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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/852 20230101AFI20230724BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230724BHJP
   H10K 50/858 20230101ALI20230724BHJP
   H10K 59/121 20230101ALI20230724BHJP
【FI】
H10K50/852
G09F9/30 365
H10K50/858
H10K59/121
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019134702
(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公開番号】P2020080299
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2018212185
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520272868
【氏名又は名称】武漢天馬微電子有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森 茂
(72)【発明者】
【氏名】濱田 継太
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/143231(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/099072(WO,A1)
【文献】特開2013-008663(JP,A)
【文献】特開2010-287524(JP,A)
【文献】特開2007-316611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/852
G09F 9/30
H10K 50/858
H10K 59/121
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上の複数のマイクロキャビティ構造を有する複数の第1発光素子と、を含み、
前記複数の第1発光素子のそれぞれは、
第1発光膜と、
前記第1発光膜を挟む第1上部電極及び第1下部電極と、を含み、
前記第1発光膜の内部発光スペクトルのピーク波長は、比視感度曲線の傾きが負である波長域に存在し、
視野角度0°~60°における前記マイクロキャビティ構造の多重干渉スペクトルのピーク波長の波長域において、
前記比視感度曲線の傾きは負であり、
前記内部発光スペクトルの傾きは正であり、
前記内部発光スペクトルの二階微分の値は0以上である、
表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置であって、
視野角度0°における前記第1発光素子の外部発光スペクトルのピーク波長は、625nm~700nmの範囲にある、
表示装置。
【請求項3】
基板と、
前記基板上の複数のマイクロキャビティ構造を有する複数の第1発光素子と、を含み、
前記複数の第1発光素子のそれぞれは、
第1発光膜と、
前記第1発光膜を挟む第1上部電極及び第1下部電極と、を含み、
前記第1発光膜の内部発光スペクトルのピーク波長は、比視感度曲線の傾きが負である波長域に存在し、
視野角度0°~60°における前記マイクロキャビティ構造の多重干渉スペクトルのピーク波長の波長域において、
前記比視感度曲線の傾きは負であり、
前記内部発光スペクトルの傾きは正であり、
さらに、前記基板上の複数のマイクロキャビティ構造を有する複数の第2発光素子を含み、
前記複数の第2発光素子のそれぞれは、
第2発光膜と、
前記第2発光膜を挟む第2上部電極及び第2下部電極と、を含み、
前記第2発光膜の内部発光スペクトルのピーク波長は、比視感度曲線の傾きが負である波長域に存在し、
視野角度0°において、前記第2発光膜の内部発光スペクトルのピーク波長と前記第2発光素子のマイクロキャビティ構造の多重干渉スペクトルのピーク波長との差は、前記第1発光膜の内部発光スペクトルのピーク波長と前記第1発光素子のマイクロキャビティ構造の多重干渉スペクトルのピーク波長との差より小さい、
表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の表示装置であって、
視野角度0°において、前記第2発光素子のマイクロキャビティ構造の多重干渉スペクトルのピーク波長は、前記第2発光膜の内部発光スペクトルの傾きが0以上の波長域に存在する、
表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の表示装置であって、
視野角度0°において、前記第2発光膜の内部発光スペクトルのピーク波長と前記第2発光素子のマイクロキャビティ構造の多重干渉スペクトルのピーク波長とは一致する、
表示装置。
【請求項6】
請求項3に記載の表示装置であって、
前記第1発光素子のキャップ層の屈折率をn1、前記第2発光素子のキャップ層の屈折率をn2とした場合、n2>n1の関係が満たされる、
表示装置。
【請求項7】
基板と、
前記基板上の複数のマイクロキャビティ構造を有する第1発光素子と、を含み、
前記複数の第1発光素子のそれぞれは、
第1発光膜と、
前記第1発光膜を挟む第1上部電極及び第1下部電極と、を含み、
前記第1発光膜の内部発光スペクトルのピーク波長は、比視感度曲線の傾きが負である波長域に存在し、
視野角度0°~60°において前記第1発光素子の外部発光スペクトルのピーク波長が変化する波長域において、Δu´v´が0.07以下であり、正面輝度で規格化した輝度の視野角度1°当たりの最大変化量は-0.025以上0以下であり、
さらに、前記基板上の複数のマイクロキャビティ構造を有する第2発光素子を含み、
前記複数の第2発光素子のそれぞれは、
第2発光膜と、
前記第2発光膜を挟む第2上部電極及び第2下部電極と、を含み、
前記第2発光膜の内部発光スペクトルのピーク波長は、比視感度曲線の傾きが負である波長域に存在し、
視野角度0°において、前記第2発光膜の内部発光スペクトルのピーク波長と前記第2発光素子のマイクロキャビティ構造の多重干渉スペクトルのピーク波長との差は、前記第1発光膜の内部発光スペクトルのピーク波長と前記第1発光素子のマイクロキャビティ構造の多重干渉スペクトルのピーク波長との差より小さい、
表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の表示装置であって、
視野角度0°における前記外部発光スペクトルのピーク波長は、625nm~700nmの範囲にある、
表示装置。
【請求項9】
請求項7に記載の表示装置であって、
視野角度0°において、前記第2発光素子のマイクロキャビティ構造の多重干渉スペクトルのピーク波長は、前記第2発光膜の内部発光スペクトルの傾きが0以上の波長域に存在する、
表示装置。
【請求項10】
請求項9に記載の表示装置であって、
視野角度0°において、前記第2発光膜の内部発光スペクトルのピーク波長と前記第2発光素子のマイクロキャビティ構造の多重干渉スペクトルのピーク波長とは一致する、
表示装置。
【請求項11】
請求項7に記載の表示装置であって、
前記第1発光素子のキャップ層の屈折率をn1、前記第2発光素子のキャップ層の屈折率をn2とした場合、n2>n1の関係が満たされる、
表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
OLED(Organic Light-Emitting Diode)素子は電流駆動型の自発光素子であるため、バックライトが不要となる上に、低消費電力、広視野角、高コントラスト比が得られるなどのメリットがあり、フラットパネルディスプレイの開発において期待されている。
【0003】
トップエミッション構造のOLED素子は、ボトムエミッション構造より高い効率を実現できる。また、より高い効率を実現する構造として、上下電極間での光の共振効果を利用するマイクロキャビティ構造が知られている。
【0004】
トップエミッションマイクロキャビティ構造において、反射材料でアノード電極が構成され、カソード電極は半反射かつ半透明材料、例えばMgAgで構成される。OLED素子の各膜厚を調整することで、OLED素子内部である波長で共振させて輝度を向上させる共振効果(キャビティ効果)を得る事ができる。マイクロキャビティ構造は、特定波長の光を選択的に共振させて強調し、他の波長光を弱める。これにより、輝度と色純度が向上する。
【0005】
またトップエミッションマイクロキャビティ構造では、カソード電極の直上に空気と接触するキャップ層を形成する場合、特開2018-190666号公報の[0012]行に記載されているように視野角による色度変化や輝度変化が大きくなる一方で、光取り出し効率が高くなり、正面輝度が増加することが知られている。これは、国際公開第2013/179536号の[0006]行に記載されているように、キャップ層がその下のカソードよりも屈折率が高いために起こる。つまりキャップ層の屈折率が高いほど正面輝度が向上する一方で視野角の依存性が大きくなるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開2003/0034938号
【文献】米国特許6406801号
【文献】特開2011-96379号公報
【文献】特開2018-190666号公報
【文献】国際公開第2013/179536号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、素子の正面を基準とする光の出射角度によってマイクロキャビティ構造における光学距離が変化することにより、共振する波長、つまり外部に強調して取出される波長が変化する。そのため、マイクロキャビティ構造は、色度や輝度の変化を起こしやすく、特に、赤色でその変化を大きく感じる。また、ユーザが素子を見る角度(視野角度)に対する色度、輝度の変化が急激であるとユーザの目につきやすく、マイクロキャビティ構造を表示装置に適用した場合に、その課題が顕著になる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様の表示装置は、基板と、前記基板上の複数のマイクロキャビティ構造を有する第1発光素子と、を含む。前記複数の第1発光素子のそれぞれは、第1発光膜と、前記第1発光膜を挟む第1上部電極及び第1下部電極と、を含む。前記第1発光膜の発光スペクトルのピーク波長は、比視感度曲線の傾きが負である波長域に存在する。視野角度0°~60°における前記マイクロキャビティ構造の多重干渉スペクトルのピーク波長の波長域において、前記比視感度曲線の傾きは負であり、前記発光スペクトルの傾きは正である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、マイクロキャビティ構造を有する発光素子の視野角度に対する変化率を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】OLED表示装置の構成例を模式的に示す。
図2】OLED素子の構造例を示す断面図である。
図3A】特定の色のOLED素子の内部発光スペクトル曲線、マイクロキャビティ構造の多重干渉スペクトル曲線、及び、比視感度曲線の関係を示すグラフである。
図3B】比視感度曲線と内部発光スペクトル曲線との関係を示すグラフである。
図3C】比視感度曲線、多重干渉スペクトル曲線(角度0°)、多重干渉スペクトル曲線(角度60°)の関係を示すグラフである。
図3D】内部発光スペクトル曲線、多重干渉スペクトル曲線(角度0°)、多重干渉スペクトル曲線(角度60°)の関係を示すグラフである。
図3E】内部発光スペクトル曲線の傾きを説明するグラフである。
図4】異なるスペクトル関係を有するOLED素子サンプルの測定結果を示すグラフである。
図5】異なるスペクトル関係を有するOLED素子サンプルの測定結果を示すグラフである。
図6A】異なるスペクトル関係を有するOLED素子サンプルの測定結果を示すグラフである。
図6B】トップエミッション型OLED素子サンプルのキャップ層の屈折率と、屈折率が1.6の時のOLED素子の正面輝度で規格化したときの相対正面輝度との、関係を示している。
図7】画素構成例を模式的に示す。
図8】副画素の角度0°における多重干渉スペクトル曲線、及び、赤の副画素の内部発光スペクトル曲線を示す。
図9A】基板上に赤(R1)OLED素子、赤(R2)OLED素子、緑(G)OLED素子及び青(B)OLED素子を製造するためのステップを示す。
図9B】基板上に赤(R1)OLED素子、赤(R2)OLED素子、緑(G)OLED素子及び青(B)OLED素子を製造するためのステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。本実施形態は本開示を実現するための一例に過ぎず、本開示の技術的範囲を限定するものではないことに注意すべきである。
【0012】
[全体構成]
以下においては、表示装置の一例として、OLED(Organic Light-Emitting Diode)表示装置を説明する。
【0013】
図1は、OLED表示装置10の構成例を模式的に示す。OLED表示装置10は、OLED素子(発光素子)が形成されるTFT(Thin Film Transistor)基板100と、OLED素子を封止する封止基板200と、TFT基板100と封止基板200とを接合する接合部(ガラスフリットシール部)140を含んで構成されている。TFT基板100と封止基板200との間には、例えば、乾燥空気が封入されており、接合部140により封止されている。
【0014】
TFT基板100の表示領域125の外側において、カソード電極形成領域114の周囲に、走査ドライバ131、制御ドライバ132、保護回路133、ドライバIC134(ドライバ回路)、デマルチプレクサ136が配置されている。ドライバIC134は、FPC(Flexible Printed Circuit)135を介して外部の機器と接続される。
【0015】
走査ドライバ131はTFT基板100の走査線を駆動する。制御ドライバ132は、例えば、エミッション制御線又はリセット制御線を駆動して、各副画素の発光期間を制御する又はリセットする。ドライバIC134は、例えば、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)を用いて実装される。
【0016】
ドライバIC134は、走査ドライバ131及び制御ドライバ132に電源及びタイミング信号を与える。さらに、ドライバIC134は、デマルチプレクサ136に、電源及びデータ信号を与える。
【0017】
デマルチプレクサ136は、ドライバIC134の一つのピンの出力を、d本(dは2以上の整数)のデータ線に順次出力する。デマルチプレクサ136は、ドライバIC134からのデータ信号の出力先データ線を、走査期間内にd回切り替えることで、ドライバIC134の出力ピン数のd倍のデータ線を駆動する。データ線は、駆動トランジスタT1を制御する制御信号(データ信号)を伝送する。
【0018】
[OLED素子構造]
図2はOLED素子250の構造例を示す断面図である。表示領域125は、平面に配列された複数色のOLED素子250を含む。典型的には、赤、緑及び青のOLED素子250を含む。OLED素子250又は平面視(図2における上下方向)における発光領域を副画素とも呼ぶ。OLED素子250は、TFT基板100に含まれる。
【0019】
TFT基板100は、絶縁性基板251と、絶縁性基板251上のTFTアレイ及びOLED素子250を含む。図2においてTFTアレイは省略されている。絶縁性基板251は、例えばガラス又は樹脂で形成されており、不撓性又は可撓性基板である。OLED素子250は、積層構造を有する。絶縁性基板251に近い側を下側、遠い側を上側と記す。
【0020】
OLED素子250は、下部電極であるアノード電極252(下部電極)を含む。アノード電極252は、例えば、ITO、IZO、ZnO、In2O3等の透明膜、及び、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr又はこれらの化合物金属の反射膜を含む。
【0021】
OLED素子250は、上部電極であるカソード電極258を含む。一般に、OLED素子250のカソード電極258は、表示領域125全域を覆う導電層の一部である。カソード電極258は、例えば、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Mg又はこれらの合金を蒸着して、形成される。カソード電極166の抵抗が高く発光輝度の均一性が損なわれる場合には、さらに、ITO、IZO、ZnOまたはInなどの透明電極形成用の材料で補助電極層を追加してもよい。カソード電極258上には、光取り出し効率向上のため、ガラスより屈折率の高い絶縁膜を堆積させキャップ層259が形成されている。
【0022】
OLED素子250は、アノード電極252とカソード電極258との間に、発光層255を含む1又は複数の有機層を含む。図2の例において、下層から、正孔注入層253、正孔輸送層254、発光層255、電子輸送層256及び電子注入層257が積層されている。発光層255の材料は、OLED素子250の色毎に異なる。図2の構造は一例であって、正孔注入層253、正孔輸送層254、電子輸送層256及び電子注入層257の一つ又は複数の層を省略してもよい。電子ブロッキング層のような他の層を追加してもよい。
【0023】
OLED素子250は、トップエミッション型であり、さらに、マイクロキャビティ構造を有している。トップエミッション型のOLED素子250は、絶縁性基板251(TFTアレイ)の反対側から、光が放出する。光が出射する側(図面上側)に、カソード電極258が配置されている。トップエミッション構造のOLED素子は、ボトムエミッション構造より高い効率を実現できる。
【0024】
トップエミッション型マイクロキャビティ構造において、アノード電極252は光を反射し、カソード電極258は半透過性及び半反射性をもっている。発光層255からの光の一部は、カソード電極258を透過し、一部は反射される。アノード電極252とカソード電極258との間の光の反射の繰り返しにより、アノード電極252とカソード電極258との間の光学距離と一致する波長の光が強調される。
【0025】
マイクロキャビティ構造は、アノード電極252とカソード電極258との間の光学距離(膜厚)を調整することで、特定波長の光を選択的に共振させて強調し、他の波長光を弱めることができる。赤、緑、青のOLED素子250において、赤のOLED素子250の膜厚が最も大きく、青のOLED素子250膜厚が最も小さい。なお、本開示の特徴はボトムエミッション型のOLED素子にも適用できる。ボトムエミッション型のOLED素子は、半透明半透過アノード電極と反射カソード電極を有し、絶縁性基板251を介して外部に光を出射する。
【0026】
[スペクトルの関係]
素子の正面を基準とする光の出射角度の変化に応じて、マイクロキャビティ構造における光学距離が変化することにより、共振する波長、つまり外部に強調して取出される波長が変化する。そのため、マイクロキャビティ構造は、色度や輝度の変化を起こしやすく、特に、赤色でその変化を大きく感じる。また、色度、輝度のユーザが見る角度(視野角度)に対する変化が急激であると、ユーザの目につきやすく、マイクロキャビティ構造を表示装置に適用した場合に、その課題が顕著になる。
【0027】
本実施形態は、特定の色のOLED素子250において、マイクロキャビティ構造による多重干渉スペクトルと発光層255のスペクトル(内部発光スペクトル)との間に特定の関係を持たせる。これにより、特定の色のOLED素子250の、視野角度の変化による輝度及び色度の急激な変化を避けることができる。
【0028】
内部発光スペクトルは、発光層255で発光した光を、マイクロキャビティ構造を通さずに取りだしたときのスペクトルである。多重干渉スペクトルは、マイクロキャビティ構造で光の多重干渉効果により生ずるスペクトル(光学特性)である。マイクロキャビティ構造のOLED素子250において、内部発光スペクトルと多重干渉スペクトルとを掛け合わせることにより、取りだされる光、つまり外部で観測される光のスペクトル(外部発光スペクトル)が決まる。
【0029】
図3Aは、特定の色のOLED素子250の内部発光スペクトル曲線301、マイクロキャビティ構造の多重干渉スペクトル曲線311、312、及び、標準分光比視感度曲線(以下単に比視感度曲線)321の関係を示すグラフである。横軸は波長を示し、縦軸は曲線それぞれの相対強度を示す。相対強度は最大値により規格化した(最大値を1とした)強度である。
【0030】
多重干渉スペクトル曲線311は、視野角度(以下において単に角度とも呼ぶ)0°(正面又はアノード電極の法線方向)におけるスペクトルを示し、多重干渉スペクトル曲線312は、正面から角度60°におけるスペクトルを示す。角度60°は、一般的な表示装置に求められる視野角範囲である。角度0°から60°への変化に応じて、多重干渉スペクトルは、多重干渉スペクトル曲線311から多重干渉スペクトル曲線312へと変化する。
【0031】
図3Aに示すように、内部発光スペクトル301のピーク(強度が最も高い点)の波長303は、比視感度曲線321のピークの波長323よりも大きい。例えば、一般的な赤、緑及び青のOLED素子250の内、赤のOLED素子250の内部発光スペクトルのピーク波長は、比視感度曲線321のピーク波長323より大きい。
【0032】
さらに、図3Aに示すように、角度0°及び60°における多重干渉スペクトルのピーク波長(共振波長)313及び315は、内部発光スペクトル曲線301のピーク波長303よりも小さい。つまり、角度0°から60°に範囲において、多重干渉スペクトルのピーク波長は、内部発光スペクトル曲線301のピーク波長303よりも小さい。
【0033】
図3Bは、比視感度曲線321と内部発光スペクトル曲線301との関係を示すグラフである。横軸は波長を示し、縦軸は比視感度曲線321と内部発光スペクトル曲線301それぞれの相対強度を示す。内部発光スペクトル301のピーク波長303は、比視感度曲線321の波長に対する傾きが負となる波長域に存在する。上述のように、例えば、一般的な赤のOLED素子250の内部発光スペクトルのピーク波長は、比視感度曲線の波長に対する傾きが負となる波長域325に存在する。
【0034】
図3Cは、比視感度曲線321と多重干渉スペクトル曲線311(角度0°)、312(角度60°)の関係を示すグラフである。横軸は波長を示し、縦軸は比視感度曲線321と多重干渉スペクトル曲線311、312それぞれの相対強度を示す。多重干渉スペクトル曲線311、312のピーク波長313、315は、比視感度曲線321のピークの波長323よりも大きい。多重干渉スペクトル曲線311、312のピーク波長313、315は、比視感度曲線321の波長に対する傾きが負となる波長域325に存在する。
【0035】
図3Dは、内部発光スペクトル曲線301と多重干渉スペクトル曲線311(角度0°)、312(角度60°)の関係を示すグラフである。横軸は波長を示し、縦軸は内部発光スペクトル曲線301と多重干渉スペクトル曲線311、312それぞれの相対強度を示す。
【0036】
内部発光スペクトル曲線301のピーク波長303は、角度0°における多重干渉スペクトル曲線のピーク波長313から角度60°における多重干渉スペクトル曲線のピーク波長315までの波長域(共振波長域)317の外側にある。より具体的には、内部発光スペクトル曲線301のピーク波長303は、波長域317の外の長波長側に存在する。
【0037】
多重干渉スペクトル曲線のピーク波長域317において、内部発光スペクトル曲線301の傾き、つまり、波長(1nmあたり)に対する強度の傾きは正である。図3Eは、内部発光スペクトル曲線301の傾きを説明するグラフである。横軸は波長を示し、縦軸は内部発光スペクトル曲線301の相対強度を示す。
【0038】
ピーク波長303において、内部発光スペクトル曲線301の傾きは0である。ピーク波長303より短い波長域305において、傾きは正である。ピーク波長303より長い波長域306において、傾きは負である。
【0039】
ピーク波長303より短い波長域305は、ピーク波長303に近い波長域307とピーク波長303から遠い波長域308とを含む。波長域307において、内部発光スペクトル曲線301は上に凸である。つまり、波長域307において、内部発光スペクトル曲線301の二階微分は負である。
【0040】
一方、波長域308において、内部発光スペクトル曲線301は下に凸である。つまり、波長域307において、内部発光スペクトル曲線301の二階微分は正である。波長域307と波長域308との境界の波長において、内部発光スペクトル曲線301は直線であり、つまり、その二階微分は0である。好ましくは、角度0°から60°における多重干渉スペクトル曲線のピーク波長域317は、内部発光スペクトル曲線301の二階微分が0以上の波長域に含まれる。
【0041】
図3Aに示すように、比視感度曲線321の波長に対する傾きが負となる波長域において、角度0°から角度60°への変化に対して多重干渉スペクトルのピーク波長は、波長313から波長315へと、短波長側にシフトする。波長313から波長315への変化に対して、比視感度曲線321の強度は増加する。そのため、ユーザが見る角度が変化したときに、ユーザは、輝度、色度の変化をより強く感じる。
【0042】
上述のように、本実施形態の特定色のOLED素子250において、比視感度曲線321の波長に対する傾きが負となる波長域325において、角度0°から60°の間で変化する多重干渉スペクトルのピーク波長域(共振波長域)317の外側、より具体的には長波長側に内部発光スペクトルの最も強いピーク波長313が存在する。さらに、角度0°から60°の間で変化する多重干渉スペクトルのピーク波長域(共振波長域)317において、内部発光スペクトル(強度)の波長に対する傾きは、常に0より大きい。
【0043】
上記構成により、角度0°から60°の範囲おいて、多重干渉スペクトルと内部発光スペクトルのピーク波長が一致することがなく、両スペクトルの重なりが漸減し、輝度、色度の急激な変化を避けることができる。
【0044】
一例として、角度0°から60°の間で変化する多重干渉スペクトルのピーク波長域317において、内部発光スペクトル曲線は下に凸又は直線の関数で表わされる、つまり、内部発光スペクトル(強度)の波長による二階微分の値は、常に0以上である。この構成により、角度に対する輝度、色度の変化をより緩やかにすることができる。
【0045】
図4は、異なるスペクトル関係を有するOLED素子サンプルの測定結果を示すグラフである。図4のグラフにおいて、横軸は角度を示し、縦軸は規格化輝度を示す。規格化輝度は、正面輝度で規格化した輝度である。測定されたサンプルの最小傾き量が異なる。最小傾き量は、角度0°から60°の多重干渉スペクトルのピーク波長域における、内部発光スペクトルの傾きの最小値である。
【0046】
最小傾き量が0であるサンプルにおいて、内部発光スペクトルのピーク波長は、角度0°の多重干渉スペクトルのピーク波長と一致する。最小傾き量が負であるサンプルにおいて、内部発光スペクトルのピーク波長は、角度0°の多重干渉スペクトルのピーク波長よりも小さい。最小傾き量が正であるサンプルの内部発光スペクトルの傾きは、図3A~3Eを参照して説明したように、角度0°から60°の多重干渉スペクトルのピーク波長域において常に正である。
【0047】
図4のグラフから理解されるように、最小傾き量が0のサンプル及び最小傾き量が負のサンプルの輝度は、角度20°において正面(角度0°)より高くなり(規格化強度が1より大きくなり)、その後、急激に減少している。一方、最小傾き量が正のサンプル輝度変化は緩やかである。
【0048】
このように、角度0°から60°の多重干渉スペクトルピーク波長域において、規格化内部発光スペクトル(最高強度で規格化したスペクトル)の波長に対する傾きが常に0より大きいとき、角度に対する輝度の急激な変化を避けることができる。
【0049】
図5は、異なるスペクトル関係を有するOLED素子サンプルの測定結果を示すグラフである。図5のグラフにおいて、横軸は角度を示し、縦軸はu’v’色度図における変化量を示す。測定されたサンプルの最小傾き量が異なる。最小傾き量は、図4を参照して説明した通りである。
【0050】
図5のグラフから理解されるように、角度0°から60°の多重干渉スペクトルのピーク波長域において、規格化内部発光スペクトルの波長に対する強度の傾きが常に0より大きいサンプルにおいて(最小傾き量が正のサンプルにおいて)、角度の変化に対する色度の変化が小さい。
【0051】
図5のグラフに示すように、角度0°から角度60°への角度変化において、最小傾き量が正のサンプルのΔu’v’が0.07以下である。角度0°から角度60°への角度変化において、色ずれの指標Δu’v’が0.07以下である場合に、角度の変化に対する色度の急激な変化を避けることができる。
【0052】
図6Aは、異なるスペクトル関係を有するOLED素子サンプルの測定結果を示すグラフである。図6Aのグラフにおいて、横軸は、角度0°における多重干渉スペクトルのピーク波長での、内部発光スペクトルの二階微分値を示す。縦軸は、角度0°から60°の範囲おいて、角度1°当たりの規格化輝度の最大変化量(最も変化したときの値)を示す。
【0053】
図6Aのグラフに示すように、角度0°から60°の多重干渉スペクトルのピーク波長域において、内部発光スペクトルの波長による二階微分が0未満であるときと比較して、0以上、つまり、波長に対して内部発光スペクトルが下に凸又は直線の関数になっている場合、内部発光スペクトルの波長による二階微分に対する角度1°当たりの規格化輝度の変化量が大きく減少しており、輝度変化をより抑制できることがわかる。図6Aのグラフに示すように、内部発光スペクトルの波長による二階微分が0以上のサンプルにおいて、角度1°当たりの規格化輝度の変化量が-0.025以上である。角度1°当たりの規格化輝度の変化量が-0.025以上0以下である場合に、角度変化による輝度変化をより抑制できる。
【0054】
近年、色域を広げる要求が強く、より深く赤い色域(波長610nm以上700nm以下)が望まれている。また、赤色単色としても警告表示などに用いられる場合も同様の要求がある。
【0055】
しかし、X刺激値の等色関数のピークである600nm付近(黄赤色)を越えた波長域はX、Y刺激値の等色関数の波長に対する傾きが大きい領域であり、ユーザが見る角度による色度変化を感じやすい。特に、X刺激値の等色関数の傾きが大きい625nmを超えるあたりでより顕著である。
【0056】
したがって、正面での外部発光スペクトルのピーク波長域が610nm以上700nm以下の可視光赤色領域において、上記色度変化の範囲及び規格化輝度の変化量の範囲は、有効である。特に、正面での外部発光スペクトルのピーク波長域が625nm以上700nm以下の範囲において有効である。
【0057】
つまり、正面での外部発光スペクトルのピーク波長域が610nm以上700nm以下の範囲、さらには、625nm以上700nm以下の範囲において、かつ、角度0°から60°の間で変化する多重干渉スペクトルのピーク波長域317において、内部発光スペクトル曲線301の傾き、つまり、波長(1nmあたり)に対する強度の傾きは正であり、さらに内部発光スペクトル曲線は下に凸又は直線の関数で表わされる、つまり、内部発光スペクトル(強度)の波長による二階微分の値は、常に0以上であるOLED素子は、光の出射角度の変化による輝度及び色度の急激な変化をより抑制することができる。
【0058】
また、具体的には、正面での外部発光スペクトルのピーク波長域が610nm以上700nm以下の範囲、さらには、625nm以上700nm以下の範囲において、角度0°から角度60°への角度変化において、色ずれの指標Δu’v’が0.07以下であり、角度1°当たりの規格化輝度の変化量が-0.025以上0以下であるOLED素子は、角度に対する輝度及び色度の変化を有効に抑制することができる。
【0059】
図6Bはトップエミッション型OLED素子サンプルのキャップ層の屈折率と、屈折率が1.6の時のOLED素子の正面輝度で規格化したときの相対正面輝度との、関係を示している。前述のように角度による色度変化や輝度変化は大きくなってしまうが、一方でこの図のようにキャップ層の屈折率の増加にともない、正面輝度を増加することができる。
【0060】
[画素構成]
上記OLED素子250の構成において、角度0°における多重干渉スペクトルのピーク波長と内部発光スペクトルのピーク波長と異なる。これらの差異が大きい場合、OLED素子250の正面輝度が大きく低下する。以下において、角度による輝度変化を低減しつつ、正面輝度を向上する構成を説明する。
【0061】
図7は、本例の画素構成を模式的に示す。画素501は、二つの赤の副画素51R1及び51R2、緑の副画素51G、並びに青の副画素51Bで構成されている。赤の副画素51R1と赤の副画素51R2の発光光の波長は異なる。より具体的には、赤の副画素51R1及び51R2は、異なる内部発光ピーク波長を有している。副画素51R1、51R、51G、及び51Gは、それぞれ、OLED素子又はOLED素子の発光領域である。
【0062】
図8は、副画素51R1、51R2、51G、及び51Bの角度0°における多重干渉スペクトル曲線55R、55G、及び55B、並びに、副画素51R1及び51R2の内部発光スペクトル曲線56R1及びR2を示す。図8のグラフにおいて、横軸は波長を示し、縦軸は曲線それぞれの相対強度を示す。多重干渉スペクトル曲線55Rは、副画素51R1及び51R2に共通である。なお、副画素51R1と副画素51R2の多重干渉スペクトル曲線が異なっていてもよい。
【0063】
副画素51R1の内部発光スペクトル56R1のピーク波長は、副画素51R2の内部発光スペクトル56R2のピーク波長よりも短い。副画素51R1の内部発光スペクトル56R1のピーク波長は、角度0°における多重干渉スペクトル曲線55Rのピーク波長と一致している。副画素51R2の内部発光スペクトル56R2と多重干渉スペクトルは、図3図6Aを参照して説明したいずれかの関係を有する。
【0064】
副画素51R1の内部発光スペクトル56R1のピーク波長が角度0°における多重干渉スペクトル曲線55Rのピーク波長と一致しているので、マイクロキャビティ効果により、輝度がより高くなる。このため、副画素51R1により正面輝度を高めつつ、副画素R2により角度変化による色度及び輝度変化を小さくできる。副画素51R1と副画素51R2の面積比は、必要な輝度に応じて設計により決定される。
【0065】
上述のように、赤、緑、青の3つの色で構成される画素501において、視感度曲線の波長に対する傾きが負である波長域で発光する副画素51R1、51R2の内部発光スペクトルは、二つの異なるピーク波長を有している。副画素51R1の内部発光スペクトルピーク波長は、角度0°における多重干渉スペクトルピーク波長と一致する。
【0066】
副画素51R2の内部発光スペクトルピーク波長は、角度0°から60°の多重干渉スペクトルピーク波長域外に存在する。さらに、かつ角度0°から60°の多重干渉スペクトルピーク波長域において、内部発光スペクトルの波長に傾きが常に0より大きい、又は、内部発光スペクトル曲線が下に凸もしくは直線の関数になっている。
【0067】
他の例において、角度0°から角度60°への角度変化において、副画素51R2からの光の色ずれの指標Δu’v’が0.07以下であり、副画素51R2の角度1°当たりの規格化輝度の変化量が-0.025以上0以下である。
【0068】
一例において、副画素51R1の角度0°における輝度に対して、副画素51R2の角度0°における輝度は70%である。角度0°から角度60°への角度変化において、副画素51R1からの光の色ずれの指標Δu’v’が0.099であり、副画素51R2からの光の色ずれの指標Δu’v’が0.043である。角度0°から角度60°への角度変化において、副画素51R1の角度1°当たりの規格化輝度の変化量が-0.029であり、副画素51R2の角度1°当たりの規格化輝度の変化量が-0.025である。
【0069】
上記構成例において、副画素51R1の内部発光スペクトル56R1のピーク波長は、角度0°における多重干渉スペクトル曲線55Rのピーク波長と一致している。これと異なり、これらピーク波長が一致していなくてもよい。この場合、多重干渉スペクトル曲線55Rのピーク波長と内部発光スペクトル56R1のピーク波長との差は、副画素51R2の多重干渉スペクトル曲線55Rのピーク波長と内部発光スペクトル56R2のピーク波長との差よりも小さい。これにより、副画素51R1の正面輝度は、副画素51R2の正面輝度よりも大きくなる。
【0070】
副画素51R1において、多重干渉スペクトル曲線55Rのピーク波長は、内部発光スペクトル56R1のピーク波長より大きくてもよいが、多重干渉スペクトル曲線55Rのピーク波長が内部発光スペクトル56R1の傾きが0以上の波長域に存在することで、負の波長域に存在する場合よりも角度による輝度変化を小さくできる。
【0071】
さらに、図6Bに示す関係から、副画素51R1のキャップ層の屈折率をn1、副画素51R2のキャップ層の屈折率をn2、としたときにn1>n2とする。このようにすることで副画素51R1の正面輝度をより高くすることができる一方で、副画素51R2により角度変化による色度、輝度変化を抑制できる。
【0072】
[製造方法]
以下において、OLED素子の製造方法を説明する。図9A及び9Bは、基板上に赤(R1)OLED素子、赤(R2)OLED素子、緑(G)OLED素子及び青(B)OLED素子を製造するためのステップを示す。各ステップは、メタルマスクを介して、材料を基板上に蒸着する。メタルマスクは、材料を蒸着する各領域に対応する開口を有する。
【0073】
図9Aを参照して、製造ステップS11は、絶縁性基板上に形成されているアノード電極601及び画素定義層(PDL)602の上に、メタルマスク651を介して、正孔注入層及び正孔輸送層603を蒸着する。画素定義層602は、開口パターンを有する樹脂層であって、各開口においてアノード電極601が露出している。
【0074】
製造ステップS12は、メタルマスク652を介して、副画素51R1のアノード電極上に赤R1の発光層604を蒸着する。製造ステップS13は、メタルマスク653を介して、副画素51R2のアノード電極上に赤R2の発光層605を蒸着する。
【0075】
図9Bを参照して、製造ステップS14は、メタルマスク654を介して、副画素51Gのアノード電極上に緑の発光層606を蒸着する。製造ステップS15は、メタルマスク655を介して、副画素51Bのアノード電極上に青の発光層607を蒸着する。なお、発光層604~607の形成順序は任意である。
【0076】
ステップS16は、メタルマスク656を介して、全てのOLED素子を覆うように(表示領域の全域に)、電子輸送層及び電子注入層608を蒸着する。ステップS17は、メタルマスク657を介して、全てのOLED素子を覆うように(表示領域の全域に)、カソード電極609を蒸着する。
【0077】
また、場合によってはカソード電極の上にメタルマスクを介して副画素51R1のキャップ層を蒸着した後、メタルマスクを介して副画素51R2、副画素51G、副画素51Bのキャップ層を蒸着する。
【0078】
上記製造工程において、副画素51R1及び副画素51R2の発光層604及び605の材料、並びに、副画素51R1及び副画素51R2のアノード電極601とカソード電極609との間の有機膜厚は、図8を参照しつつ説明した条件が満たされるように設計される。
【0079】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本開示の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0080】
10 表示装置、51R1、51R2 赤副画素、51B 青副画素、51G 緑副画素、55R 赤副画素の多重干渉スペクトル曲線、55G 緑副画素の多重干渉スペクトル曲線、55B 青副画素の多重干渉スペクトル曲線、56R1 R1副画素の内部発光スペクトル曲線、56R2 R2副画素の内部発光スペクトル曲線、100 TFT基板、114 カソード電極形成領域、125 表示領域、131 走査ドライバ、132 制御ドライバ、133 保護回路、134 ドライバIC、136 デマルチプレクサ、140 接合部、166 カソード電極、200 封止基板、250 OLED素子、251 絶縁性基板、252 アノード電極、253 正孔注入層、254 正孔輸送層、255 発光層、256 電子輸送層、257 電子注入層、258 カソード電極、301 内部発光スペクトル曲線、303 ピーク波長、305 傾きが正の波長域、306 傾きが負の波長域、307 二階微分が負の波長域、308 二階微分が正の波長域、311 角度0°における多重干渉スペクトル曲線、312 角度60°における多重干渉スペクトル曲線、313、315 ピーク波長、317 角度0°から60°のピーク波長域、321 比視感度曲線、323 ピーク波長、325 傾きが負の波長域、501 画素、601 アノード電極、602 画素定義層、603 正孔輸送層、604 R1発光層、605 R2発光層、606 G発光層、607 B発光層、608 電子注入層、609 カソード電極、651-657 メタルマスク
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B