(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】気密性検査方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/32 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
G01M3/32 A
(21)【出願番号】P 2019115061
(22)【出願日】2019-06-21
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000241267
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトフルードパワーシステム
(72)【発明者】
【氏名】清水 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】小芦 直樹
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-184207(JP,A)
【文献】特開2005-283349(JP,A)
【文献】特開2010-256018(JP,A)
【文献】特開2017-072491(JP,A)
【文献】特許第5942065(JP,B2)
【文献】特開2015-133180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00- 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封構造の容器内に収容した検査対象物から漏出する検出対象物をセンサで検出して検査対象物の気密性を検査する気密性検査方法であって、検査対象物を収容する密封構造の容器内を真空の第1設定圧に減圧する第1工程と、第1設定圧にした容器内を第1設定圧より真空度が高い第2設定圧に減圧する第2工程と、第2設定圧にした容器内の真空度を一定期間第2設定圧に保持する第3工程と、第2設定圧に保持した容器内の真空度を第1設定圧に増圧する第4工程と、第1設定圧にした容器内を再度第2設定圧に減圧する第5工程から成り、
第1工程で第1設定圧に減圧した容器内で検査対象物から漏出する検出対象物の値を検出して第1規定値と比較して検査対象物の気密性を判定し、検出対象物の値が第1規定値以内であれば第2工程に進み、第2工程で検査対象物から漏出する検出対象物を検出して基準値とし、第5工程で検査対象物から漏出する検出対象物を検出して検出値とし、検出値を基準値と比較して検査対象物の気密性を判定することを特徴とする気密性検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封構造の容器内に収容した検査対象物の気密性を検査する機密性検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の気密性検査方法は、検査対象物を密封構造の容器としての真空チャンバに収容し、真空チャンバと真空ポンプとの間を検査排気配管で接続し、検査排気配管に気体状の検出対象物を検出するセンサを配設している。そして、真空ポンプを作動して真空チャンバ内の気体を排気し、この気体に含まれている検出対象物の濃度をセンサで検知し、検査対象物の気密性に問題があるか否かを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる従来の気密性検査方法では、真空チャンバと真空ポンプとの間を接続する検査排気配管に配設したセンサは、小さいピンホールを検出できる高精度のものである。そして、センサは、ホルダ部の内部に導入された気体を通す供給口をセンサ部のセンサ面に近づけた状態に配置した複雑な構成で高価なものとなり、気密性検査装置が高価になってしまうという問題点があった。
【0005】
本発明の課題は、汎用のセンサを用いた安価な気密性検査装置で、高精度の気密性検査を行い得る気密性検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は次の手段をとった。即ち、
密封構造の容器内に収容した検査対象物から漏出する検出対象物をセンサで検出して検査対象物の気密性を検査する気密性検査方法であって、検査対象物を収容する密封構造の容器内を真空の第1設定圧に減圧する第1工程と、第1設定圧にした容器内を第1設定圧より真空度が高い第2設定圧に減圧する第2工程と、第2設定圧にした容器内の真空度を一定期間第2設定圧に保持する第3工程と、第2設定圧に保持した容器内の真空度を第1設定圧に増圧する第4工程と、第1設定圧にした容器内を再度第2設定圧に減圧する第5工程から成り、第1工程で第1設定圧に減圧した容器内で検査対象物から漏出する検出対象物の値を検出して第1規定値と比較して検査対象物の気密性を判定し、検出対象物の値が第1規定値以内であれば第2工程に進み、第2工程で検査対象物から漏出する検出対象物を検出して基準値とし、第5工程で検査対象物から漏出する検出対象物を検出して検出値とし、検出値を基準値と比較して検査対象物の気密性を判定することを特徴とする気密性検査方法がそれである。
【発明の効果】
【0007】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明は、第1工程で第1設定圧に減圧した容器内で検査対象物から漏出する検出対象物の値を検出して第1規定値と比較して検査対象物の気密性を判定し、検出対象物の値が第1規定値以内であれば第2工程に進み、第2工程で検査対象物から漏出する検出対象物を検出して基準値とし、第5工程で検査対象物から漏出する検出対象物を検出して検出値とし、検出値を基準値と比較して検査対象物の気密性を判定する。このため、基準値と検出値とは相互に近似した条件で検出するから、汎用のセンサを用いて安価な気密性検査装置で、高精度の気密性検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態の機密性検査方法を行う機密性検査装置の気体回路図である。
【
図2】一実施形態の機密性検査方法のフローチャートである。
【
図3】一実施形態を示し、容器内の圧力の推移を示したグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、機密性検査方法を行う機密性検査装置を示している。
1A、1Bは密封構造の容器で、2個を有し、内部に検査対象物としてのリチウムイオンキャパシタ(図示せず)を収容している。2A、2Bは粗検知に用いる大型の真空ポンプで、2個を有している。真空ポンプ2Aは吸気側を容器1Aと配管3Aにより接続し、容器1Bと配管3Bにより接続している。真空ポンプ2Bは吸気側を容器1Aと配管4Aにより接続し、容器1Bと配管4Bにより接続している。各配管3A、3B、4A、4Bには電磁操作の開閉弁5A、5B、6A、6Bをそれぞれ配設し、各開閉弁5A~6Bは通電により各配管3A~4Bを開き、非通電により各配管3A~4Bを閉じる。
【0010】
7は粗検知に用いるセンサで、中継容器8の内部に配置し、気体に含まれている検出対象物としての気化した電解液の濃度を検知する。センサ7の検知精度は、例えば25ppmごとの単位である。センサ7は真空ポンプ2Aの排気側と配管9Aにより接続し、真空ポンプ2Bの排気側と配管9Bによりそれぞれ接続している。10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10Hは精密検知に用いる小型の真空ポンプで、8個を有している。8個のなかで4個の真空ポンプ10A~10Dは吸気側を容器1Aと配管11A、11B、11C、11Dにより接続し、残りの4個の真空ポンプ10E~10Hは吸気側を容器1Bと配管11E、11F、11G、11Hにより接続している。
【0011】
各配管11A~11Dには電磁操作の開閉弁12A、12B、12C、12Dをそれぞれ配設し、各開閉弁12A~12Dは通電により各配管11A~11Dを開き、非通電により各配管11A~11Dを閉じる。同様に、各配管11E~11Hには電磁操作の開閉弁12E、12F、12G、12Hをそれぞれ配設し、各開閉弁12E~12Hは通電により各配管11E~11Hを開き、非通電により各配管11E~11Hを閉じる。
【0012】
13A、13B、13C、13D、13E、13F、13G、13Hは精密検知に用いるセンサで、検知精度は、例えば1ppmごとの単位で、8個を有している。8個のなかで4個のセンサ13A~13Dは4個の真空ポンプ10A~10Dの排気側と配管14A、14B、14C、14Dにより接続し、残りの4個のセンサ13E~13Hは4個の真空ポンプ10E~10Hの排気側と配管14E、14F、14G、14Hにより接続し、気体に含まれている気化した電解液の濃度を検知する。
【0013】
15Aは大気を容器1Aに導入する大口径の配管で、容器1Aに接続している。15Bは大気を容器1Aに導入する小口径の配管で、配管15Aより小径で容器1Aに接続している。配管15A、15Bは相互に接続し、ラインフィルタ16Aを介して大気を導入する。配管15A、15Bには電磁操作の開閉弁17A、17Bをそれぞれ配設し、各開閉弁17A、17Bは通電により各配管15A、15Bを開き、非通電により各配管15A、15Bを閉じる。
【0014】
15Cは大気を容器1Bに導入する大口径の配管で、容器1Bに接続している。15Dは大気を容器1Bに導入する小口径の配管で、配管15Cより小径で容器1Bに接続している。配管15C、15Dは相互に接続し、ラインフィルタ16Bを介して大気を導入する。配管15C、15Dには電磁操作の開閉弁17C、17Dをそれぞれ配設し、各開閉弁17C、17Dは通電により各配管15C、15Dを開き、非通電により各配管15C、15Dを閉じる。18A、18Bは各容器1A、1Bの圧力を検知する圧力センサである。
【0015】
次に、かかる気密性検査装置を用いた機密性検査方法を説明する。
図2は、機密性検査方法のフローチャートを示し、第1工程T1、第2工程T2、第3工程T3、第4工程T4、第5工程T5等から成っている。
図3は、各工程T1~T5における容器1A、1B内の圧力を示している。
第1工程T1は、リチウムイオンキャパシタを収容する密封構造の容器1A、1B内を大気圧A0から真空の第1設定圧A1に減圧する。第1設定圧A1には、開閉弁5A~6Bを通電して配管3A~4Bを開き、大型の真空ポンプ2A、2Bを作動して減圧する。そして、粗検知のセンサ7で真空ポンプ2A、2Bから排気する気体に含まれている気化した電解液の濃度を検知し、検知した濃度の値が第1規定値Y1以内であれば、第2工程T2に進む。また、検知した濃度の値が第1規定値Y1を超えていれば、容器1A、1B内に収容したリチウムイオンキャパシタは不合格となり、検査を終了する。第1規定値Y1は、センサ7の検知精度に対応するものである。
【0016】
第2工程T2は、第1設定圧A1にした容器1A、1B内を、第1設定圧A1より真空度が高い第2設定圧A2に減圧する。第2設定圧A2には、開閉弁12A~12Hを通電して配管11A~11Hを開き、真空ポンプ10A~10Hを作動して減圧する。そして、精密検知のセンサ13A~13Hで真空ポンプ10A~10Hから排気する気体に含まれている気化した電解液の濃度を検知し、検知した濃度の値を基準値S1として図示しない制御装置に記憶する。
【0017】
第3工程T3は、第2設定圧A2にした容器1A、1B内の真空度を一定期間第2設定圧A2に保持する工程で、リチウムイオンキャパシタから電解液が漏出するのを待つものである。一定期間を第2設定圧A2に保持するには、開閉弁5A~6B、12A~12Hを非通電にして配管3A~4B、11A~11Hを閉じる。
【0018】
第4工程T4は、第2設定圧A2に保持した容器1A、1B内の真空度を第1設定圧A1に増圧する。第1設定圧A1に増圧するには、開閉弁17B、17Dを通電して小口径の配管15B、15Dを開く。
【0019】
第5工程T5は、第1設定圧A1にした容器1A、1B内を再度第2設定圧A2に減圧する。第2設定圧A2には、第2工程T2と同様に、開閉弁12A~12Hを通電して配管11A~11Hを開き、真空ポンプ10A~10Hを作動して減圧する。そして、精密検知のセンサ13A~13Hで真空ポンプ10A~10Hから排気する気体に含まれている気化した電解液の濃度を検知し、検知した濃度の値を検出値S2とする。
【0020】
そして、検出値S2を第2工程T2で制御装置に記憶した基準値S1と比較し、検出値S2から基準値S1を差し引いた判定値S3が第2規定値Y2以内であればリチウムイオンキャパシタは合格となり、判定値S3が第2規定値Y2を超えていればリチウムイオンキャパシタは不合格となる。第2規定値Y2は、センサ13A~13Hの検知精度に対応するもので、第1規定値Y1より検知精度が細分されている。検査が完了したら、開閉弁17A、17Cを通電して大口径の配管15A、15Cを開き、容器1A、1B内を大気圧A0に増圧する。
【0021】
かかる機密性検査方法で、第2工程T2でリチウムイオンキャパシタから漏出する気化した電解液の濃度を検出して基準値S1とし、第5工程T5でリチウムイオンキャパシタから漏出する気化した電解液の濃度を検出して検出値S2とし、検出値S2を基準値S1と比較してリチウムイオンキャパシタの気密性を判定する。このため、基準値S1と検出値S2とは相互に近似した条件で検出するから、精密検知のセンサ13A~13Hは汎用で安価なものを用いることができ、汎用のセンサ13A~13Hを用いて安価な気密性検査装置で、高精度の気密性検査を行うことができる。
【0022】
なお、前述の一実施形態では、真空ポンプ2A、2B、10A~10D、10E~10Hの排気側にセンサ7、13A~13D、13E~13Hを接続したが、真空ポンプ2A、2B、10A~10D、10E~10Hの吸気側にセンサ7、13A~13D、13E~13Hを接続してもよい。また、内部に検査対象物を収容する密封構造の容器1A、1Bは2個設けたが、1個であったり、3個以上設けてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1A、1B:容器
7、13A、13B、13C、13D、13E、13F、13G、13H:センサ
T1:第1工程
T2:第2工程
T3:第3工程
T4:第4工程
T5:第5工程
S1:基準値
S2:検出値