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特許7317554水処理施設の監視制御システム及びデータ伝送装置
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  • 特許-水処理施設の監視制御システム及びデータ伝送装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】水処理施設の監視制御システム及びデータ伝送装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/05 20060101AFI20230724BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20230724BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20230724BHJP
【FI】
G05B19/05 L
G05B19/05 F
G05B23/02 Z
C02F1/00 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019073588
(22)【出願日】2019-04-08
(65)【公開番号】P2020173505
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】津崎 貴信
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-098793(JP,A)
【文献】特開2002-297210(JP,A)
【文献】特開2014-022978(JP,A)
【文献】特開2018-097681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/05
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理施設内のデバイスを制御する監視制御システムであって、
デバイスをシーケンス制御する複数のコントローラと、
前記コントローラの1又は複数と対応付けられ、対応関係にあるコントローラと通信可能に接続されると共に、相互に通信可能な複数のデータ伝送装置と、
を備え、
前記データ伝送装置は、
前記対応関係にあるコントローラのデータを記憶して、データ伝送装置間で共有する共有メモリと、
前記共有メモリに記憶されたデータのうち、前記対応関係にあるコントローラが必要なデータを特定するリストを、前記コントローラから取得して記憶する第1記憶部と、
前記第1記憶部に記憶する前記リストに基づき、前記必要なデータを当該対応関係にあるコントローラへ送信する送受信部と、
を有し、
前記コントローラは、前記必要なデータを特定するリストを記憶する第2記憶部を備え、
前記第2記憶部は、前記必要なデータを特定するリストを前記データ伝送装置に送信する、
監視制御システム。
【請求項2】
複数の水処理施設に配置されるデバイスを制御する、
請求項1記載の監視制御システム。
【請求項3】
前記データ伝送装置は、
複数の水処理施設に分散して配置され、
同じ水処理施設内に設置される前記コントローラの一部又は全部と対応関係を有する、
請求項2記載の監視制御システム。
【請求項4】
前記コントローラからコマンドを受けて実際に前記デバイスを稼働させる下位コントローラを備え、
前記コントローラと前記下位コントローラとは、LANにより接続されている、
請求項3記載の監視制御システム。
【請求項5】
水処理施設内のデバイスを複数のコントローラによって制御する監視制御システムに複数備えられ、
前記コントローラの1又は複数と対応付けられ、対応関係にあるコントローラと通信可能に接続されると共に、相互に通信可能であり、
前記対応関係にあるコントローラのデータを記憶して、データ伝送装置間で共有する共有メモリと、
前記共有メモリに記憶されたデータのうち、前記対応関係にあるコントローラが必要なデータを特定するリストを、前記コントローラから取得して記憶する第1記憶部と、
前記第1記憶部に記憶する前記リストに基づき、前記必要なデータを当該対応関係にあるコントローラへ送信する送受信部と、
を有し、
前記コントローラは、前記必要なデータを特定するリストを記憶する第2記憶部を備え、
前記第2記憶部は、前記必要なデータを特定するリストを前記データ伝送装置に送信する、
データ伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水処理施設の監視制御システム及びデータ伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上水道又は下水道の水処理施設を監視及び制御する監視制御システムは、ポンプや弁等の各デバイスまでの間に、監視制御サーバを最上位層とする階層状の命令処理系統を構築しており、監視制御サーバの他、複数の上位コントローラ及び複数の下位コントローラを備えている。上位コントローラから離れた地にある下位コントローラは、上位コントローラとテレメータ回線で接続されている。テレメータ回線は一般電話回線を用いたものであり、LANよりも伝送可能距離が長い。
【0003】
監視制御サーバからは、水処理施設の運転計画に従ったリクエストが上位コントローラへ送信される。上位コントローラは、プログラマブルロジックコントローラであり、リクエストを達成するシーケンスを進め、実行コマンドを下位コントローラに送信する。下位コントローラは、デバイスを駆動するアナログ又はパルス波による電流又は電圧信号を生成する駆動回路とマイコンを備え、実行コマンドを解釈してデバイスを実際に駆動させている。
【0004】
上位コントローラは、上位コントローラ間でデータを相互に交換し、各上位コントローラが有するデータを共有する仕組みを有する。例えば、上位コントローラは、自ノードと他ノードのデータを記憶する共有メモリを各々が備え、巡回するトークンを獲得したときに、自ノードのデータを他の上位コントローラの共有メモリのうち、自ノード用に宣言した領域に書き込んでいる。監視制御システム内に20台の上位コントローラが備えられる場合、20台分のデータが共有メモリに書き込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】2014-22978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、省人化を目的として、監視制御システムは中央集中型のシステムを指向している。即ち、一の監視制御システムが複数の水処理施設を監視及び制御することが要望されている。管轄とする水処理施設の増大は、監視制御システム内の上位コントローラの数の増大を招く。
【0007】
上位コントローラは、共有メモリの容量等のようなハードウェア上の問題により、データ共有が可能な接続台数に制限がある。監視対象の水処理施設を増大させようとすると、監視制御システムが備える上位コントローラの数が制限を超えてしまう虞がある。従って、所望するような規模の監視制御システムを構築することはできず、満足いく省人化が達成できなかった。
【0008】
本発明の実施形態は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、複数の水処理施設を容易に監視及び制御可能な監視制御システム及びデータ伝送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態である水処理施設の監視制御システムは、水処理施設内のデバイスを制御する監視制御システムであって、デバイスをシーケンス制御する複数のコントローラと、前記コントローラの1又は複数と対応付けられ、対応関係にあるコントローラと通信可能に接続されると共に、相互に通信可能な複数のデータ伝送装置と、を備え、前記データ伝送装置は、前記対応関係にあるコントローラのデータを記憶して、データ伝送装置間で共有する共有メモリと、前記共有メモリに記憶されたデータのうち、前記対応関係にあるコントローラが必要なデータを特定するリストを、前記コントローラから取得して記憶する第1記憶部と、前記第1記憶部に記憶する前記リストに基づき、前記必要なデータを当該対応関係にあるコントローラへ送信する送受信部と、を有し、前記コントローラは、前記必要なデータを特定するリストを記憶する第2記憶部を備え、前記第2記憶部は、前記必要なデータを特定するリストを前記データ伝送装置に送信する
【0010】
また、本発明の実施形態であるデータ伝送装置は、水処理施設内のデバイスを複数のコントローラによって制御する監視制御システムに複数備えられ、前記コントローラの1又は複数と対応付けられ、対応関係にあるコントローラと通信可能に接続されると共に、相互に通信可能であり、前記対応関係にあるコントローラのデータを記憶して、データ伝送装置間で共有する共有メモリと、前記共有メモリに記憶されたデータのうち、前記対応関係にあるコントローラが必要なデータを特定するリストを、前記コントローラから取得して記憶する第1記憶部と、前記第1記憶部に記憶する前記リストに基づき、前記必要なデータを当該対応関係にあるコントローラへ送信する送受信部と、を有し、前記コントローラは、前記必要なデータを特定するリストを記憶する第2記憶部を備え、前記第2記憶部は、前記必要なデータを特定するリストを前記データ伝送装置に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の監視制御システムの構成を示すブロック図である。
図2】実施形態のデータ伝送装置の構成を示すブロック図である。
図3】データ伝送装置間でのサイクリック伝送を示す模式図である。
図4】実施形態の監視制御システムの適用例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態の水処理施設の監視制御システムを、図面を参照して説明する。図1は、監視制御システムの構成を示すブロック図である。監視制御システム1は、上水道又は下水道の水処理施設の状態を監視し、水処理施設内の各デバイス100を運転計画に従って制御する。水処理施設の状態は、例えばデバイス100の運転、停止、異常、水位等を含む。デバイス100は、例えばポンプ及び弁等が挙げられる。
【0013】
この監視制御システム1は、監視制御サーバ2と操作端末3とを備えている。監視制御サーバ2と操作端末3は各々がコンピュータであり、通信インターフェースを備えて互いに通信可能となっている。操作端末3は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置、及びキーボードやマウスやタッチパネル等のマンマシン入力装置を更に備えている。この監視制御サーバ2は、水処理施設の状態を収集して操作端末3に送信し、操作端末3は、監視制御サーバ2が収集した水処理施設の状態を表示する。また、監視制御サーバ2は、操作端末3を用いたオペレータの操作に応じて水処理施設の運転計画を作成する。
【0014】
運転計画の実行のため、監視制御システム1は、監視制御サーバ2を最上位層としてデバイス100までに階層状の命令処理系統を構築している。このような監視制御システム1は、監視制御サーバ2に加えて、複数の上位コントローラ5及び複数の下位コントローラ6を備えている。上位コントローラ5はプログラマブルロジックコントローラである。下位コントローラ6はデバイス100を駆動するアナログ又はパルス波による電流又は電圧信号を生成する駆動回路とマイコンを備えている。
【0015】
監視制御サーバ2は、抽象度が高く解釈が必要な運転リクエストを水処理施設の運転計画に従って上位コントローラ5に送信する。尚、運転リクエストには、停止指示も含まれる。上位コントローラ5は、運転リクエストを解釈し、運転リクエストを達成するためのシーケンスを進め、実行コマンドを下位コントローラ6に送信する。下位コントローラ6は、デバイス100と接続され、実行コマンドを解釈し、実際にデバイス100を駆動するアナログ又はパルス波による電流又は電圧信号をデバイス100に出力し、デバイス100を駆動させる。
【0016】
上位コントローラ5は、運転リクエストの処理のために他の上位コントローラ5が有するデータを利用することがある。このため、監視制御システム1は更に複数のデータ伝送装置4を備えている。データ伝送装置4は、上位コントローラ5と1対1で対応付けられ、対応関係にある上位コントローラ5と接続されている。また、複数のデータ伝送装置4は、共通のネットワーク7に接続されて互いに通信可能となっている。このデータ伝送装置4は、産業用PCであり、対応関係にある上位コントローラ5のデータを取得しつつ、上位コントローラ5間のサイクリック伝送をデータ伝送装置4間で代行することで、他の上位コントローラ5が有するデータを共有し、対応関係にある上位コントローラ5が必要とするデータを当該上位コントローラ5に配布する。
【0017】
図2は、このようなデータ伝送装置4と上位コントローラ5のサイクリック伝送に係る構成を示すブロック図である。図2に示すように、データ伝送装置4は、局間送受信部41、局間共有メモリ42、局内送受信部43、局内共有メモリ44及びリスト記憶部45を備えている。また、上位コントローラ5は、局内送受信部51、局内共有メモリ52、リクエスト処理部53及びリスト記憶部54を備えている。
【0018】
局間送受信部41と局間共有メモリ42は、サイクリック伝送により各データ伝送装置4が同一内容を記憶する仮想的なメモリを作出する。図3は、データ伝送装置4間でのサイクリック伝送を示す模式図である。図3に示すように、局間共有メモリ42は、個々のデータ伝送装置4に備えられ、全データ伝送装置4で同じ論理アドレスが割り付けられている。局間送受信部41は、論理アドレスが重複しないように自ノードのエリア42aを宣言し、局間共有メモリ42内には、自ノードのエリア42aと他のデータ伝送装置4のエリア42bが確保されている。
【0019】
そして、局間送受信部41は、巡回するトークンを順番に獲得してトーカとなり、自ノードのエリア42aに書き込まれているデータをブロードキャストにて他のデータ伝送装置4に送信する。リスナとなっている他のデータ伝送装置4の局間送受信部41は、トーカによって確保されているエリア42bに、トーカから受信したデータを記憶させる。
【0020】
また、図3に示すように、データ伝送装置4の局内送受信部43及び局内共有メモリ44並びに上位コントローラ5の局内送受信部51及び局内共有メモリ52は、対応関係にあるデータ伝送装置4と上位コントローラ5が同一内容を記憶する仮想的なメモリを作出する。局内共有メモリ44と局内共有メモリ52には、対応関係にあるデータ伝送装置4と上位コントローラ5で同じ論理アドレスが割り付けられている。また、局内送受信部43は、論理アドレスが重複しないように自ノードのエリア44aを宣言し、局内送受信部51は、論理アドレスが重複しないように自ノードのエリア52aを宣言し、局内共有メモリ44内及び局内共有メモリ52内には、データ伝送装置4のエリア44aと上位コントローラ5のエリア52aが確保されている。
【0021】
そして、上位コントローラ5の局内送受信部51は、自ノードのエリア52aに書き込まれているデータを、対応関係にあるデータ伝送装置4に送信する。対応関係にあるデータ伝送装置4の局内送受信部43は、上位コントローラ5が確保したエリア52aに、上位コントローラ5から受信したデータを書き込む。また、データ伝送装置4の局内送受信部43は、自ノードのエリア44aに書き込まれているデータを、対応関係にあるデータ伝送装置4に送信する。対応関係にある上位コントローラ5の局内送受信部51は、データ伝送装置4が確保したエリア44aに、データ伝送装置4から受信したデータを記憶させる。
【0022】
ここで、図3に示すように、上位コントローラ5のリクエスト処理部53は、運転リクエストを解釈してシーケンスを進める。このリクエスト処理部53は、運転リクエストを処理してシーケンスを進めた結果、局内共有メモリ52の自ノードのエリア52aに、自身が発生させたデータを書き込む。また、上位コントローラ5によって確保された局内共有メモリ44内のエリア52aと、データ伝送装置4によって確保された局間共有メモリ42内のエリア42aは同じ領域である。換言すると、データ伝送装置4間でサイクリック伝送を行う局間送受信部41は、対応関係にある上位コントローラ5が自ノードとして確保されたエリア52aを、データ伝送装置4との間において自ノードのエリア42aとして宣言する。
【0023】
また、図3に示すように、リクエスト処理部53は、運転リクエストを処理するために、他の上位コントローラ5が発生させたデータを参照する。対応関係にある上位コントローラ5が参照するデータが書き込まれた局間共有メモリ42内のエリア44aと、データ伝送装置4によって自ノードとして確保された局内共有メモリ44内のエリア44aは同じである。換言すると、局内送受信部43は、対応関係にある上位コントローラ5が参照するデータが書き込まれたエリア44aを、上位コントローラ5との間において自ノードのエリア44aとして宣言する。
【0024】
図3に示すように、局内送受信部43は、自ノードのエリア44aを宣言する際、リスト記憶部45に記憶されているリスト45aを参照する。リスト45aは、対応関係にある上位コントローラ5が必要なデータが書き込まれる局内共有メモリ44内のエリア44aを特定している。局内送受信部43は、このリスト45aが特定するエリア44aを上位コントローラ5に対して自ノードのエリア44aとして確保する。尚、このリスト45aは、上位コントローラ5のリスト記憶部54に記憶されており、上位コントローラ5からデータ伝送装置4に送信され、リスト記憶部45に記憶される。
【0025】
例えば、第1の上位コントローラ5が有するデータD1は、この第1の上位コントローラ5が第1のデータ伝送装置4との関係において、自ノードのものとして宣言したエリア52aに記憶されている。このデータD1は、第1のデータ伝送装置4と第1の上位コントローラ5との通信によって、第1のデータ伝送装置4内の局内共有メモリ44のエリア52aに書き込まれる。第1のデータ伝送装置4のエリア52aは、局間共有メモリ42の立場からすると、第1のデータ伝送装置4がデータ伝送装置4間で宣言した自ノードのエリア42aでもある。そのため、第1のデータ伝送装置4は、第1の上位コントローラ5が有するデータを他のデータ伝送装置4に配布することになる。
【0026】
次に、他の上位コントローラ5が有するデータD2,D3は、データ伝送装置4間のサイクリック伝送によって、第1の上位コントローラ5の局間共有メモリ42のうち、他ノードが宣言したエリア42bに書き込まれている。全エリア42bのうち、データD2,D3が書き込まれたエリア42bは、局内共有メモリ44の立場からすると、第1のデータ伝送装置4が第1の上位コントローラ5との間で宣言した自ノードのエリア44aでもある。そのため、第1のデータ伝送装置4は、他のデータ伝送装置4が宣言した全エリア42bに書き込まれたデータのうち、データD2,D3のみを第1の上位コントローラ5に配布することになる。
【0027】
尚、第1のデータ伝送装置4が第1の上位コントローラ5との間で自ノードとして宣言していないエリア42bに書き込まれている、他の上位コントローラ5が有するデータD4,D5は、第1の上位コントローラ5にとって不要であり、第1の上位コントローラ5に渡されることはない。
【0028】
このように、データ伝送装置4は、対応関係にある上位コントローラ5のデータを取得し、データ伝送装置4間で共有する。換言すると、監視制御システム1が有する各上位コントローラ5は、全上位コントローラ5のデータの共有をデータ伝送装置4に任せ、上位コントローラ5間でのデータ共有は行わない。しかも、データ伝送装置4は、データ伝送装置4間で共有したデータのうち、対応関係にある上位コントローラ5が必要とするデータのみを、当該上位コントローラ5に渡す。
【0029】
そのため、上位コントローラ5の局内共有メモリ52は、監視制御システム1の規模が拡大し、上位コントローラ5の数が増加しても飽和してしまうことはない。従って、監視制御システム1の規模を拡大して中央集中型システムを構築することが可能となり、省人化を達成することができる。図4は、そのような監視制御システム1の適用例を示す構成図である。
【0030】
図4に示す監視制御システム1は、中央集中型システムであり、一施設に限らず、当該監視制御システム1の設置施設から離れた水処理施設を含む複数施設に対してWAN72を通じた管理及び制御を実行する。複数施設に対する管理及び制御によって上位コントローラ5の数は増大するが、上位コントローラ5が直接情報共有を行わず、データ伝送装置4が代行しているので、上位コントローラ5のハードウェア制限に関係なく、情報共有が図られている。
【0031】
データ伝送装置4は、対応関係にある上位コントローラ5と同一施設内に設置される。即ち、複数のデータ伝送装置4が接続された共通のネットワーク7は、LAN71とWAN72で構築されている。LAN71は、監視制御サーバ2が設置される場内に敷設される他、監視制御サーバ2の無い他の水処理施設にも敷設され、監視制御サーバ2の無い他の水処理施設内のLAN71にもデータ伝送装置4が接続されている。尚、LAN71は冗長性を持たせるべく二重化され、LAN71とWAN72との間にはゲートウェイ装置73が設置される。
【0032】
次に、上位コントローラ5と下位コントローラ6との接続に関し、従来は、一般電話回線を使用した接続方式であるテレメータ回線となる場合があった。その理由は次の通りである。即ち、上位コントローラ5に台数制限がある場合、一台の上位コントローラ5にできるだけ多くの下位コントローラ6を接続する必要がある。そして、一台の上位コントローラ5に接続する全ての下位コントローラ6が上位コントローラ5の周りに密集していない場合がある。このケースでは、遠隔の地にある下位コントローラ6と上位コントローラ5との間は、伝送距離の制約によりLAN接続が使用できず、テレメータ回線となるものである。テレメータ回線は、回線事業者に対する料金が必要となるほか、LAN8と比べて伝送速度が低速であるために、データ送受信のレスポンスの遅延を運用上のリスクとして許容する必要がある。
【0033】
これに対し、この監視制御システム1では、上位コントローラ5の台数制限が無い。従って、他の下位コントローラ6から離れた場所に設置された下位コントローラ6には、その下位コントローラ6専用の上位コントローラ5を別途配置することが可能である。換言すると、下位コントローラ6と上位コントローラ5とをLAN接続が可能な位置関係に置くことができる。従って、この監視制御システム1では、上位コントローラ5と下位コントローラ6は、テレメータ回線に依らずLAN8で接続される。
【0034】
このように、この監視制御システム1は、デバイス100をシーケンス制御する複数の上位コントローラ5と、上位コントローラ5の1又は複数と対応付けられ、対応関係にあるコントローラと通信可能に接続されると共に、相互に通信可能な複数のデータ伝送装置4とを備えるようにした。データ伝送装置4は、対応関係にある上位コントローラ5のデータを記憶して、データ伝送装置4間で共有する局間共有メモリ42と、局間共有メモリ42に記憶されたデータのうち、対応関係にある上位コントローラ5が必要なデータのみを、当該対応関係にある上位コントローラ5へ送信する局間送受信部41とを有するようにした。
【0035】
これにより、上位コントローラ5の数が増加する事態となっても、各上位コントローラ5のデータを共有することができるため、監視制御システム1の規模を拡大させ、中央集中型システムを構築することが可能となり、省人化を達成することができる。即ち、監視制御システム1から離れた遠隔の複数の水処理施設のデバイス100を制御することが可能となる。
【0036】
また、上位コントローラ5から実行コマンドを受けて実際にデバイス100を稼働させる下位コントローラ6を備え、上位コントローラ5と下位コントローラ6とは、LAN8により接続されるようにした。これは、上位コントローラ5の数の増加が容易になったためであるが、これにより、上位コントローラ5と下位コントローラ6との間をLAN8により接続でき、回線事業者に対する料金が不要となるほか、遅延が少ないので、監視制御システム1による高速処理が可能となる。
【0037】
また、上位コントローラ5は、必要なデータを特定するリスト45aを記憶するリスト記憶部54を備え、データ伝送装置4は、リスト45aを取得して記憶するリスト記憶部45を備え、局内送受信部43は、当該リスト45aに基づき、必要なデータを対応関係にある上位コントローラ5に送信するようにした。これにより、上位コントローラ5側で必要となるデータが変更されてもデータ伝送装置4側で即座に対応することができ、システムに柔軟性を付与できる。
【0038】
(他の実施形態)
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0039】
例えば、データ伝送装置4は、上位コントローラ5と1対1で対応付けられる例を説明したが、1対nで対応付けられていてもよい。データ伝送装置4内の自ノードのエリア42aを分割して、複数の上位コントローラ5の自ノードのエリア52aが割り当てられるようにする。また、複数の上位コントローラ5からリスト45aを受け取り、各リスト45aで特定される全てを自ノードのエリア44aとする。そして、データ伝送装置4及び各上位コントローラ5のデータ送受信は、送信先を特定したメッセージ伝送とする。
【0040】
また、上位コントローラ5と下位コントローラ6は、1対1で対応付けられる他、1対nで対応付けられるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 監視制御システム
2 監視制御サーバ
3 操作端末
4 データ伝送装置
41 局間送受信部
42 局間共有メモリ
42a エリア
42b エリア
43 局内送受信部
44 局内共有メモリ
44a エリア
45 リスト記憶部
45a リスト
5 上位コントローラ
51 局内送受信部
52 局内共有メモリ
52a エリア
53 リクエスト処理部
54 リスト記憶部
6 下位コントローラ
7 ネットワーク
71 LAN
72 WAN
73 ゲートウェイ装置
8 LAN
100 デバイス
図1
図2
図3
図4