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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】シートフレーム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20230724BHJP
   A47C 7/40 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
B60N2/68
A47C7/40
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019073469
(22)【出願日】2019-04-08
(65)【公開番号】P2020172121
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】伊東 宏司
(72)【発明者】
【氏名】今用 和也
(72)【発明者】
【氏名】西原 旨利
(72)【発明者】
【氏名】安江 諒
(72)【発明者】
【氏名】潘 小龍
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-098589(JP,A)
【文献】特開2018-176774(JP,A)
【文献】特開2015-093528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00- 2/90
A47C 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに第1方向に離れて配置されて前記第1方向に垂直な第2方向に延びる第1フレーム及び第2フレームを有するフレーム本体と、
前記第1フレーム及び前記第2フレームにそれぞれ両端部が溶接されるワイヤと、を備え、
前記第1フレーム及び前記第2フレームの一方は、他方へ向かって傾斜する傾斜面を備え、
前記第1フレーム及び前記第2フレームの他方は、前記第2方向に延びる円筒部を備え、
前記ワイヤは、前記第1方向に延びる本体部と、
前記本体部に対して前記第2方向へ曲がった屈曲端部と、
前記第2方向から見て前記円筒部の外周面に沿って湾曲しつつ、前記円筒部の外周面の一部と線接触するように弧状に湾曲する湾曲端部と、を備え、
前記傾斜面と前記屈曲端部との間には第1溶接部が形成され、
前記円筒部の外周面と前記湾曲端部との間には第3溶接部が形成されていることを特徴とするシートフレーム。
【請求項2】
前記傾斜面は、円柱面の一部であることを特徴とする請求項1記載のシートフレーム。
【請求項3】
前記第3溶接部を形成した状態において、前記湾曲端部と前記円筒部の外周面の一部とが線接触した部分から前記円筒部の周方向の両側へそれぞれ離れるにつれて、前記円筒部の外周面と前記湾曲端部との間隔が次第に大きくなることを特徴とする請求項1又は2に記載のシートフレーム。
【請求項4】
互いに第1方向に離れて配置されて前記第1方向に垂直な第2方向に延びる第1フレーム及び第2フレームを有するフレーム本体と、前記第1フレーム及び前記第2フレームにそれぞれ両端部が溶接されるワイヤと、を備えるシートフレームの製造方法であって、
前記第1フレーム及び前記第2フレームのそれぞれは、互いの内側へ向かって傾斜する傾斜面を備え、
前記ワイヤは、前記第1方向に延びる本体部と、前記ワイヤの両端部にそれぞれ設けられて前記本体部に対して前記第2方向へ曲がった屈曲端部と、を備え、
前記傾斜面を上下方向に向けて冶具本体に前記フレーム本体を固定した状態で、第1冶具によって前記フレーム本体に対して前記本体部を前記第1方向へ移動可能にしつつ前記第2方向に位置決めする第1冶具工程と、
前記第1冶具工程後、前記第1方向に対称に形成されつつ互いに連動して上下方向に移動する一対の第4冶具によって、前記ワイヤの両端部のそれぞれで前記傾斜面に接触した前記屈曲端部の下方への移動を規制する第4冶具工程と、
前記第4冶具工程後、前記ワイヤの両端部のそれぞれで前記屈曲端部を前記傾斜面に溶接して第1溶接部を形成する溶接工程と、を備えていることを特徴とするシートフレームの製造方法。
【請求項5】
互いに第1方向に離れて配置されて前記第1方向に垂直な第2方向に延びる第1フレーム及び第2フレームを有するフレーム本体と、前記第1フレーム及び前記第2フレームにそれぞれ両端部が溶接されるワイヤと、を備えるシートフレームの製造方法であって、
前記第1フレーム及び前記第2フレームの一方は、他方へ向かって傾斜する傾斜面を備え、
前記第1フレーム及び前記第2フレームの他方は、前記第2方向に垂直な断面が前記第1方向に延びる直線状に形成される平面部を備え、
前記ワイヤは、前記第1方向に延びる本体部と、前記本体部に対して前記第2方向へ曲がった屈曲端部と、前記第1方向に延びる直線端部と、を備え、
冶具本体に前記フレーム本体を固定した状態で、第1冶具によって前記フレーム本体に対して前記本体部を前記第1方向へ移動可能にしつつ前記第2方向に位置決めする第1冶具工程と、
前記第1冶具工程後、第2冶具と前記傾斜面との間に前記屈曲端部を前記第1方向に挟む第2冶具工程と、
前記第2冶具工程後、前記屈曲端部を前記傾斜面に溶接して第1溶接部を形成し、前記冶具本体に対して予め設定した位置で前記直線端部を前記平面部に溶接して第2溶接部を形成する溶接工程と、を備えていることを特徴とするシートフレームの製造方法。
【請求項6】
互いに第1方向に離れて配置されて前記第1方向に垂直な第2方向に延びる第1フレーム及び第2フレームを有するフレーム本体と、前記第1フレーム及び前記第2フレームにそれぞれ両端部が溶接されるワイヤと、を備えるシートフレームの製造方法であって、
前記第1フレーム及び前記第2フレームの一方は、他方へ向かって傾斜する傾斜面を備え、
前記第1フレーム及び前記第2フレームの他方は、前記第2方向に延びる円筒部を備え、
前記ワイヤは、前記第1方向に延びる本体部と、前記本体部に対して前記第2方向へ曲がった屈曲端部と、前記第2方向から見て前記円筒部の外周面に沿って湾曲する湾曲端部と、を備え、
前記傾斜面を上方に向けて冶具本体に前記フレーム本体を固定した状態で、前記円筒部の上に前記湾曲端部を載せ、第1冶具によって前記フレーム本体に対して前記本体部を前記第1方向へ移動可能にしつつ前記第2方向に位置決めする第1冶具工程と、
前記第1冶具工程後、前記円筒部の最上部に前記湾曲端部を接触させた状態で、上下方向に移動可能な第3冶具によって前記傾斜面に接触した前記屈曲端部の下方への移動を規制する第3冶具工程と、
前記第3冶具工程後、前記屈曲端部を前記傾斜面に溶接して第1溶接部を形成し、前記湾曲端部を前記円筒部に溶接して第3溶接部を形成する溶接工程と、を備えていることを特徴とするシートフレームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートフレーム及びその製造方法に関し、特に第1フレームと第2フレームとの間隔やワイヤの長さのばらつきを吸収しながら、ワイヤとフレーム本体との溶接強度を確保できるシートフレーム及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の乗物に搭載されるシートフレームは、枠状のフレーム本体のうち互いに離れた第1フレーム及び第2フレームに複数のワイヤが架け渡され、そのワイヤの両端部が第1フレーム及び第2フレームにそれぞれ溶接されている。例えば、特許文献1に開示される技術では、円筒状の第1フレームや第2フレームの外周面の曲率よりも小さい曲率でワイヤの両端部を湾曲させて湾曲部を形成し、その湾曲部を第1フレーム及び第2フレームにそれぞれ溶接している。これにより、製造誤差などによって第1フレームと第2フレームとの間隔やワイヤの長さがばらついても、湾曲部との接触位置を第1フレームや第2フレームの周方向にずらすことで、第1フレームや第2フレームに湾曲部を溶接できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-35333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術では、第1フレームや第2フレームの外周面の曲率と湾曲部の曲率とを積極的に異ならせているので、溶接時に第1フレームや第2フレームと湾曲部との接触部分の長さが短くなる。その接触部分を溶接して形成された溶接部が短くなるため、ワイヤとフレーム本体との溶接強度を十分に確保できないという問題点がある。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、第1フレームと第2フレームとの間隔やワイヤの長さのばらつきを吸収しながら、ワイヤとフレーム本体との溶接強度を確保できるシートフレーム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のシートフレームは、互いに第1方向に離れて配置されて前記第1方向に垂直な第2方向に延びる第1フレーム及び第2フレームを有するフレーム本体と、前記第1フレーム及び前記第2フレームにそれぞれ両端部が溶接されるワイヤと、を備え、前記第1フレーム及び前記第2フレームの少なくとも一方は、互いの内側へ向かって傾斜する傾斜面を備え、前記ワイヤは、前記第1方向に延びる本体部と、前記本体部に対して前記第2方向へ曲がった屈曲端部と、を備え、前記傾斜面と前記屈曲端部との間には第1溶接部が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載のシートフレームによれば、互いに第1方向に離れて第2方向に延びる第1フレーム及び第2フレームの一方は、他方へ向かって傾斜する傾斜面を備える。この傾斜面と、本体部に対して第2方向に曲がった屈曲端部との間に第1溶接部が形成されている。これにより、第1フレームと第2フレームとの間隔やワイヤの両端部間の長さがばらついても、傾斜面に沿って屈曲端部を第1方向にずらすことで、そのばらつきを吸収して傾斜面と屈曲端部との間に第1溶接部を形成できる。
【0008】
さらに、第1フレームや第2フレームが延びている第2方向へ曲がって屈曲端部が設けられているので、溶接時に屈曲端部と傾斜面との接触部分の長さを確保できる。この接触部分を溶接して形成された第1溶接部の長さを確保できるので、第1溶接部による溶接強度を確保できる。これらの結果、第1フレームと第2フレームとの間隔やワイヤの長さのばらつきを吸収しながら、ワイヤとフレーム本体との溶接強度を確保できる。
第1フレーム及び第2フレームの他方には、第2方向に延びる円筒部が設けられる。ワイヤには、第2方向から見て円筒部の外周面に沿って湾曲しつつ、円筒部の外周面の一部と線接触するように弧状に湾曲する湾曲端部が設けられている。この円筒部の外周面と湾曲端部との間に第3溶接部が形成される。これにより、フレーム本体へのワイヤの溶接時、第1方向および第2方向に垂直な方向の力(例えば重力など)が湾曲端部から円筒部に加わることで、円筒部と湾曲端部との接触位置を略一定にできる。その結果、円筒部と湾曲端部との間に形成される第3溶接部の位置のばらつきを抑制できるので、円筒部と湾曲端部との溶接を容易にできる。
【0009】
請求項2記載のシートフレームによれば、請求項1記載のシートフレームの奏する効果に加え、次の効果を奏する。傾斜面は円柱面の一部なので、その傾斜面(円柱面)と直交するワイヤの端部を傾斜面に沿って曲げ、その端部を傾斜面に溶接する場合には、ワイヤの端部を精度良く曲げないと、ワイヤの端部と傾斜面との接触部分の長さがばらつき易くなる。一方、本体部に対して第2方向に曲がった屈曲端部を傾斜面に溶接して第1溶接部を形成しているので、円柱面の一部である傾斜面に沿って屈曲端部が第1方向にずれても、傾斜面と屈曲端部との接触部分の長さのばらつきを抑制できる。その結果、傾斜面とワイヤとの溶接強度のばらつきを抑制できる。
【0010】
請求項3記載のシートフレームによれば、請求項1又は2に記載のシートフレームの奏する効果に加え、次の効果を奏する。第3溶接部を形成した状態において、湾曲端部と円筒部の外周面の一部とが線接触した部分から円筒部の周方向の両側へそれぞれ離れるにつれて、円筒部の外周面と湾曲端部との間隔が次第に大きくなる。これにより、第3溶接部を形成するとき、円筒部と湾曲端部とが略一定な接触位置で接触するように案内できる。
【0011】
【0012】
【0013】
請求項記載のシートフレームの製造方法は、互いに第1方向に離れて配置されて第1方向に垂直な第2方向に延びる第1フレーム及び第2フレームを有するフレーム本体と、第1フレーム及び第2フレームにそれぞれ両端部が溶接されるワイヤと、を備えるシートフレームを製造する方法である。第1フレーム及び第2フレームそれぞれは、互いの内側へ向かって傾斜する傾斜面を備える。ワイヤは、第1方向に延びる本体部と、ワイヤの両端部にそれぞれ設けられて本体部に対して第2方向へ曲がった屈曲端部と、を備える。第1冶具工程では、傾斜面を上下方向に向けて冶具本体にフレーム本体を固定した状態で、第1冶具によってフレーム本体に対して本体部を第1方向へ移動可能にしつつ第2方向に位置決めする。第1冶具工程後の第4冶具工程では、第1方向に対称に形成されつつ互いに連動して上下方向に移動する一対の第4冶具によって、ワイヤの両端部のそれぞれで傾斜面に接触した屈曲端部の下方への移動を規制する。このような第4冶具工程後の溶接工程では、ワイヤの両端部のそれぞれで屈曲端部を傾斜面に溶接して第1溶接部を形成するので、屈曲端部と傾斜面との溶接作業を容易にできる。また、溶接時、第1フレームと第2フレームとの間隔やワイヤの長さのばらつきをワイヤの両端部側で分散して吸収できると共に、第1フレーム及び第2フレームとワイヤの両端部との溶接強度を確保してワイヤとフレーム本体との溶接強度をより向上できる。
【0014】
請求項記載のシートフレームの製造方法は、互いに第1方向に離れて配置されて第1方向に垂直な第2方向に延びる第1フレーム及び第2フレームを有するフレーム本体と、第1フレーム及び第2フレームにそれぞれ両端部が溶接されるワイヤと、を備えるシートフレーム製造する方法である。第1フレーム及び第2フレームの一方は、他方へ向かって傾斜する傾斜面を備える。第1フレーム及び第2フレームの他方は、第2方向に垂直な断面が第1方向に延びる直線状に形成される平面部を備える。ワイヤは、第1方向に延びる本体部と、本体部に対して第2方向へ曲がった屈曲端部と、第1方向に延びる直線端部と、を備える。第1冶具工程では、冶具本体にフレーム本体を固定した状態で、第1冶具によってフレーム本体に対して本体部を第1方向へ移動可能にしつつ第2方向に位置決めする。第1冶具工程後の第2冶具工程では、第2冶具と傾斜面との間に屈曲端部を第1方向に挟む。このような第2冶具工程後の溶接工程で、屈曲端部を傾斜面に溶接して第1溶接部を形成するので、第1溶接部の形成位置を略一定にでき、屈曲端部と傾斜面との溶接作業を容易にできる。さらに、溶接工程では、冶具本体に対して予め設定した位置で直線端部を平面部に溶接して第2溶接部を形成するので、直線端部と平面部との溶接作業を容易にできる。これらの結果、フレーム本体に対するワイヤの溶接をより容易にできる。
【0015】
請求項記載のシートフレームの製造方法は、互いに第1方向に離れて配置されて第1方向に垂直な第2方向に延びる第1フレーム及び第2フレームを有するフレーム本体と、第1フレーム及び第2フレームにそれぞれ両端部が溶接されるワイヤと、を備えるシートフレーム製造する方法である。第1フレーム及び第2フレームの一方は、他方へ向かって傾斜する傾斜面を備える。第1フレーム及び第2フレームの他方は、第2方向に延びる円筒部を備える。ワイヤは、第1方向に延びる本体部と、本体部に対して第2方向へ曲がった屈曲端部と、第2方向から見て円筒部の外周面に沿って湾曲する湾曲端部と、を備える。第1冶具工程では、傾斜面を上方に向けて冶具本体にフレーム本体を固定した状態で、円筒部の上に湾曲端部を載せ、第1冶具によってフレーム本体に対して本体部を第1方向へ移動可能にしつつ第2方向に位置決めする。第1冶具工程後の第3冶具工程では、上下方向に移動可能な第3冶具によって傾斜面に接触した屈曲端部の下方への移動を規制する。これにより、傾斜面に沿って屈曲端部が下方へ移動して第1方向にワイヤがずれることを防止でき、円筒部の最上部に湾曲端部が接触した状態を維持できる。そして溶接工程では、屈曲端部を傾斜面に溶接して第1溶接部を形成し、湾曲端部を円筒部に溶接して第3溶接部を形成する。このように、第1冶具や第3冶具によってフレーム本体に対するワイヤの位置を定めた状態で溶接できるので、フレーム本体に対するワイヤの溶接をより容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態におけるシートフレームの正面図である。
図2】(a)は図1のIIa-IIa線におけるバックフレームの断面図であり、(b)は図1のIIb-IIb線におけるバックフレームの断面図である。
図3】溶接用冶具にセットされたフレーム本体およびワイヤの平面図である。
図4図3のIV-IV線におけるフレーム本体およびワイヤの断面図である。
図5】(a)はフレーム本体に対するワイヤの位置決め方法を説明する模式図であり、(b)は図3のVb-Vb線におけるフレーム本体およびワイヤの模式的な断面図である。
図6】(a)はサイドフレーム間の間隔に対して許容可能なワイヤの最短寸法を示した模式図であり、(b)はサイドフレーム間の間隔に対して許容可能なワイヤの最長寸法を示した模式図である。
図7】(a)は第2実施形態におけるバックフレームの断面図であり、(b)はサイドフレームに対するワイヤの位置決め方法を説明する模式図であり、(c)はサイドフレームに対してワイヤが位置決めされた状態を説明する模式図である。
図8(a)は第3実施形態における溶接用冶具およびサイドフレームの断面図であり、(b)はサイドフレームに対するワイヤの位置決め方法を説明する模式図であり、(c)はサイドフレームに対してワイヤが位置決めされた状態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して第1実施形態におけるシートフレーム1について説明する。図1に示すように、シートフレーム1は、自動車などの乗物に搭載されるシートに設けられるフレームである。シートフレーム1は、クッションフレーム2と、クッションフレーム2の後端部に配置されるバックフレーム3と、クッションフレーム2の後端部とバックフレーム3の下端部とを連結する連結装置4と、を備える。連結装置4は、クッションフレーム2対するバックフレーム3の角度を変更可能なリクライニング装置である。
【0018】
なお、各図面に示す矢印U-D方向、矢印F-B方向、矢印L-R方向は、それぞれバックフレーム3の上下方向、前後方向、左右方向である。これらのバックフレーム3の上下方向および前後方向は、クッションフレーム2に対するバックフレーム3の角度が変わっても変化しない。図1及び図2を用いたバックフレーム3の説明では、バックフレーム3の上下方向、前後方向、左右方向を、単に上下方向、前後方向、左右方向と省略して説明する。
【0019】
クッションフレーム2は、着座者が着座するシートクッションの鋼製のフレームである。クッションフレーム2は、略四角枠状に形成され、車体(図示せず)に取り付けられている。弾力性のある軟質ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂製のクッションパッド(図示せず)をクッションフレーム2により支持し、ファブリックや合成皮革または皮革等から構成されるカバー(図示せず)でクッションパッドを覆ってシートクッションが形成される。
【0020】
バックフレーム3は、着座者の背凭れとなるシートバックの鋼製のフレームである。弾力性のある軟質ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂製のバックパッド(図示せず)をバックフレーム3により支持し、ファブリックや合成皮革または皮革等から構成されるカバー(図示せず)でバックパッドを覆ってシートバックが形成される。
【0021】
バックフレーム3は、略四角枠状のフレーム本体10と、そのフレーム本体10に架け渡される円柱状の複数のワイヤ15,16,17と、を備えている。フレーム本体10は、互いに左右方向に離れて配置されて上下方向に延びるサイドフレーム11,12と、左右一対のサイドフレーム11,12の上部を互いに連結して左右方向に延びるアッパーフレーム13と、一対のサイドフレーム11,12の下部を互いに連結して左右方向に延びるロアフレーム14と、を備えている。
【0022】
サイドフレーム11はバックフレーム3の右側に配置され、サイドフレーム12はバックフレーム3の左側に配置されている。サイドフレーム11,12は、上部がアッパーフレーム13に連なる円筒部11a,12aと、その円筒部11a,12aの下部に溶接により接合される板部11b,12bとをそれぞれ備えている。この円筒部11a,12aの軸方向がバックフレーム3の上下方向である。
【0023】
板部11b,12bは、鋼板を曲げ加工などにより形成した部材である。板部11b,12bは、一対のサイドフレーム11,12の左右方向内側へ向かって前端縁および後端縁からフランジが張り出している。サイドフレーム11,12の下部を板部11b,12bにより軽量化しつつ、フランジによりサイドフレーム11,12の剛性を確保できる。
【0024】
アッパーフレーム13は、円筒状の部位であり、左端がサイドフレーム12の円筒部12aと一体成形されている。アッパーフレーム13には、ヘッドレスト(図示せず)を固定するための固定具8が取り付けられている。
【0025】
ロアフレーム14は、一対のサイドフレーム11,12の下部を上下方向に沿って互いに連結する板材である。ロアフレーム14の左右方向の両端部を板部11b,12bの後側のフランジに重ねた状態で、その両端部と板部11b,12bとの上下方向の複数か所が溶接されている。
【0026】
ワイヤ15,16,17は、バックフレーム3に取り付けられるクッション材としてのバックパッドを支持するためのものである。互いに上下方向に離れて配置されたアッパーフレーム(第1フレーム)13とロアフレーム(第2フレーム)14との間には、2本のワイヤ15が架け渡されている。ワイヤ15は、両端部がアッパーフレーム13及びロアフレーム14にそれぞれ溶接されている。ワイヤ16は、両端部が、サイドフレーム(第1フレーム)11の円筒部11aと、サイドフレーム(第2フレーム)12の円筒部12aとにそれぞれ溶接されている。
【0027】
ワイヤ17は、両端部がサイドフレーム11,12の板部11b,12bの後側のフランジにそれぞれ溶接されている。板部11b,12bのフランジは、ワイヤ17の両端部が線接触可能な平面上に形成されているので、ワイヤ17と板部11b,12bとの溶接強度を確保し易い。また、製造誤差などによって板部11bと板部12bとの間隔やワイヤ17の長さがばらついても、板部11b,12bのフランジに対してワイヤ17を左右方向にずらして板部11b,12bにワイヤ17を溶接できる。
【0028】
次に図1に加えて図2(a)及び図2(b)を参照し、ワイヤ15,16とフレーム本体10との溶接部分について説明する。図2(a)及び図2(b)では、紙面奥側に見えるサイドフレーム12やアッパーフレーム13等を省略し、本体部15a,16aの中央部分を省略している。
【0029】
図1及び図2(a)に示すように、ワイヤ15は、上下方向(第1方向)に延びる本体部15aと、その本体部15aの上端に連なる屈曲端部15bと、本体部15aの下端に連なる直線端部15cと、を備えている。屈曲端部15bは、本体部15aに対して左右方向(第2方向)へ曲がった直線状の部位であり、アッパーフレーム13と略平行に形成されている。詳しくは、屈曲端部15bは、本体部15aに対して右方へ略垂直に曲がっている。この屈曲端部15bがアッパーフレーム13に溶接される。
【0030】
アッパーフレーム13は、上下方向の内側(ロアフレーム14側)へ向かって傾斜する傾斜面13aを備えている。傾斜面13aは、円筒状のアッパーフレーム13の外周面(円柱面)の一部である。詳しくは、傾斜面13aは、アッパーフレーム13の外周面のうち、ロアフレーム14に最も近い上下方向内側の端部から後側へ向かって1/4周の部位である。この傾斜面13aに屈曲端部15bが溶接されて、傾斜面13aと屈曲端部15bとの間に第1溶接部21が形成される。
【0031】
本体部15aの下端部は、ロアフレーム14を避けつつロアフレーム14の前方へ向かって、本体部15aの中央部から前方へ曲がっている。直線端部15cは、この本体部15aの下端部から下方へ延びている。直線端部15cは、本体部15aの中央部に対して僅かに前方へ傾斜している。この直線端部15cがロアフレーム14の左右方向の中央部分に溶接される。
【0032】
ロアフレーム14の中央部分は、左右方向に亘って略一様な断面形状に形成されている。ロアフレーム14の中央部分は、上下方向に延びるウェブ14aと、ウェブ14aの上縁から前方へ延びる第1フランジ14bと、ウェブ14aの下縁から前方へ延びる第2フランジ14cと、第2フランジ14cの前縁から下方へ曲げられた平面部14dと、を備えている。ウェブ14a、第1フランジ14b及び第2フランジ14cによってロアフレーム14の中央部分の剛性を確保できる。
【0033】
平面部14dは、左右方向に垂直な断面が、上下方向に延びる直線状に形成されている。この平面部14dに直線端部15cが溶接されて、平面部14dと直線端部15cとの間に第2溶接部22が形成される。第2溶接部22は、直線端部15cが延びている上下方向に沿って形成され、上下方向に長い。第2溶接部22は、直線端部15cの先端15dから離れた位置にある。
【0034】
図1及び図2(b)に示すように、ワイヤ16は、左右方向(第1方向)に延びる本体部16aと、その本体部16aの右端に連なる屈曲端部16bと、本体部16aの左端に連なる湾曲端部16cと、を備えている。屈曲端部16bは、本体部16aに対して上下方向(第2方向)へ曲がった直線状の部位であり、サイドフレーム11の円筒部11aと略平行に形成されている。詳しくは、屈曲端部16bは、本体部16aに対して下方へ略垂直に曲がっている。この屈曲端部16bが円筒部11aに溶接される。
【0035】
円筒部11aは、左右方向の内側(サイドフレーム12側)へ向かって傾斜する傾斜面11cを備えている。傾斜面11cは、円筒部11aの外周面(円柱面)の一部である。詳しくは、傾斜面11cは、円筒部11aの外周面のうち、サイドフレーム12に最も近い左右方向内側の端部から前方へ向かって1/4周の部位である。この傾斜面11cに屈曲端部16bが溶接されて、傾斜面11cと屈曲端部16bとの間に第1溶接部23が形成される。
【0036】
湾曲端部16cは、図1に示す前後方向視においてサイドフレーム12の円筒部12aと直交する部位であり、円筒部12aの前方に重なる。湾曲端部16cは、図2に示す上下方向視において円筒部12aの外周面に沿って湾曲する。湾曲端部16cは、円筒部12aの外周面の前方側の一部と線接触するように湾曲している。この湾曲端部16cが円筒部12aに溶接されて、円筒部12aの外周面と湾曲端部16cとの間に第3溶接部24が形成される。第3溶接部24から円筒部12aの周方向に離れるにつれて、円筒部12aの外周面と湾曲端部16cとの間隔が次第に大きくなっている。
【0037】
以上のようなシートフレーム1(バックフレーム3)によれば、左右方向(矢印L-R方向、第2方向)に延びるアッパーフレーム13(第1フレーム)の傾斜面13aが、アッパーフレーム13とは上下方向(矢印U-D方向、第1方向)に離れたロアフレーム14(第2フレーム)へ向かって傾斜し、本体部15aに対して左右方向に曲がった屈曲端部15bが傾斜面13aに溶接される。そのため、製造誤差などによってアッパーフレーム13とロアフレーム14との間隔やワイヤ15の両端部間の長さがばらついても、傾斜面13aに沿って屈曲端部15bを上下方向にずらすことで、そのばらつきを吸収して傾斜面13aと屈曲端部15bとの間に第1溶接部21を形成できる。
【0038】
さらに、アッパーフレーム13が延びている左右方向へ曲がって屈曲端部15bが設けられているので、溶接時(第1溶接部21の形成時)に屈曲端部15bと傾斜面13aとの接触部分の長さを確保できる。これにより、屈曲端部15bと傾斜面13aとの接触部分を溶接して形成された第1溶接部21の長さを確保できるので、第1溶接部21による溶接強度を確保できる。なお、本明細書における接触部分とは、2つの部材が厳密に接触していなくても、溶接に影響しない程度の隙間が2つの部材の間にあっても良い。
【0039】
同様に、上下方向(矢印U-D方向、第2方向)に延びるサイドフレーム11(第1フレーム)の円筒部11aの傾斜面11cが、サイドフレーム11とは左右方向(矢印L-R方向、第1方向)に離れたサイドフレーム12(第2フレーム)へ向かって傾斜し、本体部16aに対して上下方向に曲がった屈曲端部16bが傾斜面11cに溶接されている。そのため、製造誤差などによってサイドフレーム11,12の間隔やワイヤ16の両端部間の長さがばらついても、傾斜面11cに沿って屈曲端部16bを左右方向にずらすことで、そのばらつきを吸収して傾斜面11cと屈曲端部16bとの間に第1溶接部23を形成できる。さらに、溶接時における屈曲端部16bと傾斜面11cとの接触部分や第1溶接部23の長さを確保できるので、第1溶接部23による溶接強度を確保できる。
【0040】
傾斜面11c,13aが円柱面の一部なので、その傾斜面11c,13a(円柱面)と直交するワイヤの端部を傾斜面11c,13aに沿って湾曲させ、その端部を傾斜面11c,13aに溶接する場合には、ワイヤの端部を精度良く湾曲させないと、ワイヤの端部と傾斜面11c,13aとの接触部分の長さがばらつき易くなる。特に、その湾曲させたワイヤの端部を傾斜面11c,13aに沿ってずらしたとき、ワイヤの端部と傾斜面11c,13aとの接触部分の長さのばらつきが大きくなる。
【0041】
これに対して本実施形態では、左右方向の内側に向かって傾斜する傾斜面11cに、上下方向に曲がった屈曲端部16bが溶接されていると共に、上下方向の内側に向かって傾斜する傾斜面13aに、左右方向に曲がった屈曲端部15bが溶接されている。そのため、傾斜面11c,13aに沿って屈曲端部15b,16bがずれても、傾斜面11c,13aと屈曲端部15b,16bとの接触部分の長さのばらつきを抑制できる。その結果、傾斜面11c,13aと屈曲端部15b,16bとの溶接強度のばらつきを抑制できる。
【0042】
特に、屈曲端部15bがアッパーフレーム13と略平行であり、屈曲端部16bが円筒部11aと略平行である。そのため、傾斜面11c,13aに対する屈曲端部15b,16bの接触位置に関わらず、傾斜面11c,13aと屈曲端部15b,16bとの接触部分の長さを略一定にできる。その結果、傾斜面11c,13aと屈曲端部15b,16bとの溶接強度のばらつきをより一層抑制できる。
【0043】
なお、ワイヤ16の湾曲端部16cは、円筒部12aの外周面(円柱面)に沿って湾曲しているが、サイドフレーム11,12の間隔やワイヤ16の両端部間の長さのばらつきを屈曲端部16bと傾斜面11cとによって吸収できるので、湾曲端部16cと円筒部12aとの接触位置を略一定にできる。そのため、湾曲端部16cと円筒部12aとの接触部分の長さ、第3溶接部24の長さのばらつきを抑制できるので、湾曲端部16cと円筒部12aとの溶接強度のばらつきを抑制できる。
【0044】
また、湾曲端部16cと円筒部12aとの溶接強度が少々ばらついても、上述した通り、傾斜面11cと屈曲端部16bとの溶接強度を確保しつつ、その溶接強度のばらつきを十分に抑制できる。その結果、ワイヤ16の一端が湾曲端部16cであっても、ワイヤ16の他端が屈曲端部16bであれば、ワイヤ16とフレーム本体10との溶接強度を十分に確保できると共に、その溶接強度のばらつきを十分に抑制できる。
【0045】
一方、ワイヤ15のうち屈曲端部15bとは反対側の端部には、上下方向(第1方向)に延びる直線端部15cが設けられている。この直線端部15cとの間に第2溶接部22が形成される平面部14dは、左右方向(第2方向)に垂直な断面が上下方向に延びる直線状である。そのため、平面部14dと直線端部15cとの溶接時(第2溶接部22の形成時)、平面部14dに対して直線端部15cを上下方向にずらすことで、アッパーフレーム13とロアフレーム14との間隔やワイヤ15の長さのばらつきを吸収して第2溶接部22を形成できる。また、平面部14dと直線端部15cとの組み合わせ、傾斜面13aと屈曲端部15bとの組み合わせによって、アッパーフレーム13とロアフレーム14との間隔やワイヤ15の長さのばらつきをワイヤ15の両端部側で分散して吸収できる。
【0046】
次に図3から図6(b)を参照して、フレーム本体10へのワイヤ15,16,17の溶接方法、即ちバックフレーム3の製造方法について説明する。なお、図4では、紙面奥側に見えるサイドフレーム12等を省略し、本体部15aの中央部分を省略している。また、図5(a)から図6(b)では、紙面奥側に見えるアッパーフレーム13や第1冶具33等を省略している。さらに、図5(a)から図6(b)は、サイドフレーム11,12間や本体部16aを短くして模式的に図示されている。
【0047】
図3に示すように、溶接用冶具30にフレーム本体10及びワイヤ15,16,17を保持させて位置決めした状態で、フレーム本体10とワイヤ15,16,17との接触部分をそれぞれアーク溶接してバックフレーム3を製造する。なお、フレーム本体10とワイヤ15,16,17との溶接方法は、アーク溶接に限らず、抵抗溶接やレーザ溶接などでも良い。
【0048】
溶接用冶具30は、フレーム本体10を保持する冶具本体31と、ワイヤ15,16の本体部15a,16aやワイヤ17をそれぞれ保持する第1冶具32,33,34と、ワイヤ15の屈曲端部15bを保持する第2冶具35と、ワイヤ16の屈曲端部16bを保持する第3冶具36と、を備えている。冶具本体31には、バックフレーム3(フレーム本体10)の前方を鉛直上方へ向けてフレーム本体10が保持される。即ち、図3から図6に示された矢印F方向が鉛直上方であり、矢印B方向が鉛直下方である。
【0049】
第1冶具32,33,34は、冶具本体31から矢印F方向(鉛直上方)へ突出した部位であり、冶具本体31に固定されている。第1冶具32の上端面(矢印F方向の端面)には、矢印U-D方向(フレーム本体10の上下方向)に沿って形成されたU字状の溝が形成されている。この第1冶具32の溝にワイヤ15の本体部15aを挿入することで、フレーム本体10に対して本体部15aを矢印U-D方向へ移動可能にしつつ矢印L-R方向(フレーム本体10の左右方向)に位置決めする。
【0050】
第1冶具33,34の上端面には、矢印L-R方向に沿って形成されたU字状の溝が形成されている。この第1冶具33の溝にワイヤ16の本体部16aを挿入することで、フレーム本体10に対して本体部16aを矢印L-R方向へ移動可能にしつつ矢印U-D方向に位置決めする。同様に、第1冶具34の溝にワイヤ17を挿入することで、フレーム本体10に対してワイヤ17をフレーム本体10の矢印L-R方向へ移動可能にしつつ矢印U-D方向に位置決めする。
【0051】
図3及び図4に示すように、第2冶具35は、冶具本体31から矢印F方向へ突出した略直方体状の部位である。第2冶具35は、図示しない移動機構により冶具本体31に対して矢印U-D方向へ移動する。第2冶具35には、矢印F方向の端面と矢印U方向の側面との角(アッパーフレーム13側の角)を矢印L-R方向に亘って切り欠いて段差状の切欠部35aが形成されている。
【0052】
ワイヤ15をフレーム本体10(アッパーフレーム13及びロアフレーム14)に溶接するには、まず、フレーム本体10を冶具本体31に固定して、第1冶具32に本体部15aを保持させ、フレーム本体10に対して矢印L-R方向にワイヤ15を位置決めする(第1冶具工程)。第1冶具32に本体部15aを保持させるとき、アッパーフレーム13から離しておいた第2冶具35の切欠部35aに屈曲端部15bを載せ、ロアフレーム14の平面部14dに直線端部15cを載せる。
【0053】
第1冶具32に本体部15aを保持させた状態で(第1冶具工程後)、第2冶具35を矢印U方向へ移動させ、第2冶具35の切欠部35aとアッパーフレーム13の傾斜面13aとの間に屈曲端部15bを矢印U-D方向に挟む(第2冶具工程)。第2冶具35に載せた屈曲端部15bを矢印U方向へ移動させるとき、平面部14dに載せた直線端部15cも同様に矢印U方向へ移動する。このように、第2冶具35と傾斜面13aとの間に屈曲端部15bが挟まれることで、フレーム本体10に対してワイヤ15が矢印U-D方向に位置決めされる。さらに、ロアフレーム14へ向かって傾斜する傾斜面13aに屈曲端部15bが接触し、平面部14dに直線端部15cが乗っているので、フレーム本体10に対してワイヤ15が矢印F-B方向に位置決めされる。
【0054】
第2冶具35と傾斜面13aとの間に屈曲端部15bを挟んだ状態で(第2冶具工程後)、屈曲端部15bと傾斜面13aとの接触部分を溶接して、それらの間に第1溶接部21(図2(a)参照)を形成すると共に、直線端部15cと平面部14dとの接触部分を溶接して第2溶接部22を形成する(溶接工程)。溶接時(第1溶接部21及び第2溶接部22の形成時)には、第1冶具32及び第2冶具35によりフレーム本体10に対してワイヤ15が各方向に位置決めされているので、フレーム本体10へのワイヤ15の溶接作業を容易にできる。
【0055】
特に、アッパーフレーム13とロアフレーム14との間隔やワイヤ15の長さがばらついても、第2冶具35によって屈曲端部15bをアッパーフレーム13の傾斜面13aに押し付け、平面部14dに対して直線端部15cを矢印U-D方向にずらした状態で第1溶接部21及び第2溶接部22を形成できる。これにより、溶接時の屈曲端部15bと傾斜面13aとの接触位置(第1溶接部21の形成位置)を略一定にできる。その結果、傾斜面13aと屈曲端部15bとの溶接作業を容易にできる。
【0056】
さらに、アッパーフレーム13とロアフレーム14との間隔がばらついても、アッパーフレーム13を基準として冶具本体31にフレーム本体10を固定することで、第1溶接部21の形成位置を冶具本体31に対して予め設定できる。これにより、傾斜面13aと屈曲端部15bとの溶接作業をより容易にできる。また、第1溶接部21の形成位置が冶具本体31に対して予め設定されることで、ロボット等による自動溶接によって第1溶接部21を形成するとき、アッパーフレーム13とロアフレーム14との間隔のばらつき等を検出することなく、自動溶接の精度を向上できる。
【0057】
また、図4に二点鎖線で示す第2溶接部22の形成位置は、直線端部15cの先端15dから離れた位置にある。これにより、第2溶接部22から直線端部15cの先端15dまでの距離を変更することで、アッパーフレーム13とロアフレーム14との間隔やワイヤ15の長さのばらつきを吸収できる。例えば、アッパーフレーム13とロアフレーム14との間隔やワイヤ15の長さがばらつき、平面部14dに対して先端15dの位置が図4に実線で示す位置から二点鎖線で示す位置の間で変化しても、第2溶接部22の形成位置を変更しないようにできる。その結果、直線端部15cと平面部14dとの溶接作業を容易にできる。
【0058】
特に、第2溶接部22の形成位置は、冶具本体31に対して予め設定されている。これにより、直線端部15cと平面部14dとの溶接作業をより容易にできる。また、第2溶接部22の形成位置が冶具本体31に対して予め設定されることで、ロボット等による自動溶接によって第2溶接部22を形成するとき、アッパーフレーム13とロアフレーム14との間隔のばらつき等を検出することなく、自動溶接の精度を向上できる。
【0059】
図3及び図5(a)に示すように、第3冶具36は、冶具本体31から矢印F方向へ突出した略直方体状の部位である。第3冶具36は、円筒部11aの傾斜面11cに接した屈曲端部16bの鉛直下方(矢印B方向)への移動を規制する。第3冶具36は、図示しない昇降機構により冶具本体31に対して矢印F-B方向(鉛直方向)に移動する。
【0060】
第3冶具36には、矢印R方向(円筒部11a側)の側面36aと、矢印F方向の端面との角を矢印U-D方向に亘って段差状に切り欠いて第1規制面36b及び第2規制面36cが形成されている。側面36aは、冶具本体31に円筒部11aを固定した状態で、第3冶具36を矢印F-B方向を移動させたとき、円筒部11a(傾斜面11c)に対して摺動する。即ち、冶具本体31に円筒部11aを固定した状態で、傾斜面11cの最も矢印L方向の内側の部位における接平面上に側面36aがある。
【0061】
第1規制面36bは、側面36aの矢印F方向の端部に連なり、側面36a及び第2規制面36cと垂直な平面である。第1規制面36bの矢印L-R方向の寸法は、ワイヤ16(屈曲端部16b)の直径と略同一に設定されている。第2規制面36cは、第1規制面36bの矢印L方向の端部から垂直に立ち上がる平面である。
【0062】
ワイヤ16をフレーム本体10(サイドフレーム11,12)に溶接するには、まず、フレーム本体10を冶具本体31に固定して、第1冶具33に本体部16aを保持させ、フレーム本体10に対して矢印U-D方向にワイヤ16を位置決めする(第1冶具工程)。第1冶具33に本体部16aを保持させるとき、屈曲端部16bを第3冶具36の第1規制面36bに載せ、湾曲端部16cを円筒部12aに載せる。なお、第1規制面36bに載せた屈曲端部16bが傾斜面11cの最も矢印L方向の内側に接触するよう、屈曲端部16bを第1規制面36bに載せる前に第3冶具36を矢印F-B方向に移動させておく。
【0063】
図5(a)に示す状態では、傾斜面11cの最も矢印L方向の内側に屈曲端部16bが接触し、円筒部12aの鉛直方向の最上部に湾曲端部16cが接触してなく、その最上部よりも矢印R方向の内側(円筒部11a側)に湾曲端部16cが接触している。この場合には、第1冶具工程後の第3冶具工程において第3冶具36を矢印F方向へ移動させる。図5(a)に示す状態から第3冶具36が矢印F方向へ移動すると、屈曲端部16bが矢印R方向へ移動可能になる。そのため、重力により湾曲端部16cが円筒部12aの傾斜に沿って矢印R方向へ移動し、屈曲端部16bも矢印R方向へ移動して傾斜面11cとの接触が維持される。
【0064】
図5(b)に示すように、円筒部12aの最上部に湾曲端部16cが接触するまで、第3冶具36を移動させる。矢印F方向を向いて矢印L方向に傾斜した傾斜面11cに屈曲端部16bを載せても、その傾斜面11cに沿って屈曲端部16bが矢印B方向へ移動することを第3冶具36によって規制できる。そのため、傾斜面11cに沿って屈曲端部16bが矢印B方向へ移動することに起因し、フレーム本体10に対して矢印L方向にワイヤ16がずれることを防止できる。その結果、円筒部12aの最上部に湾曲端部16cが接触した状態を維持できる。即ち、フレーム本体10に対してワイヤ16をL-R方向およびF-B方向に位置決めできる。
【0065】
円筒部12aの最上部に湾曲端部16cを接触させ、屈曲端部16bの矢印B方向への移動を第3冶具36によって規制した状態で(第3冶具工程後)、屈曲端部16bと傾斜面11cとの接触部分を溶接して、それらの間に第1溶接部23(図2(b)参照)を形成する。さらに、湾曲端部16cと円筒部12aとの接触部分を溶接して第3溶接部24を形成する(溶接工程)。溶接時(第1溶接部23及び第3溶接部24の形成時)には、第1冶具33及び第3冶具36によりフレーム本体10に対してワイヤ16が各方向に位置決めされているので、フレーム本体10へのワイヤ1の溶接作業を容易にできる。
【0066】
なお、第1冶具工程において、円筒部12aの最上部に湾曲端部16cが接触するように、円筒部12aに湾曲端部16cを載せ、傾斜面11cに屈曲端部16bを載せても良い。この場合、第1冶具工程後の第2冶具工程において、屈曲端部16bに接触するまで第3冶具36を矢印F方向へ移動させる。
【0067】
いずれの場合でも、湾曲端部16cが円筒部12aの外周面に沿って湾曲しているため、矢印B方向の力(重力)が湾曲端部16cから円筒部12aに加わることで、円筒部12aの最上部に湾曲端部16cを容易に接触させることができる。そのため、溶接時に円筒部12aと湾曲端部16cとの接触位置を略一定にでき、第3溶接部24の形成位置のばらつきを抑制できるので、円筒部12aと湾曲端部16cとの溶接を容易にできる。
【0068】
また、図6(a)に示すように、傾斜面11cの最も矢印L方向の内側に屈曲端部16bが接触して屈曲端部16bの下方への脱落を第1規制面36bにより防止し、円筒部12aの最上部に湾曲端部16cが接触する場合が、サイドフレーム11,12間の間隔に対して許容可能なワイヤ16の最短寸法である。これよりもワイヤ16が短いと、屈曲端部16bを傾斜面11cに接触させつつ、円筒部12aの最上部に湾曲端部16cを接触させることができない。そうすると、円筒部12aと湾曲端部16cとの接触部分の長さを十分に確保できなくなり、第3溶接部24による溶接強度を十分に確保できなくなる。
【0069】
なお、第1規制面36bに載せた屈曲端部16bが傾斜面11cの最も矢印L方向の内側に接触するとき、屈曲端部16bが第2規制面36cにも接触する。そのため、許容可能な最短寸法よりもワイヤ16が短いと、円筒部12aの最上部に湾曲端部16cを接触させたとき、第3冶具36の矢印F方向の端面に屈曲端部16bが干渉して、第1規制面36bに屈曲端部16bを載せることができなくなる。このように、サイドフレーム11,12間の間隔に対してワイヤ16の長さが許容可能な範囲にないことが第3冶具36によって容易に分かる。
【0070】
図6(b)に示すように、傾斜面11cに接触した屈曲端部16bが第3冶具36の側面36aに接触し、円筒部12aの最上部に湾曲端部16cが接触する場合が、サイドフレーム11,12間の間隔に対して許容可能なワイヤ16の最長寸法である。そのため、円筒部12aの最上部に湾曲端部16cを接触させたとき、側面36aから矢印R方向に離れた位置に屈曲端部16bがあれば、サイドフレーム11,12間の間隔に対してワイヤ16の長さが許容可能な範囲にないことが第3冶具36によって容易に分かる。
【0071】
なお、許容可能な最長寸法よりもワイヤ16が長いと、円筒部12aの最上部に湾曲端部16cを接触させつつ、屈曲端部16bの矢印B方向への移動を第3冶具36によって規制できない。そうすると、円筒部12aの最上部に湾曲端部16cを接触させた状態を確実に維持できなくなり、円筒部12aと湾曲端部16cとの接触部分の長さを十分に確保できなくなって第3溶接部24による溶接強度を十分に確保できなくなる。
【0072】
次に図7(a)、図7(b)及び図7(c)を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では、ワイヤ16の一端のみが屈曲端部16bである場合について説明した。これに対して第2実施形態では、ワイヤ41の両端がそれぞれ屈曲端部16b,42である場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0073】
図7(a)に示すように、バックフレーム40は、互いに矢印L-R方向(第1方向)に離れたサイドフレーム11の円筒部11aとサイドフレーム12の円筒部12aとの間にワイヤ41が架け渡されている。ワイヤ41は、矢印L-R方向に延びる本体部16aと、その本体部16aの矢印R方向の端部に連なる屈曲端部16bと、本体部16aの矢印L方向の端部に連なる屈曲端部42と、を備えている。
【0074】
屈曲端部42は、本体部16aに対して矢印U-D方向(第2方向)へ曲がった直線状の部位であり、円筒部12aと略平行に形成されている。詳しくは、屈曲端部42は、本体部16aに対して矢印D方向へ略垂直に曲がっている。この屈曲端部42が円筒部12aに溶接される。
【0075】
円筒部12aは、矢印L-R方向の内側(サイドフレーム11側)へ向かって傾斜する傾斜面12cを備えている。傾斜面12cは、円筒部12aの外周面(円柱面)の一部である。詳しくは、傾斜面12cは、円筒部12aの外周面のうち、サイドフレーム11に最も近い矢印R方向の端部から矢印F方向へ向かって1/4周の部位である。この傾斜面12cに屈曲端部42が溶接されて、傾斜面12cと屈曲端部42との間に第1溶接部43が形成される。第1溶接部43は、傾斜面11cと屈曲端部16bとの間に形成される第1溶接部23と同様に形成されている。
【0076】
このようなバックフレーム40によれば、第1実施形態と同様に、製造誤差などによってサイドフレーム11,12の間隔やワイヤ41の両端部間の長さがばらついても、溶接時、傾斜面11c,12cに沿って屈曲端部16b,42を矢印L-R方向にずらすことができる。これにより、そのばらつきを吸収して傾斜面11c,12cと屈曲端部16b,42との間に第1溶接部23,43をそれぞれ形成できる。さらに、溶接時における屈曲端部16b,42と傾斜面11c,12cとの接触部分や第1溶接部23,43の長さをそれぞれ確保できるので、第1溶接部23,43による溶接強度を確保できる。
【0077】
特に、ワイヤ41の両端部にそれぞれ屈曲端部16b,42があるので、溶接時、サイドフレーム11,12の間隔やワイヤ41の両端部間の長さのばらつきをワイヤ41の両端部側で分散して吸収できる。さらに、ワイヤ41が屈曲端部16b,42のいずれか一方のみを有する場合と比べて、サイドフレーム11,12とワイヤ41の両端部との溶接強度をそれぞれ確保できるので、ワイヤ41とサイドフレーム11,12との溶接強度をより向上できる。
【0078】
図7(b)及び図7(c)に示すように、溶接時にサイドフレーム11,12やワイヤ41を保持する溶接用冶具は、冶具本体31(図3参照)と、第1冶具33(図3参照)と、傾斜面11cに接触した屈曲端部16bの鉛直下方(矢印B方向)への移動を規制する第3冶具45と、傾斜面12cに接触した屈曲端部42の鉛直下方(矢印B方向)への移動を規制する第3冶具46と、を備えている。
【0079】
第3冶具45は、第2規制面36cから側面36aへ向かって第1規制面45bが鉛直下方に傾斜している以外は、第1実施形態の第3冶具36と同様に構成されている。また、第3冶具46は、第3冶具45に対して矢印L-R方向に対称に形成されている。第3冶具45,46は、互いの高さが同一になるよう、連動して矢印F-B方向へ移動する。
【0080】
ワイヤ41をサイドフレーム11,12に溶接するには、まず、矢印F方向が鉛直上方を向いて傾斜面11c,12cが鉛直上方を向くように、サイドフレーム11,12を冶具本体31(図3参照)に固定し、第1冶具33(図3参照)に本体部16aを保持させる(第1冶具工程)。なお、第1規制面45b,46bに載せた屈曲端部16b,42が傾斜面11c,12cの最も矢印L-R方向の内側に接触するよう、第1冶具33に本体部16aを保持させる前に第3冶具45,46を矢印F-B方向に移動させておく。
【0081】
第1冶具33に本体部16aを保持させるとき、屈曲端部16bを第1規制面45b又は傾斜面11cに載せ、屈曲端部42を第1規制面46b又は傾斜面12cに載せる。図7(b)の説明では、屈曲端部16bを第1規制面45bに載せ、屈曲端部42を傾斜面12cに載せている。
【0082】
図7(b)に示す状態から第3冶具45,46を矢印F方向へ移動させると、傾斜面12cに沿って屈曲端部42が矢印R方向へ移動しつつ、第1規制面45bの傾斜に沿って屈曲端部16bが矢印R方向へ移動して屈曲端部16bと傾斜面11cとの接触が維持される。図7(c)に示すように、屈曲端部16bが傾斜面11c及び第3冶具45の両方に接触しつつ、屈曲端部42が傾斜面12c及び第3冶具46の両方に接触するまで、第3冶具45,46を移動させる。
【0083】
これにより、矢印F方向を向いて矢印L-R方向の内側へ傾斜した傾斜面11c,12cに屈曲端部16b,42を載せても、その傾斜面11c,12cに沿って屈曲端部16b,42が矢印B方向へ移動することを第3冶具45,46によって規制できる。その結果、サイドフレーム11,12に対してワイヤ41をL-R方向およびF-B方向に位置決めできる。
【0084】
なお、屈曲端部16bを傾斜面11cに載せ、屈曲端部42を第1規制面46bに載せて第3冶具45,46を矢印F方向へ移動させても良い。この場合にも、傾斜面11cや第1規制面46bの傾斜に沿ってワイヤ41を矢印L方向へ移動させることができ、サイドフレーム11,12に対してワイヤ41をL-R方向およびF-B方向に位置決めできる。
【0085】
また、第1規制面45b,46bが傾斜面11c,12c側へ傾斜しているので、第1規制面45b,46bに沿って矢印B方向へ移動する屈曲端部16b,42を傾斜面11c,12cに確実に接触させることができる。その結果、サイドフレーム11,12に対してワイヤ41をL-R方向およびF-B方向に位置決めし易くできる。
【0086】
このように、第1冶具33及び第3冶具45,46によりサイドフレーム11,12に対してワイヤ41を各方向に位置決めした状態で(第3冶具工程後)、屈曲端部16bと傾斜面11cとの接触部分を溶接して、それらの間に第1溶接部23を形成する。さらに、屈曲端部42と傾斜面12cとの接触部分を溶接して、それらの間に第1溶接部43を形成する(溶接工程)。このように、第1冶具33及び第3冶具45,46を用いることで、サイドフレーム11,12へのワイヤ41の溶接作業を容易にできる。
【0087】
特に、第3冶具45,46が左右対称に形成されているので、その第3冶具45,46と傾斜面11c,12cとのそれぞれに屈曲端部16b,42を接触させることで、本体部16aを矢印L-R方向と略平行にできる。その結果、矢印L-R方向に対して傾いた状態でワイヤ41がサイドフレーム11,12に溶接されることを抑制できる。
【0088】
なお、第3冶具45,46の第2規制面36c,46cの間隔よりも、屈曲端部16b,42の間隔が小さい場合には、屈曲端部16b,42の両方を傾斜面11c,12cに接触させることができないので、そのワイヤ41を不良品とする。また、第3冶具45,46の側面36a,46aの間隔よりも、屈曲端部16b,42の間隔が大きい場合には、屈曲端部16b,42の両方を第3冶具45,46に接触させることができないので、そのワイヤ41を不良品とする。このように、第3冶具45,46によってワイヤ41が不良品であるか否かの判別を容易にできる。
【0089】
次に図8(a)、図8(b)及び図8(c)を参照して第3実施形態について説明する。第実施形態では、第3冶具45,46を用いてサイドフレーム11,12にワイヤ41を溶接する方法について説明した。これに対して第3実施形態では、第3冶具51,52を用いてワイヤ41をサイドフレーム11,12に溶接する方法について説明する。なお、第1,2実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0090】
図8(a)に示すように、溶接時にサイドフレーム11,12やワイヤ41を保持する溶接用冶具は、冶具本体31(図3参照)と、第1冶具33(図3参照)と、サイドフレーム12側に設けられる第3冶具51と、サイドフレーム11側に設けられる第3冶具52と、を備えている。矢印F方向が鉛直下方を向いて傾斜面11c,12cが鉛直下方を向くように、サイドフレーム11,12が冶具本体31に固定されている。
【0091】
以下、第3冶具51と第3冶具52とが左右対称に形成されているので、第3冶具51について主に説明し、第3冶具52の説明を一部省略する。第3冶具51は、冶具本体31から矢印B方向へ突出した部位である。第3冶具51は、傾斜面12cに接した屈曲端部42の鉛直下方(矢印F方向)への移動を規制する。第3冶具51は、図示しない昇降機構により冶具本体31に対して矢印F-B方向(鉛直方向)に移動する。
【0092】
第3冶具51は、円筒部12aと矢印F-B方向に対面する対向面51aと、対向面51aから矢印R方向および矢印B方向へ湾曲した湾曲面51bと、傾斜面12cの最も矢印R方向の内側に接触した屈曲端部42が接触可能な第2規制面51cと、を備えている。第3冶具52は、円筒部11aと矢印F-B方向に対面する対向面52aと、対向面52aから矢印L方向および矢印B方向へ湾曲した湾曲面52bと、傾斜面11cの最も矢印L方向の内側に接触した屈曲端部16bが接触可能な第2規制面52cと、を備えている。
【0093】
対向面51aは、矢印F-B方向と略垂直に形成されている。第2規制面51cは、第2実施形態における第2規制面46cと略同一に形成されている。湾曲面51bは、傾斜面12cとの間の円筒部12aの径方向寸法が、対向面51aから第2規制面51cへ向かって次第に大きくなる。そして、湾曲面51bと第2規制面51cとの境界における傾斜面12cとの間の径方向寸法(矢印L-R方向の寸法)が屈曲端部42の直径と略同一に設定される。
【0094】
ワイヤ41をサイドフレーム11,12に溶接するには、矢印B方向が鉛直上方を向くように、サイドフレーム11,12を冶具本体31(図3参照)に固定し、第1冶具33(図3参照)に本体部16aを保持させる(第1冶具工程)。この第1冶具工程の前に、屈曲端部16b,42をそれぞれ湾曲面51b,52bに載せて、第3冶具51,52の対向面51a,52aが円筒部11a,12aから十分に離れるように第3冶具51,52を移動させておく。そして、第1冶具工程後、矢印L-R方向に対称な第3冶具51,52を一緒に矢印B方向へ移動させていく。
【0095】
図8(b)に示すように、例えば、サイドフレーム11,12に対してワイヤ41が矢印L方向にずれている場合、矢印B方向へ第3冶具51,52を移動させると、まず、傾斜面12cと湾曲面51bとの間に屈曲端部42が挟まれる。このとき、湾曲面5bに載せた屈曲端部16bは傾斜面11cに接触していない。
【0096】
この図8(b)に示す状態から更に第3冶具51,52を矢印B方向へ移動させると、傾斜面12cと湾曲面51bとの間に挟まれた屈曲端部42が、傾斜面12cと湾曲面51bとの間の径方向寸法が大きい矢印R方向へ押し出されるように移動する。同時に、屈曲端部16bが湾曲面52bに沿って矢印R方向へ移動する。
【0097】
そして、図8(c)に示すように、傾斜面11cと湾曲面52bとの間にも屈曲端部16bが挟まると、第3冶具51,52の移動が止まる。これにより、傾斜面11c,12cに接触した屈曲端部16b,42の矢印F-B方向および矢印L-R方向への移動を第3冶具51,52によって規制できる。
【0098】
このように、第1冶具33及び第3冶具51,52によりサイドフレーム11,12に対してワイヤ41を各方向に位置決めした状態で(第3冶具工程後)、屈曲端部16bと傾斜面11cとの接触部分を溶接して、それらの間に第1溶接部23を形成する。さらに、屈曲端部42と傾斜面12cとの接触部分を溶接して、それらの間に第1溶接部43を形成する(溶接工程)。第1冶具33及び第3冶具51,52を用いることで、サイドフレーム11,12へのワイヤ41の溶接作業を容易にできる。
【0099】
なお、溶接工程では、第3冶具51,52から矢印U-D方向に離れた位置で、屈曲端部16b,42を傾斜面11c,12cに溶接する。円筒部11a,12aと第3冶具51,52との間の狭い隙間で屈曲端部16b,42を傾斜面11c,12cに溶接する場合と比べて、その溶接作業を容易にできる。
【0100】
また第3冶具工程では、傾斜面12cと湾曲面51bとの間に屈曲端部42が挟まり、傾斜面11cと湾曲面52bとの間に屈曲端部16bが挟まることで、第3冶具51,52の移動を止めることができる。そのため、第3冶具51,52を動かし過ぎたことに起因して、傾斜面11c,12cに対する屈曲端部16b,42の溶接位置が変化することを防止できる。
【0101】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。サイドフレーム11,12やアッパーフレーム13、ロアフレーム14の形状を適宜変更しても良い。例えば、傾斜面11c,12c,13aが円柱面の一部である場合に限らず、傾斜面を平面状に形成しても良い。
【0102】
上記第1実施形態では、矢印L-R方向を第1方向、矢印U-D方向を第2方向、サイドフレーム11を第1フレーム、サイドフレーム12を第2フレームとする場合と、矢印U-D方向を第1方向、矢印L-R方向を第2方向、アッパーフレーム13を第1フレーム、ロアフレーム14を第2フレームとする場合とについて本発明を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第2方向に延びる第1フレームと第2フレームとが互いに第1方向に離れて配置されていれば良く、サイドフレーム12を第1フレームとし、サイドフレーム11を第2フレームとしても良い。また、ロアフレーム14を第1フレームとし、アッパーフレーム13を第2フレームとしても良い。また、バックフレーム3のフレーム本体10の各部を第1フレーム及び第2フレームとする場合に限らず、クッションフレーム2の各部を第1フレーム及び第2フレームとしても良い。
【0103】
さらに、第1フレーム及び第2フレームの少なくとも一方に、屈曲端部が溶接される傾斜面があれば良く、上記第2実施形態のように第1フレーム(サイドフレーム11)及び第2フレーム(サイドフレーム12)の両方に傾斜面を設けても良い。また、第1フレーム及び第2フレームの一方のみに傾斜面を設けた場合、第1フレーム及び第2フレームの他方に、直線端部が溶接される平面部や、湾曲端部が溶接される円筒部を設けても良い。例えば、ロアフレーム14を円筒状に形成して傾斜面をロアフレーム14に設けても良い。また、サイドフレーム12を四角筒状に形成して平面部をサイドフレーム12に設けても良い。
【0104】
また、ワイヤ15,16の本体部15a,16aが全体的に第1方向に延びていれば、本体部15a,16aが一直線状である場合に限らず、本体部15a,16aの一部を曲げても良い。例えば、本体部15a,16aを波状に形成しても良い。
【0105】
上記形態では、シートフレーム1が自動車などの乗物に搭載される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。自動車以外の産業車両や鉄道車両、船舶、航空機などの乗物にシートフレーム1を搭載しても良い。また、乗物以外の屋内外に置かれるシートにシートフレーム1を設けても良い。
【0106】
上記形態で説明した第1冶具32,33,34、第2冶具35、第3冶具36,45,46,51,52の形状を適宜変更しても良い。また、第1冶具32,33,34、第2冶具35、第3冶具36,45,46,51,52を用いず、作業員が持ったワイヤ15,16,17,41をフレーム本体10に溶接しても良い。
【符号の説明】
【0107】
1 シートフレーム
10 フレーム本体
11,12 サイドフレーム(第1フレーム又は第2フレーム)
11a,12a 円筒部
11c,12c,13a 傾斜面
13 アッパーフレーム(第1フレーム又は第2フレーム)
14 ロアフレーム(第1フレーム又は第2フレーム)
14d 平面部
15,16,17,41 ワイヤ
15a,16a 本体部
15b,16b,42 屈曲端部
15c 直線端部
15d 先端
16c 湾曲端部
21,23,43 第1溶接部
22 第2溶接部
24 第3溶接部
31 冶具本体
32,33,34 第1冶具
35 第2冶具
36,45,46,51,52 第3冶具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8