(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】床付き布枠
(51)【国際特許分類】
E04G 5/08 20060101AFI20230724BHJP
E04G 7/34 20060101ALI20230724BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
E04G5/08 B
E04G7/34 303B
F16B5/06 E
(21)【出願番号】P 2019167493
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2018192059
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511025411
【氏名又は名称】株式会社NejiLaw
(73)【特許権者】
【識別番号】521108456
【氏名又は名称】株式会社NejiLaw MO IP Innovation
(72)【発明者】
【氏名】道脇 裕
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-284402(JP,A)
【文献】特開2004-278262(JP,A)
【文献】特開2015-086593(JP,A)
【文献】特開2013-076253(JP,A)
【文献】特開2020-133237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/08
E04G 7/34
F16B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の床部と、
上記床部の端部に配設され、幅方向に延びる外部枕材に係合する係合部と、
上記外部枕材を支持する位置に突出及び該位置から退避するように往復移動可能で、且つ往復移動の方向と異なる方向において退避可状態と退避不可状態との間を遷移可能に回動し得るように配設され、突出時に上記係合部からの上記外部枕材の離脱を規制するロック部と、
上記ロック部と連結され、上記ロック部を退避方向に移動させ得る操作部と、
を具え、
上記ロック部の退避動作を阻止する係止機構を有し、上記退避不可状態を構成可能とされることを特徴とする床付き布枠。
【請求項2】
前記ロック部を突出方向に付勢する付勢手段を有し、
前記ロック部は、前記操作部と係合する一端部側が、前記係合部の一端部側に対して、前記回動方向に間隙を存するように配設され、
前記ロック部の一端部側及び前記係合部の一端部側は、互いに噛み合う凹凸部を有し、
前記係止機構は、回動した前記ロック部の一端部側の凹凸部が前記係合部の一端部側の凹凸部に当接し、上記両凹凸部が相噛合し得るように構成されることを特徴とする請求項1に記載の床付き布枠。
【請求項3】
前記ロック部を突出方向に付勢する付勢手段を有し、
前記ロック部は、前記操作部と係合する一端部側が、前記床部に対して、前記回動方向に間隙を存するように配設され、
前記ロック部の一端部側及び前記床部は、互いに噛み合う凹凸部を有し、
前記係止機構は、回動した前記ロック部の一端部側の凹凸部が前記床部の凹凸部に当接し、上記両凹凸部が相噛合し得るように構成されることを特徴とする請求項1に記載の床付き布枠。
【請求項4】
前記操作部は、前記退避方向と異なる向きに変位し得る第一部材と、該第一部材の変位を前記ロック部の前記退避方向の移動に変換する第二部材とを有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の床付き布枠。
【請求項5】
前記第一部材は、前記幅方向に略直交する平面に沿って回転する回転体であって、
前記第二部材は、一端が上記回転体に回転自在に接続され、他端が前記ロック部と一体又は別体で構成されるリンクであることを特徴とする請求項4記載の床付き布枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築現場等で枠組足場の作業床又は通路等で使用される床付き布枠に関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場等で用いられる足場の作業床や通路は、所謂パイプ材(丸管又は単管)で構成される横桟や枕材の間に、床付き布枠(布板、足場板)が架け渡されて構成される。
【0003】
この床付き布枠は、パイプ材に対して着脱自在に配設され、床面を構成する帯状の床部と、床部の両側に配置される断面コの字形の梁部と、床部の長手方向の両端に取り付けられる掴み金具部を有する。
【0004】
掴み金具部は、例えば、床部の底面側が開口するように円弧状に湾曲した受部を有する。この受部を横桟又は枕材の上に引っかけることで、床付き布枠が架け渡される。更に掴み金具部は、受部に対して摺動自在に配置される規制部材を有しており、この規制部材の突端を、受部に収容される横桟又は枕材の下側(裏側)に突出させることによって、掴み金具部が横桟又は枕材から外れないようになっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の床付き布枠の掴み金具部の規制部材は、自重によって下方にスライドして、その突端が横桟又は枕材の下側(裏側)に突出する。従って、床付き布枠を横桟や枕材に架け渡す際は、作業者が、全ての掴み金具部の規制部材を個別且つ同時に手で上方に押し上げてから、受部に横桟又は腕材を引っかける必要があり、煩雑であり、作業者の負担が大きいという問題があった。
【0007】
また、架け渡した床付き布枠を取り外す際も、全ての掴み金具部の規制部材を個別且つ同時に手で上方に押し上げてから、横桟又は腕材から受部を開放する必要があり、煩雑で作業者の負担が大きいという問題があった。
【0008】
特に、低所に居る作業者が、高所の横桟や枕材に対して、一人で床付き布枠を設置する場合、床付き布枠の床部を底面側から両腕で保持して、この床付き布枠を高所に持ち上げて架け渡す必要がある。この際、規制部材を手で上方に押し上げることは極めて困難であることから、横桟又は腕木材の上に床付き布枠を仮置きし、その後、作業者が個々の掴み金具部の規制部材を順番に押し上げて、受部内に横桟又は枕材を挿入していかなければならない。従って、全ての掴み金具部が横桟又は枕材を完全に掴むまでの間、床付き布枠が不安定になるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、横桟又は枕材に対して容易に着脱可能な床付き布枠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明は、帯状の床部と、床部の端部に配設され、幅方向に延びる外部枕材に係合する係合部と、外部枕材を支持する位置に突出及び該位置から退避するように往復移動可能で、且つ往復移動の方向と異なる方向において退避可状態と退避不可状態との間を遷移可能に回動し得るように配設され、突出時に係合部からの外部枕材の離脱を規制するロック部と、ロック部と連結され、ロック部を退避方向に移動させ得る操作部と、を具え、ロック部の退避動作を阻止する係止機構を有し、退避不可状態を構成可能とされることを特徴とする床付き布枠である。
【0011】
上記床付き布枠に関連して、ロック部を突出方向に付勢する付勢手段を有し、ロック部は、操作部と係合する一端部側が、係合部の一端部側に対して、前記回動方向に間隙を存するように配設され、ロック部の一端部側及び係合部の一端部側は、互いに噛み合う凹凸部を有し、係止機構は、回動したロック部の一端部側の凹凸部が係合部の一端部側の凹凸部に当接し、両凹凸部が相噛合し得るように構成されることを特徴とする。
【0012】
上記床付き布枠に関連して、ロック部を突出方向に付勢する付勢手段を有し、ロック部は、操作部と係合する一端部側が、床部に対して、回動方向に間隙を存するように配設され、ロック部の一端部側及び床部は、互いに噛み合う凹凸部を有し、係止機構は、回動したロック部の一端部側の凹凸部が床部の凹凸部に当接し、両凹凸部が相噛合し得るように構成されることを特徴とする。
【0013】
上記床付き布枠に関連して、操作部は、退避方向と異なる向きに変位し得る第一部材と、該第一部材の変位をロック部の退避方向の移動に変換する第二部材とを有することを特徴とする。
【0014】
上記床付き布枠に関連して、第一部材は、幅方向に略直交する平面に沿って回転する回転体であって、第二部材は、一端が回転体に回転自在に接続され、他端がロック部と一体又は別体で構成されるリンクであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の床付き布枠によれば、装着時には枕材に当接した規制部が、床付き布枠の自重によって、床付き布枠に対して相対的に押し上げられて、規制部が開放位置まで移動して単管が受部の開口を通過した後、規制部は自重で元の位置、即ち、突出状態に移動して単管が抜脱しない規制が掛かった状態に自発的になり、また床付き布枠を取り外す際には、操作部を持ち上げることで、全ての規制部が同時に、強制的にスライド孔に沿って押し上げられて、退避状態に移動し、受部の規制を開放して単管を受部から容易に取り外すことが出来るように構成されており、そのため、単管等の枕材に対して極めて簡単に床付き布枠を着脱できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態における規制部突出状態の床付き布枠を示す斜視図である。
【
図2】規制部突出状態における同床付き布枠の(A)正面図、(B)は平面図、(C)は側面図である。
【
図4】(A)は同床付き布枠の分解斜視図であり、(B)は同床付き布枠の床部及び梁部を省略した規制部突出状態の斜視図であり、(C)は同床付き布枠の床部及び梁部を省略した規制部退避状態の斜視図である。
【
図5】床部及び梁部を省略した同床付き布枠の(A)正面図、(B)平面図、(C)側面図である。
【
図6】規制部突出状態の同床付き布枠の隅部近傍を拡大して示す(A)側面図、(B)平面図である。
【
図7】規制部突出状態の同床付き布枠の隅部近傍において梁部及び受部等の部材の一部を切断した状態を拡大して示す(A)側面図、(B)平面図である。
【
図8】(A)は同床付き布枠の隅部近傍を拡大して示す正面図、(B)は
図6(A)のB-B矢視断面図、(C)は
図6(A)のC-C矢視断面図、(D)は
図6(A)のD-D矢視断面図である。
【
図9】規制部退避状態における同床付き布枠の(A)斜視図、(B)は側面図、(C)は正面図である。
【
図10】規制部退避状態の同床付き布枠の隅部近傍において梁部及び受部等の部材の一部を切断した状態を拡大して示す(A)側面図、(B)平面図である。
【
図11】開閉装置を移動させずに規制部のみを退避状態とした際の同床付き布枠の隅部近傍を拡大して示す(A)側面図、(B)平面図である。
【
図12】本実施の形態の床付き布枠の変形例を示す(A)側面図、(B)及び(C)床部、梁部を省略した側面図及び正面図である。
【
図13】(A)及び(B)は本実施の形態の床付き布枠の変形例を示す側面図である。
【
図14】本実施の形態の床付き布枠の変形例を示す断面図である。
【
図15】他の床付き布枠の状態を示し、(a)は突出状態、(b)は退避状態、(c)は退避不可状態を示す図である。
【
図16】床部の下部に設置した規制部を示す図である。
【
図17】回転可能に構成される操作部の例を示す図である。
【
図19】回転可能に構成される操作部の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る床付き布枠1は、帯状の床部10と、床部10の幅方向両外側に沿って長手方向に延在する梁部20と、床部10の四隅近傍のそれぞれにおいて長手方向に沿って配設される受部(係合部)30と、受部30の開口32に対して突出及び退避するように往復移動可能に配設される規制部(ロック部)40と、規制部40と係合し得る状態で長手方向及び/又は幅方向に配設される開閉装置60と、を備える。
【0019】
図2(B)に示すように、床部10の上面には、長手方向又は幅方向に連続する孔・凹み・突起等により滑り止め加工が施されている(
図1等では図示省略)。
【0020】
梁部20は、
図8(D)に示すように、上面部20Aと、外側面部20Bと、底面
図20Cと、内側面部20Dがこの順に連なって構成される。従って、幅方向断面から視ると、梁部20は断面略コ字形状又は断面略ロ字形状となっており、剛性が高い。外側面部20Bには、幅方向内側に向かって凹む凹部20E(これは凸部であっても良い)が、長手方向に延びており、この凹部20Eによって梁部20の剛性が一層高められる。また、これらの構造により、梁部20には内部空間22が形成される。また、内側面部20Dの高さは、外側面部20Bの高さよりも小さく設定されており、結果、内側における内側面部20Dが存在しない箇所には隙間24(或いは切欠き)が形成され、そこから内部空間22を臨むことが可能となっている。なお、この隙間24は、後述する開閉装置60の移動空間として利用される。
【0021】
図2(C)に示すように、受部30は、床部10又は梁部20から長手方向外側に突設されており、側面視すると、円弧状に湾曲した形状となる。結果、受部30の内周側には、底面側に開口32を有する収容部(収容空間)34が形成される。収容部34の輪郭(受部30の内周縁)は、ここでは、180°以下の部分正円弧となっている。従って、足場となる幅方向に延びる外部枕材M(これは例えば単管で構成される)が、開口32を介して収容部34に挿入されることで、収容部34の内周縁と外部枕材Mとが、床部10の表裏方向に係合する。
【0022】
なお、
図3に示すように、幅方向に隣り合う一対の受部30の基端側は、底面視コ字形状となる支持部36の端部と一体化されている。この支持部36は、床部10の底面及び/又は梁部20の内側面部20Dに対して溶接又は締結等で固定される。
【0023】
図6、
図7及び
図10に拡大して示すように、規制部40は、後述する案内機構50によって案内される方向が長尺となる板状部材で構成されており、受部30の開口32に対して一方の端部40Aが突出する状態(
図7及び
図7参照)と、端部40Aが開口32から退避する状態(
図10参照)の間を往復移動する。規制部40が突出状態の場合、収容部34に収容され得る外部枕材Mと規制部40が係合して、収容部34からの外部枕材Mの離脱を規制する。
【0024】
受部30と規制部40の間には、規制部40を摺動自在に案内する案内機構50が配設される。この案内機構50は、受部30の基端近傍に対してねじ、溶接又はかしめ等によって固定される案内ピン52と、規制部40に形成される長孔となるスライド孔42によって構成される。このスライド孔42には案内ピン52が挿入される。
【0025】
図7に示すように、案内ピン52は、規制部40を案内する方向に平行となる一対の摺動面52Aを有しており、この摺動面52Aと、スライド孔42の長尺方向に沿う内周面とが摺動することで、規制部40を直線的に案内する。
【0026】
この案内機構50による、規制部40を突出状態から退避状態に向かって案内する際の初動角度Cは、床部10の面直角方向、且つ、外部枕材Mの収容部34への挿入方向Bを基準にして45°以下且つ0°を越える範囲内で傾斜している。このようにすると、規制部40が突出状態であっても、この規制部40と干渉させながら外部枕材Mを収容部34方向へ押し込めば、
図11に示すように、案内機構50によって規制部40のみが退避状態に移動して、外部枕材Mを収容部34内に収容可能となっている。特に本実施形態では、案内機構50が規制部40を略直線的に案内するので、摺動面52Aに案内ピン52の周方向(回転方向)の応力が作用し難いので、規制部40を円滑にスライドさせることができる。一方、収容部34内に外部枕材Mを収容した後は、規制部40が、自重によって突出状態に移動することで、外部枕材Mの脱落を抑制する。外部枕材Mが収容部34から脱落しようとすると、その外周面と規制部40が干渉するので、両者の摩擦力によって、規制部40が一層、突出方向に引き出される。即ち、外部枕材Mの脱落方向への動作を利用して規制部40が同外部枕材Mの脱落を規制できるようになっている。なお、規制部40の重心位置は、側面視において略中央に位置することが好ましい。このようにすると、規制部40において自重に起因する回転モーメントを抑制できるので、摺動面52Aに案内ピン52の間の摩擦力が小さくなり、滑らかに進退できるからである。
【0027】
外部枕材Mの押し込み動作によって規制部40を突出状態から退避状態に滑らかに移動させるためには、初動角度Cは40°以下が好ましく、より望ましくは35°以下に設定する。外部枕材Mの押し込み方向と規制部40の初動方向の差が小さくなり、押し込み力をそのまま規制部40の移動力に有効利用できるからである。初動角度Cを小さくする場合は、規制部40による開口32の開閉量を十分に確保する為に、案内機構50のストロークを長く設定することが好ましい。
【0028】
なお、ここでは、案内機構50が規制部40を直線的に案内する場合を例示しているが、本発明はこれに限定されず、初動角度Cから終了角度まで角度が変化する部分円弧等の案内軌跡とすることもできる。
【0029】
規制部40は、更に、床部10の幅方向に延在する退避用凸部46を有する。この退避用凸部46は、規制部40の他方の端部40B近傍に形成される。具体的には、規制部40の端部40Bが屈曲されることで退避用凸部46が形成されている。退避用凸部46は、規制部40が突出状態から退避状態に移動する際に、開閉装置60の当接部64の退避用当接面64Aと係合可能となっている。
【0030】
退避用凸部46は、開口32方向に対向する退避用係合面46Aを有する。この退避用係合面46Aは、規制部の初動角度Cに対して略直角となる。即ち、この退避用係合面46Aは、床部10の面直角方向に対して傾斜するようになっている。また、退避用係合面46Aと退避用当接面64Aは互いに平行となる。従って、
図10に示すように、開閉装置60の退避用当接面64Aが、床面直角方向に移動する際に、退避用当接面64Aと退避用係合面46Aが互いに摺動する。
【0031】
規制部40は、更に、床部10の幅方向に延在する突出用凸部47を形成することも可能である。この突出用凸部47は、規制部40の側面に形成される。突出用凸部47は、規制部40が退避状態から突出状態に移動する際に、開閉装置60の当接部64の突出用当接面64Bと係合可能となっている。即ち、開閉装置60を底面方向に移動させる際、突出用当接面64Bが突出用凸部47を底面方向に押し下げるので、規制部40を強制的に突出状態に移動させることができる。
【0032】
次に、開閉装置60について説明する。
図4に示すように、開閉装置60は、規制部40と係合し得る状態で長手方向に配設される。具体的に開閉装置60は、梁部20の内部空間22(
図8参照)に長手方向に配設されて、その端部が規制部40と係合する長尺部62と、長尺部62において両端から長手方向内側に離れた場所(ここではほぼ中央)に配設され、作業者によって操作され得る操作部66を有する。
【0033】
図8(C)に示すように、長尺部62は帯状部材によって構成されており、その平面方向が、梁部20の高さ方向に沿うように配設される。また、本実施形態では、長尺部62の上縁が幅方向内側に屈曲されており、その断面L字形状によって剛性が高められている。また、長尺部62の外側面62Aは、梁部20の内部空間22の内壁(具体的には、凹部20Eの内壁)と当接する。長尺部62の内側面62Bは、受部30の外側面と当接する。結果、長尺部62の幅方向の移動が規制され、内部空間22において高さ方向に案内される構造となっている。
【0034】
また、
図6に示すように、長尺部62の長手方向両端には、それぞれ、梁部20から斜め上方に突出して当接部64を構成する。
図8(B)に示すように、この当接部64は、長尺部62の上縁が幅方向内側に二段に屈曲されて断面ロ字形状に構成される。当接部64の上面は、退避用当接面64Aとなり、規制部40の退避用係合面46Aと係合する。当接部64の下面は、突出用当接面64Bとなり、規制部40の突出用凸部47と係合する。なお、規制部40が突出状態且つ開閉装置60が下方状態の場合は、退避用当接面64Aと退避用係合面46Aが当接(係合)可能の状態となるが、突出用当接面64Bと突出用凸部47が係合状態とならない位置関係となっている。即ち、開閉装置60が下方状態の場合は、規制部40のみが、突出状態から退避状態に自在に往復移動可能となっている。一方、規制部40が退避状態且つ開閉装置60が上方状態の場合は、突出用当接面64Bと突出用凸部47が係合状態となり、突出用当接面64Bによって突出用凸部47(規制部80)を強制的に押し下げることを可能にしている。
【0035】
図8(D)に示すように、操作部66は、長尺部62の上限を幅方向内側に屈曲させて構成される。なお、本実施形態では、操作部66の剛性を高めるために、操作部66の幅方向内側端を更に折り返すことで二層構造にしている。操作部66は、梁部20の内周側に形成される隙間24(
図8参照)から、幅方向内側に突出するように延在する。結果、作業者が梁部20を把持すると同時に、操作部66を操作することが可能となる。
【0036】
図4(B)に示すように、操作部66の長手方向寸法L1は、一対の支持部36の長手方向内側同士(一対の受部30の基端同士)の距離L2と比較して少しだけ小さく設定される。このようにすると、隙間24の高さ方向(床部10の面直角方向)に操作部66を往復移動させることが可能となり(
図4(C)参照)、一方で、操作部66を長手方向に移動させることは、操作部66と支持部36の干渉によって規制される構造となっている。勿論、案内機構を設けて移動を規制することも好い。この開閉装置60は、複数(ここでは長手方向の両隅の一対)の規制部40に亘って配設される結果となり、共通の操作部66の移動により、複数の規制部40を連動させることができる。
【0037】
本実施形態の床付き布枠1は、規制部40と開閉装置60が互いに独立しており、開閉装置60が下方状態において、規制部40のみの進退方向の移動を許容している。結果、装着時、開閉装置60を操作せずに、外部枕材Aを規制部40に押し当てれば、その外力によって、規制部40を円滑に退避状態に移動させることが可能となり、装着作業を極めて簡素化することができる。
【0038】
また、本実施形態の床付き布枠1は、四隅から長手方向内側に離れた場所に位置する操作部66を作業者が床面方向に操作することにより、突出状態の規制部40を退避状態に移動させることが可能となる。従って、高所の横桟や枕材(外部枕材M)に設置済みの床付き布枠1を、作業者が一人で取り外す際、一対の梁部20の長手方向中央近傍を底面側から両腕で保持しながら、その把持している両手で、それぞれの操作部66を上方に押し上げれば、全ての規制部40を同時に、強制的に退避状態に移動できるので、四隅の受部30から外部枕材Mを簡単に開放できる。
【0039】
なお、装着時において、外部枕材Aを規制部40に押し当てても、何らの事情により、規制部40が退避状態に移動しない場合は、一対の梁部20の長手方向中央近傍を両腕で保持し、それぞれの操作部66を上方に押し上げても良い。結果、床付き布枠1の把持と同時に、全ての規制部40を強制的に退避状態に維持することができるので、四隅の受部30に、外部枕材Mを係合させることができる。その後、両手を操作部66から離すだけで、操作部66が自重で落下し、これに連動して、四隅の規制部40も自重により、及び/又は、開閉装置60の落下と連動して、突出状態に移動することができる。
【0040】
従って、従来のように、着脱時の双方において、作業者が四隅に移動してそれぞれの規制部40の開閉操作を行うことが不要となるので、作業が大幅に簡素化され、作業時間を短縮できる。特に、この開閉装置60は、複数の規制部40をまとめて移動させることができるので、操作部66の数を削減することができ、作業者の操作負担を一層軽減することができる。
【0041】
また、本床付き布枠1は、開閉装置60の長尺部62が、梁部20の内部空間22内に配設されるので、長尺部62が梁部20によって保護されることになり、長尺部62が変形したり、破損したりする事態を低減できる。また、操作部66が長尺部62から延設されて、梁部20から外部に突出しているので、視覚的に操作部66を判別しやすく、誤操作を防止することができる。
【0042】
更に本実施形態では、案内機構50による規制部40の初動角度Cが、45°以下に設定されている。また、規制部40と開閉装置60が互いに独立しており、規制部40のみの進退方向の移動を許容している。即ち、開閉装置60を操作すれば、強制的に規制部40を退避させることができると共に、開閉装置60を操作しなくても、外力によって規制部40のみの進退方向に移動させることができる。結果、装着時において、開閉装置60を操作せずに、外部枕材Aを規制部40に押し当てれば、その外力によって、規制部40を円滑に退避状態に移動させることが可能となり、装着作業をより簡素化することができる。
【0043】
また更に、開閉装置60によって規制部40を移動させる際、規制部40の退避用係合面46Aと、開閉装置60の退避用当接面64Aが互いに摺動するので、この摺動構造によって、開閉装置60の上下動を、規制部40の傾斜方向の移動に変換できることから、一般的なリンク機構等と比較して、移動機構を簡素化できる。結果、長期間に亘って故障の少ない床付き布枠1を得ることができる。この際、退避用係合面46Aは、上述の初動角度Cに対して略直角となるので、退避用係合面46Aに作用する応力によって、円滑に規制部40を移動させることができる。なお、上記実施形態では突出用凸部47を利用して、開閉装置60によって規制部40を強制的に突出させることができるようにしているが、本発明はこれに限定されず、突出用凸部を省略することも可能である。仮に、規制部40が自重によっても、退避状態から突出状態に移動しない場合に限って、作業者の手作業により、個別に規制部40を移動させれば済むからである。
【0044】
なお、上記実施形態では、開閉装置60が板状の部材によって構成される場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図12(A)に示すように、梁部20内にワイヤWを配置し、ワイヤWの端部を規制部40に連結して、このワイヤWを作業者が引っ張ることで、規制部40を退避状態に移動させるようにしても良い。突出状態への復帰は、バネY等の弾性部材を利用することもできる。
【0045】
また、上記実施形態では、両側面の梁部20のそれぞれに開閉装置60を配置する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図12(B)に示すように、幅方向に隣り合う一対の規制部40を、リンク部Rによって接続して一体化し、一方の規制部40の移動と、他方の規制部40の移動を連動させても良い。この場合は、共通の開閉装置60により、一方の規制部40又はリンク部Rを移動させれば、他方の規制部40を連動させることができる。
【0046】
更にまた、上記実施形態では、開閉装置60が、長手方向の一対の規制部40を同時に移動させる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図12(C)に示すように、幅方向に隣り合う一対の規制部40に対して、幅方向の延在する開閉装置60を懸架し、幅方向の中央側において、作業者がこの開閉装置60をスライドさせることで、両端の規制部40を開閉させるようにしても良い。
【0047】
また更に、上記実施形態では、案内機構50が、規制部40を斜め上方に向かって略直線的に案内する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図13(A)に示すように、案内機構50が揺動軸となっており、規制部40を揺動させることで、突出状態と退避状態の間を移動させても良い。また例えば、
図13(B)に示すように、開閉装置60と規制部40が一体化しており、案内機構50によって、開閉装置60を長手方向に直線的にスライドさせることで、規制部40を開閉させるようにしても良い。
【0048】
また、規制部(ロック部)40は、弾性部材とワイヤとを用いて突出状態と退避状態との間を移動可能で、且つ往復移動の方向と異なる方向に回動し、退避動作が不可となる退避不可状態に移行し得るものであってもよい。その場合、規制部40は、回動しないときは退避動作が可能な退避可状態となり、回動したときに退避不可状態となるように、退避可状態と退避不可状態との間を遷移可能に構成する。
【0049】
図14は、退避可状態と退避不可状態との間を遷移可能な規制部40を具える床付き布枠1の例を示す図であり、
図14に示すように梁部20内において、上部に受部(係合部)30を固定し、規制部40を梁部20内で受部30の下方に配置する。
【0050】
また、受部30の収容部34に対する長手方向反対側の基端部(係合部の一端部)70と、該基端部70に対向する規制部40の一端部(ロック部の一端部)80とを、床部10の面直角方向に間隙を存して配置する。具体的には、受部30は、収容部34側からその反対側の基端部70に向かって徐々に規制部40から離間するテーパ状とする。また規制部40は、開口32側に突出する先端側から、梁部20内の端部80に向かって徐々に受部30から離間するテーパ状とする。
【0051】
また、受部30は、規制部40に対向する面に梁部20の長手方向に並んだ山形の凹凸部72を具える。また規制部40は、受部30に対向する面に上記凹凸部72と係脱自在に噛み合う凹凸部82を具える。この両凹凸部72、82が相噛合うことで後述する係止機構が形成され、規制部40の退避動作が阻止される。
【0052】
また梁部20内には板バネ状の弾性部材(付勢手段)90、ワイヤWを配設する。弾性部材90は、規制部40の一端部72を開口32側に押圧し、規制部40を突出方向に付勢する。ワイヤWは、規制部40の一端部72に連結される。なお弾性部材90は、ワイヤWに干渉しないように、ワイヤWが挿通する不図示の孔を有する。
【0053】
上述した規制部40の突出状態、退避状態、退避不可状態について説明する。
図15(a)に示す規制部40の先端部が開口32側に突出した突出状態のとき、規制部40は、ワイヤWを介して引張力が印加された際、
図15(b)で示すように、弾性部材90による付勢力に抗する向きに引っ張られて退避状態に移行する。
【0054】
また突出状態の規制部40は、収容部34に対向する先端部を押し下げる外力が作用した場合、退避不可状態に移行する。即ち、規制部40の先端部は、押し下げられたとき、
図15(c)に示すように梁部20の下縁部に当接し、その下縁部との当接箇所を支点に一端部80が上向きに回動する。このとき凹凸部82が受部30の凹凸部72に噛み合って係止機構が形成され、係止機構によって規制部40の退避動作を阻止する退避不可状態を構成する。
【0055】
このように規制部40は、突出及び退避の往復移動の方向と異なる方向に動作(回動)して退避不可状態となり退避動作が阻止されるので、受部30からの外部枕材Mの離脱を確実に規制することができる。従って、強風に晒される環境で外部枕材Mが受部30及び規制部40間でがたついたときに、規制部40が外部枕材Mから退避方向の力を受け、退避動作することを防止することができる。即ち、外部枕材Mを介して規制部40に下向きの力が作用して退避不可状態を構成することで、外部枕材Mを介して規制部40に退避向きの外力が作用しても規制部40が退避動作することなく固定される。
【0056】
また規制部40は、弾性部材90によって常に付勢力を受けていることから、常時、外部枕材Mからの退避方向の力に抵抗している。そのため、規制部40は、退避方向の力よりも、先端部を押し下げる力に対する影響を受けやすくなる。従って強風に晒される環境であっても、規制部40は、退避動作前に回動して確実に退避不可状態に移行することができる。
【0057】
なお、規制部40の設置箇所は、外側枕材Mの下部を支持可能な位置まで突出すれば受部30に対向する箇所に限定されるものではない。例えば、床部10の下面側に設置してもよい。その場合、
図16に示すように、床部10の下面側に規制部40を設置する設置空間を形成する設置部100を設け、設置部100内に規制部40の退避動作を阻止し得る退避係止部102を設ける。
【0058】
退避係止部102は、規制部40の上方で床部10の下面に固定し、規制部40の一端部80に対して間隙を存するようにテーパ状としてもよい。また退避係止部102は、受部30の基端部70と略同様の形状としてもよい。即ち凹凸部72と略同様の凹凸部104を具えると共に、弾性部材90を一端部に固定してもよい。
【0059】
これによって規制部40は、外部枕材Mに対し突出及び退避し得るように往復移動可能で、且つ退避可状態と退避不可状態との間を遷移可能に回動可能となる。従って、突出状態の規制部40の先端部が押し下げられたとき、凹凸部82が上方に回動して凹凸部104に噛み合って係止機構が形成される。これによって規制部40の退避不可状態が構成され、規制部40の退避動作を阻止する。
【0060】
なお、受部30は、床部10の四隅近傍のそれぞれにおいて長手方向に沿って配設されるものとして説明したが、勿論これに限定されるものではなく、適宜設定し得る。例えば、受部30は、床部10の幅方向に沿って広がる幅広形状で、長手方向に沿って一対配設したものであってもよい。また受部30は、床部10の幅方向に所定間隔を存して複数配列してもよく、また各受部30の基端が上記支持部36に連結するものでもよい。
【0061】
また、操作部66が上下方向に移動する場合を例に説明したが、勿論、操作部の移動方向は適宜設定し得、規制部40の移動方向に沿う方向或いは移動方向と異なる方向の何れの方向でもよい。従って、操作部を幅方向又は長手方向に移動可能に構成してもよく、また操作部を回転可能に構成してもよい。ここで、操作部を回転可能に構成する場合について説明する。
【0062】
図17は回転可能に構成される操作部100の例を示す図である。操作部100は、回転体102、リンク104を具えて構成される。回転体102は、幅方向に対して直交する面内で回転するように軸支された本体102aと、本体から長手方向及び床部10の幅方向に突出する操作レバー102bとにより構成される。リンク104は、一端部が回転体102の本体102aに回転自在に支持され、他端部が規制部40に接続される。なお、リンク104は、少なくとも一端部が本体102aに回転可能に支持されていれば、他端を規制部40と一体的に構成したものとしてもよい。
【0063】
また、操作部100は、長手方向に配列される二つの規制部40の間に配され、当該二つの規制部40を同時に開閉し得るように構成してもよい。具体的に回転体102が、二本のリンク104を支持することで、各リンク104を介し長手方向に並ぶ二つの規制部40を同時に突出状態と退避状態とに移行可能に構成してもよい。
【0064】
その場合、二つのリンク104の各一端部は、回転体102において、互いに回転軸に対して対称に配置されるように取付け位置が設定される。これにより、回転体102は、リンク104を支持している部分を回転と共に変位させ得るように機能する。また、リンク104は、支持されている一端部の変位を規制部40の退避方向又は突出方向の移動に変換させ得るように機能する。
従って、
図17及び
図18(a)に示すように操作レバー102bが下降しているとき、各規制部40の先端部が開口32側に突出した突出状態となる。なお、
図17では図示していないが、上述した付勢部材90を設け、規制部40を付勢して突出状態となるように設定してもよいことは言うまでもない。
そして、操作レバー102bが上方に回動したとき、回転体102に対して左側に延在しているリンク104は、
図18(b)の矢印a1で示す右側に移動する。また回転体102に対して右側に延在しているリンク104は、
図18(b)の矢印a2で示す左側に移動する。結果、各リンク104に接続されている規制部40は、
図19に示すように退避状態となる。
【0065】
以上、説明したように、操作部100の操作レバー102bが下方に位置しているとき二つの規制部40が突出状態となって、上方に位置しているとき二つの規制部40が退避状態となる。従って、床付き布枠の取外し時において、例えば操作レバーに手を掛けて持ち上げれば、床付き布枠の自重によって操作レバー102bが相対的に上方に回動して規制部40を退避状態とすることができ、枕材からの取外しを容易に行うことができる。
また、床付き布枠を持ち上げるときに操作レバー102bに手を掛け得ることや床付き布枠の重心位置等を考慮して操作部100の配設位置を設定することが望ましい。具体的に、好ましくは操作部100を長手方向の略中央部に位置するように配設し、より好ましくは操作レバー102bが長手方向の略中央部に位置するように操作部100を配設する。
【0066】
なお、本発明の実施の形態は本発明を具現化するための一例を示したものであり、これに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形を施すことができる。
【符号の説明】
【0067】
1…床付き布枠、10…床部、20…梁部、20A…上面部、20B…外側面部、20C…底面図、20D…内側面部、20E…凹部、22…内部空間、24…隙間、30…受部、32…開口、34…収容部、36…支持部、40…規制部、40A、40B…端部、42…スライド孔、46…退避用凸部、46A…退避用係合面、47…突出用凸部、50…案内機構、52…案内ピン、52A…摺動面、60…開閉装置、62…長尺部、62A…外側面、62B…内側面、64…当接部、64A…退避用当接面、64B…突出用当接面、66…操作部、70…基端部、72,82…凹凸部、80…一端部、90…弾性部材、Y…バネ、B…挿入方向、C…初動角度、M…外部枕材、R…リンク部、W…ワイヤ。