(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20230724BHJP
A61K 8/23 20060101ALI20230724BHJP
A61K 8/24 20060101ALI20230724BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20230724BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20230724BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230724BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20230724BHJP
C11D 7/04 20060101ALI20230724BHJP
C11D 7/16 20060101ALI20230724BHJP
C11D 3/06 20060101ALI20230724BHJP
C11D 3/30 20060101ALI20230724BHJP
C11D 1/04 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/23
A61K8/24
A61K8/41
A61K8/36
A61Q19/10
C11D3/20
C11D7/04
C11D7/16
C11D3/06
C11D3/30
C11D1/04
(21)【出願番号】P 2019174043
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小川 綾乃
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-063248(JP,A)
【文献】特開2005-239623(JP,A)
【文献】特開2004-089358(JP,A)
【文献】特開2010-132566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C11D 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分A、成分B、成分C、および成分Dを含み、pHが
8.7~12.0である組成物
であって、
前記成分Aの含有量は、0.2質量%~0.8質量%であり、
前記成分Bの含有量は、0.01質量%~0.5質量%であり、
前記成分Cの含有量は、0.01質量%~5.0質量%であるとともに、
下記の成分Eを含まないか、あるいは0.5質量%以下で含む、組成物。
成分A:パラオキシ安息香酸エステル
成分B:亜硫酸水素塩および亜硫酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種
成分C:トリポリリン酸塩およびメタリン酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種
成分D:水
成分E:エデト酸またはその塩
【請求項2】
下記の成分Fをさらに含む、請求項
1に記載の組成物。
成分F:高級脂肪酸塩
【請求項3】
洗浄剤である、請求項1
または2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料、食品等の組成物において、光や熱に晒される環境下で黄変などの変色を引き起こす場合があり、外観不良や品質劣化の印象のため問題となる。このため、様々な変色抑制の試みが行われている(例えば、特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記黄変の要因としては、例えば、組成物中の成分が空気中の酸化物と反応する(自動酸化)こと、組成物中の金属イオンと錯体を形成することなどが考えられる。このような要因による黄変に対しては、酢酸トコフェロールやブチルヒドロキシトルエンなどの抗酸化剤、またはエデト酸塩などの金属キレート剤が抑制効果を発揮すると推定される。
【0005】
しかしながら、上記の抗酸化剤や金属キレート剤を含む組成物の中にも、アルカリ条件下で顕著な黄変を示すものがあり、改善が必要となっている。
【0006】
本発明は、黄変が抑制された組成物を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、防腐剤であるパラオキシ安息香酸エステルを含む組成物がアルカリ条件下で黄変するということを見出した。そして、特定の抗酸化剤および金属キレート剤を併用することにより、上記パラオキシ安息香酸エステルに起因する黄変を有意に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の構成を含む。
【0008】
〔1〕下記成分A、成分B、成分C、および成分Dを含み、pHが7.9~12.0である、組成物;
成分A:パラオキシ安息香酸エステル
成分B:亜硫酸水素塩および亜硫酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種
成分C:トリポリリン酸塩およびメタリン酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種
成分D:水。
【0009】
〔2〕上記成分Aの含有量は、0.2質量%~0.8質量%である、〔1〕の組成物。
【0010】
〔3〕上記成分Bの含有量は、0.01質量%~0.5質量%である、〔1〕または〔2〕の組成物。
【0011】
〔4〕上記成分Cの含有量は、0.01質量%~10.0質量%である、〔1〕~〔3〕の何れかの組成物。
【0012】
〔5〕下記の成分Eをさらに含む、〔1〕~〔4〕の何れかの組成物;
成分E:エデト酸またはその塩。
【0013】
〔6〕下記の成分Fをさらに含む、〔1〕~〔5〕の何れかの組成物;
成分F:高級脂肪酸塩。
【0014】
〔7〕洗浄剤である、〔1〕~〔6〕の何れかの組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、黄変が抑制された組成物を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0017】
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「X~Y」は、「X以上Y以下」を意図する。また、本明細書において特記しない限り、成分の含有量を表す質量%は、組成物全体の質量を100質量%とした値である。
【0018】
〔1.組成物〕
本発明に係る組成物は、下記成分A、成分B、成分C、および成分Dを含み、pHが8~12である、組成物である;
成分A:パラオキシ安息香酸エステル
成分B:亜硫酸水素塩および亜硫酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種
成分C:トリポリリン酸塩およびメタリン酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種
成分D:水。
【0019】
本発明の組成物は、pH7.9~12.0の組成物である。本発明は、成分Aを含有する組成物が、アルカリ条件下(pH7.9以上、特に9.0以上)で引き起こす黄変を抑制するものである。本発明を適用しない場合に黄変が大きく、本発明の効果が顕著に表れる観点から、本発明の組成物のpHは8.0以上であり、好ましくは9.0以上である。実用上の観点から、本発明の組成物のpHは12.0以下であり、好ましくは11.0以下である。
【0020】
本発明の組成物は、成分E:エデト酸またはその塩をさらに含んでいてもよい。また、本発明の組成物は、成分F:高級脂肪酸塩をさらに含んでいてもよい。本発明の組成物は、上述した成分以外に、他の成分を含んでいてもよい。
【0021】
また、成分A、成分B、成分C、成分D、成分E、成分F、および、他の成分はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が用いられてもよい。
【0022】
以下、本発明の組成物に用いられる各成分の詳細を説明する。
【0023】
〔成分A〕
成分Aは、パラオキシ安息香酸エステルであり、本発明の組成物の前提となる成分である。本発明の組成物では、成分Aは、防腐剤成分として用いられる。
【0024】
パラオキシ安息香酸エステルは、炭素数1~4のアルキル基を有するパラオキシ安息香酸エステルであることが好ましい。パラオキシ安息香酸エステルとしては、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イソプロピルパラベン、ブチルパラベン、およびイソブチルパラベン等が挙げられる。
【0025】
成分Aの含有量は、本発明の組成物100質量%に対して、好ましくは0.2質量%~0.8質量%である。上記含有量が0.2質量%以上であれば、防腐効果が発揮され得る。また、安全性の観点から、上記含有量は0.8質量%以下であることが好ましい。
【0026】
本発明者らは、公知の抗酸化剤およびキレート剤の中から、パラオキシ安息香酸エステルに起因する黄変を抑制する抗酸化剤およびキレート剤を探索した。その結果、驚くべきことに、パラオキシ安息香酸エステルに起因する黄変は、成分Bおよび成分Cを併用することによって抑制効果が極めて良好になるという新規知見を本発明者らは見出し、本発明を完成させた。
【0027】
〔成分B〕
成分Bは、亜硫酸水素塩および亜硫酸塩の少なくとも1種であり、抗酸化効果とともにパラオキシ安息香酸エステルに起因する黄変を抑制する効果がある。用いられる塩として具体的には、ナトリウム、カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アンモニウム等のそれぞれの塩が挙げられる。なかでも、製剤安定性および酸化防止力の観点から、成分Bは、亜硫酸ナトリウムおよび亜硫酸水素ナトリウムの少なくとも1種が好ましい。
【0028】
成分Bの含有量は、本発明の組成物100質量%に対して、好ましくは0.01質量%~0.5質量%であり、より好ましくは0.01質量%~0.3質量%である。上記含有量が0.01質量%以上であれば、組成物の黄変抑制効果が十分に発揮され得る。また、成分Bの含有量を増加させても、黄変抑制効果は、0.3質量%程度を超えると頭打ちとなる。上記含有量が0.5質量%以下であれば、常温で成分Bが析出するのを抑制でき、製剤安定性が向上するので好ましい。
【0029】
〔成分C〕
成分Cは、トリポリリン酸塩およびメタリン酸塩の少なくとも1種であり、金属キレート効果とともにパラオキシ安息香酸エステルに起因する黄変を抑制する効果を補助する役割がある。
【0030】
トリポリリン酸塩は、3つのリン酸が縮合して形成される化合物の塩である。また、メタリン酸塩は、(HPO3)nで示されるメタリン酸の塩である。具体的には、メタリン酸塩は、ヘキサメタリン酸、テトラメタリン酸等の塩が挙げられる。また、用いられる塩として具体的には、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のそれぞれの塩が挙げられる。
【0031】
上記成分Cの含有量は、本発明の組成物100質量%に対して、好ましくは0.01質量%~10.0質量%であり、より好ましくは0.05質量%~1.0質量%である。上記含有量が0.01質量%以上であれば、組成物の黄変抑制効果が十分に発揮され得る。また、低温での析出抑制やコスト低減の観点から、上記含有量は、10.0質量%以下であることが好ましい。
【0032】
〔成分D〕
成分Dは、水であり、本発明の組成物の基剤である。成分Dは特に限定されないが、精製水が好ましい。成分Dの含有量は、本発明の組成物の各種成分の量に応じて適宜設定することができる。上記成分Dの含有量は、本発明の組成物100質量%に対して、好ましくは10.0質量%~80.0質量%であり、より好ましくは30.0質量%~70.0質量%である。
【0033】
〔成分E〕
成分Eは、エデト酸(エチレンジアミン四酢酸)またはその塩であり、上記成分Cよりも広範な金属に対してキレート効果を奏する。例えば、本発明の組成物が洗浄剤である場合、成分Eの金属キレート効果によって、金属イオン存在下での組成物の洗浄性が維持され、洗浄安定性が良好となる。しかし、成分Eを含む場合、組成物の黄変抑制効果が低下する傾向にある。
【0034】
エデト酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。成分Eとして、具体的には、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸カリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、製剤安定性の観点から、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム)、エチレンジアミン四酢酸カリウムが好ましい。
【0035】
上記成分Eの含有量は、洗浄安定性の観点から、本発明の組成物100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.02質量%以上である。黄変抑制効果の観点から、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.15質量%以下である。本発明の組成物が特に高い黄変抑制効果を発揮する観点からは、成分Eは含まないか、含んでも少量であることが好ましい。その場合、成分Eの含有量は、本発明の組成物100質量%に対して、好ましくは0.08質量%以下(例えば、0~0.08質量%)であり、より好ましくは0.03質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下である。
【0036】
〔成分F〕
成分Fは、高級脂肪酸塩である。成分Fの使用により、本発明の組成物が洗浄剤である場合、優れた洗浄力および起泡力を発揮させることができる。成分Fを含む組成物(例えば、洗浄剤)は、一般的にpH8~12の組成物となる場合が多い。成分Fは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
成分Fとなる高級脂肪酸としては、炭素数12~22の脂肪酸が挙げられる。
【0038】
上記炭素数12~22の脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびベヘニン酸等が挙げられる。
【0039】
洗浄力および起泡力をより一層高める観点からは、炭素数12~22の脂肪酸の塩が好ましく、ラウリン酸の塩、ミリスチン酸の塩、パルミチン酸の塩およびステアリン酸の塩からなる群から選ばれる成分(少なくとも1つの成分)がより好ましい。
【0040】
成分Fとしては、高級脂肪酸がアルカリ剤でケン化又は中和されたアルカリ金属塩、および、高級脂肪酸がアルカリ剤でケン化又は中和された有機アミン塩等が挙げられる。
【0041】
上記アルカリ剤としては、無機アルカリ剤および有機アルカリ剤等が挙げられる。上記無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム等が挙げられる。上記有機アルカリ剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミンおよびトリエチルアミン等が挙げられる。容易に入手でき、取扱性に優れていることから、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選ばれる成分(少なくとも1つの成分)が好ましい。
【0042】
高級脂肪酸とアルカリ剤とを予め高級脂肪酸塩として、他の必須成分と混合してもよい。また、高級脂肪酸とアルカリ剤とを別々に他の必須成分と混合して、得られる組成物中で高級脂肪酸塩としてもよい。
【0043】
成分Fの含有量は、本発明の組成物100質量%に対して、好ましくは1.0質量%~40.0質量%であり、より好ましくは3.0質量%~35.0質量%である。
【0044】
本発明の組成物は、用途に応じて、上記成分A~F以外の成分を含んでもよい。上記成分A~F以外の成分としては、例えば、油脂、ロウ類、動植物油、高級脂肪酸、シリコーン油、低級アルコール、高級アルコール、ステロール、エステル油、清涼剤、防腐剤、殺菌剤、保湿剤、界面活性剤、高分子化合物、無機顔料、色素、香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、ビタミン類、収斂剤、美白剤、動植物抽出物、多糖類、甘味料、着色料、ガムベース、中和剤、pH調整剤などが挙げられる。
【0045】
〔本発明に係る組成物の用途〕
本発明の組成物は、例えば、化粧品、医薬品、食品である。
【0046】
本発明の組成物は、(i)洗顔料、ボディシャンプー(ボディウォッシュ、ボディソープ)、ヘアシャンプー、クレンジング化粧料などの洗浄剤、(ii)化粧水、乳液、クリーム、ファンデーション、マスカラ、ネールエナメル、口紅などの皮膚用化粧料、(iii)ヘアトリートメント、養毛・育毛料、整髪剤(ヘアクリーム、ヘアローション、ヘアフォーム等)、ヘアカラー剤、パーマネントウェーブ剤などの頭髪用化粧料、(iv)にきび治療薬、うがい薬、トローチなどの医薬品、さらには(v)チューインガム、キャンディー、飲料などの食品に好適に用いることができる。
【0047】
また、本発明の組成物は、洗浄剤であることが好ましい。この場合、上記洗浄剤は、頭髪、皮膚(頭皮含む)の洗浄に好適に用いられる。上記洗浄剤は、特に限定されないが、顔、身体及び手等の洗浄に用いることが好ましい。
【0048】
本発明の成物の性状としては、固形状、液状、ジェル状、乳液状及びクリーム状等が挙げられる。
【0049】
なお、本発明の組成物の商品形態は、特に限定されないが、ポンプ容器、チューブ容器、エアゾール容器又はジャー容器等に充填した商品形態とすることができる。
【0050】
〔2.本発明に係る組成物の製造方法〕
本発明に係る組成物は、上述した用途に対応した常法に則って製造することができる。
【0051】
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されず、公知の製造方法が挙げられる。例えば、上述した成分を混合し、プロペラミキサー、ディスパーミキサー、パドルミキサー等の公知の混合装置を用いて撹拌することによって、本発明の組成物を得ることができる。
【実施例】
【0052】
本発明の一実施例について、以下に説明する。
【0053】
〔1.予備検討(試験例1~5)〕
表1に示すように各成分を配合することにより、試験例1~5の予備的な組成物を調製した。試験例1~5の組成物について黄変抑制効果(蛍光灯)を評価することによって、(i)パラオキシ安息香酸エステルに起因する黄変が生じるpH(至適pH)、(ii)亜硫酸水素ナトリウム(成分B)およびトリポリリン酸ナトリウム(成分C)による黄変抑制効果を予備検討した。
【0054】
なお、表1中の、メチルパラベンとしては、上野製薬社製、製品名「メッキンス-M」を用いた。
【0055】
〔評価〕
黄変抑制効果(蛍光灯)
評価対象である組成物をスクリュー管(透明、容量50ml)に充填し、蛍光灯耐候試験機(パナソニックヘルスケア社製、「グロースチャンバー MLR‐352」)を用い、光照射下にて15日間保管した。保管前後での黄変の有無を目視確認し、下記の基準で黄変抑制効果を判定した。
【0056】
<評価基準>
○(良好):無色透明である。
△(使用可能):わずかに変色が見られる。
×(不良):明らかに変色が見られる。
【0057】
【0058】
〔予備検討の結果〕
表1から、パラオキシ安息香酸エステルに起因する黄変が生じるpHの範囲は7.9以上であることが明らかになった。さらに、亜硫酸水素ナトリウム(成分B)およびトリポリリン酸ナトリウム(成分C)の両方の配合により、黄変が抑制されたことがわかった。
【0059】
〔2 実施例1~16、参考例1、2および比較例3、4〕
表2~4に示すように各成分を配合することにより、実施例1~16、参考例1、2および比較例3、4の組成物(洗浄剤)を調製した。そして、得られた組成物について、(1)黄変抑制効果(蛍光灯)、および(2)低温安定性を評価した。
【0060】
なお、表2~4中の、メチルパラベンとしては、上野製薬社製、製品名「メッキンス-M」を用いた。また、プロピルパラベンとしては、上野製薬社製、製品名「メッキンス-P」を用いた。
【0061】
〔評価〕
(1)黄変抑制効果(蛍光灯)
予備検討(試験例1~5)と同様の方法で、評価対象である組成物を光照射下にて15日間保管した。保管前後での黄変の有無を目視確認し、比較例4を標準品(STD)として下記の基準に基づき黄変抑制効果を判定した。なお、標準品は濃茶褐色を呈していた。
【0062】
<評価基準>
○(良好):黄変が全く又はほとんど見られない。
△(使用可能):黄変が見られるものの、標準品と比べて明らかに黄変が抑制されている。
×(不良):標準品と比べて黄変の度合いに差異が全く又はほとんど見られない。
【0063】
(2)低温安定性
低温安定性は、評価対象である組成物をスクリュー管(透明、容量50ml)に充填し、恒温槽を用い、温度5℃の環境下にて15日間保管した。保管後の析出物の有無を目視確認し、下記の基準で低温安定性効果を判定した。
【0064】
<評価基準>
○(良好):析出物がない。
×(不良):析出物がある。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
〔試験結果〕
表2~4から、実施例1~15の組成物は、パラオキシ安息香酸エステルに起因する黄変が抑制されたことが明らかになった。一方、比較例3の組成物は、パラオキシ安息香酸エステルに起因する黄変が抑制されなかった。
【0069】
また、実施例1~15の組成物をスクリュー管(透明、容量50ml)に充填し、50℃の恒温槽に15日間保管して、保管前後での黄変の有無を確認した。その結果、実施例の組成物にはいずれも黄変が見られず、高温環境に対する黄変抑制効果にも優れていることがわかった。
【0070】
以下に、本発明の組成物(洗浄剤)の処方例を示す。
【0071】
〔処方例1 洗顔料〕
ラウリン酸 4.0重量%
ミリスチン酸 12.0重量%
パルミチン酸 10.0重量%
ステアリン酸 10.0重量%
水酸化カリウム 6.0重量%
グリセリン 15.0重量%
PEG‐8 5.0重量%
POE(20)グリセロールモノステアリン酸エステル 2.0重量%
ラウロイルメチルタウリンNa 2.0重量%
メチルパラベン 0.3重量%
亜硫酸水素ナトリウム 0.03重量%
トリポリリン酸ナトリウム 0.1重量%
精製水 残部。
【0072】
〔処方例2 ポンプフォーマータイプの身体洗浄料〕
ラウリン酸 2.5重量%
ミリスチン酸 2.0重量%
パルミチン酸 1.0重量%
水酸化カリウム 1.0重量%
グリセリン 13.0重量%
1,3‐ブチレングリコール 2.5重量%
ココイルグリシンK 1.0重量%
ラウロイルヒドロキシスルタイン 0.5重量%
メチルパラベン 0.4重量%
無水亜硫酸ナトリウム 0.04重量%
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.8重量%
精製水 残部。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、例えば、ボディシャンプー、ボディウォッシュ等の身体の洗浄剤に利用することができる。