(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】プレキャストPC床版
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
E01D19/12
(21)【出願番号】P 2019193604
(22)【出願日】2019-10-24
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】緒方 辰男
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆行
(72)【発明者】
【氏名】高橋 謙一
(72)【発明者】
【氏名】正司 明夫
(72)【発明者】
【氏名】武本 大作
(72)【発明者】
【氏名】亀崎 誠志
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-015062(JP,A)
【文献】特開昭57-061146(JP,A)
【文献】特開平09-235827(JP,A)
【文献】実開昭60-008318(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
版状の床版部と、この床版部の縁に沿って形成された地覆部と、を備え、前記床版部に緊張材が緊張されてプレストレスが導入されたプレキャストPC床版であって、
前記床版部には、前記緊張材が前記地覆部にわたるまで貫通されて挿通され、
前記床版部と前記地覆部とが、打継目地なしに一体的に形成されているとともに、
前記緊張材の端部を封止する
ために用いる座掘り穴が前記地覆部の外側面に開口して形成され、
前記座掘り穴に充填材を充填して被覆することにより前記緊張材の端部を封止し、
前記座掘り穴は、
前記充填材が前記座掘り穴から剥離することを防止するため、外側に行くにしたがって開口面積が縮小する外窄み形状となっていること
を特徴とするプレキャストPC床版。
【請求項2】
前記地覆部の外側面には、前記座掘り穴に充填される充填材の剥落を防止する剥落防止シートが取り付けられていること
を特徴とする請求項1に記載のプレキャストPC床版。
【請求項3】
前記座掘り穴には、外側に行くにしたがって下がる排水勾配が形成されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載のプレキャストPC床版。
【請求項4】
前記座掘り穴の内部には、充填される充填材の剥落を防止する落下防止材が突設されていること
を特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のプレキャストPC床版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊張材を用いて予めプレストレスが導入されたプレキャストコンクリート製のプレキャストPC床版に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通行止めの期間を大幅に短縮できることから、橋梁の既存の床版を予め工場等で製造したプレキャスト鉄筋コンクリート製のプレキャスト床版に更新することが行われている。また、支承間隔やスパンを大きくとれることからPC鋼材や連続繊維補強材などの緊張材を用いて予めプレストレスが導入されたプレキャストPC床版も一般的となってきている。
【0003】
このようなプレキャスト床版であっても、搬送や打設の困難性を考慮して、壁高欄や地覆部は、現場打ちとするか、又はプレキャスト壁高欄などの別部材を搬送して現場で組み立てるかされている。
【0004】
特に、PC鋼材などの緊張材でプレストレスが導入されるプレキャストPC床版では、緊張材の端部処理などのため、地覆部は、プレキャストPC床版を現場に敷設した後、緊張材の端部を覆うようにして、型枠や鉄筋を組み立てて現場打ちでコンクリートが打設されて造築されている(本願の
図5参照)。
【0005】
例えば、特許文献1には、路盤を構成するプレキャスト床版の幅員方向端部上面に、前記路盤の長さ方向に延在させて地覆ブロックが設置されている路盤の端部構造が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、図面の
図1,
図2等参照)。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の路盤の端部構造やプレキャストPC床版の場合、地覆部だけ別途現場にて打設することとなり、二度手間となるばかりか、打ち継ぎ部分が水みちとなり内部補強鉄筋の腐食の原因ともなり、耐久性低下の原因となるという問題があった。それに加え、地覆部が打ち継ぎとなるため、車両衝突時の衝撃荷重に対する抵抗性が低下するという問題もあった。
【0007】
このような問題を解決するべく、特許文献2には、上下反転姿勢となるように型枠を組み立て、その状態の型枠内に版と地覆とを一体としてコンクリートを打設するプレキャストコンクリート床版の製造方法が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0026]~[0038]、図面の
図1,
図2等参照)。
【0008】
しかし、特許文献2に記載のプレキャストコンクリート床版の製造方法では、プレストレスを導入するPC鋼材などの緊張材の端部処理については特に明記されていなかった。このため、端部処理について配慮がなされないまま、特許文献2に記載のプレキャストコンクリート床版の製造方法を、プレキャストPC床版に適用した場合、緊張材端部が腐食して耐久性上問題となるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平8-13420号公報
【文献】特開2017-52160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、緊張材の端部処理が容易で緊張材の端部が構造上の欠点とならず、地覆部まで連続して一体的に形成されたプレキャストPC床版を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係るプレキャストPC床版は、版状の床版部と、この床版部の縁に沿って形成された地覆部と、を備え、前記床版部に緊張材が緊張されてプレストレスが導入されたプレキャストPC床版であって、前記床版部には、前記緊張材が前記地覆部にわたるまで貫通されて挿通され、前記床版部と前記地覆部とが、打継目地なしに一体的に形成されているとともに、前記緊張材の端部を封止するために用いる座掘り穴が前記地覆部の外側面に開口して形成され、前記座掘り穴に充填材を充填して被覆することにより前記緊張材の端部を封止し、前記座掘り穴は、前記充填材が前記座掘り穴から剥離することを防止するため、外側に行くにしたがって開口面積が縮小する外窄み形状となっていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係るプレキャストPC床版は、請求項1に係るプレキャストPC床版において、記地覆部の外側面には、前記座掘り穴に充填される充填材の剥落を防止する剥落防止シートが取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係るプレキャストPC床版は、請求項1又は2に係るプレキャストPC床版において、前記座掘り穴には、外側に行くにしたがって下がる排水勾配が形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に係るプレキャストPC床版は、請求項1ないし3のいずれかに係るプレキャストPC床版において、前記座掘り穴の内部には、充填される充填材の剥落を防止する落下防止材が突設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1~4に係る発明によれば、床版部と地覆部とが、打継目地なしに一体的に形成されているので、水みちが形成されず、緊張材の端部が構造上の欠点とならず、耐久性が向上する。また、請求項1~4に係る発明によれば、緊張材の端部を封止する座掘り穴が地覆部の外側面に開口して形成され、その座掘り穴は、外側に行くにしたがって開口面積が縮小する外窄み形状となっているので、緊張材の端部処理が容易で、しかも、座掘り穴の外窄み形状により後詰めの充填材が経年劣化して剥離・落下することを確実に防止することができる。
【0016】
特に、請求項2に係る発明によれば、剥落防止シートが取り付けられているので、さらに後詰めの充填材が経年劣化して剥離・落下することを完全に払拭することができる。
【0017】
特に、請求項3に係る発明によれば、外側に行くにしたがって下がる排水勾配が形成されているので、床版のコンクリートと後詰めの充填材が経年劣化により肌別れして両者の間に隙間が生じた場合でも、雨水などの降水が座掘り穴に溜まることがない。このため、さらに、プレキャストPC床版の耐久性が向上する。
【0018】
特に、請求項4に係る発明によれば、後詰めの充填材が経年劣化して剥離・落下することを防止することができるだけでなく、充填材が硬化した後、剥落防止シートを接着する作業が不要となる。また、請求項4に係る発明によれば、座掘り穴の上傾斜面や下傾斜面を伝って雨水等の降水が入り込むのを阻止することができ、PC鋼材などの緊張材が錆びることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るプレキャストPC床版を示す鉛直断面図である。
【
図2】
図1のA部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【
図3】同上のプレキャストPC床版の地覆部の座掘り穴を示す図であり、(a)が正面図、(b)が水平断面図、(c)が鉛直断面図である。
【
図4】同上のプレキャストPC床版の地覆部の座掘り穴に落下防止材を設けた変形例を示す図であり、
図3(c)に相当する鉛直断面図である。
【
図5】従来のプレキャストPC床版を示す鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るプレキャストPC床版の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1~
図3を用いて、本発明の実施形態に係るプレキャストPC床版について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るプレキャストPC床版1を示す鉛直断面図であり、
図2は、
図1のプレキャストPC床版1のA部を拡大して示す部分拡大図である。
【0022】
本実施形態に係るプレキャストPC床版1は、
図1に示すように、版状の床版部2と、この床版部2の縁に沿って(橋軸方向Xに沿って)形成された地覆部3と、を備え、複数(図示形態では3本)の鋼桁SG上に載置された鉄筋コンクリート製のプレキャスト床版である。ここで、プレキャストとは、予め工場やストックヤード等の橋梁が建造される現場以外の場所でコンクリートが打設されて養生・硬化して製造されたことを指している。
【0023】
このプレキャストPC床版1は、
図1に示すように、床版部2に緊張材であるPC鋼材4が橋軸直角方向Yの略全幅に亘って(地覆部3の外側面3a近傍まで)挿通されてプレストレスが付与されたプレキャストPC床版である。また、このプレキャストPC床版1は、型枠を貫通するPC鋼材4を予め所定の力で緊張しておき、この型枠にコンクリートを打設し、コンクリートが硬化して所定の強度が発現した後に緊張力を解放してプレストレスを与えるプレテンション方式のプレキャストPC床版である。
【0024】
それに加え、
図1,
図2に示すように、このプレキャストPC床版1は、床版部2と地覆部3とが1つの型枠で一度にコンクリートが打設されて、床版部2と地覆部3との間に打継目地無しに一体的に形成されている。このため、従来の打ち継ぎ目地のある地覆部(
図5参照)と相違して、床版部2と地覆部3との間に水みちが形成されることがなく、PC鋼材4の端部が位置する地覆部3が構造上の欠点とならない。
【0025】
(地覆部)
この地覆部3は、
図1等に示すように、床版部2の上面より一段と高くなった部分である。但し、地覆部3とは、壁高欄などの高欄の基礎となる高欄の下方部分を指すものであり、床版部2の上面と略同一レベルとなっていても構わない。しかし、地覆部3は、床版部2より一段と高くなっていた方が、床版から車両が逸脱するのを防止の観点からは、地覆部3が車止めとなるため好ましい。
【0026】
(座掘り穴)
また、地覆部3の外側面3aには、緊張材であるPC鋼材4の端部を切断後、充填材6で充填して被覆して封止するための座掘り穴34が形成されている。なお、地覆部3の外側面3aとは、橋梁の橋軸直角方向Yに沿って外側となる側面を指している。
【0027】
次に、
図3を用いて、この座掘り穴34についてさらに詳細に説明する。
図3は、プレキャストPC床版1の地覆部3の座掘り穴34を示す図であり、(a)が正面図、(b)が水平断面図、(c)が鉛直断面図である。
【0028】
図3(a)に示すように、座掘り穴34は、地覆部3の外側面に開口した、地覆部3の外側面を外側から内側に見た正面視で縦長な深さ40mmの矩形の穴であり、PC鋼材4にプレテンションを導入した後、切断して充填材を充填して封止するための後埋めの穴である。
【0029】
また、この座掘り穴34は、
図3(b)に示すように、内側面に左右一対のテーパー面34aが形成され、外側に行くにしたがって開口面積が縮小する外窄み形状となっている。このテーパー面34aの傾斜は、40mmの奥行D1に対して左右10mmずつ内側へ入り込んだ傾斜となっている。このため、座掘り穴34に充填された充填材が硬化すると、プレキャストPC床版1のコンクリートと後詰めの充填材6とが、熱膨張差などにより経年劣化して肌別れした場合でも、充填材が落下する事故を防止することができる。
【0030】
さらに、この座掘り穴34は、
図3(c)に示すように、内側の上面には、上傾斜面34bが形成され、内側の下面には、下傾斜面34cの下り傾斜となる排水勾配が形成されている。つまり、この上傾斜面34bは、40mmの奥行D1に対して外側に行くにしたがって10mm下がる下り勾配(排水勾配)となっているとともに、下傾斜面34cは、40mmの奥行D1に対して外側に行くにしたがって5mm下がる上傾斜面34bより緩い下り勾配(排水勾配)となっている。
【0031】
上傾斜面34bの勾配を下傾斜面34cの勾配より急勾配とした理由は、充填材とコンクリートとの境界面で雨水等の降水が侵入するおそれの高い上の境界面を急勾配とすることで、万が一境界面に水が浸入した場合でも重力で自然に排水できることを勘案したものである。但し、重力で排水できることには変わりないため、上傾斜面34bと下傾斜面34cの勾配を同一としたり、下傾斜面34cの勾配を急勾配としたり、することも可能である。
【0032】
この座掘り穴34には、プレキャストPC床版1のコンクリートの強度が発現した後、型枠から脱型してディスクサンダー等の切断手段でPC鋼材4を切断し、充填材6としてポリマーセメントモルタルを鏝塗りする。なお、鏝塗りとは、左官鏝等で押圧しながらポリマーセメントモルタル等の充填材6を隙間なく塗り込むことを指している。
【0033】
また、
図2に示すように、座掘り穴34の周りには、充填材6が充填されて硬化した後、地覆部3の外側面3aに、不織布や繊維シートなどからなる剥落防止シート7が接着されて取り付けられている。このため、剥落防止シート7により、後詰めの充填材6が欠け落ちることも防ぎ、充填材6が経年劣化して剥離・落下することを完全に払拭することができる。
【0034】
なお、前述のように、地覆部3の外側の被り厚さとなる座掘り穴34の奥行D1は、充填する充填材6の容量を極力少なくするために、40mmに設定した。これに対して、
図2に示すように、地覆部3の内側の被り厚さD2は、70mmに設定した。D2=70mmに設定した理由は、地覆部3の内側は、凍結防止剤(融雪剤)が散布されて塩化物イオンが侵入するおそれが高いと懸念されるからである。
【0035】
また、
図2に示すように、地覆部3の下面の雨返し部分となる突出部35の入り隅には、テーパー面35aが形成されている(
図5も参照)。これは、プレキャストPC床版1が、PC鋼材4でプレテンションが付与された際に、幅方向(橋軸直角方向Y)に縮んで突出部35の角が欠けないように対策したものである。
【0036】
[座掘り穴の変形例]
次に、
図4を用いて、座掘り穴34の別の実施形態である変形例について説明する。
図4は、剥落防止シート7の代わりにプレキャストPC床版1の地覆部3の座掘り穴34に落下防止材36を設けた変形例を示す図であり、
図3(c)に相当する鉛直断面図である。前述の座掘り穴34と相違する点は、前述の座掘り穴34に剥落防止シート7の代わりに落下防止材36が設けられている点だけであるので、その点を説明し、同一構成は同一符号を付し、説明を省略する。
【0037】
図4に示す落下防止材36は、錆びることがない繊維強化プラスチック:FRP(fiber reinforced plastic)、又はステンレス鋼などの耐食性の高い高耐食鋼からなる板状の部材である。この落下防止材36は、座掘り穴34の上傾斜面34b及び下傾斜面34cの途中に、板の高さ方向の半分程度がコンクリート内に埋設して設けられ、残りの半分程度が座掘り穴34の内部の空洞に突設させて設けられている。
【0038】
勿論、この落下防止材36は、板状のものに限られず、ボルトなどの棒状(ピン状)のものであっても構わない。要するに、落下防止材36は、硬化後の充填材6を掛け止めることができ、充填材6の落下を防止できる部材であればよい。
【0039】
但し、落下防止材36は、板状とすることにより、上傾斜面34b及び下傾斜面34cを伝って雨水等の降水が入り込むのを阻止することが可能となり、充填材6との隙間から座掘り穴34の奥深くに水が侵入してPC鋼材などの緊張材が錆びることを防止することができる。
【0040】
また、落下防止材36の素材は、耐食性の高い部材に限られない。但し、充填材6との隙間から毛細管現象等で水が浸入するおそれがあるため、落下防止材36は、FRPやステンレス鋼などの耐食性の高い素材からなることが好ましい。
【0041】
以上のように、前述の剥落防止シート7の代わりに座掘り穴34に落下防止材36を設けることにより、後詰めの充填材6が経年劣化して落下することを防止することができるだけでなく、充填材6が硬化した後、剥落防止シート7を接着する作業を不要とすることができる。その上、落下防止材36を設けることにより、充填材6との隙間から座掘り穴34の奥深くに水が侵入してPC鋼材などの緊張材が錆びることを防止することができる。なお、念のため、落下防止材36に加え、剥落防止シート7を設けてもよいことは云うまでもない。
【0042】
以上説明した本発明の実施形態に係るプレキャストPC床版1によれば、床版部2と地覆部3とが、打継目地なしに一体的に形成されているので、両者の間に水みちが形成されず、緊張材であるPC鋼材4の端部が構造上の欠点とならず、耐久性が向上する。
【0043】
また、本実施形態に係るプレキャストPC床版1によれば、PC鋼材4の端部を封止する座掘り穴34が地覆部3の外側面3aに開口して形成され、その座掘り穴34は、外窄み形状となっている。このため、PC鋼材4の端部処理が座掘り穴34に充填材としてポリマーセメントモルタル等を鏝塗りするだけで済み、極めて容易に短時間で行うことができる。しかも、座掘り穴34は、内側面に左右一対のテーパー面34aが形成されて外側に行くにしたがって開口面積が縮小する外窄み形状となっている。よって、座掘り穴34に後詰めされた充填材6が経年劣化して剥離・落下することを確実に防止することができる。
【0044】
また、プレキャストPC床版1によれば、地覆部3の外側面3aには、剥落防止シート7が取り付けられているので、さらに後詰めの充填材6が経年劣化して剥離・落下することを完全に払拭することができる。
【0045】
それに加え、プレキャストPC床版1によれば、座掘り穴34に、上傾斜面34b及び下傾斜面34cの座掘り穴34の外側に行くにしたがって下がる排水勾配が形成されている。このため、プレキャストPC床版1のコンクリートと後詰めの充填材6が経年劣化により肌別れして両者の間に隙間が生じた場合でも、雨水などの降水その他の水が下り勾配で排水されて座掘り穴34に溜まることがない。このため、プレキャストPC床版1の耐久性がさらに向上する。
【0046】
以上、本発明の実施形態に係るプレキャストPC床版1について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。特に、プレキャストPC床版1の緊張材としてPC鋼材4を例示したが、炭素繊維や樹脂繊維などの連続繊維補強材を緊張材として用いることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1:プレキャストPC床版
2:床版部
3:地覆部
3a:外側面
34:座掘り穴
34a:テーパー面
34b:上傾斜面
34c:下傾斜面
35:突出部
35a:テーパー面
36:落下防止材
4:PC鋼材(緊張材)
5:プレキャスト壁高欄
51:凹部
6:充填材
7:剥落防止シート
D1:奥行
SG:鋼桁
X:橋軸方向
Y:橋軸直角方向