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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】引戸式の防火戸
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20230724BHJP
   E05D 15/06 20060101ALI20230724BHJP
   E06B 3/46 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
E06B5/16
E05D15/06 125C
E06B3/46
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019185801
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2020070714
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2018200661
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391008582
【氏名又は名称】昭和フロント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】今井 章
(72)【発明者】
【氏名】小山 優貴
(72)【発明者】
【氏名】塩田 容子
(72)【発明者】
【氏名】平鍋 美紅
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-31099(JP,A)
【文献】特開2015-86526(JP,A)
【文献】特開2016-199884(JP,A)
【文献】実開昭61-56469(JP,U)
【文献】実開昭57-17374(JP,U)
【文献】国際公開第2017/014193(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-11/08
E05D 1/00-15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向にスライド移動可能な戸体と、
前記戸体の上部に設けられた無目と、を備え、
前記無目は、配設スペースを内部に形成する左右方向に長尺状で前後面部および上面部を有したケース体を備え、
前記配設スペース内には、前記戸体を吊り下げてスライド移動させるためのレール部が配された、引戸式の防火戸において、
前記ケース体は鋼材よりも融点が低い金属材からなり、
前記ケース体の内部には、ケース体の前面部から後方に離間した位置に第一補強材が配され、
前記第一補強材は、左右幅のある見付け面部を有することで前記配設スペースの前面を形成し、
前記レール部は、前記第一補強材を介してケース体に取り付けられていることを特徴とする引戸式の防火戸。
【請求項2】
前記第一補強材は、前記ケース体の素材よりも融点が高い素材からなることを特徴とする請求項1記載の引戸式の防火戸。
【請求項3】
前記ケース体と第一補強材の見付け面部とのあいだには、耐火材が配されていることを特徴とする請求項1又は2記載の引戸式の防火戸。
【請求項4】
前記ケース体には、該ケース体の前面部後方に間隙を存して受け部が設けられ、前記レール部は、前記第一補強材をあいだに挟む積層状態で前記受け部に取り付けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1記載の引戸式の防火戸。
【請求項5】
前記受け部は、前記ケース体の左右方向全域にわたって設けられていることを特徴とする請求項4記載の引戸式の防火戸。
【請求項6】
前記戸体は、上端部が前記無目の内部に入り込んだものであり、前記第一補強材は、前記戸体の上端部の少なくとも一部と前後に重なるように下端部が延出していることを特徴とする請求項1~5のいずれか1記載の引戸式の防火戸。
【請求項7】
前記戸体の上端部の内部には、戸体の上端部の素材よりも融点が高い素材からなる戸体補強材が配されており、前記戸体補強材は、前記第一補強材と前後に重なる部位には配されていないことを特徴とする請求項6記載の引戸式の防火戸。
【請求項8】
前記戸体の上端部の内部には、戸体の上端部の素材よりも融点が高い素材からなる戸体補強材が配されており、前記戸体補強材は、前記第一補強材と前後に重なる部位にまで配されていることを特徴とする請求項6記載の引戸式の防火戸。
【請求項9】
前記第一補強材は、前記配設スペースの上部の少なくとも一部を覆う上面部を有することを特徴とする請求項1~8のいずれか1記載の引戸式の防火戸。
【請求項10】
前記戸体は自動式吊戸であり、前記配設スペース内には、前記戸体を自動制御によりスライド移動させるための駆動部が配されており、前記第一補強材の上面部は、前記駆動部の上部の少なくとも一部を覆うことを特徴とする請求項9記載の引戸式の防火戸。
【請求項11】
前記第一補強材は、上端部がケース体の上面部に固定されていることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1記載の引戸式の防火戸。
【請求項12】
前記ケース体の上面部は、欄間部を取り付け可能な凹部を備えており、前記凹部の底面を介して前記第一補強材の上面部がケース体に固定されていることを特徴とする請求項11に記載の引戸式の防火戸。
【請求項13】
前記無目の後面部は、前記配設スペース内を視認可能とすべく開放可能なカバー部材によって構成されており、前記第一補強材とカバー部材とは、無目内部で固定部材によって連結固定されていることを特徴とする請求項1~12のいずれか1記載の引戸式の防火戸。
【請求項14】
前記第一補強材は、前記ケース体の素材よりも熱伝導率が低い素材からなることを特徴とする請求項1~13のいずれか1記載の引戸式の防火戸。
【請求項15】
前記ケース体はアルミニウム材からなり、前記第一補強材は鋼材からなることを特徴とする請求項1~14のいずれか1記載の引戸式の防火戸。
【請求項16】
前記第一補強材は、ケース体の左右方向に長い一枚板状の長尺材により形成されていることを特徴とする請求項1~15のいずれか1記載の引戸式の防火戸。
【請求項17】
前記第一補強材は、左右方向に間隙を存して設けられる左右幅のある複数枚の板材により形成されていることを特徴とする請求項1~15のいずれか1記載の引戸式の防火戸。
【請求項18】
前記ケース体の下端部には、開放した戸体と前後に重なり合うべく配される板材の上端部を支持するための支持部が形成され、該支持部は、前記第一補強材の下端部に固定されていることを特徴とする請求項1~17のいずれか1記載の引戸式の防火戸。
【請求項19】
前記第一補強材には、ケース体前面部に対向する前面部の下端部からケース体後面部側に延出していてケース体支持部の上面部を覆う延出部が形成され、レール部は、第一補強材の前面部と延出部とに当接するべくL字形に形成されていることを特徴とする請求項18記載の引戸式の防火戸。
【請求項20】
延出部には、ケース体支持部の後面部を覆うため延出後端部を備えた逆L字形に形成されていることを特徴とする請求項19記載の引戸式の防火戸。
【請求項21】
ケース体前後面部の下端部間の隙間は、火災時の熱を受けて膨張する熱膨張耐火材により左右方向全幅に亘って塞がれるものであることを特徴とする請求項1乃至20のいずれか1記載の引戸式の防火戸。
【請求項22】
熱膨張耐火材は、ケース体後面部に設けられた第二補強材の下端部と、第一補強材の延出後端部とに設けられていることを特徴とする請求項20を引用する請求項21記載の引戸式の防火戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル等の構築物の出入り口等の開口部に建付けられる引戸式の防火戸に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、火災時の延焼を防ぐための防火設備として、引戸式の防火戸が知られている。引戸式の防火戸として、無目内部にレールが配されており、戸体がドアハンガーを介してレールに吊り下げられて見付け方向にスライド移動することで、躯体の開口部を開閉可能とするものが知られている。火災時に無目内部の温度が上昇したり、直接火炎にさらされたりすると、レールの変形や、防火自動ドアにおいては駆動部の損壊等が生じてしまうため、無目の外周となるケース体には軟鋼のような融点の高い金属材が用いられることが多い。
【0003】
この種の防火戸において、無目の耐火性を向上させたものとして、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された防火戸は、無目のケース側面に保持部材で保持された断熱材を備えたものとすることで、無目のケース内部の温度上昇を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/014193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、防火戸の意匠性を向上させるため、無目のケース体にアルミニウム材のような金属材を採用することが提唱されている。しかしながら、アルミニウム材は従来の鋼材よりも融点が低いため、火災時にケース体が溶け落ちやすくなり、無目の内部まで直接火炎にさらされるおそれが高くなる。そのような場合、レールの変形や駆動部の損壊により、戸体が移動してしまい、防火性能を発揮できなくなってしまうことが懸念される。そこで、無目のケース体に融点が低い素材を採用した防火戸の耐火性の向上が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するため鋭意創作されたものであって、請求項1の発明は、左右方向にスライド移動可能な戸体と、前記戸体の上部に設けられた無目と、を備え、前記無目は、配設スペースを内部に形成する左右方向に長尺状で前後面部および上面部を有したケース体を備え、前記配設スペース内には、前記戸体を吊り下げてスライド移動させるためのレール部が配された、引戸式の防火戸において、前記ケース体は鋼材よりも融点が低い金属材からなり、前記ケース体の内部には、ケース体の前面部から後方に離間した位置に第一補強材が配され、前記第一補強材は、左右幅のある見付け面部を有することで前記配設スペースの前面を形成し、前記レール部は、前記第一補強材を介してケース体に取り付けられていることを特徴とする引戸式の防火戸である。
請求項2の発明は、前記第一補強材は、前記ケース体の素材よりも融点が高い素材からなることを特徴とする請求項1記載の引戸式の防火戸である。
請求項3の発明は、前記ケース体と第一補強材の見付け面部とのあいだには、耐火材が配されていることを特徴とする請求項1又は2記載の引戸式の防火戸である。
請求項4の発明は、前記ケース体には、該ケース体の前面部後方に間隙を存して受け部が設けられ、前記レール部は、前記第一補強材をあいだに挟む積層状態で前記受け部に取り付けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1記載の引戸式の防火戸である。
請求項5の発明は、前記受け部は、前記ケース体の左右方向全域にわたって設けられていることを特徴とする請求項4記載の引戸式の防火戸である。
請求項6の発明は、前記戸体は、上端部が前記無目の内部に入り込んだものであり、前記第一補強材は、前記戸体の上端部の少なくとも一部と前後に重なるように下端部が延出していることを特徴とする請求項1~5のいずれか1記載の引戸式の防火戸である。
請求項7の発明は、前記戸体の上端部の内部には、戸体の上端部の素材よりも融点が高い素材からなる戸体補強材が配されており、前記戸体補強材は、前記第一補強材と前後に重なる部位には配されていないことを特徴とする請求項6記載の引戸式の防火戸である。
請求項8の発明は、前記戸体の上端部の内部には、戸体の上端部の素材よりも融点が高い素材からなる戸体補強材が配されており、前記戸体補強材は、前記第一補強材と前後に重なる部位にまで配されていることを特徴とする請求項6記載の引戸式の防火戸である。
請求項9の発明は、前記第一補強材は、前記配設スペースの上部の少なくとも一部を覆う上面部を有することを特徴とする請求項1~8のいずれか1記載の引戸式の防火戸である。
請求項10の発明は、前記戸体は自動式吊戸であり、前記配設スペース内には、前記戸体を自動制御によりスライド移動させるための駆動部が配されており、前記第一補強材の上面部は、前記駆動部の上部の少なくとも一部を覆うことを特徴とする請求項9記載の引戸式の防火戸である。
請求項11の発明は、前記第一補強材は、上端部がケース体の上面部に固定されていることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1記載の引戸式の防火戸である。
請求項12の発明は、前記ケース体の上面部は、欄間部を取り付け可能な凹部を備えており、前記凹部の底面を介して前記第一補強材の上面部がケース体に固定されていることを特徴とする請求項11に記載の引戸式の防火戸である。
請求項13の発明は、前記無目の後面部は、前記配設スペース内を視認可能とすべく開放可能なカバー部材によって構成されており、前記第一補強材とカバー部材とは、無目内部で固定部材によって連結固定されていることを特徴とする請求項1~12のいずれか1記載の引戸式の防火戸である。
請求項14の発明は、前記第一補強材は、前記ケース体の素材よりも熱伝導率が低い素材からなることを特徴とする請求項1~13のいずれか1記載の引戸式の防火戸である。
請求項15の発明は、前記ケース体はアルミニウム材からなり、前記第一補強材は鋼材からなることを特徴とする請求項1~14のいずれか1記載の引戸式の防火戸である。
請求項16の発明は、前記第一補強材は、ケース体の左右方向に長い一枚板状の長尺材により形成されていることを特徴とする請求項1~15のいずれか1記載の引戸式の防火戸である。
請求項17の発明は、前記第一補強材は、左右方向に間隙を存して設けられる左右幅のある複数枚の板材により形成されていることを特徴とする請求項1~14のいずれか1記載の引戸式の防火戸である。
請求項18の発明は、前記ケース体の下端部には、開放した戸体と前後に重なり合うべく配される板材の上端部を支持するための支持部が形成され、該支持部は、前記第一補強材の下端部に固定されていることを特徴とする請求項1~17のいずれか1記載の引戸式の防火戸である。
請求項19の発明は、前記第一補強材には、ケース体前面部に対向する前面部の下端部からケース体後面部側に延出していてケース体支持部の上面部を覆う延出部が形成され、レール部は、第一補強材の前面部と延出部とに当接するべくL字形に形成されていることを特徴とする請求項18記載の引戸式の防火戸である。
請求項20の発明は、延出部には、ケース体支持部の後面部を覆うため延出後端部を備えた逆L字形に形成されていることを特徴とする請求項19記載の引戸式の防火戸である。
請求項21の発明は、ケース体前後面部の下端部間の隙間は、火災時の熱を受けて膨張する熱膨張耐火材により左右方向全幅に亘って塞がれるものであることを特徴とする請求項1乃至20のいずれか1記載の引戸式の防火戸である。
請求項22の発明は、熱膨張耐火材は、ケース体後面部に設けられた第二補強材の下端部と、第一補強材の延出後端部とに設けられていることを特徴とする請求項20を引用する請求項21記載の引戸式の防火戸である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1、2の発明とすることにより、仮にケース体の前面が火炎にさらされて溶融した場合であっても、第一補強材によって配設スペース内が直接火炎に晒されることを抑止できるとともに、レール部の変形や変位を抑止し、防火戸の防火性能を維持することができる。さらに、ケース体と第一補強材とのあいだに間隙が生じるため、断熱性が向上する。
請求項3の発明とすることにより、ケース体の前面が火炎にさらされて溶融してしまった場合であっても、耐火材によって直ちに第一補強材が火炎にさらされることがないため、耐火性が向上する。
請求項4、5の発明とすることにより、ケース体への第一補強材及びレール部への取り付けが容易になり作業性に優れるとともに、ケース体の熱膨張による影響を抑制することができる。
請求項6~8の発明とすることにより、戸体の上端部近傍の耐火性を向上することができる。
請求項9、10の発明とすることにより、配設スペース内を上部からも保護することができる。
請求項11の発明とすることにより、第一補強材のケース体側への取付け固定が、火災の熱によっての損傷を受けづらいケース体上面部でなされることになって、火災発生時に第一補強部材が脱落してしまうようなことを防止できることになる。
請求項12の発明とすることにより、第一補強材の上面部の固定部と欄間の固定部とを凹部で共通可しつつ、欄間部の有無によらず共通のケース体を採用することができるため、構造を簡易としつつ、汎用性が高いものとすることができる。
請求項13の発明とすることにより、カバー部材の固定と、第一補強材の固定を安定したものとすることができる。
請求項14の発明とすることに、配設スペースへの熱伝導率が低くなり、無目の耐熱性が向上する。
請求項15の発明とすることにより、無目の意匠性を向上させつつ、耐火性を向上することができる。
請求項16、17の発明とすることにより、レール部は、左右に幅がある状態で第一補強材を介してケース体に取付けられることになるため、レール部のケース体側への強固な固定ができることになる。
請求項18の発明とすることにより、戸袋部の鏡板としての機能を有する板材の上端部の支持が、ケース体に設けた支持部によってできることになって構造の簡略化が図れることになる。
請求項19の発明とすることにより、レール部は、L字形になっていて、第一補強部材の本体部と、鏡板となる板材を支持するための支持部の上面部を覆うべく第一補強材本体部から延出された延出部とに当接する腰掛状態になっているため、火災時の熱を受けて支持部が脱落したとしてもレール部の第一補強材による保持が図られることになって戸体の早期の脱落を防止できて耐熱性の向上を図ることができる。
請求項20の発明とすることにより、第一補強材に形成される延出部には、ケース体支持部の後面部を覆う延出後面部が設けられることになって、支持部の保護と共に、レール部の更なる保護を図ることができる。
請求項21の発明とすることにより、ケース体前後面部の下端部間の隙間が、火災発生時の熱を受けて膨張する熱膨張耐火材により、閉鎖した戸体のある部分だけでなく、戸体のない部分についても含めて左右方向略全幅に亘って塞がれることになるため、防火性、耐火性が向上する。
請求項22の発明とすることにより、熱膨張耐火材は、第一、第二補強材に設けられているため、火災時にケース体の下端部が熱を受けて脱落したとしても、塞ぎ機能を継続して発揮できることになって、防火性、耐火性が一段と向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態に係る防火戸の正面図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】第一実施形態に係る防火戸の内部構造を表す縦断面図である。
図4】(A)ケース体、(B)第一補強材の右側面図である。
図5】第一実施形態に係る防火戸の内部構造を表す要部の拡大縦断面図である。
図6】(A)受け部形状の変更例、(B)耐火パネルを配した変形例の要部断面図である。
図7】(A)(B)いずれも第一補強材及び第二補強材と框補強材との重なり方の変更例の要部断面図である。
図8】第二実施形態に係る防火戸の正面図である。
図9図7のB-B断面図である。
図10】第二実施形態に係る防火戸の内部構造を表す縦断面図である。
図11】(A)(B)は両開き式戸体において、第一補強材を左右全幅に亘って設けた第一の実施の形態のもの、左右に間隔を存して複数設けた第三の実施の形態のものの概略正面図を示し、(C)(D)は片開き式戸体において、第一補強材を左右全幅に亘って設けた第一の実施の形態のもの、左右に間隔を存して複数設けた第三の実施の形態のものの概略正面図をしめすものである。
図12】第四の実施の形態の防火戸の内部構造を表す要部の拡大縦断面図である。
図13】(A)(B)は、第四の実施の形態において戸体がある部位、無い部位において熱膨張耐火材が傍聴した状態を示す要部断面図である。
図14】第五の実施の形態の防火戸の内部構造を表す要部の拡大縦断面図である。
図15】第六の実施の形態の防火戸の内部構造を表す要部の拡大縦断面図である。
図16】(A)(B)(C)は熱膨張耐火材の取付け構造を示す要部断面図である。
図17】(A)(B)は熱膨張耐火材の他の取付け構造を示す要部断面図、要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の第一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。1は、引戸式の防火戸であって、躯体の開口部に設けられている。防火戸1は、左右方向(見付け方向)にスライド移動して開口部を開閉可能な左右一対の引き分け式の戸体2と、開口部の開放時に各戸体2と前後(見込方向)に重なり合う戸袋としての機能を有する左右一対のFIX部3と、各戸体2及びFIX部3の上端部に左右方向全域にわたって設けられた無目(無目4自体で防火戸1の「上枠」を構成する場合もあるが、本実施の形態では、後述する上枠材19と一体になって防火戸1の「上枠」を構成している。)4と、を備えている。また、防火戸1は自動ドア式のものであり、無目4の内部の配設スペースSに駆動部5と、左右方向に長尺なレール部6とが配されている。戸体2は、上端部に取り付けられたドアハンガー7を介してレール部6に吊り下げられていて、駆動部5の駆動に基づいて左右方向にスライド移動することで開口部を開閉するよう制御されている。なお、躯体の外部側を前方、内部側を後方として説明するが、便宜上のものであってこれに限定されるものではない。
尚、本実施の形態においては、FIX部3が形成される側を前側、FIX部3のない側を後側として定義しているが、これは、FIX部3が設けられる側が一般的に正面(屋外)側であることによる便宜上のものであって、例えばFIX部が前後両側に設けられたものであっても実施でき、本実施の形態のものに限定されないものであることは勿論である。
【0010】
戸体2は、自動式吊戸であって、パネル体である耐熱ガラス2aの四周をアルミニウム材からなる框2bにより囲繞されて構成されている。四周の框2bは、それぞれ上框8、戸先側框9、戸尻側框10、下框11からなる。上框8にはハンガーローラ7aを有するドアハンガー7が上端部に取り付けらており、ハンガーローラ7aが左右方向に滑動可能にレール部6のレール6bに支持されることで、戸体2が左右方向にスライド移動可能に吊り下げられている。
【0011】
一対の戸体2は、戸先側框9の端部同士が突き合わされることで開口部を閉鎖することとなる。いずれか一方(本実施形態では右側)の戸体2の戸先側框9の戸先端部には上下方向にわたって凹状開口部9aが設けられている一方、他方(左側)の戸体2の戸先側框9の戸先端部には戸先アダプター9bが取り付けられている。戸先アダプター9bは、先端部9cが先細の台形状になっており、取り付けられた戸先側框9の戸先先端から突出している。そして、戸体2の閉鎖時に戸先アダプター9bの先端部が他方の戸体2の戸先側框9の凹状開口部9aに入り込むことで、戸体2同士の突き合わせ部分に間隙が生じないように構成されている。
【0012】
戸体2の下框11には、下方に突出した振れ止め2dが設けられている。振れ止め2dは、戸体2の下方に左右方向長尺に設けられたガイドレールGの凹溝内に左右方向にスライド移動自在に挿入されて、前後方向の移動が規制される。これによって、上部で吊り下げられた戸体2が駆動部5の駆動に基づいて左右にスライド移動するに際して、戸体2の下部が前後方向に振れてしまうことを抑止するようになっている。
【0013】
上框8は、後述するように、上端部8aが無目4の下部開口4aから無目4内部に入り込むよう組み付けられている。そして、上框8、戸先側框9及び戸尻側框10には、その内部に軟鋼からなる断面略コ字状の框補強材2cが各見付け面に沿って配設されている。框補強材2cは戸体補強材に相当し、アルミニウム材からなる框2bよりも融点が高く、熱伝導率が低い材料である軟鋼からなるため、框補強材2cを配することで防火戸1の耐火性が向上することとなる。なお、框補強材2cを下框11にも同様に配設してもよい。ここで、上框8の框補強材2cは、後述するように、無目4内に配設された第一補強材20の延出部20cが上框8と前後に重なり合う部分には設けられていない。
【0014】
FIX部3は、耐熱ガラス(本発明の「板材」に相当する。)3aが、上端部を無目4に、下端部を幅木12に、左右方向中央側端部を中間方立13に、他端部を開口部の左右端部に設けられた縦枠14に、それぞれ挿入・シーリング固定されて四周を囲繞された構成となっている。戸体2とFIX部3とは、前後に位置ずれして配されており、FIX部3が前側(躯体の外部側)に位置するよう構成されている。これによって、戸体2が左右にスライド移動するに際し、開口部の開放時には、戸体2と耐熱ガラス3aとが前後に重なり合うようになっており、これによって開放した戸体2は、FIX部3が戸袋となり、耐熱ガラス3aが該戸袋の鏡板となってFIX部3に収容される構成になっている。
【0015】
躯体の開口部の左右両端部に対向して設けられた一対の縦枠14は、各部材を挿入して取り付けるための上下方向に長尺な凹溝状の挿入部として、前側から順に第一挿入部14a、第二挿入部14b及び第三挿入部14cを備えている。本実施形態では、第一挿入部14aにはFIX部3の耐熱ガラス3aの左右外端部が挿入されシーリングされている一方、第二挿入部14b及び第三挿入部14cはそれぞれ第二カバー部材14d、第三カバー部材14eによって覆蓋されている。第二挿入部14bは、後述する第二実施形態において採用される欄間部の耐熱ガラス等を挿入固定するために用いることができる。また、第三挿入部14cは、片開き式の開き戸とした場合に、戸体の戸先端部分(本実施形態の戸先アダプター9b)を挿入可能とすることができるものである。このような構造の縦枠14は、種々の構造において採用することができるため、汎用性が高い。
【0016】
戸尻側框10と中間方立13とは、戸体2が閉鎖位置にあるときに前後に重なり合うように設計されている。戸尻側框10には、その戸尻端部からFIX部3側(外部側)に向けて鉤状に延出した煙返し部10aが設けられている一方、中間方立13にも戸尻側框10側(内部側)に向けて鉤状に延出した煙返し部13aが設けられている。そして、戸体2が閉鎖位置にあるときに、これら煙返し部10a、13a同士が相じゃくり構造をとることにより、火災時に戸体2とFIX部3とのあいだから火炎や煙が通過しないように配慮されている。
【0017】
無目4は、外周部としてアルミニウム材からなるケース体15を備えている。ケース体15は、内部に駆動部5やレール部6を配設するための配設スペースSを有する。また、ケース体15は、無目4の前面部を構成する本体部材16と、本体部材16の前方上端部に取り付けられることで、本体部材16と共に無目4の上面部を構成する押縁部材17と、無目4の後面部を形成し、配設スペースS内を点検可能とすべく開閉可能に構成されたカバー部材18と、から構成されている。また、ケース体15の上端部は、開口部の上端部に設けられた上枠材19に固定されている。
【0018】
本体部材16の上端部には、前方が低く後方が高くなった段差形状となっている。そして、L字形の段差形状を形成する段差部16aよりも前方に冂字状の押縁部材17が取り付けられることで、前記無目4の上面部が構成されると共に、ケース体15の上端中央部に位置する状態で凹部15aが形成されている。そして前記段差部16aは、下片16gが後述する第一補強材20の上面部20aをネジ20fを介してネジ止めするネジ受け部になっているとともに、後述する第二実施形態のように欄間部を設ける場合に、欄間部の耐熱ガラスの下端部を挿入して固定するための部位としても用いることができる。なお、上枠材19にも、上方に凹んだ凹部19bが、ケース体15の凹部15aと前後方向同位置に設けられていて、同じく欄間部を設ける場合に耐熱ガラスの上端部を挿入して固定することができるようになっている。すなわち、このような構成とすることで、欄間部の有無にかかわらず同形状の部材を採用することができるため、汎用性が高い。
【0019】
本体部材16は、無目4の前面を形成する前面部16bを有している。そして、本体部材16の内部には、前面部16bから後方に離間することで前面部16bとのあいだで間隙を存した受け部16cが形成されている。受け部16cは、本体部材16の上面から後述する支持部16eの上端部に至るまで、本体部材16の左右方向全域に渡って設けられており、後述する第一補強材20をあいだに挟む積層状態でレール部6の前面部6aをネジ6cを介して受け部16cに一体にネジ止めする際のネジ受け部としての機能を果たすものである。また、このような受け部16cの構成とすることにより、前面部16bと受け部16cとのあいだに中空部16dが形成されるため、空気の断熱効果によって無目4内の断熱性が向上する。さらに、第一補強材20を本体部材16にネジ止めするにあたり、ネジ6cが前面部6aによって隠れて外部に露出しないため、外観性を損なうことがない。
【0020】
また、受け部16cは、本実施の形態では本体部材16の左右方向の幅全域にわたって設けられているため、第一補強材20及びレール部6を任意の位置でネジ止めすることができ、組み付け性に優れる。しかも、第一補強材20によってケース体15の熱膨張による変形の影響が抑制されることとなり、耐火性にも優れたものとなる。他方、ネジ止め位置が予め決められている場合には、必ずしも受け部16cを全域に設ける必要はなく、図6(A)で表される変形例のように、所定のネジ止め位置にのみ受け部16cを設けたものとしてもよい。
【0021】
本体部材16の下端部には、外部側にFIX部3の耐熱ガラス3aの上端部を挿入して固設するために下方が開口した凹溝状になっていて、前述したFIX部3に設けられる耐熱ガラス3aの上端部を支持するための支持部16eが設けられている。一方、本体部材16の下端部は、無目4の前後方向中央近傍で途切れており、後方側に対向する無目4の後面部を形成するカバー部材18とのあいだの間隙となる下部開口4aが形成されている。そしてこの下部開口4aに戸体2の上框8の上端部8aが入り込むことで、該戸体2の上端部が無目4とは前後に間隙を存する状態で重なり合うようになっている。
【0022】
本体部材16内の前面部16b側には、鋼材からなる第一補強材20が左右方向全幅に亘って配設されている。第一補強材20は、上面部20aと、上面部20aの外側端部から下方に折曲した前面部20b(見付け面部)と、前面部20bの下端から後方に延出した延出部20cと、該延出部20cの後端から下方に向けて折曲した延出後端部20dと、からなる。これによって第一補強材20は、後方に開口した凹形状となっており、この開口側が無目4の配設スペースSとなっている。すなわち、第一補強材20の前面部20bによって、配設スペースSの前面が形成されるようになっている。
【0023】
第一補強材20は、アルミニウム材からなるケース体15よりも融点が高く、熱伝導率が低い材料である鋼材からなる。第一補強材20の融点が高いことにより、仮に防火戸1が火炎にさらされた際に、火災時の熱を受けやすいケース体15の前面部16bや支持部16eが溶融してしまった場合であっても、配設スペースSの前面を構成する第一補強材20が直ちに溶融してしまうことがないため、配設スペースSが直接火炎にさらされることを抑止することができる。また、熱伝導率が低いことにより、火災時における配設スペースS内の温度上昇を抑制することができる。
【0024】
第一補強材20の上面部20aは、本体部材段差部16aの横方向に延びる取付け部16fに沿うよう後方に向けて折曲されていて、先端が無目4の上端側内部の前後方向中間部位置にまで至っているが、さらに上面部20aの後端から上方に向けて起立片部20eが折曲形成されることで、第一補強材20は、本体部材段差部16aの縦片部16hに後方側で対向する状態で無目4の上端近傍に至っている。これによって、配設スペースSに配設された駆動部5やレール部6の上部が第一補強材20によって覆われており、耐火性が向上する。また、上面部20aの先端が無目4内部の上端近傍に至っていることにより、無目4上端近傍まで保護することができるようになっている。
【0025】
第一補強材20の前面部20bは、本体部材16の受け部16cに全域に亘って当接し、前述したようにレール部6の前面部6aと合わせてネジ6cを介して一体にネジ止めされるようになっている。前面部20bが本体部材16の前面部16bから後方に離間した受け部16cに取り付けられることにより、ケース体15に対して安定して第一補強材20及びレール部6を固定可能としつつ、直接本体部材16の前面部16bに取り付けられた場合よりも中空部16dの存在によって断熱性が向上する。
【0026】
第一補強材20の延出部20cと延出後端部20dとは、本体部材16の支持部16eの上面及び後面に当接するよう折曲されている。そして延出後端部20dの先端(下端)は、無目4内部の下端側内部の前後方向中間位置にまで至るよう構成されている。これによって、無目4下端近傍まで第一補強材20によって保護されたものとすることができる。なお、本実施形態では第一補強材20の上下端はいずれも無目4内部の上下端近傍に至るように設けられているが、本実施の形態では組付性を考慮して完全に上下端に完全に至るようには設けられていないが、耐火性を一層考慮して、第一補強材20を無目4内部の上下端に至るようにしてもよい。そして、第一補強材20の延出部20cが無目4内部の下端近傍に至るように構成されていることにより、無目4の下部開口4aから入り込んだ戸体2の上框8の上端部8aと第一補強材20とが前後に重なり合うこととなって、戸体2上端部の耐火性が向上することとなる。また、これによって上框8の上端部8aの内部に框補強材2cを配することなく、耐火性を向上させることが可能となっている。
【0027】
カバー部材18には、前面(配設スペースS側の面)側に、第一補強材20と同様の鋼材からなる第二補強材21が全域に渡って一体に設けられている。そして、カバー部材18及び第二補強材21は、上端部が本体部材16上部の後面側端部に設けられた取付け部16fにネジ21aを介して一体にネジ止め固定されている。
一方、カバー部材18及び第二補強材21の下端部と第一補強材20の延出後端部20dとのあいだは、図1に示すように左右方向中央部位において、固定部材22が架橋される状態でネジ22aを介して一体にネジ止め固定されている。そして、配設スペースS内の点検時には、これらのネジ止めを解除し、カバー部材18の上端部に設けられた鉤部18aが取付け部16fに軸支されることで、カバー部材18が後方に回動可能となって、無目4の後方を開放可能に構成されている。この状態で点検等をしてもよいが、カバー部材18を略水平位置まで回動させることで、カバー部材18の本体部材16からの取り外しが可能となっており、完全に取り外して作業をすることもできるようになっている。なお、カバー部材18は回動可能とせずに、単にネジ止めを外すことで着脱可能とした構成としてもよい。
【0028】
固定部材22は、一端が下方、他端が上方に折曲して第一折曲面22a、第二折曲面22bが形成された、金属材からなる部材であり、無目4内部の左右方向中央部に取り付けられている。固定部材22の第一折曲面22aは、第一補強材20の延出部20cに当接して、延出部20c及びこれに当接する本体部材16の支持部16eの後面と一体にネジ止めされている。他方、固定部材22の第二折曲面22bは、第二補強材21の下端部と当接し、後面側から、カバー部材18の下端部と一体にネジ止めされている。このように固定部材22で架橋してカバー部材18を固定することにより、カバー部材18をグラつきなく安定して固定できるとともに、第一補強材20の延出部20cも安定して固定することができ、火災時に無目4の前後面が配設スペースS側に変形することを抑止することができる。なお、固定部材22は、左右方向中央位置において、戸体2の突き合わせ部の上方に配されるため、戸体2のスライド移動に際してドアハンガー7等と当接する等の問題は生じないよう配慮されている。
【0029】
配設スペースSには、戸体2のスライド移動を制御するための駆動部5とレール部6が配設されている。駆動部5は、図示しない検知センサにより防火戸1への人等の近接を感知することにより、戸体2を開方向に移動させるよう制御されている。本実施形態における駆動部5は、電動モータの動力を伝達されたチェーンを変位させることで、チェーンに連結されたドアハンガー7を介して戸体2をスライド移動させるよう構成された一般的なものとしているが、これに限られず、適宜のものとすることができる。
【0030】
レール部6は、側面視で略L字形状をした左右方向に長尺な部材であり、各戸体2の上方にそれぞれ配されている。上方に延出したレール部6の前面部6aは、第一補強材20の前面部20bと当接して、第一補強材20の前面部20b及び本体部材16の受け部16cとビス6cを介して一体にネジ止め固定されている。また、レール部6の下面部6dは、第一補強材20の延出部20cに上側から当接しているが、該下面部6dの後端部には、ドアハンガー7のハンガーローラ7aが滑動するためのレール6bが設けられている。このようにレール部6が第一補強材20に固定されることによって、火災時に仮にケース体15が溶融してしまうような場合に、レール部6が即座に変形や変位してしまい、戸体2が変位して防火性能を発揮できなくなるという事態を抑止することができる。そして、駆動部5やレール部といった配設スペースS内の部材は、第一補強材20の上下端の範囲内となるよう配されている。
【0031】
本実施形態の第二の変形例として、図6(B)に表されるように、無目4内に形成された中空部16dに耐火材として耐火パネル(耐火材)30を配したものとしてもよい。耐火パネル30は、ケイ酸カルシウムを素材とした耐火材であって、ケース体15の前面である本体部材16の前面部16bと第一補強材20の前面部20bとによって形成された中空部16d内の全域にわたって配されている。
【0032】
このように耐火パネル30を中空部16dに配することにより、ケース体15の前面が溶融してしまった場合であっても、第一補強材20及び配設スペース内が直接火炎にさらされてしまうことを防ぐことができるため、耐火性を向上することができる。なお、耐火パネル30は1つのパネルとしてもよいし、複数のパネルを並置したものとしてもよい。また、耐火パネル30は中空部16dの全域に配することが好ましいが、必ずしもこれに限られない。
【0033】
第一実施形態では、上述した通り第一補強材20及び第二補強材21の下端部は、いずれも上框8内に配された框補強材2cと前後で重なりあわない配置としているが、例えば図7(A)、(B)に表される変形例のように、框補強材2cと第一補強材20及び/または第二補強材を前後で重ねることにより、より耐火性を向上させたものとすることもできる。図7(A)の変形例では、第一補強材20(具体的には延出後端部20d)及び第二補強材21の下端部がいずれも、框補強材2cの上端部と重なり合っている。また、図7(B)の変形例では、第二補強材21の下端部と框補強材2cとが重なり合っている一方で、第一補強材20と框補強材2cは重なり合っていない。しかしながら、第一補強材20の下端と框補強材2cの上端とがほぼ隙間なく配されているため、全体として戸体2上端部の耐火性が向上したものとなっている。
【0034】
続いて、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態に係る防火戸51は、図8図10に表されるように、第一実施形態に係る防火戸1に欄間部52を加えたものである。欄間部52に関するもの以外の構造は、第一実施形態と同様であるため説明は省略し、符号も第一実施形態と同じものを用いる。
【0035】
欄間部52は、無目4の上方に位置して、四周を上枠材19、無目4、左右の縦枠14に囲繞されている。そして、欄間部52は、間に位置する2つの中間方立53によって3つの部分にそれぞれ区切られており、各部分に耐熱ガラス(欄間板、板材)54がそれぞれ挿入されてシーリングされている。なお、欄間部には中間方立53を配さず、一枚の耐熱ガラス54を配したものとしてもよいし、中間方立53の数を増減して二分割、四分割等にしてもよい。また、欄間部52に嵌め込まれるのは耐熱ガラスに限られず、種々のパネル等とすることもできるが、耐火性を考慮したものとすることが好ましい。
【0036】
耐熱ガラス54は、上端部が上枠材19の凹部19bに、下端部がケース体15の凹部15aに挿入されてシーリングされている。また、中間方立53側の端部は、縦枠14の第二挿入部14bと前後方向同位置に設けられた、中間方立53の凹部53aに挿入されてシーリングされている。
【0037】
縦枠14の第二挿入部14bは、無目4の下部では第一実施形態同様に第二カバー部材14dによって覆蓋されている一方で、無目4の上部の欄間部52の位置では欄間部52の耐熱ガラス54の左右外端部が挿入されてシーリングされている。他方、縦枠14の第一挿入部14aは、無目4上部の欄間部52の位置では第一カバー部材14fによって覆蓋されている。
【0038】
かかる構成とすることにより、欄間部52を有する防火戸51とするに際して、第一補強材20をネジ止めするスペースである凹部15aを、欄間部52の耐熱ガラス54の下端部の挿入固定部位としても用いることができるため、無目4の部材を欄間部52の有無で共通のものとすることができるため、汎用性が高い。
【0039】
叙述の如く構成された本発明の各実施形態によれば、ケース体15は鋼材よりも融点が低い金属材であるアルミニウム材からなり、無目4の前面を構成する本体部材16の前面部16bから後方に離間した位置に第一補強材20が配されていて、第一補強材20は左右方向に長尺な見付け面部である前面部20bを有することでレール部6が配される無目内の配設スペースSの前面を形成し、レール部6が第一補強材20を介してケース体15の受け部16cに取り付けられている。これによって、鋼材より融点が低い金属材をケース体15の素材とした場合において、火災により仮にケース体15の前面が溶融してしまったようなときであっても、配設スペース内が直ちに直接火炎にさらされることを防ぐことができ、レール部6の変形や変位を抑制することとなるため、防火戸1の防火性能を維持することができる。
【0040】
そして、第一補強材20は、ケース体15の素材であるアルミニウム材よりも融点が高い素材である鋼材からなるため、無目4の耐火性をより向上させることができる。また、第一補強材20の素材である鋼材は、ケース体15の素材であるアルミニウム材よりも熱伝導率が低いため、配設スペース内の温度上昇を抑制することができる。
【0041】
また、第一補強材20は本体部材16の前面部16bから離間していることによりケース体15の前面と第一補強材20のあいだに中空部16dを形成することができ、空気の断熱効果によって耐火性が向上する。そして、この中空部16dに耐火材として耐火パネル30を配することによっても、耐火性を向上させることができる。
【0042】
そして、第一補強材20は、ケース体15の前面である本体部材16の前面部16bから後方に延出した受け部16cを介してケース体15に取り付けられているため、中空部16dを形成するに際して組み付け性に優れたものとすることができる。しかも、受け部16cはケース体15の前面全域にわたって設けられているため、第一補強材20の固定を任意の位置ですることができて組み付け性に優れるとともに、ケース体15の熱膨張による影響も抑制することができて耐火性にも優れる。
【0043】
戸体2の上框8は、その上端部8aが無目4の内部に入り込んでおり、その一部が第一補強材20の延出部20cと前後で重なっているため、第一補強材20によって戸体2の上端部を保護することができる。しかも、上框8には、戸体補強材に相当する框補強材2cが内部に配されているが、第一補強材20とは前後で重なり合わないように配されているため、補強材を重複させることなく、無目4及び戸体2の耐火性を向上させることができる。
【0044】
第一補強材20は、配設スペースSの上部の一部を覆う上面部20aを有しているため、配設スペースS内の耐火性が向上する。しかも、配設ペース内には駆動部5が配されており、駆動部5の上部の一部も第一補強材20の上面部20aによって覆われているため、火災時に駆動部5を保護することができる。
【0045】
ケース体15は、欄間部52を取り付け可能な凹部15aを上端部に備えており、凹部15aの底面を介して第一補強材20の上面部20aがケース体15に固定されているため、第一補強材20の受け部と欄間部52の取付け部を共通のものとしつつ、欄間部の有無によらず共通のケース体を採用することができるため、構造を簡易としつつ、汎用性が高いものとすることができる。
【0046】
無目4の後面部は配設スペース内を視認可能とすべく開放可能なカバー部材18によって構成されており、第一補強材20とカバー部材18とは、無目4の内部で固定部材22によって連結固定されているため、カバー部材18の固定と、第一補強材20の固定とを安定させることができる。
【0047】
さらにこのものでは、第一補強材20は、上端部20aがケース体15の上面部に固定されている、具体的には、第一補強材上面部20aが、ケース体15の上端部に凹部15aを形成するため本体部材16に形成される段差部16aの取付け部16gにビス固定されているが、無目4の上端部位は、躯体側(天井側)に近いこともあって下端側部位に比して火災時の熱が低く、アルミニウム製であっても融解して脱落することは少ないことが知られており、このため本体部材段差部16aも火災時において残存する可能性が高いことになる。そして、この本体部材段差部16aの取付け部16gに第一補強材20の上面部20aがビス固定されているため、該第一補強材20が火災時に脱落してしまうことが抑止されることになって、戸体2の吊持をより確実なものにしている。
【0048】
そのうえこのものでは、第一補強材20が一枚板状の長尺材によって無目4の上下左右方向の殆ど全域に亘って設けられたものになっているため、無目4部位における耐火性、防火性の向上が図れ、特に無目4に形成される配設スペースS内においてのレール部6の保護が図れることになって、火災時、レール部6が脱落する等の損壊を受けて戸体2が早期のうちに脱落してしまうことを防止できることになる。
【0049】
しかもこの場合に、レール部6は、前面部6aが第一補強材20の前面部20bに当接し、下面部6dが第一補強材20の延出部20cに当接した腰掛状態になった状態で第一補強材20にビス固定により一体化されているため、本体部材16の下半部が火災による熱で脱落したとしても、レール部6の第一補強材20による支持がなされることになって、耐火性、防火性のさらなる向上が図れることになる。
【0050】
またこのものは、FIX部3に設けられる耐熱ガラス3aの上端部を支持するための支持部16eが本体部材16の下端部に形成されているが、該支持部16eの上面及び後面には、第一補強材20の延出部20cと延出後端部20dとが当接し、そして延出後端部20dと支持部16eの後面とがビス22aにより固定されているため、支持部16eの第一補強材20による支持が強固になって、火災発生時において支持部16eの脱落を抑止でき、この結果、耐熱ガラス3eの早期の脱落を防止できることになって耐熱、防火性の向上に寄与できることになる。
【0051】
上記各実施形態においては、いずれも戸体を左右一対の引き分け式のものとしているが、例えば戸体が一つのみの片開き式のものとしてもよい。また、本発明は、駆動部を有さない、手動開閉式の防火戸にも採用することができる。
【0052】
尚、本発明は前記実施の形態のものに限定されないことは勿論であって、例えば第一補強材20については、前記実施の形態のものは図11(A)(C)に示すように、両開き式、片開き式のものにおいて、無目4の略全領域(左右全幅)に亘って設けた幅広のものを採用しているが、図11(B)(D)に示す第三の実施の形態のように、第一補強材20を、左右方向幅を存する板状のものを左右方向に間隙を存して複数枚配したものであっても実施することができる。
また図12、13に示す第四の実施の形態のように、ケース体15の前後面部の下端部間の隙間が、火災時の熱を受けて膨張する熱膨張耐火材(例えば積水化学工業株式会社製の熱膨張耐火材「フィブロック(登録商標)」)60により左右方向全幅に亘って塞がれる構成、具体的には、熱膨張耐火材60を、ケース体15の後面部に設けられた第二補強材21の下端部と、第一補強材20の延出後端部20dとを左右方向全幅に亘って設けて、火災発生時の熱を受けて、閉鎖した戸体2がある部位については戸体2と、これら第二補強材21の下端部とのあいだ、第一補強材20の延出後端部20dとのあいだを塞ぎ、戸体2がないFIX3部位においては、第二補強材21の下端部と第一補強材20の延出後端部20dとのあいだを塞ぐようにしてもよく、このようにすることで、耐火性、防火性のさらなる向上を図ることができる。
【0053】
またケース体15を構成するための本体部材16としては、図14に示す第5の実施の形態のように、受け部16cがないもの、さらに受け部16cがないものにおいて、図15に示す第六の実施の形態のように、前面部16bの後面に冷却用のフィン16iを設けたものとしても実施することができる。
【0054】
さらにまた、前記第四の実施の形態のものでは、熱膨張耐火材60を両面粘着テープや接着剤等の化学的(物理的)な取付け手段を用いて戸体2に取付けた構成になっており、そして火災発生を受けてこのような取付け手段が燃焼する等して取付け力が喪失したときに、熱膨張耐火材60が熱膨張して相手側部材に当接したときの当接力(反発力)によって膨張した熱膨張耐火材60が脱落しないよう配慮されているが、斯かる熱膨張耐火材60の取付けについて、図16に示すように機械的な取付けをすることで、前記当接力が弱い場合であっても、熱膨張耐火材60の脱落防止を図ることができる。具体的には、熱膨張耐火材60を、左右方向に幅広な当て部材61と共にビス61aを介して第二補強材21側に固定するようにしたもの(図16(A)参照。)、ビス31aを介して第二補強材21側に固定された当て部材16により熱膨張耐火材60を挟持するようにしたもの(図16(B)参照。)となっている。尚、第一補強材20側についても同様に構成することができる。
そして前記第四の形態のものは、前記第一の実施の形態のものと同様、第二補強材21の下端部を、カバー部材18の下端部に形成した係止部18bに嵌入係止した構成になっており、該係止部18bに係止した第二補強部材21に熱膨張耐火材60が取付けられたものとなっているが、図16(A)(B)に示す実施の形態のものは、係止部18bが熱膨張耐火材60の下端部までをも嵌入係止する構成になっており、これによって熱膨張耐火材60の下端部の係止をより確実なものになるよう構成しているが、図16(C)に示すものは、前記第四の実施の形態のように、第二補強材21の下端部を係止部18bで係止する構成にする一方で、熱膨張耐火材60については係止部18bよりも突出する状態で、ビス61bを介して固定される当て部材61で挟持する構成にしている。そしてこのものでは、常時は当て部材61が殆ど熱膨張耐火材60を覆蓋する構成にし、そして熱膨張耐火材60の膨張力を受けて当て部材61が変形するよう構成したものであり、このようにすることで平常時において熱膨張耐火材60を保護することができるが、このようにするためには、当て部材61としては膨張力を受けて変形する素材、例えば箔材で構成することが好ましい。
またこれらのものにおいては、熱膨張耐火材60を左右方向に幅広の当て部材61で支持するものとしたが、これに限定されず、例えば図17に示すさらに他の実施の形態のように、熱膨張耐火材60を、幅狭な三角板形状(このような形状としては、さらに細板状、棒状、針状等の形状が設定される。)の当て部材61を間隔を存して複数設けることで櫛歯状に支持する構成にしても実施できる。
さらに熱膨張耐火材60を設ける場合、前述した実施の形態では、無目4側に設けた構成にしているが、戸体2側に設けてもよく、この場合、無目4としては、閉鎖した戸体2がある部位については熱膨張耐火材60がないものとし、それ以外の部位については、前記実施の形態のように無目4側に熱膨張耐火材60を設けた構成にすることができる。
また、第一補強材20について、図11(B)(D)に示すように複数のものが間隔を存して設けられたものに熱膨張耐火材60を取付ける場合、第一補強材20がない部位については、ケース体15側に取付けることになるが、この場合、ケース体15が火災により脱落して封止が崩れた部位以外を除いて熱膨張耐火材60による防火機能が発揮されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、防火設備として設けられる引戸式の防火戸の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 防火戸
2 戸体
2c 框補強材(戸体補強材)
3 FIX部
4 無目
5 駆動部
6 レール部
7 ドアハンガー
8 上框
8a 上端部
15 ケース体
15a 凹部
16 本体部材
16b 前面部
16c 受け部
16d 中空部
18 カバー部材
20 第一補強材
20a 上面部
20b 前面部(見付け面部)
20c 延出部
21 第二補強材
22 固定部材
30 耐火パネル(耐火材)
S 配設スペース
図1
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