合物が好ましい。これらのスルホ基及び/又はスルホニルクロリド基を有する1,2-キノンジアジド化合物は、溶剤によく溶解することから、有機化合物との反応効率を高めることができる。
【0089】
上記有機化合物としては、例えば、ポリヒドロキシベンゾフェノン類、ビス[(ポリ)ヒドロキシフェニル]アルカン類、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン類又はそのメチル置換体、ビス(シクロヘキシルヒドロキシフェニル)(ヒドロキシフェニル)メタン類又はそのメチル置換体、フェノール、p-メトキシフェノール、ジメチルフェノール、ヒドロキノン、ナフトール、ピロカテコール、ピロガロール、ピロガロールモノメチルエーテル、ピロガロール-1,3-ジメチルエーテル、没食子酸、アニリン、p-アミノジフェニルアミン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、ノボラック、ピロガロール-アセトン樹脂、ヒドロキシスチレンのホモポリマー又はこれと共重合し得るモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0090】
ポリヒドロキシベンゾフェノン類としては、例えば、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4-トリヒドロキシ-2’-メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,6-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,4’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,5-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,5’,6-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、及び2,3,3’,4,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0091】
ビス[(ポリ)ヒドロキシフェニル]アルカン類としては、例えば、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2-(2’,4’-ジヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)-2-(2’,3’,4’-トリヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-{1-[4-〔2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール、4,4’-(1-{4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル}エチリデン)ビスフェノール、及び3,3’-ジメチル-{1-[4-〔2-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノールが挙げられる。
【0092】
トリス(ヒドロキシフェニル)メタン類又はそのメチル置換体としては、例えば、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3、5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、及びビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタンが挙げられる。
【0093】
ビス(シクロヘキシルヒドロキシフェニル)(ヒドロキシフェニル)メタン類又はそのメチル置換体としては、例えば、ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)
-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-4-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、及びビス(5-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-4-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタンが挙げられる。
【0094】
これらの中でも、上記有機化合物としては、画像コントラストの観点から、ポリヒドロキシベンゾフェノン類、ビス[(ポリ)ヒドロキシフェニル]アルカン類、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン類、及び/又は、ビス(シクロヘキシルヒドロキシフェニル)(ヒドロキシフェニル)メタン類が好ましい。
【0095】
(B)成分のポジ型感光性樹脂組成物中の配合割合は、感光性樹脂組成物全体の量に対して1~75質量%が好ましく、5質量%~50質量%がより好ましく、5~40質量%がさらに好ましく、よりさらに好ましくは10質量%~30質量%である。この配合割合は、光感度を向上させるという観点から1質量%以上が好ましく、またレジスト膜の脆さを防ぐという観点から75質量%以下が好ましい。
【0096】
(C)側鎖に芳香族ヒドロキシ化合物に由来する基を有するアルカリ可溶性樹脂
(C)側鎖に芳香族ヒドロキシ化合物に由来する基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、(i)ポリヒドロキシスチレン系樹脂、(ii)フェノール基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、(iii)フェノール基含有ポリアクリルアミド樹脂及びそれらの変性体が挙げられる。
【0097】
ポリヒドロキシスチレン系樹脂の製造方法としては、例えば、アセトキシフェニルメチルカルビノールの脱水、ヒドロキシ桂皮酸の脱炭酸分解、エチルフェノールの脱水素等の各種方法によって得られるビニルフェノールモノマーを、カチオン又はラジカル開始剤の存在下で単独重合又は他のコモノマーと共重合する方法等が工業的な方法として知られている。また、ビニルフェノール類の水酸基をアセチル基、トリメチルシリル基、t-ブチル基、t-ブトキシカルボニル基などで保護したモノマーを合成し、カチオン、アニオン、あるいはラジカル開始剤の存在下で重合した後、保護基を脱離して重合体を得る方法も知られている。この方法では、保護基の種類と開始剤の種類の選択によって、リビング重合による単分散重合体の製造も可能である。さらに、これらのビニルフェノール系重合体を水素化処理して光透過性の優れた改質体とする方法、又はビニルフェノール系重合体の水酸基の反応による各種エーテルおよびエステル誘導体の製造方法及びビニルフェノール系重合体の各種核置換体の製造方法が知られている。
【0098】
(i)ポリヒドロキシスチレン系樹脂としては、ポリヒドロキシスチレン(よし詳細には、ポリパラヒドロキシスチレン)、変性ポリヒドロキシスチレン、水素化ポリヒドロキシスチレン、ヒドロキシスチレンとスチレン、(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸エステルなどのとの共重合体などが挙げられる。ポリヒドロキシスチレンの重量平均分子量は、1,000~1,000,00、好ましくは5,000~50,000である。
変性ポリヒドロキシスチレンとしては、ポリヒドロキシスチレンに、例えば、ベンゼンスルホニルクロリド誘導体、ナフタレンスルホニルクロリド誘導体、ベンゼンカルボニルクロリド誘導体、ナフタレンカルボニルクロリド誘導体などを、塩基性触媒の存在下に反応させたものなどが挙げられる。
上記スルホニルクロリド誘導体又はカルボニルクロリド誘導体の具体例としては、p-アセトアミノベンゼンスルホニルクロリド、ベンゼンスルホニルクロリド、p-クロロベンゼンスルホニルクロリド、ナフチルベンゼンスルホニルクロリド、p-アセトアミノベンゼンカルボニルクロリド、ベンゼンカルボニルクロリド、p-クロロベンゼンカルボニルクロリド、ナフチルベンゼンカルボニルクロリドなどが挙げられる。この場合、ポリヒドロキシスチレン100質量部に対して、前記スルホニルクロリド誘導体や前記カルボニルクロリド誘導体は、通常10質量部~30質量部、好ましくは15質量部~25質量部の割合で用いられる。このような変性ポリヒドロキシスチレンは、重量平均分子量が3,000~50,000、好ましくは5,000~30,000の範囲であることができる。
【0099】
水素化ポリヒドロキシスチレンは、ポリヒドロキシスチレン及び一部のベンゼン環が置換基によって変性された変性ポリヒドロキシスチレンのベンゼン環の一部を水素化したものである。水素化ポリヒドロキシスチレンの重量平均分子量は、通常3,000~30,000、好ましくは5,000~25,000の範囲で選ばれる。機械物性や耐ドライエッチング性の観点から、重量平均分子量は3,000以上が好ましく、相溶性の観点から30,000以下が好ましい。
【0100】
他の成分と共重合させる際のヒドロキシスチレンの割合としては、露光した際に充分なアルカリ現像性を得るという観点から30質量%以上100質量%以下が好ましい。より好ましいヒドロキシスチレンの割合は、40質量%以上100質量%以下である。
【0101】
(ii)フェノール基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂としては、4-ヒドロキシフェニルメタクリレート、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレートなどフェノール基含有ポリ(メタ)アクリル酸モノマーの重合体、共重合体およびその変性体が挙げられる。フェノール基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂の重量平均分子量は、5,000~1,000,000、好ましくは10,000~200,000である。
(iii)フェノール基含有ポリアクリルアミド樹脂としては、3,5-ジメチル-4-ヒドロキシベンジルアクリルアミドなどフェノール基含有アクリルアミドモノマーの重合体、共重合体およびその変性体が挙げられる。フェノール基含有ポリアクリルアミド樹脂の重量平均分子量は、1,000~1,000,000、好ましくは5,000~100,000である。
【0102】
(C)側鎖に芳香族ヒドロキシ化合物に由来する基を有するアルカリ可溶性樹脂は、感光性樹脂組成物100質量%に対して、1質量%~75質量%配合することが好ましい。より好ましくは5質量%~50質量%である。この配合割合は、レジスト膜の脆さを防ぐという観点から1質量%以上が好ましく、また系全体に対する溶解性という観点から75質量%以下が好ましい。
【0103】
(D)可塑剤
感光性樹脂組成物に、(D)可塑剤を含有することは、異物を低減できるという観点から好ましい。
(D)可塑剤としては、相溶可能な低分子量成分で有ればよく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンモノエチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノエチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノエチルエーテル等のグリコール・エステル類、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル類、o-トルエンスルホン酸アミド、p-トルエンスルホン酸アミド、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリ-n-プロピル、アセチルクエン酸トリ-n-ブチルなどが挙げられる。
【0104】
感光性樹脂組成物に含まれる(D)可塑剤は、優れたパターン形成性を維持したまま、フィルムとしたときの切り屑が低減できるという観点から、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールF及びビスフェノールS、並びにこれらを水素添加して得られる化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物から誘導され、且つ末端に水酸基を少なくとも1つ有する化合物が好ましい。
【0105】
このような化合物としては、ビスフェノールA(2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン)またはビスフェノールE(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン)またはビスフェノールF(4,4’-メチレンビスフェノール)またはビスフェノールS(4,4’-スルフォニルジフェノール)の両末端の水酸基を利用して、アルキル基、アルキレンオキシド基、又はポリアルキレンオキシド基等の脂肪族性の分子鎖を導入した化合物が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基など、アルキレンオキシド基としては、メチレンオキシド基、エチレンオキシド基、プロピレンオキシド基、テトラメチレンオキシド基など、ポリアルキレンオキシド基としては、ポリメチレンオキシド基、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基、ポリテトラメチレンオキシド基またはそれらのブロック共重合体、ランダム共重合体よりなる基などが挙げられる。(D)成分は、末端に水酸基を少なくとも1つ有することを前提に、前記導入された分子鎖の末端が水酸基以外の構造を有していてもよい。
上記化合物のなかでもビスフェノールAまたはそれに水素添加した化合物から誘導された化合物であることがレジスト膜の柔軟性の点から好ましい。
【0106】
(D)成分の具体的な例としては、アデカノール(登録商標)SDX-1569、アデカノール(登録商標)SDX-1570、アデカノール(登録商標)SDX-1571、アデカノール(登録商標)SDX-479(以上、旭電化(株)製)、ニューポールBP-23P、ニューポール(登録商標)BP-3P、ニューポール(登録商標)BP-5P、ニューポール(登録商標)BPE-20T、ニューポール(登録商標)BPE-60、ニューポール(登録商標)BPE-100、ニューポール(登録商標)BPE-180(以上三洋化成(株)製)、ユニオール(登録商標)DB-400、ユニオール(登録商標)DAB-800、ユニオール(登録商標)DA-350F、ユニオール(登録商標)DA-400、ユニオール(登録商標)DA-700(以上日油(株)製)、BA-P4Uグリコール、BA-P8グリコール(以上日本乳化剤(株)製)等が挙げられる。
【0107】
(D)成分をポジ型感光性樹脂組成物に含有する場合の含有量は、感光性樹脂組成物全体の量に対して、1質量%以上75質量%以下含まれることが好ましい。この含油量は、レジスト膜の柔軟性を確保する点から1質量%以上が好ましく、レジスト膜の光感度を確保する点から75質量%以下が好ましい。この含油量は、より好ましくは5質量%以上60質量%以下、更に好ましくは、10質量%以上50質量%以下、より更に好ましくは20質量%~40質量%である。
【0108】
その他の成分
ポジ型感光性樹脂組成物には、必要に応じて、塗布性、消泡性、レベリング性等を向上させる目的で界面活性剤を、基材等との接着性を向上させるために接着助剤を、アルカリ現像液に対する溶解性の微調整を行うために、酸又は高沸点溶媒を含有させてもよい。
さらに、ポジ型感光性樹脂組成物には、必要に応じて、増感剤、吸光剤(染料)、架橋剤、可塑剤、顔料、充填材、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤等の添加剤を含有させてもよい。これらの添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
<感光性樹脂組成物調合液>
本実施形態では、ネガ型又はポジ型感光性樹脂組成物に溶媒を添加することにより感光性樹脂組成物調合液が形成されることができる。ネガ型感光性樹脂組成物調合液に好適な溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)に代表されるケトン類、並びにメタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコール等のアルコール類等が挙げられる。感光性樹脂組成物調合液の粘度が25℃で500mPa・sec~4000mPa・secとなるように、溶媒を感光性樹脂組成物に添加することが好ましい。ポジ型感光性樹脂組成物調合液に好適な溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、オクタン、デカン、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、2‐メトキシ‐1‐メチルエチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の有機溶剤、又はこれらの混合溶剤が挙げられる。
【0110】
[支持フィルム]
支持フィルムは、露光光源から放射される光を透過する透明なものが好ましい。このような支持フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニリデン共重合フィルム、ポリメタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、スチレン共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、及びセルロース誘導体フィルム等が挙げられる。これらのフィルムとしては、必要に応じて、延伸されたもの又は離型処理されたものも使用可能である。中でも、支持フィルムとしては、上記で説明された露光工程などを実行するという観点から、PETフィルム、及び離型処理されたPETフィルムが好ましい。支持フィルムのヘーズは0.01%~5.0%のものが好ましく、0.01%~2.5%のものがより好ましく、0.01%~1.0%のものがさらに好ましい。支持フィルムの厚みは、薄い方が画像形成性及び経済性の面で有利であるが、強度を維持する必要から、10μm~30μmのものが好ましく用いられる。
【0111】
[カバーフィルム]
所望により、ドライフィルムレジストは、感光性樹脂組成物層を保護するためのカバーフィルム(1)を備えることができる。カバーフィルム(1)の重要な特性は、感光性樹脂組成物層との密着力について、支持フィルム(5)よりもカバーフィルム(1)の方が小さく、容易に剥離できることである。カバーフィルム(1)としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、ポリプロピレンフィルム等のフィルム、離形処理されたPETフィルム等が好ましい。カバーフィルムの膜厚は、10μm~100μmが好ましく、10μm~50μmがより好ましい。
【0112】
本実施形態では、感光性樹脂積層体における感光性樹脂組成物層の厚みは、好ましくは、5μm~100μm、より好ましくは、7μm~60μmである。感光性樹脂組成物層の厚みは、小さいほどレジストパターンの解像度は向上し、一方で、大きいほど硬化膜の強度が向上するので、用途に応じて選択されることができる。
【実施例
【0113】
以下の実施例及び比較例では、25℃における溶液粘度が500mPa・s以上4,000mPa・s以下の範囲に調整された感光性樹脂組成物を調製し、該感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂積層体を製造して、フレキシブル基材又はリジッド基材にラミネートを行い、支持フィルムを剥離した後に、新たにカバーフィルムをラミネートし、基板同士の積み重ねを行った。また、カバーフィルムと樹脂組成物層の粘着力を評価した。
【0114】
<実施例1>
1.感光性樹脂組成物の調製
(A)アルカリ可溶性高分子として、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体(重合比20/80(質量比)、酸当量430、重量平均分子量5万)47質量部、
(B)光重合開始剤として、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン0.1質量部及び2-(o―クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体3質量部、
(C)エチレン性二重結合を有する化合物として、ペンタエリストールの4つの末端に、平均15モルのエチレンオキサイドを付加したテトラアクリレート14質量部、並びに
(D)染料として、ダイアモンドグリーン0.05質量部及びロイコクリスタルバイオレット0.3質量部
を溶媒に溶解することにより、感光性樹脂組成物を調製した。
【0115】
2.感光性樹脂積層体の製造
支持フィルムである厚み16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、品名「FB40」)上に、上記で調製した感光性樹脂組成物をバーコーターを用いて均一に塗布した後、95℃に調温した乾燥機中で5分間加熱乾燥させて、支持フィルム上に厚み10μmの感光性樹脂組成物層を形成した。
次いで、上記感光性樹脂組成物層の支持フィルムと反対側の面上に、カバーフィルムである厚み33μmのポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製、品名「GF-858」)を貼付することにより、感光性エレメントを得た。
【0116】
<評価に使用した基板>
評価用基板としては、ITO及び厚さ5μm以下の薄膜銅がこの順に蒸着されたフレキシブル基板を用いた。
【0117】
<ラミネート>
前記基板上に、各実施例又は各比較例で得た感光性エレメントのポリエチレンフィルムを剥がしながら、ホットロールラミネーター(旭化成(株)製、AL-70)により、ロール温度105℃、エアー圧力0.35MPa、及びラミネート速度1.5m/minの条件下で感光性エレメントをラミネートして、ラミネート基材を得た。
【0118】
<露光>
上記ラミネート基材から支持フィルムを剥離し、支持フィルムが剥離された面に対して、クロムガラスマスクを用いて、プロジェクション露光機(ウシオ電機株式会社、UPL-03EX)により、i線露光を行った。
【0119】
<カバーフィルム形成>
上記露光後フレキシブル基材へ、低密度ポリエチレンフィルムをラミネートし、カバーフィルムを形成した。低密度ポリエチレンとしては、厚み33μmのポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製、品名「GF-858」)を使用した。ラミネートは、(旭化成(株)製、AL-700)により、ロール温度23℃、エアー圧力0.3MPa、及びラミネート速度2.0m/minの条件下で行った。尚、カバーフィルムの形成は、露光工程から15分以内に行った。
【0120】
<カバーフィルム形成感光性積層体の保管>
上記カバーフィルムを形成したフレキシブル基材上の感光性積層体を、3inchの樹脂製コアに3m分を手動で基材間の隙間が無いように巻き取り、23℃及び湿度50%の環境で24時間保管した。
【0121】
<現像>
上記の感光性積層体のパターン露光された部分からカバーフィルムを剥離した後、アルカリ現像機(フジ機工製、ドライフィルム用現像機)を用いて、30℃の1質量%NaCO水溶液を最小現像時間の2倍の時間スプレーして、感光性樹脂組成物層の未露光部分を溶解除去した。現像後、水洗処理を行うことによって、レジスト部と基材表面がむき出しとなった部分を有するパターン付き基材を得た。
上記最小現像時間とは、感光性樹脂組成物層の未露光部分が完全に溶解除去されるまでに要する最小の時間をいう。
【0122】
<実施例2>
(A)アルカリ可溶性高分子の使用量を47質量部に固定し、(C)エチレン性二重結合を有する化合物の使用量を変化させて、(A)アルカリ可溶性高分子の質量Wに対する(C)エチレン性二重結合を有する化合物の質量Wの割合(比W/W)を、それぞれ、表1に記載のとおりに変更した他は、実施例1の「1.感光性樹脂組成物の調製」と同様にして感光性樹脂組成物を調製し、この感光性樹脂組成物を使用して感光性積層体を製造して、評価した。
【0123】
<実施例3>
(A)アルカリ可溶性高分子の質量Wに対する(C)エチレン性二重結合を有する化合物の質量Wの割合(比W/W)を、それぞれ、表1に記載の感光性樹脂組成物において、カバーフィルムと感光性樹脂組成物層間の粘着力が5.1gf/inchとなるように感光性樹脂組成物を調整し、且つラミネートを210mm×180mm角の35μm厚み銅箔付き0.4mm厚み銅張り積層板へ行い、ラミネート後に実施例1と同じ方法で露光した後に、基板同士を積み重ねて保管し、その他は実施例1と同様にして評価した。
【0124】
<実施例4>
<ポジ型感光性樹脂組成物を用いた評価>
:クレゾールノボラック樹脂(重量平均分子量10,000、分子量分布約10、m体:p体=6:4、旭有機材(株)製、EP4020G(商品名))を75質量部、
:4,4’-(1-{4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル}エチリデン)ビスフェノールの6-ジアゾ-5,6-ジヒドロ-5-オキソ-1-ナフタレンスルホン酸モノ、ジ又はトリエステル(ダイトーケミックス(株)製PA-3(商品名))を15質量部、
:ポリパラヒドロキシスチレン(重量平均分子量20,000、ケミウェイ(株)製、マルカリンカーM H-2P(商品名))を10質量部、及び
溶剤として2‐メトキシ‐1‐メチルエチルアセテート、
を使用し、全体として、固形分比60質量部となるようにポジ型感光性樹脂組成物を調製した他は実施例1と同様にして評価した。
【0125】
<実施例5、6>
露光後のフレキシブル基材へ、離形処理されたPETフィルムをラミネートし、カバーフィルムを形成した他は、実施例5については実施例1と同様にして、実施例6については実施例4と同様にして、それぞれ評価した。離形処理されたPETフィルムとしては、ダイアホイルMRF38(三菱ケミカル株式会社製)を用いた。
【0126】
<実施例7>
カバーフィルム形成の際のラミネート時の温度を30℃とする他は、実施例2と同様の評価法を行った。
【0127】
<実施例8>
カバーフィルム形成の際のラミネート時の温度を30℃とする他は、実施例6と同様の評価法を行った。
【0128】
<実施例9>
カバーフィルム形成の際のラミネート時の温度を145℃とする他は、実施例5と同様の評価法を行った。
【0129】
<実施例10>
カバーフィルム形成の際のラミネート時の温度を145℃とする他は、実施例6と同様の評価法を行った。
【0130】
<実施例11>
カバーフィルム形成の際のラミネート時の温度を50℃とする他は、実施例10と同様の評価法を行った。
【0131】
<比較例1、2>
カバーフィルム形成がないことの他は実施例1、3と同様の評価法を行った。
【0132】
<比較例3>
比W/Wを表1の記載に従い変更した他は実施例1と同様の評価法を行った。
【0133】
<比較例4>
カバーフィルム形成に、離形処理されていないPETフィルムを用いること以外は、実施例10と同様の評価法を行った。
【0134】
<カバーフィルムと樹脂組成物層間の粘着力の評価>
カッターを用いて、カバーフィルが形成された上記感光性積層体を幅25mm、長さ80mmの矩形状にカットした。
試験には、テンシロン引張試験機((株)オリエンテック製、型式名「RTM500」)を用いた。カットされた感光性積層体を長手方向が鉛直方向になるように固定し、カバーフィルムの下方先端部を剥がしてテンシロン引張試験機のチャックで挟んだ。
そして、テンシロン引張試験機のチャックを100mm/分の引張速度で上方向に移動させて、支持フィルムを感光性樹脂組成物層から長さ方向に180°剥離したときの力(粘着力)を測定した。粘着力としては、剥離開始から剥離終了までの間に測定された力の最大値を採用した。
【0135】
<基材の積み重ね保管性の評価>
上記感光性積層体を巻き取り、保管した後に、3m分のフレキシブル基材を引き出した際に、その状態を以下の基準に従って評価した。
〇(良好):感光性樹脂組成物層同士が貼り付かない状態
×(不良):感光性樹脂組成物層同士が貼り付く状態
ラミネートされた基材がリジッドの場合は、210mm×180mm角のラミネート済み基材から支持フィルムを剥離し、カバーフィルム形成後に10枚積み重ね、フレキシブル基材と同様の方法で保管した後に、上下2枚を除いた8枚の基板を取り出した。取り出された基板の状態を以下の基準に従って評価した。
〇(良好):感光性樹脂組成物層同士が貼り付かない状態
×(不良):感光性樹脂組成物層同士が貼り付く状態
【0136】
<カバーフィルム形成性、カバーフィルム剥離性の評価>
カバーフィルム形成工程としてカバーフィルムをラミネートし、更に現像前にカバーフィルムを剥離した際に、目視観察を行い、以下の基準に従って評価した。
〇(良好):ラミネート時にカバーフィルムと感光性樹脂組成物層の間にエアーボイド又はシワが発生しない状態であり、且つカバーフィルムを剥離する際にカバーフィルム側に感光性樹脂組成物が付着しない状態
×(不良):カバーフィルムのラミネートの際にシワ又はエアーボイドが発生するか、かつ/又はカバーフィルム剥離の際にカバーフィルム側に感光性樹脂組成物の付着が見られる状態
【0137】
<カバーフィルム形成時の加熱による密着性評価>
ラミネート後15分経過した評価基板を、露光部4μm及び未露光部6μmの幅であるラインパターンを有するクロムガラスマスクを通して露光した。その後、最小現像時間の2倍の時間で現像し、硬化レジストラインが正常に形成されているか否かで、下記のようにランク分けした。
○(良好):露光部4μmのレジストラインが正常に形成されている。
×(不良):露光部4μmのレジストラインが倒れているか、蛇行しているか、又は基板上に存在しておらず、正常に形成されていない。
【0138】
【表1】
【符号の説明】
【0139】
1 カバーフィルム
2 カバーフィルム
3 芯基材
4 金属層
5 支持フィルム
6 感光性樹脂組成物層
7 露光部
101 剥離ロール
102 ラミネートロール
103 光源
104 レンズ
105 マスク
図1
図2
図3