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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】電鋳金型製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 1/10 20060101AFI20230724BHJP
   C25D 1/00 20060101ALI20230724BHJP
   B29C 33/38 20060101ALI20230724BHJP
   B81C 99/00 20100101ALI20230724BHJP
【FI】
C25D1/10
C25D1/00 361
B29C33/38
B81C99/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019159082
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021038419
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 和宏
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-109313(JP,A)
【文献】特開2010-216014(JP,A)
【文献】特開2016-113653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00-1/22
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基板に凹部を形成し、前記第一基板の凹部内面を含む凹部形成面上に第一金属層を形成する工程と、
第二基板に凹部を形成する工程と、
前記第一基板の凹部と前記第二基板の凹部を対向配置し、前記第一基板と前記第二基板を接合する工程と、
前記第二基板の前記第一基板との接合面と対向する面を研磨し、前記第一基板の凹部と前記第二基板の凹部が対向配置されることで形成された凹部空間の一部を露出するよう前記第二基板に開口部を形成する工程と、
前記第二基板の開口部形成面上に第二金属層を形成する工程と、
前記第一基板に形成された第一金属層と、前記第二基板の開口部形成面上に形成された第二金属層とをメッキシード層として第一金属層上及び第二金属層上にメッキを施し、前記第一金属層上に形成され前記凹部空間の内部を充填するメッキ金属と、前記第二金属層上に形成されるメッキ金属とが前記開口部を介して接続された金属メッキ形状部を形成する工程と、
前記第一基板及び前記第二基板を除去し、前記金属メッキ形状部のみを露出させる工程と、
を有することを特徴とする電鋳金型製造方法。
【請求項2】
前記第一基板及び前記第二基板は、シリコン基板であり、前記第一基板の凹部と前記第二基板の凹部は、エッチング手法により形成されることを特徴とする請求項1に記載の電鋳金型製造方法。
【請求項3】
前記第一基板の凹部と前記第二基板の凹部は、断面視略半円形状に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電鋳金型製造方法。
【請求項4】
前記第一金属層と前記第二金属層は、メッキシード層であり、Au/Cr、Au/Ti、又はCr/Tiから成ることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の電鋳金型製造方法。
【請求項5】
前記第一基板と第二基板の接合工程において、前記第二基板の凹部内面を除く凹部形成面上に、前記第一基板と前記第二基板とを接合するための接合金属層を形成し、前記第一基板の前記第一金属層と前記第二基板の前記接合金属層を介して前記第一基板と前記第二基板とを接合することを特徴とする1、2、3又は4に記載の電鋳金型製造方法。
【請求項6】
前記接合金属層は、Au又はAuSnから成ることを特徴とする請求項5に記載の電鋳金型製造方法。
【請求項7】
第一基板に凹部を形成し、前記第一基板の凹部内面を含む凹部形成面上に第一金属層を形成する工程と、
第二基板に貫通孔を形成する工程と、
前記第一基板の凹部と前記第二基板の貫通孔を対向配置し凹部空間を形成した状態で、前記第一基板と前記第二基板を接合する工程と、
前記第二基板の前記第一基板との接合面と対向する面上に第二金属層を形成する工程と、
前記第一基板に形成された第一金属層と、前記第二基板の第二金属層とをメッキシード層として前記第一金属層上及び前記第二金属層上にメッキを施し、前記第一金属層上に形成され前記凹部空間を充填するメッキ金属と、前記第二金属層上に形成されるメッキ金属とが前記貫通孔を介して接続された金属メッキ形状部を形成する工程と、
前記第一基板及び前記第二基板を除去し、前記金属メッキ形状部のみを露出させる工程と、
を有することを特徴とする電鋳金型製造方法。
【請求項8】
前記第二基板の貫通孔は一方の面の開口幅が対向面の開口幅よりも広く形成されており、前記貫通孔の広い開口幅が、前記第一基板の凹部の開口幅と同等の幅を有しており、各々が対向配置されることを特徴とする請求項7に記載の電鋳金型製造方法。
【請求項9】
前記第一基板は、シリコン基板であり、前記凹部はエッチング手法により形成されることを特徴とする請求項7又は8に記載の電鋳金型製造方法。
【請求項10】
前記第二基板は、シリコン基板であり、前記貫通孔はエッチング手法により形成されることを特徴とする請求項7、8又は9に記載の電鋳金型製造方法。
【請求項11】
前記第一基板に形成される凹部は、断面視略半円形状に形成されることを特徴とする請求項7、8、9又は10に記載の電鋳金型製造方法。
【請求項12】
前記第二基板に形成される貫通孔は、前記第一基板との前記接合面の方向に向かって広がる断面視略テーパー状に形成されることを特徴とする請求項7~11のいずれか一項に記載の電鋳金型製造方法。
【請求項13】
前記第一金属層と前記第二金属層は、メッキシード層であり、Au/Cr、Au/Ti、又はCr/Tiから成ることを特徴とする請求項7~12のいずれか一項に記載の電鋳金型製造方法。
【請求項14】
前記第一基板と前記第二基板を接合する工程において、前記第二基板の貫通孔内面を除き、前記第二金属が形成された面と対向する面上に金属接合層を形成し、当該金属接合層を介して前記第一基板と前記第二基板を接合することを特徴とする請求項7~13のいずれか一項に記載の電鋳金型製造方法。
【請求項15】
前記金属接合層は、Au又はAuSnから成ることを特徴とする請求項14に記載の電鋳金型製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば流路基板等を形成するための電鋳金型製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電鋳金型は、微細かつ繊細な構造を樹脂部材等に付与するために当該樹脂部材の成型の際に使用されている。微細かつ繊細な構造を得るための手法として、電鋳金型を用いて好適に製造する方法が種々考案されている。
【0003】
このような電鋳金型は、ステンレス製や樹脂製の電鋳金型用マスターを準備し、このマスターに電鋳ニッケル等の金属メッキを施し、この金属メッキ形状を電鋳金型材料に転写することで製造されている。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-57004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電鋳金型を用いて製造する樹脂部材の一例として、流路基板が知られている。この流路基板は、基板面上に適量の試験液を流すための流路が形成されており、この流路に血液など、微量の試験液を流してバイオ・化学的分析を行うものである。この流路の形状は微細かつ繊細な構造が求められ、複雑な形状も求められる傾向にある。
【0006】
本発明は、上述の要求に応えるべく、微細かつ繊細な構造、あるいは複雑な形状であっても、その構造を正確に樹脂部材に付与できる電鋳金型の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一基板に凹部を形成し、前記第一基板の凹部内面を含む凹部形成面上に第一金属層を形成する工程と、第二基板に凹部を形成する工程と、前記第一基板の凹部と前記第二基板の凹部を対向配置し、前記第一基板と前記第二基板を接合する工程と、前記第二基板の前記第一基板との接合面と対向する面を研磨し、前記第一基板の凹部と前記第二基板の凹部が対向配置されることで形成された凹部空間の一部を露出するよう前記第二基板に開口部を形成する工程と、前記第二基板の開口部形成面上に第二金属層を形成する工程と、前記第一基板に形成された第一金属層と、前記第二基板の開口部形成面上に形成された第二金属層に給電し、メッキ成長により前記凹部空間をメッキ充填し、前記凹部空間と連なる前記第二基板の開口部を含む第二基板の表面上に至るまで金属メッキを施し、前記凹部空間内部から前記第二基板表面上に連通する金属メッキ形状部を形成する工程と、前記第一基板及び前記第二基板を除去し、前記金属メッキ形状部のみを露出させる工程と、
を有することを特徴とする電鋳金型製造方法。
【0008】
前記第一基板及び前記第二基板は、シリコン基板であり、前記第一基板の凹部と前記第二基板の凹部は、エッチング手法により形成することができる。
【0009】
前記第一基板の凹部と前記第二基板の凹部は、断面視略半円形状に形成することができる。
【0010】
前記第一金属層と前記第二金属層は、メッキシード層であり、Au/Cr、Au/Ti、又はCr/Tiで構成できる。
【0011】
前記第一基板と第二基板の接合工程において、前記第二基板の凹部内面を除く凹部形成面上に金属接合層を形成し、前記第一基板と第二基板は、前記金属接合層を介して接合することができる。
【0012】
前記金属接合層は、Au又はAuSnで構成することができる。
【0013】
第一基板に凹部を形成し、前記第一基板の凹部内面を含む凹部形成面上に第一金属層を形成する工程と、第二基板に貫通孔を形成する工程と、前記第一基板の凹部と前記第二基板の貫通孔を対向配置し凹部空間を形成した状態で、前記第一基板と前記第二基板を接合する工程と、前記第二基板の前記第一基板との接合面と対向する面上に第二金属層を形成する工程と、前記第一基板と前記第二基板との接合面に位置する第一金属層と、前記第二基板の第二金属層に給電し、メッキ成長により前記凹部空間をメッキ充填し、前記凹部空間と連なる前記第二基板の開口部を含む第二基板の表面上に至るまで金属メッキを施し、前記凹部空間内部から前記第二基板表面上に連通する金属メッキ形状部を形成する工程と、前記第一基板及び前記第二基板を除去し、前記金属メッキ形状部のみを露出させる工程と、を有する電鋳金型製造方法とする。
【0014】
前記第二基板の貫通孔は一方の面の開口幅が対向面の開口幅よりも広く形成されており、前記貫通孔の広い開口幅が、前記第一基板の凹部の開口幅と同等の幅を有しており、各々が対向配置される電鋳金型製造方法とする。
【0015】
前記第一基板は、シリコン基板であり、前記凹部はエッチング手法により形成することができる。
【0016】
前記第二基板は、シリコン基板であり、前記貫通孔はエッチング手法により形成することができる。
【0017】
前記第一基板に形成される凹部は、断面視略半円形状に形成することができる。
【0018】
前記第二基板に形成される貫通孔は、断面視略テーパー状に形成することができる。
【0019】
前記第一金属層と前記第二金属層は、メッキシード層であり、Au/Cr、Au/Ti、又はCr/Tiで構成することができる。
【0020】
前記第一基板と前記第二基板を接合する工程において、前記第二基板の貫通孔内面を除き、前記第二金属が形成された面と対向する面上に金属接合層を形成し、当該金属接合層を介して前記第一基板と前記第二基板を接合することができる。
【0021】
前記第金属接合層は、Au又はAuSnで構成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電鋳金型製造方法によれば、微細かつ繊細な構造、あるいは複雑な構造であっても、その構造を正確に樹脂部材に付与できる電鋳金型の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】流路基板の一例を示す図で、(a)は平面図、(b)はA-A断面図。
図2】本発明の一実施形態の電鋳金型製造方法を説明するための図。
図3】本発明の一実施形態の電鋳金型製造方法を説明するための図。
図4】本発明の一実施形態の電鋳金型製造方法を説明するための図。
図5】本発明の他の実施形態の電鋳金型製造方法を説明するための図。
図6】本発明の他の実施形態の電鋳金型製造方法を説明するための図。
図7】本発明の他の実施形態の電鋳金型製造方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、流路基板の一例を示す図で、(a)は平面図、(b)はA-A断面図である。1は流路基板で、その基板面上には、試験液等を流すための流路2が形成されている。この流路2は断面凹状に形成され、基板面上において帯状に配設されている。この流路2に微量の試験液を流してバイオ・化学的分析がなされるものである。
【0025】
この流路2の形状は、分析対象となる試験液により微細かつ繊細な形状が求められるが、例えば、血液分析に用いる場合には、血管を模した形状が好適とされ、図1(b)の断面図に示す通り、断面視で略円形の凹部形状となるものが求められることになる。
図1に示した流路基板1は、電鋳金型を用いて樹脂部材により製造されたものである。
以下、前記流路基板1の製造に用いる本発明の電鋳金型製造方法について説明する。
【0026】
本発明の一実施形態の電鋳金型製造方法について、図2から図4を参照して詳細に説明する。
図2は、本発明の一実施形態の電鋳金型製造方法を説明するための図で、(a)~(e)は、電鋳金型を製造するための母基板を成す第一基板の製造過程を工程毎に示したものである。
【0027】
先ず、(a)に示すように、第一基板3を準備する。第一基板3は、例えば、サイズがφ4インチのシリコン基板で電鋳金型を作製するための母基板となるものであるが、図においては、その側面の一部のみを断面図として示している。
【0028】
図2(b)~(d)は、第一基板3に凹部3aを形成する工程を示している。図2(b)に図示する4はレジストマスクであり、このレジストマスク4は、開口部4aを有しており、第一基板3に成膜したレジスト膜をフォトリソエッチングにより、適宜形成される。
【0029】
図2(c)に示すように、レジストマスク4を形成した後、当該レジストマスク4をエッチングマスクとして用い、第一基板3に用いたシリコン基板をエッチングすることで凹部3aを形成する。本実施形態においては、例えば、SF6ガスによる等方性エッチングを採用している。これにより、図2(c)に示すように、断面視半円形状を成す凹部が得られる。
【0030】
続いて、第一基板3の表面に残るレジストマスク4をすべて除去し、図2(d)に示すように凹部3aが形成された状態にする。尚、図示していないが、ここで形成される凹部3aは、平面的には、図1において示す流路に対応する形状で基板面に配設されるものである。
【0031】
続いて、図2(e)に示すように、第一基板3の凹部3aの内面を含む凹部形成面上に第一金属層5を形成する。第一金属層5は、例えば、Au/Cr、Au/Ti、又はCr/Ti等の材質を適宜選択して使用でき、蒸着、スパッタ等の手法で成膜することができる。
【0032】
図3は、本発明の一実施形態の電鋳金型製造方法を説明するための図で、(a)~(e)は、電鋳金型を製造するための母基板を成す第二基板の製造過程を工程毎に示したものである。
【0033】
先ず、(a)に示すように、第二基板6を準備する。第二基板6は、前記第一基板3とほぼ同等のサイズを有したシリコン基板である。第二基板6も電鋳金型を作製するための母基板を成すものである。
【0034】
図3(b)~(d)は、第二基板6に凹部6aを形成する工程を示している。図3(b)に図示する7はレジストマスクであり、このレジストマスク7は、開口部7aを有しており、第二基板6に成膜したレジスト膜をフォトリソエッチングにより、適宜形成される。この開口部7aは、前記第一基板3の凹部3a形成時に用いたレジストマスク4の開口部4aと一致する開口幅、形状を有している。
【0035】
図3(c)に示すように、レジストマスク7を形成した後、当該レジストマスク7をエッチングマスクとして用い、第二基板6に用いたシリコン基板をエッチングすることで凹部6aを形成する。本実施形態においては、例えば、SF6ガスによる等方性エッチングを採用している。これにより、図3(c)に示すように、断面視半円形状を成す凹部6aが得られる。得られた凹部形状は、前記第一基板3に形成された凹部3aと同形状となる。
【0036】
続いて、第二基板6の表面に残るレジストマスク7をすべて除去し、図3(d)に示すように凹部6aが形成された状態にする。尚、図示していないが、ここで形成される凹部6aは、平面的には、図1において示す流路に対応する形状で基板面に配設されるものである。
ここまでの工程は、前記した第一基板の工程と同様の工程が採用され、第二基板6が形成される。
【0037】
続いて、図3(e)に示すように、第二基板6の凹部6aの内面を除く凹部形成面上に金属接合層8を形成する。金属接合層8は、例えば、Au又はAuSn等の材料を適宜選択して使用でき、蒸着、スパッタ等の手法で成膜することができる。
【0038】
図4は、本発明の一実施形態の電鋳金型製造方法を説明するための図で、(a)~(e)は、第一基板と第二基板を母基板として用い製造する電鋳金型の製造過程を工程毎に示した図である。
【0039】
図4(a)は、前記工程にて形成された第一基板3と第二基板6を貼り合わせる工程を示している。本図では、第一基板3を下側に、第二基板6を第一基板3の上方に配置した構成である。貼り合わせの位置関係は、第一基板3の凹部3aと第二基板6の凹部6aが対向した位置関係で配置されており、貼り合わせた状態においては、断面視略半円形状とされた各々の凹部3a、6aの組合わせにより、断面視略円形状の凹部空間が形成されることになる。
【0040】
第一基板3の第二基板6との接合面には、第一金属層5が形成されている。また、第二基板6の第一基板3との接合面には、金属接合層8が形成されている。基板同士の接合は、前記第一金属層5、金属接合層8を介し、約300℃で加熱・加圧して行う金属接合で行われる。
尚、第一金属層5は、例えば、Au/Cr、Au/Ti、又はCr/Ti等の材質であり、金属接合層8は、例えば、Au又はAuSn等の材料から選択される。
本工程においては、接合手段として金属接合を例に説明したが、これに限定されず、接着剤を用いた接合手段であってもよい。その場合は、第二基板6の金属接合層8は必要ないため、金属接合層形成工程は不要になる。
【0041】
図4(b)は、前記工程にて貼り合わされた基板の一部を研磨し、凹部空間を開口させる工程を示す図である。
本工程では、第二基板6の前記接合面と対向する面を研磨し、第一基板3の凹部3aと第二基板6の凹部6aが対向配置されることで形成された凹部空間の一部を露出するよう、研磨処理を施し第二基板6の表面に開口部6bを形成する。この時、研磨によって一部が開口状態になる凹部6a内面には金属層等は設けられていない構成となる。
【0042】
図4(c)は、前工程にて開口部を形成した基板の表面に金属層を形成する工程である。
第二基板6の開口部6bを形成した面上に第二金属層9を形成する。第二金属層9は、例えば、Au/Cr、Au/Ti、又はCr/Ti等の材質を適宜選択して使用でき、蒸着、スパッタ等の手法で成膜することができる。
【0043】
図4(d)は、前工程までの製造過程において貼り合わされた基板の凹部空間内等をメッキ充填する工程を示す図である。
前記第一基板3と前記第二基板6との接合面に位置する第一金属層5と、第二基板6の開口部6b形成面上に形成された第二金属層9をメッキシード層とし、これらに給電し、電解メッキ手法によりメッキ成長させる。これにより前記凹部空間をメッキ充填し、この凹部空間と連なる第二基板6の開口部6bを含む第二基板6の表面上において一定の厚みを確保して金属メッキ形状部10が形成される。この金属メッキ形状部10は、凹部空間内部から第二基板6の表面上に連通する金属メッキ形状部である。この時、第二基板6の凹部内面にはシード層となる金属層が形成されていないので、第一基板3の凹部3aに形成された第一金属層5、凹部の底部から徐々に上方の開口部側へメッキが成長していくことで、凹部空間内に空隙等を生ずることなく、隈なく充填できる。
【0044】
図4(e)は、前工程で形成された金属メッキ形状部を露出し電鋳金型を形成する工程を示す図である。
前記第一基板3と第二基板6は、シリコン基板で構成しているため、エッチング溶液を用いてすべて溶解除去する。また、メッキシード層として用いた金属層は、AuやCrを用いているので、これらも適宜溶解液を選択して溶解除去することで最終的に金属メッキ形状部10のみを露出することができる。
このようにして残った金属メッキ形状部10が、流路基板を製造するための電鋳金型として完成する。
完成した電鋳金型を用いれば、図1に例示した断面視円形状の流路を有する流路基板を容易に形成することができる。
【0045】
本発明の一実施形態については、第一基板3の凹部3aと第二基板6の凹部6aを断面視略半円形状のものとして説明したが、各々がV溝形状のもので形成することも可能である。凹部や溝部の形成は、種々のエッチング条件を適宜選択、コントロールすることで、容易に形成できる。
【0046】
続いて、本発明の他の実施形態の電鋳金型製造方法について、図5から図7を参照して詳細に説明する。
図5は、本発明の他の実施形態の電鋳金型製造方法を説明するための図で、(a)~(e)は、電鋳金型を製造するための母基板を成す第一基板の製造過程を工程毎に示したものである。
【0047】
先ず、(a)に示すように、第一基板11を準備する。第一基板11は、例えば、サイズがφ4インチのシリコン基板で電鋳金型を作製するための母基板となるものであるが、図においては、その側面の一部の断面を示している。
【0048】
図5(b)~(d)は、第一基板11に凹部11aを形成する工程を示している。図5(b)に図示する12はレジストマスクであり、このレジストマスク12は、開口部12aを有しており、第一基板11に成膜したレジスト膜をフォトリソエッチングにより、適宜形成される。
【0049】
図5(c)に示すように、レジストマスク12を形成した後、当該レジストマスク12をエッチングマスクとして用い、第一基板11に用いたシリコン基板をエッチングすることで凹部11aを形成する。本実施形態においては、例えば、SF6ガスによる等方性エッチングを採用している。これにより、図5(c)に示すように、断面視半円形状を成す凹部が得られる。
【0050】
続いて、第一基板11の表面に残るレジストマスク12をすべて除去し、図5(d)に示すように凹部11aが形成された状態にする。尚、図示していないが、ここで形成される凹部11aは、平面的には、図1において示す流路に対応する形状で基板面に配設されるものである。
【0051】
続いて、図5(e)に示すように、第一基板11の凹部11aの内面を含む凹部形成面上に第一金属層13を形成する。第一金属層13は、例えば、Au/Cr、Au/Ti、又はCr/Ti等の材質を適宜選択して使用でき、蒸着、スパッタ等の手法で成膜することができる。
【0052】
図6は、本発明の一実施形態の電鋳金型製造方法を説明するための図で、(a)~(f)は、電鋳金型を製造するための母基板を成す第二基板の製造過程を工程毎に示した図である。
【0053】
先ず、図6(a)に示すように、第二基板14を準備する。第二基板14は、前記第一基板11とほぼ同等のサイズを有したシリコン基板である。第二基板14も電鋳金型を作製するための母基板を成すものである。
【0054】
図6(b)~(f)は、第二基板14に貫通孔14aを形成する工程を示している。図6(b)に図示する15はレジストマスクであり、このレジストマスク15は、開口部15aを有しており、第二基板14に成膜したレジスト膜をフォトリソエッチングにより、適宜形成される。この開口部15aは、前記第一基板11の凹部11a形成時に用いたレジストマスク12の開口部12aと一致している。
【0055】
図6(c)に示すように、レジストマスク15を形成した後、当該レジストマスク15をエッチングマスクとして用い、第一基板14に用いたシリコン基板をエッチングすることで貫通孔14aを形成する。本実施形態においては、例えば、SF6ガスによる等方性エッチングを採用している。これにより、図6(c)に示すように、テーパー状部を有する貫通孔14aが得られる。得られた貫通孔14aのテーパー状部は、前記第一基板11に形成された凹部3aの断面視半円形状に合致する円弧状となっている。
第二基板14の貫通孔14aは、一方の面の開口幅が対向面の開口幅よりも広く形成される。
【0056】
続いて、第二基板14の表面に残るレジストマスク15をすべて除去し、図6(d)に示すように貫通孔14aが形成された状態にする。尚、図示していないが、ここで形成される貫通孔14aは、平面的には、図1において示す流路に対応する形状で基板面に配設されるものである。
【0057】
続いて、図6(e)に示すように、第二基板14の貫通孔14aの内面を除く開口幅の広い方の基板面上に金属接合層16を形成する。金属接合層16は、例えば、Au又はAuSn等の材料を適宜選択して使用でき、蒸着、スパッタ等の手法で成膜することができる。
【0058】
続いて、図6(f)に示すように、第二基板14の貫通孔14aの内面を除く開口幅の狭い方の基板面上に第二金属層17を形成する。第二金属層17は、例えば、Au/Cr、Au/Ti、又はCr/Ti等の材質を適宜選択して使用でき、蒸着、スパッタ等の手法で成膜することができる。
【0059】
図7は、本発明の他の実施形態の電鋳金型製造方法を説明するための図で、(a)~(c)は、第一基板と第二基板を母基板として用い製造する電鋳金型の製造過程を工程毎に示した図である。
【0060】
図7(a)は、前記工程にて形成された第一基板11と第二基板14を貼り合わせる工程を示している。本図では、第一基板11を下側に、第二基板14を第一基板11の上方に配置した構成である。貼り合わせの位置関係は、第一基板11の凹部11aと第二基板14の貫通孔14aの開口幅が広い面を対向配置した位置関係となる。各々の凹部11a、貫通孔14aは、断面視略円弧形状とされているため、貼り合わせた状態においては、断面視略円形状と成っている。尚、第一基板11の凹部11aの開口幅と、第二基板14の貫通孔14aの広い方の開口幅形状は、一致している。
【0061】
第一基板11の第二基板14との接合面には、第一金属層13が形成されている。また、第二基板14の第一基板11との接合面には、金属接合層16が形成されている。当該基板同士の接合は、前記第一金属層13と金属接合層16を介し、約300℃で加熱・加圧する金属接合で行われる。
尚、第一金属層13は、例えば、Au/Cr、Au/Ti、又はCr/Ti等の材質であり、金属接合層16は、例えば、Au又はAuSn等の材料から選択される。
本工程においては、接合手段として金属接合を例に説明したが、接着剤を用いた接合手段も採用できる。その場合は、第二基板14の金属接合層16は必要ないため、金属接合層形成工程は不要になる。
【0062】
図7(b)は、前工程までの製造過程において貼り合わされた基板の凹部空間内等をメッキ充填する工程を示す図である。
前記第一基板11と前記第二基板14との接合面に位置する第一金属層13と、第二基板14の貫通孔14aの開口部が狭い方の面上に形成された第二金属層17をメッキシード層とし、これらに給電し、電解メッキ手法によりメッキ成長させる。これにより前記凹部空間をメッキ充填し、この凹部空間と連なる第二基板14の開口部を含む第二基板14の表面上において一定の厚みとなるようにして金属メッキ形状部18が形成される。この金属メッキ形状部18は、凹部空間内部から第二基板14の表面上に連通する金属メッキ形状部である。この時、第二基板6の凹部内面にはシード層となる金属層が形成されていないので、第一基板11の凹部11aに形成された第一金属層13、凹部11aの底部から徐々に上方の開口部側へメッキが成長していき、凹部空間内に空隙等を生ずることなく、隈なく充填できる。
【0063】
図7(c)は、前工程で形成された金属メッキ形状部を露出し電鋳金型を形成する工程を示す図である。
前記第一基板11と第二基板14は、シリコン基板で構成しているため、エッチング溶液を用いてすべて溶解除去する。また、メッキシード層として用いた金属層は、AuやCrを用いているので、これらも適宜溶解液を選択して溶解除去することで最終的に金属メッキ形状部18のみを露出することができる。
このようにして残った金属メッキ形状部18が、流路基板を製造するための電鋳金型として完成する。
完成した電鋳金型を用いれば、図1に例示した断面視略円形状の流路を有する流路基板を容易に形成することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 流路基板
2 流路
3 第一基板
3a 凹部
4 レジストマスク
5 第一金属層
6 第二基板
6a 凹部
6b 開口部
7 レジストマスク
8 金属接合層
9 第二金属層
10 金属メッキ形状部
11 第一基板
11a 凹部
12 レジストマスク
12a 開口部
13 第一金属層
14 第二基板
14a 貫通孔
15 レジストマスク
15a 開口部
16 金属接合層
17 第二金属層
18 金属メッキ形状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7