(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01T 1/161 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
G01T1/161 C
G01T1/161 ZDM
(21)【出願番号】P 2019114532
(22)【出願日】2019-06-20
【審査請求日】2022-04-22
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ チャン
(72)【発明者】
【氏名】ホイニィ ドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ケント・シー・バー
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0210255(US,A1)
【文献】特表2018-506021(JP,A)
【文献】特開2014-182059(JP,A)
【文献】特表2001-508171(JP,A)
【文献】米国特許第04588897(US,A)
【文献】特開2016-010649(JP,A)
【文献】特開2017-207482(JP,A)
【文献】特開平01-320491(JP,A)
【文献】特開2012-225923(JP,A)
【文献】特開2014-021123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00 - 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検出器要素を有するガンマ線検出器により検出されたガンマ線の入射位置とエネルギーとを表すデータを複数の検出イベント毎に取得するイベント取得部と、
前記複数の検出器要素のうちの一次ガンマ線のエネルギーの一部を吸収する検出器要素とは異なる検出器要素において散乱ガンマ線のエネルギーが吸収されるマルチチャネル検出中に生じる、
当該マルチチャネル検出におけるクロストークに起因するエネルギーシフトを補正するための補正係数を取得する補正係数取得部と、
前記データに基づいて前記複数の検出イベントの中からマルチチャネルイベントを選択する選択部と、
前記補正係数を前記
選択されたマルチチャネルイベントに属する
2以上の検出イベントのエネルギー
値に適用し、補正エネルギー
値を生成する補正部と、
を具備し、
前記補正係数は、較正段階において取得された較正マルチチャネルイベントに属する2以上の検出イベントのエネルギーの代表エネルギー値と予め定義されたエネルギー値とのシフト量に基づく係数である、
医用画像処理装置。
【請求項2】
前記補正部は
、前記
選択されたマルチチャネルイベントに属する
前記2以上の検出イベントのエネルギー
値の合計エネルギー
値と前記補正係数との加算に基づいて前記補正エネルギー
値を生成する、請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記補正部は
、前記
選択されたマルチチャネルイベントに属する
前記2以上の検出イベントのエネルギー
値の合計エネルギー
値と前記補正係数との乗算に基づいて前記補正エネルギー
値を生成する、請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記補正部は、前記補正エネルギー
値を生成するため、
エネルギーウィンドウのうちの最大エネルギー及び最小エネルギーから前記補正係数を減算することによって前記エネルギーウィンドウをシフトし、
前記複数の検出イベントのうちのマルチチャネルイベント毎に、
当該マルチチャネルイベントに属する2以上の検出イベントのエネルギー
値の合計エネルギー
値を生成し、
前記シフトされたエネルギーウィンドウ内に合計エネルギー
値を有するマルチチャネルイベントを選択する、
請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記補正部は、前記補正エネルギー
値を生成するため、
エネルギーウィンドウのうちの最大エネルギー及び最小エネルギーを前記補正係数で除算することによって前記エネルギーウィンドウをシフトし、
前記複数の検出イベントのうちのマルチチャネルイベント毎に、
当該マルチチャネルイベントに属する2以上の検出イベントのエネルギー
値の合計エネルギー
値を生成し、
前記シフトされたエネルギーウィンドウ内に合計エネルギー
値を有するマルチチャネルイベントを選択する、
請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記データは、更に前記ガンマ線の検出時刻を表し、
前記選択部は、
前記複数の検出イベントのうちの最小エネルギー閾値を上回るエネルギー
値を有する2以上の特定の検出イベントを選択し、
前記選択された2以上の特定の検出イベントの任意の組合せ各々の中から、入射位置と検出時刻とエネルギーとの少なくとも一要素に基づいて、同一のマルチチャネルイベントに属する2以上の検出イベントを選択する、
請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記補正係数は、前記複数の検出器要素内でのガンマ線のヒット数に応じて複数の補正係数を有し、
前記
補正部は、前記
選択されたマルチチャネルイベントを前記ヒット数に応じて分類し、分類後の各ヒット数のマルチチャネルイベントのエネルギー
値に、前記複数の補正係数のうちの対応するヒット数の補正係数を適用する、
請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記補正係数は、前記複数の検出器要素各々の空間座標に応じた複数の補正係数を有し、
前記
補正部は、前記
選択されたマルチチャネルイベントのエネルギー
値に、前記複数の補正係数のうちの、前記
選択されたマルチチャネルイベントに属する複数の検出イベントにそれぞれ対応する複数の入射位置の重み付き平均に対応する補正係数を適用する、
請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記重み付き平均は、前記複数の検出イベントにそれぞれ対応する複数の入射位置の正規化加重和に基づいて計算され、
前記重みは、前記検出イベントのエネルギー
値を、非ゼロの実数で累乗した値である、
請求項8記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記空間座標は、前記複数の補正係数各々に対応するブロックにセグメント化され、
前記ブロックのサイズは、予め定義された空間分解能基準及び前記複数の補正係数の精度又は信頼性に関する予め定義されたカウント基準のうちの1つ又は複数を満たすように選択される、
請求項8記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記空間座標は、前記複数の補正係数各々に対応するブロックにセグメント化され、
前記ブロックのサイズは、マルチチャネルイベントのヒット数に応じて異なる、
請求項8記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
前記補正部は、前記
選択されたマルチチャネルイベントに属する検出イベントのエネルギー
値に、前記補正係数を適用する前において、初期の非線形エネルギー補正を適用する、請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項13】
前記補正部は、前記初期の非線形エネルギー補正として、検出されたガンマ線のエネルギ
ー値と実際のエネルギーとの間の非線形関係を補正する、請求項12記載の医用画像処理装置。
【請求項14】
前記イベント取得部は、
前記較正段階において、前記ガンマ線検出器により検出されたガンマ線の入射位置とエネルギーとを表す較正データを複数の較正検出イベント毎に取得し、
前記選択部は、前記較正データに基づいて前記複数の較正検出イベントの中から
前記較正マルチチャネルイベントを選択し、
前記補正係数取得部は、前記
選択された較正マルチチャネルイベント毎
に前記補正係数を生成する、
請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項15】
前記補正係数は、乗法補正係数又は加法補正係数を含む、請求項14記載の医用画像処理装置。
【請求項16】
前記ガンマ線検出器は、各々が複数の検出器要素を含む複数の検出器要素ブロックを有し、
前記代表エネルギー
値は、前記複数の検出器要素ブロック各々によるマルチチャネルイベントのカウントのヒストグラムにおける中央値、モード及び平均値のうちの1つに対応するエネルギー
値である、
請求項14記載の医用画像処理装置。
【請求項17】
前記補正エネルギー
値に基づいて画像を再構成する再構成部を更に備える、請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項18】
複数の検出器要素を有するガンマ線検出器により検出されたガンマ線の入射位置とエネルギーとを表すデータを複数の検出イベント毎に取得し、
前記複数の検出器要素のうちの一次ガンマ線のエネルギーの一部を吸収する検出器要素とは異なる検出器要素において散乱ガンマ線のエネルギーが吸収されるマルチチャネル検出中に生じる、
当該マルチチャネル検出におけるクロストークに起因するエネルギーシフトを補正するための補正係数を取得し、
前記データに基づいて前記複数の検出イベントの中からマルチチャネルイベントを選択し、
前記補正係数を前記
選択されたマルチチャネルイベントに属する
2以上の検出イベントのエネルギー
値に適用して補正エネルギー
値を生成する、
ことを具備し、
前記補正係数は、較正段階において取得された較正マルチチャネルイベントに属する2以上の検出イベントのエネルギーの代表エネルギー値と予め定義されたエネルギー値とのシフト量に基づく係数である、
医用画像処理方法。
【請求項19】
コンピュータに、
複数の検出器要素を有するガンマ線検出器により検出されたガンマ線の入射位置とエネルギーとを表すデータを複数の検出イベント毎に取得し、
前記複数の検出器要素のうちの一次ガンマ線のエネルギーの一部を吸収する検出器要素とは異なる検出器要素において散乱ガンマ線のエネルギーが吸収されるマルチチャネル検出中に生じる、
当該マルチチャネル検出におけるクロストークに起因するエネルギーシフトを補正するための補正係数を取得し、
前記データに基づいて前記複数の検出イベントの中からマルチチャネルイベントを選択し、
前記補正係数を前記
選択されたマルチチャネルイベントに属する
2以上の検出イベントのエネルギー
値に適用して補正エネルギー
値を生成する、
ことを実現させ、
前記補正係数は、較正段階において取得された較正マルチチャネルイベントに属する2以上の検出イベントのエネルギーの代表エネルギー値と予め定義されたエネルギー値とのシフト量に基づく係数である、
医用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
陽電子放射トモグラフィ(PET)において、放射性トレーサ剤は、患者に導入され、放射性トレーサ剤の物理的性質及び生体分子の性質により患者の体内の特定の位置に濃縮する。放射性トレーサ剤は、陽電子を放出する。陽電子が電子と衝突すると、消滅イベントが発生し、略180度離れて進む511keVの2つのガンマ線を生成する。
【0003】
PETシステムは、ガンマ線の同時計数ペアを検出するために患者の周りに配置された検出器を使用する。検出器のリングは、各角度から来るガンマ線を検出するために使用される。従ってPETシステムの架台は、等方性放射の捕捉を最大化するために実質的に円筒である。検出器は、数千個の個々の結晶(例えば、オルトケイ酸ルテチウム(LYSO)又は他のシンチレータ結晶)から構成される。これらシンチレータ結晶は、シンチレーションイベントからの光パルスを測定するために光検出器を有するモジュール中にパッケージされた2次元シンチレータアレイを構成する。例えば、シンチレータ結晶からの光は、複数の光電子増倍管(PMT)の間で共有されるか、又はシンチレータ結晶との1対1の対応を有するシリコン光電子増倍管(SiPM)によって検出される。
【0004】
断層撮影の再構成の原理を介して放射性トレーサ剤の空間的及び時間的な分布を再構成するために、各検出されたイベントは、それのエネルギー(すなわち、生成された光の量)、それの位置、及びそれのタイミングについて特徴づけられる。2つのガンマ線を検出し、それらの検出位置間に応答線(LOR:line-of-response)を引くことによって、対消滅の可能性のある位置を決定することができる。タイミング情報は、また、2つのガンマ線の飛行時間(TOF:time-of-flight)情報に基づいて、LORに沿う対消滅の統計的分布を決定するために使用される。多数のLORを蓄積することによって、患者内の放射能(例えば、放射性トレーサ剤の密度)の空間分布の立体画像を再構成することができる。
【0005】
単光子放出計算機トモグラフィ(SPECT)は、各検出器要素(例えば、シンチレータ結晶)上でのガンマ線の入射の立体角を制限するためにコリメータが使用されること以外はPETと同様であり、LORを決定するために一致を必要とするのとは反対に、単一のガンマ線検出イベントを使用して再構成を可能にする。
【0006】
位置情報(例えば、LOR)及びタイミング情報(例えば、TOF)に加えて、PETシステム及びSPECTシステムの検出器は、画像再構成プロセスにおいてエネルギー情報を取得及び使用する。エネルギー測定値に関しては、測定プロセスにおける非線形性及び/又は実施上の考慮すべき問題点が存在する。当該問題点としては、例えば、ガンマ線エネルギーがコンプトン散乱に起因して複数の検出器又はチャネルに吸収されるマルチチャネルのガンマ線検出におけるチャネル間の光又は電荷共有(クロストーク)がある。これらに起因してエネルギー測定値は理想的な線形応答から逸れる。従ってピクセル型ガンマ線検出器においてエネルギー測定値を補正する改善された技法が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、マルチチャネル検出におけるクロストークに起因するエネルギー測定値の劣化を高精度の補正することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る医用画像処理装置は、複数の検出器要素を有するガンマ線検出器により検出されたガンマ線の入射位置とエネルギーとを表すデータを複数の検出イベント毎に取得するイベント取得部と、前記複数の検出器要素のうちの一次ガンマ線のエネルギーの一部を吸収する検出器要素とは異なる検出器要素において散乱ガンマ線のエネルギーが吸収されるマルチチャネル検出中に生じる、クロストークに起因するエネルギーシフトを補正するための補正係数を取得する補正係数取得部と、前記データに基づいて前記複数の検出イベントの中からマルチチャネルイベントを選択する選択部と、前記補正係数を前記マルチチャネルイベントに属する検出イベントのエネルギーに適用し、補正エネルギーを生成する補正部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実装形態による、エネルギー較正を生成する方法及びエネルギー測定値を補正するためにエネルギー較正を使用する方法の流れ図の例を示す図。
【
図2A】一実装形態による、陽電子放射トモグラフィ(PET)スキャナの透視図。
【
図2B】一実装形態による、PETシステムの概略図。
【
図3A】一実装形態による、単結晶及び光電子増倍管(PMT)を有するガンマ線検出器モジュールの図。
【
図3B】一実装形態による、アレイとして構成され、光検出器としてPMTを使用する複数のシンチレータ結晶要素を有するガンマ線検出器モジュールの図。
【
図3C】一実装形態による、アレイとして構成され、光検出器としてシリコン光電子増倍管(SiPM)を使用する複数のシンチレータ結晶を有するガンマ線検出器モジュールの図。
【
図4A】一実装形態による、PMTを使用するガンマ線検出器(GRD)モジュールの上面図。
【
図4B】一実装形態による、PMT-GRDモジュールの側面図。
【
図4C】一実装形態による、一連のシンチレータ結晶アレイの斜視図。
【
図4D】一実装形態による、アンガーロジックを使用して計算された位置に応じたカウントのフラッドマップ較正の上面図。
【
図5】本開示の幾つかの態様による、単一の1次ガンマ線から2つのエネルギー信号を生じるコンプトン散乱の一例を示す図。
【
図6A】一実装形態による、閾値超過時間(TOT:time-over-threshold)測定のプロットを示す図。
【
図6B】一実装形態による、所与のパルス形状について、閾値に対する比率ピーク高さに応じたTOTのプロットを示す図。
【
図7A】シングルチャネル検出イベントについて、ピクセル間で信号共有がない場合のピクセル(すなわち、シンチレータ結晶)間のエネルギー分布の一例を示す図。
【
図7B】シングルチャネル検出イベントについて、ピクセル間で5%の光共有がある場合のピクセル間のエネルギー分布の一例を示す図。
【
図8A】マルチチャネル検出イベントについて、ピクセル間で信号共有がない場合のピクセル(すなわち、シンチレータ結晶)間のエネルギー分布の一例を示す図。
【
図8B】マルチャネル検出イベントについて、ピクセル間で5%の光共有がある場合のピクセル間のエネルギー分布の一例を示す図。
【
図9】一実装形態による、互いに隣接する第1のシンチレータ結晶(78)において測定されたTOT値と第2のシンチレータ結晶(66)において測定されたTOT値とに応じたマルチチャネルイベントについてのカウント密度のプロットを示す図。
【
図10A】シングルチャネル検出イベント(1ヒット)、2チャネル検出イベント(2ヒット)、3チャネル検出イベント(3ヒット)、及び4チャネル検出イベント(4ヒット)についての、エネルギー補正なしの合計エネルギーのヒストグラムのプロットを示す図。
【
図10B】シングルチャネル検出イベント(1ヒット)、2チャネル検出イベント(2ヒット)、3チャネル検出イベント(3ヒット)、及び4チャネル検出イベント(4ヒット)についての、エネルギー補正ありの合計エネルギーのヒストグラムのプロットを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
陽電子放射トモグラフィ(PET)及び単光子放出計算機トモグラフィ(SPECT)のための画像再構成は、位置、時間及び/又はエネルギー情報を使用して実行される。エネルギー測定値は、様々な実施上の考慮すべき点により理想的な線形応答から逸脱する。例えば、非線形性は、エネルギーを表すために代わりの量として閾値超過時間を使用することの結果として測定プロセス中に起こり得る。更に、ガンマ線が、単一のガンマ線について2つ(以上)の信号を生じるコンプトン散乱を受けるときなどに発生するガンマ線のマルチチャネル検出は、単一のガンマの2つ(以上)の信号のエネルギー値を合計することによって幾分かは補正される。とはいえ、光共有及び/又は電荷共有により、隣接チャネルがマルチチャネルイベントに関与するとき、合計エネルギーは、ガンマ線がシングルチャネルイベントとして(例えば、コンプトン散乱なしで)検出された場合に測定されるエネルギーから逸脱する。そこで、本実施形態に係る方法及び装置は、実質的に線形な補正エネルギー値を生成する。
【0011】
大部分の商用のPETシステムは、陽電子と電子との対消滅によって生成される511keVのエネルギーを有するガンマ線を検出するためにシンチレータ結晶のアレイを使用する。PETシステムは、エネルギー及び位置情報を与えることができる。ガンマ線のエネルギーは、シンチレータ結晶間での散乱(例えば、コンプトン散乱)により2つのシンチレータ結晶によって共有される場合がある。単一のガンマ線からのエネルギーが2つ以上のシンチレータ結晶又はチャネルにおいて検出されるとき、検出イベントは「マルチチャネル検出」と呼ばれる。散乱イベントの合計エネルギーは、全ての関係するシンチレータ結晶からの個々のエネルギーを加算することによって復元される(各シンチレータ結晶とそれらの対応する光検出器、増幅器及び電子回路は「チャネル」とも呼ばれる)。加算は、読出し及び電子回路の選定に応じてアナログ又はデジタル方法のいずれかを通して実現される。
【0012】
シンチレータ結晶中に残留されるエネルギーは電気信号に変換され、当該電気信号はデジタル化される。このデジタル化プロセスは、様々な方法によって実行され得る。ガンマ線のエネルギー測定値をデジタル化するための方法として、閾値超過時間(TOT:time-over-threshold)法がある。TOT法は、コスト面で優れており、高いチャネル密度を必要とする実施例に容易に適用される。TOT値は所与のチャネルに吸収される実際のエネルギーに単調に関係するが、TOTと実際のエネルギーとの関係性は完全な線形から逸脱することがある。本実施形態においては、このような線形性からのずれが補正される。
【0013】
本明細書で使用する「エネルギー」という用語は、実際の又は真のエネルギーに直接的に関係する較正エネルギーを意味するように限定されない。概して、本明細書で使用する「エネルギー」という用語は、実際の又は真のエネルギーを表し、それに単調に関係するエネルギー座標を指定する。従って、「エネルギー」という用語は、コンテキストが別段に明確に示さない限り必ずしも実際の又は真のエネルギーを指すとは限らない。例えば、エネルギーの合計について本明細書で説明するとき、この合計は、実際のエネルギーに直接的に関係する較正値ではなく「エネルギー座標」に対して実行される。測定された/未加工のエネルギーEraw(すなわち、「エネルギー座標」)の関係が、非線形関数Eraw=f(Etrue)によって真のエネルギーEtrueに関係するので、2チャネル検出からの2つの測定されたエネルギーf(E1)及びf(E2)の和(すなわち、E1+E2=ETotal、ETotalは入射の真のエネルギー、例えば、511keV)は、等価なシングルチャネル検出のための測定された/未加工のエネルギーと等しくならない、すなわち、f(E1)+f(E2)≠f(ETotal)=f(E1+E2)である。従って、信号チャネル検出とマルチチャネル検出のエネルギーを正確に比較するために、エネルギー較正及び補正が、マルチチャネル検出の合計されたエネルギーに適用される。
【0014】
読出しチャネルの数が極めて高いとき、超高回数レートでより良い性能が達成され、不感時間及びパイルアップ効果を低減し得る。一例は、シンチレータ結晶の1対1の読出しであり、各シンチレータ結晶が単一の光検出器に直接結合される。この場合、シンチレータ結晶は、シンチレーション光子に変換されたガンマ線エネルギーがガンマ線エネルギーを吸収したシンチレータ結晶内に維持されるように光学的に隔離される。光隔離は不完全であり、シンチレータ結晶間の最良の遮光材料の場合でも、隣接する結晶間に少量の光クロストークが生じてしまう。従って、本実施形態に係る装置及び方法は、チャネル間のクロストークを示すマルチチャネル検出中に測定されたエネルギーの差を考慮するエネルギー較正を与える。
【0015】
同一の参照番号は、幾つかの図全体に亘り同じ又は対応する部分を指定するものとする。
図1は、PETデータ105中のエネルギー測定値を補正するための方法100の流れ図の非限定的な例を示し、PETデータ105中のエネルギー測定値を補正するために方法100において使用されるべきエネルギー較正を決定するための方法160の流れ図の非限定的な例を示す。
図2A及び
図2Bに、方法100及び160を実行するために使用され得るPETスキャナの非限定的な例を示す。
【0016】
図1に、PETデータ105を補正するためにマルチチャネルイベントを考慮するためにPETデータのエネルギー較正を実行し、較正されたPETデータからPET画像155を再構成する方法100及び160のフローチャートを示す。方法100及び160は、
図2A及び
図2Bに示すPETシステム200により実行される。
【0017】
ステップ110においてプロセッサ270は、ガンマ線検出器からPETデータ105を取得し、前処理する。具体的には、プロセッサ270は、複数の検出器要素を有するガンマ線検出器により検出されたガンマ線の入射位置とエネルギーとを表すPETデータ105を複数の検出イベント毎に取得する。検出イベントは、より詳細には、対消滅により発生した一対のガンマ線の同時計数イベントである。プロセッサ270は、ガンマ線検出器からデータ収集システム276を介してPETデータ105を取得する。本実施形態において検出器要素は、チャネルと同義である。検出イベントは、複数の検出器要素及びモジュールにおいて検出される。検出器モジュールの各々は、2つ以上のチャネル(すなわち、検出器要素)を含む。
【0018】
ステップ120においてプロセッサ270は、PETデータ105に基づいて、複数の検出イベント各々を、ヒット数に応じたグループに分類する。ヒット数は、シンチレータ結晶内でのガンマ線の相互作用の回数を意味する。相互作用は、シンチレータ結晶によるガンマ線の吸収を意味し、典型的には、光電吸収及びコンプトン散乱であり、更に電子対生成が加味されてもよい。グループは、シングルチャネルイベントに対応するグループとマルチチャネルイベントに対応するグループとに大別される。シングルチャネルイベントは、1ヒットに対応し、1次ガンマ線の検出イベントである。ヒット数は、本実施形態において多重度に近似することとなる。多重度は、一の入射ガンマ線を検出した光検出器又はチャネルの個数である。
【0019】
まずプロセッサ270は、PETデータ105に基づいて、複数の検出イベントの中からマルチチャネルイベントを選択する。次にプロセッサ270は、PETデータ105から、当該マルチチャネル検出イベントを構成する複数の検出イベントのPETデータをグループ化する。すなわち、マルチチャネルイベントは、ヒット数に応じた、更に細かなグループに分類される。マルチチャネルイベントは、2ヒット以上に対応し、例えば、1回以上のコンプトン効果及び/又は電子対生成と1回の光電効果とを意味する。マルチチャネルイベントのグループは、1次散乱に対応するグループ、2次散乱に対応するグループ、更に高次の散乱に対応するグループ等がある。1次散乱に対応するグループは、2ヒット、すなわち、1次ガンマ線の一部を吸収し散乱ガンマ線として残りのエネルギーを放出する第1のシンチレータ結晶のヒットと散乱ガンマ線を吸収した第2のシンチレータ結晶のヒットとを含む。同様に、2次散乱に対応するグループは、3ヒット、すなわち、1次ガンマ線についての1ヒットと2つの散乱ガンマ線についての2ヒット)を含む。より高次散乱に対応するグループ、例えば、4ヒットを含む3次散乱に対応するグループも同様に定義可能である。マルチチャネルイベントは、例えば、検出信号の時間的及び空間的な近接度に基づいて、信号のエネルギーの和、及び合計されたエネルギーと検出信号の時間的及び空間的な近接度との任意の組合せに基づいて判別される。例えば、ガンマ線源が周知のエネルギー(例えば、陽電子消滅からのガンマ線について511keV)を有する場合、信号の合計が既知のエネルギーに近くなればなるほど、信号が同じマルチチャネルイベントに対応する可能性が高くなる。更に、時間的に互いにより近接して発生した信号は、同じマルチチャネルイベントに対応する可能性が高く、空間的に互いにより近接して発生した信号は、同じマルチチャネルイベントに対応する可能性が高くなる。更に、上記の3つの状態(すなわち、エネルギー、時間及び空間)の全てが充足されるとき、信号は、同じマルチチャネルイベントに対応する可能性が一層高くなる。プロセッサ270は、PETデータに対する多変量統計解析を使用して、PETデータからマルチチャネルイベントを選択する。
【0020】
プロセッサ270は、例えば、2次以上のコンプトン散乱が発生したとき、特定の検出器モジュールの2つ以上のチャネルが3つ以上のチャネルを含むのか否かを決定する。幾つかの実装形態では、1次散乱のみがタイミング較正のために使用され、高次散乱についてのマルチチャネルイベントは廃棄される。他の実装形態では、1次散乱と高次散乱との両方のためのマルチチャネルイベントがタイミング較正のために使用される。従って、プロセッサ270は、対応する2チャネルイベントに2つ以上のチャネルのデータを分解するか、あるいはマルチチャネルイベントを完全に廃棄してもよい。
【0021】
ステップ130においてプロセッサ270は、マルチチャネルイベントについて位置データを決定される。本明細書では、「位置データ」又はより単純に「位置」という用語は、3次元空間における絶対位置、所与の検出器モジュール内の2次元座標を指すか、又は検出器アレイモジュール内の個々のシンチレータ結晶を一意に識別するインデックスなどの結晶識別情報(ID)などを指す。例えば、結晶IDは、3次元のユークリッド空間における絶対位置ではないが、検出イベントが発生した物理的位置を示す。従って、「位置データ」及び「位置」は、直線で囲まれた空間に対応するように較正された絶対位置を意味することに限定されず、むしろ、「位置データ」及び「位置」という用語は、別個の結晶要素を空間的に指定/識別する座標である。
【0022】
1次散乱の場合において、検出器要素における2ヒットのグループはマルチチャネルイベントであるものとして選択される。ヒットの各々は、位置(x)及びエネルギー(E)及び幾つかの実装形態では時間(t)の量を含む検出器チャネルの検出信号である。従って、2つのヒットがある場合、第1及び第2の時間(すなわち、t1及びt2)、第1及び第2の位置(すなわち、x1及びx2)、第1及び第2のエネルギー(すなわち、E1及びE2)があることになる。マルチチャネルイベントの位置を決定するために任意の方法が使用される。例えば、エネルギー重み付けされた2次元座標が、例えば、次式を使用して各マルチチャネルイベントについて計算される。
【0023】
【0024】
ここで、xi
→はチャネルiの中央座標であり、Eiはチャネルiのエネルギーである。例えば、Eiは、非線形較正されたエネルギーでもよいし、未加工のエネルギー値でもよい。wは、エネルギー重みEi
Wを得るためにエネルギーEiに適用される冪指数(exponent又はpower)であり、wは、0を除く任意の値である。後述するように、i番目のチャネルのための中央座標xi
→は、結晶識別情報(ID)に基づいて取得される。
【0025】
ステップ140においてプロセッサ270は、補正されたPETデータを生成するために、エネルギー較正185をPETデータに適用する。エネルギー較正185は、エネルギーに関して閾値超過時間(TOT)の値を線形化する補正、シングルチャネルイベントとマルチチャネルイベントとの間のエネルギー差の補正、又はこれらの補正の組合せを含むことができる。
【0026】
幾つかの実装形態では、PETデータ105のエネルギー値は、画像再構成のために、予め定義されたウィンドウ(例えば、511keV周辺のエネルギーウィンドウ)内にエネルギーを有する同時計数カウントのみを選択するために使用される。この場合、マルチチャネルエネルギーのスケーリングを適用し、シフト/スケーリングされたエネルギーに、511keV周辺のウィンドウを適用するのではなく、逆スケーリングがウィンドウに適用され、シフトされたウィンドウが、シフトされていないマルチチャネルエネルギーに適用される。このようにして、ウィンドウは、スケーリングのみを必要とし、所与のブロックについてシフトされたウィンドウ及び散乱/多重度の順序は、そのブロック及び多重度中のマルチチャネルイベントの各々に使用される。異なる較正は、異なるブロックに、及び所与のブロック内の異なるチャネル多様性に適用することができる。多重度は、マルチチャネル検出に関与するチャンネルの数を指す。例えば、1次コンプトン散乱は、2の多重度に対応する2チャネルで検出される。2次コンプトン散乱は、3の多重度に対応する3チャネルで検出され、以下同様である。
【0027】
異なるエネルギー較正又はシフトが、各ブロックに、及び所与のブロック内の各多重度に適用される。また、これらの各エネルギー較正又はシフトは、ルックアップテーブル中に記憶される。多くのブロック及び多重度がありえても、所与のブロック中の多重度ごとに多くのマルチチャネルイベントがある。従って、計算の数は、所与の多重度及びブロックに対応する多くのマルチチャネルイベントの各々にエネルギーシフトを適用するのではなく、所与の多重度及びブロックについてのウィンドウにエネルギーシフトを適用することによって低減される。
【0028】
ステップ150においてプロセッサ270は、任意の既知の再構成方法を使用して補正後のPETデータからPET画像155を再構成する。例えば、PETデータは、ボクセル位置に応じた放射能レベル(例えば、放射線トレーサ剤密度)の画像を再構成するために使用される。画像再構成は、逆投影法、フィルタ補正逆投影法、フーリエ変換ベースの画像再構成法、逐次画像再構成法、行列反転画像再構成法、統計画像再構成法、リストモード法、又は他の再構成法、あるいはそれらの組合せを使用して実行され得る。例えば、初期PET画像は、FBP再構成されたPET画像で初期化された順序付きサブセット期待値最大化(OS-EM:ordered subset expectation maximization)アルゴリズムを使用して再構成される。
【0029】
較正段階においてプロセッサ270は、方法160の実行により、較正データ165からエネルギー較正185を生成する。較正データ165は、PETシステム200のガンマ線検出器の検出器要素により生成されたPETデータである。較正データ165は、陽電子放射線源からの同時計数カウントとして生成されるが、必ずしもそれから生成される必要はない。代替的に、較正データ165は、異なるガンマ線エネルギーを生成する不対のガンマ線(「不対放射線源」と呼ばれる)の1つ又は複数の陽電子放射線源を使用して生成されてもよい。プロセッサ270は、較正段階において、ガンマ線検出器により検出されたガンマ線の入射位置とエネルギーとを表す較正データを複数の較正検出イベント毎に取得する。
【0030】
例えば、較正データ165は、約30年の半減期を有し、662keVのエネルギーをもつガンマ線を生成するセシウム同位体137(Cs-137)の1つ又は複数の部分を有する不対放射線源を使用して生成される。Cs-137の当該部分は、ビーム内でほぼ均一なガンマ線の束密度を実現するように構成される。幾つかの実装形態では、ビームは、コーンビームでもよいし、又は全球である4πステラジアンに同位体的に放射されてもよい。Cs-137によって生成された662keVのエネルギーを有するガンマ線は、陽電子放射の放射線源によって生成された511keVのガンマ線よりも高い。複数の部分の代わりに、実質的に均一に分布された放射線源が使用されてもよい(一般に「フラッドソース」として知られる)。使用される他のガンマ線源は、例えば、以下を含む。
【0031】
(i)コバルト同位体60(5.3年の半減期をもち、1.17MeV及び1.33MeVのガンマ線エネルギーをもつCo-60)
(ii)ゲルマニウム同位体68(0.74年の半減期をもち、511keVのガンマ線エネルギーをもつGe-68)
(iii)ナトリウム同位体22(2.6年の半減期をもち、511keV及び1.275MeVのガンマ線エネルギーをもつNa-22)
所与の放射線源によって生成されたガンマ線のエネルギーが、陽電子放射によって生成された511keVのエネルギーよりも大きいとき、これらのより高いガンマ線エネルギーは、511keVの大小双方を含む大きいエネルギー範囲をカバーするコンプトン散乱において様々な検出器要素に残留エネルギーを生じる。これは、TOT値からエネルギーへのマッピングの較正をより高精度に行うことが可能になる。
【0032】
ステップ170においてプロセッサ270は、較正データに基づいて、複数の較正検出イベントの中から較正マルチチャネルイベントを選択する。すなわち、プロセッサ270は、まず、較正データ165を、マルチチャネルイベントとシングルチャネルイベントとに分類する。較正データ165の総セットからのマルチチャネルイベントのこのソート及びフィルタ処理は、方法100のステップ120において説明した方法と同様の方法を使用して実行される。
【0033】
ステップ180においてプロセッサ270は、較正データ165に基づいてエネルギー較正185を生成する。上記で説明したように、エネルギー較正185は、TOT非線形性補正、マルチチャネル補正又はその両方を含む。例えば、エネルギー較正185は、非線形補正を表す式のパラメータを取得するために各検出器要素の位置又は識別情報(ID)によってインデックス付けされたルックアップテーブルである。従って、エネルギー較正のパラメータ化は、検出器要素ベースによって検出器要素に対して実行される。例えば、以下で説明するように、電荷共有によるマルチチャネル検出に関して発生したエネルギーシフトΔEは、次式によってパラメータ化される。
【0034】
【0035】
ここで、xは、シンチレータ結晶1中に残されたエネルギーの割合であり、δ1及びδ2は、隣接するシンチレータ結晶との2つの結晶の光クロストークである。このパラメータ化では、エネルギーシフトは、光クロストークのレベルに比例する。幾つかのシンチレータ結晶アレイでは、δ1及びδ2はまた、共有の方向に依存し得る(例えば、光共有は非対称であり得る)。従って、クロストークのレベルがシンチレータ結晶ごとに変動するとき、エネルギーシフトΔEは、機能エネルギー共有として変化する。幾つかの実装形態では、光クロストークのレベル及びエネルギーシフトの量ΔEは、以下で説明するように、検出器モジュール内のシンチレータ結晶の位置に依存し得る。
【0036】
次に、環形状に構成された検出器モジュール(すなわち、ガンマ線検出器(GRD))で構成されたPETシステム200の非限定的な例の説明を与える。検出器モジュールの各々は、検出器要素の幾つかのアレイを含むことができる。GRDは、(例えば、光、赤外、及び紫外波長で)ガンマ線をシンチレーション光子に変換するためのシンチレータ結晶アレイを含み、シンチレーション光子は、光検出器によって検出される。
図2A及び
図2Bに示す非限定的な例では、光検出器は、各シンチレータ結晶よりも大きい光電子増倍管(PMT)である。好ましい一実施形態では、光検出器は、個々のシンチレータ結晶の断面積を近似する検出断面積を有することができるシリコン光電子増倍管(SiPMs)であり、シンチレータ結晶と光検出器との間で1対1の対応を形成する。この実施形態を、
図3C及び
図5に示す非限定的な例によって示す。光検出器がシンチレータ結晶よりも大きく、従って、複数のシンチレータ結晶からの光信号を検出するために単一の光検出器が使用される場合、位置を決定するためにアンガーロジックが使用される。但し、シンチレータ結晶と光検出器との間に1対1の対応があるとき、アンガーロジックが必ずしも必要とされない。
【0037】
図2A及び
図2Bは、方法100及び160を実装することができるPETシステム200の非限定的な例を示す。PETシステム200は、矩形の検出器モジュールを構成する複数のガンマ線検出器(GRD)(例えば、GRD1、GRD2~GRDN)を含む。例えば、検出器リングは、40個のガンマ線検出器GRDを含む。なお、検出器リングが有するガンマ線検出器GRDの個数はこれに限定されず、40個より多くても少なくてもよい。例えば、検出器リングは、48個のガンマ線検出器GRDを有してもよいし、PETシステム200のよりボア径を大きくするため、より多くの数のガンマ線検出器GRDを有してもよい。
【0038】
各ガンマ線検出器は、ガンマ放射線を吸収し、シンチレーション光子を放出する個々の検出器結晶の2次元アレイを含む。シンチレーション光子は、同じくガンマ線検出器に構成される光電子増倍管(PMT)の2次元アレイによって検出される。検出器結晶のアレイとPMTとの間に光ガイドが配設される。
【0039】
代替的に、シンチレーション光子は、シリコン光電子増倍管(SiPM)アレイによって検出されてもよい。この場合、検出器結晶各々はSiPMを有することとなる。
【0040】
各光検出器(例えば、PMT又はSiPM)は、シンチレーションイベントがいつ発生したのかと検出イベントを生成するガンマ線のエネルギーとを示すアナログ信号を生成する。更に、1つの検出器結晶から放出された光子が2つ以上の光検出器によって検出され、各光検出器において生成されたアナログ信号に基づいて、検出イベントに対応する検出器結晶は、例えば、アンガーロジック及び結晶復号を使用して決定される。
【0041】
図2Bは、対象物OBJから放出されたガンマ線を検出するように構成されたガンマ線光子計数検出器(GRD)を有するPETシステムの概略図を示す。GRDは、各ガンマ線検出に対応するタイミング、位置及びエネルギーを測定することができる。一実装形態では、ガンマ線検出器は、
図2A及び
図2Bに示すように、リングに構成される。検出器結晶は、2次元アレイに構成された個々のシンチレータ材を有するシンチレータ結晶である。シンチレータ材は、任意の材料でよい。PMTは、シンチレーションイベントのアンガーロジック及び結晶復号を可能にするために各シンチレータ結晶からの光が複数のPMTによって検出されるように構成される。
【0042】
図2Bに、PETシステム200の構成の一例を示し、ここで、撮像されるべき対象物OBJが、天板216に載置される。ガンマ線検出器モジュールGRD1~GRDNは、対象物OBJ及び天板216を囲むように円周に沿って配置される。ガンマ線検出器は、架台240に固定的に接続されている円形構成要素220に固定的に接続され得る。架台240は、対象物OBJと天板216とが通ることができる開口を含む。消滅イベントにより対象物OBJから互いに反対方向に放出された一対のガンマ線は、ガンマ線検出器によって検出される。タイミング及びエネルギー情報は、ガンマ線ペアの同時計数を決定するために使用される。
【0043】
図2Bは、PETシステム200に含まれる、ガンマ線検出データを取得、記憶、処理及び分配するための回路及びハードウェアを示す。回路及びハードウェアは、プロセッサ270、ネットワークコントローラ274、メモリ278及びデータ収集システム(DAS)276を含む。PETシステム200はまた、DAS276、プロセッサ270、メモリ278及びネットワークコントローラ274にガンマ線検出器により生成された検出測定値をルーティングするデータチャネルを含む。データ収集システム276は、ガンマ線検出器からの検出データの収集、デジタル化及びルーティングを制御することができる。一実装形態においてDAS276は、寝台による天板216の移動を制御する。プロセッサ270は、本明細書で説明するように、検出データから画像を再構成すること、検出データの前再構成処理及び画像データの後再構成処理を含む機能を実行する。
【0044】
プロセッサ270は、本明細書で説明する方法100及び160の様々なステップ及びそれらの変形形態を実行するように構成される。プロセッサ270は、個別論理ゲート、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又は他の複雑なプログラマブル論理デバイス(CPLD)として実装されるCPUを含むことができる。FPGA又はCPLD実装形態は、VHDL、Verilog、又は任意の他のハードウェア記述言語でコーディングされ、コードは、直接FPGA又はCPLD内で又は別個の電子メモリとして電子メモリ中に記憶される。更に、メモリは、ROM、EPROM、EEPROM(登録商標)又はフラッシュメモリなどの不揮発性でもよい。メモリはまた、スタティック又はダイナミックRAMなどの揮発性であり、マイクロコントローラ又はマイクロプロセッサなどのプロセッサは、電子メモリならびにFPGA又はCPLDとメモリとの間の相互作用を管理するために与えられてもよい。
【0045】
代替的に、プロセッサ270中のCPUは、方法100及び160の様々なステップを実行するコンピュータ可読命令のセットを含むコンピュータプログラムを実行することができ、プログラムは、上記で説明した非一時的電子メモリ及び/あるいはハードディスクドライブ、CD、DVD、フラッシュドライブ又は任意の他の既知の記憶媒体のいずれかに記憶される。更に、コンピュータ可読命令は、米国のIntelからのXeonプロセッサ又は米国のAMDからのOpteronプロセッサなどのプロセッサ、ならびにマイクロソフト VISTA、UNIX(登録商標)、Solaris、LINUX(登録商標)、Apple、MAC-OS及び当業者に既知の他のオペレーティングシステムなどのオペレーティングシステムと併せて実行するユーティリティアプリケーション、バックグラウンドデーモン、又はオペレーティングシステムの構成要素、あるいはそれらの組合せとして与えられる。更に、CPUは、命令を実行するために並行して協働的に動作する複数のプロセッサとして実装される。
【0046】
メモリ278は、ハードディスクドライブ、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、フラッシュドライブ、RAM、ROM又は当技術分野において既知の任意の他の電子ストレージでよい。
【0047】
米国のIntel CorporationからのIntelイーサネット(登録商標)PROネットワークインターフェースカードなどのネットワークコントローラ274は、PETイメージャの様々な部分の間をインターフェースすることができる。更に、ネットワークコントローラ274はまた、外部ネットワークとインターフェースすることができる。諒解され得るように、外部ネットワークは、インターネットなどの公衆ネットワークあるいはLAN又はWANネットワークなどのプライベートネットワーク、又はそれらの任意の組合せでよく、PSTN又はISDNサブネットワークをも含んでもよい。外部ネットワークはまた、イーサネット(登録商標)ネットワークなどのワイヤードであるか、又はEDGE、3G及び4Gワイヤレスセルラーシステムを含むセルラーネットワークなどのワイヤレスでもよい。ワイヤレスネットワークはまた、WiFi、Bluetooth(登録商標)、又は既知の通信の任意の他のワイヤレス形態でもよい。
【0048】
図3A、
図3B及び
図3Cは、ガンマ線検出器の幾つかの非限定的な実装形態を示す。なお、ガンマ線検出器はガンマ線カメラとも呼ばれる。
図3Aでは、シンチレータ結晶は、単一のモノリシックブロックである。ここでは光電子増倍管(PMT)として示される光検出器のアレイによって検出される2次光子にガンマ線光子を変換するシンチレーションイベントの位置が図示されている。シンチレーションイベントの位置は、アンガーロジックを使用して決定される。
【0049】
図3Bでは、周期配列された個別のシンチレータ結晶に切り出され、反射材により光学的に分断されたシンチレータ結晶アレイが示される。ブロック中のシンチレータ結晶間の光隔離は、不完全であり、隣接するシンチレータ結晶との間で光共有が生じうる。光検出器がPMTである場合、隣接するシンチレータ結晶間の光共有は、シンチレータ結晶を出た後に発生する光共有と比較して小さい。この場合、PETデータにアンガーロジックを使用して、シンチレーションイベントの位置(ガンマ線の入射位置)が近似的に決定される。次いで、計算された入射位置に、フラッドマップに基づき較正されたルックアップテーブルを適用し、シンチレータ結晶アレイを構成する各シンチレータ結晶のインデックスを決定する。
【0050】
図3Cでは、各シンチレータ結晶からの光が、各シリコン光電子増倍管(SiPM)によって検出される。各シンチレータ結晶が光検出器に一対一接続している場合、光検出器間での光共有が低減される。更に、この場合、各シンチレータ結晶は、単一の検出モジュール内の異なるシンチレータ結晶で発生する同時シンチレーションイベント間の識別を可能にすること(例えば、隣接するシンチレータ結晶間でコンプトン散乱を識別すること)によって分解能を拡張し得る。
【0051】
長年にわたり、PETについて最も一般に使用される光検出器はPMTである。PMTは、入射光子を光電子に変換するための仕事関数を有する光電陰極材料を包含する真空管である。光電子は、印加された電場により加速され、ダイノードのカスケードと相互作用することによって増幅される。得られた電流は、初期シンチレーション光子の数、すなわち、ガンマ線によってシンチレーション結晶内に残留するエネルギーに比例する。
【0052】
例えば、多くの小型のSiPM等の位置高感度型のPMTの性質を活用して、例えば、アンガーロジックを使用してシンチレータブロックをセグメント化することによって、光子検出の位置が決定される。
図3B及び
図3Cでは、サイズが数ミリメートルである小さい個々のシンチレータ結晶がブロック又はモジュールに稠密に配置されている。各シンチレータ結晶は光検出器に結合される。アンガーロジックでは、対消滅光子の相互作用位置は、光検出器からの相対信号を比較することによって決定される。光検出器からの相対信号は、分散したシンチレーション光子信号に起因する相対的な光共有によって決定される。次いで、決定された相互作用位置に基づいて、フラッドマップに基づき較正されたルックアップテーブルを利用して、ガンマ線が入射したシンチレータ結晶が決定される。
【0053】
図4A及び
図4Bは、光検出器としてPMTを使用するガンマ線検出器モジュールGRD1の上面図及び側面図をそれぞれ示す。
図4A及び
図4Bに示すガンマ線検出器は、2つの異なるサイズのPMT(25mmのPMTと38mmのPMT)を含む。2つの異なるサイズのPMTを含むことにより、全て同じサイズのPMTを含む場合に比して、シンチレータ結晶アレイをカバーする面積を広げることができる。アレイ1及びアレイ5は、11画素×16画素であり、アレイ2、アレイ3及びアレイ4は、8画素×16画素である。
図4Cは、5つの結晶アレイの斜視図を示し、
図4Dは、アンガーロジックを使用して計算された概略位置に応じたカウントのヒストグラムのフラッドマップ較正を示す。アンガーロジックにより概略位置が算出されるので、ヒストグラムの極大値は、各シンチレータ結晶の中心に対応するものとして識別される。次いでヒストグラムの極大値は、位置情報(例えば、チャネルiの中央座標のx
i
→)を決定するときに使用されるルックアップテーブルにおける位置較正として記憶される。
【0054】
図5は、第1のシンチレータ結晶中でコンプトン散乱を受け、その結果、残りのエネルギーが第2のシンチレータ結晶に残留される入射ガンマ線の非限定的な例を示す。第1及び第2のシンチレータ結晶は、次いで、それぞれ光電吸収を介して2次光子を生成し、その結果、対応するSiPMが、第1及び第2のエネルギー信号を生成する。散乱角度は小さく、第1のエネルギー信号中のエネルギーは、第2のエネルギー信号中のエネルギーよりも少ない。第1及び第2のパルスの形状が同じで大きさが異なる場合でも、
図5に示すように、パルスの立ち上りエッジが所定値を超えた事に基づく到着時間に生じるタイムウォークオフセットに起因して、2つの信号が異なる時間に発生したと登録される。
【0055】
図6A及び
図6Bは、ステップ180において較正され、ステップ140において適用されるTOT非線形補正についてのプロットを示す。
図6Aは、時間経過に応じて変化する、ガンマ線検出からのパルスの電圧のプロットを示す。
図6Aには、約1.2ミリボルトにおける予め定義された閾値が示される。パルスがこの閾値を超える持続時間がTOT値である。
図6Bに示すように、TOT値は、検出されたガンマ線のエネルギーに単調に関係する。この関係は、パルス形状がパルスの大きさの変化に関わらず歪まないとき、パルスの曲線下面積(Area Under the Curve)又はパルス振幅により表される。閾値を下回る信号では、ヒットは登録されない。
【0056】
図6Bのプロットをモデル化する関数は、ステップ180において任意の方法に基づいて較正データから生成される。例えば、シングルチャネルイベントのみを使用して、ガンマ線について既知のエネルギー値を有する異なるエネルギー源が使用され、当該異なるエネルギー値に対応するTOT値が決定される。関数(例えば、シフトされた平方根)がこれらのポイントにカーブフィッティングされる。また、コンプトン散乱による散乱ガンマ線の測定データを使用して、より低いガンマ線エネルギーを補われる。それらは、入射ガンマ線よりも少ないエネルギーを有する。コンプトン散乱検出のエネルギーは、曲線下面積又はパルス振幅に基づいて決定される。この較正が、一度実行され、メモリに記憶され、次いで、PETスキャンが実行又は処理されているときにメモリから呼び戻される。上記の較正の方法は、非限定的な例であり、TOT値からエネルギーへのマッピングを較正する他の方法が、本明細書で説明する方法及び装置の趣旨から逸脱することなく使用されてもよい。
【0057】
閾値超過時間(TOT)法は、所与の閾値を上回る信号の総時間を測定することによって信号の振幅を推定する。測定された時間は、次いで、非線形変換(例えば、
図6Bに示すマッピング関数)を通して振幅に変換して戻される。閾値の存在により、閾値を下回る全ての振幅は、0、すなわち、「ヒットなし」として判別される。TOT法が、無視できない光クロストークを有する検出器アレイに適用された場合、入射ガンマ線のエネルギーが散乱により2つのシンチレータ結晶により共有されるとき、測定された合計エネルギーはシフトすることになる。
【0058】
図7Aは、シンチレータ結晶アレイ中の画素(すなわち、シンチレータ結晶)間にクロストークが発生しないシングルチャネル検出イベントの理想的な場合を示す。すなわち、検出されたエネルギーの100%がガンマ線を吸収した画素中に残留する。
図7Bは、シングルチャネルイベントにおける5%のクロストークの場合を示す。すなわち、光共有が5%であるとき、ガンマ線が入射した画素にエネルギーの80%が残留し、各隣接画素はエネルギーの5%を受ける。
【0059】
図8A及び
図8Bは、それぞれ、2ヒットマルチチャネル検出イベント(例えば、1つの1次ガンマ線及び1つの散乱ガンマ線)についてのクロストークなし及び5%のクロストークの理想的な場合を示す。この非限定的な例は、隣接シンチレータ結晶間の5%の光クロストークと10%のTOT閾値とを仮定する。
図8Aでは、合計エネルギーは、シングルチャネルの場合と同じである60+40=100となる。ただし、
図8Bでは、合計エネルギーは、シングルチャネルの場合よりも5%多くなる(48+2)+(32+3)=85となる。マルチチャネル検出では、閾値を上回るチャネルへのクロストークを介して合計エネルギーの3%及び2%が結合されるが、シングルチャネル検出では、クロストークを介してエネルギーが結合されるチャネルの全てが閾値を下回るので、
図8Aと
図8Bとの比較により現れる差が生じる。すなわち、シングルチャネル検出の場合では、何れのクロストークエネルギーも測定エネルギー(すなわち、閾値を上回るエネルギー)に含まれないが、2チャネル検出の場合では、クロストークエネルギーの5%が測定エネルギーに取り戻される。従って検出器要素が完全な線形応答を有するときでも、クロストークは、シングルチャネル検出の測定エネルギーから逸れているマルチチャネル検出から測定された合計エネルギーに生じる。
【0060】
クロストークの場合、シングルチャネル及び2チャネル検出について測定された合計エネルギーは、次式によって与えられる。
【0061】
【0062】
ここで、fは、第1のシンチレータ結晶(すなわち、1次ガンマ線からのエネルギーを吸収するシンチレータ結晶)に残留されたエネルギーの割合である。δ1は第2のシンチレータ結晶に対する第1のシンチレータ結晶の光クロストークであり、δ2は第1のシンチレータ結晶に対する第2のシンチレータ結晶の光クロストークである。幾つかの実装形態では、異なる光クロストークが隣接するシンチレータ結晶毎に使用され、個々の検出器は、エネルギーに対して完全な線形応答を有するとみなされる。マルチチャネルの場合、次式が得られる。
【0063】
【0064】
ここで、E
0は、クロストークがない場合に測定されるエネルギーである。右側の第1の項E
0f(1-4δ
1)は、第1のシンチレータ結晶中のエネルギーからクロストークによる損失を減じたものである。右側の第2の項E
0fδ
1は、第1のシンチレータ結晶からのクロストークにより第2のシンチレータ結晶により得られたエネルギーである。第3の項E
0(1-f)(1-4δ
2)は、第2のシンチレータ結晶中のエネルギーからクロストークによる損失を減じたものである。右側の第4の項E
0(1-f)δ
2は、第2のシンチレータ結晶からのクロストークにより第1のシンチレータ結晶により得られたエネルギーである。例えば、
図8Bでは、f=0.6であり、δ
1=δ
2=0.05であり、その結果、第1の項は、E
0f(1-4δ
1)=0.48E
0となり、第2の項は、E
0fδ1=0.03E
0となり、第3の項は、E
0(1-f)(1-4δ
2)=0.32E
0となり、第4の項は、E
0(1-f)δ
2=0.02E
0となる。上記の式は、2ヒットマルチチャネルの場合、次式に簡略化することができる。
【0065】
【0066】
シングルチャネルの場合、f=1であり、エネルギーは次式によって与えられる。
【0067】
【0068】
エネルギー差は、次式によって与えられる。
【0069】
【0070】
3ヒットや4ヒット等に対応するマルチチャネルイベントについて同様の式を導出することができる。
【0071】
マルチチャネルのうちの2つのチャネルが隣接しないとき(例えば、
図5に示すように、2つのチャネル間にシンチレータ結晶があるとき)、クロストークエネルギーは、閾値を超えるチャネルに結合するのではない。合計エネルギーはシングルチャネルイベント中に測定されるのと同じである。
【0072】
上記の説明に鑑みて、所与のエネルギー測定値について、ガンマ線のエネルギーが複数のチャネルの間で共有される場合、較正されていない合計エネルギーはクロストークのレベルに依存することが観察される。例えば、ΔE(f,δ1,δ2)についての上記の式は、光クロストークδ1及びδ2のレベルに比例するエネルギーシフトを示す。更に、クロストークがシンチレータ結晶ごとに変動する場合、エネルギーシフトは、エネルギー共有の関数として変化する。従って、エネルギーシフトの量は、空間依存のクロストークパラメータδ1(X→)及びδ2(X→)によってパラメータ化される。空間依存のクロストークパラメータδ1(X→)及びδ2(X→)は、位置X→によってインデックス付けされたルックアップテーブルを使用して取得される。すなわち、エネルギー較正185は、位置x→における補正ルックアップテーブルを含み、これは、シンチレータ結晶間で共有するエネルギーの大きさを表す。マルチチャネルイベントごとに、エネルギー較正185は、ステップ140において、マルチチャネルイベントについて位置X→を計算し、位置X→を使用して空間依存のクロストークパラメータδ1(X→)及びδ2(X→)をルックアップし、次いで、2ヒットマルチチャネルイベントについて上記の補正係数(δ1+3f(δ2-δ1))等の補正係数を適用してマルチチャネルについて合計エネルギーを補正することによって適用される。
【0073】
クロストークによる非線形性は、
図9に示される。
図9は、シンチレータ結晶間(すなわち、結晶ID66及び結晶ID78)のマルチチャネルイベントの測定カウントをグレイスケールで表す。クロストークがない場合に観察される線形応答に対応する線が
図9に示されている。
図9は、非線形エネルギー測定値について、ガンマ線のエネルギーが複数のチャネルによって共有される場合、較正されていない合計エネルギーは、エネルギーの分布態様に依存することを示す。
【0074】
個々のチャネルでのエネルギー測定値の非線形性を近似的に較正するために初期の粗いエネルギー較正が使用されてもよい。例えば、初期エネルギー較正は、TOT値とエネルギーとの間の非線形関係を補正することができる。初期の粗いエネルギー較正は、シングルチャネルイベントのみを使用して実行されてもよい。
【0075】
上記で説明したように、エネルギー補正は、マルチチャネルイベント座標X→を使用してインデックス付けされるルックアップテーブルに空間的に依存し、それに基づき得る。次に、座標X→を決定する非限定的な方法が与えられる。マルチチャネルイベントは、上記で説明した初期の粗い較正を使用するか、あるいは既知のエネルギーを有するガンマ線源を使用した測定値から補正された較正(PET)データから収集される。次いで、合計エネルギーEsum=Σi
nEi
W及びエネルギー重み付けされた2次元座標X→=Σi
nxi
→Ei
W/Esumがマルチチャネルイベントごとに計算される。上記で説明したように、xi
→はチャネルiの中央座標であり、Eiは、エネルギー値(例えば、非線形較正されたエネルギー値又は未加工のエネルギー値)であり、wは、0以外の任意の値であり得るエネルギーの重みである。
【0076】
エネルギーウィンドウは、信頼できるとみなすには低すぎるかあるいは高すぎるエネルギーを有するヒットをフィルタで除去するために使用されてもよい。
【0077】
ステップ180におけるエネルギー較正の生成は、完全な2次元空間座標X
→を複数のブロックにセグメント化することを含んでもよい。各ブロック中で、合計エネルギーの関数としてのカウント数のヒストグラムが、
図10Aに示すように生成される。例えば、
図10Aでは、「1ヒット」のヒストグラムは、シングルチャネルイベントに対応する。「2ヒット」のヒストグラムは、2つのヒットに関するマルチチャネルイベント(例えば、1次コンプトン散乱)に対応する。「3ヒット」のヒストグラムは、3つのヒットに関するマルチチャネルイベント(例えば、1つの1次ガンマ線と2つの散乱ガンマ線とを有する2次コンプトン散乱)に対応し、以下同様である。
図10Aでは、マルチチャネルイベントに対応するヒストグラムのピークは、陽電子放射についての511keVの既知のエネルギーで発生しない。従って、ヒストグラムのピークのエネルギーが決定され、決定されたピークを既知のエネルギー(例えば、陽電子放射源が使用されるときの511keV)にシフトするための補正パラメータが決定される。
【0078】
補正パラメータは、乗法定数又は加法定数である。例えば、補正パラメータC(X→)が乗法定数であるとき、所与のブロックについての補正パラメータは、ヒストグラムEhist=mode(Esum(X→))において、中央エネルギー(例えば、ピークエネルギー)に対する入射ガンマエネルギーE0(例えば、511keV)の比として計算される。
【0079】
【0080】
ここで、演算子(・)は、ヒストグラム中の最も高頻度の値を返す。既知のエネルギーにシフトされるべきである中央エネルギーとしてモードを使用する代わりに、ヒストグラムの中央又はピークエネルギーは、中央値又は平均ヒストグラムによって与えられるか、又はガウスなどの関数形態にヒストグラムを適合させることによって決定されてもよい。本明細書で説明する方法の趣旨から逸脱することなく、ヒストグラムEhistの中央エネルギー(例えば、幾何又は算術平均など)を決定するために任意の方法が使用されればよい。
【0081】
補正パラメータが加法定数であるとき、所与のブロックについて補正パラメータC(X→)は、入射ガンマエネルギーE0(例えば、511keV)と中央又はピークヒストグラムエネルギーEhistとの差として次式のように計算される。
【0082】
【0083】
所与のブロックが信頼できる統計解析を実行するのに十分なカウントがないと決定され、ピークエネルギーEhistを正確に決定することができない場合、補正パラメータC(X→)にデフォルト値が割り当てられる。デフォルト値は、例えば、補正パラメータC(X→)が乗法であるとき1の値、補正パラメータC(X→)が加法であるとき0の値に設定される。
【0084】
エネルギー分解能をより良好にするため、多重度(すなわち、ヒット数)に応じた補正ルックアップテーブルと補正パラメータC(X→)とが生成及び使用されてもよい。例えば、多重度の様々なレベルごとに異なる補正パラメータC(X→)、例えば、2結晶イベント(すなわち、2つのヒット)のためにC2(X→)、3結晶イベント(すなわち、2つのヒット)のためにC3(X→)などが生成される。
【0085】
更に、ブロックのサイズは、異なる補正パラメータC2(X→)又はC3(X→)等毎に異なる値に設定されてもよい。例えば、異なる多重度レベルに対応する座標空間X→のそれぞれのセグメント化(例えば、ブロックサイズ及び粗視化の程度)は、分解能について予め定義された目標及び予め定義された統計要件(例えば、所望の信号対雑音比SNR)等の予め定義された基準に依存することができる。例えば、所与の多重度におけるブロックサイズ(すなわち、マルチチャネルイベントごとのヒット数)は、ブロックごとのカウント数が予め定義された閾値を超えることを保証することに基づき、その結果、多重度が高くなるとブロックサイズがより大きくなる。すなわち、多重度が増加するとカウントレートが減少し得る。更に、ブロックサイズが予め定義された最大分解能の限界を超える多重度は、破棄され、再構成から省略され得る。
【0086】
例えば、
図10Aに示すように、多重度「4ヒット」について、ヒストグラムのピーク又は中央エネルギーを決定することを困難にする低カウントレートが観察される。従って、これらのカウント数は、破棄され、断層撮影画像再構成中に使用されないことがある。この場合、最大多重度レベルは「3ヒット」になる。従って、最大多重度レベルと収集されたデータの必要とされる統計とは、目標とする分解能に応じて予め決定される。
【0087】
ステップ140において、エネルギー較正185を適用し、PETデータ105を補正するために、ステップ120において判別されたPETデータ105のマルチチャネルイベントの各々について、PETデータ105から合計エネルギーEsumが計算される。更に、ステップ130において計算された座標X→は、エネルギー較正185において、マルチチャネルイベントの各々について、補正係数Cn(X→)を探索するために使用される。ここでnは多重度を指す。次に、補正パラメータ/係数Cn(X→)は、合計エネルギーEsumに適用される。例えば、補正係数C(X→)が乗法であるとき、補正エネルギーは次式によって与えられる。
【0088】
【0089】
補正係数C(X→)が加法であるとき、補正エネルギーは次式によって与えられる。
【0090】
【0091】
幾つかの適用例では、再構成は、エネルギーがエネルギーウィンドウの範囲内にあるか否かのみに依存する。例えば、エネルギーウィンドウは、画像再構成において使用するのに十分信頼できる同時計数カウントを選択するために使用される。この場合、実際のエネルギー値は有意ではなく、より単純且つ高速な手法は、合計エネルギー値をシフトするのではなく、エネルギーウィンドウをシフトすることである。例えば、エネルギーウィンドウが[EMin,EMax]で、補正係数C(X→)が乗法であるとき、シフトされたエネルギーウィンドウは、[EMin/Cn(X→)、EMax/Cn(X→)]によって与えられる。同様に、補正係数C(X→)が加法であるとき、シフトされたエネルギーウィンドウは[EMin-Cn(X→)、EMax-Cn(X→)]によって与えられる。従って、多重度及びブロックごとに、補正係数C(X→)は、所与のブロック内の合計エネルギーEsumの各々に繰り返し適用されるのではなく、エネルギーウィンドウの各端部EMin及びEMaxに1回適用される。
【0092】
図10Bは、補正PETデータが使用されることを除いて、
図10Aと同様のヒストグラムを示す。
図10Bに示すように、2ヒットマルチチャネルイベントに関するエネルギーピークは、既知のエネルギー(すなわち、511keV)により厳密に一致するようにシフトされている。同様に、3ヒットマルチチャネルイベントに関するエネルギーピークは、既知のエネルギーに向かってシフトされている。
【0093】
上記に鑑みて、本明細書で説明するエネルギー較正方法は、幾つかの利点を有する。第1に、これらの方法を使用して正確なエネルギー測定値が復元され、マルチチャネル/結晶イベントについて測定されたエネルギーがシングルチャネル/結晶イベントと同等になる。第2に、TOT測定値の初期の粗いエネルギー較正の後に残る残余の非線形性が緩和され得る。第3に、本実施形態に係る方法は、計算量的に効率的であり、ルックアップテーブルを使用して容易に実装され得る。第4に、本実施形態に係る方法は、非物質的な結果に対してロバストであり得る。例えば、補正されたエネルギーは負のエネルギー値を生成しない。
【0094】
本実施形態に係る方法の様々な実装形態は、任意の非線形エネルギー測定値及び/又はピクセル型ガンマ検出器のチャネル間のクロストークによりマルチチャネルイベントで起こる合計エネルギーのシフトを補正することを含むことができる。これらの方法は、(i)ガンマ線について既知のエネルギーを有するガンマ線源を使用して較正データを取得することと、(ii)マルチチャネルイベントのエネルギー重み付けされた位置を計算することと、(iii)ガンマ線の既知のエネルギーを有する合計エネルギーを比較することによって補正ルックアップテーブルを生成することと、(iv)PETスキャンからのPETデータ中のマルチチャネルイベントにルックアップテーブル中の補正係数を適用することを含むことができる。
【0095】
幾つかの実装形態では、ガンマ検出器は、別個の結晶要素のアレイにセグメント化されるシンチレータ結晶を含むことができ、又は、代替的に、幾つかの他の実装形態では、ガンマ検出器は、別個の結晶要素のアレイにセグメント化されないシンチレータ結晶を含むことができる。更に、シンチレータ結晶は、光検出器に一対一で結合されてもよく、また、光検出器に一対一で結合されなくてもよい。
【0096】
個々のエネルギー読取値に初期の粗い非線形補正を適用するオプションが設けられており、それによって、エネルギー較正の性能を改善する。幾つかの実装形態では、この初期の粗い非線形補正は、ルックアップテーブル又はパラメータ化された式を使用して実行される。パラメータ化された式は、第一原理に基づき、経験的又は実験的に決定される。
【0097】
マルチチャネルイベントは、予め定義された時間ウィンドウ内で認識され、全て非ゼロエネルギーであると判別する1つのマルチチャネルを選択又はフィルタ処理され、予め定義された時間ウィンドウ内で非ゼロエネルギーであると判別するチャネル又はシンチレータ結晶は、予め定義された距離内にある。
【0098】
幾つかの実装形態では、マルチチャネルイベントごとに、非線形補正又は未加工のいずれかのエネルギー読取値が、エネルギー重み付けされた2次元座標を計算するために使用される。エネルギーは、予め定義された非ゼロの冪指数wによって累乗される。
【0099】
幾つかの実装形態では、較正データからのマルチチャネルイベントは、それらの2次元座標及びそれらの多重度(すなわち、マルチチャネルイベント中のヒット/チャネルの数)に従ってブロックにグループ化/クラスタリングされる。各グループ中で、ヒストグラムの中央又はピークエネルギーが決定され、補正係数(例えば、乗法補正係数あるいは加法補正係数)がガンマ線源の既知のエネルギーに中央又はピークエネルギーをシフトするために計算される。ヒストグラムピークの中央又はピークエネルギーを決定するのに十分なカウントがない場合、補正係数はデフォルト値に設定される。デフォルト値は、例えば、補正係数が乗法補正係数の場合、1に設定され、又は補正係数が加法補正係数の場合、0に設定される。
【0100】
ピクセル型ガンマ検出器の2次元座標中のブロックへのセグメント化は、補正されるべきエネルギーシフトの信頼できる推定値を達成するのに必要である分解能の指定された目的/基準ならびに/あるいはブロックごとのカウントに基づいて各多重度でブロックサイズを生成するように、実行される。例えば、ブロックサイズは、エネルギー分解能の改善のバランスをとることと較正のために必要とされるリソースとの間のトレードオフに影響を及ぼすよう選択される。
【0101】
多重度各々について、補正係数とエネルギー重み付けされた2次元座標の位置とが関連付けられた補正ルックアップテーブル(LUT)が形成されてもよい。
【0102】
多重度でのセグメント化に依存して、1つのLUTあるいは複数のLUTが生成されてもよい。複数のLUTが生成された場合、異なるLUT中での2次元座標のセグメント化において使用されるブロックサイズは同じである必要がない。むしろ、異なるLUTを生成するために異なる多重度のセグメント化において使用されるブロックサイズは、カウント密度、エネルギー補正の精度及び/又はエネルギー補正の大きさによって決定される。LUTは、オフライン補正のために、又はデータ収集中の(例えば、リアルタイムでの)オンライン補正のために使用される。
【0103】
全てのLUTが較正されると、イベントのエネルギー重み付けされた座標及びヒットの回数を使用してLUT中の補正係数を探索することによってマルチチャネルイベントの合計エネルギーが得られる。
【0104】
あるエネルギーウィンドウ内のイベントを選択する場合、合計エネルギー補正は、イベント選択のために使用されるエネルギーウィンドウに直接的に適用される。また、補正されたエネルギーウィンドウは、次いで、イベントを保持し、画像の再構成のためにイベントを使用すべきか否かを決定するために較正されていないデータに適用されることになる。この場合、補正されたPETデータは、シフトされたエネルギーウィンドウの外部にイベント/カウントのない、シフトがイベントの記録されたエネルギー値に適用されることのないPETデータである。
【0105】
上記の説明において、本実施形態に係る撮像システムは、PETシステムに適用されるとしたが、例えば、SPECTシステム等の他の撮像システムに適用されてもよい。
【0106】
上記の説明の通り、本実施形態に係る医用画像処理装置は、プロセッサ270を有する。プロセッサ270は、イベント取得部、補正係数取得部、選択部及び補正部を有する。イベント取得部は、複数の検出器要素を有するガンマ線検出器により検出されたガンマ線の入射位置とエネルギーとを表すPETデータを複数の検出イベント毎に取得する。補正係数取得部は、複数の検出器要素のうちの一次ガンマ線のエネルギーの一部を吸収する検出器要素とは異なる検出器要素において散乱ガンマ線のエネルギーが吸収されるマルチチャネル検出中に生じる、クロストークに起因するエネルギーシフトを補正するための補正係数を取得する。補正係数は、エネルギー較正の一部である。選択部は、PETデータに基づいて複数の検出イベントの中からマルチチャネルイベントを選択する。補正部は、補正係数をマルチチャネルイベントに属する検出イベントのエネルギーに適用し、補正エネルギーを生成する。
【0107】
補正係数の種類としては、加法補正係数と乗法補正係数とがある。加法補正係数の場合、補正部は、マルチチャネルイベント毎に、マルチチャネルイベントに属する2以上の検出イベントのエネルギーの合計エネルギーと補正係数との加算に基づいて補正エネルギーを生成する。乗法補正係数の場合、補正部は、マルチチャネルイベント毎に、マルチチャネルイベントに属する2以上の検出イベントのエネルギーの合計エネルギーと補正係数との乗算に基づいて補正エネルギーを生成する。
【0108】
補正エネルギーの生成方法としては、合計エネルギーに補正係数を適用する方法のみに限定されない。補正エネルギーを生成するため、補正部は、エネルギーウィンドウのうちの最大エネルギー及び最小エネルギーから補正係数を減算することによってエネルギーウィンドウをシフトし、マルチチャネルイベント毎に、マルチチャネルイベントに属する2以上の検出イベントのエネルギーの合計エネルギーを生成し、シフトされたエネルギーウィンドウ内に合計エネルギーを有するマルチチャネルイベントを選択してもよい。あるいは、補正部は、補正エネルギーを生成するため、エネルギーウィンドウのうちの最大エネルギー及び最小エネルギーを補正係数で除算することによってエネルギーウィンドウをシフトし、マルチチャネルイベント毎に、マルチチャネルイベントに属する2以上の検出イベントのエネルギーの合計エネルギーを生成し、シフトされたエネルギーウィンドウ内に合計エネルギーを有するマルチチャネルイベントを選択してもよい。
【0109】
マルチチャネルイベントの選択の具体例は以下の通りである。PETデータは、更にガンマ線の検出時刻を表している。選択部は、複数の検出イベントのうちの最小エネルギー閾値を上回るエネルギーを有する2以上の特定の検出イベントを選択し、選択された2以上の特定の検出イベントの任意の組合せ各々の中から、入射位置と検出時刻とエネルギーとの少なくとも一要素に基づいて、同一のマルチチャネルイベントに属する2以上の検出イベントを選択する。
【0110】
上記の通り、補正係数は、複数の検出器要素内でのガンマ線のヒット数に依らず共通の第1の補正係数でもよいし、ヒット数に応じて複数の第2の補正係数でもよい。第2の補正係数を用いる場合、選択部は、マルチチャネルイベントをヒット数に応じて分類し、分類後の各ヒット数のマルチチャネルイベントのエネルギーに、複数の第2の補正係数のうちの対応するヒット数の第2の補正係数を適用する。
【0111】
補正係数は、ヒット数ではなく、複数の検出器要素各々の空間座標に応じて複数の第3の補正係数を有してもよい。この場合、選択部は、前記マルチチャネルイベントのエネルギーに、複数の第3の補正係数のうちの、マルチチャネルイベントに属する複数の検出イベントにそれぞれ対応する複数の入射位置の重み付き平均に対応する第3の補正係数を適用する。重み付き平均は、複数の検出イベントにそれぞれ対応する複数の入射位置の正規化加重和に基づいて計算される。当該重みは、検出イベントのエネルギーを、非ゼロの実数で累乗した値である。空間座標は、複数の第3の補正係数各々に対応するブロックにセグメント化されてもよい。ブロックのサイズは、予め定義された空間分解能基準及び前記複数の補正係数の精度又は信頼性に関する予め定義されたカウント基準のうちの1つ又は複数を満たすように選択される。あるいは、ブロックのサイズは、マルチチャネルイベントのヒット数に応じて異なってもよい。
【0112】
上記の通り、補正部は、マルチチャネルイベントに属する検出イベントのエネルギーに、補正係数を適用する前において、初期の非線形エネルギー補正を適用してもよい。補正部は、初期の非線形エネルギー補正として、検出されたガンマ線のエネルギー測定値と実際のエネルギーとの間の非線形関係を補正する。
【0113】
上記の通り、PET撮像の前段階においてイベント取得部による較正データの取得(較正段階)が行われる。較正段階においてイベント取得部は、ガンマ線検出器により検出されたガンマ線の入射位置とエネルギーとを表すPETデータ(較正データ)を複数の検出イベント(較正検出イベント)毎に取得する。選択部は、較正データに基づいて、複数の較正検出イベントの中から較正マルチチャネルイベントを選択する。補正係数取得部は、較正マルチチャネルイベント毎に、マルチチャネルイベントに属する2以上の検出イベントのエネルギーの代表エネルギーと、予め定義されたエネルギーとのシフト量に基づいて補正係数を生成する。補正係数は、乗法補正係数又は加法補正係数を含む。ガンマ線検出器は、各々が複数の検出器要素を含む複数の検出器要素ブロックを有する。代表エネルギーは、複数の検出器要素ブロック各々によるマルチチャネルイベントのカウントのヒストグラムにおける中央値、モード及び平均値のうちの1つに対応するエネルギーである。
【0114】
本実施形態に係る医用画像処理装置は、PETシステム又はSPECTシステムに組み込まれても良い。この場合、医用画像処理装置は、補正エネルギーに基づいて画像を再構成する再構成部を更に備える。
【0115】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、マルチチャネル検出におけるクロストークに起因するエネルギー測定値の劣化を高精度の補正することができる。
【0116】
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0117】
200 PETシステム
216 寝台
216 天板
220 円形構成要素
240 架台
270 プロセッサ
274 ネットワークコントローラ
276 データ収集システム(DAS)
276 データ収集システム
278 メモリ