(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】光モジュール及び光通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/69 20130101AFI20230724BHJP
H04B 10/572 20130101ALI20230724BHJP
【FI】
H04B10/69
H04B10/572
(21)【出願番号】P 2019072875
(22)【出願日】2019-04-05
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光希
(72)【発明者】
【氏名】古川 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】村上 恵一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓弥
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0301496(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0241727(US,A1)
【文献】特表2018-520561(JP,A)
【文献】特表2007-533275(JP,A)
【文献】国際公開第2006/008786(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1周波数、または、前記第1周波数よりも高い第2周波数で強度変化する光信号を受信し、該光信号の強度に対応する電流信号に変換する光電変換器と、
前記第1周波数で強度変化する光信号に係る前記電流信号に含まれる複数の信号強度の比率に基づいて、送信側で設定された波長情報を取得する信号処理部と、
前記第2周波数で強度変化する光信号に係る前記電流信号から通信データを生成する復号部と、
を有する光モジュール。
【請求項2】
前記信号処理部により取得される前記波長情報に基づいて、該波長情報に対応する波長の光信号を送信する光送信器をさらに有する請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記第1周波数で強度変化する光信号に係る前記電流信号は、少なくとも3値の信号強度を含み、
前記信号処理部は、前記3値の信号強度の強度比率に応じて、前記波長情報を取得する、
請求項1または2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記信号強度の比率に基づいて前記波長情報が取得された場合に、前記第2周波数で強度変化する光信号に係る前記電流信号から通信データの抽出を開始する、
請求項1~3のいずれかに記載の光モジュール。
【請求項5】
前記第1周波数は、1~250Hzである、
請求項1~4のいずれかに記載の光モジュール。
【請求項6】
前記第2周波数は、1GHz以上である、
請求項1~5のいずれかに記載の光モジュール。
【請求項7】
第1光モジュール及び第2光モジュールを有する光通信システムであって、
第1光モジュールは、
第1周波数、または、前記第1周波数よりも高い第2周波数で強度変化する光信号を受信し、該光信号の強度に対応する電流信号に変換する光電変換器と、
前記第1周波数で強度変化する光信号に係る前記電流信号に含まれる複数の信号強度の比率に基づいて、送信側で設定された波長情報を取得する第1信号処理部と、
前記第1信号処理部により取得される前記波長情報に基づいて、該波長情報に対応する波長の光信号を送信する第1光送信器と、を有し、
前記第2光モジュールは、
受信した光信号の強度変化を示す電流信号を出力する第2光電変換器と、
前記第1周波数、または、前記第2周波数で強度変化する光信号を送信する第2光送信器と、
前記第2光送信器に対して、前記第2光電変換器が前記光信号を受信する前の状態では、前記第1周波数で波長情報を含む前記光信号を該波長情報により示される波長で送信させるとともに、前記波長情報に対応する波長の光信号のみを通過させる経路を経由して前記第2光電変換器が光信号を受信した場合に、前記波長情報を含む光信号の送信を停止させ、前記波長情報により示される波長を有し、前記第2周波数で通信データを含む光信号を送信させる第2信号処理部と、を有する、
光通信システム。
【請求項8】
それぞれ異なる波長の光信号が入力される複数の入力端子と、それぞれ異なる波長を有する複数の光信号が合波された光多重信号が出力される出力端子と、を含む合波器と、
前記光多重信号が入力される入力端子と、前記光多重信号に含まれる、それぞれ異なる波長の光信号が出力される複数の出力端子と、を含む分波器と、をさらに有し、
前記第1光モジュールの前記第1光送信器は、前記合波器に含まれる前記複数の入力端子の1つに結合され、
前記第2光モジュールの前記第2光電変換器は、前記分波器に含まれる前記複数の出力端子の1つに結合される、
請求項
7に記載の光通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュール及び光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
送信側の光モジュールと受信側の光モジュールとの間で、光ファイバを経由してデータ通信が行われる光通信システムが構築されている。従来、通信に使用される波長ごとに、当該波長に対応する光モジュールが用いられていた。しかし、波長ごとに対応した光モジュールを用意することはコストがかかり、不便である。
【0003】
そこで、近年、波長を変更できる波長可変光源を有することによって、送信する光の波長を変更できる光モジュールが実用化されている。送信する光の波長を変更できる光モジュールが使用される場合、当該光モジュールには予め使用する波長が設定される。
【0004】
光モジュールに予め使用する波長を設定する場合、予めユーザが波長を設定する作業や確認作業を行う必要がある。当該作業には一定の時間を要するため、利便性が良くなくコストもかかってしまう。また、ユーザが手動で波長を設定する場合、通信に使用される波長と異なる波長が誤って設定されるおそれがある。この場合、通信を行うことができず、大きな問題となる。
【0005】
そこで、当該光モジュールに対して、自動的に波長が設定される方法が知られている。例えば、特許文献1は、信号のパターンを光信号に重畳することにより、当該信号パターンに基づいて所与の波長を設定する方法が開示されている。また、特許文献2は、波長可変光源を用いて、通常のデータ信号とは異なる低周波の信号を光信号に重畳し、当該低周波の信号に基づいて所与の波長を設定する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-15328号公報
【文献】米国特許出願公開第2017/155464号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1には、WDM(Wavelength Division Multiplexing)装置を利用した波長の自動設定方法が開示されている。しかし、特許文献1では、光信号に信号パターンを重畳するため、及び、信号パターンを認識するために、WDM装置に機能を追加する必要がある。当該機能を追加するためにコストを要する。
【0008】
また、特許文献2では、通常のデータ信号とは異なる低周波の信号が用いられるが、低周波信号が1kHz程度の場合、低周波信号を認識するための回路を追加する必要があるためコストを要する。また、低周波信号が10Hz程度である場合には、波長の設定に長い時間を要する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係る光モジュールによれば、第1周波数、または、前記第1周波数よりも高い第2周波数で強度変化する光信号を受信し、該光信号の強度に対応する電流信号に変換する光電変換器と、前記第1周波数で強度変化する光信号に係る前記電流信号に含まれる複数の信号強度の比率に基づいて、送信側で設定された波長情報を取得する信号処理部と、前記第2周波数で強度変化する光信号に係る前記電流信号から通信データを生成する復号部と、を有する。
【0010】
また、本発明の他の一側面に係る光モジュールによれば、前記信号処理部により取得される前記波長情報に基づいて、該波長情報に対応する波長の光信号を送信する光送信器をさらに有する。
【0011】
また、本発明の他の一側面に係る光モジュールによれば、前記第1周波数で強度変化する光信号に係る前記電流信号は、少なくとも3値の信号強度を含み、前記信号処理部は、前記3値の信号強度の強度比率に応じて、前記波長情報を取得する。
【0012】
また、本発明の他の一側面に係る光モジュールによれば、前記信号強度の比率に基づいて前記波長情報が取得された場合に、前記第2周波数で強度変化する光信号に係る前記電流信号から通信データの抽出を開始する。
【0013】
また、本発明の他の一側面に係る光モジュールによれば、前記第1周波数は、1~250Hzである。
【0014】
また、本発明の他の一側面に係る光モジュールによれば、前記第2周波数は、1GHz以上である。
【0015】
また、本発明の他の一側面に係る光モジュールによれば、受信した光信号の強度に対応する電流信号を出力する光電変換器と、第1周波数、または、前記第1周波数よりも高い第2周波数で強度変化する光信号を送信する光送信器と、前記光送信器に対して、前記光電変換器が前記光信号を受信する前の状態では、前記第1周波数で波長情報を含む前記光信号を該波長情報により示される波長で送信させるとともに、前記波長情報に対応する波長の光信号のみを通過させる経路を経由して前記光電変換器が光信号を受信した場合に、前記波長情報を含む光信号の送信を停止させ、前記波長情報により示される波長を有し、前記第2周波数で通信データを含む光信号を送信させる信号処理部と、を有する。
【0016】
また、本発明の他の一側面に係る光モジュールによれば、前記第1周波数で強度変化する光信号に係る前記電流信号に含まれる複数の信号強度の比率と、前記波長情報と、を関連づけて記憶する記憶部をさらに有し、前記信号処理部は、前記光電変換器が前記光信号を受信する前の状態では、前記光送信器に対して、前記強度比率に従って前記光信号を送信させる。
【0017】
また、本発明の他の一側面に係る光モジュールによれば、前記光電変換器が光信号を受信しない場合に、前記信号処理部は、前記光送信器に対して、順次、前記第2周波数で他の波長の波長情報を含む前記光信号を当該他の波長で送信させる。
【0018】
本発明の一側面に係る光通信システムは、第1光モジュール及び第2光モジュールを有する光通信システムであって、第1光モジュールは、第1周波数、または、前記第1周波数よりも高い第2周波数で強度変化する光信号を受信し、該光信号の強度に対応する電流信号に変換する光電変換器と、前記第1周波数で強度変化する光信号に係る前記電流信号に含まれる複数の信号強度の比率に基づいて、送信側で設定された波長情報を取得する第1信号処理部と、前記第1信号処理部により取得される前記波長情報に基づいて、該波長情報に対応する波長の光信号を送信する第1光送信器と、を有し、前記第2光モジュールは、受信した光信号の強度変化を示す電流信号を出力する第2光電変換器と、前記第1周波数、または、前記第2周波数で強度変化する光信号を送信する第2光送信器と、前記第2光送信器に対して、前記第2光電変換器が前記光信号を受信する前の状態では、前記第1周波数で波長情報を含む前記光信号を該波長情報により示される波長で送信させるとともに、前記波長情報に対応する波長の光信号のみを通過させる経路を経由して前記第2光電変換器が光信号を受信した場合に、前記波長情報を含む光信号の送信を停止させ、前記波長情報により示される波長を有し、前記第2周波数で通信データを含む光信号を送信させる第2信号処理部と、を有する。
【0019】
また、本発明の他の一側面に係る光通信システムによれば、それぞれ異なる波長の光信号が入力される複数の入力端子と、それぞれ異なる波長を有する複数の光信号が合波された光多重信号が出力される出力端子と、を含む合波器と、前記光多重信号が入力される入力端子と、前記光多重信号に含まれる、それぞれ異なる波長の光信号が出力される複数の出力端子と、を含む分波器と、をさらに有し、前記第1光モジュールの前記第1光送信器は、前記合波器に含まれる前記複数の入力端子の1つに結合され、前記第2光モジュールの前記第2光電変換器は、前記分波器に含まれる前記複数の出力端子の1つに結合される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、波長の設定に要する時間が短く、低コストの光モジュール及び光通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】光モジュールの構成を示すブロック図である。
【
図4】強度比率と波長との関係を示すテーブルである。
【
図5】第1実施形態に係る第2光モジュールの動作を示すフローチャート例である。
【
図6】第1実施形態に係る第1光モジュールの動作を示すフローチャート例である。
【
図7】第2実施形態に係る第2光モジュールの動作を示すフローチャート例である。
【
図8】第2実施形態に係る第1光モジュールの動作を示すフローチャート例である。
【
図9】第1及び第2光モジュールが送信する光信号の波長の組み合わせを示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
図1は光通信システム100の構成例である。光通信システム100は、ユーザ側システム120と、センタ側システム140と、ユーザ側システム120とセンタ側システム140とを接続する2本の通信経路と、を有する。ユーザ側システム120は、第1合波器122と、第1分波器124と、第1光モジュール126A,126B,126Cと、通信経路と、を有する。センタ側システム140は、第2合波器142と、第2分波器144と、第2光モジュール146A,146B,146Cと、通信経路と、を有する。ユーザ側システム120及びセンタ側システム140は、例えば、WDMシステムである。
【0024】
第1分波器124及び第2分波器144は、光多重信号が入力される入力端子と、光多重信号に含まれる、それぞれ異なる波長の光信号が出力される複数の出力端子と、をそれぞれ含む。各出力端子を通過できる波長は予め決まっている。具体的には、第1分波器124は、波長がλAの光を通過させる出力端子Aと、波長がλBの光を通過させる出力端子Bと、波長がλCの光を通過させる出力端子Cと、光多重信号が入力される入力端子Dと、を有する。第2分波器144は、波長がλA’の光を通過させる出力端子Aと、波長がλB’の光を通過させる出力端子Bと、波長がλC’の光を通過させる出力端子Cと、光多重信号が入力される入力端子Dと、を有する。
【0025】
第1合波器122及び第2合波器142は、それぞれ異なる波長の光信号が入力される複数の入力端子と、それぞれ異なる波長を有する複数の光信号が合波された光多重信号が出力される出力端子と、をそれぞれ含む。各入力端子を通過できる波長は予め決まっている。具体的には、例えば、第1合波器122は、波長がλA’の光を通過させる入力端子Aと、波長がλB’の光を通過させる入力端子Bと、波長がλCの’光を通過させる入力端子Cと、光多重信号が出力される出力端子Dと、を有する。また、第2合波器142は、波長がλAの光を通過させる入力端子Aと、波長がλBの光を通過させる入力端子Bと、波長がλCの光を通過させる入力端子Cと、光多重信号が出力される出力端子Dと、を有する。
【0026】
第1分波器124と第2合波器142は、通信経路で接続される。具体的には、第2合波器142の出力端子Dと第1分波器124の入力端子Dは、光ファイバケーブルで接続される。第2合波器142で合波された光多重信号は、光ファイバケーブルを経由して第1分波器124に送信される。
【0027】
同様に、第1合波器122と第2分波器144は、通信経路で接続される。具体的には、第1合波器122の出力端子Dと第2分波器144の入力端子Dは、光ファイバケーブルで接続される。第1合波器122で合波された光多重信号は、光ファイバケーブルを経由して第2分波器144に送信される。
【0028】
第1光モジュール126及び第2光モジュール146は、それぞれ光送信器と光電変換器とを含む。なお、以下において、光送信器及び光電変換器が第1光モジュール126に含まれることを明示する場合、第1光送信器128及び第1光電変換器130と記載する。また、光送信器及び光電変換器が第2光モジュール146に含まれることを明示する場合、第2光送信器148及び第2光電変換器150と記載する。なお、第1光モジュール126及び第2光モジュール146に含まれる上記以外の構成については後述する。
【0029】
第1光モジュール126の第1光送信器128は、第1合波器122に含まれる複数の入力端子の1つに結合される。具体的には、例えば、第1光送信器128Aは、第1合波器122の入力端子Aと光ファイバケーブルを介して接続される。第1光送信器128Bは、第1合波器122の入力端子Bと光ファイバケーブルを介して接続される。第1光送信器128Cは、第1合波器122の入力端子Cと光ファイバケーブルを介して接続される。
【0030】
第1光モジュール126の第1光電変換器130は、第1分波器124に含まれる複数の出力端子の1つに結合される。具体的には、第1光電変換器130Aは、第1分波器124の出力端子Aと光ファイバケーブルを介して接続される。第1光電変換器130Bは、第1分波器124の出力端子Bと光ファイバケーブルを介して接続される。第1光電変換器130Cは、第1分波器124の出力端子Cと光ファイバケーブルを介して接続される。
【0031】
第2光モジュール146の第2光送信器148は、第2合波器142に含まれる複数の入力端子の1つに結合される。具体的には、例えば、第2光送信器148Aは、第2合波器142の入力端子Aと光ファイバケーブルを介して接続される。第2光送信器148Bは、第2合波器142の入力端子Bと光ファイバケーブルを介して接続される。第2光送信器148Cは、第2合波器142の入力端子Cと光ファイバケーブルを介して接続される。
【0032】
第2光モジュール146の第2光電変換器150は、第2分波器144に含まれる複数の出力端子の1つに結合される。具体的には、第2光電変換器150Aは、第2分波器144の出力端子Aと光ファイバケーブルを介して接続される。第2光電変換器150Bは、第2分波器144の出力端子Bと光ファイバケーブルを介して接続される。第2光電変換器150Cは、第2分波器144の出力端子Cと光ファイバケーブルを介して接続される。
【0033】
上記光通信システム100において、通常のデータ通信が行われる際の光信号の流れについて説明する。以下、通常のデータ通信が行われる状態を通常動作モードとする。また、通信が確立されておらず、光送信器が送信する波長を設定している途中の状態を波長設定モードとする。
【0034】
まず、第2光モジュール146A,146B,146Cに含まれる第2光送信器148A,148B,148Cは、波長がλA,λB,λCの光信号を送信する。波長がλA,λB,λCの光信号は、光ファイバケーブルを介して第2合波器142の入力端子A,B,Cを介して第2合波器142に入力される。波長がλA,λB,λCの光信号は、第2合波器142において合波されて光多重信号となる。当該多重光信号は、第2合波器142の出力端子D、光ファイバケーブル及び第1分波器124の入力端子Dを経由して第1分波器124に入力される。光多重信号は、第1分波器124によって分波され、波長がλA,λB,λCの光信号に分波される。
【0035】
分波された波長がλAである光信号は、第1分波器124の出力端子Aと、光ファイバケーブルを経由して第1光モジュール126Aの第1光電変換器130Aに入力される。分波された波長がλBである光信号は、第1分波器124の出力端子Bと、光ファイバケーブルを経由して第1光モジュール126Bの第1光電変換器130Bに入力される。分波された波長がλCである光信号は、第1分波器124の出力端子Cと、光ファイバケーブルを経由して第1光モジュール126Cの第1光電変換器130Cに入力される。
【0036】
同様に、第1光モジュール126A,126B,126Cに含まれる第1光送信器128A,128B,128Cは、波長がλA’,λB’,λC’の光信号を送信する。波長がλA’,λB’,λC’の光信号は、光ファイバケーブルを介して第1合波器122の入力端子A,B,Cを介して第1合波器122に入力される。波長がλA’,λB’,λC’の光信号は、第1合波器122において合波されて光多重信号となる。当該多重光信号は、第1合波器122の出力端子D、光ファイバケーブル及び第2分波器144の入力端子Dを経由して第2分波器144に入力される。光多重信号は、第2分波器144によって分波され、波長がλA’,λB’,λC’の光信号に分波される。
【0037】
分波された波長がλA’である光信号は、第2分波器144の出力端子Aと、光ファイバケーブルを経由して第2光モジュール146Aの第2光電変換器150Aに入力される。分波された波長がλB’である光信号は、第2分波器144の出力端子Bと、光ファイバケーブルを経由して第2光モジュール146Bの第2光電変換器150Bに入力される。分波された波長がλC’である光信号は、第2分波器144の出力端子Cと、光ファイバケーブルを経由して第2光モジュール146Cの第2光電変換器150Cに入力される。
【0038】
上記のように、各波長の光信号は、それぞれ当該波長を通過させる入力端子または出力端子を経由して、合波または分波されて、ユーザ側システム120とセンタ側システム140の間で送受信される。これにより光通信によるデータ通信が行われる。
【0039】
図2は、本願発明に係る第1光モジュール126及び第2光モジュール146の構成を示すブロック図である。第1光モジュール126及び第2光モジュール146は、それぞれ、光電変換器130,150と、電流電圧変換器202と、AD変換器204と、信号処理部206,208と、光送信器128,148と、復号部210と、を有する。なお、以下において、各構成が、第1光モジュール126に含まれることを明示する場合、当該構成に第1を付して記載する。同様に、各構成が、第2光モジュール146に含まれることを明示する場合、当該構成に第2を付して記載する。
【0040】
光電変換器130,150は、第1周波数、または、第1周波数よりも高い第2周波数で強度変化する光信号を受信し、該光信号の強度に対応する電流信号に変換する。具体的には、例えば、光電変換器130,150は、フォトダイオード等の受光素子を含む。光電変換器130,150は、光ファイバケーブルを経由して入力された光信号の強度に応じた電流を出力する。光電変換器130,150は、データ通信を開始する前の状態(すなわち、波長設定モード)では、第1周波数で強度変化する光信号を受信する。一方、光電変換器130,150は、データ通信時(すなわち通常動作モード)には第1周波数よりも高い第2周波数で強度変化する光信号を受信する。ここで、第1周波数は、例えば、1~250Hzである。また、第2周波数は、例えば、1GHz以上である。
【0041】
光電変換器130で光信号より変換された電流信号は、二つのラインにそれぞれ伝達される。一つが電流電圧変換器202につながるライン、そしてもう一つが複合機210につながるラインである。通常動作モードにおいては、通信用の第2周波数の光信号が光電変換器130,150に入力されて、通信用の電流信号に変換される。その通信用の電流信号は、復号器210によって信号として認識され、通信が行われる。この際、同時に電流電圧変換器202側にも同様の通信用の電流信号が入力されている。この電流信号は、AD変換器204、そして受信光強度算出部212へと伝達される。受信光強度算出部212では、AD変換器204にて電圧に変換された電圧信号の平均電圧を算出し、入力されている光信号の平均光強度を算出する。この算出された平均光強度はホスト装置側などから読み取ることが可能で、通信状態のモニタなどに使われている。対して波長設定モードにおいては、第1周波数の光信号が光電変換器130に入力され電流信号へと変換される。この電流信号もAD変換器204と復号器210に伝達される。この際、復号器210は通常通信モードとなっていないために、入力された電流信号を通信用の電流信号とは認識せず無視をする。一方、AD変換器204に入力された電流信号に基づいて、信号処理部206にて後述する手順を経て波長が設定される。
【0042】
電流電圧変換器202は、電流信号を電圧信号に変換する。具体的には、例えば、電流電圧変換器202は、IVコンバータであって、光電変換器130,150が出力した電流信号を、電流信号の大きさと対応する大きさの電圧信号に変換する。
【0043】
AD変換器204は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。具体的には、例えば、AD変換器204は、電流電圧変換器202が出力したアナログ信号である電圧信号を取得する。そして、AD変換器204は、取得した信号を、信号処理部206,208や復号部210が認識できるように、デジタル信号である電圧信号に変換する。
【0044】
信号処理部206は、受信光強度算出部212と、受信光波長算出部214と、記憶部216と、送信波長設定部218と、出力光強度設定部220と、を含む。信号処理部206は、例えばマイクロコンピュータである。
【0045】
受信光強度算出部212及び受信光波長算出部214は、波長設定モードでは、第1周波数で強度変化する光信号に係る電流信号に含まれる複数の信号強度の比率に基づいて、送信側で設定された波長情報を取得する。
【0046】
具体的には、例えば、光電変換器130,150は、第1周波数で強度変化する光信号を受信した場合、第1周波数で強度変化する電流信号を出力する。当該電流信号は、電流電圧変換器202及びAD変換器204を経由して、デジタル信号である電圧信号に変換される。当該信号は、少なくとも2値の電圧値を含み、第1周波数で強度変化する信号である。また、電圧信号の電圧値は、受信された光信号の信号強度と対応する。
【0047】
受信光強度算出部212は、信号強度の比率を算出する。具体的には、例えば、まず、受信光強度算出部212は、所定の期間、電圧信号をサンプリングする。当該所定の期間は、第1周波数で強度変化する光信号の1周期分のデータが複数回サンプリングされる期間である。
【0048】
次に、受信光強度算出部212は、1度のサンプリングで取得した電圧信号に含まれる電圧値の比率を算出する。例えば、電圧信号に含まれる少なくとも2値の電圧値と対応する信号強度は、2dBm間隔で設定され-2dBm~-20dBmの間のいずれかの値である。2値の電圧値が-20dBmと-10dBmと対応する場合、受信光強度算出部212は、50%という比率を算出する。
【0049】
また、受信光強度算出部212は、通常動作モードでは、光信号の平均強度を算出する。具体的には、例えば、通常動作モードでは、光電変換器130,150には、第2周波数で強度変化する高周波な光信号が入力される。この場合、受信光強度算出部212は、AD変換器204が出力した高周波の電圧信号の平均強度を出力する。当該平均強度は、例えば、第1光モジュール126及び第2光モジュール146の状態を監視するために用いられる。
【0050】
図3(a)は、電圧信号の一例を示す図である。
図3(a)に示すように、電圧信号は、X1とX2の2値の電圧値を含む。受信光強度算出部212は、当該X1とX2の2値の電圧値の比率を算出する。
図3(a)の例では、X1が-10dBmに対応する電圧値であり、X2が-20dBmに対応する電圧値である。従って、受信光強度算出部212は、50%という値を算出する。
【0051】
受信光波長算出部214は、受信光強度算出部212が算出した比率に基づいて波長を算出する。具体的には、受信光波長算出部214は、記憶部216が記憶するテーブルを参照して、比率と対応する波長を算出する。
【0052】
記憶部216は、第1周波数で強度変化する光信号に係る電流信号に含まれる複数の信号強度の比率と、波長情報と、を関連づけて記憶する。具体的には、例えば、記憶部216は、
図4に示すようなテーブルを記憶する。受信光波長算出部214は、
図4に示すテーブルを参照して、50%という比率と対応するλA’という波長を算出する。これにより、第1信号処理部206は、第1周波数で強度変化する光信号に基づいて、送信側で設定された波長情報を取得する。
【0053】
なお、第1周波数で強度変化する光信号に係る電流信号に含まれる複数の信号強度は、3値であってもよい。例えば、
図3(b)及び
図3(c)は、電圧信号の他の一例を示す図である。
図3(b)及び
図3(c)に示すように、電圧信号は、X1、X2及びX3の3値の電圧値を含む。この場合、記憶部216は、X1とX2の比率と、X1とX3の比率と、波長情報と、を関連づけて記憶する。
【0054】
例えば、
図3(b)に示すように、X1が-4dBmであり、X2が-10dBmであり、X3が-20Bmである場合、受信光強度算出部212は、50%という比率と、20%という比率を算出する。そして、受信光波長算出部214は、記憶部が記憶するテーブルを参照し、X1とX2の比率が50%であり、X1とX3の比率が20%である場合と関連付けられた波長情報を算出する。
【0055】
また、例えば、
図3(c)に示すように、X1が-4dBmであり、X2が-10dBmであり、X3が-20dBmである場合、受信光強度算出部212は、20%という比率と、50%という比率を算出する。そして、受信光波長算出部214は、記憶部が記憶するテーブルを参照し、X1とX2の比率が20%であり、X1とX3の比率が50%である場合と関連付けられた波長情報を算出する。
【0056】
なお、波長情報は、X2とX3の電圧値が現れる順序によらずに設定されてもよい。例えば、
図3(b)と
図3(c)は、X2という電圧値と、X3という電圧値が現れる順序が異なるが、電圧値に含まれる3個の電圧値がX1とX2とX3である点は同じである。そのため、受信光強度算出部212は、最も大きい電圧値と2番目に大きい電圧値との比率と、最も大きい電圧値と3番目に大きい電圧値との比率と、を算出してもよい。上記の場合、受信光強度算出部212は、50%という比率と、20%という比率を算出する。受信光波長算出部214は、記憶部が記憶するテーブルを参照し、最も大きい電圧値と2番目に大きい電圧値との比率が50%であり、最も大きい電圧値と3番目に大きい電圧値との比率が20%である場合と関連付けられた波長情報を算出してもよい。
【0057】
なお、WDMにおける通信システムにおいては使用される波長が規定されているが、実際に運用するシステムにより使われる波長数は異なる。波長数が少ない場合、例えば30Ch以下などであれば波長ごとの信号強度間隔は1dBmとして設定することが可能となり、十分に強度比率の違いを認識することが可能となる。しかし、より多くの波長数が必要な場合などは、信号強度間隔が小さくなり、通信時の強度変動などの影響により波長の認識で不具合が発生する恐れがある。この場合などは、
図3(b)(c)で示したような3値を用いた方式を採用することで、確実に波長設定を行うことができる。
【0058】
ここで、信号処理部206,208の内部クロック周波数は、第1周波数よりも高く第2周波数よりも低い周波数であることが一般的である。具体的には、例えば、100kHzである。そのため、通常動作モードにおいて、第2周波数で強度変化する光信号が受信された場合、信号処理部206,208は、光信号に係る電流信号から通信データを生成することは困難であるため、光信号の平均強度を取得する。一方、第1周波数で強度変化する光信号が受信された場合は厳密な同期を必要としない。そのため、波長設定モードでは、信号処理部206,208は、電圧値の検出が可能である。従って、通信が確立されていいない波長設定モードの状態であっても、信号処理部206,208は、第1周波数で強度変化する光信号に基づいて波長情報を取得することが可能である。
【0059】
送信波長設定部218は、波長可変光源222に対して、出力する光の波長を制御する。具体的には、例えば、送信波長設定部218は、受信光波長算出部214が算出した波長の光を出力するように波長可変光源222を制御する。
【0060】
出力光強度設定部220は、光電変換器130,150が光信号を受信していないとき、第1周波数で強度変化するように増幅器224の動作を制御する。具体的には、例えば、出力光強度設定部220は、波長設定モード時に、増幅器224のゲインが第1周波数で変化するように制御する。また、出力光強度設定部220は、増幅器224のゲインが上記比率に応じて変化するように制御する。上記例では、出力光強度設定部220は、増幅後の強度であるX1とX2の比率が50%になるように増幅器224を制御する。これにより、光電変換器130,150が光信号を受信する前の状態では、出力光強度設定部220は、光送信器128,148に対して、信号処理部206,208により取得される波長情報に基づいて、該波長情報に対応する波長の光信号を送信させる。なお、波長設定モード時は波長可変光源222の出力強度は一定値とし、変調器226は変調していない状態としておくことが望ましい。ただし、光強度比の認識に影響を与えないような変調情報であれば重畳しても構わない。
【0061】
光送信器128,148は、第1周波数、または、第1周波数よりも高い第2周波数で強度変化する光信号を送信する。また、光送信器128,148は、信号処理部218により取得される波長情報に基づいて、該波長情報が表す波長の光信号を送信する。光送信器128,148は、波長可変光源222と、増幅器224と、変調器226と、を含む。
【0062】
波長可変光源222は、例えば、波長可変レーザである。波長可変光源222は、送信波長設定部218の制御により指定された任意の波長の光を出力する。
【0063】
増幅器224は、波長可変光源222が出力した光を増幅する。増幅器224は、例えばSOA(semiconductor Optical Amplifier)である。増幅器224は、出力光強度設定部220の制御により、上記のように、波長可変光源222が出力した光を増幅する。
【0064】
変調器226は、増幅器224が出力した光を、変調信号に変換する。変調器226は、例えば、MZ変調器やEA変調器である。変調器226は、通信データ入力に基づいて、増幅器224から出力された連続光を第2周波数に変調された光信号に変換し、外部の光ファイバケーブルへ出力する。
【0065】
復号部210は、第2周波数で強度変化する光信号に係る電流信号から通信データを生成する。具体的には、例えば、復号部210は、CDR(Clock Data Recovery)であって、データにクロックが重畳されている電圧信号を受信し、クロックと通信データを分離する。復号部210は、第1周波数で強度変化する光信号に基づいて波長情報が取得されるまでは(すなわち波長設定モードでは)動作を停止する。一方、第1周波数で強度変化する光信号に基づいて波長情報が取得されて通常動作モードに移行した場合、復号部210は、電流信号から通信データの生成を開始する。電流信号からの復号においては復号器206内に内蔵されたAD変換器、CDRなどにて行われる。
【0066】
なお、復号部210は、省略されてもよい。また、光電変換器130,150に接続される復号部210と、光送信器128,148に接続される復号部210と、をそれぞれ個別に設けてもよい。
【0067】
次に、第1光モジュール126Aの第1光送信器128Aが出力する光信号の波長をλA’に設定するフローを説明する。
図5は第2光モジュール146Aの動作を説明するフローチャートである。
図6は第1光モジュール126Aの動作を説明するフローチャートである。
【0068】
初期状態として、第2合波器142の入力端子Aに接続された第2光モジュール146Aは、入力端子Aを通過できるλAの光信号を送信可能な状態である。また、第2周波数で強度変化する光信号によるデータ通信が開始される前の状態(波長設定モード)である。
【0069】
まず、第2光モジュール146Aの送信波長設定部218は、第2光モジュール146Aの波長可変光源222が出力する光の波長をλAに設定する。そして、第2光モジュール146Aの第2光送信器148Aは、波長λAの光信号を出力する(S502)ここで、第2光モジュール146Aの波長可変光源222が出力する光の強度は一定である。
【0070】
次に、第1光モジュール126Aと第2光モジュール146Aの間で通信が確立されていれば、第2光電変換器150Aは、光信号を受信するが、初期状態では通信が確立されていない。そのため、第2光電変換器150Aは、光信号を受信しない(S504)。
【0071】
次に、第2光モジュール146Aの第2信号処理部208は、送信される光信号が所望の波長情報を表すように、出力光強度設定部220を制御する(S506)。ここで、所望の波長は、第1光モジュール126Aの第1光送信器128Aが送信する波長であるλA’である。これにより、第2光モジュール146Aの第2光送信器148Aは、例えば
図3(a)に示す光信号を送信する。送信された光信号は、光ファイバケーブルを介して、第2合波器142の入力端子Aに入力される。入力された光信号は、第2合波器142で合波されて光多重信号となった後、第2合波器142の出力端子Dから出力される。
【0072】
光多重信号は、光ファイバケーブルを経由して、第1分波器124の入力端子Dを介して、第1分波器124に入力される。光多重信号は、第1分波器124に分波され、波長λAの光信号が分波される。そして、分波された波長λAの光信号は、第1分波器124の出力端子Aと光ファイバケーブルを介して第1光モジュール126Aの第1光電変換器130Aに入力される(S602)。
【0073】
第1光モジュール126Aの第1光電変換器130Aが波長λAの光信号を受信すると、第1光モジュール126Aの第1信号処理部206は、当該光信号に含まれる波長情報に基づいて設定すべき波長を算出する(S604)。具体的には、S506の波長情報と、記憶部216が記憶するテーブルに基づいて、設定すべき波長として波長λA’を算出する。
【0074】
次に、第1光モジュール126Aは、第1光送信器128Aが送信する光信号の波長を設定し、波長λA’の光信号を送信する(S606)。具体的には、第1光モジュール126Aの第1信号処理部206Aは、算出されたλA’という波長を出力するように波長可変光源222を制御する。そして、第1光モジュール126Aの第1光送信器128Aは、波長がλA’である光信号を送信する。なお、当該光信号には、波長情報は重畳されない。
【0075】
送信された光信号は、光ファイバケーブルを介して、第1合波器122の入力端子Aに入力される。入力された光信号は、第1合波器122で合波されて光多重信号となった後、第1合波器122の出力端子Dから出力される。光多重信号は、光ファイバケーブルを経由して、第2分波器144の入力端子Dを介して、第2分波器144に入力される。光多重信号は、第2分波器144に分波され、波長λA’の光信号が分波される。そして、分波された波長λA’の光信号は、第2分波器144の出力端子Aと光ファイバケーブルを介して第2光モジュール146Aの第2光電変換器150Aに入力される(S508)。
【0076】
第2光モジュール146Aの第2光電変換器150Aが光信号を受信すると、第2光モジュール146Aの第2信号処理部208は、第2光送信器148Aに対して波長情報を含む光信号の送信を停止させる(S510)。その後、第2光送信器148Aは、波長λAの任意の光信号を送信する。すなわち、光通信システムは通常動作モードに移行し、第1光モジュール126Aと第2光モジュール146Aとの間で通信を開始する(S512)。
【0077】
以上のステップにより、第2信号処理部208は、第2光送信器148に対して、第2光電変換器150が光信号を受信する前の状態では、第1周波数で波長情報を含む光信号を該波長情報により示される波長で送信させる。さらに、第2信号処理部208は、波長情報に対応する波長の光信号のみを通過させる経路を経由して第2光電変換器150が光信号を受信した場合に、波長情報を含む光信号の送信を停止させ、波長情報により示される波長を有し、第2周波数で通信データを含む光信号を送信させる。
【0078】
このように、第1光モジュール126Aが送信する光信号の波長を予め決められた波長であるλA’に設定しないで、第1光モジュール126を設置することができる。従って、初期の波長設定にかかる時間の短縮と波長設定作業にかかる費用の削減ができる。
【0079】
また、誤った波長が設定された第1光モジュール126を設置して通信不能となることを防止することができる。
【0080】
また、同様の設定が第1光モジュール126B及び第1光モジュール126Cにも実施されることで、光通信システム100に含まれる全ての第1光モジュール126について、自動的に送信する波長を設定することができる。すなわち、ユーザ側システム120を構成するすべての第1光モジュール126について、予め波長を設定しておく必要がなく、波長設定(光通信システム100の構築)にかかる作業量が大幅に低減する。
【0081】
さらに、本実施例では回路や装置の追加を必要としないことから、低コスト化を図ることができる。例えば、光信号の平均強度を監視するために受信光強度算出部212が設けられていれば、第1周波数で強度変化する光信号から波長情報を取得する為に必要な受信光強度算出部212を追加する必要がない。また、波長設定モードと通常動作モードは、単に、信号処理部206,208のファームウェア等で設定されることで実現されるため、新たなハードウェアを追加する必要がない。
【0082】
また、波長設定モードにおける光強度の変化は、高周波のデータ通信をする場合とは異なり、厳密な同期を必要としない。そのため、第1周波数で強度変化する光信号は、低周波で動作する信号処理部206,208によって検出が可能である。
【0083】
なお、本実施形態では第2光モジュール146の第2光送信器148は、必ずしも波長可変光源222を備えている必要はなく、波長λAの出力が可能な固定波長光源を備えていても構わない。
【0084】
また、センタ側システム140の第2光モジュール146が波長情報を重畳した光信号を送信し、ユーザ側システム120の第1光モジュール126が送信する光信号の波長を設定する手法を説明したが、逆であってもよい。すなわち、ユーザ側システム120の第1光モジュール126が波長情報を重畳した光信号を送信し、センタ側システム140の第2光モジュール146が送信する光信号の波長を設定してもよい。
【0085】
また、
図1では、センタ側システム140とユーザ側システム120との間には、送信用と受信用の光ファイバケーブルがそれぞれ1本ずつ記載されているが、送信用と受信用の光ファイバケーブルが一つの光ファイバケーブルであって、一心双方向伝送(BiDi:Bidirectional)通信を適用しても同様の効果が得られる。この場合、第1合波器122及び第1分波器124は、合波と分波を共に行う合分波器として、一体的に構成されてもよい。同様に、第2合波器142及び第2分波器144は、合波と分波を共に行う合分波器として、一体的に構成されてもよい。
【0086】
また、合波器と分波器を一体的に構成しない場合には、波長λAと波長λA’は、同じであってもよい。同様に、波長λBと波長λB’は、同じであってもよい。波長λCと波長λC’は、同じであってもよい。
【0087】
続いて、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、光電変換器130,150が光信号を受信しない場合に、信号処理部206,208は、光送信器128,148に対して、順次、第2周波数で他の波長の波長情報を含む光信号を当該他の波長で送信させる点が第1実施形態と異なる。すなわち、第2光モジュール146Aが送信する光信号の波長が自動的にλAに設定されるとともに、第1光モジュール126Aが送信する光信号の波長も自動的にλA’に設定される。以下、第1実施形態と同様の動作、構成については説明を省略する。
【0088】
図7は、第2実施形態に係る第2光モジュール146Aの動作を説明するフローチャートである。
図8は、第2実施形態に係る第1光モジュール126Aの動作を説明するフローチャートである。
図9は、センタ側システム140に含まれる第2光モジュール146Aとユーザ側システム120に含まれる第1光モジュール126Aと、が送信する光信号の波長の組み合わせの例である。
図9に示すように、組み合わせられる第1光モジュール126A及び第2光モジュール146Aが送信する光信号の波長は、1対1対応の関係になっている。また、
図9に示すテーブルは、予め記憶部216に記憶されている。
【0089】
初期状態として、第2光モジュール146Aの第2光電変換器150Aと、第1光モジュール126Aの第1光電変換器130Aは、ともに光信号を受信していない状態である。また、第2光モジュール146Aの第2光送信器148Aが送信する光信号の波長はλAに設定されておらず、第1光モジュール126Aの第1光送信器128Aが送信する光信号の波長もλA’に設定されていない状態である。
【0090】
初期状態では通信が確立されていない波長設定モードである。そのため、第2光モジュール146Aの第2光電変換器150Aは、光信号を受信していない状態である(S702)。
【0091】
次に、第2光モジュール146Aは、第2光送信器148Aの送信する光信号の波長をλ1に設定する(S704)。また、第2光モジュール146Aの第2信号処理部208は、
図9のテーブルを参照し、送信される光信号が所望の波長情報を表すように、出力光強度設定部220を制御する(S706)。ここで、所望の波長は、第2光送信器148Aが送信する光信号の波長λ1と対応する波長λ1’である。
【0092】
これにより、第2光モジュール146Aの第2光送信器148Aは、λ1’の波長情報を含む波長λ1の光信号を送信する(S708)。
【0093】
ここで、第2合波器142の入力端子Aは、波長λAの光信号のみ通過させる。そのため、第2光モジュール146Aの第2光送信器148Aが送信したλ1の光信号は、入力端子Aを通過しない。従って、第2光モジュール146Aの第2光電変換器150Aは光信号を受信しない。
【0094】
また、上記のとおり、第1光モジュール126Aの第1光送信器128Aが送信する光信号の波長も初期状態ではλA’に設定されていない。そのため、第1光モジュール126Aの第1光送信器128Aが送信する光信号も第1合波器122の入力端子Aを通過しない。従って、第1光モジュール126Aの第2光電変換器150Aも光信号を受信しない。
【0095】
次に、λ1を表す波長情報を含む光信号が送信されてから所定の時間(例えば光モジュールの波長切り替えに要する時間であり、数秒である)が経過した後に、第2光モジュール146Aの第2光電変換器150Aが光信号を受信しない場合(S710のNo)、第2光モジュール146は、第2光送信器148Aが送信する光信号の波長をλ2に設定する(S712)。
【0096】
また、第2光モジュール146Aの第2信号処理部208は、
図9のテーブルを参照し、第2光送信器148Aが光信する光信号の波長λ2と対応する波長λ2’の波長情報を、第2光送信器148Aが送信する光信号が含むように制御する(S706)。
【0097】
これにより、第2光モジュール146Aの第2光送信器148Aは、λ2’の波長情報を含む波長λ2の光信号を送信する(S708)。
【0098】
このように、第2光モジュール146Aの第2光送信器148Aは、第2光送信器148Aが送信する光信号の波長と、含まれる波長情報と、を所定の時間ごとに切り替えながら送信する。すなわち、第2信号処理部208は、第2光送信器148A対して、順次、第2周波数で他の波長の波長情報を含む光信号を当該他の波長で送信させる。第2光モジュール146Aの第2光電変換器150Aが光信号を受信するまで、S706からS712までのステップが繰り返し実行される。
【0099】
所定の時間が経過した後、第2光モジュール146Aの第2光送信器148Aが送信する光信号の波長がλAに設定される(S712)。
【0100】
第2光モジュール146Aの第2信号処理部208は、
図9のテーブルを参照し、第2光送信器148Aが送信する光信号の波長λAと対応する波長λA’の波長情報が、第2光送信器148Aが送信する光信号に含まれるように制御する(S706)。
【0101】
これにより、第2光モジュール146Aの第2光送信器148Aは、λA’の波長情報が含まれる波長λAの光信号を送信する(S708)。
【0102】
ここで、第2合波器142の入力端子Aは、波長λAの光信号のみ通過させる。そのため、波長λAの光信号は、第1実施形態と同様の経路を経て、第1光モジュール126Aの第1光電変換器130Aで受信される(S802)。
【0103】
第1光モジュール126Aの第1光電変換器130Aが波長λAの光信号を受信すると、第1光モジュール126Aの第1信号処理部206は、当該光信号に含まれる波長情報に基づいて設定すべき波長を算出する(S804)。具体的には、S706の波長情報と、記憶部216が記憶するテーブルに基づいて、第1信号処理部206は、設定すべき波長として波長λA’を算出する。
【0104】
次に、第1光モジュール126Aの第1信号処理部206は、算出されたλA’という波長を出力するように波長可変光源222を制御する。これにより、第1光モジュール126Aは、第1光送信器128Aが送信する光信号の波長をλA’に設定する(S806)。そして、第1光モジュール126Aの第1光送信器128Aは、波長がλA’である光信号を送信する(S808)。なお、当該光信号には、波長情報は重畳されない。
【0105】
S808で送信された波長がλA’である光信号は、第1実施形態と同様の経路を経て、第2光モジュール146Aの第2光電変換器150Aに入力される(S710のYes)。
【0106】
第2光モジュール146Aの第2光送信器148Aが波長λAの光信号を送信してから所定の時間以内に、第2光電変換器150Aが光信号を受信した場合、第2光モジュール146Aの第2信号処理部208は、第2光送信器148Aに対して波長情報を含む光信号の送信を停止させる(S714)。
【0107】
以上により、第2光モジュール146Aの第2光送信器148Aが送信する光信号の波長がλAに設定され、第1光モジュール126Aの第1光送信器128Aが送信する光信号の波長がλA’に設定される。これにより通信が確立されて通常動作モードに移行する。そして、任意のデータ通信が可能な状態となる。
【0108】
第1実施形態では、第2光モジュール146Aの第2光送信器148Aが送信する光信号の波長が予めλAに、または、第1光モジュール126Aの第1光送信器128Aが送信する光信号の波長が予めλA’に設定されていることを前提としている。しかし、第2実施形態によれば、第2光モジュール146Aの第2光送信器148A及び第1光モジュール126Aの第1光送信器128Aが送信する光信号の波長を共に設定する必要がない。従って、波長設定に要する費用を削減できる。
【0109】
また、第1実施形態と同様に誤った波長が設定された第1光モジュール126または第2光モジュール146を設置されて通信不能となることを防止することができる。
【0110】
同様の設定が第1光モジュール126B、第1光モジュール126C、第2光モジュール146B及び第2光モジュール146Cにも実施されることで、光通信システム100に含まれる全ての第1光モジュール126及び第2光モジュール146について、自動的に送信する波長を設定することができる。すなわち、センタ側システム140及びユーザ側システム120に設定されるすべての第1光モジュール126及び第2光モジュール146について予め波長を設定する必要がなく、波長設定(光通信システム100の構築)にかかる作業量が大幅に低減する。
【0111】
第2実施形態においても第1実施形態と同様に、ユーザ側システム120に含まれる第1光モジュール126が波長情報を重畳した光信号を送信し、センタ側システム140に含まれる第2光モジュール146が送信する光信号の波長を設定してもよい。
【0112】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。また、上記の具体的な文字列や数値及び図面中の具体的な文字列や数値は例示であり、これらの文字列や数値には限定されない。
【符号の説明】
【0113】
100 光通信システム、120 ユーザ側システム、122 第1合波器、124 第1分波器、126 第1光モジュール、128 第1光送信器、130 第1光電変換器、140 センタ側システム、142 第2合波器、144 第2分波器、146 第2光モジュール、148 第2光送信器、150 第2光電変換器、202 電流電圧変換器、204 AD変換器、206 第1信号処理部、208 第2信号処理部、210 信号変換部、212 受信光強度算出部、214 受信光波長算出部、216 記憶部、218 送信波長設定部、220 出力光強度設定部、222 波長可変光源、224 増幅器、226 変調器。