(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】アンテナ内蔵ハンドル
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/22 20060101AFI20230724BHJP
E05B 1/00 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
H01Q1/22 Z
E05B1/00 311M
(21)【出願番号】P 2019199080
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 典夫
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-207647(JP,A)
【文献】特開2013-207648(JP,A)
【文献】国際公開第2016/062338(WO,A1)
【文献】特開2010-109722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0196458(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/22
E05B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製箱体の扉に設けられた平面ハンドルにアンテナを収容して成るアンテナ内蔵ハンドルであって、
前記平面ハンドルは、操作レバーと当該操作レバーを収容するケーシングとを有し、
前記ケーシングは、扉に形成された開口部から後方に突出させて形成したレバー収容部と、当該レバー収容部の周囲に形成されて前記扉の前面に密着するフランジ部とから成り、
前記フランジ部の1辺を拡幅して、その内部にアンテナ収容部を設けて前記アンテナを収容し、
前記アンテナから箱体内部へ配設されるアンテナケーブルは、前記レバー収容部に形成された孔又は前記レバー収容部の側部に形成された溝を介して引き込まれ、
前記フランジ部の背面には、前記扉の前面に密着するパッキンが周設されて成ることを特徴とすることを特徴とするアンテナ内蔵ハンドル。
【請求項2】
前記アンテナ収容部は、前記フランジ部を前方に膨出させて背部に形成した空間であり、背部からアンテナを収容可能としたことを特徴とする請求項1記載のアンテナ内蔵ハンドル。
【請求項3】
前記アンテナ収容部は、前記レバー収容部に隣接する左右何れか一方に配置され、且つ前記レバー収容部に収容した前記操作レバーと平行にアンテナが収容されることを特徴とする請求項1又は2記載のアンテナ内蔵ハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の箱体に収納された通信機器が外部と無線通信を実施するためのアンテナを、箱体の扉に設けたハンドルに内蔵させたアンテナ内蔵ハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
電機設備や通信設備が収納された金属製の箱体に、外部と無線通信するための機器を収納した場合は、アンテナを箱体の外部に設置する必要がある。このアンテナの取付部位として、本件出願人は特許文献1に記載の形態を提案した。これは、箱体を開閉する扉に設けられたハンドルを利用するもので、アンテナケーブルを箱体の外部に露出させて引き回す必要が無いため、内部機器の保護機能を低下させずに済んだし、美観上も好ましい構成であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の構成は、箱体内部から扉の表側にアンテナケーブルを配設する加工が引き続き発生し、そのための扉の新たな加工及び防水構造の追加が必要であった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、扉のハンドル取付部に新たな加工を行うこと無く、また特別な防水構造を必要としないアンテナ内蔵ハンドルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、金属製箱体の扉に設けられた平面ハンドルにアンテナを収容して成るアンテナ内蔵ハンドルであって、平面ハンドルは、操作レバーと当該操作レバーを収容するケーシングとを有し、ケーシングは、扉に形成された開口部から後方に突出させて形成したレバー収容部と、当該レバー収容部の周囲に形成されて扉の前面に密着するフランジ部とから成り、フランジ部の1辺を拡幅して、その内部にアンテナ収容部を設けてアンテナを収容し、アンテナから箱体内部へ配設されるアンテナケーブルは、レバー収容部に形成された孔又はレバー収容部の側部に形成された溝を介して引き込まれ、フランジ部の背面には、扉の前面に密着するパッキンが周設されて成ることを特徴とすることを特徴とする。
この構成によれば、アンテナは操作レバーを収容するケーシングの扉前面に配設されるフランジ部に収容されるため、扉自体にアンテナを配置するための新たな加工をする必要がない。また、アンテナケーブルは、ケーシングのレバー収容部を介してアンテナから箱体内へ配設されるため、アンテナケーブルを挿通する孔を扉に穿設する必要が無く、フランジ部に周設されたパッキンのみで防水機能を維持できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、アンテナ収容部は、フランジ部を前方に膨出させて背部に形成した空間であり、背部からアンテナを収容可能としたことを特徴とする。
この構成によれば、フランジ部の背部からアンテナを収容できるため、アンテナ収容部に対してアンテナを容易に収容できる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、アンテナ収容部は、レバー収容部に隣接する左右何れか一方に配置され、且つレバー収容部に収容した操作レバーと平行にアンテナが収容されることを特徴とする。
この構成によれば、アンテナ収容部はレバー収容部に隣接して、収容された操作レバーと平行にアンテナを配置するよう形成されるため、フランジ部の拡張量は最小で済み、ケーシングの強度劣化を防止できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アンテナは操作レバーを収容するケーシングの扉前面に配設されるフランジ部に収容されるため、扉自体にアンテナを配置するための新たな加工をする必要がない。また、アンテナケーブルは、ケーシングのレバー収容部を介してアンテナから箱体内へ配設されるため、アンテナケーブルを挿通する孔を扉に穿設する必要が無く、フランジ部に周設されたパッキンのみで防水機能を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るアンテナ内蔵ハンドルの一例を示す説明図であり、(a)は正面説明図、(b)は左側面説明図である。
【
図2】(a)は
図1のアンテナ内蔵ハンドルの底面図、(b)はA-A線断面説明図、(b)はB-B線断面説明図である。
【
図3】
図1のアンテナ内蔵ハンドルの背面図である。
【
図4】
図3において、パッキン及びアンテナを外した図である。
【
図5】アンテナ内蔵ハンドルの他の形態を示し、(a)は正面説明図、(b)は左側面説明図である。
【
図6】(a)は
図5のアンテナ内蔵ハンドルの底面図、(b)はC-C線断面説明図、(b)はD-D線断面説明図である。
【
図7】
図6のアンテナ内蔵ハンドルの背面図である。
【
図8】アンテナ内蔵ハンドルの他の形態を示し、(a)は正面説明図、(b)は左側面説明図である。
【
図9】(a)は
図8のアンテナ内蔵ハンドルの底面図、(b)はE-E線断面説明図、(b)はF-F線断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るアンテナ内蔵ハンドルの一例を示す外観図で、(a)は正面説明図、
図1(b)は左側面説明図である。
図1に示すように、アンテナ内蔵ハンドル1は、箱体(図示せず)の扉10に主要部が埋め込まれる平面ハンドル2に、アンテナ3を組み込んで構成されている。
平面ハンドル2は、扉10を開閉する際に操作者が把持する操作レバー4と、この操作レバー4を扉10に収容するケーシング5とから成り、ケーシング5は扉10に収容されて前面に操作レバー4を収容する凹部を設けたレバー収容部5aと、レバー収容部5aの周囲に形成されて扉10前面に配置されるフランジ部5bとで構成されている。
【0012】
レバー収容部5aは、扉10に形成した開口部10aに収容され、開口部10aから扉10の背部に主要部を突出させて配置される。
フランジ部5bは、レバー収容部5aを開口部10aに収容した際に、開口部10a周囲の扉10前面に当接し、開口部10aを閉塞するよう構成されている。また、5cはアンテナ収容部であり、フランジ部5bの左側の1辺が一様に拡幅されて形成され、レバー収容部5aに収容された操作レバー4と平行にアンテナ3を配置するよう形成されている。アンテナ3は、このように形成されたフランジ部5bに収容される。
【0013】
尚、
図1において、6は操作レバー4を回動させるための回動軸(図示せず)が収容された回動軸収容部、7は操作レバー4をロックするためのシリンダ錠(図示せず)を収容した錠収容部である。回動軸収容部6の後端には掛け金(図示せず)が取り付けられ、操作レバー4の回動操作で掛け金が箱体の本体に係止して閉扉状態が保持される。
【0014】
図2(a)はアンテナ内蔵ハンドル1の底面図、
図2(b)はA-A線断面説明図、
図2(c)はB-B線断面説明図である。
図2に示すように、アンテナ収容部5cはフランジ部5bを前方に膨出させた膨出部12の内部に形成されている。
そして
図2(c)に示すように、アンテナ3に接続されたアンテナケーブルLは、開口部10aを介して箱体内部に引き込まれる。
【0015】
尚、ケーシング5のうち、少なくともフランジ部5bは合成樹脂製であり、電波が透過する材質で形成されている。またアンテナ3は、ここでは2.4GHzの周波数帯の電波を放射するスリーブアンテナの場合を示し、アンテナ3は操作レバー4より短くできるため、フランジ部5bを上下方向に拡張すること無くアンテナ収容部5cを設けることができる。
【0016】
図3はアンテナ内蔵ハンドル1の背面図を示している。
図3に示すように、フランジ部5bの背部には弾性部材から成るシート状のパッキン9が配置され、扉10との間に隙間が発生して雨水等の侵入が発生しないよう構成されている。パッキン9は、フランジ部5bの形状に合わせた形状を成し、レバー収容部5aに合わせて開口形成されている。
【0017】
また
図4は
図3の状態からパッキン9及びアンテナ3を外した背面図を示している。
図4に示すようにレバー収容部5aの側面から背部にかけて、アンテナケーブルLを案内する溝11が形成されており、この溝11にアンテナケーブルLをはめ込んで配設することで、無理なくアンテナケーブルLを開口部10aを介して扉10の前方から箱体の内部に引き入れることを可能としている。
【0018】
このように、アンテナ3は操作レバー4を収容するケーシング5の扉10の前面に配設されるフランジ部5bに収容されるため、扉10自体にアンテナ3を配置するための新たな加工をする必要がない。
また、アンテナケーブルLは、ケーシング5のレバー収容部5aを介してアンテナ3から箱体内へ配設されるため、アンテナケーブルLを挿通するための孔を扉10に穿設する必要が無く、フランジ部5bに周設されたパッキン9のみで防水機能を維持できる。
更に、フランジ部5bの背部からアンテナ3を収容できるため、アンテナ収容部5cに対してアンテナ3を容易に収容できる。
加えて、アンテナ収容部5cはレバー収容部5aと平行にアンテナ3を配置するよう形成されるため、フランジ部5bの拡張量は最小で済み、ケーシング5の強度劣化を防止できる。
【0019】
尚、
図10は扉10に取り付けた従来の平面ハンドルを示す正面図であり、操作レバー4を収容するケーシング5のレバー収容部5aが、扉10に形成された開口部10aに収容されて取り付けられている。そして、フランジ部5bは、レバー収容部5aの周囲に一様な幅で形成されている。本発明は、この扉10の前面に配置されるフランジ部5bを拡幅することで、開口部10aを拡張することなく、平面ハンドル2にアンテナ3の収納を可能としている。
【0020】
図5は、アンテナ内蔵ハンドル1の他の形態を示し、(a)は正面説明図、(b)は左側面説明図である。ここでは、アンテナ3aは920MHzの周波数帯の電波を放射するモノポールアンテナの場合を示している。この周波数帯で電波を放射させるには、アンテナ3aが操作レバー4と同程度か、それより長くなるため、
図5に示すようにアンテナ収容部5cを設けたフランジ部5bは、レバー収容部5aに比べて長くなる。尚、上記形態と共通する部材には共通の符号を付与して説明を省略する。
この構成の場合も、アンテナ内蔵ハンドル1の基本構造は上記形態と同様であり、アンテナ収容部5cはフランジ部5bに形成された膨出部12の内部に形成されている。
【0021】
そして、
図6(a)は
図5のアンテナ内蔵ハンドル1の底面図、
図6(b)はC-C線断面説明図、
図6(c)はD-D線断面説明図を示している。
図6に示すように、フランジ部5bの拡幅量は上記
図1より大きく、また前方への膨出量も大きく形成され、アンテナ3aの収容を可能としている。
また
図7はアンテナ内蔵ハンドル1の背面図であり、
図7に示すようにフランジ部5bの背部にはパッキン9が配置されている。また、レバー収容部5aの側面から底部にかけてアンテナケーブルLを案内する溝11が形成され、無理なくアンテナケーブルLを開口部10aを介して箱体の内部に引き入れることを可能としている。
このように、収容するアンテナ3aが操作レバー4より大きい場合でも、フランジ部5bに収容することは可能であり、扉10自体にアンテナ3を配置するための新たな加工をする必要がない。
【0022】
図8、9は、アンテナ内蔵ハンドル1の更に他の形態を示し、
図8(a)は正面説明図、
図8(b)は左側面説明図、
図9(a)は
図8のアンテナ内蔵ハンドルの底面図、
図9(b)はE-E線断面説明図、
図9(b)はF-F線断面説明図である。ここでは、アンテナ3bが基板にパターン形成されたパターンアンテナの場合を示している。
図8,9に示すように、アンテナ3bがパターンアンテナの場合は薄くできるため、フランジ部5bに膨出部を設けること無く、内部にアンテナ収容部5cを形成することが可能であり、外観上はフランジ部5bの1辺を拡幅するだけでアンテナ3bを収容できる。
【0023】
尚、上記実施形態では、レバー収容部5aの側部から背部にかけて溝を形成してアンテナケーブルLを配設しているが、レバー収容部5aに孔を形成して配設しても良い。
また、操作レバー4の左側にアンテナ3,3a,3bを配置しているが、右側であっても良い。特に、扉10が左に開放操作される場合は、操作レバー4は左に回動されるため、アンテナ位置は右側が好ましい。
【符号の説明】
【0024】
1・・アンテナ内蔵ハンドル、2・・平面ハンドル、3,3a,3b・・アンテナ、4・・操作レバー、5・・ケーシング、5a・・レバー収容部、5b・・フランジ部、5c・・アンテナ収容部、9・・パッキン、10・・扉、10a・・開口部、11・・溝、12・・膨出部。