(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】色材分散液、分散剤、感光性着色樹脂組成物、硬化物、カラーフィルタ、表示装置
(51)【国際特許分類】
C08L 55/00 20060101AFI20230724BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230724BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230724BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20230724BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20230724BHJP
C08K 13/02 20060101ALI20230724BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20230724BHJP
C08F 290/12 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
C08L55/00
G02B5/20 101
G03F7/004 505
G03F7/004 504
G03F7/004 501
G03F7/027
G02F1/1335 505
C08K13/02
C08F290/06
C08F290/12
(21)【出願番号】P 2019127518
(22)【出願日】2019-07-09
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】長井 健朗
(72)【発明者】
【氏名】木村 豊
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-247706(JP,A)
【文献】特開2010-077203(JP,A)
【文献】特開2018-030051(JP,A)
【文献】特開2011-085756(JP,A)
【文献】特開平10-087768(JP,A)
【文献】特開2001-031885(JP,A)
【文献】特開2014-071440(JP,A)
【文献】特開平10-060360(JP,A)
【文献】特開2016-224447(JP,A)
【文献】特開2011-158687(JP,A)
【文献】国際公開第2014/061556(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/091923(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 251/00-299/08
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
G02B 5/20-5/28
G02F 1/1335-1/3363
G03F 7/00-7/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材と、分散剤と、溶剤とを含有する色材分散液であって、
前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位と下記一般式(II)で表される構成単位とを有
し、前記一般式(I)で表される構成単位は全構成単位中3~60質量%の割合で含まれ、前記一般式(II)で表される構成単位は全構成単位中40~97質量%の割合で含まれているグラフト共重合体、並びに、当該グラフト共重合体の当該一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成した塩型グラフト共重合体の少なくとも1種である、色材分散液。
【化1】
(一般式(I)中、R
1は水素原子又はメチル基、A
1は
-CONH-基又は-COO-基と、炭素原子数1~10のアルキレン基とを含む2価の連結基、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、R
2とR
3が各々独立に、
炭素原子数1~5のアルキル基、フェニル基であるか、或いは、R
2とR
3が互いに結合して
ピロリジン環、ピペリジン環、又はモルフォリン環を形成してい
る。
一般式(II)中、R
1’は水素原子又はメチル基、A
2は直接結合又は2価の連結基、Polymerはポリマー鎖を表し、当該ポリマー鎖の構成単位には下記一般式(III)で表される構成単位が含まれる。)
【化2】
(一般式(III)中、R
4は水素原子又はメチル基、A
3は
-CONH-基又は-COO-基、R
5はエチレン基又はプロピレン基、R
6は、水素原子、
或いは、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基、又はこれらの組み合わせであり、mは19以上80以下の数を表す。)
【請求項2】
前記グラフト共重合体の前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位には、前記一般式(III)で表される構成単位と、前記一般式(III)で表される構成単位とは異なる下記一般式(IV)で表される構成単位とが含まれ、当該ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、前記一般式(III)で表される構成単位の合計割合が1質量%以上75質量%以下である、請求項1に記載の色材分散液。
【化3】
(一般式(IV)中、R
4’は水素原子又はメチル基、A
4は
-CONH-基又は-COO-基、R
7は、水素原子、或いは、
炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基、又はこれらの組み合わせである炭化水素基であり、当該炭化水素基は
、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、エポキシ基、イソシアネート基、及びチオール基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基を有してもよく、炭化水素基の炭素鎖中に、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-、-S-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-OCO-NH-、-NH-COO-、-NH-CO-NH-、-NH-O-、又は、-O-NH-の連結基を含んでもよい。)
【請求項3】
前記グラフト共重合体の前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位には、更に、下記一般式(IIIa)で表される構成単位が含まれる、請求項1又は2に記載の色材分散液。
【化4】
(一般式(IIIa)中、R
4は水素原子又はメチル基、A
3は
-CONH-基又は-COO-基、R
5はエチレン基又はプロピレン基、R
6は、水素原子、
或いは、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基、又はこれらの組み合わせであり、m’は10以下の数を表す。)
【請求項4】
下記一般式(I)で表される構成単位と下記一般式(II)で表される構成単位とを有
し、前記一般式(I)で表される構成単位は全構成単位中3~60質量%の割合で含まれ、前記一般式(II)で表される構成単位は全構成単位中40~97質量%の割合で含まれているグラフト共重合体、並びに、当該グラフト共重合体の当該一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成した塩型グラフト共重合体の少なくとも1種である、分散剤。
【化5】
(一般式(I)中、R
1は水素原子又はメチル基、A
1は
-CONH-基又は-COO-基と、炭素原子数1~10のアルキレン基とを含む2価の連結基、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、R
2とR
3が各々独立に、
炭素原子数1~5のアルキル基、フェニル基であるか、或いは、R
2とR
3が互いに結合して
ピロリジン環、ピペリジン環、又はモルフォリン環を形成してい
る。
一般式(II)中、R
1’は水素原子又はメチル基、A
2は直接結合又は2価の連結基、Polymerはポリマー鎖を表し、当該ポリマー鎖の構成単位には下記一般式(III)で表される構成単位が含まれる。)
【化6】
(一般式(III)中、R
4は水素原子又はメチル基、A
3は
-CONH-基又は-COO-基、R
5はエチレン基又はプロピレン基、R
6は、水素原子、
或いは、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基、又はこれらの組み合わせであり、mは19以上80以下の数を表す。)
【請求項5】
前記グラフト共重合体の前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位には、前記一般式(III)で表される構成単位と、前記一般式(III)で表される構成単位とは異なる下記一般式(IV)で表される構成単位とが含まれ、当該ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、前記一般式(III)で表される構成単位の合計割合が1質量%以上75質量%以下である、請求項4に記載の分散剤。
【化7】
(一般式(IV)中、R
4’は水素原子又はメチル基、A
4は
-CONH-基又は-COO-基、R
7は、水素原子、或いは、
炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基、又はこれらの組み合わせである炭化水素基であり、当該炭化水素基は
、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、エポキシ基、イソシアネート基、及びチオール基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基を有してもよく、炭化水素基の炭素鎖中に、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-、-S-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-OCO-NH-、-NH-COO-、-NH-CO-NH-、-NH-O-、又は、-O-NH-の連結基を含んでもよい。)
【請求項6】
前記グラフト共重合体の前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位には、更に、下記一般式(IIIa)で表される構成単位が含まれる、請求項4又は5に記載の分散剤。
【化8】
(一般式(IIIa)中、R
4は水素原子又はメチル基、A
3は
-CONH-基又は-COO-基、R
5はエチレン基又はプロピレン基、R
6は、水素原子、
或いは、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基、又はこれらの組み合わせであり、m’は10以下の数を表す。)
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか一項に記載の分散剤と、色材と、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、光開始剤と、溶剤とを含有する、感光性着色樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の感光性着色樹脂組成物の硬化物。
【請求項9】
基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが請求項8に記載の感光性着色樹脂組成物の硬化物である、カラーフィルタ。
【請求項10】
前記請求項9に記載のカラーフィルタを有する、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色材分散液、分散剤、感光性着色樹脂組成物、硬化物、カラーフィルタ、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴って、液晶ディスプレイの需要が増加している。モバイルディスプレイ(携帯電話、スマートフォン、タブレットPC)の普及率も高まっており、益々液晶ディスプレイの市場は拡大する状況にある。また、最近においては、自発光により視認性が高い有機ELディスプレイのような有機発光表示装置も、次世代画像表示装置として注目されている。これらの画像表示装置の性能においては、コントラストや色再現性の向上といったさらなる高画質化や消費電力の低減が強く望まれている。
【0003】
これらの液晶表示装置や有機発光表示装置には、カラーフィルタが用いられる。例えば液晶表示装置のカラー画像の形成は、カラーフィルタを通過した光がそのままカラーフィルタを構成する各画素の色に着色されて、それらの色の光が合成されてカラー画像を形成する。その際の光源としては、従来の冷陰極管のほか、白色発光の有機発光素子や白色発光の無機発光素子が利用される場合がある。また、有機発光表示装置では、色調整などのためにカラーフィルタを用いる。
このような状況下、カラーフィルタにおいても、高輝度化や高コントラスト化、色再現性の向上といった要望が高まっている。
【0004】
ここで、カラーフィルタは、一般的に、透明基板と、透明基板上に形成され、赤、緑、青の三原色の着色パターンからなる着色層と、各着色パターンを区画するように透明基板上に形成された遮光部とを有している。
【0005】
カラーフィルタにおける画素の形成方法としては、中でも、分光特性、耐久性、パターン形状及び精度等の観点から、平均的に優れた特性を有する顔料分散法が最も広範に採用されている。
顔料分散法を用いて形成された画素を有するカラーフィルタにおいては、高輝度化や高コントラスト化を実現するため、顔料の微細化が検討されている。顔料を微細化することにより、顔料粒子によるカラーフィルタを透過する光の散乱が低減されて、高輝度化や高コントラスト化が達成されるものと考えられている。
しかしながら、微細化された顔料粒子は凝集しやすいため、分散性や分散安定性が低下するという問題があった。
【0006】
微細化された顔料の分散性を向上する手法として、分散剤を用いることが有効であることが知られている。例えば特許文献1には、コントラスト比の高い画素を形成することができ、且つ保存安定性にも優れた着色層形成用感放射線性組成物を提供することを目的として、顔料分散剤として、アンモニウム塩基を有する特定の繰り返し単位、及びアミノ基を有する特定の繰り返し単位とを含むAブロックと、カルボン酸エステルを含む特定の繰り返し単位、及びカルボン酸エステルのアルコール由来部分にエチレンオキシド基又はプロピレンオキシド基を含む特定の繰り返し単位とを含むBブロックとを有するブロック共重合体を用いた、着色層形成用感放射線性組成物が開示されている。
また、特許文献2には、顔料分散性に優れると共に、アルカリ現像性に優れるカラーフィルタ用ネガ型レジスト組成物を提供することを目的として、顔料分散剤として、窒素含有モノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基からなる重合性オリゴマーとを共重合成分として含有するグラフト共重合体であり、さらに前記窒素含有モノマーが有するアミノ基と下記一般式(II)で表される有機リン酸化合物とが塩を形成したグラフト共重合体を用いた、カラーフィルタ用ネガ型レジスト組成物が開示されている。特許文献2は、前記窒素含有モノマーが有するアミノ基と下記一般式(II)で表される有機リン酸化合物とが塩を形成することにより、アルカリ現像性が向上する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許5540599号公報
【文献】特開2009-265649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年のカラーフィルタにおいては、高色域化や薄膜化などの要求によって、感光性樹脂組成物中における色材の高濃度化の要求が高まっている。感光性樹脂組成物中の色材比率が高くなると相対的にバインダー成分が減少する。バインダー成分の内、多官能モノマーや光開始剤など、塗膜の硬化性に関わる成分が少なくなることで硬化不足により塗膜の架橋密度が低下し、塗膜に水染みの発生や耐溶剤性の不足が発生する。また、アルカリ可溶性樹脂などの現像性に関わる成分が少なくなることで、現像残渣の発生や現像時間の遅延が発生する。したがって、感光性樹脂組成物中の色材の高濃度化の要求を達成するためには、これらのバインダー成分不足に由来する問題を同時に解決する技術が必要となる。なお、水染みとは、アルカリ現像後、純水でリンスした後に、水が染みたような跡が発生するこの現象をいう。このような水染みは、ポストベーク後に消えるので製品としては問題がないが、現像後にパターニング面の外観検査において、ムラ異常として検出されてしまい、正常品と異常品の区別がつかないという問題が生じる。そのため、外観検査において検査装置の検査感度を下げると、結果として最終的なカラーフィルタ製品の歩留まり低下を引き起こし、問題となる。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、現像残渣の発生抑制、現像時間の短縮化、水染み発生抑制、及び優れた耐溶剤性を同時に満たす感光性着色樹脂組成物を作製可能な色材分散液、及び分散剤を提供することを目的とする。また、本発明は、現像残渣の発生抑制、現像時間の短縮化、水染み発生抑制、及び良好な耐溶剤性を同時に満たす感光性着色樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、当該感光性着色樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタ及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る色材分散液は、色材と、分散剤と、溶剤とを含有する色材分散液であって、前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位と下記一般式(II)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体、並びに、当該グラフト共重合体の当該一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成した塩型グラフト共重合体の少なくとも1種である。
【0010】
【化1】
(一般式(I)中、R
1は水素原子又はメチル基、A
1は2価の連結基、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R
2及びR
3が互いに結合して環構造を形成してもよい。
一般式(II)中、R
1’は水素原子又はメチル基、A
2は直接結合又は2価の連結基、Polymerはポリマー鎖を表し、当該ポリマー鎖の構成単位には下記一般式(III)で表される構成単位が含まれる。)
【0011】
【化2】
(一般式(III)中、R
4は水素原子又はメチル基、A
3は2価の連結基、R
5はエチレン基又はプロピレン基、R
6は、水素原子、又は炭化水素基であり、mは19以上80以下の数を表す。)
【0012】
本発明に係る分散剤は、下記一般式(I)で表される構成単位と下記一般式(II)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体、並びに、当該グラフト共重合体の当該一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成した塩型グラフト共重合体の少なくとも1種である。
【0013】
【化3】
(一般式(I)中、R
1は水素原子又はメチル基、A
1は2価の連結基、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R
2及びR
3が互いに結合して環構造を形成してもよい。
一般式(II)中、R
1’は水素原子又はメチル基、A
2は直接結合又は2価の連結基、Polymerはポリマー鎖を表し、当該ポリマー鎖の構成単位には下記一般式(III)で表される構成単位が含まれる。)
【0014】
【化4】
(一般式(III)中、R
4は水素原子又はメチル基、A
3は2価の連結基、R
5はエチレン基又はプロピレン基、R
6は、水素原子、又は炭化水素基であり、mは19以上80以下の数を表す。)
【0015】
本発明に係る感光性着色樹脂組成物は、前記本発明に係る色材分散液と、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、光開始剤とを含有する。
【0016】
本発明に係るカラーフィルタは、基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが前記本発明に係る感光性着色樹脂組成物の硬化物である。
【0017】
本発明に係る表示装置は、前記本発明に係るカラーフィルタを有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、現像残渣の発生抑制、現像時間の短縮化、水染み発生抑制、及び優れた耐溶剤性を同時に満たす感光性着色樹脂組成物を作製可能な色材分散液、及び分散剤を提供することができる。また、本発明によれば、本発明は、現像残渣の発生抑制、現像時間の短縮化、水染み発生抑制、及び良好な耐溶剤性を同時に満たす感光性着色樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、当該感光性着色樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタ及び表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の有機発光表示装置の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本発明に用いられるグラフト共重合体の構造の一例の一部を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る色材分散液、分散剤、感光性着色樹脂組成物、カラーフィルタ、及び表示装置について、順に詳細に説明する。
なお、本発明において光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波、さらには放射線が含まれ、放射線には、例えばマイクロ波、電子線が含まれる。具体的には、波長5μm以下の電磁波、及び電子線のことをいう。
本発明において(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表し、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
本明細書において、特に断りのない限り、色度座標x、yは、C光源を使用して測色したJIS Z8701:1999のXYZ表色系におけるものである。
また、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0021】
I.色材分散液
本発明に係る色材分散液は、色材と、分散剤と、溶剤とを含有する色材分散液であって、
前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位と下記一般式(II)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体、並びに、当該グラフト共重合体の当該一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成した塩型グラフト共重合体の少なくとも1種である。
【0022】
【化5】
(一般式(I)中、R
1は水素原子又はメチル基、A
1は2価の連結基、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R
2及びR
3が互いに結合して環構造を形成してもよい。
一般式(II)中、R
1’は水素原子又はメチル基、A
2は直接結合又は2価の連結基、Polymerはポリマー鎖を表し、当該ポリマー鎖の構成単位には下記一般式(III)で表される構成単位が含まれる。)
【0023】
【化6】
(一般式(III)中、R
4は水素原子又はメチル基、A
3は2価の連結基、R
5はエチレン基又はプロピレン基、R
6は、水素原子、又は炭化水素基であり、mは19以上80以下の数を表す。)
【0024】
本発明に係る色材分散液は、分散剤として、前記特定のグラフト共重合体又は塩型グラフト共重合体を用いる。
図4は、本発明に用いられるグラフト共重合体の構造の一例の一部を模式的に表した図である。
図4において、グラフト共重合体11は、一般式(I)で表される構成単位21と一般式(II)で表される構成単位22とを有する主鎖部分12を含有し、前記一般式(I)で表される構成単位21が有する窒素部位の少なくとも一部と有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種23とが塩を形成していても良く、前記一般式(II)で表される構成単位22はポリマー鎖24において、特定の繰り返し数を有するポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖26を含む一般式(III)で表される構成単位25が含まれる。本発明に用いられる特定のグラフト共重合体においては、このようにグラフトしているポリマー鎖24の構成単位に、特定の繰り返し数を有するポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖を有する構成単位25が含まれ、グラフトしているポリマー鎖24自体が枝分かれ構造を有する。そのため、当該色材分散液を用いて調製される感光性着色樹脂組成物は、現像残渣の発生抑制、現像時間の短縮化、水染み発生抑制、及び優れた耐溶剤性を同時に満たすことができる。このような効果を発揮する作用としては、未解明であるが以下のように推定される。
【0025】
前記特定のグラフト共重合体は、グラフトしているポリマー鎖の構成単位に、比較的長鎖のポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖を有する構成単位が含まれ、グラフトしているポリマー鎖自体が枝分かれ構造を有することが特徴である。ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖に含まれる酸素原子は、アルカリ現像液と水素結合することによって、現像時にアルカリ現像液に溶解し易くなると考えられる。また、ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖に含まれる酸素原子は、感光性樹脂組成物中に含まれるアルカリ可溶性樹脂のカルボキシ基等のOHやCHと、水素結合によって相互作用することによって、現像時にアルカリ可溶性樹脂のみが溶解し、色材と分散剤が残渣として残されることを抑制することができると考えられる。グラフトしているポリマー鎖の構成単位に、比較的長鎖のポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖を有する構成単位が枝分かれ構造で含まれていることから、アルカリ現像液やアルカリ可溶性樹脂との水素結合による相互作用が強くなると考えられる。グラフト共重合体は、グラフトしている複数のポリマー鎖が枝分かれ構造を有して分散剤の溶剤親和性部となるため、分散剤の溶剤親和性部の比表面積がブロック共重合体に比べて大きくなることと相俟って、ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖に含まれる酸素原子による溶剤親和性部の作用が顕著になり、現像残渣の発生抑制効果が向上し、現像時間が短縮化されると推定される。
一方で、ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖の繰り返し単位数が大きくなりすぎると、却って、現像残渣の発生抑制効果が向上しないことが見出された。これは、ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖の繰り返し単位数が大きくなりすぎると、アルカリ現像液との親和力が、顔料吸着力より過剰に大きくなり、グラフト共重合体のみがアルカリ現像液に溶解し、顔料が基板上に取り残されるためではないかと推定される。
また、グラフト共重合体は、グラフトしている複数のポリマー鎖が分散剤の溶剤親和性部となるため、分散剤の溶剤親和性部の比表面積が大きくなることから、溶剤の塗膜への侵入や色材への到達を抑制することができると推定される。そのため、本発明の分散剤を用いると、耐溶剤性、カラーフィルタの配向膜作製に溶剤として用いられるN-メチルピロリドン(NMP)に対する耐性(耐NMP性)を向上することができると推定される。
更に、感光性樹脂組成物の硬化膜の水染みの原因としては、硬化膜内への吸水が挙げられる。硬化膜中のアルカリ可溶性樹脂はカルボキシ基等の酸性基を有しているため吸水しやすい。また、当該酸性基が、現像時にアルカリ現像液に典型的に含まれるアルカリ金属と金属塩を形成することにより吸水性がより高まると考えられる。ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖に含まれる酸素原子は、アルカリ金属などの金属と錯生成することで捕捉可能である。ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖の繰り返し単位数が大きくなるにつれて、錯生成定数は増加し、金属分子の捕捉能が増加するため、アルカリ可溶性樹脂のアルカリ金属塩形成を抑制し、硬化膜内への吸水が抑制できると推測される。また、ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖に含まれる酸素原子は、感光性樹脂組成物中に含まれるアルカリ可溶性樹脂のカルボキシ基等の酸性基と、水素結合によって相互作用することによって、酸性基のアルカリ金属塩形成を抑制し、硬化膜内への吸水が抑制できると推測される。グラフト共重合体は、グラフトしている複数のポリマー鎖が枝分かれ構造を有して金属捕捉部となるため、分散剤の金属捕捉部の比表面積が大きくなることと相俟って、ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖に含まれる酸素原子による金属捕捉の作用が顕著になり、吸水抑制効果が向上し、吸水による水染み発生が抑制できると推定される。これらの硬化膜内への吸水抑制作用によって、吸水による水染みの発生を抑制できると推測される。
【0026】
本発明に係る色材分散液は、少なくとも色材と、分散剤と、溶剤とを含有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の成分を含有してもよいものである。
以下、このような本発明に係る色材分散液の各成分について、本発明の分散剤から順に詳細に説明する。
【0027】
<分散剤>
本発明においては、分散剤として、前記一般式(I)で表される構成単位と前記一般式(II)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体、並びに、当該グラフト共重合体の当該一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成した塩型グラフト共重合体の少なくとも1種が用いられる。
まず、グラフト共重合体から説明する。
【0028】
(一般式(I)で表される構成単位)
グラフト共重合体の主鎖を構成する前記一般式(I)で表される構成単位は、塩基性を有し、色材に対する吸着部位として機能する。
一般式(I)において、A1は、2価の連結基である。2価の連結基としては、例えば、直鎖、分岐又は環状のアルキレン基、水酸基を有する、直鎖、分岐又は環状のアルキレン基、アリーレン基、-CONH-基、-COO-基、-NHCOO-基、エーテル基(-O-基)、チオエーテル基(-S-基)、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。なお、本発明において、2価の連結基の結合の向きは任意である。すなわち、2価の連結基に-CONH-が含まれる場合、-COが主鎖の炭素原子側で-NHが側鎖の窒素原子側であっても良いし、反対に、-NHが主鎖の炭素原子側で-COが側鎖の窒素原子側であっても良い。
中でも、分散性の点から、一般式(I)におけるA1は、-CONH-基又は-COO-基を含む2価の連結基であることが好ましく、-CONH-基又は-COO-基と、炭素原子数1~10のアルキレン基とを含む2価の連結基であることがより好ましい。
【0029】
R2及びR3における、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基における炭化水素基は、例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、アルキル基の炭素原子数は、1~18が好ましく、中でも、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素原子数は、7~20が好ましく、更に7~14が好ましい。
また、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アリール基の炭素原子数は、6~24が好ましく、更に6~12が好ましい。なお、上記好ましい炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。
ヘテロ原子を含む炭化水素基とは、上記炭化水素基中の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられた構造を有するか、上記炭化水素基中の水素原子がヘテロ原子を含む置換基で置き換えられた構造を有する。炭化水素基が含んでいてもよいヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子等が挙げられる。
また、炭化水素基中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子により置換されていてもよい。
【0030】
R2とR3が互いに結合して環構造を形成しているとは、R2とR3が窒素原子を介して環構造を形成していることをいう。R2及びR3が形成する環構造にヘテロ原子が含まれていても良い。環構造は特に限定されないが、例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、モルフォリン環等が挙げられる。
【0031】
本発明においては、中でも、R2とR3が各々独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、フェニル基であるか、又は、R2とR3が結合してピロリジン環、ピペリジン環、モルフォリン環を形成していることが好ましい。
【0032】
上記一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアルキル基置換アミノ基含有(メタ)アクリレート等、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアルキル基置換アミノ基含有(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。中でも分散性、及び分散安定性が向上する点でジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドを好ましく用いることができる。
一般式(I)で表される構成単位は、1種類からなるものであってもよく、2種以上の構成単位を含むものであってもよい。
【0033】
(一般式(II)で表される構成単位)
前記グラフト共重合体は、特定のポリマー鎖を有する前記一般式(II)で表される構成単位を有することにより、溶剤親和性が良好になり、色材の分散性及び分散安定性が良好なものとなる。また、前記グラフト共重合体は、前記一般式(II)で表される構成単位に含まれる特定のポリマー鎖による立体障害や比表面積の増大と共に、特にポリマー鎖の構成単位に前記一般式(III)で表される構成単位が含まれることから、前述のようにアルカリ可溶性樹脂や現像液や金属との相互作用が良好となって、感光性樹脂組成物の現像残渣の発生抑制、現像時間の短縮化、水染み発生抑制、及び耐溶剤性を向上する。
【0034】
前記一般式(II)において、A2は、直接結合又は2価の連結基である。A2における2価の連結基としては、エチレン性不飽和二重結合由来の炭素原子とポリマー鎖を連結可能であれば、特に制限はない。A2における2価の連結基としては、例えば、前記A1における2価の連結基と同様のものが挙げられる。
【0035】
前記一般式(II)において、Polymerは、ポリマー鎖を表し、当該ポリマー鎖の構成単位には前記一般式(III)で表される構成単位が含まれる。
前記一般式(III)中、R4は水素原子又はメチル基、A3は2価の連結基、R5はエチレン基又はプロピレン基、R6は、水素原子、又は炭化水素基であり、mは19以上80以下の数を表す。
【0036】
A3の2価の連結基としては、例えば、前記A1における2価の連結基と同様のものが挙げられる。中でも、カラーフィルタ用途に使用される有機溶剤への溶解性の点から、一般式(III)におけるA3は、-CONH-基又は-COO-基を含む2価の連結基であることが好ましく、-CONH-基又は-COO-基であることがより好ましい。
【0037】
前記mは、エチレンオキシド鎖又はプロピレンオキシド鎖の繰り返し単位数を表し、19以上の数を表すが、中でも水染み発生抑制の点から、21以上であることが好ましい。
一方、mの上限値は80以下であるが、カラーフィルタ用途に使用される有機溶剤への溶解性の点から、50以下であることが好ましい。
【0038】
R6における炭化水素基としては、例えば、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、アリール基、及び、アラルキル基やアルキル置換アリール基等のこれらの組み合わせが挙げられる。
前記炭素数1~18のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ノニル基、n-ラウリル基、n-ステアリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基、低級アルキル基置換アダマンチル基などを挙げることができる。アルキル基の炭素数は、1~12が好ましく、更に1~6が好ましい。
前記炭素数2~18のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基などを挙げることができる。アルケニル基の二重結合の位置には限定はないが、得られたポリマーの反応性の点からは、アルケニル基の末端に二重結合があることが好ましい。アルケニル基の炭素数は、2~12が好ましく、更に2~8が好ましい。
アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は、6~24が好ましく、更に6~12が好ましい。
また、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられ、更に置換基を有していてもよい。アラルキル基の炭素数は、7~20が好ましく、更に7~14が好ましい。
また、前記アリール基やアラルキル基等の芳香環には、置換基として炭素数1~30の直鎖状、分岐状のアルキル基が結合していても良い。
【0039】
R6における炭化水素基としては、中でも、分散安定性の点から、炭素数1~18のアルキル基、アルキル基が置換されていても良い炭素数6~12のアリール基、及び、アルキル基が置換されていても良い炭素数7~14のアラルキル基からなる群から選択される1種以上であることが好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ノニル基、n-ラウリル基、n-ステアリル基、アルキル基が置換されていても良いフェニル基及びベンジル基からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0040】
前記ポリマー鎖において、前記一般式(III)で表される構成単位は、1種単独でも良いが、2種以上混合されていても良い。
本発明の効果の点から、前記グラフト共重合体の前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖において、当該ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、前記一般式(III)で表される構成単位の合計割合は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることがより更に好ましい。前記一般式(III)で表される構成単位の合計割合は、当該ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に100質量%であっても良いが、水染み発生の抑制の点から、75質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、溶剤再溶解性の点から50質量%以下であることがより更に好ましい。
【0041】
前記グラフト共重合体の前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位には、更に、前記一般式(III)で表される構成単位とは異なる下記一般式(IV)で表される構成単位とが含まれることが、色材の分散性及び分散安定性の点から好ましい。
【0042】
【化7】
(一般式(IV)中、R
4’は水素原子又はメチル基、A
4は2価の連結基、R
7は、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基である。)
【0043】
A4の2価の連結基としては、例えば、前記A1における2価の連結基と同様のものが挙げられる。中でも、カラーフィルタ用途に使用される有機溶剤への溶解性の点から、一般式(IV)におけるA4は、-CONH-基又は-COO-基を含む2価の連結基であることが好ましく、-CONH-基又は-COO-基であることがより好ましい。
【0044】
R7における、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基における炭化水素基は、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、及びアラルキル基やアルキル置換アリール基等のこれらの組み合わせが挙げられる。R7における、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基における炭化水素基としては、前記R6における炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0045】
炭化水素基が含んでいてもよいヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子等が挙げられる。ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基としては、例えば、炭化水素基の炭素鎖中に、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-、-S-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-OCO-NH-、-NH-COO-、-NH-CO-NH-、-NH-O-、-O-NH-等の連結基が含まれる構造が挙げられる。
また、当該炭化水素基は、前記グラフト共重合体の分散性能等を妨げない範囲で、置換基を有しても良く、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、エポキシ基、イソシアネート基、チオール基等が挙げられる。
【0046】
また、R7におけるヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基としては、炭化水素基においてヘテロ原子を含む連結基を介して末端にアルケニル基等の重合性基が付加された構造であっても良い。例えば、一般式(IV)で表される構成単位が(メタ)アクリル酸由来の構成単位にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させたような構造であっても良い。すなわち、一般式(IV)における-A4-R7の構造が、-COO-CH2CH(OH)CH2-OCO-CR=CH2(ここで、Rは水素原子又はメチル基)で示される構造であっても良い。また、一般式(IV)で表される構成単位がヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位に2-イソシアナトアルキル(メタ)アクリレートを反応させたような構造であっても良い。すなわち、一般式(IV)におけるR7が、-R’-OCONH-R”-OCO-CR=CH2(ここで、R’及びR”はそれぞれ独立にアルキレン基、Rは水素原子又はメチル基)で示される構造であっても良い。
【0047】
一般式(IV)で表される構成単位を誘導するモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2-メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド鎖の繰り返し単位数が19未満のメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート等由来の構成単位を有するものが好ましい。しかしながら、これらに限定されるものではない。
【0048】
本発明において、前記R7としては、中でも、後述する有機溶剤との溶解性に優れたものを用いることが好ましく、色材分散液に使用する有機溶剤に合わせて適宜選択されれば良い。具体的には、例えば前記有機溶剤が、色材分散液の有機溶剤として一般的に使用されているエーテルアルコールアセテート系、エーテル系、エステル系、アルコール系などの有機溶剤を用いる場合には、メチル基、エチル基、イソブチル基、n-ブチル基、2-エチルヘキシル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、ヒドロキシエチル基、フェノキシエチル基、アダマンチル基、メトキシポリエチレングリコール基、メトキシポリプロピレングリコール基、ポリエチレングリコール基等が好ましい。
【0049】
前記ポリマー鎖において、前記一般式(IV)で表される構成単位は、1種単独でも良いが、2種以上混合されていても良い。
色材の分散性及び分散安定性の点から、前記ポリマー鎖において、前記一般式(IV)で表される構成単位の合計割合は、当該ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、25質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましい。一方で、一般式(III)の導入による水染み発生抑制の点から、前記ポリマー鎖において、前記一般式(IV)で表される構成単位の合計割合は、当該ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましい。
【0050】
前記グラフト共重合体の前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位には、前記一般式(IV)で表される構成単位として、中でも更に、下記一般式(IIIa)で表される構成単位が含まれることが、現像残渣を抑制する効果が向上する点から好ましい。
【0051】
【化8】
(一般式(IIIa)中、R
4は水素原子又はメチル基、A
3は2価の連結基、R
5はエチレン基又はプロピレン基、R
6は、水素原子、又は炭化水素基であり、m’は10以下の数を表す。)
【0052】
前記一般式(IIIa)におけるR4、A3、R5、R6は、それぞれ前記一般式(III)中のR4、A3、R5、R6と同様であって良い。
前記一般式(IIIa)におけるm’は10以下の数を表すが、現像残渣発生抑制の点から、m’は2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。また、溶剤再溶解性の点から、m’は9以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましい。
【0053】
前記ポリマー鎖において、前記一般式(IIIa)で表される構成単位は、1種単独でも良いが、2種以上混合されていても良い。
現像残渣抑制効果を向上する点から、前記ポリマー鎖において、前記一般式(IIIa)で表される構成単位の合計割合は、当該ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、20質量%以上であることが好ましい。一方で、溶剤再溶解性の点から、前記ポリマー鎖において、前記一般式(IIIa)で表される構成単位の合計割合は、当該ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
また、前記ポリマー鎖において、前記一般式(III)で表される構成単位と、前記一般式(IIIa)で表される構成単位との混合割合は、現像残渣発生抑制効果向上の点から、前記一般式(III)で表される構成単位と、前記一般式(IIIa)で表される構成単位の合計を100質量部とした時に、前記一般式(III)で表される構成単位が3質量部以上であることが好ましく、6質量部以上であることがより好ましく、80質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましい。
【0054】
前記グラフト共重合体の前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位には、前記一般式(III)で表される構成単位、前記一般式(IIIa)で表される構成単位が包含される前記一般式(IV)で表される構成単位の他に、その他の構成単位を含んでいても良い。
その他の構成単位としては、前記一般式(III)で表される構成単位を誘導するモノマーや前記一般式(IV)で表される構成単位を誘導するモノマーと共重合可能な不飽和二重結合を有する単量体由来の構成単位を挙げることができる。
その他の構成単位を誘導するモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類等が挙げられる。
【0055】
前記グラフト共重合体の前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖において、その他の構成単位の合計割合は、本発明の効果の点から、当該ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0056】
Polymerにおけるポリマー鎖の質量平均分子量Mwは、色材の分散性及び分散安定性の点から、2000以上であることが好ましく、3000以上であることがより好ましく、4000以上であることがより更に好ましく、15000以下であることがより好ましく、12000以下であることがより更に好ましい。
前記範囲であることにより、分散剤としての十分な立体反発効果を保持できるとともに、分散剤の溶剤親和性部の比表面積が大きくなることによる、ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖に含まれる酸素原子による相互作用が顕著になり、現像残渣の発生抑制効果の向上、現像時間の短縮化、耐溶剤性の向上の作用を良好にすることができる。
【0057】
また、Polymerにおけるポリマー鎖は、目安として、組み合わせて用いられる有機溶剤に対して、23℃における溶解度が20(g/100g溶剤)以上であることが好ましい。
当該ポリマー鎖の溶解性は、グラフト共重合体を調製する際のポリマー鎖を導入する原料が前記溶解度を有することを目安にすることができる。例えば、グラフト共重合体にポリマー鎖を導入するために、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含む重合性オリゴマー(マクロモノマー)を用いる場合、当該重合性オリゴマーが前記溶解度を有すれば良い。また、エチレン性不飽和二重結合を有する基を含むモノマーにより共重合体が形成された後に、共重合体中に含まれる反応性基と反応可能な反応性基を含むポリマー鎖を用いて、ポリマー鎖を導入する場合、当該反応性基を含むポリマー鎖が前記溶解度を有すれば良い。
【0058】
(グラフト共重合体)
前記グラフト共重合体において、前記一般式(I)で表される構成単位は、3~60質量%の割合で含まれていることが好ましく、6~45質量%がより好ましく、9~30質量%がさらに好ましい。グラフト共重合体中の一般式(I)で表される構成単位が前記範囲内にあれば、グラフト共重合体中の色材との親和性部の割合が適切になり、かつ有機溶剤に対する溶解性の低下を抑制できるので、色材に対する吸着性が良好となり、優れた分散性、及び分散安定性が得られる。
一方、前記グラフト共重合体において、前記一般式(II)で表される構成単位は、40~97質量%の割合で含まれていることが好ましく、55~94質量%がより好ましく、70~91質量%がさらに好ましい。グラフト共重合体中の一般式(II)で表される構成単位が前記範囲内にあれば、グラフト共重合体中の溶剤親和性部の割合が適切になって、分散剤としての十分な立体反発効果を保持できるとともに、分散剤の溶剤親和性部の比表面積が大きくなることによる、ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖に含まれる酸素原子による相互作用が顕著になり、現像残渣の発生抑制効果の向上、現像時間の短縮化、耐溶剤性の向上の作用を良好にすることができる。
なお、前記構成単位の含有割合は、一般式(I)で表される構成単位、及び一般式(II)で表される構成単位を有するグラフト共重合体を合成する際の仕込み量から算出される。
【0059】
本発明に用いられる前記グラフト共重合体は、本発明の効果が損なわれない範囲内で、前記一般式(I)で表される構成単位及び前記一般式(II)で表される構成単位以外に、更に他の構成単位を有していても良い。他の構成単位としては、前記一般式(I)で表される構成単位を誘導するエチレン性不飽和二重結合含有モノマー等と共重合可能な、エチレン性不飽和二重結合含有モノマーを適宜選択して共重合し、他の構成単位を導入することができる。
前記一般式(I)で表される構成単位と共重合されている他の構成単位としては、例えば、前記一般式(II)で表される構成単位のポリマー鎖の構成単位に、前記一般式(III)で表される構成単位が含まれず、前記一般式(IIIa)で表される構成単位が含まれるような、前記一般式(II)で表される構成単位とは異なるグラフト鎖を有する構成単位や、前記一般式(IV)で表される構成単位等が挙げられる。
【0060】
また、前記グラフト共重合体の質量平均分子量Mwは、分散性及び分散安定性の点から、4000以上であることが好ましく、6000以上であることがより好ましく、8000以上であることがより更に好ましい。一方、溶剤再溶解性の点から、50000以下であることが好ましく、30000以下であることがより好ましい。
なお、本発明において質量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値である。測定は、東ソー製のHLC-8120GPCを用い、溶出溶剤を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN-メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、20650、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories製 Easi PS-2シリーズ)及びMw1090000(東ソー製)とし、測定カラムをTSK-GEL ALPHA-M×2本(東ソー製)として行われたものである。
【0061】
また、塩形成前のグラフト共重合体のアミン価は、特に限定されないが、色材分散性及び分散安定性の点から、下限としては、40mgKOH/g以上であることが好ましく、50mgKOH/g以上であることがより好ましく、60mgKOH/g以上であることがさらにより好ましい。また、上限としては、140mgKOH/g以下であることが好ましく、130mgKOH/g以下であることがより好ましく、120mgKOH/g以下であることがさらにより好ましい。上記下限値以上であれば、分散安定性がより優れている。また、上記上限値以下であれば、他の成分との相溶性に優れ、溶剤再溶解性が良好になる。
なお、本発明において塩形成前のグラフト共重合体のアミン価とは、塩形成前のグラフト共重合体の固形分1gを中和するのに必要な塩酸量に対して当量となる水酸化カリウムの質量(mg)を表し、JIS K 7237:1995に記載の方法により測定される値である。
【0062】
塩形成前のグラフト共重合体の酸価は、現像密着性及び溶剤再溶解性が良好になる点から、18mgKOH/g以下であることが好ましく、12mgKOH/g以下であることがより好ましい。また、塩形成前のグラフト共重合体の酸価は、溶剤再溶解性及び現像密着性をより向上する点、分散安定性の点からは、1mgKOH/g未満であってもよい。一方で、現像残渣の抑制効果の点からは、1mgKOH/g以上であることが好ましく、2mgKOH/g以上であることがより好ましい。
【0063】
塩形成前のグラフト共重合体の酸価は、グラフト共重合体の固形分1g中に含まれる酸性成分を中和するために要する水酸化カリウムの質量(mg)を表し、JIS K 0070:1992に記載の方法により測定される値である。
【0064】
(グラフト共重合体の製造方法)
本発明において、前記グラフト共重合体の製造方法としては、前記一般式(I)で表される構成単位と、前記一般式(II)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体を製造することができる方法であればよく、特に限定されない。前記一般式(I)で表される構成単位と前記一般式(II)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体を製造する場合、例えば、下記一般式(Ia)で表されるモノマーと、前記ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基からなる重合性オリゴマー(マクロモノマー)とを共重合成分として含有して共重合し、グラフト共重合体を製造する方法が挙げられる。
必要に応じて更にその他のモノマーも用い、公知の重合手段を用いてグラフト共重合体を製造することができる。
【0065】
【化9】
(一般式(Ia)中、R
1、A
1、R
2及びR
3は、一般式(I)と同様である。)
【0066】
また、前記一般式(I)で表される構成単位と前記一般式(II)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体を製造する場合、前記一般式(Ia)で表されるモノマーとその他のエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むモノマーとを付加重合して共重合体が形成された後に、共重合体中に含まれる反応性基と反応可能な反応性基を含むポリマー鎖を用いて、ポリマー鎖を導入しても良い。具体的には例えば、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、水素結合形成基等の置換基を有する共重合体を合成した後に、当該置換基と反応する官能基を含むポリマー鎖とを反応させて、ポリマー鎖を導入したものであっても良い。
例えば、側鎖にグリシジル基を有する共重合体に、末端にカルボキシル基を有するポリマー鎖を反応させたり、側鎖にイソシアネート基を有する共重合体に、末端にヒドロキシ基を有するポリマー鎖を反応させたりして、ポリマー鎖を導入することができる。
なお、前記重合においては、重合に一般的に用いられる添加剤、例えば重合開始剤、分散安定剤、連鎖移動剤などを用いてもよい。
【0067】
(有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種)
本発明において分散剤は、色材分散性を向上する点から、前記グラフト共重合体の前記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成した塩型グラフト共重合体であってもよい。
前記有機酸化合物としては、中でも、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(3)で表される化合物が好ましく、前記ハロゲン化炭化水素としては、中でも、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。すなわち、前記有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種としては、下記一般式(1)~(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物を好ましく用いることができる。
【0068】
【化10】
(一般式(1)において、R
aは、炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは-O-R
eを表し、R
eは、炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1~4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。一般式(2)において、R
b、R
b’、及びR
b”はそれぞれ独立に、水素原子、酸性基又はそのエステル基、置換基を有してもよい炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは-O-R
fを表し、R
fは、置換基を有してもよい炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1~4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表し、Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。一般式(3)において、R
c及びR
dはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは-O-R
eを表し、R
eは、炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1~4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。但し、R
c及びR
dの少なくとも一つは炭素原子を含む。)
【0069】
(前記一般式(1)~(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物)
前記一般式(1)~(3)において、Ra、Rb、Rb’、Rb”、Rc、Rd、Re、及びRfにおける炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖のいずれでも良く、また、環状構造を含んでいても良く、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、テトラデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。好ましくは、炭素数1~15の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられ、更に好ましくは炭素数1~8の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。
また、Ra、Rc、Rd、及びReにおいて、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基の置換基としては、例えば、炭素原子数が1~5のアルキル基、アシル基、アシルオキシ基等が挙げられる。
【0070】
Rb、Rb’、Rb”、及びRfにおいて、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基の置換基としては、例えば、酸性基又はそのエステル基、炭素原子数が1~5のアルキル基、アシル基、アシルオキシ基等が挙げられる。
また、Rb、Rb’、Rb”、及びRfにおいて、置換基を有してもよい炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、或いはビニル基の置換基としては、酸性基又はそのエステル基、フェニル基、アシル基、アシルオキシ基等が挙げられる。
Rb、Rb’、Rb”、及びRfにおいて酸性基とは、水中でプロトンを放出し酸性を示す基のことをいう。酸性基の具体例としては、カルボキシ基(-COOH)、スルホ基(-SO3H)、ホスホノ基(-P(=O)(OH)2)、ホスフィニコ基(>P(=O)(OH))、ボロン酸基(-B(OH)2)、ボリン酸基(>BOH)等が挙げられ、カルボキシラト基(-COO-)等のように水素原子が解離したアニオンであってもよく、更に、ナトリウムイオンやカリウムイオン等のアルカリ金属イオンと塩形成した酸性塩であってもよい。
また、酸性基のエステル基としては、カルボン酸エステル(-COOR)、スルホン酸エステル(-SO3R)、リン酸エステル(-P(=O)(OR)2)、(>P(=O)(OR))、ボロン酸エステル(-B(OR)2)、ボリン酸エステル(>BOR)等が挙げられる。中でも、酸性基のエステル基としては、カルボン酸エステル(-COOR)であることが分散性及び分散安定性の点から好ましい。なお、Rは炭化水素基であり、特に限定されないが、分散性及び分散安定性の点から、中でも炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
【0071】
前記一般式(2)の化合物は、分散性、分散安定性、アルカリ現像性、及び現像残渣抑制の点から、カルボキシ基、ボロン酸基、ボリン酸基、これらのアニオン、並びにこれらのアルカリ金属塩、及びこれらのエステルより選択される1種以上の官能基を有することが好ましく、中でも、カルボキシ基、カルボキシラト基、カルボン酸塩基、及びカルボン酸エステルより選択される官能基を有することがより好ましい。
前記一般式(2)の化合物が酸性基及びそのエステル基(以下、酸性基等という)を有する場合、当該化合物が有する酸性基等側、及び、ハロゲン原子側炭化水素のいずれもが末端の窒素部位と塩形成し得るが、末端の窒素部位と酸性基等とが塩形成した場合に比べて、末端の窒素部位とハロゲン原子側炭化水素とが安定して塩形成するものと推定される。そして、安定して存在する塩形成部位に色材が吸着することにより分散性及び分散安定性が向上するものと推定される。
【0072】
前記一般式(2)の化合物が前記酸性基等を有する場合、前記酸性基等を2個以上有していてもよい。前記酸性基等を2個以上有する場合、複数ある前記酸性基等は同一であってもよく、異なっていてもよい。前記一般式(2)の化合物が有する前記酸性基等の数は1~3個であることが好ましく、1~2個であることがより好ましく、1個であることが更により好ましい。
【0073】
前記一般式(1)においてRa、前記一般式(2)においてRb、Rb’、及びRb”の少なくとも1つ、並びに、前記一般式(3)においてRc及びRdの少なくとも1つが芳香族環を有する場合には、後述する色材の骨格との間の親和性が向上し、色材の分散性及び分散安定性が優れたものとなり、コントラストに優れた着色組成物を得ることができる点から好ましい。
【0074】
前記一般式(1)~(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物の分子量は、色材分散性向上の点から、1000以下であることが好ましく、中でも50~800であることが好ましく、更に50~400であることが好ましく、より更に80~350であることが好ましく、100~330であることが最も好ましい。
【0075】
前記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、モノメチル硫酸、モノエチル硫酸、モノn-プロピル硫酸等が挙げられる。なお、p-トルエンスルホン酸一水和物のような水和物を用いても良い。前記一般式(2)で表される化合物としては、例えば、メチルクロライド、メチルブロマイド、エチルクロライド、エチルブロマイド、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、n-ブチルクロライド、ヘキシルクロライド、オクチルクロライド、ドデシルクロライド、テトラデシルクロライド、ヘキサデシルクロライド、フェネチルクロライド、ベンジルクロライド、ベンジルブロミド、ベンジルヨーダイド、クロロベンゼン、α-クロロフェニル酢酸、α-ブロモフェニル酢酸、α-ヨードフェニル酢酸、4-クロロメチル安息香酸、4-ブロモメチル安息香酸、4-ヨードフェニル安息香酸、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、α-ブロモフェニル酢酸メチル、3-(ブロモメチル)フェニルボロン酸、等が挙げられる。前記一般式(3)で表される化合物としては、例えば、モノブチルリン酸、ジブチルリン酸、メチルリン酸、ジベンジルリン酸、ジフェニルリン酸、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、ジメタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等が挙げられる。
分散安定性が特に優れる点から、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、ジメタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジブチルリン酸、メチルクロライド、メチルブロマイド、ヨウ化メチル、ベンジルクロライド、ベンジルブロミド、ビニルスルホン酸、及びp-トルエンスルホン酸一水和物よりなる群から選択される1種以上が好ましく、中でも、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルクロライド、ベンジルブロミド、及びp-トルエンスルホン酸一水和物よりなる群から選択される1種以上を用いることが好ましい。
また、前記特定のグラフト共重合体との組み合わせにより現像残渣の抑制効果が向上する点から、酸性基及びそのエステル基を有する一般式(2)で表される化合物も好適に用いられ、中でも、α-クロロフェニル酢酸、α-ブロモフェニル酢酸、α-ヨードフェニル酢酸、4-クロロメチル安息香酸、4-ブロモメチル安息香酸、及び4-ヨードフェニル安息香酸よりなる群から選択される1種以上も好適に用いられる。
【0076】
塩型グラフト共重合体において、有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の含有量は、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位と塩形成しているものであることから、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位に対して、有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の合計を0.01モル以上とすることが好ましく、0.05モル以上とすることがより好ましく、0.1モル以上とすることがさらに好ましく、0.2モル以上とすることが特に好ましい。上記下限値以上であると、塩形成による色材分散性向上の効果が得られやすい。同様に、1モル以下とすることが好ましく、0.8モル以下とすることがより好ましく、0.7モル以下とすることがさらに好ましく、0.6モル以下とすることが特に好ましい。上記上限値以下であると現像密着性や溶剤再溶解性に優れたものとすることができる。
なお、有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。2種以上を組み合わせる場合は、その合計の含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0077】
塩型グラフト共重合体の調製方法としては、塩形成前のグラフト共重合体を溶解乃至分散した溶剤中に、前記有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種を添加し、攪拌、更に必要により加熱する方法などが挙げられる。
なお、グラフト共重合体の当該一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位と、前記有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成していること、及びその割合は、例えばNMR等、公知の手法により確認することができる。
【0078】
得られた塩型グラフト共重合体のアミン価は、塩形成前のグラフト共重合体に比べて塩を形成した分だけ値が小さくなる。しかし、塩形成部位は、アミノ基に相当する末端の窒素部位と同様、又はむしろ強化された色材吸着部位となるため、塩形成によって色材分散性や色材分散安定性が向上する傾向がある。また、塩形成部位は、アミノ基と同様に、多すぎると溶剤再溶解性に悪影響を与える。そのため、本発明においては、塩形成前のグラフト共重合体のアミン価を、色材分散安定性、及び溶剤再溶解性を良好にするための指標とすることができる。得られた塩型グラフト共重合体のアミン価としては、0~130mgKOH/gであることが好ましく、10~120mgKOH/gであることが更に好ましく、20~110mgKOH/gであることがより更に好ましい。
上記上限値以下であれば、他の成分との相溶性に優れ、溶剤再溶解性が良好になる。
【0079】
なお、塩型グラフト共重合体のうち、前記一般式(2)で表される化合物により塩形成されている塩型グラフト共重合体のアミン価は、JIS K 7237:1995に記載の方法により測定される値とすることができる。前記一般式(2)の化合物は、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位とハロゲン原子側炭化水素が塩を形成するため、当該測定方法によっても塩形成の状態に変化をきたさず、アミン価を測定可能だからである。
一方で、塩型グラフト共重合体のうち、前記一般式(1)又は(3)で表される化合物により塩形成されている塩型グラフト共重合体のアミン価は、前述した塩形成前のグラフト共重合体のアミン価から、下記のように算出することにより求められる。前記一般式(1)又は(3)で表される化合物は、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位と酸性基が塩を形成するため、このような塩型グラフト共重合体のアミン価を前記JIS K 7237:1995に記載の方法により測定すると、塩形成の状態に変化をきたし、正確な値を測定することができないからである。
まず、前述の方法により、塩形成前のグラフト共重合体のアミン価を求める。次に、塩型グラフト共重合体の13C-NMRスペクトルを核磁気共鳴装置を用いて測定し、得られたスペクトルデータのうち、前記一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位において、塩形成されていない窒素原子に隣接する炭素原子ピークと、塩形成されている窒素原子に隣接する炭素原子ピークの積分値の比率より、塩型グラフト共重合体の、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位に対する、前記一般式(1)又は(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物の反応率(塩形成されている末端の窒素部位比率)を測定する。前記一般式(1)又は(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物が塩形成した一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位は、アミン価が0になったとして、(JIS K 7237:1995に記載の方法により測定される塩形成前グラフト共重合体のアミン価)×(13C-NMRスペクトルより算出される塩形成されている末端の窒素部位比率(%)/100)により算出される、塩形成により消費したアミン価を、塩形成前のグラフト共重合体のアミン価から差し引くことにより求められる。
塩型グラフト共重合体のアミン価={JIS K 7237:1995に記載の方法により測定される塩形成前グラフト共重合体のアミン価}-{JIS K 7237:1995に記載の方法により測定される塩形成前グラフト共重合体のアミン価}×{13C-NMRスペクトルより算出される塩形成されている末端の窒素部位比率(%)/100}
【0080】
また、本発明において、分散剤の水酸基価は、溶剤再溶解性の点からは、120mgKOH/g以下であることが好ましく、60mgKOH/g以下であることがより好ましく、30mgKOH/g以下であることがより更に好ましく、0mgKOH/gであることが好ましい。
一方、分散剤の水酸基価は、現像性の点から、5mgKOH/g以上であることが好ましく、15mgKOH/g以上であることがより好ましい。
なお、本発明において水酸基価は固形分1gから得られるアセチル化物に結合している酢酸を中和するのに必要なKOHの質量(mg)を表し、JIS K 0070:1992に準じ、電位差滴定法によって求めた値をいう。
【0081】
本発明に係る色材分散液において、分散剤としては、前記グラフト共重合体及び塩型グラフト共重合体の少なくとも1種を用い、その含有量は、用いる色材の種類、更に後述する感光性着色樹脂組成物中の固形分濃度等に応じて適宜選定される。
分散剤の含有量は、色材分散液中の全固形分100質量部に対して、3~45質量部、より好ましくは5~35質量部の割合で配合することが好ましい。上記下限値以上であれば、色材の分散性及び分散安定性に優れ、感光性着色樹脂組成物の保存安定性により優れている。また、上記上限値以下であれば、現像残渣が良好なものとなる。
特に色材濃度が高い塗膜乃至着色層を形成する場合には、分散剤の含有量は、色材分散液中の全固形分100質量部に対して、3~35質量部、より好ましくは5~25質量部の割合で配合することが好ましい。
尚、本発明において固形分は、上述した溶剤以外のもの全てであり、溶剤中に溶解しているモノマー等も含まれる。
【0082】
<色材>
本発明において、色材は、カラーフィルタの着色層を形成した際に所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、種々の有機顔料、無機顔料、分散可能な染料、染料の造塩化合物等を、単独で又は2種以上混合して用いることができる。中でも有機顔料は、発色性が高く、耐熱性も高いので、好ましく用いられる。有機顔料としては、例えばカラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。
【0083】
C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、15、16、17、20、24、31、55、60、61、65、71、73、74、81、83、93、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、116、117、119、120、126、127、128、129、138、139、150、151、152、153、154、155、156、166、168、175、185、及びC.I.ピグメントイエロー150の誘導体顔料;
C.I.ピグメントオレンジ1、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、61、63、64、71、73;
C.I.ピグメントバイオレット1、19、23、29、32、36、38;
C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、53:1、57、57:1、57:2、58:2、58:4、60:1、63:1、63:2、64:1、81:1、83、88、90:1、97、101、102、104、105、106、108、112、113、114、122、123、144、146、149、150、151、166、168、170、171、172、174、175、176、177、178、179、180、185、187、188、190、193、194、202、206、207、208、209、215、216、220、224、226、242、243、245、254、255、264、265、269、272、291;
C.I.ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、60;
C.I.ピグメントグリーン7、36、58、59、62、63;
C.I.ピグメントブラウン23、25;
C.I.ピグメントブラック1、7。
【0084】
また、前記無機顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0085】
例えば、カラーフィルタの基板上に、本発明に係る色材分散液を後述する感光性着色樹脂組成物として遮光層のパターンを形成する場合には、インク中に遮光性の高い黒色顔料を配合する。遮光性の高い黒色顔料としては、例えば、カーボンブラックや四三酸化鉄などの無機顔料、或いは、シアニンブラックなどの有機顔料を使用できる。
【0086】
上記分散可能な染料としては、染料に各種置換基を付与したり、溶解度の低い溶剤と組み合わせて用いることにより分散可能となった染料が挙げられる。
染料の造塩化合物としては、染料がカウンターイオンと塩を形成した化合物をいい、例えば、塩基性染料と酸との造塩化合物、酸性染料と塩基との造塩化合物が挙げられ、溶剤に可溶性の染料を公知のレーキ化(造塩化)手法を用いて、溶剤に不溶化したレーキ顔料も包含する。
本発明においては、染料及び染料の造塩化合物から選ばれる少なくとも一種を含む色材と、前記本発明の分散剤とを組み合わせて用いることにより当該色材の分散性や分散安定性を向上することができる。
【0087】
前記染料としては、従来公知の染料の中から適宜選択することができる。このような染料としては、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、アントラキノン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、シアニン染料、ナフトキノン染料、キノンイミン染料、メチン染料、フタロシアニン染料などを挙げることができる。
なお、目安として、10gの溶剤(又は混合溶剤)に対して染料の溶解量が10mg以下であれば、当該溶剤(又は混合溶剤)において、当該染料が分散可能であると判定することができる。
【0088】
中でも、色材が、ジケトピロロピロール顔料、キノフタロン顔料、銅フタロシアニン顔料、亜鉛フタロシアニン顔料、キノフタロン染料、クマリン染料、シアニン染料、及びこれらの染料の造塩化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する場合、前記分散剤を用いることによる色材の昇華乃至析出を抑制する効果が高く、高輝度な着色層を形成可能である点から好ましい。また、前記色材としては、中でも、ジケトピロロピロール顔料、キノフタロン顔料、銅フタロシアニン顔料、亜鉛フタロシアニン顔料、キノフタロン染料よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0089】
ジケトピロロピロール顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド254、255、264、272、291、及び下記一般式(i)で表されるジケトピロロピロール顔料が挙げられ、中でもC.I.ピグメントレッド254、272、291、及び下記一般式(i)においてR21及びR22がそれぞれ4-ブロモフェニル基であるジケトピロロピロール顔料から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0090】
【化11】
(一般式(i)中、R
21及びR
22は、それぞれ独立に、4-クロロフェニル基、又は4-ブロモフェニル基である。)
【0091】
キノフタロン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
銅フタロシアニン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、C.I.ピグメントグリーン7、36等が挙げられ、中でも、C.I.ピグメントブルー15:6が好ましい。
亜鉛フタロシアニン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン58、59等が挙げられる。
キノフタロン染料としては、例えば、C.I.ディスパースイエロー54、64、67、134、149、160、C.I.ソルベントイエロー114、157等が挙げられ、中でも、C.I.ディスパースイエロー54が好ましい。
【0092】
本発明に用いられる色材の平均一次粒径としては、カラーフィルタの着色層とした場合に、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、用いる色材の種類によっても異なるが、10~100nmの範囲内であることが好ましく、15~60nmであることがより好ましい。色材の平均一次粒径が上記範囲であることにより、本発明に係る色材分散液を用いて製造されたカラーフィルタを備えた表示装置を高コントラストで、かつ高品質なものとすることができる。
【0093】
また、色材分散液中の色材の平均分散粒径は、用いる色材の種類によっても異なるが、10~100nmの範囲内であることが好ましく、15~60nmの範囲内であることがより好ましい。
色材分散液中の色材の平均分散粒径は、少なくとも溶剤を含有する分散媒体中に分散している色材粒子の分散粒径であって、レーザー光散乱粒度分布計により測定されるものである。レーザー光散乱粒度分布計による粒径の測定としては、色材分散液に用いられている溶剤で、色材分散液をレーザー光散乱粒度分布計で測定可能な濃度に適宜希釈(例えば、1000倍など)し、レーザー光散乱粒度分布計(例えば、日機装社製ナノトラック粒度分布測定装置UPA-EX150)を用いて動的光散乱法により23℃にて測定することができる。ここでの平均分布粒径は、体積平均粒径である。
【0094】
本発明に用いられる、色材は、再結晶法、ソルベントソルトミリング法等の公知の方法にて製造することができる。また、市販の色材を微細化処理して用いても良い。
【0095】
本発明に係る色材分散液において、色材の含有量は、特に限定されない。色材の含有量は、分散性及び分散安定性の点から、色材分散液中の全固形分100質量部に対して、5~80質量部、より好ましくは8~70質量部の割合で配合することが好ましい。
特に色材濃度が高い塗膜乃至着色層を形成する場合には、色材分散液中の全固形分100質量部に対して、30~80質量部、より好ましくは40~75質量部の割合で配合することが好ましい。
【0096】
<溶剤>
本発明に用いられる溶剤としては、色材分散液中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であればよく、特に限定されない。溶剤は単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
溶剤の具体例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、N-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、メトキシアルコール、エトキシアルコールなどのアルコール系溶剤;メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノールなどのカルビトール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、ヒドロキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシプロピオン酸エチル、n-ブチルアセテート、イソブチルアセテート、酪酸イソブチル、酪酸n-ブチル、乳酸エチル、シクロヘキサノールアセテートなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノンなどのケトン系溶剤;メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート系溶剤;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテート、ブチルカルビトールアセテート(BCA)などのカルビトールアセテート系溶剤;プロピレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート等のジアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどの非プロトン性アミド溶剤;γ-ブチロラクトンなどのラクトン系溶剤;テトラヒドロフランなどの環状エーテル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの不飽和炭化水素系溶剤;N-ヘプタン、N-ヘキサン、N-オクタンなどの飽和炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類などの有機溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中ではグリコールエーテルアセテート系溶剤、カルビトールアセテート系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、エステル系溶剤が他の成分の溶解性の点で好適に用いられる。中でも、本発明に用いる溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、及び、3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選択される1種以上であることが、他の成分の溶解性や塗布適性の点から好ましい。
【0097】
本発明に係る色材分散液は、以上のような溶剤を、当該溶剤を含む色材分散液全量に対して、通常、55~95質量%の範囲内であることが好ましく、中でも65~90質量%の範囲内であることが好ましく、70~88質量%の範囲内であることがより好ましい。溶剤が少なすぎると、粘度が上昇し、分散性が低下しやすい。また、溶剤が多すぎると、色材濃度が低下し、目標とする色度座標に達成することが困難な場合がある。
【0098】
<その他の成分>
本発明に係る色材分散液には、本発明の効果が損なわれない限り、更に必要に応じて、分散補助樹脂、その他の成分を配合してもよい。
分散補助樹脂としては、例えば後述する感光性着色樹脂組成物で例示されるアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂の立体障害によって色材粒子同士が接触しにくくなり、分散安定化することやその分散安定化効果によって分散剤を減らす効果がある場合がある。
また、その他の成分としては、例えば、濡れ性向上のための界面活性剤、密着性向上のためのシランカップリング剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0099】
本発明に係る色材分散液は、後述する感光性着色樹脂組成物を調製するための予備調製物として用いられる。すなわち、色材分散液とは、後述の感光性着色樹脂組成物を調製する前段階において予備調製される、(組成物中の色材成分質量)/(組成物中の色材成分以外の固形分質量)比の高い色材分散液である。具体的には、(組成物中の色材成分質量)/(組成物中の色材成分以外の固形分質量)比は通常1.0以上である。色材分散液と、後述する各成分とを混合することにより、分散性に優れたれ感光性着色樹脂組成物を調製することができる。
【0100】
<色材分散液の製造方法>
本発明において、色材分散液の製造方法は、前記色材が、前記グラフト共重合体又は塩型グラフト共重合体の分散剤により、溶剤中に分散された色材分散液が得られる方法であれば特に限定されない。中でも、色材の分散性及び分散安定性に優れる点から、以下の2つの製造方法のうちのいずれかとすることが好ましい。
【0101】
即ち、本発明に係る色材分散液の第一の製造方法は、前記グラフト共重合体又は塩型グラフト共重合体の分散剤を準備する工程と、溶剤中、前記分散剤の存在下で、色材を分散する工程とを有するものである
【0102】
また、塩型グラフト共重合体である分散剤を用いる場合の本発明に係る色材分散液の第二の製造方法は、溶剤と、前記グラフト共重合体と、有機酸化合物等と、色材とを混合して、前記一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位の少なくとも一部と、有機酸化合物等とを塩形成しながら、色材を分散する工程とを有するものである。
【0103】
塩型グラフト共重合体を用いる場合において、上記第一の製造方法によれば、塩型グラフト共重合体を調製した後に、当該塩型グラフト共重合体を分散剤として用いて色材を分散するため、塩形成前のグラフト共重合体と有機酸化合物等の反応終点や反応率を正確に確認することができる点から好ましい。
また、上記第二の製造方法によれば、塩型グラフト共重合体の分散剤を調製しながら、色材を分散するため、塩型グラフト共重合体が自己凝集することがなく、色材分散液を効率よく調製することができ、また、分散性を向上することができる。
【0104】
上記第一の製造方法及び上記第二の製造方法において色材は、従来公知の分散機を用いて分散することができる。
分散機の具体例としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントコンディショナー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は0.03~3.0mmが好ましく、より好ましくは0.05~2.0mmである。
【0105】
具体的には、ビーズ径が比較的大きめな2.0mmジルコニアビーズで予備分散を行い、更にビーズ径が比較的小さめな0.1mmジルコニアビーズで本分散することが挙げられる。また、分散後、0.5~2μmのフィルターで濾過することが好ましい。
【0106】
<用途>
本発明に係る色材分散液、及び分散剤は、現像残渣の発生抑制、現像時間の短縮化、水染み発生抑制、及び優れた耐溶剤性を同時に満たす感光性着色樹脂組成物を作製可能であることから、中でもカラーフィルタ用途に好適に用いることができる。
【0107】
II.感光性着色樹脂組成物
本発明に係る感光性着色樹脂組成物は、前記本発明に係る色材分散液と、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、光開始剤とを含有することを特徴とする。
本発明の感光性着色樹脂組成物は、前記本発明に係る色材分散液を用いることにより、現像残渣の発生抑制、現像時間の短縮化、水染み発生抑制、及び優れた耐溶剤性を同時に満たすことが可能である。
【0108】
本発明の感光性着色樹脂組成物は、色材と、分散剤と、溶剤と、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、光開始剤とを少なくとも含有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の成分を含有してもよいものである。以下、本発明の感光性着色樹脂組成物に含まれる各成分について説明するが、分散剤、色材、及び溶剤については、上記本発明に係る色材分散液において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0109】
<アルカリ可溶性樹脂>
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂は酸性基を有するものであり、バインダー樹脂として作用し、かつパターン形成する際に用いられるアルカリ現像液に可溶性であるものの中から、適宜選択して使用することができる。
本発明において、アルカリ可溶性樹脂とは、酸価が40mgKOH/g以上であることを目安にすることができる。
本発明における好ましいアルカリ可溶性樹脂は、酸性基、通常カルボキシ基を有する樹脂であり、具体的には、カルボキシ基を有するアクリル系共重合体及びカルボキシ基を有するスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂、カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいものは、側鎖にカルボキシ基を有するとともに、さらに側鎖にエチレン性不飽和基等の光重合性官能基を有するものである。光重合性官能基を含有することにより形成される硬化膜の膜強度が向上するからである。また、これらアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂、並びにエポキシアクリレート樹脂は、2種以上混合して使用してもよい。
【0110】
カルボキシ基を有する構成単位を有するアクリル系共重合体、及びカルボキシ基を有するスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂は、例えば、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー、及び必要に応じて共重合可能なその他のモノマーを、公知の方法により(共)重合して得られた(共)重合体である。
カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシ基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの無水物含有モノマーを用いてもよい。中でも、共重合性やコスト、溶解性、ガラス転移温度などの点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0111】
アルカリ可溶性樹脂は、着色層の密着性が優れる点から、更に炭化水素環を有することが好ましい。アルカリ可溶性樹脂に、嵩高い基である炭化水素環を有することにより、得られた着色層の耐溶剤性、特に着色層の膨潤が抑制されるとの知見を得た。作用については未解明であるが、着色層内に嵩高い炭化水素環が含まれることにより、着色層内における分子の動きが抑制される結果、塗膜の強度が高くなり溶剤による膨潤が抑制されるものと推定される。
このような炭化水素環としては、置換基を有していてもよい環状の脂肪族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族環、及びこれらの組み合わせが挙げられ、炭化水素環がカルボニル基、カルボキシ基、オキシカルボニル基、アミド基等の置換基を有していてもよい。中でも、脂肪族環を含む場合には、着色層の耐熱性や密着性が向上すると共に、得られた着色層の輝度が向上する。
炭化水素環の具体例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルナン、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン(ジシクロペンタン)、アダマンタン等の脂肪族炭化水素環;ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン等の芳香族環;ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、スチルベン等の鎖状多環や、下記化学式(ii)に示されるカルド構造等が挙げられる。
【0112】
【0113】
また、アルカリ可溶性樹脂は、下記一般式(iii)で表されるマレイミド構造を有するのも好ましい。
【0114】
【化13】
(一般式(iii)において、R
Mは、置換されていてもよい炭化水素環である。)
【0115】
アルカリ可溶性樹脂が、前記一般式(iii)で表されるマレイミド構造を有する場合、炭化水素環に窒素原子を有するため、本発明の分散剤との相溶性が非常によく、現像残渣の抑制効果が向上する。
前記一般式(iii)のRMにおける、置換されていてもよい炭化水素環の具体例としては、前記炭化水素環の具体例と同様のものが挙げられる。
【0116】
炭化水素環として、脂肪族環を含む場合には、着色層の耐熱性や密着性が向上すると共に、得られた着色層の輝度が向上する点から好ましい。
また、前記化学式(ii)に示されるカルド構造を含む場合には、着色層の硬化性が向上し、耐溶剤性(NMP膨潤抑制)が向上する点から特に好ましい。
【0117】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂において、カルボキシ基を有する構成単位とは別に、上記炭化水素環を有する構成単位を有するアクリル系共重合体を用いることが、各構成単位量を調整しやすく、上記炭化水素環を有する構成単位量を増加して当該構成単位が有する機能を向上させやすい点から好ましい。
カルボキシ基を有する構成単位と、上記炭化水素環とを有するアクリル系共重合体は、前述の“共重合可能なその他のモノマー”として炭化水素環を有するエチレン性不飽和モノマーを用いることにより調製することができる。
前記炭化水素環を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、スチレンなどが挙げられ、現像後の着色層の断面形状が加熱処理においても維持される効果が大きい点から、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、スチレンが好ましい。
【0118】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂はまた、側鎖にエチレン性二重結合を有することが好ましい。エチレン性二重結合を有する場合には、カラーフィルタ製造時における樹脂組成物の硬化工程において、当該アルカリ可溶性樹脂と、上述した本発明の分散剤とが架橋結合を形成することができ、また、当該アルカリ可溶性樹脂同士、乃至、当該アルカリ可溶性樹脂と光重合性化合物等が架橋結合を形成し得る。そのため、側鎖にエチレン性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂と、本発明の分散剤とを組み合わせて用いると、相乗効果により硬化膜の膜強度がより向上するため、着色層の輝度及びITO膜のクラック耐性をより向上することができ、さらに、現像耐性が向上し、また、硬化膜の熱収縮が抑制されて基板との密着性に優れるようになる。
アルカリ可溶性樹脂中に、エチレン性二重結合を導入する方法は、従来公知の方法から適宜選択すればよい。例えば、アルカリ可溶性樹脂が有するカルボキシ基に、分子内にエポキシ基とエチレン性二重結合とを併せ持つ化合物、例えばグリシジル(メタ)アクリレート等を付加させ、側鎖にエチレン性二重結合を導入する方法や、水酸基を有する構成単位を共重合体に導入しておいて、分子内にイソシアネート基とエチレン性二重結合とを備えた化合物を付加させ、側鎖にエチレン性二重結合を導入する方法などが挙げられる。
【0119】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂は、更にメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等、エステル基を有する構成単位等の他の構成単位を含有していてもよい。エステル基を有する構成単位は、感光性着色樹脂組成物のアルカリ可溶性を抑制する成分として機能するだけでなく、溶剤に対する溶解性、さらには溶剤再溶解性を向上させる成分としても機能する。
【0120】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂は、カルボキシ基を有する構成単位と、炭化水素環を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂であることが好ましく、カルボキシ基を有する構成単位と、炭化水素環を有する構成単位と、エチレン性二重結合を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂であることがより好ましい。
【0121】
アルカリ可溶性樹脂は、各構成単位の仕込み量を適宜調整することにより、所望の性能を有するアルカリ可溶性樹脂とすることができる。
【0122】
カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、良好なパターンが得られる点から、モノマー全量に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。一方、現像後のパターン表面の膜荒れ等を抑制する点から、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、モノマー全量に対して50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの割合が上記下限値以上であると得られる塗膜のアルカリ現像液に対する溶解性が十分であり、また、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの割合が上記上限値以下であると、アルカリ現像液による現像時に、形成されたパターンの基板からの脱落やパターン表面の膜荒れが起こり難い傾向がある。
【0123】
また、アルカリ可溶性樹脂としてより好ましく用いられる、エチレン性二重結合を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂において、エポキシ基とエチレン性二重結合とを併せ持つ化合物はカルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量に対して、10質量%~95質量%であることが好ましく、15質量%~90質量%であることがより好ましい。
【0124】
カルボキシ基含有共重合体の好ましい重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~50,000の範囲であり、さらに好ましくは3,000~20,000である。1,000未満では硬化後のバインダー機能が著しく低下する場合があり、50,000を超えるとアルカリ現像液による現像時に、パターン形成が困難となる場合がある。
なお、カルボキシ基含有共重合体の上記重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてショウデックスGPCシステム-21H(Shodex GPC System-21H)により測定することができる。
【0125】
カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、特に限定されるものではないが、エポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物を酸無水物と反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート化合物が適している。
エポキシ化合物、不飽和基含有モノカルボン酸、及び酸無水物は、公知のものの中から適宜選択して用いることができる。カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、それぞれ1種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0126】
アルカリ可溶性樹脂は、現像液に用いるアルカリ水溶液に対する現像性(溶解性)の点から、酸価が50mgKOH/g以上のものを選択して用いることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂は、現像液に用いるアルカリ水溶液に対する現像性(溶解性)の点、及び基板への密着性の点から、酸価が60mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、中でも、70mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましい。
なお、アルカリ可溶性樹脂の酸価はJIS K 0070:1992に従って測定することができる。
【0127】
アルカリ可溶性樹脂の側鎖にエチレン性不飽和基を有する場合のエチレン性不飽和結合当量は、硬化膜の膜強度が向上して現像耐性が向上し、基板との密着性に優れるといった効果を得る点から、100~2000の範囲であることが好ましく、特に、140~1500の範囲であることが好ましい。該エチレン性不飽和結合当量が、100以上であれば現像耐性や密着性に優れている。また、2000以下であれば、前記カルボキシ基を有する構成単位や、炭化水素環を有する構成単位などの他の構成単位の割合を相対的に増やすことができるため、現像性や耐熱性に優れている。
ここで、エチレン性不飽和結合当量とは、上記アルカリ可溶性樹脂におけるエチレン性不飽和結合1モル当りの重量平均分子量のことであり、下記数式(2)で表される。
【0128】
数式(2) エチレン性不飽和結合当量(g/mol)=W(g)/M(mol)
(数式(2)中、Wは、アルカリ可溶性樹脂の質量(g)を表し、Mはアルカリ可溶性樹脂W(g)中に含まれるエチレン性二重結合のモル数(mol)を表す。)
【0129】
上記エチレン性不飽和結合当量は、例えば、JIS K 0070:1992に記載のよう素価の試験方法に準拠して、アルカリ可溶性樹脂1gあたりに含まれるエチレン性二重結合の数を測定することにより算出してもよい。
【0130】
感光性着色樹脂組成物において用いられるアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その含有量としては特に制限はないが、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対してアルカリ可溶性樹脂は好ましくは5質量%~60質量%、さらに好ましくは10質量%~40質量%の範囲内である。アルカリ可溶性樹脂の含有量が上記下限値以上であると、充分なアルカリ現像性が得られ、また、アルカリ可溶性樹脂の含有量が上記上限値以下であると、現像時に膜荒れやパターンの欠けを抑制できる。
【0131】
<多官能モノマー>
感光性着色樹脂組成物において用いられる多官能モノマーは、後述する光開始剤によって重合可能なものであればよく、特に限定されず、通常、エチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する化合物が用いられ、特にアクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する、多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、従来公知のものの中から適宜選択して用いればよい。具体例としては、例えば、特開2013-029832号公報に記載のもの等が挙げられる。
【0132】
これらの多官能(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明の感光性着色樹脂組成物に優れた光硬化性(高感度)が要求される場合には、多官能モノマーが、重合可能な二重結合を3つ(三官能)以上有するものであるものが好ましく、3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類やそれらのジカルボン酸変性物が好ましく、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましい。
感光性着色樹脂組成物において用いられる上記多官能モノマーの含有量は、特に制限はないが、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して多官能モノマーは好ましくは5~60質量%、さらに好ましくは10~40質量%の範囲内である。多官能モノマーの含有量が上記下限値より少ないと十分に光硬化が進まず、露光部分が現像時に溶出する場合があり、また、多官能モノマーの含有量が上記上限値より多いとアルカリ現像性が低下するおそれがある。
【0133】
<光開始剤>
本発明の感光性着色樹脂組成物において用いられる光開始剤としては、特に制限はなく、従来知られている各種開始剤の中から、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
光開始剤としては、芳香族ケトン類、ベンゾインエーテル類、ハロメチルオキサジアゾール化合物、α-アミノケトン、ビイミダゾール類、N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、ハロメチル-S-トリアジン系化合物、チオキサントン等を挙げることができる。光開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル類、エチルベンゾイン等のベンゾイン、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルイミダゾール2量体等のビイミダゾール類、2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルオキサジアゾール化合物、2-(4-ブトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス-トリクロロメチル-S-トリアジン等のハロメチル-S-トリアジン系化合物、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパノン、1,2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1,1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、ベンジル、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノベンゾエート、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2-n-ブトキシエチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、4-ベンゾイル-メチルジフェニルサルファイド、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン、α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルフォリニル)-1-プロパノンなどが挙げられる。
中でも、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントンが好ましく用いられる。更に2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンのようなα-アミノアセトフェノン系開始剤とジエチルチオキサントンのようなチオキサントン系開始剤を組み合わせることが感度調整、水染みを抑制し、現像耐性が向上する点から好ましい。
α-アミノアセトフェノン系開始剤とチオキサントン系開始剤を用いる場合のこれらの合計含有量は、着色樹脂組成物の固形分全量に対して、5質量%~15質量%が好ましい。開始剤量が15質量%以下だと製造プロセス中の昇華物が低減するため好ましい。開始剤量が5質量%以上であると水染み等、現像耐性が向上する。
【0134】
本発明において、光開始剤は、中でも、感度を向上させることができる点から、オキシムエステル系光開始剤を含むことが好ましい。また、オキシムエステル系光開始剤を用いることにより、細線パターンを形成する際に、面内の線幅のばらつきが抑制され易い。更に、オキシムエステル系光開始剤を用いることにより、残膜率が向上し、水染み発生抑制効果が高くなる傾向がある。なお、水染みとは、アルカリ現像性を高くする成分を用いると、アルカリ現像後、純水でリンスした後に、水が染みたような跡が発生することをいう。このような水染みは、ポストベーク後に消えるので製品としては問題がないが、現像後にパターニング面の外観検査において、ムラ異常として検出されてしまい、正常品と異常品の区別がつかないという問題が生じる。そのため、外観検査において検査装置の検査感度を下げると、結果として最終的なカラーフィルタ製品の歩留まり低下を引き起こし、問題となる。
当該オキシムエステル系光開始剤としては、分解物による感光性着色樹脂組成物の汚染や装置の汚染を低減する点から、中でも、芳香環を有するものが好ましく、芳香環を含む縮合環を有するものがより好ましく、ベンゼン環とヘテロ環を含む縮合環を有することがさらに好ましい。
オキシムエステル系光開始剤としては、1,2-オクタジオン-1-[4-(フェニルチオ)-、2-(o-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)、特開2000-80068号公報、特開2001-233842号公報、特表2010-527339、特表2010-527338、特開2013-041153等に記載のオキシムエステル系光開始剤の中から適宜選択できる。市販品として、イルガキュアOXE-01、ジフェニルスルフィド骨格を有するアデカアークルズNCI-930、TR-PBG-345、カルバゾール骨格を有するTR-PBG-304、フルオレン骨格を有するTR-PBG-365、ジフェニルスルフィド骨格を有するTR-PBG-3057(以上、常州強力電子新材料社製)などを用いても良い。特にジフェニルスルフィド骨格又はフルオレン骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を用いることが輝度の点から好ましい。またカルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を用いることが感度の高い点から好ましい。
またオキシムエステル系光開始剤を2種類以上併用することは、輝度、残膜率が向上しやすく、水染み発生抑制効果が高い点で好ましい。特にジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤2種類の併用又は、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤とフルオレン骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を併用することは輝度が高く、耐熱性が高い点から好ましい。また、カルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤と、フルオレン骨格を有するオキシムエステル系光開始剤又はジフェニルスルフィドを有するオキシムエステル系光開始剤を併用することは感度、輝度に優れる点で好ましい。
【0135】
また、オキシムエステル系光開始剤に、3級アミン構造を有する光開始剤を組み合わせて用いることが、水染みを抑制し、また、感度向上の点から、好ましい。3級アミン構造を有する光開始剤は、分子内に酸素クエンチャーである3級アミン構造を有するため、開始剤から発生したラジカルが酸素により失活し難く、感度を向上させることができるからである。上記3級アミン構造を有する光開始剤の市販品としては、例えば、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(例えばイルガキュア907、BASF社製)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン(例えばイルガキュア369、BASF社製)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(例えば、ハイキュアABP、川口薬品製)などが挙げられる。
また、オキシムエステル系光開始剤に、チオキサントン系開始剤を組み合わせることが感度調整、水染みを抑制し、現像耐性が向上する点から好ましく、オキシムエステル系光開始剤を2種類以上と、チオキサントン系開始剤を組み合わせることが輝度、残膜率が向上し、感度調整をしやすく、水染み発生抑制効果が高く、現像耐性が向上する点で好ましい。
【0136】
本発明の感光性着色樹脂組成物において用いられる光開始剤の含有量は、上記多官能モノマー100質量部に対して、通常0.01質量部~100質量部程度、好ましくは5質量部~60質量部である。この含有量が上記下限値以上であると十分に光硬化が進み露光部分が現像時に溶出することを抑制し、一方上記上限値以下であると得られる着色層の黄変性が弱くなって輝度が低下することを抑制できる。
また、本発明の感光性着色樹脂組成物において用いられる光開始剤として、オキシムエステル系光開始剤2種以上の合計含有量は、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、0.1質量%~12.0質量%、さらに好ましくは1.0質量%~8.0質量%の範囲内であることが、これらの光開始剤の併用効果を十分に発揮させる点から好ましい。
【0137】
本発明の感光性着色樹脂組成物において用いられるバインダー成分は、これらの合計含有量が、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して35質量%~97質量%が好ましく、40質量%~96質量%の割合で配合することがより好ましい。上記下限値以上であれば、硬度や、基板との密着性に優れた着色層を得ることができる。また上記上限値以下であれば、現像性に優れ、熱収縮による微小なシワの発生も抑制される。特に色材濃度が高い着色層を形成する場合には、バインダー成分は、これらの合計含有量が、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、20~90質量%が好ましく、25~80質量%の割合で配合することがより好ましい。
【0138】
<酸化防止剤>
本発明の感光性着色樹脂組成物は、更に酸化防止剤を含有することが、耐熱性が向上し、色材の退色が抑制され、輝度が向上する点から好ましい。酸化防止剤は従来公知のものの中から適宜選択すればよい。酸化防止剤の具体例としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドラジン系酸化防止剤等が挙げられ、耐熱性の点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることが好ましい。国際公開第2014/021023号に記載されているような潜在性酸化防止剤であっても良い。
【0139】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:商品名:IRGANOX1010、BASF社製)、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(商品名:イルガノックス3114、BASF製)、2,4,6-トリス(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルベンジル)メシチレン(商品名:イルガノックス1330、BASF製)、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)(商品名:スミライザーMDP-S、住友化学製)、6,6’-チオビス(2-tert-ブチル-4-メチルフェノール)(商品名:イルガノックス1081、BASF製)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル(商品名:イルガモド195、BASF製)等が挙げられる。中でも、耐熱性及び耐光性の点から、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:商品名:IRGANOX1010、BASF社製)が好ましい。
【0140】
本発明の感光性着色樹脂組成物は、前記オキシムエステル系光開始剤と、酸化防止剤とを組み合わせて含有すると、相乗効果で輝度が向上する点、残膜率が向上する点、細線パターンを形成する際に、直線性がより向上したり、マスク線幅の設計通りに細線パターンを形成する能力が向上する点から好ましい。
【0141】
酸化防止剤の配合量としては、着色樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、酸化防止剤が0.1質量部~10.0質量部であることが好ましく、0.5質量部~5.0質量部であることがより好ましい。上記下限値以上であれば、耐熱性及び耐光性に優れている。一方、上記上限値以下であれば、本発明の着色樹脂組成物を高感度の感光性樹脂組成物とすることができる。
【0142】
酸化防止剤を前記オキシムエステル系光開始剤と組み合わせて用いる場合、酸化防止剤の配合量としては、前記オキシムエステル系光開始剤の合計量100質量部に対して、酸化防止剤が1質量部~250質量部であることが好ましく、3質量部~80質量部であることがより好ましく、5質量部~45質量部であることがより更に好ましい。上記範囲内であれば、上記組み合わせの効果に優れている。
【0143】
<任意添加成分>
本発明の感光性着色樹脂組成物には、必要に応じて、前記酸化防止剤の他、各種添加剤を含むものであってもよい。
添加剤としては、例えば、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等などが挙げられる。
界面活性剤及び可塑剤の具体例としては、例えば、特開2013-029832号公報に記載のものが挙げられる。
【0144】
またシランカップリング剤としては、例えばKBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-903、KBE-903、KBM573、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBM-303、KBM-802、KBM-803、KBE-9007、X-12-967C(信越シリコーン社製)などが挙げられる。中でもSiN基板の密着性の点からメタクリル基、アクリル基を有するKBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103が好ましい。
【0145】
シランカップリング剤の含有量としては、感光性着色樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、シランカップリング剤が0.05質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。上記下限値以上、上記上限値以下であれば、基板密着性に優れている。
【0146】
<感光性着色樹脂組成物における各成分の配合割合>
色材の合計の含有量は、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、3~65質量%、より好ましくは4~60質量%の割合で配合することが好ましい。上記下限値以上であれば、感光性着色樹脂組成物を所定の膜厚(通常は1.0~5.0μm)に塗布した際の着色層が充分な色濃度を有する。また、上記上限値以下であれば、保存安定性に優れると共に、充分な硬度や、基板との密着性を有する着色層を得ることができる。特に色材濃度が高い着色層を形成する場合には、色材の含有量は、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、15~75質量%、より好ましくは25~70質量%の割合で配合することが好ましい。
また、分散剤の含有量としては、色材を均一に分散することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して1~40質量%の割合で用いることができる。更に、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して2~30質量%の割合で配合するのが好ましく、特に3~25質量%の割合で配合するのが好ましい。上記下限値以上であれば、色材の分散性及び分散安定性に優れ、感光性着色樹脂組成物の保存安定性により優れている。また、上記上限値以下であれば、現像性が良好なものとなる。特に色材濃度が高い着色層を形成する場合には、分散剤の含有量は、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、2~25質量%、より好ましくは3~20質量%の割合で配合することが好ましい。なお、分散剤の質量は、塩型グラフト共重合体の場合、塩形成前の前記グラフト共重合体と有機酸化合物等との合計の質量である。
また、溶剤の含有量は、着色層を精度良く形成することができる範囲で適宜設定すればよい。該溶剤を含む感光性着色樹脂組成物の全量に対して、通常、55~95質量%の範囲内であることが好ましく、中でも、65~88質量%の範囲内であることがより好ましい。上記溶剤の含有量が、上記範囲内であることにより、塗布性に優れたものとすることができる。
【0147】
<感光性着色樹脂組成物の製造方法>
本発明の感光性着色樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、前記本発明に係る色材分散液に、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、光開始剤と、必要に応じてその他の成分を添加し、公知の混合手段を用いて混合することにより得ることができる。
【0148】
<用途>
本発明に係る感光性着色樹脂組成物は、現像残渣の発生抑制、現像時間の短縮化、水染み発生抑制、及び優れた耐溶剤性を同時に満たすことが可能であることから、中でもカラーフィルタ用途に好適に用いることができる。
【0149】
III.カラーフィルタ
本発明に係るカラーフィルタは、基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが、前記本発明に係る感光性着色樹脂組成物の硬化物である。
【0150】
このような本発明に係るカラーフィルタについて、図を参照しながら説明する。
図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
図1によれば、本発明のカラーフィルタ10は、基板1と、遮光部2と、着色層3とを有している。
【0151】
<着色層>
本発明のカラーフィルタに用いられる着色層は、少なくとも1つが、前記本発明に係る感光性着色樹脂組成物の硬化物である着色層である。
着色層は、通常、後述する基板上の遮光部の開口部に形成され、通常3色以上の着色パターンから構成される。
また、当該着色層の配列としては、特に限定されず、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
当該着色層の厚みは、塗布方法、感光性着色樹脂組成物の固形分濃度や粘度等を調整することにより、適宜制御されるが、通常、1~5μmの範囲であることが好ましい。
【0152】
当該着色層は、例えば、下記の方法により形成することができる。
まず、前述した本発明の感光性着色樹脂組成物を、スプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、ダイコート法などの塗布手段を用いて後述する基板上に塗布して、ウェット塗膜を形成させる。なかでもスピンコート法、ダイコート法を好ましく用いることができる。
次いで、ホットプレートやオーブンなどを用いて、該ウェット塗膜を乾燥させたのち、これに、所定のパターンのマスクを介して露光し、アルカリ可溶性樹脂及び多官能モノマー等を光重合反応させて硬化塗膜とする。露光に使用される光源としては、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプなどの紫外線、電子線等が挙げられる。露光量は、使用する光源や塗膜の厚みなどによって適宜調整される。
また、露光後に重合反応を促進させるために、加熱処理を行ってもよい。加熱条件は、使用する感光性着色樹脂組成物中の各成分の配合割合や、塗膜の厚み等によって適宜選択される。
【0153】
次に、現像液を用いて現像処理し、未露光部分を溶解、除去することにより、所望のパターンで塗膜が形成される。現像液としては、通常、水や水溶性溶剤にアルカリを溶解させた溶液が用いられる。このアルカリ溶液には、界面活性剤などを適量添加してもよい。また、現像方法は一般的な方法を採用することができる。
現像処理後は、通常、現像液の洗浄、感光性着色樹脂組成物の硬化塗膜の乾燥が行われ、着色層が形成される。なお、現像処理後に、塗膜を十分に硬化させるために加熱処理を行ってもよい。加熱条件としては特に限定はなく、塗膜の用途に応じて適宜選択される。
【0154】
<遮光部>
本発明のカラーフィルタにおける遮光部は、後述する基板上にパターン状に形成されるものであって、一般的なカラーフィルタに遮光部として用いられるものと同様とすることができる。
当該遮光部のパターン形状としては、特に限定されず、例えば、ストライプ状、マトリクス状等の形状が挙げられる。遮光部は、スパッタリング法、真空蒸着法等によるクロム等の金属薄膜であっても良い。或いは、遮光部は、樹脂バインダー中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂層であってもよい。遮光性粒子を含有させた樹脂層の場合には、感光性レジストを用いて現像によりパターニングする方法、遮光性粒子を含有するインクジェットインクを用いてパターニングする方法、感光性レジストを熱転写する方法等がある。
【0155】
遮光部の膜厚としては、金属薄膜の場合は0.2~0.4μm程度で設定され、黒色顔料をバインダー樹脂中に分散又は溶解させたものである場合は0.5~2μm程度で設定される。
【0156】
<基板>
基板としては、後述する透明基板、シリコン基板、及び、透明基板又はシリコン基板上にアルミニウム、銀、銀/銅/パラジウム合金薄膜などを形成したものが用いられる。これらの基板上には、別のカラーフィルタ層、樹脂層、TFT等のトランジスタ、回路等が形成されていてもよい。
本発明のカラーフィルタにおける透明基板としては、可視光に対して透明な基材であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板、フレキシブルガラス等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、本発明のカラーフィルタの用途に応じて、例えば100μm~1mm程度のものを使用することができる。
なお、本発明のカラーフィルタは、上記基板、遮光部及び着色層以外にも、例えば、オーバーコート層や透明電極層、さらには配向膜や柱状スペーサ等が形成されたものであってもよい。
【0157】
IV.表示装置
本発明に係る表示装置は、前記本発明に係るカラーフィルタを有することを特徴とする。本発明において表示装置の構成は特に限定されず、従来公知の表示装置の中から適宜選択することができ、例えば、液晶表示装置や、有機発光表示装置などが挙げられる。
【0158】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置としては、例えば、前述した本発明に係るカラーフィルタと、対向基板と、前記カラーフィルタと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有する液晶表示装置が挙げられる。
このような本発明の液晶表示装置について、図を参照しながら説明する。
図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
図2に例示するように本発明の液晶表示装置40は、カラーフィルタ10と、TFTアレイ基板等を有する対向基板20と、上記カラーフィルタ10と上記対向基板20との間に形成された液晶層30とを有している。
なお、本発明の液晶表示装置は、この
図2に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた液晶表示装置として公知の構成とすることができる。
【0159】
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
また、対向基板としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができる。
さらに、液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0160】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。前記方法によって液晶層を形成後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
【0161】
[有機発光表示装置]
本発明の有機発光表示装置としては、例えば、前述した本発明に係るカラーフィルタと、有機発光体とを有する有機発光表示装置が挙げられる。
このような本発明の有機発光表示装置について、図を参照しながら説明する。
図3は、本発明の有機発光表示装置の一例を示す概略図である。
図3に例示するように本発明の有機発光表示装置100は、カラーフィルタ10と、有機発光体80とを有している。カラーフィルタ10と、有機発光体80との間に、有機保護層50や無機酸化膜60を有していても良い。
【0162】
有機発光体80の積層方法としては、例えば、カラーフィルタ上面へ透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体80を無機酸化膜60上に貼り合わせる方法などが挙げられる。有機発光体80における、透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76、その他の構成は、公知のものを適宜用いることができる。このようにして作製された有機発光表示装置100は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
なお、本発明の有機発光表示装置は、この
図3に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた有機発光表示装置として公知の構成とすることができる。
【実施例】
【0163】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
塩形成前のブロック共重合体のアミン価、及び塩型ブロック共重合体のアミン価は、前述の本発明の明細書に記載した測定方法に従って求めた。
塩形成前のブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、前述の本発明の明細書に記載した測定方法に従って、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0164】
(合成例1:マクロモノマーAの製造)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)70.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度90℃に加温した。一般式(III)で表される構成単位を誘導する、PEG鎖を有するモノマー(Evonik製、商品名:VISIOMER MPEG 1005 MA W、一般式(III)中のR4はCH3、A3はCOO、R5はエチレン基、R6はCH3、m=22)1.0質量部、メタクリル酸メチル(MMA)99.0質量部、メルカプトエタノール4.0質量部、PGMEA30質量部、α,α’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.0質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、さらに3時間反応した。次に、窒素気流を止めて、この反応溶液を80℃に冷却し、カレンズMOI(昭和電工(株)社製)8.74質量部、ジラウリン酸ジオクチルすず0.125g、p-メトキシフェノール0.125質量部、及びPGMEA30質量部、を加えて3時間攪拌することで、マクロモノマーAの50%溶液を得た。得られたマクロモノマーAを、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて、N-メチルピロリドン、0.01モル/L臭化リチウム添加/ポリスチレン標準の条件で確認したところ、重量平均分子量(Mw)4500、分子量分布(Mw/Mn)1.6であった。
【0165】
(合成例2~10:マクロモノマーB~Kの製造)
合成例1のマクロモノマーAの製造において、モノマーとして一般式(III)で表される構成単位を誘導するモノマー1.0質量部とMMA99.0質量部を用いる代わりに、表1に示すようにモノマーの種類及び質量比の少なくとも一方を変更して用いた以外は、合成例1と同様にして、マクロモノマーB~Kを製造した。得られたマクロモノマーの重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を表1に示す。
【0166】
(比較合成例1~3:マクロモノマーL~Nの製造)
合成例1のマクロモノマーAの製造において、モノマーとして一般式(III)で表される構成単位を誘導するモノマー1.0質量部とMMA99.0質量部を用いる代わりに、表1に示すようにモノマーの種類及び質量比の少なくとも一方を変更して用いた以外は、合成例1と同様にして、マクロモノマーL~Nを製造した。得られたマクロモノマーの重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を表1に示す。
【0167】
【表1】
なお、表中の略号は以下の通りである。
PEG鎖を有するモノマー(m=30);日油製、商品名:ブレンマーPSE-1300、一般式(III)中のR
4はCH
3、A
3はCOO、R
5はエチレン基、R
6はC
18H
37、m=30
PEG鎖を有するモノマー(m=45);Evonik製、商品名:VISIOMER MPEG 2005 MA W、一般式(III)中のR
4はCH
3、A
3はCOO、R
5はエチレン基、R
6はCH
3、m=45
PEG鎖を有するモノマー(m=90);日油製、商品名:ブレンマーPME-4000、PEG鎖の繰り返し数m=90
PEG鎖を有するモノマー(m=17);Evonik製、商品名:VISIOMER MPEG 750 MA W、PEG鎖の繰り返し数m=17
PEG鎖を有するモノマー(m=9);日油製、商品名:ブレンマーPME-400、PEG鎖の繰り返し数m=9
PEG鎖を有するモノマー(m=3);東京化成工業製、商品名:トリエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、PEG鎖の繰り返し数m=3
BMA;n-ブチルメタクリレート
2-EHMA;2-エチルヘキシルメタクリレート
BzMA;ベンジルメタクリレート
【0168】
(製造例1:グラフト共重合体Aの製造)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA63.1質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度85℃に加温した。合成例1のマクロモノマーA溶液141質量部(有効固形分70.5質量部)、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(DMMA)29.5質量部、n-ドデシルメルカプタン1.24質量部、PGMEA49.4質量部、AIBN1.0質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、3時間加熱攪拌したのち、AIBN0.10質量部 、PGMEA6.0質量部の混合液を10分かけて滴下し、さらに同温で1時間熟成することで、グラフト共重合体Aの35.0質量%溶液を得た。得られたグラフト共重合体Aは、GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)10000であった。なおアミン価は105mgKOH/gであった。
【0169】
(製造例2~9:グラフト共重合体B~Kの製造)
製造例1において、マクロモノマーA有効固形分70.5質量部とDMMA29.5質量部とを用いる代わりに、表2に示すように、マクロモノマーの種類及びマクロモノマーとDMMAの質量比とを変更した以外は、製造例1と同様にして、グラフト共重合体B~Kを製造した。得られたグラフト共重合体B~Kの重量平均分子量(Mw)及び変性前アミン価を表2に示す。
【0170】
(比較製造例1~4:グラフト共重合体L~Oの製造)
製造例1において、マクロモノマーA有効固形分70.5質量部とDMMA29.5質量部とを用いる代わりに、表2に示すように、マクロモノマーの種類及びマクロモノマーとDMMAの質量比とを変更した以外は、製造例1と同様にして、グラフト共重合体L~Oを製造した。得られたグラフト共重合体L~Oの重量平均分子量(Mw)及び変性前アミン価を表2に示す。
なお、比較製造例4のグラフト共重合体Oの製造においては、マクロモノマーAの代わりにPEG鎖を有するモノマー(m=90)を用いた。当該PEG鎖を有するモノマー(m=90)は、日油製、商品名:ブレンマーPME-4000、PEG鎖の繰り返し数m=90である。
【0171】
(製造例3’:塩型グラフト共重合体Cの製造)
グラフト共重合体C溶液4.22質量部に、塩形成成分であるフェニルホスホン酸(日産化学工業(株)社製、「PPA」)を0.15質量部(グラフト共重合体CのDMMAユニットに対し、0.5当量)加え、室温にて1時間攪拌することにより、塩型グラフト共重合体C溶液を調製した。得られた塩型グラフト共重合体C溶液はPGMEAにより固形分35%となるように調整した。
【0172】
(製造例6’、7’、8’、9’、10’及び11’、比較製造例2’及び3’:塩型グラフト共重合体F,G,H,I、J、K、M、及びNの製造)
製造例3’において、グラフト共重合体C溶液の代わりに、グラフト共重合体F,G,H,I、J、K、M、又はN溶液を用い、塩形成剤の種類及び量(グラフト共重合体CのDMMAユニットに対する当量)を表2に示すように変更した以外は、製造例3’と同様にして、塩型グラフト共重合体F,G,H,I、J、K、M、及びN溶液をそれぞれ製造した。塩型グラフト共重合体の塩形成後アミン価を表2に示す。
【0173】
(比較製造例5:ブロック共重合体Pの製造)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた500mL丸底4口セパラブルフラスコにTHF250質量部、塩化リチウム0.6質量部を加え、充分に窒素置換を行った。反応フラスコを-60℃まで冷却した後、ブチルリチウム4.9質量部(15質量%ヘキサン溶液)、ジイソプロピルアミン1.1質量部、イソ酪酸メチル1.0質量部を、シリンジを用いて注入した。Bブロック用モノマーの一般式(III)で表される構成単位を誘導する、PEG鎖を有するモノマー(Evonik製、商品名:VISIOMER MPEG 1005 MA W、一般式(III)中のR4はCH3、A3はCOO、R5はエチレン基、R6はCH3、m=22)23.0質量部、MMA30.0質量部、BMA22.0質量部を、添加用ロートを用いて60分かけて滴下した。30分後、Aブロック用モノマーであるDMMA25.0質量部を20分かけて滴下した。30分間反応させた後、メタノール1.5質量部を加えて反応を停止させた。得られたブロック共重合体THF溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行い、PGMEAで固形分35質量%溶液となるよう希釈しブロック共重合体P溶液を得た。このようにして得られたブロック共重合体Pを、GPCにて確認したところ、重量平均分子量Mwは15800であった。また、アミン価は89mgKOH/gであった。
ブロック共重合体Pのモノマーの組成、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を表1に示す。ブロック共重合体Pのアミン価を表2に示す。
【0174】
(比較製造例6:塩型ブロック共重合体Qの製造)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた500mL丸底4口セパラブルフラスコにTHF250質量部、塩化リチウム0.6質量部を加え、充分に窒素置換を行った。反応フラスコを-60℃まで冷却した後、ブチルリチウム4.9質量部(15質量%ヘキサン溶液)、ジイソプロピルアミン1.1質量部、イソ酪酸メチル1.0質量部をシリンジを用いて注入した。Bブロック用モノマーの一般式(IIIa)で表される構成単位を誘導する、PEG鎖を有するモノマー(東京化成工業製、商品名:トリエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリラート、一般式(IIIa)中のR4はCH3、A3はCOO、R5はエチレン基、R6はCH3、m=3)8.3質量部、MMA18.8質量部、BMA20.1質量部、2-EHMA14.1質量部、BzMA11.8質量部を、添加用ロートを用いて60分かけて滴下した。30分後、Aブロック用モノマーであるDMMA26.9質量部を20分かけて滴下した。30分間反応させた後、メタノール1.5質量部を加えて反応を停止させた。得られたブロック共重合体THF溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行った。このようにして得られたブロック共重合体を、GPCにて確認したところ、重量平均分子量Mwは4900であった。また、アミン価は81mgKOH/gであった。次いで、得られたブロック共重合体8.0質量部をPGMEA10.0質量部で希釈し、ベンジルクロライド1.2質量部(ブロック共重合体のDMMAユニットに対し、0.83当量)加え、80℃にて4時間攪拌することにより、塩型ブロック共重合体Q溶液を調製した。得られた塩型ブロック共重合体Q溶液はPGMEAにより固形分35%となるように調整した。
ブロック共重合体Qのモノマーの組成、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を表1に示す。ブロック共重合体Qの塩形成前アミン価、及び塩型ブロック共重合体Qの塩形成後アミン価を表2に示す。
【0175】
【0176】
(調製例1:アルカリ可溶性樹脂Aの調製)
重合槽に、PGMEAを300質量部仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した後、メタクリル酸2-フェノキシエチル(PhEMA)90質量部、MMA54質量部、メタクリル酸(MAA)36質量部及びパーブチルO(日油株式会社製)6質量部、連鎖移動剤(n-ドデシルメルカプタン)2質量部を1.5時間かけて連続的に滴下した。その後、100℃を保持して反応を続け、上記主鎖形成用混合物の滴下終了から2時間後に重合禁止剤として、p-メトキシフェノール0.1質量部を添加して重合を停止した。
次に、空気を吹き込みながら、エポキシ基含有化合物としてメタクリル酸グリシジル(GMA)20質量部を添加して、110℃に昇温した後、トリエチルアミン0.8質量部を添加して110℃で15時間付加反応させ、アルカリ可溶性樹脂A溶液(重量平均分子量(Mw)8500、酸価75mgKOH/g、固形分40質量%)を得た。
なお、上記重量平均分子量の測定方法は、ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてショウデックスGPCシステム-21H(Shodex GPC System-21H)により重量平均分子量を測定した。また酸価の測定方法は、JIS K 0070に基づいて測定した。
【0177】
(実施例1)
(1)色材分散液G-1の製造
分散剤として合成例1のグラフト共重合体Aを9.29質量部、色材としてC.I.ピグメントグリーン58(PG58)を9.10質量部、C.I.ピグメントイエロー138(PY138)を3.90質量部、調製例1で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を14.63質量部、PGMEAを63.09質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ100質量部をマヨネーズビンに入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工(株)製)にて1時間振とうし、次いで粒径2.0mmジルコニアビーズを取り出し、粒径0.1mmのジルコニアビーズ200質量部を加えて、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて4時間分散を行い、色材分散液G-1を得た。
【0178】
(2)感光性着色樹脂組成物G-1の製造
上記(1)で得られた色材分散液G-1を9.77質量部、調製例1で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を0.28質量部、多官能モノマー(商品名アロニックスM-403、東亞合成(株)社製)を0.99質量部、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(光開始剤:商品名イルガキュア907、(株)BASFジャパン製)を0.05質量部、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(光開始剤:商品名イルガキュア369、BASFジャパン製)を0.05質量部、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)](光開始剤:商品名イルガキュアOXE01、(株)BASFジャパン製)を0.02質量部、フッ素系界面活性剤(商品名メガファックR-08MH、DIC(株)製)を0.07質量部、PGMEAを8.73質量部加え、感光性着色樹脂組成物G-1を得た。
【0179】
(実施例2~11)
(1)色材分散液G-2~G-11の製造
実施例1の(1)において、グラフト共重合体Aの代わりに、表3に示すように、(塩型)グラフト共重合体B,C,D,E,F,G,H,I,J,及びKをそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、色材分散液G-2~G-11を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物G-2~G-11の製造
実施例1の(2)において、色材分散液G-1の代わりに、それぞれ上記色材分散液G-2~G-11を用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物G-2~G-11を得た。
【0180】
(比較例1~6)
(1)比較色材分散液G-1~G-6の製造
実施例1の(1)において、グラフト共重合体Aの代わりに、表3に示すように、(塩型)グラフト共重合体L,M,N,及びO、並びにブロック共重合体P及びQをそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、比較色材分散液G-1~G-6を得た。
(2)比較用感光性着色樹脂組成物G-1~G-6の製造
実施例1の(2)において、色材分散液G-1の代わりに、それぞれ上記比較色材分散液G-1~G-6を用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、比較感光性着色樹脂組成物G-1~G-6を得た。
【0181】
(実施例12)
(1)色材分散液G-12の製造
実施例1の(1)において、色材としてC.I.ピグメントグリーン58(PG58)を9.10質量部、C.I.ピグメントイエロー138(PY138)を3.90質量部用いる代わりに、色材としてC.I.ピグメントグリーン59(PG59)を9.10質量部、C.I.ピグメントイエロー150(PY150)を3.90質量部用いた以外は、実施例1と同様にして、色材分散液G-12を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物G-12の製造
実施例1の(2)において、色材分散液G-1の代わりに、上記色材分散液G-12を用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物G-12を得た。
【0182】
(実施例13~22)
(1)色材分散液G-13~G-22の製造
実施例12の(1)において、グラフト共重合体Aの代わりに、表4に示すように、(塩型)グラフト共重合体B,C,D,E,F,G,H,I,J,及びKをそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、色材分散液G-13~G-22を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物G-13~G-22の製造
実施例1の(2)において、色材分散液G-1の代わりに、それぞれ上記色材分散液G-13~G-22を用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物G-13~G-22を得た。
【0183】
(比較例7~12)
(1)比較色材分散液G-7~G-12の製造
実施例12の(1)において、グラフト共重合体Aの代わりに、表4に示すように、(塩型)グラフト共重合体L,M,N,及びO、並びにブロック共重合体P及びQをそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、比較色材分散液G-7~G-12を得た。
(2)比較用感光性着色樹脂組成物G-7~G-12の製造
実施例1の(2)において、色材分散液G-1の代わりに、それぞれ上記比較色材分散液G-7~G-12を用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、比較感光性着色樹脂組成物G-7~G-12を得た。
【0184】
(実施例23)
(1)色材分散液R-1の製造
実施例1の(1)において、色材としてC.I.ピグメントグリーン58(PG58)を9.10質量部、C.I.ピグメントイエロー138(PY138)を3.90質量部用いる代わりに、色材としてC.I.ピグメントレッド177(PR177)を3.90質量部、C.I.ピグメントレッド291(PR291)を9.10質量部用いた以外は、実施例1と同様にして、色材分散液R-1を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物R-1の製造
実施例1の(2)において、色材分散液G-1の代わりに、上記色材分散液R-1を用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物R-1を得た。
【0185】
(実施例24~33)
(1)色材分散液R-2~R-11の製造
実施例23の(1)において、グラフト共重合体Aの代わりに、表5に示すように、(塩型)グラフト共重合体B,C,D,E,F,G,H,I,J,及びKをそれぞれ用いた以外は、実施例23と同様にして、色材分散液R-2~R-11を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物R-2~R-11の製造
実施例1の(2)において、色材分散液G-1の代わりに、それぞれ上記色材分散液R-2~R-11を用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物R-2~R-11を得た。
【0186】
(比較例13~18)
(1)比較色材分散液R-1~R-6の製造
実施例23の(1)において、グラフト共重合体Aの代わりに、表5に示すように、(塩型)グラフト共重合体L,M,N,及びO、並びにブロック共重合体P及びQをそれぞれ用いた以外は、実施例23と同様にして、比較色材分散液R-1~R-6を得た。
(2)比較用感光性着色樹脂組成物R-1~R-6の製造
実施例1の(2)において、色材分散液G-1の代わりに、それぞれ上記比較色材分散液R-1~R-6を用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、比較感光性着色樹脂組成物R-1~R-6を得た。
【0187】
(実施例34)
(1)色材分散液B-1の製造
実施例1の(1)において、色材としてC.I.ピグメントグリーン58(PG58)を9.10質量部、C.I.ピグメントイエロー138(PY138)を3.90質量部用いる代わりに、色材としてC.I.ピグメントブルー15:6(PB15:6)を11.70質量部、C.I.ピグメントバイオレット23(PV23)を1.30質量部用いた以外は、実施例1と同様にして、色材分散液B-1を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物B-1の製造
上記(1)で得られた色材分散液B-1を6.78質量部、調製例1で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を1.28質量部、多官能モノマー(商品名アロニックスM-403、東亞合成(株)社製)を1.20質量部、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(光開始剤:商品名イルガキュア907、(株)BASFジャパン製)を0.08質量部、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(光開始剤:商品名イルガキュア369、BASFジャパン製)を0.08質量部、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)](光開始剤:商品名イルガキュアOXE01、(株)BASFジャパン製)を0.04質量部、フッ素系界面活性剤(商品名メガファックR-08MH、DIC(株)製)を0.07質量部、PGMEAを10.48質量部加え、感光性着色樹脂組成物B-1を得た。
【0188】
(実施例35~44)
(1)色材分散液B-2~B-11の製造
実施例34の(1)において、グラフト共重合体Aの代わりに、表6に示すように、(塩型)グラフト共重合体B,C,D,E,F,G,H,I,J,及びKをそれぞれ用いた以外は、実施例34と同様にして、色材分散液B-2~B-11を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物B-2~B-11の製造
実施例34の(2)において、色材分散液B-1の代わりに、それぞれ上記色材分散液B-2~B-11を用いた以外は、実施例34の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物B-2~B-11を得た。
【0189】
(比較例19~24)
(1)比較色材分散液B-1~B-6の製造
実施例34の(1)において、グラフト共重合体Aの代わりに、表6に示すように、(塩型)グラフト共重合体L,M,N,及びO、並びにブロック共重合体P及びQをそれぞれ用いた以外は、実施例34と同様にして、比較色材分散液B-1~B-6を得た。
(2)比較用感光性着色樹脂組成物B-1~B-6の製造
実施例34の(2)において、色材分散液B-1の代わりに、それぞれ上記比較色材分散液B-1~B-6を用いた以外は、実施例34の(2)と同様にして、比較感光性着色樹脂組成物B-1~B-6を得た。
【0190】
[評価方法]
<水染み評価>
実施例及び比較例で得られた感光性着色樹脂組成物を、それぞれガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」、厚み0.7mmで100mm×100mm)上に、スピンコーターを用いてポストベーク後に厚さ2.0μmの着色層を形成する膜厚で塗布した後、ホットプレートを用いて60℃で3分間乾燥し、フォトマスクを介さずに超高圧水銀灯を用いて30mJ/cm2の紫外線を全面照射することにより、ガラス基板上に着色層を形成した。次いで、0.05wt%カリウム(KOH)を現像液として60秒間シャワー現像させた後に純水で洗浄することで現像処理し、洗浄後の基板を10秒間回転させ水を遠心除去した直後に、下記のように純水の接触角を測定して水染みを評価した。
純水の接触角の測定は、前記水を遠心除去した直後の着色層表面に、純水1.0μLの液滴を滴下し、着滴10秒後の静的接触角をθ/2法に従って計測した。測定装置は、協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いて、測定した。
(評価基準)
A:接触角70度以上
B:接触角50度以上70度未満
C:接触角30度以上50度未満
D:接触角30度未満
水染み評価基準がA又はBであれば、実用上使用できるが、評価結果がAであればより効果が優れている。
【0191】
<現像残渣評価>
実施例及び比較例で得られた感光性着色樹脂組成物を、それぞれガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いてポストベーク後に厚さ2.0μmの着色層を形成する膜厚で塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥し、ガラス基板上に着色層を形成した。上記着色層が形成されたガラス板を、アルカリ現像液として0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いて60秒間シャワー現像させた後に純水で洗浄することで現像処理した。現像後の上記着色層の形成部を、目視により観察した後、エタノールを含ませたレンズクリーナー(東レ社製、商品名トレシーMKクリーンクロス)で十分に拭き取り、そのレンズクリーナーの着色度合いを目視で観察した。
(現像残渣評価基準)
A:目視により現像残渣が確認されず、レンズクリーナーが全く着色しなかった
B:目視により現像残渣が確認されず、レンズクリーナーの着色がわずかに確認された
C:目視により現像残渣がわずかに確認され、レンズクリーナーの着色が確認された
D:目視により現像残渣が確認され、レンズクリーナーの着色が確認された
現像残渣評価基準がA又はBであれば、現像残渣の発生が十分に抑制されていると評価され、実用上問題なく使用できる。
【0192】
<現像時間評価>
実施例及び比較例で得られた感光性着色樹脂組成物を、それぞれガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いてポストベーク後に厚さ2.0μmの着色層を形成する膜厚で塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥することにより、ガラス基板上に着色層を形成した。この着色層にフォトマスクを介して超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm2の紫外線を照射した。その後、上記着色層が形成されたガラス基板を、アルカリ現像液として0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いてシャワー現像し、上記着色層が完全に溶解し、上記着色層を形成した箇所のガラス面が現れるまでの時間を現像時間として測定した。
【0193】
<耐NMP性評価>
実施例及び比較例で得られた感光性着色樹脂組成物を、それぞれガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いてポストベーク後に厚さ2.0μmの着色層を形成する膜厚で塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥することにより、ガラス基板上に着色層を形成した。この着色層に超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm2の紫外線を照射した。
次に、当該着色基板を230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークし、着色基板を作成した。得られた着色基板の膜厚を測定した後、NMPに30分間浸漬した後、風乾し、再び膜厚を測定した。なお、膜厚測定には、触針式段差膜厚計「P-15Tencor」(Instruments製)を用いた。
(耐NMP性評価基準)
A:NMP浸漬前後の膜厚の変化率が2%未満
B:NMP浸漬前後の膜厚の変化率が2%以上5%未満
C:NMP浸漬前後の膜厚の変化率が5%以上8%未満
D:NMP浸漬前後の膜厚の変化率が8%以上
【0194】
<色材分散液の分散性安定性評価>
実施例及び比較例で得られた色材分散液についてそれぞれ、調製直後と、25℃で30日間保存後の粘度を測定し、保存前後の粘度から粘度変化率を算出し、粘度安定性を評価した。粘度測定には振動式粘度計を用いて、25.0±0.5℃における粘度を測定した。
(分散安定性評価基準)
A:保存前後の粘度の変化率が20%未満
B:保存前後の粘度の変化率が20%以上40%未満
C:保存前後の粘度の変化率が40%以上60%未満
D:保存前後の粘度の変化率が60%以上
ただし、色材分散液の溶剤を含めた合計質量に対して、色材を13質量%としたときの値である。
評価結果がBであれば色材分散液は良好であり、評価結果がAであれば色材分散液は、分散安定性に優れている。
【0195】
<光学性能評価、コントラスト評価>
実施例及び比較例で得られたカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を、それぞれ厚み0.7mmで100mm×100mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥することにより、着色層を形成した。この着色層に超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm2の紫外線を照射した。
次に、当該着色基板を230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークし、得られた着色基板のコントラストと色度(x、y)、輝度(Y)を壺坂電気製コントラスト測定装置CT-1Bとオリンパス製顕微分光測定装置OSP-SP200を用いて測定した。
(コントラスト評価基準)
A:Greenは7000超過、Redは5000超過、Blueは6000超過
B:Greenは5600超過7000以下、Redは4000超過5000以下、Blueは4800超過6000以下
C:Greenは4200以上5600以下、Redは3000以上4000以下、Blueは3600以上4800以下
D:Greenは4200未満、Redは3000未満、Blueは3600未満
ただし、それぞれC光源で実施例1~22及び比較例1~12のGreenはy=0.570、実施例23~33及び比較例13~18のRedはx=0.650、実施例34~44及び比較例19~24のBlueはy=0.107としたときの値である。
【0196】
【0197】
【0198】
[結果のまとめ]
実施例及び比較例の比較により、本発明で特定したグラフト共重合体又は塩型グラフト共重合体を用いた実施例1~44では、現像残渣の発生抑制、現像時間の短縮化、水染み発生抑制、及び優れた耐溶剤性を同時に満たす感光性着色樹脂組成物が得られることが明らかにされた。
それに対して、グラフト共重合体のグラフト鎖(ポリマー鎖)において、エチレンオキシド鎖の繰り返し単位数が90である長すぎる分岐鎖を有するグラフト共重合体Lを用いた比較例1,7,13,19の比較感光性着色樹脂組成物は、現像残渣の発生抑制効果が不十分であり、更に分散安定性及びコントラストが悪化するものであった。
グラフト共重合体のグラフト鎖(ポリマー鎖)において、エチレンオキシド鎖の繰り返し単位数が17である比較的短い分岐鎖を有するグラフト共重合体Mを用いた比較例2,8,14,20の比較感光性着色樹脂組成物は、水染み発生抑制効果が不十分であった。
従来技術の特許文献2で開示されているようにグラフト共重合体のグラフト鎖(ポリマー鎖)がMMAとBMA由来の構成単位から構成されるグラフト共重合体Nを用いた比較例3,9,15,21の比較感光性着色樹脂組成物は、水染みが発生しやすく、現像残渣も発生し易かった。
グラフト共重合体のグラフト鎖(ポリマー鎖)として、エチレンオキシド鎖の繰り返し単位数が90であるポリマー鎖としたグラフト共重合体Oを用いた比較例4,10,16,22の比較感光性着色樹脂組成物は、水染み発生抑制効果及び現像残渣の発生抑制効果が不十分であり、更に分散安定性及びコントラストが悪化するものであった。
ブロック共重合体の構成単位として、エチレンオキシド鎖の繰り返し単位数が22であるポリマー鎖を有するブロック共重合体Pを用いた比較例5,11,17,23の比較感光性着色樹脂組成物は、水染み発生抑制効果が不十分であり、更に耐溶剤性の効果が得られないものであった。
従来技術の特許文献1で開示されているようにブロック共重合体の構成単位として、エチレンオキシド鎖の繰り返し単位数が3であるトリエチレングリコールエチルエーテルメタクリレート由来の構成単位を含むブロック共重合体Qを用いた比較例6,12,18,24の比較感光性着色樹脂組成物は、水染み発生抑制効果、及び現像残渣の発生抑制効果が不十分であり、更に耐溶剤性の効果が得られないものであった。
【符号の説明】
【0199】
1 基板
2 遮光部
3 着色層
10 カラーフィルタ
20 対向基板
30 液晶層
40 液晶表示装置
50 有機保護層
60 無機酸化膜
71 透明陽極
72 正孔注入層
73 正孔輸送層
74 発光層
75 電子注入層
76 陰極
80 有機発光体
100 有機発光表示装置